(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】量子ドットを含む層を製造する方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20220705BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20220705BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220705BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220705BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20220705BHJP
G03F 7/095 20060101ALI20220705BHJP
H01L 33/50 20100101ALN20220705BHJP
【FI】
G03F7/11 503
B82Y20/00
B82Y40/00
G02B5/20
G03F7/26 511
G03F7/095
H01L33/50 ZNM
(21)【出願番号】P 2016222429
(22)【出願日】2016-11-15
【審査請求日】2019-10-16
(32)【優先日】2015-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507362786
【氏名又は名称】コミサリア ア エナジー アトミック エ オックス エナジーズ オルタネティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】サンチョ オードリー
(72)【発明者】
【氏名】アバンチュリエ ベルナール
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-125197(JP,A)
【文献】特開2003-298120(JP,A)
【文献】特開2010-067979(JP,A)
【文献】特開2003-273004(JP,A)
【文献】特表2012-502488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
B82Y 20/00
B82Y 40/00
G02B 5/20
G03F 7/26
G03F 7/095
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドットを含んで、該量子ドットが活性である第1の領域及び前記量子ドットが非活性である第2の領域を有する層を製造する方法であって、
a) 量子ドットを含む第1の層を支持体上に成膜する工程、
b) 前記第1の層上に第2の層を成膜する工程、
c) 平面視で前記第1の領域及び前記第2の領域を画定するマスクを介して前記第2の層を光に曝し、その後、前記第2の層を現像して前記第2の領域に対向する前記第2の層を除去して、前記第1の領域に対向する前記第2の層を保持する工程、及び
d) 前記第1の層を除去せずに、前記第1の領域に対向する前記第2の層を除去する工程
を有
し、
前記第1の層は、ポジ型レジスト及びネガ型レジストの一方であり、前記第2の層は前記ポジ型レジスト及びネガ型レジストの他方であり、
前記第1の層に含まれる量子ドットは、CdSe/ZnSタイプ、InP/ZnS タイプ、CdS/ZnS タイプ、CdSe/ZnSe タイプ又はPbS/CdS タイプのコアシェル構造を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の層はネガ型レジストであり、前記第2の層はポジ型レジストであることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の層を成膜する前に前記第1の層を光に曝す工程を有さないことを特徴とする請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の層を現像する前記工程で、前記第2の層をTMAHに基づく溶液に浸すことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程d)で、前記第2の層を酸素プラズマエッチングによって除去することを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程d)の後、前記第1の層の上面部分をエッチングする工程を更に有することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の層の上面部分をエッチングする前記工程を、酸素及び六フッ化硫黄のプラズマエッチングによって行うことを特徴とする請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記製造された層上で前記工程a)、前記工程b)、前記工程c)及び前記工程d)を繰り返し、量子ドットを含んで、該量子ドットが活性である第1の領域及び前記量子ドットが非活性である第2の領域を有する別の層を前記製造された層上に形成することを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記別の層の第1の領域を前記製造された層の第2の領域に対向して配置し、前記別の層の第2の領域を前記製造された層の第1の領域に対向して配置することを特徴とする請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
量子ドットを含んで、該量子ドットが活性である第1の領域及び前記量子ドットが非活性である第2の領域を有する層と光源とを備えたデバイスを製造する方法であって、
a) 量子ドットを含む第1の層を支持体上に成膜する工程、
b) 前記第1の層上に第2の層を成膜する工程、
c) 平面視で前記第1の領域及び前記第2の領域を画定するマスクを介して前記第2の層を光に曝し、その後、前記第2の層を現像して前記第2の領域に対向する前記第2の層を除去して、前記第1の領域に対向する前記第2の層を保持する工程、
d) 前記第1の層を除去せずに、前記第1の領域に対向する前記第2の層を除去する工程、及び
e) 前記工程d)で得られた層に対向して光源を配置する工程
を有
し、
前記第1の層は、ポジ型レジスト及びネガ型レジストの一方であり、前記第2の層は前記ポジ型レジスト及びネガ型レジストの他方であり、
前記第1の層に含まれる量子ドットは、CdSe/ZnSタイプ、InP/ZnS タイプ、CdS/ZnS タイプ、CdSe/ZnSe タイプ又はPbS/CdS タイプのコアシェル構造を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
量子ドットを含んで、該量子ドットが活性である第1の領域及び前記量子ドットが非活性である第2の領域を夫々有する2つの層の積層体と光源とを備えたデバイスを製造する方法であって、
a) 量子ドットを含む第1の層を支持体上に成膜する工程、
b) 前記第1の層上に第2の層を成膜する工程、
c) 平面視で前記第1の領域及び前記第2の領域を画定するマスクを介して前記第2の層を光に曝し、その後、前記第2の層を現像して前記第2の領域に対向する前記第2の層を除去して、前記第1の領域に対向する前記第2の層を保持する工程、
d) 前記第1の層を除去せずに、前記第1の領域に対向する前記第2の層を除去する工程、
e) 前記工程d)で得られた層上で前記工程a)、前記工程b)、前記工程c)及び前記工程d)を繰り返し、量子ドットを含んで、該量子ドットが活性である第1の領域及び前記量子ドットが非活性である第2の領域を有する別の層を前記工程d)で得られた層上に形成する工程、及び
f) 前記工程e)で得られた2つの層の積層体に対向して光源を配置する工程
を有
し、
前記第1の層は、ポジ型レジスト及びネガ型レジストの一方であり、前記第2の層は前記ポジ型レジスト及びネガ型レジストの他方であり、
前記第1の層に含まれる量子ドットは、CdSe/ZnSタイプ、InP/ZnS タイプ、CdS/ZnS タイプ、CdSe/ZnSe タイプ又はPbS/CdS タイプのコアシェル構造を有することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、量子ドットを含んで、量子ドットが活性である第1の領域及び量子ドットが非活性である第2の領域を有する層を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットという用語は、三次元の空間に量子を閉じ込める特性を有する、結晶構造の三次元半導体ナノ粒子を表す。量子ドットは、量子ドットの寸法及び量子ドットを形成する材料に応じて変わる物理的特性、特に磁気特性、電気特性及び光学特性を有する。量子ドットの寸法は典型的には、1~100 nmの範囲内である。
【0003】
量子ドットは特に、光輝性であるという特性を有しており、すなわち、量子ドットが光源によって照射されると、量子ドットは光源からの光子を吸収し、次にこの光励起に対する反応として光を再度放射する。吸収波長帯域、すなわち量子ドットが光子を吸収する波長帯域が比較的広い場合がある一方、放射波長帯域、すなわち量子ドットが光を再度放射する波長帯域は一般的に非常に狭く、例えば50nm未満の半値全幅を有する。更に、放射波長帯域の中心部分の波長は、特に量子ドットの寸法を変えることにより微細に調節され得る。
【0004】
光学分野における量子ドットの用途の内の1つは色変換である。特に、第1の色の光、例えば青色の光を放射することができる複数の発光ダイオードを備えた発光性表示画面が形成されており、発光ダイオードによって放射された光を一又は複数の他の色、例えば表示画面のある領域では赤色の光に、表示画面の他の領域では緑色の光に変換するために、発光ダイオードの組立体は量子ドットを含む層で覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような表示画面の形成は、発光ダイオードによって放射される光の全て又は略全てを光の変換が望まれる表示画面の領域で吸収し得るために、特に量子ドットの層が有すべき特性、とりわけ量子ドットの層の厚さ及び量子ドットの濃度により実際的な問題を引き起こす。別の問題として、画素のサイズ又は表示画面の放射面積に適した解像度を有する、量子ドットの層の様々な放射領域を画定することを可能にすべきであるということがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、実施形態は、量子ドットを含んで、該量子ドットが活性である第1の領域及び前記量子ドットが非活性である第2の領域を有する層を製造する方法であって、a) 量子ドットを含む第1の層を支持体上に成膜する工程、b) 前記第1の層上に第2の層を成膜する工程、c) 平面視で前記第1の領域及び前記第2の領域を画定するマスクを介して前記第2の層を光に曝し、その後、前記第2の層を現像して前記第2の領域に対向する前記第2の層を除去して、前記第1の領域に対向する前記第2の層を保持する工程、及びd) 前記第1の層を除去せずに、前記第1の領域に対向する前記第2の層を除去する工程を有することを特徴とする方法を提供する。
【0008】
実施形態によれば、前記第1の層及び前記第2の層はレジストである。
【0009】
実施形態によれば、前記第1の層は、ポジ型レジスト及びネガ型レジストの一方であり、前記第2の層は前記ポジ型レジスト及びネガ型レジストの他方である。
【0010】
実施形態によれば、前記第1の層はネガ型レジストであり、前記第2の層はポジ型レジストである。
【0011】
実施形態によれば、前記第1の層はSU8 タイプのレジストであり、前記第2の層はTELRタイプのレジストである。
【0012】
実施形態によれば、前記方法は、前記第2の層を成膜する前に前記第1の層を光に曝す工程を有さない。
【0013】
実施形態によれば、前記第2の層を現像する前記工程で、前記第2の層をTMAHに基づく溶液に浸す。
【0014】
実施形態によれば、前記第1の層に含まれる量子ドットは、CdSe/ZnSタイプの量子ドットである。
【0015】
実施形態によれば、前記工程d)で、前記第2の層を酸素プラズマエッチングによって除去する。
【0016】
実施形態によれば、前記方法は、前記工程d)の後、前記第1の層の上面部分をエッチングする工程を更に有する。
【0017】
実施形態によれば、前記第1の層の上面部分をエッチングする前記工程を、酸素及び六フッ化硫黄のプラズマエッチングによって行う。
【0018】
実施形態によれば、前記製造された層上で前記工程a)、前記工程b)、前記工程c)及び前記工程d)を繰り返し、量子ドットを含んで、該量子ドットが活性である第1の領域及び前記量子ドットが非活性である第2の領域を有する別の層を前記製造された層上に形成する。
【0019】
実施形態によれば、前記別の層の第1の領域を前記製造された層の第2の領域に対向して配置し、前記別の層の第2の領域を前記製造された層の第1の領域に対向して配置する。
【0020】
別の実施形態は、光源を備えており、上記のタイプの方法によって製造された量子ドットを含む層を前記光源に対向して更に備えていることを特徴とするデバイスを提供する。
【0021】
別の実施形態は、光源を備えており、上記のタイプの方法によって製造された量子ドットを含む層及び量子ドットを含む別の層の積層体を前記光源に対向して更に備えていることを特徴とするデバイスを提供する。
【0022】
前述及び他の特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない具体的な実施形態について以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】量子ドットを含んで、量子ドットが活性である第1の領域及び量子ドットが非活性である第2の領域を有する層を製造する方法の実施形態の工程を概略的に示す断面図である。
【
図1B】量子ドットを含んで、量子ドットが活性である第1の領域及び量子ドットが非活性である第2の領域を有する層を製造する方法の実施形態の工程を概略的に示す断面図である。
【
図1C】量子ドットを含んで、量子ドットが活性である第1の領域及び量子ドットが非活性である第2の領域を有する層を製造する方法の実施形態の工程を概略的に示す断面図である。
【
図1D】量子ドットを含んで、量子ドットが活性である第1の領域及び量子ドットが非活性である第2の領域を有する層を製造する方法の実施形態の工程を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1A~1Dに関連して記載された方法の代替的な実施形態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
同一の要素は様々な図面において同一の参照番号で示されており、更に様々な図面は正しい縮尺で示されていない。以下の記載では、「の上側(above) 」、「の下(under) 」、「上(upper) 」、「下(lower) 」のような位置及び向きを述べる用語を述べるとき、図面の表示を言及しており、実際には、記載された構造は異なる方向に向いていてもよいと理解されるべきである。「実質的に」、「略」、「およそ」及び「程度」という表現は、特に指定されていない場合、10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を意味する。
【0025】
図1Aは、支持基板101 、例えばシリコン基板の上面に、量子ドットが含まれている透明なレジストの基材を有する第1の層103 を成膜する工程を示す。この例では、第1の層103 のレジストはネガ型レジストであり、すなわち、樹脂照射工程中に光放射に曝された部分が、後の現像工程で樹脂に塗布される現像剤に不溶性になって、光放射に曝されなかった部分がこの現像剤に可溶性である樹脂を含む。第1の層103 のレジストは、例えばポリエポキシドに基づく樹脂を含み、例えば、SU8 タイプのネガ型レジストの樹脂から選択された樹脂、すなわち、基本分子が8つのエポキシド基を有する樹脂を含む。例として、第1の層103 のレジストは、GERSELTEC ENGINEERING SOLUTIONSによるSU8 1020PIという商標名で示されるタイプの樹脂を含む。
【0026】
第1の層103 の樹脂と混合する量子ドットは、例えばセレン化カドミウム(CdSe)に基づく量子ドットであり、例えばCdSe/ZnSタイプのコアシェル構造を有する量子ドットである。変形例として、第1の層103 の量子ドットは、InP/ZnS タイプ、CdS/ZnS タイプ、CdSe/ZnSe タイプ又はPbS/CdS タイプのコアシェル構造を有する量子ドットである。
【0027】
例として、量子ドットをレジストに含める際に、量子ドットをまず粉末の形態で溶媒、例えばクロロホルムに混合する工程が行われてもよい。このようにして得られた溶液を、次に樹脂と混合してもよい。例として、量子ドットを、1~100 mg/ml の範囲内の濃度で溶媒と混合してもよく、その後、得られた溶液を、例えば容積で2対1(樹脂1容積に対して溶液2容積)程度の割合で樹脂と混合してもよい。
【0028】
第1の層103 の付着性及び/又は均一性を高めるために、第1の層103 を成膜する前に、支持基板101 の上面を、例えば酸素プラズマによって調製してもよい。
【0029】
第1の樹脂の層103 は、支持基板101 の上面に、例えばスピンコーティングによって広げられてもよい。その後、例えば80~150 ℃の範囲内の温度で30~120 秒の範囲内の時間、構造体をアニールして第1の樹脂の層103 を硬化させて第1の樹脂の層103 の機械抵抗を高めてもよい。
【0030】
例として、第1の層103 の厚さは、0.5 μm~50μmの範囲内であり、例えば0.9 μm程度である。実例として、発明者らによって行われた計算によって、1μm程度の厚さにより、50%程度の第1の層103 の体積充填率に対して窒化ガリウムの発光ダイオードによって放射される青色の光の99%が吸収され得ることが示された。
【0031】
図1Bは、第1の層103 の上面に第2のレジストの層105 を成膜する工程を示す。この例では、第2の層105 のレジストは、ポジ型レジストであり、すなわち、樹脂照射工程中に光放射に曝された部分が、後の現像工程で樹脂に塗布される現像剤に可溶性になって、光放射に曝されなかった部分がこの現像剤に不溶性である樹脂を含む。例として、第2の層105 のレジストは、TOK EUROPEによるTELRという商標名で示されるタイプの樹脂を含む。第1の層103 とは異なり、第2の層105 は量子ドットを含まない。更に、第1の層103 を形成する工程と第2の層105 を成膜する工程との間に、第1の層103 を光に曝す工程がない、すなわち、第1の層103 の構造を変更する可能性がある、第1の層103 を光放射に曝す工程がないことを注目すべきである。
【0032】
第2の樹脂の層105 は、支持基板101 の上面に、例えばスピンコーティングによって広げられてもよい。その後、例えば80~150 ℃の範囲内の温度で30~120 秒の範囲内の時間、構造体をアニールして第2の樹脂の層105 を硬化させて第2の樹脂の層105 の機械抵抗を高めてもよい。
【0033】
図1Bは、第2の樹脂の層105 を成膜した後の工程を更に示しており、この工程の間、第2の層105 を、第2の層105 の上面の上側に配置されたマスク107 を介して光に曝す。マスク107 は、第2の層105 の第1の領域105aを覆って、第2の層105 の第2の領域105bに対向する開口部を有している。照射工程中、光放射線109 に曝される第2の層105 の領域で第2の層105 の樹脂の化学構造を変更することができる光放射線109 に組立体の上面を曝す。第2の層105 の樹脂を光に曝すために用いられる放射線は、例えば紫色の光線又は紫外線、例えば350 ~450 nmの範囲内の波長を有する放射線である。
【0034】
照射工程の後、マスク107 を除去し、例えば80~150 ℃の範囲内の温度で30~120 秒の範囲内の時間、構造体を安定させるためのアニールを行ってもよい。
【0035】
図1Cは、
図1Bに関連して記載された照射工程の後の第2の樹脂の層105 を現像する工程を示す。この工程中、支持基板101 と第1の層103 及び第2の層105 とによって形成された組立体を、照射工程中にマスク107 を介して曝されたパターンを第2の樹脂の層105 に現像し得る現像槽に浸す。現像槽は、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)に基づく溶液、例えばMICROCHEMICALSによるTMAH238 という商標名で示される溶液を含む。この工程中、照射工程中に既に曝された第2の樹脂の層105 の第2の領域105bを、現像剤での溶解によって除去する。従って、現像工程の終わりに、照射工程中にマスクされた第1の領域105aのみが第2の層105 に残る。
【0036】
例として、現像工程中、構造体を現像槽に30~120 秒間浸して第2の層105 に明確なパターンを得て、次に水で洗浄して乾燥させる。
【0037】
驚いたことに、本発明者らは、
図1Cの現像工程の終わりに、その上側で第2の層105 の樹脂が現像工程中に完全に除去される第1の層103 の第2の領域103bに含まれる量子ドットが非活性である一方、その上側で第2の層105 の樹脂が現像工程中に除去されない第1の層103 の第1の領域103aに含まれる量子ドットが活性のままであったことを観察した。本明細書では「非活性」とは、第1の層103 の第2の領域103bに含まれる量子ドットが自身の光輝性の特性を失って、第1の層103 の第2の領域103bが可視光に対して実質的に透明になり、すなわち、第1の層103 の第2の領域103bは、第2の領域103bが受ける光を、特に色を著しく変えずに伝えることを意味する。更に、本明細書では「活性」とは、第1の層103 の第1の領域103aに含まれる量子ドットが自身の最初の光輝性の特性を維持していることを意味する。
【0038】
図1Dは、
図1Cの現像工程の後の工程を示し、この工程中、第2の樹脂の層105 の以前に除去されることなく残っている第1の領域105aを、第1の層103 の第2の領域103bを同時的に除去せずに除去する。言い換えれば、第2の樹脂の層105 の残りの第1の領域105aの除去は、第1の層103 の樹脂に対して選択的である。例として、第2の樹脂の層105 の第1の領域105aの除去は、酸素プラズマによるドライエッチングによって行われる。
【0039】
行われた測定によって、第2の層105 の第1の領域105aを除去した後、第1の層103 の第1の領域103aに含まれている量子ドットは依然として活性であり、第1の層103 の第2の領域103bに含まれている量子ドットは依然として非活性であることが示されている。
【0040】
従って、提供される方法によって、量子ドットを含む実質的に一定の厚さの第1の層103 であって、量子ドットが活性である第1の領域103a及び量子ドットが非活性である第2の領域103bを有する第1の層103 が与えられる。
【0041】
第2の層105 の第1の領域105aを除去する工程の後、第1の層103 の上面部分を、例えば酸素及び六フッ化硫黄(SF6) のプラズマによって物理的にエッチングする追加のエッチング工程を行ってもよい。この追加のエッチング工程によって、第1の層103 に画定された光輝性パターンのコントラストを高めることが可能になる。
【0042】
その後の工程で、光輝性パターンが形成された第1の層103 を、例えば照射デバイス、例えば発光ダイオードのアレイに対向して置いてもよく、その後、支持基板101 を除去してもよい。変形例として、支持基板101は透明な材料、例えばガラスから形成されてもよく、その場合、支持基板101 及び第1の層103 を備えた組立体は照射デバイスに対向して配置されてもよい。変形例として、支持基板101 がそのまま、発光ダイオードが既に形成された半導体基板であってもよく、この場合、第1の層103 は発光ダイオードの上側に直接形成される。
【0043】
提供される方法の利点は特に、得られた色変換の第1の層103 が一定、又はほとんど一定の厚さを有するために、比較的高い堅牢性が色変換の第1の層103 に与えられ、あり得る追加の光学素子を有する組立体がより容易に形成されるということである。
【0044】
提供される方法の別の利点は、量子ドットを含む第1の層103 が、第1の層103 の形態及び安定性により、マイクロエレクトロニクスで標準的な載置、結合及び配列の技術と適合するということである。
【0045】
提供される方法の別の利点は、量子ドットを樹脂層に含めることにより、比較的厚い第1の層103 が与えられるため、特に発光性表示画面での色変換用途に適合するという事実に依るものである。
【0046】
提供される方法の別の利点は、光輝性パターンが比較的高い解像度を有して第1の層103 に画定され得るということである。実例として、提供される方法によって、1~10μmの範囲内の横寸法及び1~10μmの範囲内の間隔を有する光輝性パッドが第1の層103 に画定され得るため、発光ダイオードに基づく発光性表示画面の形成と適合する。
【0047】
図2は、
図1A~1Dに関連して記載された方法の代替的な実施形態を概略的に示す断面図である。
【0048】
図2の例では、
図1A~1Dに関連して記載された方法が2回繰り返され、量子ドットを含む第3の樹脂の層103'が第1の層103 の上面に形成され、この第3の層103'は、量子ドットが活性である第1の領域103a' と量子ドットが非活性である第2の領域103b' とを有する。
【0049】
例として、第1の層103 の活性な量子ドットは、発光励起源の光を第1の色の光、例えば赤色の光に変換することができ、第3の層103'の活性な量子ドットは、発光励起源の光を、第1の色とは異なる第2の色の光、例えば緑色の光に変換することができる。第3の層103'の量子ドットは、例えば第1の層103 の量子ドットと同一の性質を有するが、異なる寸法を有する。
【0050】
第3の層103'の第1の活性の領域103a' は、例えば第1の層103 の第2の非活性の領域103bに対向して配置されている。
図2には示されていないが、第3の層103'の第2の非活性の領域103b' が、第1の層103 の第2の非活性の領域103bに対向して配置され、発光源によって放射される光を著しく変えずに伝えてもよい。
【0051】
具体的な実施形態が述べられている。様々な変更、調整及び改良が当業者に想起される。特に、記載された実施形態は、上記の具体的な寸法及び材料の例に限定されない。
【0052】
更に、第1の層103 がネガ型レジストであり、第2の層105 がポジ型レジストである方法の例が上記に記載されているが、2つの型が反転されてもよく、すなわち、第1の層103 のレジストはポジ型レジストの複数の樹脂から選択された樹脂を含んでもよく、そのため、第2の層105 のレジストはネガ型レジストの複数の樹脂から選択された樹脂を含んでもよい。
【0053】
より一般的には、第1の層103 の基材は、レジストの材料以外の材料から形成されてもよく、例えば非感光性樹脂、シリコーン又はあらゆる他の適した高分子材料から形成されてもよい。
【0054】
更に、記載された実施形態は、発光性表示デバイスにおける色変換への適用の上記の具体的な例に限定されない。より一般的には、量子ドットを含む基材の層に活性領域及び非活性領域を画定し得る提供されている方法は、他の分野で使用されてもよい。
【0055】
このような変更、調整及び改良は、本開示の一部であることが意図されており、本発明の趣旨及び範囲内であることが意図されている。従って、先の記載は単なる一例であり、限定することを意図されていない。本発明は、以下の特許請求の範囲及びこの均等物に定義されているように限定されるだけである。
【0056】
本出願は、仏国特許出願第15/61047 号明細書の優先権を主張しており、その内容全体が、特許法で許容可能な最大限に至るまで参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0057】
101 支持体,支持基板
103 層,第1の層
103’ 別の層,第3の層
103a,103a’ 第1の領域
103b,103b’ 第2の領域
105 第2の層
107 マスク