(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】特定装置、特定方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20220705BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20220705BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20220705BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
H04Q9/00 311H
H04W64/00
(21)【出願番号】P 2019176926
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-05-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】川邊 幹浩
(72)【発明者】
【氏名】福本 侑記
(72)【発明者】
【氏名】辰己 雅一
(72)【発明者】
【氏名】高田 和俊
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519592(JP,A)
【文献】国際公開第2004/064332(WO,A1)
【文献】特開2019-009655(JP,A)
【文献】特開2014-023147(JP,A)
【文献】特開2004-304255(JP,A)
【文献】特開平07-210477(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0156025(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0059410(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信機器それぞれの間の無線通信を参照して得られた指標を取得し、取得した前記指標を用いて、前記複数の通信機器の距離に関する第一順位情報を生成する第一生成部と、
空間における前記複数の通信機器と同数の複数の位置であって、前記複数の通信機器それぞれが前記複数の位置のいずれかに設置されている複数の位置を示す地図情報を取得し、前記地図情報から前記複数の通信機器の距離に関する第二順位情報を生成する第二生成部と、
前記第一順位情報と前記第二順位情報とを照合することで、前記複数の位置のうち、前記複数の通信機器の少なくとも一の通信機器が設置されている設置位置を特定する特定部とを備える
特定装置。
【請求項2】
前記第一生成部は、
前記複数の通信機器のうちの第一機器と、前記複数の通信機器のうち前記第一機器以外の通信機器との無線通信によって得られる前記指標を取得し、取得した前記指標を用いて、前記複数の通信機器のうち前記第一機器に最も近い位置に設置されていると推定される通信機器である第二機器の識別情報を含む前記第一順位情報を生成し、
前記第二生成部は、
前記地図情報において前記第一機器に最も近い位置に設置されている通信機器の識別情報を含む前記第二順位情報を生成し、
前記特定部は、
前記第一順位情報と前記第二順位情報とを照合することで、前記地図情報において前記第一機器に最も近い位置に設置されている前記通信機器の位置を、前記第二機器の設置位置として特定する
請求項1に記載の特定装置。
【請求項3】
前記第一生成部は、
前記特定部が設置位置を特定した前記第二機器を新たな第一機器として、新たな第二機器の識別情報を前記第一順位情報として生成し、
前記第二生成部は、
前記特定部が設置位置を特定した前記第二機器を新たな第一機器として、新たな第二順位情報を生成し、
前記特定部は、
前記特定部が設置位置を特定した前記第二機器を新たな第一機器として、前記新たな第二機器の設置位置を特定し、
前記第一生成部による前記第一順位情報の生成、前記第二生成部による前記第二順位情報の生成、および、前記特定部による前記新たな第二機器の設置位置の特定を繰り返すことで、前記複数の通信機器すべての設置位置を順次に特定する
請求項2に記載の特定装置。
【請求項4】
前記第一生成部は、
前記複数の通信機器同士の無線通信の特性を示す特性値を複数取得し、
取得した複数の前記特性値の、前記複数の通信機器ごとの偏差を前記指標として取得し、
通信機器ごとの前記偏差が最も小さな通信機器を前記第二機器として特定し、特定した前記第二機器の識別情報を、前記第一順位情報として生成する
請求項2又は3に記載の特定装置。
【請求項5】
前記第一生成部は、
前記複数の通信機器同士の無線通信の特性を示す特性値であって、小さな特性値ほど通信品質が高いことを示す特性値を複数取得し、
取得した複数の前記特性値の、前記複数の通信機器ごとの平均を取得し、
通信機器ごとの前記平均が最も小さな通信機器を前記第二機器として特定し、特定した前記第二機器の識別情報を、前記第一順位情報として生成する
請求項2又は3に記載の特定装置。
【請求項6】
前記第一生成部は、
前記複数の通信機器同士の無線通信の特性を示す特性値を複数取得し、
取得した複数の前記特性値を用いて前記第一機器に最も近い位置に設置されている通信機器として特定された回数が最も多い通信機器を前記第二機器として特定し、特定した前記第二機器の識別情報を、前記第一順位情報として生成する
請求項2~5のいずれか1項に記載の特定装置。
【請求項7】
前記特性値は、無線通信の通信リンクの受信信号強度、エラー率、伝送レート、または往復時間を含む
請求項4~6のいずれか1項に記載の特定装置。
【請求項8】
前記第一生成部は、
前記複数の通信機器それぞれの無線通信によって得られる指標を取得し、取得した前記指標を用いて、前記複数の通信機器同士の距離の順位を含む前記第一順位情報を生成し、
前記第二生成部は、
前記地図情報において、前記複数の位置に前記複数の通信機器が設置され得る複数のパターンそれぞれについての、前記複数の通信機器同士の距離の順位を含む前記第二順位情報を生成し、
前記特定部は、
前記第一順位情報と前記第二順位情報とを照合することで、前記複数の通信機器すべての設置位置を特定する
請求項1に記載の特定装置。
【請求項9】
複数の通信機器それぞれの間の無線通信を参照して得られた指標を取得し、取得した前記指標を用いて、前記複数の通信機器の距離に関する第一順位情報を生成する第一生成ステップと、
空間における前記複数の通信機器と同数の複数の位置であって、前記複数の通信機器それぞれが前記複数の位置のいずれかに設置されている複数の位置を示す地図情報を取得し、前記地図情報から前記複数の通信機器の距離に関する第二順位情報を生成する第二生成ステップと、
前記第一順位情報と前記第二順位情報とを照合することで、前記複数の位置のうち、前記複数の通信機器の少なくとも一の通信機器が設置されている設置位置を特定する特定ステップとを含む
特定方法。
【請求項10】
請求項9に記載された特定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定装置、特定方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信モジュールを搭載する空調機又は照明機器などの機器(通信機器ともいう)が利用されている。同一種別の複数の通信機器が、比較的広い空間において固定設置されて利用されることもある。
【0003】
上記のように複数の通信機器が設置されるときには、複数の通信機器を設置すべき複数の位置が予め定められているものの、通信機器の個体それぞれを複数の位置のうちのどの位置に設置するかが定められていないこともある。
【0004】
空間のレイアウトと装置を地図上で関連付けながら、1つの装置に着目して他の装置との距離を判断する技術がある。この技術では、上記他の装置との距離が確定したら、個々の装置に個別情報が入力される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、予め定められた複数の位置のいずれかに、複数の通信機器のいずれかが設置されているときに、どの通信機器がどの位置に設置されているか、つまり、通信機器とその設置位置との関係が不明であることがある。このようなとき、複数の通信機器のうちの個体が、複数の位置のうちのどの位置に設置されているのかを特定することが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを特定する特定装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る特定装置は、複数の通信機器それぞれの間の無線通信を参照して得られた指標を取得し、取得した前記指標を用いて、前記複数の通信機器の距離に関する第一順位情報を生成する第一生成部と、空間における前記複数の通信機器と同数の複数の位置であって、前記複数の通信機器それぞれが前記複数の位置のいずれかに設置されている複数の位置を示す地図情報を取得し、前記地図情報から前記複数の通信機器の距離に関する第二順位情報を生成する第二生成部と、前記第一順位情報と前記第二順位情報とを照合することで、前記複数の位置のうち、前記複数の通信機器の少なくとも一の通信機器が設置されている設置位置を特定する特定部とを備える。
【0009】
これによれば、特定装置は、実際に行われた無線通信によって得られた指標から導出される複数の通信機器間の距離の順位と、地図上の複数の通信機器間の距離の順位とを照合することによって通信機器の設置位置を特定できる。一般に通信機器が他の通信機器から受信する電波は、これらの通信機器間の距離が大きいほど低下することが知られている。しかしながら、実際のオフィス又は工場などの環境では、壁又は天井などでの電波が反射又は吸収等されるので、受信信号強度が距離に応じて単純に低下するとは限らない。そこで、特定装置は、上記のように通信機器間の距離の順位を利用することにより、受信信号強度と距離との関係が正確にはわからない状況であっても、複数の通信機器から受信する受信信号強度の順位が判明していれば、通信機器の位置を特定することができる。このように特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを特定することができる。
【0010】
また、前記第一生成部は、前記複数の通信機器のうちの第一機器と、前記複数の通信機器のうち前記第一機器以外の通信機器との無線通信によって得られる前記指標を取得し、取得した前記指標を用いて、前記複数の通信機器のうち前記第一機器に最も近い位置に設置されていると推定される通信機器である第二機器の識別情報を含む前記第一順位情報を生成し、前記第二生成部は、前記地図情報において前記第一機器に最も近い位置に設置されている通信機器の識別情報を含む前記第二順位情報を生成し、前記特定部は、前記第一順位情報と前記第二順位情報とを照合することで、前記地図情報において前記第一機器に最も近い位置に設置されている前記通信機器の位置を、前記第二機器の設置位置として特定してもよい。
【0011】
これによれば、特定装置は、複数の通信機器のうち位置が判明している通信機器に最も近い通信機器の位置を特定できる。よって、特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかをより容易に特定することができる。
【0012】
また、前記第一生成部は、前記特定部が設置位置を特定した前記第二機器を新たな第一機器として、新たな第二機器の識別情報を前記第一順位情報として生成し、前記第二生成部は、前記特定部が設置位置を特定した前記第二機器を新たな第一機器として、新たな第二順位情報を生成し、前記特定部は、前記特定部が設置位置を特定した前記第二機器を新たな第一機器として、前記新たな第二機器の設置位置を特定し、前記第一生成部による前記第一順位情報の生成、前記第二生成部による前記第二順位情報の生成、および、前記特定部による前記新たな第二機器の設置位置の特定を繰り返すことで、前記複数の通信機器すべての設置位置を順次に特定してもよい。
【0013】
これによれば、特定装置は、複数の通信機器のうち位置が判明している通信機器に最も近い通信機器の位置を特定することを繰り返すことで、複数の通信機器すべての位置を特定することができる。このように特定装置は、複数の通信機器すべてについて、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを特定することができる。
【0014】
また、前記第一生成部は、前記複数の通信機器同士の無線通信の特性を示す特性値を複数取得し、取得した複数の前記特性値の、前記複数の通信機器ごとの偏差を前記指標として取得し、通信機器ごとの前記偏差が最も小さな通信機器を前記第二機器として特定し、特定した前記第二機器の識別情報を、前記第一順位情報として生成してもよい。
【0015】
これによれば、特定装置は、複数の通信機器のうち位置が判明している通信機器に最も近い通信機器の位置を特定する際に、無線通信の特性値の偏差を用いることで、その処理がより容易になる。特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを、より容易に特定することができる。
【0016】
また、前記第一生成部は、前記複数の通信機器同士の無線通信の特性を示す特性値であって、小さな特性値ほど通信品質が高いことを示す特性値を複数取得し、取得した複数の前記特性値の、前記複数の通信機器ごとの平均を取得し、通信機器ごとの前記平均が最も小さな通信機器を前記第二機器として特定し、特定した前記第二機器の識別情報を、前記第一順位情報として生成してもよい。
【0017】
これによれば、特定装置は、複数の通信機器のうち位置が判明している通信機器に最も近い通信機器の位置を特定する際に、無線通信の特性値の平均を用いることで、その処理がより容易になる。特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを、より容易に特定することができる。
【0018】
また、前記第一生成部は、前記複数の通信機器同士の無線通信の特性を示す特性値を複数取得し、取得した複数の前記特性値を用いて前記第一機器に最も近い位置に設置されている通信機器として特定された回数が最も多い通信機器を前記第二機器として特定し、特定した前記第二機器の識別情報を、前記第一順位情報として生成してもよい。
【0019】
これによれば、特定装置は、複数の通信機器のうち位置が判明している通信機器に最も近い通信機器の位置を特定する際に、過去に、最も近い通信機器として特定された回数が最も多い通信機器を特定することで、その処理がより容易になる。特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを、より容易に特定することができる。
【0020】
また、前記特性値は、無線通信の通信リンクの受信信号強度、エラー率、伝送レート、または往復時間を含んでもよい。
【0021】
これによれば、特定装置は、無線通信の通信リンクの受信信号強度、エラー率、伝送レート、または往復時間を特性値として用いて、より容易に、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを特定することができる。
【0022】
また、前記第一生成部は、前記複数の通信機器それぞれの無線通信によって得られる指標を取得し、取得した前記指標を用いて、前記複数の通信機器同士の距離の順位を含む前記第一順位情報を生成し、前記第二生成部は、前記地図情報において、前記複数の位置に前記複数の通信機器が設置され得る複数のパターンそれぞれについての、前記複数の通信機器同士の距離の順位を含む前記第二順位情報を生成し、前記特定部は、前記第一順位情報と前記第二順位情報とを照合することで、前記複数の通信機器すべての設置位置を特定してもよい。
【0023】
これによれば、特定装置は、複数の位置に複数の通信機器が設置され得る複数のパターンのうち、現実の無線通信の特性値と適合するものを選択する。よって、特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかをより容易に特定することができる。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る特定方法は、複数の通信機器それぞれの間の無線通信を参照して得られた指標を取得し、取得した前記指標を用いて、前記複数の通信機器の距離に関する第一順位情報を生成する第一生成ステップと、空間における前記複数の通信機器と同数の複数の位置であって、前記複数の通信機器それぞれが前記複数の位置のいずれかに設置されている複数の位置を示す地図情報を取得し、前記地図情報から前記複数の通信機器の距離に関する第二順位情報を生成する第二生成ステップと、前記第一順位情報と前記第二順位情報とを照合することで、前記複数の位置のうち、前記複数の通信機器の少なくとも一の通信機器が設置されている設置位置を特定する特定ステップとを含む。
【0025】
これによれば、上記特定装置と同様の効果を奏する。
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るプログラムは、上記の特定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0027】
これによれば、上記通信端末と同様の効果を奏する。
【0028】
なお、本発明は、装置として実現できるだけでなく、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体として実現したり、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データ及び信号は、インターネット等の通信ネットワークを介して配信してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る空間を示す地図の一例を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る特定装置の構成を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係るログ情報の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る通信機器ごとの受信電波のRSSIと順位情報とを示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る通信機器の地図情報から得られる順位情報を示す説明図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る通信機器ごとのRSSIの標準偏差と順位情報とを示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る通信機器ごとのRSSIの平均と順位情報とを示す説明図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係る通信機器ごとの一位取得回数を示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係る特定装置の処理を示すフロー図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2に係る通信機器の位置と、通信機器の距離の順位に関する情報とを示す説明図である。
【
図11】
図11は、実施の形態2に係る通信機器ごとの受信電波のRSSIおよび順位情報と、通信機器の位置の特定とを示す説明図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2に係る特定装置の処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0032】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態において、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを特定する特定装置などについて説明する。
【0034】
図1は、本実施の形態に係る空間を示す地図の一例を模式的に示す説明図である。
図1に示される地図は、例えばオフィス内の壁、部屋、階段などの位置又は間取りを示す地図である。なお、
図1に示される地図は、地図情報の一例である。地図情報は、必ずしも
図1のように図示されたものである必要はなく、オフィス内の壁などの位置を示す座標情報の集合であってもよい。
【0035】
図1に示される地図には、5台の通信機器A、B、C、DおよびE(通信機器A等ともいう)が示されている。通信機器A、B、C、DおよびEそれぞれの設置位置を、位置P、Q、R、SおよびT(位置P等ともいう)とする。
【0036】
また、
図1には、通信機器A等同士の距離の例も示されている。例えば、通信機器A-B間の距離は17mであり、通信機器B-C間の距離は22mであり、通信機器C-A間の距離は15mである。
【0037】
通信機器A等は、通信機能を有する機器であり、無線基地局(アクセスポイントともいう)、無線通信端末のほか、空調機または照明機器などの機器であってもよい。通信機器は、原則的には、壁又は天井のような造営材に固定的に設置されており、設置状態において人により持ち運ばれることは想定されていない。
【0038】
通信機器A等が設置されるときには、5台の通信機器が、5個の設置位置のうちのいずれかに設置されるということが定められているだけであったとする。つまり、特定の通信機器と特定の位置との対応付けがなされていなかったとする。
【0039】
具体的には、通信機器A等が設置されるときには、通信機器Aが設置されるべき位置は、位置P等うちのどれかであると定められていたとする。そのような状況で、複数の位置P等のうちの位置Pに通信機器Aが設置されたとする。同様に、通信機器Bが設置されるべき位置は、位置P等のうちのどれかであり、そのうちの位置Qに通信機器Bが設置されたとする。通信機器C、DおよびEについても同様である。
【0040】
本実施の形態にかかる特定装置10は、例えば、通信機器A等のうちのいずれかに接続されており、通信機器A等から取得する情報に基づいて、個々の通信機器(例えば通信機器A)が、複数の位置のうちのどの位置に設置されているかを特定することを目的とする。なお、特定装置10は、必ずしも地図に示される位置に配置される必要はなく、通信機器A等に接続されていれば、その位置はどこであってもよい。
【0041】
通信機器がどの位置に設置されているかを特定することができれば、例えば、通信機器の動作が不調であったり、故障したりした場合に、その通信機器の周辺の調査、又は、修理若しくは交換をすることが容易になる。
【0042】
特定装置10は、通信機器A等と通信を行い、通信機器A等同士が互いの無線通信で知り得た情報(例えば、電波強度、送信レートなど)を適宜、取得する装置である。例えば、特定装置10は、携帯端末(タブレット、スマートフォンなど)、ノートPC(Personal Computer)などである。
【0043】
なお、通信機器A等の台数は、5に限られず、複数であればよい。また、通信機器A等は、例えば、IEEE802.11s規格に準拠したメッシュネットワークを構成するMP(メッシュポイント)、MAP(メッシュアクセスポイント)などであってもよい。
【0044】
図2は、本実施の形態に係る特定装置10の構成を示す説明図である。
【0045】
図2に示されるように、特定装置10は、第一生成部11と、第二生成部12と、特定部13とを備える。なお、特定装置10が備える各機能部は、特定装置10が備えるCPU(不図示)がメモリ(不図示)を用いて所定のプログラムを実行することで実現され得る。
【0046】
第一生成部11は、複数の通信機器A等それぞれの無線通信を参照して得られる指標を取得し、取得した指標を用いて、複数の通信機器A等の距離に関する順位情報(第一順位情報ともいう)を生成する処理部である。
【0047】
ここで、順位情報とは、複数の通信機器A等同士の距離の順位を示す情報である。例えば、順位情報とは、通信機器A-B間の距離、通信機器A-C間の距離、通信機器A-D間の距離などについて順序を付けた場合の順位を示す情報である。また、順位情報は、上記距離のうちで最も短い距離を特定する情報であってもよい。
【0048】
第二生成部12は、空間における複数の通信機器A等と同数の複数の位置P等であって、複数の通信機器A等それぞれが複数の位置P等のいずれかに設置されている複数の位置P等を示す地図情報を取得し、地図情報から複数の通信機器A等の距離に関する順位情報(第二順位情報ともいう)を生成する処理部である。
【0049】
特定部13は、第一順位情報と第二順位情報とを照合することで、複数の位置P等のうち、複数の通信機器A等の少なくとも一の通信機器が設置されている設置位置を特定する処理部である。
【0050】
特定装置10による通信機器の設置位置の特定方法のより具体的な処理の一例を以下で説明する。なお、別の例は、後述する実施の形態で説明される。
【0051】
例えば、第一生成部11は、複数の通信機器A等のうちの第一機器と、複数の通信機器A等のうち第一機器以外の通信機器との無線通信によって得られる指標を取得し、取得した指標を用いて、複数の通信機器A等のうち第一機器に最も近い位置に設置されている通信機器である第二機器の識別情報を含む第一順位情報を生成する。
【0052】
また、第二生成部12は、地図情報において、第一機器に最も近い位置に設置されている通信機器の識別情報を含む第二順位情報を生成する。なお、ここで、第一機器の地図上での位置は既知であるとする。
【0053】
そして、特定部13は、第一順位情報と第二順位情報とを照合することで、地図情報において第一機器に最も近い位置に設置されている通信機器の位置を、第二機器の設置位置として特定する。これにより特定部13は、複数の通信機器のうちの一の通信機器の設置位置を特定することができる。
【0054】
さらに、第一生成部11は、特定部13が設置位置を特定した第二機器を新たな第一機器として、新たな第二機器の識別情報を第一順位情報として生成する。第二生成部12は、特定部13が設置位置を特定した第二機器を新たな第一機器として、新たな第二順位情報を生成する。特定部13は、特定部13が設置位置を特定した第二機器を新たな第一機器として、新たな第二機器の設置位置を特定する。そして、第一生成部11による第一順位情報の生成、第二生成部12による第二順位情報の生成、および、特定部13による新たな第二機器の設置位置の特定を繰り返すことで、特定装置10は、複数の通信機器すべての設置位置を順次に特定する。これにより特定部13は、複数の通信機器すべての設置位置を特定することができる。
【0055】
ここで、第一機器が通信機器Aである場合を例として、複数の通信機器A等の設置位置を特定する方法について具体的に説明する。
【0056】
第一生成部11は、第一機器としての通信機器Aと、通信機器B~Eそれぞれとの無線通信によって得られる指標を用いて、第二機器の識別情報として通信機器Cの識別情報を含む第一順位情報を生成する。
【0057】
第二生成部12は、地図情報において、第一機器としての通信機器Aに最も近い位置である、位置Rに設置されている通信機器の識別情報を含む第二順位情報を生成する。そして、特定部13は、第一順位情報と第二順位情報とを照合することで、地図情報における位置Rを通信機器Cの設置位置として特定し、言い換えれば、通信機器Cが位置Rに設置されていると特定する。
【0058】
さらに、この後、特定装置10は、設置位置が既知である通信機器A又は通信機器Cに着目して、通信機器A又はCに最も近い通信機器とその設置位置を特定する。特定装置10は、この処理を繰り返すことによって、通信機器A等のすべての設置位置を特定することができる。
【0059】
以降において、特定装置10が処理に用いる情報について説明する。
【0060】
図3は、本実施の形態に係るログ情報の一例を示す説明図である。
図3に示されるログ情報は、通信機器Aが生成した、通信機器Aと通信機器B~Eそれぞれとの無線通信のログの一例である。
【0061】
図3に示されるログ情報は、通信機器Aが無線通信によって受信した通信フレーム(単に「フレーム」ともいう)1つについて1つのエントリ(つまり1行)が生成される。ログ情報の1つのエントリには、時刻、送信元MACアドレス、宛先MACアドレス、伝送レート、RSSI(Received Signal Strength Indicator、受信信号強度)の各情報が含まれている。なお、ログ情報には、上記の他の情報も含まれ得る。
【0062】
時刻は、当該エントリに係るフレームが受信された時刻を示す情報である。時刻は、当該ログ情報の先頭のフレームを起点とした相対時刻で表現されてもよいし、絶対時刻で表現されてもよい。
【0063】
送信元MACアドレスは、当該エントリに係るフレームの送信元アドレスを示す情報である。
【0064】
宛先MACアドレスは、当該エントリに係るフレームの宛先アドレスを示す情報である。
【0065】
伝送レートは、当該エントリに係るフレームの伝送レートを示す情報である。
【0066】
RSSIは、当該エントリに係るフレームの受信信号強度を示す情報である。
【0067】
例えば、
図3に示されるログ情報に含まれる1番目のエントリは、送信元MACアドレスがMAC(B)であり、宛先MACアドレスがMAC(A)であるフレームの受信に係るログである。当該フレームは、54Mbpsの伝送レートで送信され、受信時のRSSIが-48であることが示されている。ここで、「MAC(A)」は、通信機器AのMACアドレスを意味する。他の通信機器についても同様である。
【0068】
特定装置10の第一生成部11は、
図3に示されるログ情報を通信機器Aから受信し、また、上記と同様に通信機器B~Eそれぞれが生成したログ情報を受信する。そして、第一生成部11は、通信機器A~Eそれぞれから受信したログ情報を、第一順位情報の生成に用いる。第一順位情報の生成について
図4において説明する。
【0069】
図4は、本実施の形態に係る通信機器ごとの受信電波のRSSIと順位情報とを示す説明図である。
【0070】
図4に示されるRSSIは、例えば、
図3に示されるログ情報から、通信機器B~Eそれぞれから受信した電波のRSSIを第一生成部11が抽出したものである。
【0071】
また、
図4に示される順位は、第一生成部11が生成した、RSSIの順位である。RSSIは、一般に、大きな値ほど通信品質が高いことを意味するので、第一生成部11は、RSSIが最も大きい-47である通信機器Cの順位が一位であると推定し、通信機器Cの識別情報を含む第一順位情報を生成する。
【0072】
図5は、本実施の形態に係る通信機器の地図情報から得られる順位情報を示す説明図である。
【0073】
図5に示される順位情報は、例えば、
図1に示される地図に基づいて、第二生成部12が生成した、通信機器間の距離に関する情報である。
【0074】
具体的には、
図5に示される順位情報は、通信機器Aが設置されている位置Pに着目した場合における、位置Pから位置Q~Tそれぞれまでの地図上での距離の順位を示したものである。当該順位情報には、位置Pに最も近い位置が位置Rであることが示されている。
【0075】
特定部13は、
図4に示される順位情報と、
図5に示される順位情報とを照合することで、通信機器の位置を特定する。例えば、特定部13は、
図4において通信機器Aに最も近いと推定された通信機器Cが、
図5において位置Pに最も近い位置Rに設置されていると特定する。
【0076】
このようにして、特定装置10は、複数の位置P等のうちのどの位置に、通信機器Cが設置されているかを特定することができる。
【0077】
この後、特定装置10は、設置位置が既知である通信機器A又はCに着目して、通信機器A又はCに最も近い通信機器とその設置位置を特定する。特定装置10は、この処理を繰り返すことによって、通信機器A等のすべての設置位置を特定することができる。
【0078】
なお、上記では、他の通信機器から受信する電波のRSSIを指標として用いて通信機器Aに最も近い通信機器を特定したが、他の指標を用いることもできる。他の指標には、例えば、他の通信機器から受信するビット若しくはフレームのエラー率、他の通信機器と確立している通信リンクの伝送レート、または、他の通信機器とのフレームの往復時間が含まれ得る。
【0079】
なお、指標として、通信リンクの特性を示す特性値(いわゆるメトリック値)、より具体的にはRSSI、エラー率、伝送レート若しくは往復時間の標準偏差若しくは平均、又は、一位取得回数を用いることもできる。また、これらの指標を組み合わせて用いることもできる。ここで一位取得回数とは、第一機器に最も近い位置に設置されている通信機器、言い換えれば、第一機器からの距離の順位の一位を取得した通信機器として特定された回数である。
【0080】
以降において、RSSIの標準偏差ならびに平均、および、一位取得回数をそれぞれ指標として用いる場合を例として説明するが、これに限定されない。
【0081】
図6は、本実施の形態に係る特定装置が、通信機器Aのログから得た、通信機器B~Eそれぞれから通信機器Aが受信したRSSIの標準偏差と順位情報とを示す説明図である。
【0082】
図6に示されるRSSIの標準偏差は、例えば、
図3に示されるログ情報から、通信機器B~Eそれぞれから受信した電波のRSSIの標準偏差を第一生成部11が算出したものである。
【0083】
また、
図6に示される順位は、第一生成部11が生成したRSSIの標準偏差の順位を示す。RSSIの標準偏差は、一般に小さな値ほどRSSIのばらつきが小さい、つまり、通信品質が高いことを意味するので、第一生成部11は、RSSIの標準偏差が最も小さい2.1である通信機器Cの順位が一位であると推定し、通信機器Cの識別情報を含む第一順位情報を生成する。
【0084】
このように、第一生成部11は、複数の通信機器同士の無線通信の特性を示す特性値を複数取得し、取得した複数の特性値の、複数の通信機器ごとの偏差を指標として取得し、通信機器ごとの偏差が最も小さな通信機器を第二機器として特定し、特定した第二機器の識別情報を、第一順位情報として生成してもよい。なお、上記「複数の通信機器同士」とは、例えば、通信機器Aとそれ以外、すなわちA-B、A-C、A-DおよびA-Eの4つの組み合わせを意味する。特定装置が通信機器Aのログ情報を参照しているからである。
【0085】
図7は、本実施の形態に係る特定装置が、通信機器Aのログから得た、通信機器B~Eそれぞれから通信機器Aが受信したRSSIの平均と順位情報とを示す説明図である。
【0086】
図7に示されるRSSIの平均は、例えば、
図3に示されるログ情報から、通信機器B~Eそれぞれから受信した電波のRSSIの平均を第一生成部11が算出したものである。
【0087】
また、
図7に示される順位は、第一生成部11が生成したRSSIの平均の順位を示す。RSSIの平均は、一般に大きな値ほど通信品質が高いことを意味するので、RSSIの標準偏差が最も大きい-46である通信機器Cの順位が一位であると推定し、通信機器Cの識別情報を含む第一順位情報を生成する。
【0088】
第一生成部11は、
図7に示される順位に基づいて、通信機器Aから最も近い位置に設置されている通信機器が通信機器Cであると推定することができる。
【0089】
このように、第一生成部11は、複数の通信機器同士の無線通信の特性を示す特性値であって、小さな特性値ほど通信品質が高いことを示す特性値を複数取得し、取得した複数の特性値の、複数の通信機器ごとの平均を取得し、通信機器ごとの平均が最も小さな通信機器を第二機器として特定し、特定した第二機器の識別情報を、第一順位情報として生成してもよい。
【0090】
図8は、本実施の形態に係る特定装置が、
図4~6に例示した方法などにより決定した通信機器ごとの一位取得回数を示す説明図である。
【0091】
図8に示される一位取得回数は、過去の所定期間に通信機器B~Eそれぞれが一位として選択された回数を集計したものである。
【0092】
また、
図8に示される順位は、一位取得回数の順位を示す。一位取得回数は、大きな値ほど通信品質が高いことを意味するので、一位取得回数が最も多い902である通信機器Bの順位が一位であると推定する。
【0093】
このように、第一生成部11は、複数の通信機器同士の無線通信の特性を示す特性値を複数取得し、取得した複数の特性値を用いて第一機器に最も近い位置に設置されている通信機器として特定された回数が最も多い通信機器を第二機器として特定し、特定した第二機器の識別情報を、第一順位情報として生成してもよい。
【0094】
なお、第一生成部11は、複数の指標を用いて順位情報を算出した場合、各指標において一位を取得した通信機器に点数を加算することによって最終的な順位を定めてもよい。点数は指標ごとに予め定められていてもよい。この場合、複数の指標を用いて算出された順位情報を重みを付けて考慮して最終的な順位を定めることとなる。
【0095】
例えば、RSSIの標準偏差(
図6参照)と、RSSIの平均(
図7参照)と、一位取得回数(
図8参照)との3つの指標を使用する場合、RSSIの標準偏差に基づく一位である通信機器Cに5点を加算し、RSSIの平均に基づく一位である通信機器に5点を加算し、一位取得回数に基づく一位である通信機器Bに7点を加算する。そして、最も点数が高い10点である通信機器Cを、通信機器Aに最も近い通信機器Cとして定めてもよい。
【0096】
以上のように構成された特定装置10の処理である特定方法を説明する。
【0097】
図9は、本実施の形態に係る特定装置10の処理を示すフロー図である。
【0098】
ステップS101において、特定装置10は、後述するステップS102からステップS105までの処理を繰り返し実行するループAの開始処理を行う。ループAでは、通信機器A~Eのそれぞれに順次着目して処理を実行し、最終的にすべての通信機器について処理を実行する。なお、着目している通信機器を「当該通信機器」と表記する。
【0099】
ステップS102において、第一生成部11は、当該通信機器と他の通信機器との無線通信によって得られる指標を取得する。
【0100】
ステップS103において、第一生成部11は、ステップS102で取得した指標を用いて、当該通信機器に最も近い通信機器を推定し、推定した最も近い通信機器の識別情報を含む順位情報を生成する。
【0101】
ステップS104において、第二生成部12は、地図情報から、当該通信機器に最も近い通信機器を特定し、特定した最も近い通信機器の識別情報を含む順位情報を生成する。
【0102】
ステップS105において、特定部13は、当該通信機器に最も近い通信機器の設置位置を特定する。なお、特定装置10は、ステップS102からステップS105までの処理を1回行うことで、少なくとも一の通信機器が設置されている設置位置を特定できる。
【0103】
ステップS106において、特定装置10は、ループAの終了処理を行う。具体的には、特定装置10は、ステップS102からステップS105までの処理が、すべての通信機器について行われたか否かを判定し、行われていない場合には、まだ行われていない通信機器に着目してステップS102からステップS105までの処理を行うよう制御する。なお、すべての通信機器の設置位置が特定された場合には、必ずしもすべての通信機器に着目して上記処理を実行する必要はなく、処理を途中で中止してもよい。
【0104】
以上の一連の処理により、特定装置10は、複数の通信機器が、複数の位置のうちのどの位置に設置されているかを特定することができる。
【0105】
以上のように、本実施の形態の特定装置は、実際に行われた無線通信によって得られた指標から導出される複数の通信機器間の距離の順位と、地図上の複数の通信機器間の距離の順位とを照合することによって通信機器の設置位置を特定できる。一般に通信機器が他の通信機器から受信する電波は、これらの通信機器間の距離が大きいほど低下することが知られている。しかしながら、実際のオフィス又は工場などの環境では、壁又は天井などでの電波が反射又は吸収等されるので、受信信号強度が距離に応じて単純に低下するとは限らない。そこで、特定装置は、上記のように通信機器間の距離の順位を利用することにより、受信信号強度と距離との関係が正確にはわからない状況であっても、複数の通信機器から受信する受信信号強度の順位が判明していれば、通信機器の位置を特定することができる。このように特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを特定することができる。
【0106】
また、特定装置は、複数の通信機器のうち位置が判明している通信機器に最も近い通信機器の位置を特定できる。よって、特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかをより容易に特定することができる。
【0107】
また、特定装置は、複数の通信機器のうち位置が判明している通信機器に最も近い通信機器の位置を特定することを繰り返すことで、複数の通信機器すべての位置を特定することができる。このように特定装置は、複数の通信機器すべてについて、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを特定することができる。
【0108】
また、特定装置は、複数の通信機器のうち位置が判明している通信機器に最も近い通信機器の位置を特定する際に、無線通信の特性値の偏差を用いることで、その処理がより容易になる。特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを、より容易に特定することができる。
【0109】
また、特定装置は、複数の通信機器のうち位置が判明している通信機器に最も近い通信機器の位置を特定する際に、無線通信の特性値の平均を用いることで、その処理がより容易になる。特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを、より容易に特定することができる。
【0110】
また、特定装置は、複数の通信機器のうち位置が判明している通信機器に最も近い通信機器の位置を特定する際に、過去に、最も近い通信機器として特定された回数が最も多い通信機器を特定することで、その処理がより容易になる。特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを、より容易に特定することができる。
【0111】
また、特定装置は、無線通信の受信信号強度、エラー率、伝送レート、または往復時間を特性値として用いて、より容易に、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを特定することができる。
【0112】
(実施の形態2)
本実施の形態において、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを特定する特定装置などについて、実施の形態1とは異なる形態を説明する。
【0113】
本実施の形態における特定装置10の構成は、実施の形態1におけるものと同じである。ただし、第一生成部11、第二生成部12および特定部13の処理が一部で異なる。
【0114】
すなわち、第一生成部11は、複数の通信機器A~Eそれぞれの無線通信によって得られる指標を取得し、取得した指標を用いて、複数の通信機器A~E同士の距離の順位を含む第一順位情報を生成する。
【0115】
第二生成部12は、地図情報において、複数の位置に複数の通信機器A~Eが設置され得る複数のパターンそれぞれについての、複数の通信機器A~E同士の距離の順位を含む第二順位情報を生成する。
【0116】
特定部13は、第一順位情報と第二順位情報とを照合することで、複数の通信機器A~Eすべての設置位置を特定する。
【0117】
図10は、本実施の形態に係る通信機器の位置と、通信機器の距離の順位に関する情報とを示す説明図である。具体的には、
図10の(a)、(b)および(c)には、第二生成部12により生成される、複数の位置P等に通信機器A等が設置され得る複数のパターンのうちの3つのパターンが示されており、また、各パターンにおける通信機器同士の距離の順位が示されている。各パターンにおける通信機器同士の距離の順位は、通信機器Aから通信機器B~Eそれぞれまでの距離を代表として示しているが、その他の通信機器間の距離が含まれていてもよい。なお、複数の位置P等に通信機器A等が設置され得るパターンは、120(5!)通りあり、そのうちの3通りが上記の3つのパターンである。
【0118】
ここで、第二生成部12は、複数の通信機器A等について、すべての組み合わせの設置パターンごとに順位情報を生成すると、通信機器A等の設置台数が増加すればするほど、膨大なパターンの順位情報を生成することになる。そこで、第二生成部12は、例えば、複数の通信機器のうち、1台の通信機器に着目し、当該通信機器に最も近い(順位が1位)の通信機器を特定するように順位情報を作成することにしてもよい。このようにすれば、複数の位置P等に通信機器A等が設置され得るパターン数を必要最小限に抑えることができる。
【0119】
図10の(a)には、位置P、Q、R、SおよびTそれぞれに、通信機器A、B、C、DおよびEが設置されている場合が示されている。この場合、通信機器B~Eそれぞれの、通信機器Aからの距離の順位は、それぞれ、2、1、3および4であり、この順位を含む順位情報が第二生成部12により算出される。
【0120】
図10の(b)には、位置P、Q、R、SおよびTそれぞれに、通信機器A、C、B、DおよびEが設置されている場合が示されている。この場合、通信機器B~Eそれぞれの、通信機器Aからの距離の順位は、それぞれ、1、2、3および4であり、この順位を含む順位情報が第二生成部12により算出される。
【0121】
図10の(c)には、位置P、Q、R、SおよびTそれぞれに、通信機器A、B、D、EおよびCが設置されている場合が示されている。この場合、通信機器B~Eそれぞれの、通信機器Aからの距離の順位は、それぞれ、2、3、1および4であり、この順位を含む順位情報が第二生成部12により算出される。
【0122】
図11は、本実施の形態に係る通信機器ごとの受信電波のRSSIおよび順位情報と、通信機器の位置の特定とを示す説明図である。
【0123】
図11の(a)に示されるRSSIおよび順位は、各通信機器からの電波についてのRSSIである。このRSSIおよび順位は、実施の形態1と同様に第一生成部11が各通信機器から取得したログから生成され得る。
【0124】
特定部13は、第二生成部12が生成した、各通信機器同士の距離(
図10参照)の順位と、
図11の(a)の順位とを照合し、一致するものを抽出する。この例では、
図11の(a)に示される順位は、
図10の(a)に示される順位と一致している。よって、特定部13は、通信機器A等の設置位置が、
図10の(a)の設置位置であると特定する(
図11の(b)参照)。
【0125】
図12は、本実施の形態に係る特定装置10の処理を示すフロー図である。
【0126】
図12に示されるように、ステップS201において、第一生成部11は、複数の通信機器A~Eそれぞれについて、当該通信機器と他の通信機器との無線通信によって得られる指標を取得する。
【0127】
ステップS202において、第一生成部11は、複数の通信機器A~Eそれぞれについて、ステップS201で取得した指標を用いて、他の通信機器の順序であって、当該通信から近い順序を示す順位情報を生成する。この順位情報は、ステップS201で取得した指標を用いて導出される、複数の通信機器A~Eそれぞれについて、他の通信機器からの距離の順位を示している。
【0128】
ステップS203において、第二生成部12は、地図情報を用いて複数の設置パターンごとに、他の通信機器の順序であって、当該通信機器から近い順序を示す順位情報を生成する。この順位情報は、地図情報を用いて導出される、複数の通信機器A~Eそれぞれについて、他の通信機器からの距離の順位を示している。
【0129】
ステップS204において、特定部13は、ステップS202で生成した順位情報と、ステップS203で生成した順位情報を照合し、複数の通信機器すべての設置位置を特定する。
【0130】
以上の一連の処理により、特定装置10は、複数の通信機器が、複数の位置のうちのどの位置に設置されているかを特定することができる。
【0131】
以上のように、本実施の形態の特定装置によれば、特定装置は、複数の位置に複数の通信機器が設置され得る複数のパターンのうち、現実の無線通信の特性値と適合するものを選択する。よって、特定装置は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかをより容易に特定することができる。
【0132】
なお、本発明は、装置として実現できるだけでなく、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体として実現したり、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データ及び信号は、インターネット等の通信ネットワークを介して配信してもよい。
【0133】
以上、本発明の通信端末等について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、複数の位置のうちのどの位置に通信機器が設置されているかを特定する特定装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0135】
10 特定装置
11 第一生成部
12 第二生成部
13 特定部
A、B、C、D、E 通信機器
P、Q、R、S、T 位置