(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】高分子材料のナノファイバーの積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
D01D 5/08 20060101AFI20220705BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
D01D5/08 C
D04H3/16
(21)【出願番号】P 2018146169
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】512057530
【氏名又は名称】株式会社タマル製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100111442
【氏名又は名称】小原 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100145986
【氏名又は名称】佐藤 久美枝
(72)【発明者】
【氏名】田丸 勝
(72)【発明者】
【氏名】川久保 博
(72)【発明者】
【氏名】梁 世憲
(72)【発明者】
【氏名】田丸 裕
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-047474(JP,A)
【文献】特開2017-150112(JP,A)
【文献】特公昭48-006646(JP,B1)
【文献】特開2013-185272(JP,A)
【文献】特開2001-098455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-13/02
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン又はナイロン又はポリエチレンテレフタレート(PET)から選択される長分子配列を有する高分子材料を高温加熱して溶融し、溶融した前記高分子材料をギアポンプによって加圧して供給し、途中に大容量のバッファー貯留部を介して加熱部を有する溶融保持通路から紡糸ノズルの中心吐出口から紡糸し、
該紡糸ノズルの前記中心吐出口を囲むように該中心吐出口と同軸にリング状の熱風吹出口を設け、
ノズル本体の上流側の端部には外側に突出した鍔部を設け、ノズル本体をノズル支持体の下流の内軸孔から挿入して、前記鍔部をノズル支持体の先端部に設けた突起部に嵌合し、前記熱風吹出口よりも突出させ、
該熱風吹出口で前記高分子材料を高温の溶融状態を維持しながら前記熱風吹出口の熱風で吹き飛ばして延伸させ、
前記熱風吹出口への熱風吹出口通路の内壁を斜行させ、熱風吹出口の吹出方向を前記中心吐出口の中心軸線に対して鋭角15°~30°の角度とするようにし、さらに、延伸状態を維持するために紡糸ノズルの先端に所定の内径と長さのノズル風洞で囲み、
該吹き飛ばされた高分子材料のナノファイバーを捕集する捕集部を設けたことを特徴とする高分子材料のナノファイバーの積層体の製造方法。
【請求項2】
前記紡糸ノズルのノズル本体はセラミック又はルビーとして先端の吐出口のノズル内径は0.10mmから0.18mmとしたことを特徴とする請求項1に記載される高分子材料のナノファイバーの積層体の製造方法。
【請求項3】
前記ノズル風洞の内径は、1.4cmから2.5cmとし、長さを4.0cmから10.0cmとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載される高分子材料のナノファイバーの積層体の製造方法。
【請求項4】
前記加熱部を有する溶融保持通路
は、紡糸ノズルの
上流側の直前に配置したことを特徴とする請求項1から3の記載から
選択される高分子材料のナノファイバーの積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料のナノファイバーの積層体の製造方法に関し、特に、溶媒や高電圧を使用しないで、加熱溶融による高分子材料のナノファイバーの積層体を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、一般的に直径が1ミクロン(=1,000nm)以下の太さの繊維であると定義されるナノファイバーが開発され、ナノファイバーの製造法としては、ESD(Electro-Spray Deposition)法、或いは、エレクトロ・スピンニング法と呼ばれる技法が最も注目され、その技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
このESD法によるナノファイバーの製造は、先ず溶剤で溶解した各種生体高分子やポリマー(以下、単に「高分子」ということもある。)溶液をシリンジに充填し、シリンジに装着されているニードル型電極と、ナノ繊維を堆積させるコレクター電極との間に、高圧直流電源から数kV~数十kVの直流高電圧を印加して、ニードル型電極とコレクター電極との間に強い電界場を発生させる。
この環境下で、ニードル型電極から紡糸溶液をコレクター電極に向けて放出すると、高分子を溶解していた溶剤等は電界場中で瞬間的に蒸発し、高分子は凝固しながらクーロン力で延伸され、ナノオーダーのファイバーが、室温、大気圧下というおだやかな条件で形成される。
【0003】
ナノファイバーにおいては、ナノ構造による特異な機能発現が期待でき、例えば、ナノファイバーは、同一体積での表面積が通常の繊維に比べ非常に大きいことから、従来の繊維が持つポリマー固有の性質の他に、吸着特性や接着特性などの新機能が発現し、従来にない新素材の開発が期待できる。警察官、消防士、医師、看護師が着用する多機能な特殊な防護服の研究が始められており、軍需用途は、従来より軽量で、かつ、従来にない機能を持つ軍服、ナノメートル単位の集まりで、異なる機能をもつ積層新素材の開発が進んでいる。さらに、特許文献4に示すように、ナノファイバーで作ったフィルターは、繊維の占有面積が小さい割に空間を大きくすることができるので、低圧力損失で高捕集効率の良い特性が期待できることから、エアフィルターやマスク等が開発され、また、ナノファイバーを応用したバイオケミカルハザード防御用超軽量高機能防御服やナノファイバーを培地にした再生医療の開発も活発に行われている。
【0004】
従来における合成繊維のマイクロオーダーの製造法として、非特許文献1には、前掲のエレクトロ・スピンニング法の他に、現在、海島複合紡糸法、低粘度の溶融ポリマーを吹き飛ばすメルトブロー紡糸法、ポリマー溶液を急激に膨脹させてポリマーを吹き飛ばしながら固化・繊維化させるフラッシュ紡糸法が開発されていることが開示されている。
ところで、高分子繊維のナノファイバーを製造するには、開発が進んでいる前掲のエレクトロ・スピンニング法においては、ポリプロピレンを溶剤に溶かして、低粘度にして使用しなければならないが、ポリプロピレン(PP)については適当な溶剤がないので、溶融だけで紡糸しなければならない。
この溶融だけの極細繊維の製造方法として、上記の非特許文献1には、溶液に溶かして紡糸する方法としてポリマーブレンド紡糸法があり、これは2種のポリマーをブレンドしておき、これを繊維化した後に、海ポリマーを溶出する極細紡糸法であり、μmが限界とされている。
また、非特許文献2には、高電圧を印加するエレクトロ・スピンニング法によって、ポリプロピレン(PP)の繊維製作を試みたが、平均直径が1μm以下の繊維が得られないことが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、ポリプロピレンを加熱溶融後にノズルから吐き出させ、加熱ガスを噴射させ細化させる、ポリプロピレン極細繊維の製造方法が開示されているが、0.4μm(実施例1)程度しか得られない。
また、特許文献3には、溶融樹脂をノズルから押しだし、周囲に溶融樹脂の押し出し方向に向けて1次熱風を吹き付けて繊維状にする溶融紡糸方法が開示され、1次熱風の外側に外気を遮断するエアカーテン状の2次熱風を吹き出すことが開示されている。
更に、特許文献4は、本発明者らが開発したポリプロピレン等の高分子材料のナノファイバー積層体における製造方法であるが、紡糸ノズルの中心吐出口の先端より更に下流に熱風吹出口を包むように延びる熱風収束円筒部を設け、この熱風収束円筒部は、紡糸ノズルの中心吐出口の先端より更に下流に15mmから30mmまで延びるようにしたポリプロピレンのナノファイバー積層体の製造方法を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-127234号公報
【文献】特開昭63-006107号公報
【文献】特開2011-241510号公報
【文献】特開2013-185272号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】SEN'I GAKKAISHI(繊維と工業)Vol.63,No.12(2007)423~425P[溶融紡糸型ナノファイバーの開発]越智隆志
【文献】SEN'I GAKKAISHI(繊維と工業)Vol.64,No.2(2008)81~84P[エレクトロ・スピンニング法(溶融法)]小杉信男・島田直樹
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、エレクトロ・スピンニング法によるナノファイバーの製造は開発されているものの、高分子材料の溶媒は引火性のものが多く、エレクトロ・スピンニング法では高電圧を取り扱うことから、発火等を防止する構造にしなければならす、取り扱いがやっかいであった。特に、適当な溶媒(溶液)がないポリプロピレン(PP)についてはエレクトロ・スピンニング法のポリプロピレン(PP)では、満足な結果が得られていないといった問題点があった。
本発明は、前述の問題点に鑑みてなされたもので、高電圧を使用せず、また、溶媒を用いず、加熱溶融だけで高分子材料のナノファイバー積層体の製造方法を提供しようとするものであり、特に、適当な溶媒(溶液)がないポリプロピレン(PP)についても、従来のエレクトロ・スピンニング法のポリプロピレン(PP)のように高電圧にする紡糸方法ではなく、高電圧を使用しないでより均一なポリプロピレン(PP)のナノファイバー積層体の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、ポリプロピレン又はナイロン又はポリエチレンテレフタレート(PET)から選択される長分子配列を有する高分子材料を高温加熱して溶融し、溶融した前記高分子材料をギアポンプによって加圧して供給し、途中に大容量のバッファー貯留部を介して加熱部を有する溶融保持通路から紡糸ノズルの中心吐出口から紡糸し、該紡糸ノズルの前記中心吐出口を囲むように該中心吐出口と同軸にリング状の熱風吹出口を設け、ノズル本体の上流側の端部には外側に突出した鍔部を設け、ノズル本体をノズル支持体の下流の内軸孔から挿入して、前記鍔部をノズル支持体の先端部に設けた突起部に嵌合し、前記熱風吹出口よりも突出させ、該熱風吹出口で前記高分子材料を高温の溶融状態を維持しながら前記熱風吹出口の熱風で吹き飛ばして延伸させ、前記熱風吹出口への熱風吹出口通路の内壁を斜行させ、熱風吹出口の吹出方向を前記中心吐出口の中心軸線に対して鋭角15°~30°の角度とするようにし、さらに、延伸状態を維持するために紡糸ノズルの先端に所定の内径と長さのノズル風洞で囲み、該吹き飛ばされた高分子材料のナノファイバーを捕集する捕集部を設けたことを特徴とする高分子材料のナノファイバーの積層体の製造方法である。
請求項2の発明は、請求項1に記載される高分子材料のナノファイバーの積層体の製造方法において、前記紡糸ノズルのノズル本体はセラミック又はルビーとして先端の吐出口のノズル内径は0.10mmから0.18mmとしたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載される高分子材料のナノファイバーの積層体の製造方法において、前記ノズル風洞の内径は、1.4cmから2.5cmとし、長さを4.0cmから10.0cmとしたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1から3の記載から選択される高分子材料のナノファイバーの積層体の製造方法において、前記加熱部を有する溶融保持通路は、紡糸ノズルの上流側の直前に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)多くの高分子材料に適用可能であり、紡糸ノズルの先端の中心吐出口は耐熱性があり変形の少ないセラミック又はルビーとしたので、高温加熱した高分子材料を長時間使用しても紡糸ノズルに変形がなく、長分子配列を有する紡糸する高分子材料のナノファイバーにも変形がなく、均一に高分子材料のナノファイバーの直径が維持でき、紡糸ノズルの先端の中心吐出口はセラミック又はルビーにおいてノズル内径を0.15mmとしたので、超極細のポリプロピレンナノファイバーを長時間連続して製造することが可能となる。
また、紡糸ノズルと高分子材料を供給するギアポンプとの間に大容量のバッファー貯留部を設けたので、ギアポンプの最低供給量よりも更に低供給量の高分子材料を一定状態で供給することが可能となる。
また、紡糸ノズルの先端に所定の長さのノズル風洞で囲んだので、高分子材料の熱風による延伸領域が長くなるので、より細い高分子材料のナノファイバーの製造が可能となる。
さらに、紡糸ノズルの中心吐出口を囲むように該中心吐出口と同軸にリング状の紡糸ノズル先端の中心吐出口を熱風吹出口よりも突出させたので、熱風が乱流とならず、高分子材料の熱風による延伸を整然と行うことができる。
前記熱風吹出口の吹出方向を中心吐出口の中心軸線に対して15°~30°の角度としたので、溶融高分子材料(N)との接触力を適切に作用し、溶融した高分子材料(N)に対して延伸作用が効率的に作用する。
なお、従来のように高電圧を使用することなく、溶媒(溶剤)を用いることなしに加熱溶融だけで製造するので危険性が少なく、さらに引火性の溶媒(溶剤)液を一切使用しないことと相俟って、取り扱いが極めて容易となる。
また、従来のようなエレクトロ・スピンニング法ではないので、高価な高電圧を用いなくてすみ、また危険でなく、さらにナノファイバーに静電気等が帯電していないので、無理なく捕集帯から離脱して、所望の基材に移すことができ、所望の基材として通気性のある基材は勿論のこと、通気性の小さな不織布や、或いは、通気性のないフィルムを基材として用いることができる。
このように、熱だけで溶融するので、危険で有害な溶媒を使用しないばかりか、高電圧を使用しないので、長分子配列を有する高分子材料のナノファイバー積層体を安価で大量生産が可能となる。
請求項2の発明によれば、セラミック又はルビーの紡糸ノズルは極小部材であるが、ネジ等ではなく鍔部としたので加工が可能であり確実にノズル支持体に固定できる。
請求項3の発明によれば、ノズル風洞の内径は、1.4cmから2.5cmとし、長さを4.0cmから10.0cmとしたので、紡糸ノズルの中心吐出口における周囲の高温が維持され、高分子材料の吐出口後での高分子材料の延伸が長い範囲で続行される。
請求項4の発明によれば、加熱部を有する溶融保持通路は、紡糸ノズルの上流側の直前に配置したので、溶融高分子材料の溶融状態を紡糸状態まで維持することができ、均一で超極細の溶融高分子のナノファイバーの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例における高分子材料のナノファイバー積層体の製造方法の概略図、
【
図2】
図1の実施例1の紡糸ノズルと高熱風吹出ノズとノズル風洞の断面図、
【
図3】
図2の紡糸ノズル及びその先端部分の高熱風吹出ノズの拡大図、
【
図4】
図4(a)は、熱風導入溝133が8本の溶融樹脂導入管13の側面図、
図4(b)は
図2及び
図4(a)のX1-X1線での溶融樹脂導入管13の断面図、
【
図5】
図5(a)は、平坦部136が6本の溶融樹脂導入管13の側面図、
図4(b)は
図2及び
図5(a)のX1-X1線での溶融樹脂導入管13の断面図、
【
図6】実施例1の
図2でのギアポンプ33とバッファー貯留部34と紡糸ノズル1でのナノファイバー高分子材料供給量の変化のグラフ、
【
図7】
図2のノズル風洞とは異なった別の実施例2におけるノズル風洞の断面図、
【
図8】
図2のノズル風洞とは更に異なった別の実施例3におけるノズル風洞の断面図、
【
図9】本発明の実施例1におけるポリプロピレンのナノファイバー積層体の×200の電子顕微鏡写真、
【
図10】本発明の実施例1(ノズル風洞あり)におけるポリプロピレンのナノファイバー積層体の×1000倍の電子顕微鏡写真、
【
図11】本発明の実施例1におけるポリプロピレンのナノファイバー積層体の×10000倍の電子顕微鏡写真、
【
図12】本発明の実施例3におけるナイロンのナノファイバー積層体の×200の電子顕微鏡写真、
【
図13】本発明の実施例4におけるポリエチレンテレフタレート(PET)のナノファイバー積層体の×200倍の電子顕微鏡写真、
【
図14】本発明の実施例1において、ノズル風洞を装備しない場合の4におけるポリプロピレンのナノファイバー積層体の×1000倍の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特徴の1つは、紡糸ノズルから紡糸する長分子配列を有する高分子材料の繊維状のファイバーに、所定の角度で加熱風を添えるとともに、さらに温度が下がらないように溶融状態維持手段を設けて、紡糸ノズル1からの高分子材料を溶融状態に維持しており、同軸状にリング状の熱風吹出ノズル2が設けられ、この噴出する熱風に添って溶融高分子材料を延伸させ、高分子材料の溶融状態を維持されながら溶融高分子を吹き飛ばし、更にノズル風洞5の内壁で高温状態が維持されているので、更に延伸が進み所定の高分子材料のナノファイバー積層体の製造を実現した。さらに、紡糸ノズルと高分子材料を供給するギアポンプとの間に大容量のバッファー貯留部を設けたので、ギアポンプの最低供給量よりも更に低供給量の高分子材料を一定状態で供給することが可能となる。
したがって、高電圧を印加することなく、溶媒を用いず加熱による高温下の高分子材料の溶融と、耐熱性のあるセラミック又はルビーの紡糸ノズルを用いることによって、ポリプロピレン等の高分子材料のナノファイバー積層体の製造を実現した。
以下に、本発明のポリプロピレン(PP)、ナイロン(Nylon)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の長分子配列を有する高分子材料のナノファイバー積層体の製造方法の実施例における図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例のポリプロピレンとしてポリプロピレンを使用したナノファイバー積層体Nの製造方法を説明するが、実施例の
図1の概略を示した概念説明図に示すように、紡糸ノズルと高分子材料を供給するギアポンプとの間に大容量のバッファー貯留部を設けたので、ギアポンプの最低供給量よりも更に低供給量の高分子材料を一定状態で供給することが可能となる。そして、上流の主にナノファイバーの生成部Aで、基本的には紡糸ノズル1の(中心)吐出口112から高熱で溶融したポリプロピレンを延伸し、溶融状態維持手段として高熱風吹出ノズル2を設け、さらに、細い円筒のノズル風洞として、これらノズルを直後に設けた溶融紡糸法であり、吹き飛ばされたポリプロピレンのナノファイバーを下流の吸引装置を設けた捕集部Bのグリット61上に走行する基材Cで捕集する。
【0014】
[ナノファイバー生成部A]
前述したように、ナノファイバー生成部Aは、主に紡糸ノズル1と高熱風吹出ノズル2とノズル風洞5から構成されるが、先ず、
図1に沿って、ポリプロピレンナノファイバー生成部Aから説明する。ナノファイバー生成部Aは、主に紡糸ノズル1、これに溶融したポリプロピレンを供給する溶融樹脂供給部3、高熱風吹出ノズル2、ノズル風洞5とこれに熱風を供給する熱風発生器4から構成される。
【0015】
[紡糸ノズル1、溶融樹脂供給3]
先ず、紡糸ノズル1とこれに、溶融ポリプロピレンNを供給する溶融樹脂供給部3について説明する。
溶融樹脂供給部3はポリプロピレンの固形粒子Pをスクリューコンベア32上部のホッパ31に入れ、駆動部324で回転するスクリューコンベア32本体に供給して加熱して液状に溶融し、これをスクリューで押し出しながら移送する。このスクリューコンベア32の入口部321ではヒータ35aで約190℃に加熱し、(中間)移送部322では複数のヒータ35bで約210℃に、出口部323ではヒータ35cで約220℃に加熱溶融させるように制御する。
スクリューコンベア32の出口部323はギアポンプ33の入り口に連結される。ポリプロピレンの紡糸ノズル1で延伸するには吹出温度を250℃程度に加熱しなければならない。しかし、ギアポンプ33ではポリプロピレンの溶融温度は220℃から230℃程度が最適であるので、あまり高熱にすると溶融ポリプロピレンの流動性が高まりギアポンプ33の送給力が弱まり紡糸ノズル1への溶融ポリプロピレンが適切に供給できないので、ギアポンプ33では220℃から230℃程度の加熱する。
ここで、ギアポンプ33は、正確にポリプロピレンを供給可能であるが、微小量供給領域では最低供給量には限界があり、それ以下は制御不能であった。そこで、
図6に示すように、ギアポンプ33の最低回転近傍で間欠可動させて、本実施例では紡糸ノズル1とギアポンプ33の供給口との間に大容量のバッファー貯留部34のバッファー領域を設けた。ここで、
図6のグラフの実線aのようにギアポンプ33がon-offのように稼働した場合、直後のb点での供給量は一点差点bのように変化するが、バッファゾーンであるバッファー貯留部34を設けることによって、ギアポンプ33の変動供給を平均化して、紡糸ノズル1のc点ではギアギアポンプ33の最低供給量よりも更に低供給量での点線cのように一定量が供給することができ、太さが均一のナノファイバーを形成することができる。この大容量のバッファー貯留部34がないと、ナノファイバーの太さが不均一になるばかりか、途切れ途切れになる場合があり、ギアギアポンプ33を間欠稼働させても均一の太さのナノファイバーが生成性でき、その太さもより細く生成することが出来る。
そして、大容量のバッファー貯留部34から加熱部を有する溶融保持通路131で徐々にポリプロピレンの温度を高めて、最終の紡糸ノズル1から噴出する状態では、紡糸ノズル1の近傍にヒータ35を配置し250℃から270℃に加熱する。
【0016】
ノズル本体11とノズル支持体12とからなる紡糸ノズル1は、
図3の紡糸ノズル1の近傍の拡大図に示すように、紡糸ノズル1において、ノズル本体11には長手方向に溶融高分子が噴出する中心軸孔111が設けられるが、この中心軸孔111の下流側の先端部には吐出口112が設けられる。ここで重要なのは紡糸ノズル1の材質であるが、本発明の紡糸ノズル1のノズル本体11の材質はセラミック又はルビーが最適で、本実施例ではルビーである。
この吐出口112であるノズル内径は0.10mmから0.18mmとしたが、0.18mm以上だとナノ単位の繊維が生成しづらく、0.10mm以下だとノズル内径に溶融したポリプロピレンが詰まってしい、又ノズルを掃除するために針を使用するが、0.9mmの針を制作するのが限界でもあるので、本実施例では0.10mm程度とした。また、従来の前掲の特許文献4では、ノズル内径を0.15mmとしたが、材質を金属のステンレスとしたため、当初の10分程度はポリプロピレンのナノファイバー積層体が生成できるが、すぐに太いファイバーに変質してしまうことが判明した。これは高温の為にステンレスのノズル内径が拡がってしまうことに起因することが判った。このため、耐熱性があり高温下でも変形しないルビーを使用すると、長時間連続稼働させても、高品質のポリプロピレンのナノファイバー積層体を生成することができた。
【0017】
しかし、セラミックやルビーは加工が難しく、ネジ等を設けた金属のノズル支持体12にノズル吐出口112をネジ等で固着することが困難であった。そのため、
図3に示すように、ノズル本体11の上流の末端に外側に突出した肉厚のドーナツ状の鍔部113を設け、対応するノズル支持体12の同軸の内孔121の下流の末端に内側に突出する係止部122を設けて、ノズル本体11をノズル支持体12の内孔121の上流の開口部123から挿入して、前記鍔部113を係止部122に密着嵌合させて固着する。このような構造なので、下流側に高い圧力で溶融ポリプロピレンが挿入されてもノズル本体11がノズル支持体12から離脱することがない。この場合、内孔121の内径はノズル本体11の外径および鍔部113の外径よりも大きく、ノズル支持体12の先端係止部122の内径はノズル本体11の外径よりも小さく、鍔部113の外径よりも小さくする必要がある。
ナノファイバー生成部Aにおいて、紡糸ノズル1に連通する溶融樹脂導入管13が接続金具134、ニードル弁34を介してギアポンプ33から溶融樹脂供給部3のスクリューコンベア32に連通する。一方、溶融樹脂導入管13の下流側はノズル支持体12およびノズル本体11に連通する。ノズル支持体12の内孔121はノズル本体11の中心軸の内孔121および吐出口112に連通する。
このように、溶融樹脂供給部3から溶融樹脂導入管13の中心の樹脂導入孔135からノズル本体11の吐出口112までが徐々にポリプロピレンの溶融温度を250℃から270℃にまで上昇させ、スクリューコンベア32とギアポンプ33とで所定の圧力でポリプロピレンを吐出口112から噴出する。
【0018】
[高熱風吹出ノズル2、熱風発生器4]
図2、
図3に示すように、紡糸ノズル1は中心軸孔111の周りには、高熱風吹出ノズル2が設けられるが、ノズル本体11の外周部124を包むように正確に同軸状にリング状の熱風吹出通路21が熱風通路形成キャップ24によって形成され、熱風吹出通路21の先端には所定の吹出角度(30度)を有したリング状の熱風吹出口22が設けられ、この熱風吹出口22に対して、前記吐出口112が僅かに2mmから5mm程度外側突出し、本実施例1ではX=4mm程度突出している。
この吐出口112の熱風吹出口22からの突出量Xは、
図3に示されるように、熱風通路形成キャップ24の熱風吹出通路21が斜行しており、中心のノズル本体11の外周も斜行しているので、熱風通路形成キャップ24と熱風導入部材25の間に熱風吹出口微調整用ワッシャー26の介在させ、この熱風吹出口微調整用ワッシャー26の異なった厚さものを選択するか、枚数を調整することによって、前記突出量Xを調整することができる。これは、突出量Xを調整すると同時に、熱風吹出通路21の内壁とノズル本体11の外周と間、すなわち、熱風吹出口22の開口面積を微調整することができる。
このように、高熱風吹出ノズル2の熱風吹出量を微調整することができるので、
図1に示すように、複数の高熱風吹出ノズル2の熱風吹出量を同じにすることができ、より均一な分子材料のナノファイバーの積層体を製造することができる。
【0019】
また、吐出口112を僅かに突出させることにより、より整流になり溶融高分子材料を延伸することが判った。ただし、吐出口112の直後も高温を維持するように、吐出口112を囲むノズル風洞5(フード),5aが必要である。
また、前述したように紡糸ノズル1に連なる溶融樹脂導入管13の下流側の外周部132には、高熱風吹出ノズル2に連なる熱風導入溝133が設けられ、この熱風導入溝133には他端には熱風発生器4に連通している。
この熱風導入溝133は、
図4a,bに示すように、断面円形の溶融樹脂導入管13の外周部132に複数の溝部133(8本)を切削したもので、本実施例では8本の長い熱風導入溝133を形成している。この熱風導入溝133は外周に均一間隔で構成が良く、これは熱風吹出口22から対向する熱風が交差するように吹き出すので、溶融高分子材料を延伸するように作用する。また、長い導入路が形成されるので、熱風吹出口22から熱風が整然と吹き出される。
この熱風導入溝133の別の実施例は、
図5a,bに示すように、断面円形の溶融樹脂導入管13の外周部132に複数の平坦部136(6本)を切削したもので、本実施例では6本の長い熱風導入空間を形成する平坦部136を形成している。この熱風導入空間の平坦部136は外周に均一間隔で構成が良く、これは熱風吹出口22から対向する熱風が交差するように吹き出すので、溶融高分子材料を延伸するように作用する。また、断面積が大きく長い導入路が形成されるので、熱風吹出口22から熱風が整然と吹き出される。この熱風導入空間を形成する平坦部136は、
図4の熱風導入溝133に比べて制作が容易である点と、掃除等のメンテナンスが容易である点が利点である。
【0020】
この熱風発生器4の上流側には圧縮空気の圧縮空気供給口41が設けられ、熱風発生器4自体にはヒータ等の加熱装置が設けられて、供給される圧縮空気は350~380℃程度の熱風が発生できるようにしてあり、この発生した高温空気は、熱風発生器4の熱風出口42から熱風導入部材25、熱風吹出通路21を介して紡糸ノズル1の外周部124および熱風吹出口22に送給される。このため、ノズル本体11の中心軸孔111を温めるとともに、熱風吹出口22から熱風が噴出される。そして、この熱風は吐出口112から紡糸されるポリプロピレン(N)を包むように270℃に保ちながら、高速気流でポリプロピレン(N)を更に延伸する。
ギヤポンプ(吐出手段)33にもヒータ35eを配置してギヤポンプ33自体も高温に維持しているが、本発明の実施例では、ギヤポンプ33で直径0.1mmの吐出口112から溶融ポリプロピレン(N)の吐出を可能にしなければならないが、加熱が重要であり、吐出口112でもポリプロピレン(N)を270℃以上を保持する必要がある。
なお、ヒータ35f付きのニードル弁34は、閉油圧回路341と開油圧回路342を作動させギアポンプ33と稼働連動し、溶融ポリプロピレンの送給の応答性を高めるものである。
【0021】
このことは高速高温気流で、ポリプロピレン(N)を更に延伸するのでリング状の熱風吹出口22の吹出角度(中心軸孔111の軸を中心としての左右の合算角度)が重要であるが、実験の結果、角度30°~50°程度、すなわち、熱風吹出口22の高速高温気流の吹出方向は、前記吐出口112の中心軸線に対して15°~25°の角度の範囲が好ましく、角度30°(中心軸と角度15°)以下だとポリプロピレン(N)との接触力が小さく延伸作用が小さく、角度50°(中心軸と角度25°)以上だと接触しての負圧が生じないのでやはり延伸作用が少なく、本実施例では角度38°(中心軸と角度19°)することで延伸作用が効率的に作用した。
また、ポリプロピレン(N)を効率よく延伸するのは、溶融状態のポリプロピレン(N)を高温により低粘度にすることも重要であり、このため
図2に示すようように、熱風吹出通路21を周りにヒータ23による加熱器を配置し、溶融樹脂導入管13の外周部132及び吐出口112の外周に熱風を接触させて高温に維持する。
【0022】
上述したように、吐出口112でもポリプロピレン(N)を270℃以上に保持するが、吐出口112から紡糸後も延伸させる必要があるが、そのままでは吐出口112直後に急激に温度が低下するので、これを防ぐ必要がある。
このために溶融状態維持手段として金属製の高速高熱気流の高熱風吹出ノズル2と後述するノズル風洞5を設けた。高熱風吹出ノズル2の高熱風が適正に紡糸ポリプロピレン(N)に当たらないと、μオーダーの極細繊維で終わってしまいナノファイバーにはならない。
図2、
図3に示すように、高熱風吹出ノズル2は先端の熱風吹出口22の内径は4mm程度で、300~350℃の熱風を吐出量110m3/min(分)でポリプロピレン(N)に吹き付けている。この時の熱風圧力は0.35Paで風速を与えているが、余り風速が遅いと紡糸中のポリプロピレン(N)の雰囲気の温度が下がってしまい延伸を阻害し、余り風速が速くても風速で紡糸中のポリプロピレン(N)を冷ましてしまい延伸を阻害する。
【0023】
[ノズル風洞5(フード)]
図2,
図3に示すように、熱風通路形成キャップ24の下流方向に約直径2cmの円筒で長さ7cm程度のノズル風洞(フード)5が取付雌ネジ51で熱風通路形成キャップ24の雄ネジ部241に取り付けられている。このためノズル風洞5(フード)の軸線と紡糸ノズル1の軸線を一致させることが容易である。
このノズル風洞5は、紡糸ノズル1の吐出口112の直後に配置されているため、紡糸された溶融ポリプロピレン(N)が直線状に延伸され、フード及びフード内部も高温状態を保てるため、樹脂の延伸時間が延長され繊維径の極細化に効果があり、他の直近ノズルから排出される熱風に干渉される事も防止することができ、結果として、均一のポリプロピレンのナノファイバー積層体を得ることができる。
特に、前掲の特許文献3の特開2011-241510号公報の気流による外周の遮断とは異なり、確実に、他のノズルから排出される熱風に干渉されることがないので、直近のノズルとの距離を縮めることが可能となる。
実施例1のノズル風洞5の内径は1.4cmから2.5cmとしたが、内径があまり大きいと熱保持効果が薄れ、小さいと紡糸ノズル1とノズル風洞5の中心軸を一致させるのが難しく、中心線がズレるとかえって乱流が生ずる原因となる。また、ノズル風洞5におけるノズル先端11までの長手方向の長さを4.0cmから10.0cmとしたが、内径との相互関係から、実施例1のように風洞の内径を2.0cmとした場合には、長さは7cmが最適であった。
【実施例2】
【0024】
また、別の実施例2として実施例1でのノズル風洞5の形状を変えたのが
図7であるが、実施例2のノズル風洞5aは熱風通路形成キャップ24の雄ネジ部241に取り付けられ、取付雌ネジ51の根本から絞った形状にし、大部分を内径1.5cmとした場合には、熱風Dがより整流になりノズル風洞5の長手方向の長さを5.0cmすると場合が出来合いのナノファイバー積層体の状態も最適であった。
更に、別の実施例3として実施例1、2でのノズル風洞5の形状を変えたのが
図8であるが、実施例3のノズル風洞5bは、先端を絞った形状である。これは実施例1でのノズル風洞5の風洞先端部5cで乱流が起こりやすく、風速によって綿飴状のナノファイバーのブロックが生じることがあり、これを防ぐために、先端を絞った形状で、ノズル風洞5の長手方向全体の長さを6.0cmで、風洞先端部5cからノズルの吐出口112までは、y2=48mmであるが、風洞5のノズル11近傍での内径はd1=16.0mm、この内径をノズル先端吐出口から18mmの先まで同内径の円筒を形成し(風洞先端部5cからy1=3.0cmまで)、そこから風洞先端部5cまでは徐々に絞り、風洞先端部5cでの内径はd2=9.5mmである。
この形状であると、意外にも実施例1で生じた綿飴状のナノファイバーのブロックが全く生じず、出来合いのナノファイバー積層体の状態も最適であった。これは風洞先端部5cで風速が早まるためナノファイバーのブロックが生じようとしても吹き飛ばされるものと考えられる。
【0025】
[捕集部B]
再び、実施例1に戻って説明するが、
図1に示すように、紡糸ノズル1及びこれに高熱風吹出ノズル2から吹き飛ばされたポリプロピレンのナノファイバー(N)を下流の捕集部Bで捕集する。
捕集部Bは、ナノファイバー捕集装置6とナノファイバー(N)を保持する基材Cとから構成され、ナノファイバー捕集装置6は吹き付けられるナノファイバー(N)に対向して細かな貫通孔を有する平面保持用グリッド(或いは金網)61を設け、ナノファイバー(N)が吹き付けられる裏側には吸引ダクト62が設けられている。
この上記の平面保持用グリッド(或いは金網)61の両端にはフィードローラ63が、一方には基材繰出ローラ軸64、他方には基材・製品巻取軸65が配置されている。
そして、ナノファイバー(N)を仮に担持する基材Cのローラを、基材繰出ローラ軸64に取り付け、フィードローラ63aを介して不織布等の引き出した基材Cを平面保持用グリッド(或いは金網)61に載せ、ナノファイバー(N)の積層体を基材Cの上面に載置しながら移動させ、フィードローラ63b,cを介して基材C及び製品であるナノファイバー積層体を製品巻取軸65で巻き取る。
【0026】
[実施例1の製品]
こうして、溶融だけでポリプロピレンのナノファイバー積層体の製造を完成する。
なお、紡糸ノズル1と高熱風吹出ノズル2とノズル風洞5の組み合わせを複数にすれば生産量は増加するが、本実施例1では平行に6組設けた。
本実施例1(ノズル風洞あり)の下記条件で製造したのが、
図9の×200倍の電子顕微鏡写真、
図10の×1000倍の電子顕微鏡写真、及び、
図11の10000倍の電子顕微鏡写真であるが、写真中のμmのスケールに対して、ナノオーダーのナノファイバーが積層させていることが判る。
また、これらの子顕微鏡写真からは、従来の前掲特許文献4に記載のナノファイバー積層体の電子顕微鏡写真よりも均一性が向上していることが判る。
なお、
図14は実施例1におけるノズル風洞を装備しない場合の1000倍の電子顕微鏡写真であるが、
図10のノズル風洞の場合に比べて繊維径が明らかに太く、実施例1のようにノズル風洞が有ることによって同じ条件でも繊維径がより細くなることが判る。これは、ノズル風洞によって高温状態の距離が長くなり、その分だけポリプロピレン(PP)が引き伸ばされるものと考えられる。
【0027】
[設定条件(実施例1)]
材料:ポリプロピレン(PP)(サンアロマー社製:品番PLB00A)(MFR70)
紡糸ノズル1のノズル径0.1(0.1~0.2mm)
吐出口温度:270°
熱風吹出口内径:5mm(1.4~6mm)(外径8mm)
熱風吹出口温度:200~300℃
熱風吹出角度:38°(中心軸と角度19°)(30°~50°)
高速気流の圧力:0.35MPa
高熱風吹出ノズル2のノズル径1.8mm
風速:110m3/min
高熱風温度:120~200℃
ノズル風洞:内径2.0cm、長さ7.0cm
熱風吹出口22から吐出口112の突出距離X4=4.0mm
なお、同じポリプロピレンであってもエチレンの含有量によって、MFR(メルトフローレート (melt flow rate))値が異なり、MFR70と極めてエチレンの含有値が少なく流動性もなく硬いものであっても、ナノファイバーが形成される。
【0028】
本発明の実施例1におけるポリポロピレンのナノファイバー積層体Nの製造方法では、従来製造が難しいとされていたポリプロピレン(PP)のナノファイバーを溶剤無しで製造することができ、また、引火性の溶液を一切使用することなく、ポリプロピレンを加熱により溶融して、加圧と高熱吹き出し風より防糸するので、取り扱いが容易な製造方法でポリプロピレン(PP)のナノファイバー積層体が得られる。
また、従来のように高電圧を使用することなく、溶融だけで製造するので高圧電源を使用することによる危険性がなく、また、溶融だけで引火性の溶媒も使用しないので、極めて取り扱いが容易となり、また、静電気等が帯電していないので、無理なく捕集帯から離脱して、所望の基材に移すことができ、所望の基材として通気性のある基材は勿論のこと、通気性の小さな不織布や、或いは、通気性のないフィルムを基材として用いることができる。
このように、ポリプロピレンのナノファイバー積層体を安価で大量生産が可能となる。
【実施例3】
【0029】
次に、本発明の高分子材料としてナイロン(Nylon)を使用したナノファイバー積層体の製造方法の実施例2を説明する。
実施例3の製造装置は、基本的には実施例1と同じであり、材料としてナイロン(Nylon)を用いた。
本実施例3の下記条件で製造したのが、
図12の×200倍の電子顕微鏡写真であるが、写真中のμmのスケールに対して、ナノオーダーのナノファイバーが積層され、細いナノファイバーが積層されていることが判る。
[設定条件(実施例3)]
材料:ナイロン(Nylon)(宇部興産社製:品番1022B)
紡糸ノズル1のノズル径0.1mm(0.1~0.2mm)
吐出口温度:280°
熱風吹出口内径:3mm(1.4~6mm)(外径8mm)
熱風吹出口温度:250~310℃
熱風吹出角度:38°(中心軸と角度19°)(30°~50°)
高速気流の圧力:0.4Pa
ノズル風洞:内径2.0cm、長さ7.0cm
熱風吹出口22から吐出口112の突出距離X4=4.0mm
【0030】
[実施例3の製品]
本発明の実施例3のナイロン(Nylon)のナノファイバー積層体Nの製造方法は、実施例2の
図1の概略を示した概念説明図と原則的に同じであるため省略するが、突出した円筒部内でナイロン(Nylon)の溶融状態を維持しながら更に延伸し、開口部123からナイロン(Nylon)を、水平方向に配置され下流の捕集部Bのネット5に吹き飛ばして捕集するもので、高電圧を印加することなく、加熱による溶融だけでナイロン(Nylon)のナノファイバー積層体の製造を実現した。
【0031】
本発明の実施例3のナイロン(Nylon)のナノファイバー積層体Nの製造方法では、蟻酸のように環境に悪影響のある溶媒(溶剤)や、ベンゼン等の引火点の低い危険な溶剤を必要とするナイロン(Nylon)において、このように有害な溶媒や危険な溶剤を使用しないで、熱溶融だけでのナノファイバー積層体の製造方法が可能となる。
また、高圧電源を使用することによる危険性がなく、取り扱いが容易となり、また、静電気等が帯電していないので、無理なく捕集帯から離脱して、所望の基材に移すことができ、所望の基材として通気性のある基材は勿論のこと、通気性の小さな不織布や、或いは、通気性のないフィルムを基材として用いることができる。
このように、ナイロン(Nylon)のナノファイバー積層体を安価で大量生産が可能となる。
【実施例4】
【0032】
次に、本発明の高分子材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)を使用したナノファイバー積層体の製造方法の実施例2を説明する。
実施例3の製造装置は、基本的には実施例1と同じであり、材料としてナイロン(Nylon)を用いた。
本実施例3の下記条件で製造したのが、
図13の×200倍の電子顕微鏡写真であるが、写真中のμmのスケールに対して、ナノオーダーのナノファイバーが積層され、細いナノファイバーが積層されていることが判る。
【0033】
[設定条件(実施例4)]
材料:ポリエチレンテレフタレート(PET)
紡糸ノズル1のノズル径0.1mm(0.1~0.2mm)
吐出口温度:280°
熱風吹出口内径:3mm(1.4~6mm)(外径8mm)
熱風吹出口温度:250~320℃
熱風吹出角度:38°(中心軸と角度19°)(30°~50°)
高速気流の圧力:0.4MPa
ノズル風洞:内径2.0cm、長さ7.0cm
熱風吹出口22から吐出口112の突出距離X4=4.0mm
【0034】
[実施例4の製品]
本発明の実施例4のポリエチレンテレフタレート(PET)のナノファイバー積層体Nの製造方法は、実施例2の
図1の概略を示した概念説明図と原則的に同じであるため省略するが、突出した円筒部内でナイロン(Nylon)の溶融状態を維持しながら更に延伸し、開口部123からポリエチレンテレフタレート(PET)を、水平方向に配置され下流の捕集部Bのネット5に吹き飛ばして捕集するもので、高電圧を印加することなく、加熱による溶融だけでポリエチレンテレフタレート(PET)のナノファイバー積層体の製造を実現した。
【0035】
本発明の実施例4のポリエチレンテレフタレート(PET)のナノファイバー積層体Nの製造方法では、蟻酸のように環境に悪影響のある溶媒(溶剤)や、ベンゼン等の引火点の低い危険な溶剤を必要とするポリエチレンテレフタレート(PET)において、このように有害な溶媒や危険な溶剤を使用しないで、熱溶融だけでのナノファイバー積層体の製造方法が可能となる。
また、高圧電源を使用することによる危険性がなく、取り扱いが容易となり、また、静電気等が帯電していないので、無理なく捕集帯から離脱して、所望の基材に移すことができ、所望の基材として通気性のある基材は勿論のこと、通気性の小さな不織布や、或いは、通気性のないフィルムを基材として用いることができる。
このように、ポリエチレンテレフタレート(PET)のナノファイバー積層体を安価で大量生産が可能となる。
【0036】
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、前述した各実施例に限定されないことは勿論であり、長分子配列を有するポリプロピレン(PP)、ナイロン(Nylon)、ポリエチレンテレフタレート(PET)以外の危険な溶剤を必要とする高分子材料等においても、加熱溶融する長分子配列を有する高分子材料であれば、危険な溶剤を使用しないで、加熱溶融だけでナノファイバー積層体の製造方法にも適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
A・・ナノファイバー生成部、B・・捕集部(ナノファイバー)、C・・基材、
D・・熱風、N・・ポリプロピレンナノファイバー(積層体)、
P・・ポリプロピレンの固形粒子、
1・・紡糸ノズル、11・・ノズル本体、111・・中心軸孔、112・・吐出口、
113・・鍔部、
12・・ノズル支持体、121・・内孔、122・・係止部、
123・・開口部、124・・外周部、
13・・溶融樹脂導入管、131・・溶融保持通路、132・・外周部、
133・・熱風導入溝、
134・・接続金具、135・・樹脂導入孔、136・・平坦部
2・・高熱風吹出ノズル、21・・熱風吹出通路、22・・熱風吹出口、
23・・ヒータ、
24・・熱風通路形成キャップ、241・・雄ネジ部、25・・熱風導入部材、
26・・熱風吹出口微調整用ワッシャー、
3・・溶融樹脂供給部、31・・ホッパ、
32・・スクリューコンベア、321・・入口部、322・・移送部、
323・・出口部、324・・駆動部、
33・・ギアポンプ、34・・バッファー貯留部、
35,35a,35b,35c,35e,35f・・ヒータ、
4・・熱風発生器、41・・圧縮空気供給口、42・・熱風出口、
5,5a,5b・・ノズル風洞(フード)、5c・・風洞先端部、51・・取付雌ネジ、
6・・ナノファイバー捕集装置、61・・平面保持用グリッド(又は金網)、
62・・吸引ダクト、63,63a,63b,63c・・フィードローラ、
64・・基材繰出ローラ軸、65・・基材・製品巻取軸