(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】過給機付き焼却炉とその立上げ方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
F23G5/50 E ZAB
F23G5/50 H
(21)【出願番号】P 2017057123
(22)【出願日】2017-03-23
【審査請求日】2019-11-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中出 貴大
(72)【発明者】
【氏名】服部 修策
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直人
(72)【発明者】
【氏名】小関 泰志
【合議体】
【審判長】松下 聡
【審判官】田村 佳孝
【審判官】西村 泰英
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-170705(JP,A)
【文献】特開2015-145738(JP,A)
【文献】特開2008-25966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンと、前記タービンにより駆動されるコンプレッサとを備えた過給機と、
前記コンプレッサで圧縮された空気を焼却炉の排ガスから熱回収する熱交換器により昇温したうえで前記タービンに供給する圧縮空気供給ラインと、前記タービンから出た空気を焼却炉に吹き込む空気吹き込みラインと、
前記圧縮空気供給ライン上に配置された燃焼器と、前記燃焼器に燃焼用空気を供給する送風機と、
前記タービンの出口側に、前記タービンの背圧を低下させる圧力低減ラインとを備え、
前記焼却炉が砂層を有する流動焼却炉であり、
前記圧力低減ラインは、前記砂層が流動していない状態において、前記タービンの背圧を低下させ、
前記空気吹き込みラインは前記タービンを出た空気を前記砂層に供給して前記砂層を流動させるものであることを特徴とする過給機付き焼却炉。
【請求項2】
前記圧力低減ラインは、前記流動焼却炉のフリーボード部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の過給機付き焼却炉。
【請求項3】
前記圧力低減ラインは、前記熱交換器の出口側に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の過給機付き焼却炉。
【請求項4】
タービンと、前記タービンにより駆動されるコンプレッサとを備えた過給機が付設された過給機付き焼却炉の立上げ方法であって、
前記焼却炉は砂層を有する流動焼却炉であり、
前記過給機は、コンプレッサで圧縮された空気を前記焼却炉の排ガスから熱回収する熱交換器により昇温したうえで前記タービンに供給し、前記タービンから出た空気を焼却炉の砂層に吹き込む空気吹き込みラインを備えており、
前記焼却炉の立上げ時の前記砂層が流動していない状態においては、前記圧縮空気供給ライン上に配置された燃焼器で発生させた燃焼ガスを前記タービンに供給するとともに、前記タービンの出口側に設けられた圧力低減ラインを動作させ、前記タービンの背圧を低下させ
ることにより前記過給機を始動させ、前記空気吹き込みラインは前記タービンを出た空気を前記砂層に供給して前記砂層を流動させ
ることを特徴とする過給機付き焼却炉の立上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機を利用して炉内に空気を供給する過給機付き焼却炉とその立上げ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流動焼却炉などの焼却炉においては、空気を炉内に供給して砂層部を流動させているが、流動用の空気の生成のために多くの電力を必要としている。そこで過給機付き焼却炉が開発されている。
【0003】
過給機付き焼却炉は、焼却炉から排出される高温の排ガスとの熱交換により昇温した空気を利用してタービンを回転させ、その回転動力によりコンプレッサを駆動して圧縮空気を生成する過給機を備えている。しかし立ち上げ時においては焼却炉の排ガス温度が低く、排ガスから十分な熱量を回収することができないため、過給機を円滑に始動することができない。
【0004】
そこで特許文献1に記載されているように、タービンの上流側に送風機と燃焼器とを配備し、送風機で発生させた燃焼用空気を燃焼器のバーナで加熱してタービンに供給することにより、過給機を円滑に始動できるようにした過給機付き焼却炉が提案されている。
【0005】
しかしこの過給機付き焼却炉では、タービンの出口側は流動焼却炉の砂層部に連結されているため、立ち上げ時にはタービンの出口側の圧力、すなわちタービン背圧が上昇し、送風機の流量が減少してしまい、燃焼器に必要な空気量を供給できなくなるという問題があった。この結果、過給機に必要となるタービン入口温度が高くなり過給機の耐熱温度を超えるおそれがあった。このため、システムの立ち上げ時には砂層部からの砂抜きを行ってタービン背圧の上昇を抑制するなどの労力と時間を要する対策が必要となり、速やかな起動ができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、立ち上げ時におけるタービン背圧の上昇を防止し、過給機の入口温度を低くして、速やかな起動を可能とした過給機付き焼却炉とその立上げ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の過給機付き焼却炉は、タービンと、前記タービンにより駆動されるコンプレッサとを備えた過給機と、前記コンプレッサで圧縮された空気を焼却炉の排ガスから熱回収する熱交換器により昇温したうえで前記タービンに供給する圧縮空気供給ラインと、前記タービンから出た空気を焼却炉に吹き込む空気吹き込みラインと、前記圧縮空気供給ライン上に配置された燃焼器と、前記燃焼器に燃焼用空気を供給する送風機と、前記タービンの出口側に、前記タービンの背圧を低下させる圧力低減ラインとを備え、前記焼却炉が砂層を有する流動焼却炉であり、前記圧力低減ラインは、前記砂層が流動していない状態において、前記タービンの背圧を低下させ、前記空気吹き込みラインは前記タービンを出た空気を前記砂層に供給して前記砂層を流動させるものであることを特徴とするものである。なお請求項2のように、前記焼却炉が流動焼却炉であるときには、前記圧力低減ラインは流動焼却炉のフリーボード部に接続することが好ましい。また請求項3のように、前記圧力低減ラインを、前記熱交換器の出口側に接続することもできる。
【0009】
また本発明の過給機付き焼却炉の立上げ方法は、タービンと、前記タービンにより駆動されるコンプレッサとを備えた過給機が付設された過給機付き焼却炉の立上げ方法であって、前記焼却炉は砂層を有する流動焼却炉であり、前記過給機は、コンプレッサで圧縮された空気を前記焼却炉の排ガスから熱回収する熱交換器により昇温したうえで前記タービンに供給し、前記タービンから出た空気を焼却炉の砂層に吹き込む空気吹き込みラインを備えており、前記焼却炉の立上げ時の前記砂層が流動していない状態においては、前記圧縮空気供給ライン上に配置された燃焼器で発生させた燃焼ガスを前記タービンに供給するとともに、前記タービンの出口側に設けられた圧力低減ラインを動作させ、前記タービンの背圧を低下させることにより前記過給機を始動させ、前記空気吹き込みラインは前記タービンを出た空気を前記砂層に供給して前記砂層を流動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の過給機付き焼却炉は、タービンの出口側に立ち上げ時にタービンの背圧を低下させる圧力低減ラインを備えているので、立ち上げ時の砂層が流動していない状態におけるタービン背圧の上昇を防止し、タービンに供給される風量を確保することができる。このため立ち上げ時における過給機の入口温度を低くすることができ、また砂層部からの砂抜きも不要となるから、速やかに起動することができる。
【0011】
請求項2のように、前記圧力低減ラインを流動焼却炉のフリーボード部に接続すれば、排ガスを大気に放出することなく、タービン背圧を低減することができる利点がある。また請求項3のように、前記圧力低減ラインを熱交換器の出口側に接続すれば、熱交換器の空焚きを防止しながらタービン背圧を低減することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1の実施形態を示すもので、1は焼却炉である。ここでは焼却炉1は砂層部2を持ち、下水汚泥や都市ごみなどの廃棄物を焼却する流動焼却炉である。しかし焼却炉1の用途はこれに限定されるものではない。焼却炉1から排出される850℃程度の高温の排ガスは、熱交換器7を通過したうえ、集塵機に送られて処理され、最終的に煙突から放出される。
【0014】
3は焼却炉1に流動用空気などを供給するための過給機であり、タービン4とその回転動力により直接駆動されるコンプレッサ5とを備えている。コンプレッサ5は空気を吸引して圧縮し、圧縮された空気は熱交換器7に送られる。この熱交換器7は焼却炉1から排出される高温の排ガスとの熱交換によりコンプレッサ5で圧縮した空気を昇温する機能を有する熱交換器である。このようにコンプレッサ5で圧縮した空気は熱交換器7で加熱されて保有エネルギが増加するため、圧縮空気供給ライン6を通じてタービン4に供給すれば、コンプレッサ5が空気を圧縮するに要するエネルギ以上の回転動力を得ることができ、過給機3の自立運転が可能となる。タービン4の出口側は空気吹き込みライン8を介して焼却炉1の砂層部2に接続されており、焼却炉1による焼却のために使用される。
【0015】
上記のように過給機付き焼却炉においては、タービン4によってコンプレッサ5の駆動に必要な動力を確保できるため、焼却炉1の運転状態においてはコンプレッサ5の駆動に必要な電力はゼロになる。しかし立ち上げ時には焼却炉1からの回収エネルギが小さいため過給機3を駆動できない。そこで
図1に示されるように、圧縮空気供給ライン6上に、燃焼器10と、この燃焼器10に燃焼用空気を供給する送風機9とが設けられている。
【0016】
立ち上げ時には送風機9によって燃焼器10に燃焼用空気が供給され、燃焼器10ではオイルまたはガスが燃焼され、発生した燃焼ガスをタービン4に供給して過給機3を駆動する。しかし前記したように、タービン4の出口側は空気吹き込みライン8によって焼却炉1の砂層部2に連結されており、しかもシステムの立ち上げ時には砂層部2も流動していないため、このままではタービン背圧が上昇することが避けられない。タービン背圧の上昇は送風機9の流量を低下させ、タービン4の駆動に必要なエネルギが不足となる。その結果、エネルギ不足を補うためにタービン4の入口温度をタービン4の耐熱温度以上にする必要が生じるおそれがある。
【0017】
そこで本発明では
図1に示すように、タービン4の出口側に立ち上げ時にタービン4の背圧を低下させる圧力低減ライン11を形成した。この第1の実施形態の圧力低減ライン11はタービン4の出口側から空気を大気中に放出するバルブ12を備えており、システムの立ち上げ時のみにバルブ12を開く。これによってタービン4の背圧を低下させ、燃焼器10に必要な空気量を供給することができるようになり、過給機3を円滑に始動させることが可能となる。
【0018】
その後は徐々にバルブ12を閉じ、焼却炉1の砂層部2を流動させて運転を開始する。このため従来のような砂抜き作業も不要となり、速やかな立ち上げが可能となる。上記のようなバルブ12の開閉動作は、図示しない制御器によって自動的に行うことができる。
【0019】
図2は本発明の第2の実施形態を示すものである。この実施形態では、圧力低減ライン11はバルブ13を介して焼却炉1のフリーボード部14に接続されている。立ち上げ時において砂層部2は流動していないので、タービン4の出口側の空気吹き込みライン8の先端は砂で塞がったような状態となり、タービン4の背圧を上昇させている。しかし焼却炉1のフリーボード部14の圧力は低いので、第2の実施形態のように圧力低減ライン11をフリーボード部14に接続すれば、タービン4の背圧を低下させた状態で過給機3を始動することができる。
【0020】
しかも第2の実施形態によれば、第1の実施形態のように排ガスを大気中に放出することなく、タービン4の背圧を低下させることができる。
【0021】
図3は本発明の第3の実施形態を示すものである。この実施形態では、圧力低減ライン11はライン15を経由して熱交換器7の出口側に接続されている。この第3に実施形態においても、排ガスを大気中に放出することなく、タービン4の背圧を低下させることができる。またこれとともに、熱交換器7の空焚きを防止しながらタービン背圧を低減することができる。
【0022】
なお圧力低減ライン11の接続先はこれらの実施形態に限定されるものではなく、焼却炉1の砂層部2よりも上方の位置から、煙突までの任意の場所に接続することができる。
【0023】
以上に説明したように、本発明によれば、立ち上げ時におけるタービン背圧の上昇を回避し、タービン4の入口温度を低くして、速やかな起動を行うことができる。
【符号の説明】
【0024】
1 焼却炉
2 砂層部
3 過給機
4 タービン
5 コンプレッサ
6 圧縮空気供給ライン
7 熱交換器
8 空気吹き込みライン
9 送風機
10 燃焼器
11 圧力低減ライン
12 バルブ
13 バルブ
14 フリーボード部
15 ライン