(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】接触部材
(51)【国際特許分類】
H01R 12/57 20110101AFI20220705BHJP
H01R 13/24 20060101ALI20220705BHJP
H01R 4/64 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H01R12/57
H01R13/24
H01R4/64 Z
(21)【出願番号】P 2018155425
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 智久
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-79709(JP,A)
【文献】特開平10-261501(JP,A)
【文献】特開2018-18605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/24
H01R 12/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材にはんだ付けされて第2部材に接触することにより、前記第1部材と前記第2部材とを電気的に接続可能な接触部材であって、
少なくとも1つの接合面を有し、使用時には前記接合面が前記第1部材にはんだ付けされる基部と、
前記基部から延出しており、使用時には前記第2部材に接触して弾性変形し、前記第2部材に加圧接触する状態となる弾性接触部と
を備え、
前記基部は、金属の薄板によって構成されており、前記接合面として、前記薄板の端面によって構成される少なくとも1つの接合端面を有し、
前記接合端面には、前記薄板の素地を構成する金属とは異なる金属によって形成されためっき皮膜が設けられて
おり、
前記弾性接触部は、前記基部との接続箇所となる端部を固定端部、前記固定端部とは反対側の端部を自由端部として、前記固定端部から前記自由端部へと至る部分のうちの少なくとも一部が、前記接合面に接する位置に仮想される仮想平面を挟んで、前記固定端部とは反対側となる位置にまで延びる形状とされている
接触部材。
【請求項2】
請求項
1に記載の接触部材であって、
前記第1部材は、板状に構成された電子回路基板であり、
前記弾性接触部は、前記基部が前記電子回路基板にはんだ付けされた際に、前記電子回路基板の端面よりも当該端面に垂直な方向へ突出する突出部分で、前記電子回路基板の端面と対向する位置に配置される前記第2部材に加圧接触するように構成されており、前記第2部材から前記電子回路基板の端面に向かう方向への圧縮荷重が過大になった場合には、前記弾性接触部の一部が前記電子回路基板の端面に加圧接触する状態となるように構成されている
接触部材。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の接触部材であって、
前記基部は、それぞれが前記薄板によって構成される第1壁部及び第2壁部を有し、
前記第1壁部及び前記第2壁部は、前記第1壁部の一方の板面と前記第2壁部の一方の板面とが互いの間に空隙を空けて対向するように配置され、当該空隙内に前記弾性接触部の少なくとも一部が配置されることにより、前記弾性接触部が前記第1壁部及び前記第2壁部のうちのいずれか一方を挟んで他方とは反対側となる位置へ変位するのを抑制可能に構成され、
前記第1壁部は、前記接合端面として、前記薄板の端面によって構成される第1接合端面を有し、
前記第2壁部は、前記接合端面として、前記薄板の端面によって構成される第2接合端面を有する
接触部材。
【請求項4】
請求項
3に記載の接触部材であって、
前記基部は、前記薄板によって構成される延出部を有し、
前記延出部は、前記接合面として、前記薄板の板面によって構成される接合板面を有する
接触部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接触部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板の周縁部に実装される接触部材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の接触部材(特許文献1でいうアース金具。)の場合、回路基板(30)のアースパターンと、このアースパターンに接触している立ち上がり部(15)である板面とをはんだ付けする例が挙げられている。また、回路基板(30)の端部に形成されたアースパターンに斜辺(14a)をはんだ付けする例が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、接触部材は、当該接触部材が構造的に備え得る板面を回路基板に接触させてはんだ付けすることで実装されることから、板面を接触させるために必要な領域を回路基板上において十分に確保できない場合には、接触部材の実装が事実上、不可能になることがある。あるいは、接触部材の実装ができる程度の領域を確保できる場合であっても、はんだ付けによる接合強度が低くなることがある。
【0005】
本開示の一局面においては、回路基板の大きさが充分でない等の事情により、板面を接触させるために必要な領域には及ばない狭小な領域しか確保できない場合であっても、はんだ付け可能な接触部材を提供することが望ましい。又は、本開示の別の一局面においては、板面を接触させるための領域は確保できるものの、その領域に板面をはんだ付けするだけでは、はんだ付けによる接合強度が不足する場合に、はんだ付けによる接合強度を向上可能な接触部材を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、第1部材にはんだ付けされて第2部材に接触することにより、第1部材と第2部材とを電気的に接続可能な接触部材であって、基部と、弾性接触部とを備える。基部は、少なくとも1つの接合面を有し、使用時には接合面が第1部材にはんだ付けされる。弾性接触部は、基部から延出しており、使用時には第2部材に接触して弾性変形し、第2部材に加圧接触する状態となる。基部は、金属の薄板によって構成されており、接合面として、薄板の端面によって構成される少なくとも1つの接合端面を有する。接合端面には、薄板の素地を構成する金属とは異なる金属によって形成されためっき皮膜が設けられている。
【0007】
このように構成された接触部材によれば、基部には、接合面として、薄板の端面によって構成される接合端面が設けられている。そのため、このような接合端面を利用してはんだ付けを行えば、薄板の板面を接触させるために必要な領域を第1部材上において十分に確保できない場合であっても、接合端面を接触させることができる程度の狭い領域を確保できれば、接触部材を実装することができる。あるいは、薄板の板面を接触させるために必要な領域を第1部材上においてある程度は確保できるものの、十分な接合強度を確保することが難しい場合には、更に接合端面を接触させることができる程度の狭い領域を確保できれば、接合端面をはんだ付けすることにより、はんだ付け箇所の接合強度を高め、はんだ付け箇所を補強することができる。すなわち、薄板の端面をはんだ付けすることで、従来技術である薄板の板面をはんだ付けすることでは困難である、一局面に対応することができる。
【0008】
また、上記接触部材の場合、接合端面には、薄板の素地を構成する金属とは異なる金属によって形成されためっき皮膜が設けられている。ここで、薄板の素地を構成する金属とは異なる金属としては、例えば、薄板の素地を構成する金属よりも酸化しにくい金属を挙げることができる。あるいは、薄板の素地を構成する金属よりもはんだに対する濡れ性が高い金属を挙げることができる。
【0009】
このようなめっき皮膜が設けられていれば、例えばプレス加工時に形成される打ち抜き端面がそのまま接合端面とされている場合とは異なり、薄板の素地を構成する金属が接合端面に露出するのを抑制することができる。したがって、薄板の素地を構成する金属が接合端面に露出する場合に比べ、接触部材と第1部材との間の接触抵抗を低下させることができ、あるいは、接触部材と第1部材との間の接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは第1実施形態の接続部材を左上前方から見た斜視図である。
図1Bは第1実施形態の接続部材を右下後方から見た斜視図である。
【
図2】
図2Aは第1実施形態の接続部材の平面図である。
図2Bは第1実施形態の接続部材の左側面図である。
図2Cは第1実施形態の接続部材の正面図である。
図2Dは第1実施形態の接続部材の右側面図である。
図2Eは第1実施形態の接続部材の背面図である。
図2Fは第1実施形態の接続部材の底面図である。
【
図3】
図3Aは第1実施形態の接続部材が電子回路基板に取り付けられた状態を示す斜視図である。
図3Bは電子回路基板の斜視図である。
【
図4】
図4Aは第1壁部及び第2壁部の外側及び内側にはんだフィレットが形成されている状態を示す説明図である。
図4Bは第1壁部の外側にはんだフィレットが形成されている状態を示す説明図である。
図4Cは第1壁部の内側にはんだフィレットが形成されている状態を示す説明図である。
【
図5】
図5Aは第1実施形態の接続部材を示す縦断面図である。
図5Bは第1実施形態の接続部材がパネルに加圧接触する状態を示す縦断面図である。
図5Cは第1実施形態の接続部材がパネルに加圧接触し、かつ電子回路基板の端面にも接触する状態を示す縦断面図である。
【
図6】
図6Aは第2実施形態の接続部材を左上前方から見た斜視図である。
図6Bは第2実施形態の接続部材を右下後方から見た斜視図である。
【
図7】
図7Aは第2実施形態の接続部材の平面図である。
図7Bは第2実施形態の接続部材の左側面図である。
図7Cは第2実施形態の接続部材の正面図である。
図7Dは第2実施形態の接続部材の右側面図である。
図7Eは第2実施形態の接続部材の背面図である。
図7Fは第2実施形態の接続部材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、上述の接触部材について、例示的な実施形態を挙げて説明する。
(1)第1実施形態
[接触部材の構成]
以下の説明においては、接触部材を構成する各部の相対的な位置関係を簡潔に説明するため、接触部材の六面図(
図2A,
図2B,
図2C,
図2D,
図2E及び
図2F参照。)において、正面図に表れる箇所が向けられる方向を前、背面図に表れる箇所が向けられる方向を後、左側面図に表れる箇所が向けられる方向を左、右側面図に表れる箇所が向けられる方向を右、平面図に表れる箇所が向けられる方向を上、底面図に表れる箇所が向けられる方向を下、と規定する。ただし、接触部材の使用時等に接触部材がどのような方向に向けられるかは不定である。
【0012】
図1A及び
図1Bに示すように、接触部材1は、基部3及び弾性接触部5を備える。基部3及び弾性接触部5は、金属の薄板(本実施形態の場合は、すずめっき付きばね用りん青銅、厚さ0.1mm。)によって一体成形されている。基部3は、左壁部11(本開示でいう第1壁部の一例に相当。)、右壁部13(本開示でいう第2壁部の一例に相当。)、後壁部15及び延出部17を有する。
【0013】
左壁部11は、後壁部15の左端から湾曲して前方へと延出している。右壁部13は、後壁部15の右端から湾曲して前方へと延出している。左壁部11及び右壁部13は、それぞれの板厚方向が左右方向に向けられて、左壁部11の一方の板面と右壁部13の一方の板面とが互いの間に空隙を空けて対向するように配置されている。延出部17は、後壁部15の下端から湾曲して後方へと延出している。延出部17は、板厚方向が上下方向に向けられている。
【0014】
左壁部11は、第1接合端面21(本開示でいう接合面の一例に相当。)を有する。第1接合端面21は、左壁部11の下端面である。右壁部13は、第2接合端面22(本開示でいう接合面の一例に相当。)を有する。第2接合端面22は、右壁部13の下端面である。延出部17は、接合板面23(本開示でいう接合面の一例に相当。)を有する。接合板面23は、延出部17において下方に向けられた板面である。これら第1接合端面21、第2接合端面22及び接合板面23は、同一平面に接することが可能な位置にある。
【0015】
第1接合端面21及び第2接合端面22には、すずめっき皮膜(本開示でいうめっき皮膜の一例に相当。)が形成されている。本実施形態の場合、すずめっき付きばね用りん青銅によって構成される原反(フープ材。)に対してプレス加工を施すことにより、原反の一部を打ち抜いて中間加工品を形成する。その時点では、第1接合端面21及び第2接合端面22に相当する箇所は、プレス加工によって形成される打ち抜き端面として形成されるため、素地金属(本実施形態の場合はばね用りん青銅。)が露出する。ただし、打ち抜き加工後の工程では、中間加工品に対して後めっきが施され、第1接合端面21及び第2接合端面22に相当する箇所にすずめっき皮膜が形成される。したがって、第1接合端面21及び第2接合端面22に素地金属が露出するのを抑制することができる。なお、後めっき後は、中間加工品に対して曲げ加工等が施されて、最終製品としての接触部材1に加工される。
【0016】
弾性接触部5は、天板部31、垂下部33、立上部35及び折り返し部37を有する。天板部31は、後壁部15の上端から湾曲して前方へと延出している。天板部31は、板厚方向が上下方向に向けられている。天板部31の一部は、
図2A等に表れるように、左右方向の幅が部分的に広い形状とされ、その幅広部分の上面によって吸着面39が構成されている。この吸着面39は、接触部材1を自動実装機の吸引ノズルで吸着する際に利用される。
【0017】
垂下部33は、天板部31の前端から湾曲して斜め後下方へと延出している。垂下部33の一部は、
図2B及び
図2D等に表れるように、左壁部11と右壁部13との間となる位置に配置されている。これにより、例えば弾性接触部5に何らかの外力が加わって弾性接触部5が左方又は右方へ変位したとしても、垂下部33が左壁部11又は右壁部13に接触する位置まで変位すれば、左壁部11又は右壁部13によって弾性接触部5の変位が抑制される。立上部35は、垂下部33の下端から湾曲して斜め前上方へと延出している。立上部35は、
図2B及び
図2D等に表れるように、左壁部11及び右壁部13の前端よりも前方へ突出している。折り返し部37は、立上部35の上端から湾曲して後方へと折り返されている。
【0018】
垂下部33及び立上部35の下端は、
図2B及び
図2D等に表れるように、第1接合端面21、第2接合端面22及び接合板面23が接する位置に仮想される仮想平面よりも下方へ突出している。これにより、弾性接触部5は、天板部31の後端部(本開示でいう固定端部の一例に相当。)から折り返し部37(本開示でいう自由端部の一例に相当。)へと至る部分のうちの一部が、第1接合端面21、第2接合端面22及び接合板面23に接する位置に仮想される仮想平面を挟んで、天板部31の後端部とは反対側となる位置にまで延びる形状とされている。
【0019】
以上のように構成された接触部材1は、
図3Aに示すように、電子回路基板41の周縁部にはんだ付けされる。電子回路基板41の周縁部には、
図3Bに示すように、切欠43が設けられる。接触部材1は、切欠43に対応する位置に配置されて、電子回路基板41の上面に表面実装される。表面実装の際、電子回路基板41の上面には、クリームはんだ45が所定のパターンで印刷される。クリームはんだ45が印刷される位置は、上述の第1接合端面21、第2接合端面22及び接合板面23(
図1B及び
図2F参照。)に対応する位置とされる。接触部材1は、自動実装機によって電子回路基板41の上面に載置されて、リフロー方式で電子回路基板41に対してはんだ付けされる。
【0020】
接触部材1が電子回路基板41に対してはんだ付けされた際、左壁部11及び右壁部13の下端には、
図4Aに示すように、はんだフィレット47が形成される。
図4Aに例示するはんだフィレット47は、左壁部11及び右壁部13それぞれの内側と外側の双方に形成されているが、
図4Bに例示するように、はんだフィレット47は左壁部11及び右壁部13の外側だけに形成されてもよい(
図4Bには左壁部11のみを図示。)。あるいは、
図4Cに例示するように、はんだフィレット47は左壁部11及び右壁部13の内側だけに形成されてもよい(
図4Cには左壁部11のみを図示。)。
【0021】
すなわち、はんだフィレット47が形成される位置は、上述の外側及び内側の双方であってもいずれか一方であってもよい。電子回路基板41にクリームはんだ45のパターンを印刷する際に、クリームはんだ45の量と印刷位置を調節すれば、はんだフィレット47を上述の外側及び内側の中から選ばれる所望の位置に形成することができる。
図4Aに例示するように、はんだフィレット47を上述の内側及び外側の双方に形成すれば、左壁部11及び右壁部13と電子回路基板41との接合強度を、他の例よりも高めることができる。
【0022】
一方、接合強度を過度に高めなくてもよい場合は、
図4B又は
図4Cに例示するような位置にはんだフィレット47が形成されているだけでも十分である。はんだフィレット47が適切に形成されているか否かを外観検査で容易に確認可能とするためには、
図4Bに例示するようにはんだフィレット47が左壁部11及び右壁部13の外側に形成されているとよい。また、複数の接触部材1を狭ピッチで並べて実装するような場合に、隣り合う位置にある2つの接触部材1間ではんだフィレット47が繋がってしまうのを回避したければ、
図4Cに例示するようにはんだフィレット47が左壁部11及び右壁部13の内側に形成されているとよい。
【0023】
接触部材1が電子回路基板41に実装された状態において、弾性接触部5の下端は、
図5Aに示すように、切欠43の内側となる位置に配置される。このように弾性接触部5の一部が切欠43の内側に入り込むようにすれば、電子回路基板41の上方に弾性接触部が設けられる場合に比べ、弾性接触部5のばね長をより長くすることができるので、弾性接触部5のばね性を容易に向上させることができる。
【0024】
電子回路基板41に実装された接触部材1は、例えば
図5Bに示すように、電子回路基板41の近傍に配設される金属製のパネル49に接触するように配置される。これにより、接触部材1は、電子回路基板41とパネル49とを電気的に接続する。
図5Bには、接触部材1とパネル49との間に0.5Nの圧縮力が作用している状態が例示されている。この状態において、弾性接触部5は、電子回路基板41の端面41A(切欠43の内側にある端面。)から離間した位置にある。一方、接触部材1とパネル49との間に作用する圧縮力が過大になった場合には、
図5Cに示すように、弾性接触部5の一部が電子回路基板41の端面41Aに加圧接触する状態となる。このような状態に至ると、パネル49から弾性接触部5に作用する圧縮力の一部は、電子回路基板41の端面41Aに作用するようになる。そのため、パネル49から弾性接触部5に作用する圧縮力を、第1接合端面21、第2接合端面22及び接合板面23以外の箇所に分散させることができ、はんだ付け箇所に過大な負荷がかかるのを抑制することができる。
【0025】
[効果]
以上説明した接触部材1によれば、基部3には、接合面として、薄板の端面によって構成される第1接合端面21及び第2接合端面22が設けられている。そのため、第1接合端面21及び第2接合端面22を利用してはんだ付けを行えば、薄板の板面を接触させるために必要な領域を電子回路基板41上において十分に確保できない場合であっても、接合端面を接触させることができる程度の狭い領域を確保できれば、接触部材1を実装することができる。あるいは、薄板の板面を接触させるために必要な領域を電子回路基板41上においてある程度は確保できるものの、十分な接合強度を確保することが難しい場合には、更に接合端面を接触させることができる程度の狭い領域を確保できれば、接合端面をはんだ付けすることにより、はんだ付け箇所の接合強度を高め、はんだ付け箇所を補強することができる。
【0026】
より具体的な例を交えて説明すれば、例えば、左壁部11の下端から左方へと延出する部分の板面及び右壁部13の下端から右方へと延出する部分の板面が接合面となっている接触部材1を比較対象とすれば、当該比較対象の接触部材1は、第1実施形態の接触部材1よりも左右方向に広い接合領域が必要になる。そのため、複数の接触部材1を狭ピッチで配置したい場合や、2つの電子部品間に存在する狭い空き領域に接触部材1を配置したい場合には、第1接合端面21及び第2接合端面22でのはんだ付けが可能な第1実施形態の接触部材1の方が有利である。
【0027】
また、上記接触部材1の場合、第1接合端面21及び第2接合端面22には、すずめっき皮膜が設けられている。そのため、プレス加工時に形成される打ち抜き端面がそのまま接合端面とされている場合とは異なり、薄板の素地を構成する金属(本実施形態の場合はばね用りん青銅。)が接合端面に露出するのを抑制することができる。したがって、第1接合端面21及び第2接合端面22において、素地金属の酸化物が生成するのを抑制でき、接触部材1と電子回路基板41との間の接触抵抗を低下させることができる。あるいは、第1接合端面21及び第2接合端面22におけるはんだ濡れ性を高めることができ、接触部材1と電子回路基板41との間の接合強度を高めることができる。
【0028】
また、上記接触部材1の場合、第1接合端面21及び第2接合端面22は、電子回路基板41に対して幅が狭くて細長い線状領域で線接触する。そのため、クリームはんだ45を印刷する際には、クリームはんだ45で線状のパターンを印刷すればよく、面状のパターンに板面を接触させてはんだ付けをする場合に比べ、いわゆるθずれ(電子回路基板41の上面に沿った回転方向のずれ。)が生じるのを抑制することができる。
【0029】
また、上記接触部材1の場合、弾性接触部5の一部が電子回路基板41の上面よりも下方へと延びているので、弾性接触部5全体が電子回路基板41の上面よりも上方にある場合に比べ、弾性接触部5がパネル49から受ける圧縮力の作用線をより下方へと下げることができる。したがって、弾性接触部5全体が電子回路基板41の上面よりも上方にある場合に比べ、はんだ付け箇所付近を回転中心とする回転モーメントを小さくすることができ、はんだ付け箇所に負荷がかかるのを抑制することができる。
【0030】
さらに、例えば、左壁部11の下端から右方へと延出する部分の板面及び右壁部13の下端から左方へと延出する部分の板面が接合板面23となっている接触部材1を比較対象とすれば、このような接触部材1において、上述のように弾性接触部5の一部が電子回路基板41の上面よりも下方へと延びている構成を採用するには、上述の2つの接合板面23を確保した上で、それらの接合板面23間に弾性接触部5の一部が配置されることになる。この場合、2つの接合板面23が確保される分だけ、第1実施形態の接触部材1よりも接触部材1の左右方向寸法が大きくなる。よって、そのような比較対象の接触部材1であっても、第1実施形態の接触部材1の方がより狭い領域に実装可能となる。
【0031】
(2)第2実施形態
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態では、第一実施形態と機能的に同等な構成については、第一実施形態と共通の符号を付す。
【0032】
[接触部材の構成]
図6A及び
図6Bに示すように、接触部材51は、基部3及び弾性接触部5を備える。基部3及び弾性接触部5は、金属の薄板(本実施形態の場合は、すずめっき付きばね用りん青銅、厚さ0.1mm。)によって一体成形されている。基部3は、左壁部11(本開示でいう第1壁部の一例に相当。)、右壁部13(本開示でいう第2壁部の一例に相当。)、及び天板部53を有する。
【0033】
左壁部11は、天板部53の左端から湾曲して下方へと延出し、更に前方へと延出している。右壁部13は、後壁部15の右端から湾曲して下方へと延出し、更に前方へと延出している。左壁部11及び右壁部13は、それぞれの板厚方向が左右方向に向けられて、左壁部11の一方の板面と右壁部13の一方の板面とが互いの間に空隙を空けて対向するように配置されている。
【0034】
左壁部11は、第1接合端面21(本開示でいう接合面の一例に相当。)を有する。第1接合端面21は、左壁部11の下端面である。右壁部13は、第2接合端面22(本開示でいう接合面の一例に相当。)を有する。第2接合端面22は、右壁部13の下端面である。これら第1接合端面21及び第2接合端面22は、同一平面に接することが可能な位置にある。第1接合端面21及び第2接合端面22には、すずめっき皮膜(本開示でいうめっき皮膜の一例に相当。)が形成されている。なお、すずめっき皮膜を後めっきで設ける点は、第1実施形態と同様なので、ここでの説明は省略する。
【0035】
弾性接触部5は、水平部55、立上部57及び折り返し部37を有する。水平部55は、天板部53の前端から前方へと延出している。水平部55は、板厚方向が上下方向に向けられている。水平部55の一部は、
図7A等に表れるように、左右方向の幅が部分的に広い形状とされ、その幅広部分の上面によって吸着面39が構成されている。この吸着面39は、接触部材51を自動実装機の吸引ノズルで吸着する際に利用される。立上部57は、水平部55の前端から湾曲して斜め後上方へと延出している。立上部57は、
図7B及び
図7D等に表れるように、左壁部11及び右壁部13の上端よりも上方へ突出している。折り返し部37は、立上部35の上端から湾曲して下方へと折り返されている。
【0036】
なお、図示は省略するが、以上のように構成された接触部材51は、電子回路基板41の上面にはんだ付けされて、電子回路基板41の上方において電子回路基板41と平行に配設されるパネル49に加圧接触することにより、電子回路基板41とパネル49とを電気的に接続することができる。
【0037】
[効果]
以上説明した接触部材51によれば、基部3には、接合面として、薄板の端面によって構成される第1接合端面21及び第2接合端面22が設けられている。そのため、第1接合端面21及び第2接合端面22を利用してはんだ付けを行えば、薄板の板面を接触させるために必要な領域を電子回路基板41上において十分に確保できない場合であっても、接合端面を接触させることができる程度の狭い領域を確保できれば、接触部材51を実装することができる。あるいは、薄板の板面を接触させるために必要な領域を電子回路基板41上においてある程度は確保できるものの、十分な接合強度を確保することが難しい場合には、更に接合端面を接触させることができる程度の狭い領域を確保できれば、接合端面をはんだ付けすることにより、はんだ付け箇所の接合強度を高め、はんだ付け箇所を補強することができる。すなわち、薄板の端面である第1接合端面21及び第2接合端面22をはんだ付けすることで、薄板の板面をはんだ付けする従来技術では対応が困難な一局面に対応することができる。
【0038】
また、上記接触部材51の場合、第1接合端面21及び第2接合端面22には、すずめっき皮膜が設けられている。そのため、プレス加工時に形成される打ち抜き端面がそのまま接合端面とされている場合とは異なり、薄板の素地を構成する金属(本実施形態の場合はばね用りん青銅。)が接合端面に露出するのを抑制することができる。したがって、第1接合端面21及び第2接合端面22において、素地金属の酸化物が生成するのを抑制でき、接触部材51と電子回路基板41との間の接触抵抗を低下させることができる。あるいは、第1接合端面21及び第2接合端面22におけるはんだ濡れ性を高めることができ、接触部材51と電子回路基板41との間の接合強度を高めることができる。
【0039】
また、上記接触部材51の場合、第1接合端面21及び第2接合端面22は、電子回路基板41に対して幅が狭くて細長い線状領域で線接触する。そのため、クリームはんだ45を印刷する際には、クリームはんだ45で線状のパターンを印刷すればよく、面状のパターンに板面を接触させてはんだ付けをする場合に比べ、いわゆるθずれ(電子回路基板41の上面に沿った回転方向のずれ。)が生じるのを抑制することができる。
【0040】
(3)他の実施形態
以上、本開示の接触部材について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0041】
例えば、上記第1実施形態では、基部3に設けられる接合面として、第1接合端面21、第2接合端面22及び接合板面23が設けられる例を示したが、第2実施形態においても例示した通り、板面で接触する接合板面23を設けるか否か任意である。
【0042】
また、上記第1実施形態では、基部3に延出部17を設けて、延出部17の下面を利用して接合板面23を構成してあったが、これに代えて、後壁部15の下端面を利用して第3の接合端面を設けてもよい。この場合、延出部17を省略できるので、第1実施形態の接触部材1以上に前後方向の空きが少ない領域にも実装可能な接触部材とすることができる。
【0043】
また、上記第1実施形態では、弾性接触部5の一部が電子回路基板41の上面よりも下方となる位置に配置される例を示したが、第2実施形態においても例示した通り、弾性接触部5の一部が電子回路基板41の上面よりも下方となる位置に配置されるか否か任意である。
【0044】
また、上記各実施形態では、金属の薄板の例として、すずめっき付きばね用りん青銅の薄板を例示し、めっき皮膜の例として、すずめっき皮膜を例示したが、薄板の素地金属やめっき金属は、上記実施形態で例示した金属に限定されない。例えば、薄板の素地金属としては、ばね用りん青銅以外のりん青銅、ベリリウム銅、洋白、チタン銅、及びニッケル-すず銅等の各種銅合金を利用することができる。あるいは、銅合金以外の金属(例えばステンレス鋼。)等を利用してもよい。めっき金属としては、すずの他には、金、銀、ニッケル等を利用してもよい。
【0045】
(4)補足
なお、以上説明した例示的な実施形態から明らかなように、本開示の接触部材は、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
【0046】
本開示の一態様では、基部は、それぞれが薄板によって構成される第1壁部及び第2壁部を有してもよい。第1壁部及び第2壁部は、第1壁部の一方の板面と前記第2壁部の一方の板面とが互いの間に空隙を空けて対向するように配置され、当該空隙内に弾性接触部の少なくとも一部が配置されることにより、弾性接触部が第1壁部及び第2壁部のうちのいずれか一方を挟んで他方とは反対側となる位置へ変位するのを抑制可能に構成されてもよい。第1壁部は、接合端面として、薄板の端面によって構成される第1接合端面を有してもよい。第2壁部は、接合端面として、薄板の端面によって構成される第2接合端面を有してもよい。
【0047】
本開示の一態様では、基部は、薄板によって構成される延出部を有してもよい。延出部は、接合面として、薄板の板面によって構成される接合板面を有してもよい。
本開示の一態様では、弾性接触部は、基部との接続箇所となる端部を固定端部、固定端部とは反対側の端部を自由端部として、固定端部から自由端部へと至る部分のうちの少なくとも一部が、接合面に接する位置に仮想される仮想平面を挟んで、固定端部とは反対側となる位置にまで延びる形状とされていてもよい。
【0048】
本開示の一態様では、第1部材は、板状に構成された電子回路基板であってもよい。弾性接触部は、基部が電子回路基板にはんだ付けされた際に、電子回路基板の端面よりも当該端面に垂直な方向へ突出する突出部分で、電子回路基板の端面と対向する位置に配置される第2部材に加圧接触するように構成されており、第2部材から電子回路基板の端面に向かう方向への圧縮荷重が過大になった場合には、弾性接触部の一部が電子回路基板の端面に加圧接触する状態となるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1,51…接触部材、3…基部、5…弾性接触部、11…左壁部、13…右壁部、15…後壁部、17…延出部、21…第1接合端面、22…第2接合端面、23…接合板面、31…天板部、33…垂下部、35…立上部、37…折り返し部、39…吸着面、41…電子回路基板、41A…端面、43…切欠、45…クリームはんだ、47…はんだフィレット、49…パネル、53…天板部、55…水平部、57…立上部。