(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ガラスの製造方法及びガラスの製造装置
(51)【国際特許分類】
C03B 3/00 20060101AFI20220705BHJP
F27D 3/06 20060101ALI20220705BHJP
F27D 3/04 20060101ALI20220705BHJP
F27D 3/10 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C03B3/00
F27D3/06 A
F27D3/04
F27D3/10
(21)【出願番号】P 2018062671
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513066915
【氏名又は名称】ニューマンパワーサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西尾 孝二
(72)【発明者】
【氏名】黒田 慎也
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-131830(JP,A)
【文献】特開2011-075226(JP,A)
【文献】特開2005-233491(JP,A)
【文献】米国特許第04854959(US,A)
【文献】特開2003-335525(JP,A)
【文献】特開2003-252631(JP,A)
【文献】特開2006-143549(JP,A)
【文献】特開昭47-039696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00-5/44
C03B 8/00-8/04
C03B 19/12-20/00
F27D 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融炉内から前記溶融炉の上方まで延在する供給管を通じてガラス原料を前記溶融炉内に供給してガラスを製造するガラスの製造方法であって、
前記供給管は、管軸方向が鉛直方向に沿うように配置され、
前記供給管内において押出部材を下方に駆動させることにより、前記供給管の内周面に付着しているガラス原料を剥離させることを特徴とするガラスの製造方法。
【請求項2】
前記押出部材の先端部の形状は、楔形状であることを特徴とする請求項1に記載のガラスの製造方法。
【請求項3】
前記供給管の上端開口よりも上方となる上昇位置で前記押出部材を待機させることを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載のガラスの製造方法。
【請求項4】
前記供給管の上端開口と前記上昇位置で待機されている前記押出部材とをケーシングにより取り囲むことを特徴とする請求項3に記載のガラスの製造方法。
【請求項5】
前記ケーシング内に接続される集塵装置を用いて少なくとも前記ケーシング内を集塵することを特徴とする請求項4に記載のガラスの製造方法。
【請求項6】
前記押出部材を前記供給管の径方向に沿って移動させることを特徴とする
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガラスの製造方法。
【請求項7】
前記ガラス原料から得られるガラスは、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない無アルカリガラスであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のガラスの製造方法。
【請求項8】
前記押出部材を下方に駆動させた後、上方の待機位置に復帰させる一往復動作を所定時間毎に行うことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のガラスの製造方法。
【請求項9】
前記供給管の前記ガラス原料による詰まりを検知し、前記押出部材を下方に駆動させた後、上方の待機位置に復帰させる一往復動作を前記検知結果に基づいて行うことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のガラスの製造方法。
【請求項10】
ガラス原料を溶融する溶融炉と、前記溶融炉内から前記溶融炉の上方まで延在する供給管と、を備え、
前記供給管は、管軸方向が鉛直方向に沿うように配置され、前記供給管を通じて前記溶融炉内にガラス原料を供給するガラスの製造装置であって、
前記供給管内に配置可能な押出部材と、
前記押出部材が下端に接続されるシャフト部材と、
前記シャフト部材を前記供給管の管軸方向に沿って駆動させる駆動部と、を備えることを特徴とするガラスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの製造方法及びガラスの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、ガラスを製造する溶融炉にガラス原料を供給する方法としては、溶融炉内に配置される下部管と下部管から溶融炉の上方まで延在する上部管を有する供給管を用いる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように下部管と上部管とを有する供給管を通じてガラス原料を溶融炉内に供給してガラスを製造する方法では、供給管の内周面に付着したガラス原料が徐々に増えることで、供給管がガラス原料によって閉塞されるおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラス原料を溶融炉内に供給する供給管の閉塞を容易に防止することのできるガラスの製造方法及びガラスの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するガラスの製造方法は、溶融炉内から前記溶融炉の上方まで延在する供給管を通じてガラス原料を前記溶融炉内に供給してガラスを製造するガラスの製造方法であって、前記供給管内において押出部材を下方に駆動させることにより、前記供給管の内周面に付着しているガラス原料を剥離させる。
【0007】
この方法によれば、押出部材を駆動させることで、供給管の内周面に付着しているガラス原料を容易に削減することができる。
上記ガラスの製造方法において、前記供給管は、管軸方向が鉛直方向に沿うように配置されてもよい。
【0008】
ここで、上記のように供給管を管軸方向が鉛直方向に沿うように配置することでガラス原料が円滑に通過し易くなるものの、供給管内のガラス原料は、供給管内の上昇気流によって撹拌され易くなる。これにより、供給管内のガラス原料が、供給管の内周面に衝突したり、粉粒同士が衝突したりすることで、ガラス原料が供給管の内周面に付着し易く、また付着したガラス原料が堆積し易くなる。すなわち、管軸方向が鉛直方向に沿うように配置されている供給管を用いる場合、ガラス原料による閉塞が発生し易い。このとき、上述した押出部材を用いるガラスの製造方法によって供給管の閉塞を防止することは、より安定した生産を実現するうえで特に有利となる。
【0009】
上記ガラスの製造方法において、前記押出部材の先端部の形状は、楔形状であることが好ましい。
この方法によれば、供給管の内周面に付着したガラス原料に対して、押出部材が接触する際の衝撃を緩和することが可能となる。
【0010】
上記ガラスの製造方法において、前記供給管の上端開口よりも上方となる上昇位置で前記押出部材を待機させることが好ましい。
この方法によれば、押出部材は、供給管内で待機されるよりも、溶融炉からの影響(熱や揮発物による影響)を受け難くなる。
【0011】
上記ガラスの製造方法において、前記供給管の上端開口と前記上昇位置で待機されている前記押出部材とをケーシングにより取り囲むことが好ましい。
この方法によれば、供給管の上端開口から飛散するガラス原料や押出部材の駆動によって飛散するガラス原料がケーシング内に留まり易くなる。
【0012】
上記ガラスの製造方法において、前記ケーシング内に接続される集塵装置を用いて少なくとも前記ケーシング内を集塵することが好ましい。
この方法によれば、押出部材の上昇や下降に伴ってケーシング内に飛散したガラス原料を集塵装置で回収することができるため、ケーシングの周囲にガラス原料が漏れ出すことを抑えることができる。
【0013】
上記ガラスの製造方法において、前記押出部材を前記供給管の径方向に沿って移動させることが好ましい。
この方法によれば、供給管内において、より多くのガラス原料が付着した部分に押出部材の位置を合わせて押出部材を駆動させることができる。
【0014】
上記ガラスの製造方法において、前記ガラス原料から得られるガラスは、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない無アルカリガラスであってもよい。
ここで、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない無アルカリガラスを製造する場合、溶融炉の温度が比較的高いため、供給管内のガラス原料は、供給管内の上昇気流によって撹拌され易くなる。これにより、供給管内のガラス原料が、供給管の内周面に衝突したり、粉粒同士が衝突したりすることで、ガラス原料が供給管の内周面に付着し易く、また付着したガラス原料が堆積し易くなる。すなわち、無アルカリガラスを製造する場合、供給管においてガラス原料による閉塞が発生し易い。このとき、上述した押出部材を用いるガラスの製造方法によって供給管の閉塞を防止することは、より安定した生産を実現するうえで特に有利となる。
【0015】
上記ガラスの製造方法において、前記押出部材を下方に駆動させた後、上方の待機位置に復帰させる一往復動作を所定時間毎に行うことが好ましい。
上記ガラスの製造方法において、前記供給管の前記ガラス原料による詰まりを検知し、前記押出部材を下方に駆動させた後、上方の待機位置に復帰させる一往復動作を前記検知結果に基づいて行うことが好ましい。
【0016】
上記方法によれば、供給管をガラス原料で閉塞されない状態に容易に維持することができる。
上記ガラスの製造装置は、ガラス原料を溶融する溶融炉と、前記溶融炉内から前記溶融炉の上方まで延在する供給管と、を備え、前記供給管を通じて前記溶融炉内にガラス原料を供給するガラスの製造装置であって、前記供給管内に配置可能な押出部材と、前記押出部材が下端に接続されるシャフト部材と、前記シャフト部材を前記供給管の管軸方向に沿って駆動させる駆動部と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガラス原料を溶融炉内に供給する供給管の閉塞を容易に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態におけるガラスの製造装置を示す概略図である。
【
図2】ガラスの製造装置の要部を示す平面図である。
【
図4】ガラスの製造装置の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ガラスの製造方法及びガラスの製造装置の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0020】
まず、本実施形態のガラスの製造装置について説明する。
図1に示すように、ガラスの製造装置11は、ガラス原料GMを溶融する溶融炉12と、溶融炉12内から溶融炉12の上方まで延在する供給管13とを備えている。すなわち、供給管13は、溶融炉12内に配置される下部管14と、下部管14から溶融炉12の上方まで延在する上部管15とを有している。ガラスの製造装置11は、供給管13を通じて溶融炉12内にガラス原料GMを供給する。
【0021】
ガラスの製造装置11は、供給管13内に配置可能な押出部材16と、押出部材16が下端に接続されるシャフト部材17と、シャフト部材17を供給管13の管軸方向(Z軸方向)に沿って駆動させる駆動部18とを備えている。
【0022】
ガラスの製造装置11における溶融炉12は、炉室を形成する炉壁12aと、炉室内に配置された溶融槽12bとを備えている。炉壁12aは、例えば、耐火物壁により構成されている。耐火物壁としては、例えば、電鋳煉瓦、断熱煉瓦等が挙げられる。溶融槽12bは、例えば、耐火物により構成された凹部を備え、この凹部内でガラス原料GMが溶融される。溶融槽12bの内面は、白金又は白金合金により構成されてもよい。溶融炉12は、電気又はガスを熱源とする周知の加熱部(図示省略)を有し、この加熱部により溶融炉12内が加熱されるように構成されている。溶融炉12内で得られた溶融ガラスは、図示を省略した下流の工程(成形工程、加工工程等)で用いられる。下流の工程では、例えば、板状、管状、繊維状、粒状、所定の固形状等の任意の形状のガラス物品を得ることができる。
【0023】
図1及び
図2に示すように、ガラスの製造装置11における供給管13における上部管15の周壁には、ガラス原料GMが搬入される搬入口15aが開口している。ガラスの製造装置11は、供給管13における上部管15の搬入口15aに接続される搬送部19を備えている。搬送部19は、ガラス原料GMを供給管13に搬送する。搬送部19は、例えば、振動フィーダー等のコンベア装置により構成することができる。原料調製部で調製された粉末状のガラス原料GMは、ホッパー等を用いることで搬送部19に連続的に投入することができる。
【0024】
供給管13(下部管14)の下端には、ガラス原料GMを流出する流出口14aが開口し、この流出口14aは、炉室内の溶融槽12b内で溶融したガラスGの液面から所定の高さの位置(例えば、液面からの高さが10~100mmの範囲内となる位置)に配置されている。
【0025】
供給管13(上部管15)は、上端開口15bを有している。供給管13は、管軸方向が直線状の直管であり、供給管13の管軸方向が鉛直方向に沿うように配置されている。供給管13は、白金又は白金合金により構成された内周面を有することが好ましい。本実施形態の供給管13は、その全体が白金又は白金合金により構成されている。
【0026】
図2及び
図3に示すように、押出部材16は、供給管13(上部管15)の内径よりも小さい外形を有し、押出部材16の先端部は、先端(下端)に向かうにしたがって厚さ寸法(Y軸方向に沿った寸法)が小さくなる楔形状を有している。本実施形態の押出部材16は、平面視で押出部材16の幅方向(X軸方向に沿った方向)が搬送部19の延在方向(同じくX軸方向に沿った方向)に沿うように配置されている。なお、押出部材16は、平面視で押出部材16の幅方向が搬送部19の延在方向と交差するように配置されてもよい。押出部材16は、供給管13内の熱に耐え得る金属材料(例えば、ステンレス鋼)や耐火物等により構成することができる。
【0027】
押出部材16の幅寸法(X軸方向に沿った寸法)は、供給管13の内径よりも小さく、供給管13の内周面を保護するという観点から、押出部材16は、供給管13の内周面とは非接触となるように配置されることが好ましい。押出部材16の供給管13の径方向における最大寸法は、供給管13の内周面に付着したガラス原料GMを剥離する機能を高めるという観点から、供給管13の内径の1/2以上であることが好ましい。
【0028】
押出部材16に接続されるシャフト部材17は、押出部材16から上方に延在し、押出部材16と駆動部18とを連結している。シャフト部材17は、供給管13内の熱に耐え得る金属材料(例えば、ステンレス鋼)や耐火物等により構成することができる。
【0029】
駆動部18は、例えば、エア等の流体を駆動源とするシリンダ、モーターを駆動源とするギアやチェーン等から構成することができる。本実施形態の駆動部18は、タイマーを備えた制御部によって制御される。駆動部18は、押出部材16(シャフト部材17)を下方に駆動させた後、上方の待機位置に復帰させる一往復動作を所定時間毎に行うように制御される。
【0030】
ガラスの製造装置11は、駆動部18(押出部材16)を供給管13の径方向に沿った方向(例えば、X軸とY軸に沿った方向)に移動させる移動機構20をさらに備えている。この移動機構20により、押出部材16と供給管13の管軸との相対的な位置を調整することができる。
【0031】
図1に示すように、ガラスの製造装置11は、供給管13における上部管15の上端開口15bと、上部管15の上端開口15bよりも上方となる上昇位置に配置された押出部材16とを取り囲むケーシング21を備えている。ケーシング21の上壁及び側壁は、それぞれシャフト部材17及び搬送部19が挿通される挿通孔を有している。ケーシング21の内面と供給管13との間には、図示を省略するが、供給管13の温度を安定させるという観点から、耐火物等を断熱材として配置することが好ましい。
【0032】
ガラスの製造装置11は、ケーシング21内に接続される集塵装置22をさらに備えている。集塵装置22は、少なくともケーシング21内を集塵する。詳述すると、集塵装置22は、例えば、押出部材16の上昇や下降に伴ってケーシング21内に飛散したガラス原料GMを吸引して回収する。なお、集塵装置22は、ケーシング21外に飛散したガラス原料GMについてもケーシング21を介して集塵可能である。
【0033】
次に、ガラスの製造方法について説明する。
ガラスの製造方法は、溶融炉12内に配置される下部管14と下部管14から溶融炉12の上方まで延在する上部管15とを有する供給管13を通じてガラス原料GMを溶融炉12内に供給してガラスGを製造する方法である。
【0034】
ガラス原料GMから得られるガラスGとしては、ソーダガラス、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、アルミノシリケートガラス、アルカリ含有ガラス、及び無アルカリガラスが挙げられる。例えば、無アルカリガラスは、アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない。アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないとは、ガラス組成中におけるアルカリ金属酸化物(Na2O、K2O、及びLi2O)の合計含有量が、0.5質量%未満であることをいう。
【0035】
図4に示すように、ガラスの製造方法では、供給管13の管内において押出部材16を下方に駆動させることにより、供給管13の内周面に付着しているガラス原料GMを剥離させる。これにより、供給管13内に付着していたガラス原料GMの大部分を下部管14の流出口14aから流出させることができる。
【0036】
押出部材16の下降端位置は、溶融炉12内で溶融したガラスGの液面から500mm以上高い位置であることが好ましい。また、押出部材16の下降端位置は、溶融炉12の室内の天井面よりも高い位置であることが好ましい。
【0037】
押出部材16の下降端位置をより低くすることで、供給管13の管軸方向においてより広い範囲のガラス原料GMを剥離させることができる。押出部材16の下降端位置をより高くすることで、押出部材16が熱やガラスGの揮発物による影響を受け難くなるため、押出部材16の交換頻度をより低くすることが可能となる。
【0038】
図1に示すように、ガラスの製造方法は、供給管13における上部管15の上端開口15bよりも上方となる上昇位置で押出部材16を待機させる。ガラスの製造方法では、上部管15の上端開口15bと、上昇位置で待機されている押出部材16とをケーシング21により取り囲む。
【0039】
ガラスの製造方法では、押出部材16を下方に駆動させた後、上方の待機位置に復帰させる一往復動作を所定時間毎に行う。一往復動作の完了時から次の一往復動作の開始時の時間の間隔は、例えば、ガラス原料GMの組成等に応じて設定することができる。
【0040】
上記時間の間隔は、例えば、5秒以上、60分以下の範囲であることが好ましい。例えば、供給管13の内周面に付着し易いガラス原料GM(無アルカリガラスの原料)を用いる場合、上記時間の間隔をより短くすることが好適である。
【0041】
ガラスの製造方法において、集塵装置22は、ガラスの製造装置11の稼働中において常時作動させてもよいし、例えば、押出部材16を上下に駆動する駆動中等の所定時間のみに作動させてもよい。また、ガラスの製造方法では、移動機構20によって押出部材16を供給管13の径方向に沿って移動させることができる。
【0042】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)ガラスの製造方法では、供給管13を通じてガラス原料GMを溶融炉12内に供給して溶融したガラスGを製造する。供給管13は、溶融炉12内から溶融炉12の上方まで延在している。ガラスの製造方法では、供給管13の管内において押出部材16を下方に駆動させることにより、供給管13の内周面に付着しているガラス原料GMを下方に押し出している。
【0043】
この方法によれば、押出部材16を駆動させることで、供給管13の内周面に付着しているガラス原料GMを容易に削減することができる。従って、ガラス原料GMを溶融炉12内に供給する供給管13の閉塞を容易に防止することができる。
【0044】
(2)ガラスの製造方法で用いる供給管13を管軸方向が鉛直方向に沿うように配置することでガラス原料GMが円滑に通過し易くなるものの、供給管13内のガラス原料GMは、供給管13内の上昇気流によって撹拌され易くなる。これにより、供給管13内のガラス原料GMが、供給管13の内周面に衝突したり、粉粒同士が衝突したりすることで、ガラス原料GMが供給管13の内周面に付着し易く、また付着したガラス原料GMが堆積し易くなる。すなわち、管軸方向が鉛直方向に沿うように配置されている供給管13を用いる場合、ガラス原料GMによる閉塞が発生し易い。このとき、上述した押出部材16を用いるガラスの製造方法によって供給管13の閉塞を防止することは、より安定した生産を実現するうえで特に有利となる。
【0045】
(3)ガラスの製造方法で用いる押出部材16の先端部の形状は、楔形状である。この場合、供給管13の内周面に付着したガラス原料GMに対して、押出部材16が接触する際の衝撃を緩和することが可能となる。例えば、塊状のガラス原料GMを押出部材16の先端部で分割させるように力が加わるようになる。このように押出部材16の駆動による衝撃が緩和されることで、供給管13に対する衝撃も緩和されるため、設備に対する負荷を削減することができる。
【0046】
(4)ガラスの製造方法は、供給管13(上部管15)の上端開口15bよりも上方となる上昇位置で押出部材16を待機させている。この場合、押出部材16は、供給管13(上部管15)内で待機されるよりも、溶融炉12からの影響(熱や揮発物による影響)を受け難くなる。これにより、押出部材16の劣化を抑えることができるため、押出部材16の交換頻度をより低くすることが可能となる。
【0047】
(5)ガラスの製造方法では、供給管13(上部管15)の上端開口15bと、上昇位置で待機されている押出部材16とをケーシング21により取り囲んでいる。この場合、供給管13(上部管15)の上端開口15bから飛散するガラス原料GMや押出部材16の駆動によって飛散するガラス原料GMがケーシング21内に留まり易くなるため、製造環境を改善することができる。
【0048】
(6)ガラスの製造方法では、ケーシング21内に接続される集塵装置22を用いて少なくともケーシング21内を集塵している。この場合、押出部材16の上昇や下降に伴ってケーシング21内に飛散したガラス原料GMを集塵装置22で回収することができるため、ケーシング21の周囲にガラス原料GMが漏れ出すことを抑えることができる。従って、押出部材16の使用に伴う製造環境の悪化を抑えることができる。
【0049】
(7)ガラスの製造方法では、押出部材16を供給管13の径方向に沿って移動させることで、供給管13内において、より多くのガラス原料GMが付着した部分に押出部材16の位置を合わせて押出部材16を駆動させることができる。すなわち、ガラス原料GMの付着状態に合わせてガラス原料GMを剥離させることが可能となる。
【0050】
(8)アルカリ金属酸化物を実質的に含有しない無アルカリガラスを製造する場合、溶融炉12の温度が比較的高いため、供給管13内のガラス原料GMは、供給管13内の上昇気流によって撹拌され易くなる。これにより、供給管13内のガラス原料GMが、供給管13の内周面に衝突したり、粉粒同士が衝突したりすることで、ガラス原料GMが供給管13の内周面に付着し易く、また付着したガラス原料GMが堆積し易くなる。すなわち、無アルカリガラスを製造する場合、供給管13においてガラス原料GMによる閉塞が発生し易い。このとき、上述した押出部材16を用いるガラスの製造方法によって供給管13の閉塞を防止することは、より安定した生産を実現するうえで特に有利となる。
【0051】
(9)ガラスの製造方法では、押出部材16を下方に駆動させた後、上方の待機位置に復帰させる一往復動作を所定時間毎に行っている。この場合、供給管13をガラス原料GMで閉塞されない状態に容易に維持することができる。
【0052】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・ガラスの製造方法において、供給管13のガラス原料GMによる詰まりを検知し、その検知結果に基づいて押出部材16を一往復動作させてもよい。供給管13のガラス原料GMによる詰まりは、例えば、供給管13の上方から供給管13内を撮像することで検知したり、レーザー等を用いたセンサで検知したりすることができる。この場合であっても、供給管13をガラス原料GMで閉塞されない状態に容易に維持することができる。
【0054】
なお、押出部材16を必要時に作業者のスイッチ操作で駆動させるようにしてもよいし、ガラスの製造時において上下動を連続して繰り返すように駆動させてもよい。
・ガラスの製造方法は、押出部材16を供給管13の径方向に移動させずに、例えば、供給管13の管軸とシャフト部材17の軸とが同軸になる位置等の一定の位置に固定して行うこともできる。
【0055】
・ガラスの製造方法は、シャフト部材17を軸回りに回動させる回動機構を用いて押出部材16をシャフト部材17の軸回りに回動させて行うこともできる。回動機構は、シャフト部材17を正方向又は逆方向に回転動作させたり、シャフト部材17を軸回りに所定の角度で変位動作させたりすることで、ガラス原料GMを剥離させる機能を高めることができる。
【0056】
・ガラスの製造装置11における集塵装置22を省略してもよい。
・ガラスの製造装置11におけるケーシング21を省略してもよい。
・ガラスの製造方法において、押出部材16を上部管15内で待機させてもよい。
【0057】
・押出部材16の先端部の形状は、楔形状に限定されず、例えば、先端に向かうにしたがって厚さ寸法が大きくなる形状、角柱状、円柱状、曲面状等に変更することもできる。
・ガラスの製造装置11における供給管13は、ガラス原料GMが下方に流動する範囲であれば、鉛直方向に対して傾斜するように配置してもよいし、部分的に傾斜する傾斜部を有する供給管に変更してもよい。
【符号の説明】
【0058】
11…ガラスの製造装置、12…溶融炉、13…供給管、14…下部管、15…上部管、15b…上端開口、16…押出部材、17…シャフト部材、18…駆動部、20…移動機構、21…ケーシング、22…集塵装置、G…ガラス、GM…ガラス原料。