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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20220705BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019048636
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020146997
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】金子 純
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-122988(JP,A)
【文献】特開平11-268215(JP,A)
【文献】特開2018-62105(JP,A)
【文献】特開2000-108485(JP,A)
【文献】特開2004-231805(JP,A)
【文献】特開2019-1129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生ポリエステル系樹脂を含む透明再生樹脂層と、任意の絵柄が施された絵柄層と、再生ポリエステル系樹脂を含み、任意の色調に着色した着色再生樹脂層と、が順に重ねられてなる化粧シートであって、
前記透明再生樹脂層は、曇り度であるヘーズ値が4%以下であり、かつ、CIE 1976 Labにおける測色台L*:99.17、a*:-0.09、b*:0.53をバックに測色したL*値が98.5以上、b*値が1.8以下であり、
前記絵柄層は、CIE 1976 LabにおけるL*値が95.0以上97.0未満、かつ、b*値が3.0以上であるか、または、CIE 1976 LabにおけるL*値が95.0未満であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記透明再生樹脂層のL*値と前記絵柄層のL*値の差が2.0以上であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記透明再生樹脂層と前記絵柄層との間、または前記絵柄層と前記着色再生樹脂層との間に、接着層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記再生ポリエステル系樹脂はペットボトルを原料に含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記透明再生樹脂層は、前記再生ポリエステル系樹脂を50質量%以上95質量%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記化粧シート全体に含まれる前記再生ポリエステル系樹脂が50質量%以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
壁材、床材、建具(扉、戸等)、家具、シンク台、洗面化粧台等の表層に用いられる化粧シートとしては、かつてはポリ塩化ビニルシートが主流であった。近年、焼却時のダイオキシン発生の防止など環境問題への関心の高まりから、化粧シートとして塩素を含まないポリエチレン等のポリオレフィンを主体とするシートやポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」とも記す。)等のポリエステルを主体とするシートが主流となっている。
【0003】
また、リサイクル促進の観点から、廃プラスチックからなる再生樹脂原料を用いた化粧シートの開発が強く要望されている。例えば、特許文献1には、再生ポリエステル樹脂とバージンポリエステル樹脂とを含む化粧シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-130877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
再生樹脂原料、例えば廃ペットボトルのメカニカルリサイクル原料は、雑貨やラベル、容器、梱包資材、クリアファイルなど多種多様な用途に用いられている。しかしながら、廃ペットボトルはその性質上、紙、ガラス、着色剤、オレフィン樹脂などの異物混入が避けられない。加えて、再生を行う過程で熱履歴を受けることで変色するため、チップやペレットとして成型される段階で既に着色されている。このため、再生樹脂原料の製造ロッドどうしでも色調にバラつきがあり、再生樹脂原料を用いた化粧シートは、色や絵柄を鮮明に表現することが困難であるという課題があった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、任意の絵柄が施された絵柄層を有する化粧シートにおいて、再生樹脂原料を用いても、色調のムラが少なく鮮明に絵柄層の絵柄を表現可能な化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
<1>再生ポリエステル系樹脂を含む透明再生樹脂層と、任意の絵柄が施された絵柄層と、ポリエステル系樹脂を含み、任意の色調に着色した着色再生樹脂層と、が順に重ねられてなる化粧シートであって、前記透明再生樹脂層は、曇り度であるヘーズ値が4%以下であり、かつ、CIE 1976 Labにおける測色台L*:99.17、a*:-0.09、b*:0.53をバックに測色したL*値が98.5以上、b*値が1.8以下であり、前記絵柄層は、CIE 1976 LabにおけるL*値が95.0以上97.0未満、かつ、b*値が3.0以上であるか、または、CIE 1976 LabにおけるL*値が95.0未満であることを特徴とする化粧シート。
<2> 前記透明再生樹脂層のL*値と前記絵柄層のL*値の差が2.0以上であることを特徴とする<1>に記載の化粧シート。
<3>前記透明再生樹脂層と前記絵柄層との間、または前記絵柄層と前記着色再生樹脂層との間に、接着層が形成されていることを特徴とする<1>または<2>に記載の化粧シート。
<4>前記再生ポリエステル系樹脂はペットボトルを原料に含むことを特徴とする<1>から<3>のいずれかに記載の化粧シート。
<5>前記透明再生樹脂層は、前記再生ポリエステル系樹脂を50質量%以上95質量%以下の範囲で含むことを特徴とする<1>から<4>のいずれかに記載の化粧シート。
<6>前記化粧シート全体に含まれる前記再生ポリエステル系樹脂が50質量%以上であることを特徴とする<1>から<5>のいずれかに記載の化粧シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、任意の絵柄が施された絵柄層を有する化粧シートにおいて、再生樹脂原料を用いても、色調のムラが少なく鮮明に絵柄層の絵柄を表現可能な化粧シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の化粧シートの層構成を示す断面図である。
図2】本発明の他の実施形態の化粧シートの層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「L*」は、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976
L*a*b*色空間」(対応国際規格ISO 11664-4:2008)に定義される明度の相関量である。
「a*」および「b*」は、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間」(対応国際規格ISO 11664-4:2008)に定義される色座標である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
以下、本発明の一実施形態の化粧シートについて説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態の化粧シートの層構成を示す断面図である。
本実施形態の化粧シート10は、再生PET系樹脂を含む透明再生樹脂層11と、任意の絵柄が施された絵柄層12と、再生PET系樹脂を含み、任意の色調に着色した着色再生樹脂層13とが順に重ねられて構成される。また、本実施形態では、絵柄層12と着色再生樹脂層13との間に、更に接着層14が形成されている。なお、絵柄層12を接着層として用いることもできる。
【0013】
(透明再生樹脂層)
透明再生樹脂層11は、曇り度であるヘーズ値が4%以下である。ヘーズ値は、測定対象の樹脂層を透過する正透過光と拡散透過光の全光線の透過率をT1、測定対象の樹脂層を透過する正透過光をライトトラップで除去した拡散光の透過率をT2とした時に、T1/T2×100で示される値であり、透明度の指標とされる。こうしたヘーズ値が4%以下である透明再生樹脂層11から化粧シート10を観察すると、下層である絵柄層12に施された絵柄を曇りが無く鮮明に視認することができる。
【0014】
また、透明再生樹脂層11は、CIE 1976 Labにおける測色台L*:99.17、a*:-0.09、b*:0.53をバックに測色したL*値が98.5以上、b*値が1.8以下である。これにより、透明再生樹脂層11は着色が殆ど無く、下層である絵柄層12に施された絵柄を色調が変化することなく鮮明に視認することができる。なお、透明再生樹脂層11のL*、b*は、JIS K 7390:2003に記載の試験方法によって測定される。
【0015】
透明再生樹脂層11は、厚みが例えば12μm~150μmとなるように形成され、より好ましくは25μm~125μmとなるように形成される。なお、透明再生樹脂層11の表面には、更にプライマー層やハードコート層が形成されていても良い。
【0016】
透明再生樹脂層11を構成する再生ポリエステル系樹脂は、ペットボトルを原料に含む再生樹脂であり、透明再生樹脂層11は、再生ポリエステル系樹脂を50質量%以上95質量%以下、より好ましくは70質量%以上85質量%以下の範囲で含んでいる。なお、再生ポリエステル系樹脂を除いた残りの樹脂成分は、新たに製造したバージンポリエステル系樹脂であればよい。
【0017】
透明再生樹脂層11に含まれる再生ポリエステル系樹脂が50質量%未満の場合、バージンポリエステル系樹脂の割合が相対的に多くなり、環境対策として再生ポリエステル系樹脂を使用する意義が低下する。また、透明再生樹脂層11に含まれる再生ポリエステル系樹脂が95質量%を超える場合、透明度が低下する懸念がある。
【0018】
このように透明再生樹脂層11で再生ポリエステル系樹脂の含有割合を高めることによって、環境対策として再生ポリエステル系樹脂の使用をより促進し、環境に配慮した化粧シート10を実現できる。
【0019】
本実施形態の透明再生樹脂層11や、後述する着色再生樹脂層13に用いる再生ポリエステル系樹脂は、PETボトルに由来する再生樹脂であり、特に、リサイクル回収プロセスが成熟している廃PETボトルのメカニカルリサイクル原料を用いることが好ましい。
【0020】
再生ポリエステル系樹脂は、安価でかつ入手しやすい点から、PETボトルの粉砕物が好ましい。再生ポリエステル系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲において、PETボトルに付属していたラベル(印刷・接着剤等を含む)、キャップ等の粉砕物を含んでいてもよい。
【0021】
例えば、日本国においては、再利用品の品質低下を防ぐために、以下に説明する自主設計ガイドラインに、指定PETボトルについては、PET単体(PET主材以外の物質を添加、複合等をして用いていない。)と定められ、着色はしない(口栓部の結晶化による白色は除く。)と定められている。したがって、現在、日本国内では着色PETボトルは生産されておらず、海外で生産される日本国向けの着色PETボトルについても無着色PETボトルへの変更が要請されている(http://www.petbottle-rec.gr.jp/qanda/sec13.html)。
【0022】
日本国内で流通するPETボトルについては、国の指導を受けてPETボトルリサイクル推進協議会によって制定された「指定PETボトルの自主設計ガイドライン」に詳細が規定されている(http://www.petbottle-rec.gr.jp/guideline/jisyu.html)。
【0023】
こうした自主設計ガイドラインは、PETボトルリサイクル推進協議会が、資源有効利用促進法規定の指定表示製品(清涼飲料、乳飲料、酒類、特定調味料)に使用されているPETボトル(指定PETボトル)を、使用後の再処理、衛生性を含めた再利用適性に優れた容器とするために、使用するボトル、ラベル(印刷・接着剤等を含む)、キャップ等について規定したものである。
【0024】
PETボトルリサイクル推進協議会の会員(団体、企業)が自主設計ガイドラインを遵守することは当然として、会員以外においても、指定PETボトル入り飲料・酒類・特定調味料を製造・輸入・販売する場合、あるいは指定PETボトルおよび附属包材を製造・輸入する場合は、日本国内で販売・使用されるものであれば、自主設計ガイドラインに適合することが必要とされている。
【0025】
したがって、国内で流通するPETボトルは、無着色のものがほとんどであり、また、PETボトルに由来する再生ポリエステル系樹脂は、ほぼ透明である。
なお、再生ポリエステル系樹脂は、ほぼ透明であるものの、熱成形加工時に受ける熱履歴や、ラベル等の混在によって、黄黒い(CIE 1976 L*a*b*色空間におけるb*値が高く、L*値が低い)傾向にある。そのため、透明再生樹脂層11に用いる再生ポリエステル系樹脂は、b*値が低く、L*値が高いものを選別して用いることも好ましい。
【0026】
再生ポリエステル系樹脂は、結晶化温度が145℃以下のものが好ましく、120~145℃のものがより好ましく、125~140℃のものがさらに好ましい。
なお、再生ポリエステル系樹脂の結晶化温度は、熱分析装置(示差走査熱量計(DSC)等)を用いて測定される。
【0027】
再生ポリエステル系樹脂は、固有粘度(IV値)が例えば、0.60以上のものが好ましく、0.65~0.85のものがより好ましく、0.70~0.83のものがさらに好ましい。再生ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)が前記範囲の下限値未満では、粘度が低すぎて押出成形性に問題が生じるおそれがある。再生ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)が前記範囲の上限値超では、粘度が高くて押出成形性に問題が生じるおそれがある。
なお、再生ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、JIS K 7390:2003に記載の試験方法によって測定される。
【0028】
なお、透明再生樹脂層11は、透明度を低下させない範囲で、他の成分として相溶化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、保存安定剤、滑剤、充填材等を更に含んでいても良い。
【0029】
(絵柄層)
絵柄層12は、任意の絵柄が形成された樹脂層でありCIE 1976 LabにおけるL*値が95.0以上97.0未満、かつ、b*値が3.0以上であるか、または、CIE 1976 LabにおけるL*値が95.0未満である。
このように、絵柄層12は任意の絵柄を表示することができる。
【0030】
また、透明再生樹脂層11のL*値と絵柄層12のL*値の差を2.0以上に保つことが好ましい。これにより、透明再生樹脂層11から化粧シート10を見た時に、絵柄層12の絵柄をより明瞭に視認することができる。
【0031】
絵柄層12は、厚みが例えば0.1μm~10μmとなるように形成され、より好ましくは1μm~5μmとなるように形成される。
絵柄層12において絵柄を構成するインクは、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を主成分とするバインダーからなる着色インキを用いることができる。
【0032】
なお、本実施形態では絵柄層12は1層であるが、これ以外にも、絵柄層を2層以上、複数層形成することもできる。絵柄層を複数層形成することで、複雑で奥行き感のある絵柄を形成することが可能になる。
【0033】
また、絵柄層12にヒートシールが可能な材料を含ませることにより、絵柄層12と着色再生樹脂層13とを接合する接着層14を兼ねることもできる。
【0034】
(着色再生樹脂層)
着色再生樹脂層13を構成する再生ポリエステル系樹脂は、透明再生樹脂層11と同様にペットボトルを原料に含む再生樹脂であり、着色再生樹脂層13は、再生ポリエステル系樹脂を10質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上95質量%以下の範囲で含んでいる。なお、再生ポリエステル系樹脂を除いた残りの樹脂成分は、新たに製造したバージンポリエステル系樹脂であればよい。
【0035】
また、着色再生樹脂層13は、1種以上の着色顔料を含むことが好ましい。例えば、白色の着色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、リトボン等が挙げられる。白色の着色顔料としては、隠蔽力が高い点から、酸化チタンが好ましい。酸化チタンとしては、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン等が挙げられ、触媒としての活性が低い点から、ルチル型酸化チタンが好ましい。
【0036】
なお、絵柄層12によって化粧シート10を形成する下地基材(例えば木材)の色ブレを隠蔽できる場合には、着色再生樹脂層13は着色顔料を含まなくてもよい。
【0037】
着色再生樹脂層13は、厚みが例えば50μm~300μmとなるように形成され、より好ましくは100μm~250μmとなるように形成される。
【0038】
(接着層)
接着層14は、本実施形態では絵柄層12と着色再生樹脂層13とを接合する接着剤からなる層であり、例えば、ドライラミネート用の接着剤を用いることができる。ドライラミネート用の接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール/ポリシソシアネート系の2液混合硬化型接着剤が挙げられる。
【0039】
なお、図1に示すように絵柄層12と着色再生樹脂層13との間に接着層14を形成する以外にも、図2に示すように、透明再生樹脂層11と絵柄層12との間に接着層14を形成することもできる。また、接着層14を絵柄層12の一部として形成することもできる。
【0040】
(化粧シート)
化粧シート10全体、即ち透明再生樹脂層11と着色再生樹脂層13に含まれる再生ポリエステル系樹脂は、50質量%以上となるようにする。化粧シート10全体に含まれる再生ポリエステル系樹脂が50質量%未満の場合、バージンポリエステル系樹脂の割合が相対的に多くなり、環境対策として再生ポリエステル系樹脂を使用する意義が低下する。
化粧シート10全体で再生ポリエステル系樹脂の含有割合を高めることによって、環境対策として再生ポリエステル系樹脂の使用をより促進し、環境に配慮した化粧シート10を実現できる。
【0041】
また、化粧シート10全体は、厚みが例えば0.15mm~0.40mm、より好ましくは0.20mm~0.35mmとなるように形成される。
【0042】
(作用機序)
以上説明した本実施形態の化粧シート10にあっては、透明再生樹脂層11や着色再生樹脂層13に再生ポリエステル系樹脂を含むことにより、ポリ塩化ビニルを含む化粧シートや、全樹脂成分中の再生樹脂の割合が低い化粧シートに比べ、親環境的である。
【0043】
そして、本実施形態の化粧シート10にあっては、透明再生樹脂層11のCIE 1976 Labにおける測色台L*:99.17、a*:-0.09、b*:0.53をバックに測色したL*値が98.5以上、b*値が1.8以下にしている。これにより、透明再生樹脂層11は着色が殆ど無く、下層である絵柄層12に施された絵柄を色調が変化することなく鮮明に視認することができる。よって、外観上、高い明度が保たれ、色調のムラが少ない化粧シート10を実現できる。
【0044】
また、本実施形態の化粧シート10にあっては、絵柄層12のCIE 1976 Labにおける測色台L*:99.17、a*:-0.09、b*:0.53をバックに測色したCIE 1976 LabにおけるL*値が95.0以上97.0未満、かつ、b*値が3.0以上であるか、または、CIE 1976 LabにおけるL*値が95.0未満にしている。これにより、絵柄層12は任意の絵柄が鮮明に表示された化粧シート10を実現できる。
【0045】
本発明の化粧シートは、壁材、床材、建具(扉、戸等)、家具、シンク台、洗面化粧台等の表層に用いられ、好適には家具、シンク台、洗面化粧台等の扉の表層に用いられる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例
【0047】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
「透明樹脂層のヘーズ測定方法」
ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製:NDH2000)を用いてヘーズ値を測定した。
「透明樹脂層の測色方法」
分光光度計(CCM)(クラボウ社製、COLOR-7)を用い、光源D65、視野角10°、測色範囲φ28mmの条件にて、白バック架台に載せた化粧シートの3ヶ所を測定し、CIE 1976 L*a*b*色空間におけるL*、a*、b*を求め、3箇所の平均値を用いた。白バック架台の色調はL*:99.17、a*:-0.09、b*:0.53である。
「絵柄の評価方法」
透明再生樹脂層および着色再生樹脂層の再生原料率が0.0wt%である比較例7で採取したバージンポリエステル系樹脂のみを使用した化粧シートと比較して、目視により評価した。
【0049】
「使用材料」
(1)透明再生樹脂層
A:東洋紡株式会社製 リシャイン(登録商標)0.05mm厚の透明フィルムを使用した(再生ポリエステル系樹脂比率80wt%)、ヘーズ値2.20%、b*値1.10、L*値98.78
B:東洋紡株式会社製 リシャイン(登録商標)0.125mm厚の透明フィルムを使用した(再生ポリエステル系樹脂比率80wt%)、ヘーズ値1.81%、b*値1.78、L*値98.51
C:東洋紡株式会社製 リシャイン(登録商標)0.188mm厚の透明フィルムを使用した(再生ポリエステル系樹脂比率80wt%)、ヘーズ値1.94%、b*値1.94、L*値98.38
D:東洋紡株式会社製 リシャイン(登録商標)0.125mm厚の透明フィルムを使用した(再生ポリエステル系樹脂比率60wt%)、ヘーズ値1.70%、b*値1.60、L*値98.60
※なお、A~Dは全て易接着処理済品を使用した。
【0050】
(2)着色再生樹脂層
再生ポリエステル系樹脂(イタリア・ALIPLAST社製、Alimpet)にマスターバッチ(白色顔料およびバージンA-PET樹脂(華潤社製、CR8816)を含む。)を添加して再生ポリエステル系樹脂混合物を調製した。この再生ポリエステル系樹脂混合物について、長田製作所株式会社製の押出機(OSE-35φmm押出機)を使用して、温度265℃、スクリュー回転数44rpmで成形加工を行い、再生ポリエステル系樹脂を含む白色の着色再生樹脂層(幅340mm、厚さ0.100mm、もしくは0.200mm)を得た。また、着色再生樹脂層として、再生ポリエステル系樹脂比率が15、50、85wt%のものを用意した。
【0051】
(3)接着層(接着剤)
大日精化工業株式会社製 ドライラミネート用ポリエステルポリオール/ポリシソシアネート系2液硬化型(主剤:セイカボンド E-295NT 100重量部、硬化剤:セイカボンド C-75N-1.5 10重量部、溶剤:酢酸エチル ザーンカップ#3で19秒に希釈(固形分約30%)を用いた。
(4)絵柄層(絵柄印刷用インク)
アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を主成分とするバインダーからなる着色インキを用いた。
【0052】
[実施例1]
予め上記(2)の再生ポリエステル系樹脂比率が50wt%、厚さ0.200mmのホワイト着色シート(着色再生樹脂層)に上記(4)の絵柄印刷用インクを用いて白系の抽象柄の印刷を施した。この印刷済シートと、上記(1)のAを上記(3)の接着剤を用いて接合して積層し、実施例1の化粧シートを製作した。5箇所測色平均値(L*96.51、a*0.18、b*5.53)。また、接合はドライラミネートを用い、接着剤をコンマコーターを用いて、上記(1)のAに10g/m塗工し、乾燥炉で接着剤の溶剤を揮発させた後、50℃に加温されたニップロールで絵柄層を接着した。その後、35℃で72時間養生を行った。
【0053】
[実施例2]
透明再生樹脂層として、上記(1)のBを用いた以外は実施例1と同様である。
[実施例3]
上記(1)のAの裏面に、上記(4)の絵柄印刷用インクを用いて白系の抽象柄の印刷を施した。これを再生樹脂含有率が50wt%、厚さ0.200mmである上記(2)のホワイト着色シート(着色再生樹脂層)に上記(3)の接着剤を用いて接合して積層し、実施例3の化粧シートを製作した。なお、接合はドライラミネートを用い、接着剤をコンマコーターを用いて、裏面に印刷が施された上記(1)のAに10g/m塗工し、乾燥炉で接着剤の溶剤を揮発させた後、50℃に加温されたニップロールで着色再生樹脂層を接着した。その後、35℃で72時間養生を行った。
【0054】
[実施例4]
透明再生樹脂層として、上記(1)のBを用いた以外は実施例3と同様である。
[実施例5]
着色再生樹脂層として、再生樹脂含有率が85wt%であり、厚さ0.20mmであるホワイト着色シートを用いて絵柄層を変更した以外は実施例4と同様である。
[実施例6]
着色再生樹脂層として、再生樹脂含有率が15wt%であり、厚さ0.10mmであるホワイト着色シートを用いた以外は実施例3と同様である。
[実施例7]
透明再生樹脂層として、上記(1)のDを用い、着色再生樹脂層として厚さ0.10mmであるホワイト着色シートを用いた以外は実施例3と同様である。
【0055】
[比較例1]
透明再生樹脂層として、上記(1)のCを用いた以外は実施例1と同様である。
[比較例2]
透明再生樹脂層として、上記(1)のCを用いた以外は実施例3と同様である。
[比較例3]
ヘーズ値の範囲を決めるために透明再生樹脂層として、0.05mm厚のバージンポリエステル系を用いた2軸延伸PET(ユニチカ株式会社製 S50)を使用して絵柄の評価を行った。それ以外の構成は実施例1と同様である。
※ユニチカ株式会社製 S50:0.05mm厚の透明フィルム(再生ポリエステル系樹脂比率0wt%)、ヘーズ値4.89%、b*値1.02、L*値98.77
【0056】
[比較例4]
ヘーズ値の範囲を決めるために透明再生樹脂層として、0.10mm厚のバージンポリエステル系樹脂を用いた2軸延伸PET(ユニチカ株式会社製 SA100)を使用して絵柄の評価を行った。それ以外の構成は実施例1と同様である。
※ユニチカ株式会社製 SA100:0.10mm厚の透明フィルム(再生ポリエステル系樹脂比率0wt%)、ヘーズ値4.01%、b*値1.22、L*値98.70
【0057】
[比較例5]
絵柄層として、印刷絵柄を実施例1より白度の高い絵柄(5箇所測色平均値:L*96.66、a*-0.63、b*2.05)とした。それ以外の構成は実施例1と同様である。
[比較例6]
絵柄層として、印刷絵柄を実施例3より白度の高い絵柄(5箇所測色平均値:L*96.66、a*-0.63、b*2.05)とした。それ以外の構成は実施例3と同様である。
[比較例7]
押し出し成形法により得たバージンA-PET樹脂(華潤社製、CR8816)を主原料とする着色樹脂層(0.2mm厚)に、上記(4)の絵柄印刷用インクを用いて白系の抽象柄の絵柄を施した。この絵柄層の形成済みの着色樹脂層と、東洋紡株式会社製の2軸延伸ポリエステルフィルム(コスモシャイン(登録商標)A4100)とを、上記(3)の接着剤を用いて接合し、比較例7の化粧シートを製作した。なお、接合はドライラミネートを用い、接着剤をコンマコーターを用いて、絵柄層の形成済みの着色再生樹脂層に10g/m塗工し、乾燥炉で接着剤の溶剤を揮発させた後、50℃に加温されたニップロールで着色再生樹脂層を接着した。その後、35℃で72時間養生を行った。
※東洋紡株式会社製 コスモシャイン(登録商標)A4100:0.050mm厚の透明フィルム(再生ポリエステル系樹脂比率0wt%)、ヘーズ値1.00%、b*値0.88、L*値98.94
【0058】
実施例1~7の試料の構成および評価結果を表1に、比較例1~7の試料の構成および評価結果を表2に、それぞれ示す。また、表2には、本発明に即した実際の設計品例(実設計)を併せて示す。表1、表2において、それぞれの実施例、比較例、参考例の評価は、(a)絵柄の鮮明さ、(b)絵柄の色目、(c)透明再生樹脂層のL*値と絵柄層のL*値の差、(d)再生ポリエステル系樹脂重量率に関して、(a)鮮明、(b)異状なし、(c)2.00以上、(d)50wt%以上、を全て満たすものを○、それ以外のものを×とした。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
実施例1~7の化粧シートは、いずれも絵柄が鮮明で、絵柄の色目のくすみや黄ばみなどの変色がなく、美観が比較例1~7よりも優れていた。また、再生ポリエステル系樹脂を多く含むことによって、ポリエステル系樹脂のリサイクル利用の面で優れており、環境に配慮した化粧シートが得られた。
一方、比較例1~7の化粧シートは、絵柄の色目がくすんでいたり、黄ばみなどの変色が発生し、美観が実施例1~7よりも劣っていた。また、比較例3、4は、再生ポリエステル系樹脂の含有割合が低く、ポリエステル系樹脂のリサイクル利用の面でも実施例1~5よりも劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の化粧シートは、親環境的であり、かつ絵柄を鮮明に表現可能な化粧シートとして有用である。
【符号の説明】
【0063】
10…化粧シート
11…透明再生樹脂層
12…絵柄層
13…着色再生樹脂層
14…接着層
図1
図2