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  • 特許-弾性ローラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】弾性ローラ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20220705BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G03G15/08 235
F16C13/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018217629
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020086038
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】森 雄作
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 沙織
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 寛之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 朋晴
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-138810(JP,A)
【文献】特開2006-309128(JP,A)
【文献】特開2011-95374(JP,A)
【文献】特開2000-321862(JP,A)
【文献】特開2005-254519(JP,A)
【文献】特開2015-94894(JP,A)
【文献】特開2007-047200(JP,A)
【文献】特開2016-068559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周面上に設けられる弾性層と、弾性層より外側に設けられる表層と、を備える弾性ローラであって、
前記弾性ローラは、前記弾性層と前記表層との間に接着層を設けており、
前記弾性層の抵抗値が1×10Ω以上1×10Ω以下であり、
前記接着層の比誘電率が、100Hzにおいて1以上10以下であり、0.01Hzにおいて1000以上10000以下であり、
前記表層の比誘電率が100Hzにおいて1以上10以下であり、0.01Hzにおいて10以上200以下である、弾性ローラ。
【請求項2】
前記接着層が、有機チタン化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物を含有する、請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項3】
前記表層が、
両末端変性シリコーンオイルに、イソシアヌレート型イソシアネート化合物及び/又はアダクト型イソシアネート化合物を混合して反応させたバインダー主剤に、
2μm以上10μm以下のシリコーンゴム粒子及び/又はアクリル粒子と、第二のイソシアネート化合物と、を加えて硬化して形成される、請求項1又は2に記載の弾性ローラ。
【請求項4】
前記表層が、
両末端変性シリコーンオイルに、カーボネートポリオール及び/又はフッ素ポリオールを混合し、更に、イソシアヌレート型イソシアネート化合物及び/又はアダクト型イソシアネート化合物を混合して反応させたバインダー主剤に、
2μm以上10μm以下のシリコーンゴム粒子及び/又はアクリル粒子と、第二のイソシアネート化合物と、を加えて硬化して形成される、請求項1から3のいずれかに記載の弾性ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルミングの発生及び印字濃度の低下が良好に抑制された弾性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像ローラは、静電潜像が形成された像担持体に現像剤を搬送する機能を持つ。現像ローラが有する現像剤搬送性は、画像形成装置の品質、特に印字濃度に影響する。したがって、現像ローラの表面に凹凸を形成するとともに、現像ローラを構成する各種材料の電気的特性を調整し、これにより、現像ローラの現像剤搬送性を向上させることが検討されている。
【0003】
ここで、現像ローラは、長期間使用された場合、その表面に現像剤が固着することがある(「フィルミング」という)。このようなフィルミングは、例えば、現像剤を帯電又は付着させる際に弾性ローラと圧接するブレード等の摺動ストレスによって現像剤が変形し、又は破壊され、さらに、ブレード等との摩擦熱による現像剤の溶融等に起因して生じるものと考えられている。従来、現像ローラの製造にあたっては、フィルミングの発生を極力抑制し、これにより、耐久印字性能が安定化された弾性ローラを提供することが求められていた。
【0004】
フィルミング抑制について検討された弾性ローラとして例えば特許文献1には、導電性軸体と、該導電性軸体の外周に形成された導電性弾性層と、該導電性弾性層の外周に形成されたトナー担持層と、を有する現像ローラであって、トナー担持層は、表面に平均粒径11nm以上40nm以下の粒子が分散されており、現像ローラの回転トルクが2.5N以上3.5N以下であることを特徴とする弾性ローラが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、少なくとも金属からなる軸と、該軸の外周に担持された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された表層からなり、該表層は、フルオロエチレンビニルエーテル共重合体とイソシアネートのシアヌレート体との反応物からなるポリウレタンと、一次粒子径が5~30nmの微粒子を含有し、かつ前記ポリウレタンはATR法による赤外吸収スペクトルにおけるNCO基と水酸基のピーク強度比が5.6~8.8であることを特徴とする弾性ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-177253号公報
【文献】特開2014-215546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の弾性ローラでは、フィルミングの発生が抑制されたとしても、現像剤を担持又は供給するための静電容量が低下する傾向にあり、安定的に現像剤を帯電させることができず、結果として印字濃度が低下する場合があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルミングの発生及び印字濃度の低下が良好に抑制された弾性ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、鋭意研究を行った結果、軸体と、軸体の外周面上に設けられる弾性層と、弾性層より外側に設けられる表層と、を備える弾性ローラにおいて、弾性層の抵抗値、表層の比誘電率及び弾性層と表層との間に設けられた接着層又はプライマー層の比誘電率を調整することにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)軸体と、前記軸体の外周面上に設けられる弾性層と、弾性層より外側に設けられる表層と、を備える弾性ローラであって、前記弾性ローラは、前記弾性層と前記表層との間に接着層を設けており、前記弾性層の抵抗値が1×10Ω以上5×10Ω以下であり、前記接着層の比誘電率が、100Hzにおいて1以上10以下であり、0.01Hzにおいて1000以上10000以下であり、前記表層の比誘電率が100Hzにおいて1以上10以下であり、0.01Hzにおいて10以上200以下である、弾性ローラ。
【0010】
(2)前記接着層が、有機チタン化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物を含有する、(1)に記載の弾性ローラ。
【0011】
(3)前記表層が、両末端変性シリコーンオイルに、イソシアヌレート型イソシアネート化合物及び/又はアダクト型イソシアネート化合物を混合して反応させたバインダー主剤に、2μm以上10μm以下のシリコーンゴム粒子及び/又はアクリル粒子と、第二のイソシアネート化合物と、を加えて硬化して形成される、(1)又は(2)に記載の弾性ローラ。
【0012】
(4)前記表層が、両末端変性シリコーンオイルに、カーボネートポリオール及び/又はフッ素ポリオールを混合し、更に、イソシアヌレート型イソシアネート化合物及び/又はアダクト型イソシアネート化合物を混合して反応させたバインダー主剤に、2μm以上10μm以下のシリコーンゴム粒子及び/又はアクリル粒子と、第二のイソシアネート化合物と、を加えて硬化して形成される、(1)から(3)のいずれかに記載の弾性ローラ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の弾性ローラにおいては、表層の比誘電率が100Hzにおいて1以上10以下であり、0.01Hzにおいて10以上200以下である。100Hzと0.01Hzにおける表層の比誘電率を当該範囲に調整することにより、フィルミングの発生が良好に抑制されたものとなる。また、本発明の弾性ローラにおいて、弾性層と表層との間に接着層を設けており、接着層の比誘電率が、100Hzにおいて1以上10以下であり、0.01Hzにおいて1000以上100000以下である。接着層の比誘電率を当該範囲に調整することにより、フィルミングの発生を良好に抑制するために、上記のように表層の比誘電率を低めに調整したとしても、現像剤を担持又は供給するための静電容量の確保が可能となり、安定的に現像剤を帯電させ、印字濃度の低下を抑制することができる。さらに、弾性層の抵抗値が1×10Ω以上5×10Ω以下であるため、特に初期段階における現像剤の帯電性を安定させることができる。よって、本発明によれば、フィルミングの発生及び印字濃度の低下が良好に抑制された弾性ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の弾性ローラを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<弾性ローラ>
本発明の弾性ローラ1は、軸体2と、軸体2の外表面に設けられる弾性層3と、弾性層3より外側に設けられる表層4と、を備える。本発明の弾性ローラ1は、好ましくは、現像ローラとして用いられるものであるが、そのような用途に限定されるものではない。
【0017】
[軸体]
軸体2は、好ましくは、導電特性を有する、従来公知の弾性ローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群より選択される少なくとも1種の金属で構成されていることが好ましい。なお、このような軸体2は、一般に、「芯金」の名称でも知られている。
【0018】
軸体2は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、この芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
【0019】
軸体2は、良好な導電特性を得るために、芯金であることが好ましい。
【0020】
軸体2の形状は、例えば、棒状、管状等であることが好ましい。軸体2の断面形状は、例えば、円形、楕円形であってもよく、多角形等の非円形であってもよい。軸体2の外周面には、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0021】
軸体2の軸方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してもよい。また、軸体2の直径(外接円の直径)も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整すればよい。
【0022】
[弾性層]
本発明の弾性ローラ1において、弾性層3の抵抗値は、1×10Ω以上1×10Ω以下である。弾性層3の抵抗値を当該範囲に調整することにより、特に初期段階(例えば1枚から500枚程度)における現像剤の帯電性を安定させ、印字濃度の低下を抑制することができる。弾性層3の抵抗値は、1×10Ω以上1×10Ω以下であることが好ましく、1×10Ω以上5×10Ω以下であることがより好ましい。
【0023】
弾性層3は、シリコーンゴムを含むゴム材料から構成される。弾性層3がシリコーンゴムを含むことで、圧縮永久歪みを低減することができるとともに、低温環境下における柔軟性に優れるという効果が得られる。
【0024】
シリコーンゴムとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンの架橋物が挙げられる。また、シリコーンゴムは、これらの変性物であってもよい。
【0025】
弾性層3は、主としてシリコーンゴムを含んでいることが好ましい。具体的には、弾性層3におけるシリコーンゴムの含有量が、弾性層3の全質量を基準として、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。
【0026】
弾性層3は、ゴム材料以外の成分を含んでいてもよい。例えば、弾性層3は、導電性付与剤を更に含んでいてもよい。導電性付与剤は、弾性層3に導電性を付与するための成分であればよく、特に限定されるものではない。導電性付与剤としては、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、導電性ポリマー等を含む導電性粉末等を挙げることができる。導電性粉末としては、カーボンブラックを用いることが好ましく、カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)等のファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等を挙げることができる。
【0027】
弾性ローラ1においては、軸体2の軸方向の両端で軸体2の外周面が露出するように弾性層3が形成されている。すなわち、軸体2の外周面上には、弾性層3が設けられていない領域が存在している。しかしながら、本発明における、弾性層3の態様はこのような態様に限定されるものではなく、弾性層3が、軸体2の外周面の全面を覆うように設けられていてもよい。
【0028】
弾性層3は、中実な層であってよく、層の内部に中空を有していないことが好ましい。本明細書において「中実」とは、層の内部に0.1mm/個以上の中空を有しないことを意味する。
【0029】
弾性層3のJIS A硬度は、20以上55以下であることが好ましい。弾性層3のJIS A硬度(JIS K 6301)が上記範囲内であることにより、弾性ローラ1と被当接体(例えば、感光体等の像担持体)との接触面積(ニップ幅)が大きくなるため、転写効率、帯電効率、及び現像効率等の性能が一層向上する傾向にある。また、被当接体に機械的ダメージを与える可能性が低減される。
【0030】
弾性層3の厚さは、被当接体との当接状態において被当接体との均一なニップ幅を確保することができる等の観点から、0.5mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上5mm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において「厚さ」とは、弾性ローラ1の軸方向に垂直な方向の厚さを意味する。弾性層3の外径は、特に限定されない。外径は、例えば、5mm以上20mm以下であってもよい。なお、本明細書において、「外径」とは、弾性ローラ1の軸方向に垂直な断面における外径を意味する。弾性層3の厚さ及び外径は、弾性層3を形成する際に用いるゴム組成物の量を調整する、弾性層3の形成後に弾性層3の外周面を研磨又は研削する、等の方法により調整することができる。
【0031】
弾性層3の外周面には、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、UV処理、イトロ処理、フレーム処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0032】
弾性層3は、以下に示すゴム組成物の硬化物であってもよい。
【0033】
(ゴム組成物)
上記のゴム組成物は、架橋によりシリコーンゴムを構成するゴム成分を含有することが好ましい。このようなゴム成分としては、例えば、オルガノポリシロキサン等のシリコーン生ゴムが挙げられる。
【0034】
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式で表されるオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
RnSiO(4-n)/2
[Rは、置換されていてもよい一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素数は、1以上12以下が好ましく、1以上8以下がより好ましい。複数のRは同一でも異なっていてもよい。nは1.95以上2.05以下の数を示す。]
【0035】
上記式中のRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等、上記の基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換された有機基を挙げることができる。
【0036】
オルガノポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。例えば、上記式中、少なくとも2個のRが上記アルケニル基を有することが好ましい。オルガノポリシロキサンは、ビニル基を有することが更に好ましい。
【0037】
オルガノポリシロキサンの具体例としては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。
【0038】
ゴム組成物は、各種の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、導電性付与剤、鎖延長剤、及び架橋剤等の助剤、付加反応触媒等の触媒、反応制御剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤などを挙げることができる。
【0039】
ゴム組成物は、液状のゴム組成物であってよく、ミラブル型のゴム組成物であってもよい。
【0040】
[表層]
表層4は、弾性ローラ1の最表面に設けられるものである。本発明において、表層4の比誘電率が100Hzにおいて1以上10以下であり、0.01Hzにおいて10以上100以下である。表層4の100Hzと0.01Hzにおける比誘電率を上記の範囲に調整することにより、現像剤中の外添材シリカと弾性ローラ表面の結合力として働く鏡像力及びファンデルワールス力を低減させることができ、フィルミングの発生が良好に抑制される。表層4の比誘電率は、100Hzにおいて好ましくは1以上5以下、0.01Hzにおいて好ましくは7以上120以下である。
【0041】
弾性ローラ1におけるフィルミングの発生を防止するためには、少なくとも、表層4の特性を調整する必要がある。本発明においては、表層4は、下記(A)成分から(D)成分の混合物を塗布して硬化したものである。
(A)両末端変性シリコーンオイル及びイソシアネート化合物からなる組成物を重合したバインダー主剤、
(B)第二のイソシアネート化合物、
(C)粒子径が0.2μm以上10μm以下である、シリコーンゴム粒子及び/又はアクリル粒子、
(D)希釈溶剤。
【0042】
なお、上記の混合物は、加熱硬化される前には液状の状態のものである。
【0043】
((A)バインダー主剤)
バインダー主剤は、両末端変性シリコーンオイル及びイソシアネート化合物からなる組成物を重合させたものである。この組成物は、必要に応じて、更に、片末端ジオール変性シリコーンオイル、ポリオール並びに四フッ化エチレン共重合体等のフッ素樹脂を含んでいてもよい。
【0044】
(両末端変性シリコーンオイル)
両末端変性シリコーンオイルは、いわゆる、反応性シリコーンオイルの1種であり、イソシアネート化合物と重合する特性を有する。よって、両末端変性シリコーンオイルは、アミノ基(1級又は2級アミノ基)、メルカプト基、又はヒドロキシル基により、シリコーン鎖の両末端が変性されていることが好ましい。これらの両末端変性シリコーンオイルは、両末端アミノ変性シリコーンオイル、両末端メルカプト変性シリコーンオイル、両末端カルボキシル変性シリコーンオイル、両末端フェノール変性シリコーンオイル、両末端カルビノール変性シリコーンオイルとして市販されている。
【0045】
ここで、本発明で用いられる好ましい両末端変性シリコーンオイルとしては、以下の一般式(1)で示される両末端変性シリコーンオイルを挙げることができる。
【0046】
【化1】
【0047】
一般式(1)において、Rは、-COCOH、又は-COCH-C(CHOH)を示し、nは、20以下の整数を表す。
【0048】
一般式(1)で示される両末端変性シリコーンオイルの中でも、特に、両末端のRが、-COCOHであり、nが約10であるシリコーンオイルを用いることが好ましい。このようなシリコーンオイルについては、市販のものを適宜入手することができる。
【0049】
なお、一般式(1)においては、ケイ素原子に結合する官能基は、メチル基となっているが、このメチル基が水素原子で置換された両末端変性シリコーンオイルであってもよい。
【0050】
表層4を形成するための混合物に両末端変性シリコーンオイルを含有することにより、表層4に適度な弾性を付与することができるとともに、表層4の電気的特性を調整して、表層4の比誘電率を低下させることができ、フィルミングの発生を有効に抑制することができる。
【0051】
(片末端ジオール変性シリコーンオイル)
片末端ジオール変性シリコーンオイルは、両末端変性シリコーンオイルと同様に、反応性シリコーンオイルであるが、シリコーン鎖の一方の末端に、2つのヒドロキシル基が結合しているものである。通常、両末端変性シリコーンオイルとイソシアネート化合物とを重合させた場合、直鎖状のポリウレタンが生成するが、片末端ジオール変性シリコーンオイルを併用することにより、ポリウレタンに分岐鎖が導入され、弾性ローラ1のナノレベルの微細な粗さを向上させることができる。
【0052】
片末端ジオール変性シリコーンオイルとしては、以下の一般式(2)で示される片末端変性シリコーンオイルを挙げることができる。
【0053】
【化2】
【0054】
一般式(2)において、R’は、-COCH-C(CHOH)を示し、nは、20以下の整数を表す。
【0055】
一般式(2)で示される片末端ジオール変性シリコーンオイルの中でも、特に、nが約10であるシリコーンオイルを用いることが好ましい。なお、一般式(2)においては、ケイ素原子に結合する官能基は、メチル基となっているが、このメチル基が水素原子で置換されたシリコーンオイルであってもよい。
【0056】
本発明において、バインダー主剤の調製のために使用する片末端ジオール変性シリコーンオイルは、両末端変性シリコーンオイル100質量部に対して、1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、2質量部以上4質量部以下であることがより好ましい。両末端変性シリコーンオイルに対する片末端ジオール変性シリコーンオイルの使用量を上記の範囲内のものとすることにより、表層4の表面粗さを調整することにより、現像性能を良好に維持ししつつ、フィルミングを効果的に防止することができる。
【0057】
(イソシアネート化合物)
本発明において、バインダー主剤の調製のために使用するイソシアネート化合物としては、シリコーンオイルに導入された反応性基との反応性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のジイソシアネート、及びこれらのイソシアネートの変性体である、アダクト型、ビュレット型、イソシアヌレート型、アロファネート型等を挙げることができる。これらのイソシアネート化合物の中でも、イソシアヌレート型イソシアネート化合物とアダクト型イソシアネート化合物であることが好ましく、これらを単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。イソシアネート化合物は、その分子鎖が長いほど、より高い柔軟性を有するポリウレタンを生成することができる。
【0058】
本発明において、バインダー主剤の調製のために使用するイソシアネート化合物は、両末端変性シリコーンオイル100質量部に対して、7.78質量部以上23.30質量部以下であることが好ましく、11.67質量部以上19.45質量部以下であることがより好ましい。両末端変性シリコーンオイルに対するイソシアネート化合物の使用量を上記の範囲内のものとすることにより、表層4を形成するための混合物の粘度を好適なものとして、作業性を向上させることができる。
【0059】
(カーボネートポリオール、水添ブタジエンポリオール、フッ素ポリオール)
カーボネートポリオール、フッ素ポリオール、水添ブタジエンポリオールは、上述のイソシアネート化合物や後述する第二のイソシアネート化合物と反応して、ポリウレタンを形成するものである。本発明おいて、これらのポリオールを単独で用いてもよいし、複数のポリオールを組み合わせて用いることもできる。用いるポリオールとしては、カーボネートポリオール、フッ素ポリオールを単独で用いるか、組み合わせて用いることが好ましい。
【0060】
カーボネートポリオール及び/又はフッ素ポリオールは、両末端変性シリコーンオイル100質量部に対して5質量部以上40質量部以下であることが好ましく、15質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。これらのポリオールとしては、市販のものを使用することができる。
【0061】
((B)第二のイソシアネート化合物)
イソシアネート化合物としては、ポリウレタンの調製に通常使用される各種イソシアネート化合物(例えば、芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物)を用いることができる。芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート等を挙げることができる。また、脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアナートメチル(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等を挙げることができる。さらに、脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0062】
本発明において、表層4を形成するために使用する混合液における第二のイソシアネート化合物の使用量は、第二のイソシアネート化合物の反応率が80%以上126%以下、好ましくは95%以上112%以下となるように使用されることが好ましい。
【0063】
((C)シリコーンゴム粒子、アクリル粒子)
表層4を形成するための混合液は、シリコーンゴム粒子及び/又はアクリル粒子を含有する。このシリコーンゴム粒子及びアクリル粒子の粒子径は、0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、0.8μm以上5μm以下であることがより好ましい。シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子の粒子径を上記の範囲内のものとすることにより、弾性ローラ1の表面粗さが適切に維持され、現像剤搬送性が良好に保たれる一方で、解像度を高い水準に維持して、画質の悪化を防止することができる。シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子の粒径は、弾性ローラ1を切断処理した後に、顕微鏡により断面を観察することにより測定することができる。
【0064】
本発明において使用するシリコーンゴム粒子及びアクリル粒子は、100℃以上の温度でも変形又は溶融等しない耐熱性を有することが好ましく、130℃から180℃での耐熱性を有することがより好ましい。これにより、表層4の架橋温度においても、これらのシリコーンゴム粒子及びアクリル粒子が、変形することを防止することができる。シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子の耐熱性は、メルトフローインデクサーにおいて、圧力と熱を与えてもシリコーンゴム粒子やアクリル粒子が溶けて流れ出すことがないことを確認することにより、評価することができる。
【0065】
シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子の硬度は、デュロメータA(瞬時)(JIS K 6253:1997)により測定して20度以上80度以下であることが好ましく、50度以上75度以下であることがより好ましい。シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子の硬度が、上記の範囲内のものであることにより、シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子の破壊や変形による、表層4の摩擦係数の上昇や粘着の発生を効果的に防止できるとともに、表層4の硬度が上がりすぎることによる、表層4におけるクラックや割れの発生を防止することもでき、トナーに過剰なストレスを与えることも防止できる。
【0066】
シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子は、表層4中に存在(埋没)していてもよく、その一部が表層4の表面に突出していてもよい。また、表層4において不均一に分散していてもよく、表層4の表面側に偏在していてもよい。
【0067】
シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子のうち、シリコーンゴム粒子については、ジメチルポリシロキサン等、オルガノポリシロキサン、ポリオルガノシルセスオキサンを架橋した構造が好ましく、アクリル粒子としては、市販のアクリル粒子を使用することができる。
【0068】
なお、シリコーンゴム粒子については、有機基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;β-フェニルエチル基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の1価ハロゲン化炭化水素基;エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基等の反応性基含有有機基から選択される1種又は2種以上の炭素数1以上20以下の1価の有機基から選択される基を有するオルガノポリシロキサン又はオルガノポリシルセスキオキサンから調製することが好ましく、これら、オルガノポリシロキサン又はオルガノポリシルセスキオキサンから調製される粒子を、オルガノアルコキシシランで表面処理した粒子であってもよい。このようなシリコーンゴム粒子としては、例えば、信越化学工業株式会社製の「KMP-597」や、東レ・ダウコーニング株式会社製の「EP-5500」、「EP-2600」、「EP-2601」、「E-2720」、「DY 33-430M」、「EP-2720」、「EP-9215Cosmetic Powder」、「9701Cosmetic Powder」等を使用することができる。
【0069】
シリコーンゴム粒子及び/又はアクリル粒子の使用量は、バインダー主剤100質量部に対して、15質量部以上40質量部以下であることが好ましく、20質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。シリコーンゴム粒子及び/又はアクリル粒子の使用量を、上記使用量の範囲内のものとすることにより、弾性ローラ1の表面粗さが適切に維持され、現像剤搬送性が良好に保たれる一方で、解像度を高い水準に維持して、画質の悪化を防止することができる。
【0070】
((D)希釈溶剤)
希釈溶剤としては、水系溶剤、及び有機系溶剤を使用することができ、求められる乾燥速度に応じて、低沸点溶剤、高沸点溶剤を組み合わせて使用することができる。
【0071】
本発明において、表層4を形成するための混合物においては、固形分濃度が10質量%以上50質量%以下の範囲内であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下の範囲内であることがより好ましい。固形分濃度が低いと、塗布時に液ダレが起こり易く、乾燥に時間がかかるとともに、固形分濃度が高いと、塗布表面のザラツキを生じたり、厚み制御が難しくなったりする。
【0072】
本発明において、希釈溶剤としては、上述のシリコーンゴム粒子やアクリル粒子を膨潤させる希釈溶剤を使うことが好ましい。これにより、混合液中でシリコーンゴム粒子やアクリル粒子が膨潤し、表層4を、はじきや凹みのないものとすることができるとともに、混合液中でのシリコーンゴム粒子やアクリル粒子の沈降を抑制することができる。
【0073】
このような希釈溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ヘプタン、シクロヘキサノン、イソホロン等の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0074】
[接着層]
本発明の弾性ローラ1は、軸体2と弾性層3との間、及び弾性層3と表層4との間に、接着層を備える。ここで、特に弾性層3と表層4の間に設けられる接着層については、接着層の電気的特性を調整することにより、弾性ローラ1としての電気的特性を調整することができ、これにより、現像ローラとしての弾性ローラ1の現像性能を良好に調整することができる。
本発明の弾性ローラ1において、接着層の比誘電率が、100Hzにおいて1以上10以下であり、0.01Hzにおいて1000以上10000以下である。接着層の比誘電率を当該範囲に調整することにより、フィルミングの発生を良好に抑制するために表層の比誘電率を低めに調整したとしても、現像剤を担持又は供給するための静電容量の確保が可能となり、安定的に現像剤を帯電させることができる。このため、印刷時の印字濃度の低下を抑えることができる。接着層の比誘電率は、100Hzにおいて好ましくは4.0以上10.0以下であり、また、0.01Hzにおいて好ましくは2000以上5000以下である。
【0075】
接着層は、有機チタン化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物を含有していることが好ましく、これらの有機金属化合物と、シランカップリング剤とを含有していることがより好ましい。有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物と、シランカップリング剤とを併用することにより、弾性層3の比誘電率を上昇させて、現像性能を良好に維持するとともに、弾性層3と表層4との接着性を良好なものとすることができる。有機チタン化合物としては、アルコキシ基を含有するチタン化合物、チタンキレート化合物等が挙げることができ、有機ジルコニウム化合物としては、アルコキシ基を含有するジルコニウム化合物、ジルコニウムキレート化合物等を挙げることができる。これらの、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物は、市販されているものを適宜使用することができる。
【実施例
【0076】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0077】
<バインダー主剤の調製>
以下に示す材料を混合して、バインダー主剤を調製するための組成物を調製し、これを、100℃から120℃で、4時間から6時間保持して、バインダー主剤を調製した。バインダー主剤を調製するための組成物を調製する際の詳細な配合については、表1に示す。
【0078】
[(A)バインダー主剤を調製するための組成物]
(A1)両末端ヒドロキシル基変性ジメチルシリコーンオイル
(A2)片末端ジオール変性シリコーンオイル
(A3)カーボネートジオール
(A4)四フッ化エチレン共重合体ポリオール
(A5)ポリエステルポリオール
(A6)イソシアネート化合物(アダクト型イソシアネート)
(A7)イソシアネート化合物(イソシアヌレート型イソシアネート)
【0079】
【表1】
【0080】
<表層を形成するための混合液の調製>
バインダー主剤と、下記に示す各材料を混合して、表層を形成するための混合液を調製した。混合液調整の際の詳細な配合については、表2に示した。
【0081】
[(B)第二のイソシアネート化合物]
(B1)イソシアヌレート型イソシアネート
(B2)アダクト型イソシアネート
【0082】
[(C)シリコーンゴム粒子、アクリル粒子]
(C1)シリコーンゴムビーズ(平均粒子径2μm)
(C2)高復元性アクリル微粒子(平均粒子径3μm)
(C3)高復元性アクリル微粒子(平均粒子径10μm)
【0083】
[(D)希釈溶剤]
(D1)酢酸ブチル
【0084】
<接着層>
(E1)有機シランカップリング剤
(E2)有機チタン化合物(チタンオリゴマー)
(E3)有機ジルコニウム化合物(ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート)
【0085】
<実施例及び比較例;現像ローラの作製>
快削鋼SUM23で構成されている軸体(直径7.5mm、長さ274.1mm)の表面にシリコーン系プライマーを塗布した後、ギヤオーブン中で150℃乾燥させた。この操作により、軸体の外周面をプライマー処理した。
【0086】
シリコーンゴムから形成されたゴム組成物を用いた押出成形により、軸体の外周面上にゴム材料からなる弾性体を成形した。なお、押出成形では、シリコーンゴムから形成されたゴム組成物を、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて360℃で5分間加熱し、さらに、ギヤオーブンを用いて200℃で4時間加熱して硬化させた。これにより、プライマー処理された軸体の外周面上にゴム組成物の硬化物からなる弾性層を形成した。弾性層は中実な層であり、弾性層の厚さは4.25mmであった。また、弾性層の抵抗値を、R8340 ULTRA HIGH RESISTANCE METER(ADVANTEST株式会社製)を使用して測定したところ、1.00×10Ωであった。
【0087】
次に、弾性層の外周面をUV処理した。その後、UV処理された弾性層上に、実施例及び比較例の各区分に応じて、表2に示す接着プライマー層を塗布し、次いで、表2に示す混合液をスプレー法によって塗布した。塗布された混合液を150℃から160℃で30分間加熱することにより、弾性層上に表層を形成した。表層の厚さは7μmであった。
【0088】
<評価>
(印字濃度及びフィルミング量の測定)
製造した各現像ローラについて、以下のようにして、印字濃度及びフィルミング量を測定した。用いた画像形成装置は、型番:HL-L2360DN(ブラザー工業株式会社製)であった。この画像形成装置の現像ローラとして、製造した各現像ローラを現像装置内に装着した。次いで、温度23℃湿度55%の条件で、ベタ画像を形成し、印字評価を確認した。4000枚印刷後のフィルミング状況と、4000枚印刷後の画像品質(ベタ印字の初期印字形成部分と終期印字形成部分との濃度段差率)を評価した。濃度測定にはX-Rite社製のX-Rite500分光濃度計を使用した。
【0089】
印字濃度は、下記評価基準により評価した。本試験において、印字濃度は、評価がAであると合格である。
A:濃度段差率が96~100%であり、かつ印字ドットがきれいであった場合
B:濃度段差率が92~95%であり、かつその他の不具合(印字ドットが粗い)があった場合
C:濃度段差率が91%以下であり、かつその他の不具合があった場合
【0090】
トナー付着(フィルミング)は、現像剤の付着量により評価した。具体的には、4000枚印字した後の現像ローラの表面に付着している現像剤を吸引後、フィルミング重量測定ジグに転写した質量を測定した。フィルミング評価については、転写した現像剤の質量で下記基準により評価した。本試験において、フィルミング量は、評価がAまたはBであると合格である。
A:0mg以上0.003mg以下
B:0.003mgより多く0.006mg以下
C:0.006mgより多い
【0091】
(比誘電率の測定)
作製した現像ローラにおける表層及び接着層について、LCRメーター(株式会社NF回路設計ブロック製)を使用して、0.01Hz及び100Hzにおける比誘電率を測定した。
【0092】
評価結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【符号の説明】
【0094】
1 弾性ローラ
2 軸体
3 弾性層
4 表層
図1