(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】タイヤ吸音材の製造方法及びスリット加工装置
(51)【国際特許分類】
B26D 7/06 20060101AFI20220705BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20220705BHJP
B26D 1/14 20060101ALI20220705BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B26D7/06 F
B26D3/00 603A
B26D1/14 F
B26D1/14 H
B60C5/00 F
(21)【出願番号】P 2018172340
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩
(72)【発明者】
【氏名】板倉 敦彦
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-143022(JP,A)
【文献】特開2017-087360(JP,A)
【文献】特開平02-269519(JP,A)
【文献】特許第4723330(JP,B2)
【文献】特開2017-226526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/06
B26D 3/00
B26D 1/14-1/24
B60C 5/00
B23D 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の発泡体で構成されてタイヤ内腔でタイヤに固定されるタイヤ吸音材の製造に用いられ、
複数の突条を片面に並列に備えてなる矩形状の発泡シートを前記突条を上向きにした状態でその突条の延在方向に送ってスリッターに供給することにより、前記突条どうしの間の谷溝で前記発泡シートをシート幅方向に分割して複数の前記帯状の発泡体を得るスリット加工装置であって、
前記シート幅方向における前記スリッターの刃の位置を記憶するスリッター刃位置記憶手段と、
前記シート幅方向における前記谷溝の中心を検出する谷溝中心検出手段と、
前記谷溝中心検出手段によって検出された前記谷溝の中心と前記スリッター刃位置記憶手段に記憶された前記スリッターの刃の位置とに基づいて、前記スリッターの刃の位置からの前記谷溝の中心のズレ量を算出するズレ量算出手段と、
前記ズレ量算出手段により算出されたズレ量に基づいて、前記ズレ量が予め設定された規定値以内となるように、前記発泡シートを前記シート幅方向に移動させるシート位置調整手段と、を有する、スリット加工装置。
【請求項2】
前記谷溝を真上から撮像するカメラを有し、
前記谷溝中心検出手段は、前記谷溝を撮像した前記カメラの画像から前記谷溝の中心を検出する、請求項1に記載のスリット加工装置。
【請求項3】
前記谷溝の周辺に光をあてる照明手段を有する、請求項2に記載のスリット加工装置。
【請求項4】
前記発泡シートの送り方向にレーザー光を照射して
前記スリッターの刃にあてるレーザー装置を有し、
前記スリッター刃位置記憶手段は、前記レーザー光を撮像した前記カメラの画像から前記レーザー光の位置を検出し、その位置を前記スリッターの刃の位置として記憶する、請求項2又は3に記載のスリット加工装置。
【請求項5】
前記カメラは、前記発泡シートにおける複数箇所の真上に複数配置され、
前記ズレ量算出手段は、前記発泡シートにおける複数箇所での前記ズレ量の平均を算出し、
前記シート位置調整手段は、前記ズレ量の平均が前記規定値以内となるように前記発泡シートを移動させる、請求項2乃至4のうち何れか1項に記載のスリット加工装置。
【請求項6】
前記発泡シートの送り方向に延在して前記谷溝に入り込む、送りガイドを前記シート幅方向に複数有し、
前記シート位置調整手段は、前記送りガイドを前記シート幅方向に移動させる、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載のスリット加工装置。
【請求項7】
前記送りガイドは、前記谷溝を挟む2つの前記突条のうち一方の突条に接し、前記谷溝の底部との間に隙間を有する、請求項6に記載のスリット加工装置。
【請求項8】
前記シート位置調整手段は、電動スライダによって前記送りガイドを前記シート幅方向に移動させる、請求項6又は7に記載のスリット加工装置。
【請求項9】
前記スリッターの刃は、円盤状に形成されて、前記シート幅方向に延びる支軸に取り付けられている、請求項1乃至8のうち何れか1項に記載のスリット加工装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうち何れか1項に記載のスリット加工装置を用いて、
前記タイヤ吸音材を製造する、タイヤ吸音材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ内腔でタイヤに固定されるタイヤ吸音材の製造方法及びそれに用いられるスリット加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ吸音材として、帯状の発泡体で構成され、その片面に、長手方向に延在する突条を備えたものが知られている(特許文献1参照)。このタイヤ吸音材は、突条と反対側の面がタイヤ周方向に沿ってタイヤに貼り付けられることで、タイヤ内腔に装着される。このようなタイヤ吸音材は、片面に複数の突条を並列に備えた矩形状の発泡シートを突条の延在方向に送ってスリッターに供給し、突条どうしの間の谷溝で発泡シートをシート幅方向に分割(カット)することで得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4723330号(段落[0015]~[0017]、
図1~4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の矩形状の発泡シートは、以下のようにして製造される。まず、ポリウレタン発泡体をシート状に裁断し、さらに、そのシート状の発泡体を、長手方向に複数の突条が延在する形状に裁断する。次いで、得られた裁断物のうち突条と反対側の面に両面テープを圧着し、その裁断物を所定の寸法にカットする。これにより、片面に複数の突条を並列に備えた矩形状の発泡シートが得られる。上述したタイヤ吸音材の製造において、複数の製造工程を経ることにより、或いは、両面テープの張力により、所定の形状にされた発泡シートがシート幅方向にずれたり、膨張又は収縮したりすることが積み重なると、発泡シートをカットする箇所がずれ、その結果、帯状の発泡体において突条の配置が著しくずれた不良品が発生するという問題が生じる。このため、タイヤ吸音材の歩留りの向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、帯状の発泡体で構成されてタイヤ内腔でタイヤに固定されるタイヤ吸音材の製造に用いられ、複数の突条を片面に並列に備えてなる矩形状の発泡シートを前記突条を上向きにした状態でその突条の延在方向に送ってスリッターに供給することにより、前記突条どうしの間の谷溝で前記発泡シートをシート幅方向に分割して複数の前記帯状の発泡体を得るスリット加工装置であって、前記シート幅方向における前記スリッターの刃の位置を記憶するスリッター刃位置記憶手段と、前記シート幅方向における前記谷溝の中心を検出する谷溝中心検出手段と、前記谷溝中心検出手段によって検出された前記谷溝の中心と前記スリッター刃位置記憶手段に記憶された前記スリッターの刃の位置とに基づいて、前記スリッターの刃の位置からの前記谷溝の中心のズレ量を算出するズレ量算出手段と、前記ズレ量算出手段により算出されたズレ量に基づいて、前記ズレ量が予め設定された規定値以内となるように、前記発泡シートを前記シート幅方向に移動させるシート位置調整手段と、を有する、スリット加工装置である。
【0006】
発明の第2態様は、前記谷溝を真上から撮像するカメラを有し、前記谷溝中心検出手段は、前記谷溝を撮像した前記カメラの画像から前記谷溝の中心を検出する、第1態様に記載のスリット加工装置である。
【0007】
発明の第3態様は、前記谷溝の周辺に光をあてる照明手段を有する、第2態様に記載のスリット加工装置である。
【0008】
発明の第4態様は、前記発泡シートの送り方向にレーザー光を照射して前記スリッターの刃にあてるレーザー装置を有し、前記スリッター刃位置記憶手段は、前記レーザー光を撮像した前記カメラの画像から前記レーザー光の位置を検出し、その位置を前記スリッターの刃の位置として記憶する、第2態様又は第3態様に記載のスリット加工装置である。
【0009】
発明の第5態様は、前記カメラは、前記発泡シートにおける複数箇所の真上に複数配置され、前記ズレ量算出手段は、前記発泡シートにおける複数箇所での前記ズレ量の平均を算出し、前記シート位置調整手段は、前記ズレ量の平均が前記規定値以内となるように前記発泡シートを移動させる、第2態様から第4態様のうち何れか1の態様に記載のスリット加工装置である。
【0010】
発明の第6態様は、前記発泡シートの送り方向に延在して前記谷溝に入り込む、送りガイドを前記シート幅方向に複数有し、前記シート位置調整手段は、前記送りガイドを前記シート幅方向に移動させる、第1態様から第5態様のうち何れか1の態様に記載のスリット加工装置である。
【0011】
発明の第7態様は、前記送りガイドは、前記谷溝を挟む2つの前記突条のうち一方の突条に接し、前記谷溝の底部との間に隙間を有する、第6態様に記載のスリット加工装置である。
【0012】
発明の第8態様は、前記シート位置調整手段は、電動スライダによって前記送りガイドを前記シート幅方向に移動させる、第6態様又は第7態様に記載のスリット加工装置である。
【0013】
発明の第9態様は、前記スリッターの刃は、円盤状に形成されて、前記シート幅方向に延びる支軸に取り付けられている、第1態様から第8態様のうち何れか1の態様に記載のスリット加工装置である。
【0014】
発明の第10態様は、第1態様から第9態様のうち何れか1の態様に記載のスリット加工装置を用いて、前記タイヤ吸音材を製造する、タイヤ吸音材の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
[発明の第1~第5,第9,第10態様]
発明の第1,第10態様では、発泡シートにおける谷溝の中心とスリッターの刃の位置とのズレ量を算出し、そのズレ量に基づいて発泡シートの位置が調整される。これにより、発泡シートから得られる帯状の発泡体において、その幅方向における突条の位置が安定し、タイヤ吸音材の歩留りの向上が図られる。
【0016】
なお、谷溝の中心の検出は、谷溝を真上から撮像するカメラを用いて、そのカメラの画像から検出すればよい(発明の第2態様)。なお、谷溝の周辺に光をあてる照明手段を備えれば、カメラの画像が暗くなることが抑えられ、谷溝の中心を検出し易くなる(発明の第3態様)。
【0017】
また、スリッターの刃の位置は、発泡シートの送り方向にレーザー光を照射してスリッターの刃にあて、そのレーザー光を撮像したカメラの画像からレーザー光の位置を検出し、その検出位置をスリッターの刃の位置とすればよい。この構成によれば、谷溝を撮像したときのカメラの画像から谷溝の中心とスリッターの刃の位置のズレを精度よく求めることが可能となる(発明の第4態様)。
【0018】
また、発泡シートの複数箇所の真上にカメラを備えて、その複数箇所でのズレ量の平均が規定値以内となるようにすることで、発泡シート全体に亘って谷溝の中心とスリッターの刃とのズレ量を小さくすることが可能となる(発明の第5態様)。
【0019】
なお、スリッターの刃を、円盤状に形成して、シート幅方向に延びる支軸に取り付けることにより、スリッターの刃の位置を容易に変更することが可能となる。これにより、シート幅方向における谷溝や突条の長さが異なる発泡シートから帯状の発泡体を得ることが可能となる(発明の第9態様)。
【0020】
[発明の第6~第8態様]
発泡シートのシート幅方向の移動にあたっては、シート幅方向の一方側から発泡シートを押したり引いたりする構成としてもよいし、発泡シートの下方にベルト又はローラを備える構成としてもよいし、発泡シートの送り方向に延在して谷溝に入り込む送りガイドを複数備えて、その送りガイドをシート幅方向に移動させる構成としてもよい(発明の第6態様)。送りガイドを備える構成によれば、送りガイドによって発泡シートを送り方向に案内することができると共に、シート幅方向の移動を抑制することが可能となる。
【0021】
ここで、送りガイドを、谷溝を挟む2つの突条のうち一方の突条に接し、谷溝の底部との間に隙間を有する構成とすれば、谷溝の形状やサイズが異なる複数種類の発泡シートを、1種類の送りガイドで対応することができる(発明の第7態様)。
【0022】
なお、送りガイドを電動スライダによって移動させる構成とすれば、送りガイドの移動精度の向上が図られる(発明の第8態様)。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の一実施形態に係るタイヤ吸音材の(A)斜視図、(B)断面図
【
図2】タイヤ内腔に装着されたタイヤ吸音材の(A)側断面図、(B)タイヤ周方向の1箇所で切断した断面図
【
図4】スリット加工装置をシート送り方向に切断した断面図
【
図7】スリッターの刃にレーザー光をあてるレーザー装置の平面図
【
図8】(A)スリッターの刃にあてたレーザー光の画像、(B)谷溝の画像
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1(A)に示されるように、本実施形態に係るタイヤ吸音材10は、帯状の発泡体11で構成されている。タイヤ吸音材10の表側の面には、タイヤ吸音材10の長手方向に延在する突条15が備えられている。突条15は、タイヤ吸音材10の幅方向の端縁を避けて配置され、突条15の断面形状は、台形状となっている(
図1(B)参照)。本実施形態のタイヤ吸音材10では、突条15が複数備えられていて、突条15どうしの間に谷溝16が形成されている。
【0025】
図2(A)及び
図2(B)に示されるように、タイヤ吸音材10は、タイヤ91とリム92の間に形成されるタイヤ内腔90に装着される。具体的には、タイヤ吸音材10は、タイヤ内腔90においてタイヤ91の周方向に沿って延びるように配置され、タイヤ91のリム対向面91Mに、タイヤ吸音材10の裏側の面が貼り付けられる。なお、タイヤ吸音材10の裏側の面には、両面テープが貼着されてもよい。この場合、両面テープのうちタイヤ吸音材10と反対側を向く面には、剥離フィルムが貼られている。
【0026】
タイヤ吸音材10を構成する帯状の発泡体11は、
図3に示される発泡シート110を分割することで得られる。この発泡シート110は、平面視矩形状をなし、発泡シート110の片面には、長手方向に延びる複数の突条15が並列に備えられている。そして、1枚の発泡シート110を谷溝16で分割して複数の帯状の発泡体11にすることで、複数のタイヤ吸音材10が一度に製造される。
【0027】
発泡シート110の分割には、スリット加工装置20が用いられる。スリット加工装置20は、発泡シート110をシート幅方向(即ち、発泡シート110の短手方向)に分割するためのスリッター22と、スリッター22に発泡シート110を送るためのシート搬送装置21と、を備えている。なお、以下では、シート搬送装置21の送り方向を、「シート送り方向」ということにする。
【0028】
シート搬送装置21は、発泡シート110が載置されるシート載置部21Rと、シート載置部21Rに載置された発泡シート110の下面に接触する搬送ベルト又は搬送ローラと、その搬送ベルト又は搬送ローラを回転させる搬送用モータ21K(
図5参照)と、を備えている。発泡シート110は、突条15を上向きにした状態で、その突条15の延在方向がシート送り方向となるように配置される。そして、搬送用モータ21Kによって搬送ベルト又は搬送ローラが回転駆動されると、シート載置部21Rに載置された発泡シート110が、
図3の矢印で示されるように、スリッター22に向かって搬送される。
【0029】
シート搬送装置21の上面には、シート載置部21Rをシート幅方向に挟んで発泡シート110のシート載置部21Rからの脱落を規制する1対のガイド壁25,25が設けられている。また、シート搬送装置21の上部には、シート載置部21Rをシート幅方向の両側と上側とから覆う支持フレーム26(
図4参照)が組み付けられている。
【0030】
なお、本実施形態では、搬送ベルト又は搬送ローラは、シート載置部21Rに対してシート送り方向の上流側にも配置されていて、シート載置部21Rへの発泡シート110の載置は、シート載置部21Rよりも上流側に配置された発泡シート110を搬送ベルト又は搬送ローラで送ることによってなされる。ここで、シート搬送装置21には、シート載置部21Rの下流端で発泡シート110の先端を検出するための位置センサ21Sが備えられていて(
図5参照)、シート搬送装置21は、位置センサ21Sによって発泡シート110の先端が検出されるまで、発泡シート110を送る。
【0031】
スリッター22は、複数の刃23をシート幅方向に一定間隔に備えている。本実施形態では、複数の刃23は、円盤状に形成されて、その中心軸がシート幅方向を向くように配置され、シート幅方向に延びる支軸24に等間隔に取り付けられている。
【0032】
図3及び
図4に示されるように、スリット加工装置20は、シート載置部21Rの上方に、発泡シート110をシート送り方向に案内するための送りガイド30を備えている。具体的には、送りガイド30は、シート搬送装置21の送り方向(以下、「シート送り方向」という。)に延在する棒状に形成されて、発泡シート110の谷溝16に入り込む。なお、送りガイド30のうちシート送り方向の上流側の端部は、上流側に向かって尖った形状に形成されている。これにより、送りガイド30は、シート搬送部21によって送られる発泡シート110の谷溝16に入り込みやすくなっている。
【0033】
図4に示されるように、送りガイド30は、シート幅方向に対をなして配置される。ここで、送りガイド30の幅(シート幅方向の長さ)は、発泡シート110の谷溝16の幅より狭くなっていて、1対の送りガイド30,30は、谷溝16を挟む突条15のうちシート幅方向の外側に配置される突条15に接している。詳細には、送りガイド30は、突条15の頂点寄り部分に当接し、谷溝16の底部との間に隙間を有している。このように、本実施形態のスリット加工装置20は、送りガイド30が谷溝16よりも幅狭に形成されて、シート幅方向に対をなして配置されることで、発泡シート110の突条15を確実にシート送り方向に向かせることができ、さらには、谷溝16の幅が異なった発泡シート110にも適用可能となっている。また、スリット加工装置20は、送りガイド30は谷溝16の底部との間に隙間を有することで、谷溝16の深さが異なった発泡シート110にも適用可能となっている。スリット加工装置20では、送りガイド30を採用したことにより、谷溝16の幅や谷溝16の深さが異なる多品種の突条15を有する発泡シート110についても適用可能となり、生産性の向上が図られる。
【0034】
図3に示されるように、1対の送りガイド30,30は、シート送り方向に間隔を開けて複数備えられている。本実施形態では、1対の送りガイド30,30は、シート載置部21Rのうちシート送り方向の上流側部分と下流側部分の2箇所の上方で、シート幅方向の両端寄り位置に配置されている。
【0035】
また、送りガイド30をシート幅方向に切断した断面形状は、下側で幅狭となる台形状に形成されていて、その台形における斜辺の傾斜は、発泡シート110の突条15の側面の傾斜よりも鉛直に近くなっている。その結果、送りガイド30の側面と突条15の側面との接触面積を小さくすることが可能となり、発泡シート110を送る際の送りガイド30による摺動抵抗を低減可能となる。
【0036】
図4に示されるように、送りガイド30は、電動スライダ31によってシート幅方向に移動可能となっている。電動スライダ31は、シート幅方向に延びる梁部材27に支持されている。梁部材27は、上述の支持フレーム26に備えられている。
【0037】
図3及び
図4に示されるように、スリット加工装置20は、シート載置部21Rの上方にカメラ40を備えている。カメラ40は、例えば、CCDカメラであって、シート搬送装置21によって搬送される発泡シート110のうち谷溝16を含む一定範囲を撮像する。
【0038】
本実施形態では、カメラ40が複数備えられている。具体的には、複数のカメラ40は、シート載置部21Rのうちシート送り方向の上流側部分と下流側部分におけるシート幅方向の両端部の真上に配置されている。その結果、複数のカメラ40は、シート載置部21Rに載置された発泡シート110の4箇所(具体的には、上流側部分におけるシート幅方向の両端部と下流側部分におけるシート幅方向の両端部)を撮像可能となっている。
【0039】
図4に示されるように、スリット加工装置20では、カメラ40の撮像対象に光をあてるためのライト41を備えることで、カメラ40の画像が暗くなることが抑えられている。ライト41は、複数のカメラ40のそれぞれに対応して設けられている。なお、
図4に示される例では、1つのカメラ40に対して、ライト41が1つ設けられているが、複数設けられてもよい。
【0040】
図5には、スリット加工装置20の電気的な構成が示されている。同図に示されるように、スリット加工装置20は、上述のシート搬送装置21、電動スライダ31及びカメラ40を制御する制御部50を備えている。制御部50は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)で構成され、CPU50A、RAM50B及びROM50Cを備えている。CPU50Aは、シート搬送装置21、電動スライダ31及びカメラ40を制御するための各種処理を実行する。RAM50Bには、カメラ40の画像データが一時的に記憶される。ROM50Cには、CPU50Aが実行するスリット加工プログラムPG1(
図6参照)が記憶されている。
【0041】
本実施形態では、スリッター22の刃23の位置データは、いったん、RAM50Bに記憶され、その後、ROM50Cに記憶される。刃23の位置は、カメラ40を用いて検出される。具体的には、
図7に示されるように、シート載置部21Rよりもシート送り方向の上流側に、シート送り方向で下流側にレーザー光を出射するレーザー装置42を配置した状態で、そのレーザー光をスリッター22の刃23に当てる。このとき、レーザー光は、カメラ40によって撮像される谷溝16を切断する刃23に当てられる。そして、レーザー光が刃23に当たった状態で、カメラ40によりレーザー光を撮像する。制御部50は、その画像データから画像中のレーザー光の位置を検出し、その位置をスリッター22の刃23の位置(シート幅方向の座標としての位置)としてRAM50Bに一時記憶する。
図8(A)には、カメラ40がレーザー光を撮像したときの画像の一例が示されている。この例では、画像の上下方向がシート幅方向になっていて、画像の上端からの距離がX1の位置にレーザー光(同図では、1点鎖線で示されている。)が配置されている。
【0042】
図6には、CPU50Aが実行するスリット加工プログラムPG1の流れが示されている。スリット加工プログラムPG1では、まず、初期位置セット処理S11が実行される。初期位置セット処理S11では、シート搬送装置21の搬送用モータ21Kを駆動制御して、発泡シート110をシート載置部21R(
図3参照)に載置する。
【0043】
初期位置セット処理S11が終了すると、次いで、谷中心検出処理S12が実行される。谷中心検出処理S12では、まず、カメラ40に制御信号を送信して、発泡シート110の複数箇所における谷溝16を撮像させる。カメラ40で撮像した画像のデータは、制御部50に送信される。そして、この画像データを解析して、画像中の谷溝16の中心の位置を求める。
図8(B)には、カメラ40が谷溝16を撮像したときの画像の一例が示されている。この例では、谷溝16が薄灰色で示されていて、画像の上端からの距離がX2の位置に谷溝16の中心(同図では、1点鎖線で示されている。)が配置されている。なお、谷溝16の中心の検出は、複数のカメラ40で撮像された画像のそれぞれについて行われる。
【0044】
谷中心検出処理S12が終了すると、次いで、ズレ量算出処理S13が実行される。ズレ量算出処理S13では、RAM50B又はROM50Cに記憶されているスリッター22の刃23の位置(シート幅方向の座標としての位置)と、谷中心検出処理S12で検出された谷溝16の中心の位置と、に基づいて、シート幅方向における谷溝16の中心の、刃23の位置に対するズレ量ΔX(即ち、X2-X1)を算出する。本実施形態では、ズレ量算出処理S13で算出されるズレ量ΔXは、複数のカメラ40の画像のそれぞれから算出されるズレ量ΔXの平均となっている。
【0045】
ズレ量算出処理S13が終了すると、算出されたズレ量ΔXが、予め設定された規定値以内であるか否かを判断する処理S14が実行される。この処理S14で、ズレ量ΔXが規定値以内でないと判断されると、シート位置調整処理S15が実行される。
【0046】
シート位置調整処理S15では、ズレ量算出処理S13で算出されたズレ量ΔXが規定値以内に収まるように、発泡シート110のシート幅方向の位置を調整する。具体的には、ズレ量ΔXが0となるように、発泡シート110をシート幅方向に移動させる。発泡シート110の移動は、電動スライダ31に制御信号を送信して、送りガイド30をシート幅方向に移動させることで行われる。
【0047】
本実施形態では、シート位置調整処理S15が終了すると、再度、谷中心検出処理S13が実行される。従って、処理S14で、ズレ量ΔXが規定値以内であると判断されるまで、シート位置調整処理S15(即ち、発泡シート110のシート幅方向の位置調整)が繰り返し行われることになる。
【0048】
処理S14で、ズレ量ΔXが規定値以内であると判断されると、スリット加工処理S16が実行されて、スリット加工プログラムPG1が終了する。スリット加工処理S16では、シート搬送装置21の搬送用モータ21Kに制御信号を送信して、発泡シート110をスリッター22に送る。すると、スリッター22で発泡シート110が谷溝16でシート幅方向に切断され、発泡シート110が複数の帯状の発泡体11に分割(カット)される。そして、各帯状の発泡体11からタイヤ吸音材10が形成される。
【0049】
このように、本実施形態のスリット加工装置20では、シート幅方向における谷溝16の中心とスリッター22の刃23の位置とのズレ量ΔXを算出し、そのズレ量ΔXに基づいて発泡シート110の位置が調整される。これにより、シート状の発泡体を、長手方向に複数の突条15が延在する形状に裁断し、突条15と反対側の面に両面テープを圧着したりする等の多数の製造工程を経ても、発泡シート110から得られる帯状の発泡体11において、その幅方向における突条15の位置が安定し、タイヤ吸音材10の歩留りの向上が図られる。
【0050】
また、本実施形態では、カメラ40で撮像した谷溝16の画像から谷溝16の中心を検出するので、谷溝16の中心を精度よく検出することが可能となっている。しかも、谷溝16の周辺を照らすライト41を備えたことで、カメラ40の画像が暗くなることが抑えられ、谷溝16の中心を検出し易くなる。
【0051】
また、本実施形態では、シート送り方向に照射されてスリッター22の刃23にあたったレーザー光の画像から、シート幅方向におけるレーザー光の位置を検出し、そのレーザー光の位置をスリッター22の刃23の位置として記憶する。この構成によれば、谷溝16の中心とスリッター22の刃23の位置のシート幅方向におけるズレ量ΔXを精度よく求めることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、シート載置部21Rの複数箇所の真上にカメラ40を備えることで、発泡シート110の複数箇所でのズレ量ΔXの平均が規定値以内となるように、発泡シート110のシート幅方向の位置を調整する。これにより、発泡シート110全体に亘って谷溝16の中心とスリッター22の刃23のシート幅方向における位置のズレ量ΔXを小さくすることが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態では、制御部50のRAM50BとROM50Cが特許請求の範囲に記載した「スリッター刃位置記憶手段」に相当し、ライト41が特許請求の範囲に記載した「照明手段」に相当する。また、谷中心検出処理S12を実行しているときの制御部50が特許請求の範囲に記載した「谷溝中心検出手段」に相当し、ズレ量算出処理S13を実行しているときの制御部50が特許請求の範囲に記載した「ズレ量算出手段」に相当し、シート位置調整処理S15を実行しているときの制御部50が特許請求の範囲に記載した「シート位置調整手段」に相当する。
【0054】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、カメラ40は、シート搬送装置21のシート搬送路21Rの上方に配置されていたが、スリッター22に送給される前の発泡シート110の上方に配置されれば、シート搬送路21Rの上方に限られない。即ち、カメラ40は、
図6の初期位置セット処理で初期位置にセットされた発泡シート110の上方に配置されればよい。
【0055】
(2)上記実施形態において、送りガイド30の数及び配置は特に限定されるものでなく、例えば、送りガイド30をシート幅方向に間隔をあけて2つのみ備えてもよい。また、送りガイド30が谷溝16を挟む2つの突条15の両方に当接する場合には、1送りガイド30を1つだけ備えてもよい。
【0056】
(3)タイヤ吸音材10(帯状の発泡体11)に含まれる突条15は、1つであってもよいし3つ以上であってもよい。
【0057】
(4)上記実施形態において、カメラ40の数及び配置はとくに限定されるものでなく、例えば、2つのカメラ40がシート載置部21Rの下流側部分におけるシート幅方向の両端部の真上に配置されてもよい。
【0058】
(5)上記実施形態では、スリッター22の刃23の位置(シート幅方向の座標としての位置)は、画像解析によってRAM50Bに一時記憶された後に、ROM50Cに記憶されていたが、RAM50Bのみに記憶されてもよいし、最初からROM50Cに固定値として記憶されてもよい。
【0059】
(6)上記実施形態では、1対の送りガイド30,30は、谷溝16を挟む2つ突条15のうちシート幅方向の外側に位置する突条15に接するように配置されていたが、シート幅方向の内側に位置する突条15に接するように配置されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 タイヤ吸音材
15 突条
16 谷溝
20 スリット加工装置
21 シート搬送装置
22 スリッター
23 刃
30 送りガイド
40 カメラ
50 制御部
110 発泡シート