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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】多重冗長型ポジションセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20220705BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20220705BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20220705BHJP
   B60K 20/02 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G01B7/00 101H
G01D5/245 110B
G01D5/245 110L
G01B7/30 H
B60K20/02 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018227739
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2019101044
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】17382838.5
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517348846
【氏名又は名称】フィコ トリアド, ソシエダッド アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Fico Triad, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル・モレノ・コロム
(72)【発明者】
【氏名】オスカー・フェラー・リバース
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-38773(JP,A)
【文献】特開2011-11617(JP,A)
【文献】特表2011-503462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00- 7/34
G01D 5/12- 5/252
B60K 20/02-20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフター装置(10)内のシフター・レバー(20)の位置を検出するための多重冗長型ポジションセンサ装置(100)であって、
第1磁気センサ(200)、及び、前記第1磁気センサ(200)と対向する第2磁気センサ(300)であって、前記第1磁気センサ(200)及び前記第2磁気センサ(300)の少なくとも1つが、デュアル・ダイ磁気センサであり、第1幾何学軸(Y1)が、前記第1磁気センサ(200)及び前記第2磁気センサ(300)によって定義される、前記第1磁気センサ(200)及び前記第2磁気センサ(300)と、
分極された磁石(400)が少なくとも1つの自由度で回転できるように前記第1磁気センサ(200)及び前記第2磁気センサ(300)の間に配置された前記分極された磁石(400)と、
を備え、
シフター・レバー位置に対応する前記第1磁気センサ(200)及び前記第2磁気センサ(300)に対する前記分極された磁石(400)の角度位置に基づく信号は、車両トランスミッションを制御するために出力可能である、
多重冗長型ポジションセンサ装置(100)。
【請求項2】
前記分極された磁石(400)は、第2幾何学軸(Y2)の周りを回転できるように配置されている、
請求項1に記載の多重冗長型ポジションセンサ装置(100)。
【請求項3】
前記第1幾何学軸(Y1)及び前記第2幾何学軸(Y2)は、互いに、一致する、又は、平行である、
請求項2に記載の多重冗長型ポジションセンサ装置(100)。
【請求項4】
前記分極された磁石(400)を内部で受けるための磁石支持体(500)であって、前記磁石支持体(500)が作動される時に前記第1磁気センサ(200)及び前記第2磁気センサ(300)に対して前記分極された磁石(400)が移動できるように構成された前記磁石支持体(500)を
更に備える請求項1乃至の何れか1項に記載の多重冗長型ポジションセンサ装置(100)。
【請求項5】
前記分極された磁石(400)は、各面が少なくとも1つのN極及び少なくとも1つのS極を含む互いに対向する2つの対向面を有する、又は、
前記分極された磁石(400)の一面及び他面は、それぞれ、単一のN極及び単一のS極を含む、
請求項1乃至の何れか1項に記載の多重冗長型ポジションセンサ装置(100)。
【請求項6】
前記第1幾何学軸(Y1)及び第2幾何学軸(Y2)は、互いに直交する、
請求項2記載の多重冗長型ポジションセンサ装置(100)。
【請求項7】
前記第1及び前記第2の磁気センサ(200,300)は、2次元磁気センサである、
請求項3に記載の多重冗長型ポジションセンサ装置(100)。
【請求項8】
前記第1及び前記第2の磁気センサ(200,300)は、3次元磁気センサである、
請求項1記載の多重冗長型ポジションセンサ装置(100)。
【請求項9】
前記第1磁気センサ(200)は、第1プリント回路基板(250)に接続され、
前記第2磁気センサ(300)は、第2プリント回路基板(350)に接続され、
前記第1プリント回路基板(250)及び第2プリント回路基板(350)は、互いに電気的に接続されている、
請求項1乃至の何れか1項に記載の多重冗長型ポジションセンサ装置(100)。
【請求項10】
前記分極された磁石(400)と前記第1プリント回路基板(250)との間の離間距離(d1)及び前記分極された磁石(400)と前記第2プリント回路基板(350)との間の離間距離(d2)は、前記分極された磁石(400)が移動する時に一定のままであるように、前記分極された磁石(400)は、配置されている、
請求項に記載の多重冗長型ポジションセンサ装置(100)。
【請求項11】
前記第1磁気センサ(200)は、シングル・ダイ磁気センサであり、
前記第2磁気センサ(300)は、デュアル・ダイ磁気センサである、
請求項1乃至10の何れか1項に記載の多重冗長型ポジションセンサ装置(100)。
【請求項12】
車両トランスミッションを制御するために移動可能であるシフター・レバー(20)と、
前記シフター・レバー(20)の位置を検出するための請求項1乃至11の何れか1項に記載の前記多重冗長型ポジションセンサ装置(100)と、
を備えるシフター装置(10)であって、
前記シフター・レバー(20)がユーザによって作動される時に前記分極された磁石(400)が少なくとも1つの自由度で回転できるように、前記分極された磁石(400)は、前記第1磁気センサ(200)及び前記第2磁気センサ(300)の間に配置され、
前記第1磁気センサ(200)及び前記第2磁気センサ(300)に対する前記分極された磁石(400)の角度位置に基づく信号は、前記車両トランスミッションを制御するために出力される、
シフター装置(10)。
【請求項13】
前記分極された磁石(400)を内部で受けるための磁石支持体(500)であって、前記シフター・レバー(20)が作動される時に前記第1磁気センサ(200)及び前記第2磁気センサ(300)に対して前記分極された磁石(400)が移動できるように構成された前記磁石支持体(500)を
更に備える請求項12に記載のシフター装置(10)。
【請求項14】
前記シフター・レバー(20)と前記磁石支持体(500)とを機械的に接続するための接続レバー(600)を
更に備える請求項13に記載のシフター装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本開示は、動力で動く乗り物又は動力駆動車両用の電子シフター装置に関連し、より詳細には、車両トランスミッションを制御するための前述のシフター装置内のシフター・レバーのポジション(位置)を検出する装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
現在の電子シフター装置は、トランスミッションを制御するために動力駆動車両内の電子制御ユニット(ECU)に出力される信号に基づきシフター・レバーの位置を検出するポジションセンサを含む。既知のシフター装置において、ECUに出力された信号は、それが正しいか否かを判定するために所定値と比較される。
【0003】
現在の電子ギア・シフター装置に使用されるポジションセンサの実例は、3つの異なる空間軸におけるシフター・レバーに取り付けられた磁石の位置を検出するように配置された3次元ホール素子センサである。このセンサは、検出されたシフター・レバーの位置に従ってトランスミッションを制御するために、動力駆動車両内のECUに電子信号を出力する。
【0004】
加えて、シフター・レバーの位置検出における冗長性は、安全のためには現在のギア・シフターの重要な要件である。冗長性を備えることで、車両トランスミッションを制御するために作動されたシフター・レバーの位置は、センサが誤作動したとしても検出することができる。
【0005】
冗長型位置検出装置は、少なくとも1つのポジションセンサの故障又は誤作動の場合であっても、車両トランスミッションの制御の安全性を正確に保証するために、シフター・レバーの追加的な位置判定を実施することができる。少なくとも1つのポジションセンサの故障又は誤作動という状況は、シフター・レバーの2以上のポジションセンサが異なる信号を出力する時に、起こり得る。その結果、ギア・ポジション・センサ装置は、シフター・レバーの位置を誤って提示し得る。幾つかの場合、センサが故障する状況で、安全動作も実施することができる。安全動作は、例えば、動力駆動車両を停止させること、ギア・シフターを所定の安全ギア・シフト・ポジションに設定すること、等とすることができる。警告信号も、車両の運転手に誤作動の注意を喚起させるために、単独で又は安全動作との組み合わせで生成することができる。
【0006】
典型的には同じ面上で並んでいる多重の磁気センサを使用することで、冗長性を提供することができる。このような場合、すべてのセンサで1つのシフター・レバーの位置を検出することを確保するために、磁石のサイズを大きくする必要があるか、或いは、多重の磁石を使用する必要がある。そうでない場合、磁石は、すべての磁気センサによって適切に検出されず、従って、磁気センサの信号には、信頼性がない。冗長性のレベルを高くし、磁気センサの数を多くすることが要求され、結果として、大きな磁石又は多数の磁石が必要となる。多重の冗長性を提供するために、例えば、センサ、磁気抵抗素子等の部品を多重に使用することで、そのアセンブリは、望ましくはないが重くて複雑さを有して大きくなってしまい、結果として、大きな設置スペースを必要とするために大きなスペースを占めることにもなる既知のポジションセンサ装置の製造コストは、高くなる。
【0007】
US2016265895は、多くの第1及び第2の磁気抵抗素子を備えるセンサ配置を開示する。磁気抵抗素子は、基板上に線形に配置された強磁性層及び非磁性層の積層体を備える。永久磁石は、第1及び第2の磁気抵抗素子間に配置される。永久磁石は、縦軸に沿う磁場源の位置が導出されるように、縦軸に沿って変位することができる。
【0008】
多層磁気抵抗素子は、依然として、そのアセンブリが複雑で高価になってしまう。加えて、上記構成では、磁気抵抗素子によって検出される磁場が磁石と磁気抵抗素子との間の距離に依存して急激に減少してしまうことを認識した。
【0009】
したがって、シフター・レバーのポジションセンサ装置は、シフター・レバーの位置を正確に検出することができ、その製造コストが減少することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(概要)
本ポジションセンサ装置の目的は、車両トランスミッションを制御する際の安全性を高めることである。これは、例えば二重冗長性、三重冗長性又はそれ以上の多重冗長性を提供することによって達成することができ、動力駆動車両シフター装置のシフター・レバーの位置を検出する際の精度を高めることができる。本ポジションセンサ装置の有利な構成の結果として、上述の目的は、最小数の部品で得ることができ、従って、その複雑さ及びその製造コストは、有利に減少することができる。
【0011】
本多重冗長型ポジションセンサ装置は、検出されるシフター・レバーの位置に基づきトランスミッションを制御するために、動力駆動車両内の電子制御ユニット(ECU)に電子信号を出力する目的でシフター・レバーの位置を検出する動力駆動車両シフター装置の検出モジュールの一部であってもよい。
【0012】
本センサ装置は、第1磁気センサ及び第2磁気センサを備える。両磁気センサは、互いに対向して配置される。第1幾何学軸は、第1磁気センサ及び第2磁気センサによって定義することができる。このような第1幾何学軸は、例えば、両磁気センサに垂直である線によって定義することができる。
【0013】
1つの磁気センサは、デュアル・ダイ(dual die)磁気センサである。もちろん、両磁気センサがデュアル・ダイ磁気センサである実施形態は、可能である。1つの好ましい実施例において、第1磁気センサはシングル・ダイ磁気センサであり、且つ、第2磁気センサは、デュアル・ダイ磁気センサである。この構成は、三重冗長性を提供する。
【0014】
デュアル・ダイ磁気センサは、単一の小さなパッケージ内に互いに分離されて集積された第1及び第2のセンサ・ダイス(シリコン・ウェハ又はシリコン・ダイスとも言う)を備える。それらのセンサ・ダイスは、冗長型を提供するために、互いに独立して作動できるように構成される。
【0015】
第1磁気センサ及び第2磁気センサ間には、分極された磁石が配置される。分極された磁石は、少なくとも1つの自由度で、回転することができるように、それらの磁気センサ間に配置される。例えば、分極された磁石は、第2幾何学軸の周りを回転することができるように、配置される。この第2幾何学軸は、例えば、分極された磁石の長手方向の幾何学軸とすることができる。分極された磁石は、代替的に、磁石それ自身内のある点で傾斜した軸の周りを回転することができるように、配置されてもよい。
【0016】
両磁気センサは、分極された磁石の回転運動(例えば、センサが3次元型である場合に3つの空間軸での分極された磁石の動き)を検出するように構成される。その結果、シフター・レバーの位置に対応する第1及び第2の磁気センサに対する分極された磁石の角度位置に基づく、各センサ・ダイの1信号は、車両トランスミッションを制御するためにECUに出力することができる。これらの信号は、その後、ECUによって互いに比較されて、シフター・レバーの位置を得ることができる。
【0017】
本センサ装置の1例において、第1幾何学軸及び第2幾何学軸は、一致するか、或いは、互いに平行である。しかしながら、もう1つの異なる例において、第1幾何学軸及び第2幾何学軸は、互いに垂直である。第1幾何学軸及び第2幾何学軸の他の異なる相対的な配置は、除外されていない。
【0018】
使用時に、第1及び第2の磁気センサ間の分極された磁石の回転運動は、更に、第1幾何学軸に対する第2幾何学軸の偏差によって結合することが想定されてもよい。第1及び第2の磁気センサ間の分極された磁石の他の異なる回転は、除外されておらず、例えば、点の周りの回転である。
【0019】
磁石支持体はまた、分極された磁石を支持する目的で提供することができる。磁石支持体の1例は、例えば分極された磁石を内部で受けるように適合されたボール部材を備えるボール・ジョイントとすることができる。好ましくは、ボール部材は、ボール部材に対して分極された磁石が動かない方法で分極された磁石がぴったりはめ込みできるように、構成される。したがって、例えばユーザによってシフター・レバーが作動される時にボール部材が駆動される場合、ボール部材は、第1及び第2の磁気センサに対して分極された磁石を回転させるように構成される。結果として、分極された磁石は、2つの自由度又は3つの自由度に従って移動可能である。分極された磁石を受けるために、ボール・ジョイント以外のジョイントは、使用することができ、例えば、シリンダ形状ジョイントである。
【0020】
1つの好ましい例において、分極された磁石は、2つの対向面を有する。分極された磁石の各面は、少なくとも1つのN極と少なくとも1つのS極とを含む。これは、ラジアルな分極された磁石の場合である。
【0021】
もう1つの好ましい例において、分極された磁石の1面は、単一のN極を含み、その他面は、単一のS極を含む。これは、長手の分極された磁石の場合である。
【0022】
第1及び第2の磁気センサは2次元磁気センサとすることができるが、好ましくは、第1及び第2の磁気センサは、3次元磁気センサである。
【0023】
2つのプリント回路基板(「PCB」とも言う)が提供されてもよい。より詳細には、第1磁気センサは、第1PCBに結合することができ、また、第2磁気センサは、第2PCBに結合することができる。両PCBは、互いに電気的に接続され、例えば適切な電気コネクタを介しているが、これが必須ではない。第1及び第2のPCB間の接続は、必ずしも必要ではない。最も重要な点は、磁石の位置を判定できるようにセンサ信号がECUに到達することである。
【0024】
離間距離は、分極された磁石の中心と第1プリント回路基板との間で定義される。離間距離はまた、分極された磁石の中心と第2プリント回路基板との間で定義される。例えば、ユーザによってシフター・レバーが作動される時の駆動時に分極された磁石が回転する場合、上記のこれらの離間距離は、一定のままであることが有利である。
【0025】
上述のセンサ装置は、厳正な冗長性の信頼度を向上させることができる。これは、単一の分極された磁石のみが要求されるので、簡略化に起因して複雑さ(及びしたがってコスト)が減少したセンサ装置によって実施することができる。2つのシングル・ダイ・センサが平行に組み立てられる場合と比較してサイズが減少されることになるデュアル・ダイ磁気センサの場合、全体のサイズが減少することも利点である。また、第1磁気センサがシングル・ダイ磁気センサであり、且つ、第2磁気センサがデュアル・ダイ磁気センサである場合、第1磁気センサに関連するプリント回路基板のサイズは、小さい。
【0026】
シフター装置もまた、本明細書に記載される。本シフター装置は、車両トランスミッションを制御するために移動可能であるシフター・レバーと、前述の通り、検出されるシフター・レバーの位置に応じて車両トランスミッションを制御するために動力駆動車両内の電子制御装置(ECU)に電子信号を出力する目的でシフター・レバーの位置を検出するための多重冗長型ポジションセンサ装置と、を備える。
【0027】
本シフター装置において、分極された磁石は、前述の通り、ユーザによってシフター・レバーが作動される時に分極された磁石が少なくとも1つの自由度で回転することができるように、第1及び第2の磁気センサ間に配置される。分極された磁石の回転運動の結果として、第1及び第2の磁気センサに対するその角度位置に基づく高信頼度の信号は、少なくとも3つの異なる信号が比較されるという状況で車両トランスミッションを制御する目的で出力される。
【0028】
本シフター装置は、前述の通り、分極された磁石を受けるためのボール・ジョイントを更に備えることができる。ボール・ジョイントは、シフター・レバーが作動される時に第1及び第2の磁気センサに対して分極された磁石を回転させるように、構成される。分極された磁石を受けるために、ボール・ジョイント以外の他のジョイントが代替的に使用されてもよい。
【0029】
本シフター装置は、シフター・レバーが1つの自由度又は2つの自由度を有するように構成することができる。接続レバーが更に設けられ、シフター・レバーと分極された磁石が受け入れられる磁石支持ジョイントとを機械的に接続することができる。
【0030】
抑制機構が更に設けられてもよい。抑制機構は、好ましくは、シフター・レバーに形成される。しかしながら、抑制機構は、接続レバーに、又は、代替的にシフター・レバーと接続レバーとに、形成することもできる。抑制機構は、シフター・レバーが作動される時にそれ自身について回転することをロックするように、構成される。抑制機構は、シフター・レバーがそれ自身で回転するという回転を抑制できるようなリング形状で形成されてもよい。
【0031】
本ポジションセンサ装置の1つの重要な利点は、例えば三重冗長性等の多重冗長性を得るために単一の磁石のみが必要であることである。センサの型に応じて、多重冗長性のより高いレベルを得ることもできる。例えば、第1磁気センサがシングル・ダイ磁気センサであり、且つ、第2磁気センサがデュアル・ダイ磁気センサである場合、前述の通り、三重冗長性を提供することができる。第1磁気センサ及び第2磁気センサの双方がデュアル・ダイ磁気センサである場合、四重冗長性を提供することができる。したがって、シフター・レバーの位置を検出するのに追加の磁石及びセンサを必要とせずに、容易に堅牢性を高めることができる。
【0032】
更なる利点は、ECUに出力された3つの異なる信号は、多重冗長型ポジションセンサ装置内で所定値と比較されて、それらが正しいか否かを判定できることである。
【0033】
本多重冗長型ポジションセンサ装置の実施例の追加の目的、利点及び特徴は、当業者がその説明を考慮すれば明らかであり、或いはそれを実施することによって習得できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
(図面の簡単な説明)
本多重冗長型ポジションセンサ装置の特定の実施形態は、添付の図面を参照しながら、非限定的な実施例として以下に説明される。
図1図1は、分極された磁石に運動を伝達する1つの自由度を有するシフター・レバー内のポジションセンサ装置の1例の斜視図である。
図2図2は、図1のシフター・レバーの図3内の線A-Aに沿った断面図である。
図3図3は、図1のシフター・レバーの平面図である。
図4図4は、分極された磁石に運動を伝達する1つの自由度を有するシフター・レバー内のポジションセンサ装置のもう1つ例の正面図である。
図5図5は、図4のシフター・レバーの図4内の線A-Aに沿った断面図である。
図6図6は、図4のシフター・レバーの図4内の線B-Bに沿った平面図である。
図7図7は、分極された磁石に運動を伝達する2つの自由度を有するシフター・レバー内のポジションセンサ装置の別の例の斜視図である。
図8図8は、図7のシフター・レバーの図9内の線A-Aに沿った断面図である。
図9図9は、図7のシフター・レバーの平面図である。
図10図10は、接続レバーを示すシフター・レバーのより詳細な斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(実施例の詳細な説明)
本ポジションセンサ装置100の3つの有利な実施例は、以下に説明され、また、ポジションセンサ装置100が取り付けられた動力で動く乗り物又は自動車のシフター装置10を図示する添付の図面に図示されている。
【0036】
図面に示されたシフター装置は、ハウジング内に移動可能にマウントされたシフター・レバー20を備える。シフター・レバー20は、車両トランスミッションを制御するためにユーザによって作動され得る。シフター装置10は、作動されるシフター・レバー20の位置を検出するための多重冗長型ポジションセンサ装置100を更に備える。図示されない電子制御ユニット(ECU)には、車両トランスミッションを制御できるように、シフター・レバー20の検出される位置に基づく電子信号が入力される。
【0037】
シングル・ダイ磁気センサ200は、単一のセンサ・ダイで形成される。デュアル・ダイ・磁気センサ300は、二重冗長性を提供するために互いに独立して動作できるように分離された状態で、単一のパッケージ内に集積された2つのセンサ・ダイで形成される。結果として、磁気センサ200,300の組み合わせは、シフター・レバー20の位置を検出する際に三重冗長性を提供し、これにより、3つのセンサ・ダイスによって提供されたシフター・レバー20の位置に対応する信号が異なる時に生じ得るそれらのセンサ・ダイスのうちの少なくとも1つが故障し又は誤作動する状況であっても、車両トランスミッション制御の安全性を適切に保証することができる。
【0038】
分極磁石400は、第1及び第2の磁気センサ200,300間に配置される。分極磁石400は、車両トランスミッションを制御する目的でユーザによってシフター・レバー20が作動される時に、分極磁石400が回転できるように配置される。
【0039】
上述の構成では、3つのセンサ・ダイに対する分極磁石400の角度位置に基づき、且つ、シフター・レバー20の位置に対応する3つの信号は、車両トランスミッションを制御するために、ECUに出力することができる。その後、少なくとも3つの信号からの値は、ECUによって互いに比較されて、シフター・レバー20の位置を検出することができる。
【0040】
第1及び第2の磁気センサ200,300に垂直な線は、第1幾何学軸Y1を定義する。分極磁石400を回転させることができる線は、第2幾何学軸Y2を定義する。図4図5及び図6に示される実施例において、分極磁石400は、同じ面にN極及びS極を備えるラジアル型である。図4図5及び図6に示されるように、第2幾何学軸Y2は、分極磁石400の長手方向の幾何学軸450に対応する。図1図2及び図3に示される実施例において、分極磁石400は、一面にN極と対向面にS極とを備える長手(longitudinal)型である。第2幾何学軸Y2は、分極磁石400の長手方向の幾何学軸450に垂直である。図4図6に示される本センサ装置100の実施例において、第1幾何学軸Y1及び第2幾何学軸Y2は、互いに一致する。図1図3に示される本センサ装置100の実施例において、第1幾何学軸Y1及び第2幾何学軸Y2は、互いに直交する。図7図9において、長手方向の幾何学軸は、定義できない。
【0041】
使用時に、第1及び第2の磁気センサ200,300間の分極磁石400の回転運動は、2つの自由度での動きを検出するために、更に許可される。
【0042】
図1図3及び図7図10に示される実施例において、長手型の分極磁石400が提供される、すなわち、1面にN極と対向面にS極とが設けられる。この場合のセンサ装置100は、2つの自由度の動きを検出可能である3次元磁気センサを含み、したがって、水平回転軸Y2の周りの長手型の分極磁石400の回転を検出することに適している。
【0043】
図4図6に示される実施例において、ラジアル型の分極磁石400が提供される、すなわち、同じ面にN極及びS極が設けられる。この場合のセンサ装置100は、1つの自由度の動きを検出可能である2次元磁気センサを含み、したがって、垂直回転軸Y1の周りのラジアル型の分極磁石400の回転を検出することに適している。
【0044】
図8に示されるように、ボール・ジョイント500が設けられる。ボール・ジョイント500は、1面にN極と対向面にS極とが設けられた長手型の分極磁石400を内に収容するように適合されたボール部材550を備える。長手型の分極磁石400は、ボール部材550に受け入れられて、その結果、それらは、使用時に互いに相対的に動かない。したがって、ボール部材550は、ボール部材550が作動される時に第1及び第2の磁気センサ200,300に対して分極磁石400が動くように構成される。
【0045】
2つのプリント回路基板(PCB)250,350も提供される。具体的には、第1磁気センサ200が第1PCB250に接続され、第2磁気センサ300が第2PCB350に接続される。両方のPCBは、コネクタを介して互いに電気的に接続される。図示されるように、シングル・ダイ磁気センサ200に関連するPCB250のサイズは、デュアル・ダイ磁気センサ300に関連するPCB350のサイズよりも小さい。
【0046】
第1距離d1は、分極磁石400の中心と第1磁気センサ200との間で定義される。第2距離d2は、分極磁石400の中心と第2磁気センサ300との間で定義される。両方の距離d1,d2は、一定に保たれ、すなわち、ユーザによってシフター・レバー20が作動される時に分極磁石400が回転する場合に、それらは変化しない。第1及び第2の磁気センサ200,300と分極磁石400との間にギャップが常に存在する。
【0047】
ユーザによって作動される時に、シフター・レバー20がそれ自身で回転しないようにロックするように、抑制機構が設けられる。図10で詳細に示されるように、抑制機構は、使用時において、シフター・レバー20又は接続レバー600又は両者がそれ自身で回転することが抑制されるように、構成される。抑制機構の少なくとも2つの実施例が考案される。図1図5に示される第1実施例において、抑制機構700は、シフター・レバー20に関連する。図8に示される第2実施例において、抑制機構750は、接続レバー600に関連し、接続レバー600は、以下に説明されるように、シフター・レバー20とボール・ジョイント550とを機械的に接続する。
【0048】
本シフター装置10のシフター・レバー20は、添付図面の図1図6に示されるような1つの自由度を有するように、又は、添付図面の図7図10に示されるような2つの自由度を有するように、構成することができる。
【0049】
説明した通り、シフター装置10は、分極磁石400に回転を伝達するように1つの自由度又は2つの自由度をシフター・レバー20が有するように、構成することができる。
【0050】
図7に示されるような2つの自由度を有するシフター・レバー20において、接続レバー600は、分極磁石400が取り付けられたボール・ジョイント550にシフター・レバー20を機械的に接続するように、設けることができる。
【0051】
1つの自由度を有するシフター・レバー20において、接続レバー600は必須ではなく、シフター装置10は、簡易化することができる。1つの自由度を有するシフター・レバー20は、それにもかかわらず、シフター・レバー20が作動される時に回転可能である固定軸を備える接続レバー600を含んでもよい。
【0052】
上述のすべての実施例において、多重冗長型ポジションセンサ装置100は、動力駆動車両シフター装置10内のシフター・レバー20の位置を高精度で検出する際に、堅牢性を高め、信頼性を増加させ、真の冗長性を提供することができる。これは、単一の分極磁石400のみが要求されるので、部品点数の削減に起因して簡略化が増加したことによって実施することができる。また、分極磁石400が回転運動を実施するだけであるので、線形運動を実施する平行に組み立てられた多重のシングル・ダイ・センサを備えるデバイスを検出する従来技術と比較して、減少した寸法を有するコンパクトなシステムを実現することができる。結果として、製造コストは、有利に減少し、また、車両トランスミッションを制御する際の安全性を高めることもできる。
【0053】
本多重冗長型ポジションセンサ装置の特定の実施形態及び実施例の幾つかのみを本明細書で説明したが、当業者は、他の代替的な実施例を理解することができ、また、変形例及び均等物が可能であって、それが使用可能であることを容易に理解できるであろう。例えば、ホール・センサ素子の使用は、それらがほとんど同じ磁場を測定でき、したがって、同期する出力信号を保証できるという点で好ましいが、他の異なるセンサ素子が使用されてもよい。
【0054】
更に、本開示は、説明した特定の実施例の可能な組み合わせのすべてを包含する。
【0055】
図面に関連し、請求項の括弧内の参照符号は、請求項の理解を高めることを試みるためだけに使用され、請求項の範囲を限定するように解釈されるべきものではない。
【0056】
したがって、本開示の範囲は、特定の実施例によって限定されるべきものではなく、添付の請求項の公正な解釈によってのみ決定されるべきものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10