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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】鉄心製品及び鉄心製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20220705BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20220705BHJP
   H02K 1/278 20220101ALI20220705BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K1/22 A
H02K1/278
H02K15/02 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018214905
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020088909
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2019-09-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】河野 正人
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】熊谷 健治
【審判官】田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163757(JP,A)
【文献】特開2009-124815(JP,A)
【文献】特開2009-303485(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100936(WO,A1)
【文献】特開2018-7421(JP,A)
【文献】特開2019-180160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/22
H02K1/276
H02K1/278
H02K15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の鉄心ブロックと第2の鉄心ブロックとを備える鉄心製品であって、
前記第1の鉄心ブロックは、
第1の端面及び第2の端面と、前記第1の端面から前記第2の端面まで延びる第1の樹脂注入部とを含む第1のブロック本体と、
前記第1の樹脂注入部に設けられている第1の固化樹脂と、
前記第1の固化樹脂に一体的に接続され且つ前記第1の端面よりも外方に向けて突出している第1のゲート痕と、
前記第1の鉄心ブロックの個体情報を保持する第1の識別コードとを含み、
前記第2の鉄心ブロックは、
第3の端面及び第4の端面と、前記第3の端面から前記第4の端面まで延びる第2の樹脂注入部とを含む第2のブロック本体と、
前記第2の樹脂注入部に設けられている第2の固化樹脂と、
前記第2の固化樹脂に一体的に接続され且つ前記第4の端面よりも外方に向けて突出している第2のゲート痕と、
前記第2の鉄心ブロックの個体情報を保持する第2の識別コードとを含み、
前記第1の鉄心ブロックと前記第2の鉄心ブロックとは、前記第2の端面と前記第3の端面とが対面するように積層されており、
前記第1及び第2の識別コードはそれぞれ、前記第1及び第4の端面に形成されているか、前記第2及び第3の端面に形成されている、鉄心製品。
【請求項2】
前記第1及び第2のブロック本体にそれぞれ設けられている第1及び第2の軸孔に挿入されているシャフトをさらに備える、請求項1に記載の鉄心製品。
【請求項3】
前記第1の軸孔の周縁部には、前記第1の端面側から前記第2の端面側に向けて突出している第1のバリが設けられており、
前記第2の軸孔の周縁部には、前記第3の端面側から前記第4の端面側に向けて突出している第2のバリが設けられている、請求項2に記載の鉄心製品。
【請求項4】
第1のブロック本体の第1の端面から第2の端面まで延びる第1の樹脂注入部に第1の固化樹脂が設けられ、前記第1の固化樹脂に一体的に接続され且つ前記第1の端面よりも外方に向けて第1のゲート痕が突出するように、前記第1の樹脂注入部に溶融樹脂を注入して、第1の鉄心ブロックを形成することと、
第2のブロック本体の第3の端面から第4の端面まで延びる第2の樹脂注入部に第2の固化樹脂が設けられ、前記第2の固化樹脂に一体的に接続され且つ前記第4の端面よりも外方に向けて第2のゲート痕が突出するように、前記第2の樹脂注入部に溶融樹脂を注入して、第2の鉄心ブロックを形成することと、
前記第1の鉄心ブロックを形成することの前に、前記第1の鉄心ブロックの個体情報を保持する第1の識別コードを前記第1及び第2の端面のいずれか一方に形成することと、
前記第2の鉄心ブロックを形成することの前に、前記第2の鉄心ブロックの個体情報を保持する第2の識別コードを前記第3及び第4の端面のいずれか一方に形成することと、
前記第2の端面と前記第3の端面とが対面するように前記第1の鉄心ブロックと前記第2の鉄心ブロックとを積層することとを含み、
前記第1及び第2の鉄心ブロックを積層することは、前記第1の端面に前記第1の識別コードが形成された前記第1の鉄心ブロックと、前記第4の端面に前記第2の識別コードが形成された前記第2の鉄心ブロックとを、前記第2の端面と前記第3の端面とが対面するように積層すること、又は、前記第2の端面に前記第1の識別コードが形成された前記第1の鉄心ブロックと、前記第3の端面に前記第2の識別コードが形成された前記第2の鉄心ブロックとを、前記第2の端面と前記第3の端面とが対面するように積層することを含む、鉄心製品の製造方法。
【請求項5】
前記第1及び第2のブロック本体にそれぞれ設けられている第1及び第2の軸孔にシャフトを挿入することをさらに含み、
前記第1の軸孔の周縁部には、前記第1の端面側から前記第2の端面側に向けて突出している第1のバリが設けられており、
前記第2の軸孔の周縁部には、前記第3の端面側から前記第4の端面側に向けて突出している第2のバリが設けられており、
前記シャフトを挿入することは、前記シャフトの挿入方向が前記第1及び第2のバリの突出方向と同じになるように前記第1及び第2の軸孔に前記シャフトを挿入することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の鉄心ブロックを形成することは、前記第1の端面が上向きの状態で、前記第1の樹脂注入部に上方から溶融樹脂を注入することを含み、
前記第2の鉄心ブロックを形成することは、前記第4の端面が上向きの状態で、前記第2の樹脂注入部に上方から溶融樹脂を注入することを含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の鉄心ブロックを形成することは、前記第1の端面が下向きの状態で、前記第1の樹脂注入部に下方から溶融樹脂を注入することを含み、
前記第2の鉄心ブロックを形成することは、前記第4の端面が下向きの状態で、前記第2の樹脂注入部に下方から溶融樹脂を注入することを含む、請求項4又は5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄心製品及び鉄心製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鉄心本体に永久磁石が内蔵された回転子鉄心(鉄心製品)の製造方法を開示している。当該方法は、鉄心本体の磁石挿入孔に永久磁石を挿入することと、下型と上型とによって鉄心本体を加圧及び拘束することと、上型に形成されている微細なゲート部(ゲート孔)を介して、磁石挿入孔に溶融樹脂を注入することと、注入された溶融樹脂の硬化後に、上型と下型とを分離して金型から回転子鉄心を取り出すこととを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-9452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の方法において、磁石挿入孔に溶融樹脂を注入する際に、磁石挿入孔の全体にわたり略均一に樹脂を充填することが望ましい。しかしながら、サイズの大きな回転子鉄心を製造しようとする場合、磁石挿入孔の長さが長くなるので、溶融樹脂が磁石挿入孔に均一に充填されずに、磁石挿入孔に溶融樹脂の未充填領域が生ずる懸念がある。
【0005】
本開示は、樹脂注入部に充填される樹脂の均一化を図ることが可能な鉄心製品及び鉄心製品の製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの観点に係る鉄心製品は、第1の鉄心ブロックと第2の鉄心ブロックとを備える。第1の鉄心ブロックは、第1の端面及び第2の端面と、第1の端面から第2の端面まで延びる第1の樹脂注入部とを含む第1のブロック本体と、第1の樹脂注入部に設けられている第1の固化樹脂と、第1の固化樹脂に一体的に接続され且つ第1の端面よりも外方に向けて突出している第1のゲート痕とを含む。第2の鉄心ブロックは、第3の端面及び第4の端面と、第3の端面から第4の端面まで延びる第2の樹脂注入部とを含む第2のブロック本体と、第2の樹脂注入部に設けられている第2の固化樹脂と、第2の固化樹脂に一体的に接続され且つ第4の端面よりも外方に向けて突出している第2のゲート痕とを含む。第1の鉄心ブロックと第2の鉄心ブロックとは、第2の端面と第3の端面とが対面するように積層されている。
【0007】
本開示の別の観点に係る鉄心製品の製造方法は、第1のブロック本体の第1の端面から第2の端面まで延びる第1の樹脂注入部に第1の固化樹脂が設けられ、第1の固化樹脂に一体的に接続され且つ第1の端面よりも外方に向けて第1のゲート痕が突出するように、第1の樹脂注入部に溶融樹脂を注入して、第1の鉄心ブロックを形成することと、第2のブロック本体の第3の端面から第4の端面まで延びる第2の樹脂注入部に第2の固化樹脂が設けられ、第2の固化樹脂に一体的に接続され且つ第4の端面よりも外方に向けて第2のゲート痕が突出するように、第2の樹脂注入部に溶融樹脂を注入して、第2の鉄心ブロックを形成することと、第2の端面と第3の端面とが対面するように第1の鉄心ブロックと第2の鉄心ブロックとを積層することとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る鉄心製品及び鉄心製品の製造方法によれば、樹脂注入部に充填される樹脂の均一化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、回転子の一例を上方から見た分解斜視図である。
図2図2は、図1に示される回転子を上下反転して示す分解斜視図である。
図3図3は、図1に示される回転子のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、鉄心製品の製造装置の一例を示す概略図である。
図5図5は、反転装置の一例を示す概略図である。
図6図6は、永久磁石を積層体の磁石挿入孔に取り付ける様子を説明するための斜視図である。
図7図7は、樹脂注入装置の一例を示す概略図である。
図8図8は、樹脂注入装置により積層体の磁石挿入孔に溶融樹脂を充填する様子を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0011】
[回転子の構成]
まず、図1図3を参照して、回転子1(鉄心製品)の構成について説明する。図1図3に示されるように、回転子1は、シャフト2と、回転子積層鉄心3(鉄心製品)とを備える。回転子1が固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。回転子1は、例えば、埋込磁石型(IPM)モータに用いられてもよい。
【0012】
回転子積層鉄心3は、1組の鉄心ブロックB1,B2を含む。鉄心ブロックB1(第1の鉄心ブロック)と鉄心ブロックB2(第2の鉄心ブロック)とは、シャフト2に組み付けられており、互いに積み重ねられている(図3参照)。なお、以降の回転子1の構成の説明では、説明の便宜のために、シャフト2の中心軸が鉛直方向に配置され、かつ、鉄心ブロックB1が鉄心ブロックB2に対して上方に配置されている場合を基準として、「上」及び「下」の用語を使用する。
【0013】
鉄心ブロックB1は、図1図3に示されるように、積層体11(第1のブロック本体)と、複数の永久磁石12と、複数の固化樹脂13(第1の固化樹脂)と、識別コード14(第1の識別コード)とを備える。積層体11は、円筒状を呈している。積層体11は、端面11a(第1の端面)と端面11b(第2の端面)とを有する。端面11a及び端面11bは、中心軸Axに直交する方向に拡がっていてもよい。積層体11の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体11を貫通する軸孔11c(第1の軸孔)が設けられている。換言すると、軸孔11cは、端面11a及び端面11bに開口している。すなわち、軸孔11cは、積層体11の高さ方向(上下方向)に延びている。積層体11は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。軸孔11c内には、シャフト2が挿入されている。例えば、シャフト2は、軸孔11cに圧入されていてもよい。
【0014】
積層体11には、複数の磁石挿入孔15が形成されている。複数の磁石挿入孔15は、図1及び図2に示されるように、積層体11の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。各磁石挿入孔15は、図3に示されるように、中心軸Axに沿って延びるように積層体11を貫通している。換言すると、磁石挿入孔15は、端面11a及び端面11bに開口している。すなわち、磁石挿入孔15は、上下方向に沿って端面11aから端面11bまで延びている。
【0015】
磁石挿入孔15の形状は、例えば、積層体11の外周縁に沿って延びる長孔であってもよい。磁石挿入孔15の数は、例えば6個であってもよい。磁石挿入孔15の位置、形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。磁石挿入孔15には、後述するように樹脂が注入されるので、磁石挿入孔15は樹脂注入部(第1の樹脂注入部)を構成する。
【0016】
積層体11は、図1図3に示されるように、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、後述する電磁鋼板ESが所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体11に対応する形状を呈している。積層体11の最上層を構成する打抜部材Wの上面が端面11aに対応しており、積層体11の最下層を構成する打抜部材Wの下面が端面11bに対応している。積層体11は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に打抜部材Wの板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0017】
上下方向において隣り合う打抜部材W同士は、図3に示されるように、カシメ部16によって締結されていてもよい。これらの打抜部材W同士は、カシメ部16に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W同士は、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材Wに仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材Wを締結して積層体11を得た後、仮カシメを当該積層体11から除去してもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(鉄心ブロックB1)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0018】
パンチにより電磁鋼板ESから打抜部材Wが打ち抜かれる過程で、図3に示されるように、軸孔11cの周縁部には、バリ18a(第1のバリ)及びダレ18bが形成されることがある。バリ18aは、打抜部材Wの下面側において、当該周縁部が軸孔11cに近づくにつれて端面11aから端面11bに向かう方向に突出した部分である。ダレ18bは、打抜部材Wの上面側において、当該周縁部が軸孔11cに近づくにつれて端面11aから端面11bに向かう方向に窪んだ部分である。このように、積層体11の軸孔11cの周縁部には、端面11bよりも積層体11の外方に突出しているバリ18aが設けられ、端面11aよりも下方に窪んでいるダレ18bが設けられる場合がある。バリ18aの端面11bからの突出量は、例えば、0.01mm~0.10mm程度であってもよい。
【0019】
図2に示されるように、積層体11の端面11bには、2つの識別孔19が形成されている。2つの識別孔19は、端面11bにバリ18aが形成されていることを示す目印である。積層体11の端面11aには、識別孔が形成されていない。2つの識別孔19は、互いに同じ形状であってもよい。例えば、識別孔19は、積層体11の最下層の打抜部材Wを貫通する孔であってもよく、最下層の打抜部材Wの下端面のみに開口する孔であってもよい。あるいは、識別孔19は、最下層の打抜部材Wを含む複数の打抜部材Wに形成された貫通孔によって構成されてもよい。識別孔19は、回転子1の使用状態において発生する磁路に影響を与えない位置に形成されていてもよい。例えば、識別孔19は、上下方向から見て磁石挿入孔15よりも内側に形成されていてもよい。なお、単一の識別孔19が最下層の打抜部材Wの下端面に形成されてもよく、3つ以上の識別孔19が最下層の打抜部材Wの下端面に形成されてもよい。
【0020】
永久磁石12は、図1図3に示されるように、対応する磁石挿入孔15内に一つずつ挿入されている。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、例えば直方体形状であってもよい。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0021】
固化樹脂13は、磁石挿入孔15内に設けられている。固化樹脂13は、永久磁石12が挿入された状態の磁石挿入孔15内に溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が充填された後に当該溶融樹脂が固化したものである。固化樹脂13は、永久磁石12を磁石挿入孔15内に固定する機能と、高さ方向で隣り合う打抜部材W同士を接合する機能とを有する。固化樹脂13を構成する樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。
【0022】
上方から見て、固化樹脂13の上端面は磁石挿入孔15から露出している。例えば、固化樹脂13の上端面は、高さ方向において端面11aと略一致していてもよいし、端面11aよりも下方に位置していてもよいし、端面11aよりも上方に位置していてもよい。下方から見て、固化樹脂13の下端面は磁石挿入孔15から露出している。例えば、固化樹脂13の下端面は、高さ方向において端面11bと略一致していてもよいし、端面11bの上方に位置していてもよいし、端面11bの下方に位置していてもよい。
【0023】
図1及び図3に示されるように、各固化樹脂13の上端面には、端面11aよりも外方に突出しているゲート痕17(第1のゲート痕)が形成されている。鉄心ブロックB1は、固化樹脂13の上端面のみにゲート痕17を含む。このように、鉄心ブロックB1は、固化樹脂13の上端面に一体的に接続され且つ端面11aから積層体11の外方に向かって突出しているゲート痕17を含む。すなわち、鉄心ブロックB1の高さは、積層体11の高さとゲート痕17の高さとの合計に略等しい。ゲート痕17は、固化樹脂13と同じ材料で構成されている。ゲート痕17の高さ(端面11aからの突出量)は、バリ18aの突出量よりも大きくてもよい。ゲート痕17の高さは、バリ18aの突出量の十倍程度であってもよく、例えば、0.1mm~1.0mm程度であってもよい。図2に示されるように、固化樹脂13の下端面には、ゲート痕が形成されていない。図1に示される例では、上方から見て、ゲート痕17の一部は、固化樹脂13の上端面と重なっているが、上方から見て、ゲート痕17の全てが固化樹脂13の上端面と重なっていてもよい。
【0024】
識別コード14は、図2に示されるように、積層体11の端面11b、すなわち、積層体11の最下層をなす打抜部材Wの外表面に設けられている。識別コード14は、当該識別コード14を備える鉄心ブロックB1の個体(例えば、品種、製造日時、使用材料、製造ライン等)を識別するための個体情報を保持する機能を有する。識別コード14は、明模様と暗模様との組み合わせにより当該個体情報を保持することができれば特に限定されず、例えば、バーコードであってもよいし、二次元コードであってもよい。二次元コードとしては、例えば、QRコード(登録商標)、DataMatrix、Vericode等であってもよい。識別コード14は、図2に示されるように、白色の下地領域と黒色マーキングとの組合せにより所定模様をなしていてもよい。
【0025】
鉄心ブロックB2は、鉄心ブロックB1と一部を除いて同様に構成されている。鉄心ブロックB2は、積層体11(第2のブロック本体)と、複数の永久磁石12(第2の磁石挿入孔)と、複数の固化樹脂13(第2の固化樹脂)と、識別コード14(第2の識別コード)とを備える。鉄心ブロックB2の積層体11は、端面11a(第3の端面)と、端面11b(第4の端面)と有する。鉄心ブロックB2の積層体11には、中心軸に沿って延びる軸孔11c(第2の軸孔)が設けられている。
【0026】
図2及び図3に示されるように、鉄心ブロックB2の固化樹脂13には、鉄心ブロックB1と同様にゲート痕17(第2のゲート痕)が形成されている。ただし、ゲート痕17の形成個所が鉄心ブロックB1と相違している。鉄心ブロックB2では、ゲート痕17は、固化樹脂13の下端面に形成されており、端面11bよりも突出している。換言すると、鉄心ブロックB2は、固化樹脂13の下端面に一体的に接続され且つ端面11bよりも積層体11の外方に向かって突出しているゲート痕17を含む。このように、鉄心ブロックB2は、固化樹脂13の下端面のみにゲート痕を含む。
【0027】
鉄心ブロックB2の識別コード14は、鉄心ブロックB1の識別コード14と同様に構成されている。ただし、鉄心ブロックB2の識別コード14の形成個所が鉄心ブロックB1と相違している。鉄心ブロックB2の識別コード14は、積層体11の端面11a、すなわち、積層体11の最上層をなす打抜部材Wの外表面に設けられている。鉄心ブロックB2の識別コード14は、当該識別コード14を備える鉄心ブロックB2の個体(例えば、品種、製造日時、使用材料、製造ライン等)を識別するための個体情報を保持する機能を有する。
【0028】
鉄心ブロックB1及び鉄心ブロックB2の積層体11,11にシャフト2が組み付けられている状態において、鉄心ブロックB2の積層体11は、鉄心ブロックB1の積層体11の下方に配置されている。換言すると、鉄心ブロックB1における積層体11の端面11bと、鉄心ブロックB2における積層体11の端面11aとは、互いに内向きとなるように対面している。互いに対面している端面11b及び端面11aの間では、端面11bよりも端面11aに向って突出するようなゲート痕、及び端面11aよりも端面11bに向って突出するようなゲート痕は設けられていない。識別コード14,14は、互いに対面している端面11b及び端面11aにそれぞれ設けられている。互いに対面している端面11b及び端面11aの間では、鉄心ブロックB1における積層体11のバリ18aが、鉄心ブロックB2における積層体11のダレ18bによって形成される空間に収容されている。
【0029】
鉄心ブロックB1における積層体11の端面11aと鉄心ブロックB2における積層体11の端面11bとは、互いに外向きとなるように配置されている。鉄心ブロックB1,B2のゲート痕17は、互いに外側を向く端面11a及び端面11bそれぞれよりも外方に向けて突出するように設けられている。
【0030】
[回転子の製造装置]
続いて、図4図8を参照して、回転子1の製造装置100について説明する。
【0031】
製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)から回転子1(鉄心ブロックB1,B2)を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130と、反転装置140と、付与装置150と、樹脂注入装置160と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0032】
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
【0033】
打抜装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、パンチとダイとによって電磁鋼板ESを打ち抜く機能を有する。具体的には、打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを順次打ち抜き加工して打抜部材Wを形成する機能と、打ち抜き加工によって得られた打抜部材Wを順次積層して積層体11を製造する機能とを有する。
【0034】
積層体11は、打抜装置130から排出されると、打抜装置130と反転装置140との間を延びるように設けられたコンベアCv1に載置される。積層体11は、端面11bがコンベアCv1に接するように、コンベアCv1に載置される。すなわち、コンベアCv1に載置されている積層体11では、端面11aが上方を向き、且つ、端面11bが下方を向く。コンベアCv1は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、積層体11を反転装置140に送り出す。
【0035】
反転装置140は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。反転装置140は、打抜装置130によって製造される複数の積層体11のうちの一部の積層体11を反転させる機能を有する。例えば、反転装置140は、反転装置140に順に送り出される複数の積層体11を1つおきに反転させてもよい。図5に例示されるように、反転装置140は、搬送ユニット148と、反転ユニット149とを備える。
【0036】
搬送ユニット148は、積層体11の上下の向きを変更せずに(積層体11が反転ユニット149を経由せずに)、積層体11をコンベアCv1からコンベアCv2へと搬送するように構成されている。例えば、積層体11の端面11bがコンベアCv1と当接している場合、搬送ユニット148によりコンベアCv2に搬送された後も、積層体11の端面11bがコンベアCv2に当接する。
【0037】
反転ユニット149は、積層体11の上下の向きを変更させて(積層体11の上下を反転させて)、積層体11をコンベアCv1からコンベアCv2に搬送するように構成されている。例えば、積層体11の端面11bがコンベアCv1と当接している場合、反転ユニット149を経由してコンベアCv2に搬送された後では、端面11bが上向きで且つ端面11aが下向きとなり、端面11aがコンベアCv2に当接する。反転ユニット149は、挟持ユニット141と、反転駆動部142と、搬入装置(図示せず)と、搬出装置(図示せず)とを有する。
【0038】
挟持ユニット141は、コンベアCv1から搬入された積層体11を保持する。挟持ユニット141は、ベース143と、ベース143に設けられた2つの挟持体144,145及び挟持駆動部146とを有する。2つの挟持体144,145は、端面11bを下に向けて搬入された積層体11を上下から挟持する。挟持駆動部146は、挟持体144,145が積層体11を挟持する状態と、挟持体144,145が積層体11を解放する状態とを切り替えるように、挟持体144,145同士の互いの間隔を変更する。例えば、挟持駆動部146は、エアシリンダ等を動力源として、挟持体144の位置を固定したまま、挟持体145を昇降させる。
【0039】
反転駆動部142は、コンベアCv1における積層体11の搬送方向と鉛直方向との双方に直交する軸線147まわりにベース143を反転させるように構成されている。これにより、挟持体144,145の上下が反転する。すなわち、積層体11の端面11aが下を向き、端面11bが上を向く。
【0040】
搬入装置は、コンベアCv1の端部に設けられている。搬入装置は、例えば電動式のリニアアクチュエータ又はシリンダ等を動力源として駆動する。この搬入装置は、コントローラCtrの指示信号に基づいて、反転を行う対象となる積層体11を反転ユニット149内に押し込むように構成されている。送出装置は、反転された積層体11をコンベアCv2に送り出す。例えば、この送出装置は、挟持体144に設けられ、リニアアクチュエータ又はエアシリンダ等を動力源として、挟持体144,145の間からコンベアCv2に積層体11を押し出すように構成されている。
【0041】
コンベアCv2は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、反転されていない積層体11及び反転された積層体11を付与装置150に向けて搬送する。
【0042】
図4に戻って、付与装置150は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。付与装置150は、積層体11に識別コード14を付与する機能を有する。例えば、付与装置150は、反転されていない積層体11と反転された積層体11とを異なる品種として区別するために、反転されていない積層体11と反転された積層体11とに異なる固体情報(品種情報)を含む識別コード14,14をそれぞれ付与してもよい。付与装置150は、レーザ装置151を備える。レーザ装置151は、コンベアCv2によって搬送されている積層体11がレーザ装置151の下方を通過する際に、コントローラCtrからの指示に基づいて、レーザビームを照射する機能を有する。反転されていない積層体11の端面11aに向けてレーザ装置151からレーザビームが照射されることにより、当該積層体11の端面11aに識別コード14が形成される。反転された積層体11の端面11bに向けてレーザ装置151からレーザビームが照射されることにより、当該積層体11の端面11bに識別コード14が形成される。
【0043】
付与装置150によって識別コード14が付与された積層体11は、不図示の治具取付装置を介して、コンベアCv3に載置される。治具取付装置は、積層体11を後述する治具152に取り付ける機能を有する。図6に示されるように、治具152は、搬送プレート153と、ポスト154とを含む。搬送プレート153は、金属製の板状体であり、積層体11を載置可能に構成されている。ポスト154は、金属製の円柱状体であり、搬送プレート153の上面から上方に向けて略鉛直に延びている。ポスト154は、搬送プレート153に対して固定されている。ポスト154の外径は、軸孔11cの内径と同程度であってもよい。搬送プレート153には、厚み方向において搬送プレート153を貫通する複数(ここでは6個)のゲート孔155が形成されている。各ゲート孔155は、積層体11の磁石挿入孔15に対応する位置に設けられている。
【0044】
樹脂注入装置160は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。樹脂注入装置160は、各磁石挿入孔15に永久磁石12を挿入する機能と、永久磁石12の挿入状態及び樹脂注入方向を検査する機能と、樹脂の充填を行う前に積層体11を予熱する機能と、永久磁石12が挿入された磁石挿入孔15内に溶融樹脂を充填する機能とを有する。樹脂注入装置160は、カメラ162と、レーザ装置163と、樹脂注入ユニット169とを備える。図7に示されるように、カメラ162及びレーザ装置163は、コンベアCv3の上方に位置している。
【0045】
カメラ162は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作する。カメラ162は、コンベアCv3によって搬送されている積層体11がカメラ162の下方を通過する際に、識別コード14を撮像する機能を有する。カメラ162は、識別コード14を撮像することで得られた画像データをコントローラCtrに出力する。カメラ162は、光源(例えばフラッシュ光源)を含んでいてもよい。この場合、識別コード14を撮像する際に、カメラ162は、積層体11の上方を向く端面11b又は端面11aに光を照射してもよい。
【0046】
レーザ装置163は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作する。レーザ装置163は、コンベアCv3によって搬送されている積層体11がレーザ装置163を通過する際に、磁石挿入孔15に向けてレーザ光を投光する機能と、識別孔19が形成されている位置に向けてレーザ光を投光する機能と、投光したレーザ光の反射光を受光する機能とを有する。レーザ装置163は、例えば、コントローラCtrから指示されたレーザ光の投光を開始するタイミング(投光タイミング)に合わせてレーザ光を投光する。レーザ装置163は、レーザ光を受光すると、レーザ光を受光したことを示す受光信号をコントローラCtrに出力する。
【0047】
樹脂注入ユニット169は、図8に詳しく示されるように、上型165と、下型166と、複数のプランジャ167を備える。上型165と下型166とは、治具152の搬送プレート153と共に積層体11を高さ方向において挟持可能に構成されている。上型165と、搬送プレート153及び下型166とによって積層体11が挟持される際、積層体11には上下方向から所定の荷重が付与される。
【0048】
上型165は、矩形状を呈する板状部材である。上型165には、上型165の略中央部に一つの貫通孔165aが設けられている。貫通孔165aは、治具152のポスト154に対応する形状(略円形状)を呈しており、貫通孔165aには、ポスト154が挿通可能である。
【0049】
下型166は、矩形状を呈する板状部材である。下型166には、複数の収容孔166aと複数のゲート部166bとが設けられている。複数の収容孔166aは、下型166を厚み方向において貫通している。各収容孔166aは、上型165と下型166とが積層体11を挟持した状態(挟持状態)にて、積層体11の磁石挿入孔15に対応する箇所に位置している。各収容孔166aは、円柱形状を呈しており、少なくとも一つの樹脂ペレットPを収容する機能を有する。複数のゲート部166bそれぞれは、収容孔166aに接続されている。挟持状態において、各ゲート部166bは、搬送プレート153に形成されているゲート孔155に対応する箇所に位置している。挟持状態において、搬送プレート153の厚み方向(下方)から見て、ゲート部166bの大きさ(面積)は、ゲート孔155と略同一である。
【0050】
複数のプランジャ167は、下型166の下方に位置している。各プランジャ167は、図示しない駆動源によって、対応する収容孔166aに対して挿抜可能となるように構成されている。上型165及び下型166内には、加熱源としての内蔵熱源(図示せず)が設けられている。これらの内蔵熱源は、例えば上型165及び下型166にそれぞれ内蔵されたヒータである。内蔵熱源が動作すると、上型165及び下型166を介して積層体11及び治具152が加熱されると共に、各収容孔166aに収容された樹脂ペレットPが加熱される。これにより、樹脂ペレットPが溶融して溶融樹脂に変化する。
【0051】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120、打抜装置130、反転装置140、付与装置150、及び樹脂注入装置160をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、これらに当該指示信号をそれぞれ送信する。
【0052】
コントローラCtrは、カメラ162から出力された画像データを受信し、受信した当該画像データを処理することにより、識別コード14に記録されている情報を識別する。例えば、コントローラCtrは、識別コード14に記録されている品種に関する品種情報を識別(取得)する。これにより、コントローラCtrは、検査対象の積層体11の品種を判別する。
【0053】
コントローラCtrは、レーザ装置163に所定の投光タイミングで、磁石挿入孔15に向けてレーザ光を投光させる。コントローラCtrは、例えば、磁石挿入孔15に向けて投光されたレーザ光に対する受光信号を受信し、当該受信信号を受信したタイミングを受光タイミングとして算出する。コントローラCtrは、投光タイミングと受光タイミングとの差からレーザ装置163とレーザ光の反射位置との間の距離を算出し、例えば、永久磁石12の有無、及び永久磁石12の配置位置を検査する。
【0054】
コントローラCtrは、レーザ装置163に識別孔19の形成位置に向けてレーザ光を投光させる。コントローラCtrは、永久磁石12の検査と同様に、レーザ装置163とレーザ光の反射位置との間の距離から、識別孔19の有無を検査する。反転されていない積層体11では、当該積層体11の載置状態が適切であれば、識別孔19が設けられている端面11bが下方を向いているので、コントローラCtrは識別孔19を検知しない。一方、反転された積層体11では、当該積層体11の載置状態が適切であれば、識別孔19が設けられている端面11bが上方を向いているので、コントローラCtrは識別孔19を検知する。コントローラCtrは、識別孔19の検知結果と、カメラ162を介して読み取った品種情報とに基づいて、積層体11の載置状態が適切であるかを判定する。
【0055】
[回転子の製造方法]
続いて、図4図8を参照して、回転子1の製造方法について説明する。まず、コントローラCtrが打抜装置130に指示して、電磁鋼板ESを順次打ち抜きしつつ打抜部材Wを積層して、積層体11を形成する。打抜装置130によって形成された積層体11は、端面11bがコンベアCv1に接するようにコンベアCv1に載置される。
【0056】
次に、コントローラCtrがコンベアCv1に指示して、複数の積層体11を順次、反転装置140に向けて搬送する。次に、コントローラCtrが反転装置140に指示して、複数の積層体11のうちの一部の積層体11を反転させる。具体的には、複数の積層体11のうちの反転対象とならない積層体11を、端面11bがコンベアCv2に当接するようにコンベアCv2に載置させる。また、複数の積層体11のうちの反転対象となる積層体11を、端面11aがコンベアCv2と当接するようにコンベアCv2に載置させる。
【0057】
次に、コントローラCtrがコンベアCv2に指示して、積層体11を付与装置150に向けて搬送する。次に、コントローラCtrが付与装置150に指示して、積層体11にそれぞれ識別コード14,14を付与する。具体的には、反転された積層体11の上方を向く端面11bに向けて、付与装置150のレーザ装置151からレーザビームが照射され、当該端面11bに識別コード14を形成する。また、反転されていない積層体11の上方を向く端面11aに向けて、レーザ装置151からレーザビームが照射され、当該端面11aに識別コード14を形成する。
【0058】
次に、コントローラCtrが治具取付装置に指示して、積層体11を治具152に取り付ける。あるいは、治具取付装置に代えて作業員によって積層体11が治具152に取り付けられてもよい。例えば、治具152が載置台に載置されている状態において、コンベアCv2の下流端側に位置する積層体11を治具152に取り付ける。具体的には、反転された積層体11の場合では、ポスト154を軸孔11cに嵌入して、端面11aが搬送プレート153に接するように積層体11を搬送プレート153に載置する。また、反転されていない積層体11の場合では、ポスト154を軸孔11cに嵌入して、端面11bが搬送プレート153に接するように積層体11を搬送プレート153に載置する。
【0059】
次に、治具152に取り付けられている積層体11を樹脂注入装置160に搬送して、図6に示されるように、各磁石挿入孔15内に永久磁石12を挿入する。各磁石挿入孔15内への永久磁石12の挿入は、人手で行われてもよいし、コントローラCtrの指示に基づいて、樹脂注入装置160が備えるロボットハンド(図示せず)等により行われてもよい。なお、図6では、反転された積層体11の磁石挿入孔15に永久磁石12を挿入する様子が示されている。
【0060】
次に、コントローラCtrがカメラ162及びレーザ装置163に指示して、積層体11の姿勢(載置状態)が適切であるかを判定する。コントローラCtrは、積層体11の姿勢として、検査対象の積層体11の端面11a及び端面11bがどちらを向いているかを判定する。例えば、コントローラCtrは、積層体11の端面11a及び端面11bのどちらが上向きとなっているかを判定する。まず、カメラ162を介して、積層体11に形成されている識別コード14が読み取られる。識別コード14に記録されている品種に関する品種情報が識別(取得)され、検査対象の積層体11の適切な姿勢が判別される。
【0061】
続いて、レーザ装置163により、レーザ光が磁石挿入孔15に向けて投光され、永久磁石12の有無、及び永久磁石12の配置位置が検査される。永久磁石12が磁石挿入孔15に存在していない場合、又は永久磁石12の配置位置が不適切であった場合、コントローラCtrは、検査対象の積層体11が不適合であると判定する。永久磁石12の検査に続けて、レーザ装置163により識別孔19の形成位置に向けてレーザ光が投光され、識別孔19の有無が検知される。識別孔19の検知結果と、カメラ162を介して読み取った品種情報とに基づいて、積層体11の姿勢が適切であるかを判定する。例えば、カメラ162を介して読み取った品種情報により端面11bが上向きである状態が適切であると示されているときに、識別孔が検知されなかった場合、コントローラCtrは、検査対象の積層体11が不適合であると判定する。不適合品であると判定された検査対象の積層体は製造ラインから除外される。
【0062】
一方、判定の結果、不適合ではないと判定された積層体11は、樹脂注入ユニット169に搬送される。図8に示されるように、治具152に取り付けられた状態の積層体11の上方に上型165を配置し、且つ下方に下型166を配置する。その後、積層体11は、治具152を介して上型165と下型166とで高さ方向から挟持され、積層体11が所定の荷重にて加圧される。次に、各収容孔166aに樹脂ペレットPを投入する。上型165及び下型166が備える内蔵熱源が作動して樹脂ペレットPが溶融状態となると、溶融樹脂をプランジャ167によって、ゲート部166b及びゲート孔155を介して各磁石挿入孔15に注入する。磁石挿入孔15内に固化樹脂13を形成するために、図8に示されるように、反転された積層体11の磁石挿入孔15に下方から(端面11a側から端面11b側に向けて)溶融樹脂が注入される。反転されていない積層体11でも同様に、磁石挿入孔15内に固化樹脂13を形成するために、磁石挿入孔15に下方から(端面11b側から端面11a側に向けて)溶融樹脂が注入される。その後、溶融樹脂が固化すると、磁石挿入孔15内に固化樹脂13が形成される。なお、樹脂注入ユニット169に配置される前に、図示しない加熱装置によって積層体11が予熱されてもよい。あるいは、溶融樹脂が注入される前に、樹脂注入ユニット169によって積層体11が予熱されてもよい。こうして、積層体11に永久磁石12が固化樹脂13と共に取り付けられる。そして、上型165と、治具152及び下型166とが積層体11から取り外される。これにより、鉄心ブロックB1,B2が完成する。
【0063】
次に、上型165と、治具152及び下型166とが積層体11から取り外される。この際、ゲート孔155内の固化樹脂が破断される。そのため、ゲート孔155内の一部の固化樹脂は固化樹脂13と一体的に接続された状態で積層体11に残り、反転された積層体11では、積層体11に残った当該一部の固化樹脂は、端面11aよりも外方に突出するゲート痕17を構成する。反転されていない積層体11では、積層体11に残った当該一部の固化樹脂は、端面11bよりも外方に突出するゲート痕17を構成する。この例では、反転された積層体11によって鉄心ブロックB1が構成され、反転されていない積層体11によって鉄心ブロックB2が構成される。
【0064】
次に、鉄心ブロックB1,B2をシャフト取付装置(図示せず)に搬送する。そして、シャフト2を鉄心ブロックB1の軸孔11c及び鉄心ブロックB2の軸孔11cに挿入することにより、シャフト2を鉄心ブロックB1,B2に組み付ける。シャフト2を挿入(圧入)する際には、シャフト2の挿入方向がバリ18aの突出方向と一致するようにシャフト2の挿入が行われる。換言すると、積層体11に形成されたバリ18aの突出方向に向けて、軸孔11cに対してシャフト2を挿入する。
【0065】
例えば、鉄心ブロックB1における積層体11の端面11b及び鉄心ブロックB2における積層体11の端面11aが対面するように鉄心ブロックB1と鉄心ブロックB2とが積層された状態で、軸孔11cにシャフト2が挿入されてもよい。この場合、鉄心ブロックB1における積層体11の端面11a側から鉄心ブロックB2における積層体11の端面11b側に向けて、挿入方向がバリ18aの突出方向と一致するように軸孔11cにシャフト2が挿入される。
【0066】
例えば、鉄心ブロックB1をシャフト2に組み付けた後に、鉄心ブロックB2をシャフト2に組み付けてもよい。この場合、まず、鉄心ブロックB1における積層体11の端面11a側から端面11b側に向けて、挿入方向がバリ18aの突出方向と一致するようにシャフト2を鉄心ブロックB1の軸孔11cに挿入する。その後、鉄心ブロックB2における積層体11の端面11a側から端面11b側に向けて、挿入方向がバリ18aの突出方向と一致するようにシャフト2を鉄心ブロックB2の軸孔11cに挿入する。これにより、鉄心ブロックB1,B2を備える回転子1が完成する。
【0067】
[作用]
以上の実施形態では、鉄心ブロックB1と鉄心ブロックB2とを積層して一つの回転子積層鉄心3としているので、比較的大きなサイズの回転子積層鉄心3が得られる。そのため、当該回転子積層鉄心3を用いて回転子1を構成すると、出力の大きな回転子1を得ることができる。
【0068】
以上の実施形態では、2つの積層体11にそれぞれ樹脂注入をして鉄心ブロックB1,B2をなした後に、これらを積層し、回転子積層鉄心3としている。そのため、回転子積層鉄心3と同等のサイズの積層体に設けられている磁石挿入孔に樹脂注入する場合と比較して、長さが短い磁石挿入孔15に溶融樹脂が充填される。そのため、磁石挿入孔15に未充填領域が生じ難くなる。したがって、樹脂注入部としての磁石挿入孔15に充填される樹脂の均一化を図ることが可能となる。
【0069】
ところで、一方の積層体のゲート痕が他方の積層体に向かっていると、当該ゲート痕が他方の積層体に接触して、打痕が生ずることが懸念される。この場合、磁気の流れが打痕の近傍で変化して、回転子1の出力性能に影響が生ずる可能性が考えられる。また、この場合、積層体同士を積み重ねた際に、積層体同士の間に隙間が生じてゲート痕が固化樹脂から脱落し、脱落した樹脂が回転子(コア)と固定子(ティース部)との間のエアギャップにかみ込むおそれがある。そこで、ゲート痕による打痕を抑制するために、積層体同士の間に中間プレートを設けることも考えられる。例えば、ゲート痕が形成される位置に窪みを有した中間プレートを介して、積層体同士を積み重ねることで、上述のようなゲート痕に起因する打痕が抑制される。
【0070】
これに対し、以上の実施形態では、鉄心ブロックB1において積層体11の端面11aよりも積層体11の外方に向けて突出しているゲート痕17が固化樹脂13の上端面に設けられ、鉄心ブロックB2において積層体11の端面11bよりも積層体11の外方に向けて突出しているゲート痕17が固化樹脂13の下端面に設けられる。積層体11同士は、ゲート痕が突出していない端面11b及び端面11a同士が対面するように積層されている。そのため、中間プレートを設けなくても、ゲート痕によって端面に打痕が形成されることがない。また、脱落した樹脂が上記エアギャップにかみ込む可能性が低減される。
【0071】
以上の実施形態では、軸孔11cに挿入されているシャフト2が設けられている。各軸孔にシャフト2が挿入されている状態で鉄心ブロックB1と鉄心ブロックB2とが積層されているので、鉄心ブロックB1と鉄心ブロックB2との積層状態をより確実に維持することが可能となる。
【0072】
以上の実施形態では、鉄心ブロックB1,B2の双方における軸孔11cの周縁部には互いに同じ方向に向けて突出しているバリ18aが設けられている。シャフト2は、当該シャフト2の挿入方向がバリ18aの突出方向と同じになるように、軸孔11cに挿入される。このため、シャフト2が上記突出方向と反対から挿入される場合と比べて、シャフト2の挿入の際にシャフト2がバリに衝突し、バリが脱落して電動機内に異物が発生してしまうことが抑制される。
【0073】
以上の実施形態では、鉄心ブロックB1,B2の双方において、端面11bには識別孔19が設けられる。例えば、識別孔19が形成されている位置に向けてレーザ光を照射し、識別孔19の有無を検知することにより、積層体11の姿勢を特定することが可能となる。具体的には、積層体11の端面11a及び端面11bのどちらが上向きとなっているかを検出することが可能となる。
【0074】
以上の実施形態では、鉄心ブロックB1,B2において、識別コード14,14はそれぞれ、互いに対面している端面11b及び端面11aに形成されている。例えば、鉄心ブロックB1,B2の製造過程において、磁石挿入孔15内に下方から溶融樹脂を注入する場合、識別コード14,14を共に上方を向けた状態で、鉄心ブロックB1,B2それぞれの積層体11を搬送すればよい。そのため、積層体11の姿勢の特定結果と併せて、識別コード14の情報を用いて樹脂の注入方向を検査する場合に、識別コード14から固体情報を読み取るための構成を簡略化することが可能となる。また、識別コード14,14から識別される鉄心ブロックB1,B2の品種と、積層体11の姿勢(識別孔19の有無)とを比較することにより、当該積層体11に対して樹脂の注入方向が適切かどうかを確認することができる。これにより、積層体11,11を積層した状態で対面する端面11b又は端面11aにゲート痕が形成されることが抑制される。
【0075】
以上の実施形態では、反転された積層体11の端面11bが上向きの状態で磁石挿入孔15に下方から溶融樹脂が注入され、反転されていない積層体11の端面11aが上向きの状態で磁石挿入孔15に下方から溶融樹脂が注入される。このため、ゲート痕17の突出方向がバリ18aの突出方向と同じである積層体11及びゲート痕17の突出方向がバリ18aの突出方向と反対である積層体11をそれぞれ形成するために、共に同じ方向から樹脂が注入される。これにより、ゲート痕17の突出方向とバリ18aの突出方向との関係が互いに異なる積層体11,11を形成する際に、磁石挿入孔15に溶融樹脂を注入するための上型及び下型を共用化することができる。その結果、回転子1の製造装置100を簡素化することが可能となる。
【0076】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0077】
(1)回転子1以外の鉄心製品(例えば、固定子積層鉄心を構成する1組の鉄心ブロック)に本技術を適用してもよい。具体的には、鉄心ブロックと巻線との間を絶縁するための樹脂膜が鉄心ブロックのスロットの内周面(樹脂注入部)に設けられた1組の鉄心ブロックを積層して固定子積層鉄心(鉄心製品)を構成する場合に、本技術を適用してもよい。すなわち、互いに積層された鉄心ブロックにより固定子積層鉄心を構成する場合において、一方の鉄心ブロックの樹脂注入部に設けられた固化樹脂に形成されたゲート痕と、他方の鉄心ブロックの樹脂注入部に設けられた固化樹脂に形成されたゲート痕とが、互いに反対を向くように突出していてもよい。固定子積層鉄心の鉄心ブロックとしては、複数の鉄心片が組み合われてなる分割型の鉄心ブロックであってもよいし、非分割型の鉄心ブロックであってもよい。
【0078】
(2)高さ方向に延びる樹脂注入部(例えば貫通孔又は溝)内に溶融樹脂を充填することで複数の打抜部材を接合して鉄心ブロックを構成する場合に、本技術を適用してもよい。本技術を1組の鉄心ブロックに適用する場合において、1組の鉄心ブロックの積層状態が、溶接又は接着剤により維持されてもよい。
【0079】
(3)上記の実施形態では、複数の打抜部材Wが積層されてなる積層体11が、永久磁石12が取り付けられるブロック本体として機能していたが、ブロック本体が積層体11以外で構成されていてもよい。具体的には、ブロック本体は、永久磁石を挿入するための磁石挿入孔が設けられ、且つ一体に形成された部材であってもよい。例えば、ブロック本体は、強磁性体粉末が圧縮成形されたものであってもよいし、強磁性体粉末を含有する樹脂材料が射出成形されたものであってもよい。
【0080】
(4)鉄心ブロックB1において、軸孔11cの周縁部に端面11b側から端面11a側に向けて突出しているバリが設けられ、且つ、鉄心ブロックB2において、軸孔11cの周縁部に端面11b側から端面11a側に向けて突出しているバリが設けられてもよい。この場合、鉄心ブロックB1の軸孔11cに対して端面11b側から端面11a側に向けてシャフト2が挿入されてもよく、鉄心ブロックB2の軸孔11cに対して端面11b側から端面11a側に向けてシャフト2が挿入されてもよい。
【0081】
(5)鉄心ブロックB1において、軸孔11cの周縁部に端面11b側から端面11a側に向けて突出しているバリが設けられ、且つ、鉄心ブロックB2において、軸孔11cの周縁部に端面11a側から端面11b側に向けて突出しているバリが設けられてもよい。つまり、互いに外側を向く鉄心ブロックB1の端面11aと鉄心ブロックB2の端面11bとから外側に向けてバリが突出していてもよい。この場合、鉄心ブロックB1及び鉄心ブロックB2が互いに異なる方向からシャフト2に取り付けられてもよい。例えば、鉄心ブロックB1の端面11b側から端面11a側に向けてシャフト2が挿入するように、鉄心ブロックB1がシャフト2の一端から取り付けられ、鉄心ブロックB2の端面11a側から端面11b側に向けてシャフト2が挿入するように、鉄心ブロックB2がシャフト2の他端から取り付けられてもよい。これらの鉄心ブロックB1,B2の製造過程において、反転装置140が用いられることなく、全ての積層体11が反転されずにコンベアにより付与装置150等に搬送されてもよい。
【0082】
(6)端面11bに設けられた識別孔19に代えて、端面11aに識別孔が設けられてもよい。この場合、識別孔は、積層体11において端面11aにダレが形成されていることを示していてもよい。1組の積層体11,11のうちの一方の積層体において、バリが形成されている端面であることを示す識別孔が設けられ、他方の積層体において、ダレが形成されている端面であることを示す識別孔が設けられてもよい。識別孔19の径方向の位置は、磁石挿入孔15と略同一であってもよい。
【0083】
(7)鉄心ブロックB1において、識別コード14が端面11bに代えて端面11aに設けられ、且つ、鉄心ブロックB2において、識別コード14が端面11aに代えて端面11bに設けられてもよい。この構成では、互いに対面している端面11b,11aにそれぞれ識別コード14,14が設けられる場合と同様に、識別コード14,14から固体情報を読み取るための構成を簡略化することが可能となる。また、識別コード14,14が形成される端面が外側を向いているので、鉄心ブロックB1,B2をシャフト2に組み付けた回転子1において、識別コード14,14の双方を確認することで、鉄心ブロックB1,B2の組付状態の確認を行うことが可能となる。
【0084】
(8)複数の永久磁石12が一つの磁石挿入孔15内に挿入されていてもよい。この場合、複数の永久磁石12は、一つの磁石挿入孔15内において上下方向に沿って隣り合うように並んでいてもよいし、磁石挿入孔15の長手方向に並んでいてもよい。
【0085】
(9)鉄心ブロックB1における積層体11の厚さと鉄心ブロックB2における積層体11の厚さとは、互いに異なっていてもよい。例えば、鉄心ブロックB1における積層体11を構成する打抜部材Wの枚数と鉄心ブロックB2における積層体11を構成する打抜部材Wの枚数とは、互いに異なっていてもよい。上下方向から見て、鉄心ブロックB1における積層体11の複数の磁石挿入孔15の位置と、鉄心ブロックB2における積層体11の複数の磁石挿入孔15の位置とは、互いにずれていてもよい。
【0086】
(10)積層体11の搬送に際して、コンベアCv1~コンベアCv3を用いなくてもよい。例えば、積層体11がコンテナに載置された状態で、人手によって搬送されてもよい。
【0087】
(11)上記実施形態では、反転装置140は、複数の積層体11を1つおきに反転させるが、反転装置140は、2以上の個数の単位で、積層体11を反転させ送出することと、積層体11を反転させないで送出することとを、交互に行ってもよい。あるいは、積層体11を反転させ送出することを連続して行う対象の積層体11の個数と、積層体11を反転させないで送出することを連続して行う対象の積層体11の個数とが互いに異なっていてもよい。
【0088】
(12)コンベアCv1及びコンベアCv2に代えて、打抜装置130から付与装置150まで延びる主搬送コンベアが設けられてもよい。この構成において、積層体11を反転させずに付与装置150に送り出す場合、打抜装置130により主搬送コンベアに載置された状態のまま、積層体11が付与装置150に向けて送出されてもよい。また、主搬送コンベアの搬送路の途中位置に並列に反転ユニット149が設けられてもよい。積層体11を反転させて付与装置150に送り出す場合に、主搬送コンベアで搬送中の当該積層体11を主搬送コンベアから反転ユニット149に移してもよい。反転ユニット149によって反転された積層体11が、再度、主搬送コンベアに戻され、反転された状態で積層体11が付与装置150に向けて送出されてもよい。
【0089】
(13)製造装置100は、反転装置140を備えずに、樹脂注入ユニット169に加えて、磁石挿入孔に向けて上方から樹脂を注入することが可能な別の樹脂注入ユニットを備えていてもよい。この場合、樹脂注入ユニット169及び別の樹脂注入ユニットに積層体11を搬送する際に、分岐した搬送装置によって積層体11,11がそれぞれ搬送され、一方の積層体が樹脂注入ユニット169に送出され、他方の積層体が別の樹脂注入ユニットに送出されてもよい。樹脂注入ユニット169に含まれる樹脂注入用の金型と別の樹脂注入ユニットに含まれる樹脂注入用の金型とが一体に構成されてもよい。
【0090】
(14)樹脂注入ユニット169は、鉄心ブロックB1,B2の双方における積層体11の磁石挿入孔15に対して、上方から溶融樹脂を注入することが可能な構成であってもよい。この場合、樹脂注入ユニット169は、下型を備えずに、プランジャが挿抜可能な複数の収容孔が設けられた上型を備えてもよい。上記上型と治具152(搬送プレート153)とによって積層体11を上下方向に加圧した状態で、上方から樹脂の注入が行われてもよい。
【0091】
(15)樹脂注入装置160は、積層体11の識別孔19の有無を検知するために、コンベアCv3の下方にレーザ装置を備えていてもよい。樹脂注入装置160は、積層体11の識別孔19の有無を検知するために、コンベアCv3の上方及び下方にそれぞれ配置される複数のレーザ装置を備えていてもよい。樹脂注入装置160に含まれるカメラ及びレーザ装置の配置位置と個数とは、積層体11の姿勢を検査することが可能であれば、いずれの位置及び個数であってもよい。
【0092】
(16)積層体11は、識別孔19を備えていなくもてよい。この場合、コントローラCtrは、バリ18aの有無を検知することによって、積層体11の姿勢を特定してもよい。コントローラCtrは、積層体11を撮像することで得られた画像データから、識別孔19の有無又はバリ18aの有無を検知することで、積層体11の姿勢を特定してもよい。
【0093】
(17)付与装置150により識別コード14が積層体11に形成される前に、識別孔19の有無又はバリ18aの有無を検知することにより、積層体11の姿勢が検出されてもよい。この場合、識別コードが誤った端面に形成されてしまう可能性を低減できる。
【0094】
(18)上記実施形態の製造装置100では、単一の製造ラインに沿って鉄心ブロックB1及び鉄心ブロックB2の製造が行われていたが、鉄心ブロックB1と鉄心ブロックB2とは、互いに異なる製造ラインに沿って、それぞれ製造されてもよい。この場合、別々の打抜装置において打抜きが行われてもよいし、単一の打抜装置において、鉄心ブロックB1の積層体11を構成する打抜部材Wと鉄心ブロックB2の積層体11を構成する打抜部材Wとの2枚分の打抜きが略同時に行われてもよい。
【0095】
[例示]
例1.本開示の一つの例に係る鉄心製品(1)は、第1の鉄心ブロック(B1)と第2の鉄心ブロック(B2)とを備える。第1の鉄心ブロック(B1)は、第1の端面(11a)及び第2の端面(11b)と、第1の端面(11a)から第2の端面(11b)まで延びる第1の樹脂注入部(15)とを含む第1のブロック本体(11)と、第1の樹脂注入部(15)に設けられている第1の固化樹脂(13)と、第1の固化樹脂(13)に一体的に接続され且つ第1の端面(11a)よりも外方に向けて突出している第1のゲート痕(17)とを含む。第2の鉄心ブロック(B2)は、第3の端面(11a)及び第4の端面(11b)と、第3の端面(11a)から第4の端面(11b)まで延びる第2の樹脂注入部(15)とを含む第2のブロック本体(11)と、第2の樹脂注入部(15)に設けられている第2の固化樹脂(13)と、第2の固化樹脂(13)に一体的に接続され且つ第4の端面(11b)よりも外方に向けて突出している第2のゲート痕(17)とを含む。第1の鉄心ブロック(B1)と第2の鉄心ブロック(B2)とは、第2の端面(11b)と第3の端面(11a)とが対面するように積層されている。ところで、サイズの大きな回転子鉄心(鉄心製品)を製造しようとする場合、樹脂注入部としての磁石挿入孔の長さが長くなるので、溶融樹脂が樹脂注入部に均一に充填されずに、樹脂注入部に溶融樹脂の未充填領域が生じる懸念がある。しかしながら、例1によれば、第1の鉄心ブロックと第2の鉄心ブロックとが積層されて鉄心製品が構成されるので、それぞれの樹脂注入部の長さが長くならない。このため、樹脂注入部に充填される樹脂の均一化を図ることが可能となる。
【0096】
例2.例1の鉄心製品は、第1及び第2のブロック本体(11,11)にそれぞれ設けられている第1及び第2の軸孔(11c,11c)に挿入されているシャフト(2)をさらに備えていてもよい。この場合、第1の鉄心ブロックと第2の鉄心ブロックとの積層状態をより確実に維持することが可能となる。
【0097】
例3.例2の鉄心製品において、第1の軸孔(11c)の周縁部には、第1の端面(11a)側から第2の端面(11b)側に向けて突出している第1のバリ(18a)が設けられていてもよい。第2の軸孔(11c)の周縁部には、第3の端面(11a)側から第4の端面(11b)側に向けて突出している第2のバリ(18a)が設けられていてもよい。例えば、シャフトの挿入方向が第1及び第2のバリの突出方向と同じになるように、シャフトが軸孔11c,11cに挿入されることにより、シャフト挿入の際に第1及び第2のバリが脱落してしまうことが抑制される。
【0098】
例4.例1~例3のいずれかの鉄心製品において、第1の鉄心ブロック(B1)は、第1の鉄心ブロック(B1)の個体情報を保持する第1の識別コード(14)をさらに含んでいてもよい。第2の鉄心ブロック(B2)は、第2の鉄心ブロック(B2)の個体情報を保持する第2の識別コード(14)をさらに含んでいてもよい。第1及び第2の識別コード(14,14)はそれぞれ、第1及び第4の端面(11a,11b)に形成されているか、第2及び第3の端面(11b,11a)に形成されていてもよい。例えば、第1の鉄心ブロック及び第2の鉄心ブロックの製造過程において、第1及び第2の樹脂注入部に共に下方から溶融樹脂を注入する場合、第1及び第2の識別コードを共に上方又は下方を向けた状態で、第1及び第2のブロック本体を搬送すればよい。また、第1及び第2の樹脂注入部に共に上方から溶融樹脂を注入する場合、第1及び第2の識別コードを共に上方又は下方を向けた状態で、第1及び第2のブロック本体を搬送すればよい。このため、第1及び第2の識別コードから固体情報を読み取るための構成を簡略化することが可能となる。
【0099】
例5.本開示の他の例に係る鉄心製品(1)の製造方法は、第1のブロック本体(11)の第1の端面(11a)から第2の端面(11b)まで延びる第1の樹脂注入部(15)に第1の固化樹脂(13)が設けられ、第1の固化樹脂(13)に一体的に接続され且つ第1の端面(11a)よりも外方に向けて第1のゲート痕(17)が突出するように、第1の樹脂注入部(13)に溶融樹脂を注入して、第1の鉄心ブロック(B1)を形成することと、第2のブロック本体(11)の第3の端面(11a)から第4の端面(11b)まで延びる第2の樹脂注入部(15)に第2の固化樹脂(13)が設けられ、第2の固化樹脂(13)に一体的に接続され且つ第4の端面(11b)よりも外方に向けて第2のゲート痕(17)が突出するように、第2の樹脂注入部(15)に溶融樹脂を注入して、第2の鉄心ブロック(B2)を形成することと、第2の端面(11b)と第3の端面(11a)とが対面するように第1の鉄心ブロック(B1)と第2の鉄心ブロック(B2)とを積層することとを含む。上述と同様に、第1の鉄心ブロックと第2の鉄心ブロックとが積層されて鉄心製品が構成されるので、それぞれの樹脂注入部の長さが長くならない。このため、樹脂注入部に充填される樹脂の均一化を図ることが可能となる。
【0100】
例6.例5の方法は、第1及び第2のブロック本体(11,11)にそれぞれ設けられている第1及び第2の軸孔(11c,11c)にシャフト(2)を挿入することをさらに含んでいてもよい。例5の方法において、第1の軸孔(11c)の周縁部には、第1の端面(11a)側から第2の端面(11b)側に向けて突出している第1のバリ(18a)が設けられていてもよい。第2の軸孔(11c)の周縁部には、第3の端面(11a)側から第4の端面(11b)側に向けて突出している第2のバリ(18a)が設けられていてもよい。シャフト(2)を挿入することは、シャフト(2)の挿入方向が第1及び第2のバリ(18a,18a)の突出方向と同じになるように第1及び第2の軸孔(11c,11c)にシャフト(2)を挿入することを含んでいてもよい。この場合、第1の鉄心ブロックと第2の鉄心ブロックとの積層状態をより確実に維持することが可能となる。また、シャフト挿入の際に第1及び第2のバリが脱落してしまうことが抑制される。
【0101】
例7.例5又は例6の方法は、第1の鉄心ブロック(B1)を形成することの前に、第1のブロック本体(10)の姿勢を特定するために、第1及び第2の端面(11a,11b)のどちらが上向きとなっているかを検出することと、第2の鉄心ブロック(B2)を形成することの前に、第2のブロック本体(11)の姿勢を特定するために、第3及び第4の端面(11a,11b)のどちらが上向きとなっているかを検出することとをさらに含んでもよい。この場合、どちらの端面が上向きか検査した上で、第1及び第2の鉄心ブロックを形成することができるので、例えばゲート痕が突出する方向が誤った状態で第1及び第2の鉄心ブロックが形成されることを抑制できる。
【0102】
例8.例5~例7のいずれかの方法は、第1の鉄心ブロック(B1)の個体情報を保持する第1の識別コード(14)を第1及び第2の端面(11a,11b)のいずれか一方に形成することと、第2の鉄心ブロック(B2)の個体情報を保持する第2の識別コード(14)を第3及び第4の端面(11a,11b)のいずれか一方に形成することとをさらに含んでもよい。第1及び第2の鉄心ブロック(B1,B2)を積層することは、第1の端面(11a)に第1の識別コード(14)が形成された第1の鉄心ブロック(B1)と、第4の端面(11b)に第2の識別コード(14)が形成された第2の鉄心ブロック(B2)とを、第2の端面(11b)と第3の端面(11a)とが対面するように積層すること、又は、第2の端面(11b)に第1の識別コード(14)が形成された第1の鉄心ブロック(B1)と、第3の端面(11a)に第2の識別コード(14)が形成された第2の鉄心ブロック(B2)とを、第2の端面(11b)と第3の端面(11a)とが対面するように積層することを含んでもよい。この場合、上述と同様に、第1及び第2の識別コードから固体情報を読み取るための構成を簡略化することが可能となる。
【0103】
例9.例5~例8のいずれかの方法において、第1の鉄心ブロック(B1)を形成することは、第1の端面(11a)が上向きの状態で、第1の樹脂注入部(15)に上方から溶融樹脂を注入することを含んでもよい。第2の鉄心ブロック(B2)を形成することは、第4の端面(11b)が上向きの状態で、第2の樹脂注入部(15)に上方から溶融樹脂を注入することを含んでもよい。この場合、第1の樹脂注入部及び第2の樹脂注入部に溶融樹脂を注入するための樹脂注入用の金型を共用化することができる。その結果、回転子の製造装置を簡素化することが可能となる。
【0104】
例10.例5~例8のいずれかの方法において、第1の鉄心ブロック(B1)を形成することは、第1の端面(11a)が下向きの状態で、第1の樹脂注入部(15)に下方から溶融樹脂を注入することを含んでもよい。第2の鉄心ブロック(B2)を形成することは、第4の端面(11b)が下向きの状態で、第2の樹脂注入部(15)に下方から溶融樹脂を注入することを含んでもよい。この場合、第1の樹脂注入部及び第2の樹脂注入部に溶融樹脂を注入するための樹脂注入用の金型を共用化することができる。その結果、回転子の製造装置を簡素化することが可能となる。
【符号の説明】
【0105】
1…回転子(鉄心製品)、2…シャフト、3…回転子積層鉄心(鉄心製品)、B1…鉄心ブロック(第1の鉄心ブロック)、B2…鉄心ブロック(第2の鉄心ブロック)、11…積層体(第1,第2のブロック本体)、11a…端面(第1,第3の端面)、11b…端面(第2,第4の端面)、11c…軸孔(第1,第2の軸孔)、13…固化樹脂(第1,第2の固化樹脂)、14…識別コード(第1,第2の識別コード)、15…磁石挿入孔(第1,第2の樹脂注入部)、17…ゲート痕(第1,第2のゲート痕)、18a…バリ(第1,第2のバリ)、100…製造装置、150…付与装置、160…樹脂注入装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8