(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】蓄熱システム
(51)【国際特許分類】
F28D 20/02 20060101AFI20220705BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20220705BHJP
F24D 11/00 20220101ALI20220705BHJP
F24D 15/02 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
F28D20/02 D
E04B1/76 200Z
F24D11/00 Z
F24D15/02 G
(21)【出願番号】P 2018122369
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴雄
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-093839(JP,U)
【文献】特開平11-159806(JP,A)
【文献】特開平10-082109(JP,A)
【文献】特開昭62-052348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00 - 20/02
F24D 5/00 - 15/04
E04B 1/62 - 1/99
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空気を吸入する吸入口と、前記吸入口から吸入された空気が流れる流路と、前記流路に流れた空気を前記室内に排出する排出口と、を備え、前記室内に配置された梁部材と、
前記流路に配置された潜熱蓄熱材と、
前記吸入口から前記排出口まで、前記流路に沿って、空気を流す送風器と、
前記潜熱蓄熱材の温度を測定する第1温度センサと、
前記送風器を制御する制御装置と、を備えており、
前記制御装置は、前記第1温度センサで測定された第1測定温度が、前記潜熱蓄熱材の相変化温度以上となる期間内のいずれかの時点において、前記送風器の稼働を開始させ
ており、
前記梁部材は、前記室内を形成する壁同士の間をわたすように配置されており、
前記流路は、前記梁部材の長手方向に沿って形成されており、
前記吸入口は、前記梁部材の両側に、一対の吸入口として形成されており、
前記排出口は、前記梁部材の中央に形成されており、
前記潜熱蓄熱材は、前記梁部材に形成された前記流路の壁面に沿って配置されており、
前記排出口に、前記送風器が配置されていることを特徴とする記載の蓄熱システム。
【請求項2】
前記蓄熱システムは、前記梁部材の外部の室内の温度を測定する第2温度センサをさらに備えており、
前記第1測定温度が、前記潜熱蓄熱材の相変化温度以上であり、かつ、前記第2温度センサで測定された第2測定温度が、前記潜熱蓄熱材の相変化温度未満となる期間内のいずれかの時点において、前記制御装置は、前記送風器の稼働を開始させることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項3】
前記吸入口と前記排出口とは、下方に向かって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱システム。
【請求項4】
前記第1温度センサは、前記潜熱蓄熱材の内部の温度を測定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
【請求項5】
前記第1温度センサは、前記排出口の近傍に配置されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の熱を蓄熱する潜熱蓄熱材を備えた蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、床材、壁材、または天井材の技術分野において、室内暖房時に発生する熱エネルギや、太陽光などの自然エネルギをより有効に活用するような研究・開発が盛んに取り組まれており、これらの研究・開発に基づいた省エネおよびエコ対策が講じられている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、潜熱蓄熱材と、潜熱蓄熱材を裏面に収納する収納凹部が形成された壁用基材と、潜熱蓄熱材を前記収納凹部に封止するように収納凹部の開口部を覆う裏面材と、を少なくとも備えた蓄熱壁パネルが提案されている。このような蓄熱壁パネルは、室内に配置される。室内が相変化温度以上となったときに、室内の熱が、潜熱蓄熱材に蓄熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、室内の空間において、蓄熱壁パネルが配置された近傍の熱が、潜熱蓄熱材に蓄熱されるが、その後、蓄熱された熱は、潜熱蓄熱材の周りに放熱され、室内全体に放熱された熱が伝わり難い。
【0006】
このような点を鑑みると、例えば、室内にシーリングファンおよびサーキュレータなど送風器を別途設けて、室内で空気を循環させて、放熱した熱を室内に拡散させることも考えられる。しかしながら、このような送風器を設けたとしても、少なくとも、潜熱蓄熱材から熱を放熱すべきタイミングで、送風器が稼働していなければならず、このような条件を満たさない場合には、潜熱蓄熱材から放熱された熱が室内に効率的に拡散することができないことが想定される。
【0007】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、潜熱蓄熱材から放熱された熱を室内に効率的に拡散することができる蓄熱システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を鑑みて、本発明による蓄熱システムは、室内の空気を吸入する吸入口と、前記吸入口から吸入された空気が流れる流路と、前記流路に流れた空気を前記室内に排出する排出口と、を備え、前記室内に配置された梁部材と、前記流路に配置された潜熱蓄熱材と、前記吸入口から前記排出口まで、前記流路に沿って、空気を流す送風器と、前記潜熱蓄熱材の温度を測定する第1温度センサと、前記送風器を制御する制御装置と、を備えており、前記制御装置は、前記第1温度センサで測定された第1測定温度が、前記潜熱蓄熱材の相変化温度以上となる期間内のいずれかの時点において、前記送風器の稼働を開始させることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、潜熱蓄熱材の温度である第1測定温度が、潜熱蓄熱材の相変化温度以上である場合には、潜熱蓄熱材に熱が蓄熱されているため、制御装置により送風器の稼働を開始する。これにより、蓄熱した熱を、流路を流れる空気に吸熱させて、この空気を室内に排出口から空気と共に室内に放出することができる。これにより、潜熱蓄熱材からの熱を室内に効率的に放熱することができる。
【0010】
なお、仮に、室内の温度が、潜熱蓄熱材の温度よりも高い場合であっても、第1測定温度が、潜熱蓄熱材の相変化温度以上の条件で、送風器の稼働を開始しておけば、その後、室内の温度が潜熱蓄熱材の温度よりも低い温度に変化することがあるので、この状態で、流路に流れる空気に潜熱蓄熱材の熱を吸熱させ、これを室内に放出することができる。
【0011】
より好ましい態様としては、前記蓄熱システムは、前記梁部材の外部の室内の温度を測定する第2温度センサをさらに備えており、前記第1測定温度が、前記潜熱蓄熱材の相変化温度以上であり、かつ、前記第2温度センサで測定された第2測定温度が、前記潜熱蓄熱材の相変化温度未満となる期間内のいずれかの時点において、前記制御装置は、前記送風器の稼働を開始させる。
【0012】
この態様によれば、潜熱蓄熱材の温度である第1測定温度が、潜熱蓄熱材の相変化温度以上であり、室内の温度である第2測定温度が、相変化温度以上である場合には、吸入口から吸入し、流路に流す空気が、相変化温度以上である可能性が高い。この場合には、この空気に、潜熱蓄熱材の熱が吸熱され難いため、送風器の稼働は開始させず、送風器は、停止した状態にある。
【0013】
一方、潜熱蓄熱材の温度である第1測定温度が、潜熱蓄熱材の相変化温度以上であり、室内の温度である第2測定温度が、相変化温度未満となる期間では、吸入口から吸入し、流路に流す空気が、相変化温度未満である可能性が高い。この場合には、制御装置で送風器を稼働させ、送風器により吸入口から室内の空気を吸入し、流路を流れる空気に潜熱蓄熱材の熱を吸熱させることができ、この熱を空気と共に排出口から室内に放出することができる。このようにして、最適なタイミングで、送風器の稼働を制御し、潜熱蓄熱材と流路を流れる空気との熱交換の効率を高めることができる。
【0014】
ここで、梁部材に形成された吸入口と排出口とは、室内の空気の吸入と室内への空気の排出ができれば、特にこれらの位置は限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記吸入口と前記排出口とは、下方に向かって形成されている。この態様によれば、吸入口と排出口とを、下方に向かって形成している(すなわち開口している)ので、梁部材の下方にある冷気を、吸入口で効率的に吸い込み、潜熱蓄熱材の熱を吸熱した空気を排出口から放出することができる。これにより、室内の温度を効率的に昇温することができる。
【0015】
ここで、第1温度センサが、潜熱蓄熱材の温度を測定することができるのであれば、第1温度測定センサの測定位置は特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記第1温度センサは、前記潜熱蓄熱材の内部の温度を測定する。
【0016】
この態様によれば、第1温度センサが、第1測定温度として、潜熱蓄熱材の内部の温度を測定するので、潜熱蓄熱材の蓄熱状態をより正確に特定し、適切な期間および時点において、送風器を稼働させることができる。
【0017】
上述した如く、第1温度センサが、潜熱蓄熱材の温度を測定することができるのであれば、第1温度センサの配置位置は特に限定されるものではない。しかしながら、さらに好ましい態様としては、前記第1温度センサは、前記排出口の近傍に配置されている。
【0018】
この態様によれば、流路の上流側から順に潜熱蓄熱材の熱が、流路を流れる空気に吸熱されるため、排出口の近傍の潜熱蓄熱材の熱は、吸熱され難く残存しやすい。このため、排出口の近傍の潜熱蓄熱材の温度を測定することにより、流路に配置された全体の潜熱蓄熱材の熱を効果的に放熱することができる。
【0019】
ここで、吸入口から吸入された空気が接触し、さらに、接触した空気が排出口から排出されるのであれば、潜熱蓄熱材の配置状態は特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記潜熱蓄熱材は、前記梁部材に形成された前記流路の壁面に沿って配置されている。
【0020】
この態様によれば、潜熱蓄熱材を、梁部材の流路の壁面に沿って配置することにより、流路を流れる空気に効率良く潜熱蓄熱材の熱を吸熱させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、潜熱蓄熱材から放熱された熱を室内に効率的に拡散することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る蓄熱システムの模式的斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1に示す蓄熱システムの梁部材を壁面に取り付けた状態の模式的断面図であり、(b)は、(a)のA-A線の矢視に沿った模式的断面図である。
【
図3】
図2(a)に示す蓄熱システムの制御装置のブロック図である。
【
図4】
図3に示す制御装置の制御を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】
図4の変形例に係る制御装置の制御を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態に係る蓄熱システムを、
図1~5を参照しながら、説明する。
【0024】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の実施形態に係る蓄熱システム1の模式的斜視図である。
図2(a)は、
図1に示す蓄熱システム1の梁部材を壁面に取り付けた状態の模式的断面図であり、
図2(b)は、(a)のA-A線の矢視に沿った模式的断面図である。
図3は、
図2(a)に示す蓄熱システム1の制御装置8のブロック図である。
【0025】
1.蓄熱システム1について
図1に示すように、本実施形態に係る蓄熱システム1は、室内Rの空気を取り込んで、室内の熱を蓄熱し、一旦蓄熱した熱を、室内Rに放熱するシステムである。蓄熱システム1は、梁部材4と、潜熱蓄熱材3と、送風器5と、第1および第2温度センサ6,7と、制御装置8とを備えている。なお、本実施形態では、第2温度センサ7を備えているが、後述する
図4に示す制御を行う場合には、蓄熱システム1は、第2温度センサ7を必ずしも備えなくてもよい。
【0026】
2.梁部材4について
図1に示すように、梁部材4は、対向する壁面W,W同士の間に形成された空間Sに潜熱蓄熱材3が配置されるように、壁面W、W同士の間にわたされている。取付け部材9は、梁部材4の両側の各端部4aにおいて、長尺状の梁部材4を支持するように、壁面W,Wに取付けられている。なお、
図1に示すように、本実施形態では、対向する壁面W,Wの間をわたすように、取付け部材9,9を介して、梁部材4を、壁面W,Wに取付けたが、例えば、隣接する壁面W,Wの間をわたすように、取付け部材9,9を介して、梁部材4を壁面W,Wに取り付けてもよい。
【0027】
梁部材4は、木質系材料、樹脂材料、または金属材料からなり、梁部材4の表面には、化粧材等が配置されていてもよく、その表面に、印刷等により模様が付されていてもよい。
図2(a)に示すように、梁部材4は、室内Rに配置されており、室内Rの空気を吸入する2つの吸入口41,41と、各吸入口41から吸入された空気が流れる流路42と、各流路42に流れた空気を室内Rに排出する排出口43と、を備えている。
【0028】
より具体的には、梁部材4は、壁面W,Wの距離に相当する長さを有しており、梁部材4は、長手方向と直交する断面がコの字状の梁本体(チャンネル)45と、梁本体45の開口を上方から覆う蓋体46と、を備えている。梁本体45を蓋体46で覆うことにより、梁部材4の内部には、上述した流路42が形成されている。
【0029】
本実施形態では、梁本体45の底部45aに、一対の吸入口41,41と、排出口43とが形成されている。これにより、吸入口41,41と排出口43とが、下方(室内Rの床側)に向かって形成される(開口している)。このような結果、梁部材4の下方にある冷気を、吸入口41で効率的に吸い込み、後述する潜熱蓄熱材3の熱を吸熱した空気を、排出口43から下方に放出することができる。これにより、室内Rの温度を効率的に昇温することができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、一対の吸入口41,41は、梁部材4の両側に形成されており、排出口43は、梁部材4の中央に形成されている。これにより、室内Rの壁面Wの近傍の空気を吸入口41から吸入し、室内Rの中央に、潜熱蓄熱材3の熱を吸熱した空気を、排出口43から放出することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、排出口43を、梁部材4の中央に1つ形成したが、例えば、一対の吸入口41,41の間に、排出口43を複数形成してもよい。また、例えば、梁部材4の一方側の端部4aの近傍に吸入口41を形成し、梁部材4の他方側の端部4aの近傍に排出口43を形成してもよい。
【0032】
この他にも、梁部材4の中央に少なくとも1つの吸入口41を形成し、梁部材4の両側に、一対の排出口43,43を形成してもよい。このように構成することにより、室内Rの壁面Wの近傍に、潜熱蓄熱材3の熱を吸熱した空気を放出することができるため、壁面Wの表面温度を昇温することができる。
【0033】
3.潜熱蓄熱材3について
図2(a)に示すように、潜熱蓄熱材3は、梁部材4の流路42に配置されている。具体的には、潜熱蓄熱材3は、少なくとも、各吸入口41から排出口43までにわたって、コの字状の梁本体45の内壁面(すなわち、流路42を形成する壁面)に沿って配置されている。なお、本実施形態は、蓋体46の表面のうち、流路42に面した壁面に、潜熱蓄熱材が配置されていないが、この壁面に沿って潜熱蓄熱材がさらに配置されていてもよい。
【0034】
梁部材4の流路42内において、潜熱蓄熱材3の一部が漏洩しないのであれば、潜熱蓄熱材3の態様は特に限定されるものではない。潜熱蓄熱材3は、例えば、両端が封止されたチューブ状の容体に潜熱蓄熱材を収容したものでもよく、相変化温度以上でゲル状となる潜熱蓄熱材となるものでもよく、木材や多孔質材などの基材に、このゲル状となる潜熱蓄熱材が含浸されていてもよい。
【0035】
潜熱蓄熱材3の材料としては、流路42を流れる空気の熱を蓄熱することができるのであれば、特にその材料は限定されるものではない。潜熱蓄熱材3の液相から固相への相変化温度は、18~30℃であることが好ましく、ゲル状の潜熱蓄熱材を用いた場合には、80℃以上の耐熱性を有することが好ましい。
【0036】
このような潜熱蓄熱材3の材料としては、たとえば、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-ナノデカン等及びこれらの混合物で構成されるn-パラフィンやパラフィンワックス等の脂肪族炭化水素、オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等及びこれらの混合物で構成される長鎖脂肪酸、上記脂肪酸のエステルやポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物、硫酸ナトリウム水和物、塩化カルシウム水和物等を挙げることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、連続した1つの潜熱蓄熱材3を、流路42に配置したが、例えば、梁部材4の長手方向に沿って、断続的に、複数の潜熱蓄熱材3を配置してもよい。この場合、複数の潜熱蓄熱材3を等間隔に配置してもよい。
【0038】
本実施形態では、潜熱蓄熱材3は、梁本体45の内壁に沿って配置された第1蓄熱材31と、第1蓄熱材31の上に配置された第2蓄熱材32により構成されており、第1蓄熱材31と第2蓄熱材32との間には、第1温度センサ6が配置されている。
【0039】
このように構成することにより、第1温度センサ6により、潜熱蓄熱材3の内部の温度を測定することができる。これにより、第1温度センサ6が、潜熱蓄熱材3の内部の温度を測定するので、潜熱蓄熱材3の表面の温度を測定した場合に比べて、潜熱蓄熱材3の蓄熱状態をより正確に特定することができる。
【0040】
4.送風器5について
蓄熱システム1は、上述したように、吸入口41から排出口43まで、流路42に沿って、空気を流す送風器5を備えている。送風器5は、例えばシロッコファンなどの小型ファンであり、排出口43を覆うように、流路42側に配置されている。送風器5は、制御装置8に電気的に接続されており、制御装置8からの制御信号により、稼働および稼働停止する。
【0041】
送風器5の稼働時には、送風器5は、流路42内の空気を吸い込み、吸込んだ空気を、排出口43から排出する。これに伴い、流路42内において、各吸入口41から送風器5に向かって気流が発生し、この結果、吸入口41から流路42内に、室内Rの空気が吸入される。
【0042】
ここで、排出口43を流れる空気は、すでにその上流側において、潜熱蓄熱材3により熱交換が行われているため、下流側にある排出口43の近傍に配置された潜熱蓄熱材3による熱交換の効率は低いところ、本実施形態では、排出口43に送風器5を配置したので、排出口43近傍の潜熱蓄熱材3を通過する空気の流速を高めることができるため、これにより、排出口43近傍の潜熱蓄熱材3に、より多い量の空気を晒し、潜熱蓄熱材3の熱交換の効率を高めることができる。
【0043】
本実施形態では、排出口43を覆うように流路42側に送風器5を配置したが、送風器5により、吸入口41から室内Rの空気を吸入し、流路42を通過した空気を、排出口43から排出することができるのであれば、送風器5を、吸入口41を覆うように流路42に設けてもよく、送風器5を、流路42の途中に設けてもよい。さらに、送風器5を、吸入口41または排出口43を覆うように室内R側に配置してもよい。
【0044】
5.第1温度センサ6および第2温度センサ7について
蓄熱システム1は、上述したように、潜熱蓄熱材3の温度を測定する第1温度センサ6と、梁部材4の外部の室内Rの温度を測定する第2温度センサ7と、を備えており、これらは、制御装置8に電気的に接続されている。第1および第2温度センサ6,7は、サーミスタなどを挙げることができ、制御装置8に測定した温度に関する計測信号を送ることができるものであれば、温度センサの種類は特に限定されるものではない。
【0045】
第1温度センサ6は、潜熱蓄熱材3の温度を測定することができるのであれば、その測定位置は限定されないが、上述したように、第1温度センサ6は、潜熱蓄熱材3の内部の温度を測定している。第1温度センサ6が、潜熱蓄熱材3の内部の温度を測定するので、潜熱蓄熱材3の蓄熱状態をより正確に特定し、適切な期間および時点において、送風器5を後述する制御装置8により稼働させることができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、第1温度センサ6は、排出口43の近傍に配置されている。これにより、流路42の上流側から順に潜熱蓄熱材3の熱が、流路42を流れる空気に吸熱されるため、排出口43の近傍の潜熱蓄熱材3の熱は、吸熱され難く残存しやすい。このため、排出口43の近傍の潜熱蓄熱材3の温度を測定することにより、排出口43の近傍の潜熱蓄熱材3の温度を基準として、送風器5を稼働すれば、流路42に配置された全体の潜熱蓄熱材3の熱を効果的に放熱することができる。
【0047】
本実施形態では、第2温度センサ7は、梁部材4の外部の室内Rの温度を測定している。本実施形態では、第2温度センサ7は、室内Rの壁面Wに配置されている。ここで、第2温度センサ7は、梁部材4の外部の表面に配置されていてもよく、梁部材4の外部の表面のうち、吸入口41の近傍であってもよい。
【0048】
6.制御装置8について
蓄熱システム1は、上述したように、送風器5を制御する制御装置8を備えている。以下に
図3を参照しつつ、
図4および
図5を参照しながら、制御装置8とその制御方法を説明する。
図4は、
図3に示す制御装置の制御を説明するためのタイミングチャートである。
図5は、
図4の変形例に係る制御装置の制御を説明するためのタイミングチャートである。
【0049】
制御装置8は、第1温度センサ6および第2温度センサ7からの計測信号が入力可能なように第1温度センサ6および第2温度センサ7に接続されており、送風器5に制御信号が出力可能なように、送風器5に接続されている。
【0050】
制御装置8は、
図2(a)に示すように、壁面Wに取付けられており、ハードウエアとして、演算装置(図示せず)と、記憶装置(図示せず)を備えている。記憶装置は、
図3に示す稼働判定部8bの判定条件を含むプログラム等が記憶されており、演算装置は、このプログラム等により、第1測定温度と第2測定温度から、稼働判定部8bの判定等を行っている。
【0051】
本実施形態では、制御装置8は、
図3に示すように、ソフトウエアとして、条件設定部8aと、稼働判定部8bと、稼働実行部8cとを少なくとも備えている。条件設定部8aは、送風器の稼働の開始条件、稼働の停止条件などを設定するものであり、これらの条件は、入力部(図示せず)等を介して入力され、記憶装置に記憶される。
【0052】
稼働判定部8bは、送風器5の稼働および稼働の停止を判定する。稼働実行部8cは、稼働判定部8bの判定結果に基づいて、送風器5に稼働または稼働停止の制御信号を送信する。
【0053】
本実施形態では、稼働判定部8bは、第1温度センサ6で測定された第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度以上となる期間内のいずれかの時点において、送風器5の稼働を開始させるように、送風器5の稼働開始の判定を行う。ここで、「第1温度センサ6で測定された第1測定温度が、潜熱蓄熱材3の相変化温度以上となる期間内のいずれかの時点」とは、例えば、
図4に示すように、第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度T以上となる時刻t1以降の温度である。なお、
図4では、この時点は、時刻t1である。
【0054】
このようにして、潜熱蓄熱材3の温度である第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度T以上である場合には、潜熱蓄熱材3に熱が蓄熱されているため、稼働判定部8bにより送風器5の稼働の開始を判定し、稼働実行部8cにより、送風器5の稼働を開始させる。これにより、蓄熱した熱を、流路42を流れる空気に吸熱させて、この空気を排出口43から空気と共に室内Rに放出することができる。このような結果、潜熱蓄熱材3の蓄熱された熱を放熱し、この熱を室内Rに効率的に拡散することができる。
【0055】
なお、
図4に示すように、本実施形態では、潜熱蓄熱材3の温度である第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度T以上である時刻t1で、稼働判定部8bは、送風器5の稼働を開始させる判定をする。このような場合であっても(室内Rの温度が、潜熱蓄熱材3の温度よりも高く、潜熱蓄熱材3が蓄熱している段階であっても)、第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度T以上となった時刻t1で、送風器5の稼働を予め開始しておけば、その後、時刻t2で、室内Rの温度である第2測定温度T2が潜熱蓄熱材3の温度である第1測定温度T1よりも低い温度に変化することがあるので、この時刻t2以降に、流路42に流れる空気に潜熱蓄熱材3の熱を吸熱させ、これを室内Rに放出することができる。したがって、第2温度センサ7がなくても、第1温度センサ6により潜熱蓄熱材3の温度を測定することができれば、潜熱蓄熱材3に熱が蓄熱されていることを把握することができるため、蓄熱された熱を放熱することができる。
【0056】
さらに、「第1温度センサ6で測定された第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度T以上となる期間内のいずれかの時点」により、送風器5の稼働開始する稼働判定部8bの判定を、
図5に示す変形例の如く行ってもよい。
【0057】
具体的には、
図5に示すように、第1温度センサ6で測定された第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度T以上であり、かつ、第2温度センサ7で測定された第2測定温度T2が、少なくとも潜熱蓄熱材3の相変化温度T以上のとき(時刻t1から少なくとも時刻t2までの期間)には、稼働判定部8bは送風器5を停止した状態にする。一方、第1温度センサ6で測定された第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度T以上であり、かつ、第2温度センサ7で測定された第2測定温度T2が、潜熱蓄熱材3の相変化温度T未満となる期間のいずれかの時点(時刻t2以降のいずれかの時点)で、稼働判定部8bは、送風器5の稼働を開始させると判定する。
【0058】
ここで、第2温度センサ7で測定された第2測定温度T2が、潜熱蓄熱材3の相変化温度T未満となったとき(時刻t2)に、稼働判定部8bは、送風器5の稼働を開始させると判定してもよい。しかしながら、本実施形態では、その好ましい一例として、第2測定温度T2が、潜熱蓄熱材3の相変化温度Tよりも、所定の温度ΔTs低くなったときに(時刻t3)、稼働判定部8bは、送風器5の稼働を開始させると判定をする。
【0059】
なお、この所定の温度ΔTsは、潜熱蓄熱材3の周りの空気の温度を、相変化温度Tから一定の温度勾配で減少させて、潜熱蓄熱材3の放熱量を測定したときに、潜熱蓄熱材3の単位時間あたりの放熱量が増加するときの空気の温度を、相変化温度から減算した値であり、例えば、1℃~5℃であることが好ましい。なお、この変形例では、時刻t3で、稼働判定部8bは送風器5の稼働開始であると判定を行うため、時刻t2~時刻t3までは、稼働判定部8bは送風器5を停止した状態にすると判定する。
【0060】
この変形例では、
図5に示すように、潜熱蓄熱材3の温度である第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度T以上であり、室内Rの温度である第2測定温度T2が、相変化温度T以上である場合(時刻t1~時刻t2)には、吸入口41から吸入し、流路42に流す空気が、相変化温度以上である可能性が高い。この場合には、この空気に、潜熱蓄熱材3の熱が吸熱され難いため、送風器5の稼働を行なわず、停止した状態にする。これにより、送風器5の消費電力を低減することができる。
【0061】
さらに、第2測定温度T2が、潜熱蓄熱材3の相変化温度Tよりも、所定の温度ΔTs低くなるまでは(時刻t2~時刻t3)、流路42に流す空気の温度が相変化温度Tに近いため、潜熱蓄熱材3による放熱が十分ではない。したがって、この場合にも、送風器5の稼働を行なわず、停止した状態を継続する。
【0062】
一方、潜熱蓄熱材3の温度である第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度T以上であり、室内Rの温度である第2測定温度T2が、相変化温度T未満である場合には、吸入口41から吸入し、流路42に流す空気が、相変化温度T未満である可能性が高い。
【0063】
特に、この変形例では、室内Rの温度である第2測定温度T2が、潜熱蓄熱材3の相変化温度Tよりも、所定の温度ΔTs以下となったとき(時刻t3)に、稼働判定部8bは、送風器5の稼働を開始させると判定するので、流路42を流れる空気に潜熱蓄熱材3の熱をより効率良く吸熱させることができる。
【0064】
このようにして、上述した変形例では、最適なタイミングで、送風器5の稼働を制御し、潜熱蓄熱材3と流路42を流れる空気との熱交換の効率を高めることができる。なお、
図4および
図5に示すいずれの場合であっても、稼働判定部8bは、第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度Tよりも低くなった時点で、送風器5の稼働を停止させると判定する。たとえば、第1測定温度T1が、潜熱蓄熱材3の相変化温度Tよりも、1~5℃以上低くなった時点(
図4の時刻t3、
図5の時刻t4)で、稼働判定部8bが、送風器5の稼働を停止させると判定する。これにより、潜熱蓄熱材3の放熱完了後には、送風器5の稼働は停止するので、送風器5を不要に稼働させることはない。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0066】
図5に示す変形例では、室内の温度である第2測定温度が、潜熱蓄熱材の相変化温度よりも、所定の温度低くなったときに、制御装置により、送風器を稼働開始したが、たとえば、第2測定温度が、相変化温度未満となったときに、制御装置により、送風器を稼働開始してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1:蓄熱システム,3:潜熱蓄熱材,4:梁部材,5:送風器,6:第1温度センサ,7:第2温度センサ,8:制御装置,T:相変化温度,T1:第1測定温度,T2:第2測定温度,R:室内