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特許7099867光焼結型組成物及びそれを用いた導電膜の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】光焼結型組成物及びそれを用いた導電膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20220705BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220705BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20220705BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20220705BHJP
   H01B 1/02 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B13/00 503C
B22F9/00 B
B22F3/10 G
H01B1/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018094610
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019200912
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】徳武 茉里
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真二
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-199720(JP,A)
【文献】特開2006-265585(JP,A)
【文献】特開2008-031491(JP,A)
【文献】特開2014-005188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 13/00
B22F 9/00
B22F 3/10
H01B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズを570ppm~10000ppm含有し且つ平均一次粒子径が1nm~1000nmである亜酸化銅粒子と、20℃における体積抵抗率が1.0×10-3Ω・cm以下である金属粒子と、溶媒とを含むことを特徴とする光焼結型組成物。
【請求項2】
前記金属粒子が、金、銀、銅、亜鉛、スズ、アルミニウム、ニッケル、コバルト及びマンガンからなる群から選択される少なくとも1種の金属粒子であることを特徴とする請求項1に記載の光焼結型組成物。
【請求項3】
バインダー樹脂を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光焼結型組成物。
【請求項4】
前記亜酸化銅粒子と前記金属粒子とを合計で10質量%~90質量%且つ前記溶媒を10質量%~90質量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光焼結型組成物。
【請求項5】
前記亜酸化銅粒子と前記金属粒子とを合計で10質量%~90質量%且つ前記溶媒と前記バインダー樹脂とを合計で10質量%~90質量%含むことを特徴とする請求項に記載の光焼結型組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の光焼結型組成物を基材に塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜に光を照射することにより前記塗膜中の亜酸化銅粒子を還元する工程と
を備えることを特徴とする導電膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光焼結型組成物及びそれを用いた導電膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に導電膜を形成する方法として、金属酸化物粒子の分散体を基材に塗布して塗膜を形成した後、その塗膜に加熱処理又は光照射処理を施して焼結させる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特に、光照射処理を施す方法は、低温で焼結させることができるため、耐熱性の低い樹脂基材への適用が可能であるという利点がある。このような用途に用いることができる亜酸化銅粒子として、例えば、特許文献2には、アルカリ溶液と2価の鉄イオンが添加された銅イオン含有溶液の一方を他方に添加して水酸化銅を生成させた後、還元剤を添加して亜酸化銅粒子を還元析出させて得られる、走査型電子顕微鏡により測定される平均一次粒子径が0.5μm以下であり且つ30ppm以上の鉄を含有する亜酸化銅粉末が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-71963号公報
【文献】特開2014-5188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが、特許文献2に記載の亜酸化銅粉末の分散体を用いて塗膜を形成し、その塗膜に光を照射して亜酸化銅粉末の還元処理を行ったところ、塗膜の一部が飛散して導電膜が不均一に形成されたり、銅への還元焼結が不十分であるために基材との密着性の低い導電膜が形成されるということが分かった。
【0005】
従って、本発明は、低抵抗である上に、均一であり且つ基材との密着性に優れる導電膜を光照射により形成することのできる光焼結型組成物及びそれを用いた導電膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記実情を鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の添加元素を含有する亜酸化銅粒子と、特定の体積抵抗率を有する金属粒子と、溶媒とを含む光焼結型組成物が、上記課題を解決できることを見出し本発明の完成に至った。
【0007】
即ち、本発明は、スズ、マンガン、バナジウム、セリウム、鉄及び銀からなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含有する亜酸化銅粒子と、20℃における体積抵抗率が1.0×10-3Ω・cm以下である金属粒子と、溶媒とを含むことを特徴とする光焼結型組成物である。
また、本発明は、前記光焼結型組成物を基材に塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜に光を照射することにより前記塗膜中の亜酸化銅粒子を還元する工程とを備えることを特徴とする導電膜の形成方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低抵抗である上に、均一であり且つ基材との密着性に優れる導電膜を光照射により形成することのできる光焼結型組成物及びそれを用いた導電膜の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で形成された塗膜(光照射前)の電子顕微鏡写真(倍率1万倍)である。
図2】実施例1で形成された導電膜(光照射後)の電子顕微鏡写真(倍率1万倍)である。
図3】比較例1で形成された塗膜(光照射前)の電子顕微鏡写真(倍率1万倍)である。
図4】比較例1で形成された導電膜(光照射後)の電子顕微鏡写真(倍率1万倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による光焼結型組成物は、スズ、マンガン、バナジウム、セリウム、鉄及び銀からなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含有する亜酸化銅粒子と、20℃における体積抵抗率が1.0×10-3Ω・cm以下である金属粒子と、溶媒とを含むことを特徴とするものである。
【0011】
本発明において用いる亜酸化銅粒子における添加元素の好ましい含有量は、添加元素の種類に応じて異なるが、通常、1ppm~30000ppmの範囲内である。添加元素がスズである場合、スズイオンの溶解度及び亜酸化銅粒子の粒子径の制御の観点から、その含有量は1ppm~30000ppmであることが好ましく、10ppm~10000ppmであることがより好ましい。添加元素がマンガンである場合、マンガンイオンの溶解度及び亜酸化銅粒子の粒子径の制御の観点から、その含有量は10ppm~20000ppmであることが好ましく、30ppm~10000ppmであることがより好ましい。添加元素がバナジウムである場合、バナジウムイオンの溶解度及び亜酸化銅粒子の粒子径の制御の観点から、その含有量は10ppm~20000ppmであることが好ましく、30ppm~10000ppmであることがより好ましい。添加元素がセリウムである場合、セリウムイオンの溶解度及び亜酸化銅粒子の粒子径の制御の観点から、その含有量は10ppm~30000ppmであることが好ましく、30ppm~20000ppmであることがより好ましい。添加元素が鉄である場合、鉄イオンの溶解度及び亜酸化銅粒子の粒子径の制御の観点から、その含有量は1ppm~30000ppmであることが好ましく、10ppm~10000ppmであることがより好ましい。添加元素が銀である場合、銀イオンの溶解度及び亜酸化銅粒子の粒子径の制御の観点から、その含有量は1ppm~30000ppmであることが好ましく、5ppm~20000ppmであることがより好ましい。これらの添加元素の中でも、低融点であり且つ低抵抗であるという観点から、スズが好ましい。なお、本発明において、亜酸化銅粒子における添加元素の含有量は、亜酸化銅1gを濃塩酸10mlで溶解させ、その液をICP発光分析装置(株式会社島津製作所製ICPS-8100)により測定した値である。
【0012】
亜酸化銅粒子の平均一次粒子径は、取扱い性及び光焼結性の観点から、1nm~1000nmであることが好ましく、30nm~500nmであることがより好ましい。亜酸化銅粒子の平均一次粒子径は、後述する亜酸化銅粒子製造時の添加イオン濃度、銅イオン含有水溶液とアルカリ溶液との混合温度等の条件により調整することができる。なお、本発明における亜酸化銅粒子の平均一次粒子径とは、亜酸化銅粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した像において、任意に選択した50個の亜酸化銅粒子それぞれの一次粒子径を測定し、それらの値を算術平均したものである。また、亜酸化銅粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球状、多面体状、不定形等のいずれであってもよい。
【0013】
亜酸化銅粒子は、銅イオンと、2価のスズイオン、2価のマンガンイオン、4価のバナジウムイオン、3価のセリウムイオン、2価の鉄イオン及び1価の銀イオンからなる群から選択される少なくとも1種の添加イオンとを含有する水溶液をアルカリ溶液と混合して水酸化銅を生成させた後、還元剤を添加して亜酸化銅粒子を還元析出させる方法により製造することができる。水酸化銅を生成させる際及び亜酸化銅粒子を還元析出させる際は、反応液が均一になるように反応液を攪拌することが好ましい。
【0014】
水溶液に含有される銅イオン源としては、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、シアン化銅、チオシアン化銅、フッ化銅、臭化銅、ヨウ化銅、炭酸銅、リン酸銅、ホウフッ化銅、水酸化銅、ピロリン酸銅等の無機銅化合物、酢酸銅、乳酸銅等の有機銅化合物それらの水和物等を用いることができる。これらの銅イオン源は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの銅イオン源の中でも、水への溶解度が大きく且つ安価であるという観点から、塩化銅及び硫酸銅を用いるのが好ましい。水溶液中の銅イオン濃度は、反応効率の観点から、0.1モル/L~2モル/Lであることが好ましい。銅イオン濃度が0.1モル/L未満であると、反応効率が低下し、亜酸化銅の収率が低下する場合がある。一方、銅イオン濃度が2モル/L超であると、凝集が生じやすくなる。
【0015】
水溶液に含有される2価のスズイオン、2価のマンガンイオン、3価及び4価のバナジウムイオン、3価のセリウムイオン、2価の鉄イオン及び1価の銀イオンからなる群から選択される少なくとも1種の添加イオンは、得られる亜酸化銅粒子の平均一次粒子径を小さくすると共に、銅への還元焼結性を向上させるという効果を有する。2価のスズイオン源としては、塩化スズ(II)、硫酸スズ(II)、酸化スズ(II)、フッ化スズ(II)、臭化スズ(II)、ヨウ化スズ(II)等の無機スズ化合物、酢酸スズ(II)等の有機スズ化合物、それらの水和物等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2価のマンガンイオン源としては、硫酸マンガン(II)、塩化マンガン(II)、硝酸マンガン(II)等の無機マンガン化合物、酢酸マンガン(II)等の有機マンガン化合物、それらの水和物等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。4価のバナジウムイオン源としては、酸化硫酸バナジウム(IV)、四塩化バナジウム(IV)、酸化塩酸バナジウム(IV)、塩化バナジウム(III)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)等の無機バナジウム化合物、四酢酸バナジウム(IV)等の有機バナジウム化合物、それらの水和物等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。3価のセリウムイオン源としては、塩化セリウム(III)、酸化セリウム(III)、硝酸セリウム(III)、硫酸セリウム(III)、フッ化セリウム(III)、臭化セリウム(III)、ヨウ化セリウム(III)等の無機セリウム化合物、シュウ酸セリウム(III)、酢酸セリウム(III)等の有機セリウム化合物、それらの水和物等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2価の鉄イオン源としては、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、硝酸鉄(II)、水酸化鉄(II)、酸化鉄(II)、リン酸鉄(II)等の無機鉄化合物、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、乳酸鉄(II)等の有機鉄化合物、それらの水和物等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。1価の銀イオン源としては、クロム酸銀(I)、二クロム酸銀(I)、酸化銀(I)、ジシアノ銀(I)酸カリウム、シアン化銀(I)、臭化銀(I)、硝酸銀(I)、セレン酸銀(I)、タングステン酸銀(I)、炭酸銀(I)、チオシアン酸銀(I)、テルル化銀(I)、ふっ化銀(I)、モリブデン酸銀(I)、よう化銀(I)、硫化銀(I)、硫酸銀(I)、リン酸銀(I)、二リン酸銀(I)、亜硝酸銀(I)、イソシアン酸銀(I)、塩化銀(I)、過塩素酸銀(I)等の無機銀化合物、クエン酸銀(I)、酢酸銀(I)、乳酸銀(I)、ギ酸銀(I)、安息香酸銀(I)等の有機銀化合物、それらの水和物等を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。水溶液中の添加イオン濃度は、最終的に得られる亜酸化銅粒子中の添加元素の含有量が上述した好ましい範囲内となる濃度であれば特に限定されるものではないが、共析物として亜酸化銅に取り込まれやすく且つ共析物が光焼結を容易にさせるという観点から、銅イオン1モルに対して、0.001モル~0.1モルであることが好ましい。なお、添加イオン濃度を変えることで、最終的に得られる亜酸化銅粒子の平均一次粒子径を制御することができる。具体的には、添加イオン濃度を高めると、亜酸化銅粒子の平均一次粒子径を小さくすることができる。
【0016】
アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリを水に溶解させた一般的なものを用いることができる。アルカリの濃度は、最終的に得られる亜酸化銅粒子の粒子径の制御及び還元反応の制御の観点から、アルカリ溶液と混合される銅イオン含有水溶液に含まれる銅イオン1モルに対して、0.1モル~10モルとなる量であることが好ましい。0.1モル未満であると、亜酸化銅への還元が不十分となり、反応効率が低下する場合がある。一方、10モル超であると、亜酸化銅の一部が銅まで還元される場合がある。
【0017】
銅イオン含有水溶液をアルカリ溶液と混合して水酸化銅を生成させる際の反応温度は、特に限定されるものではないが、10℃~100℃であればよく、反応の制御という観点から、30℃~95℃であることが好ましい。なお、ここでの反応温度を変えることで、最終的に得られる亜酸化銅粒子の平均一次粒子径を制御することができる。具体的には、反応温度を高くすることで、亜酸化銅粒子の平均一次粒子径を大きくすることができる。反応時間は、特に限定されるものではないが、銅イオンの濃度、アルカリ溶液の種類及び濃度並びに反応温度によっては、混合直後から水酸化銅が生成されることから、0分超~120分以下であればよい。反応時間が120分超であると、添加イオンの作用により水酸化銅から酸化銅が徐々に生成される。
【0018】
還元剤としては、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、硫酸ヒドロキシルアミン、硝酸ヒドロキシルアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、リン酸ヒドラジン、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、等を使用することができる。これらの還元剤の中でも、安価であり、入手し易く、取扱い易く且つ亜酸化銅への還元効率が高いという観点から、グルコース、フルクトースなどの還元糖が好ましい。還元剤の添加量は、水酸化銅から亜酸化銅への還元反応の制御の観点から、銅イオン1モルに対して、0.1モル~10モルとなる量であることが好ましい。還元剤の添加量が0.1モル未満であると、水酸化銅から亜酸化銅への還元反応が不十分となる場合がある。一方、還元剤の添加量が10モル超であると、過剰の還元剤によって亜酸化銅の一部が銅まで還元される場合がある。
【0019】
還元析出させる際の反応温度は、特に限定されるものではないが、10℃~100℃であればよく、反応の制御の観点から、30℃~95℃であることが好ましい。ここでの反応時間は、特に限定されるものではないが、通常、5分~120分であればよい。還元析出時間が5分未満であると、水酸化銅から亜酸化銅への還元反応が不十分となる場合がある。一方、還元析出時間が120分超であると、析出した亜酸化銅の一部が酸化して酸化銅になる場合がある。
【0020】
析出した亜酸化銅粒子を含有するスラリーを濾過し、水洗することによって、亜酸化銅ケーキが得られる。濾過及び水洗の方法としては、フィルタープレス等により粒子を固定した状態で水洗する方法、スラリーをデカントし、その上澄みを除去した後に純水を加えて攪拌し、その後、再びデカントして上澄み液を除去する操作を繰り返す方法、濾過後の亜酸化銅粒子をリパルプした後に再び濾過する操作を繰り返す方法等を挙げることができる。得られた亜酸化銅粒子に対し、必要に応じて、酸化防止処理を行ってもよい。例えば、糖類、多価アルコール類、ゴム、へプトン、カルボン酸類、フェノール類、パラフィン、メルカプタン類の有機物質、シリカ等の無機物質を用いて酸化防止処理を施し、その後、得られた亜酸化銅ケーキを、銅へと還元させず且つ酸化銅へと酸化させない雰囲気及び温度(例えば、真空下、30℃~150℃)で乾燥することによって、亜酸化銅粒子を得ることができる。また、得られた亜酸化銅粒子に対し、必要に応じて、解砕、篩い分け等の処理を行ってもよい。
【0021】
本発明において用いる金属粒子は、20℃において1.0×10-3Ω・cm以下の体積抵抗率を有するものであれば特に限定されるものではないが、金(20℃における体積抵抗率:2.4×10-6Ω・cm)、銀(20℃における体積抵抗率:1.6×10-6Ω・cm)、銅(20℃における体積抵抗率:1.7×10-6Ω・cm)、亜鉛(20℃における体積抵抗率:5.9×10-6Ω・cm)、スズ(20℃における体積抵抗率:11.4×10-6Ω・cm)、アルミニウム(20℃における体積抵抗率:2.75×10-6Ω・cm)、ニッケル(20℃における体積抵抗率:7.2×10-6Ω・cm)、コバルト(20℃における体積抵抗率:6.4×10-6Ω・cm)及びマンガン(20℃における体積抵抗率:48×10-6Ω・cm)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの金属粒子の中でも、導電性並びに低コストという観点から、銅粒子が好ましい。また、これらの金属粒子を2種以上組み合わせて用いてもよいし、20℃において1.0×10-3Ω・cm以下の体積抵抗率を有する合金粒子を用いてもよい。
【0022】
金属粒子の平均一次粒子径は、取扱い性及び光焼結性という観点から、10nm~50μmであることが好ましく、50nm~10μmであることがより好ましい。なお、本発明における金属粒子の平均一次粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した像において、任意に選択した50個の粒子それぞれの一次粒子径を測定し、それらの値を算術平均したものである。また、金属粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球状、多面体状、フレーク状、不定形、凝集粉、又はこれらの混合物等のいずれであってもよい。
【0023】
本発明の光焼結型組成物は、導電膜形成材料として用いられるだけでなく、銅配線形成材料、銅接合材料、銅めっき代替材料、整流器用材料、太陽電池用材料等として用いることもできる。粘度の上昇を抑制し且つ十分な厚さの導電膜を形成するという観点から、亜酸化銅粒子と金属粒子とは、光焼結型組成物に対して、合計で10質量%~90質量%含まれることが好ましく、20質量%~75質量%含まれることがより好ましい。亜酸化銅粒子と金属粒子とを合計した量が10質量%未満であると、光焼結型組成物を基材に塗布しても十分な厚さの塗膜が得られず、光焼結後に連続した導電膜とならない場合がある。一方、亜酸化銅粒子と金属粒子とを合計した量が90質量%超であると、固形成分が多くなり光焼結型組成物の粘度が上昇し、基材への塗布が困難になる場合がある。粘度上昇の抑制、取扱い性及び光焼結性の観点から、溶媒は、光焼結型組成物に対して、10質量%~90質量%含まれることが好ましく、25質量%~80質量%含まれることがより好ましい。焼結時の飛散防止、導電膜の焼結性及び密着性という観点から、本発明の光焼結型組成物に含まれる金属粒子と亜酸化銅粒子との質量比は、95:5~55:45であることが好ましく、90:10~60:40であることがより好ましい。
【0024】
溶媒としては、亜酸化銅粒子及び金属粒子の分散媒として機能するものであれば、無機溶媒又は有機溶媒であっても特に限定されない。溶媒としては、例えば、水、一価アルコール、二価アルコール、三価アルコール等の多価アルコール、エーテル類、エステル類等を挙げることができる。水以外の溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、1,3-プロパンジオール、1,2,3-プロパントリオール(グリセリン)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロテルピニルモノアセテート、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルラクテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジブチルエーテル、オクタン、トルエン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
これらの溶媒の中でも、取扱い性、塗膜の乾燥性及び粘度の観点から、水が好ましく、また、光焼結型組成物中の各成分を良好に分散する観点から、ターピネオール及びジヒドロターピネオールが好ましい。
【0026】
本発明の光焼結型組成物には、亜酸化銅粒子、金属粒子及び溶媒以外の追加成分が含まれてもよい。そのような追加成分としては、例えば、バインダー樹脂、分散剤、保護剤、粘度調整剤、沈降防止剤、チキソ性付与剤、還元剤、導電膜を形成する対象となる基材との親和剤、焼結助剤等を挙げることができる。ただし、これら追加成分は、乾燥工程で揮発するか、又は焼結工程でガス化して除去される物質であることが好ましい。特に炭素、水素、酸素及び窒素から構成される化合物であることが好ましい。
【0027】
バインダー樹脂の具体例としては、例えば、セルロース樹脂及びその誘導体、ポリウレタン、ポリエステル樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリ-N-ビニル化合物、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、α-メチルスチレン重合体、テルペン樹脂、テルペンフェノール系樹脂、石油系樹脂、水添石油樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、エチレンオキサイド系ポリマー等が挙げられる。バインダー樹脂は、通常、溶媒に溶解させて使用される。これらのバインダー樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。バインダー樹脂としては、基板に対する密着性を向上させ、溶剤に高濃度で溶解し、還元剤としての機能を有し、導電性の良好な導電膜を形成することができる樹脂であることが好ましい。また、バインダー樹脂を配合することで組成物の粘度調製を行い得るので、組成物をインクジェット印刷、スクリーン印刷などの各種印刷用途に適した粘度のものとすることができる。効果の程度に差はあるが、これらの中でも、塗布性、密着性、光焼結性などの観点から、特にエチルセルロース、アクリル樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
バインダー樹脂の含有量は、上述した溶媒と合計して、光焼結型組成物に対して、10質量%~90質量%の範囲内であればよい。塗布性及び密着性を向上させる観点から、バインダー樹脂は、光焼結型組成物に対して、0.01質量%~40質量%含まれることが好ましく、0.2質量%~30質量%含まれることがより好ましい。40質量%を超えると光焼結型組成物の粘度が上昇し、良好な塗膜を形成することができない場合がある。また、バインダー樹脂が光焼結後の導電膜に余分な残存樹脂として残り、導電膜の抵抗値上昇が生じる場合もある。
【0029】
本発明の導電膜の形成方法は、上述した光焼結型組成物を基材に塗布して塗膜を形成する工程と、その塗膜に光を照射することにより塗膜中の亜酸化銅粒子を還元する工程を備える。
【0030】
導電膜を形成する対象となる基材の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート等の樹脂;石英ガラス、ソーダガラス、無アルカリガラス等のガラス;鉄、銅、アルミニウム等の金属;シリコン、ゲルマニウム等の半金属;アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミックス;紙等が挙げられる。本発明の導電膜の形成方法では、基材を加熱し過ぎることがないので、耐熱性の低い樹脂基材上に導電膜を形成するのに好適である。
【0031】
光焼結型組成物を基材に塗布する方法としては、光焼結型組成物の粘度、亜酸化銅粒子及び金属粒子の平均一次粒子径等に応じて適切な方法を選択すればよい。具体的な塗布方法としては、例えば、バーコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。塗膜の厚さは、目的とする導電膜の厚さに応じて適宜決定すればよいが、焼結性及び密着性の観点から、0.1μm~100μmであることが好ましい。塗膜の厚さが0.1μm未満であると、亜酸化銅粒子の焼結後の体積収縮に起因して連続した導電膜となりにくく、十分な導電性が得られない場合がある。一方、塗膜の厚さが100μm超であると、光照射エネルギーが塗膜の下部まで届かずに表層のみの焼結が起こり、導電膜が基材から剥がれ易くなる。
【0032】
本発明の導電膜の形成方法は、塗膜の形成後、塗膜を乾燥する工程を更に備えることが好ましい。塗膜中に残存する溶媒を乾燥により除去することで、後述する還元工程において、導電膜に欠陥が発生するのを低減することができる。塗膜の乾燥には、送風乾燥機、温風乾燥機等の公知の乾燥機を用いることができる。塗膜の乾燥条件は、通常、60℃~120℃で5分~60分である。
【0033】
塗膜中の亜酸化銅粒子を銅へ還元し、焼結させるには、公知の光照射装置を用いて塗膜に対して光を照射すればよい。光照射は、温度制御を容易に行うことができるという観点から、パルス光照射とすることが好ましい。パルス光照射としては、フラッシュランプによるパルス光照射が好ましく、キセノン(Xe)フラッシュランプによるパルス光照射がより好ましい。このようなパルス光照射を行うことのできる装置は、例えば、ゼノン・コーポレーション(Xenon Corporation)製のキセノンパルス光照射装置S-シリーズやNovacentrix社製の光焼成装置Pulse Forgeシリーズ等が挙げられる。特に、ゼノン・コーポレーション社製のS-2300は、1回のパルス光で電圧1/パルス幅1と単純なパルス光の設定ができる上、さらに1回のパルス光で電圧1/パルス幅1の後連続して電圧2/パルス幅2と設定できる機能を持つため、条件の異なる2ステップ以上の連続したパルス光照射が可能である。このように、ゼノン・コーポレーション社製のS-2300は、焼結のための照射エネルギーを調整することができるため、亜酸化銅の焼結に好適である。ステップ数は亜酸化銅を焼結させることができれば特に限定されるものではなく、複数のステップ数を設定してもよい。
【0034】
パルス光の照射エネルギー及びパルス幅は、亜酸化銅が銅に還元され焼結できるように、亜酸化銅粒子の平均一次粒子径、溶媒の種類及び濃度、塗膜の厚さ、添加剤の種類等に応じて、適宜選定することができる。具体的には、十分に焼結させ且つ基材へのダメージを軽減するという観点から、焼結のための累積パルス光照射エネルギーは、0.001J/cm~100J/cmであることが好ましく、0.01J/cm~30J/cmであることがより好ましい。累積パルス光照射エネルギーは、パルス幅との兼ね合いになるが、0.001J/cm未満であると、亜酸化銅粒子を十分に焼結させることができない場合があり、一方、100J/cm超であると、亜酸化銅粒子が飛散したり、基材へのダメージが大きくなる場合がある。パルス光のパルス幅は、十分に焼結させ且つ基材へのダメージを軽減するという観点から、1μ秒~100m秒であることが好ましく、10μ秒~10m秒であることがより好ましい。パルス幅は、照射エネルギーとの兼ね合いになるが、1μ秒未満であると、亜酸化銅粒子を十分に焼結させることができない場合があり、一方、100m秒超であると、亜酸化銅粒子が飛散したり、基材へのダメージが大きくなる場合がある。
【0035】
パルス光の照射回数は亜酸化銅を焼結させることができれば特に限定されるものではなく、同じ照射パターンを数回繰り返したり、様々な照射パターンを数回繰り返してもよい。生産性や基材へのダメージの観点から、5回以内の照射で焼結させることが好ましいが、基材の種類によってはこの限りでは無い。本発明の光焼結型組成物からなる塗膜は光を照射しても飛散しにくいため、パルス光の照射エネルギー及びパルス幅を調整することにより1回の照射で焼結させることもできる。
【0036】
また、パルス光照射を行う雰囲気は、特に限定されるものではなく、大気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、還元性ガス雰囲気下等のいずれであってもよい。
【実施例
【0037】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例5及び6は、参考例とする。
【0038】
<亜酸化銅粒子の作製>
500mLの反応容器に48質量%の水酸化ナトリウム水溶液25.0g及び純水100.0gを加え、反応容器内を撹拌しながら、反応容器内の温度を40℃に調整して、アルカリ溶液を調製した。
一方、100mLのガラスビーカーに塩化銅(II)二水和物17.3g(0.1モル)、純水80.0g及び2価のスズイオン源としての塩化スズ(II)二水和物0.45g(0.002モル)を加えて、銅イオンと2価のスズイオンとを含有する水溶液を調製した。反応容器内の温度を40℃に維持しつつ、銅イオンと2価のスズイオンとを含有する水溶液を、反応容器に約2分かけて添加した後、10分間攪拌し、水酸化銅を析出させた。
【0039】
100mLのガラスビーカーにグルコース10.0g及び純水15.0gを加えて、還元剤溶液を調製した。この還元剤溶液を、反応容器に約30秒かけて添加した後、反応容器内の温度を50℃まで昇温させ、15分間保持した。その後、反応容器内の攪拌を止め、スラリーを濾過し、洗浄することによりケーキを調製した。このケーキを80℃で3時間、真空乾燥して亜酸化銅粒子を得た。
【0040】
得られた亜酸化銅粒子の電子顕微鏡写真(SEM)で観察した像から亜酸化銅粒子の平均一次粒子径を求めたところ0.1μmであった。また、亜酸化銅粒子に含まれるスズの含有量は570ppmであった。
【0041】
<実施例1>
上記で得られた亜酸化銅粒子を用いて光焼結型組成物の調製及び導電膜の形成を行った。
具体的には、表1に示す配合割合で、亜酸化銅粒子、銅粒子、バインダー樹脂及び溶媒を、混練機を用いて大気圧下、30分間1,000rpmで混練してペースト状の光焼結型組成物を調製した。光焼結型組成物をポリイミド基材(東レ・デュポン株式会社製カプトン(登録商標)500H)上にスクリーン印刷により、1mm×20mmの長方形パターンを印刷し、厚さ4μmの塗膜を形成した。塗膜を大気雰囲気下、80℃で10分間乾燥させた。ポリイミド基材上に形成された塗膜に、キセノンパルス光照射装置(ゼノン・コーポレーション製S-2300)を用いてパルス光を1パルス照射(電圧:2,700V、パルス幅:2,500マイクロ秒)して導電膜を形成した。
低抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製ロレスタ(登録商標)-GPMCP-T600)を用いて室温における導電膜の体積抵抗率を測定した。また、形成された導電膜を目視で観察し、塗膜の飛散が見られず均一な導電膜が形成されているものを均一性「良好」と判断し、塗膜の飛散が見られるものを均一性「不良」と判断した。更に、形成された導電膜にテープを貼り付けた後、テープを剥離し、テープの粘着面に導電膜が付着しておらず且つポリイミド基材上に形成された導電膜がそのまま残存しているものを密着性「良好」と判断し、剥離したテープの粘着面に導電膜が付着しているものを密着性「不良」と判断した。結果を表2に示す。
【0042】
<実施例2>
表1に示すように光焼結型組成物の配合割合を変更したこと以外は実施例1と同様にして導電膜を形成した。導電膜の評価結果を表2に示す。
【0043】
<実施例3>
表1に示すように光焼結型組成物の配合割合を変更したこと以外は実施例1と同様にして導電膜を形成した。導電膜の評価結果を表2に示す。
【0044】
<実施例4>
表1に示すように光焼結型組成物の配合割合を変更したこと以外は実施例1と同様にして導電膜を形成した。導電膜の評価結果を表2に示す。
【0045】
<実施例5>
上記したスズ含有亜酸化銅粒子の作製において、塩化スズ(II)二水和物0.45g(0.002モル)の代わりに塩化セリウム(III)7水和物0.745g(0.002モル)を用いて亜酸化銅粒子を作製した。この亜酸化銅粒子の平均一次粒子径は270nmであり、セリウムの含有量は21000ppmであった。スズ含有亜酸化銅粒子の代わりにセリウム含有亜酸化銅粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして導電膜を形成した。導電膜の評価結果を表2に示す。
【0046】
<実施例6>
上記したスズ含有亜酸化銅粒子の作製において、塩化スズ(II)二水和物0.45g(0.002モル)の代わりに硫酸鉄(II)7水和物0.695g(0.0025モル)を用いて亜酸化銅粒子を作製した。この亜酸化銅粒子の平均一次粒子径は100nmであり、鉄の含有量は1380ppmであった。スズ含有亜酸化銅粒子の代わりに鉄含有亜酸化銅粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして導電膜を形成した。導電膜の評価結果を表2に示す。
【0047】
<比較例1>
表1に示すように光焼結型組成物の配合割合を変更したこと以外は実施例1と同様にして導電膜を形成した。導電膜の評価結果を表2に示す。
【0048】
<比較例2>
表1に示すように光焼結型組成物の配合割合を変更したこと以外は実施例1と同様にして導電膜を形成しようとしたところ、塗膜の飛散が生じた。
【0049】
【表1】
【0050】
表1中の成分の詳細は下記の通りである。
金属粒子:銅粒子(三井金属鉱業株式会社製1100YP、D50=1.2μm)
バインダー樹脂:アクリル樹脂(共栄社化学株式会社製オリコックスKC1100)
溶媒:α-,β-,γ-テルピネオールの異性体混合物
【0051】
【表2】
【0052】
表2の結果から分かるように、実施例1~6の光焼結型組成物から形成された導電膜は、体積抵抗率が低い上に、均一であり且つ基材との密着性に優れていた。一方、比較例1の光焼結型組成物から形成された導電膜は、体積抵抗率は低いものの、基材との密着性が低かった。また、比較例2の光焼結型組成物は、実施例1と同じ光照射条件では塗膜の飛散が生じたため、パルス幅を2,000マイクロ秒に変更してパルス光を1パルス照射したところ焼結が十分に進行しなかった。
図1
図2
図3
図4