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特許7100018ヒストンデアセチラーゼ6阻害剤及びCD20阻害抗体の薬学的組み合わせならびにその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ヒストンデアセチラーゼ6阻害剤及びCD20阻害抗体の薬学的組み合わせならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220705BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K31/505
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019506615
(86)(22)【出願日】2017-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 US2017045751
(87)【国際公開番号】W WO2018031472
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】62/372,093
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512190767
【氏名又は名称】アセチロン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ACETYLON PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・エス・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】チェンイン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ノーマン・クエイル
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-518050(JP,A)
【文献】BOBROWICZ MALGORZATA; ET AL,HDAC INHIBITORS AS POTENTIAL NEW AGENTS IMPROVING THE EFFICACY OF MONOCLONAL ANTIBODIES,BLOOD,米国,AMERICAN SOCIETY OF HEMATOLOGY,2014年12月01日,VOL:124, NR:21,3 PAGES,https://ashpublications.org/blood/article/124/21/3641/97566/HDAC-Inhibitors-As-Potential-New-Agents-Improving
【文献】Haematologica,2014年,Vol.99, No.S1,p.437, P1143
【文献】MALGORZATA BOBROWICZ; ET AL,HDAC6 INHIBITION INCREASES CD20 LEVEL AND IMPROVES THE EFFICACY OF ANTI-CD20 MONOCLONAL ANTIBODIES,BLOOD,2013年01月01日,VOL:122, NR:4406,PAGE(S):1-5,http://www.bloodjournal.org/content/122/21/4406?sso-checked=true
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の:
a)化合物A
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩であるヒストンデアセチラーゼ6(HDAC6選択的阻害剤、及び、
b)CD20阻害抗体
を含む、必要とする対象において、がんまたはB細胞障害の処置に使用するための薬学的キット。
【請求項2】
前記CD20抗体が、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される、
請求項1に記載の薬学的キット。
【請求項3】
1つ以上の薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項1に記載の薬学的キット。
【請求項4】
がんの処置のための医薬調製物または薬剤の製造のための、請求項1に記載の薬学的キットの使用。
【請求項5】
必要とする対象において、がんを処置することにおいて、前記対象に、治療有効量の:
a)化合物A
【化2】
またはその薬学的に許容可能な塩であるHDAC6選択的阻害剤、及び
b)CD20阻害抗体
を投与することを含む前記処置の際の使用のための薬学的キットであって、
前記薬学的キットが、治療有効量の:
a)化合物A
【化3】
またはその薬学的に許容可能な塩であるHDAC6選択的阻害剤、及び、
b)CD20阻害抗体
を含む、薬学的キット
【請求項6】
前記CD20抗体が、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される、
請求項5に記載の薬学的キット。
【請求項7】
前記HDAC6選択的阻害剤及び前記CD20阻害抗体が、単一製剤として一緒に製剤化される、請求項5に記載の薬学的キット。
【請求項8】
前記HDAC6選択的阻害剤及び前記CD20阻害抗体が、別個の製剤としてそれぞれ製剤化される、請求項5に記載の薬学的キット。
【請求項9】
前記HDAC6選択的阻害剤及び前記CD20阻害抗体が、実質的に同時に投与される、請求項5に記載の薬学的キット。
【請求項10】
前記HDAC6選択的阻害剤及び前記CD20阻害抗体が、異なる時期に投与される、請求項5に記載の薬学的キット。
【請求項11】
必要とする対象においてB細胞障害を処置することにおいて、前記対象に、治療有効量の:
a)化合物A
【化4】
またはその薬学的に許容可能な塩であるHDAC6選択的阻害剤、及び、
b)CD20阻害抗体
を投与することを含む前記処置の際の使用のための薬学的キットであって、
前記薬学的キットが、治療有効量の:
a)化合物A
【化5】
またはその薬学的に許容可能な塩であるHDAC6選択的阻害剤、及び、
b)CD20阻害抗体
を含む、薬学的キット
【請求項12】
前記CD20抗体が、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される、
請求項11に記載の薬学的キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2016年8月8日に出願された米国仮特許出願第62/372,093号の利益を主張し、その内容は全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害は、がん細胞成長抑制を引き起こし得る。しかし、pan-HDAC阻害は、かなりの副作用をもたらし、代替のHDAC阻害プロファイルが望ましい。
【0003】
HDAC6は、クラスIIb HDACであり、α-チューブリン及びHSP90を含めた多くの細胞タンパク質からアセチル基を除去することが知られている。HSP90の高アセチル化は、ER及びEGFRを含めた標的タンパク質を不安定化することが報告されている。HDAC6の阻害剤は、種々のがんタイプにおいて抗がん増殖活性を実証している。HDAC6活性の遮断は、種々のメカニズムを通して、がん細胞成長阻害を引き起こすことが示されている。
【0004】
Bリンパ球抗原CD20(CD20)は、全てのB細胞の表面において発現されるグリコシル化リンタンパク質である。CD20は、抗原に対するB細胞免疫応答を可能にする。CD20は、CD20阻害抗体によって標的化される。CD20阻害抗体は、がん、自己免疫疾患、または移植拒絶反応を含めたB細胞障害を処置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国仮特許出願第62/372,093号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在のpan-選択的HDAC阻害剤の用量制限毒性に起因して、がんの処置のための改良された方法が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
代替の有効かつ毒性が少ないがん処置を提供するために、B細胞障害(例えば、がん)の処置のための方法、ならびにHDAC阻害剤及びCD20阻害抗体を含む薬学的組み合わせを提本明細書において供する。本明細書に開示されている薬学的組み合わせ及び方法は、耐容性が良好であり、また、従前の治療の用量制限毒性を示さない。
【0008】
一態様において、必要とする対象において、B細胞障害、例えば、がん、自己免疫疾患、または移植拒絶反応を処置するための方法を本明細書において提供する。特に、必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量のHDAC6選択的阻害剤及び治療有効量のCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。別の実施形態において、必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)化合物AであるHDAC6選択的阻害剤
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩;及び
b)CD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0009】
別の実施形態において、必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)化合物BであるHDAC6選択的阻害剤
【化2】
またはその薬学的に許容可能な塩;ならびに
b)FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択されるCD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0010】
別の実施形態において、必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)式Iの化合物であるHDAC6選択的阻害剤
【化3】
またはその薬学的に許容可能な塩:
式中
環Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
は、アリールまたはヘテロアリールであり、その各々が、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって各々が任意選択的に置換されていてよく;
Rは、HまたはC1-6-アルキルである;ならびに
b)CD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0011】
式Iの実施形態において、Rは、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって置換されているアリールである。
【0012】
本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、B細胞障害は、自己免疫疾患または移植拒絶反応である。
【0013】
本明細書に開示されている方法の他の実施形態において、自己免疫疾患は、抗-N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体脳炎、自己免疫性貧血、自己免疫性膵炎、水疱性皮膚障害、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、エヴァンズ症候群、グレーブス眼症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgG4関連疾患、赤芽球癆、多発性硬化症、視神経脊髄炎(デビック病)、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、1型糖尿病、及び血管炎から選択される。本明細書に開示されている方法の別の実施形態において、血管炎は、多発性血管炎(GPA)(ウェゲナー肉芽腫症)または顕微鏡的多発性血管炎(MPA)を伴う肉芽腫症である。
【0014】
本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、B細胞障害は、がんである。他の実施形態において、必要とする対象において、がんを処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)化合物AであるHDAC6選択的阻害剤
【化4】
またはその薬学的に許容可能な塩;及び
b)CD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0015】
他の実施形態において、必要とする対象において、がんを処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)化合物BであるHDAC6選択的阻害剤
【化5】
またはその薬学的に許容可能な塩;ならびに
b)FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択されるCD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0016】
別の実施形態において、必要とする対象において、がんを処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)式Iの化合物であるHDAC6選択的阻害剤
【化6】
またはその薬学的に許容可能な塩:
式中
環Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
は、アリールまたはヘテロアリールであり、その各々が、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって各々が任意選択的に置換されていてよく;
Rは、HまたはC1-6-アルキルである;ならびに
b)CD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0017】
式Iの実施形態において、Rは、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって置換されているアリールである。
【0018】
本明細書において提供されている方法の別の実施形態において、がんは、悪性血液疾患である。なお別の実施形態において、がんは、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である。さらに別の実施形態において、がんは、急性リンパ芽球性白血病、B細胞白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫のリンパ球優勢亜型、マントル細胞リンパ腫、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。さらなる実施形態において、がんは、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。別の実施形態において、がんは、多発性骨髄腫である。
【0019】
他の態様において、必要とする対象において抗体依存性細胞媒介細胞傷害を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)化合物AであるHDAC6選択的阻害剤
【化7】
またはその薬学的に許容可能な塩;及び
b)CD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0020】
別の態様において、必要とする対象において抗体依存性細胞媒介細胞傷害を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)化合物BであるHDAC6選択的阻害剤
【化8】
またはその薬学的に許容可能な塩;ならびに
b)FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択されるCD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0021】
別の実施形態において、必要とする対象において抗体依存性細胞媒介細胞傷害を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)式Iの化合物であるHDAC6選択的阻害剤
【化9】
またはその薬学的に許容可能な塩:
式中
環Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
は、アリールまたはヘテロアリールであり、その各々が、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって各々が任意選択的に置換されていてよく;
Rは、HまたはC1-6-アルキルである;ならびに
b)CD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0022】
式Iの実施形態において、Rは、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって置換されているアリールである。
【0023】
なお別の態様において、必要とする対象においてリンパ球機能活性を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)化合物AであるHDAC6選択的阻害剤
【化10】
またはその薬学的に許容可能な塩;及び
b)CD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0024】
さらに別の態様において、必要とする対象においてリンパ球機能活性を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)化合物BであるHDAC6選択的阻害剤
【化11】
またはその薬学的に許容可能な塩;ならびに
b)FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択されるCD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0025】
別の実施形態において、必要とする対象においてリンパ球機能活性を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の:
a)式Iの化合物であるHDAC6選択的阻害剤
【化12】
またはその薬学的に許容可能な塩:
式中
環Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
は、アリールまたはヘテロアリールであり、その各々が、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって各々が任意選択的に置換されていてよく;
Rは、HまたはC1-6-アルキルである;ならびに
b)CD20阻害抗体
を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0026】
式Iの実施形態において、Rは、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって置換されているアリールである。
【0027】
本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、リンパ球は、ナチュラルキラー細胞である。他の実施形態において、リンパ球は、Tリンパ球である。別の実施形態において、リンパ球は、Bリンパ球である。なお別の実施形態において、Bリンパ球は、濾胞性Bリンパ球である。さらに別の実施形態において、Bリンパ球は、びまん性大細胞型B細胞である。
【0028】
本明細書に開示されている方法の他の実施形態において、がん細胞におけるCD20の発現は、上方調節される。本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、慢性リンパ球性白血病細胞におけるCD20の発現は、上方調節される。本明細書に開示されている方法の別の実施形態において、非ホジキンリンパ腫細胞におけるCD20の発現は、上方調節される。本明細書に開示されている方法のさらに別の実施形態において、多発性骨髄腫細胞におけるCD20の発現は、上方調節される。
【0029】
なお別の態様において、細胞においてCD20の発現を上方調節する方法であって、当該細胞を、化合物AであるHDAC6選択的阻害剤
【化13】
またはその薬学的に許容可能な塩
と接触させることを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0030】
さらに別の態様において、細胞においてCD20の発現を上方調節する方法であって、当該細胞を、化合物BであるHDAC6選択的阻害剤
【化14】
またはその薬学的に許容可能な塩
と接触させることを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0031】
別の実施形態において、細胞においてCD20の発現を上方調節するための方法であって、当該細胞を、式Iの化合物であるHDAC6選択的阻害剤
【化15】
またはその薬学的に許容可能な塩:
式中
環Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
は、アリールまたはヘテロアリールであり、その各々が、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって各々が任意選択的に置換されていてよく;
Rは、HまたはC1-6-アルキルである;
と接触させることを含む上記方法を本明細書において提供する。実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0032】
式Iの実施形態において、Rは、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって置換されているアリールである。
【0033】
本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、細胞は、がん細胞である。別の実施形態において、細胞は、慢性リンパ球性白血病細胞である。さらに別の実施形態において、細胞は、非ホジキンリンパ腫細胞である。なお別の実施形態において、細胞は、多発性骨髄腫細胞である。
【0034】
本明細書に開示されている方法の他の実施形態において、末梢血単核細胞の生存率は維持される。別の実施形態において、末梢血単核細胞は、CD20+Bリンパ球、CD20+濾胞性Bリンパ球、またはCD20+びまん性大細胞型B細胞である。
【0035】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせのいくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0036】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせの他の実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0037】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせの一実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号1~3に記載されている3つの重鎖相補性決定領域(CDR)及び配列番号4~6に記載されている3つの軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号7に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号8に記載されている軽鎖可変領域を含む。なお別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号62に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号8に記載されている軽鎖可変領域を含む。さらに別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号9に記載されている重鎖、及び配列番号10に記載されている軽鎖を含む。
【0038】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせのなお別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号11~13に記載されている3つの重鎖CDR、及び配列番号14~16に記載されている3つの軽鎖CDRを含む。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号17に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号18に記載されている軽鎖可変領域を含む。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号19に記載されている重鎖、及び配列番号20に記載されている軽鎖を含む。
【0039】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせのさらに別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号21~23に記載されている3つの重鎖CDR、及び配列番号24~26に記載されている3つの軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号27に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号28に記載されている軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号29に記載されている重鎖、及び配列番号30に記載されている軽鎖を含む。
【0040】
本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体は、異なる時期に投与される。別の実施形態において、HDAC6選択的阻害剤は、経口投与され、CD20阻害抗体は、静脈内投与される。
【0041】
本明細書に開示されている方法の他の実施形態において、がんは、CD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。本明細書に開示されている方法の別の実施形態において、慢性リンパ球性白血病は、CD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。本明細書に開示されている方法のさらに別の実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、CD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。本明細書に開示されている方法のなお別の実施形態において、多発性骨髄腫は、CD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。本明細書に開示されている方法のさらなる実施形態において、がんは、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択されるCD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。
【0042】
別の態様において、治療有効量の:
a)化合物AであるHDAC6選択的阻害剤
【化16】
またはその薬学的に許容可能な塩;及び
b)CD20阻害抗体
を含む薬学的組み合わせを本明細書において提供する。
【0043】
さらに別の態様において、治療有効量の:
a)化合物BであるHDAC6選択的阻害剤
【化17】
またはその薬学的に許容可能な塩;ならびに
b)FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択されるCD20阻害抗体
を含む薬学的組み合わせを本明細書において提供する。
【0044】
別の実施形態において、治療有効量の:
a)式Iの化合物であるHDAC6選択的阻害剤
【化18】
またはその薬学的に許容可能な塩:
式中
環Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
は、アリールまたはヘテロアリールであり、その各々が、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって各々が任意選択的に置換されていてよく;
Rは、HまたはC1-6-アルキルである;ならびに
b)CD20阻害抗体
を含む薬学的組み合わせを本明細書において提供する。実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0045】
式Iの実施形態において、Rは、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって置換されているアリールである。
【0046】
本明細書に開示されている薬学的組み合わせのいくつかの実施形態において、当該組み合わせは、1つ以上の薬学的に許容可能な担体をさらに含む。
【0047】
また、がんの処置のための医薬調製物または薬剤の製造のための、本明細書に開示されている薬学的組み合わせの使用も、本明細書において提供する。
【0048】
他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明及び具体的な例は、説明目的でのみ付与される。なぜなら、この詳細な説明から、種々の変更及び変形が、本開示の趣旨及び範囲内で当業者に明らかになるからである。さらに、当該例は、本開示の原理を実証するものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1A】示されている薬物及び抗体による処置後の腫瘍成長速度論を示す。
図1B】1日目におけるビヒクル群の平均体積(100%)と比較した24日目の腫瘍体積変化の百分率を示す。
図2A】CD20-APCで染色された各濃度のRaji細胞の代表的なサンプルのヒストグラムプロットを示す。点線は、DMSO処置の中央値を示す。
図2B】細胞表面染色後の平均蛍光強度の定量化、及びRaji細胞におけるCD20のレベルを示すフローサイトメトリーを示す。
図2C】Raji細胞において生/死の生存能力染料について陰性であった全細胞の画分によって求められる生細胞の百分率を示す。
図2D】Raji細胞におけるRPLP1に対するCD20 mRNA発現を示す。
図3A】CD20-APCで染色された各濃度のJeko細胞の代表的なサンプルのヒストグラムプロットを示す。点線は、DMSO処置の中央値を示す。
図3B】細胞表面染色後の平均蛍光強度の定量化、及びJeko細胞におけるCD20のレベルを示すフローサイトメトリーを示す。
図3C】Jeko細胞において生/死の生存能力染料について陰性であった全細胞画分によって求められる生細胞の百分率を示す。
図3D】Jeko細胞におけるRPLP1に対するCD20 mRNA発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示は、B細胞障害の処置にヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤及びCD20阻害抗体を使用する方法を対象とする。必要とする患者においてB細胞障害を処置するための方法であって、HDAC阻害剤(例えば、式Iの化合物)及びCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。また、HDAC阻害剤(例えば、式Iの化合物)及びCD20阻害抗体を含む、併用製品及び薬学的組み合わせを本明細書において提供する。
【0051】
定義
この開示において使用される種々の用語の定義を以下に列挙する。これらの定義は、個々に、またはより大きな群の部分としてのいずれかで、特定の場合において別途限定されない限り、この明細書及び特許請求の範囲を通して使用されている用語に適用される。
【0052】
明細書及び特許請求の範囲において使用されているとき、「含む(comprising)」という用語は、実施形態「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」を含んでいてよい。「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「場合がある(may)」、「含有する(contain(s))」という用語及びその変形は、本明細書において使用されているとき、指定されている成分/ステップの存在を必要とし、かつ他の成分/ステップの存在を許容する非限定の常套的な句、用語、または語であることが意図される。しかし、かかる記載は、列挙されている化合物「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」として組成物またはプロセスを記載するとしても解釈されるべきであり、これは、任意の薬学的に許容可能な担体と併せて、指定されている化合物のみの存在を許容し、かつ、他の化合物を排除するものである。
【0053】
「約」という用語は、値の10%、5%、または1%を超えない可能な変動を概して示す。例えば、「約25mg/kg」は、広い意味において、22.5~27.5mg/kgの値、すなわち、25±2.5mg/kgを概して示す。
【0054】
「アルキル」という用語は、ある特定の実施形態において、それぞれ、1及び6の間、または1及び8の間の炭素原子を含有する、飽和の、直鎖または分岐鎖の炭化水素部位を指す。C-アルキル部位の例として、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシル部位が挙げられ;C-アルキル部位として、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、ヘプチル、及びオクチル部位が挙げられる。
【0055】
アルキル置換基における炭素原子数は、置換基においてxが最小炭素原子数でありかつyが最大炭素原子数である接頭辞「C」によって示され得る。同様に、C鎖は、x個の炭素原子を含有するアルキル鎖を意味する。
【0056】
「アリール」という用語は、限定されないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニル(idenyl)などを含めた、縮合または非縮合の1つ以上の芳香族環を有する単または多環式の炭素環式環系を指す。
【0057】
「ヘテロアリール」という用語は、1個の環原子がS、O、及びNから選択される5~10個の環原子を有する、少なくとも1つの芳香族環を有する単または多環式(例えば、2もしくは3環系以上)の縮合または非縮合部位または環系を指し;0、1または2個の環原子が、S、O、及びNから独立して選択されるさらなるヘテロ原子であり;残りの環原子が炭素である。ヘテロアリールとして、限定されないが、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノキサリニル、などが挙げられる。
【0058】
「ハロ」という用語は、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0059】
「HDAC」という用語は、コアヒストンにおけるリジン残基からアセチル基を除去し、これにより、凝縮され転写的にサイレンシングされたクロマチンの形成をもたらす酵素であるヒストンデアセチラーゼを指す。4つの群に分類される、現在18個の公知のヒストンデアセチラーゼが存在する。クラスI HDACは、HDAC1、HDAC2、HDAC3、及びHDAC8を含んでいて、酵母RPD3遺伝子に関係する。クラスII HDACは、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC9、及びHDAC10を含んでいて、酵母Hda1遺伝子に関係する。クラスIII HDACは、サーチュインとしても知られていて、Sir2遺伝子に関係し、SIRT1-7を含む。クラスIV HDACは、HDAC11のみを含有しており、クラスI及びIIの両方のHDACの特徴を有する。「HDAC」という用語は、別途特定されない限り、18個の公知のヒストンデアセチラーゼのうちいずれか1つ以上を指す。
【0060】
「HDAC6選択的」という用語は、化合物が、HDAC酵素、例えば、HDAC1またはHDAC2の任意の他のタイプよりも実質的に大きな程度、例えば、5X、10X、15X、20X以上でHDAC6に結合することを意味する。すなわち、化合物は、HDAC酵素の任意の他のタイプよりもHDAC6に選択的である。例えば、10nMのIC50でHDAC6に、かつ、50nMのIC50でHDAC1に結合する化合物は、HDAC6選択的である。他方で、50nMのIC50でHDAC6に、かつ、60nMのIC50でHDAC1に結合する化合物は、HDAC6選択的ではない。
【0061】
「阻害剤」という用語は、アンタゴニストという用語と同義である。
【0062】
「CD20阻害抗体」は、Bリンパ球抗原CD20(CD20)を標的とする。CD20阻害抗体は、CD20に結合する3つの重鎖相補性決定領域(CDR)及び3つの軽鎖CDRを含む。CD20阻害抗体は、それぞれのCDRを含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むことができる。CD20阻害抗体は、それぞれの可変領域を含む重鎖及び軽鎖を含むことができる。例えば、CD20阻害抗体として、限定されないが、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、リツキシマブ、TRU-015、及びベルツズマブが挙げられる。
【0063】
本明細書において使用されているとき、「処置」または「処置すること」という用語は、上記方法がB細胞障害を少なくとも軽減したことを示す。処置するための方法は、対象に、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体を含む薬学的組み合わせを適用または投与することを含む。処置するための方法は、B細胞障害(例えば、がん、自己免疫疾患、移植拒絶反応)を有する対象から(例えば、診断もしくはex vivo適用のために)単離した組織または細胞株に、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体を含む薬学的組み合わせを適用または投与することを含む。薬学的組み合わせの適用または投与の目的は、B細胞障害を処置する、治療する、治癒する、軽減する、緩和する、改変する、是正する、改善する、改良する、または該障害に影響を及ぼすことである。かかる処置は、薬理ゲノム学の分野から得られる知識に基づいて具体的に調整または修飾されてよい。本開示の方法は、異常な細胞増殖を少なくとも軽減することができる。例えば、当該方法は、患者におけるがん成長の速度を低減し、がんの継続された成長もしくは広がりを防止し、またはがんが全体に達することさえも低減することができる。
【0064】
本明細書において使用されているとき、「患者」、「個体」、または「対象」という用語は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物を指す。非ヒト哺乳動物として、例えば、家畜及び愛玩動物、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ及びネズミの哺乳動物が挙げられる。好ましくは、患者、対象または個体はヒトである。
【0065】
本明細書において使用されているとき、「自己免疫疾患」という用語は、身体の免疫系が誤って身体内の健康な細胞を攻撃及び破壊するときに起こる。自己免疫疾患として、例えば、抗-N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体脳炎、自己免疫性貧血、自己免疫性膵炎、水疱性皮膚障害、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、エヴァンズ症候群、グレーブス眼症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgG4関連疾患、赤芽球癆、多発性硬化症、視神経脊髄炎(デビック病)、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、1型糖尿病、及び血管炎が挙げられる。なお別の実施形態において、血管炎は、多発性血管炎(GPA)を伴う肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)または顕微鏡的多発性血管炎(MPA)を伴う肉芽腫症である。
【0066】
本明細書において使用されているとき、「薬学的に許容可能な」という用語は、化合物の生物活性または特性を無効にしない、比較的非毒性である材料、例えば、担体または希釈剤を指し、すなわち、当該材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、または当該材料が含有される組成物の成分のいずれとも有害に相互作用することなく、個体に投与され得る。
【0067】
本明細書において使用されているとき、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、親化合物が、存在する酸または塩基部位をその塩形態に変換することによって修飾されている、開示されている化合物の誘導体を指す。薬学的に許容可能な塩の例として、限定されないが、塩基性残基、例えばアミンの鉱物または有機酸塩;酸性残基、例えばカルボン酸のアルカリまたは有機塩;などが挙げられる。本開示の薬学的に許容可能な塩として、例えば非毒性の無機または有機酸から形成される、親化合物の従来の非毒性塩が挙げられる。本開示の薬学的に許容可能な塩は、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部位を含有する親化合物から合成され得る。概して、かかる塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、水中もしくは有機溶媒中、またはこれら2つの混合物中、化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製され得;概して、エーテルのような非水性媒体、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルが好ましい。好適な塩の列挙は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418及びJournal of Pharmaceutical Science,66,2(1977)に見られ、これらの各々は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
本明細書において使用されているとき、「組成物」または「医薬組成物」という用語は、本発明の範囲内で有用な少なくとも1つの化合物と、薬学的に許容可能な担体との混合物を指す。医薬組成物は、患者または対象への化合物の投与を容易にする。限定されないが、静脈内、経口、エアロゾル、非経口、点眼、肺内、及び局所投与を含めた、化合物を投与する複数の技術が当該分野において存在する。
【0069】
本明細書において使用されているとき、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、本発明の範囲内で有用な化合物を、当該化合物がその意図される機能を実施し得るように患者内にまたは患者に運ぶまたは輸送するのに関与する、薬学的に許容可能な材料、組成物または担体、例えば、液体もしくは固体充填剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒または封入材料を意味する。典型的には、かかる構築物は、身体の一器官または部から身体の別の器官または部へ運ばれまたは輸送される。各担体は、本発明の範囲内で有用な化合物を含めた、製剤の他の成分と相溶性であるという意味で「許容可能」でなければならず、また、患者に有害であってはならない。
【0070】
「組み合わせ」、「治療的組み合わせ」、「薬学的組み合わせ」、または「併用製品」という用語は、本明細書において使用されているとき、1つの投薬単位形態における一定の組み合わせ、もしくは別個の投薬単位における一定でない組み合わせのいずれか、または2つ以上の治療剤が、時間間隔内で、独立して、同時に、実質的に異なる時期に、もしくは別個に投与され得る組み合わせ投与のための部分のキットを指し、特に、ここで、当該時間間隔は、組み合わせパートナーが、共同的な、例えば、相乗的な効果を示すことを可能にする。
【0071】
「併用療法」という用語は、本開示において記載されている治療的状態または障害を処置するための2つ以上の治療剤の投与を指す。かかる投与は、実質的に同時の、例えば、一定の活性成分比を有する単一製剤での、または各活性成分について別個の製剤(例えば、カプセル及び/もしくは静脈内製剤)での、これらの治療剤の共投与を包含する。また、かかる投与はまた、ほぼ同時または異なる時期のいずれかにおいて、逐次的または別個に各治療剤を使用することも包含する。かかる投与はまた、異なる時期に投与され得る別個の製剤として製剤化されている各構成要素も包含する。例えば、CD20阻害抗体リツキシマブは、毎週、21日毎、28日毎、または2ヶ月毎に投薬され得るが、式IのHDAC阻害剤は、例えば、毎日投薬され得る。いずれの場合でも、薬物組み合わせの処置レジメンは、本明細書に記載されている状態または障害を処置する際に有益な効果を与えるであろう。
【0072】
「治療有効量以下の量」または「治療量以下の用量」という用語は、患者自身に投与されるときに、意図される標的の生物活性を経時的に完全には阻害しない、活性成分(例えば、HDAC6選択的阻害剤もしくはCD20阻害抗体)の量または用量である。
【0073】
「相乗効果」という用語は、効果を生じる、2つの剤、例えばHDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体などの作用、例えば、B細胞障害、例えばがん、自己免疫疾患、または移植拒絶反応などの症状(複数可)の進行の遅延を指し、これは、単独で投与される各薬物の効果の単純な相加を超えるものである。相乗効果は、例えば、好適な方法、例えば、Sigmoid-Emax方程式(Holford,N.H.G.and Scheiner,L.B.,Clin.Pharmacokinet.6:429-453(1981))、Loewe加算方程式(Loewe,S.and Muischnek,H.,Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114:313-326(1926))、ならびに半有効方程式(Chou、T.C.and Talalay,P.,Adv.Enzyme Regul.22:27-55(1984)及びChou,Pharmacol.Rev.58:621-681(2006)を使用して算出され得る。上記に参照されている各方程式は、薬物組み合わせの効果を評価するのに役立つ対応するグラフを生成すために実験データに適用され得る。上記に参照されている方程式に関連する対応するグラフは、それぞれ、濃度効果曲線、アイソボログラム曲線、および組み合わせ指数曲線である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている組み合わせは、がんの処置において相乗効果(すなわち、相加効果を超える)を示す。さらなる実施形態において、本明細書に記載されている組み合わせは、B細胞障害の処置において相乗効果(すなわち、相加効果を超える)を示す。
【0074】
本明細書において使用されているとき、B細胞障害(例えば、がん)患者を指すときに治療剤に「耐性である」または「不応性である」という用語は、B細胞障害(例えば、がん)が、当該治療剤の効果に対して、生来的な耐性、または当該治療剤との接触の結果として獲得された耐性を有することを意味する。代替的に記述すると、B細胞障害患者は、特定の治療剤に関連する通常の標準治療に耐性である。
【0075】
本明細書において使用されているとき、「処置ナイーブ」は、B細胞障害、例えば、がんについて調査しているかまたは承認されているかのいずれかである薬物、特に、CD20阻害抗体による処置を以前に受けていない患者を指す。
【0076】
代替的には、本開示の方法によって処置される患者は、「処置を経験」していてよい。本明細書において使用されているとき、「処置を経験」は、以前に少なくとも1つの一連のB細胞障害治療、特にCD20阻害抗体を受けたことがある患者を指す。いくつかの実施形態において、この以前の一連のものにおける最後の投薬は、本開示による方法を実施する少なくとも3ヶ月前に行われたものである。
【0077】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤
必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、HDAC阻害剤及びCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。また、HDAC阻害剤及びCD20阻害抗体を含む薬学的組み合わせを本明細書において提供する。
【0078】
本明細書に開示されている薬学的組み合わせ及び方法は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を含む。HDAC阻害剤は、いずれのHDAC阻害剤であってもよい。ゆえに、HDAC阻害剤は、特定のタイプのヒストンデアセチラーゼ酵素に選択的であっても非選択的であってもよい。好ましくは、HDAC阻害剤は、選択的HDAC阻害剤である。より好ましくは、HDAC阻害剤は、HDAC6選択的阻害剤である。
【0079】
いくつかの実施形態において、HDAC6選択的阻害剤は、式Iの化合物:
【化19】
またはその薬学的に許容可能な塩:
式中
環Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
は、アリールまたはヘテロアリールであり、その各々が、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって各々が任意選択的に置換されていてよく;
Rは、HまたはC1-6-アルキルである;
である。
【0080】
式Iの実施形態において、Rは、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって置換されているアリールである。
【0081】
式Iの代表的な化合物として、限定されないが:
【表1】
またはその薬学的に許容可能な塩が挙げられる。いくつかの実施形態において、HDAC6選択的阻害剤は、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩である。他の実施形態において、HDAC6選択的阻害剤は、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0082】
式Iによる選択的HDAC6阻害剤の調製及び特性は、国際特許出願第PCT/US2011/021982号及び同第PCT/US2014/059238号に提供されており、これらの全内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
CD20阻害抗体
本明細書に開示されている薬学的組み合わせ及び方法のいくつかの実施形態は、CD20阻害抗体を含む。CD20阻害抗体の例として、限定されないが、BLX-301、BVX20、DXL625、DXLr120、FBTA05、イブリツモマブチウキセタン(イットリウムで放射標識されている)、IGN002(抗CD20モノクローナル抗体-インターフェロンα融合)、mAB1.5.3、MEDI-552、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087(PF-05230895)、トシツモマブ(ヨウ素で放射標識されている)、TRU-015、ウブリツキシマブ(TG20)及びベルツズマブ(IMMU-106)が挙げられる。
【0084】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせのいくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、BLX-301、BVX20、DXL625、DXLr120、FBTA05、イブリツモマブチウキセタン(イットリウムで放射標識されている)、IGN002(抗CD20モノクローナル抗体-インターフェロンα融合)、mAB1.5.3、MEDI-552、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087(PF-05230895)、トシツモマブ、TRU-015、ウブリツキシマブ(TG20)及びベルツズマブ(IMMU-106)からなる群から選択される。さらに別の実施形態において、CD20阻害抗体は、リツキシマブのバイオシミラーである。ある特定の実施形態において、リツキシマブのバイオシミラーは、ABP798、BCD-020、BI695500、CMAB304、CT-P10、GNR-006、GP2013、Haixiリツキシマブバイオシミラー、HLX01、IBI301、MabionCD20、MK-8808、PBO-326、PF-05280586、レディタクス、RGB-03、RTXM83、SAIT101、SCT400、TL011、及びzituxからなる群から選択される。
【0085】
他の実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、CD20阻害抗体は、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、リツキシマブ、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0086】
いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05である。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、MT-3724である。なお別の実施形態において、CD20阻害抗体は、オビヌツズマブである。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、オカラツズマブである。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、オクレリズマブである。さらに別の実施形態において、CD20阻害抗体は、オファツムマブである。なお別の実施形態において、CD20阻害抗体は、PRO131921である。さらなる実施形態において、CD20阻害抗体は、リツキシマブである。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、SBI-087である。さらに別の実施形態において、CD20阻害抗体は、TRU-015である。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、ウブリツキシマブである。なお別の実施形態において、CD20阻害抗体は、ベルツズマブである。
【0087】
CD20阻害抗体は、CD20に結合する3つの重鎖相補性決定領域(CDR)及び3つの軽鎖CDRを含む。CD20阻害抗体は、それぞれのCDRを含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むことができる。CD20阻害抗体は、それぞれの可変領域を含む重鎖及び軽鎖を含むことができる。
【0088】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせの一実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号1~3に記載されている3つの重鎖CDR及び配列番号4~6に記載されている3つの軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号7に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号8に記載されている軽鎖可変領域を含む。なお別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号62に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号8に記載されている軽鎖可変領域を含む。さらに別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号9に記載されている重鎖、及び配列番号10に記載されている軽鎖を含む。
【0089】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせのなお別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号11~13に記載されている3つの重鎖CDR、及び配列番号14~16に記載されている3つの軽鎖CDRを含む。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号17に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号18に記載されている軽鎖可変領域を含む。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号19に記載されている重鎖、及び配列番号20に記載されている軽鎖を含む。
【0090】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせのさらに別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号21~23に記載されている3つの重鎖CDR、及び配列番号24~26に記載されている3つの軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号27に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号28に記載されている軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号29に記載されている重鎖、及び配列番号30に記載されている軽鎖を含む。
【0091】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせの他の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号31~33に記載されている3つの重鎖CDR及び配列番号34~36に記載されている3つの軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号37に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号38に記載されている軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号39に記載されている重鎖、及び配列番号40に記載されている軽鎖を含む。
【0092】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせの別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号41~43に記載されている3つの重鎖CDR及び配列番号44~46に記載されている3つの軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号47に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号48に記載されている軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号49に記載されている重鎖、及び配列番号50に記載されている軽鎖を含む。
【0093】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせのさらに別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号1~3に記載されている3つの重鎖CDRならびに配列番号6、51及び52に記載されている3つの軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号53に記載されているポリペプチドを含む。
【0094】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせのさらに別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号54~56に記載されている3つの重鎖CDRならびに配列番号4、5及び57に記載されている3つの軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号58に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号59に記載されている軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号60に記載されている重鎖、及び配列番号61に記載されている軽鎖を含む。
【0095】
本明細書に開示されている方法及び薬学的組み合わせの一実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号1、2、及び63に記載されている3つの重鎖CDRならびに配列番号5、51及び64に記載されている3つの軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号65に記載されている重鎖可変領域、及び配列番号66に記載されている軽鎖可変領域を含む。さらに別の実施形態において、CD20阻害抗体は、配列番号67に記載されている重鎖、及び配列番号68に記載されている軽鎖を含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている化合物は、溶媒和されていない。他の実施形態において、化合物の1つ以上が溶媒和形態である。当該分野において知られているように、溶媒和物は、薬学的に許容可能な溶媒、例えば、水、エタノールなどのいずれであってもよい。
【0097】
式Iの化合物は、中和形態で表示されているが、いくつかの実施形態において、これらの化合物は、薬学的に許容可能な塩形態で使用される。
【0098】
薬学的組み合わせ及び組成物
態様において、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤及びCD20阻害抗体を含む薬学的組み合わせを本明細書において提供する。一実施形態において、HDAC阻害剤は、HDAC6選択的阻害剤である。
【0099】
薬学的組み合わせのいくつかの実施形態において、HDAC阻害剤は、HDAC6選択的阻害剤である。特定の実施形態において、HDAC6選択的阻害剤は、式Iの化合物:
【化20】
またはその薬学的に許容可能な塩:
式中
環Bは、アリールまたはヘテロアリールであり;
は、アリールまたはヘテロアリールであり、その各々が、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって各々が任意選択的に置換されていてよく;
Rは、HまたはC1-6-アルキルである;
である。
【0100】
式Iの実施形態において、Rは、OH、ハロ、またはC1-6-アルキルによって置換されているアリールである。
【0101】
好ましい実施形態において、式Iの化合物は、化合物A
【化21】
またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0102】
なお他の実施形態において、式Iの化合物は、化合物B
【化22】
またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0103】
なお別の実施形態において、薬学的組み合わせは、HDAC阻害剤化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体を含む。他の実施形態において、薬学的組み合わせは、HDAC阻害剤化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体を含み、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。別の実施形態において、薬学的組み合わせは、HDAC阻害剤化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体リツキシマブを含む。
【0104】
なお別の実施形態において、薬学的組み合わせは、HDAC阻害剤化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体を含む。さらに別の実施形態において、薬学的組み合わせは、HDAC阻害剤化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体を含み、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。別の実施形態において、薬学的組み合わせは、HDAC阻害剤化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体リツキシマブを含む。
【0105】
また、B細胞障害の処置のための医薬調製物または薬剤の製造のための、上記薬学的組み合わせ及び組成物の使用も本明細書において提供する。実施形態において、薬学的組み合わせは、対象におけるB細胞障害の処置での使用のためのものである。いくつかの実施形態において、B細胞障害は、がん、自己免疫疾患、及び移植拒絶反応からなる群から選択される。別の実施形態において、薬学的組み合わせは、がんの処置での使用のためのものである。ある特定の実施形態において、がんは、CD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。別の実施形態において、薬学的組み合わせは、自己免疫疾患の処置での使用のためのものである。
【0106】
別の実施形態において、薬学的組み合わせは、対象における、がんの処置での使用のためのものであり、対象は、CD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。
【0107】
一実施形態において、薬学的組み合わせは、対象におけるB細胞障害の処置での使用のためのものであり、対象は、処置ナイーブである。
【0108】
薬学的組み合わせの実施形態において、化合物Aは、600mg~3000mg(例えば、約600、約800、約1000、約1200、約1400、約1600、約1800、約2000mg)の量である。薬学的組み合わせのさらなる実施形態において、化合物Aは、600mg~2000mgの量である。
【0109】
薬学的組み合わせの別の実施形態において、化合物Aは、5mg~600mg(例えば、約5、約25、約50、約100、約200、約300、約400、約500、約600mg)の量である。薬学的組み合わせのなお別の実施形態において、化合物Aは、10mg~200mgである。
【0110】
薬学的組み合わせの実施形態において、化合物Bは、600mg~3000mg(例えば、約600、約800、約1000、約1200、約1400、約1600、約1800、約2000mg)の量である。薬学的組み合わせのさらなる実施形態において、化合物Bは、600mg~2000mgの量である。
【0111】
薬学的組み合わせの別の実施形態において、化合物Bは、5mg~600mg(例えば、約5、約25、約50、約100、約200、約300、約400、約500、約600mg)の量である。薬学的組み合わせのなお別の実施形態において、化合物Bは、10mg~200mgである。
【0112】
薬学的組み合わせの実施形態において、CD20抗体は、600mg~3000mg(例えば、約600、約800、約1000、約1200、約1400、約1600、約1800、約2000mg)の量である。薬学的組み合わせのさらなる実施形態において、CD20抗体は、600mg~2000mgの量である。
【0113】
薬学的組み合わせの別の実施形態において、CD20抗体は、5mg~600mg(例えば、約5、約25、約50、約100、約200、約300、約400、約500、約600mg)の量である。薬学的組み合わせのなお別の実施形態において、CD20抗体は、10mg~200mgである。
【0114】
薬学的組み合わせの実施形態において、リツキシマブは、600mg~3000mg(例えば、約600、約800、約1000、約1200、約1400、約1600、約1800、約2000mg)の量である。薬学的組み合わせのさらなる実施形態において、リツキシマブは、600mg~2000mgの量である。
【0115】
薬学的組み合わせの別の実施形態において、リツキシマブは、5mg~600mg(例えば、約5、約25、約50、約100、約200、約300、約400、約500、約600mg)の量である。薬学的組み合わせのなお別の実施形態において、リツキシマブは、10mg~200mgである。
【0116】
上記薬学的組み合わせ及び組成物のある特定の実施形態において、HDAC阻害剤が、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩であるとき、CD20阻害抗体は、リツキシマブではない。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。他の実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0117】
薬学的組み合わせの実施形態において、HDAC6選択的阻害剤対CD20抗体の比は、700:1~1:40の範囲内である。別の実施形態において、HDAC6選択的阻害剤対CD20抗体の比は、2:1~1:2、例えば、2:1、1:1、もしくは1:2;170:1~150:1、例えば、170:1、160:1もしくは150:1;3:1~1:1、例えば、3:1、2:1もしくは1:1;または30:1~10:1、例えば、30:1、20:1もしくは10:1の範囲内である。
【0118】
薬学的組み合わせの別の実施形態において、式I対CD20抗体の比は、700:1~1:40の範囲内である。別の実施形態において、HDAC6選択的阻害剤対CD20抗体の比は、2:1~1:2、例えば、2:1、1:1、もしくは1:2;170:1~150:1、例えば、170:1、160:1もしくは150:1;3:1~1:1、例えば、3:1、2:1もしくは1:1;または30:1~10:1、例えば、30:1、20:1もしくは10:1の範囲内である。
【0119】
薬学的組み合わせの別の実施形態において、化合物A対CD20抗体の比は、700:1~1:40の範囲内である。別の実施形態において、化合物A対CD20抗体の比は、2:1~1:2、例えば、2:1、1:1、もしくは1:2;170:1~150:1、例えば、170:1、160:1もしくは150:1;3:1~1:1、例えば、3:1、2:1もしくは1:1;または30:1~10:1、例えば、30:1、20:1もしくは10:1の範囲内である。
【0120】
薬学的組み合わせの別の実施形態において、化合物B対CD20抗体の比は、700:1~1:40の範囲内である。別の実施形態において、化合物B対CD20抗体の比は、2:1~1:2、例えば、2:1、1:1、もしくは1:2;170:1~150:1、例えば、170:1、160:1もしくは150:1;3:1~1:1、例えば、3:1、2:1もしくは1:1;または30:1~10:1、例えば、30:1、20:1もしくは10:1の範囲内である。
【0121】
薬学的組み合わせの別の実施形態において、化合物A対リツキシマブの比は、700:1~1:40の範囲内である。別の実施形態において、化合物A対リツキシマブの比は、2:1~1:2、例えば、2:1、1:1、もしくは1:2;170:1~150:1、例えば、170:1、160:1もしくは150:1;3:1~1:1、例えば、3:1、2:1もしくは1:1;または30:1~10:1、例えば、30:1、20:1もしくは10:1の範囲内である。
【0122】
上記薬学的組み合わせ及び組成物の他の実施形態において、薬学的組み合わせまたは組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体をさらに含む。
【0123】
使用方法
B細胞障害を処置するための方法
一態様において、本開示は、必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、当該対象に、本開示の薬学的組み合わせを投与することを含む上記方法に関する。ゆえに、必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、該対象に、治療有効量の、HDAC阻害剤及びCD20阻害抗体を含む薬学的組み合わせを投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。一実施形態において、HDAC阻害剤は、HDAC6選択的阻害剤である。
【0124】
一実施形態において、必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の式IのHDAC阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩、及び治療有効量のCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。いくつかの実施形態において、必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、及び治療有効量のCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0125】
別の実施形態において、必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、及び治療有効量のリツキシマブを投与することを含む上記方法である。この実施形態は、治療量以下の量の化合物A及びリツキシマブが上記方法において使用され得るような相乗作用を示す。
【0126】
なお別の実施形態において、必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、ならびに、治療有効量の、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択されるCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法である。
【0127】
他の実施形態において、必要とする対象においてB細胞障害を処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、及び治療有効量のCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、当該対象に、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、ならびに、治療有効量の、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択されるCD20阻害抗体を投与することを含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、B細胞障害は、がん、自己免疫疾患、及び移植拒絶反応からなる群から選択される。他の実施形態において、B細胞障害は、自己免疫疾患または移植拒絶反応である。
【0129】
他の実施形態において、B細胞障害は、自己免疫疾患である。別の実施形態において、自己免疫疾患は、抗-N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体脳炎、自己免疫性貧血、自己免疫性膵炎、水疱性皮膚障害、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、エヴァンズ症候群、グレーブス眼症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgG4関連疾患、赤芽球癆、多発性硬化症、視神経脊髄炎(デビック病)、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、1型糖尿病、及び血管炎から選択される。なお別の実施形態において、血管炎は、多発性血管炎(GPA)を伴う肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)または顕微鏡的多発性血管炎(MPA)を伴う肉芽腫症である。
【0130】
上記方法の他の実施形態において、末梢血単核細胞の生存率は維持される。いくつかの実施形態において、末梢血単核細胞は、CD20+Bリンパ球、CD20+濾胞性Bリンパ球、またはCD20+びまん性大細胞型B細胞である。
【0131】
別の態様において、本開示は、必要とする対象において抗体依存性細胞媒介細胞傷害を上方調節するための方法に関する。特に、本開示は、必要とする対象において抗体依存性細胞媒介細胞傷害を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の式IのHDAC阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法に関する。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。他の実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0132】
いくつかの実施形態において、必要とする対象において抗体依存性細胞媒介細胞傷害を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法である。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。別の実施形態において、必要とする対象において抗体依存性細胞媒介細胞傷害を上方調節する方法は、当該対象に、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、及びリツキシマブを投与することを含む。
【0133】
別の実施形態において、本開示は、必要とする対象において抗体依存性細胞媒介細胞傷害を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法に関する。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。別の実施形態において、必要とする対象において抗体依存性細胞媒介細胞傷害を上方調節する方法は、当該対象に、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、及びリツキシマブを投与することを含む。
【0134】
さらに別の態様において、本開示は、必要とする対象においてリンパ球機能活性を上方調節するための方法に関する。具体的には、本開示は、必要とする対象においてリンパ球機能活性を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の式IのHDAC阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法に関する。
【0135】
なお別の実施形態において、必要とする対象においてリンパ球機能活性を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法である。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。別の実施形態において、必要とする対象においてリンパ球機能活性を上方調節するための方法は、当該対象に、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、及びリツキシマブを投与することを含む。
【0136】
さらに別の実施形態において、必要とする対象においてリンパ球機能活性を上方調節するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法である。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。別の実施形態において、必要とする対象においてリンパ球機能活性を上方調節するための方法は、当該対象に、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、及びリツキシマブを投与することを含む。
【0137】
さらなる実施形態において、リンパ球は、ナチュラルキラー細胞である。他の実施形態において、リンパ球は、Tリンパ球である。別の実施形態において、リンパ球は、Bリンパ球である。さらに別の実施形態において、Bリンパ球は、濾胞性Bリンパ球である。他の実施形態において、Bリンパ球は、びまん性大細胞型B細胞である。
【0138】
さらに別の態様において、本開示は、細胞においてCD20の発現を上方調節する方法に関する。特に、本開示は、細胞においてCD20の発現を上方調節する方法であって、当該細胞をHDAC阻害剤と接触させることを含む上記方法に関する。一実施形態において、細胞においてCD20の発現を上方調節する方法であって、当該細胞を、式IのHDAC阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩と接触させることを含む上記方法である。別の実施形態において、細胞においてCD20の発現を上方調節する方法であって、当該細胞を、化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩と接触させることを含む上記方法である。別の実施形態において、細胞においてCD20の発現を上方調節する方法であって、当該細胞を、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩と接触させることを含む上記方法である。
【0139】
上記方法のある特定の実施形態において、HDAC阻害剤が、化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩であるとき、CD20阻害抗体は、リツキシマブではない。いくつかの実施形態において、CD20阻害抗体は、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択される。
【0140】
がんを処置するための方法
別の態様において、本開示は、必要とする対象において、がんを処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の、HDAC阻害剤及びCD20阻害抗体を含む薬学的組み合わせを投与することを含む上記方法を提供する。一実施形態において、HDAC阻害剤は、HDAC6選択的阻害剤である。
【0141】
一実施形態において、必要とする対象において、がんを処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の式IのHDAC阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩、及び治療有効量のCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。いくつかの実施形態において、必要とする対象において、がんを処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、及び治療有効量のCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。
【0142】
別の実施形態において、必要とする対象において、がんを処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、及び治療有効量のリツキシマブを投与することを含む上記方法である。この実施形態は、治療量以下の量の化合物Aが上記方法において使用され得るような相乗作用を示す。
【0143】
なお別の実施形態において、必要とする対象において、がんを処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容可能な塩、ならびに、治療有効量の、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択されるCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法である。
【0144】
他の実施形態において、必要とする対象において、がんを処置するための方法であって、当該対象に、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、及び治療有効量のCD20阻害抗体を投与することを含む上記方法を本明細書において提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、当該対象に、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容可能な塩、ならびに、治療有効量の、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択されるCD20阻害抗体を投与することを含む。
【0145】
いくつかの実施形態において、がんは、B細胞障害である。別の実施形態において、がんは、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である。さらなる実施形態において、がんは、多発性骨髄腫である。別の実施形態において、がんは、悪性血液疾患である。なお別の実施形態において、がんは、急性リンパ芽球性白血病、B細胞白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫のリンパ球優勢亜型、マントル細胞リンパ腫、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。さらに別の実施形態において、がんは、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。別の実施形態において、がんは、多発性骨髄腫である。
【0146】
本明細書に開示されている方法のいくつかの実施形態において、細胞は、がん細胞である。別の実施形態において、細胞は、慢性リンパ球性白血病細胞である。さらに別の実施形態において、細胞は、非ホジキンリンパ腫細胞である。なお別の実施形態において、細胞は、多発性骨髄腫細胞である。
【0147】
上記方法のある特定の実施形態において、がん細胞におけるCD20の発現は、上方調節される。いくつかの実施形態において、慢性リンパ球性白血病細胞におけるCD20の発現は、上方調節される。別の実施形態において、非ホジキンリンパ腫細胞におけるCD20の発現は、上方調節される。さらに別の実施形態において、多発性骨髄腫細胞におけるCD20の発現は、上方調節される。
【0148】
上記方法のいくつかの実施形態において、がんまたはがん細胞は、CD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。別の実施形態において、慢性リンパ球性白血病は、CD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。さらに別の実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、CD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。なお別の実施形態において、多発性骨髄腫は、CD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。本明細書に開示されている方法のさらなる実施形態において、がんは、FBTA05、MT-3724、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、PRO131921、リツキシマブ、SBI-087、TRU-015、ウブリツキシマブ、及びベルツズマブからなる群から選択されるCD20阻害抗体による処置に耐性または不応性である。本明細書に開示されている方法の他の実施形態において、がんは、リツキシマブによる処置に耐性または不応性である。
【0149】
本明細書において考慮されている対象は、典型的にはヒトである。しかし、対象は、処置が望まれるいずれの哺乳動物であってもよい。そのため、本明細書に記載されている方法は、ヒト及び獣医用途の両方に適用され得る。
【0150】
投与/用量
いくつかの実施形態において、HDAC6選択的阻害剤(式Iの化合物)は、CD20阻害抗体と同時に投与される。同時投与は、典型的には、両方の化合物が、患者に、正確に同時に投入されることを意味する。しかし、同時投与はまた、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体が、異なる時期に患者に投入される可能性も含むが、時間差は、最初に投与される化合物が、二番目に投与される化合物の投入の前に患者に影響する時間では与えられないほどに十分に小さい。かかる遅延時間は、典型的には1分未満、より典型的には30秒未満に相当する。化合物が溶液中にある一例において、同時投与は、化合物の薬学的組み合わせを含有する溶液を投与することによって達成され得る。別の例において、一方がHDAC6選択的阻害剤を含有し他方がCD20阻害抗体を含有する別個の溶液の同時投与が用いられ得る。化合物が固体形態である一例において、同時投与は、化合物の薬学的組み合わせを含有する組成物を投与することによって達成され得る。代替的には、同時投与は、一方がHDAC6選択的阻害剤を含み他方がCD20阻害抗体を含む2つの別個の組成物を投与することによって達成され得る。
【0151】
いくつかの実施形態において、化合物の薬学的組み合わせは、B細胞障害、例えば、がん、自己免疫疾患、または移植拒絶反応の処置において相乗効果(すなわち、相加効果を超える)を示す。「相乗効果」という用語は、効果を生じる、2つの剤、例えばHDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体などの作用、例えば、がんの症状(複数可)の進行の遅延を指し、これは、これら自体が投与される各薬物の効果の単純な相加を超えるものである。相乗効果は、例えば、好適な方法、例えば、Sigmoid-Emax方程式(Holford,N.H.G.and Scheiner,L.B.,Clin.Pharmacokinet.6:429-453(1981))、Loewe加算方程式(Loewe,S.and Muischnek,H.,Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114:313-326(1926))、及び半有効方程式(Chou,T.C.and Talalay,P.,Adv.Enzyme Regul.22:27-55(1984))を使用して算出され得る。上記に参照されている各方程式は、薬物組み合わせの効果を評価するのに役立つ対応するグラフを生成すために実験データに適用され得る。上記に参照されている方程式に関連する対応するグラフは、それぞれ、濃度効果曲線、アイソボログラム曲線、および組み合わせ指数曲線である。
【0152】
HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体は、時間間隔内で、独立して、同時にまたは別個に投与され得、ここで、当該時間間隔は、組み合わせパートナーが、共同的な、例えば、相乗的な効果を示すことを可能にする。
【0153】
一実施形態において、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体が同時に投与されないとき、当該2つの剤は、相乗効果を示す。いくつかの実施形態において、HDAC6選択的阻害剤は、CD20阻害抗体の前に投与される。他の実施形態において、CD20阻害抗体は、HDAC6選択的阻害剤の前に投与される。非同時投与における時間差は、1分、5分、10分、15分、30分、45分、60分、2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、24時間、36時間、48時間、3日、4日、5日、6日、7日、2週、3週、4週、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、及び7ヶ月を超えていてよい。他の実施形態において、最初に投与される化合物は、二番目に投与される化合物が投与される前に患者に影響する時間に付与される。概して、時間差は、最初に投与される化合物が患者においてその効果を完成させるための時間、または最初に投与される化合物が患者において完全もしくは実質的に排除もしくは不活化される時間を超えては延長しない。別の実施形態において、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体は、異なる時期に投与される。
【0154】
いくつかの実施形態において、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体は、単一製剤として一緒に製剤化される。
【0155】
他の実施形態において、HDAC阻害剤及びCD20阻害抗体は、それぞれ、別個の製剤として製剤化される。
【0156】
いくつかの実施形態において、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体の一方または両方が、治療有効量または投薬量で投与される。「治療有効量」は、患者自身に投与されたときに、がんを有効に処置するHDAC6選択的阻害剤(式IもしくはIIの化合物)またはCD20阻害抗体の量である。特定の対象について、所与の場合において「治療有効量」であることが判明している量は、かかる投薬量が熟練者によって「治療有効量」であるとされていても、検討中の疾患または状態について同様に処置される対象の100%に有効でない場合がある。治療有効量に相当する化合物量は、がんの種類、がんのステージ、処置されている患者の年齢、及び他の事実に強く依存する。概して、これらの化合物の治療有効量は、当該分野においてよく知られており、例えば、上記に列挙されている支持参照文献において付与されている。
【0157】
他の実施形態において、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体の一方または両方が、治療有効量以下の量または投薬量で投与される。治療有効量以下の量は、患者自身に投与されるときに、意図される標的の生物活性を経時的に完全には阻害しない、HDAC6選択的阻害剤(式IもしくはIIの化合物)またはCD20阻害抗体の量である。
【0158】
ゆえに、一実施形態において、HDAC6選択的阻害剤またはCD20阻害抗体は、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体の一方または両方が単独で投与されるときには有効ではないが、組み合わせでは有効である量で投与される。
【0159】
治療量、または治療量以下の量で投与されるか否かに拘わらず、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体の薬学的組み合わせは、がんを処置する際に有効であるべきである。例えば、CD20阻害抗体の化合物の治療量以下の量とは、式Iの化合物(HDAC6選択的阻害剤)と組み合わされるとき、薬学的組み合わせが、がんの処置において有効であるときに有効な量であり得る。
【0160】
本開示のある特定の実施形態において、薬学的組み合わせ及び方法は、式IのHDAC6選択的阻害剤、及びCD20阻害抗体を含む。ゆえに、一実施形態において、薬学的組み合わせ及び方法は、化合物A及びCD20阻害抗体を含む。別の実施形態において、薬学的組み合わせ及び方法は、化合物B及びCD20阻害抗体を含む。これらの実施形態は、治療量以下の量のHDAC6選択的阻害剤またはCD20阻害抗体が使用され得るような相乗作用を示す。本開示のある特定の実施形態において、薬学的組み合わせ及び方法は、HDAC6選択的阻害剤(化合物Aまたは化合物B)及びCD20阻害抗体を含む。
【0161】
異なる実施形態において、薬学的組み合わせ及び使用される有効量に応じて、化合物の薬学的組み合わせは、がん成長を阻害し、がんの停滞を達成し、または、実質的もしくは完全ながんの退縮さえも達成することができる。
【0162】
上記量のHDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体は、がんの有効な処置を結果として生じるべきであるが、当該量は、組み合わされるとき、患者にとって過度に毒性でないことが好ましい(すなわち、当該量は、医学的ガイドラインにより確立されている毒性制限内にあることが好ましい)。いくつかの実施形態において、過度の毒性を防止する、かつ/またはがんのより有効な治療を提供するために、投与される合計投薬量に制限が設けられる。典型的には、本明細書において考慮されている量は1日当たりである;しかし、半日及び2日または3日サイクルもまた本明細書において考慮される。
【0163】
がんを処置するのに異なる投薬レジメンが使用されてよい。いくつかの実施形態において、1日の投薬量、例えば、上記の例示的な投薬量のいずれかが、1日に1回、2回、3回または4回、3、4、5、6、7、8、9、または10日間投与される。がんのステージ及び重篤度に応じて、高投薬量では、より短い処置時間(例えば、最大5日)が用いられてよく、または、低投薬量では、より長い処置時間(例えば、10日以上、もしくは数週間、もしくは1ヶ月以上)が用いられてよい。例えば、CD20阻害抗体は、毎週、21日毎、28日毎、2ヶ月毎、16週毎、または24週毎に投薬され得る。いくつかの実施形態において、1日1回または2回の投薬量が、隔日で投与される。いくつかの実施形態において、各投薬量は、単回投薬量として送達されるHDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体の両方を含有するが、他の実施形態において、各投薬量は、別個の投薬量として送達されるHDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体のいずれかを含有する。
【0164】
HDAC6選択的阻害剤、CD20阻害抗体、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物形態は、純粋な形態または適切な医薬組成物で、当該分野において公知の許容されている投与形態または剤のいずれかを介して投与され得る。化合物は、例えば、経口、経鼻、非経口(静脈内、筋肉内、もしくは皮下)、局所、経皮、腟内、膀胱内、嚢内または直腸投与され得る。剤形は、好ましくは、正確な投薬量の簡単な投与に好適な単位剤形で、例えば、固体、半固体、凍結乾燥粉末、または液体剤形、例えば、錠剤、丸薬、軟質弾性または硬質ゼラチンカプセル、粉末、溶液、懸濁液、坐薬、エアロゾルなどであり得る。特定の投与経路は経口であり、特に、便利な毎日の投薬レジメンが、処置される疾患の重篤度の程度によって調整され得るものである。
【0165】
上記に議論されているように、薬学的組み合わせのHDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体は、単一の単位用量または別個の剤形で投与され得る。したがって、「薬学的組み合わせ」という句は、単一の剤形または別個の剤形のいずれかでの2つの薬物の組み合わせを含み、すなわち、本出願を通して記載されている薬学的に許容可能な担体及び賦形剤は、単一の単位用量でHDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体と組み合わされ得、また、これらの化合物が別個に投与されるときには、HDAC6選択的阻害剤及びCD20阻害抗体と個々に組み合わされ得る。
【0166】
助剤及びアジュバント剤として、例えば、保存剤、湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、乳化剤、及び分散剤を挙げることができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌及び抗真菌剤によって一般に付与される。等張剤が含まれていてもよい。注射可能な薬剤形態の長時間の吸収は、吸収を遅延する剤の使用によってもたらされ得る。助剤はまた、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、及び抗酸化剤を含むこともできる。
【0167】
固体剤形は、コーティング及びシェル、例えば、当該分野においてよく知られている腸溶性コーティングなどによって調製され得る。これらは、鎮静剤を含有し得、また、活性化合物(複数可)を腸管のある特定の部分において遅延して放出するような組成物のものであり得る。使用され得る埋め込み組成物の例は、ポリマー物質及びワックスである。活性化合物はまた、適切な場合、上記賦形剤の1つ以上と共にマイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0168】
経口投与用の液体剤形として、薬学的に許容可能なエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシルが挙げられる。かかる剤形は、例えば、本明細書に記載されているHDAC6選択的阻害剤もしくはCD20阻害抗体、またはその薬学的に許容可能な塩、及び任意選択的な医薬アジュバントを担体に溶解、分散等させることにより、溶液または懸濁液を形成することによって調製される。
【0169】
概して、意図される投与形態に応じて、薬学的に許容可能な組成物は、約1%~約99重量%の本明細書に記載されている化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、及び99%~1重量%の薬学的に許容可能な賦形剤を含有する。一例において、上記組成物は、約5%重量及び約75重量%の間の、本明細書に記載されている化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含み、残りが、好適な医薬賦形剤である。
【0170】
かかる剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であり、または明らかであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1990)を参照。
【0171】
キット
他の実施形態において、キットが提供される。本開示によるキットは、本開示の化合物または組成物を含むパッケージ(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、キットは、HDAC6選択的阻害剤、またはその薬学的に許容可能な塩、及びCD20阻害抗体を含む。
【0172】
「パッケージ」という句は、本明細書に提示されている化合物または組成物を含有する任意のベッセルを意味する。いくつかの実施形態において、パッケージは、箱またはラッピングであり得る。医薬品を包装する際の使用のための包装材は、当業者によく知られている。医薬包装材の例として、限定されないが、ボトル、チューブ、吸入具、ポンプ、袋、バイアル、容器、シリンジ、ボトル、ならびに、選択される製剤ならびに意図される投与形態及び処置に好適な任意の包装材が挙げられる。
【0173】
キットはまた、パッケージ内には含有されないが、パッケージの外側、例えば、ピペットに取り付けられている項目も含有することができる。
【0174】
キットは、本開示の化合物または組成物を患者に投与するための取扱説明書をさらに含有することができる。キットはまた、監督官庁、例えば米国食品医薬品局により認可されている、本明細書における化合物の使用のための取扱説明書を含むこともできる。キットはまた、化合物用のラベリングまたは製品挿入物を含有することもできる。パッケージ(複数可)及び/または任意の製品挿入物(複数可)は、これら自体が、監督官庁により認可されてよい。キットは、パッケージにおける固体相または液体相(例えば、緩衝液が付与される)において化合物を含むことができる。キットはまた、方法を実施するための溶液を調製するための緩衝液、及び一方の容器から別のものに液体を移すためのピペットを含むこともできる。
【実施例
【0175】
実施例を、例示の目的で、また、ある特定の実施形態を説明するために記載している。しかし、特許請求の範囲は、本明細書に記載されている実施例によって何ら限定されるべきではない。開示されている実施形態に対する種々の変更及び変形が当業者に明らかであり、かかる変更及び変形は、本開示の化学構造、置換基、誘導体、製剤及び/または方法に関するものを含めて、限定されることなく、本開示の趣旨、及び添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書におけるスキームにおける構造中の変数の定義は、本明細書に提示されている式における対応する位置のものに相応している。
【0176】
式Iの化合物の合成は、国際特許出願第PCT/US2011/021982(化合物A)号ならびに同第PCT/US2014/059238号(化合物A及びB)において付与されており、これらは、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0177】
実施例1:2-((2-クロロフェニル)(フェニル)アミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物A)の合成
【化23】
反応スキーム:
【化24】
【0178】
中間体2の合成:DMF(100ml)中の、アニリン(3.7g、40mmol)、化合物1(7.5g、40mmol)、及びKCO(11g、80mmol)の混合物を、脱気し、N下、120℃で一晩撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、EtOAc(200ml)で希釈し、次いで、飽和塩水(200ml×3)で洗浄した。有機層を分離し、NaSO上で乾燥し、蒸発乾固し、シリカゲルクロマトグラフィによって精製して(石油エーテル/EtOAc=10/1)、所望の生成物を白色固体として得た(6.2g、64%)。
【0179】
中間体3の合成:DMSO(690ml)中の、化合物2(69.2g、1当量)、1-クロロ-2-ヨードベンゼン(135.7g、2当量)、LiCO(42.04g、2当量)、KCO(39.32g、1当量)、Cu(1当量、45μm)の混合物を脱気し、窒素でパージした。得られた混合物を140℃で撹拌した。反応のワークアップにより、93%の収率で化合物3を得た。
【0180】
中間体4の合成:2N NaOH(200ml)を化合物3(3.0g、9.4mmol)のEtOH(200ml)溶液に添加した。混合物を60℃で30分間撹拌した。溶媒の蒸発後、溶液を2N HClで中和して、白色沈殿物を得た。懸濁液をEtOAc(2×200ml)で抽出し、有機層を分離し、水(2×100ml)、塩水(2×100ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥した。溶媒の除去により、褐色固体を得た(2.5g、92%)。
【0181】
中間体6の合成:化合物4(2.5g、8.58mmol)、化合物5(2.52g、12.87mmol)、HATU(3.91g、10.30mmol)、及びDIPEA(4.43g、34.32mmol)の混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を濾過した後、濾液を蒸発乾固し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィによって精製して(石油エーテル/EtOAc=2/1)、褐色固体を得た(2g、54%)。
【0182】
2-((2-クロロフェニル)(フェニル)アミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物A)の合成:MeOH(50ml)及びDCM(25ml)中の、化合物6(2.0g、4.6mmol)、水酸化ナトリウム(2N、20ml)の混合物を、0℃で10分間撹拌した。ヒドロキシアミン(50%)(10ml)を0℃に冷却し、混合物に添加した。得られた混合物を室温で20分間撹拌した。溶媒の除去後、混合物を1M HClで中和して、白色沈殿物を得た。粗生成物を濾過し、分取HPLCによって精製して、白色固体を得た(950mg、48%)。
【0183】
実施例2:2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物B)の合成
【化25】
反応スキーム
【化26】
【0184】
中間体2の合成:実施例1における中間体2の合成を参照されたい。
【0185】
中間体3の合成:TEOS(200ml)中の、化合物2(6.2g、25mmol)、ヨードベンゼン(6.12g、30mmol)、CuI(955mg、5.0mmol)、CsCO(16.3g、50mmol)の混合物を脱気し、窒素でパージした。得られた混合物を140℃で14時間撹拌した。室温に冷却後、残りをEtOAc(200ml)で希釈した。シリカゲル上の95% EtOH(200ml)及びNHF-HO[水(1500ml)中のNHF(100g)をシリカゲル(500g、100-200メッシュ)に添加することによって予め調製、50g]を添加し、得られた混合物を室温で2時間保持した。固化した材料を濾過し、EtOAcで洗浄した。濾液を蒸発乾固し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィによって精製して(石油エーテル/EtOAc=10/1)、黄色固体を得た(3g、38%)。
【0186】
中間体4の合成:実施例1における中間体4の合成を参照されたい。
【0187】
中間体6の合成:実施例1における中間体6の合成を参照されたい。
【0188】
2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物B)の合成:実施例1における化合物Aの合成を参照されたい。
【0189】
実施例3:HDAC酵素アッセイ
試験用化合物をDMSO中で希釈して、最終濃度を50倍にし、10.3倍の希釈系列を作製した。化合物をアッセイ緩衝液(50mM HEPES、pH7.4、100 mM KCl、0.001% Tween-20、0.05%BSA、20μM トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)において希釈して最終濃度を6倍にした。HDAC酵素(BPS Biosciencesから購入)を希釈して、アッセイ緩衝液において最終濃度を1.5倍にした。ジペプチド基質、及び0.05μMの最終濃度のトリプシンをアッセイ緩衝液において希釈して最終濃度を6倍にした。これらのアッセイにおいて使用した最終酵素濃度は、3.3ng/ml(HDAC1)、0.2ng/ml(HDAC2)、0.08ng/ml(HDAC3)及び2ng/ml(HDAC6)であった。使用した最終基質濃度は16μM(HDAC1)、10μM(HDAC2)、17μM(HDAC3)及び14μM(HDAC6)であった。5μlの化合物及び20μlの酵素を黒色の透明でない384ウェルプレートのウェルに二重に加えた。酵素及び化合物を室温で10分間、共にインキュベートした。5μlの基質を各ウェルに添加し、プレートを60秒間振とうさせ、Victorの2マイクロリットルプレートリーダーに置いた。蛍光の発生を60分間モニタリングし、反応の線形速度を算出した。IC50を4パラメータ曲線適合によりGraph Pad Prismを使用して求めた。
【0190】
実施例4:バーキットリンパ腫細胞における化合物A及びリツキシマブによる組み合わせ処置
CB.17SCIDマウスに1×10個のRaji腫瘍細胞を脇腹に皮下移植した。Raji腫瘍細胞は、ヒトリンパ芽球組織(Bリンパ球細胞)及びバーキットリンパ腫モデルからのものである。腫瘍が100~150mmの平均サイズに達したら、マウスをビヒクル、化合物A(化合物A、50mg/kg、IP、1日1回×28)、リツキシマブ(10mg/kg、iv、隔週)、または化合物A及びリツキシマブの組み合わせで最大4週間処置した。腫瘍をキャリパーによって隔週で測定し、腫瘍体積を長さ×幅/2として算出した。腫瘍体積が2000mmに達したらマウスを安楽死させた。腫瘍体積を、最初のマウスを安楽死させるまでモニタリングした。図1Aは、示されている薬物及び抗体による処置後の腫瘍成長速度論を示す。組み合わせ処置(化合物A及びリツキシマブ)は、腫瘍成長を有意に阻害した。図1Bは、腫瘍体積変化の百分率を示す。これを、1日目のビヒクル群の平均体積(100%)に対する腫瘍体積として算出した。組み合わせ処置は、各単剤に対して腫瘍体積を有意に低減した。すなわち、化合物A及びリツキシマブによる組み合わせ処置は、各単剤処置と比較してバーキットリンパ腫のモデルにおいて相乗効果を示した。
【0191】
実施例5:Raji細胞における化合物A
細胞を、化合物Aの濃度を増加させて(すなわち、0.25μM、0.5μM、1.0μM、2.0μM、及び4.0μM)48時間処理し、Raji細胞における細胞表面存在量のCD20タンパク質及びmRNAにプロセシングした。処理したRaji細胞をIgG2bK-APC及びCD20-APCで染色した。各濃度でのRaji細胞における代表的なサンプルのFACSヒストグラムプロットを図2Aに示す。点線は、DMSO処置の中央値を示す。Raji細胞の細胞表面染色及びフローサイトメトリー後の平均蛍光強度(MFI)の定量化を図2Bに示す。各サンプルの背景抽出をし、ここで、Raji細胞におけるIgG2bK-APCの中央値のMFIを背景として使用した。図2Cは、Raji細胞におけるDMSOに対してのライブゲートにおける細胞の百分率によって測定される細胞生存率を示す。図2Dは、Raji細胞におけるRPLP1に対するCD20mRNA発現を示す。総合すると、化合物Aによって引き起こされる増加したCD20発現は、Raji細胞モデルに対するin vivo組み合わせ効果の潜在的機序であり得る。化合物Aは、Raji細胞におけるCD20mRNA発現及び細胞表面存在量のCD20を誘発した。これは、化合物Aとリツキシマブとの相乗効果の潜在的機序であり得る。
【0192】
実施例6:Jeko細胞における化合物A
細胞を、化合物Aの濃度を増加させて(すなわち、0.25μM、0.5μM、1.0μM、2.0μM、及び4.0μM)48時間処理し、Jeko細胞における細胞表面存在量のCD20タンパク質及びmRNAにプロセシングした。処理したJeko細胞をIgG2bK-APC及びCD20-APCで染色した。各濃度でのJeko細胞における代表的なサンプルのFACSヒストグラムプロットを図3Aに示す。点線は、DMSO処置の中央値を示す。Jeko細胞の細胞表面染色及びフローサイトメトリー後の平均蛍光強度(MFI)の定量化を図3Bに示す。各サンプルの背景抽出をし、ここで、Jeko細胞におけるIgG2bK-APCの中央値のMFIを背景として使用した。図3Cは、Jeko細胞におけるDMSOに対してのライブゲートにおける細胞の百分率によって測定される細胞生存率を示す。図3Dは、Jeko細胞におけるRPLP1に対するCD20mRNA発現を示す。化合物Aは、Jeko細胞におけるCD20mRNA発現及び細胞表面存在量のCD20を誘発した。これは、化合物Aとリツキシマブとの相乗効果の潜在的機序であり得る。
【0193】
参照による組み込み
この出願を通して列挙されている全ての参照物(文献参照物、交付済み特許、公開された特許出願、及び同時係属の特許出願を含む)の内容は、全体が、これにより明確に本明細書に組み込まれる。別途定義されない限り、本明細書において使用されている全ての技術的及び科学的用語は、当業者に一般的に知られている意味として扱われる。
【0194】
等価物
当業者は、単なる日常的実験の使用により、本明細書に記載されている開示の具体的な実施形態の多くの等価物を認識し、または確認することができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D