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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ポリマーがいしの取付構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/00 20060101AFI20220705BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20220705BHJP
   H01B 17/06 20060101ALI20220705BHJP
   H01B 17/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G1/02
H01B17/06 A
H01B17/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018120222
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020005347
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391001538
【氏名又は名称】日本カタン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520242399
【氏名又は名称】九州電力送配電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】上村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】末本 健太郎
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-170663(JP,A)
【文献】特開2013-183517(JP,A)
【文献】特開平06-203672(JP,A)
【文献】特開平07-298466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
H02G 1/02
H01B 17/06
H01B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地線又は電力線等の線体を、鉄塔部分などの被取付体に対して張設状態や懸垂状態等で支持するための取付具に適用される取付構造であって、
前記取付具は、絶縁性合成樹脂素材で構成された芯材の回りに絶縁性ポリマーからなる大径部を設けたポリマーがいしと、前記ポリマーがいしの端部を収容し固着した端部金具と、前記被取付体に対して前記ポリマーがいしを少なくとも第1方向に回動可能にする回動機構と、前記ポリマーがいしに付属する外部機能材を取り付ける外部機能材取付部と、前記回動機構に連結される一体化物とを有し、
前記一体化物は前記端部金具と前記外部機能材取付部とを一体化したものであることを特徴とするポリマーがいしの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマーがいしの取付構造において、前記端部金具は凹部収容部を備え、前記凹部収容部内に前記ポリマーがいしの端部を挿入し、シリコンゴム等の固定剤で前記端部と前記凹部収容部の隙間を充填することで固定したポリマーがいしの取付構造。
【請求項3】
請求項1~請求項2のいずれか一つに記載のポリマーがいしの取付構造において、前記芯材の中心軸を延長した前記外部機能材取付部の位置に、前記第1方向の回動機構の回動中心を設けたポリマーがいしの取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載のポリマーがいしの取付構造において、前記取付具の前記被取付体側の位置に前記第1方向の回動機構と略直交する第2方向の回動機構を設けたポリマーがいしの取付構造。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一つに記載のポリマーがいしの取付構造において、前記外部機能材取付部は前記端部金具よりも前記被取付体側の位置に一体化されているポリマーがいしの取付構造。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一つに記載のポリマーがいしの取付構造において、前記外部機能材取付部にアークホーンを取り付けたポリマーがいしの取付構造。
【請求項7】
請求項2に記載のポリマーがいしの取付構造において、前記凹部収容部の開口とは反対側位置に前記外部機能材取付部を設け、前記一体化物の正面視の全体形状が略T字形であるポリマーがいしの取付構造。
【請求項8】
請求項1~請求項4のいずれか一つに記載のポリマーがいしの取付構造において、少なくとも前記第1方向の回動機構の回動中心を基準とした使用初期時位置のマーク部を前記外部機能材取付部に設けて、当該マーク部の経時的な変位によって摩耗量や交換時期を判別するポリマーがいしの取付構造。
【請求項9】
請求項8に記載のポリマーがいしの取付構造において、第2方向の回動機構の前記回動中心を基準とした前記取付具の所定箇所に使用初期時位置のマーク部を設けて、当該マーク部の経時的な変位によって摩耗量や交換時期を判別するポリマーがいしの取付構造。
【請求項10】
請求項8~請求項9のいずれか一つに記載のポリマーがいしの取付構造において、前記使用初期時位置のマーク部に加えて摩耗限界位置のマーク部を所定箇所に設けたポリマーがいしの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はがいしの取付構造に関し、特に絶縁ポリマーを利用したポリマーがいしの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
がいしは、架空送電線(以下、単に電線という)と鉄塔等の支持物の間を絶縁するために用いる器具である。特に懸垂がいしは、笠状の絶縁物を複数個(時には数十個)並べて使用されることが多い。
図7は本特許出願人が下記特許文献1において既に開示している磁器製懸垂がいしの一例を示す図である。
この磁器製懸垂がいし51は、地線又は電線を被取付体52に懸垂支持するための取付具53と、アークホーン67の取付部としての上部ホーン取付金具58と、6連の磁器製がいし連60と、下部ホーン取付金具62と、懸垂クランプ部64とを有している。
【0003】
取付具53は、例えば、地線又は電線の線方向と略平行な回動可能にする第1方向の回動機構70と、前記第1方向に略直交する方向、即ち、線方向と略直交する第2方向の回動機構72が設けられている。但し、どちらを第1方向、第2方向とするかは目的とするがいしの構成による。
上記磁器製懸垂がいし51は、取付具53を鉄塔等の被取付体52に固定するとともに、懸垂クランプ64のクランプ本体と押え金具とで地線(図示せず)を把持することにより、地線を被取付体52に懸垂支持する構成が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5852905号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成において磁器製がいし連60内の連結部は、電力系においては、図8に示すように、金属製ボールピン部78を磁器大径部上部79内に嵌め込んだ状態で、各大径部の揺動を可能にするボールソケット型のものが採用されことが多い。
しかし、このボールソケット型のがいしは、定期的点検・メンテナンス時にボールピン部において雨水による洗浄効果があまり期待できないことから、金属製ボールピン部78が部分的に腐食することが各地で報告されている。特に懸垂装置で多く発生している。
この腐食は、離島や海岸線に設けられた場合には、海水の塩分によって錆びの劣化が促進される問題もある。現在、ボールピン部78を亜鉛メッキすることで耐久性を向上することも行われているが、塩による悪影響は大きく、平地・山間部において通常50年程度安定して使用できるものが、海の近くでは10年程度の耐久性しか維持できないことが課題になっている。
【0006】
また、定期点検では活線ミラーなどを活用してボールピン部78の状態を確認しており、保守上においても相当な手間と労力を要している。
さらに、塩害だけでなく、雨量の多い地域や降雪量の多い環境でも金属製ボールピン部78は水分付着による錆劣化にさらされることになることは変わらない。このような現状から、がいし性能を長期間に亘って維持できるとともに、点検時や交換時の作業者の負担を軽減できる新規ながいしの提供が望まれているのである。
本発明の目的は、上記従来技術の各課題を解決することができるポリマーがいしの取付構造を提供することにある。
また、上記に記載した以外の発明の課題、その解決手段及びその効果は、後述する明細書内の記載において詳しく説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るポリマーがいしの取付構造は、地線又は電力線等の線体を、鉄塔部分などの被取付体に対して張設状態や懸垂状態等で支持するための取付具に適用される取付構造であって、
前記取付具は、絶縁性合成樹脂素材で構成された芯材の回りに絶縁性ポリマーからなる大径部を設けたポリマーがいしと、前記ポリマーがいしの端部を収容し固着した端部金具と、前記被取付体に対して前記ポリマーがいしを少なくとも第1方向に回動可能にする回動機構と、前記ポリマーがいしに付属する外部機能材を取り付ける外部機能材取付部と、前記回動機構に連結される一体化物とを有し、
前記一体化物は前記端部金具と前記外部機能材取付部とを一体化したものであることを特徴とする。
【0008】
この構成であれば、絶縁性合成樹脂素材で構成された芯材の回りに絶縁性ポリマーからなる大径部を設けたポリマーがいしで構成してあるので、ポリマーがいしの端部を収容し固着した端部金具と、ホーンなどの外部機能材の取付部を一体化しても、主に芯材の可撓性と柔軟性によって多少の揺れに対しても抵抗力があるとともに塩害や錆びに耐久性のある部材なので、破損することなく、過酷な環境でも長期間安定して使用できるがいしの取付構造を提供できる。
また、一体化物を使用しているので、金具点数を減らして簡素化でき、低コスト化できる。さらに、ポリマーがいしを採用すると全長が長くなってしまう傾向があるが、ポリマーがいしを採用しても現在使用されている磁器製懸垂がいしと同等の各種耐電圧を得るための全長も従来品と同じ程度に短くでき、実用性が高い製品を提供できる利点も得られる。
【0009】
本発明に係る他の形態では、前記端部金具は凹部収容部を備え、前記凹部収容部内に前記ポリマーがいしの端部を挿入し、シリコンゴム等の固定剤で前記端部と前記凹部収容部の隙間を充填することで固定することもできる。
この構成であれば、磁器製がいしのように、ひび割れ、錆の発生の起こりにくい耐久性のあるポリマーを使用し、かつ、ポリマーがいしの端部を端部金具にしっかり固着できるので、磁器製の端部金具のようにセメント等で固める構成に比べて耐久性を著しく向上することができる。
【0010】
本発明に係る他の形態では、前記芯材の中心軸を延長した前記外部機能材取付部の位置に、前記第1方向の回動機構の回動中心を設けることもできる。
この構成であれば、ポリマーがいしの芯材の端部において回動する構成を確保できる。また、耐久性のある端部金具と一体化された外部機能材取付部の存在により、回動する動作を長期に亘って繰り返しても、耐久性を維持できる。
本発明に係る他の形態では、前記取付具の前記被取付体側の位置に前記第1方向と略直交する第2方向の回動機構を設けることもできる。
この構成であれば、取付具は、ポリマーがいしに対して2方向の回動方向を持った状態で支持できるので、突風や豪雪などの厳しい環境下でも耐久性を維持することができる。
【0011】
本発明に係る他の形態では、前記外部機能材取付部は前記端部金具よりも前記被取付体側の位置に一体化されているように構成することもできる。
この構成であれば、端部金具よりも外部機能材取付部は被取付体側にあることになるので、回動機構を備えた外部機能材取付部を構成しやすくなる。
本発明に係る他の形態では、前記外部機能材取付部にアークホーンを取り付けることもできる。
【0012】
本発明に係る他の形態では、前記凹部収容部の開口とは反対側位置に前記外部機能材取付部を設け、前記一体化物の正面視の全体形状が略T字形であるように構成することもできる。
この構成であれば、略T字形なので左右対称形に外部機能材を取り付けやすい。また、端部金具から離れた位置に外部機能材を取り付けることが可能になるのでがいしとの干渉を抑制することができる。
本発明に係る他の形態では、少なくとも前記第1方向の回動機構の前記回動中心を基準とした使用初期時位置のマーク部を前記外部機能材取付部に設けて、当該マーク部の経時的な変位によって摩耗量や交換時期を判別するように構成することもできる。
この構成であれば、最も力が係りやすい第1方向の回動機構の回動中心を基準とした使用初期時位置のマーク部を設けることで、点検時にポリマーがいしの摩耗状態を的確に判断できる。
【0013】
本発明に係る他の形態では、前記第2方向の回動機構の前記回動中心を基準とした前記取付具の所定箇所に使用初期時位置のマーク部を設けて、当該マーク部の経時的な変位によって摩耗量や交換時期を判別するように構成することもできる。
本発明に係る他の形態では、上記各構成において、前記使用初期時位置のマーク部に加えて摩耗限界位置のマーク部を所定箇所に設けることもできる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明であれば、磁器製がいしの耐久性がないという課題を解決したとともに、既存の磁器製がいしが採用されている現場において、全長やがいし性能の点において、簡単にポリマーがいしに代替できる実用的なポリマーがいしの取付構造を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態を示す図であり、ポリマーがいしの取付構造を備えたポリマー懸垂がいしの正面図とその要部拡大図である。
図2a】第1実施形態に係る一体化物の正面図の一例である。
図2b】第1実施形態に係る一体化物の側面図の一例である。
図3】端部金具の凹部収容部内にポリマーがいしの端部を挿入し、シリコンゴム等の固定剤で端部と凹部収容部の隙間を充填する固定方法を説明する図である。
図4】第2実施形態を示す図であり、ポリマーがいしの取付構造を備えたポリマー懸垂がいしの正面図とその要部拡大図である。
図5図2aに係る一体化物を第2実施形態に適用した場合の要部を示す図である。
図6】クレビス部を有する一体化物を第2実施形態に適用した場合の要部を示す図である。
図7】従来のアークホーンを装着した磁器製懸垂がいしの一例を示す正面図とその要部の拡大図である。
図8】従来の磁器製がいしのボールソケット部分の部分縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1図3は本発明の第1実施形態に係るポリマーがいしの取付構造を説明するための図である。
以下、ホリマーがいしの例として、ポリマー懸垂がいし1を例にとり説明する。ポリマー懸垂がいし1は、地線又は電線等を被取付体2に懸垂支持するための取付具3と、取付具3に支持された一体化物9とを有している。一体化物9は、外部機能取付部8とポリマーがいし6の端部金具7を一体化した部材である。
なお、本実施形態では、ポリマーがいし連21と、懸垂クランプ部22と、アークホーン17を上下に備えた構成にしてある。
【0017】
(第2方向の回動機構16)
取付具3は、鉄塔等の被取付体2の下面に固定される取付座24と、取付座24に回動可能に連結された直角クレビスリンク25を有している。
取付座24は、略中心部に孔(図示しない)が設けられた略方形としてある。図1においては下面側から一対の軸受部26、26が下方に延びて形成してある。一対の軸受部26、26には横方向に支軸挿通用の孔が設けられており、それらの軸受部26、26の間に直角クレビスリンク25のリンク部25aを位置させて、支軸であるボルト27を挿通させてナット28を螺合することで、直角クレビスリンク25を回動可能に構成してある。この回動機構が前記した第2方向の回動機構となる。
なお、この回動機構は、一対の軸受部26、26が地線(図示しない)の線方向と略平行に並設されているので、直角クレビスリンク25は、地線の線方向に対して略直交する方向に回動することになる。
また、取付座24は、被取付体2に予め設けられている孔と、取付座24の四隅に設けられている孔とをボルト29とナット30を螺合することによって、被取付体2の下面側に固定してある。
【0018】
(第1方向の回動機構12)
直角クレビスリンク25の下側に設けられたクレビス部25bに孔を設け、その孔と外部機能取付部8の中心孔31(図2a参照)とを一致させ、支軸としてのボルトを挿通してナット32で螺合することで、第1方向の回動機構12を構成してある。この回動機構12の回動方向は、直角クレビスリンク25の回動方向とは略直交する方向なので、地線の線方向に略平行な方向に回動可能になる。
なお、上記各回動機構14・12は一例として示したものであり、適宜、その他の構成の回動機構を採用することも可能である。
【0019】
(端部金具7とポリマーがいし6)
図3に示すように端部金具7は、ポリマーがいし端部6a(以下、ポリマー端部6aと称する)を挿入する凹部収容部10を有する容器としてある。
また、凹部収容部10の開口に連接して皿形縁部34が設けられ、開口から挿入されたポリマー端部6aと凹部収容部10の隙間にシリコンゴム等の固定剤11を流し込みシーリングする構成としてある。
この構成によって、機械的ストレス、塩が付着すること、水分が入り込んだ状態で凍結することによって破損することを強力に抑制することができる。
特に、外部機能材取付部8と一体化された端部金具7の上部、側面等には外部機能材8に係る大きな力や、風、雨による振動等の不規則な力が係ることが多いので、一体化物9の端部金具7において上記固定剤11によってシーリングを行うことは破損防止に対して大きな抑制効果を有する。
【0020】
(端部金具7と外部機能材取付部8との一体化)
外部機能材取付部8は、取付具3に設けられる部材の一つであり、ポリマーがいしから所定距離を保って干渉しない状態で必要な外部機能材を取り付ける部具である。
この外部機能材の取付具3に対する取付形態は、
(第1形態)ポリマーがいし6の回動動作とは独立して取付具3に取り付けられる構成
(第2形態)ポリマーがいし6の回動動作と共に回動する形態で取付具3に取り付けられる構成
の2種類が考えられる。図1及び図4に示す構成では、(第2形態)の構成であり、外部機能材はポリマーがいし6と共に回動中心12a回りに回動する構成を採用している。
図2a、図2bに示す構成では、一体化物9は、外観で円柱形で示される端部金具7の上部に菱形の板形物を固着したような構成になっている。菱形の板形物の中心には中心孔31が形成されるとともにボルト孔43,43が外部機能材用に形成してある。
また、端部金具と外部機能材取付部の一体化する製造方法は所定強度と耐久性が満足されれば特に限定されない。
【0021】
本実施形態では、一体化物9とすることで、がいしの目的や用途に応じて、端部金具7と外部機能材取付部8の全体形状を総合的に設計することができる。このことは、図3に示すような外観上において円柱形のような一般的な端部金具7の形状を大きく離れて、前記した一体化物9を全体形状を略T字形にする構成以外にもY字形など、がいしの目的と構成に応じて外部機能材を好ましい位置や状態で取付具3に設けることが可能になることを意味する。
【0022】
(ポリマーがいし特有の芯材の湾曲と耐久性の関係)
なお、図5及び図6に示すように、ポリマーがいし6の大径部14の複数連結型において、θは、がいし芯材13(図3参照)との揺れ幅を角度θで示したものでポリマーがいし6自体は合成樹脂製であるから、芯材13と大径部14の組合せ自体が有する可撓性と柔軟性によってかなり大きく揺れることができて、磁器製がいしの多連型に比べて、回動自在に構成された前記ボールピン部等において局部的に錆び等によって大きな力がかかり破損する危険性は低くなる。
また、逆に言うと、芯材13と大径部14の組合せ自体が有する可撓性と柔軟性を耐久性維持に生かすためにも端部金具7内においてポリマー端部がしっかり固着されることが必要になるのである。
なお、図5に示す構成は、後述する第2実施形態のように1つの方向のみに回動できる構成(第2方向の回動機構16のみ)であり、その回動機構16があるので、図5において線部と略直交する方向にはポリマーがいし6はそれほど変形しない。一方、線部方向に変動させるような強風が吹いた場合にはポリマーがいし6はθで示すように大きく曲がることになる。
【0023】
(点検時に摩耗、損傷程度を変わりやすくする工夫)
図2aに示したように、回動機構の主に回動連結部、例えば中心孔31、外部機能取付部8、クレビス部など)が摩耗、錆びによる劣化等の原因によって変位した場合に、その変位量が分かるように使用初期時位置のマーク部18を外部機能取付部8に設けている。外部機能取付部8は図2bに示すように平板で構成されることが多く、常に大きな力がかかり、摩耗による変位が大きく出やすい部材なので好ましいと言える。
図1に示されるマーク部18はペンキ等の塗料によって描かれた横線や、横刻線、横突出線などの手段によって、使用開始時の位置状態を示すようにしてある。また、摩耗限界位置のマーク部19を設けてもよい。図1ではクレビス部25bによって隠れた位置にある点線19で示してある。この場合は、2つの横線が設けられることになる。
また、回動中心12aの下側近くにマーク部18を設けているので、変位量が大きくなりやすいとともに点検時に回動中心近くの異常も自然に目につくので好ましいと言える。
このように、使用初期時の位置がずれて変位する長さによって、ポリマーがいしの初期状態からの劣化状態を把握することができる。なお、マーク部18、19には、横線だけでなく、長さ領域毎の色分けや、格子紋、亀甲紋などの各種2次元模様形状が崩れた面状態を交換の目安とする形態も含まれる。
【0024】
[第2実施形態]
図4に示す構成の第2実施形態の特徴は、被取付体2と平行に回動する第1方向の回動機構12を省略し、第2方向の回動機構16だけを設けた構成である。
この構成では、図5にも示すように、被取付体2を受け止める取付座24に直接、第2方向の回動機構16用のクレビス部36,36が取り付けられ、回動自在に支持される。
一方、図6に示されるように構成では、一体化物9側からクレビス部42を上方に向かって延出させ、取付座24から垂下されたリンク部41とで回動自在に支持されている。なお、図5及び図6において、符号38はボルト、符号39はナットであり、一体化物9を回動させる。
また、この構成では、第1方向の回動機構12が省略されているので、ポリマー懸垂がいしの全長を短く設定できるとともに、構成が簡単で部品数も少なくできるのでコストを低減できる。
しかし、雨風によるポリマーがいしの回動を前記第2方向の回動機構の回動のみに構成されているので、ポリマーの優れた可撓性と弾力性に頼る構成になる。そこで前記した摩耗、錆びによる劣化等の原因によって変位した場合に、その変位量が分かるように使用初期時位置のマーク部18を設けることが第1実施形態よりも望まれることになる。また、摩耗限界位置のマーク部19の必要性も第1実施形態よりも必要になる場合が多いと考えられる。
【0025】
以下、上記各実施形態の他の利点について説明する。
[第1実施形態構成及び第2実施形態構成が有するその他の利点]
(ポリマーがいしの優れている点)
一般にポリマーがいしが磁器製がいしに比べて優れている点としては各点が挙げられる。
●磁器がいしに比べて軽量で割れにくい特長がある。軽量で割れないという構成は山の尾根や頂上部に設けられる鉄塔等の作業者の負担を大きく減らすことができるということである。
●ポリマーがいしは磁器がいしに比べて水を弾く性能を得やすいので笠状の絶縁体が汚れにくく、所定期間内のがいし洗浄回数を減らすことができる特長がある。
【0026】
(ポリマーがいしを具体的に懸垂装置として採用する際の課題)
●ポリマーがいしの雷インパルス性能は磁器製かいしよりも若干劣るので磁器製懸垂がいしよりもがいし連長が長くなる(大径部の数が多くなる)課題がある。
●がいし連長が長くなると、現実の鉄塔に既に使用されている磁器製懸垂がいしに交換する形で、ポリマー懸垂がいしを採用しようとすると、長さの違いによって、細かな調整が必要になる、又は、既存の鉄塔とのクリアランスの確保が難しくなるという課題も生じていた。
【0027】
本実施形態は、前記従来技術の課題で説明したボールソケット型などの左右の回動可能性を備えた磁器製懸垂がいしの塩害、腐蝕に弱く海岸線に設置される磁器製がいしの耐久寿命が著しく短く、かつ交換作業が大変になるという根本課題を解決しつつ、既に設置された磁器製懸垂がいしの交換を円滑に行うという実用的課題も一緒に解決できる顕著な効果を有している。
図7に示す従来の6連の磁器製懸垂がいしと、図1に示す第1実施形態のポリマー懸垂がいしと、図4に示す第2実施形態のポリマー懸垂がいしの構成内容と、がいし性能の比較を示した表を以下に記載する。
【0028】
【表1】

上記表1は、がいし性能を
1.コンパクト化の程度である装置全長
2.雷IMP耐電圧、注水耐電圧というがいし本来の電気性能
3.施工性
4.製造に必要とする金具の数の面でのコストの低減程度
の各点から評価している。
【0029】
注目すべきは、全長が第1実施形態品、第2実施形態品が図7に示す従来品よりも同等程度か、短くなっており、なおかつ各耐電圧の性能が向上している点である。
これにより、既に設置された磁器製懸垂がいしの交換を円滑に行うという実用的課題も一緒に解決した新規有用なポリマーがいしを提供することができたことになる。
また、ポリマーがいし自体の価格は磁器がいしに比べて高価であるが、本実施形態品は金具数が少なくなっており、コストを低減できるともに重量が図7に示す従来品は例えば40kg、本実施形態品は例えば10kgというように大幅に軽くなっており、施工時、交換時、点検時に作業者の負担は大幅に低減できる。
また、ポリマーがいしのポリマー自体の可撓性、柔軟性を利用して、線路方向と直交する方向のみを回動可能とした構成では、前記したマーク部を設けたことで、性能劣化、又は破損の前兆をいち早く検出することで十分対応できるものである。
【0030】
本発明は上記実施形態以外にも本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形を行うことが可能である。
(1)前記実施形態では外部機能材としてアークホーンを採用した場合を示したが、他の外部機能材としては、避雷器、ジャンパー補強金具などが例示できる。
(2)また、端部金具の製造法としては鍛造品、鋳造品など所定の強度を満足する製造品であれば、同じように採用することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
2…被取付体
3…取付具
6…ポリマーがいし
6a…ポリマーがいしの端部
7…端部金具
8…外部機能材取付部
9…一体化物
10…凹部収容部
11…固定剤
12…第1方向の回動機構
12a…第1方向の回動機構の回動中心
13…芯材
13a…芯材の中心軸
14…大径部
16…第2方向の回動機構
16a…第2方向の回動機構の回動中心
17…アークホーン
18…使用初期時位置のマーク部
19…摩耗限界位置のマーク部
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8