(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】継手構造とバルブ並びに可撓式ソフトシール仕切弁
(51)【国際特許分類】
F16L 27/047 20060101AFI20220705BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20220705BHJP
F16K 3/314 20060101ALI20220705BHJP
E03B 7/07 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
F16L27/047
F16K27/00 C
F16K3/314 C
E03B7/07 A
(21)【出願番号】P 2018067677
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2017204792
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000147291
【氏名又は名称】株式会社清水合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】門居 直樹
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-304065(JP,A)
【文献】実開昭57-025289(JP,U)
【文献】特開平08-285109(JP,A)
【文献】米国特許第06250690(US,B1)
【文献】特開平10-073175(JP,A)
【文献】特開平10-311463(JP,A)
【文献】特許第5748632(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/047
F16K 27/00
F16K 3/314
E03B 7/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体の接合部を拡径した状態の可撓接合部内周の球面部に樹脂管可撓ユニットを可撓自在に挿入する継手であって、前記樹脂管可撓ユニットは、外端側に鍔部を有する圧入スリーブと、この圧入スリーブに圧入固定した所定長さの樹脂管部と、この樹脂管部の圧入固定位置にボール面を有するリング体とでユニット化すると共に、前記可撓接合部の開口部内には、先端内周面に当接アール面を後端内周面に拡径穴を形成した押輪を取付け、前記樹脂管可撓ユニットが可撓した際に、前記ボール面が前記当接アール面で摺動接触して、かつ前記樹脂管部の外周面が前記拡径穴に当接し、前記樹脂管可撓ユニットの可撓角度を規制するようにしたことを特徴とする継手構造。
【請求項2】
前記樹脂管の外周面の前記拡径穴に当接する範囲は前記圧入スリーブの外周面が存在する範囲内である請求項1に記載の継手構造。
【請求項3】
前記可撓接合部の開口端部と前記樹脂管部との間に防塵カバーを取り付けた請求項1又は2に記載の継手構造。
【請求項4】
前記防塵カバーは、前記開口端部に取り付ける円筒部と、この円筒部の先端に求心方向に沿って設けられた環状凹凸部と、この環状凹凸部の内周端より前記樹脂管部の軸心方向に延設された延設筒部と、この延設筒部の先端部に環状締付部とを備えた請求項3に記載の継手構造。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の継手構造をバルブ本体の一端又は両端に適用したことを特徴とするバルブ。
【請求項6】
請求項5に記載のバルブをソフトシール仕切弁に適用したことを特徴とする可撓式ソフトシール仕切弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂管の継手部に可撓性を与える樹脂管可撓ユニットとこの樹脂管可撓ユニットを用いた継手構造、並びにこの継手構造により可撓する可撓式ソフトシール仕切弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水道用配水管として樹脂管(例えば、ポリエチレン管)が多用されるようになっている。ポリエチレン樹脂は化学的に安定した材料であり、酸・アルカリに強いため、ポリエチレン樹脂で形成したポリエチレン管には腐食が発生せず、長期にわたり衛生的な水を供給することができる。
【0003】
これに加え、ポリエチレン管は、同じく樹脂管である塩化ビニル管に比べ、管自体の柔軟性・可撓性により所謂生曲げが可能であるため、緩やかな曲りは管を生曲げすることにより配管可能であり、曲管の使用を減らして材料費と施工の手間を削減することができるだけでなく、EF(エレクトロフュージョン)接合で形成される一体構造管路により、地震によって生じる地盤の変動に柔軟に追従して変位する優れた耐震性を有している。
【0004】
また、近年、水道用配水管に設ける仕切弁は、従来のメタルシート仕切弁に代え、弁体の表面をゴムライニングで被覆し、内外面にエポキシ樹脂粉体塗装を施すことにより錆水(赤水)の発生を防止したソフトシール仕切弁が使用されるようになってきている。
【0005】
メタルシート仕切弁は、弁箱弁座と、弁体弁座のクサビ効果を生じさせるため、弁箱弁座の底部にポケットが設けられているので、このポケットにより弁内の流れに乱れが生じて圧力損失が発生するだけでなく、ポケット部分に異物が堆積するおそれがある。これに対し、いわゆるソフトシール仕切弁は、弁体表面に被覆したゴムライニングを圧縮して止水するため、弁箱底部がフラットなストレート構造であり、弁内の流れが乱れないために圧力損失がなく、また、異物が底部に堆積することはないためゴミの噛み込みも発生しない。
【0006】
このような特徴を備えたソフトシール仕切弁とポリエチレン管を接続する方法として、例えば、特許文献1のバルブ・管継手接続用締付リングを使用した接続構造がある。この接続構造によれば、ソフトシール仕切弁内の流路やポリエチレン管の内周面に水道水の流れを乱す突起を生じることなくソフトシール仕切弁にポリエチレン管を堅固に取り付けることができる。特許文献1の接続構造等によりソフトシール仕切弁の両側接続部にポリエチレン管を接続し、ポリエチレン挿し口を備えるソフトシール仕切弁は、この挿し口に直接ポリエチレン管をEF接合により融着接続できる利点があり、水道配水管のポリエチレン管路に多用されるようになっている。
【0007】
ところで、ポリエチレン管が地震によって生じる地盤の変動に柔軟に追従して変位する優れた耐震性を有するとしても、当然ながらその許容曲げ範囲には限界があり、地盤の変動がある程度大きくなるとソフトシール仕切弁とポリエチレン管の継手部に大きな負荷がかかり、継手部が破損する被害が発生するおそれがある。現代生活において水道は非常に重要なインフラであり、人間の生活にとっては必要不可欠の生命線である。大地震が発生した際に、ソフトシール仕切弁とポリエチレン管との継手部で破損が生じた場合には、仕切弁側の破損個所を部分的に修理することは困難であるため、仕切弁全体の交換が必要となり、復旧に時間がかかることになる。このため、地震発生時の地盤の変動が原因となる継手部への負荷を吸収し、ソフトシール仕切弁とポリエチレン管の継手部での破損を防ぐため、仕切弁とポリエチレン管との継手部に可撓性を与え、継手部の破損を防止することが重要である。
【0008】
また、水道工事においてソフトシール仕切弁のポリエチレン挿し口とポリエチレン管の接続は、前述のように現場でEF接合により行われるが、ポリエチレン管同士の融着作業では双方の軸心が一致している必要があり、軸心が一致しない状態や、軸心が一致しても変位荷重がかかった状態で行うと、施工不良(融着不良)の原因となる。
【0009】
仕切弁は、構造物周り、橋梁部、交差点部等の周囲に広いスペースを採ることができない場所に設置され、また設置位置が決まっている場合が多いため、接続するポリエチレン管との取り合いに対し、接合し易い位置に移動させることができない。これに加え、仕切弁本体は鋳鉄製で重く、ポリエチレン管との融着接続に際し、容易に接続しやすい向きに回動させる等の融通性がない。このため、水道工事においてソフトシール仕切弁のポリエチレン挿し口へポリエチレン管を接続する際に、ポリエチレン挿し口の軸心とポリエチレン管の軸心とを一致させるように回動可能な挿し口を備え、作業性を向上させたソフトシール仕切弁が求められている。
【0010】
特許文献2には、ポリエチレン管路に可撓性を付与するフレキシブルボールジョイントのユニットと同ユニットを用いた配管方法が開示されている。このフレキシブルボールジョイントは、内周面が凹状球面に形成された受け口部に外周面が凸状球面に形成された挿入部を嵌め込み、受け口部に対して挿入部を回動可能としたものであり、このユニットをソフトシール仕切弁のポリエチレン挿し口に接続すると、挿し口付近の配管に可撓性を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第6033640号公報
【文献】特許第5748632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2のフレキシブルボールジョイントのユニットは、受口部の凹状球面と挿口部の凸状球面の球径を受口部及び挿口部に接続した管よりも大径に形成するとともに、挿口部の受口部側の端面に設けた通孔の径を接続した管の内径よりも大きく形成することにより、可撓時に挿口部の受口部側の端面が管の内径を遮らないように構成されている。この結果、常に受口部の内周面(凹状球面)の一部が露出することになるため、管路の内周面に対して凹段差部が生じており、この凹段差部が水の流れに乱流を発生させて圧力損失が生じることになる。
【0013】
また、この凹段差部内に管路及びバルブ内部の鉄錆が付着して赤水発生の原因となったり、凹段差部内に溜まった異物が挿口部の可撓時に噛み込みの原因となって耐震性を損なったりするおそれもある。
【0014】
従って、特許文献2のフレキシブルボールジョイントのユニットをソフトシール仕切弁のポリエチレン挿し口に接続して可撓性を持たせても、現在のソフトシール仕切弁が有する長所を損なうおそれがあるだけでなく、地震発生時に可撓性を発揮することができなくなるおそれがある。
【0015】
一方で、上記フレキシブルボールジョイントのユニットでは、受け口部と挿入部との継手部分が外部に露出しているため、このユニットを地中等に埋設した際に露出部分から砂や土などの異物が継手部分から内部に入り込む可能性がある。この場合、異物が受け口部と挿入部との間に噛み込まれ、作業不良が生じて可撓できなくなるおそれがある。
【0016】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、ソフトシール仕切弁の長所を損なうことなく可撓性を付与することができる樹脂管可撓ユニットと、その樹脂管可撓ユニットを用いた継手構造を備え、耐震性と水道工事時の作業性に優れ、埋設時にも内部への異物の浸入を防ぐことができる継手構造とその可撓式ソフトシール仕切弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、継手本体の接合部を拡径した状態の可撓接合部内周の球面部に樹脂管可撓ユニットを可撓自在に挿入する継手であって、樹脂管可撓ユニットは、外端側に鍔部を有する圧入スリーブと、この圧入スリーブに圧入固定した所定長さの樹脂管部と、この樹脂管部の圧入固定位置にボール面を有するリング体とでユニット化すると共に、可撓接合部の開口部内には、先端内周面に当接アール面を後端内周面に拡径穴を形成した押輪を取付け、樹脂管可撓ユニットが可撓した際に、ボール面が当接アール面で摺動接触して、かつ樹脂管部の外周面が拡径穴に当接し、樹脂管可撓ユニットの可撓角度を規制するようにした継手構造である。
【0018】
請求項2に係る発明は、樹脂管の外周面の拡径穴に当接する範囲は圧入スリーブの外周面が存在する範囲内である継手構造である。
【0019】
請求項3に係る発明は、可撓接合部の開口端部と樹脂管部との間に防塵カバーを取り付けた継手構造である。
【0020】
請求項4に係る発明は、防塵カバーは、開口端部に取り付ける円筒部と、この円筒部の先端に求心方向に沿って設けられた環状凹凸部と、この環状凹凸部の内周端より樹脂管部の軸心方向に延設された延設筒部と、この延設筒部の先端部に環状締付部とを備えた継手構造である。
【0021】
請求項5に係る発明は、継手構造をバルブ本体の一端又は両端に適用したバルブである。
【0022】
請求項6に係る発明は、バルブをソフトシール仕切弁に適用した可撓式ソフトシール仕切弁である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る発明によると、外端部に鍔部を有する圧入スリーブに所定長の樹脂管部を圧入固定しているので、圧入スリーブの外周面の係止部が樹脂管部の内周面に食い込んで強固に固定されるとともに、この樹脂管部の圧入固定位置にボール面を有するリング体を抜け止め状態でユニット化したので、圧入スリーブと樹脂管部とリング体とが一体化された樹脂管可撓ユニットを得ることができる。特に、押輪の拡径穴の内周面に樹脂管可撓ユニットの樹脂管部が支持された状態で当接するので、例えば地震等が発生した場合、樹脂管可撓ユニットの可撓範囲を確実に規制できる。
【0030】
請求項2に係る発明によると、押輪の拡径穴の内周面と樹脂管部の外周面とが接触する範囲は、樹脂管の内周面に圧入固定した圧入スリーブの外周面が存在する範囲内であるので、樹脂管可撓ユニットの可撓により樹脂管部が押輪の拡径穴の内周面から受ける力は圧入スリーブにより確実に支持され、樹脂管部の変形を防ぐことが可能となる有用な効果を奏する。
【0039】
請求項3又は請求項4に係る発明によると、継手本体に設けた可撓接合部に可撓自在に樹脂管可撓ユニットを挿入し、開口端部と樹脂管部との間に防塵カバーを取り付けているので、この防塵カバーにより開口端部と樹脂管部との接合部分を被覆し、接合部と樹脂管部との間への異物の入り込みを防止して樹脂管可撓ユニットによる可撓性を確保できる。これにより、埋設した場合にも、防塵性を発揮しつつ樹脂管可撓ユニットの作動不良を確実に防止できる。
【0040】
しかも、円筒部を介して可撓接合部の開口端部に防塵カバーを取り付けでき、その取り付け後には、防塵カバーが環状凹凸部を介して樹脂管部の可撓に追従するように変形し、この樹脂管部との隙間の発生を防止して異物の浸入を確実に防止できる。この場合、環状凹凸部の内周端より延設筒部を設け、この延設筒部の先端部に樹脂管部を締付ける環状締付部を設けているため、この環状締付部と樹脂管部との間への異物の浸入を防ぎ、内周端付近の環状凹凸部の伸縮性を確保して樹脂管可撓時の樹脂管部への追従性を保持し、仮に埋設時に突き固めをおこなったとしても、固まった土や砂による環状締付部への影響を抑えて、環状締付部による締付け力を確実に維持して防塵性を発揮できる。
【0041】
請求項5又は請求項6に係る発明によると、バルブ、特に、ソフトシール仕切弁本体の一端又は両端に設けた可撓接合部に可撓自在に樹脂管可撓ユニットを挿入して取り付けることにより、可撓式ソフトシール仕切弁を構成することができるので、ソフトシール仕切弁に接続したポリエチレン管が地震発生時に地盤の変動により変位しても、可撓接合部がこの変位に追随して可撓することによって影響を吸収し、ソフトシール仕切弁とポリエチレン管との継手部の破損を防ぎ、重要インフラである水道の機能を維持することができる。
【0042】
また、可撓接合部によりソフトシール仕切弁のポリエチレン挿し口が可撓自在となるので、接続工事の際に、ソフトシール仕切弁のポリエチレン挿し口の軸心とポリエチレン管の軸心との間にズレが生じてしまった場合には、ソフトシール仕切弁のポリエチレン挿し口を回動、可撓させるだけでソフトシール仕切弁のポリエチレン挿し口の軸心とポリエチレン管の軸心とを一致させることができるので、融着不良を防止することができるとともに、作業性を大幅に向上させることができる。
【0043】
さらに、樹脂管可撓ユニットを可撓自在に挿入して取り付ける可撓接合部において、拡径部の内周面が露出することにより生じる凹段差部(ポケット)の範囲を低減させているので、この凹段差部の存在により生じる乱流が原因となる圧力損失の発生、凹段差部の内部に付着する配水管内部の鉄錆の流入による赤水発生、凹段差部の内部に溜まった異物が原因となる噛み込み発生を抑制することができる。このため、弁箱底部がフラットなストレート構造であるために圧力損失がなく、また、異物が底部に堆積することがないというソフトシール仕切弁の特性を損ねることなくソフトシール仕切弁を可撓化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明による可撓式ソフトシール仕切弁の一実施例を示す断面図である。
【
図2】(a)は本発明の樹脂管可撓ユニットの左側面を示す図面であり、(b)はその正面図を示す図面である。
【
図7】本発明の継手構造の組立工程を説明する図面である。
【
図8】本発明の継手構造の可撓部拡大図(組立完了状態)である。
【
図9】本発明の継手構造の可撓部拡大図(可撓状態)である。
【
図11】(a)は、
図10の防塵カバーの取り付け状態を示す要部拡大断面図である。(b)は、(a)におけるA部拡大断面図である。
【
図12】
図11(a)における樹脂管可撓ユニットが可撓した状態を示す要部拡大断面図である。
【
図13】一端側に本発明の継手構造を、他端側にフランジを設けた可撓式ソフトシール仕切弁を示す図面である。
【
図14】(a)は、継手部位に防塵カバーを取り付けた状態を示す一部切欠き正面図である。(b)は、(a)のB部拡大断面図である。
【
図15】(a)は、
図14における継手部位の埋設状態を示す一部切欠き正面図である。(b)は、(a)の可撓状態を示す一部切欠き正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明における樹脂管可撓ユニット及び継手構造とバルブ並びに可撓式ソフトシール仕切弁を図面に従って説明する。
図1は可撓式ソフトシール仕切弁の一実施形態の断面図であり、
図2は樹脂管可撓ユニット、
図3は樹脂管可撓ユニットの断面図である。
【0046】
図1において、可撓式ソフトシール仕切弁11は、水道用のソフトシール仕切弁からなるバルブ本体12の弁箱13の一端に接続用ソケット14を設け、他端に可撓接合部15を設けている。接続用ソケット14の外周側には樹脂管16が嵌め込まれ、この樹脂管16の外周側に円筒状締付けリング体17を嵌め込んで、接続用ソケット14に樹脂管16を固定している。なお、本図では、弁体13aは仕切弁を開放する位置にある。
【0047】
また、可撓接合部15は、弁箱13の接合部18を拡径した状態で設けられており、開口端部19から樹脂管可撓ユニット21を挿入した状態で開口端部19に押輪23を取り付け、樹脂管可撓ユニット21を可撓可能に収容している。
【0048】
先ず、樹脂管可撓ユニット21について説明する。
図2及び
図3に示すように、樹脂管可撓ユニット21は、外周面26に係止部27を有し、かつ外端側にアール面28を持つ鍔部29を有する圧入スリーブ30と、この圧入スリーブ30に圧入固定した所定長さの樹脂管部32と、アール面28と連設する状態のボール面33を有し、且つ内周面34に抜け止め部35を有するリング体36とを備えている。
【0049】
圧入スリーブ30は、
図3に示すように、外周面26に係止部27を突設した管状体の外端側に鍔部29を設けており、鍔部29の外周面側にはアール面28が、内周面側にはテーパー面38が形成されている。本実施例では、圧入スリーブ30は球状黒鉛鋳鉄(FCD450-10)製であり、全面にエポキシ樹脂により粉体塗装を施している。
【0050】
なお、圧入スリーブ30の鍔部29の外周面は、後述する理由により、可撓接合部15の内周面に形成された球面部46と略同一の球面半径を有するアール面28に形成した場合に本発明の効果を最大限に得ることができるが、鍔部29の外周面26をその接線角度に準じた傾斜面に形成したり、又は鍔部29を適宜な厚みの単なる平板状に形成したりしても、限定的ではあるが本発明の効果を得ることができる。
【0051】
圧入スリーブ30は、樹脂管部32を圧入する側の外径をやや細く、且つ樹脂管部の内径よりも大きく形成するとともに、外周面26に突設した係止部27の高さが、樹脂管部32を圧入する側から鍔部29に近づくに従って増加するように形成している。また、樹脂管部32入口内周に面取りを設け、これにより、圧入スリーブ30の樹脂管部32への圧入作業をやり易くするとともに、圧入固定した後に圧入スリーブ30から樹脂管部32が抜けにくくなる効果を発揮する。
【0052】
圧入スリーブ30の鍔部29の内周面側にテーパー面38を形成することにより、弁箱13のバルブ本体12内部のボデー流路39と圧入スリーブ30の内周流路40とがスムーズに繋がるようにして乱流の発生を抑制している。また、圧入スリーブ30の内周流路40の径は、
図1に示すように接続ソケット14の内径と略同一であるとともに、
図3に示すように樹脂管部32の内径とも略同一であるため、略同一の断面積を有する流路がスムーズに連続して構成されるので、圧力損失の発生を抑制することができる。
【0053】
なお、圧入スリーブ30の鍔部29の内周面側に形成するテーパー面38の開き角度については、通常使用時と可撓時の流路面積の確保、圧力損失の発生に影響を与えるので、これらへの影響を十分にトレードオフして決定する必要があるが、樹脂管可撓ユニット21が可撓した時でもバルブ本体12内部のボデー流路39と圧入スリーブ30の内周流路40とができるだけスムーズに繋がって圧力損失の発生を抑制できるように、樹脂管可撓ユニット21の可撓角度θより若干大きい角度、例えば呼び径75の可撓角度が15度の場合には、15度を超え20度以下の角度に設定することが好ましい。
【0054】
樹脂管部32は水道配水用ポリエチレン管が好ましく、呼び径50又は75のポリエチレン管を使用することができる。本実施例では、呼び径75のポリエチレン管を使用する場合について説明している。
【0055】
図4に示すように、リング体36の外周面はボール面33に形成され、内周面34には抜け止め部35とシール部材取付け溝41が凹設されている。抜け止め部35は、シール部材取付け溝41よりも圧入スリーブ30の鍔部29と当接する面に近い部分に設けられているが、抜け止め部35は、圧入スリーブ30の外周面26に突設させた係止部27と略対向することによって樹脂管部32の抜け止め効果を強力に発揮するので、圧入スリーブ30で係止部27の高さが十分に高く形成されている鍔部29の近傍部分に対応する部分に抜け止め部35を設けるようにしたためである。
【0056】
また、リング体36のボール面33の球面球径は、圧入スリーブ30の鍔部29の外周面側に形成されたアール面28の球面球径と略等しく設定しているので、圧入スリーブ30の鍔部29にリング体36を当接させると、リング体36のボール面33と圧入スリーブ30のアール面28とが連設した状態となり、外周球面形状を形成する。本実施例では、リング体36はステンレス鋼(SUS304)製であり、無塗装で使用している。リング体36の内周面34の径は、圧入スリーブ30が挿入された樹脂管部32の外径よりもやや小径となるように設定している。これにより、リング体36を樹脂管部32の外周に圧入固定することができる。
【0057】
圧入スリーブ30を樹脂管部32の内周側に圧入した後、シール部材取付け溝41にシール部材(ニトリルゴム製のOリング)42を配設したリング体36を樹脂管部32の外周側に圧入すると、
図3に示すように、圧入スリーブ30の外周面26に突設された係止部27が樹脂管部32の内周面43に食い込むとともに、リング体36の内周面34に凹設された抜け止め部35に樹脂管部32の外周面37が食い込むことにより、樹脂管部32と圧入スリーブ30とリング体36とが強固に固定されて一体化した樹脂管可撓ユニット21を構成することができる。
【0058】
これらの圧入作業は、仕切弁の接続用ソケットの外周側に樹脂管を圧入した後、樹脂管の外周側に円筒状締付けリング体を圧入する際に使用している圧入機を使用して行うことができるので、製造コストを押し上げる要因となることはない。なお、抜け止め部35やシール部材の配置は任意である。
【0059】
樹脂管可撓ユニットは、接合部18の可撓接合部15内周面の球面部46に対して、樹脂管部32を可撓自在に挿入可能であれば、上記構造に限ることはなく、各種の内部構造に設けることが可能である。さらに、この樹脂管可撓ユニットを接合するバルブ本体12をソフトシール仕切弁11に適用しているが、ソフトシール仕切弁以外のバルブに適用してもよい。
【0060】
次に、バルブ本体12の弁箱13の他端側に設けた可撓接合部15について説明する。
前述したように、可撓接合部15は、弁箱13の接合部18を拡径した状態で設けられており、開口端部19を有するとともに、内周面に凹状の球面部46を備えている。この球面部46の球面球径は、圧入スリーブ30の鍔部29のアール面28の球面球径及びリング体36のボール面33の球面球径と略等しく形成している。
【0061】
可撓接合部15の内周面には、球面部46に続いてシール部材47を装着するための段部48を設けている。また、可撓接合部15の開口端部19には、押輪23を取り付けるためのボルト穴52を円周状に設けるとともに、開口端部19の外周には後述する防塵カバー61を係止して取り付けるための突起部53を環状に突設している。
【0062】
押輪23は、
図5(b)に示すように、中央に樹脂管可撓ユニット21の樹脂管部32を挿通させるための挿通孔55を設けた略ドーナツ状に形成され、挿通孔55の外周にはボルト穴56を円周状に設けている。また、
図5(a)に示すように、押輪23の厚み方向に段部57を形成し、この段部57を可撓接合部15の開口端部19内に挿入して可撓接合部15の軸心と押輪23の軸心を一致させた状態で押輪23を可撓接合部15の開口端部19に取り付けられるようにしている。
【0063】
また、段部57側の挿通孔55の内周側を当接アール面58に形成し、この当接アール面58の球面球径を可撓接合部15の内周面に設けた球面部46の球面球径と同じにしているので、押輪23を可撓接合部15の開口端部19に取り付けると、押輪23の当接アール面58と可撓接合部15の球面部46は、中心と球面球径が同一である球面を構成する。前述したように、段部57の存在により可撓接合部15の軸心と押輪23の軸心を確実に一致させることができるため、単に可撓接合部15の開口端部19に押輪23を取り付けるだけでこの様な効果を得ることができる。さらに、押輪23を可撓接合部15の開口端部19に取り付けると、押輪23の先端面、可撓接合部15の内周面、及びリング体36のボール面33により囲まれた空間は、シール部材47を装着する収容部を形成する。
【0064】
挿通孔55の段部57と反対側は、端面59に向かって拡径する拡径穴60に形成することにより、可撓時における樹脂管可撓ユニット21の樹脂管部32の可撓域を確保するとともに、拡径穴60の内周面に樹脂管可撓ユニット21の樹脂管部32が当接した段階で、樹脂管可撓ユニット21の可撓範囲を規制できるようにしている。
【0065】
本実施例では、押輪23は、前述の圧入スリーブ30と同様に球状黒鉛鋳鉄(FCD450-10)製であり、全面にエポキシ樹脂により粉体塗装を施している。
【0066】
本実施形態では、上記可撓接合部がバルブ本体12の一端に設けられているが、バルブ本体、又は図示しない継手本体の一端又は両端に設けることができる。
【0067】
防塵カバー61は、可撓接合部15の開口端部19と樹脂管部32との間に取り付けられる。防塵カバー61は、例えばゴム等の柔軟な材質で形成され、
図6に示すように、開口端62と底部63とを有する円筒状で、円筒の側面64の厚みを底部63から開口端62に向かって連続的に増加させて形成している。また、開口端62の内周側には、可撓接合部15の開口端部19の外周に環状に突設した突起部53を挿嵌するための溝部65を設けている。
【0068】
防塵カバー61の底部63の中央には樹脂管可撓ユニット21の樹脂管部32の外径よりも小径の挿通孔66を形成し、この挿通孔66の内周に先端が尖った形状の突起部67を設けるとともに、
図6に示すように、この挿通孔66の周りに同心円状に奥行幅を変えて折り目を形成した蛇腹部68を設けている。
【0069】
防塵カバー61の底部63に挿通孔66と同心円状に奥行幅を変えた蛇腹部68を形成したことにより、防塵カバー61に十分な伸縮性を与えることができるようになり、可撓時の樹脂管可撓ユニット21の動きに追随して防塵カバー61が柔軟に変形して、カバー状態を維持することができる。蛇腹部68の凹凸部位の深さを大きく設けるようにすれば、可撓性を向上して樹脂管可撓ユニット21の動きに追従しやすくなる。
【0070】
また、防塵カバー61の側面64を底部63から開口端62に向かって連続的に厚みを増加させて形成し、厚みが最も増加した開口端62内周側に溝部65を設けているため、この溝部65は変形しにくく十分な保持力を有しており、樹脂管可撓ユニット21の可撓時に防塵カバー61が変形しても、この溝部65内に突起部53を保持し続け、防塵カバー61が可撓接合部15から外れることを防止することができる。
【0071】
防塵カバー61の挿通孔66側には、内周方向に突出するような肉厚で環状の締付部69が設けられる。この締付部69は、樹脂管部32の接続口側の蛇腹部68から外方に飛び出さない位置に、樹脂管部32外周に接するように適宜の厚さ及び長さで形成される。この締付部69を設けたことにより、挿通孔66の口径が樹脂管部32の外径よりも小さくなる。そのため、防塵カバー61は、挿通孔66を拡径するようにして樹脂管部32に装着するようにする。
【0072】
さらに、防塵カバー61には、樹脂管可撓ユニット21の樹脂管部32の外径よりも小径に形成した挿通孔66の内周側に先端が尖った形状の突起部(リップ部)67を設けている。この突起部67は、防塵カバー61へ樹脂管可撓ユニット21の樹脂管部32を挿入し易くするだけでなく、樹脂管部32の挿入により突起部67が拡径されることにより生じる復元力によって樹脂管部32の外周面37を強く把持してダストシール効果とブレーキ機能を発揮するので、樹脂管可撓ユニット21が可撓して防塵カバー61が変形しても突起部67の把持位置は移動することがなく、ダストシール機能を損なわずにカバー状態を維持することができる。
【0073】
本実施例では、防塵カバー61は、耐水性、耐候性、耐寒性、耐オゾン性に優れるエチレンプロピレンゴム(EPDM)製を使用している。
【0074】
次いで、
図7により、本発明の樹脂管可撓ユニットと継手構造の組立工程を説明する。最初の工程は樹脂管可撓ユニットの組立工程である。この工程では、
図7(a)に示すように、図示しない治具により圧入スリーブ30の鍔部29を支持し、樹脂管部32を押圧して圧入スリーブ30を樹脂管部32の内周側に圧入する。このとき、樹脂管部32を拡径しながら圧入スリーブ30が圧入されるので、圧入スリーブ30の外周面26に突設した係止部27は樹脂管部32の内周面43に食い込んだ状態で圧入固定される。
【0075】
次の工程は、
図7(b)に示すように、樹脂管部32の内周側に圧入固定した圧入スリーブ30の鍔部29を図示しない治具により支持し、シール部材取付け溝41にシール部材42を配設したリング体36を樹脂管部32の外周側に圧入する。このとき、リング体36の内周面34は、圧入スリーブ30を圧入したことにより拡径された樹脂管部32の外表面を強く押圧しながら圧入されるため、リング体36の内周面34に凹設された抜け止め部35内に樹脂管部32の外周面37が食い込んだ状態で、圧入スリーブ30を圧入固定した樹脂管部32とリング体36とが圧入固定される。このとき、圧入スリーブ30の係止部27とリング体36の抜け止め部35が略対向位置に配置されることにより、強固に固定されて一体化した樹脂管可撓ユニット21が構成される。
【0076】
次いで継手構造の組立工程に移行する。この工程では、
図7(c)に示すように、可撓接合部15の段部48にシール部材47を装着し、前工程で完成させた樹脂管可撓ユニット21を開口端部19から可撓接合部15内に挿入する。その後、樹脂管可撓ユニット21の樹脂管部32を挿通孔55に挿通させながら押輪23の段部57を可撓接合部15の開口端部19内に挿入した状態で、可撓接合部15の開口端部19に取り付ける。
【0077】
次に、
図7(d)に示すように、押輪23のボルト穴56にボルト70を通し、可撓接合部15の開口端部19に円周状に設けたボルト穴52にボルトを螺着すると継手構造が完成する。このとき、押輪23の段部57を可撓接合部15の開口端部19内に挿入した状態で取り付けているので、可撓接合部15の軸心と押輪23の軸心とが確実に一致しており、また、可撓接合部15の開口端部19に押輪23をしっかりとボルト締めしているため、可撓接合部15の球面部46と押輪23の当接アール面58は、球面球径が同一である凹状の内周球面を連設して構成する。
【0078】
前述したように、樹脂管可撓ユニット21の圧入スリーブ30の鍔部29のアール面28とリング体36のボール面33は連設した外周球面形状を形成しているが、可撓接合部15の球面部46、押輪23の当接アール面58、圧入スリーブ30のアール面28及びリング体36のボール面33の球体球径を等しく形成しているので、可撓接合部15の球面部46と押輪23の当接アール面58が連設した内周球面は、樹脂管可撓ユニット21のアール面28とリング体36のボール面33が連設した外周球面を回動、可撓自在に支持することができる。なお、可撓接合部15の開口端部19に押輪23をバヨネット方式で取り付けた場合には、押輪23を確実に密着させて開口端部19に取り付けることができずにガタが生じるので、可撓接合部の球面部と押輪の当接アール面が連設する面は正しい内周球面を構成することができないため、樹脂管可撓ユニットの回動、可撓が影響を受けたり、樹脂管可撓ユニットが回動、可撓する際に回転軌道から外れ、リング体の端面で可撓接合部の球面部を傷付けたりするおそれがある。
【0079】
なお、押輪23を可撓接合部15の開口端部19に接合する方法は、上記のボルト止めに限定されるわけではなく、可撓接合部15の球面部46と押輪23の当接アール面58が連設して正しい内周球面を構成する条件を満足すればよいのであるから、例えば、可撓接合部15の開口端部19の内周側にメネジ部を、押輪23の段部57にオネジ部を形成し、可撓接合部15に押輪23を螺着するようにしてもよい。
【0080】
最後に防塵カバー61を取り付けることにより、樹脂管可撓ユニット21の回動、可撓性に影響を与えることなく防塵化し、押輪23とリング体36との間に異物が噛み込むのを防止することができる。
【0081】
以下に、本発明の継手構造の細部及び動作について説明する。
図8は、本発明の継手構造の可撓部拡大図であり、組立完了時を示している。通常、継手構造72は、本図に示すように、可撓接合部15の軸心73と樹脂管可撓ユニット21の軸心74とが一致した状態で使用される。
【0082】
図8に示すように、可撓接合部15の球面部46と押輪23の当接アール面58が連設した内周球面内に、樹脂管可撓ユニット21の圧入スリーブ30の鍔部29のアール面28とリング体36のボール面33が連設した外周球面を内包している。可撓接合部15の球面部46と押輪23の当接アール面58が連設した内周球面の球径と、樹脂管可撓ユニット21の圧入スリーブ30の鍔部29のアール面28とリング体36のボール面33が連設した外周球面の球径は略等しく、また中心75を共有しているので、樹脂管可撓ユニット21は、可撓接合部15の球面部46と押輪23の当接アール面58が連設した内周球面内で回動、可撓自在に支持される。
【0083】
これにより、樹脂管可撓ユニット21は可撓接合部15に回動、可撓自在に接続されるので、地震発生により樹脂管可撓ユニット21の樹脂管部32に接続した水道管が地盤の変動により変位した場合には、これに追従して回動及び可撓することができる。本実施例では、樹脂管可撓ユニット21の可撓域を約15度に設定し、押輪23の拡径穴60の拡径角度をこれに合わせて設定している。
【0084】
また、接続工事の際に、樹脂管部32に軸心とこれに接続する水道管(ポリエチレン管)の軸心が一致しない場合には、樹脂管可撓ユニット21を可撓させることによって、樹脂管部32の軸心と水道管の軸心とを一致させ、施工不良(融着不良)を防止することができる。
【0085】
圧入スリーブ30が鍔部29を有し、この鍔部29の外周面側にはアール面28が形成されていることにより、鍔部29のアール面28は可撓接合部15の球面部46に当接し、可撓接合部15の球面部46が露出することにより生じる凹段差部(ポケット)78の範囲を大幅に低減させている。
【0086】
これにより、凹段差部78により生じる乱流が原因となる圧力損失の発生、凹段差部78の内部に付着する配水管内部の鉄錆の流入による赤水発生、凹段差部78の内部に溜まる異物が原因となる噛み込み発生を抑制することができる。
【0087】
流体圧が加わると、樹脂管可撓ユニット21は押輪23側に押され、押輪23の当接アール面58でリング体36のボール面33を可撓状態で支持する。
【0088】
また、流体圧が加わることにより、可撓接合部15の段部48に配設したシール部材47も押輪23側に移動し、押輪23に密着した状態で可撓接合部15の開口端部19の内周側とリング体36との間を可撓状態でシールする。
【0089】
次に、
図9により、樹脂管可撓ユニット21の可撓状態について説明する。
図9は、樹脂管可撓ユニット21が可撓接合部15に対して最大可撓した状態を示している。このときの可撓接合部15の軸心73と樹脂管可撓ユニット21の軸心74とが成す角度θは15度であり、樹脂管可撓ユニット21の樹脂管部32の外周面が押輪23の拡径穴60の内周面に当接し、それ以上の可撓が規制されている。
【0090】
このとき、押輪23の拡径穴60の内周面と樹脂管部32の外周面とが接触する範囲は、樹脂管部32の内周側に圧入固定した圧入スリーブ30の外周面26が存在する範囲内であるので、樹脂管可撓ユニット21の可撓により樹脂管部32が押輪23の拡径穴60の内周面から受ける力は圧入スリーブ30により支持され、樹脂管部32の変形を防ぐことができる。
【0091】
また、圧入スリーブ30の鍔部29の内周面側にテーパー面38を形成しているので、樹脂管可撓ユニット21が可撓した状態における接合部18のボデー流路39に対する急激な流路面積の変化を防ぎ、可撓時の圧力損失を抑制し、流路を確保することができる。
【0092】
樹脂管可撓ユニット21が可撓した影響は防塵カバー61にも及ぶが、前述したように、防塵カバー61の底部63には奥行幅を変えて蛇腹部68を形成して防塵カバー61に十分な伸縮性を与えているため、防塵カバー61は、可撓時の樹脂管可撓ユニット21の動きに追随して柔軟に変形することができる。
【0093】
防塵カバー61を可撓接合部15に取り付ける際に、可撓接合部15の突起部53を挿嵌する防塵カバー61の溝部65は、側面64の厚みが最も増加した部位に設けているために変形しにくく十分な保持力を有しており、防塵カバー61が変形してもその影響を受けることなく溝部65内に突起部53を保持し続けることができる。
【0094】
これに加え、防塵カバー61には、樹脂管可撓ユニット21の樹脂管部32の外径よりも小径に形成した挿通孔66の内周側に先端が尖った形状の突起部(リップ部)67を設けている。この突起部67は、防塵カバー61へ樹脂管可撓ユニット21の樹脂管部32を挿入し易くするだけでなく、樹脂管部32の挿入により突起部67が拡径されることにより生じる復元力によって樹脂管部32の外周面37を強く把持してダストシール効果とブレーキ機能を発揮するので、樹脂管可撓ユニット21が可撓して防塵カバー61が変形しても突起部67の把持位置は移動することがなく、ダストシール機能を損なわずにカバー状態を維持することができる。
【0095】
次いで、前述した防塵カバーの他例を説明する。
図10においては、防塵カバーの他例を示し、
図11(a)、
図12は、
図10の防塵カバーの取り付け状態を示している。なお、以降において、それ以前に説明した部分と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
【0096】
図10の防塵カバー80は、円筒部81、環状凹凸部82、延設筒部83、環状締付部84を備え、前記防塵カバー61と同様に、可撓接合部15と開口端部19との間に取り付けられる。
円筒部81は、開口端部19に取り付け可能な口径によって略円筒状に形成され、この円筒部81の先端に環状凹凸部82が設けられる。
【0097】
環状凹凸部82は、円筒部81から求心方向に沿って底部63の内側に、幅Wにより深さ方向に均等の寸法で蛇腹状に設けられ、この防塵カバー80では、幅Wが小さく設けられることで、環状凹凸部82の各凹凸部位が浅く形成されている。
【0098】
延設筒部83は、環状凹凸部82の内周端82aより、樹脂管部32の軸心74方向に長さLにより延設されるように形成される。内周端82aは環状凹凸部82の底部63側に位置し、この内周端82aから延設筒部83を設けていることで、延設筒部83による樹脂管部32外周への接触部位が長くなって樹脂管部32への接触面積が大きくなる。
【0099】
図11(b)において、環状締付部84は、延設筒部83の先端側に設けられ、環状凹凸部82で構成される樹脂管部32との屈曲部位から延設筒部83を介して離れた位置に配置される。この環状締付部84は、延設筒部83の外周(外径)側に突出した状態で、この延設筒部83の軸心74方向の長さの略半分の長さで厚さTによって形成される。環状締付部84の厚さTや長さは、それぞれ適宜の大きさに設定可能になっている。
上記の構成により、防塵カバー80は、挿し口(軸芯74)方向において前述した防塵カバー61よりも短尺状に設けられる。
【0100】
ここで、このような構造の防塵カバーを取り付ける場合には、継手部位とバルブとを地中に埋設した際に、環状凹凸部の外側(砂や土との接触側)の凹状部位に砂や土が押し込まれ、この状態で突き固められて固定された状態になる可能性がある。この場合、環状凹凸部の蛇腹としての伸縮可撓性が極端に失われ、この状態で外力等により樹脂管部が屈曲する際には、防塵カバーの追従が阻害され、防塵カバーの樹脂管部との接触側に隙間が発生し、この隙間から砂や土が次々に浸入するおそれがある。その結果、継手部分にも砂や土が入り込んで樹脂管可撓ユニットの可撓性が低下すると共に、元の配管状態に復帰しにくくなるという問題も生じる。これにより、著しく機能性が失われて商品価値も低下する。
【0101】
これに対して、本例の防塵カバー80では、
図11(a)、
図11(b)において、環状凹凸部82の底部63側に位置する内周端82aより延設筒部83を樹脂管部32の軸心方向に沿って延設し、この延設筒部32の先端部に環状締付部84を設けている。このため、例えば外力等により樹脂管部32がX方向に屈曲するときに、砂や土が突き固められた環状凹凸部82の影響を受けにくくなり、この環状凹凸部82から離れた位置で環状締付部84が樹脂管部32を締付け、内周端82a付近の環状凹凸部82と延設筒部83が樹脂管部32の可撓に追従するように伸長、屈曲することで、環状締付部84と樹脂管部32との隙間の発生を確実に防ぐことができる。これにより、
図12における樹脂管可撓ユニット21の可撓状態であっても、砂や土の浸入を防ぎ、仮に、樹脂管接触部(口元部)の近傍が突き固めされていたとしても、その影響をほとんど受けることがなく、特に高い追従性が要求される樹脂管部32と防塵カバー80との接触部位の防塵性を確保できる。
【0102】
しかも、環状凹凸部82の幅Wを小さくし、凹凸部位の深さを浅く設けていることにより、この凹状部位への砂や土の押し込み量を少なくして環状凹凸部82の屈曲性の低下を抑えている。
延設筒部83を長さLにより長尺状に形成し、この延設筒部83と樹脂管部32との接触面積を大きくしているので、延設筒部83による樹脂管部32の保持性(一体性)を高めることが可能となる。環状締付部84を延設筒部83の軸心74方向の略半分の長さに設けていることにより、この環状締付部84による締付け力を高めつつ、それ以外の部分の長さによって延設筒部83全体の可撓時の自由度を高めて追従性を向上している。
【0103】
この例では、防塵カバー80を短尺状に設けているため、この防塵カバー80の樹脂管部32の軸心74方向への取り付け長さを短くできる。これにより、例えば、樹脂管部32をEF接合等により図示しない外部の樹脂製継手と接合する際に、防塵カバー80が作業の邪魔になることがなく、作業性が高くなる。
【0104】
以上説明したように、本発明の樹脂管可撓ユニットを用いた継手構造は、樹脂管可撓ユニットを収容する拡径部の内周面が露出することにより生じる凹段差部の範囲を低減させ、継手構造内に略ストレートな流路を得ることができる。このため、弁箱底部がフラットなストレート構造であるために圧力損失がなく、また、異物が底部に堆積することがないというソフトシール仕切弁の特徴を損なうことなくソフトシール仕切弁を可撓化するために最適の継手構造である。
【0105】
また、以上の説明は、両側接続部にポリエチレン管を接続したポリエチレン挿し口を備えるソフトシール仕切弁に可撓性を持たせることを前提に行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、
図13に示すように片側がフランジ構造の仕切弁の一方に可撓性を持たせるためにも使用するとことができ、また、仕切弁の他にも通常の継手に可撓性を持たせるためにも使用できることは勿論である。
【0106】
次いで、前述した継手構造の実施例として、防塵カバーを取り付けた継手部位を埋設したときの実験例を説明する。
図14は、前述した継手部位に防塵カバー80を取り付けた状態を示し、
図15は、
図14の継手部位の埋設状態を示している。
【0107】
この実施例で接続される樹脂管部32は、φ50mmのポリエチレン管からなり、継手部位は防塵カバー80を取り付けた状態で埋設用ボックス内に収納して埋設した。
継手部位の埋設前には、環状締付部84の端面位置の樹脂管部32外周にペンでケガキ線85を基準線として引いた。
【0108】
図14(a)の埋設前の状態では、軸芯74方向において内周端82aが底部63側に位置し、このときの防塵カバー80の全長S1は80mmとなった。この状態から、仮に継手部位(及びバルブ)を埋設して砂や土を突き固め、延設筒部83付近がバルブ(接合部18)方向に位置ズレしたとしても、
図14(b)において、リング体36と押輪23、樹脂管部32との間に設けられる環状の空間Gには、延設筒部83や環状締付部84が入り込むおそれがない。このことから、埋設後にも防塵カバー80全体が可撓するための空間Gを確保し、樹脂管可撓ユニット21の所定の可撓角度θを確保できるようになっている。
【0109】
続いて、ボックス内に山砂Saを敷いて突き固め、継手部位の埋設をおこなった。
図15(a)は、
図14(a)の防塵カバーの取り付けた継手部位を埋設して突き固めた状態を示している。
この状態で継手部位外周側の山砂Saの一部を掘り起し、防塵カバー80の全長を測定したところ、その全長S2は70mmとなった。このとき、環状締付部84側が、二点鎖線で示した初期位置からバルブ側(矢印側)に距離ΔS=10mmでズレたことをケガキ線85の位置から確認した。これらのことから、埋設時に防塵カバー80が山砂Saで突き固められ、その口元部位がバルブ側に10mm程度押し込まれたことを確認した。
【0110】
次に、掘り起こし部分を埋めて突き固め、樹脂管可撓ユニット21を可撓角度θ=15度で可撓させた後に、再度一部を掘り起こして防塵カバー80の状態を確認した。
この場合、
図15(b)に示すように、可撓により樹脂管部32の元の位置にはスペースRができるものの、環状凹凸部82は、凹状部位への突き固めの影響で蛇腹としての機能が損なわれて動きにくくなる。しかし、環状締付部84は、埋設直後の締付け位置からほぼズレることはなく、拡径方向に変形したことも確認されなかった。
【0111】
これは、
図15(a)の軸芯74よりも上部側では、内周端82a付近と環状凹凸部82と延設筒部83が樹脂管部32の可撓に追従して伸長するように変形し、一方、軸芯74よりも下部側では延設筒部83が屈曲するように変形することで、環状凹凸部82の突き固めの影響を受けにくくなっているためと考えられる。この防塵カバー80の機能性により、地震等により樹脂管可撓ユニット21が可撓したとしても、樹脂管部32との隙間の発生を抑え、砂や土の浸入を確実に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0112】
11 可撓式ソフトシール仕切弁
12 バルブ本体
13 弁箱
15 可撓接合部
18 接合部
19 開口端部
21 樹脂管可撓ユニット
23 押輪
27 係止部
28 アール面
29 鍔部
30 圧入スリーブ
32 樹脂管部
33 ボール面
35 抜け止め部
36 リング体
42 シール部材
46 球面部
58 当接アール面
61、80 防塵カバー
74 軸心
81 円筒部
82 環状凹凸部
82a 内周端
83 延設筒部
84 環状締付部