(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】電子部品接着用ノズル
(51)【国際特許分類】
B05B 1/02 20060101AFI20220705BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20220705BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B05B1/02
H05K3/34 504D
H05K3/34 506Z
B05C5/00 101
(21)【出願番号】P 2020197676
(22)【出願日】2020-11-28
【審査請求日】2022-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510193430
【氏名又は名称】株式会社ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】三重野 計滋
【審査官】吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-058886(JP,A)
【文献】特開2003-334760(JP,A)
【文献】国際公開第2020/060777(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/216373(WO,A1)
【文献】特表2016-513003(JP,A)
【文献】特開2002-102766(JP,A)
【文献】特開平04-367753(JP,A)
【文献】特開昭57-087860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00 - 1/26
B05C 5/00 - 5/04
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の実装に必要となる接着剤を吐出する電子部品接着用ノズルであって、
本体部と、
前記本体部の先端に接続する先端部と、
前記本体部の内部に設けられて前記接着剤が供給される内部空間と、
前記先端部の内部に設けられて前記内部空間に連通する
円孔の吐出用貫通孔と、を備え、
前記吐出用貫通孔は、前記内部空間に連通して、前記内部空間からの接着剤が注入される
円形の注入入口と、該接着剤を外部に吐出する
円形の吐出出口とを有し、
前記本体部と前記先端部とが接続していることで、前記内部空間と前記吐出用貫通孔が連通し、該連通によって、前記内部空間に供給される接着剤は、前記注入入口から前記吐出用貫通孔を通じて、前記吐出出口から吐出され、
前記吐出出口の直径は、50μm以下であり、
前記先端部は、前記本体部よりも先に突出しており、
前記本体部および先端部は、タングステンを主原料とする超硬合金により形成され、
前記内部空間に供給される前記接着剤は、吐出圧力を受けて、前記注入入口に注入されて前記吐出用貫通孔を通過し、前記吐出出口から吐出され、
前記吐出用貫通孔の内部表面は、摩擦低下のための表面処理が施されており、
前記電子部品は
、小型であり、前記吐出出口は、当該小型の電子部品に対応する微細な量および吐出直径の接着剤を吐出
し、
前記吐出用貫通孔は、機械加工で穿孔されて形成され、
前記吐出用貫通孔の内部表面の表面処理は、摩擦を低下させる表面剤の塗布、コーティング処理もしくは磨き処理のいずれかによる、電子部品接着用ノズル。
【請求項2】
前記先端部は、前記注入入口から前記吐出出口にかけて、細くなっていく、請求項1記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項3】
前記先端部の長さは、前記本体部の長さより大きい、請求項1または2記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項4】
前記吐出用貫通孔において、前記吐出出口の直径は、前記注入入口の直径より小さい、請求項1から3のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項5】
前記注入入口の直径は、前記吐出出口の直径よりも10%以上大きい、請求項4記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項6】
前記吐出用貫通孔は、前記注入入口から前記吐出出口にかけて次第に内径が小さくなっていく、請求項1から5のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項7】
前記吐出出口の直径は、40μm以下である、請求項1から6のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項8】
前記吐出出口の直径は、30μm以下である、請求項1から7のいずれか記載の電子部品接着用ノズル。
【請求項9】
電子部品の実装に必要となる接着剤を吐出する電子部品接着用ディスペンサーであって、
接着剤を収容する接着剤収容容器と、
前記接着剤収容容器の先端に備わり、請求項1から
8のいずれかの電子部品接着用ノズルと、
前記接着剤収容容器内部において上下移動可能な押出しピンと、
前記押出しピンに押出し圧力を加える圧力部材と、を備え、 前記内部空間と
前記接着剤収容容器の内部空間とは連通しており、前記接着剤収容容器に収容されている前記接着剤が、前記内部空間に供給され、
前記押出しピンの押し出しが、前記吐出圧力を生じさせる、電子部品接着用ディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装基板などの接着する際に接着剤を吐出する電子部品接着用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、精密機器、輸送機器、工作機械などの機器や機械においては、様々な電子部品が多数用いられる。あるいは、組み込まれる部品だけでなく、必要に応じて取り付けられたり組み合わされたりする多種多様な部品が必要である。このような電子部品は、電子機器や精密機器に装着される実装基板に実装される。
【0003】
ここで、実装基板に実装される電子部品は、半導体素子、LSI、光学素子、ディスクリートの電子部品や電子素子など様々である。これらの電子部品は、きわめて小型化・高性能化している現状がある。特に、近年の電子機器には多くのセンサー素子が実装される。これは電子機器だけでなく自動車のような輸送機器であったり、工場などで使用される工作機械などであったりしても同様である。近年の様々な機械や機器は、このような多くのセンサー素子を実装している。自動運転や遠隔操作などを実現するために、多くの部位に多くのセンサー素子を必要とするからである。
【0004】
また、センサー素子だけでなく、これらの機械や機器は、電子的動作を行うために多くの電子部品を備えている。これらの電子部品の多くは、機械や機器に装着される実装基板に実装される。電子部品は、半田のような導電性ペーストや各種の接着剤で実装基板に実装される。このとき、実装のための導電性ペーストや接着剤(以下、必要に応じて「接着剤」として総称する)を、実装基板に塗布する必要がある。
【0005】
このような接着剤を塗布するには、様々なやり方がある。例えば、接着剤を吐出する接着剤ディスペンサーなどが使用されている。このような電子部品の実装に必要となる接着剤の塗布について、いくつかの技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-101815号公報
【文献】特開2019-58886号公報
【文献】特開2005-334733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、部品供給部のフィーダベースに他のパーツフィーダとともに装着された清掃部材フィーダから、搭載ヘッド9によって清掃用部材22を取り出して保持した状態でディスペンサユニット6の吐出ノズル46と接する位置に移動させ、清掃用部材22を水平往復動させる所定パターンの清掃動作を搭載ヘッド9に実行させて吐出ノズル46の清掃を行う。これにより、ディスペンサユニット6によるペーストPの塗布を安定させるために必要とされる保守清掃作業を、効率よく適切に行うことができる電子部品実装装置を開示する。
【0008】
特許文献1は、ディスペンサーによって接着剤を吐出して、電子部品の実装を可能とする技術を開示している。
【0009】
しかしながら、近年の電子機器や輸送機器においては、非常に多くの電子部品が実装される。また、電子部品の大きさも非常に小型化や微細化しており、実装基板に吐出するべき接着剤も非常に少量である。また、非常にピンポイントな狭小領域に正確に接着剤を吐出する必要がある。この吐出する領域、吐出量、隣接する吐出領域との間隔の確保などについて、よりシビアな精度が求められるようになっている。
【0010】
特許文献1では、このようなシビアな精度に対する対応力を有していない問題がある。
【0011】
特許文献2は、ノズルユニット(100)であって、先端(10a)から液体(L)を吐出するセラミック材からなるノズル(10)と、ノズルをはめあい寸法にて保持する保持部品(20)と、ノズルのテーパ部(31)を利用して、ノズルの先端が出るように固定するための固定部品(30)と、を備え、保持部品と固定部品を螺合することでノズルを固定することを特徴とするノズルユニットを、開示する。
【0012】
特許文献3は、ノズル孔1が、軸心直交方向のノズル先端面2に開口する開口部3に向かって、孔横断面積がしだいに減少するテーパ状吐出孔部4を有し、ストレート状孔部を介さずにテーパ状吐出孔部4の最先端が開口部3に連続している。また、テーパ状吐出孔部4の縦断面の傾斜角度θが、60度以上 100度以下になるように設定されているノズルを開示する。
【0013】
特許文献2、3は、特許文献2と同じ問題を有している。
【0014】
接着剤ディスペンサーは、その先端に接着剤を吐出するノズルを備えている。このノズルに接着剤を送り出して、圧力によって、ノズルの先端から接着剤を吐出させる。吐出させることで電子基板において電子部品が接着される場所に接着剤を設置することができる。
【0015】
上述したように現在では小型で多数の電子部品を高速に実装することが求められている。一つの電子基板に多数のセンサーなどの電子部品が実装される必要があったり、電子基板の様々な場所に複数の電子部品が実装される必要があったりする。
【0016】
また、自動での実装装置において、非常に高速かつ確実に電子部品の実装(接着)が行われる必要がある。このため、接着剤を吐出するノズルには、非常に大きな負荷が加わる。このため、ノズルが変形したり破損したりして、交換やメンテナンスコストが増大する問題がある。加えて、破損や変形によって、接着剤ディスペンサーから吐出される接着剤が、電子部品を実装すべき位置に正確に吐出できなくなる問題もある。小型の電子部品かつ高密度実装であることで、接着剤の吐出位置の精度は、非常に高く要求される。これに対応できなくなる。
【0017】
さらには、ノズルの破損などによって、接着剤ディスペンサーから接着剤が液漏れしてしまうなどの問題にもつながりかねない。液漏れすると、電子基板の不要な場所に接着剤が塗布されてしまい、好ましくない状況になる問題もある。
【0018】
このような問題もあり、特許文献1~3をはじめとした従来技術は、細かな精度で効率的に接着剤を吐出する要望に対応できない問題があった。特に、ピンポイントでかつ狭小領域に適切な量の接着剤を吐出することが困難である問題があった。この問題があるために、多数の非常に小型の電子部品を実装するための接着剤を吐出して高速の実装を行うのが難しい問題があった。
【0019】
加えて、従来技術では、吐出するノズルの強度や耐久性が低く、吐出用に充てんされる接着剤が目詰まりを起こしてしまう問題もあった。場合によっては、本来吐出するべき位置に接着剤が吐出できないなどの問題があった。
【0020】
このノズルそのものの耐久性が低い問題により、頻繁にノズルや吐出機構を交換しなければならない問題もあった。この問題により、電子部品の実装に係るコストが増加する問題にもつながっていた。また、上述するように、ノズルの破損などに起因する実装エラーや実装装置の追加的なメンテナンスを必要とする問題もあった。
【0021】
本発明は、以上の問題に鑑み、高い精度で狭小領域に最適量の接着剤を吐出できる電子部品接着用ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の電子部品接着用ノズルは、電子部品の実装に必要となる接着剤を吐出する電子部品接着用ノズルであって、
本体部と、
前記本体部の先端に接続する先端部と、
前記本体部の内部に設けられて前記接着剤が供給される内部空間と、
前記先端部の内部に設けられて前記内部空間に連通する円孔の吐出用貫通孔と、を備え、
前記吐出用貫通孔は、前記内部空間に連通して、前記内部空間からの接着剤が注入される円形の注入入口と、該接着剤を外部に吐出する円形の吐出出口とを有し、
前記本体部と前記先端部とが接続していることで、前記内部空間と前記吐出用貫通孔が連通し、該連通によって、前記内部空間に供給される接着剤は、前記注入入口から前記吐出用貫通孔を通じて、前記吐出出口から吐出され、
前記吐出出口の直径は、50μm以下であり、
前記先端部は、前記本体部よりも先に突出しており、
前記本体部および先端部は、タングステンを主原料とする超硬合金により形成され、
前記内部空間に供給される前記接着剤は、吐出圧力を受けて、前記注入入口に注入されて前記吐出用貫通孔を通過し、前記吐出出口から吐出され、
前記吐出用貫通孔の内部表面は、摩擦低下のための表面処理が施されており、
前記電子部品は、小型であり、前記吐出出口は、当該小型の電子部品に対応する微細な量および吐出直径の接着剤を吐出し、
前記吐出用貫通孔は、機械加工で穿孔されて形成され、
前記吐出用貫通孔の内部表面の表面処理は、摩擦を低下させる表面剤の塗布、コーティング処理もしくは磨き処理のいずれかによる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電子部品接着用ノズルは、非常に小型の電子部品に対応する狭小領域に、高い精度で接着剤を吐出できる。このとき、吐出すべき位置、領域、量において最適なレベルで、接着剤を吐出できる。
【0024】
また、高い耐久性を有しているので、繰り返しの使用にも対応できる。ノズルの破損や損傷までの耐久性を高くでき、電子部品接着用ディスペンサーや実装装置のメンテナンスコストやメンテナンス時間を低減できる。結果として、電子部品実装のコストを低減できる。
【0025】
また、電子部品接着用ノズルが2段構成となっていることで、より狭小で微細な吐出位置に、正確に接着剤を吐出できる。これにより、微細な電子部品を微細な位置に実装することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズルの側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態における電子部品接着用ディスペンサーの側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズルの側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態における実装機構に取り付けられた電子部品接着用ディスペンサーの斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態における電子部品接着用ディスペンサーの模式図である。
【
図6】本発明の実施の形態における吐出と非吐出のサイクルを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の発明に係る電子部品接着用ノズルは、電子部品の実装に必要となる接着剤を吐出する電子部品接着用ノズルであって、
本体部と、
前記本体部の先端に接続する先端部と、
前記本体部の内部に設けられて前記接着剤が供給される内部空間と、
前記先端部の内部に設けられて前記内部空間に連通する吐出用貫通孔と、を備え、
前記吐出用貫通孔は、前記内部空間に連通して、前記内部空間からの接着剤が注入される注入入口と、該接着剤を外部に吐出する吐出出口とを有し、
前記本体部と前記先端部とが接続していることで、前記内部空間と前記吐出用貫通孔が連通し、該連通によって、前記内部空間に供給される接着剤は、前記注入入口から前記吐出用貫通孔を通じて、前記吐出出口から吐出され、
前記吐出出口の直径は、50μm以下であり、
前記先端部は、前記本体部よりも先に突出しており、
前記本体部および先端部は、超硬合金により形成され、
前記内部空間に供給される前記接着剤は、吐出圧力を受けて、前記注入入口に注入されて前記吐出用貫通孔を通過し、前記吐出出口から吐出される。
【0028】
この構成により、、耐久性に優れたノズルによる接着剤の連続的な吐出を可能とできる。また、微細な吐出位置への正確な吐出も可能とできる。加えて、吐出用貫通孔の吐出軸の精度も高まり、吐出される接着剤の量や吐出直径の最適化が図られる。
【0029】
本発明の第2の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1の発明に加えて、前記先端部は、前記注入入口から前記吐出出口にかけて、細くなっていく。
【0030】
この構成により、より正確に接着剤を吐出することができる。
【0031】
本発明の第3の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1または第2の発明に加えて、前記先端部の長さは、前記本体部の長さより大きい。
【0032】
この構成により、より正確性の高い狙いをもって、接着剤を吐出することができる。
【0033】
本発明の第4の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、前記吐出用貫通孔において、前記吐出出口の直径は、前記注入入口の直径より小さい。
【0034】
この構成により、吐出される接着剤をよりピンポイントな位置に適切な量で吐出することができる。
【0035】
本発明の第5の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第4の発明に加えて、前記注入入口の直径は、前記吐出出口の直径よりも10%以上大きい。
【0036】
この構成により、より微細な部位に接着剤を吐出することができる。
【0037】
本発明の第6の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、前記吐出用貫通孔は、前記注入入口から前記吐出出口にかけて次第に内径が小さくなっていく。
【0038】
この構成により、最適な微小位置に確実に接着剤を吐出できる。
【0039】
本発明の第7の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、前記吐出出口の直径は、40μm以下である。
【0040】
この構成により、非常に微細な量の接着剤を吐出できる。
【0041】
本発明の第8の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、前記吐出出口の直径は、30μm以下である。
【0042】
この構成により、非常に微細な量の接着剤を吐出できる。
【0043】
本発明の第9の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、前記吐出用貫通孔は、機械加工で穿孔されて形成される。
【0044】
この構成により、精度の高い吐出用貫通孔を形成できる。
【0045】
本発明の第10の発明に係る電子部品接着用ノズルでは、第1から第9のいずれかの発明に加えて、記吐出用貫通孔の内部表面は、摩擦低下のための表面処理が施されている。
【0046】
この構成により、吐出用貫通孔において接着剤が目詰まりするなどを防止できる。
【0047】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0048】
(実施の形態)
【0049】
実施の形態について説明する。
【0050】
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズルの側面図である。
図1の電子部品接着用ノズルは、一つの外形を有する構造体を加工することで、本体部2と先端部9との両方を備える構成を有している。
【0051】
電子部品接着用ノズルは、電子部品接着用ディスペンサーの先端に備わり、接着剤収容容器に収容されている接着剤を実際に吐出する。電子部品接着用ノズルは、電子基板における電子部品の接着位置に、接着剤を吐出する。すなわち、電子部品接着用ノズルは、電子部品実装装置での実装のための接着剤を吐出する電子部品接着用ディスペンサーの先端に備わる。
【0052】
電子部品接着用ノズル1は、本体部2、先端部9、内部空間3、吐出用貫通孔4を備える。本体部2の先端に先端部9が接続している。本体部2内部に内部空間3が備わっており、先端部9の内部に吐出用貫通孔4が備わっている。本体部2と先端部9とは、接続されて一つの外形を有する。このため内部空間3と吐出用貫通孔4とは、連通している。
【0053】
内部空間3は、本体部2の内部に設けられた空間である。電子部品接着用ノズル1は、接着剤収容容器からの接着剤の供給を受けてこれを吐出して、電子基板への電子部品の接着(実装)を実現する。この内部空間3は、接着剤の供給を受ける。すなわち、内部空間3に接着剤が供給(充填)される。内部空間3は、接着剤の供給を受ける空間である。
【0054】
吐出用貫通孔4は、この内部空間3に連通している。すなわち、内部空間3に供給された接着剤は、この内部空間3から吐出用貫通孔4に移動できる。この移動によって、後述するように、吐出圧力を受けて接着剤が吐出されるようになる。
【0055】
吐出用貫通孔4は、内部空間3から先端部9の先端に向けて設けられた貫通孔である。吐出用貫通孔4は、内部空間3から移動してきた接着剤を吐出する。このとき、吐出用貫通孔4は、内部空間3からの接着剤が注入される注入入口41と、この接着剤を外部に吐出する吐出出口42を有している。
【0056】
ここで、吐出出口42の直径は50μm以下である。
【0057】
電子部品接着用ノズル1は、
図2のように電子部品接着用ディスペンサー100に取り付けられる。このような構成とされた上で、内部空間3に接着剤が供給される。電子部品接着用ディスペンサー100の機能によって、接着剤の供給および吐出させる吐出圧力を受ける。この吐出圧力を受けた接着剤は、内部空間3から吐出用貫通孔4を通じて外部に吐出される。このとき、内部空間3の接着剤が、注入入口41に注入されて吐出用貫通孔4を通過する。通過した接着剤は、吐出出口42から外部に吐出される。
【0058】
先端部9は、本体部2よりも先に突出している。また、本体部2および先端部9は、超硬合金により形成されている。内部空間3に供給される接着剤は、吐出圧力を受けて、注入入口41に注入されて吐出用貫通孔4を通過して、吐出出口42から吐出される。こうして、電子部品の実装に必要となる接着剤が、電子部品接着用ノズル1から吐出される。
【0059】
本体部2および先端部9が超硬合金であることで、電子部品接着用ノズル1の強度や耐久性が向上する。この強度の向上は、吐出出口42の直径の小ささや吐出用貫通孔4の態様と相まって、微量な接着剤を微小な塗布位置に正確に吐出できるようになる。また、吐出において加わる負荷にも対応できるようになる。特に、連続的に繰り返しの吐出が行われる場合でも、この負荷に対応できる耐久性を有するので、長時間の使用が可能となる。変形、損耗などによるメンテナンスや交換のコストが低減される。
【0060】
また、メンテナンスや交換の低減により、実装装置としての動作中断時間が減少する。この減少により、実装装置による実装能力が高まることになる。このような電子部品接着用ノズル1は、電子部品接着用ディスペンサーに備わって使用される。すなわち、電子部品接着用ディスペンサーの中において、電子部品接着用ノズル1は、吐出精度を実現するキーテクノロジーであると同時に消耗品でもある。
【0061】
キーテクノロジーである電子部品接着用ノズル1が、上記のようにその構成および大きさなどで高い精度での吐出を可能とし、また、強度や耐久性があることで精度の実現および維持を図りつつも、長時間耐用を可能とできる。結果として、消耗品としての有用度を高めることができる。
【0062】
図2に示す接着剤の吐出状態である。
図2は、本発明の実施の形態における電子部品接着用ディスペンサーの側面図である。内部構造が分かるように透視状態で示している。
【0063】
電子部品接着用ディスペンサー100は、本体となる接着剤収容容器110と、接着剤収容容器110の先端に備わる電子部品接着用ノズル1と、接着剤収容容器110内部において上下移動可能な押出しピン120と、押出しピン120に押出し圧力を加える圧力部材130とを備える。これらの組み合わせによって電子部品接着用ディスペンサー100が構成される。
【0064】
電子部品接着用ノズル1が先端に備わっており、電子部品接着用ディスペンサー100の動作によって、電子部品接着用ノズル1から電子部品を実装するための接着剤が吐出される。吐出された接着剤が、必要な部位に塗布されて、この接着剤の上に電子部品が接着されて実装が行われる。
【0065】
なお、吐出される接着剤は、化学的な接着剤でもよいし、半田のような導電性接着剤であってもよい。
【0066】
図2では、吐出された吐出接着剤200が示されている。吐出接着剤200は、電子部品接着用ノズル1から吐出された接着剤である。
【0067】
接着剤収容容器110の内部空間111には、接着剤が供給されて収容されている。この内部空間111は、電子部品接着用ノズル1の内部空間3と連通している。この連通により、接着剤収容容器110の内部空間111に収容されている接着剤は、電子部品接着用ノズル1の内部空間3に供給される。
【0068】
押出しピン120は、接着剤収容容器110の内部空間111に備わっている。
図2の矢印Aのように上下方向(
図1で上下方向であり、電子部品接着用ディスペンサー100の設置方向によって物理的な上下方向ではなく、接着剤を発射する方向に沿った方向)に移動可能である。圧力部材130は、押出しピン120に押出し圧力を付与できる。
【0069】
圧力部材130が押出しピン120に押出し圧力を付与すると、押出しピン120は、電子部品接着用ノズル1の方向に移動する。このとき、押出しピン120の先端は、電子部品接着用ノズル1の内部空間3に入り込む。この入り込みによって、内部空間3にある接着剤に対して吐出圧力を付与できる。
【0070】
この吐出圧力によって、内部空間3にある接着剤は、吐出用貫通孔4を通じて吐出される。このとき、吐出用貫通孔4に内部空間3から押し出された接着剤が入り、吐出用貫通孔4の吐出出口42は、
図1のように接着剤を吐出する。
【0071】
圧力部材130による押出し圧力が解放されると、押出しピン120は、圧力部材130側に戻る。すなわち、内部空間3から戻る。この戻りによって、内部空間3には、接着剤収容容器110の内部空間111から接着剤が供給される。
【0072】
内部空間3に接着剤が供給された後で、再び圧力部材130が、押出しピン120に押出し圧力を付与する。再び、押出しピン120は、内部空間3に入り込んで、充填されている接着剤へ吐出圧力を付与する。再び、電子部品接着用ノズル1から接着剤が吐出される。
【0073】
電子部品接着用ディスペンサー100は、圧力部材130による押出し圧力の付与と開放を繰り返すことで、接着剤の連続的な吐出を実現できる。
【0074】
ここで、電子基板に設定された電子部品の接着位置が存在し、吐出出口42は、この接着位置に接着剤を吐出する。そのあとで、接着剤の上に電子部品が載せられて電子部品の実装が完了する。このとき、接着剤は、いわゆる樹脂や高分子素材の接着剤でもよいし、導電性の金属ペーストでもよい。これらは、電子部品の電子基板への実装の仕様によって定められれば良い。
【0075】
吐出用貫通孔4を通じて吐出される接着剤は、吐出出口42から最終的に吐出される。このとき、上述したように、吐出出口42の直径は50μm以下である。このため、非常に微細な量および吐出直径での接着剤を吐出できる。近年の電子部品は、非常に小型化している。半導体集積回路などの電子部品はもとより、各種機能を有するセンサーが小型化している。特に、自動車や輸送機器などは、自動運転などを目的とした様々かつ大量のセンサーを実装する傾向がある。
【0076】
このような状況では、微細な量および吐出直径の接着剤の吐出が求められる。
【0077】
吐出出口42の直径が、50μm以下であることで、求められる微細な量および吐出直径の接着剤の吐出を行うことができる。本発明の電子部品接着用ノズル1を用いることで、微細化している電子部品の実装を実現することができるようになる。
【0078】
既述したように、電子部品接着用ノズル1の本体部2および先端部9は、超硬合金により形成される。すなわち、本体部2および先端部9は、超硬合金製である。超硬合金で形成されていることにより、電子部品接着用ノズル1の強度や耐久性が向上する。この向上によって、連続的かつ多数の回数に渡って、接着剤が吐出される場合でも、電子部品接着用ノズル1の破損や損傷が生じにくい。このため、メンテナンスコストを低減させることができる。勿論、交換までの必要期間を下げる必要もある。
【0079】
また、電子部品接着用ノズル1の耐久性が高いことで、高い精度(特に微細な領域への接着剤の吐出)での接着剤の吐出を、維持することができる。このため、ある程度の期間において、正確な接着剤の吐出を継続でき、電子基板への電子部品の実装効率を向上・継続させることができる。
【0080】
上述したように、非常に小型の電子部品を、実装装置において連続的に高速に実装する必要が生じている。実装される部品の電子基板での実装位置も様々であったり、実装装置での実装速度も向上させることが求められたりしている。
【0081】
このような要求に対しては、非常に微細な量の接着剤を、正確な位置に吐出することが求められる。更に、連続的かつ高速な時間間隔で吐出することも求められる。結果として、吐出出口42の直径が50μm以下のように微細にされる必要がある。吐出出口42の直径が微細になると、高い吐出圧力が必要となり、それだけ電子部品接着用ノズル1の本体部2および先端部9に負荷がかかる。これは、高速の連続吐出に基づいても同様である。
【0082】
電子部品接着用ノズル1の本体部2および先端部9が超硬合金で形成されていることで、これらに対応できる。すなわち、高い負荷に対する耐久性が高まり、精度の高い吐出を、より長い期間で継続しやすくなる。結果として、メンテナンスコストを低下させ、実装そのものの歩留まりも向上させることができる。
【0083】
従来技術では、電子部品接着用ノズルの強度や耐久性についての開示や示唆がなく、またその課題解決の開示もなかった。これに対して、電子部品接着用ノズル1が超硬合金であることで、従来技術では開示されていなかった技術的課題にも、本発明の電子部品接着用ノズル100は、上述のように対応できる。
【0084】
また、本体部2と先端部9との2つの要素から構成されることで、より精度の高い狙いでの接着剤の吐出が可能となる。先端部9は、本体部2よりも先に突出している。この突出した態様により、接着剤の吐出を、電子基板の塗布位置に対向させやすくなる。すなわち、狙いをつけやすくなる。
【0085】
これにより、接着剤の吐出と塗布位置を合わせやすくなり、微細な位置への接着剤の吐出精度を向上させることができるようになる。
【0086】
(先端部の形態)
先端部9は、注入入口41から吐出出口42にかけて細くなっていく態様であることも好適である。すなわち、本体部2に対して、先端部9は、次第に細くなっていく(尖っていく)形態であることも好適である。
【0087】
図3は、本発明の実施の形態における電子部品接着用ノズルの側面図である。
図3の電子部品接着用ノズル1は、先端部9が、次第に細くなっていく形態を示している。このように、先端部9が、先端に向けて次第に細くなっていく形態であると、外観からも、接着剤の吐出位置の狙いを設定しやすくなる。
【0088】
すなわち、電子部品接着用ノズル1が装着された電子部品接着用ディスペンサー100をセットするときに、電子基板の接着剤塗布位置に対向させやすくできる(吐出出口42を)。このため、電子部品接着用ディスペンサー100の設定において、外観から見たときに、先端部9のとがっている先を、塗布位置に合わせるようにすればよい。こうすることで、塗布すべき位置に、接着剤を正確に吐出させることが容易となる。
【0089】
先端部9の長さは、本体部2の長さよりも長いことが好適である。長いことで、吐出用貫通孔4の長さも内部空間3の長さより長くなる。これにより、いわゆる接着剤吐出方向を制御する長さが十分になり、正確な方向への吐出が可能となる。長い長さの吐出用貫通孔4を通過する過程で、吐出される接着剤の吐出精度が高まるからである。
【0090】
吐出精度が高まれば、微細な電子部品の連続的な実装が可能となる。これにより、近年要求されている高速かつ高密度の電子部品実装に対応できるようになる。
【0091】
以上のように、本発明の電子部品接着用ノズル1は、本体部2と先端部9との2段階構成を持っていることで、吐出精度を向上させることができる。また、吐出精度の向上のための設定も容易となる。また、吐出される塗布位置のより微細な特定も可能となる。
【0092】
次に、その他のバリエーションについて説明する。
【0093】
(本体部2と先端部9)
本体部2および先端部9は、上述のように超硬合金によって形成されることが好適である。例えば、タングステンを主原料とする超硬合金などが用いられる。タングステンカーバイドがバインダで結合された合金であったり、炭化チタンなどが混合された合金であったりする。
【0094】
本体部2と先端部9が超硬合金で形成されていることにより、電子部品接着用ノズル1の強度および耐久性が高まる。電子部品接着用ノズル1は、大量の電子部品を接着するために、非常に多くの回数の繰り返し使用を受ける。また、動作間隔も非常に短い。このため、非常な負荷が加わる。接着剤の供給と吐出に加えて、吐出圧力も短間隔で次々と付与される。
【0095】
本体部2と先端部9が、超硬合金であることで、このような大きな負荷に対しても対応できるようになる。高い耐久性により、負荷の大きな使用に対応できる。
【0096】
また、上述したように、電子部品接着用ノズル1は、微細な量と吐出直径の接着剤を吐出することが求められる。このため、吐出用貫通孔4の内径、吐出軸の高い精度が求められる。吐出用貫通孔4は、本体部2の所定位置を穿孔されて形成されるかあるいは、張り合わせなどで形成されるか、型加工で形成されるかする。
【0097】
このようにして形成される吐出用貫通孔4は、先端部9が超硬合金であることで、高い精度で形成されやすくなる。加えて、超硬合金であることで、形成された後でも、その形状や吐出軸が変形しにくいメリットもある。特に、高い負荷で繰り返し使用される状況では、吐出用貫通孔4の変形などの懸念がある。このような場合でも、本体部2および先端部9が超硬合金で形成されている場合には、このような変形のリスクを大きく低減できるメリットがある。
【0098】
また、本体部2および先端部9は、金属紛体の焼結体で形成されることも好適である。このとき、タングステンカーバイドなどの超鋼金属素材の粉末が、他の粉末素材と混合された上で、焼結されて焼結体とされればよい。もちろん、他の金属素材が用いられてもよい。
【0099】
このような金属紛体の焼結体で本体部2および先端部9が形成されることで、本体部2および先端部9を高い精度で製造することができる。また、焼結体とする際に、吐出用貫通孔4を設けてもよいし、焼結体となった後で、穿孔などにより吐出用貫通孔4を形成してもよい。いずれの場合でも、焼結体で本体部2および先端部9が形成されることで、容易な形成ができるようになる。
【0100】
また、焼結体であることで、本体部2および先端部9の強度や耐久性が高まり、上述のような負荷の高い繰り返し使用に対する耐久性が高まるようになる。加えて、焼結体であることで、本体部2や先端部9を適切な形状として形成することができる。特に先端部9との2段構成では、焼結体での形成で、その製造が容易となるメリットがある。
【0101】
(内部空間)
内部空間3は、本体部2の内部に設けられた空間である。本体部2が形成される際に同時に内部空間3が形成されてもよい。あるいは、本体部2の内部が切削等されることで、内部空間3が形成されてもよい。
【0102】
電子部品接着用ノズル1は、接着剤を供給して吐出圧力を付与する電子部品接着用ディスペンサー100に組み合されて使用される。電子部品接着用ディスペンサー100から接着剤がこの内部空間3に供給される。また、この供給に合わせて、装置が内部空間3に吐出圧力を付与する。この付与を受けて、内部空間3は供給された接着剤を、内部空間3に連通する吐出用貫通孔4を通じて吐出する。
【0103】
このとき、内部空間3に連通する吐出用貫通孔4は、内部空間3と注入入口41がつながっている。この注入入口41は、吐出用貫通孔4を通じて、吐出出口42に繋がっている。
【0104】
内部空間3は、本体部2の大きさに合わせた容積を有していればよい。また、吐出する接着剤の量や、その回数に合わせた容積を有していればよい。あるいは、吐出圧力を付与する装置との関係で決定されればよい。
【0105】
(吐出用貫通孔)
先端部9に備わる吐出用貫通孔4は、内部空間から圧力を受けて入り込む接着剤を、実際に吐出する。吐出する先は、電子部品を実装する電子基板の実装部位(接着剤塗布位置)である。吐出用貫通孔4は、内部空間4からの接着剤が注入される注入入口41と接着剤が吐出される吐出出口42を備える。
【0106】
内部空間3に供給される接着剤は、吐出圧力を受けて注入入口41に入る。そのまま吐出圧力を受けて接着剤は、吐出出口42から吐出される。この吐出によって接着剤が、実装可能な状態として塗布される。
【0107】
吐出用貫通孔4において、吐出出口42の直径が注入入口41の直径より小さいことも好適である。
【0108】
さらに、吐出用貫通孔が次第に吐出出口42に向かうにつれて小さくなっていくことでもよい。このような形状により、吐出出口42の直径が注入入口41の直径よりも小さくなる。
【0109】
吐出出口42の直径が、注入入口41の直径より小さいことで、吐出用貫通孔4を通過して吐出される接着剤は、微細な量および吐出直径で吐出されやすくなる。特に、微細な吐出直径で吐出する際に、より高い精度で吐出させることができる。また、吐出する部位へ、より正しく吐出させることができる。
【0110】
また、吐出用貫通孔4は、注入入口41から吐出出口42に向けて次第に内径が小さくなっていく構造を有する。このような構造により、吐出用貫通孔4を移動する過程で、接着剤はより吐出すべき位置に正確に吐出されるようになる。すなわち、狙い通りの位置に吐出されるようになる。
【0111】
加えて、先端にかけて内径が次第に小さくなっていくことで、より微細な量と吐出直径での吐出も可能となる。
【0112】
ここで、注入入口41の直径は、吐出出口42の直径よりも10%以上大きいことも好適である。例えば、注入入口41の直径が50μmであるときに吐出出口42の直径が40μmである。あるいは、注入入口42の直径が40μmであるときに、吐出出口42の直径が30μmである。
【0113】
このような大きさの差があることで、注入入口41から吐出出口42へ移動して吐出される接着剤は、微細な吐出直径で確実に吐出されるようになる。特に、微細な位置に確実に接着剤を吐出することができるようになる。接着剤が入る注入入口41よりも吐出出口42が小さいことで、吐出用貫通孔4を移動する際に、接着剤はより目標となる位置に吐出されやすくなるからである。
【0114】
ここで、吐出出口42の直径は、40μm以下であることも好適である。近年の電子部品の小型化は非常に進んでおり、このような小型の電子部品を電子基板に実装するには、40μm以下の直径の吐出出口42から接着剤が吐出されることが好ましい。
【0115】
吐出出口42の直径が40μm以下であることで、非常に小さな面積の部位に対応する接着剤を吐出できる。
【0116】
さらには、吐出出口42の直径は、30μm以下であることも好適である。更に小型の電子部品の実装において必要となる最適な量と部位への接着剤の吐出を可能とするからである。吐出出口42の直径が30μm以下であることで、より小型の電子部品の実装に適した接着剤の吐出を可能とできる。あるいは、より高密度実装に適した接着剤の吐出が可能である。
【0117】
(吐出用貫通孔のバリエーション)
吐出用貫通孔4は、本体部2において機械加工で穿孔されて形成されることも好適である。本体部2が形成された後で、内部空間3と吐出用貫通孔4が機械加工で形成されてもよい。機械加工によって穿孔されて吐出用貫通孔4が形成されることで、高い精度で吐出用貫通孔4が形成できる。
【0118】
従来技術で開示される電子部品接着用ノズルでは、吐出用の孔での機械加工については開示も示唆もない。機械加工であることで、従来技術では形成困難であった微細で精度の高い吐出用貫通孔4が形成できる。
【0119】
また、上述したように、吐出用貫通孔4は、吐出出口42に向けて次第に細くなっていくことも好適である。このような形状の場合にも、吐出用貫通孔4が機械加工で穿孔されることで実現が容易となる。また、機械加工で形成されることで、耐久性の高い吐出用貫通孔4を実現できる。加えて、非常に微細な直径の吐出用貫通孔4を実現することもできる。
【0120】
吐出用貫通孔4の内部表面は、摩擦低下のための表面処理が施されていることも好適である。この表面処理によって接着剤の吐出がより容易となる。吐出用貫通孔4内部で接着剤が詰まりにくくなり、最適な量と吐出直径での接着剤の吐出が確実に行える。また、目詰まりなどが生じにくいことで、電子部品接着用ノズル1の耐久性や寿命延長に効果的である。
【0121】
摩擦低下の表面処理は、コーティング処理や磨き処理など様々な手段で実現されればよい。あるいは、摩擦を低下させる表面剤が塗布されることでもよい。摩擦力が低下することで、吐出圧力を受けた接着剤が、スムーズに吐出出口42から吐出されるようになる。スムーズに吐出されれば、吐出すべき実装部位に高い精度で接着剤を吐出できる。この高い精度を維持することも可能となる。また、目詰まりなども防止でき、メンテナンスコストや負荷を低減できる。
【0122】
従来技術では、このような摩擦低下の表面処理については開示も示唆もない。すなわち、微細な量の接着剤を高い正確性をもって連続的に吐出することについての技術課題が想定されていない。本発明の電子部品接着用ディスペンサー100の電子部品接着用ノズル1は、このような表面処理により、想定されていなかった技術課題を解決できている。
【0123】
(電子部品接着用ディスペンサー)
次に、
図2のような電子部品接着用ディスペンサー100として構成される場合のバリエーションなどについて説明する。
【0124】
(接着剤収容容器)
図2に示されるように、接着剤収容容器110は、電子部品接着用ディスペンサー100の本体部を構成する。加えて、その内部空間111に接着剤を収容する。接着剤収容容器110は、その先端に電子部品接着用ノズル1を備えており、接着剤収容容器110の内部空間111と電子部品接着用ノズル1の内部空間3とは連通している。この連通により、内部空間111に収容されている接着剤は、電子部品接着用ノズル1の内部空間3に移動する(内部空間3に供給される)。
【0125】
また、押出しピン120の上下移動の過程で、内部空間3には、内部空間111から接着剤が供給される。この供給によって、電子部品接着用ノズル1の内部空間2には、接着剤が充填される状態となる。
【0126】
(供給機構)
図4は、本発明の実施の形態における実装機構に取り付けられた電子部品接着用ディスペンサーの斜視図である。
【0127】
接着剤収容容器110に接着剤を供給する供給機構115が、さらに備わっている。
図4には、この供給機構115が示されている。供給機構115は、例えば、内部空間111に接続する管路であって、この管路により外部から接着剤を内部空間111に供給できる。
【0128】
供給機構115が備わることで、接着剤収容容器110の内部空間111には、常に接着剤が収容された状態を維持できる。これにより、電子基板に電子部品を実装する実装作業の長時間での連続性を確保できる。
【0129】
(押出しピン)
押出しピン120は、圧力部材130の圧力の付与と開放との繰り返しに対応して、上下移動(接着剤の吐出方向に沿った方向の移動)可能である。圧力部材130による押出し圧力が付与されると、押出しピン120はこれに伴って押し出される。この押し出しによって、
図5のように、押出しピン120の先端は、電子部品接着用ノズル1の内部空間3の中に入り込む。この入り込みによって、内部空間3に充填されている接着剤に吐出圧力を付与できる。
【0130】
図5は、本発明の実施の形態における電子部品接着用ディスペンサーの模式図である。押出しピン120が押し出されている状態を示している。圧力部材130が押し出した場合には、
図5のような状態となって、吐出出口42から接着剤が吐出されている。
【0131】
圧力部材130が押出し圧力を開放すると(停止すると)、押出しピン120は、引き戻される。引き戻されると、押出しピン120の先端が内部空間3への入り込みから外れて、内部空間3には内部空間111から接着剤が供給される。
【0132】
再び、圧力部材130が押出し圧力を付与すると、押出しピン120が内部空間3の接着剤に吐出圧力を付与する。これにより、再び接着剤が吐出出口42から吐出される。
【0133】
(圧力部材)
圧力部材130は、押出しピン120に押出し圧力の付与と開放を繰り返す。あるサイクル(一定サイクルだけでなく、不定サイクルも含む)で、圧力部材130は、押出しピン120に押出し圧力を付与するタイミングと押出し圧力の開放(解除)を、繰り返す。この繰り返しによって、押出しピン120が、内部空間3に対して入り込みと遠隔との移動を繰り返す。この移動の繰り返しにより、内部空間3にある接着剤への吐出圧力の付与と、吐出圧力付与のない状態(内部空間3に接着剤を供給する状態)を、繰り返すことができる。
【0134】
すなわち、圧力部材130は、最終的に、接着剤の吐出と非吐出の期間を繰り返すことができる。
【0135】
ここで、圧力部材130は、ピエゾ素子を含むことも好適である。ピエゾ素子は、電圧を受けて、押出し圧力の付与と解除とを繰り返すことができる。これにより、押出しピン120を押し出したり引き戻したりを繰り返すことができる。
【0136】
特に、ピエゾ素子は電圧の付与により動作を変化させることができる。このため、動作制御が容易かつ正確となる。この正確な動作によって、吐出すべきタイミングで、正確に、接着剤を吐出させることができる。結果として、電子部品接着用ディスペンサーによる接着剤吐出を正確に行わせることができる。
【0137】
もちろん、ピエゾ素子以外が、圧力部材130に用いられてもよい。
【0138】
圧力部材130を制御する圧力部材制御部150を更に備えることも好適である。
図5にあるように、圧力部材制御部150が、更に備わっている。圧力部材制御部150は、圧力部材130による押出し圧力の付与を、所定タイミングに基づいて行わせる。
【0139】
例えば、圧力部材130が、ピエゾ素子を含む場合には、圧力部材制御部150は、所定タイミングで電圧を付与する。この電圧付与によりピエゾ素子が動作して、押出しピン120に押出し圧力を付与できる。
【0140】
圧力部材制御部150は、あるタイミング(期間)での圧力部材130による押出し圧力の付与と、別のタイミング(期間)での圧力部材130による押出し圧力の付与の解除と、を切り替える。ピエゾ素子を圧力部材130が含む場合には、電圧の付与の期間で圧力部材130による押出し圧力の付与を行わせ、電圧付与をしない期間で圧力部材130による押出し圧力の付与を行わせない。
【0141】
圧力部材130は、圧力付与のタイミングでは、押出しピン120を押し出す。押出しピン120が押し出されている期間においては、押出しピン120は、内部空間3に入り込む。入り込んだ押出しピン120は、接着剤に吐出圧力を付与できる。
【0142】
圧力部材130は、圧力付与以外のタイミングでは、押出しピン120を引き戻す。引き戻された押出しピン120の先端は、内部空間3から抜ける(完全に抜ける場合や部分的に抜ける場合との両方がある)。押出しピン120が引き戻されている期間においては、接着剤収容容器110の内部空間111から、電子部品接着用ノズル1の内部空間3に接着剤が供給される。この繰り返しにより、接着剤の吐出サイクルが実現される。
【0143】
なお、接着剤の供給は、押出しピン120の押出しに伴っても行われる。
【0144】
電子部品接着用ディスペンサー100は、電子部品を電子基板に実装するための接着剤を、正確かつ高速な繰り返しタイミングで吐出することができる。また、電子部品接着用ノズル1の耐久性により、メンテナンスコストや負荷の低減、実装そのものの効率化を図ることもできる。
【0145】
図6は、本発明の実施の形態における吐出と非吐出のサイクルを示すタイミングチャートである。このタイミングチャートのように、圧力部材130の押出し圧力の付与と解除の繰り返しに基づいて、接着剤の吐出と非吐出とが繰り返される。
【0146】
実装装置において、電子基板の移動などと接着剤の吐出との相関関係に基づいて、このタイミングチャートのような繰り返しタイミングが決定される。圧力部材制御部150は、このタイミングチャートに合わせた制御を行なえばよい。
【0147】
なお、
図6のタイミングチャートのように、一定サイクルだけではなく、変動するタイミングでの制御であってもよい。
【0148】
以上のように、電子部品接着用ノズル1が組み込まれた電子部品接着用ディスペンサー100は、連続的かつ正確に実装に必要となる接着剤の吐出を実現できる。
【0149】
以上、実施の形態で説明された電子部品接着用ノズルは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0150】
1 電子部品接着用ノズル
2 本体部
3 内部空間
4 吐出用貫通孔
41 注入入口
42 吐出出口
9 先端部
100 電子部品接着用ディスペンサー
110 接着剤収容容器
111 内部空間
120 押出しピン
130 圧力部材
150 圧力部材制御部