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特許7100017芳香族ポリマーおよびフッ素化ポリマーを含む組成物、ならびにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】芳香族ポリマーおよびフッ素化ポリマーを含む組成物、ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/02 20060101AFI20220705BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20220705BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20220705BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20220705BHJP
   A61M 1/02 20060101ALI20220705BHJP
   A61M 1/34 20060101ALI20220705BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20220705BHJP
   A61M 1/18 20060101ALI20220705BHJP
   B01D 71/54 20060101ALI20220705BHJP
   B01D 61/24 20060101ALI20220705BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20220705BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20220705BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20220705BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220705BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220705BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C08L81/02
C08L81/06
C08L75/04
C08G18/65 011
A61M1/02 107
A61M1/34 100
A61M1/36 119
A61M1/18 500
B01D71/54
B01D61/24
B01D39/16 C
B01D69/00
C08J9/26 102
C08J9/26 CFF
B32B27/30 D
B32B27/40
B32B5/18 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019506395
(86)(22)【出願日】2017-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2017069901
(87)【国際公開番号】W WO2018029133
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-07
(31)【優先権主張番号】16183380.1
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ディ ニコロ, エマヌエーレ
(72)【発明者】
【氏名】マッコーネ, パトリツィア
(72)【発明者】
【氏名】ペトルッチ, シルヴィア リータ
(72)【発明者】
【氏名】カンパネッリ, パスクヮーレ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-138881(JP,A)
【文献】特表2012-501377(JP,A)
【文献】特表2016-507600(JP,A)
【文献】特開平06-116352(JP,A)
【文献】特開2016-006149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 18/00-18/87
A61M 1/00-1/38
B01D 39/16、53/22、61/00-71/82
C08J 9/26
B32B 5/18、27/30、27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 少なくとも1種の芳香族ポリマー[ポリマー(A)]、
- 少なくとも1種のフッ素化ポリウレタン[F-TPUポリマー]であって、前記F-TPUポリマーは、
任意選択で[モノマー(a)]ポリ-エーテル型ジオール、ポリ-エステル型ジオール、ポリブタジエン-ジオール、およびポリカーボネート-ジオールを含む群から選択される少なくとも1種のジオール;
[モノマー(b)]少なくとも1種のヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー];
[モノマー(c)]少なくとも1種の芳香族、脂肪族、または脂環式ジイソシアネート;ならびに
[モノマー(d)]1~14個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族、脂環式、または芳香族ジオール
に由来する繰り返し単位を含む、F-TPUポリマー;ならびに
任意選択で少なくとも1種のさらなる原料
を含み、
少なくとも1種の芳香族ポリマー[ポリマー(A)]が、ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PAS)]および芳香族スルホンポリマー[ポリマー(SP)]からなる群から選択される、組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物[組成物(C)]から得られた少なくとも1つの層を含むフィルムであって、
- 少なくとも1種の芳香族ポリマー[ポリマー(A)]、および
- 少なくとも1種のフッ素化ポリウレタン[F-TPUポリマー]であって、前記F-TPUポリマーは、
任意選択で[モノマー(a)]ポリ-エーテル型ジオール、ポリ-エステル型ジオール、ポリブタジエン-ジオール、およびポリカーボネート-ジオールを含む群から選択される少なくとも1種のジオール;
[モノマー(b)]少なくとも1種のヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー];
[モノマー(c)]少なくとも1種の芳香族、脂肪族、または脂環式ジイソシアネート;ならびに
[モノマー(d)]1~14個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族、脂環式、または芳香族ジオール
に由来する繰り返し単位を含む、F-TPUポリマー;ならびに
- 任意選択で少なくとも1種のさらなる原料
を含み、
少なくとも1種の芳香族ポリマー[ポリマー(A)]が、ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PAS)]および芳香族スルホンポリマー[ポリマー(SP)]からなる群から選択される、フィルム。
【請求項3】
前記フィルムが、その厚さ全体にわたって分布された細孔を含まない高密度フィルムであるか、または重量多孔度がフィルムの全容量に基づいて3%未満のものである高密度フィルムである、請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物[組成物C]から得られる少なくとも1つの層を含む多孔質膜であって、
- 少なくとも1種の芳香族ポリマー[ポリマー(A)]、ならびに
- 少なくとも1種のフッ素化ポリウレタン[F-TPUポリマー]であって、前記F-TPUポリマーは、
任意選択で[モノマー(a)]ポリ-エーテル型ジオール、ポリ-エステル型ジオール、ポリブタジエン-ジオール、およびポリカーボネート-ジオールを含む群から選択される少なくとも1種のジオール;
[モノマー(b)]少なくとも1種のヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー];
[モノマー(c)]少なくとも1種の芳香族、脂肪族、または脂環式ジイソシアネート;ならびに
[モノマー(d)]1~14個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族、脂環式、または芳香族ジオール
に由来する繰り返し単位を含む、F-TPUポリマー;ならびに
- 任意選択で少なくとも1種のさらなる原料
を含み、
少なくとも1種の芳香族ポリマー[ポリマー(A)]が、ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PAS)]および芳香族スルホンポリマー[ポリマー(SP)]からなる群から選択される、多孔質膜。
【請求項5】
前記多孔質膜が、請求項2または3に記載のフィルムから得られる、請求項4に記載の多孔質膜。
【請求項6】
前記多孔質膜が、0.001~5μmの平均細孔直径を有する、請求項4または5に記載の多孔質膜。
【請求項7】
前記多孔質膜が、管状または中空繊維の形態である、請求項4~6のいずれか一項に記載の多孔質膜。
【請求項8】
請求項2または3に記載のフィルムの製造方法であって、
(i)請求項1に記載の組成物[組成物(C)]を提供する工程と、
(ii)工程(i)で提供された組成物(C)をキャストし、それによってフィルムを提供する工程と
を含む、方法。
【請求項9】
請求項4~7のいずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法であって、
(i)請求項1に記載の組成物[組成物(C)]を提供する工程と、
(ii)工程(i)で提供された組成物(C)をキャストし、それによってフィルムを提供する工程と;
(iii)工程(ii)で提供されたフィルムを沈殿させ、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む、方法。
【請求項10】
1種以上の固体混入物を含む液相および/または気相の濾過方法であって、1種以上の固体混入物を含む前記液相および/または気相を請求項4~7のいずれか一項に定義されたとおりの少なくとも1種の多孔質膜と接触させることを含む、方法。
【請求項11】
体外血液回路または透析フィルタ中の構成要素としての、請求項6または7に定義されたとおりの少なくとも1種の多孔質膜の使用。
【請求項12】
請求項3に定義されたとおりの高密度フィルムから作製された少なくとも1つの層を含む、カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月9日に出願された欧州特許出願第16183380.1号に対する優先権を主張し、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、少なくとも1種の芳香族ポリマーおよび少なくとも1種のフッ素化ポリマーを含む組成物、このような組成物から作製された物品、ならびにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
芳香族ポリマーは、それらの良好な機械的強度および熱安定性のために、精密濾過膜および限外濾過膜の調製において広く使用されている。
【0004】
多孔質膜は、それらと接触状態の化学種の浸透を適度にする個別的な、薄い界面である。多孔質膜の重要な特性は、膜それ自体を通っての化学種の浸透速度を制御するその能力である。この特徴は、分離用途(水およびガス)または薬物送達用途のような多くの異なる用途において利用されている。
【0005】
精密濾過および限外濾過としての使用のために適するポリマー膜は典型的には、液体またはガスの通過が対流流れによって主として支配されるので、「ふるい」メカニズム下で透過を制御する。そのようなポリマー膜は、空隙の非常に大きい分率(多孔率)のアイテムに高めることができる相転換法によって主として製造される。
【0006】
多孔質ポリマー膜は、相転換法によって主として製造され、これらはアイテムに空隙の大きい分率(言い換えれば、高い多孔率)を与える。
【0007】
ポリマー、好適な溶媒および/または共溶媒ならびに、任意選択で、1種以上の添加剤を含有する均一なポリマー溶液(「ドープ溶液」とも称される)は典型的には、キャスティングによってフィルムに加工され、次いで、それを非溶媒媒体と接触させることによって、いわゆる非溶媒誘起相分離(Non-Solvent Induced Phase Separation)(NIPS)法によって沈澱させられる。非溶媒媒体は通常、水もしくは水と界面活性剤との混合物、アルコールおよび/または溶媒それ自体である。
【0008】
沈澱はまた、ポリマー溶液の温度を下げることによって、いわゆる熱誘起相分離(Thermal Induced Phase Separation)(TIPS)法によって得ることができる。
【0009】
あるいは、沈澱は、キャスティングによって加工されたフィルムを、非常に高い水蒸気含有量での空気と接触させることによって、いわゆる蒸気誘起相分離(Vapour Induced Phase Separation)(VIPS)法によって誘起され得る。
【0010】
さらに、沈澱は、キャスティングによって加工されたフィルムからの溶媒の蒸発によって、いわゆる蒸発誘起相分離(Evaporation Induced Phase Separation)(EIPS)法によって誘起され得る。典型的には、この方法では、低い沸点を有する有機溶媒(例えば、THF、アセトン、MEKなど)が、水(いわゆる「非溶媒」)と混合して使用される。ポリマー溶液は、最初に押し出され、次いで、揮発性溶媒の蒸発および非溶媒の豊富化によって沈殿する。
【0011】
上記方法は、組み合わせておよび/または順次に使用されて、特定の形態学および性能を有する膜を与えることができる。例えば、EIPS法は、凝固プロセスを完了させるために、VIPS法とNIPS法とに組み合わせることができる。
【0012】
EIPS法は、多孔質膜を製造するためにポリウレタンポリマーが使用される場合、「熱凝固法」として公知である。この場合、ドープ溶液は、プレポリマーと一緒に調製され、膜が形成されるにつれて、それは、熱後処理によって安定化されて、多孔質構造を固定し、プレポリマーを架橋する。
【発明の概要】
【0013】
本出願人は、良好な機械的特性および撥水性と撥油性との両方を示す多孔質膜の製造のための、組成物を提供する問題に直面した。
【0014】
この技術的問題に直面した際に、本出願人は、多孔質と高密度の両方の物品の調製に適した組成物を見出した。
【0015】
したがって、第1の態様では、本発明は、
- 少なくとも1種の芳香族ポリマー[ポリマー(A)]、および
- 少なくとも1種のフッ素化ポリウレタン[F-TPUポリマー]であって、前記F-TPUポリマーは、
任意選択で[モノマー(a)]ポリ-エーテル型ジオール、ポリ-エステル型ジオール、ポリブタジエン-ジオール、およびポリカーボネート-ジオールを含む群から選択される少なくとも1種のジオール;
[モノマー(b)]少なくとも1種のヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー];
[モノマー(c)]少なくとも1種の芳香族、脂肪族、または脂環式ジイソシアネート;ならびに
[モノマー(d)]1~14個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族、脂環式、または芳香族ジオール
に由来する繰り返し単位を含む、F-TPUポリマー;ならびに
任意選択で少なくとも1種のさらなる原料
を含む、組成物[組成物C]に関する。
【0016】
第2の態様では、本発明は、上で定義されたとおりの組成物[組成物(C)]から得られた少なくとも1つの層を含む、フィルムに関する。
【0017】
有利には、前記フィルムは、個別的な、概して薄い、高密度の層である。
【0018】
第3の態様では、本発明は、上で定義されたとおりの組成物[組成物(C)]から得られる少なくとも1つの層を含む、多孔質膜に関する。
【0019】
第4の態様では、本発明は、フィルムの製造方法であって、
(i)上で定義されたとおりの組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii)工程(i)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と
を含む、方法に関する。
【0020】
本発明の高密度フィルムは、有利には上で定義されたとおりの方法によって得られ得る。
【0021】
第5の態様では、本発明は、多孔質膜の製造方法であって、上で定義されたとおりの工程(i)および工程(ii)、ならびに工程(ii)で提供されたフィルムを加工し、それによって多孔質膜を提供する工程(iii)を含む、方法に関する。
【0022】
本発明の多孔質膜は、有利には上で定義された方法から得られ、言い換えれば、それは、本発明の高密度フィルムから得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において:
- 用語「(ペル)フルオロポリエーテル」は、「完全にまたは部分的にフッ素化されたポリエーテル」を示すことが意図され;
- 表現「(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖」は、部分的にまたは完全にフッ素化された直鎖または分岐のポリオキシアルキレン鎖を示すことが意図され;
- 化合物、化学式または式の一部を特定する記号または数字の前後の括弧の使用は、それらの記号または数字を本文の残りから区別し易くする目的を有しているに過ぎず、したがって、前記括弧は省略される場合もあり得;
- 用語「膜」は、それと接触している化学種の透過を適度にする、個別的な、概して薄い界面を指すことが意図され、前記膜は、有限寸法の細孔を含み;
- 用語「多孔質の」は、本発明の膜がその厚さ全体にわたって分布された細孔を含むことを示すことが意図され;
- 「フィルム」または「層」と関連している用語「用語」は、フィルムもしくは層がその厚さ全体にわたって分布された細孔を含まないか、または細孔が存在する場合、重量多孔度が、フィルムの全容量に基づいて3%未満、より好ましくは1%未満のものであることを示すことが意図され;
- 用語「組成物(C)」は、特に断りのない限り、液体組成物[組成物(C)]および固体組成物[組成物(C)]の両方を含むことが意図される。
【0024】
好ましくは、F-TPUポリマーは、ブロックコポリマー、すなわちブロック(「セグメント」とも称される)を含み、各ブロックが、上で定義されたとおりの、任意選択のモノマー(a)、モノマー(b)、モノマー(c)またはモノマー(d)に由来する繰り返し単位を含むポリマーである。
【0025】
好ましくは、前記F-TPUポリマーは、30,000~約70,000Daの数平均分子量を有する。
【0026】
好ましくは、前記F-TPUポリマーは、約120℃~約240℃の融点(T)を有する。
【0027】
好ましくは、前記任意選択の少なくとも1種のモノマー(a)は、500~4,000Da、より好ましくは1,000~4,000の数平均分子量を有する。
【0028】
好ましくは、前記任意選択の少なくとも1種のモノマー(a)は、ポリ(エチレン)グリコール、ポリ(プロピレン)グリコール、ポリ(テトラメチレン)グリコール(PTMG)、ポリ(1,4-ブタンジオール)アジペート、ポリ(エタンジオール-1,4-ブタンジオール)アジペート、ポリ(1,6-ヘキサンジオール-ネオペンチル)グリコールアジペート、ポリ-カプロラクトン-ジオール(PCL)およびポリカーボネート-ジオールを含む群の中で選択される。ポリ(テトラメチレン)グリコール、ポリ-カプロラクトン-ジオールおよびポリカーボネート-ジオールが、特に好ましい。
【0029】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(b)は、ヒドロキシ末端(ペル)フルオロポリエーテルポリマー[PFPEポリマー]、すなわち、2つの鎖末端を有する(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(Rpf)]を含むポリマーであり、ここで、一方または両方の鎖末端は、少なくとも1個の-OH基で終端する。
【0030】
好ましくは、前記鎖(Rpf)の少なくとも1つの鎖末端は、式:
-CH(OCHCH-OH (I)
(式中、
tは0、または1~5である)
の基で終端する。
【0031】
より好ましくは、前記鎖(Rpf)の両方の鎖末端が、上で定義されたとおりの式(I)の基で終端する。
【0032】
好ましくは、前記鎖(Rpf)は、式
-O-D-(CFXz1-O(R)(CFXz2-D-O-
[式中、
z1およびz2は、互いに等しいかまたは異なり、1以上であり;XおよびXは、互いに等しいかまたは異なり、-Fまたは-CFであり、但し、z1および/またはz2が1を超える場合、XおよびXは、-Fであり;
DおよびDは、互いに等しいかまたは異なり、1~6個、さらにより好ましくは1~3個の炭素原子を含むアルキレン鎖であり、前記アルキル鎖は、1~3個の炭素原子を含む少なくとも1個のペルフルオロアルキル基で任意選択で置換されており;
(R)は、繰り返し単位R°を含み、好ましくはそれからなり、前記繰り返し単位は、
(i)-CFXO-(式中、Xは、FまたはCFである)、
(ii)-CFXCFXO-(式中、Xは、出現するごとに等しいかまたは異なり、FまたはCFであり、但し、Xの少なくとも1つは、-Fであることを条件とする);
(iii)-CFCFCWO-(式中、Wのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、F、Cl、Hである);
(iv)-CFCFCFCFO-;
(v)-(CF-CFZ-O-(式中、jは0~3の整数であり、Zは一般式-O-R(f-a)-Tの基であり、R(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、以下:-CFXO-、-CFCFXO-、-CFCFCFO-、-CFCFCFCFO-の中で選択され、Xのそれぞれのそれぞれは、独立して、FまたはCFであり、Tは、C~Cペルフルオロアルキル基である)
からなる群から独立して選択される]
の鎖である。
【0033】
より好ましくは、鎖(R)は、以下の式(R-a)~式(R-c):
(R-a) -(CFO)(CFCFO)(CFCFCFO)(CFCFCFCFO)
(式中、m、n、p、qは、0、または鎖Rが上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、但し、pおよびqが同時に0である場合、nは0でなく、mが0以外の場合、m/n比は好ましくは0.1~20であり、(m+n)が0以外の場合、(p+q)/(m+n)は好ましくは0~0.2であることを条件とする);
(R-b) -(CFCF(CF)O)(CFCFO)(CFO)(CF(CF)O)
(式中、a、b、c、dは0、または鎖Rが上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、但し、a、cおよびdの少なくとも1つは0でなく、bが0以外の場合、a/bは、好ましくは0.1~10であり、(a+b)が0以外の場合、(c+d)/(a+b)は、好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.01~0.2であることを条件とする);
(R-c) -(CFCF(CF)O)(CFO)(CF(CF)O)
(式中、e、f、gは、0、または鎖Rが上記数平均分子量の要件を満たすように選択される整数であり、eが0以外の場合、(f+g)/eは好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.01~0.2である)
から選択される。
【0034】
鎖(R)が、pおよびqが0である、上で定義されたとおりの式(R-a)に適合するPFPEポリマーが、本発明で特に好ましい。
【0035】
好ましい実施形態では、前記PFPEポリマーは、以下の式(PFPE-I):
HO-(CHCHO)-CH-(Rpf)-CH(OCHCH-OH(PFPE-I)
(式中、
tおよびuは、それぞれ独立して、0、または1~5であり、
pfは上で定義されたとおりである)
に適合する。
【0036】
好ましくは、前記PFPEポリマーは、400~10,000Da、より好ましくは1,000~5,000の数平均分子量を有する。
【0037】
好ましい実施形態では、モノマー(a)とモノマー(b)との間のモル比は、2~20、より好ましくは2~10である。
【0038】
好ましい実施形態では、モノマー(b)の量は、F-TPUポリマーが、F-TPUポリマーの重量に基づいて1~80重量%、好ましくは1~70重量%のフッ素を含むようなものである。
【0039】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(c)は、500Da以下、好ましくは10~500Daの数分子量を有する。
【0040】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(c)は、4,4’-メチレン-ジフェニレン-ジ-イソシアネート(MDI)、1,6-ヘキサン-ジイソシアネート(HDI)、2,4-トルエン-ジイソシアネート、2,6-トルエン-ジイソシアネート、キシリレン-ジイソシアネート、ナフタレン-ジイソシアネート、パラフェニレン-ジイソシアネート、ヘキサマエチレン(hexamaethylen)-ジイソシアネート、イソホロン-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシル-メタン-ジイソシアネート、およびシクロヘキシル-1,4-ジイソシアネートを含み、好ましくはこれらからなる群の中で選択される。MDIおよびHDIが、特に好ましい。
【0041】
好ましくは、前記少なくとも1種のモノマー(d)は、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール(BDO)、1,6-ヘキサンジオール(HDO)、N,N-ジエタノールアミンおよびN,N-ジイソプロパノールアニリンを含み、好ましくはこれらからなる群の中で選択される。BDOおよびHDOが、特に好ましい。
【0042】
好ましい実施形態では、モノマー(c)およびモノマー(d)に由来するブロックの合計は、F-TPUポリマーの全重量に基づいて10~60重量%である。
【0043】
当業者は、存在する場合モノマー(b)および存在する場合モノマー(a)に由来する繰り返し単位を含むブロックがゴム様ブロックである一方で、モノマー(c)およびモノマー(d)に由来する繰り返し単位を含むブロックが硬いブロックであることを容易に理解する。
【0044】
好ましい実施形態では、前記モノマー(b)に由来する繰り返し単位を含むブロック[ブロックB]の少なくとも80%は、それらの末端の少なくとも1つで、モノマー(c)に由来する繰り返し単位を含むブロック[ブロックC]を介してモノマー(a)に由来する繰り返し単位を含むブロック[ブロックA]に結合される。言い換えれば、ブロックBの少なくとも80%は、以下のタイプ:-[A-C-B-C]-の配列に含まれる。
【0045】
有利には、F-TPUポリマーは、当技術分野で公知の方法、例えば、押出し、射出成形、上で定義されたモノマーの溶液のキャスティングに従って、または米国特許第5332798号明細書(AUSIMONT S.P.A.)に開示された手順に従って調製され得る。
【0046】
ポリマー(A)は、典型的には、ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PAS)]、および芳香族スルホンポリマー[ポリマー(SP)]からなる群から選択される。
本発明の目的のために、用語「ポリ(アリーレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PAS)]」は、繰り返し単位を含む任意のポリマーであって、前記繰り返し単位の50モル%超が式:
-(Ar-S)-
(式中、Arは、その2つの末端のそれぞれによって2個の硫黄原子と結合され、直接C-S結合によってスルフィド基を形成する、少なくとも1個の芳香族単核または多核環、例えば、フェニレンまたはナフチレン基、を含む芳香族部分を意味する)
の繰り返し単位(RPAS)である、ポリマーを意味することが意図される。
【0047】
繰り返し単位(RPAS)において、芳香族部分Arは、限定されないが、ハロゲン原子、C~C12アルキル基、C~C24アルキルアリール基、C~C24アラルキル基、C~C24アリーレン基、C~C12アルコキシ基、およびC~C18アリールオキシ基、ならびに置換もしくは非置換アリーレンスルフィド基(そのアリーレン基は、それらの2つの末端のそれぞれによって2個の硫黄原子にまた結合されて、直接C-S結合によってスルフィド基を形成し、それによって分岐または架橋ポリマー鎖をもたらす)を含めて、1個以上の置換基で置換されていてもよい。
【0048】
ポリマー(PAS)は、好ましくは70モル%超、より好ましくは80モル%超、さらにより好ましくは90モル%超の繰り返し単位(RPAS)を含む。
【0049】
最も好ましくは、ポリマー(PAS)は、繰り返し単位(RPAS)以外の繰り返し単位をまったく含まない。
【0050】
繰り返し単位(RPAS)において、芳香族部分Arは、好ましくは、以下の式(X-A)~式(X-K):
[式中、RおよびRは、互いに等しいかまたは異なり、水素原子、ハロゲン原子、C~C12アルキル基、C~C24アルキルアリール基、C~C24アラルキル基、C~C24アリーレン基、C~C12アルコキシ基、およびC~C18アリールオキシ基、ならびに置換または非置換アリーレンスルフィド基(そのアリーレン基はまた、それらの2つの末端のそれぞれによって2個の硫黄原子にまた結合され、直接C-S結合によってスルフィド基を形成し、それによって分岐または架橋ポリマー鎖をもたらす)からなる群から選択される]
のものからなる群から選択される。
【0051】
ポリマー(PAS)は、ホモポリマー、またはコポリマー、例えば、ランダムコポリマーもしくはブロックコポリマーであってもよい。
【0052】
ポリマー(PAS)は、典型的には、以下の式(X-L)~式(X-N):
のものからなる群から選択される1つ以上の分岐または架橋繰り返し単位を含む。
【0053】
ポリマー(PAS)は、好ましくは、ポリ(フェニレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PPS)]である。本発明の目的のために、用語「ポリ(フェニレンスルフィド)ポリマー[ポリマー(PPS)]」は、繰り返し単位を含む任意のポリマーであって、前記繰り返し単位の50モル%超が、式:
[式中、p-フェニレン基は、その2つの末端のそれぞれによって2個の硫黄原子に結合され、直接C-S結合によってスルフィド基を形成し、式中、RおよびRは、互いに等しいかまたは異なり、水素原子、ハロゲン原子、C~C12アルキル基、C~C24アルキルアリール基、C~C24アラルキル基、C~C24アリーレン基、C~C12アルコキシ基、およびC~C18アリールオキシ基、ならびに置換もしくは非置換アリーレンスルフィド基(そのアリーレン基はまた、それらの2つの末端のそれぞれによって2個の硫黄原子にまた結合され、直接C-S結合によってスルフィド基を形成し、それによって分岐または架橋ポリマー鎖をもたらす)からなる群から選択される]
のp-フェニレンスルフィド繰り返し単位(RPPS)であるポリマーを意味することが意図される。
【0054】
本発明に適するポリマー(PPS)の非限定的な例には、Solvay Specialty Polymers USA L.L.C.からの商標名RYTON(登録商標)、Fortron IndustriesからのFORTRON(登録商標)、およびGE PlasticsからのUPEC(登録商標)の下で商業的に入手可能なものが含まれる。
【0055】
本発明の目的のために、用語「芳香族スルホンポリマー[ポリマー(SP)]」は、前記ポリマー(SP)の繰り返し単位の50モル%超が、主鎖中のエーテル結合によって結合され、式-Ar-SO-Ar’-[繰り返し単位(RSP)](式中、ArおよびAr’は、互いに等しいかまたは異なり、芳香族基である)の少なくとも1個の基を含む繰り返し単位を含む、任意のポリマーを意味することが意図される。
【0056】
本発明の第1の好ましい実施態様では、ポリマー(SP)の繰り返し単位(RSP)は、好ましくは、式:
-Ar-(T’-Ar-O-Ar-SO-[Ar-(T-Ar-SO-Ar-O-(RSP-1
(式中:
- Ar、Ar、Ar、Ar、およびArは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、独立して、芳香族単核または多核基であり;
- TおよびT’は、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、独立して、結合、または1個もしくは2個以上のヘテロ原子を任意選択で含む二価基であり;好ましくはT’は、結合、-CH-、-C(O)-、-C(CH-、-C(CF-、-C(=CCl)-、-SO-、-C(CH)(CHCHCOOH)-、および式:
からなる群から選択され、および
好ましくはTは、結合、-CH-、-C(O)-、-C(CH-、-C(CF-、-C(=CCl)-、-C(CH)(CHCHCOOH)-、および式:
からなる群から選択され、および
- nおよびmは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、ゼロ、または1~5の整数である)
の繰り返し単位(RSP-1)である。
【0057】
本発明のこの第1の好ましい実施態様によるポリマー(SP)の非限定的な例には、ポリ(フェニレンスルホン)ポリマー[ポリマー(PPSU)]、ポリ(スルホン)ポリマー[ポリマー(PSU)]およびポリ(エーテルスルホン)ポリマー[ポリマー(PESU)]が含まれる。
【0058】
本発明の目的のために、用語「ポリ(フェニレンスルホン)ポリマー[ポリマー(PPSU)]」は、前記ポリマー(PPSU)の繰り返し単位(RSP-1)の50モル%超が、式(K-A):
の繰り返し単位(RPPSU)である繰り返し単位を含む、任意のポリマーを意味することが意図される。
【0059】
本発明の好ましい実施態様では、ポリマー(PPSU)の、75モル%超、好ましくは90モル%超、より好ましくは99モル%超、さらにより好ましくは実質的にすべての繰り返し単位(RSP-1)が、式(K-A)の繰り返し単位(RPPSU)であり、鎖欠陥または小量の他の繰り返し単位が存在してもよく、これらの後者は、ポリマー(PPSU)の特性を実質的には変性させないことが理解される。
【0060】
ポリマー(PPSU)ポリマーは、特に、ホモポリマー、またはコポリマー、例えば、ランダムコポリマーもしくはブロックコポリマーであってよい。(PPSU)ポリマーがコポリマーである場合、その繰り返し単位は、有利には、式(K-A)の繰り返し単位(RPPSU)と、繰り返し単位(RPPSU)とは異なる繰り返し単位(RPPSU )、例えば、式(K-B)、式(K-C)または式(K-D):
およびそれらの混合物の繰り返し単位とのミックスである。
【0061】
ポリマー(PPSU)はまた、ホモポリマーと上に定義されたとおりのコポリマーとのブレンドであり得る。
【0062】
本発明に適するポリマー(PPSU)の非限定的な例には、Solvay Specialty Polymers USA L.L.C.から商標名RADEL(登録商標)R PPSUの下で商業的に入手可能なものが含まれる。
【0063】
本発明の目的のために、用語「ポリ(スルホン)ポリマー[ポリマー(PSU)]」は、前記ポリマー(PSU)の繰り返し単位(RSP-1)の少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、さらにより好ましくは少なくとも80モル%、最も好ましくは少なくとも90モル%が、式:
の繰り返し単位(RPSU)である、芳香族スルホンポリマーを意味することが意図される。
【0064】
本発明に適するポリマー(PSU)の非限定的な例には、Solvay Specialty Polymers USA L.L.C.から商標名UDEL(登録商標)PSUの下で商業的に入手可能なものが含まれる。本発明の目的のためには、用語「ポリ(エーテルスルホン)ポリマー[ポリマー(PESU)]」は、前記ポリマー(PESU)の繰り返し単位(RSP-1)の50モル%超が、式:
(式中、R’のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;j’のそれぞれは、互いにおよび出現ごとに等しいかもしくは異なり、独立して、ゼロであるかまたは0~4の整数である)
の繰り返し単位(RPESU)である、任意のポリマーを意味することが意図される。
【0065】
好ましい繰り返し単位(RPESU)は、以下に示される式(I):
に適合するものである。
【0066】
ポリマー(PESU)は、特にホモポリマー、またはコポリマー、例えば、ランダムもしくはブロックコポリマーであってもよい。
【0067】
ポリマー(PESU)がコポリマーである場合、その繰り返し単位は、有利には、上で定義されたとおりの、繰り返し単位(RPESU)と繰り返し単位(RPESU )とのミックスである。繰り返し単位(RPESU )は、典型的には、以下の式(II)、式(III)および式(IV):
[式中、
- R’のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され;
- i’のそれぞれは、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なり、独立して、ゼロであるかまたは0~4の整数であり;
- Tのそれぞれは、互いに等しいかもしくは異なり、結合、-CH-;-O-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;
-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、それぞれのRおよびRは、互いに独立して、水素、またはC~C12アルキル、C~C12アルコキシ、もしくはC~C18アリール基である);-(CH-および-(CF-(ここで、qは、および1~6の整数である)、または6個までの炭素原子の、直鎖もしくは分岐の、脂肪族二価基;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される]
のものからなる群から選択される。
【0068】
具体的な繰り返し単位(RPESU )は、典型的には、以下の式(A)、式(B)および式(C):
のものならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0069】
ポリマー(PESU)は、先に言及されたホモポリマーとコポリマーとのブレンドであってもよい。
【0070】
好ましくは、ポリマー(PESU)の繰り返し単位の75モル%超、好ましくは85モル%超、好ましくは95モル%超、好ましくは99モル%超は、上で定義されたとおりの繰り返し単位(RPESU)である。
【0071】
最も好ましくは、ポリマー(PESU)の繰り返し単位はすべて、上で定義されたとおりの、繰り返し単位(RPESU)であり、鎖欠陥、または非常に少量の他の単位が存在してもよく、これら後者は、特性を実質的には変性させないことが理解される。
【0072】
本発明に適するポリマー(PESU)の非限定的な例には、例えば、国際公開第2014/072447号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)2014年5月15日に記載されたものが含まれる。
【0073】
本発明に適するポリマー(PESU)の非限定的な例には、Solvay Specialty Polymers USA L.L.C.から商標名VERADEL(登録商標)PESUの下で商業的に入手可能なものが含まれる。
【0074】
本発明の第2の好ましい実施態様では、ポリマー(SP)の繰り返し単位(RSP)は、好ましくは、次式の繰り返し単位(RSP-2)を有する式:
X-Ar*1-SO-[Ar*2-(T-Ar*3n*-SOm*-Ar*4-E-(RSP-2
(式中、
- Ar*1、Ar*2、Ar*3およびAr*4のそれぞれは、出現するごとに互いに等しいかまたは異なり、芳香族部分であり;
- nおよびmは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、ゼロ、または1~5の整数であり;
- Tは、結合、または1個もしくは2個以上のヘテロ原子を任意選択で含む二価基であり;好ましくはTは、結合、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-C(=CCl)-、-C(CH)(CHCHCOOH)-、および式:
からなる群から選択され、
および
- Eは、式(E-1)~式(E-3):
の1つ以上から選択される1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール糖ジオール単位である)
の繰り返し単位(RSP-2)である。
【0075】
好ましい芳香族部分Ar*1~Ar*4は、以下の構造:
(式中、
- それぞれのRは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリまたはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリまたはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、および四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- jは、ゼロ、または1~4の整数であり、j*’は、ゼロ、または1~3の整数である)
を有する。
【0076】
本発明のこの第2の好ましい実施態様によるポリマー(SP)は、少なくとも1種の上で定義されたとおりの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール[ジオール(AA)]と、
- 式(S):
X-Ar*1-SO-[Ar*2-(T-Ar*3n*-SOm*-Ar*4-X’
(式中:
- XおよびX’は、互いに等しいかまたは異なり、F、Cl、Br、I;好ましくはClまたはFから選択されるハロゲンであり;
- Ar*1、Ar*2、Ar*3、Ar*4、T、nおよびmは、上で定義されたとおりである)
の少なくとも1種のジハロアリール化合物[以下ジハロ(BB)]との
反応によって製造され得る。
【0077】
本発明のこの第2の好ましい実施態様によってポリマー(SP)を製造するのに都合のよい方法は、本明細書に参照により組み込まれる、国際公開第2014/072473号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)2014年5月15日)に開示されている。
【0078】
本発明のこの第2の好ましい実施態様におけるポリマー(SP)の非限定的な例には、ポリ(イソソルビド)ポリマー[ポリマー(PSI)]が含まれる。
【0079】
本発明の目的のために、用語「ポリ(イソソルビド)ポリマー[ポリマー(PSI)]」は、前記ポリマー(PSI)の繰り返し単位(RSP-2)の30モル%超が、式(RPSI-1)および式(RPSI-2):
(式中、
- Rのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、上で定義されたとおりであり;
- jは、上で定義されたとおりであり;
- Tは、上で定義されたとおりであり、好ましくは結合、-CH-、-C(O)-、-C(CH-、-C(CF-、-C(=CCl)-、-C(CH)(CHCHCOOH)-、-SO-、フェニレン、および式:
の基からなる群から選択され、
および
- Eは、式(E-1)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール糖ジオール単位[以下イソソルビド単位(E-1)とも称される]である)
のものの1つ以上から独立して選択される繰り返し単位(RPSI)である繰り返し単位を含む、任意のポリマーを意味することが意図される。
【0080】
繰り返し単位(RPSI-1)および(RPSI-2)は、それぞれ単独または混合物として存在し得る。
【0081】
より好ましいポリマー(PSI)は、Eが、式(E-2)および/または式(E-3)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール糖ジオール単位[以下、それぞれ、イソマンニド(isomannide)単位およびイソイジド(isoidide)単位(E-2)および(E-3)とも称される]である1種以上の(RPSI-1)および(RPSI-2)単位と任意選択で組み合わせて、Eが、式(E-1)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール糖ジオール単位である、式(RPSI-1)および式(RPSI-2)の繰り返し単位を含むものである。
【0082】
最も好ましいポリマー(PSI)は、Eが、式(E-2)のイソマンニド単位および/または式(E-3)のイソイジド単位である、繰り返し単位(RPSI-1)と任意選択で組み合わせて、Eが、イソソルビド単位(E-1)である、式(RPSI-1)の繰り返し単位を含むものである。
【0083】
繰り返し単位(RPSI-1)および(RPSI-2)においては、それぞれのフェニレン部分は、繰り返し単位中のR以外の他の部分に対して1,2-、1,4-、または1,3-結合を独立して有してもよい。好ましくは、前記フェニレン部分は1,3-または1,4-結合を有し、より好ましくは、それらは1,4-結合を有する。さらに、繰り返し単位(RPSI-1)および(RPSI-2)において、jは、それぞれ出現するごとにゼロであり、すなわち、フェニレン部分が、ポリマーの主鎖中の結合を可能とするもの以外の置換基をまったく有しないということである。
【0084】
ポリマー(PSI)は、
- ジオール(AA)と異なる少なくとも1種のジヒドロキシル化合物[ジオール(A’A’)]の組み込みに由来する、繰り返し単位(RA’A’);
- ジハロ(BB)とは異なる少なくとも1種のジハロアリール化合物[ジハロ(B’B’)]の組み込みに由来する、繰り返し単位(RB’B’);
- 少なくとも1種のヒドロキシル-ハロ化合物[ヒドロ-ハロ(A’B’)]の組み込みに由来する、繰り返し単位(RA’B’);
- 式(S1)の繰り返し単位(R):
Ar-(TS1-Ar-O-Ar-SO-[Ar-(TS1’-Ar-SO-Ar10-O-
(式中:
- Ar、Ar、Ar、Ar、およびArは、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なり、独立して、芳香族部分であり;
- TS1およびTS1’は、出現するごとに互いに等しいかまたは異なり、独立して、結合、または1個もしくは2個以上のヘテロ原子を任意選択で含む二価基であり;好ましくは、TS1およびTS1’は、結合、-CH-、-C(O)-、-C(CH-、-C(CF-、-C(=CCl)-、-C(CH)(CHCHCOOH)-、-SO-、および式:
の基からなる群から選択され;
- pおよびqは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、ゼロ、または1~5の整数である)
の1種以上から選択される繰り返し単位を任意選択でさらに含んでもよい。
【0085】
繰り返し単位(R)は、特に、以下の式(S1-A)~式(S1-D):
(式中、
- R’のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリもしくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリもしくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、および四級アンモニウムからなる群から選択され;
- j’は、ゼロであるか、または0~4の整数であり;
- TS1およびTS1’は、上で定義されたとおりである)
のものからなる群から選択され得る。
【0086】
式(S1-C)~(S1-D)のいずれかの繰り返し単位において、それぞれのフェニレン部分は、繰り返し単位中のR’とは異なる他の残基に対して1,2-、1,4-、または1,3-結合を独立して有してもよい。好ましくは、前記フェニレン部分は1,3-または1,4-結合を有し、より好ましくは、それらは1,4-結合を有する。さらに、式(S1-C)~(S1-D)のいずれかの繰り返し単位において、jc’は、出現するごとに、ゼロであり、すなわち、フェニレン部分が、ポリマーの主鎖中の結合を可能とするもの以外の置換基をまったく有しないということである。
【0087】
ポリマー(PSI)は、典型的には、上で定義されたとおりの式(RPSI)の繰り返し単位を、ポリマー(PSI)の全繰り返し単位に対して、少なくとも30モル%、好ましくは35モル%、より好ましくは40モル%、さらにより好ましくは少なくとも50モル%の量で含む。
【0088】
ある特定の好ましい実施態様によれば、ポリマー(PSI)の繰り返し単位の70モル%超、より好ましくは85モル%超は、上で定義されたとおりの、繰り返し単位(RPSI)であり、100モル%までの補完は、一般に、上で定義されたとおりの繰り返し単位(R)である。
【0089】
単位(RPSI)に加えて、繰り返し単位をさらに含むポリマー(PSI)を製造するための方法は、上述の国際公開第2014/072473号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)2014年5月15日にも開示されている。
【0090】
好ましくは、ポリマー(PSI)は、(E)が、式(E-1)のイソソルビド単位であり、かつフェニレン単位が、1,4-結合を有する、上で定義されたとおりの繰り返し単位(RPSI)、好ましくは繰り返し単位(RPSI-1)のみからなる。
【0091】
ポリマー(PSI)は、一般に少なくとも20,000、好ましくは少なくとも30,000、より好ましくは少なくとも40,000の重量平均分子量を有する。重量平均分子量(M)および数平均分子量(M)は、ポリスチレン標準で較正された、ASTM D5296を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により推定され得る。
【0092】
重量平均分子量(M)は、
である。
【0093】
数平均分子量(M)は、
である。
【0094】
多分散性指数(PDI)は、重量平均分子量(M)と数平均分子量(M)との比として本明細書によって表現される。
【0095】
ポリマー(PSI)は、一般に2.5未満、好ましくは2.4未満、より好ましくは2.2未満の多分散性指数を有する。
【0096】
この比較的狭い分子量分布は、同様の分子量を有し、かつオリゴマー画分を実質的に含まない分子鎖の全体的効果を表す。
【0097】
ポリマー(PSI)は、有利には、少なくとも200℃、好ましくは210℃、より好ましくは少なくとも220℃のガラス転移温度を有する。ガラス転移温度(Tg)は、一般に、ASTM D 3418の標準手順に従って、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。
【0098】
本発明によるフィルムは、有利には高密度フィルムである。
それらの厚さの全体にわたって均一に分布した細孔を含有する膜は一般に、対称(または等方性)膜として公知であり;それらの厚さの全体にわたって不均一に分布している細孔を含有する膜は一般に、非対称(または異方性)膜として公知である。
【0099】
本発明による多孔質膜は、対称膜または非対称膜のいずれであってもよい。
【0100】
非対称多孔質膜は、典型的には、それらの厚さの全体にわたって不均一に分布している細孔を含有する1つ以上の層からなる。
【0101】
非対称多孔質膜は、典型的には、1つ以上の内層における細孔の平均細孔直径よりも小さい平均細孔直径を有する細孔を含有する外層を含む。
【0102】
本発明の多孔質膜は、好ましくは少なくとも0.001μm、より好ましくは少なくとも0.005μm、さらにより好ましくは少なくとも0.01μmの平均細孔直径を有する。本発明の多孔質膜は、好ましくは最大で50μm、より好ましくは最大で20μm、さらにより好ましくは最大で15μmの平均細孔直径を有する。
【0103】
本発明の多孔質膜における平均細孔直径の決定のための適当な技術は、例えば、PORTER.Mark C.により編集された「Handbook of Industrial Membrane Technology」、Noyes Publications、1990、p.70-78に記載されている。平均細孔直径は、好ましくは走査電子顕微鏡法(SEM)により決定される。
【0104】
本発明の多孔質膜は、典型的には、膜の全容量に基づいて、5%~90%、好ましくは10容量%~85容量%、より好ましくは30%~90%に含まれる重量多孔率を有する。
【0105】
本発明の目的のために、用語「重量多孔率」は、多孔質膜の全容量に対する空隙の分率を意味することが意図される。
【0106】
本発明の多孔質膜における重量多孔率の決定のための適当な技術は、例えば、SMOLDERS,K.ら、「Terminology for membrane distillation」、Desalination、1989、vol.72、p.249-262に記載されている。
【0107】
本発明の多孔質膜は、自立性多孔質膜、または基材上に支持された多孔質膜のいずれであってもよい。
【0108】
基材上に支持された多孔質膜は、典型的には、前記基材に前記多孔質膜をコーティングすることによって、または前記基材に上で定義されたとおりの前記組成物(C)を含侵または浸漬させることによって得られ得る。
【0109】
本発明の多孔質膜は、少なくとも1つの基材層をさらに含んでもよい。基材層は、本発明の多孔質膜によって部分的にまたは完全に染み込まれてもよい。
【0110】
基材の性質は、特に限定されない。基材は、一般に多孔質膜の選択性に最小限の影響を与える材料からなる。基材層は、好ましくは非不織材料、ガラス繊維、および/またはポリマー材料、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリエチレンテレフタレートからなる。
【0111】
本発明の多孔質膜は、
- 少なくとも1つの基材層、好ましくは不織基材、
- 少なくとも1つの最上層、および
- 前記少なくとも1つの基材層と前記少なくとも1つの最上層との間に、上で定義されたとおりの組成物(C)からなる少なくとも1つの層
を含む多孔質複合膜であってもよい。
【0112】
そのような多孔質複合膜の典型的な例は、逆浸透またはナノ濾過用途に典型的に使用されるいわゆる薄フィルム複合(TFC)構造体である。
【0113】
本発明の多孔質複合膜における使用のために適する最上層の非限定的な例には、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリベンズイミダゾール、酢酸セルロースおよびポリオレフィンからなる群から選択されるポリマーから作られたものが含まれる。
【0114】
本発明によるフィルムの製造方法の工程(i)の下で、組成物(C)は、典型的には、任意の慣用技術によって製造される。
【0115】
本発明によるフィルムの製造方法の工程(ii)の下で、慣用技術は、組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供するために使用され得る。
【0116】
工程(ii)の下で提供されたフィルムは、多孔質膜を提供するためにさらに加工され得る。
膜の最終形態に応じて、フィルムは、平膜が必要とされる場合に、平らであるか、または管状膜または中空繊維膜が必要とされる場合に、形状が管状である、のいずれであってもよい。
【0117】
本発明の第1の実施形態によれば、本発明によるフィルムまたは多孔質膜の製造方法は、液相中で行われる。
【0118】
本発明のこの第1の実施形態による方法は典型的には、
(i^)
- 上で定義されたとおりの少なくとも1種のポリマー(A)、
- 上で定義されたとおりの少なくとも1種のF-TPUポリマー、および
- 少なくとも1つの有機溶媒を含む液体媒体[媒体(L)]
を含む液体組成物[組成物(C)]を提供する工程と、
(ii^)工程(i^)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と、任意選択で、
(iii^)工程(ii^)において提供されたフィルムを沈澱させ、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む。
【0119】
液体組成物(C)は有利には、
- 上で定義されたとおりの少なくとも1種のポリマー(A)、
- 上で定義されたとおりの少なくとも1種のF-TPUポリマー、および
- 少なくとも1種の有機溶媒を含む液体媒体[媒体(L)]
を含む均一溶液である。
【0120】
用語「溶媒」は、その通常の意味で本明細書で使用され、すなわち、それは、別の物質(溶質)を溶解させて分子レベルで一様に分散された混合物を形成することができる物質を示す。ポリマー溶質の場合、得られる混合物が透明であり、かつ相分離が系の中でみられない場合の溶媒中のポリマーの溶液を意味することが一般的実務である。相分離は、溶液がポリマー凝集体の形成のために濁るまたは曇るようになる、「曇点」としばしば称される、ポイントであると解釈される。
【0121】
媒体(L)は典型的には、
- より特には、パラフィン、例えば、特にペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンまたはシクロヘキサンを含む脂肪族炭化水素、ならびにナフタレンおよび芳香族炭化水素、より具体的には、芳香族炭化水素、例えば、特に、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、アルキルベンゼンの混合物から構成される石油留分;
- より特には、過塩素化炭化水素、例えば、特にテトラクロロエチレン、ヘキサクロロエタンを含む、脂肪族または芳香族ハロゲン化炭化水素、
- 部分塩素化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、トリクロロエチレン、1-クロロブタン、1,2-ジクロロブタン、モノクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、または異なるクロロベンゼンの混合物;
- 脂肪族、脂環式または芳香族エーテルオキシド、より特には、ジエチルオキシド、ジプロピルオキシド、ジイソプロピルオキシド、ジブチルオキシド、メチルテルチオブチルエーテル、ジペンチルオキシド、ジイソペンチルオキシド、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルベンジルオキシド;ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF);
- ジメチルスルホキシド(DMSO);
- グリコールエーテル、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル;
- グリコールエーテルエステル、例えば、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート;
- 多価アルコールを含むアルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール;
- ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン;
- 線状または環状エステル、例えば、イソプロピルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、ジメチルフタレート、γ-ブチロラクトン;
- 線状または環状カルボキサミド、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミドまたはN-メチル-2-ピロリドン(NMP);
- 有機カーボネート、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート;
- リン酸エステル、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル(TEP);
- 尿素、例えば、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素;
- メチル-5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソペンタノエート(商品名Rhodialsov Polarclean(登録商標))の下で商業的に入手可能)
からなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒を含む。
【0122】
以下は、特に好ましい:N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メチル-5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソペンタノエート(商品名 Rhodialsov Polarclean(登録商標))の下で商業的に入手可能)およびトリエチルホスフェート(TEP)。
【0123】
媒体(L)は、好ましくは、前記媒体(L)の全重量に基づいて、少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%の少なくとも1種の有機溶媒を含む。媒体(L)は、好ましくは、前記媒体(L)の全重量に基づいて、最大で100重量%、より好ましくは最大で99重量%の少なくとも1種の有機溶媒を含む。
【0124】
媒体(L)は、少なくとも1種の非溶媒媒体[媒体(NS)]をさらに含んでもよい。媒体(NS)は、水を含んでもよい。
【0125】
工程(i^)の下で、組成物(C)は、任意の慣用技術によって製造される。例えば、媒体(L)が、ポリマー(A)およびF-TPUポリマー、または好ましくは、ポリマー(A)に添加されてもよく、F-TPUポリマーが、媒体(L)に添加されるか、またはさらにはポリマー(A)、F-TPUポリマーおよび媒体(L)が同時に混合される。
【0126】
任意の好適な混合装置が使用されてもよい。好ましくは、混合装置は、最終的な膜に欠陥を生じさせ得る、組成物(C)中に閉じ込められた空気の量を減少させせるように選択される。ポリマー(A)、F-TPUポリマーおよび媒体(L)の混合は、不活性雰囲気下に任意選択で保持された、密封容器中で都合よく行われてもよい。不活性雰囲気、より正確には窒素雰囲気は、組成物(C)の製造に特に有利であると分かった。
【0127】
工程(i^)の下で、透明な均一組成物(C)を得るために必要とされる攪拌中の混合時間は、成分の溶解速度、温度、混合装置の効率、組成物(C)の粘度などに依存して広く変わり得る。
【0128】
工程(ii^)の下で、組成物(C)は、典型的には液相中で加工される。
【0129】
工程(ii^)の下で、組成物(C)は、典型的にはキャストし、それによってフィルムを提供することによって加工される。
【0130】
キャスティングは一般に、典型的にはキャスティングナイフ、ドローダウン棒またはスロットダイが、適当な媒体(L)を含む液体組成物の平らなフィルムを適当な支持体にわたって広げるために使用される、溶液キャスティングを含む。
【0131】
工程(ii^)の下で、組成物(C)がキャスティングによって加工される温度は、組成物(C)が撹拌下に混合される温度と同じであってもなくてもよい。
【0132】
異なるキャスティング技術が、製造される膜の最終形態に応じて使用される。
【0133】
最終生成物が平膜である場合、液体組成物(C)は、典型的にはキャスティングナイフ、ドローダウン棒またはスロットダイを用いて、平支持基材、典型的にはプレート、ベルトもしくは布、または別の微小孔性支持膜の上にフィルムとしてキャストされる。
【0134】
工程(ii^)の第1の実施形態によれば、組成物(C)は、平支持基材の上にキャストして、平フィルムを提供することによって加工される。
【0135】
工程(ii^)の第2の実施形態によれば、組成物(C)は、キャストして管状フィルムを提供することによって加工される。
【0136】
本発明のこの第2実施形態の変形によれば、管状フィルムは、紡糸口金を使用して製造される。
【0137】
用語「紡糸口金」は、少なくとも2つの同心毛細管、すなわち、組成物(C)の通過用の第1外側毛細管、および一般に「ルーメン」と称される、支持流体の通過用の第2内側毛細管を含む環状ノズルを意味すると本明細書によって理解される。任意選択で、外部の外側毛細管は、コーティング層を押し出すために使用され得る。
【0138】
中空繊維膜および毛細管膜は、工程(ii^)の第2実施形態のこの変形によるいわゆる紡糸プロセスによって製造されてもよい。本発明の第2実施形態のこの変形によれば、組成物(C)は、一般に紡糸口金を通してポンプ送液される。ルーメンは、組成物(C)のキャスティングのための支持体として作用し、中空繊維前駆体または毛細管前駆体の穴を開いた状態に維持する。ルーメンは、ガス、または、好ましくは、媒体(NS)もしくは媒体(NS)と媒体(L)との混合物であってもよい。ルーメンおよびその温度の選択は、それらが膜における細孔のサイズおよび分布に著しい影響を与え得るので、最終的な膜に必要とされる特性に依存する。
【0139】
本発明のこの第1の実施形態による多孔質膜の製造方法の工程(iii^)の下で、空気中または制御雰囲気中での短い滞留時間後の、紡糸口金の出口で、中空繊維前駆体または毛細管前駆体は、沈澱させられ、それによって中空繊維膜または毛細管膜を提供する。
【0140】
支持流体は、最終的な中空繊維膜または毛細管膜の穴を形成する。
【0141】
管状膜は、それらのより大きい直径のために、中空繊維膜の製造のために用いられる方法とは異なる方法を使用して一般に製造される。
【0142】
本出願人は、所与の温度での本発明の方法の工程(ii^)および工程(iii^)のいずれか1つでの溶媒/非溶媒混合物の使用が有利にも、その平均多孔孔率を含めて最終多孔質膜の形態学の制御を可能にすることを見出した。
【0143】
本発明の第1の実施態様による多孔質膜の製造方法の工程(ii^)および工程(iii^)のいずれか1つで提供されるフィルムと、媒体(NS)との間の温度勾配が、最終的な多孔質膜における細孔サイズおよび/または細孔分布に影響を与え得るが、その理由は、それが、一般に組成物(C)からのポリマー(A)の沈殿速度に影響を与えるからである。
【0144】
本発明の第1の実施形態の第1変形によれば、多孔質膜の製造方法は、
(i^
- 少なくとも1種のポリマー(A)、
- 少なくとも1種のF-TPUポリマー、および
- 少なくとも1種の有機溶媒を含む液体媒体[媒体(L)]
を含む液体組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^)工程(i^)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と;任意選択で、
(iii^)工程(ii^)で提供されたフィルムを非溶媒媒体[媒体(NS)]中で沈澱させ、それによって多孔質膜を得る工程と
を含む。
【0145】
工程(i^)の下で、媒体(L)は、典型的には水をさらに含む。
【0146】
工程(iii^)の下で、媒体(NS)は、典型的には水、および任意選択で、少なくとも1種の有機溶媒を含む。
【0147】
本発明の第1の実施形態の第2の変形によれば、多孔質膜の製造方法は、
(i^**
- 少なくとも1種のポリマー(A)、
- 少なくとも1種のF-TPUポリマー、および
- 少なくとも1種の有機溶媒を含む液体媒体[媒体(L)]
を含む液体組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^**)工程(i^**)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを得る工程と;任意選択で、
(iii^**)工程(ii^**)で得られたフィルムを冷却によって沈澱させ、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む。
【0148】
工程(i^**)の下で、組成物(C)の媒体(L)は、有利には少なくとも1種の潜在的(latent)有機溶媒を含む。
【0149】
本発明の目的のために、用語「潜在的な」は、ある特定の温度よりも上に加熱された場合にのみ、活性溶媒として挙動する有機溶媒を意味することが意図される。
【0150】
工程(ii^**)の下で、フィルムは、典型的には組成物(C)を均一溶液として維持するのに十分高い温度で加工される。
【0151】
工程(ii^**)の下で、フィルムは、典型的には60℃~250℃、好ましくは70℃~220°、より好ましくは80℃~200℃に含まれる温度で加工される。
【0152】
工程(iii^**)の下で、工程(ii^**)で提供されたフィルムは、典型的には任意の慣用技術を使用して、典型的には100℃未満、好ましくは60℃未満、より好ましくは40℃未満の温度に冷却することによって沈殿される。
【0153】
工程(iii^**)の下で、冷却は、典型的には工程(ii)で提供されたフィルムを液体媒体[媒体(L’)]と接触させることによって行われる。
【0154】
工程(iii^**)の下で、媒体(L’)は、好ましくは水を含み、より好ましくはそれからなる。
【0155】
あるいは、工程(iii^**)の下で、冷却は、工程(ii^**)で提供されたフィルムを空気と接触させることによって行われる。
【0156】
工程(iii^**)の下で、媒体(L’)または空気のいずれかは、典型的には100未満、好ましくは℃60℃未満、より好ましくは40℃未満の温度で維持される。
【0157】
本発明の第1の実施形態の第3の変形によれば、多孔質膜の製造方法は、
(i^***
- 少なくとも1種のポリマー(A)、
- 少なくとも1種のF-TPUポリマー、および
- 少なくとも1種の有機溶媒を含む液体媒体[媒体(L)]
を含む液体組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^***)工程(i^***)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と;任意選択で、
(iii^***)工程(ii^***)で提供されたフィルムを、水蒸気相からの非溶媒媒体[媒体(NS)]の吸収によって沈澱させ、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む。
【0158】
工程(iii^***)の下で、工程(ii^***)で提供されたフィルムは好ましくは、水蒸気相から水の吸収によって沈殿される。
【0159】
工程(iii^***)の下で、工程(ii^***)で提供されたフィルムは、典型的には10%より高い、好ましくは50%より高い相対湿度を有する、空気の下で沈殿される。
【0160】
本発明の第1の実施形態の第4の変形によれば、多孔質膜の製造方法は、
(i^****
- 少なくとも1種のポリマー(A)、
- 少なくとも1種のF-TPUポリマー、および
- 少なくとも1種の有機溶媒を含む液体媒体[媒体(L)]
を含む液体組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^****)工程(i^****)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と;任意選択で、
(iii^****)工程(ii^****)で提供されたフィルムを媒体(L)の蒸発によって沈澱させ、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む。
【0161】
好ましくは、媒体(L)が2種以上の有機溶媒を含む場合、工程(ii^****)は、組成物(C)を加工して、フィルムを得る工程を含み、これは、次いで、最低沸点を有する溶媒の沸点より上の温度での媒体(L)の蒸発によって工程(iii^****)で沈殿される。
【0162】
好ましい実施形態によれば、工程(ii^****)は、組成物(C)を高圧電場で加工することによって行われる。
【0163】
本発明の目的のために、用語「非溶媒媒体[媒体(NS)]」によって、所与の温度で組成物(C)を溶解させることができない1種以上の液体物質からなる媒体が意味される。
【0164】
媒体(NS)は典型的には、水、および任意選択で、アルコールもしくはポリアルコール、好ましくは短鎖、例えば1~6個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、より好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノールおよびエチレングリコールから選択される少なくとも1種の有機溶媒を含む。
【0165】
媒体(NS)は一般に、組成物(C)の調製のために使用される媒体(L)と混和性のものの中で選択される。
【0166】
媒体(NS)は、媒体(L)をさらに含んでもよい。
【0167】
より好ましくは、媒体(NS)は、水からなる。水は最も安価な非溶媒媒体であり、大量に使用され得る。
【0168】
媒体(L)は有利には、水に可溶性であり、それは、本発明の方法の追加の利点である。
【0169】
第1の実施形態によるフィルムまたは多孔質膜の製造方法は、上で定義されたとおりの第1、第2、第3および第4の変形の任意の組み合わせを含んでもよい。例えば、本発明によるフィルムまたは多孔質膜は、本発明の第1の実施形態の第2の変形による方法、続いて本発明の第1の実施形態の第1の変形による方法によって得られ得てもよい。
【0170】
第1の実施形態による方法によって得られ得る多孔質膜は、追加の後処理工程、例えば、すすぎ洗い工程および/または延伸工程を受けてもよい。
【0171】
本発明の第1の実施形態による方法によって得られ得る多孔質膜は典型的には、媒体(L)と混和性の液体媒体を使用してすすぎ洗いされる。
【0172】
本発明の第1の実施形態による方法によって得られ得る多孔質膜は有利には、その平均多孔率を増加させるために延伸されてもよい。
【0173】
本発明の第2の実施形態によれば、多孔質膜の製造方法は、溶融相で行われる。
【0174】
本発明の第2の実施形態による方法は、好ましくは以下の工程:
(i^^)
- 少なくとも1種のポリマー(A)、および
- 少なくとも1種のF-TPUポリマー
を含む固体組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^^-A)工程(i^^)で提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と、
任意選択で、(iii^^-A)工程(ii^^-A)で提供されたフィルムを延伸する工程と;
または
(ii^^-B)工程(i^^)で提供された組成物(C)を加工し、それによって繊維を提供する工程と、
任意選択で、(iii^^-B)工程(ii^^-B)で提供された繊維を加工し、それによって膜を提供する工程と
を含む。
【0175】
工程(ii^^-A)の下で、組成物(C)は、好ましくは溶融相で加工される。
【0176】
溶融成形は一般に、フィルム押出によって、好ましくはフラットキャストフィルム押出によってまたはインフレートフィルム押出によって高密度フィルム膜を作製するために使用される。
【0177】
この技術によれば、組成物(C)は、ダイを通して押し出されて、溶融テープを得、これは、次いで、必要とされる厚さおよび幅を得るまで、2方向に較正および延伸される。組成物(C)は、溶融組成物を得るために溶融配合される。一般に、溶融配合は押出機で行われる。組成物(C)は、一般に250℃未満、好ましくは200℃未満の温度で、ダイを通して典型的には押し出され、それによってストランドを提供し、これは典型的には切断され、それによってペレットを提供する。
【0178】
二軸スクリュー押出機が、組成物(C)の溶融配合を達成するための好ましい装置である。
【0179】
次いで、フィルムは、そのようにして得られたペレットを伝統的なフィルム押出技術によって加工することによって製造され得る。フィルム押出は好ましくは、フラットキャストフィルム押出法またはホットインフレートフィルム押出法によって達成される。フィルム押出はより好ましくは、ホットインフレートフィルム押出法によって達成される。
【0180】
工程(iii^^-A)の下で、工程(ii^^-A)で提供されたフィルムは、溶融相中で、または冷却時のその固化後のいずれかで延伸されてもよい。
【0181】
工程(iii^^-A)の下で、工程(ii^^-A)で提供されたフィルムは、有利には元の配向に直角で延伸され、その結果、ポリマー(A)の結晶構造が、典型的には変形され、スリット用空隙が有利には形成される。
【0182】
本発明の方法によって得られ得る多孔質膜は、好ましくは少なくとも30℃の温度で、典型的には乾燥される。
【0183】
乾燥は、空気下でまたは改善雰囲気下で、例えば、典型的には水分を除かれた(0.001%v/v未満の水蒸気含有量)、不活性ガス下で行うことができる。乾燥は、あるいは真空下で行うことができる。
【0184】
本発明の多孔質膜は、平膜の形態であっても、または管状膜の形態であってもよい。
高い表面積を有するコンパクトモジュールが必要とされる用途では、中空繊維膜が特に有利であるのに対して、高いフラックスが必要とされる場合には、平膜が一般に好ましい。
【0185】
平膜は、好ましくは10μm~200μm、より好ましくは15μm~150μmに含まれる厚さを有する。
【0186】
管状膜は典型的には、3mm超の外径を有する。0.5mm~3mmの間の外径を有する管状膜は典型的には、中空繊維膜と称される。0.5mm未満の直径を有する管状膜は典型的には、毛細管膜と称される。
【0187】
好ましい実施形態によれば、組成物(C)は可塑剤を含まず、すなわち、可塑剤は、組成物(C)に添加されないか、またはそれらは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の量で存在する。
【0188】
好ましくは、組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて10~100重量%の量で前記ポリマー(A)を含む。
【0189】
好ましくは、組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて0.1~80重量%の量で前記F-TPUポリマーを含む。
【0190】
好ましくは、組成物(C)は、少なくとも1種のさらなる原料を含み、より好ましくは、前記少なくとも1種のさらなる原料は、前記組成物(C)の全重量に基づいて0.1~30重量%の量である。
【0191】
前記任意選択の少なくとも1種のさらなる原料は、好ましくは、上で定義されたとおりの極性非プロトン溶媒[媒体(L)]、細孔形成剤、核形成剤、充填剤、塩、潜在的有機溶媒、界面活性剤を含む群の中で選択される。
【0192】
細孔形成剤は典型的には、通常0.1重量%~30重量%、好ましくは0.5重量%~5重量%の範囲の量で組成物(C)に添加される。適当な細孔形成剤は、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレングリコール(PEG)であり、PVPが好ましい。
【0193】
細孔形成剤は一般に、本発明の第1の実施形態による多孔質膜の製造方法の工程(iii)下で、もしあれば、媒体(NS)中の多孔質膜から、完全ではない場合には、少なくとも部分的に除去される。
【0194】
本発明による組成物(C)は、液体組成物[組成物(C)]の形態、または固体組成物[組成物(C)]の形態であり得る。
【0195】
組成物(C)は、好ましくは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%の量で少なくとも1種のF-TPUポリマーを含む。
【0196】
組成物(C)は、好ましくは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、最大で80重量%、より好ましくは最大で75重量%の量で少なくとも1種のF-TPUポリマーを含む。
【0197】
さらにより好ましくは、組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて、5~70重量%の量で少なくとも1種のF-TPUポリマーを含む。
【0198】
組成物(C)は、好ましくは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%の量で少なくとも1種のポリマー(A)を含む。
【0199】
組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて、最大で100重量%、より好ましくは最大で90重量%の量で少なくとも1種のポリマー(A)を含む。
【0200】
さらにより好ましくは、組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて、10~70重量%の量で少なくとも1種のポリマー(A)を含む。
【0201】
組成物(C)は、好ましくは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも7重量%の量で少なくとも1種の媒体(L)を含む。
【0202】
組成物(C)は、好ましくは、前記組成物(C)の全重量に基づいて、最大で95重量%、より好ましくは最大で90重量%の量で少なくとも1種の媒体(L)を含む。
【0203】
さらにより好ましくは、組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて、20~90重量%の量で少なくとも1種の媒体(L)を含む。
【0204】
さらに、加えて、F-TPUポリマーのための限定量の媒体(NS)が、曇点に達するために必要とされるレベルよりも一般に下の量で、典型的には、組成物(C)の全重量に基づいて、0.1重量%~40重量%の量で、好ましくは0.1重量%~20重量%の量で、組成物(C)に添加されてもよい。
【0205】
この理論により拘束されることなく、液体組成物(C)への媒体(NS)の添加は、本発明の第1の実施形態による多孔質膜の製造方法の工程(iii)下での脱混合/凝固の速度を高め、それによってより有利な膜形態学を提供することが一般に理解される。
【0206】
組成物(C)は、同じ量で、組成物(C)のために上に開示されたものから選択される少なくとも1種のさらなる原料を任意選択で含む。
【0207】
組成物(C)は、好ましくは、組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも65重量%の量で少なくとも1つのポリマー(A)を含む。
【0208】
組成物(C)は、好ましくは、組成物(C)の全重量に基づいて、最大で99重量%の、好ましくは最大で95重量%の量で少なくとも1つのポリマー(A)を含む。
【0209】
さらにより好ましくは、組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて、70~97重量%の量で少なくとも1種のポリマー(A)を含む。
【0210】
組成物(C)は、好ましくは、組成物(C)の全重量に基づいて、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%の量で少なくとも1種のF-TPUポリマーを含む。
【0211】
組成物(C)は、好ましくは、組成物(C)の全重量に基づいて、最大で50重量%の、好ましくは最大で35重量%の量で少なくとも1つのポリマー(A)を含む。
【0212】
さらにより好ましくは、組成物(C)は、前記組成物(C)の全重量に基づいて、3~30重量%の量で少なくとも1種のポリマー(A)を含む。
【0213】
本発明による高密度フィルムおよび多孔質膜は、特に液相および/もしくは気相の濾過のために、いくつかの技術分野で使用され得るか、またはそれは、いわゆる「通気性布(breathable fabric)」を提供するために、多層化布に埋め込まれるか、もしくは積層される。
【0214】
したがって、第6の態様では、本発明は、1種以上の固体混入物を含む液相および/または気相の濾過のための、本発明の多孔質膜の使用に関する。
【0215】
第7の態様では、本発明は、1種以上の固体混入物を含む液相および/または気相の濾過方法であって、1種以上の固体混入物を含む前記液相および/または気相を本発明の多孔質膜と接触させることを含む、方法に関する。
【0216】
1種以上の混入物を含む液相および気相は、「懸濁液」とも称され、すなわち、不均一混合物は、連続相(または液体または気体の形態である、「分散媒体」)中に分散された少なくとも1種の固体粒子(混入物)を含む。
【0217】
前記少なくとも1種の固体混入物は、好ましくは細菌、例えば、スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)およびシュードモナス エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、藻類、真菌、原虫およびウイルスから選択される、微生物を好ましくは含む。
【0218】
本発明による多孔質膜は、生物学的溶液(例えば、バイオバーデン、ウイルス、他の大きな分子)および/または緩衝溶液(例えば、DMSOのような少量の溶媒もしくは他の極性非プロトン性溶媒を含有し得る溶液)を濾過するために使用され得る。
【0219】
一実施形態では、本発明による2つ以上の多孔質膜が、液相および/または気相の濾過のために一連で使用され得る。有利には、第1の濾過工程は、1種以上の固体混入物を含む液相および/または気相を5μmより高い、より好ましくは5~50μmの平均細孔直径を有する本発明による多孔質膜と接触させることにより行われ;そして第2の濾過工程は、同じ液相および/または気相を0.001~5μmの平均細孔直径を有する本発明による多孔質膜と接触させることによって、前記第1の濾過工程の後に行われる。
【0220】
あるいは、本発明による少なくとも1種の多孔質膜は、本発明による組成物(C)と異なる組成物から得られる少なくとも1種の多孔質膜と一連で使用される。
【0221】
本発明の具体的実施形態によれば、および第8の態様では、管状または中空繊維の形態での、および0.001~5μmの平均細孔直径を有する本発明による多孔質膜は、生物学的流体、例えば、特に血液を精製するために体外血液回路または透析フィルタ内で使用される。
【0222】
いかなる理論によっても拘束されることなく、本出願人は、本発明による多孔質膜が、F-TPUポリマーにより膜の表面に与えられた撥水性および撥油性のために血液と接触される場合、抗血栓性であると考える。
【0223】
本発明内で使用される場合、用語「抗血栓性の」は、血栓症が全血への曝露時に起こる速度が、上で定義された少なくとも1種のF-TPUポリマーを含まない組成物から出発して調製された膜と比較する場合、本発明による多孔質膜で減少していることを示すことが意図される。血液が血液透析を受ける患者の身体へおよびそれから輸送される場合、抗凝固剤、例えば、ヘパリンが、典型的には凝固または血栓症を予防するために添加されることは、例えば、米国特許出願公開第2015/0008179号明細書(INTERFACE BIOLOGICS INC.)から、当技術分野で周知である。しかしながら、他方でヘパリンの使用が有利である場合、それは、アレルギー反応および出血により複雑であり得、加えて、ある特定の薬物を服用する患者において禁忌である。
【0224】
したがって、第9の態様では、本発明は、体外血液回路または透析フィルタで構成要素としての、0.001~5μmの平均細孔直径を有する中空繊維膜の使用に関する。
【0225】
第10の態様では、本発明は、腎機能障害を患っている対象の処置方法であって、透析フィルタを使用する患者での血液透析、血液濾過、血液濃縮または血液透析濾過から選択される手順を行うことを含み、前記フィルタは、0.001~5μmの平均細孔直径を有する、管状または中空繊維の形態での本発明による少なくとも1種の多孔質膜を含む、方法に関する。
【0226】
第11の態様では、本発明は、血液製品、例えば、全血、血漿、分画血液成分またはそれらの混合物の精製方法であって、0.001~5μmの平均細孔直径を有し、かつ上で定義されたとおりの組成物[組成物(C)]からなる少なくとも1つの層を含む少なくとも1つの中空繊維膜にわたって前記血液製品を透析することを含む、方法に関する。
【0227】
次いで、第12の態様では、本発明は、少なくとも2つの層を含む布であって、少なくとも1つの層は、0.001~5μmの平均細孔直径を有する本発明による多孔質膜を含み、および/または少なくとも1つの層は、本発明による少なくとも1種の高密度フィルムを含む、布に関する。
【0228】
通気性布は、典型的には風、雨および身体熱の損失からの保護を与える衣服での使用のために設計される。
【0229】
通気性布はまた、典型的には、液体水の浸透および吸収を防止するために、防水性(したがって、防水通気性布、WBFと称される)である。用語「通気性の」は、布が、身体からの発汗による水蒸気が布を通して拡散し、なおさらに外側からの液体水の浸透を防止することを受動的に可能にすることを示すことが意図される。
【0230】
いかなる理論によっても拘束されることなく、本出願人は、本発明による多孔質膜から作製される層が、通気性層、すなわち、身体の発汗から生じた水蒸気が布の外側に拡散する一方で、外側からの液体水(例えば、雨)の浸透を防止することを可能にする層を与えると考える。
【0231】
いかなる理論によっても拘束されることなく、本出願人は、本発明による高密度フィルムから作製される層は、身体の発汗から生じた水蒸気が布の外側に拡散するが、一方で外側からの液体水の浸透に対する疎水性層、および他方で布への機械的支持を与えることをなお可能にする支持層を提供すると考える。
【0232】
WBFは、典型的には1.5~2メートル幅および100~5000メートル長さの連続ロールとして製造される。WBFは、例えば、以下のとおりに製造され得る:
- 基材、例えば、織り基材またはポリマー基材などを提供する工程;
- 前記基材を上で定義されたとおりの組成物(C)と接触させる工程と;
- 任意選択で、トランスコーティングする工程と;
- 積層する工程。
【0233】
本発明による高密度フィルムはまた、有利には、特に医学における使用のための、管、例えば、カテーテルおよび移植可能デバイスなどの製造に使用される。
【0234】
したがって、さらなる態様では、本発明は、本発明による高密度フィルムから作製される少なくとも1つの層を含む、カテーテルに関する。
【0235】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0236】
本発明は、以下の実験の項に含まれる実施例によってより詳細に以下に例証され;実施例は、例証的であるに過ぎず、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0237】
材料:
【0238】
溶媒および添加剤は、Sigma Aldrichから入手した:ジメチルアセトアミド(DMAc)、トリエチルホスフェート(TEP)、ポリエチレングリコール(PEG)200およびイソプロピルアルコール(IPA)。
【0239】
ポリスルホン(PSU)UDEL(登録商標)3500 MB3およびポリエーテルスルホン(PES) VERADEL 3000 MPは、Solvay Specialty Polymersから入手した。
【0240】
- モノマー(a):
約2,000の分子量(Mw)および約56mgのKOH/gの-OH値を有するCAPA(商標)2201(Perstorp製)ポリカプロラクトン-ジオール(PLC);
- 式:
H(OCHCHOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHO(CHCHO)
(p=4.7および約2,000のMwを有する)
を有するモノマー(b)
- モノマー(c):
ジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)
- モノマー(d):
1,4-ブタンジオール(BDO)
- 触媒:
ネオデカン酸亜鉛
- 溶媒および添加剤は、Sigma Aldrichから入手した:
ジメチルアセトアミド(DMAc)およびトリエチルホスフェート(TEP)
ポリエチレングリコール(PEG)200、イソプロピルアルコール(IPA)
【0241】
方法
【0242】
F-TPUポリマー試験片の調製
F-TPUポリマー試験片1~3は、上述のモノマーから出発し、上で引用した米国特許第5,332,798号明細書(Ausimont S.p.A.)の実施例15に詳述されたのと同じ手順に従って調製した。モノマーは、以下の表1に報告されるモル比で使用した。
【0243】
【0244】
溶液の調製
【0245】
溶液は、それぞれのポリマーおよび添加剤を溶媒DMACまたはTEPに添加することによって調製した。混合後、メカニカルアンカーを用いて撹拌を60℃で4時間行った。
【0246】
多孔質膜の調製
【0247】
自動化キャスティングナイフによって滑らかなガラス支持体の上で、上に開示された手順に従って調製された溶液をフィルム化することによって、平シート多孔質膜を調製した。膜キャスティングは、ポリマーの時期尚早の沈澱を防止するために、ドープ溶液、キャスティングナイフおよび支持体の温度を25℃に保つことによって行った。ナイフ隙間は、250μmに設定した。キャスティング後に、ポリマーフィルムを、相反転を誘起するために直ちに凝固浴に浸漬した。凝固浴は、純脱イオン水、または混合物イソプロピルアルコール(IPA)/水 50/50v/vからなった。凝固後に、膜を次の数日間に純水中で数回洗浄して残存痕跡の溶媒を除去した。膜は常に、水中で(湿式)保管した。
【0248】
接触角(CA)の測定
【0249】
水およびヘキサデカン(C16)に対する接触角は、ASTMD5725-99に従ってDSA10機器(Kruss GmbH、独国製)を使用することによって25℃で評価した。測定は、膜の上側(空気との界面)で行った。
【0250】
機械的特性
【0251】
平シート多孔質膜に関する機械的特性は、ASTM D 638標準手順(タイプV、グリップ距離=25.4mm、初期長さLo=21.5mm)に従って、室温(23℃)で評価した。速度は、1~50mm/分であった。水中に保管されたヒラシート多孔質膜を容器ボックスから取り出し、直ちに試験した。
それぞれの膜の特性を以下の表2および表3に要約する。
【0252】
【0253】
上記結果は、本発明による多孔質膜が、非常に疎水性および非常に疎油性の両方であることを示す。他方で、芳香族ポリマーのみによって得られた多孔質膜は、本発明による多孔質膜よりも疎水性でなく、かつ疎油性でなく、すなわち、ヘキサデカンの滴は、膜中に浸透する(表2中の「濡れ」)。
【0254】
【0255】
上記結果は、本発明による多孔質膜が、芳香族ポリマーのみから得られた多孔質膜と比較する場合、より良好な機械的特性を有することを示す。