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特許7099739多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/10 20060101AFI20220705BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20220705BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20220705BHJP
   C04B 35/576 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C04B38/10 G
B01D39/20 D
B01D71/02
C04B35/576
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020124050
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2021176813
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】202010382303.X
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520017742
【氏名又は名称】武漢工程大学
【氏名又は名称原語表記】Wuhan Institute of Technology
【住所又は居所原語表記】No. 693, Xiongchu street, Hongshan District, Wuhan City, Hubei Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】徐 慢
(72)【発明者】
【氏名】沈 凡
(72)【発明者】
【氏名】韋 国蘇
(72)【発明者】
【氏名】陳 常連
(72)【発明者】
【氏名】季 家友
(72)【発明者】
【氏名】戴 武斌
(72)【発明者】
【氏名】朱 麗
(72)【発明者】
【氏名】王 樹林
(72)【発明者】
【氏名】石 和彬
(72)【発明者】
【氏名】薛 俊
(72)【発明者】
【氏名】曹 宏
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113004494(CN,A)
【文献】特表2019-527669(JP,A)
【文献】特開2009-292708(JP,A)
【文献】特開2000-203952(JP,A)
【文献】特開2017-158916(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108864898(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104446599(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111533572(CN,A)
【文献】特開2010-013344(JP,A)
【文献】特開平05-319903(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109534819(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84,38/00-38/10
B01D 39/20,71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法であって、
まず、混合炭化ケイ素粉末、シリカ粉末、発泡剤、分散剤、及び熱硬化性スチレン-アクリルエマルジョンを主原料とし、均一に混合して形分の炭化ケイ素スラリーを取得し、次に鋳込み、常圧焼結成形してなり、
前記熱硬化性スチレン-アクリルエマルジョンは、粘度80~2000mPa・s、固形分40~55%の乳白色の液体であり、
前記混合炭化ケイ素粉末は、粗粒炭化ケイ素粉末と細粒炭化ケイ素粉末とが混合してなり、90~95:5~10の質量比に従って2種粒径の前記粗粒炭化ケイ素粉末及び前記細粒炭化ケイ素粉末で構成され、前記粗粒炭化ケイ素粉末の粒度はD 50 =6.5~9.5μmであり、前記細粒炭化ケイ素粉末の粒度はD 50 =3.0~5.0μmであることを特徴とする多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法。
【請求項2】
前記シリカ粉末の粒度はD50=3.0~6.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法。
【請求項3】
前記発泡剤は、濃度25~35wt%の過酸化水素水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法。
【請求項4】
前記分散剤は、1:(1~2):(0.8~1.5)の質量比に従ってメチルセルロース、水酸化テトラメチルアンモニウム、ポリエチレンイミンを複合してなることを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法。
【請求項5】
前記主原料それぞれの質量百分率は、混合炭化ケイ素粉末60~85%、シリカ粉末8~15%、発泡剤0.5~1.5%、分散剤0.6~3%、及び熱硬化性スチレン-アクリルエマルジョン20~30%であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法。
【請求項6】
前記形分の炭化ケイ素スラリーを取得する方法は、
まず混合炭化ケイ素粉末、分散剤、及びシリカ粉末を一部の秤量した熱硬化性スチレン-アクリルエマルジョンに添加し、混合物を均一に撹拌して均一に分散した炭化ケイ素スラリーを取得するステップと、
発泡剤と残りの熱硬化性スチレン-アクリルエマルジョンを発泡機に加えて均一に撹拌した後、得られた炭化ケイ素スラリーを発泡機に加えて均一に撹拌を続け、静置するステップと、を含み、
これにより形分の炭化ケイ素スラリーが得られることを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法。
【請求項7】
前記常圧焼結成形のプロセスは、
形分の炭化ケイ素スラリーを鋳込んだ後、インキュベーションヒートランプで照射処理して炭化ケイ素セラミック担体のグリーン体を取得するステップと、
次に炭化ケイ素焼結炉に移して1400~1500℃に加熱し、30~90min保温してから、2050~2250℃に加熱し、30~120min保温した後、最後に300~400℃に冷却し、20~60min保温して、炉と共に室温まで自然に冷却するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能材料の製造技術分野に属し、具体的に、多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業活動の頻度が高まるにつれ、ほとんどの産業排出物は厳格な処理なしに直接排出され、大気汚染や水質汚染等の深刻な問題を引き起こしている。例えば、中国華北の各省における微粒子状物質の排出量が基準を超えて、幅広いヘイズの天気を形成し、人々の交通出行に不便を引き起こし、人々の健康にも大きな被害を与えること、産業活動による廃水には、毒性が高く、分解しにくい重金属イオンが含まれており、河川や、土壌、環境に被害を与えること等がある。「省資源で環境にやさしい」社会構築を強く主張する中国の方針の下で、産業活動で発生する汚染物質による資源や環境へのダメージをいかに軽減するかが重要な課題となっている。
【0003】
上記の環境汚染問題への対応として、研究者たちは、膜分離技術を利用して産業汚染物質を処理することに徐々に焦点を合わせている。現在、無機セラミック膜は、膜材料開発のホットスポットであり、その安定した性能、高い実用性、高温耐性や耐食性等の優れた性能は、有機高分子膜では比類のないものである。現在、市販の無機セラミック膜は主にアルミナ膜であるが、工業廃水の最大の特徴は腐食性が強いことであり、このような過酷な環境では、アルミナ膜は、耐食性が弱く、フラックス(flux)が小さい等の問題により、効率が低く、使用寿命が短く、更新サイクルが短いという欠点がある。このような背景の下で、新しい無機セラミック膜のさらなる研究開発は、将来の産業発展にとって避けられない選択肢である。
【0004】
新しい無機膜材料基体として、多孔質炭化ケイ素セラミック担体は、通気孔の数が多いため、炭化ケイ素材料の高温耐性、耐摩耗性や優れた化学的安定性だけでなく、低密度と良好な耐衝撃性も備えている。構造と機能性を兼ね備えたセラミック材料として、国防、航空宇宙、化学工業、バイオエネルギー等の分野で広く利用されている。
【0005】
現在、ほとんど固相焼結法により炭化ケイ素セラミック担体を製造しているが、固相焼結による炭化ケイ素セラミックは高い脆性と高い硬度等の特性によって成形加工が困難であると共に、高コスト、複雑なプロセス、長い製造サイクル等の要因により複雑な形状のセラミック部品を製造することの困難さがさらに高まり、製造された炭化ケイ素セラミックは純度が低く、耐食性が比較的弱くなる。これは間違いなく、ある程度の炭化ケイ素セラミック技術の開発を妨げてしまう。成形プロセスは、セラミック製造の重要な技術であり、セラミック製造コストとセラミック製品の歩留まりに影響を与える基本的な要素として、成形プロセスの改善は特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、従来技術の欠点を考慮して、成形プロセスが単純で、操作が便利で、複雑な構造を有する多孔質炭化ケイ素セラミックを製造でき、且つ、得られた多孔質炭化ケイ素セラミック担体が効果的に高強度、高温耐性及び酸・アルカリに対する耐食性等の性能を兼ね備え、広い適用性を有する多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の技術手段は以下の通りである。
【0008】
多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法は、まず、混合炭化ケイ素粉末、シリカ粉末、発泡剤、分散剤、及び熱硬化性ポリマーエマルジョンを主原料とし、均一に混合して高固形分の炭化ケイ素スラリーを取得し、次に鋳込み、常圧焼結成形してなり、前記混合炭化ケイ素粉末は、粗粒炭化ケイ素粉末と細粒炭化ケイ素粉末とが混合してなる。
【0009】
上記の解決策において、前記混合炭化ケイ素は、90~95:5~10の質量比に従って2種粒径の粗粒炭化ケイ素粉末と細粒炭化ケイ素粉末で構成される。また、粗粒炭化ケイ素粉末の粒度はD50=6.5~9.5μmであり、細粒炭化ケイ素の粒度はD50=3.0~5.0μmであり、2種粒径の炭化ケイ素粉末の純度はいずれも98wt%以上である。
【0010】
上記の解決策において、前記シリカ粉末の粒度はD50=3.0~6.0μmであり、純度は98wt%以上である。
【0011】
上記の解決策において、前記発泡剤は、濃度25~35wt%の過酸化水素水溶液である。
【0012】
上記の解決策において、前記分散剤は、1:(1~2):(0.8~1.5)の質量比に従ってメチルセルロース、水酸化テトラメチルアンモニウム、ポリエチレンイミンを複合してなり、3者の複合により、系は非常に安定した分散状態になり、粒子間の吸着や凝集によって引き起こされる大粒子の沈降現象を回避できる。
【0013】
上記の解決策において、前記熱硬化性エマルジョンは、粘度80~2000mPa・s、固形分40~55%の乳白色の液体であるスチレン-アクリルエマルジョンである。
【0014】
上記の解決策において、前記原料それぞれの質量百分率は、混合炭化ケイ素粉末60~85%、シリカ粉末8~15%、発泡剤0.5~1.5%、分散剤0.6~3%、及び熱硬化性ポリマーエマルジョン(溶剤)20~30%である。
【0015】
上記の解決策において、前記高固形分の炭化ケイ素スラリーを取得する方法は、まず混合炭化ケイ素粉末、分散剤、及びシリカ粉末を一部の秤量した熱硬化性ポリマーエマルジョンの溶剤に添加し、混合物を均一に撹拌して均一に分散した炭化ケイ素スラリーを取得するステップと、発泡剤と残りの熱硬化性ポリマーエマルジョンを発泡機に加えて均一に撹拌した後、得られた炭化ケイ素スラリーを発泡機に加えて均一に撹拌を続け、静置するステップと、を含み、これにより高固形分の炭化ケイ素スラリーが得られる。
【0016】
上記の解決策において、前記焼結成形のプロセスは、高固形分の炭化ケイ素スラリーを鋳込んだ後、インキュベーションヒートランプで照射処理して炭化ケイ素セラミック担体のグリーン体を取得するステップと、次に炭化ケイ素焼結炉に移して1400~1500℃に加熱し、30~90min保温してから、2050~2250℃に加熱し、30~120min保温した後、最後に300~400℃に冷却し、20~60min保温して、炉と共に室温まで自然に冷却するステップと、を含む。
【0017】
上記の解決策において、前記加熱速度は1~3℃/minであり、冷却速度は1~3℃/minである。
【0018】
上記の解決策において、前記照射処理の時間は8~15時間である。
【0019】
上記の解決策により製造された多孔質炭化ケイ素セラミック担体によれば、強酸とアルカリに耐性があり、全てのpH範囲で利用可能であり、曲げ強度は70~90Mpaであり、気孔率が高く、純水フラックスが7700~8900L/(m・h・bar)であり、その作業環境が1500~1700℃の高温であり、150~250g/Lの硝酸と50~100g/Lのフッ化水素酸の混合溶液の媒体環境では、寿命を効果的に延ばすことができ、幅広い開発の見通しがある。
【0020】
本発明の原理は以下の通りである。
1)本発明では、熱硬化性スチレン-アクリルエマルジョンを溶剤として、炭化ケイ素セラミック担体の製造に使用し、当該溶剤はベンゼン環とカルボン酸エステル基から構成された官能基系であり、構造が安定で、環境にやさしく、その低粘度及び熱硬化性能は、炭化ケイ素セラミック担体の製造時にグリーン体の成形速度と初期の機械的特性を確保するに役立ち、後の焼結に役立つ。使用されている従来の水溶媒と比較して、スチレン-アクリルエマルジョンはセラミック担体製品の靭性を改善すると同時に、グリーン体内の各原料の分散度を向上させるに役立ち、セラミック担体のグリーン体の内部の通気孔の均一分布を保証し、均一に分散された懸濁スラリーを形成する。従って、高温焼結時に、炭化ケイ素セラミックのグリーン体の内部のガスをスムーズに排出でき、過度の高温圧力によって製品の強度が低すぎたり破断されたりする現象の発生を回避し、結局、連通ボイド構造を有する高強度の炭化ケイ素製品を形成する。また、本発明によるスチレン-アクリルエマルジョンは、高温での炭化により生成した炭素と二酸化ケイ素が反応して炭化ケイ素を生成して、不純物の発生をさらに低減し、製品率を向上させることができる。同時に、上記の溶剤系では、粒径の異なる混合炭化ケイ素原料系がさらに使用され、高温再結晶中では、小さな炭化ケイ素粒子が昇華し、凝固して少量の残っている大きな粒子結晶を成長させ、最終的に高い結合強度を持つ3次元連通構造を形成して、得られた炭化ケイ素セラミック担体がさらに高い曲げ強度、純度、及び耐食性を表すようにする。
【0021】
2)本発明は、熱硬化性スチレン-アクリルエマルジョンを使用して発泡剤を直接発泡させ、発泡機に炭化ケイ素スラリーを直接導入してパルプ化する。これは、均一に分散した高固形分、高ボイドの炭化ケイ素スラリーの形成に役立ち、採用している「発泡機パルプ化+鋳込み成形」の成形プロセスは、得られた多孔質炭化ケイ素セラミック担体の機械的特性や、純水フラックス等の使用性能を効果的にバランスさせることができる。
【発明の効果】
【0022】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0023】
1)本発明は、従来の水溶媒の代わりに熱硬化性スチレン-アクリルエマルジョンを使用して炭化ケイ素担体を製造し、それを発泡剤と直接混合して発泡させ、発泡機で炭化ケイ素スラリーと直接混合することで、パルプ化中により多くの独立気泡を形成して、得られる炭化ケイ素スラリーの良好な分散性、気泡の均一性及び安定性を効果的に確保でき、高温焼結中に炭化ケイ素セラミックのグリーン体の内部のガスのスムーズな排出を促進することに役立ち、得られる炭化ケイ素セラミック担体が優れた機械的特性と純水フラックス等を効果的にバランスできる。採用している「発泡機パルプ化+鋳込み成形」プロセスは、生成サイクルを効果的に短縮し、得られる多孔質炭化ケイ素セラミック担体の使用性能を確保することができる。
【0024】
2)本発明では、粗粒及び細粒の混合炭化ケイ素を原料として採用しており、高温再結晶中に、小さな炭化ケイ素粒子が昇華し、凝固して少量の残っている大きな粒子結晶を成長させ、最終的に高い結合強度を持つ3次元連通構造を形成して、得られた炭化ケイ素セラミック担体の曲げ強度、純度、及び耐食性をさらに向上させることができる。
【0025】
3)本発明により製造された多孔質炭化ケイ素セラミック担体は、高強度で、高温耐性や酸・アルカリに対する耐食性等の優れた特性を有し、プロセス要件に応じて仕様や、形状、構造が異なる分離膜材料のセラミック基体を設計することができ、大粒子状(>10μm)物質の分離フィルター材料として単独で使用することもでき、係る製造方法が簡単で、プロセスの制御が柔軟で、低コストで、成形プロセスサイクルが短く、重要なアプリケーションとプロモーションの価値がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1による多孔質炭化ケイ素セラミック担体の断面走査型電子顕微鏡写真である。
図2】比較例1による多孔質炭化ケイ素セラミック担体の断面走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の目的、技術手段及び利点をさらに明らかにするために、以下に実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。ここで説明する具体的な実施例は本発明の解釈のために用いられ、本発明を限定するためのものではないことが理解されるべきである。
【0028】
以下の実施例では、採用される粗粒炭化ケイ素の粒度はD50=8.5μmであり、細粒炭化ケイ素の粒度はD50=3.8μmであり、2種粒径の炭化ケイ素粉末の純度は98wt%以上であり、中国の安陽市開拓冶金耐材有限公司により提供され、使用前に、次のように別々に洗浄及び乾燥処理を行う。即ち、2種粒径の炭化ケイ素粉末を質量濃度8%のHF溶液にそれぞれ加え、13時間撹拌してから、以上の炭化ケイ素スラリーを脱イオン水で繰り返して洗浄及び濾過し、pH値が5~7に達したら、洗浄を停止し、その後、60℃の真空乾燥オーブンに入れて90min乾燥し、取り出して使用する。
【0029】
使用したシリカ粉末の粒度はD50=3.0μmであり、純度は98wt%以上であり、中国の上海晶練新材料有限公司により提供され、スチレン-アクリルエマルジョンは、PH値が8~9の乳白色の液体であり、密着性がよく、中国の広州栄東化工有限公司により提供される。
<実施例1>
【0030】
多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法として、具体的なステップは次の通りである。
【0031】
1)90:10の質量比に従って粗粒炭化ケイ素及び細粒炭化ケイ素を混合し、均一に撹拌して、混合炭化ケイ素を用意し、1:1:0.8の質量比に従ってメチルセルロース、水酸化テトラメチルアンモニウム、ポリエチレンイミンを混合して、分散剤を取得する。
【0032】
2)各原料を比率に従って秤量し、各原料の質量百分率は、混合炭化ケイ素65%、分散剤1%、シリカ粉末10%、発泡剤1%、スチレン-アクリルエマルジョン23%である。
【0033】
3)秤量した混合炭化ケイ素、分散剤、及びシリカをスチレン-アクリルエマルジョン(全原料の13%)に加え、撹拌して均一に分散した炭化ケイ素スラリーを調製し、秤量した発泡剤と残りのスチレン-アクリルエマルジョンの溶剤を発泡機に加え、3min撹拌した後、上記で調製した炭化ケイ素スラリーを発泡機に加え、得られた気泡を内部に有するラテックスと混合させ、7min撹拌を続けた後、1min静置させて、分散性がよく、多数の気泡を有する炭化ケイ素スラリー(固形分は55~62%程度)を取得する。
【0034】
4)ステップ3)で得られたスラリーを型に注入した後、インキュベーションヒートランプで10時間照射して、一定の強度を有する炭化ケイ素担体のグリーン体を取り出す。
【0035】
5)得られたグリーン体を高温炉に移し、2℃/minの速度で1400℃まで昇温させ、60min保温してから、2℃/minの速度で2150℃まで昇温させ、60min保温し、最後に、2℃/minの速度で300℃まで冷却させ、30min保温し、最後に、炉と共に室温まで自然に冷却し、取り出すと、高い曲げ強度で通気孔が内部に均一に分布された炭化ケイ素セラミック担体が得られる。
【0036】
本実施例におけるパルプ化操作は合理的であり、グリーン体の焼結温度及び時間も要件を満たし、反応系における炭素及び二酸化ケイ素は十分に反応して炭化ケイ素を生成し、調製された炭化ケイ素セラミック担体の純度は高く、98%にもなり、高温焼結により製造された炭化ケイ素結晶は、結合強度が高くなり、走査型電子顕微鏡テストから、担体内部の通気孔が比較的均一に分布され、孔径に大きな差がなく、密度は0.862g/cmであり、気孔率は27.1%に達し、純水フラックスは8269L/(m・h・bar)であり、濾過圧力が小さく、曲げ強度が80.6Mpaに達し、1650℃高温、200g/Lの硝酸と70g/Lのフッ化水素酸の混合溶液媒体環境の作業環境下で、寿命が80日以上に達することが分かる。
<実施例2>
【0037】
多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法として、具体的なステップは次の通りである。
【0038】
1)93:7の質量比に従って粗粒炭化ケイ素及び細粒炭化ケイ素を混合し、均一に撹拌して、混合炭化ケイ素を用意し、1:1.2:1の質量比に従ってメチルセルロース、水酸化テトラメチルアンモニウム、ポリエチレンイミンを混合して、分散剤を取得する。
【0039】
2)各原料を比率に従って秤量し、各原料の質量百分率は、混合炭化ケイ素粉末66%、分散剤1%、シリカ粉末8%、発泡剤1%、スチレン-アクリルエマルジョン24%である。
【0040】
3)秤量した混合炭化ケイ素、分散剤、及びシリカをスチレン-アクリルエマルジョン(全原料の12%)に加え、撹拌して均一に分散した炭化ケイ素スラリーを調製し、秤量した発泡剤と残りのスチレン-アクリルエマルジョンの溶剤を発泡機に加え、5min撹拌した後、上記で調製した炭化ケイ素スラリーを発泡機に加え、得られた気泡を内部に有するラテックスと混合させ、5min撹拌を続けた後、2min静置させて、分散性がよく、多数の気泡を有する炭化ケイ素スラリー(固形分は55~62%程度)を取得する。
【0041】
4)ステップ3)で得られたスラリーを型に注入した後、インキュベーションヒートランプで10時間照射して、一定の強度を有する炭化ケイ素担体のグリーン体を取り出す。
【0042】
5)得られたグリーン体を高温炉に移し、2℃/minの速度で1500℃まで昇温させ、80min保温してから、2℃/minの速度で2180℃まで昇温させ、65min保温し、最後に、2℃/minの速度で300℃まで冷却させ、25min保温し、最後に、炉と共に室温まで自然に冷却し、取り出すと、高い曲げ強度で通気孔が内部に均一に分布された炭化ケイ素セラミック担体が得られる。
【0043】
本実施例におけるパルプ化操作は合理的であり、グリーン体の焼結温度及び時間も要件を満たし、反応系における炭素及び二酸化ケイ素は十分に反応して炭化ケイ素を生成し、調製された炭化ケイ素セラミック担体の純度は高く、97.6%にもなり、高温焼結により製造された炭化ケイ素結晶は、結合強度が高くなり、走査型電子顕微鏡テストから、担体内部の通気孔が比較的均一に分布され、孔径に大きな差がなく、密度は0.804g/cmであり、気孔率は27.5%に達し、純水フラックスは8357L/(m・h・bar)であり、濾過圧力が小さく、曲げ強度が78.9Mpaに達し、1650℃高温、180g/Lの硝酸と80g/Lのフッ化水素酸の混合溶液媒体環境の作業環境下で、寿命が80日以上に達することが分かる。
<実施例3>
【0044】
多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法として、具体的なステップは次の通りである。
【0045】
1)95:5の質量比に従って粗粒炭化ケイ素及び細粒炭化ケイ素を混合し、均一に撹拌して、混合炭化ケイ素を用意し、1:1:1の質量比に従ってメチルセルロース、水酸化テトラメチルアンモニウム、ポリエチレンイミンを混合して、分散剤を取得する。
【0046】
2)各原料を比率に従って秤量し、各原料の質量百分率は、混合炭化ケイ素粉末63%、分散剤1.5%、シリカ粉末11%、発泡剤1.5%、スチレン-アクリルエマルジョン23%である。
【0047】
3)秤量した混合炭化ケイ素、分散剤、及びシリカをスチレン-アクリルエマルジョン(全原料の11%)に加え、撹拌して均一に分散した炭化ケイ素スラリーを調製し、秤量した発泡剤と残りのスチレン-アクリルエマルジョンの溶剤を発泡機に加え、5min撹拌した後、上記で調製した炭化ケイ素スラリーを発泡機に加え、得られた気泡を内部に有するラテックスと混合させ、6min撹拌を続けた後、2min静置させて、分散性がよく、多数の気泡を有する炭化ケイ素スラリー(固形分は55~62%程度)を取得する。
【0048】
4)ステップ3)で得られたスラリーを型に注入した後、インキュベーションヒートランプで11時間照射して、一定の強度を有する炭化ケイ素担体のグリーン体を取り出す。
【0049】
5)得られたグリーン体を高温炉に移し、2℃/minの速度で1500℃まで昇温させ、80min保温してから、2℃/minの速度で2090℃まで昇温させ、90min保温し、最後に、2℃/minの速度で300℃まで冷却させ、35min保温し、最後に、炉と共に室温まで自然に冷却し、取り出すと、高い曲げ強度で通気孔が内部に均一に分布された炭化ケイ素セラミック担体が得られる。
【0050】
本実施例におけるパルプ化操作は合理的であり、グリーン体の焼結温度及び時間も要件を満たし、反応系における炭素及び二酸化ケイ素は十分に反応して炭化ケイ素を生成し、調製された炭化ケイ素セラミック担体の純度は高く、98.5%にもなり、高温焼結により製造された炭化ケイ素結晶は、結合強度が高くなり、走査型電子顕微鏡テストから、担体内部の通気孔が比較的均一に分布され、孔径に大きな差がなく、密度は0.891g/cmであり、気孔率は29.8%に達し、純水フラックスは8722L/(m・h・bar)であり、濾過圧力が小さく、曲げ強度が83.2Mpaに達し、1650℃高温、180g/Lの硝酸と80g/Lのフッ化水素酸の混合溶液媒体環境の作業環境下で、寿命が80日以上に達することが分かる。
【比較例1】
【0051】
多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法として、その具体的なステップは、対応するスチレン-アクリルエマルジョンの代わりに水を採用したことを除いて、実施例1と実質的に同じである。
【0052】
得られた炭化ケイ素セラミック担体の走査型電子顕微鏡テストから、担体内部のボイド分布が不均一で、密度が0.991g/cmであり、気孔率が10.4%と低すぎ、純水フラックスがただ5087L/(m・h・bar)であり、この条件下で製造された担体の曲げ強度はただ27.9Mpaであり、1650℃高温、180g/Lの硝酸と80g/Lのフッ化水素酸の混合溶液媒体環境の作業環境下で、寿命がただ26日であることが分かり、全体的にパフォーマンスが悪い。
【比較例2】
【0053】
多孔質炭化ケイ素セラミック担体の製造方法として、その具体的なステップは、採用する粗粒炭化ケイ素の粒度がD50=3.5μmであり、細粒炭化ケイ素の粒度がD50=1.8μmであることを除いて、実施例2と実質的に同じである。
【0054】
比較例により得られた炭化ケイ素セラミック担体の走査型電子顕微鏡テストから、担体内部のボイド分布が不均一で、密度が0.912g/cmであり、気孔率が11.8%と低すぎ、濾過効率が低いことが分かる。また、この焼結系は、焼結が不十分で、炭素とシリカが完全に反応しない等の問題が発生しやすく、結果として得られた炭化ケイ素セラミック担体の純度はただ82%であり、曲げ強度もただ50.3Mpaであり、1650℃高温、180g/Lの硝酸と80g/Lのフッ化水素酸の混合溶液媒体環境の作業環境下で、寿命がただ30日であり、全体的にパフォーマンスが悪い。
【0055】
上記の実施例は明確に説明ために例示したものに過ぎず、実施形態を制限するためのものではない。本分野に属する当業者であれば、上記の説明に基づいて他の異なる形態の変更又は修正を行うことができ、ここに全ての実施形態を列挙する必要はない。従って、明示的な変更又は修正は、依然として本発明の保護範囲内である。
図1
図2