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  • 特許-車両用灯具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/19 20180101AFI20220705BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20220705BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20220705BHJP
   F21S 45/47 20180101ALI20220705BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20220705BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20220705BHJP
   F21S 41/30 20180101ALI20220705BHJP
   F21S 41/40 20180101ALI20220705BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20220705BHJP
【FI】
F21S41/19
F21V19/00 170
F21S41/143
F21S45/47
F21S41/151
F21S41/25
F21S41/30
F21S41/40
F21W102:13
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018142280
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020021542
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】内野 光二
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212170(JP,A)
【文献】特開2016-111204(JP,A)
【文献】特開2007-234462(JP,A)
【文献】特開2014-209459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/19
F21V 19/00
F21S 41/143
F21S 45/47
F21S 41/151
F21S 41/25
F21S 41/30
F21S 41/40
F21W 102/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクと、
前記ヒートシンクの一面上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に実装された発光素子と、
前記絶縁膜上に形成された前記発光素子に給電するための回路パターンと、
前記ヒートシンクの前記一面上に実装された、前記発光素子からの光を制御するための光学部品と、
を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記絶縁膜の厚さは、200μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ヒートシンクの前記一面の表面粗さは、前記ヒートシンクの他の面よりも滑らかであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記ヒートシンクの前記一面の表面粗さは、Rmax≦15μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記光学部品は、リフレクタ、シェードおよび投影レンズのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下、適宜「LED」と称す)などの半導体発光素子を利用した車両用灯具の開発が進められている。また、車両用前照灯の光源としてLEDを用いる場合は、一つでは所望の光量や形状の配光パターンを得ることが難しいため、複数のLEDを回路基板上にアレイ状に配置した車両用灯具が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-149373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、車両用灯具の光学系においては、LEDに対する光学部品(リフレクタ、シェード、投影レンズ等)の配置精度が非常に重要となる。LEDに対する光学部品の配置精度が低い場合、所望の光学特性を実現できないおそれがある。
【0005】
上記特許文献1のように、LEDが回路基板上に実装されている場合、回路基板の上面が取付基準面となる。一方、投影レンズ等の光学部品は、他の面が取付基準面となっている。このように、LEDと光学部品の取付基準面が異なる場合、所望の光学特性を実現するためには各構成部品に非常に厳しい公差が要求され、コスト高となるおそれがある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、各構成部品に厳しい公差が要求されず、低コストな車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、ヒートシンクと、ヒートシンクの一面上に形成された絶縁膜と、絶縁膜上に実装された発光素子と、絶縁膜上に形成された発光素子に給電するための回路パターンと、ヒートシンクの一面上に実装された、発光素子からの光を制御するための光学部品と、を備える。
【0008】
絶縁膜の厚さは、200μm以下であってもよい。
【0009】
ヒートシンクの一面の表面粗さは、ヒートシンクの他の面よりも滑らかであってもよい。
【0010】
ヒートシンクの一面の表面粗さは、Rmax≦15μm以下であってもよい。
【0011】
光学部品は、リフレクタ、シェードおよび投影レンズのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各構成部品に厳しい公差が要求されず、低コストな車両用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具の概略縦断面図である。
図2】灯具ユニットの斜視図である。
図3図2に示す灯具ユニットの分解斜視図である。
図4】ヒートシンクにおけるベース部の前面を示す図である。
図5図5(a)および(b)は、本実施形態に係る車両用灯具の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、本明細書において「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「内」、「外」等の方向を表す用語が用いられる場合、それらは車両用灯具が車両に装着されたときの姿勢における方向を意味する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用灯具10の概略縦断面図である。図1に示す車両用灯具10は、車体の前部の左右両端部にそれぞれ配置され、前照灯として機能する。
【0016】
車両用灯具10は、図1に示すように、前方が開口したランプボディ12と、ランプボディ12の開口した前方部に取り付けられた前面カバー14と、を備えている。ランプボディ12と前面カバー14とで灯具筐体16が構成され、灯具筐体16の内部に灯室18が形成される。
【0017】
灯室18には、灯具ユニット20が配置されている。灯具ユニット20は、ハイビーム用の配光パターンを形成できるように構成されている。また、灯室18には、灯具ユニット20を左右方向および前後方向に傾動自在に移動できるように構成された光軸調整機構24が配置されている。
【0018】
光軸調整機構24は、2つのエイミングスクリュー66,68を有している。エイミングスクリュー66は、灯室18の上部後方に配置されており、回転操作部66aと、回転操作部66aから前方へ向かって延びている軸部66bと、を有する。軸部66bの前方端部には、ねじ溝66cが形成されている。
【0019】
エイミングスクリュー66は、回転操作部66aがランプボディ12の後端部に回転自在に支持され、ねじ溝66cが灯具ユニット20のヒートシンク28の上部に螺合されている。回転操作部66aが操作され、エイミングスクリュー66が回転すると、その回転方向に応じた方向へ灯具ユニット20が傾動され、灯具ユニット20の光軸調整(エイミング調整)が行われる。なお、エイミングスクリュー68も同様の機能を有する。
【0020】
また、灯室18には、エクステンションリフレクタ67a,67bが設けられている。エクステンションリフレクタ67a,67bは、灯具ユニット20における投影レンズ64の上方および下方に配置され、灯室18内の構造部品などを覆い隠して、見栄えを向上させる役割を有する。
【0021】
図2は、灯具ユニット20の斜視図である。図3は、図2に示す灯具ユニット20の分解斜視図である。
【0022】
灯具ユニット20は、所謂直射型の灯具ユニットである。灯具ユニット20は、光源としての複数のLED11と、LED11からの光の一部を灯具前方に向けて反射するリフレクタ13と、LED11およびリフレクタ13からの光の一部を遮光するシェード15と、シェード15を通過した光を灯具前方に投影する投影レンズ64と、投影レンズ64を保持するためのレンズホルダ65と、を備える。
【0023】
灯具ユニット20はさらに、LED11から発生した熱を放熱するためのヒートシンク28を備える。ヒートシンク28は、アルミ等の高熱伝導率の金属によって形成され、平板状のベース部29と、ベース部29の後面29b上に所定の間隔で立設された複数の平板状の放熱フィン30とから成る。なお、放熱フィン30の形状は特に平板状に限定されず、柱状のフィンであってもよい。上述の光軸調整機構24におけるエイミングスクリュー66,68は、ヒートシンク28のベース部29に接続される。
【0024】
灯具ユニット20はさらに、ファン32を備える。ファン32は、ヒートシンク28の放熱フィン30の後方に配置される。ファン32は、ヒートシンク28に向かって灯室18内の空気を送風し、ヒートシンク28を強制的に冷却する。
【0025】
図4は、ヒートシンク28におけるベース部29の前面29aを示す。図4は、リフレクタ13、シェード15、レンズホルダ65、投影レンズ64を取り外した状態を示す。
【0026】
ベース部29の前面29aは、放熱フィン30が配置される後面29bの反対側の面である。ベース部29の前面29aは、研磨処理がなされた非常に滑らかな平面である。ベース部29の前面29aの表面粗さは、前記ヒートシンク28の他の面(例えば後面29bや放熱フィン30)よりも滑らかにされる。例えば、ベース部29の前面29aの表面粗さは、Rmax≦15μm以下とされる。
【0027】
図4に示すように、ベース部29の前面29aの略中央部には、絶縁膜40が形成されている。この絶縁膜40は、例えばエポキシ樹脂から形成された絶縁膜であり、その厚さは、200μm以下である。図4に示す例では、絶縁膜40の外形は長方形状であるが、絶縁膜40の外形は特に限定されない。また、図4に示す例では、ベース部29の前面29aの一部(略中央部)のにみ絶縁膜40を形成しているが、ベース部29の前面29aの全域に絶縁膜40が形成されてもよい。
【0028】
本実施形態においては、ヒートシンク28のベース部29に形成された絶縁膜40上に直接に複数のLED11がアレイ状に(左右方向に一列に)実装され、絶縁膜40上にLED11に給電するための回路パターン41が形成されている。アルミ等の金属に形成された絶縁膜上に直接的に回路パターンを形成する方法については従来より公知であり、例えば国際公開第2015/050164号に記載された方法を利用できる。
【0029】
絶縁膜40上にはさらに、コネクタ42が実装されている。コネクタ42は、回路パターン41に接続されている。コネクタ42には、給電用のケーブル(図示せず)が差し込まれる。
【0030】
図4において破線で示す2箇所の第1搭載部43は、リフレクタ13およびシェード15(図3参照)が搭載される領域である。第1搭載部43は、ベース部29の前面29a上において、絶縁膜40の左右側方に設けられている。第1搭載部43には、ベース部29から突出するように設けられた位置決めピン44と、ボルト孔45とが設けられている。
【0031】
図3に示すように、リフレクタ13は、反射面13aと、反射面13aの両端に設けられた一対のリフレクタ固定部13bとを備える。リフレクタ固定部13bには、位置決め孔13cと、貫通孔13dが設けられている。また、シェード15は、遮光部15aと、遮光部15aの両端に設けられた一対のシェード固定部15bとを備える。シェード固定部15bには、位置決め孔15cと、貫通孔15dが設けられている。
【0032】
ヒートシンク28にリフレクタ13およびシェード15を組み付ける際には、まずリフレクタ13の位置決め孔13cにヒートシンク28の位置決めピン44を挿入しながら、ヒートシンク28の第1搭載部43上にリフレクタ固定部13bを載置する。次に、シェード15の位置決め孔15cにヒートシンク28の位置決めピン44を挿入しながら、リフレクタ固定部13b上にシェード固定部15bを載置する。その後、ボルト46をシェード15の貫通孔15dおよびリフレクタ13の貫通孔13dに挿入し、ヒートシンク28のボルト孔45に螺合することにより、リフレクタ13およびシェード15がヒートシンク28に共締め固定される。
【0033】
また、図4において破線で示す3箇所の第2搭載部47は、レンズホルダ65(図3参照)が搭載される領域である。第2搭載部47は、ベース部29の前面29a上において、絶縁膜40の左右斜め上方および下方に設けられている。第2搭載部47には、ベース部29から突出するように設けられた位置決め孔48と、ボルト孔49とが設けられている。
【0034】
図3に示すように、レンズホルダ65は、前後方向に貫通した円筒部65aと、円筒部65aの3箇所に形成された足部65bと、足部65bの先端に形成されたレンズホルダ固定部65cとを備える。レンズホルダ固定部65cには、貫通孔65dと、位置決めピン65eが設けられている。
【0035】
レンズホルダ65の円筒部65aには、投影レンズ64が取り付けられる。投影レンズ64は、略半球状に形成されており、凸部が前方に向くように配置されている。投影レンズ64は、後側焦点を含む焦点面上の像を反転して灯具前方に照射、投影するための光学部材としての機能を有する。
【0036】
ヒートシンク28に投影レンズ64およびレンズホルダ65を組み付ける際には、まずヒートシンク28の位置決め孔48にレンズホルダ65の位置決めピン65eを挿入しながら、ヒートシンク28の第2搭載部47上にレンズホルダ固定部65cを載置する。その後、ボルト50をレンズホルダ65の貫通孔65dに挿入し、ヒートシンク28のボルト孔49に螺合することにより、投影レンズ64が取り付けられたレンズホルダ65がヒートシンク28に固定される。
【0037】
図5(a)および(b)は、本実施形態に係る車両用灯具の効果を説明するための図である。図5(a)は、本実施形態に係る灯具ユニット20の概略図である。図5(b)は、比較例に係る灯具ユニット120の概略図である。この比較例に係る灯具ユニット120においては、LED11は回路基板140上に実装されている。なお、図5(a)および(b)では、図示を簡略化するためにリフレクタ13およびシェード15を省略している。また、図5(a)では、図示を明確にするために絶縁膜40は、実際よりもかなり厚く表されている。上述したように、絶縁膜40の厚さは200μm以下であり、実際には非常に薄い。
【0038】
一般に、車両用灯具の光学系においては、LEDに対する光学部品(リフレクタ、シェード、投影レンズ等)の配置精度が非常に重要である。LEDに対する光学部品の配置精度が低い場合、所望の光学特性を実現できないおそれがある。
【0039】
図5(b)に示す比較例に係る灯具ユニット120では、LED11は回路基板140上に実装されている。すなわち、回路基板140の上面が取付基準面となっている。一方、投影レンズ64等の光学部品は、ヒートシンク28のベース部29の前面29aが取付基準面となっている。このように、LED11と光学部品の取付基準面が異なる場合、各構成部品に非常に厳しい公差が要求される。例えば、回路基板140の厚さの公差が大きい場合、所望の光学特性を実現するために他の構成部品に要求される公差が非常に厳しくなり、コスト高となるおそれがある。
【0040】
一方、図5(a)に示す本実施形態に係る灯具ユニット20では、回路基板を用いておらず、LED11は、ヒートシンク28のベース部29の前面29a上に形成された絶縁膜40上に実装されている。絶縁膜40は200μm以下と非常に薄いので、実質的にヒートシンク28のベース部29の前面29aをLED11の取付基準面とみなすことができる。したがって、本実施形態においては、LED11と光学部品の取付基準面を同一にできるので、図5(b)に示す比較例ほど各構成部品に非常に厳しい公差は要求されず、結果としてコストを低減することができる。
【0041】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0042】
例えば、上述の実施形態では、光源としてLEDを例示したが、光源は半導体発光素子であればLEDに限定されず、例えば半導体レーザが用いられてもよい。
【0043】
また、上述の実施形態では、LEDからの光を制御する光学部品としてリフレクタ、シェードおよび投影レンズを備える車両用灯具を例示したが、リフレクタ、シェードおよび投影レンズのうち少なくとも1つを含む車両用灯具であれば、本発明を適用できる。
【0044】
また、上述の実施形態では、第1搭載部および第2搭載部は絶縁膜の外側に設けたが、例えば絶縁膜をベース部の前面の全域に形成した場合は、第1搭載部および第2搭載部は絶縁膜上に設けられてもよい。この場合、LEDと光学部品の取付基準面が完全に同一となるのでより好ましい。
【符号の説明】
【0045】
10 車両用灯具、 11 LED、 13 リフレクタ、 15 シェード、 18 灯室、 20 灯具ユニット、 28 ヒートシンク、 29 ベース部、 30 放熱フィン、 32 ファン、 40 絶縁膜、 41 回路パターン、 42 コネクタ、 43 第1搭載部、 47 第2搭載部、 64 投影レンズ、 65 レンズホルダ。
図1
図2
図3
図4
図5