(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】シャワーシステム
(51)【国際特許分類】
A47K 3/28 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
A47K3/28
(21)【出願番号】P 2018096602
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 純
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】細田 良造
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-325370(JP,A)
【文献】特開2003-339563(JP,A)
【文献】実開昭47-016743(JP,U)
【文献】特開平06-173305(JP,A)
【文献】特開2001-340251(JP,A)
【文献】特開2007-068588(JP,A)
【文献】登録実用新案第3068030(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106901635(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/28
A47K 13/12
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下両端部が浴室に固定された支持体と、
前記支持体に上下動自在に配置された本体と、
前記本体に支持された左右一対のシャワーアームと、を備え
、
前記左右一対のシャワーアームは、軸線まわりに回転可能に前記本体に支持され、
前記軸線は上方に向かうに従い互いに離間するように傾斜しているシャワーシステム。
【請求項2】
前記支持体は、上下方向に延びる棒状に形成されている請求項1に記載のシャワーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばシャワー浴などに用いられるシャワーシステムとして、下記特許文献1に記載の構成が知られている。このシャワー装置は、椅子にシャワー機能が一体に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のシャワーシステムは、複数の椅子や浴用車椅子に共用できない。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、複数の椅子や浴用車椅子に共用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るシャワーシステムは、上下両端部が浴室に固定された支持体と、前記支持体に上下動自在に配置された本体と、前記本体に支持された左右一対のシャワーアームと、を備えている。
【0007】
支持体の上下両端部が浴室に固定されている。したがって、支持体を浴室に固定した状態で、支持体から独立した複数の椅子や浴用車椅子を適宜、支持体に近づけたり遠ざけたりすることができる。
左右一対のシャワーアームが、本体を介して支持体に固定されている。したがって、例えば、椅子や浴用車椅子上の使用者が左右一対のシャワーアームの間に位置するように、椅子や浴用車椅子を支持体に近づけた上で、シャワーアームからシャワーを噴射することで、使用者に対してシャワー浴を実施することができる。
本体が支持体に上下動自在に配置されている。したがって、シャワーアームを、本体を介して上下動させることができる。これにより、例えば、椅子や浴用車椅子を支持体に近づけたり遠ざけたりするときに、シャワーアームを上方に退避させておき、シャワーアームが椅子や浴用車椅子の移動の邪魔になるのを防止すること等ができる。
以上から、このシャワーシステムによれば、複数の椅子や浴用車椅子に共用することができる。
【0008】
ところで、温水のシャワー浴を目的としてシャワーアームからシャワーを噴射し始めたときであっても、開始直後には、シャワーアーム内に残留していた冷水が噴射され、使用者が冷水を浴びる可能性がある。
しかしながら、このシャワーシステムによれば、使用者が冷水を浴びるのを避けるために、予めシャワーアームからシャワーを一定量、噴射し、かつ、シャワーアームを前述のように退避させておくことができる。その後、シャワーとして冷水ではなく温水が噴射されることが確認されてから、椅子や浴用車椅子を支持体に近づけることができる。これにより、使用者が冷水を浴びることを防止することができる。
【0009】
なお、シャワーアームが立位の使用者に対して上方に位置可能な程度、本体が上昇可能である場合、椅子や浴用車椅子に座った座位の使用者のみならず、立位の使用者に対しても、シャワー浴を実施することができる。
【0010】
前記支持体は、上下方向に延びる棒状に形成されていてもよい。
【0011】
支持体が、上下方向に延びる棒状に形成されている。したがって、例えば、支持体の水平方向の大きさ(浴室における専有面積)を小さく抑えることが可能になり、シャワーシステムの設置位置の自由度を高めること等ができる。例えば、支持体の下端部を浴槽の縁に固定した場合などには、浴槽内で入浴中の使用者に対してシャワー浴を実施することができる。この場合、浅い浴槽であっても温浴効果を得やすくなることから、例えば、浴槽を低くして高齢者が跨ぎ易い浴槽を実現すること等ができる。
【0012】
前記左右一対のシャワーアームは、軸線まわりに回転可能に前記本体に支持され、前記軸線は上方に向かうに従い互いに離間するように傾斜していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の椅子や浴用車椅子に共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態のシャワーシステムにおいて、両シャワーアームが使用状態のときの斜視図である。
【
図2】
図1に示すシャワーシステムの側面図である。
【
図3】
図1に示すシャワーシステムの正面図である。
【
図4】
図1に示すシャワーシステムにおいて、両シャワーアームが退避状態のときの側面図である。
【
図5】
図4に示すシャワーシステムの正面図である。
【
図6】
図1にシャワーシステムにおいて、両シャワーアームが跳ね上げ状態のときの側面図である。
【
図7】
図1に示すシャワーシステムを用いて使用者がシャワーを浴びている状態を説明する斜視図である。
【
図8】
図1に示すシャワーシステムにおいて、立位の使用者がシャワーを浴びることができる程度、本体を上昇させた状態を示す斜視図である。
【
図9】
図1に示すシャワーシステムを浴槽に配置した状態を示す斜視図である。
【
図10】
図1に示すシャワーシステムの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1から
図9を参照し、本発明の一実施形態に係るシャワーシステム1を説明する。
例えば、身体機能が低下した高齢者などにとって、浴室2における浴槽3の内外の移動が困難な場合がある。この場合、浴槽3内で温浴するのに代えて、浴室2における洗い場でシャワーによって身体を温めるシャワー浴を実施することがある。シャワー浴を実施するに際し、シャワーシステム1を利用することで、例えば、一般的なシャワーヘッドを利用する場合に比べて、身体を温め易くすることができる。
【0016】
図1に示すように、シャワーシステム1は、上下両端部が浴室2に固定された支持体10と、支持体10に上下動自在に配置された本体42と、本体42に回動自在に支持された左右一対のシャワーアーム43A,43Bと、を備えている。
支持体10は、一対の支持部材10aを備えている。各支持部材10aは、上下方向Zに延びる棒状に形成されている。一対の支持部材10aは、互いに平行に配置されている。
【0017】
一対の支持部材10aの上下両端部は、浴室2の床パネル2a(床面)および天井パネル2b(天井)それぞれに固定されている。図示の例では、各支持部材10aが、上下方向Zに伸縮自在に形成され、かつ伸縮された任意の長さを保持可能に形成されている。各支持部材10aは、床パネル2aと天井パネル2bとの間で、床パネル2aと天井パネル2bとの間の距離よりも若干長く延ばされた状態でその長さを保持している。これにより、各支持部材10aの上下両端部が床パネル2aや天井パネル2bに突き当てられて固定されている。
【0018】
なお図示の例では、各支持部材10aの上下両端部と、床パネル2aや天井パネル2bと、の間には、緩衝板10bが配置されている。緩衝板10bは、各支持部材10aの上下両端部と、床パネル2aや天井パネル2bと、が強く当たりすぎることを抑えて、各支持部材10aからの荷重が床パネル2aや天井パネル2bの特定箇所に集中して作用することを緩和する。
【0019】
本実施形態では、一対の支持部材10aは、床パネル2aと天井パネル2bとを接続する壁パネル2c(側壁)に対して平行に並んでいる。以下では、水平方向のうち、一対の支持部材10aが並ぶ方向を左右方向X(第1方向)といい、左右方向Xに直交する方向を前後方向Y(第2方向)という。前後方向Yのうち、支持体10に対して壁パネル2cが位置する方向を後側Y2といい、その反対側を前側Y1という。左右方向Xのうち、使用者Pが前側Y1を向いたときの右側を右側X1といい、左側を左側X2という。
【0020】
支持部材10aの前方、少なくとも50cm四方の領域には、カウンターや水栓がない。具体的には、支持部材10a後方側の壁パネル2cには、カウンターと水栓が設けられていない。よって、後述するように支持部材10aの前方に椅子11を置くことができる。
【0021】
一対の支持部材10aは、本体42を上下方向Zに貫通している。本体42は、支持体10に対して、上下動が許容された第1の状態と、上下動が規制された第2の状態と、を切換え可能に装着されている。この切換えを実現する図示しない切換え機構には、公知の構成を採用することができる。例えば、支持体10に上下方向Zに間隔をあけて複数の第1開口を形成しておき、かつ、本体42に第2開口を形成しておき、複数の第1開口のうちの1つの第1開口に第2開口を位置合わせした状態で、これらの両開口に共通してピン部材を差し込むことで、第2の状態にする構成を採用してもよい。
【0022】
本体42の内部には、図示しない通水路が設けられている。通水路の一端は流入口であり、通水路の他端は流出口である。流入口は本体42に後面に設けられている。通水路は流入口から流出口に向けて分岐しており、通水路の途中には2又分岐が設けられている。流出口はシャワーアーム43A,43Bにつながっている。
前記流入口には接続部44が設けられている。接続部44は、例えば、ホース103等が着脱可能に接続されるコネクタである。接続部44は、本体42の後面に固定されている。接続部44には、ホース103を介して外部から水Wが供給される。接続部44に供給された水Wは、本体42内(通水路内)を通して、シャワーアーム43A,43Bに供給される。なお、本明細書における水Wは、温度が高い、低いによらない一般的な水のことを意味し、常温の水、及びシャワー等に用いられる温度の湯等を含む意味である。
【0023】
一対のシャワーアーム43A,43Bは、鈍角で曲がるへの字状の管体である第1シャワーアーム(第1腕部)43A及び第2シャワーアーム(第2腕部)43Bを備えている。シャワーアーム43A,43Bの内部には、軸方向に沿って通水路が形成されている。なお、
図1に示すシャワーアーム43A,43Bは、後述する使用状態P1A,P1Bである。
シャワーアーム43A,43Bは、本体42を左右方向Xに挟むように配置されている。第1シャワーアーム43Aは本体42の右側X1に配置され、第2シャワーアーム43Bは本体42の左側X2に配置されている。
【0024】
図2及び
図3に示すように、第1シャワーアーム43Aは、先端部材(先端部)46Aと、連結部材(連結部)47Aと、基端部材(基端部)48Aと、を備えている。
先端部材46Aは、先端部が封止された管状に形成されている。先端部材46Aは、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等の比較的硬質の材料で形成されている。先端部材46Aは、前方Y1に向かうに従い漸次、下方に向かうように傾斜している。
図7に示すように、先端部材46Aには、先端部材46Aの壁部を貫通する吐出孔50Aが形成されている。吐出孔50Aは、先端部材46Aの内部、すなわち通水路に供給された水Wを外部に吐出する。
【0025】
図2及び
図3に示すように、連結部材47Aは、円筒状に形成され、前方Y1と上方との間の向きに向かって凸となるように湾曲している。連結部材47Aは、例えば、エラストマー、軟質ウレタン、ゴム等の比較的軟質の材料で一体に形成されている。
基端部材48Aは、管状に形成されている。基端部材48Aには、先端部材46Aと同様に吐出孔50Aが形成されていることが好ましい。基端部材48Aは、例えば、先端部材46Aと同一の材料で形成されている。
【0026】
上記第1シャワーアーム43Aでは連結部材47が屈曲形状であり、第1シャワーアーム43Aの全体がL字状に折れた形状である。また、先端部材46A及び基端部材48Aよりも、連結部材47Aの方が柔らかく、変形させやすい。
【0027】
第1シャワーアーム43Aの構成と第2シャワーアーム43Bの構成とは、シャワーアーム43A,43Bの間に左右方向Xに直交するように規定される基準面に対して面対称である。第2シャワーアーム43Bのうち第1シャワーアーム43Aに対応する構成を、第1シャワーアーム43Aと同一の数字に、英大文字「A」に代えて英大文字「B」を付加することで示す。これにより、第2シャワーアーム43Bについて、第1シャワーアーム43Aと重複する説明を省略する。
【0028】
図1に示すように、第2シャワーアーム43Bは、第1シャワーアーム43Aの先端部材46A、連結部材47A、基端部材48Aと面対称に構成された先端部材46B、連結部材47B、基端部材48Bを備えている。
シャワーアーム43A,43Bの基端部材48A,48B間の距離は、使用者Pの肩幅程度の長さであることが好ましい。
【0029】
第1シャワーアーム43Aは、本体42に対して軸線70A周りに回転可能に支持されている。軸線70Aは、
図3に示すシャワーシステム1の正面視において、上方に向かうに従い漸次、右側X1に向かうように傾斜している。
第2シャワーアーム43Bは、本体42に対して軸線70B周りに回転可能に支持されている。軸線70Bは、
図3に示すシャワーシステム1の正面視において、上方に向かうに従い漸次、左側X2に向かうように傾斜している。
【0030】
軸線70A,70Bは、上方に向かうに従い互いに離間するように、上下方向Zに対して互いに逆方向に傾いている。言い換えれば、軸線70A,70Bは、上下方向Zに沿う基準線L3に対して互いに逆方向に傾いている。例えば、基準線L3と軸線70Aとが上方になす角度θAは、60°程度である。
【0031】
図1から
図3に示すシャワーアーム43A,43Bは使用状態P1A,P1Bである。
図3に示す正面視において、シャワーアーム43A,43Bが使用状態P1A,P1Bであるときに、シャワーアーム43A,43Bはそれぞれ上下方向Zに沿って延びるように配置されている。また、
図2に示すように、使用状態P1A,P1Bであるシャワーアーム43A,43Bは、支持体10よりも前方Y1に向かって延びるように配置されている。
図7に示すように、シャワーアーム43A,43Bの吐出孔50A,50Bは、シャワーアーム43A,43Bが使用状態P1A,P1Bであるときに、水Wが後方Y2と下方との間の斜めの向き等に吐出するように形成されている。
【0032】
シャワーアーム43A,43Bは、使用状態P1A,P1Bにおいて、自身の位置(軸線70A,70B周りの回転角度)を保持可能に構成されている。シャワーアーム43A,43Bは、使用状態P1A,P1Bにおいて更なる軸線70A,70B周りの回転力が自身に加えられたときに、位置の保持が解除されて他の状態に移行する。
【0033】
シャワーアーム43A,43Bが使用状態P1A,P1Bのときから、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bが下がると、シャワーアーム43A,43Bは
図4及び
図5に示す退避状態P0A,P0Bになる。退避状態P0A,P0Bであるときのシャワーアーム43A,43Bは、使用者Pがシャワーアーム43A,43Bを使用しないときの状態である。
図5に示すように、退避状態P0A,P0Bであるときのシャワーアーム43A,43Bは、下方に向かうに従い漸次、互いに左右方向Xに離間するように配置されている。シャワーアーム43A,43Bは、全体としてハ字状(上下を逆にしたV字状)である。第1シャワーアーム43Aは、下方に向かうに従い漸次、右側X1に向かうように傾斜している。一方で、第2シャワーアーム43Bは、下方に向かうに従い漸次、左側X2に向かうように傾斜している。
【0034】
一方で、シャワーアーム43A,43Bが使用状態P1A,P1Bのときから、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bが上がると、
図6に示す跳ね上げ状態P2A,P2Bになる。跳ね上げ状態P2A,P2Bは、使用者Pが使用状態P1A,P1Bで使用していたシャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bを上方に移動させた(跳ね上げた)状態である。
【0035】
次に、以上のように構成されたシャワーシステム1の使用方法について説明する。なお以下に示す使用方法は一例であり、他の方法により使用することもできる。また以下では、このシャワーシステム1に対して、外部から椅子11を近づけて使用する場合について説明する。このシャワーシステム1では、支持体10の前方Y1に椅子11を配置した状態で、使用者Pがシャワーアーム43A,43Bからのシャワーを浴びることができる。椅子11には、公知の浴用椅子を用いることができる。椅子11は、浴室等でも使用可能なように、耐水性を有することが好ましい。椅子11は、樹脂とアルミなどの金属とからできている。
【0036】
まず、支持体10に対して本体42を上下動させ、シャワーアーム43A,43Bの高さを調整するとともに、シャワーアーム43A,43Bを退避状態P0A,P0Bにする。この際、シャワーアーム43A,43Bを退避状態P0A,P0Bから使用状態P1A,P1Bにしたときにシャワーアーム43A,43Bが椅子11に座る使用者Pの上方に位置するように、シャワーアーム43A,43Bの高さを調整する。
【0037】
図示しない水栓にホース103を接続し、このホース103を、接続部44に接続する。水栓から出る水Wの温度を、例えば35℃~40℃程度の所望の温度に設定し、水栓を開ける。水栓から流れ出る水Wは、当初は15℃~25℃程度の常温である。水栓から流れ出る水Wは、ホース103、接続部44、本体42内を通して、シャワーアーム43A,43Bに供給され、吐出孔50A,50Bから外部に吐出する。退避状態P0A,P0Bでのシャワーアーム43A,43Bの吐出孔50A,50Bは後方Y2を向いているため、常温の水Wが使用者Pに掛かることが抑制される。
【0038】
使用者Pは椅子11に座る。一定の時間が経過すると、吐出孔50A,50Bから吐出する水Wの温度が所望の温度になる。
図7に示すように、使用者Pは、シャワーアーム43A,43Bの先端部材46A,46Bを上げて、シャワーアーム43A,43Bを使用状態P1A,P1Bにする。シャワーアーム43A,43Bの連結部材47A,47Bが柔らかい場合には、使用者Pはシャワーアーム43A,43Bの基端部材48A,48Bを持ち上げてもよい。
【0039】
使用者Pは、シャワーアーム43A,43Bの吐出孔50A,50Bから吐出する水Wを浴び、シャワーを浴びる。なお、使用者Pは、シャワーアーム43A,43Bを退避状態P0A,P0Bにして、自身の身体を洗ってもよい。この際に、シャワーアーム43A,43Bが退避状態P0A,P0Bであるため、シャワーアーム43A,43Bが身体を洗う作業の支障になりにくい。
使用者Pは、シャワーを浴び終えると、シャワーアーム43A,43Bを退避状態P0A,P0Bにする。浴室2の水栓を閉じる。
【0040】
仮に、シャワーアーム43A,43Bを使用状態P1A,P1Bにしてシャワーを浴びている使用者Pが、緊急事態が発生したためにシャワーシステム1からとっさに脱出する場合には、以下の手順を行う。
使用者Pは、手等により、使用状態P1A,P1Bであるシャワーアーム43A,43Bを持ち上げる(跳ね上げる)。使用者Pはシャワーアーム43A,43Bにほぼ干渉することなく椅子11から立ち上がり、シャワーシステム1から脱出する。また、使用者Pがシャワーシステム1から脱出する際に、シャワーアーム43A,43Bの連結部材47A,47Bを変形させ、先端部材46A,46Bを所望の方向に曲げてもよい。
以上のように、緊急事態が発生した場合でも、使用者Pはシャワーシステム1から容易に脱出することができる。
【0041】
なお、前述のシャワーシステム1や水栓を操作する使用者Pは、実際にシャワーを浴びてシャワーシステム1を使用する使用者P(以下、実際の使用者Pと言う)に限定されず、実際の使用者P(被介助者)の補助者としてシャワーシステム1を使用する介助者であってもよい。
すなわち、実際の使用者Pがシャワーシステム1等を操作するのが困難である場合には、介助者がシャワーシステム1の操作等を行う。
また、椅子11に代えて浴用車椅子を近づけることも可能である。この場合、使用者Pが浴用車椅子に乗った状態で、介助者が浴用車椅子を支持体10に近づけてもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係るシャワーシステム1によれば、支持体10の上下両端部が浴室2に固定されている。したがって、支持体10を浴室2に固定した状態で、支持体10から独立した複数の椅子11や浴用車椅子を適宜、支持体10に近づけたり遠ざけたりすることができる。
左右一対のシャワーアーム43A,43Bが、本体42を介して支持体10に固定されている。したがって、例えば、椅子11や浴用車椅子上の使用者Pが左右一対のシャワーアーム43A,43Bの間に位置するように、椅子11や浴用車椅子を支持体10に近づけた上で、シャワーアーム43A,43Bからシャワーを噴射することで、使用者Pに対してシャワー浴を実施することができる。
本体42が支持体10に上下動自在に配置されている。したがって、シャワーアーム43A,43Bを、本体42を介して上下動させることができる。これにより、例えば、椅子11や浴用車椅子を支持体10に近づけたり遠ざけたりするときに、前述した使用方法とは異なり、シャワーアーム43A,43Bを上方に退避させておき、シャワーアーム43A,43Bが椅子11や浴用車椅子の移動の邪魔になるのを防止すること等ができる。
以上から、このシャワーシステム1によれば、複数の椅子11や浴用車椅子に共用することができる。
【0043】
ところで、温水のシャワー浴を目的としてシャワーアーム43A,43Bからシャワーを噴射し始めたときであっても、開始直後には、シャワーアーム43A,43B内に残留していた冷水が噴射され、使用者Pが冷水を浴びる可能性がある。
しかしながら、このシャワーシステム1によれば、使用者Pが冷水を浴びるのを避けるために、予めシャワーアーム43A,43Bからシャワーを一定量、噴射し、かつ、シャワーアーム43A,43Bを前述のように退避させておくことができる。その後、シャワーとして冷水ではなく温水が噴射されることが確認されてから、椅子11や浴用車椅子を支持体10に近づけることができる。これにより、使用者Pが冷水を浴びることを防止することができる。
【0044】
なお
図8に示すように、シャワーアーム43A,43Bが立位の使用者Pに対して上方に位置可能な程度、本体42が上昇可能である場合、椅子11や浴用車椅子に座った座位の使用者Pのみならず、立位の使用者Pに対しても、シャワー浴を実施することができる。
【0045】
支持体10が、上下方向Zに延びる棒状に形成されている。したがって、例えば、支持体10の水平方向の大きさ(浴室2における専有面積)を小さく抑えることが可能になり、シャワーシステム1の設置位置の自由度を高めること等ができる。例えば
図9に示すように、支持体10の下端部を浴槽3の縁に固定した場合などには、浴槽3内で入浴中の使用者Pに対してシャワー浴を実施することができる。この場合、浅い浴槽3であっても温浴効果を得やすくなることから、例えば、浴槽3を低くして高齢者が跨ぎ易い浴槽3を実現すること等ができる。
【0046】
左右一対のシャワーアーム43A,43Bが、共通の1つの本体42に支持されている。したがって、1つの本体42を上下動させることで、一対のシャワーアーム43A,43Bを一体に上下動させることが可能になり、例えば、操作性を向上させること等ができる。
【0047】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0048】
例えば、
図10に示す変形例に係るシャワーシステム1Aのように、シャワーシステム1Aが、支持体に上下動自在に配置された座部4を備えてもよい。座部4は、支持体10に上下動自在に配置されている。座部4は、本体42よりも下方に位置している。座部4の上面(座面)には使用者Pが着座可能である。なお座部4が、支持体10によって、左右方向Xに延びる回転軸回りに回転可能に支持されていてもよい。この場合、座部4を上方に向けて回転させて座部4の座面を支持体10に対して前後方向Yに対向させる構成を実現することができる。その結果、座部4を使用しないときには、座部4の専有面積を小さく抑えることができる。
【0049】
支持部材10aが棒状に形成されていなくてもよい。支持部材10aが1つや3つ以上であってもよい。
支持部材10aは必ずしも浴室2の上下端に固定されている必要はない。例えば、支持部材10aの上端が天井パネル2bに固定されているが、壁パネル2cの上端に固定されていてもよい。支持部材10aの下端が床パネル2aに固定されているが、壁パネル2cの下端に固定されていてもよい。
浴室2は、ユニットバスでもよいし、在来工法による浴室であってもよい。
【0050】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1、1A シャワーシステム
2 浴室
10 支持体
42 本体
43A、43B シャワーアーム
L3 基準線