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  • 特許-風量調整用ダンパの動作制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】風量調整用ダンパの動作制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/14 20060101AFI20220705BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
F24F13/14 E
F24F7/007 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018161644
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2020034229
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】上運天 昭司
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219241(JP,A)
【文献】特開2009-041187(JP,A)
【文献】特開2000-060185(JP,A)
【文献】特開2016-082673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/14
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモータの回転駆動によって開閉されることにより、通風路内を流れる空気の風量を調整するバタフライ型のダンパを備える風量調整用ダンパの動作制御方法であり、
定格風量を超える過大風量が前記ダンパの開動作によって発生したときに、その過大風量によって、閉方向への定格トルクを超えるトルクを、前記ダンパに発生させることにより、前記ダンパの開動作を停止させて、前記ステッピングモータを脱調させる脱調ステップと、
前記ステッピングモータの脱調を検出する検出ステップと、
前記ステッピングモータの脱調を検出した場合に、過大風量発生アラームを出力する出力ステップとを含む
ことを特徴とする風量調整用ダンパの動作制御方法。
【請求項2】
前記ステッピングモータの脱調を検出すると、前記ダンパを閉方向に回動させる風量抑制ステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項1記載の風量調整用ダンパの動作制御方法。
【請求項3】
脱調した前記ステッピングモータの原点合わせを実施する原点調整ステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の風量調整用ダンパの動作制御方法。
【請求項4】
前記出力ステップは、
過大風量発生アラーム信号を、上位の空調制御装置に出力する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の風量調整用ダンパの動作制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビル及び住宅等の空気調和システムの吹出しチャンバやダクト等に設置され、空気調和の対象領域へ供給する風量を調整する、ステッピングモータを動力源としたバタフライ型風量調整用ダンパの動作制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な風量調整ダンパ装置では、上流側に風量センサを備えており、その計測値が目標風量になるように、ダンパ開度を調整している。
【0003】
風量センサを設置する場合には、部品点数が増えると共に配線も必要になり、さらに、風量センサの上流側に、整流機構または直管部を設けること、及び、風量センサと下流側のダンパとの間にも、それぞれが発生する流れの乱れによって、互いに影響を与えないような距離を設けること等の対策を採らなければならず、装置の大型化や重量の増加を招いてしまう。また、風量センサ及び整流機構等を設置することにより、通風路の断面積が部分的に狭くなるため、通風路における圧損や騒音が増加してしまう。
【0004】
そこで、風量センサを設置せずに、空調機の発生静圧、ファンの回転数、同じ空調システムに接続されている各ダンパの開度情報等に基づいて、風量を推定して、ダンパ開度の制御を行うことも、実施されている。
【0005】
そして、このような、従来の風量調整ダンパ装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-63404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特にビル等で一般的に使用される空調機(エアハンドリングユニット)は、空調した空気を高静圧で供給することができるため、このような空調機を備える空調システムに、風量センサを有していない風量調整ダンパ装置を適用した場合においては、同じ空調システムに接続されている各ダンパの開度情報等に基づいて、空調機が発生すべき風量や静圧を計算してファンの回転数等を制御し、各ダンパの上流側に過大な静圧がかからないようにする。しかし、ほとんどのダンパが閉じている状態において、空調システムにおける制御上の何らかの不具合等により、ダンパの上流側に過大な静圧がかかってしまう可能性も考えられ、この状態において、さらに、空調システムにおける何らかの制御上の不具合等により、風量調整ダンパ装置が、閉じている状態のダンパ1台または数台に開動作を行わせると、当該ダンパに定格風量を超える過大風量を流してしまうおそれがある。また、このとき、風量調整ダンパ装置は、風量センサを有していないため、空調システムは、過大風量が流れていることを把握することができないという問題がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、風量センサを設置することなく、バタフライ型のダンパのみで、過大風量が流れることを制限して、過大風量発生アラームを上位の空調制御システム等に出力することができる風量調整用ダンパの動作制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る風量調整用ダンパの動作制御方法は、ステッピングモータの回転駆動によって開閉されることにより、通風路内を流れる空気の風量を調整するバタフライ型のダンパを備える風量調整用ダンパの動作制御方法であり、定格風量を超える過大風量がダンパの開動作によって発生したときに、その過大風量によって、閉方向への定格トルクを超えるトルクを、ダンパに発生させることにより、ダンパの開動作を停止させて、ステッピングモータを脱調させる脱調ステップと、ステッピングモータの脱調を検出する検出ステップと、ステッピングモータの脱調を検出した場合に、過大風量発生アラームを出力する出力ステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、風量センサを設置することなく、バタフライ型のダンパのみで、過大風量が流れることを制限して、過大風量発生アラームを上位の空調制御システム等に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施の形態1に係る風量調整用ダンパの動作制御方法が適用される風量調整ダンパ機構の構成を示した図である。図1Aはダンパの全閉状態を示した図である。図1Bはダンパの全開状態を示した図である。
図2】この発明の実施の形態2に係る風量調整用ダンパの動作制御方法が適用される風量調整ダンパ機構の構成を示した図である。図2Aはダンパの全閉状態を示した図である。図2Bはダンパの全開状態を示した図である。
図3】バタフライ型のダンパに対して閉方向へのトルクが発生する理由を説明するためのシミュレーション結果を示した図である。図3Aはダンパ周りの風速分布及び風速ベクトルを示した図である。図3Bはダンパ周りの圧力分布を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1A及び図1Bは、実施の形態1に係る風量調整用ダンパの動作制御方法が適用される風量調整ダンパ機構の構成を示した図である。図1Aは、ダンパの全閉状態を示した図であり、図1Bは、ダンパの全開状態を示した図である。
【0014】
図1A及び図1Bに示すように、風量調整ダンパ機構は、空調機に接続される通風路30内に設けられている。この風量調整ダンパ機構は、ステッピングモータ14を動力源として、ダンパ11を開閉し、通風路30の開口面積を変えることにより、当該通風路30内を流れる空気の風量を調整するものである。
【0015】
風量調整ダンパ機構は、ダンパ11、ベースブラケット12、ダンパブラケット13、ステッピングモータ14、及び、リンク機構15を備えている。
【0016】
ダンパ11は、円板状をなしており、所謂、バタフライ型のダンパである。このダンパ11は、通風路30内を流れる空気の風量を調整または遮断するものである。
【0017】
なお、ダンパ11の全閉状態とは、図1Aに示すように、ダンパ11の前面となるダンパ面が、空気の流れ方向に対して略直交するように配置された状態である。また、ダンパ11の全開状態とは、図1Bに示すように、ダンパ11のダンパ面が、空気の流れ方向と略平行になるように配置された状態である。
【0018】
ベースブラケット12は、ダンパ11を開閉可能に支持するものであって、取付部12a,12b及び支持軸12cの受け部を有している。取付部12a,12bは、通風路30に固定されている。支持軸12cは、ベースブラケット12に形成された2つの受け部において、回転可能に保持されている。
【0019】
ダンパブラケット13は、ダンパ11の後面を支持するものであって、ベースブラケット12と同様に、支持軸12cの受け部を有しており、その支持軸12cを介して回動可能に支持されている。即ち、ダンパ11は、支持軸12cを回動中心として回動して、通風路30を開閉することにより、当該通風路30内を流れる空気の風量を調整可能になっている。
【0020】
ステッピングモータ14は、ダンパ11を開閉動作させるものである。即ち、ステッピングモータ14は、ダンパ11を開閉させるための回転駆動力(トルク)を、その回転軸に発生させるものである。このステッピングモータ14は、ベースブラケット12に設けられた、その回転軸の径よりも大きな径の孔に、その回転軸を通した状態で、ボルト等によって、ベースブラケット12に固定されている。
【0021】
リンク機構15は、ステッピングモータ14の回転軸とダンパブラケット13との間を繋いでおり、ステッピングモータ14の回転駆動力をダンパ11の開閉動作に変換するものである。このリンク機構15は、アーム15a,15b及び連結軸15cを有している。アーム15aの一端に設けられた孔には、ステッピングモータ14の回転軸が、貫通した状態で、ボルトや圧入等によって固定されている。アーム15bの一端は、ダンパブラケット13に回動可能に支持されている。そして、アーム15a,15bの他端同士は、連結軸15cを介して、互いに回動可能に連結されている。なお、アーム15a,15bは、樹脂製であることが多い。
【0022】
従って、ダンパ11を開動作させる場合には、風量調整ダンパ機構は、例えば、図1Aに示した状態から、ステッピングモータ14を正回転駆動させる。これにより、リンク機構15は、ステッピングモータ14の回転軸の正回転駆動に伴って、アーム15aが回動することにより、このアーム15aに連結軸15cによって連結されたアーム15bも回動する。この結果、アーム15bに引っ張られたダンパブラケット13は、ベースブラケット12に対して、倒れ込むように回動する。よって、図1Bに示すように、ダンパ11は、開方向に向けて回動し、最終的に、全開位置に位置決めされる。このように、ダンパ11が全開位置に位置決めされると、通風路30内を流れる空気の風量は、最大になる。
【0023】
また、ダンパ11を閉動作させる場合には、風量調整ダンパ機構は、例えば、図1Bの状態から、ステッピングモータ14を逆回転駆動させる。これにより、リンク機構15は、ステッピングモータ14の回転軸の逆回転駆動に伴って、アーム15aが回動することにより、このアーム15aに連結軸15cによって連結されたアーム15bも回動する。この結果、アーム15bに押されたダンパブラケット13は、ベースブラケット12に対して、起き上がるように回動する。よって、図1Aに示すように、ダンパ11は、閉方向に向けて回動し、最終的に、全閉位置に位置決めされる。このように、ダンパ11が全閉位置に位置決めされると、通風路30内を流れる空気の風量は、遮断、または、ダンパ11の外周と通風路30の内周面との間に隙間を設けている場合は、最低値に設定される。
【0024】
更に、風量調整ダンパ機構は、ステッピングモータ14を回転駆動させることにより、ダンパ11を、全閉位置と全開位置との間において、ステッピングモータ14に与えたパルス数に応じて、任意の開度位置に位置決めすることができる。但し、リンク機構15のガタによる分に相当するわずかなずれ量が、ダンパ11の開度位置に生じる。また、ステッピングモータ14がギヤ付きモータである場合には、そのギヤのバックラッシによる分と、リンク機構15のガタによる分とを合わせた分に相当するずれ量が、ダンパ11の開度位置に生じる。
【0025】
次に、実施の形態1に係る風量調整用ダンパの動作制御方法における発明の着眼点について説明する。
【0026】
バタフライ型のダンパ11では、風量(風速)の大きさに応じて、閉方向へのトルクが発生する。また、ステッピングモータ14においては、回転中に、発生する動トルク以上のトルクがかかると、脱調して回転が停止し、脱調の検出については、駆動するためのパルス電圧または電流の特徴的な変化から検出する方法が実現されていることに着目した。
【0027】
つまり、実施の形態1に係る風量調整用ダンパの動作制御方法では、定格風量を超える所定の風量において、ダンパ11の開方向への回動が停止して、ステッピングモータ14が脱調(ストール)するような動トルクのモータ及び駆動条件(動作周波数や、2相励磁や1-2相励磁等の励磁形態)を選定して使用することにより、所定の過大風量以上で、ダンパ11の開方向への回動が停止して、風量増加が制限される。また、実施の形態1に係る風量調整用ダンパの動作制御方法では、ステッピングモータ14の脱調を検出することにより、上位の空調制御装置に過大風量発生アラームを出力することができるという優れた機能を提供することができる。
【0028】
よって、過大風量発生アラーム信号を受け取った上位の空調制御装置は、ファンの回転数を落として、静圧や風量を下げたり、同系列のダクトに接続されている他のダンパを開動作させて、過大風量を速やかに解消することができる。
【0029】
なお、風量によって発生するダンパ11のトルクは、必ず閉方向に作用するため、ステッピングモータ14は、過大風量時でも、閉方向に支障なく駆動可能であり、ダンパ11速やかに閉じて、更に風量を制限することもできる。
【0030】
また、ステッピングモータ14の脱調を検出する技術は、駆動電圧または駆動電流の変化を利用した公知の技術が種々あるため、その中から選択して、適切なものを使用すれば良い。
【0031】
そこで、風量調整ダンパ機構は、ステッピングモータ14の脱調を検出することができる脱調検出手段を有している。この脱調検出手段は、ダンパ11が開動作している際に、ステッピングモータ14が脱調したことを検出する。
【0032】
なお、ステッピングモータ14及びその駆動条件は、ダンパ11の開動作時において、定格風量以下の風量によって発生する閉方向へのトルクに対しては、脱調せず、かつ、定格風量を超える過大風量によって発生する閉方向へのトルクに対しては、脱調する特性を、有している。ここで、定格風量を超える過大風量によって発生する閉方向へのトルク、つまり、ステッピングモータ14が脱調するトルクは、モータやドライバ回路の個体差や温度特性等により、モータの動トルクに、例えば、20~30%程度のばらつきがあることを考慮して、その中心値が決定される。また、実施の形態1に係る風量調整用ダンパ機構のように、アーム15a,15b等からなるリンク機構15を介してダンパ11を回動させる構成においては、アーム15a,15bの長さや回動軌道等の設定により、ダンパ11に発生するトルクと、ステッピングモータ14の回転軸に発生するトルクの間に比率を持たせることも可能であるが、この比率は、ほぼ1:1で、開度位置によるこの比率の変化が出来るだけ少なくなるように設定した方が、簡素で使用しやすい。
【0033】
従って、風量調整用ダンパの動作制御方法は、ダンパ11が開動作している際に、そのダンパ11の開動作によって、過大風量が発生した場合には、ダンパ11は、その過大風量によって、閉方向への定格トルクを超えるトルクを、受ける。これにより、ステッピングモータ14が脱調し(脱調ステップ)、これに伴って、ダンパ11の開動作が停止する。この結果、風量調整ダンパ機構は、過大風量の風量増加を制限することができる。
【0034】
次いで、脱調検出手段は、ステッピングモータ14が脱調すると、当該ステッピングモータ14が脱調したことを検出する(検出ステップ)。そして、風量調整ダンパ機構は、脱調検出手段がステッピングモータ14の脱調を検出すると、過大風量発生アラームを上位の空調制御装置に送信する(出力ステップ)。
【0035】
これに対して、過大風量発生アラームを受信した空調制御装置は、ファンの回転数を下げて、ダンパ11の上流側にかかっている静圧を小さくすると共に、通風路30内に供給される風量を少なくすることにより、当該ダンパ11における過大風量を速やかに解消することができる。また、空調制御装置は、通風路30と同系列のダクトに接続されている他の通風路内に設置された風量調整ダンパ機構において、そのダンパを開方向に回動させて、当該ダンパ11における過大風量を速やかに解消することができる。
【0036】
また、風量調整ダンパ機構は、脱調検出手段がステッピングモータ14の脱調を検出すると、過大風量発生アラームを出力すると共に、当該ダンパ11を閉方向に回動させることができる(風量抑制ステップ)。これにより、風量調整ダンパ機構は、過大風量が流れる状態を速やかに回避することができる。
【0037】
更に、風量調整ダンパ機構は、過大風量が解消された場合に、脱調したステッピングモータ14の原点合わせを実施する(原点調整ステップ)。ステッピングモータ14の原点合わせは、公知の方法を用いて実施すればよい。例えば、ダンパ11が全閉位置または全開位置付近にあるとき、ステッピングモータ14の回転軸に連動して回動するアーム15aまたはダンパ11などの一部が、その回動の経路においてメカ的に当接する、原点位置決めストッパ機構を設ける。そして、ステッピングモータ14を回動させて、当該アーム15aまたはダンパ11などの一部を、当該原点位置決めストッパ機構に当接させることで、ステッピングモータ14の原点合わせを行うことができる。なお、原点位置決めストッパ機構の代わりに、リミットスイッチや光学式センサ等の公知の位置決め用センサを使用しても構わない。これにより、風量調整ダンパ機構は、ダンパ11の開度位置を、過大風量発生以前の正常な位置に再設定することができる。
【0038】
以上より、実施の形態1に係る風量調整用ダンパの動作制御方法は、風量センサを設置することなく、バタフライ型のダンパ11のみで、過大風量が流れることを制限して、過大風量発生アラームを上位の空調制御システム等に出力することができる。
【0039】
実施の形態2.
図2A及び図2Bは、実施の形態2に係る風量調整用ダンパの動作制御方法が適用される風量調整ダンパ機構の構成を示した図である。図2Aは、ダンパの全閉状態を示した図であり、図2Bは、ダンパの全開状態を示した図である。
【0040】
図2A及び図2Bに示すように、風量調整ダンパ機構は、ダンパ11の回転軸11aを、軸受16を介して、通風路30に回転可能に支持している。回転軸11aは、ダンパ11の中央を通り、通風路30を貫通するように配置されている。また、回転軸11aは、ステッピングモータ14の回転軸に接続されている。
【0041】
従って、実施の形態2に係る風量調整ダンパ機構は、その構造や働きが、実施の形態1に係る風量調整ダンパ機構と基本的に同様であるため、上述した実施の形態1に係る風量調整ダンパ機構と同様の構成及び動作制御方法を適用することができる。
【0042】
以上より、実施の形態2に係る風量調整用ダンパの動作制御方法は、風量センサを設置することなく、バタフライ型のダンパ11のみで、過大風量が流れることを制限して、過大風量発生アラームを上位の空調制御システム等に出力することができる。
【0043】
次に、バタフライ型のダンパ11に、閉方向へのトルクが発生する理由について、図2Aから図3Bを用いて詳細に説明する。
【0044】
先ず、図2A及び図2Bに示すように、ダンパ11における上流側面となるダンパ面は、回転軸11aを境にして、半円状をなすダンパ羽根11A,11Bに分けることができる。ダンパ羽根11Aは、ダンパ11が開動作するときに、回転軸11aを回動中心として、上流側に向けて突き出る面である。一方、ダンパ羽根11Bは、ダンパ11が開動作するときに、回転軸11aを回動中心として、下流側に向けて突き出る面である。
【0045】
そこで、図3Aは、シミュレーションにより求めた、ダンパ周りの空気の流れ(風速分布及び風速ベクトル)を示した図である。この図3Aに示すように、ダンパ羽根11Bの先端部分(II部)は、空気が当該ダンパ羽根11Bに沿ってほぼ平行に通過する。これに対して、ダンパ羽根11Aの先端部分(I部)は、空気が当該ダンパ羽根11Aに対してほぼ直交するように衝突する。
【0046】
また、図3Bは、シミュレーションにより求めた、ダンパ周りの圧力分布を示した図である。(カラー表示をそのままグレー表示に変換したので、分かりにくいが、)この図3Bに示すように、ダンパ羽根11Aの先端部分(III部)における圧力は、ダンパ羽根11Bの先端部分(IV部)における圧力よりも、高くなっている。
【0047】
よって、図3A及び図3Bから明らかなように、供給された空気の流れは、上流側に突き出したように位置するダンパ羽根11Aを、下流側に位置するダンパ羽根11Bよりも強く押すことになる。従って、開状態(全閉と全開の間における中間的な開度状態)のダンパ11は、供給された空気によって、閉方向へのトルクを受けることになる。
【0048】
そして、上述した、バタフライ型のダンパ11に対して閉方向へのトルクが発生する理由は、図1A及び図1Bで示した風量調整ダンパ機構のダンパ11にも適用される。図1A及び図1Bで示したダンパ11においても、ダンパ羽根11Aは、ダンパ11が開動作するときに、上流側に向けて突き出る面となる一方、ダンパ羽根11Bは、ダンパ11が開動作するときに、下流側に向けて突き出る面である。
【0049】
次に、ダンパ11に作用するトルクの特性は、ダンパ形状に応じて変化するが、その一例について、以下に説明する。
【0050】
ダンパ11の開度位置と、ダンパ11の閉方向へのトルクとの関係は、風量を一定にした条件において、開度位置が40°~50°程度でトルクが最大値となる、緩やかな放物線を描くような特性になる。また、このような特性を有するダンパ11は、その全閉位置付近及び全開位置付近においては、ダンパ羽根11A,11B部分における空気の流れの状態が殆ど同じになるため、ダンパ羽根11A,11Bに働く力がほぼバランスし、ダンパ11には、ほとんどトルクが発生しない。
【0051】
更に、ダンパ11の開度位置と、ダンパ11によって調整される風量との関係は、開度位置が全閉位置~20°付近においては、開度位置変化に対する風量変化が小さいが、開度位置が20°付近を超えると、当該風量変化が急激に大きくなり、開度位置が80°~全開位置付近では、また、当該風量変化が小さくなる。このとき、開度位置が20°~80°程度の中間部分の範囲内に限れば、風量は、開度位置(角度)の2乗にほぼ比例する。
【0052】
一方、ダンパ11に作用するトルクは、風量の2乗にほぼ比例する。これにより、ダンパ11の上流側にかかる静圧の大きさがほぼ一定である場合には、ダンパ11に作用するトルクは、開度位置が20°~80°程度において、当該開度位置(角度)の4乗にほぼ比例して、急激に増大することになる。
【0053】
なお、本願発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは、各実施の形態における任意の構成要素の変形、もしくは、各実施の形態における任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0054】
11 ダンパ
11a 回転軸
12 ベースブラケット
12a,12b 取付部
12c 支持軸
13 ダンパブラケット
14 ステッピングモータ
15 リンク機構
15a,15b アーム
15c 連結軸
16 軸受
30 通風路
図1
図2
図3