(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】熱伝導材
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20220705BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20220705BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20220705BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220705BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220705BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C09K5/14 101E
C08L33/00
C08K5/12
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/26
(21)【出願番号】P 2018208230
(22)【出願日】2018-11-05
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 仁人
(72)【発明者】
【氏名】祐岡 輝明
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-048123(JP,A)
【文献】特開2006-096982(JP,A)
【文献】特開2011-187899(JP,A)
【文献】特開2012-007129(JP,A)
【文献】特開2012-233099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00-5/20
C08L 33/00
C08K 5/12
C08K 3/013
C08K 3/22
C08K 3/26
H01L 23/36
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素-炭素不飽和結合を含む架橋性官能基を少なくとも2個有するアクリル系ポリマー(A)と、前記架橋性官能基を
1個有するアクリル系ポリマー(B)との架橋反応物100質量部と、
粘度
(25℃)が650mPa・s以下であるアクリル系ポリマー(C)100~200質量部と、
トリメリット酸エステル系可塑剤150~350質量部と、
平均粒径が0.1μm以上100μm以下である熱伝導性フィラー3500~7500質量部と、
平均粒径が50nm以下である増粘剤50~300質量部とを有
し、
前記アクリル系ポリマー(A)の粘度(25℃)が、100000mPa・s以上200000Pa・s以下であり、
前記アクリル系ポリマー(B)の粘度(25℃)が、35000mPa・s以上60000mPa・s以下である熱伝導材。
【請求項2】
前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウムを含む請求項1に記載の熱伝導材。
【請求項3】
前記増粘剤が、炭酸カルシウムである請求項1又は請求項2に記載の熱伝導材。
【請求項4】
前記アクリル系ポリマー(A)の配合量Xに対する、前記アクリル系ポリマー(B)の配合量Yの割合(質量比:Y/X)は、9以上49以下である請求項1~請求項3の何れか一項に記載の熱伝導材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導材に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱体と放熱体との間に形成される小さな隙間等に充填して使用されるグリース状の熱伝導材が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。グリース状の熱伝導材は、密着性に優れ、しかも充填可能な隙間の大きさ、形状等の自由度が高いため、近年、広く用いられている。
【0003】
この種の熱伝導材は、主として、母材となる樹脂成分と、その中に分散される熱伝導フィラーとからなる。なお、熱伝導材には、耐熱性(例えば、100℃以上)が要求されるため、樹脂成分として、シリコーン樹脂が使用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-140395号公報
【文献】特開2010-242022号公報
【文献】米国特許第7208192号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリコーン樹脂を使用した熱伝導材からは、シロキサンガス(例えば、環状シロキサンガス)が発生してしまうため、問題となっていた。シロキサンガスは、電子機器の接点不良等を引き起こす原因となるため、シロキサンガスを発生しない非シリコーン樹脂を使用した熱伝導材が望まれている。
【0006】
しかしながら、非シリコーン樹脂を使用した従来の熱伝導材は、耐熱性等が不十分であり、改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、非シリコーン樹脂を使用した耐熱性に優れるグリース状の熱伝導材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
【0009】
<1> 炭素-炭素不飽和結合を含む架橋性官能基を少なくとも2個有するアクリル系ポリマー(A)と、前記架橋性官能基を少なくとも1個有するアクリル系ポリマー(B)との架橋反応物100質量部と、粘度が650mPa・s以下であるアクリル系ポリマー(C)100~200質量部と、トリメリット酸エステル系可塑剤150~350質量部と、平均粒径が0.1μm以上100μm以下である熱伝導性フィラー3500~7500質量部と、平均粒径が50nm以下である増粘剤50~300質量部とを有する熱伝導材。
【0010】
<2> 前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウムを含む前記<1>に記載の熱伝導材。
【0011】
<3> 前記増粘剤は、炭酸カルシウムである前記<1>又は<2>に記載の熱伝導材。
【0012】
<4> 前記アクリル系ポリマー(A)の配合量Xに対する、前記アクリル系ポリマー(B)の配合量Yの割合(質量比:Y/X)は、9以上49以下である前記<1>~<3>の何れか1つに記載の熱伝導材。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、非シリコーン樹脂を使用した耐熱性に優れるグリース状の熱伝導材を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔熱伝導材〕
本実施形態の熱伝導材は、グリース状であり、2つの物体(例えば、発熱体と放熱体)の間に介在させる形で使用される。熱伝導材は、ディスペンサー機を用いて吐出可能な粘度であるものの、塗布後において垂落ちせず、形状を保つことができる。
【0016】
熱伝導材は、主として、アクリル系ポリマー(A)とアクリル系ポリマー(B)との架橋反応物と、アクリル系ポリマー(C)と、トリメリット酸エステル系可塑剤と、熱伝導性フィラーと、増粘剤とを備えている。
【0017】
アクリル系ポリマー(A)は、常温で液状(シロップ状)であり、熱伝導材の母材(ベース樹脂)として利用され、炭素-炭素不飽和結合を含む架橋性官能基を少なくとも2個有するアクリル系ポリマーである。アクリル系ポリマー(A)は、前記架橋性官能基を両末端に有することが好ましい。
【0018】
アクリル系ポリマー(A)の粘度(25℃)は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、100000mPa・s以上200000mPa・s以下が好ましく、120000mPa・s以上180000mPa・s以下がより好ましい。
【0019】
アクリル系ポリマー(A)の主鎖は、例えば、以下に示される(メタ)アクリル酸系モノマーの重合体、又は(メタ)アクリル酸系モノマーと他のビニル系モノマーとの重合体からなる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの双方を含むことを意味する。
【0020】
前記(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルパーフルオロブチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2,2-ジパーフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチルパーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
また、前記他のビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族ビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
アクリル系ポリマー(A)の主鎖を合成する方法としては、本発明の目的を損なわない限り特に制限はなく、例えば、フリーラジカル重合法でもよいが、分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を小さくし易い等の理由により、リビングラジカル重合法が好ましい。リビングラジカル重合法(特に、原子移動ラジカル重合法)は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができ、しかも特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため好ましい。
【0023】
前記架橋性官能基は、少なくとも炭素-炭素不飽和結合を含む構造を備えており、例えば、下記化学式(1)で示される構造(官能基)からなる。
-OC(O)C(R)=CH2 (1)
(式中、Rは水素原子又は炭素数1~20の有機基を表す)
【0024】
前記化学式(1)で示される構造(官能基)としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましく、特に、アクリロイル基が好ましい。
【0025】
アクリル系ポリマー(A)のガラス転位温度は、-40℃以下が好ましく、-45℃以下がより好ましい。
【0026】
アクリル系ポリマー(B)は、熱伝導材の母材(ベース樹脂)として、前記アクリル系ポリマー(A)と共に利用(併用)され、炭素-炭素不飽和結合を含む架橋性官能基を少なくとも1個有するアクリル系ポリマーである。アクリル系ポリマー(B)は、前記架橋性官能基を片末端に有することが好ましい。なお、アクリル系ポリマー(B)は、アクリル系ポリマー(A)よりも粘度が低く、分子量(重量平均分子量、数平均分子量)が小さいことが好ましい。
【0027】
アクリル系ポリマー(B)は、常温で液状(シロップ状)であり、アクリル系ポリマー(A)よりも熱伝導材の母材(ベース樹脂)として、多く使用される。アクリル系ポリマー(B)の粘度(25℃)は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、35000mPa・s以上60000mPa・s以下が好ましく、40000mPa・s以上50000mPa・s以下がより好ましい。
【0028】
例えば、熱伝導材において、前記アクリル系ポリマー(A)の配合量Xに対する、前記アクリル系ポリマー(B)の配合量Yの割合(質量比:Y/X)は、好ましくは9以上、より好ましくは12以上、好ましくは49以下、より好ましくは30以下に設定される。
【0029】
アクリル系ポリマー(B)の主鎖は、基本的には、上記アクリル系ポリマー(A)と同様、上記(メタ)アクリル酸系モノマーの重合体、又は上記(メタ)アクリル酸系モノマーと上記他のビニル系モノマーとの重合体からなる。また、アクリル系ポリマー(B)の主鎖の合成方法も、基本的には、上記アクリル系ポリマー(A)の主鎖の場合と同様である。ただし、アクリル系ポリマー(B)の主鎖は、前記アクリル系ポリマー(B)よりも短い(分子量が小さい)ことが好ましい。
【0030】
アクリル系ポリマー(B)が有する架橋性官能基の内容は、アクリル系ポリマー(A)と同様である。アクリル系ポリマー(B)の架橋性官能基は、少なくとも炭素-炭素不飽和結合を含む構造を備えており、例えば、上記化学式(1)で示される構造(官能基)からなる。アクリル系ポリマー(B)の架橋性官能基においても、前記化学式(1)で示される構造(官能基)としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましく、特に、アクリロイル基が好ましい。
【0031】
アクリル系ポリマー(B)のガラス転位温度は、アクリル系ポリマー(A)のガラス転位温度と同程度が好ましく、具体的には、-40℃以下が好ましく、-45℃以下がより好ましい。
【0032】
前記アクリル系ポリマー(A)と前記アクリル系ポリマー(B)との架橋(重合)反応を行う際、アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)に、更に粘度が650mPa・s以下(25℃)である液状のアクリル系ポリマー(C)が加えられることが好ましい。アクリル系ポリマー(A)、アクリル系ポリマー(B)及びアクリル系ポリマー(C)の混合物(組成物)は、流動性を有する液状(シロップ状)である。
【0033】
アクリル系ポリマー(C)としては、前記アクリル系ポリマー(A)及び前記アクリル系ポリマー(B)と架橋反応しない無官能型であることが好ましい。また、アクリル系ポリマー(C)は、アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)に対して相溶性があり、それらと均一に混合可能なものが好ましい。
【0034】
アクリル系ポリマー(C)の粘度(25℃)は、アクリル系ポリマー(A)の粘度やアクリル系ポリマー(B)の粘度よりも低いことが好ましい。アクリル系ポリマー(C)の粘度(25℃)は、具体的には、650mPa・s以下であり、好ましくは600mPa・s以下であり、更に好ましくは550mPa・s以下である。アクリル系ポリマー(C)の粘度がこのような範囲であると、アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)に対して均一に混合し易い。
【0035】
アクリル系ポリマー(C)は、アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)の各ガラス転位温度よりも低いことが好ましく、例えば、-55℃以下が好ましく、-65℃以下がより好ましく、-75℃以下が更に好ましい。
【0036】
アクリル系ポリマー(C)の配合量は、アクリル系ポリマー(A)の配合量とアクリル系ポリマー(B)の配合量の合計100質量部に対して、100質量部以上200質量部以下に設定される。
【0037】
アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)を架橋反応させる際、重合開始剤(架橋開始剤)が利用される。重合開始剤は、熱又は光を受けてラジカルを発生し、主として、アクリル系ポリマー(A)の架橋性官能基、及びアクリル系ポリマー(B)の架橋性官能基を反応させる機能を備えている。架橋開始剤よりラジカルが発生すると、架橋性官能基同士が結合(重合)して、アクリル系ポリマー(A)とアクリル系ポリマー(B)との間や、アクリル系ポリマー(B)同士の間等が架橋される。
【0038】
重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類 、パーカーボネート類等の有機過酸化物が使用され、特に、パーカーボネート類が好ましい。
【0039】
重合開始剤としては、光(例えば、紫外光)を受けてラジカルを生成する光反応性であてもよい、熱を受けてラジカルを生成する熱反応性であってもよい。なお、アクリル系ポリマー(A)、アクリル系ポリマー(B)及びアクリル系ポリマー(C)を含む組成物中に、熱伝導性フィラー等が添加されている場合は、熱伝導材物中には、熱伝導フィラーが含まれているため、重合開始剤を活性化させるための光が遮られる可能性があるため、熱反応性の架橋開始剤を使用することが好ましい。
【0040】
なお、熱反応性の重合開始剤を使用する場合、その反応温度は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、組成物の保存安定性を確保する等の観点より、反応温度(加熱温度)が100℃以上のものを使用することが好ましい。
【0041】
重合開始剤の配合量は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)の合計100質量部に対して、0.035質量部以上であることが好ましい。なお、重合開始の配合量の上限は、例えば、前記合計100質量部に対して、0.1質量部以下が好ましく、0.08質量部以下がより好ましく、0.065質量部以下が更に好ましい。重合開始の配合量が、このような範囲であると熱伝導材の耐熱性(耐ズレ性)等を確保し易い。
【0042】
なお、アクリル系ポリマー(A)、アクリル系ポリマー(B)及びアクリル系ポリマー(C)を含む組成物に対して、更に、粘度調整等の目的で、シランカップリング剤を添加してもよい。
【0043】
シランカップリング剤の配合量は、アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)の合計100質量部に対して、例えば、100質量部以下で配合され、50質量部以下で配合されることが好ましい。
【0044】
トリメリット酸エステル系可塑剤としては、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。トリメリット酸エステル系可塑剤の市販品としては、商品名「アデカサイザー(登録商標) C-880」(株式会社ADEKA製)を用いることができる。
【0045】
トリメリット酸エステル系可塑剤の配合量は、アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)の合計100質量部に対して、150質量部以上350質量部以下に設定される。
【0046】
熱伝導性フィラーとしては、炭化ケイ素、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等が挙げられる。また、中空状の粒子(例えば、ガラスバルーン)や樹脂製の粒子等からなる核(コア)の表面に金属を被覆した表面金属被覆粒子も、利用することができる。熱伝導性フィラーは、複数種のものを併用してもよいし、1種のものを使用してもよい。これらのうち、アルミナ(酸化アルミニウム)を用いることが好ましい。
【0047】
熱伝導性フィラーの平均粒径は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はなく、例えば、0.1μm以上100μm以下のものが利用される。熱伝導性フィラーとしては、粒径が互いに異なる複数のものを使用してもよい。熱伝導性フィラーとして、平均粒径が100μm以下であるものを一定の割合で使用することで、熱伝導材の伸び性が確保される。また、熱伝導性フィラーとして、平均粒径が0.1μm以上1μm以下であるものを一定の割合で使用することで、熱伝導材の粘度が高くなり過ぎることが防止される。
【0048】
なお、熱伝導性フィラーの平均粒径は、レーザー回折法による体積基準の平均粒径(D50)である。平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布測定器で測定することができる。なお、後述する他の粒子の平均粒径も、レーザー回折法による体積基準の平均粒径(D50)である。
【0049】
熱伝導性フィラーの配合量は、アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)の合計100質量部に対して、3500質量部以上7500質量部以下に設定される。
【0050】
例えば、平均粒径が0.1μm以上0.5μm以下の熱伝導性フィラーと、平均粒径が1μm以上5μm以下の熱伝導性フィラーと、平均粒径が10μm以上20μm以下の熱伝導性フィラーと、平均粒径が30μm以上50μm以下の熱伝導性フィラーとを組み合わせて用いてもよい。この場合、熱伝導性フィラーの全配合量のうち、平均粒径が0.1μm以上0.5μm以下の熱伝導性フィラーの配合割合は、5~10質量%が好ましく、平均粒径が1μm以上5μm以下の熱伝導性フィラーの配合割合は、20~30質量%が好ましく、平均粒径が10μm以上20μm以下の熱伝導性フィラーの配合割合は、25~35質量%が好ましく、平均粒径が30μm以上50μm以下の熱伝導性フィラーの配合割合は、30~40質量%が好ましい。
【0051】
増粘剤は、垂落ち防止、チクソトロピー性の向上等を目的として、熱伝導材中に添加される。このような増粘剤としては、例えば、炭酸カルシウム等の炭酸塩を用いることが好ましい。増粘剤の平均粒径は、例えば、50nm以下が好ましい。増粘剤の配合量は、アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)の合計100質量部に対して、例えば、50質量部以上300質量部以下の範囲で配合される。なお、増粘剤が炭酸塩からなる場合、表面に脂肪酸がコーティングされていてもよい。つまり、増粘剤として、脂肪酸によるコーティング処理が施された炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム)を用いてもよい。
【0052】
熱伝導材は、更に、金属水酸化物、酸化防止剤、着色剤、難燃剤、可塑剤、フィラー等を含んでもよい。
【0053】
金属水酸化物は、熱伝導材に対して、難燃性、粘度調整等の目的で添加されてもよい。金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウムが挙げられる。金属水酸化物の表面は、高級脂肪酸によってコーティング処理したもの(表面処理済み金属水酸化物)であってもよい。高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、カプリル酸、ベヘニン酸、及びモンタン酸等が挙げられる。これらの中でも、オレイン酸が好ましい。金属水酸化物の平均粒径は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。金属水酸化物の平均粒径がこのような範囲であると、熱伝導材の粘性を、所定の吐出装置から比較的、低圧力で吐出可能であり、かつ吐出後に垂落ちせず、形状を保持できる状態に設定し易い。
【0054】
金属水酸化物の配合量は、アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)の合計100質量部に対して、例えば、50質量部以上500質量部以下の範囲で配合されてもよい。
【0055】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、フェノール・リン系酸化防止剤等が挙げられ、フェノール系酸化防止剤が好ましく、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤の配合量は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、アクリル系ポリマー(A)及びアクリル系ポリマー(B)の合計100質量部に対して、0.5質量部以上2質量部以下の範囲で使用されてもよい。
【0056】
熱伝導材を製造するための組成物及び熱伝導材は、有機溶剤等の溶剤を含んでいなくても、粘度が低く、グリース状を維持できる。そのため、有機溶剤は、必須成分ではなく、積極的に添加する必要はない。ただし、本発明の目的を損なわない限り、有機溶剤を使用してもよい。
【0057】
本実施形態の熱伝導材には、アクリル系ポリマー(A)とアクリル系ポリマー(B)、及びアクリル系ポリマー(B)同士等が架橋(重合)した架橋反応物が含まれている。つまり、熱伝導材中には、アクリル系ポリマー同士が緩やかに架橋された構造が形成される。熱伝導材中では、アクリル系ポリマー全体(アクリル系ポリマー(A),(B))の架橋密度は適度に低く、また、主にアクリル系ポリマー(B)に由来する自由鎖が多く存在していると推測される。そして、そのようなアクリル系ポリマーの中に、可塑剤や熱伝導性フィラー等が分散配合されている。このような熱伝導材は、適度な硬さを備えたグリース状となる。
【0058】
熱伝導材は、25℃の温度条件の下、0.2MPa程度の吐出圧で吐出可能な粘性(約1000Pa・s)を備えている。また、熱伝導材の熱伝導率は、2W/m・K以上であり、好ましくは3W/m・K以上である。
【0059】
また、熱伝導材は、ベース樹脂としてアクリル系樹脂を使用するため、例えば、シロキサンガスの発生が問題とならない。また、熱伝導材は、ディスペンス塗布した後、形状が維持され、垂落ちすることが抑制される。また、熱伝導材は、ディスペンサー機のノズル先から垂落ちる等の問題もない。また、熱伝導材は、高温条件下(例えば、125℃以上)で、軟化等により設置個所(例えば、物体同士の隙間)から垂れ落ちること(位置ズレすること)が抑制され、耐熱性(耐ズレ性等)に優れる。また、熱伝導材は、後述するように、冷熱衝撃を与えても物性が変化せず、初期の状態が保たれる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0061】
〔実施例1~3〕
(熱伝導材の作製)
アクリル系ポリマー(A)、アクリル系ポリマー(B)、アクリル系ポリマー(C)及び重合開始剤を、表1に示される配合量(質量部)でそれぞれ配合し、それらを混合した後、100℃で10分間加熱して、架橋反応(重合反応)を進行させた。その後、得られた組成物に対して、可塑剤(1)、シランカップリング剤、酸化防止剤、着色剤、酸化アルミニウム(1)~(5)、表面処理済み水酸化マグネシウム及び炭酸カルシウムを、表1に示される配合量(質量部)でそれぞれ配合し、それらを混練機等を利用して混練して、実施例1~3の熱伝導材を得た。
【0062】
前記アクリル系ポリマー(A)として、商品名「KANEKA XMAP(登録商標) RC100C」(株式会社カネカ製、両末端にアクリロイル基を有するアクリル系ポリマー、粘度:160000mPa・s(25℃)、比重:1.05、ガラス転移温度:-50℃)を使用した。
【0063】
前記アクリル系ポリマー(B)として、商品名「KANEKA XMAP(登録商標) MM110C」(株式会社カネカ製、片末端にアクリロイル基を有する反応性アクリル系マクロモノマー、粘度:44000mPa・s(25℃)、比重:1.05、ガラス転移温度:-50℃)を使用した。
【0064】
前記アクリル系ポリマー(C)として、商品名「ARUFON(登録商標) UP-1020」(東亞合成株式会社製、無官能基型及び無溶剤型アクリルポリマー、粘度:500mPa・s(25℃)、重量平均分子量:2000、比重:1.03、ガラス転位温度:-80℃)を使用した。
【0065】
前記重合開始剤として、商品名「PERKADOX(登録商標)16」(化薬アクゾ株式会社製、ジ-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(混合物))を使用した。
【0066】
前記可塑剤(1)として、商品名「アデカサイザー(登録商標) C-880」(株式会社ADEKA製、トリメリット酸エステル系可塑剤、粘度:220mPa・s(25℃)、ガラス転位温度:-17℃)を使用した。
【0067】
前記シランカップリング剤として、商品名「KBE-502」(信越化学工業株式会社製、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン)を使用した。
【0068】
前記酸化防止剤として、商品名「AO-60」(株式会社ADEKA製、フェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])を使用した。
【0069】
前記着色剤として、商品名「#7403(ブラック)」(大日精化工業株式会社製)を使用した。
【0070】
前記酸化アルミニウム(1)として、商品名「AZ10-75」(新日鉄住金マテリアルズ株式会社製、酸化アルミニウム(絶縁グレード)、球状、平均粒径:10μm、比重:3.8)を使用した。
【0071】
前記酸化アルミニウム(2)として、商品名「AX3-75」(新日鉄住金マテリアルズ株式会社製、酸化アルミニウム、球状、平均粒径:3μm、比重:3.8)を使用した。
【0072】
前記酸化アルミニウム(3)として、商品名「A10-C1」(株式会社アドマテックス製、酸化アルミニウム、球状、平均粒径:45μm、比重:3.8)を使用した。
【0073】
前記酸化アルミニウム(4)として、商品名「AC2000-SML」(株式会社アドマテックス製、酸化アルミニウム(メタクリルシラン処理)、真球状、平均粒径:0.2μm、比重:3.6)を使用した。
【0074】
前記酸化アルミニウム(5)として、商品名「AX1M」(新日鉄住金マテリアルズ株式会社製、酸化アルミニウム、球状、平均粒径:1μm、比重:3.8)を使用した。
【0075】
前記表面処理済み水酸化マグネシウムとして、商品名「マグシーズN-4」(神島化学工業株式会社製、水酸化マグネシウム粒子をオレイン酸で表面処理した粒子状物、平均粒径:1.3μm、比重:2.4)を使用した。
【0076】
前記炭酸カルシウムとして、商品名「Viscoexcel-30」(白石工業株式会社製、炭酸カルシウム(脂肪酸処理)、平均粒径:30nm、比重:2.49)を使用した。
【0077】
〔比較例1〕
可塑剤(1)に代えて可塑剤(2)250質量部を配合し、シランカップリング剤を配合しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の熱伝導材を作製した。
【0078】
なお、可塑剤(2)としては、商品名「サンソサイザー(登録商標) DOS」(新日本理化株式会社製、シバシン酸ジ2-エチルヘキシル、粘度:13mPa・s(25℃)、重量平均分子量:426、ガラス転位温度:-69℃)を使用した。
【0079】
〔比較例2〕
アクリル系ポリマー(C)に代えて、アクリル系ポリマー(D)150質量部を配合したこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2の熱伝導材を作製した。
【0080】
なお、アクリル系ポリマー(D)としては、商品名「アクリキュアー(登録商標) HD-A218」(株式会社日本触媒製、粘度:40mPa・s(25℃))を使用した。
【0081】
〔比較例3〕
アクリル系ポリマー(C)に代えてアクリル系ポリマー(E)150質量部を配合したこと以外は、比較例1と同様にして、比較例3の熱伝導材を作製した。
【0082】
なお、アクリル系ポリマー(E)としては、商品名「アクトフロー(登録商標) NE-1000」(綜研化学株式会社製、重量平均分子量:3000、粘度:700~1300mP・s(25℃))を使用した。
【0083】
〔比較例4〕
アクリル系ポリマー(B)の配合量を245質量部に変更し、アクリル系ポリマー(C)及びシランカップリング剤を配合せず、可塑剤(1)に代えて可塑剤(2)250質量部を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の熱伝導材を作製した。
【0084】
〔比較例5〕
水酸化マグネシウムを配合せず、炭酸カルシウムの配合量を250質量部に変更したこと以外は、比較例4と同様にして、比較例5の熱伝導材を作製した。
【0085】
〔比較例6〕
水酸化マグネシウム及び炭酸カルシウムを配合しないこと以外は、比較例4と同様にして、比較例6の熱伝導材を作製した。
【0086】
〔吐出量の測定〕
各実施例及び各比較例の熱伝導材を、25℃の温度条件の下、吐出圧力0.2MPa、吐出時間1分の条件で吐出させて、各熱伝導材の10秒間当たり吐出量(g/10秒)を求めた。結果は、表1に示した。なお、使用した装置は、以下の通りである。
ディスペンサーコントローラ:製品名「SMART SHOT MS-1D」(武蔵エンジニアリング株式会社製)
シリンジ:製品名「PSY-30E」(武蔵エンジニアリング株式会社製、筒先の内径:2mm、熱伝導材を収容する部分(所謂、薬液部)の内径:26.2mm)
【0087】
〔熱伝導率の測定〕
各実施例及び各比較例の熱伝導材について、ホットディスク法により、熱伝導率(W/m・K)を測定した。なお、測定には、ホットディスク熱特性測定装置(製品名「TPS500」、Hot Disk社製)を用いた。ポリイミドセンサーを1組の試験片で挟み込む際、各試験片のサイズは、30mm×30mm×7mmに設定した。結果は、表1に示した。
【0088】
〔垂落ち試験〕
各実施例及び各比較例の熱伝導材について、以下に示す方法で、耐ズレ性(耐垂落ち性)を評価した。
図1は、耐ズレ性の評価に使用する試験片Tの説明図である。
図1に示されるように、2枚のガラス板(スライドガラス)21を用意し、それらの間にスペーサ(厚み1.0mmのワッシャー)22を介在させつつ1gの熱伝導材Sを入れ、熱伝導材Sが円形となるように、2枚のガラス板21の間で挟み込んだ。ガラス板21同士は、クリップ23を利用して固定した。なお、熱伝導材Sの初期位置を示すために、熱伝導材Sの輪郭をガラス板21の表面に油性ペンで示した。このようにして得られた試験片Tを、扁平な円形状の熱伝導材Sが鉛直方向に沿って起立するように、熱衝撃試験機(製品名「TSE-11-A」、エスペック株式会社製)の中に設置し、125℃の温度条件で100時間放置した。その後、熱伝導材Sの位置が、元の位置(初期位置)からどのぐらい垂落ち(位置ズレ)したかを、以下に示される評価基準に基づいて判定した。結果は、表1に示した。
【0089】
<評価基準>
「〇」・・・垂落ちなし(ズレ量が5%以内の場合)
「△」・・・やや垂落ちあり(ズレ量が50%未満の場合)
「×」・・・垂落ちあり(ズレ量が50%以上の場合)
【0090】
〔ポンプアウト試験〕
2枚のガラス板の間に介在させるスペーサの厚みを0.5mmに変更し、かつ2枚のガラス板の間に入れる熱伝導材の量を0.5gに変更したこと以外は、上記垂落ち試験時と同様にして、各実施例及び各比較例の試験片を作製した。得られた試験片を、熱衝撃試験機において、横置きの状態(ガラス板が水平の状態)で、-40℃と125℃(各30分)を交互に繰り返す冷熱サイクル試験(サイクル数:100回)を行った。その後、試験片中の熱伝導材におけるクラックの有無を目視で確認した。結果は、表1に示した。なお、クラックがない場合、「〇」と表し、クラックが発生した場合、「×」と表した。
【0091】
〔高温試験〕
上記垂落ち試験時と同様にして、各実施例及び各比較例の試験片を作製した。得られた試験片を、熱衝撃試験機において、横置きの状態(ガラス板が水平の状態)で設置し、125℃の温度条件で500時間放置した。その後、試験片中の熱伝導材の劣化状態を目視で確認した。結果は、表1に示した。なお、劣化がない場合、「〇」と表し、劣化が発生した場合、「×」と表した。
【0092】
【0093】
表1に示されるように、実施例1~3の熱伝導材は、熱伝導率が3.0W/m・Kであり、熱伝導性に優れることが確かめられた。また、実施例1~3の熱伝導材は、耐熱性に優れることが確かめられた。実施例1~3の熱伝導材は、0.2MPaという比較的、低い圧力で、吐出可能な粘性(流動性)を備えているにもかかわらず、高温条件下で使用しても垂落ちすることなく、形状を保持することができる。
【0094】
比較例1~6の熱伝導材は、高温試験の結果、可塑剤(2)等の液状成分が揮発する等して減少したため、乾燥及び脆化した状態となった。また、比較例1~6の熱伝導材では、変色(黄変)も見られた。特に、炭酸カルシウムを含んでいない比較例6では、垂落ち試験において、熱伝導材が垂落ちる結果となった。なお、比較例1~6の熱伝導材において、外部へ漏れ出た可塑剤(2)は、周囲にある他の部材(例えば、ポリカーボネート等のプラスチック製の部材)と接触すると、他の部材を溶かしてしまう。そのため、このような観点からも、可塑剤(2)を使用することは好ましくない。
【符号の説明】
【0095】
S…熱伝導材(試験前)、21…ガラス板、22…スペーサ、23…クリップ、24…熱伝導材の初期位置を表す輪郭