(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】組織試料からのDNA及びRNA抽出のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20220705BHJP
C12N 1/06 20060101ALI20220705BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20220705BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20220705BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220705BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
C12N1/06
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/686 Z
G01N33/50 P
(21)【出願番号】P 2018503555
(86)(22)【出願日】2016-07-12
(86)【国際出願番号】 US2016041917
(87)【国際公開番号】W WO2017019293
(87)【国際公開日】2017-02-02
【審査請求日】2019-07-10
(32)【優先日】2015-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504019928
【氏名又は名称】セファイド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・イー・ホー
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2793026(EP,A1)
【文献】特表2014-526255(JP,A)
【文献】特表2013-530697(JP,A)
【文献】特表2008-529516(JP,A)
【文献】特表2015-528311(JP,A)
【文献】特表2016-520293(JP,A)
【文献】特表2015-518720(JP,A)
【文献】特表2013-504330(JP,A)
【文献】特表2012-523851(JP,A)
【文献】粂 和彦,東京大学医学部生化学教室(細胞情報研究部門)ラボマニュアル、[online],東京大学医学部生化学教室(細胞情報研究部門),2014年10月28日,URL; https://web.archive.org/web/20141028104050/http://square.umin.ac.jp/biochem2/contents/Manuals/manual18.html
【文献】Renaud Grepin and Gilles Pages, Measurement of Hemoglobin, bio-protocol,Vol.2, Iss.22,2012年11月20日,URL: https://bio-protocol.org/e291
【文献】Adalucy Alvarez-Aldana, et al.,Comparison of five protocols to extract DNA from paraffin-embedded tissues for the detection of human papillomavirus,Pathol Res Pract.,2015年02月,211(2),150-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/10
C12N 1/06
C12Q 1/6806
C12Q 1/6844
C12Q 1/686
G01N 33/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞又は組織試料からの核酸の抽出のための溶解溶液であって、
300mM~500mMの
範囲の濃度のNaClと、
前記溶液のpH
をpH6.8
~pH7.3の範囲のpHに維持するために十分な緩衝液
であって、緩衝液が、TAPSO、HEPES、TES、MOPS、PIPES、カコジル酸塩、SSCからなる群から選択され、及び、緩衝液の濃度が、10mM~最大100mMの範囲である、緩衝液と、
N-アセチル-L-システイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸(EDDS)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、及びホスホン酸塩キレート剤からなる群から選択される剤を含むキレート剤
であって、前記溶液中のキレート剤の濃度が、5mM~100mMの範囲である、キレート剤と
、
50mM未満の濃度のMgCl
2と、
非イオン性界面活性剤
であって、非イオン性界面活性剤がBRIJ(登録商標)35、BRIJ(登録商標)58、n-デシル-β-D-グルコピラノシド、n-デシル-β-D-マルトシド、デオキシ-BIGCHAP、ジギトニン、n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド、ドデシル-β-D-マルトシド、HECAMEG、MEGA-8、MEGA-9、n-ノニル-β-D-グルコピラノシド、n-ノニル-β-D-マルトシド、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、n-オクチル-β-D-チオグルコピラノシド、オクチル-D-グルコピラノシド、PLURONIC(登録商標)F-68、サポニン、ショ糖モノラウリン酸エステル、n-テトラデシル-β-D-マルトシド、n-トリデシル-β-D-マルトシド、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標) 80、及び、n-ウンデシル-β-D-マルトシドからなる群から選択され、及び、前記溶液の0.1%~2%を構成する、非イオン性界面活性剤と
を含む、
溶解溶液。
【請求項3】
前記緩衝液の濃度が
、20mM~最
大50mMの範囲であるか、若しくは
、50mMである、又は、
前記溶液のpHが
、6.8
~7.2の範囲である、又は、
前記NaClが
、350mM~最
大450mMの範囲の濃度であるか、若しくは
、400mMである、
請求項1又は2に記載の溶解溶液。
【請求項5】
前記溶液中の前記キレート剤の濃度が
、10mM
~50mMの範囲であるか、若しくは
、25mMである、又は、
前記MgCl
2の濃度が
、2mM~最
大20mM、若しく
は5mM~最
大15mMの範囲であるか、若しくは
、10mMである、又は、
前記界面活性剤が、前記溶液
の0.5%
~1.5%、若しくは、前記溶液
の1%を構成する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の溶解溶液。
【請求項6】
400mM NaClと
、
50mM HEPESナトリウム塩(MW260.29)と
、
25mM EDTAと
、
10mM MgCl
2と、及び
、
1% Tween20と
を含む、請求項1に記載の溶解溶液。
【請求項7】
プロテアーゼを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の溶解溶液。
【請求項8】
細胞又は組織試料から核酸を抽出するための方法であって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の溶解溶液中で1つ又は複数の細胞又は組織試料をインキュベートする工程であって、前記インキュベートする工程は、1つ又は複数の細胞又は組織試料から核酸が抽出された1つ又は複数の溶解試料を作製するように
、50℃
~100℃の範囲の温度であり、前記インキュベーションは
、10分間~最
大24時間の範囲の時間である、工程、及び、
場合により、前記溶解試料から前記核酸を回収する工程、
を含む、方法。
【請求項9】
前記温度が
、60℃
~90℃、若しく
は70℃
~90℃、若しく
は75℃
~85℃、又
は80℃である、あるいは、
前記インキュベートする工程が
、15分間~最
大12時間、若しく
は20分間~最
大8時間、若しく
は30分間~最
大6時間、若しく
は30分間~最
大4時間、若しく
は30分間~最大2時間の範囲の時間、又は
、15分間、若しく
は30分間、若しく
は45分間、若しく
は60分間、若しく
は90分間、若しく
は120分間である、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞又は組織試料が、組織生検、吸引液、細胞塗抹、ワイプ、スクレイピング、保管試料、固定組織切片、凍結切片、細胞ボタン、及び組織マイクロアレイからなる群から選択される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
更なる脱パラフィン工程、若しくは、追加の脱パラフィン用試薬を含まない、又は、
脱パラフィンのために有機溶媒を利用しない、又は、
前記インキュベートする工程が、有機溶媒の存在下ではない、
請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
溶解した組織試料が、低級アルコールと混合され、保存される、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶解溶液中の核酸が、前記溶解溶液が、少なくとも6時間の期間にわたり、又は少なくとも1日間の期間にわたり、又は少なくとも2日間の期間にわたり、又は少なくとも4日間の期間にわたり、又は少なくとも1週間の期間にわたり、又は少なくとも2週間の期間にわたり、又は少なくとも1ヶ月間の期間にわたり、又は少なくとも2ヶ月間の期間にわたり、又は少なくとも3ヶ月間の期間にわたり保存された時に、保存後のRT-PCRによって測定されるように、安定である、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
核酸が、2以上の異なる保存期間の後に、溶解した試料から増幅される、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記2以上の異なる保存期間が、少なくとも6時間の期間にわたる、又は少なくとも1日間の期間にわたる、又は少なくとも2日間の期間にわたる、又は少なくとも4日間の期間にわたる、又は少なくとも1週間の期間にわたる、又は少なくとも2週間の期間にわたる、又は少なくとも1ヶ月間の期間にわたる、又は少なくとも2ヶ月間の期間にわたる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2015年7月24日出願の米国特許出願第62/196,774号の利益及び優先権を主張し、本出願は全ての目的についてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府による支援の記載
適用なし
【背景技術】
【0003】
遺伝子発現プロファイリングの使用は、様々な研究用途で普及しているのみでなく、急速に多くの療法的管理体制の部分になってきている。例えば、組織における遺伝子発現レベルの決定は、ヒト疾患の正確な診断のために非常に重要であり、患者の治療過程を決定するために益々使用されている。薬理ゲノミクスの方法は、特定の薬物に応答しそうな患者を特定することができ、新規療法アプローチへ先導することができる。
【0004】
例えば、チミジル酸合成酵素(TS)は、DNA生合成における必須酵素であり、それはデオキシウリジン一リン酸(dUMP)のデオキシチミジン一リン酸(dTMP)への還元的メチル化を触媒し、細胞内でのピリミジンヌクレオチドの新規合成のための経路を提供する(Johnstonら、(1995)、Cancer Res. 55、1407~1412頁)。チミジル酸合成酵素は、化学療法薬、最も一般には葉酸代謝拮抗剤5-フルオロウラシル(5-FU)の標的である。結腸がん、頭頸部がん、並びに乳がんの治療に有効な剤として、5-FUの主要な活性はTS活性を阻害し、細胞内チミンレベルの枯渇をもたらし、続いて細胞死を引き起こすことであると考えられている。
【0005】
また、5-FUへの曝露後の新生細胞におけるTSタンパク質の急性誘発及びTS酵素レベルの増大を示した研究により示されるように、チミジル酸合成酵素は、腫瘍抵抗性の発達において臨床的な重要性を有することが知られている(Spearsら、(1982)、Cancer Res. 42、450~456頁;Swainら、(1989)、J. Clin. Oncol. 7、890~899頁)。腫瘍が5-FU等の細胞毒性剤に応答してTSを急性過剰発現する能力は、フルオロウラシル抵抗性の発達において役割を果たし得る。TSタンパク質レベルは、5-FU療法の有効性と直接相関するように見えるので、タンパク質とRNA発現との間には直接相関があり、TS発現は、結腸直腸がん及び乳がんにおける強力な予後徴候マーカーである(Jackmanら、(1985)、Experimental and Clinical Progress in Cancer Chemotherapy、F. M. Muggia編;Martinusら、(1992)、Cancer Res. 52、108~116頁)。進行した転移性疾患では、RT-PCRにより定量される高TS mRNA、及び高TSタンパク質発現の両方は、フルオロピリミジンに基づく療法への不良な応答を予測することが、結腸直腸がん(Johnstonら、(1995)、上記;Farrugiaら、(1997)、Proc. Annu. Meet Am. Assoc. Cancer Res. 38、A4132頁;Leichmanら、(1997)、J. Clin. Oncol. 15(10)、3223~3229頁)、胃がん(Lenzら、(1998)、Clin. Cancer Res. 4(5)、1227~1234頁)、及び頭頸部がん(Johnstonら、(1995)、Cancer Res. 55、1407~1412頁;Leichmanら、(1997)、J. Clin. Oncol. 15(10)、3223~3229頁)について示されている。
【0006】
同様に、KRAS発癌遺伝子の突然変異は、結腸直腸がんにおけるパニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))及びセツキシマブ(ERBITUX(登録商標))療法への非常に不良な応答を予測するものである(Lievreら、(2006)、Cancer Res. 66(8)、3992~3995頁)。現在、結腸直腸がん患者がEGFR阻害薬の1つに応答するかどうかを予測する最も信頼性のある方法の1つは、結腸直腸がんの40%で起こるKRASをコードする遺伝子におけるある特定の「活性化」突然変異について試験することである。研究は、腫瘍がKRAS遺伝子の突然変異変形体を発現している患者はセツキシマブ又はパニツムマブに応答しないことを示す。
【0007】
この種類の情報の1つの重要な源は、ホルマリン固定パラフィン包埋組織(「FFPET」)試料の形態から得られ、これは様々な異なる疾患の様々な診断及び/又は療法レジメンを受ける患者から取られた生検標本から日常的に創出される。これらの試料は通常、対応する臨床記録を伴い、多くの場合、診断及び治療法の決定で重要な役割を果たす。例えば、腫瘍生検FFPET試料は多くの場合、がんの段階分類、患者の生存、及び治療管理体制と連結しており、これにより遺伝子発現パターンと相互参照及び相関され得る潜在的に豊富な情報を提供する。しかしながら、FFPET試料から単離される核酸の品質及び量が不十分であることから、遺伝子発現プロファイリング研究でそれらを利用するには至っていない。
【0008】
RNAは、FFPET試料から精製及び分析され得ることが知られている(Rupp及びLocker、(1988)、Biotechniques 6、56~60頁)が、しかしながら、FFPET試料から単離されたRNAは多くの場合、中程度~高度に分解及び断片化されている。分解及び断片化されていることに加えて、ホルマリンによるRNAの化学修飾は、ポリアデニル酸尾部へのオリゴ-dTプライマーの結合を制限し、逆転写の効率を妨げ得る。
【0009】
これらの困難の観点から、ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPET)からの核酸の分析は、PCR増幅可能遺伝子材料を発生させるために必要な多数の工程のために困難であることが証明されている。FFPETから核酸を単離する手順は、パラフィンの除去(脱パラフィン)、保存試料の溶解(プロテアーゼ消化)、固定プロセス中に得た架橋を戻すこと、及び核酸の固体相に基づく精製を含み得る。これらのプロトコルは典型的に、複雑かつ多くの労働を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第5,958,349号
【文献】米国特許第6,403,037号
【文献】米国特許第6,440,725号
【文献】米国特許第6,783,736号
【文献】米国特許第6,818,185号
【文献】米国特許公開公報第2012/0171686号
【文献】米国特許公開公報第2009/0062135号
【文献】米国特許公開公報第2010/0233704号
【文献】米国特許公開公報第2010/0240049号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Johnstonら、(1995)、Cancer Res. 55、1407~1412頁
【文献】Spearsら、(1982)、Cancer Res. 42、450~456頁
【文献】Swainら、(1989)、J. Clin. Oncol. 7、890~899頁
【文献】Jackmanら、(1985)、Experimental and Clinical Progress in Cancer Chemotherapy、F. M. Muggia編
【文献】Martinusら、(1992)、Cancer Res. 52、108~116頁
【文献】Farrugiaら、(1997)、Proc. Annu. Meet Am. Assoc. Cancer Res. 38、A4132頁
【文献】Leichmanら、(1997)、J. Clin. Oncol. 15(10)、3223~3229頁
【文献】Lenzら、(1998)、Clin. Cancer Res. 4(5)、1227~1234頁
【文献】Lievreら、(2006)、Cancer Res. 66(8)、3992~3995頁
【文献】Rupp及びLocker、(1988)、Biotechniques 6、56~60頁
【文献】Innisら、(1990)、PCR Protocols. A guide to Methods and Application.、Academic Press, Inc.、San Diego
【文献】Wu及びWallace、(1989)、Genomics 4、560頁
【文献】Landegrenら、(1988)、Science 241、1077頁
【文献】Barringerら、(1990)、Gene 89、117頁
【文献】Kwohら、(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86、1173頁
【文献】Guatelliら、(1990)、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 87、1874頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
細胞又は組織試料(例えば穿刺吸引液及び/若しくは固定包埋組織試料(例えばFFPET試料)、並びに/又は凍結切片)からの核酸の単離のための方法及び試薬が提供される。一部の実施形態では、本方法は、簡単に容易に半自動化又は完全自動化され、典型的には高収率でPCR増幅可能な質の核酸を抽出しつつも最小限の実践時間しか必要としない。
【0013】
本明細書で予期される様々な実施形態として、以下のものの1つ又は複数が挙げられ得るが、これらに限定される必要はない。
【0014】
実施形態1:細胞又は組織試料からの核酸の抽出のための溶解溶液であって、約300mM超の濃度のNaCl2と、前記溶液のpHを約pH6.8~約pH7.3の範囲のpHに維持するために十分な緩衝液と、キレート剤と、約50mM未満の濃度のMgCl2と、界面活性剤とを含む、溶解溶液。
【0015】
実施形態2:ホルマリン固定パラフィン包埋組織試料用である、実施形態1に記載の溶解溶液。
【0016】
実施形態3:穿刺吸引液及び/又は細胞塗抹用である、実施形態1に記載の溶解溶液。
【0017】
実施形態4:消泡剤を含む、実施形態1から3のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0018】
実施形態5:保存剤/殺生物剤を含む、実施形態1から4のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0019】
実施形態6:前記緩衝液が、HEPESナトリウム塩緩衝液である、実施形態1から5のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0020】
実施形態7:前記緩衝液の濃度が、約10mM~最大約100mM、若しくは約20mM~最大約50mMの範囲であるか、又は約50mMである、実施形態1から6のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0021】
実施形態8:前記溶液のpHが、約6.8~約7.2の範囲である、実施形態1から7のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0022】
実施形態9:前記NaClが、約300mM~約500mM、若しくは約350mM~最大約450mMの範囲の濃度であるか、又は約400mMである、実施形態1から8のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0023】
実施形態10:前記キレート剤が、N-アセチル-L-システイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸(EDDS)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、及びホスホン酸塩キレート剤からなる群から選択されるキレート剤を含む、実施形態1から9のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0024】
実施形態11:前記キレート剤が、EDTAを含む、実施形態1から10のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0025】
実施形態12:前記溶液中の前記キレート剤の濃度が、約5mM~約100mM、若しくは約10mM~約50mMの範囲であるか、又は約25mMである、実施形態1から11のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0026】
実施形態13:前記MgCl2の濃度が、約2mM~最大約20mM、若しくは約5mM~最大約15mMの範囲であるか、又は約10mMである、実施形態1から12のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0027】
実施形態14:前記界面活性剤が、イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤である、実施形態1から13のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0028】
実施形態15:前記界面活性剤が、N-ラウロイルサルコシン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、セチルメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、TRITON(登録商標)-X-100、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、CHAPS、n-オクタノイルスクロース、n-オクチル-β-D-マルトピラノシド、n-オクチル-β-D-チオグルコピラノシド、PLURONIC(登録商標)F-127、TWEEN(登録商標)20、及びn-ヘプチル-β-D-グルコピラノシドからなる群から選択される界面活性剤を含む、実施形態1から13のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0029】
実施形態16:前記界面活性剤が、TWEEN(登録商標)20を含む、実施形態13に記載の溶解溶液。
【0030】
実施形態17:前記界面活性剤が、前記溶液の約0.1%~約2%、若しくは前記溶液の約0.5%~約1.5%、又は前記溶液の約1%を構成する、実施形態1から16のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0031】
実施形態18:前記消泡剤が、有機消泡エマルション又はシロキサン含有消泡エマルションを含む、実施形態4から17のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0032】
実施形態19:前記消泡剤が、シロキサンエマルションを含む、実施形態18に記載の溶解溶液。
【0033】
実施形態20:前記消泡剤が、活性シリコン消泡剤と非イオン性乳化剤との10%エマルション(SE-15)を含む、実施形態18に記載の溶解溶液。
【0034】
実施形態21:前記消泡剤が、前記溶解溶液の約0.001%~最大約0.05%の範囲、若しくは約0.005%~最大約0.03%の範囲、若しくは約0.008%~最大約0.02%の量で存在するか、又は前記溶解溶液の約0.01%の量で存在する、実施形態4から20のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0035】
実施形態22:前記殺生物剤が、アジ化ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム十水和物、及びエデト酸二ナトリウムからなる群から選択される1つ又は複数の剤を含む、実施形態5から17のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0036】
実施形態23:前記殺生物剤が、アジ化ナトリウムを含む、実施形態22に記載の溶解溶液。
【0037】
実施形態24:前記殺生物剤が、前記溶解溶液の約0.001%~最大約0.05%の範囲、若しくは約0.005%~最大約0.03%の範囲、若しくは約0.008%~最大約0.02%の量で存在するか、又は前記溶解溶液の約0.01%の量で存在する、実施形態5から23のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0038】
実施形態25:約400mM NaClと、約50mM HEPESナトリウム塩(MW260.29)と、約25mM EDTAと、約10mM MgCl2と、約1% Tween20とを含む、実施形態1に記載の溶解溶液。
【0039】
実施形態26:前記溶液のpHが、約6.90~約7.25の範囲である、実施形態25に記載の溶解溶液。
【0040】
実施形態27:前記溶液のpHが、約6.95~約7.15の範囲である、実施形態25に記載の溶解溶液。
【0041】
実施形態28:約0.01%の消泡剤を含む、実施形態25から27のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0042】
実施形態29:前記消泡剤が、SE-15である、実施形態28に記載の溶解溶液。
【0043】
実施形態30:約0.01%のアジ化ナトリウムを含む、実施形態25から29のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0044】
実施形態31:プロテアーゼを更に含む、実施形態1から30のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0045】
実施形態32:前記プロテアーゼが、プロテイナーゼK、トリプシン、キモトリプシン、及びパパインからなる群から選択される、実施形態31に記載の溶解溶液。
【0046】
実施形態33:前記プロテアーゼが、プロテイナーゼKである、実施形態31に記載の溶解溶液。
【0047】
実施形態34:前記プロテアーゼが、14mg/mL~約22mg/mLの濃度の範囲であり、約10μL~最大約100μL、又は約20μL~最大約50μL、又は約20μL~最大約40μLの範囲の量で前記溶解溶液に添加される、実施形態31から33のいずれか1つに記載の溶解溶液。
【0048】
実施形態35:細胞又は組織試料から核酸を抽出するための方法であって、実施形態1から34のいずれか1つに記載の溶解溶液中で1つ又は複数の細胞又は組織試料をインキュベートする工程を含み、前記インキュベートする工程は、約50℃~約100℃の範囲の温度であり、前記インキュベーションは、約10分間~最大約24時間の範囲の時間である、方法。
【0049】
実施形態36:前記温度が、約60℃~約90℃、若しくは約70℃~約90℃、若しくは約75℃~約85℃、又は約80℃である、実施形態35に記載の方法。
【0050】
実施形態37:前記インキュベートする工程が、約15分間~最大約12時間、若しくは約20分間~最大約8時間、若しくは約30分間~最大約6時間、若しくは約30分間~最大約4時間、若しくは約30分間~最大約2時間の範囲の時間、又は約15分間、若しくは約30分間、若しくは約45分間、若しくは約60分間、若しくは約90分間、若しくは約120分間である、実施形態35又は36に記載の方法。
【0051】
実施形態38:前記溶解溶液から前記核酸を回収する工程を更に含む、実施形態35~37のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
実施形態39:前記回収する工程が、前記溶液への低級アルコールの添加を含む、実施形態38に記載の方法。
【0053】
実施形態40:前記低級アルコールが、エタノール又はイソプロパノールを含む、実施形態39に記載の方法。
【0054】
実施形態41:前記低級アルコールが、エタノールを含む、実施形態39に記載の方法。
【0055】
実施形態42:前記核酸が、デオキシリボ核酸(DNA)である、実施形態35から41のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
実施形態43:前記核酸が、リボ核酸(RNA)である、実施形態35から41のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
実施形態44:前記細胞又は組織試料が、組織生検、吸引液、細胞塗抹、ワイプ、スクレイピング、保管試料、固定組織切片、凍結切片、細胞ボタン(cell button)、及び組織マイクロアレイからなる群から選択される、実施形態35~43のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
実施形態45:前記細胞又は組織試料が、パンチ生検から得られた試料を含む、実施形態44に記載の方法。
【0059】
実施形態46:前記細胞又は組織試料が、口腔スクレイピング又は婦人科スクレイピングから得られた試料を含む、実施形態44に記載の方法。
【0060】
実施形態47:前記細胞又は組織試料が、マルチスパチュラ、先端延長スパチュラ、細胞採取用ブラシ、サイトピック、サーベックスブラシ、綿棒、ベイネブラシ(baynebrush)、プロファイルブラシ(profilebrush)、バルブアスピレーター、Ayreスパチュラ、及びAylesburyデバイスからなる群から選択されるデバイスを使用して得られた試料を含む、実施形態44に記載の方法。
【0061】
実施形態48:前記細胞又は組織試料が、穿刺吸引液及び/又は細胞塗抹を含む、実施形態44に記載の方法。
【0062】
実施形態49:前記細胞又は組織試料が、固定パラフィン包埋組織試料を含む、実施形態44に記載の方法。
【0063】
実施形態50:前記細胞又は組織試料が、ホルマリン固定パラフィン包埋組織試料を含む、実施形態44に記載の方法。
【0064】
実施形態51:前記細胞又は組織試料が、組織切片を含む、実施形態44に記載の方法。
【0065】
実施形態52:前記組織切片が、厚さ約1μm~約15μmの範囲である、実施形態51に記載の方法。
【0066】
実施形態53:前記組織切片が、約8μm若しくはそれ未満、又は約6μm若しくはそれ未満、又は約5μm若しくはそれ未満、又は約4μm若しくはそれ未満、又は約3μm若しくはそれ未満、又は約2μm若しくはそれ未満の厚さを有する、実施形態52に記載の方法。
【0067】
実施形態54:前記組織試料が、がん性組織からのものである、実施形態35から53のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
実施形態55:前記組織試料が、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、肝細胞癌、黒色腫、網膜芽細胞腫、乳がん、結腸直腸がん、精巣がん、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、子宮頸癌、肉腫、前立腺腫瘍、膀胱腫瘍、細網内皮組織の腫瘍、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、卵巣癌、骨肉腫、腎臓がん、及び頭頸部がんからなる群から選択されるがんからの試料を含む、実施形態54に記載の方法。
【0069】
実施形態56:更なる脱パラフィン工程及び/又は追加の脱パラフィン用試薬を含まない、実施形態35から55のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
実施形態57:脱パラフィンのために有機溶媒を利用しない、実施形態35から56のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態58:前記インキュベートする工程が、有機溶媒の存在下ではない、実施形態35から57のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態59:溶解した組織試料が、低級アルコールと混合され、保存される、実施形態35から58のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態60:前記低級アルコールが、エタノール又はイソプロパノールを含む、実施形態59に記載の方法。
【0074】
実施形態61:前記低級アルコールが、エタノールを含む、実施形態59に記載の方法。
【0075】
実施形態62:前記組織試料が、-20℃又はそれ未満の温度で保存される、実施形態59から61のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態63:溶解溶液が、少なくとも6時間の期間にわたり、又は少なくとも1日間の期間にわたり、又は少なくとも2日間の期間にわたり、又は少なくとも4日間の期間にわたり、又は少なくとも1週間の期間にわたり、又は少なくとも2週間の期間にわたり、又は少なくとも1ヶ月間の期間にわたり、又は少なくとも2ヶ月間の期間にわたり、又は少なくとも3ヶ月間の期間にわたり、又は少なくとも6ヶ月間の期間にわたり、又は少なくとも1年間の期間にわたり、又は少なくとも2年間の期間にわたり、又は少なくとも5年間の期間にわたり保存され、後のRT-PCRで一貫性のあるサイクル閾値(cycle threshold)を提供する、実施形態59から62のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態64:前記核酸の全て又は一部を増幅する工程を更に含む、実施形態35から63のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態65:PCR増幅で鋳型として前記核酸を利用する工程を更に含む、実施形態64に記載の方法。
【0079】
実施形態66:RT PCRで前記核酸を利用する工程を更に含む、実施形態64に記載の方法。
【0080】
実施形態67:GeneXpertシステムで前記核酸を増幅する工程を更に含む、実施形態64に記載の方法。
【0081】
実施形態68:前記核酸が、mRNAである少なくとも1つの標的RNAの存在及び/又は発現の発現レベルを決定するために使用される、実施形態35から67のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
実施形態69:前記核酸が、KRT20、IGF2、ANXA10、CRH、ABL、ERBB1、ERBB2、ERBB3、ERBB4、ESR1、PGR、MPO、CDKN2A、MKI67、TOP2A、MCM5、BIRC5、MMP9、及びMCM2、PTEN、APC、KRAS、GATA3、PIC3CA、MAP3K1、TP53、及びこれらのいずれかの突然変異からなる群から選択される少なくとも1つの標的RNAの存在及び/又は発現の発現レベルを決定するために使用される、実施形態35から67のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態70:核酸が、2以上の異なる時間に、元の溶解した試料から増幅される、実施形態35から69のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
実施形態71:前記2以上の異なる時間が、少なくとも6時間の期間にわたる、又は少なくとも1日間の期間にわたる、又は少なくとも2日間の期間にわたる、又は少なくとも4日間の期間にわたる、又は少なくとも1週間の期間にわたる、又は少なくとも2週間の期間にわたる、又は少なくとも1ヶ月間の期間にわたる、又は少なくとも2ヶ月間の期間にわたる、又は少なくとも3ヶ月間の期間にわたる、又は少なくとも6ヶ月間の期間にわたる、又は少なくとも1年間の期間にわたる、又は少なくとも2年間の期間にわたる、又は少なくとも5年間の期間にわたる、実施形態70に記載の方法。
【0085】
実施形態72:第2又はそれより後の増幅が、繰返しの試験を含む、実施形態70又は71に記載の方法。
【0086】
実施形態73:第2又はそれより後の増幅が、反射カートリッジ試験を含む、実施形態70又は71に記載の方法。
【0087】
実施形態74:固定パラフィン包埋組織試料における標的遺伝子の遺伝子発現の定量測定のための方法であって、実施形態35から73のいずれか1つに記載の方法に従ってホルマリン固定パラフィン包埋生物学的組織試料からRNAを抽出する工程と、抽出した核酸を、標的遺伝子mRNAの部位を増幅することができる1対のオリゴヌクレオチドプライマーを使用した増幅に供して、増幅した試料を得る工程と、前記標的遺伝子mRNAの存在及び/又は量を決定する工程とを含む、方法。
【0088】
実施形態75:前記標的遺伝子mRNAの量が、単離されたmRNAからの内部対照遺伝子のmRNAの量と比べて決定される、実施形態74に記載の方法。
【0089】
実施形態76:相対的な遺伝子発現レベルを決定する工程が、RT-PCRを使用する工程を含む、実施形態74又は75に記載の方法。
【0090】
実施形態77:内部対照遺伝子が、β-アクチンである、実施形態74から76のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態78:前記標的遺伝子が、ALK遺伝子再配置、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)、ベータ-ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(ベータ-hCG)、BCR-ABL融合遺伝子、BRAF突然変異V600E、CA15-3/CA27.29、CA19-9、CA-125、カルシトニン、癌胎児抗原(CEA)、CD20、クロモグラニンA(CgA)、染色体3、染色体7、染色体17、染色体9p21、染色体20q13、サイトケラチン断片21-1、EGFR突然変異分析、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、フィブリン/フィブリノーゲン、HE4、HER4、HER2/neu、KIT、KRAS突然変異分析、乳酸デヒドロゲナーゼ、核マトリックスタンパク質22、前立腺特異抗原(PSA)、サイログロブリン、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター(uPA)、及びプラスミノーゲンアクチベーター阻害剤(PAI-1)からなる群から選択される、実施形態74から77のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
実施形態79:細胞及び/又は組織試料からの核酸抽出のためのキットであって、実施形態1から30のいずれか1つに記載の溶解溶液を含有する容器を含む、キット。
【0093】
実施形態80:プロテアーゼを含有する容器を更に含む、実施形態79に記載のキット。
【0094】
実施形態81:前記プロテアーゼが、プロテイナーゼK、トリプシン、キモトリプシン、及びパパインからなる群から選択される、実施形態80に記載のキット。
【0095】
実施形態82:前記プロテアーゼが、プロテイナーゼKである、実施形態80に記載のキット。
【0096】
実施形態83:前記プロテアーゼ及び前記溶解溶液が、共に混合される、実施形態80から82のいずれか1つに記載のキット。
【0097】
実施形態84:前記プロテアーゼ及び前記溶解溶液が、別々の容器で提供される、実施形態80から82のいずれか1つに記載のキット。
【0098】
実施形態85:細胞又は組織試料の収集のためのデバイスを更に含む、実施形態79から84のいずれか1つに記載のキット。
【0099】
実施形態86:スクレイピング、ワイプを行うためのデバイス又はデバイスチップ、吸引液を得るためのデバイス又はデバイスチップ、パンチ生検デバイス、及び皮膚生検を得るためのブレードからなる群から選択されるデバイスを含む、実施形態85に記載のキット。
【0100】
実施形態87:穿刺吸引液を得るためのデバイス又はデバイスチップを含む、実施形態86に記載のキット。
【0101】
実施形態88:真空補助吸引液を得るためのデバイス又はデバイスチップを含む、実施形態86に記載のキット。
【0102】
実施形態89:口腔スクレイピング又は婦人科スクレイピングを行うためのデバイスを含む、実施形態86に記載のキット。
【0103】
実施形態90:マルチスパチュラ、先端延長スパチュラ、細胞採取用ブラシ、サイトピック、サーベックスブラシ、綿棒、ベイネブラシ、プロファイルブラシ、バルブアスピレーター、Ayreスパチュラ、及びAylesburyデバイスからなる群から選択されるデバイスを含む、実施形態86に記載のキット。
【0104】
実施形態91:細胞又は組織試料を受容するように、及び前記溶解溶液中又は緩衝液中にその試料を保存するように設計された容器を含む、実施形態79から90のいずれか1つに記載のキット。
【0105】
実施形態92:細胞又は組織試料を受容するように設計された前記容器が、保存及び/又は輸送のために設計されている、実施形態91に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】FFPET GENEXPERT(登録商標)ワークフローの一実施形態を図示する図である。
【
図2A】溶解溶液の塩度の変動の結果を示す図であり、ESR及びPGRについてのNaCl濃度の関数としてのサイクル閾値を示す。
【
図2B】溶解溶液の塩度の変動の結果を示す図であり、ERBB2及びCYFIP1についてのNaCl濃度の関数としてのサイクル閾値を示す。
【
図2C】溶解溶液の塩度の変動の結果を示す図であり、MKi67についてのNaCl濃度の関数としてのサイクル閾値を示す。
【
図3A】時間にわたる試料の安定性を示す図であり、62日間にわたり保存した試料についてのESR及びPGRの安定性(サイクル閾値の繰返し性)を示す。
【
図3B】時間にわたる試料の安定性を示す図であり、62日間にわたり保存した試料についてのESR及びPGRの安定性(サイクル閾値の繰返し性)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0107】
ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPET)試料は、これに限定されないが、がん等の疾患の診断及び予後における使用のための最も一般的に収集及び保存された試料の代表である。それにもかかわらず、歴史的にこれらの試料は、FFPET核酸の品質及び量が不十分であるために、遺伝子発現プロファイリングの目的のためには利用されていなかった。ホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPET)からの核酸の分析は、増幅可能な(例えばPCR増幅可能な)遺伝子材料を発生させるために必要な多数の工程のために困難である。FFPETから核酸を単離する手順は典型的に、パラフィンの除去(脱パラフィン)、保存試料の溶解(プロテアーゼ消化)、固定プロセス中に得た架橋を戻すこと、及び核酸の固体相に基づく精製を含んでいる。
【0108】
PCRに使用可能なDNA/RNAを抽出するための様々な試料調製手順があるが、ほとんどは複雑かつ多くの労働を要するものである。本明細書で説明する組成物及び方法は、これら及び他の問題を克服し、増幅可能な質の核酸試料(例えばDNA、RNA)を迅速に単離するために使用され得る試薬及びプロトコルを提供する。提供される方法は、簡単に容易に半自動化又は完全自動化され、必要な最小限の実践時間しか必要としない。核酸は、高収率で抽出され、PCR増幅可能な質のものである。
【0109】
ある特定の実施形態では、単一の溶液及び単一の温度でのインキュベーションを使用してパラフィン包埋ホルマリン固定試料から核酸を抽出するために使用され得る溶解溶液が提供される。これは、組織試料から核酸を単離するために使用される、以前の2緩衝液/2温度システムに優る、単純性、効率、及びコストの顕著な改善を提供する。
【0110】
以下の説明はFFPE試料に焦点を当てているが、本明細書で説明する溶解試薬及びその使用は、これらに限定されないが、新鮮な組織切片、凍結組織切片、細胞生検、穿刺吸引液、細胞ボタン、組織マイクロアレイ等の本質的にいかなる細胞又は組織試料でも有効であることに留意されたい。
【0111】
溶解溶液。
ある特定の実施形態では、溶解溶液は、高濃度ナトリウム塩(例えばNaCl)と、溶液のpHを約pH6.5~約pH7.5、又は約pH6.8~約pH7.3の範囲のpHに維持するために十分な緩衝液と、キレート剤と、マグネシウム塩(例えばMgCl2)と、界面活性剤とを含む。ある特定の実施形態では、溶解溶液は、加えて、消泡剤、及び/又は保存剤/殺生物剤、及び/又はプロテアーゼを含有する。ある特定の実施形態では、溶解溶液はプロテアーゼを省略し、これはその後、使用直前に添加してもよい。
【0112】
溶解溶液の例示的であるが非限定的な一実施形態を、Table 1(表1)に示す。
【0113】
【0114】
この製剤は、例示的であるが非限定的であることが意図される。本明細書で提供される教示を使用して、当業者は、組織試料からの核酸の1工程1温度抽出に有用な他の溶解溶液を使用できる。
【0115】
ナトリウム塩。
様々な実施形態では、溶解溶液は、ナトリウム塩(NaCl)を含む。ある特定の実施形態では、ナトリウム塩は、約300mM~約500mM、若しくは約350mM~最大約450mMの範囲の濃度であるか、又は約400mMである。ある特定の実施形態では、カルシウム塩(例えばCaCl)は、ナトリウム塩に加えて、又はこれの代わりに使用することができる。
【0116】
緩衝液
一部の実施形態では、溶解溶液は、約pH6.5~最大約pH7.5の範囲のpHに溶液を緩衝する緩衝液を含む。一部の実施形態では、緩衝液は、約pH6.6、又は約pH6.7、又は約pH6.8~最大約pH7.5、又は最大約pH7.4、又は最大約pH7.3、又は最大約pH7.2の範囲のpHに溶液を緩衝する。ある特定の実施形態では、pHは、pH7.05(+/-0.1)に緩衝される。
【0117】
ある特定の実施形態では、緩衝液の濃度は、約10mM~最大約100mM、若しくは約20mM~最大約50mMの範囲であるか、又は約50mMである。
【0118】
ある特定の実施形態では、生物学で使用されるいくつかの緩衝液のいずれも好適である。このような緩衝液として、クエン酸緩衝液、トリス、リン酸塩、PBS、クエン酸塩、TAPS、ビシン、トリシン、TAPSO、HEPES、TES、MOPS、PIPES、カコジル酸塩、SSC、MES等の緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。例示的であるが非限定的な緩衝液化合物のリストを、Table 2(表2)に示す。
【0119】
【0120】
例示的であるが非限定的な一実施形態では、緩衝液は、約50mMで存在するHEPES HEPESナトリウム塩(MW 260.29)である。
【0121】
上記に説明する様々な緩衝液は、例示であり、限定ではないことが意図される。本明細書で提供する教示及び例を使用して、当業者は、本明細書で説明する方法に従う溶解溶液での使用のための多くの他の緩衝液を使用できる。
【0122】
キレート剤。
上記に示すように、一部の実施形態では、溶解溶液は、1つ又は複数のキレート剤を含む。キレート剤は、当業者に周知であり、N-アセチル-L-システイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸(EDDS)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、及びホスホン酸塩キレート剤(例えばニトリロトリス(メチレン)ホスホン酸(NTMP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)等を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、キレート剤は、EDTA又はDTAPを含む。一部の実施形態では、キレート剤は、EDTAを含む。
【0123】
一部の実施形態では、存在する場合、キレート剤は、約5mM~最大約200mM、又は約10mM~最大約100mMの範囲の濃度で溶解溶液中に存在する。一部の実施形態では、キレート剤は、約10mM~、又は約20mM~、又は約30mM~、又は約40mM~最大約60mM、又は最大約70mM、又は最大約80mM、又は最大約90mM、又は最大約100mMの範囲の濃度で存在する。一部の実施形態では、キレート剤は、約50mMの濃度で存在する。一部の実施形態では、キレート剤は、約1mM~最大約140mM、若しくは約5mM~最大約100mM、若しくは約10mM~約50mMの範囲であるか、又は約25mMである。
【0124】
マグネシウム塩。
ある特定の実施形態では、溶解溶液は、マグネシウム塩を含有する。ある特定の実施形態では、マグネシウム塩は、MgCl2である。ある特定の実施形態では、溶解溶液中のマグネシウム塩の濃度は、約2mM~最大約20mM、若しくは約5mM~最大約15mMの範囲であるか、又は約10mMである。
【0125】
界面活性剤
上記に示すように、一部の実施形態では、溶解溶液は、1つ又は複数の界面活性剤を含む。一部の実施形態では、界面活性剤は、イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤を含む。一部の実施形態では、界面活性剤は、Table 3(表3)に示される1つ又は複数の界面活性剤を含む。
【0126】
【0127】
【0128】
一部の実施形態では、界面活性剤は、全強度のTween20を含む。
【0129】
一部の実施形態では、存在する場合、界面活性剤は、約5mM~最大約200mM、又は約10mM~最大約100mM、又は約20mM~最大約50mM、又は約30mM~最大約40mMの範囲の濃度で溶解溶液中に存在する。一部の実施形態では、界面活性剤は、約5mM~、又は約10mM~、又は約15mM~、又は約20mM~、又は約25mM~最大約200mM、又は最大約150mM、又は最大約100mM、又は最大約75mM、又は最大約50mM、又は最大約40mMの範囲である。一部の実施形態では、界面活性剤は、約35mMの濃度で存在する。一部の実施形態では、界面活性剤は、約0.5%(v/v)~最大約30%(v/v)、又は約1%(v/v)~最大約20%(v/v)、又は約5%~最大約15%(v/v)の範囲の割合で存在する。一部の実施形態では、界面活性剤は、上記溶液の約0.1%~約2%、若しくは上記溶液の約0.5%~約1.5%、又は溶解溶液の約1%を構成する。
【0130】
一部の実施形態では、本明細書で説明する溶解溶液で使用される界面活性剤は、上記に説明する界面活性剤に限定される必要はない。本明細書で提供する教示及び例を使用して、当業者は、他の界面活性剤を使用できる。
【0131】
追加の成分
一部の実施形態では、溶解溶液は、加えて、以下の:第2の界面活性剤、カオトロープ及び/若しくは還元剤、塩化カルシウム若しくは他の塩、並びに/又はプロテアーゼの1つ又は複数を含む。
【0132】
プロテアーゼ
一部の実施形態では、溶解溶液は、加えて、1つ又は複数のプロテアーゼを含む。好適なプロテアーゼとして、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸塩プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。例示的で好適なプロテアーゼとして、プロテイナーゼk(広域スペクトルセリンプロテアーゼ)、サブチリシントリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
一部の実施形態では、溶解溶液中に存在する場合、プロテアーゼは、溶解溶液の1U/ml~最大約200U/mlの範囲の活性を提供する量で存在する。一部の実施形態では、量は、溶解溶液の約1U/ml~、又は約5U/ml~、又は約10U/ml~、又は約15U/ml~最大約200U/ml、又は最大約100U/ml、又は最大約80U/ml、又は最大約60U/ml、又は最大約40U/ml、又は最大約30U/mlの範囲の活性を提供する。一部の実施形態では、プロテアーゼの量は、約0.05~約5mg/mlの範囲である。一部の実施形態では、プロテアーゼの量は、約0.1mg/mL、又は約0.2mg/mL、又は約0.3mg/mL、又は約0.4mg/mL、又は約0.5mg/mL、又は約0.6mg/mL、又は約0.7mg/mL、又は約0.8mg/mL~最大約5mg/mL、又は最大約4mg/mL、又は最大約3mg/mL、又は最大約2mg/mL、又は最大約1mg/mLの範囲である。
【0134】
一部の実施形態では、本明細書で説明する方法における溶解溶液は、上記に説明するプロテアーゼの使用に限定される必要はない。本明細書で提供する教示及び例を使用して、当業者は、他のプロテアーゼを使用できる。
【0135】
使用方法。
様々な実施形態では、本明細書で説明する溶解溶液の使用方法が提供される。本方法の一実施形態は、
図1で概略的に図示される。その中で示すように、固定パラフィン包埋組織試料の1つ又は複数の切片を、約50℃~約110℃の範囲の温度、典型的には約80℃の単一の温度で溶解溶液中にてインキュベートする。ある特定の実施形態では、溶解溶液はプロテアーゼを欠くが、しかしながら、より典型的にはプロテアーゼ(例えばプロテイナーゼK)が含まれる。
【0136】
核酸は、例えばアルコール抽出(例えばアルコール沈殿)を使用して、溶解溶液から回収することができる。この手順は、比較的高収率の抽出をもたらし、標的核酸配列のPCR増幅、検出、及び/又は定量に十分な質の核酸(例えばDNA、RNA)を生成する。一部の実施形態では、インキュベートする工程は、最大約3時間の期間である。しかしながら、典型的な実施形態では、インキュベートする工程は、約15、20、又は30分間~最大約1時間の範囲であり得る。上記に示すように、一部の実施形態では、プロテアーゼは必要とされない。同様に、一部の実施形態では、本方法は、更なる脱パラフィン工程及び/又は追加の脱パラフィン用試薬を含まない。一部の実施形態では、本方法は、脱パラフィンのために有機溶媒を利用せず、及び/又はインキュベートする工程は、有機溶媒の存在下ではない。したがって、本方法は、迅速で、簡単に容易に自動化することができ、かつハイスループットな方法である。
【0137】
本明細書で説明する方法及び試薬を使用して抽出した核酸は、優れた質を有し、試料中の1つ又は複数の標的核酸配列を検出及び/又は定量するために容易に増幅することができる。この核酸は、これらに限定されないが、RT-PCRを含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えばInnisら、(1990)、PCR Protocols. A guide to Methods and Application.、Academic Press, Inc.、San Diegoを参照のこと)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えばWu及びWallace、(1989)、Genomics 4、560頁;Landegrenら、(1988)、Science 241、1077頁;Barringerら、(1990)、Gene 89、117頁を参照のこと)、転写増幅(例えばKwohら、(1989)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86、1173頁を参照のこと)、自家持続配列複製法(例えばGuatelliら、(1990)、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 87、1874頁を参照のこと)、ドットPCR、リンカーアダプターPCR等の、いくつかの増幅方法のいずれにも対応するものである。
【0138】
更に、本明細書で説明する材料を使用した、特に本明細書で説明する溶解溶液(例えばTable 1(表1)を参照のこと)を使用した方法に従ってプロセスした試料は、様々な市販の溶解システムと比較して、ときには2Ctより優れた、又は3Ctより優れた、又は4Ctより優れた、より早いCt結果を与えることは、驚くべき発見であった。
【0139】
加えて、溶解物安定性研究を行い、ここでは、FFPE細胞ボタン及びFPE患者試料を溶解し、エタノールと混合し、その後-20℃で保存し、試験日を計画した(例えば実施例1、実験G、62日目まで継続、並びに
図3A及び
図3Bを参照のこと)。1つの実験では、全ての標的について62日間の過程にわたり、現在~62日間で一貫性のあるサイクル閾値が観察された。したがって、元の溶解したスクロールからの多数のプルを測定して、繰返しの試験(必要に応じて)又は反射カートリッジ試験のいずれかを行うことが可能である。
【0140】
一部の実施形態では、抽出した核酸は増幅反応で使用されるが、他の使用もまた予期される。したがって、例えば、抽出した核酸(又はそれらの増幅産物)は、これに限定されないが、核酸に基づくマイクロアレイ等の様々なハイブリダイゼーションプロトコルで使用することができる。一部の実施形態では、任意の核酸に基づくマイクロアレイは、本明細書で説明する方法で使用することができる。このようなマイクロアレイとして、市販のマイクロアレイ、例えばAffymetrix, Inc.社(Santa Clara、CA)、Agilent Technologies, Inc.社(Santa Clara、CA)、Illumina, Inc.社(San Diego、Calif.)、GE Healthcare社(Piscataway, N.J.)、NimbleGen Systems, Inc.社(Madison, Wis.)、Invitrogen Corp.社(Carlsbad, Calif.)等から入手可能なマイクロアレイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
本明細書で説明する方法及び試薬はしたがって、疾患の診断及び予後に関する遺伝子発現プロファイルの発見を目的とする基礎研究に適用可能である。また、本方法は、疾患の診断及び/又は予後、特定の治療レジメンの決定、治療有効性のモニタリング等に適用可能である。一部の実施形態では、また、本方法は、法医学、考古学、病歴、古生物学等の、核酸の質が悪い他の分野に適用可能である。本明細書で提供する教示及びプロトコルに照らして、これら及び他の適用は、当業者に容易に認識される。
【0142】
試料。
本明細書で説明する方法を使用して、DNA及び/又はRNAは、任意の生物学的試料から単離することができる。このような試料として、新鮮な試料又は細胞/組織吸引液、凍結切片、穿刺生検、細胞培養物、固定組織試料、細胞ボタン、組織マイクロアレイ等が挙げられるが、これらに限定されない。本方法は、固定パラフィン包埋組織(例えばFFPET)試料での使用に特によく適合される。組織学的試料は典型的に、アルデヒド系固定液、例えばホルマリン(ホルムアルデヒド)及びグルタルアルデヒドで固定されるが、本明細書で説明する方法は、加えて、他の固定技術、例えばアルコール浸漬等を使用して固定された組織でも働くと考えられる。
【0143】
例示的な試料として、ヒト組織、研究動物組織、ペット動物組織、又は家畜動物組織からのFFPET試料が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、例えば、試料は、これらに限定されないが、健康なヒトからの試料(例えば健康なヒト組織試料)、疾患対象及び/又は疾患組織からの試料、診断及び/又は予後アッセイに使用される試料等の、ヒトからの組織試料を含む。また、好適な試料は、非ヒト動物からの試料を含む。例えば非ヒト霊長類、例えばチンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザル、サル、マカク、ヒヒ、マンガベイ、コロブス、ラングール、マーモセット、キツネザル;マウス;ラット;ウサギ;モルモット;ハムスター;ネコ;イヌ;フェレット;魚類;ウシ;ブタ;ヒツジ;ヤギ;ウマ;ロバ;ニワトリ;ガチョウ;アヒル;シチメンチョウ;両生類;又は爬虫類からのFFPET試料を、本明細書で説明する方法で使用することができる。
【0144】
加えて、これらに限定されないが、新鮮な、1週間未満の、2週間未満の、1ヶ月未満の、2ヶ月未満の、3ヶ月未満の、6ヶ月未満の、9ヶ月未満の、1年未満の、少なくとも1年の、少なくとも2年の、少なくとも3年の、少なくとも4年の、少なくとも5年の、少なくとも6年の、少なくとも7年の、少なくとも8年の、少なくとも9年の、少なくとも10年の、少なくとも15年の、少なくとも20年の、又はそれより古いFFPET試料等の、任意の年数のFFPET試料を、本明細書で説明する方法で使用することができる。
【0145】
一部の実施形態では、本明細書で説明する方法は、固定包埋組織試料(例えばFFPET試料)から取った1つ又は複数の切片で行われる。この切片は、任意の所望の厚さのものであってもよい。したがって、一部の実施形態では、薄い切片又は厚い切片の両方が予期され、これらに限定されないが、所望の適用に応じて、1ミクロン未満の厚さ、約1ミクロンの厚さ、約2ミクロンの厚さ、約3ミクロンの厚さ、約4ミクロンの厚さ、約5ミクロンの厚さ、約6ミクロンの厚さ、約7ミクロンの厚さ、約8ミクロンの厚さ、約9ミクロンの厚さ、約10ミクロンの厚さ、約15ミクロンの厚さ、又は約20ミクロンの厚さの切片等が予期される。ある特定の適用では、切片は、例えば最大約1ミクロンの厚さ、最大約2ミクロンの厚さ、最大約3ミクロンの厚さ、最大約4ミクロンの厚さ、最大約5ミクロンの厚さ、最大約6ミクロンの厚さ、最大約7ミクロンの厚さ、最大約8ミクロンの厚さ、最大約9ミクロンの厚さ、最大約10ミクロンの厚さ、最大約15ミクロンの厚さ、最大約20ミクロンの厚さ、又は最大約25若しくは30ミクロンの厚さであり得る。一部の実施形態では、切片は、これらに限定されないが、約1~約5ミクロンの厚さ、約1~約20ミクロンの厚さ、約1~約10ミクロンの厚さ、又は約5~約10ミクロンの厚さ等の、様々なサイズにより画定することができる。
【0146】
多くの場合、固定包埋組織試料(例えばFFPET試料)は、疾患組織、例えば腫瘍又は他のがん性組織の領域を含む。このようなFFPET試料は、本明細書で説明する方法での有用性を見出すが、疾患組織の領域を含まないFFPET試料、例えば正常な組織、未処置の組織、プラセボ処置した組織、又は健康な組織からのFFPET試料もまた、本明細書で説明する方法で使用することができる。本明細書で説明する方法の一部の実施形態では、所望の疾患領域若しくは組織、又は特定の組織内の特定の部位、特徴、若しくは構造を含有する領域は、所望の部位から得られる核酸の割合を増大させるために、本明細書で説明する核酸の単離前に、FFPET試料、又はその切片(単数)若しくは切片(複数)において特定される。このような部位又は領域は、これらに限定されないが、目視識別、染色、例えばヘマトキシリン及びエオシン染色、免疫組織化学標識等等の、当業者に公知の任意の方法を使用して特定することができる。任意の事象で、一部の実施形態では、組織試料の所望の領域、又はその区分を、マクロダイセクション又は顕微解剖のいずれかにより解剖して、本明細書で説明する方法を使用した核酸試料の単離のための出発材料を得ることができる。
【0147】
ある特定の実施形態では、本明細書で説明する溶解試薬及び方法は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料での使用に特によく適しているが、本試薬及び方法は、このような試料での使用に限定される必要があることが理解される。例えば、ある特定の実施形態では、本明細書で説明する溶解試薬及び方法は、例えば塗抹としてスライドガラス上に適用される細胞全体に対して使用することができる。ある特定の実施形態では、塗抹は、穿刺吸引液に由来する。塗抹はFNAを伴った媒体であってもよく、ここでは、吸引された試料が塗抹としてスライドに適用される。細胞は、目視観察のために染色してもよいが、また、それらは染色しないまま、単に風乾させてもよい。これらの染色していない塗抹を使用するある特定の実施形態では、細胞をスライドから掻き落とし、本明細書で説明する溶解試薬及び方法で利用してもよい。
【0148】
別の例示的であるが非限定的なアプローチでは、穿刺吸引液細胞を、溶解試薬に直接注入することができる。試料は、溶解手順を継続してもよい。ある特定の実施形態では、試料(溶解試薬中の)を異なる場所に輸送することが可能であり、そこで分析手順を完了してもよい。ある特定の実施形態では、また、穿刺吸引液試料は、FFPE細胞ボタンにすることができる。
【0149】
穿刺吸引液の使用は、ホルマリン固定パラフィン包埋試料の冗漫な調製方法を避ける方法を提供し、試験方法を顕著に迅速化することができる。この方法は、世界の開発途上地域で非常に有用であり得る。
【0150】
穿刺吸引液に加えて、また、試薬(例えば溶解溶液)及びその使用方法は、本質的にいかなる細胞収集方法での使用にも修正可能であることが理解される。このような方法として、スクレイピング(例えば口腔スクレイピング、婦人科スクレイピング、咽喉スクレイピング、手術手順中のスクレイピング等)、ワイプ(例えば綿棒を使用して得られた)、及びこれに限定されないが真空援助生検等の吸引液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
ある特定の例示的であるが非限定的な実施形態では、試料は、がんからの細胞を含む、疾患領域又は組織を含む。一部の実施形態では、がんは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、AIDS関連がん(例えばカポジ肉腫、リンパ腫)、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍、胆管がん、肝外がん、膀胱がん、骨がん(例えばユーイング肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫)、脳幹神経膠腫、脳腫瘍(例えば星状細胞腫、脳及び脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、中枢神経系非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍、中枢神経系胚芽腫、中枢神経系胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣腫)、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(例えば小児、胃腸)、心臓腫瘍、子宮頸がん、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸がん、結腸直腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚t細胞リンパ腫、管がん(例えば胆管、肝外)、腺管上皮内癌(DCIS)、胎児性腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、感覚神経芽腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん(例えば眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、骨の線維性組織球腫、悪性腫瘍、及び骨肉腫、胆嚢がん、胃がん(gastric (stomach) cancer)、消化管カルチノイド、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(例えば卵巣がん、精巣がん、頭蓋外がん、性腺外がん、中枢神経系)、妊娠性絨毛腫瘍、脳幹がん、有毛細胞白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞(肝)がん、組織球増殖症、ランゲルハンス細胞がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼球内黒色腫、膵島細胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍、カポジ肉腫、腎臓がん(例えば腎細胞、ウィルムス腫瘍、及び他の腎臓腫瘍)、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、喉頭がん、白血病、急性リンパ芽球性(ALL)、急性骨髄性(AML)、慢性リンパ球性(CLL)、慢性骨髄性(CML)、有毛細胞、口唇及び口腔がん、肝臓がん(原発性)、上皮内小葉癌(LCIS)、肺がん(例えば小児、非小細胞性、小細胞性)、リンパ腫(例えばAIDS関連、バーキット(例えば非ホジキンリンパ腫)、皮膚T細胞(例えば菌状息肉腫、セザリー症候群)、ホジキン、非ホジキン、原発性中枢神経系(CNS))、マクログロブリン血症、ワルデンシュトレーム、男性乳がん、骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、黒色腫(例えば小児、眼内(眼))、メルケル細胞癌、中皮腫、頸部転移性扁平上皮がん、正中線神経束癌腫、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、鼻腔がん及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔がん、口唇及び中咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、膵神経内分泌腫瘍(膵島細胞腫瘍)、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔がん及び鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞(腎臓)がん、腎盂及び尿管、移行上皮細胞がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(例えばユーイング、カポジ、骨肉腫、横紋筋肉腫、軟部組織、子宮)、セザリー症候群、皮膚がん(例えば黒色腫、メルケル細胞癌、基底細胞癌、非黒色腫性)、小腸がん、扁平上皮癌、頸部潜在性原発性扁平上皮がん、胃がん(stomach (gastric) cancer)、精巣がん、咽喉がん、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺がん、絨毛腫瘍、尿管及び腎盂がん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍等からなる群から選択されるがんを含む。
【0152】
本明細書で説明する方法は、本質的にいかなる固定(例えばホルマリン固定、グルタルアルデヒド固定等)パラフィン包埋組織試料にも対応するものであると考えられることが認識される。このような試料として、生検及び穿刺吸引液並びに保管試料(例えば組織マイクロアレイ)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
加熱。
一部の実施形態では、1つ又は複数の組織切片を、溶解溶液中で加熱する。この点で、より薄い切片が使用される場合、複数の切片(例えば少なくとも2個の切片、又は少なくとも3個の切片、又は少なくとも4個の切片、又は少なくとも5個の切片、又は少なくとも6個の切片、又は少なくとも7個の切片、又は少なくとも8個の切片、又は少なくとも9個の切片、又は少なくとも10個の切片)を利用することが可能であり、望ましい場合があることに留意されたい。特に切片が5μmの厚さ又はそれより小さい場合、多数の切片が望ましい場合がある。
【0154】
一部の実施形態では、切片を、約40℃から最大約110℃の温度で溶解溶液中にて加熱する。一部の実施形態では、切片を、約40℃から、又は約45℃から、又は約50℃から、又は約55℃から、又は約60℃から、又は約65℃から、又は約70℃から、又は約74℃から、最大約110℃、又は最大約100℃、又は最大約95℃、又は最大約90℃の範囲の温度で加熱する。一部の実施形態では、切片を、約80℃~約90℃の範囲の温度で加熱する。ある特定の実施形態では、加熱は、80℃で行われる。
【0155】
一部の実施形態では、インキュベーション時間は、約10分間~最大約4時間の範囲である。一部の実施形態では、インキュベーション時間は、約10分間~、又は約15分間~、又は約20分間~、又は約25分間~、又は約30分間~最大約24時間、又は最大約12時間、又は最大約6時間、又は最大約4時間、又は最大約3.5時間、又は最大約3時間、又は最大約2.5時間、又は最大約2時間、又は最大約1.5時間、又は最大約1時間の範囲である。一部の実施形態では、インキュベーション時間は、約30分間~最大約1時間の範囲である。
【0156】
例示的であるが非限定的な一実施形態では、1つ又は複数の切片を、溶解溶液(例えばTable 1(表1)で示される溶液)中で約80℃の温度にて約60分間インキュベート(加熱)する。別の例示的であるが非限定的な実施形態では、1つ又は複数の切片を、溶解溶液(例えばTable 1(表1)で示される溶液)中で約90℃の温度にて約30分間インキュベート(加熱)する。
【0157】
これらの加熱温度及び期間は、例示であり、限定であるとは意図されない。本明細書で提供される教示を使用して、当業者は、特定の試料タイプのためのプロトコルを特定の時間及び温度に最適化し得る。
【0158】
核酸回収
組織切片を溶解溶液中で加熱した後、抽出した核酸(例えばDNA、RNA)を回収することができる。DNA及び/又はRNA回収のための多くの方法は、当業者に知られている。
【0159】
一部の実施形態では、核酸を沈殿させ、及び/又は固体基質に結合させる。沈殿及び/又は基質への結合は、アルコール、例えば低級アルコール(例えばC1~C6アルコール)の使用により容易に達成される。一部の実施形態では、アルコールは、エタノール又はイソプロパノールである。一部の実施形態では、アルコールは、エタノールである。一部の実施形態では乾燥アルコールが使用され得ることが認識される。
【0160】
一部の実施形態では、アルコールは、核酸を単に沈殿させるために使用される。一部の実施形態では、アルコールは、適合性の固体相の存在下で核酸を沈殿させるために使用され、これはその固体相への核酸の結合をもたらす。
【0161】
例えば、一部の実施形態では、アルコール処理は、ガラス又はセルロース基質の存在下で行われ、その基質への核酸の結合をもたらす。回収した核酸を保持する一方で、残っている汚染物質を洗い流すことができ、その後回収した核酸は増幅又は他の使用にすぐに使用可能である。
【0162】
一部の実施形態では、固体相は、ガラス、シリカ、又はセルロースを含む。固体相は、容器の壁により、繊維(例えばガラス繊維)として、膜(例えばセルロース膜)として、ビーズ(例えば微小粒子又はナノ粒子等)の形態等で提供することができる。
【0163】
ある特定の実施形態では、核酸回収は、例えば以下に説明するように、GENEXPERT(登録商標)カートリッジで行うことができる。
【0164】
抽出DNA及び/又はRNAの例示的使用
本明細書で説明する方法及び試薬を使用して抽出した核酸は、優れた質を有し、試料中の1つ又は複数の標的核酸配列を検出及び/又は定量するために容易に増幅することができる。核酸は、これらに限定されないがRT-PCR等の、PCR増幅反応に特によく適合される。一部の実施形態では、抽出核酸は増幅反応で使用されるが、他の使用もまた、予期される。したがって、例えば、抽出核酸(又はそれらの増幅産物)は、これに限定されないが、核酸に基づくマイクロアレイ等の、様々なハイブリダイゼーションプロトコルで使用することができる。
【0165】
本明細書で説明する核酸抽出方法及び試薬は、疾患の診断及び予後に関する遺伝子発現プロファイルの発見を目的とする基礎研究に適用可能である。また、本方法は、疾患の診断及び/又は予後、特定の治療レジメンの決定、治療有効性のモニタリング等に適用可能である。
【0166】
本明細書で説明する方法は、RT-PCRシステムでの使用によく適合された抽出核酸を簡単かつ効率的に生成する。それらは、任意のこのようなシステムで使用することができるが、一部の実施形態では、本明細書の実施例で示すように、核酸は、GENEXPERT(登録商標)カートリッジ及びシステム(Cepheid Systems Inc.社)での使用に特によく適合される。
【0167】
GENEXPERT(登録商標)システムは、分子分析の自動化におけるパラダイムシフトを代表する閉鎖自己充足完全統合型自動化プラットフォームであり、最小限の汚染リスクで、適時に正確な結果をもたらす。GENEXPERT(登録商標)システムは、搭載(インカートリッジ)式試料調製をリアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)増幅及び検出機能と組み合わせ、カートリッジ(GENEXPERT(登録商標)カートリッジ)内での完全統合型自動化核酸分析を行う。システムは、標的化された核酸配列を精製、濃縮、検出、及び特定するように設計され、これにより試料から直接回答を送達する(例えば米国特許第5,958,349号、同第6,403,037号、同第6,440,725号、同第6,783,736号、及び同第6,818,185号を参照のこと。これらの特許の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。様々な実施形態では、カートリッジの構成要素として、試薬を含有するプロセッシングチャンバー、フィルター、並びに標的核酸の抽出、精製、及び増幅に有用な捕獲技術を挙げることができるが、これらに限定されない。弁は、チャンバーからチャンバーへの流体移行を可能にし、核酸溶解及び濾過構成要素を含有する。光学窓は、(例えばPCR増幅産物の)リアルタイム光学検出を可能にする。非常に迅速な加熱及び/又は熱循環を可能にする反応管を提供してもよい。
【0168】
ある特定の実施形態では、例示的なGENEXPERT(登録商標)カートリッジは、中心弁アセンブリの周囲に配置され、中心弁アセンブリと選択的に流体連通する複数のチャンバーを含み、ここで、中心弁アセンブリは、中心弁と流体連通するチャンバーへ又はチャンバーから流体を出し入れすることができるプランジャを収容するように設計されている。弁アセンブリの回転は、どのチャンバーが中心弁と流体連通するかを決定する。
【0169】
したがって、一部の実施形態では、(任意選択で、GENEXPERT(登録商標)カートリッジ及びシステムを利用した)固定パラフィン包埋組織試料中の標的核酸配列の特定及び/又は定量測定のための方法が提供される。一部の実施形態では、本方法は、本明細書で説明する抽出方法のいずれかに従って固定パラフィン包埋生物学的組織試料から核酸(例えばDNA、RNA)を抽出する工程と、抽出した核酸を、標的核酸の領域を増幅することができる1対のオリゴヌクレオチドプライマーを使用した増幅に供して、増幅した試料を得る工程と、標的核酸の存在及び/又は量を決定する工程とを含む。一部の実施形態では、標的核酸は、DNA(例えば遺伝子)である。一部の実施形態では、標的核酸は、RNA(例えばmRNA、非コードRNA等)である。
【0170】
一部の実施形態では、本明細書で説明する方法を使用して抽出した核酸は、診断方法、予後方法、治療(例えばがん治療)をモニターする方法等における使用によく適合される。したがって、一部の例示的であるが非限定的な実施形態では、固定パラフィン包埋試料から(例えばFFPET試料から)抽出した核酸は、遺伝子の存在及び/若しくは発現レベル、並びに/又は遺伝子の変異状態を特定するために使用することができる。
【0171】
このような方法は、1つ又は複数のがんマーカーの存在、及び/又は発現レベル、及び/又は変異状態の特定に特によく適合される。したがって、一部の実施形態では、本明細書で説明する方法を使用して抽出した核酸は、1つ又は複数のがんマーカーの存在、及び/又はコピー数、及び/又は発現レベル、及び/又は変異状態を検出するために利用される。例示的であるが非限定的な、がんマーカーを、Table 4(表4)に示す。
【0172】
【0173】
【0174】
一部の実施形態では、標的核酸は、米国特許公開公報第2012/0171686号及び同第2009/0062135号で説明されるマイクロRNAを含み、これらの公報はその中で列挙される標的核酸配列について参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、標的核酸は、肺がんの存在及び/又は重症度及び/又は予後についての核酸マーカーを含む。一部の実施形態では、標的核酸は、米国特許公開公報第2010/0233704号で説明される肺がん(例えば非小細胞肺がん)の標的核酸マーカーを含み、当該公報はその中で列挙される標的核酸配列について参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、標的核酸は、子宮頸がん及び/又は子宮頸部異形成の存在及び/又は重症度及び/又は予後についての核酸マーカーを含む。一部の実施形態では、標的核酸は、米国特許公開公報第2010/0240049号で説明される子宮頸部異形成及び/又は子宮頸がんの標的核酸マーカーを含み、当該公報はその中で列挙される標的核酸配列について参照により本明細書に組み込まれる。
【0175】
上記の標的核酸は例示であり、限定ではない。本明細書で提供される教示を使用して、当業者は、多くの他の標的核酸配列を使用できる。
【0176】
一部では、各標的核酸(例えばRNA)の正常レベル(「対照」)を、正常細胞又は他の参照材料の特徴である平均(又は中央値)レベル又は範囲として決定してもよく、これに対して試料で測定したレベルを比較してもよい。正常な対象における標的核酸(例えばRNA)の決定した平均(又は中央値)又は範囲を、疾患状態(例えばがんの存在又はがんへの偏向)を示す標的RNAの正常レベルを超えるレベルを検出するための基準として使用することができる。一部の実施形態では、標的核酸の正常レベルは、1つ又は複数の個体からの、例えば子宮頸がんの場合、良性婦人科疾患のための子宮摘出を受ける患者からの、個々の又はプールしたRNA含有試料を使用して決定することができる。
【0177】
一部の実施形態では、標的核酸(例えばRNA)の正常発現レベルを決定する工程は、標的RNA、標的RNAのDNAアンプリコン、及び標的RNAの相補物から選択される核酸にハイブリダイズしたプローブを含む複合体を検出する工程を含む。すなわち、一部の実施形態では、正常発現レベルは、標的RNAそれ自体よりむしろ、標的RNAのDNAアンプリコン、又は標的RNAの相補物を検出する工程により決定することができる。一部の実施形態では、このような複合体の正常レベルは、対照として決定及び使用される。複合体の正常レベルは、一部の実施形態では、標的RNAの正常レベルと相関する。
【0178】
一部の実施形態では、対照は、単一の個体の細胞、同じ対象からの健康であると分かっている細胞からのRNAを含む。一部の実施形態では、対照は、多数の個体からの細胞のプールからのRNAを含む。一部の実施形態では、対照は、試験試料が得られた個体の解剖学的に及び/又は細胞学的に正常な領域から取られる。一部の実施形態では、対照は、市販のヒトRNA、例えば子宮頸がんの場合、ヒト子宮頸部トータルRNA(Ambion社;AM6992)を含む。一部の実施形態では、正常レベル又は正常範囲は、高レベルについて試料を試験する前に既に事前決定されている。
【0179】
一部の実施形態では、標的RNAの正常レベルは、1つ又は複数の連続細胞株、典型的に正常細胞での発現レベルに近い少なくとも1つの標的RNAの発現レベルを有することが以前に示されている細胞株から決定することができる。
【0180】
一部の実施形態では、方法は、少なくとも1つの標的RNAの発現レベルを検出する工程を含む。一部の実施形態では、方法は、少なくとも1つの標的RNAの発現レベルを、少なくとも1つの標的RNAの正常発現レベルと比較する工程を更に含む。一部の実施形態では、方法は、少なくとも1つの標的RNAの発現レベルを、少なくとも1つの標的RNAの対照発現レベルと比較する工程を更に含む。少なくとも1つの標的RNAの対照発現レベルは、一部の実施形態では、正常細胞における少なくとも1つの標的RNAの発現レベルである。一部のこのような実施形態では、対照レベルは、正常レベルと呼ばれる場合がある。一部の実施形態では、正常細胞における少なくとも1つの標的RNAの発現レベルに対する少なくとも1つの標的RNAのより大きな発現レベルは、子宮頸部異形成を示す。
【0181】
一部の実施形態では、少なくとも1つの標的RNAの発現レベルは、例えば確実な新形成からの、参照発現レベルと比較される。一部のこのような実施形態では、参照試料に対して少なくとも1つの標的RNAの同様の発現レベルは、新形成の存在を示す。
【0182】
一部の実施形態では、各々の少なくとも1つの標的RNAの正常発現レベルより少なくとも約2倍大きい、少なくとも1つの標的RNAの発現レベルは、疾患状態(例えばがん)の存在を示す。一部の実施形態では、正常細胞からなる対照試料中の各々の少なくとも1つの標的RNAのレベルより少なくとも約2倍大きい、少なくとも1つの標的RNAの発現レベルは、がんの存在を示す。一部の実施形態では、正常細胞からなる対照試料中の各々の少なくとも1つの標的RNAの発現レベルより少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、又は少なくとも約10倍大きい、少なくとも1つの標的RNAの発現レベルは、がんの存在を示す。一部の実施形態では、少なくとも1つの標的RNAの正常発現レベルより少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、又は少なくとも約10倍大きい、少なくとも1つの標的RNAの発現レベルは、がんの存在を示す。
【0183】
一部の実施形態では、標的RNAの対照発現レベルは、試料中の標的RNAの発現レベルと同時に、例えば同じアッセイ又はアッセイのバッチにおいて、決定される。一部の実施形態では、標的RNAの対照発現レベルは、試料中の標的RNAの発現レベルと同時に決定されない。一部のこのような実施形態では、対照発現レベルは、以前に決定されている。
【0184】
一部の実施形態では、例えば標的RNAが正常細胞では非常に低いレベルでしか、又は全く発現されないことが知られている場合、標的RNAの発現レベルは、対照発現レベルと比較されない。このような実施形態では、試料中の高レベルの標的RNAの検出は、がんを示す。
【0185】
キット。
ある特定の実施形態では、細胞及び/又は組織試料からの核酸の抽出のためのキットが提供される。ある特定の実施形態では、キットは典型的に、本明細書で説明する溶解溶液を含有する容器を含む。ある特定の実施形態では、キットは、プロテアーゼ(例えばプロテイナーゼK、トリプシン、キモトリプシン、パパイン等)を含有する容器を更に含む。ある特定の実施形態では、プロテアーゼ及び溶解溶液は、共に混合される。ある特定の実施形態では、プロテアーゼ及び溶解溶液は、別々の容器で提供される。
【0186】
ある特定の実施形態では、キットは、細胞又は組織試料の収集のためのデバイスを更に含み得る。例示的なデバイスとして、スクレイピング、ワイプを行うためのデバイス又はデバイスチップ、吸引液を得るためのデバイス又はデバイスチップ、パンチ生検デバイス、及び皮膚生検を得るためのブレードからなる群から選択されるデバイスが挙げられるが、これに限定されない。例えば、ある特定の実施形態では、キットは、穿刺吸引液を得るための、及び/又は真空援助吸引液を得るためのデバイス又はデバイスチップを含む。ある特定の実施形態では、キットは、口腔スクレイピング又は婦人科スクレイピングを行うためのデバイスを含む。例示的なデバイスとして、マルチスパチュラ、先端延長スパチュラ、細胞採取用ブラシ、サイトピック、サーベックスブラシ、綿棒、ベイネブラシ、プロファイルブラシ、バルブアスピレーター、Ayreスパチュラ、Aylesburyデバイス等が挙げられるが、これらに限定されない。典型的な実施形態では、細胞又は組織試料の収集のためのデバイスは、使用前に試料収集デバイスの無菌性を保持する包装中で提供される。
【0187】
ある特定の実施形態では、キットは、細胞又は組織試料を受容するように、及び上記溶解溶液中又は緩衝液中にその試料を保存するように設計された容器を含み得る。ある特定の実施形態では、細胞又は組織試料を受容するように設計された容器は、保存及び/又は輸送のために設計されている。したがって、ある特定の実施形態では、細胞又は組織試料を受容するように設計された容器は、試料を特定するラベルを提供され、ある特定の実施形態では、保存及び/若しくは輸送中に容器を保持する密封可能包装並びに/又は輸送容器を提供される。
【0188】
ある特定の実施形態では、キットは任意選択で更に、試料部位の清浄化のための滅菌綿棒(例えばアルコール綿棒)、及び/又は部位の乾燥のための乾燥パッド(例えばガーゼパッド)、及び/又は試料を得た後の部位の手当てのための包帯(例えば絆創膏)を含み得る。
【0189】
ある特定の実施形態では、単一の収集操作のための構成要素は、パケット中に共に包装される。このようなパケットは、例えば単回使用使い捨て試料デバイス、任意選択で滅菌綿棒、任意選択で乾燥パッド、及び任意選択で包帯を含み得る。ある特定の実施形態では、キットは、少なくとも2個のパケット、又は少なくとも3個のパケット、又は少なくとも4個のパケット、又は少なくとも5個のパケット、又は少なくとも6個のパケット、又は少なくとも7個のパケット、又は少なくとも8個のパケットを含む。
【0190】
ある特定の実施形態では、キットは、キット構成要素を利用した収集方法を教示し、任意選択で収集中に起こり得る問題を克服するためのガイダンスを提供する教材を更に含有し得る。また、教材は、溶解試薬の使用についての情報及び/若しくは教示、並びに/又は細胞若しくは組織試料の収集及び/若しくは保存及び/若しくは輸送についての教示を含み得る。ある特定の実施形態では、キットは加えて、核酸の単離及び回収のための、試薬及び/又は溶解緩衝液の使用を教示する教示を含有する。
【0191】
多くの場合及び典型的に、教材は文書の形態で提供され、キット構成要素それ自体に(例えば箱、容器のカバー上に、又は封筒上に)印刷してもよく、又はインサート/教示頁若しくは小冊子として提供してもよい。教材は典型的に文書の又は印刷した材料を含むが、このようなものに限定されない。このような教示を記憶し、それらをエンドユーザーに伝達することができる任意の媒体は、本発明により予期される。このような媒体として、電子記憶媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えばCD ROM)等が挙げられるが、これらに限定されない。このような媒体は、このような教材を提供するインターネットサイトへのアドレスを含み得る。
【実施例】
【0192】
以下の実施例は、特許請求の範囲の発明を例示するために提供されるが、限定しない。
【0193】
(実施例1)
ホルマリン固定パラフィン包埋組織からの核酸抽出についての溶解溶液パラメータの調査
実験A:
目的:患者015445T2について試験緩衝液を使用してプロテイナーゼK処理を行い、続いて改変FFPE溶解を行う。
【0194】
試料:FFPE患者スライド(4)、015445T2。4μmの厚さでスライドガラスに適用する。
【0195】
IHC/FISH:ER:多い、PR:多い、HER2:増幅した。
【0196】
【0197】
実験B:
目的:Pt015445T2スライドについて消泡剤の代わりに0.01%エマルションを有するFFPE溶解試薬を試験する。
【0198】
試料:FFPE患者スライド、015445T2。4μmの厚さでスライドガラスに適用する。
【0199】
IHC/FISH:ER:多い、PR:多い、HER2:増幅した。
【0200】
【0201】
実験C:
目的:外部での溶解中(加熱段階前)に添加されるPK量を最適化する。
【0202】
試料:Alamak社FFPE細胞ボタン、BT474。
【0203】
【0204】
実験D、NaCl濃度の変動A:
【0205】
【0206】
図2Aは、ESR及びPGRについてのNaCl濃度の関数としてのサイクル閾値を示す。
図2Bは、ERBB2及びCYFIP1についてのNaCl濃度の関数としてのサイクル閾値を示す。
図2Cは、MKi67についてのNaCl濃度の関数としてのサイクル閾値を示す。
【0207】
実験E、NaCl濃度の変動B:
目的:BT474細胞ボタン試料をm3FFPE、m3cFFPE、m3dFFPE、及びm3eFFPE溶解製剤でプロセスする。
【0208】
試料:BT474 FFPE細胞ボタンを切断し、4℃で保存する。4μmの厚さでスライドガラスに適用する。
【0209】
設定:
各スライドを、ラベルを付けた1.5mL管に移した。
1.2mLの各名称を付けた溶解試薬を、その管に添加した。
20μLのプロテイナーゼKを、各試料に添加した。
試料を5秒間ボルテックスし、その後80℃で30分間インキュベートした。
試料を5秒間ボルテックスし、パルス回転させた。
各試料を、1.2mLの100%エタノールを含有するラベルを付けた5mLバイアルに移した。
試料をそれぞれ、少なくとも15秒間ボルテックスした。
カートリッジAのNGBを、チャンバー11中の反応ビーズ並びにチャンバー2及び5中の液体試薬で調製した。
各試料からの4つの520μL一定分量を、チャンバー3のそれらの名称を付けたカートリッジに移した。
全てのカートを、140421開始+2X超音波ADFを使用して作動させた。
【0210】
【0211】
実験F、消泡剤濃度の変動。
目的:BT474 FFPE細胞ボタンを、様々な消泡剤濃度を有するm3f FFPE溶解試薬でプロセスする。
【0212】
試料:BT474 FFPE細胞ボタン。スライドは4μmの厚さであり、スライドガラスに適用する。
【0213】
設定:
各スライドを、ラベルを付けた1.5mL管に移した。
1.2mLの各名称を付けた溶解試薬を、その管に添加した。
試料を5秒間ボルテックスし、その後80℃で30分間インキュベートした。
試料を5秒間ボルテックスし、パルス回転させた。
各試料を、1.2mLの100%エタノールを含有するラベルを付けた5mLバイアルに移した。
試料をそれぞれ、少なくとも15秒間ボルテックスした。
カートAのNGBを、チャンバー11中の反応ビーズ並びにチャンバー2及び5中の液体試薬で調製した。
試験条件当たり4つの520μL一定分量を、チャンバー3のそれらの名称を付けたカートリッジに移した。
全てのカートを、140421開始+2X超音波ADFを使用して作動させた。
【0214】
【0215】
実験G、試料安定性研究:
加えて、溶解物安定性研究を行い、ここではFFPE細胞ボタン及びFPE患者試料を溶解し、エタノールと混合し、その後-20℃で保存し、試験日を計画した(例えば以下のTable 11(表11)並びに
図3A及び
図3Bを参照のこと)。
【0216】
【0217】
図3Aは、62日間にわたり保存した試料についてのESR及びPGRの安定性(サイクル閾値の繰返し性)を示す。
図3Bは、62日間にわたり保存した試料についてのESR及びPGRの安定性(サイクル閾値の繰返し性)を示す。
【0218】
実験H,組織マイクロアレイの分析:
目的:Stratifierアッセイにおいてスライド1(エール大学からのTMA30ブロック)からの核を試験する。
【0219】
試験試料:エール大学からのTMAブロックである単一のスライド上の30個の核。スライドYTMA 308-1、Breast ER、1-29-15、スライド1。スライドを4μmの厚さに切断した。
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
本明細書で説明する実施例及び実施形態は、例示の目的のためのみであり、これに照らして様々な改変又は変化は、当業者に示唆され、本明細書及び付属の特許請求の範囲の趣旨及び権限に含まれるべきであることが理解される。本明細書で引用する全ての出版物、特許、及び特許出願は、全ての目的についてそれらを全体として参照により本明細書に組み込まれる。