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特許7099946車載用道路標示装置、道路用注意喚起システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】車載用道路標示装置、道路用注意喚起システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/52 20060101AFI20220705BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20220705BHJP
   F21S 43/15 20180101ALI20220705BHJP
   F21S 45/60 20180101ALI20220705BHJP
   F21S 43/20 20180101ALI20220705BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20220705BHJP
【FI】
B60Q1/52
F21S43/14
F21S43/15
F21S45/60
F21S43/20
F21W103:60
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018236462
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020097324
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-09-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年12月21日~現在において東北自動車道の鹿角八幡平ICから小坂ICの区間にて試験実施
(73)【特許権者】
【識別番号】510257765
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ・エンジニアリング東北
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】泉 顕次
(72)【発明者】
【氏名】曽根 翔太
(72)【発明者】
【氏名】高木 一誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康平
(72)【発明者】
【氏名】池田 貴裕
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-260336(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027312(WO,A1)
【文献】特開2016-088397(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016007764(DE,A1)
【文献】特許第6403241(JP,B1)
【文献】特開2018-185988(JP,A)
【文献】実開昭56-048929(JP,U)
【文献】実開平06-058508(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
F21S 43/00
F21S 45/00
F21W 103/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、該車両の走行方向後方の路面上に、該車両が走行する車線であって、路面上の表示線により幅が規定された走行車線の幅方向へ沿うライン状の光標示が描かれるように光を照射する車載用道路標示装置であって、
前記走行車線の路面、及び該走行車線に隣接する隣接車線の路面へ前記ライン状の光標示が描かれるように光を照射する投光部を備え、
前記投光部は、前記走行車線の路面の略全幅、及び前記隣接車線の路面の全幅の半分以上に前記ライン状の光標示が描かれるように光を照射して、前記ライン状の光標示が前記走行車線の路面の略全幅と前記隣接車線の全幅の半分以上に亘る大きさの一つのラインで描かれるように設けられることを特徴とする車載用道路標示装置。
【請求項2】
前記投光部は、前記走行車線の路面の全幅、及び前記走行車線の左右両側の各隣接車線の路面においてそれぞれ全幅の半分以上に前記ライン状の光標示が描かれるように光を照射することを特徴とする請求項1に記載の車載用道路標示装置。
【請求項3】
前記投光部は、前記ライン状の光標示において照度10ルクス以上となされた明瞭部を形成し、該明瞭部が前記ライン状の光標示の全長に対して50%以上の長さで形成されると共に、該明瞭部が前記走行車線及び前記隣接車線の両方に形成されるように光を照射することを特徴とする請求項1又は2に記載の車載用道路標示装置。
【請求項4】
前記投光部は、前記ライン状の光標示において幅100mm以上となされた視認容易部を形成し、該視認容易部が前記ライン状の光標示の全長に対して50%以上の長さで形成されると共に、該視認容易部が前記走行車線及び前記隣接車線の両方に形成されるように光を照射することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の車載用道路標示装置。
【請求項5】
前記投光部が前記ライン状の光標示の長手方向端部に対応して照射する光を遮るための遮光部材を備え、該遮光部材による遮光によって前記ライン状の光標示の長手方向端部の位置が調整可能であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の車載用道路標示装置。
【請求項6】
前記投光部への着雪を抑制する発熱部材を有する融雪部を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の車載用道路標示装置。
【請求項7】
車両が走行する車線であって、路面上の表示線により幅が規定された走行車線の幅方向へ沿うライン状の光標示が走行方向後方の路面上に描かれるように光を照射する車載用道路標示装置を備えた道路用注意喚起システムであって、
前記走行車線の路面の略全幅、及び前記走行車線に隣接する隣接車線の路面の全幅の半分以上に前記ライン状の光標示が描かれるように光を照射して、前記ライン状の光標示が前記走行車線の路面の略全幅と前記隣接車線の全幅の半分以上に亘る大きさの一つのラインで描かれるように前記車載用道路標示装置が設けられると共に、文字または図形または記号による、後続車両の追い抜きまたは追い越し禁止を意味する情報表示を後方へ向けて表す情報表示部を備えることを特徴とする道路用注意喚起システム。
【請求項8】
車両が走行する車線であって、路面上の表示線により幅が規定された走行車線の幅方向へ沿うライン状の光標示が走行方向後方の路面上に描かれるように光を照射する車載用道路標示装置と誘導灯とを備えた注意喚起システムであって、
前記走行車線の路面の略全幅、及び前記走行車線に隣接する隣接車線の路面の全幅の半分以上に前記ライン状の光標示が描かれるように光を照射して、前記ライン状の光標示が前記走行車線の路面の略全幅と前記隣接車線の全幅の半分以上に亘る大きさの一つのラインで描かれるように前記車載用道路標示装置が設けられ、
前記車載用道路標示装置は、前記誘導灯の点灯している場合にのみ前記ライン状の光標示が描かれるように光を照射することを特徴とする道路用注意喚起システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両(例えば、道路保守のための作業車)に搭載され、該車両の走行方向後方の路面上に光を照射することにより、後続車両のドライバー等に対し注意喚起できる車載用道路標示装置、及び、道路用注意喚起システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路等では、路面の清掃、散水、除雪等の道路保守のために作業車が用いられている。道路保守の作業は作業車を走行させつつ行われることがある。しかし、この際の作業車の走行速度は、一般車両の走行速度よりも低速であることが多い。このため、追突事故を防止するために、作業車に対する後続車両のドライバーに対し、前方に作業車が存在することについて注意喚起させる必要がある。更に、保守作業の内容によっては、作業車を追い抜くことにより危険が生じる場合がある。このため、作業車の後続車両のドライバーに対し、作業車を追い抜きまたは追い越すことを禁止する情報を与えることが必要になる場合がある。
【0003】
一方、車両に搭載され、霧の発生時に点灯することで、後続車両に注意喚起を行う「リアフォグランプ装置」が存在する。この装置は例えば、特許文献1に記載された構成を有しており、車両の後部から後方へと光を照射するよう構成されている。
【0004】
しかし、この「リアフォグランプ装置」では、該装置を搭載した車両と同一車線を走行する車両に注意喚起を行うことができるにとどまっていた。このため、この装置は、前述した作業車における事情に完全に応えられる構成ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6203541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、後続車両のドライバーに対し、前方に車両が存在することについて注意喚起させることができ、かつ、後続車両のドライバーに対し、作業車を追い抜きまたは追い越すことを禁止する情報を与えることのできる、車載用道路標示装置、及び、道路用注意喚起システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両に搭載され、該車両の走行方向後方の路面上に走行車線の幅方向へ沿うライン状の光標示が描かれるように光を照射する車載用道路標示装置であって、前記走行車線の路面、及び該走行車線に隣接する隣接車線の路面へ前記ライン状の光標示が描かれるように光を照射する投光部を備える車載用道路標示装置である。
【0008】
この構成によると、車両の走行方向後方の路面上に、走行車線の路面及び隣接車線の路面へライン状の光標示を描くことができる。このため、走行車線及び隣接車線を走行する後続車両のドライバーに対して、車載用道路標示装置が搭載された車両が存在することについて注意喚起できる。
【0009】
また、前記投光部は、前記走行車線の路面の略全幅、及び前記隣接車線の路面の全幅の半分以上に前記ライン状の光標示が描かれるように光を照射することができる。
【0010】
この構成によると、車載用道路標示装置が搭載された車両の走行車線の路面の略全幅にライン状の光標示が描かれるため、当該走行車線を走行する後続車両のドライバーに対して特に注意喚起でき、それと共に、隣接車線を走行する後続車両のドライバーに対しても注意喚起できる。
【0011】
また、前記投光部は、前記走行車線の路面の全幅、及び前記走行車線の左右両側の各隣接車線の路面においてそれぞれ全幅の半分以上に前記ライン状の光標示が描かれるように光を照射することができる。
【0012】
この構成によると、車載用道路標示装置が搭載された車両の走行車線の両隣の車線にもライン状の光標示が描かれるため、3車線以上を有する道路であっても、走行車線とその両隣の車線をそれぞれ走行する後続車両のドライバーに対して注意喚起できる。
【0013】
また、前記投光部は、前記ライン状の光標示において照度10ルクス以上となされた明瞭部を形成し、該明瞭部が前記ライン状の光標示の全長に対して50%以上の長さで形成されると共に、該明瞭部が前記走行車線及び前記隣接車線の両方に形成されるように光を照射することができる。
【0014】
この構成によると、ライン状の光標示において照度10ルクス以上で、かつ、ライン状の光標示の全長に対して50%以上の長さの明瞭部が、走行車線及び隣接車線の両方に形成されることから、例えば悪天候時でも、後続車両のドライバーに対して有効に注意喚起できる。
【0015】
また、前記投光部は、前記ライン状の光標示において幅100mm以上となされた視認容易部を形成し、該視認容易部が前記ライン状の光標示の全長に対して50%以上の長さで形成されると共に、該視認容易部が前記走行車線及び前記隣接車線の両方に形成されるように光を照射することができる。
【0016】
この構成によると、ライン状の光標示において幅100mm以上で、かつ、ライン状の光標示の全長に対して50%以上の長さの視認容易部が、走行車線及び隣接車線の両方に形成されることから、例えば悪天候時でも、後続車両のドライバーに対して有効に注意喚起できる。
【0017】
また、前記車載用道路標示装置は、前記投光部が前記ライン状の光標示の長手方向端部に対応して照射する光を遮るための遮光部材を備え、該遮光部材による遮光によって前記ライン状の光標示の長手方向端部の位置を調整可能とできる。
【0018】
この構成によると、遮光部材による遮光によってライン状の光標示の長手方向端部の位置が調整可能であることから、車載用道路標示装置が搭載された車両が走行する道路の状況に対して適切な照射状態とできる。
【0019】
また、前記車載用道路標示装置は、前記投光部への着雪を抑制する発熱部材を有する融雪部を備えることができる。
【0020】
この構成によると、発熱部材により投光部への着雪が抑制されるため、降雪時であっても、投光部からの光を確実に路面上に到達させられる。
【0021】
また本発明は、走行車線の幅方向へ沿うライン状の光標示が走行方向後方の路面上に描かれるように光を照射する車載用道路標示装置を備えた道路用注意喚起システムであって、前記走行車線の路面、及び該走行車線に隣接する隣接車線の路面へ前記ライン状の光標示が描かれるように前記車載用道路標示装置が設けられると共に、文字または図形または記号による、後続車両の追い抜きまたは追い越し禁止を意味する情報表示を後方へ向けて表す情報表示部を備える道路用注意喚起システムである。
【0022】
この構成によると、情報表示部により、後続車両のドライバーに追い抜きまたは追い越し禁止の情報を認識させることができる。
【0023】
また本発明は、走行車線の幅方向へ沿うライン状の光標示が走行方向後方の路面上に描かれるように光を照射する車載用道路標示装置と誘導灯とを備えた注意喚起システムであって、前記走行車線の路面、及び該走行車線に隣接する隣接車線の路面へ前記ライン状の光標示が描かれるように前記車載用道路標示装置が設けられ、前記車載用道路標示装置は、前記誘導灯の点灯している場合にのみ前記ライン状の光標示が描かれるように光を照射する道路用注意喚起システムである。
【0024】
この構成によると、車載用道路標示装置と誘導灯とは同時に作動するので、後続車両のドライバーに対して強く注意喚起できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、走行車線及び隣接車線を走行する後続車両のドライバーに対して、車載用道路標示装置が搭載された車両が存在することについて注意喚起できる。このため、後続車両のドライバーに対し、前方に車両が存在することについて注意喚起させることができると共に、隣接車線の路面上にもライン状の光標示が描かれるから、後続車両のドライバーに対し、作業車を追い抜きまたは追い越すことを禁止する情報を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る車載用道路標示装置を含む道路用注意喚起システムを搭載した作業車を示す側面図である。
図2】前記道路用注意喚起システムを搭載した作業車を示す背面図である。
図3】前記車載用道路標示装置を示す斜視図である。
図4】前記車載用道路標示装置を示す右側面図である。
図5】前記車載用道路標示装置を示す正面図である。
図6】前記車載用道路標示装置を示す平面図である。
図7】前記作業車と走行車線、隣接車線との関係を示す概略的な平面図である。
図8】前記車載用道路標示装置による走行車線と隣接車線への光の照射範囲を示す概略説明図である。
図9】前記車載用道路標示装置における遮光部材の一例を示す概略説明図であり、(A)は遮光部材がスライド移動する形態を示し、(B)は遮光部材が回動する形態を示す。
図10】前記道路用注意喚起システムとして、前記車載用道路標示装置、情報表示部、誘導灯(散光式回転灯)が設けられた場合における投光状態を示す、車両後方から見た場合の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の車載用道路標示装置及び道路用注意喚起システムにつき、一実施形態として、道路保守のための車両である作業車Bに適用した形態を取り上げて説明を行う。作業車Bの具体例としては、除雪車、湿塩散布車、路面清掃車、散水車、標識車が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0028】
本実施形態の道路用注意喚起システム1に含まれる車載用道路標示装置2は、図1及び図2に示すように、路面上にライン状の光標示Lが描かれるように光を照射する投光部3と、投光部3を作業車Bにおける車両本体に所望の位置関係で設置するための支持部4とを備える。なお、以下の説明における「前後方向」との表現は、道路用注意喚起システム1(車載用道路標示装置2)が搭載された作業車Bの走行方向を基準とする。「上下方向」「幅方向」との表現も該作業車Bを基準とした表現である。道路用注意喚起システム1(車載用道路標示装置2)の各構成部分における方向も、特記しない限りこの方向を用いて説明する。ただし、投光部3を単体で説明した箇所については、光の照射方向を基準として前後を説明する場合もある。
【0029】
なお、図面に関しては、説明の都合上、車両に関する法規に規定された寸法通りに示していないところがある。具体的に、図1及び図2においては、発明の要部である車載用道路標示装置2を実際よりも拡大して描くことで、設置状態をわかりやすく示している。ちなみに、図1及び図2に示す作業車Bへ車載用道路標示装置2を実際に搭載する場合には、車載用道路標示装置2の上端を、後述する散光式回転灯6の上端よりも下方に位置させることが好ましい。また、車載用道路標示装置2の後端を、作業車Bの後端(具体的にはバンパー)よりも前方に位置させることが好ましい。また、図7及び図8においては、車載用道路標示装置2の後部が作業車Bの後端(具体的にはバンパー)よりも後方に突出して描くことで、光の照射状態をわかりやすく示している。ちなみに、図7及び図8に示す作業車Bへ車載用道路標示装置2を実際に搭載する場合には、前述と同じく、車載用道路標示装置2の後端を、作業車Bの後端(具体的にはバンパー)よりも前方に位置させることが好ましい。実際の搭載状態を前述のようにすることで、車載用道路標示装置2を新規に搭載する場合、または、既存の作業車Bに改造で搭載する場合の両方で、搭載後の作業車Bを、車両に関する法規に適合させることができる。
【0030】
投光部3は、図3図6に示すように、発光する部分である発光部311と、路面にライン状の光像から形成される光標示L(図7図8図10参照)が描かれるように、発光部311から照射された光を集束するレンズ部312とを有する照射手段31と、照射手段31が設けられる本体部32とを備える。発光部311は、複数のLED素子3111が基板上に、図5に一部が示されているように、横1列の直線状に配置されている。レンズ部312は、複数のLED素子3111からの放射状の光を集束して、路面にライン状の光標示Lを描くように構成されている。具体的に、レンズ部312には、平板状のシリンドリカルレンズ(詳細には、シリンドリカルフレネルレンズ)が用いられている。本体部32は、照射手段31を収容する箱型の部分であって、その照射方向基準の前端部は光の透過が可能なようにされている。作業車Bは屋外で使用され、更に除雪車や湿塩散布車は降雪中に使用されることが多い。このため、本体部32は防水機能を備えることが好ましい。
【0031】
本実施形態では、投光部3から緑色の光が照射される。このため、路面上のライン状の光標示Lは緑色となる。このため例えば、路面に積雪がある場合、白色の雪の上に緑色の光標示Lが形成されることから、後続車両のドライバーが光標示Lを明確に視認できる。
【0032】
本体部32における幅方向の各側面には遮光部材33が設けられている。この遮光部材33は、路面上に描かれるライン状の光標示Lの長さ及び投光位置を調整するための板状体である。遮光部材33の機能については後に述べる。本実施形態の遮光部材33には、図3及び図4に実線で示す状態で、照射方向基準で前後方向に延びる長孔332が設けられ、本体部32の側面から延びる固定ボルト333が貫通している。固定ボルト333を緩めた状態で、遮光部材33を照射方向基準で前方(図4の水平矢印の方向)にスライド移動し、図4に二点鎖線で示す状態にできる。幅方向の一方に設けられた遮光部材33と他方に設けられた遮光部材33は、別々に移動させることができる。なお、本発明では遮光部材33は必須ではなく、設けないこともできる。
【0033】
支持部4は、図3図5に示すように、投光部3に取り付けられる本体取付部41と、車両本体に取付けられる車両取付部42と、本体取付部41と車両取付部42とを連結する連結部43とを備える。
【0034】
本体取付部41は、本体部32の幅方向両側面から突出した部分であり、本実施形態では、図示のように、本体部32にねじ込まれたボルトとして実施されている。本実施形態では、図3及び図4に示すように3本のボルトが用いられている。本体取付部41は、連結部43により支持される。本実施形態では、連結部43による本体部32の支持構造は、幅方向両側からなされる両持ち構造である。しかし、例えば本体取付部41を、本体部32の幅方向一方の側面からのみ突出した部分として片持ち構造とすることもできる。
【0035】
車両取付部42は、例えば板状体が折り曲げられ、縦断面形状が横倒しの「コ」の字状とされている部分であって、下面部421と、下面部421の幅方向両端から上方に延びる側面部422とを有する。下面部421には、図示しない貫通孔が設けられており、作業車Bにおける車両本体または、車両本体に取り付けられたブラケット(図示しない)に対して、例えばボルト止めできる。
【0036】
連結部43は、車両取付部42の側面部422にそれぞれ固定された平板状の部分である。連結部43には、例えば図3及び図4に示すように多数の貫通孔431が形成されていて、この多数の貫通孔431から任意に選ばれた、片側当たり二つ以上の貫通孔431を用いて、車両取付部42に対してねじ止めすることができる。多数の貫通孔431が形成されたことにより、車両取付部42の形状を変更した場合への対応性が高い。
【0037】
また、連結部43には、本体取付部41を構成する3本のボルトのうち、図示上方の1本が貫通する円形の貫通孔432と、図示下方の2本がそれぞれ貫通し、一定曲率で形成された湾曲長孔433とを備えている。この構成により、連結部43を基準とした、側方(幅方向一方)から見た場合の本体取付部41の角度を、湾曲長孔433の形成範囲に対応した範囲で、左右方向に延びる左右軸周りの回転方向に調整できる。これにより、支持部4及び支持部4が取り付けられた車両本体に対して本体部32を首振りできるので(図4に示す湾曲矢印と、二点鎖線で斜め向きに示した形状(遮光部材33が本体部32の側方にある状態と、投光部3の照射方向基準で前方にスライド移動した状態の形状)を参照)、発光部311から照射された光の光軸の方向を変更することができる。例えば図4に二点鎖線で示した範囲で、光軸の方向を水平方向から下斜め方向に調整できる。なお、図4の二点鎖線で示した形状は、遮光部材33を照射方向基準で前方に引き出した状態の形状である。
【0038】
本実施形態の車載用道路標示装置2は、図1及び図2に示すように、作業車Bにおける幅方向中央であり車両本体の上部に、支持部4を介して投光部3が設置されて構成されている。なお、車両本体における投光部3の設置位置は、作業車Bの後方の路面に投光部3の光が照射可能な位置であれば、本実施形態のような上部に限定されず、例えば図10に示すようなやや下方の位置や、作業車Bの幅方向中央を外れた位置のように、種々の位置とできる。
【0039】
以上のように構成された本実施形態の車載用道路標示装置2において、投光部3は、図7に示すように、走行車線W1(車両本体に車載用道路標示装置2が搭載された状態である作業車Bが走行する車線)の路面、及び走行車線W1に隣接する隣接車線W2の路面へ前記ライン状の光標示Lが描かれるように光を照射する。図7に示した例では、走行車線W1と隣接車線W2のほぼ全幅に光標示Lが描かれているが、後述のようにこれに限定されない。投光部3による光の照射により、走行車線W1及び隣接車線W2を走行する後続車両のドライバーに対して、車載用道路標示装置2が搭載された作業車Bが存在することについて注意喚起できる。特に高速道路では、同一方向の車線が2車線以上存在することが通常であるから、本実施形態の車載用道路標示装置2は高速道路において有用である。なお、ここで用いた「走行車線」との用語は、作業車Bが実際に走行する車線のことを指し、高速道路において一般的に使用される「走行車線」とは異なる概念の用語である。
【0040】
投光部3は、走行車線W1の路面の略全幅、及び隣接車線W2の路面の全幅の半分以上に前記ライン状の光標示Lが描かれるように光を照射できる。このため、走行車線W1を走行する後続車両のドライバーに対して特に注意喚起でき、それと共に、隣接車線W2を走行する後続車両のドライバーに対しても注意喚起できる。
【0041】
更に投光部3は、図8に示すように、走行車線W1の路面の全幅、及び走行車線W1の左右両側の各隣接車線W2(左隣接車線W21及び右隣接車線W22)の路面においてそれぞれ全幅の半分以上に前記ライン状の光標示Lが描かれるように光を照射できる。このため、交通量に応じて3車線以上とされた道路や、登坂車線を有する道路であっても、走行車線W1とその両隣の車線をそれぞれ走行する後続車両のドライバーに対して注意喚起できる。
【0042】
図8に示す例はあくまでも一例であってこれに限定されないが、この例では、ライン状の光標示Lが投光部3の(車両基準の)後端から平面視で4.5mの路面上に、8.0mの長さで描かれる。各車線の幅寸法(路面上の表示線(白線)の中心位置同士の距離)が3.75mである場合、走行車線W1においては全幅分である3.75mの長さで描かれ、走行車線W1の左右両側の各隣接車線W21,W22においては全幅の半分以上である2.125mの長さで描かれる(前記各寸法は全て概略値である)。
【0043】
また投光部3は、ライン状の光標示Lにおいて照度10ルクス以上となされた明瞭部を形成することができる(図示はしない)。この明瞭部はライン状の光標示Lの全長に対して50%以上の長さで形成された、連続する一つの光像である。本実施形態の明瞭部では、視認性を上げるべく、ライン状の光標示Lの全長に対して50%以上の長さで形成された光像のうち少なくとも一部の照度を20ルクス以上に設定している。これと共に、明瞭部が走行車線W1及び隣接車線W2の両方に形成される。この場合、明瞭部が、走行車線W1及び隣接車線W2の両方に形成されることから、例えば悪天候時でも、後続車両のドライバーに対して有効に注意喚起できる。
【0044】
また投光部3は、ライン状の光標示Lにおいて幅100mm以上となされた視認容易部を形成することができる(図示はしない)。この視認容易部はライン状の光標示Lの全長に対して50%以上の長さで形成された、連続する一つの光像である。これと共に、視認容易部が走行車線W1及び隣接車線W2の両方に形成される。この場合、視認容易部が、走行車線W1及び隣接車線W2の両方に形成されることから、例えば悪天候時でも、後続車両のドライバーに対して有効に注意喚起できる。なお、明瞭部と視認容易部は、一方だけを形成することもできるし、両方を形成することもできる。両方を形成する場合、形成範囲が重複していてもよい。
【0045】
また投光部3は、前述のように遮光部材33を備えることができる。遮光部材33は、ライン状の光標示Lの長手方向端部に対応して照射する光を遮るための部材である。遮光部材33は、例えば図9(A)に略示するように、遮光部材33がスライド移動する形態とできる。この場合、図中に二点鎖線で示されるように遮光部材33の照射方向基準の前端部331で光を遮ることになるので、スライド状態に対応して、路面上における光標示Lの長手方向端部の位置を定められる。遮光部材33は、図3図6に示したものとは異なる形態であって、例えば図9(B)に略示するように、遮光部材33が照射方向基準の後端部を中心に回動する形態ともできる。この場合でも、図中に二点鎖線で示されるように遮光部材33の前端部331で光を遮ることになるので、回動状態に対応して、路面上における光標示Lの長手方向端部の位置を定められる。このため、遮光部材33による遮光によってライン状の光標示Lの長手方向端部の位置を調整可能である。よって、車載用道路標示装置2が搭載された作業車Bが走行する道路の状況に対して適切な照射状態とできる。この遮光部材33により、例えば、対面通行である暫定2車線の道路において、走行車線W1だけに光標示Lを描くことができるので、不要な範囲の照射によって、反対車線のドライバーを困惑させることを防止できる。また、車線外への照射による光害を防止できる。
【0046】
また、車載用道路標示装置2は、投光部3への着雪を抑制する発熱部材を有する融雪部を備えることができる(図示はしない)。融雪部は、例えば本体部32の照射方向基準で前部に巻き付けられた発熱部材としてのラインヒーターを有する形態で実施できる。このように融雪部を備えたことで、発熱部材により投光部3への着雪が抑制されるため、降雪時であっても、投光部3からの光を確実に路面上に到達させられる。
【0047】
また本実施形態では、走行車線W1の幅方向へ沿うライン状の光標示Lが走行方向後方の路面上に描かれるように光を照射する前記車載用道路標示装置2を備えた道路用注意喚起システム1を構成できる。この道路用注意喚起システム1は、図10に示すように、走行車線W1の路面、及び走行車線W1に隣接する隣接車線W2の路面へライン状の光標示Lが描かれるように前記車載用道路標示装置2が設けられる。そしてこれと共に、文字または図形または記号による、後続車両の追い抜きまたは追い越し禁止を意味する情報表示を後方へ向けて表す情報表示部5を備えることができる。
【0048】
情報表示部5は、図1図2に示すように、作業車Bの後部に設けられ、例えばLEDの点灯により、後方に情報表示を表すことができるように構成されている。情報表示は、例えば、図10に示す「追越禁止」の文字である。このように情報表示部5を備えた道路用注意喚起システム1によると、情報表示部5により、後続車両のドライバーに追い抜きまたは追い越し禁止の情報を認識させることができる。
【0049】
また本実施形態では、走行車線W1の幅方向へ沿うライン状の光標示Lが走行方向後方の路面上に描かれるように光を照射する車載用道路標示装置2と誘導灯としての散光式回転灯6とを備えた注意喚起システムを構成できる。この道路用注意喚起システム1は、図10に示すように、走行車線W1の路面、及び走行車線W1に隣接する隣接車線W2の路面へライン状の光標示Lが描かれるように前記車載用道路標示装置2が設けられる。そして車載用道路標示装置2は、散光式回転灯6の点灯している場合にのみライン状の光標示Lが描かれるように光を照射する。この構成によると、車載用道路標示装置2と散光式回転灯6とは同時に作動するので、後続車両のドライバーに対して強く注意喚起できる。
【0050】
図10に略示した形態は、情報表示部5と誘導灯としての散光式回転灯6の両方を備えた道路用注意喚起システム1が搭載された作業車Bである。ここで、「誘導灯」とは、車両後方へ発する光の強さを変化させて後続車両に乗車する観者(ドライバー等)の視線を引きつけるように発光する灯具のことであり、本実施形態の散光式回転灯6のほか、例えば、点滅発光するライト等も該当する。この形態では、散光式回転灯6の下方に情報表示部5が設けられている。そして、情報表示部5の下方に車載用道路標示装置2が設けられている。特に、情報表示部5の下方に車載用道路標示装置2を設けることにより、図示のように車載用道路標示装置2の投光部3から路面に照射される光L1の存在を利用して、後続車両のドライバーにおいて、路面側から情報表示部5に視線が向かうように誘導可能である。これにより、後続車両のドライバーが情報表示部5を注視するように自然に仕向けることができるので、安全性を向上できる。なお、この視線誘導効果は、視界が悪くなる霧の発生時や降雪時において、投光部3から路面に至る途中の光が明瞭に視認できる場合に顕著に発揮されるので、視界が悪くなっているにもかかわらず、後続車両のドライバーの安全性を向上させられるため有利である。
【0051】
なお、図10の形態では、情報表示部5の下方に車載用道路標示装置2が設けられていたが、前記視線誘導効果を発揮するための情報表示部5に対する車載用道路標示装置2の位置関係はこれに限定されず、情報表示部5の近傍または周囲に車載用道路標示装置2が設けられていればよい。ただし、情報表示部5の下方に車載用道路標示装置2を設けることが、路面側から光L1をたどって情報表示部5に視線が向かうことを、後続車両のドライバーに対し自然に促せられるため、前記視線誘導効果を効果的に発揮できるので好ましい。
【0052】
以上のように構成された本実施形態の車載用道路標示装置2または道路用注意喚起システム1によると、走行車線W1及び隣接車線W2を走行する後続車両のドライバーに対して、車載用道路標示装置2が搭載された作業車Bが存在することについて注意喚起できる。このため、後続車両のドライバーに対し、前方に作業車Bが存在することについて注意喚起させることができると共に、隣接車線W2の路面上にもライン状の光標示Lが描かれるから、後続車両のドライバーに対し、作業車Bを追い抜きまたは追い越すことを禁止する情報を与えることができる。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0054】
例えば、前記実施形態は、道路保守のための作業車Bに適用した形態であったが、これに限定されず、例えば危険物運搬車両や警察車両等の、後続車両のドライバーに対し注意喚起させることが必要な種々の車両に対して適用が可能である。
【0055】
また、路面上に描かれる光標示Lにおける光像に関し、前述の「ライン状」の具体的形状は、前記実施形態のような直線状に限定されず、曲線状や屈曲形状であってもよく、後続車両のドライバーから一つながりの光像として視認される形状になっていればよい。また、ライン状の光標示Lは全長にわたって同一形状である必要はなく、異なる形状の組み合わせであってもよい。また、前記実施形態のように長手方向に連続的な形状に限定されず、間隔をおいて断続的な形状であってもよい。
【0056】
また、前記実施形態の投光部3は、複数のLED素子3111が基板上に1列の直線状に配置されてなるものであった。しかし限定されず、2列以上の直線状に配置されてなるものであってもよい。また、LED素子3111を用いず、投光部3からレーザー光を照射することもできる。また、複数のLED素子3111が基板上に直線以外の形状に配置されており、LED素子の前方に光を集束させるレンズを設けることによって、路面上にライン状の光像を形成することもできる。
【0057】
また、明瞭部や視認容易部は、前記実施形態では連続する一つの光像であった。しかしこれに限定されず、断続的に連なる複数の光像であってもよい。
【0058】
また、前記実施形態では、投光部3に可動の板状体である遮光部材33を設けることで、路面上に描かれるライン状の光標示Lの長さ及び投光位置を調整していた。しかし、前記調整のための構成は前記実施形態のものに限定されず、例えば、投光部3自体を幅方向に首振りまたはスライド移動することで、光標示Lの長さ及び投光位置を調整するよう構成してもよい。また、複数のLED素子のうち一部を消灯できるように構成してもよい。ちなみに、複数のLED素子の一部を消灯できるように構成することにより、光標示Lの長さを調整したり、光標示Lの明るさを調整したりすることもできる。
【0059】
また、前記実施形態の車載用道路標示装置2は、車両(作業車B)に恒常的に取り付けられるよう構成されていた。しかしこれに限定されず、着脱可能に構成し、必要に応じて車両(作業車B)に取り付けることもできる。着脱可能とした場合、複数の車両(作業車B)で車載用道路標示装置2を兼用できるため有利である。
【0060】
また、情報表示部5は、前記実施形態のように作業車Bに固定的に設けられた固定式に限定されず、例えば、通常走行時は作業車Bの側方(つまり、作業車Bの走行方向と平行)に位置しており、情報表示を行う際に回動して後方を向く、折り畳み式等の可動式であってもよい。また、情報表示部5において情報表示を後方へ向けて表す表示体に関しては、表示内容が一定であって変更不能な表示体であってもよいし、例えば、ドットマトリクス状に配置させたLED等の発光体を選択的に点灯・消灯させて表示させる表示体であり、その表示内容を変更可能な表示体であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…道路用注意喚起システム、2…車載用道路標示装置、3…投光部、4…支持部、5…情報表示部、6…誘導灯(散光式回転灯)、31…照射手段、32…本体部、33…遮光部材、41…本体取付部、42…車両取付部、43…連結部、311…発光部、312…レンズ部、331…前端部、332…長孔、333…固定ボルト、421…下面部、422…側面部、431…貫通孔、432…貫通孔、433…湾曲長孔、3111…LED素子、B…車両(作業車)、L…光標示、L1…光、W1…走行車線、W2…隣接車線、W21…左隣接車線、W22…右隣接車線
図1
図2
図3
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図8
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図10