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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】燃料タンクシステム
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20220705BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
F02M25/08 Z
F02M37/00 301G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021535412
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020029171
(87)【国際公開番号】W WO2021020487
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2019139519
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】植松 亨介
(72)【発明者】
【氏名】大島 卓也
(72)【発明者】
【氏名】松永 英雄
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-088827(JP,A)
【文献】特開2015-096711(JP,A)
【文献】特開2015-190348(JP,A)
【文献】国際公開第2019/053918(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/207964(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/091954(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を有する車両に搭載される燃料タンクシステムであって、
密閉弁を有し、燃料を貯蔵する燃料タンクを密閉する燃料貯蔵部と、
前記燃料タンクの燃料蒸発ガスを処理する処理部と、
前記燃料貯蔵部及び前記処理部の故障を診断する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記密閉弁を閉じた状態で前記燃料貯蔵部の故障を診断する第1故障診断と、
前記第1故障診断によって前記燃料貯蔵部が正常と診断した場合に、前記密閉弁を閉じた状態で前記処理部の故障を診断する第2故障診断と、を行い、
前記燃料貯蔵部は、
前記燃料タンク内の圧力を検知する第1圧力検知部と、
前記第1圧力検知部と異なる位置に配置され、前記燃料タンク内の圧力を検知する第2圧力検知部と、を有し、
前記制御部は、
前記第1故障診断において、前記第1圧力検知部で検知した第1圧力値と、前記第2圧力検知部で検知した第2圧力値と、の差を算出して、少なくとも前記差が所定範囲以内である場合に前記燃料貯蔵部が正常と診断し、前記第2故障診断を行う、
燃料タンクシステム。
【請求項3】
前記第1圧力検知部は、前記燃料タンク内の絶対圧を検知する絶対圧センサであり、
前記第2圧力検知部は、大気圧を基準に前記燃料タンク内の圧力を検知する差圧センサである、請求項1に記載の燃料タンクシステム。
【請求項4】
前記第1圧力検知部は、前記燃料タンクと前記密閉弁とを連通するベーパ通路に取り付けられ、
前記第2圧力検知部は、前記燃料タンクに取り付けられる、
請求項1又は3に記載の燃料タンクシステム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記燃料タンクの圧力を下げる圧力制御を行い、
前記圧力制御中の異常を記録し、
前記第1故障診断において、さらに前記異常が記録されていない場合に、前記第2故障診断を行う、
請求項1、3から5のいずれか1項に記載の燃料タンクシステム。
【請求項8】
前記処理部は、
前記密閉弁と前記内燃機関の吸気通路とを連通する連通路と、
前記吸気通路と前記連通路の間を開閉する第1開閉弁と、
前記密閉弁と前記第1開閉弁との間で前記連通路に接続され、前記燃料タンクの燃料蒸発ガスを吸着するキャニスタと、
前記キャニスタと前記連通路の間を開閉する第2開閉弁と、
前記キャニスタに接続されて、圧力を発生させる圧力発生部と、を有し、
前記制御部は、前記第2故障診断において、前記圧力発生部によって圧力を発生させ、前記第2開閉弁を閉じて、前記連通路のリークを診断する、請求項1、3から7のいずれか1項に記載の燃料タンクシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料タンクシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関を有する車両の燃料タンク内で発生した燃料蒸発ガスの大気への放出を防止するために、燃料タンクを密閉する燃料タンクシステムが知られている(例えば、日本国特許4110931号公報および日本国特許6015936号公報)。日本国特許4110931号公報に記載された燃料タンクシステムは、燃料タンクとキャニスタとの連通状態を制御する密閉弁を備える。日本国特許4110931号公報に記載された燃料タンクシステムは、内燃機関が停止中は密閉弁を閉じて燃料タンクを密閉し、燃料タンクに給油する際は密閉弁を開く。日本国特許6015936号公報に記載された燃料タンクシステムは、密閉弁と、連通路と内燃機関の吸気通路の間を開閉する第1開閉弁と、キャニスタと連通路の間を開閉する第2開閉弁を備える。日本国特許6015936号公報に記載された燃料タンクシステムは、燃料タンクの圧力を下げる際に、密閉弁および第1開閉弁を開き、第2開閉弁を閉じる。
【0003】
また、日本国特許4110931号公報に記載された燃料タンクシステムおよび日本国特許6015936号公報に記載された燃料タンクシステムは、密閉弁の故障を診断するために、密閉弁を閉じた状態から開いて、燃料タンク内の圧力の変化を検知している。
【0004】
日本国特許4110931号公報に記載された燃料タンクシステムおよび日本国特許6015936号公報に記載された燃料タンクシステムでは、燃料タンクシステム内の装置の故障診断を行うために密閉弁を開くため、キャニスタに燃料蒸発ガスが流入する。流入した燃料蒸発ガスは、キャニスタに吸着される。キャニスタに吸着された燃料蒸発ガスは、内燃機関の始動中に吸気中に放出され、内燃機関で燃焼されて処理される。しかし、例えば、プラグインハイブリッド車などに用いられる内燃機関は、内燃機関の稼動頻度が少ない。内燃機関の稼働頻度が少ないと、キャニスタに吸着された燃料蒸発ガスを処理できる量が制限される。このため、故障診断中に密閉弁を開ける頻度は少ないほうがよい。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、密閉弁を開ける頻度を少なくできる燃料タンクシステムを提供する。
【0006】
本開示の一実施形態に係る燃料タンクシステムは、内燃機関を有する車両に搭載される燃料タンクシステムである。燃料タンクシステムは、燃料貯蔵部と、処理部と、制御部とを備える。燃料貯蔵部は、密閉弁を有し、燃料と貯蔵する燃料タンクを密閉する。処理部は、燃料タンクの燃料蒸発ガスを処理する。制御部は、密閉弁を閉じた状態で燃料貯蔵部の故障を診断する第1故障診断と、第1故障診断によって燃料貯蔵部が正常と診断した場合に、密閉弁を閉じた状態で処理部の故障を診断する第2故障診断とを行う。
【0007】
この燃料タンクシステムによれば、燃料貯蔵部に含まれる各種装置の故障を、密閉弁を閉じた状態で診断できる。また、この燃料タンクシステムによれば、燃料貯蔵部に含まれる装置が正常であれば、処理部に含まれる各種装置の故障を、密閉弁を閉じた状態で診断できる。すなわち、この燃料タンクシステムによれば、燃料タンクシステムに含まれるこれら装置が、全て正常であれば、密閉弁を一度もあけることなく、故障の診断ができる。これによって、密閉弁を開ける頻度を少なくできる燃料タンクシステムを提供できる。
【0008】
燃料貯蔵部は、第1圧力検知部と、第2圧力検知部と、を有してもよい。第1圧力検知部は、燃料タンクの圧力を検知する。第2圧力検知部は、第1圧力検知部と異なる位置に配置され、燃料タンクの圧力を検知する。制御部は、第1故障診断において、第1圧力検知部で検知した第1圧力値と、第2圧力検知部で検知した第2圧力値と、の差を算出して、少なくとも差が所定範囲以内である場合に燃料貯蔵部が正常と判定し、第2故障診断を行ってもよい。
【0009】
第1圧力検知部は、燃料タンクの絶対圧を検知する絶対圧センサでもよい。第2圧力検知部は、大気圧を基準に燃料タンクの圧力を検知する差圧センサでもよい。
【0010】
第1圧力検知部は、燃料タンクと密閉弁とを連通するベーパ通路に取り付けられてもよい。第2圧力検知部は、燃料タンクに取り付けられてもよい。
【0011】
制御部は、第1故障診断において、さらに第1圧力検知部で検知した第1圧力の絶対値が所定値以上の場合に燃料貯蔵部が正常と診断し、第2故障診断を行ってもよい。
【0012】
制御部は、燃料タンクの圧力を下げる圧力制御を行ってもよい。制御部は、圧力制御中の異常を記録してもよい。制御部は、第1故障診断において、さらに異常が記録されていない場合に、第2故障診断を行ってもよい。
【0013】
制御部は、車両のイグニッションスイッチがオフにされたのち、所定期間経過後に第1故障診断および第2故障診断を行ってもよい。
【0014】
処理部は、連通路と、第1開閉弁と、キャニスタと、第2開閉弁と、圧力発生部と、を有してもよい。連通路は、密閉弁と内燃機関の吸気通路とを連通する。第1開閉弁は、吸気通路と連通路の間を開閉する。キャニスタは、密閉弁と第1開閉弁との間で連通路に接続され、燃料タンクの燃料蒸発ガスを吸着する。第2開閉弁は、キャニスタと連通路の間を開閉する。圧力発生部は、キャニスタに接続されて、圧力を発生させる。制御部は、第2故障診断において、圧力発生部によって圧力を発生させ、第2開閉弁を閉じて、連通路のリークを診断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る燃料タンクシステムの構成を示す図。
図2図1の開状態の切替弁を示す図。
図3図1の閉状態の切替弁を示す図。
図4図1の制御部が行う第1故障診断のフローチャート。
図5図1の制御部が行う第2故障診断のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示すように、燃料タンクシステム1は、燃料貯蔵部20と、処理部30と、制御部40と、を備える。燃料タンクシステム1は、車両Cに搭載される。本実施形態では、車両Cは、モータ(図示せず)と内燃機関10を有し、モータおよび内燃機関10どちらか一方、または、両方を用いて走行するハイブリット車やプラグインハイブリッド車である。また、車両Cはイグニッションスイッチ40aを有する。イグニッションスイッチ40aは、後述するECU(Electrоnic Control Unit)42と電気的に接続される。制御部40は、車両Cのユーザによってイグニッションスイッチ40aがオンされることで、起動する。また、制御部40は、ユーザによってイグニッションスイッチ40aがオフされることで、スリープ状態になる。内燃機関10は、吸気通路10aと、燃料噴射弁10bと、燃料配管10cを有し、吸気通路10aから吸入した空気と、燃料噴射弁10bから噴射した燃料を混合して燃焼させる。
【0018】
燃料貯蔵部20は、燃料タンク21と、密閉弁22と、第1タンク圧センサ(第1圧力検知部の一例)23と、第2タンク圧センサ(第2圧力検知部の一例)24と、ベーパ通路25と、を有する。燃料貯蔵部20は、燃料タンク21を密閉する。
【0019】
燃料タンク21は、燃料給油口21aと、燃料ポンプ21bと、燃料カットオフバルブ21cと、レベリングバルブ21dと、を含む。燃料給油口21aは、燃料タンク21への燃料注入口である。燃料ポンプ21bは、燃料を燃料タンク21から燃料配管10cを経由して燃料噴射弁10bに供給する。燃料カットオフバルブ21cは、燃料タンク21から処理部30への燃料の流出を防止する。レベリングバルブ21dは、給油時に燃料タンク21内の液面を制御する。また、燃料タンク21内で発生した燃料蒸発ガスは、燃料カットオフバルブ21cおよびレベリングバルブ21dを経由して、処理部30に排出される。
【0020】
密閉弁22は、ベーパ通路25を開閉することで、燃料タンク21を密閉する。本実施形態では、密閉弁22は、電磁ソレノイドバルブであり、電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で閉弁状態となり、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)となると開弁状態となるノーマルクローズタイプの電磁弁である。ベーパ通路25は、燃料タンク21と密閉弁22とを連通する。
【0021】
第1タンク圧センサ23は、ベーパ通路25上に配置され、ベーパ通路25において燃料タンク21内の圧力を検知する。第1タンク圧センサ23は、絶対圧センサであり、燃料タンク21内の圧力を絶対圧として検知する。
【0022】
第2タンク圧センサ24は、第1タンク圧センサ23と異なる位置に配置される。本実施形態では、第2タンク圧センサ24は、燃料タンク21の上部に配置される。第2タンク圧センサ24は、大気圧との差によって圧力を検知する差圧式のセンサであり、燃料タンク21内の圧力をゲージ圧として検知する。
【0023】
第1タンク圧センサ23は、主として燃料タンク21内の圧力が上昇した場合であっても圧力が検知できるように設けられる。一方、第2タンク圧センサ24は、主として給油する際に燃料タンク21内の圧力が大気圧近傍にあるか否かを検知できるように設けられる。このため、第1タンク圧センサ23は、第2タンク圧センサ24よりも検知できる圧力の幅が広い。一方、第2タンク圧センサ24は、第1タンク圧センサ23よりも圧力を精度よく検知できる。
【0024】
図1および図2に示すように、処理部30は、キャニスタ31と、パージ通路(連通路)32と、パージ弁(第1開閉弁の一例)33と、バイパス弁(第2開閉弁の一例)34と、負圧ポンプ(圧力発生部の一例)35と、切替弁36と、および、キャニスタ圧センサ(第3圧力検知部の一例)37と、を備える。処理部30は、燃料タンク21の燃料蒸発ガスを内燃機関10で燃焼させる、または、燃料蒸発ガスをキャニスタ31に吸着させることで処理する。
【0025】
キャニスタ31は、燃料タンク21の燃料蒸発ガスを吸着する。パージ通路32は、密閉弁22と内燃機関の吸気通路10aとを連通する。キャニスタ31は、内部に活性炭を具備し、燃料タンク21で発生した燃料蒸発ガスを活性炭によって吸着する。キャニスタ31は、パージ通路32から分岐した通路に接続される。キャニスタ31は、キャニスタ31が吸着した燃料蒸発ガスを、パージ通路32を介して吸気通路10aに供給するために設けられる。
【0026】
パージ弁33は、吸気通路10aとパージ通路32の間を開閉する。本実施形態では、パージ弁33は、電磁ソレノイドバルブであり、後述する圧力制御、パージ制御(放出制御)の際に、制御部40からの指示によって開いて燃料蒸発ガスを吸気通路10aに供給する。パージ弁33は、例えば電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で閉弁状態となり、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)となると開弁状態となるノーマルクローズタイプの電磁弁である。
【0027】
バイパス弁34は、キャニスタ31とパージ通路32の間を開閉する。本実施形態では、バイパス弁34は、電磁ソレノイドバルブであり、後述する圧力制御の場合に、制御部40からの指示によって閉じてキャニスタ31への燃料蒸発ガスの供給を遮断する。一方、バイパス弁34は、パージ制御(放出制御)の場合に、制御部40からの指示によって開いてキャニスタ31に吸着された燃料蒸発ガスをパージ通路32に供給する。バイパス弁34は、例えば電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で開弁状態となり、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)となると閉弁状態となるノーマルオープンタイプの電磁弁である。
【0028】
負圧ポンプ35、切替弁36、および、キャニスタ圧センサ37は、キャニスタ31に接続されるモジュール38内に設けられる。図2に示すように、モジュール38には、キャニスタ側通路38aと、大気側通路38bと、ポンプ通路38cと、バイパス通路38dが設けられる。負圧ポンプ35は、ポンプ通路38cと大気側通路38bの間に設けられる。バイパス通路38dには、リーク診断時の基準となる圧力を発生させる基準オリフィス38eが設けられる。キャニスタ圧センサ37は、ポンプ通路38cに設けられ、負圧ポンプ35でキャニスタ31内に負圧を発生させた際の圧力を検知する。
【0029】
切替弁36は、開状態ではキャニスタ側通路38aと大気側通路38bとを連通し、キャニスタ31を大気開放状態にする。この状態で、負圧ポンプ35が稼働すると、基準オリフィス38eの径に応じた負圧がポンプ通路38cに発生する。制御部40は、このときのキャニスタ圧センサ37で検知する負圧の値を基準圧Prefとして記憶する。一方、図3に示すように、切替弁36は、閉状態ではキャニスタ側通路38aとポンプ通路38cとを連通し、キャニスタ31に負圧を発生可能な状態にする。このような状態で、負圧ポンプ35がキャニスタ31に負圧を発生させると、燃料貯蔵部20または処理部30に基準オリフィス38eよりも大きな穴が存在する場合に、キャニスタ圧センサ37で検知する負圧が基準圧Prefよりも小さくなる。制御部40は、このようにして燃料貯蔵部20または処理部30の燃料蒸発ガスのリークを診断する。切替弁36は、例えば電磁ソレノイドで駆動される。切替弁36は、電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)であるときには開状態となり、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)のときには閉状態となる。
【0030】
制御部40は、燃料貯蔵部20および処理部30の各検知部からの情報を取得し、各弁を制御するための信号を各弁に送信する。なお、本実施形態において、「開制御」と記す場合は、制御部40が各弁を開いた状態にするための制御信号を送信し、各弁に実際に開くように指示をすることを示す。各弁は、開制御の制御信号をうけて、故障がなければ実際に開く。また、「閉制御」と記す場合も同様に、制御部40が各弁を閉じた状態にするための制御信号を送信し、各弁に実際に開くように指示をすることを示す。各弁は、閉制御の制御信号をうけて、故障がなければ実際に閉じる。
【0031】
制御部40は、少なくとも、第1故障診断と、第2故障診断と、故障部位特定と、フェールセーフ制御と、を行う。また、制御部40は、燃料タンク21の圧力が一定以上に上昇した場合に、密閉弁22およびパージ弁33を開制御し、バイパス弁34を閉制御して、燃料タンク21内の圧力を下げる制御を行う。また、制御部40は、給油する際に、密閉弁22およびバイパス弁34を開制御して、燃料タンク21の圧力を大気圧にする制御を行う。このように、制御部40は、燃料タンク21内の圧力を下げる圧力制御(圧抜き制御)を行い、圧力が低下しない場合は異常があるとして記録する。また、制御部40は、パージ弁33およびバイパス弁34を開制御して、キャニスタ31に吸着した燃料蒸発ガスを運転中の内燃機関10に吸わせるパージ制御(放出制御)を行う。さらに、制御部40は、給油する際の圧力制御が完了すると、燃料給油口21aを開放可能なように、フューエルリッド(図示せず)のロックを解除し、車両Cのユーザに報知する給油制御を行う。一方、制御部40は、例えば、フェールセーフ制御として、給油制御が禁止(給油禁止)された場合は、フューエルリッドのロックを解除せず、給油が禁止されている旨をユーザに報知する。
【0032】
また、本実施形態では、制御部40は、ECU42に記憶されるソフトウェアによって実現される機能構成である。ECU42は、実際には、タイマーを含む演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成される。ECU42は、各センサおよび各種装置からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関10が、所望の運転状態となるように各種装置を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。また、各センサと、各バルブは、ECU42と電気的に接続される。
【0033】
次に図4および図5のフローチャートを用いて、制御部40の制御手順について説明する。
【0034】
図4は、制御部40が行う第1故障診断における制御手順を示す。制御部40は、イグニッションスイッチ40aがオフされたのち、所定期間TmIG経過後に密閉弁22を閉じた状態で燃料貯蔵部20の故障を診断する第1故障診断を開始する(S1)。ここで、密閉弁22を閉じた状態とは、密閉弁22を閉制御した状態ということであり、制御部40が密閉弁22に通電(ON)を指示する制御信号を送信していない状態である。制御部40は、第1タンク圧センサ23で検知した第1圧力値P1を取得する。制御部40は、第1圧力値P1の絶対値が第1所定値D1以上であれば(S2 Yes)、S3へ処理を進める。
【0035】
制御部40は、圧力制御中の異常の記録を取得し、異常の記録がなければ(S3 Yes)S4に処理を進める。ここで、圧力制御中の異常とは、燃料タンク21の圧力が一定以上に上昇した際の圧力制御が所定時間内に終了しない場合、給油する際の圧力制御が所定時間内に終了しない場合、および、これら制御中に燃料貯蔵部20および処理部30に何らかの故障が診断されてない場合、である。
【0036】
制御部40は、第2タンク圧センサ24で検知した第2圧力値P2を取得する。制御部40は、第1圧力値P1と第2圧力値P2との差を算出する。制御部40は、差が所定範囲ΔQ以内である場合は(S4 Yes)、S5に処理を進める。上記のとおり、第1タンク圧センサ23と、第2タンク圧センサ24は、配置される場所、および、圧力の検知特性が異なる。このため、燃料タンク21内の実際の圧力値は同一であるにもかかわらず、第1圧力値P1および第2圧力値P2は、所定範囲ΔQ以内の差をもつ。この所定範囲ΔQは、第1タンク圧センサ23および第2タンク圧センサ24の配置される場所、および、圧力の検知特性に応じて予め設定された値である。
【0037】
制御部40は、燃料貯蔵部20が正常であると診断する(S5)。そして、制御部40は、密閉弁22を閉じた状態で処理部30の故障を診断する第2故障診断に進む(S6)。
【0038】
なお、第1圧力値P1の絶対値が第1所定値D1より小さい場合(S2 No)、圧力制御異常がある場合(S3 No)、第1圧力値P1と第2圧力値P2の差が所定範囲ΔQより大きい場合(S4 No)は、燃料貯蔵部20に故障があるとして、制御部40は正常診断不成立とする(S8)。すなわち、制御部40は、燃料貯蔵部20が有する、第1タンク圧センサ23、第2タンク圧センサ24、およびベーパ通路25のいずれか一つ、または、複数に故障があると診断する。制御部40は、燃料貯蔵部20が正常でないと診断した場合は、密閉弁22を開制御して、故障部位特定診断を行い、故障部位を特定する(S9)。また、制御部40は、故障部位を特定すると故障部位に応じたフェールセーフ制御を行う(S10)。
【0039】
また、制御部40は、後述する第2故障診断において、処理部30に故障があると診断した場合は(S7 Yes)、密閉弁22を開制御して故障部位特定診断を行い、故障部位を特定する(S9)。
【0040】
次に図5のフローチャートを用いて、制御部40が行う第2故障診断における制御手順を説明する。なお、第2故障診断は、バイパス弁34を開制御した状態で開始される。
【0041】
制御部40は、負圧ポンプ35を起動する(S21)。このとき、キャニスタ圧センサ37で検知した第3圧力値P3が基準圧Prefまで下がる。その後、制御部40は、切替弁36を閉制御してキャニスタ31の減圧を開始する(S22)。この状態では、制御部40からの指示によって実際にバイパス弁34が開いた状態であれば、パージ通路32とキャニスタ31が減圧される。制御部40は、減圧開始後(切替弁36を閉制御してから)第1所定期間Tm1経過した場合に(S23 Yes)、1回目の第3圧力値P3を取得値P31として取得する(S24)。制御部40は、その後バイパス弁34を閉制御する(S25)。制御部40は、減圧後第2所定期間Tm2経過した場合に(S26 Yes)、2回目の第3圧力値P3を取得値P32として取得する。そして2回目の第3圧力値P3の取得値P32が第1所定圧力PT1以下の場合は(S28 Yes)、1回目の第3圧力値P3の取得値P31と、2回目の第3圧力値P3の取得値P32の比(P32/P31)を算出し、比が第2所定値D2以下の場合に、パージ通路32にリークが無いと診断する(S30)。
【0042】
すなわち、1回目の第3圧力値P3の取得値P31はバイパス弁34を開制御している際の値であり、実際にバイパス弁34が開いている場合は、キャニスタ31とパージ通路32を含む空間の圧力値である。一方、2回目の第3圧力値P3の取得値P32は、バイパス弁34を閉制御している際の値であり、実際にバイパス弁34が閉じている場合は、キャニスタ31のみを含み、パージ通路32は含まない空間の圧力値である。よって、キャニスタ31およびパージ通路32のいずれにもリークがなければ、取得値P31と、取得値P32の比は第2所定値D2以下になる。また、キャニスタ31のみにリークの可能性がある場合も、取得値P31、および取得値P32のいずれの場合も、減圧量が小さい状態で維持される。この結果、取得値P31と、取得値P32の比は第2所定値D2以下になる。一方、パージ通路32にリークがあれば、取得値P31は、減圧量が小さい状態で維持され、取得値P32は、減圧量が大きい状態で維持される。この結果、取得値P31と、取得値P32の比は第2所定値D2よりも大きくなる。このように、制御部40は、取得値P31と、取得値P32の比が、第2所定値D2よりも大きい場合は(S29 No)、パージ通路32にリークがあると診断する(S38)。また、取得値P32が第1所定圧力PT1よりも大きい場合は(S28 No)、なんらかの故障(例えば、キャニスタ31がリークしている可能性)があると診断し、S37に処理を進める。
【0043】
次に、制御部40は、パージ弁33を開制御し(S31)、大気圧P0と第3圧力値P3の差を算出し、この差が第2所定圧力PT2以上か診断する(S32)。つまり、制御部40は、処理部30(キャニスタ31)が負圧に維持されているかを診断する。制御部40は、差が第2所定圧力PT2以上の場合は(S32 Yes)、バイパス弁34の開固着なしと診断する(S33)。すなわち、バイパス弁34の開固着ありの場合に、パージ弁33が実際に開くと、キャニスタ31から吸気通路10aまでが連通状態となり、処理部30が大気開放された状態となる。この状態となると、処理部30の負圧は維持できなくなる。これによって、制御部40は、バイパス弁34の開固着の有無を診断できる。したがって、制御部40は、差が第2所定圧力PT2より小さい場合は(S32 No)、バイパス弁34の開固着ありと診断する(S39)。制御部40は、バイパス弁34の開固着ありと診断すると、処理を第1故障診断に戻し、フェールセーフ制御として給油制御を禁止(給油禁止)し(S10)、故障診断終了のフラグを記録する。
【0044】
一方、制御部40がバイパス弁34の開固着なしと診断した場合に、制御部40は、バイパス弁34を開制御して(S34)、大気圧P0と第3圧力値P3の差を算出し、この差が第3所定圧力PT3以下か診断する(S35)。すなわち、バイパス弁34およびパージ弁33が実際に開いた状態では、キャニスタ31から吸気通路10aまでが連通状態となり、処理部30が大気開放された状態となる。この状態となると、第3圧力値P3は大気圧P0に近い値まで戻る。もし、第3圧力値P3が大気圧P0近傍まで戻らない場合は、パージ弁33およびバイパス弁34のいずれか一方、または両方が閉固着の状態である。そこで、制御部40は、大気圧P0と第3圧力値P3の差が大気圧近傍の値である第3所定圧力PT3以下の場合は(S35 Yes)、パージ弁33およびバイパス弁34の両方の閉固着なしと診断する(S36)。一方、制御部40は、大気圧P0と第3圧力値P3の差が大気圧近傍の値である第3所定圧力PT3よりも大きい場合は(S35 No)、パージ弁33およびバイパス弁34のいずれか一方、または両方が閉固着の状態にある可能性があると診断する(S40)。制御部40は、以上の診断を終えると、切替弁36を開状態にして(S37)、第2故障診断の処理を終了し、第1故障診断のフローに戻る。制御部40は、診断が完了した場合は、診断完了フラグを記録する。
【0045】
以上説明した通り、本開示の燃料タンクシステム1によれば、燃料貯蔵部20に含まれる各弁、各センサの故障を、密閉弁22を閉じた状態で診断できる。また、燃料貯蔵部20が有する燃料タンク21、密閉弁22、第1タンク圧センサ23、第2タンク圧センサ24、およびベーパ通路25が正常であれば、密閉弁22を開くことなく、処理部30が有する、パージ通路32、パージ弁33、バイパス弁34の故障を診断できる。すなわち、燃料タンクシステム1に含まれるこれら装置が、全て正常であれば、密閉弁22を一度もあけることなく、故障の診断ができる。これによって、密閉弁22を開ける頻度を少なくできる燃料タンクシステムを提供できる。
【0046】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0047】
上記実施形態では、第1タンク圧センサ23および第2タンク圧センサ24は、異なる配置かつ、異なる検知特性を有するが、本開示はこれに限定されない。第1タンク圧センサおよび第2タンク圧センサは、配置、および、検知特性のいずれか一方が異なればよい。
【0048】
上記実施形態では、処理部30は、第2開閉弁としてバイパス弁34を有するが、本開示はこれに限定されない。制御部40は、バイパス弁34が無い場合は、密閉弁22を閉じた状態でパージ弁33の閉固着の有無の診断だけを行ってもよい。
【0049】
c)上記実施形態では、処理部30は、圧力発生部として負圧ポンプ35を用いるが、本開示はこれに限定されない。圧力発生部は、加圧ポンプであってもよい。
【0050】
本出願は、2019年7月30日出願の日本特許出願特願2019-139519に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0051】
1:燃料タンクシステム
10:内燃機関
10a:吸気通路
20:燃料貯蔵部
21:燃料タンク
22:密閉弁
23:第1タンク圧センサ(第1圧力検知部)
24:第2タンク圧センサ(第2圧力検知部)
25:ベーパ通路
30:処理部
31:キャニスタ
32:パージ通路(連通路)
33:パージ弁(第1開閉弁)
34:バイパス弁(第2開閉弁)
35:負圧ポンプ
36:切替弁
37:キャニスタ圧センサ(第3圧力検知部)
40:制御部
40a:イグニッションスイッチ
C:車両
P1:第1圧力値
P2:第2圧力値
D1:第1所定値
ΔQ:所定範囲
TmIG:所定期間
図1
図2
図3
図4
図5