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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】エキスパンションジョイントカバー
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
E04B1/68 100Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018088042
(22)【出願日】2018-05-01
(65)【公開番号】P2019194395
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592131663
【氏名又は名称】井上商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】正津 弘喜
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-027712(JP,A)
【文献】特開2007-009449(JP,A)
【文献】特開平07-217006(JP,A)
【文献】特開2012-072602(JP,A)
【文献】実開昭62-007507(JP,U)
【文献】特開2004-293788(JP,A)
【文献】実開昭52-148203(JP,U)
【文献】実開平06-014521(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物のエキスパンションジョイント部のクリアランスを覆いつつ、該クリアランスの大きさの変化に追随して伸縮するエキスパンションジョイントカバーであって、
伸縮可能な複数枚のカバー本体を伸縮方向と交差する方向に連結してなり、
前記カバー本体の継目を跨ぐように連結材を重ねられると共に、カバー本体及び連結材のうちの前記クリアランスを覆う部位に孔を形成してなるボタン孔に、抜け止めを挿入可能な抜け止め孔を先端に形成された軸部を頭部から突出させてなるプッシュボタンの前記軸部を挿入され、前記連結材を介して両側のカバー本体が連結されたことを特徴とするエキスパンションジョイントカバー。
【請求項2】
前記カバー本体及び連結材は、蛇腹状に形成されたことを特徴とする請求項に記載のエキスパンションジョイントカバー。
【請求項3】
伸縮方向における両端部をフレームに取り付けられ、該フレームが前記クリアランスを挟んで互いに対向する両側部位に支持されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のエキスパンションジョイントカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物のエキスパンションジョイント部のクリアランスを覆いつつ、該クリアランスの大きさの変化に追随して伸縮するエキスパンションジョイントカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、複雑な構造の建築物などでは、建築物自体を複数のブロックに分割すると共に、これらをエキスパンションジョイントによって接続して、地震や気温の変化、不同沈下などの影響を吸収することが多い。
【0003】
エキスパンションジョイントは、建築物のブロック同士をその相対変位に追従可能に接続する接続手法であり、建築物のブロック間に、相対変位を吸収可能な大きさのクリアランスを形成してエキスパンションジョイント部とすると共に、壁面などに露出するクリアランスをその両側部位の相対変位に追従可能なエキスパンションジョイントカバーで覆うようにしている。
【0004】
エキスパンションジョイントカバーは、壁面などに露出するクリアランスの長さに合うよう、伸縮方向と交差する方向に連結して所望の長さに設定されることが多い(例えば、特許文献1)。
【0005】
図6に示すように、特許文献1のエキスパンションジョイントカバーは、エキスパンション材101の連結部分に同種素材のシート102を重ね、これらをプライマー及び接着剤を用いて接着することにより、シート102を介して、エキスパンション材101を連結したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-9449(段落0015、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1のエキスパンションジョイントカバーは、連結部分にシート102を重ねて接着した構造であるので、その連結部分がシート102の全体と強固に一体化される。シート102の全体と一体化されることにより、連結部分の剛性が大きくなりやすく、エキスパンションジョイントカバーが伸縮する際、連結部分に力が集中して、シート102の剥がれなどの損傷や、全体のゆがみを生じるおそれがある。
【0008】
これに対し、特許文献1のエキスパンションジョイントカバーでは、エキスパンション材101の貫通孔103に芯材104を挿着して連結部分を補強しており、その分、エキスパンションジョイントカバーの構造が複雑になると共に、その連結に要する工数が多くなりやすい。
【0009】
本発明は、容易に連結するとこができると共に、伸縮による損傷を防止することのできるエキスパンションジョイントカバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るエキスパンションジョイントカバーは、建築物のエキスパンションジョイント部のクリアランスを覆いつつ、このクリアランスの大きさの変化に追随して伸縮するものであり、伸縮可能な複数枚のカバー本体を伸縮方向と交差する方向に連結してなり、カバー本体の継目を跨ぐように連結材を重ねると共に、カバー本体及び連結材のうちのクリアランスを覆う部位に孔を形成してなるボタン孔に、抜け止めを挿入可能な抜け止め孔を先端に形成された軸部を頭部から突出させてなるプッシュボタンの軸部を挿入し、連結材を介して両側のカバー本体を連結したものである。
【0011】
上記構成によれば、カバー本体の継目を跨ぐように連結材を重ねて、それらのボタン孔にプッシュボタンを挿入するだけでカバー本体を連結することができるので、カバー本体に連結材を接着する構造と比較して、その連結に要する工数を少なくすることができる。つまり、接着による連結では、プライマーの塗布及び乾燥の後に接着剤を塗布し、この接着剤が固化するまで、専用の治具を用いて連結材を重ねた状態を維持する必要があるが、このような煩雑な工程を本発明の構成によって省略することができる。
【0012】
さらに、エキスパンションジョイントカバーが伸縮する際に、プッシュボタンで留められている部位を除いて、カバー本体と連結材とのずれを許容できるので、接着構造と比較して、連結部分の剛性を小さくし、連結部分への力の集中を防止することができる。これにより、伸縮による損傷やゆがみを防止することができ、しかも、芯材などを用いて連結部分を補強する必要がない分、エキスパンションジョイントカバーの構造を簡単にすることができると共に、その連結に要する工数をより少なくすることができる。
【0013】
また、カバー本体及び連結材にボタン孔を形成してプッシュボタンを挿入する代わりに、孔のないカバー本体及び連結材にピンを突き通すようにしてもよく、これにより、プッシュボタンを用いた上記の構成を採用することによる効果と同様の効果を奏することができる。
【0014】
すなわち、参考の発明として、建築物のエキスパンションジョイント部のクリアランスを覆いつつ、該クリアランスの大きさの変化に追随して伸縮するエキスパンションジョイントカバーであって、伸縮可能な複数枚のカバー本体を伸縮方向と交差する方向に連結してなり、前記カバー本体の継目を跨ぐように連結材を重ねられると共に、カバー本体及び連結材にピンを突き通され、前記連結材を介して両側のカバー本体が連結されたことを特徴とするエキスパンションジョイントカバーを提供する。
【0015】
また、カバー本体及び連結材を蛇腹状に形成するようにしてもよい。
【0016】
この構成によると、カバー本体及び連結材が伸縮する際、その蛇腹形状の山部及び谷部に歪が集中しやすいが、プッシュボタンを用いた連結構造を採用しているので、カバー本体と連結材とのずれを許容して、山部及び谷部における歪を吸収することができる。つまり、蛇腹状のカバー本体及び連結材を接着すると、山部及び谷部が一体的に歪んで、その接着が剥がれるなどの損傷を生じやすいが、適宜、山部及び谷部から外れた部位をプッシュボタンで連結することにより、山部及び谷部における歪を緩和することができる。
【0017】
また、伸縮方向における両端部をフレームに取り付け、このフレームを、クリアランスを挟んで互いに対向する両側部位で支持するようにしてもよい。
【0018】
この構成によると、例えば、エキスパンションジョイントカバーを、その両端部をフレームに仮止めして、クリアランスの大きさに合うよう伸縮させることができ、その際、プッシュボタンを用いてカバー本体の連結部分の剛性を小さくしているので、伸縮に伴う強い力が仮止め部分に作用して、エキスパンションジョイントカバーがフレームから外れるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によると、伸縮可能なカバー本体の継目を跨ぐように連結材を重ねて、カバー本体及び連結材に形成したボタン孔にプッシュボタンを挿入することにより、連結材を介して両側のカバー本体を連結するようにしている。これにより、複数枚のカバー本体を伸縮方向と交差する方向に容易に連結することができると共に、伸縮による損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るエキスパンションジョイントカバーを有するエキスパンションジョイントの斜視図
図2】エキスパンションジョイントカバーの断面図
図3】エキスパンションジョイントカバーの正面図
図4】エキスパンションジョイントカバーの背面図
図5】プッシュボタンの斜視図
図6】エキスパンションジョイントカバーの別の形態を示す要部断面図
図7】(a)は従来のエキスパンションジョイントカバーの斜視図で、(b)は連結部分の補強構造を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るエキスパンションジョイントカバーを実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
図1図4に示すように、エキスパンションジョイントカバー1は、建築物のエキスパンションジョイント部2のクリアランス3を覆いつつ、クリアランス3の大きさの変化に追随して伸縮するものであり、複数枚のカバー本体4の継目を跨ぐように、背面側に連結材5を重ねると共に、カバー本体4及び連結材5に形成されたボタン孔にプッシュボタン6を挿入することにより、連結材5を介して継目の両側のカバー本体4を連結して、複数枚のカバー本体4を伸縮方向と交差する上下方向に連結したものである。
【0023】
このエキスパンションジョイントカバー1は、伸縮方向における両端部7をフレーム8に取り付けられ、フレーム8がクリアランス3を挟んで互いに対向する両側部位9、10に支持される。
【0024】
カバー本体4は、伸縮可能なよう正面側に突出する山部11と背面側に突出する谷部12とを有する蛇腹状の合成樹脂板とされ、両端の山部11から両端部7が左右に広がり、この両端部7に、背面側に突出してフレーム8に仮止めされる突起部13が形成されている。
【0025】
連結材5は、カバー本体4と同一素材で、カバー本体4の背面側に重なるよう山部14及び谷部15を有する蛇腹状の合成樹脂板とされ、カバー本体4よりも上下方向で幅狭に形成されている。
【0026】
図1図4に示すように、カバー本体4及び連結材5には、左右端及び中央の谷部12を挟んで対をなし、かつ継目を挟んで対をなすよう、1か所に4つのボタン孔が3か所に形成され、各ボタン孔にプッシュボタン6を挿入されて、連結材5を介して継目の両側のカバー本体4が連結される。
【0027】
図5に示すように、プッシュボタン6は、頭部16から突出する軸部17の先端に抜け止め18を挿入する抜け止め孔19を形成した構造とされ、カバー本体4の正面側から各ボタン孔に軸部17を挿入されて、連結材5の背面側において、抜け止め孔19に抜け止め18を挿入されて固定される。
【0028】
図1に示すように、フレーム8は、カバー本体4の突起部13を挿入して仮止めする挿入溝20を有する例えばアルミニウム製のフレーム本体21と、フレーム本体21との間にカバー本体4の両端部7を挟持する例えばアルミニウム製の押え材22とからなり、両側部位9、10に固定されて、エキスパンションジョイントカバー1を支持する。
【0029】
上記構成によれば、カバー本体4及び連結材5のボタン孔にプッシュボタン6を装着するだけでカバー本体4を連結することができ、しかも、プッシュボタン6で離散的に接続するので、伸縮の際に、カバー本体と連結材とのずれを許容でき、連結部分の剛性を小さくし、連結部分への力の集中を防止することができる。
【0030】
また、連結部分の剛性が小さい分、カバー本体4の突起部13を挿入溝20に挿入してフレーム本体21に仮止めし、クリアランス3の大きさに合うよう伸縮させた後、押え材22で固定するまでの間、伸縮に伴う強い力が作用することがなく、仮止めが外れるのを防止することができる。
【0031】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。また、参考の形態として、例えば、図6に示すように、カバー本体4及び連結材5にボタン孔を形成してプッシュボタン6を挿入する代わりに、孔のないカバー本体4及び連結材5にピン23を突き通すようにしてもよい。
【0032】
具体的には、まず、孔のないカバー本体4及び連結材5の所定の位置に、先の尖ったピン23を突き通し、カバー本体4及び連結材5の反対側に配置した例えばスプリングワッシャー24にピン先25を通して、このピン先25を折り曲げて固定すればよい。
【0033】
また、エキスパンションジョイントカバー1の両端部7をフレーム8に取り付けることなく、クリアランス3を挟んで互いに対向する両側部位9、10で支持するようにしてもよい。また、カバー本体4及び連結材5は、伸縮可能なものであればよく、必ずしも蛇腹状に形成する必要はない。
【符号の説明】
【0034】
1 エキスパンションジョイントカバー
2 エキスパンションジョイント部
3 クリアランス
4 カバー本体
5 連結材
6 プッシュボタン
7 両端部
8 フレーム
9、10 両側部位
11 山部
12 谷部
13 突起部
14 山部
15 谷部
16 頭部
17 軸部
18 抜け止め
19 抜け止め孔
20 挿入溝
21 フレーム本体
22 押え材
23 ピン
24 スプリングワッシャー
25 ピン先
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7