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特許7099821PCSK9阻害剤及びコレステロール代謝改善用食品組成物
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  • 特許-PCSK9阻害剤及びコレステロール代謝改善用食品組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】PCSK9阻害剤及びコレステロール代謝改善用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/201 20060101AFI20220705BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/231 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/232 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 36/23 20060101ALI20220705BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220705BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20220705BHJP
【FI】
A61K31/201
A61K31/202
A61K31/231
A61K31/232
A61P43/00 111
A61K36/23
A23L33/105
A23L33/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017244041
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019108314
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】平田 拓
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-501248(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005834(WO,A1)
【文献】特表2009-517065(JP,A)
【文献】特表2016-512544(JP,A)
【文献】Pharmacological Research,2017年,120,pp.157-169
【文献】Lipids,2016年,51,pp.75-83
【文献】Vascular Pharmacology,2016年,76,pp.37-41
【文献】Am J Clin Nutr,2012年,95,pp.1003-1012
【文献】Industrial Crops and Products,2008年,28,pp.137-142
【文献】Vascular Pharmacology,2016年,87,pp.60-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数16~24である不飽和脂肪酸又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有前記不飽和脂肪酸中の不飽和結合数が1~4であり、前記エステルがグリセリンエステル又はアルキルエステルである、PCSK9阻害剤。
【請求項2】
前記不飽和脂肪酸中の不飽和結合が全てシス型である、請求項1に記載のPCSK9阻害剤。
【請求項3】
前記不飽和脂肪酸が、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、ω-7脂肪酸及びω-9脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のPCSK9阻害剤。
【請求項4】
前記不飽和脂肪酸又はその塩若しくはエステルがパクチー由来である、請求項1~のいずれか一項に記載のPCSK9阻害剤。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の不飽和脂肪酸又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有する、コレステロール代謝改善用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCSK9阻害剤及びコレステロール代謝改善用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
循環器系病疾患の主要因の1つである動脈硬化を防ぐには、過剰な悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を除去することが重要と考えられている。LDLコレステロール量を制御するために、古くはコレステロール生合成の抑制、すなわちコレステロールの流入量を減らすことが行われてきた。
【0003】
しかし、近年の研究から、コレステロールの流入量を減らすだけでは、循環器疾患リスクを低減するために不十分であることが分かってきた。最近では、コレステロールの逆転送によって、悪玉コレステロールを排出(クリアランス)する試みが注目されている。肝臓で生合成されたコレステロールはLDLコレステロールとなって体の末梢に運ばれる。コレステロールの逆転送とは、末梢に運ばれた後で不要となったコレステロールが、末梢から高密度リポタンパク質(HDL)によって引き抜かれ、肝臓へと戻っていくことをいう。コレステロールの逆転送の最初のステップを担うのがHDLであり、不要なコレステロールを引き抜く力を引き抜き能という。引き抜き能はHDLの質を示す指標の1つである。コレステロールの逆転送経路は、善玉コレステロール(HDLコレステロール)の質向上によって活性化され得ると考えられている。
【0004】
一方、コレステロールの逆転送は、LDLコレステロールの取り込み向上によっても活性化され得る。HDLによって末梢から引き抜かれたコレステロールは、HDLコレステロールとして血中を移動し、その後コレステロール転送作用を受けてLDLによって肝臓に運ばれて取り込まれる。肝臓でのLDLコレステロール取り込みを増やすことができれば、コレステロールを体外への排泄へと向かわせることができる。そのため、LDLコレステロールの取り込みを担うLDL受容体の働きが重要である。
【0005】
近年、LDL受容体の代謝に影響する、プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害することで、LDL受容体を増やし、過剰なLDLコレステロールの取り込みを促進するという試みが注目されている。PCSK9はタンパク質分解酵素であり、肝臓表面に発現するLDL受容体に結合し、これを分解する。PCSK9阻害薬は、PCSK9阻害を介して、LDL受容体の分解を抑え、血中LDLコレステロールの肝細胞内への取り込みを促進する作用を持つ。PCSK9阻害薬は、日本でも医薬品として製造販売が開始されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Dong B et al., J. Biol. Chem. 290, 4047-4058 (2015)
【文献】Tai etal., Mol. Nutr. Food Res. 58, 2133-2145 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、製造販売が開始されているPCSK9阻害薬は抗体医薬品であり、PCSK9阻害作用に関する低分子化合物又は天然物での報告例は、ベルベリン(非特許文献1)、クルクミン(非特許文献2)等、わずかである。食品成分によって、安価にかつ穏やかにPCSK9を阻害することは、消費者にとって大きなメリットである。
【0008】
本発明は、新たなPCSK9阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、炭素数16~24である不飽和脂肪酸又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有するPCSK9阻害剤を提供する。
【0010】
本発明に係るPCSK9阻害剤は、上記化合物を有効成分として含有することにより、高いPCSK9阻害作用を有する。
【0011】
上記PCSK9阻害剤においては、不飽和脂肪酸がエイコサペンタエン酸以外のものであることが好ましい。
【0012】
上記PCSK9阻害剤においては、上記不飽和脂肪酸中の不飽和結合数が1~7であってよい。これにより、PCSK9阻害剤のPCSK9阻害作用がより優れたものとなる。
【0013】
上記PCSK9阻害剤においては、上記不飽和脂肪酸中の不飽和結合が全てシス型であることが好ましい。これにより、PCSK9阻害剤のPCSK9阻害作用がより優れたものとなる。
【0014】
上記PCSK9阻害剤においては、上記不飽和脂肪酸が、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、ω-7脂肪酸及びω-9脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これにより、PCSK9阻害剤のPCSK9阻害作用がより優れたものとなる。
【0015】
上記PCSK9阻害剤においては、上記不飽和脂肪酸又はその塩若しくはエステルがパクチー由来であってよい。
【0016】
本発明はまた、上記不飽和脂肪酸又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有する、コレステロール代謝改善用食品組成物を提供する。該食品組成物は、上記成分を有効成分として含有するため、摂取することにより、摂取者のコレステロール代謝を改善することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、新規なPCSK9阻害剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】試験例における被験物質のPCSK9阻害作用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、炭素数が16~24である不飽和脂肪酸又はその塩若しくはエステルを有効成分として含む。
【0021】
上記不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸であってもよく、多価不飽和脂肪酸であってもよい。不飽和脂肪酸中の不飽和結合(二重結合)の数は例えば1~7であってよく、1~6、1~5、又は1~4であってもよい。不飽和脂肪酸の炭素数は16~22であることが好ましい。
【0022】
上記不飽和脂肪酸中の不飽和結合は、トランス型であってもシス型であってもよい。不飽和脂肪酸は、all-cis型である、すなわち不飽和結合が全てシス型である不飽和脂肪酸であってもよい。不飽和結合が全てシス型であることにより、PCSK9阻害剤のPCSK9阻害作用をより高めることができる。
【0023】
上記不飽和脂肪酸のエステルは、例えば、不飽和脂肪酸のグリセリンエステル又はアルキルエステルであってよい。アルキルエステルとしては、例えば、炭素数1~3のアルキルエステルが挙げられる。炭素数1~3のアルキルエステルとしては、エチルエステル、メチルエステル及びプロピルエステルが挙げられる。
【0024】
上記不飽和脂肪酸は非共役型であることが好ましい。上記不飽和脂肪酸は、例えば、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、ω-7脂肪酸及びω-9脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよい。上記不飽和脂肪酸は、ω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸及びω-7脂肪酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
炭素数が16~24である不飽和脂肪酸は、例えば、パルミトレイン酸(16:1)、ローガン酸(16:3)、オレイン酸(18:1)、バクセン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、γ-リノレン酸(18:3)、α-リノレン酸(18:3)、ピノレン酸(18:3)、ステアリドン酸(18:4)、ガドレイン酸(20:1)、エイコセン酸(20:1)、エイコサジエン酸(20:2)、エイコサトリエン酸(20:3)、ミード酸(20:3)、エイコサテトラエン酸(20:4)、アラキドン酸(20:4)、エイコサペンタエン酸(20:5)、エルカ酸(22:1)、ドコサジエン酸(22:2)、アドレン酸(22:4)、クルパノドン酸(22:5)、ドコサヘキサエン酸(22:6)、ネルボン酸(24:1)、テトラコサペンタエン酸(24:5)、ニシン酸(24:6)等が挙げられる。かっこ内は不飽和脂肪酸中の炭素数:二重結合数を示す。
【0026】
上記不飽和脂肪酸は、エイコサペンタエン酸(all cis-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸)又はドコサヘキサエン酸(cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸)以外のものであることが好ましい。
【0027】
上記不飽和脂肪酸又はその塩若しくはエステルは、天然物に由来するものであっても合成したものであってもよい。上記有効成分は、例えば、植物油、魚油等の油脂、海産動物、微生物、植物体などの天然原料に由来するものであってよい。上記有効成分は植物由来であることが好ましい。
【0028】
天然原料由来の不飽和脂肪酸又はその塩若しくはエステルは、天然原料から適宜公知の方法により分画、精製等の処理を行うことにより得ることができる。上記不飽和脂肪酸又はその塩若しくはエステルは例えばパクチー由来であってもよい。パクチー由来である炭素数16~24の不飽和脂肪酸としては、例えば、ローガン酸(16:3、all-cis-7,10,13-ヘキサデカトリエン酸)等が挙げられる。
【0029】
パクチー由来の上記有効成分は、例えば、パクチー抽出物を分画又は精製することによって得ることができる。パクチー抽出物としては、市販品を使用してもよい。
【0030】
パクチーから抽出を行う場合、抽出に供するパクチーの組織としては、例えば、パクチーの葉又は茎であってよく、葉であることが好ましい。パクチーは、加熱、乾燥、凍結、加工、粉砕、選別等の処理が施されたものであってもよい。
【0031】
パクチーからの抽出は、例えば、パクチーを溶媒に浸漬し、これを濾過することによって行うことができる。溶媒としては、例えば、エタノール、メタノールが好適である。溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。浸漬の際には超音波処理を行ってもよい。抽出は、超臨界流体(例えば、二酸化炭素)を用いて行うこともできる。得られた抽出物に対しては、公知の方法(例えば、減圧濃縮、凍結乾燥)により濃縮又は乾燥を行ってもよく、更に粉砕等の処理を行ってもよい。
【0032】
パクチー抽出物からの、目的とする有効成分の分画・精製は、公知の方法(例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、HPLC、フィルター濾過、遠心分離)により行うことができる。得られた化合物が所望の化合物かどうかは、公知の方法(例えば、質量分析、元素分析、核磁気共鳴分光法、紫外分光法、赤外分光法)により確認することができる。
【0033】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、有効成分として上記不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のエステル、及び不飽和脂肪酸の塩からなる群から選ばれる1種を単独で含んでもよく、2種以上を含んでもよい。本実施形態に係るPCSK9阻害剤における有効成分の含有量は、0.001w/w%以上、0.01w/w%以上、0.1w/w%以上、1w/w%以上、10w/w%以上又は20w/w以上であってよく、100w/w%以下、90w/w%以下、70w/w%以下又は50w/w%以下であってよい。
【0034】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、上記有効成分を含有するため、当該PCSK9阻害剤を摂取することにより、PCSK9の発現を抑制することができ、その結果、LDL受容体の分解を抑制し、LDLコレステロールのクリアランスを促し、血中のLDLコレステロールを適切な範囲に調節することができる。したがって、本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、コレステロール代謝改善、コレステロール値調節、LDLコレステロール値低減、高LDLコレステロール症改善等に用いることができる。
【0035】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、固体(例えば、粉末)、液体(水溶性又は脂溶性の溶液又は懸濁液)、ペースト等のいずれの形状でもよく、また、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形をとってもよい。また、放出制御製剤の形態をとることもできる。本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、上述の有効成分のみからなるものであってもよい。
【0036】
上記各種製剤は、上述の有効成分と、薬学的に許容される添加剤(賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等)とを混和することによって調製することができる。
【0037】
例えば、賦形剤としては、ラクトース、スクロース、デンプン、デキストリン等が挙げられる。結合剤としては、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。基剤としては、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、Tween80等が挙げられる。懸濁化剤としては、Tween60、Tween80、Span80、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0038】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、医薬品、医薬部外品、食品組成物、食品添加物、飼料、飼料添加物等の製品の成分として使用することができる。食品としては、例えば、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類、飲料等が挙げられる。飲料としては例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。また、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント又は特定保健用食品等における関与成分として使用することもできる。本実施形態に係るPCSK9阻害剤を上記製品の成分として使用する場合、PCSK9阻害作用をより効果的に発揮する観点から、上記製品における有効成分の含有量が0.001w/w%以上100w/w%以下となるように含有することが好ましく、0.01%以上95%以下となるように含有することがより好ましい。
【0039】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤からなる、又はPCSK9阻害剤を含む上記製品は、コレステロール代謝改善用であってよい。コレステロール代謝改善とは、例えば、コレステロール値の調節、LDLコレステロール値の低減、高LDLコレステロール症の改善等を包含する意味である。上記製品には、コレステロールを代謝する力を高める旨、コレステロール値を調節する旨、LDLコレステロール値を低減する旨、高LDLコレステロール症を予防する旨、コレステロールクリアランスを高める旨等の表示が付されていてもよい。
【0040】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、ヒトに摂取されても、非ヒト哺乳動物に摂取されてもよい。本実施形態に係るPCSK9阻害剤の投与量(摂取量)は、有効成分として、成人1日あたり、体重1kgあたり例えば0.1mg~1gであってよく、1~500mgであってもよい。投与量は、個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。
【0041】
本実施形態に係るPCSK9阻害剤は、経口投与(摂取)されてもよく、非経口投与されてもよいが、経口投与されることが好ましい。PCSK9阻害剤は、1日あたりの有効成分量が上記範囲内にあれば、1日1回投与されてもよく、1日複数回に分けて投与されてもよい。
【0042】
本発明はまた、上記不飽和脂肪酸又はその塩若しくはエステルを有効成分として含有する、コレステロール代謝改善用食品組成物を提供する。コレステロール代謝改善用食品組成物は、上記有効成分の1種を単独で含んでもよく、2種以上を含んでもよい。コレステロール代謝改善用食品組成物は、上記有効成分のPCSK9阻害作用に基づいてコレステロール代謝を改善するものであってよい。上記食品組成物における有効成分の含有量は、0.001w/w%以上、0.01w/w%以上、0.1w/w%以上、1w/w%以上、10w/w%以上又は20w/w以上であってよく、100w/w%以下、90w/w%以下、70w/w%以下又は50w/w%以下であってよい。
【0043】
コレステロール代謝改善用食品組成物は、飲料又は食品であってよい。飲料としては、例えば、清涼飲料水、果汁飲料、乳飲料、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、例えば、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。食品組成物は、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント又は特定保健用食品であってもよい。
【実施例
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0045】
[試験例1]
被検物質として表1に示す脂肪酸を用いた。不飽和脂肪酸中の不飽和結合は全てシス型である。
【0046】
【表1】
【0047】
HepG2細胞をDMEM+10%FBS培地中で、37℃、5%COインキュベーター内で培養した。培養したHepG2細胞に、上記の各被験物質を40μMの濃度で添加し、COインキュベーター内で24時間培養した。培養後、培地を回収して遠心分離し、清澄液を発現解析に供した(n=4)。コントロールとして被験物質の代わりに溶媒(DMSO)を添加したものを用いた。
【0048】
細胞外に分泌されたPCSK9タンパク質量をウエスタンブロッティング法によって評価した。結果を図1に示す。横軸はコントロール(溶媒)を1.0とした相対値を示す。グラフは平均値±標準偏差を表す。いずれの被験物質においても細胞外に分泌されたPCSK9タンパク質量はコントロールより減少しており、PCSK9発現抑制作用が確認された。飽和脂肪酸であるパルミチン酸を除いた全ての被験物質について、コントロールに対して有意差を示した(P<0.05)。また、不飽和脂肪酸のうちエイコサペンタエン酸以外の被験物質では、パルミチン酸を対象とした場合に対して有意差を示した(P<0.05)。
図1