(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】患者アセスメント支援装置、患者アセスメント支援方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/20 20180101AFI20220705BHJP
G16H 20/10 20180101ALI20220705BHJP
【FI】
G16H10/20
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2020527637
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2019025631
(87)【国際公開番号】W WO2020004556
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】P 2018124478
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517304691
【氏名又は名称】株式会社Kitahara Medical Strategies International
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】駱 園
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】細井 利憲
(72)【発明者】
【氏名】小阪 勇気
(72)【発明者】
【氏名】林谷 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】大野 友嗣
(72)【発明者】
【氏名】宇野 裕
(72)【発明者】
【氏名】湯本 英二
(72)【発明者】
【氏名】北原 茂実
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502439(JP,A)
【文献】特開2015-179539(JP,A)
【文献】特開2014-63215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信接続された端末装置から音声情報を取得して当該音声情報に基づいて患者を識別するための患者識別情報と質問情報とを取得する取得部と、
前記患者識別情報に基づいて前記患者を識別し、前記識別された患者についての既知支援情報であって、前記患者識別情報に紐づけて記憶された情報であり、前記患者の生体に関する患者生体情報、前記患者に関する医師の指示を示す医師指示情報、および前記患者に関する診療録を示す診療録情報の少なくとも一つ含前記既知支援情報の有無を判定する判定部と、
前記既知支援情報が有ると判定された場合に、前記患者生体情報、前記医師指示情報、および前記診療録情報の少なくとも一つを前記端末装置に出力し、前記患者についての既知支援情報の記録が無いと判定された場合に、前記患者の看護に関する質問情報に基づいて推定した推定支援情報を
前記端末装置に出力する出力部と、
を備える患者アセスメント支援装置。
【請求項2】
前記識別された患者についての既知支援情報が無いと判定された場合に、前記推定支援情報を生成する生成部と、
をさらに備える請求項1に記載の患者アセスメント支援装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記既知支援情報が無いと判定された場合に、前記質問情報に対応する前記推定支援情報を支援情報生成モデルに基づいて推定し、前記推定支援情報を出力する 請求項1
または請求項2に記載の患者アセスメント支援装置。
【請求項4】
前記質問情報に対応する推定支援情報を生成する支援情報生成モデルの学習データを生成する学習部と、
をさらに備える請求項1から請求項
3の何れか一項に記載の患者アセスメント支援装置。
【請求項5】
通信接続された端末装置から音声情報を取得して当該音声情報に基づいて患者を識別するための患者識別情報と質問情報とを取得し、
前記患者識別情報に基づいて前記患者を識別し、前記識別された患者についての既知支援情報であって、前記患者識別情報に紐づけて記憶された情報であり、前記患者の生体に関する患者生体情報、前記患者に関する医師の指示を示す医師指示情報、および前記患者に関する診療録を示す診療録情報の少なくとも一つ含前記既知支援情報の有無を判定し、
前記既知支援情報が有ると判定された場合に、前記患者生体情報、前記医師指示情報、および前記診療録情報の少なくとも一つを前記端末装置に出力し、前記患者についての既知支援情報の記録が無いと判定された場合に、前記患者の看護に関する質問情報に基づいて推定した推定支援情報を
前記端末装置に出力する
ことを含む患者アセスメント支援方法。
【請求項6】
コンピュータに、
通信接続された端末装置から音声情報を取得して当該音声情報に基づいて患者を識別するための患者識別情報と質問情報とを取得し、
前記患者識別情報に基づいて前記患者を識別し、前記識別された患者についての既知支援情報であって、前記患者識別情報に紐づけて記憶された情報であり、前記患者の生体に関する患者生体情報、前記患者に関する医師の指示を示す医師指示情報、および前記患者に関する診療録を示す診療録情報の少なくとも一つ含前記既知支援情報の有無を判定し、
前記既知支援情報が有ると判定された場合に、前記患者生体情報、前記医師指示情報、および前記診療録情報の少なくとも一つを前記端末装置に出力し、前記患者についての既知支援情報の記録が無いと判定された場合に、前記患者の看護に関する質問情報に基づいて推定した推定支援情報を
前記端末装置に出力する
ことを実行させるプログラム
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者アセスメント支援装置、患者アセスメント支援方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
看護師の業務は病棟業務のほぼ全てを網羅する。病院業務全体の最適化に向け、看護師の業務を最適化することは不可欠である。そのような最適化を行うにあたり、患者アセスメントは看護師の業務効率にとって一番重要なポイントと言える。ただし、現状では患者アセスメントに関して看護師の従業年数や経験によって個人差が大きくある。特に、若手看護師は、経験不足のため、患者アセスメントに関する業務効率が悪く、業務ミスにつながる恐れもある。なお患者アセスメントとは患者の状態の評価、査定を意味する。
【0003】
関連する技術として特許文献1には患者の看護の連携を支援することのできる技術が開示されている。例えば特許文献1の段落0106には「報告表示処理部405は、患者状態情報画面の選択により、分岐処理を実行する・・・報告表示処理部405は、“報告詳細”が選択された場合に、処理をステップS209に進める。」と記載されている。また特許文献1の段落0107には「報告表示処理部405は、
図11に示すような、各分類項目の観察結果情報の詳細を、利用者端末20に表示させる」と記載されている。また特許文献1の
図11には患者観察情報の報告詳細の表示画面が記載されている。
【0004】
また特許文献2には、化学療法を受けるために来院した患者の状態に基づいて患者のランクを仮判定することで待ち時間を少なくし、さらに症例報告書(CRF)の信頼性を向上させる医療支援システムの技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2016-212925号公報
【文献】日本国特開2015-170159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
患者アセスメントに関する看護師の経験が多くない状況においても、患者に対する適切な看護を迅速に支援することのできる技術が望まれている。
【0007】
この発明の目的の一例は、上述の課題を解決することのできる患者アセスメント支援装置、患者アセスメント支援方法、プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、患者アセスメント支援装置は、通信接続された端末装置から音声情報を取得して当該音声情報に基づいて患者を識別するための患者識別情報と質問情報とを取得する取得部と、前記患者識別情報に基づいて前記患者を識別し、前記識別された患者についての既知支援情報であって、前記患者識別情報に紐づけて記憶された情報であり、前記患者の生体に関する患者生体情報、前記患者に関する医師の指示を示す医師指示情報、および前記患者に関する診療録を示す診療録情報の少なくとも一つ含前記既知支援情報の有無を判定する判定部と、前記既知支援情報が有ると判定された場合に、前記患者生体情報、前記医師指示情報、および前記診療録情報の少なくとも一つを前記端末装置に出力し、前記患者についての既知支援情報の記録が無いと判定された場合に、前記患者の看護に関する質問情報に基づいて推定した推定支援情報を前記端末装置に出力する出力部と、を備える。
【0009】
発明の第2の態様によれば、患者アセスメント支援方法は、通信接続された端末装置から音声情報を取得して当該音声情報に基づいて患者を識別するための患者識別情報と質問情報とを取得し、前記患者識別情報に基づいて前記患者を識別し、前記識別された患者についての既知支援情報であって、前記患者識別情報に紐づけて記憶された情報であり、前記患者の生体に関する患者生体情報、前記患者に関する医師の指示を示す医師指示情報、および前記患者に関する診療録を示す診療録情報の少なくとも一つ含前記既知支援情報の有無を判定し、前記既知支援情報が有ると判定された場合に、前記患者生体情報、前記医師指示情報、および前記診療録情報の少なくとも一つを前記端末装置に出力し、前記患者についての既知支援情報の記録が無いと判定された場合に、前記患者の看護に関する質問情報に基づいて推定した推定支援情報を前記端末装置に出力することを含む。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、コンピュータに、通信接続された端末装置から音声情報を取得して当該音声情報に基づいて患者を識別するための患者識別情報と質問情報とを取得し、前記患者識別情報に基づいて前記患者を識別し、前記識別された患者についての既知支援情報であって、前記患者識別情報に紐づけて記憶された情報であり、前記患者の生体に関する患者生体情報、前記患者に関する医師の指示を示す医師指示情報、および前記患者に関する診療録を示す診療録情報の少なくとも一つ含前記既知支援情報の有無を判定し、前記既知支援情報が有ると判定された場合に、前記患者生体情報、前記医師指示情報、および前記診療録情報の少なくとも一つを前記端末装置に出力し、前記患者についての既知支援情報の記録が無いと判定された場合に、前記患者の看護に関する質問情報に基づいて推定した推定支援情報を前記端末装置に出力することを実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、患者アセスメントに関する看護師の経験が多くない状況においても、患者に対する適切な看護を迅速に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一の実施形態による患者アセスメント支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す患者アセスメント支援装置のハードウェア構成図である。
【
図3】
図1に示す患者アセスメント支援装置の機能ブロック図である。
【
図4】
図1に示す患者アセスメント支援装置の処理フローを示す第一の図である。
【
図5】
図1に示す患者アセスメント支援装置の処理フローを示す第二の図である。
【
図6】
図1に示す患者アセスメント支援装置の記録情報の例を示す第一の図である。
【
図7】
図1に示す患者アセスメント支援装置の記録情報の例を示す第二の図である。
【
図8】第2の実施形態に係る患者アセスメント支援装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による患者アセスメント支援装置を図面を参照して説明する。
図1は第一の実施形態による患者アセスメント支援システムの構成を示すブロック図である。
図1で示すように患者アセスメント支援システム100は、少なくとも患者アセスメント支援装置1とデータベース2とを含む。
【0014】
患者アセスメント支援装置1とデータベース2とは通信接続される。データベース2には看護師や医師等による患者の看護を支援するための情報が記録される。患者アセスメント支援装置1はデータベース2に記録される情報に基づいて推定支援情報を生成する。患者アセスメント支援装置1には携帯端末3等の出力先となる装置が通信接続される。患者アセスメント支援装置1は既知支援情報や推定支援情報を携帯端末3へ出力する。携帯端末3は看護師や医師が利用する。看護師や医師は携帯端末3以外の出力先の装置を携えていてもよい。そして患者アセスメント支援装置1はそのような携帯端末3以外の装置に既知支援情報や推定支援情報を出力するようにしてもよい。既知支援情報とは、患者の支援に関する既知の情報(既にデータベースなどに記録されている情報)あってもよい。推定支援情報とは、患者の支援に関する推定された情報であってもよい。
【0015】
図2は患者アセスメント支援装置1のハードウェア構成図である。
患者アセスメント支援装置1はコンピュータであり、
図2で示すようにCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、インタフェース105、通信モジュール106等のハードウェアを備える。患者アセスメント支援装置1は
図2に示すようなコンピュータ単体で構成されてもよいし、複数のコンピュータが通信接続されて構成されるようにしてもよい。
【0016】
図3は患者アセスメント支援装置1と携帯端末3の機能ブロック図である。
患者アセスメント支援装置1は起動時に自装置(患者アセスメント支援装置1)が記憶する患者アセスメント支援プログラムを実行する。これにより患者アセスメント支援装置1は、制御部10、学習部11、患者情報取得部(取得部)12、取得情報解析部13、既知支援情報有無判定部(判定部)14、記録情報抽出部15、支援情報生成部(生成部)16、支援情報出力部(出力部)17の各機能を実行可能になる。
【0017】
制御部10は、患者アセスメント支援装置1を制御する。
学習部11は、データベースに記録されている情報等を用いて支援情報生成モデルの学習データを生成する。
患者情報取得部12は、患者を識別するための患者識別情報と患者に対する質問情報とを取得する。
取得情報解析部13は、質問情報を解析する。
【0018】
既知支援情報有無判定部14は、患者識別情報に基づいてその患者についての既知支援情報の有無を判定する。
記録情報抽出部15は、既知支援情報または推定支援情報に用いられる情報をデータベース2から抽出する。
支援情報生成部16は、既知支援情報が無いと判定された場合に患者情報に含まれる質問情報に基づいて推定支援情報を生成する。
支援情報出力部17は、既知支援情報または推定支援情報を、患者情報を送信した所定の携帯端末3へ出力する。
【0019】
このような構成により、患者アセスメント支援装置1は、患者アセスメントに関する看護師の経験が多くない状況においても、看護師等の携帯端末3に既知支援情報または推定支援情報を出力し、患者に対する適切な看護を支援する。
【0020】
携帯端末3には、患者支援アプリケーションプログラムが起動されることにより、患者支援部31が備わる。
【0021】
図4は患者アセスメント支援装置1の処理フローを示す第一の図である。
まず患者アセスメント支援装置1が学習データを生成する処理について説明する。
患者アセスメント支援装置1の学習部11は、予め予想される質問情報の入力を受け付けて、その質問情報に対応する支援情報を生成するため支援情報生成モデルの学習データを生成する。具体的には学習部11は質問情報の入力を受け付ける(ステップS101)。例えば医師や看護師等の利用者が携帯端末3等を用いて質問情報を患者アセスメント支援装置1へ送信し、その質問情報を患者アセスメント支援装置1の学習部11が受け付けてよい。
【0022】
学習部11は質問情報を形態素解析し1つまたは複数の単語を抽出する(ステップS102)。学習部11はそれら単語を含む医師助言情報、診療録情報(カルテ情報)、看護師一般知識、看護師経験情報、等をデータベース2から抽出する(ステップS103)。学習部11は医師助言情報、診療録情報、看護師一般知識、看護師経験情報、等に含まれる項目のうち、対処情報(処置アクション)、投薬情報(薬種別、投薬量)、などの既知支援情報を抽出する(ステップS104)。学習部11はそれら抽出した対処情報や投薬情報などの既知支援情報を携帯端末3へ送信する(ステップS105)。
【0023】
携帯端末3を利用する医師や看護師等は、質問情報の送信に応じて患者アセスメント支援装置1から受信した対処情報や投薬情報についての、質問情報に対する回答の正当性を判定する。医師や看護師等は携帯端末3に回答の正当性判定結果(正解、誤り)を入力する。
【0024】
患者アセスメント支援装置1は携帯端末3からの正当性判定結果を受信する(ステップS106)。学習部11は正当性判定結果の受信に基づいて、質問情報の示す単語に対応する対処情報や投薬情報の正解、誤りを検知する(ステップS107)。学習部11は質問情報に対応して抽出した対処情報や投薬情報のうち、正解とされた対処情報や投薬情報に基づいて、質問情報と対処情報や投薬情報の関係を判定する(ステップS108)。学習部11は学習処理を終了するかを判定する(ステップS109)。学習部11は様々な質問情報の入力と、対処情報や投薬情報の抽出と、それに対応する正当性判定結果の入力の繰り返しが十分でない場合には学習処理を終了しない。学習部11は様々な質問情報の入力と、対処情報や投薬情報の抽出と、抽出された情報に対応する正当性判定結果の入力を繰り返し、質問情報に対応する正当性の高い対処情報や投薬情報を特定する。
【0025】
そして学習部11は質問情報に対して正当性の高い対処情報や投薬情報を抽出するための支援情報生成モデルを機械学習の手法を用いて生成する(ステップS110)。学習部11は支援情報生成モデルを構成するための学習データ等をデータベース2に記録する(ステップS111)。学習部11はデータベース2に記録される生体情報、医師助言情報、診療録情報が増加したタイミングで、支援情報生成モデルを再生成してもよい。
【0026】
なお学習部11は他の手法により、質問情報に対する対処情報や投薬情報を特定するための支援情報生成モデルを生成してよい。例えば、質問情報には患者の状態等を含む生体情報が含まれていてよい。学習部11はそのような質問情報を用いて、対応する対処情報や投薬情報を抽出し、その正当性の結果の入力を看護師等から受けて支援情報生成モデルを生成してよい。生体情報とは、体温、心拍数、その他の生体や状態の情報である。
【0027】
図5は患者アセスメント支援装置1の処理フローを示す第二の図である。
支援情報生成モデルを生成した患者アセスメント支援装置1は、実際の患者のアセスメント(評価、査定)に対応する支援を行うことができる。具体的には、看護師等は実際に患者の看護を行う際に、患者の症例が自身の知識が足りない症例である場合や、診療録等の資料をナースステーション等に戻って確認することが出来ない状況などにおいて患者アセスメント支援装置1を利用する。看護師などは携帯端末3に記録されている患者支援アプリケーションプログラムを起動させる。これにより携帯端末3は患者支援部31の機能が実行可能になる。
【0028】
患者支援部31は患者識別情報と質問情報とを入力するよう指示する画面を携帯端末3のモニタに表示する。また患者支援部31は携帯端末3に設けられたマイクを起動する。携帯端末3を利用する看護師等は、携帯端末3のマイクに向けて患者ID、氏名、ベッド番号、部屋番号などの患者識別情報のうちの少なくとも一つと、質問情報とを発話する。質問情報は、患者の状態を示す情報(体温、心拍数、その他の状態を示す情報)を含んでいてもよい。マイクは患者識別情報と質問情報とを含む音声情報を患者アセスメント支援装置1へ送信する。患者アセスメント支援装置1の患者情報取得部12は受信した音声情報を取得する(ステップS201)。患者情報取得部12は音声情報を取得情報解析部13へ出力する。
【0029】
取得情報解析部13は音声情報を取得して音声解析を行い、音声情報を文字情報に変換する(ステップS202)。取得情報解析部13は音声情報に対応する文字情報の文字列を解析して、それら文字情報を、患者識別情報と、質問情報とに分類する(ステップS203)。なお取得情報解析部13は文字情報を形態素解析して患者識別情報と、質問情報の単語を抽出するようにしてもよい。取得情報解析部13は患者識別情報と、質問情報とを含む分類後の患者情報を生成する(ステップS204)。取得情報解析部13が行う音声解析、文字情報の文字列解析、患者識別情報と質問情報との分類、形態素解析、などの手法は公知の技術を用いてよい。取得情報解析部13は、患者情報のうち患者識別情報(患者ID、氏名、別途番号、部屋番号のうちの少なくとも一つ)を既知支援情報有無判定部14へ出力する。
【0030】
既知支援情報有無判定部14は患者識別情報を取得すると、その患者識別情報に紐づく医師助言情報が有るか否かを判定する(ステップS205)。医師助言情報は例えば患者の状態に応じて処方すべき薬種別、投薬量、処置アクションなどを含む情報である。既知支援情報有無判定部14は医師助言情報がデータベース2に記録されている場合には、患者識別情報を記録情報抽出部15へ出力する。記録情報抽出部15は患者識別情報に紐づく医師助言情報をデータベース2から読み取る(ステップS206)。記録情報抽出部15は医師助言情報を含む既知支援情報を支援情報出力部17へ出力する。支援情報出力部17は医師助言情報を含む既知支援情報を携帯端末3へ送信する(ステップS207)。
【0031】
携帯端末3の患者支援部31は既知支援情報をモニタに出力する。携帯端末3の患者支援部31は既知支援情報が文字列をスピーカから音声により出力するようにしてもよい。これにより看護師等の携帯端末3のユーザは既知支援情報の示す医師助言情報のうち、投薬種別、投薬量、処置アクションなどを確認して、医師の示す適切な処置を施すことができる。
【0032】
ステップS205において既知支援情報である医師助言情報が無いと判定した場合、既知支援情報有無判定部14は支援情報生成部16へ推定支援情報の生成を指示する。支援情報生成部16は取得情報解析部13から質問情報を取得する。支援情報生成部16は質問情報が示す単語を特定する(ステップS208)。質問情報が示す単語は、例えば、患者の疾患名、患者の状態(体温、心拍数、血圧、疾患の度数、その他状態を示す情報)などを示す単語である。
【0033】
支援情報生成部16は質問情報が示す単語を支援情報生成モデルに入力する(ステップS209)。支援情報生成モデルは畳み込みニューラルネットワークなどを応用したモデルであり、質問情報が示す一つまたは複数の単語に応じた投薬情報(薬種別、投薬量)や対処情報(処置アクション)を出力する。支援情報生成部16は支援情報生成モデルに単語を入力して得た投薬情報、対処情報を、推定支援情報と特定する(ステップS210)。支援情報生成部16は投薬情報と対処情報とを含む推定支援情報を支援情報出力部17へ出力する。支援情報出力部17は推定支援情報を携帯端末3へ送信する(ステップS211)。携帯端末3の患者支援部31は推定支援情報をモニタに出力する。または携帯端末3の患者支援部31は推定支援情報を示す文字列をスピーカから音声により出力するようにしてもよい。
【0034】
以上の処理によれば患者アセスメント支援装置1に携帯端末3を接続させて利用する看護師等のユーザは、患者に関する質問情報に応じた既知支援情報または推定支援情報を取得て、その支援情報に基づく看護処置の行動を行うことができる。
【0035】
また上述の処理によれば、特定の患者に関する医師助言情報等の既知の支援情報がデータベース2に格納されていない場合にも、支援情報生成モデルによって、スキルの高い看護師の看護処置アクションを認識することができる。これにより本システムを利用する看護師等のユーザは正しい看護処置を迅速におこなうことができる。その理由は、本システムは、一般知識及び複数のベテラン看護師等の過去の経験(看護師一般知識、看護師経験情報)、患者個別の情報を学習し、看護処置現場で患者の状況を判断し、対応するアクションを提示できるためである。
【0036】
次に、具体的な実施例を用いて本発明を実施するための形態の動作を説明する。
図6は患者アセスメント支援装置1の記録情報の例を示す第一の図である。
図6に示すように、患者によって薬投与の条件及び投与量がそれぞれ異なる。看護師はこのような情報を、看護師が持つ携帯端末3で受信し確認することができる。従って、例えば看護師等のユーザがナースステーションに戻らなくても看護処置現場にてリアルタイムで医師の指示や他のベテラン看護師の看護処置アクションの情報を迅速に確認することができる。
【0037】
なお患者アセスメント支援装置1の患者情報取得部12や取得情報解析部13は、携帯端末3から受信した音声情報や音声情報の解析結果をデータベースに記録するようにしてもよい。これにより、患者アセスメント支援装置1は看護師が看護作業時に行った処置の状況を記録しておくことができる。
【0038】
図7は患者アセスメント支援装置1の記録情報の例を示す第二の図である。
患者アセスメント支援装置1は上述の処理において、特定の患者に関する処置アクションを記録しておくことができる(
図7)。例えば上述の処理において患者アセスメント支援装置1の取得情報解析部13は音声情報を解析して文字情報に変換し、その文字情報に含まれる患者識別情報とその他の情報を、また音声情報の受信時刻を紐づけてデータベース2に記録する。例えば
図4に示すように、患者Aについて、看護師は11時12分に発熱を検知し、ロキソニン(薬の名前)60mgを1錠内服させたことが記録される。
【0039】
患者アセスメント支援装置1の支援情報生成部16は、過去の患者に関する音声情報等に基づく記録に基づいて、過去の看護処置アクションを学習してもよい。この場合、支援情報生成部16は、患者Aについての発熱と投薬完了の情報が新たに記録された場合に、その後の処置アクションを自動生成して支援情報として出力してもよい。例えば支援情報生成部16は、患者Aに対してロキソニン内服1時間後の12時12分に、体温と血圧の確認が必要と判断し、体温と血圧の測定を促す看護処置アクションの情報を含む推定支援情報を生成する。支援情報出力部17はその推定支援情報を携帯端末3に送信するようにしてもよい。これにより看護師は患者Aに対して体温と血圧の測定が必要であることを認識する。また看護師は携帯端末3を用いて患者Aの体温と血圧の測定が完了したことを音声により入力する。この結果、取得情報解析部13は上述の処理と同様に患者Aに対して体温と血圧の測定が終了したことを示す情報を記録する。支援情報生成部16は新たに情報が記録された後に、再度支援情報を生成する。例えば支援情報生成部16は過去の患者Aの記録から、「異常なし」と判断して、その情報を示す推定支援情報を生成してもよい。看護師は携帯端末3に表示される「異状なし」を確認することができる。
【0040】
図8は第2の実施形態に係る患者アセスメント支援装置1の構成を示す図である。
支援情報出力部(出力部)17は、取得した患者識別情報に基づいて患者についての既知支援情報の記録が無いと判定された場合に、入力した質問情報に基づいて推定した推定支援情報を出力する。
【0041】
上述の各装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータがそのプログラムを実行するようにしても良い。
【0042】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0043】
この出願は、2018年6月29日に出願された日本国特願2018-124478を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、患者アセスメント支援装置、患者アセスメント支援方法、記録媒体に適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1・・・患者アセスメント支援装置
2・・・データベース
3・・・携帯端末
10・・・制御部
11・・・学習部
12・・・患者情報取得部(取得部)
13・・・取得情報解析部
14・・・既知支援情報有無判定部(判定部)
15・・・記録情報抽出部
16・・・支援情報生成部(生成部)
17・・・支援情報出力部(出力部)
31・・・患者支援部