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特許7100021エポキシ化触媒を調製するためのプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】エポキシ化触媒を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/50 20060101AFI20220705BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20220705BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220705BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220705BHJP
   C07C 29/10 20060101ALI20220705BHJP
   C07C 41/02 20060101ALI20220705BHJP
   C07C 213/04 20060101ALI20220705BHJP
   C07C 215/08 20060101ALI20220705BHJP
   C07D 301/10 20060101ALI20220705BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220705BHJP
【FI】
B01J23/50 Z
B01J35/10 301G
B01J37/02 101C
B01J37/08
C07C29/10
C07C41/02
C07C213/04
C07C215/08
C07D301/10
C07B61/00 300
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019510966
(86)(22)【出願日】2017-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017049287
(87)【国際公開番号】W WO2018044982
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】62/382,800
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マフメッド・エイ・サイド
(72)【発明者】
【氏名】アプールヴァ・クルカルニ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ・ピー・サントス・カストロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター・ジェイ・サスマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・シー・マッキーン
(72)【発明者】
【氏名】キャシー・エル・ツェー
(72)【発明者】
【氏名】クリフォード・エス・トッド
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-525871(JP,A)
【文献】特開平03-207447(JP,A)
【文献】特表2014-532552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0191006(US,A1)
【文献】特開2006-102577(JP,A)
【文献】特開2001-212477(JP,A)
【文献】特表2015-501203(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087194(WO,A1)
【文献】特表2017-501864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/50
B01J 35/10
B01J 37/02
B01J 37/08
C07C 29/10
C07C 41/02
C07C 213/04
C07C 215/08
C07D 301/10
C07B 61/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記選択的除去ステップ(d)が、前記多孔性多峰性支持体の前記少なくとも第1のセットの細孔内に含有される前記含浸された第1の銀含有含浸溶液の少なくとも20パーセントを除去する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(e)オレフィンをエポキシ化するのに有用な銀含有触媒を形成するのに十分な時間および温度で、ステップ(d)で生成された前記含浸された多孔性多峰性支持体を1回以上焙煎することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記含浸ステップ(c)が、2回以上実行されるか、または前記除去ステップ(d)が、2回以上かつ2つ以上の異なる処理条件下で実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記含浸ステップ(c)が、前記選択的除去ステップ(d)の前に2回以上実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記選択的除去ステップ(d)が、前記焙煎ステップ(e)の前に2回以上実行されるか、または前記焙煎ステップ(e)が、2回以上実行される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
前記支持体の前記第1のセットの細孔の前記第1のサイズ範囲が、ミクロン~200ミクロンであり、前記支持体の前記第2のセットの細孔の前記第2のサイズ範囲が、0.01ミクロン~ミクロンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1の銀含有含浸溶液が、1つ以上の促進剤を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記支持体が、アルファ-アルミナを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記多孔性多峰性支持体の総重量に基づいて、少なくとも10重量パーセントの銀充填量が、前記多孔性多峰性支持体に提供される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記プロセスが、以下のステップ、
(f)前記多孔性多峰性支持体の前記少なくとも第1のセットの細孔および前記少なくとも第2のセットの細孔に含浸させるための、第2の銀含有含浸溶液を提供するステップと、
(g)前記多孔性多峰性支持体にステップ(f)の前記第2の銀含有含浸溶液の少なくとも一部分を1回以上含浸させるステップと、
(h)前記含浸ステップ(g)の後に、前記多孔性多峰性触媒支持体の前記少なくとも第1のセットの細孔内に含有された、前記含浸された第2の銀含有含浸溶液の一部分を選択的に除去するのに十分な時間、前記含浸された多孔性多峰性支持体を除去手段に少なくとも1回供することによって、前記含浸された第2の銀含有含浸溶液を前記多孔性多峰性触媒支持体の前記少なくとも第1のセットの細孔から1回以上選択的に除去するステップと、
(i)オレフィンをエポキシ化するのに有用な銀含有触媒を形成するのに十分な時間および温度で、ステップ(h)の前記含浸された多孔性多峰性支持体を1回以上焙煎するステップと、
(j)前記多孔性多峰性支持体の前記少なくとも第1のセットの細孔および前記少なくとも第2のセットの細孔に含浸させるための、第3の銀含有含浸溶液を提供するステップと、
(k)ステップ(i)の前記銀含有触媒にステップ(j)の前記第3の銀含有含浸溶液の少なくとも一部分を1回以上含浸させるステップと、
(l)前記含浸ステップ(k)の後に、前記含浸され焙煎された多孔性多峰性触媒支持体の前記少なくとも第1のセットの細孔内に含有された、前記含浸された第3の銀含有含浸溶液の少なくとも一部分を選択的に除去するのに十分な時間、前記含浸され焙煎された多孔性多峰性支持体を除去手段に1回以上供することによって、前記含浸された第3の含浸溶液をステップ(i)の前記含浸され焙煎された多孔性多峰性触媒支持体の前記少なくとも第1のセットの細孔から1回以上選択的に除去するステップと、
(m)オレフィンをエポキシ化するのに有用な銀含有触媒を形成するのに十分な時間および温度で、ステップ(l)の前記含浸された触媒支持部材を1回以上焙煎するステップと、を順に含み
前記選択的除去ステップ(h)および(l)が前記含浸された多孔性多峰性支持体を遠心分離することによって1回以上実行され、前記除去手段が1つ以上の遠心分離手段である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項12】
エチレンをエチレンオキシドにエポキシ化するためのプロセスであって、請求項1に記載のプロセスに従って生成されたエポキシ化触媒の存在下でエチレンと酸素とを接触させることを含む、プロセス。
【請求項13】
1,2-ジオール、1,2-ジオールエーテル、1,2-カーボネート、またはアルカノールアミンを調製するためのプロセスであって、請求項12に記載のプロセスによって調製されたエチレンオキシドを、1,2-ジオール、1,2-ジオールエーテル、1,2-カーボネート、またはアルカノールアミンに変換することを含む、プロセス。
【請求項14】
オレフィンをエポキシ化するための銀含有触媒を調製するためのプロセスであって、
(a)少なくとも2つの様式の細孔径分布を有する多孔性多峰性支持体を提供するステップと、
(b)前記多孔性多峰性支持体の前記細孔に含浸させるための、第1の銀含有含浸溶液を提供するステップと、
(c)前記多孔性多峰性支持体にステップ(b)の前記第1の銀含有含浸溶液を含浸させて、第1の量の第1の銀含有含浸溶液を有する前記多孔性多峰性支持体を提供するステップと、
(d)前記含浸された第1の銀含有含浸溶液を前記多孔性多峰性支持体から遠心分離して、第2の量の第1の銀含有含浸溶液が前記細孔内に残っている前記多孔性多峰性支持体を提供するステップと、
(e)ステップ(d)の前記含浸された多孔性多峰性支持体を焙煎するステップと、
(f)前記多孔性多峰性支持体の前記細孔に含浸させるための、第2の銀含有含浸溶液を提供するステップと、
(g)前記多孔性多峰性支持体にステップ(f)の前記第2の銀含有含浸溶液を含浸させて、第1の量の第2の銀含有含浸溶液を有する前記多孔性多峰性支持体を提供するステップと、
(h)前記含浸された第2の銀含有含浸溶液をステップ(g)の前記多孔性多峰性支持体から遠心分離して、第2の量の第2の銀含有含浸溶液が前記細孔内に残っている前記多孔性多峰性支持体を提供するステップと、
(i)オレフィンをエポキシ化するのに有用な銀含有触媒を形成するのに十分な時間および温度で、ステップ(h)の前記含浸された多孔性多峰性支持体を焙煎するステップと、を含み、
前記遠心分離ステップ(d)および(h)が、異なる遠心分離条件下で実行される、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化触媒を調製するためのプロセスに関する。より具体的には、本発明は、オレフィンエポキシ化に有用な銀含有触媒を調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
酸素の存在下および銀系触媒の存在下でのエチレンの触媒エポキシ化を介したエチレンオキシドの生成が、既知である。一般に、エポキシ化反応は、少なくともエチレンおよび酸素を含有する供給物を支持された銀含有触媒と接触させ、対応するエチレンオキシド(EO)の生成をもたらすステップを含む。EOを生成するために使用される市販の触媒は、アルミナ支持体上に支持された銀(Ag)粒子を含むことが既知である。
【0003】
以前の努力は、多峰性支持体を用いることによって、オレフィンエポキシ化触媒の選択性(効率と同義)、活性、および安定性の改善を試みてきたが、先行技術のうちのいずれも、多峰性支持体内の各種類の細孔内のAg粒径を制御するための方法については開示していない。大規模な研究により、Agの粒径が触媒活性および選択性に有意に影響を与えることが実証されている。図1は、 “Size effects in ethylene oxidation on silver catalysts.Influence of support and Cs promoter.”Applied Catalysis A:General,126(1),67-84にて、Goncharovaらによって開発された研究から再現されており、図1は、α-Al、SiO、およびバルクAg上に支持されたAgを含むいくつかの触媒についての、選択性に対する粒径の影響を実証している。Goncharovaらは、研究した範囲内で、支持された触媒の粒径(20-100nm)の増加と共に選択性の増加が見出されることを実証している。更に、Agバルクは、α-Al上に支持されたAgよりも低い選択性を示し、これは、大きな凝集体がエポキシ化反応の効率がより低いことを実証している。
【0004】
現在の当該技術水準では、特に多峰性細孔径分布を有する支持体について、細孔径の関数としてのAg粒径の制御は不可能である。例えば、大きな凝集体は、触媒を作製するための既知のプロセスを使用して多峰性支持体の大きな細孔上に容易に形成され得、結果として、大きな凝集体を有するそのような多峰性支持体を使用して最適未満の触媒性能が達成される。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一実施形態は、エチレンをエチレンオキシド(EO)に酸化するための銀含有触媒を調製するためのプロセスであって、
(a)第1のサイズ範囲の少なくとも第1のセットの支持孔および第2のサイズ範囲の少なくとも第2のセットの支持孔を有する、多孔性多峰性支持体を提供するステップであって、第2のセットの支持孔の第2のサイズ範囲が、第1のセットの支持孔の第1のサイズ範囲よりも小さい、ステップと、
(b)多孔性多峰性支持体の少なくとも第1のセットの支持孔および少なくとも第2のセットの支持孔に含浸させるための、銀成分を含む含浸溶液などの含浸溶液を提供するステップと、
(c)多孔性多峰性支持体にステップ(b)の含浸溶液の少なくとも一部分を少なくとも1度(すなわち、少なくとも1回)含浸させるステップと、
(d)含浸ステップ(c)の後に、多孔性多峰性触媒支持体の少なくとも第1のセットの支持孔内に含有された、含浸された銀含浸溶液の少なくとも一部分を選択的に除去するのに十分な時間、含浸された多孔性多峰性支持体を除去手段に少なくとも1回供することによって、銀を支持体上に固定する前に、含浸溶液を多孔性多峰性触媒支持体の少なくとも第1のセットの支持孔から選択的に除去するステップと、を含む、プロセスを対象とする。
【0006】
別の実施形態において、銀含有触媒を調製するためのプロセスは、以下の追加のステップ、
(e)オレフィンをエポキシ化するのに有用な銀含有触媒を形成するのに十分な時間および温度で、ステップ(d)の含浸された触媒支持部材を少なくとも1回焙煎(すなわち、か焼)するステップを含み得る。
【0007】
更に別の実施形態において、ステップ(d)の選択的除去手段は、含浸された触媒支持部材を遠心分離して、少なくとも第1のセットの支持孔内に含有された、含浸された溶液の少なくとも一部分を除去するための遠心分離機を含み得る。
【0008】
任意の一実施形態において、含浸ステップ(c)または除去ステップ(d)は、触媒支持部材内に含有されたAg含浸溶液を更に除去するのに十分な時間、少なくとももう1回繰り返され得る。
【0009】
更なる実施形態において、除去ステップ(d)は、焙煎ステップ(e)の前に少なくとも2回実行され得る。遠心分離ステップ(d)は、Ag溶液を所望の細孔から除去し、焙煎後に、触媒支持体の多峰性細孔内でより均等に分布したAg粒径を支持体に提供するのに十分な遠心力および時間で、有利に実行される。
【0010】
更に他の実施形態において、上記のステップ(a)~(e)のうちの任意の1つ以上を、任意で、所望される場合、触媒支持体の細孔内に堆積するAgの量を制御するのに十分な任意の回数だけ繰り返してもよい。
【0011】
本発明のプロセスによって調製される、エチレンオキシド触媒でエチレンおよび酸素を含む供給物からエチレンオキシドを生成するための反応系もまた、本出願において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面は、本発明の非限定的な実施形態を示す。
【0013】
図1】Goncharova et al.,in“Size effects in ethylene oxidation on silver catalysts.Influence of support and Cs promoter.”Applied Catalysis A:General,126(1),67-84から取得した、エチレンオキシド選択性に対するAg粒径の影響の図示である。図1に例示される記号は、以下、Ag/α-Al(∂)、Ag/SiO(★)、およびAg粉末(■)を表す。本プロセスのエポキシ化条件は、以下、230℃、1バール、2%のC、7%のN中Oを含む。
図2】本発明のプロセスに従う触媒の合成を示す系統図である。
図3】2つの遠心分離ステップを提供する、本発明のプロセスに従う触媒の合成を示す別の系統図である。
図4】一連の1回の含浸ステップ、1回の遠心分離ステップ、および1回のか焼ステップ、その後、第2の一連の含浸ステップ、第2の遠心分離ステップ、および第2のか焼ステップを順に提供する、本発明のプロセスに従う触媒の合成を示す別の系統図である。
図5a】多峰性EO触媒支持体のより大きな細孔径の細孔様式における、Ag粒子の走査型電子顕微鏡写真(SEM)フラクチャー断面画像であり、Ag含浸は従来の方法によって実行され、遠心分離ステップは含まない。特に明記しない限り、5ミクロンよりも小さい細孔は、本明細書において「小さな」細孔と見なされ、5ミクロンを超える細孔は、本明細書において「大きな」細孔と見なされる。
図5b】多峰性EO触媒支持体のより大きな直径の細孔様式における、Ag粒子のSEMフラクチャー断面画像であり、図2に記載されるように、Ag溶液に支持体を含浸させた後、Ag含浸試料は遠心分離ステップに供される。
図6a】多峰性EO触媒支持体のより大きな直径の細孔様式における、Ag粒子のSEMフラクチャー断面画像であり、Ag含浸は、単一含浸ステップ(遠心分離ステップを有しない従来の合成)によって実行される。
図6b】多峰性EO触媒支持体のより大きな直径の細孔様式に見出される、Ag粒子のSEMフラクチャー断面画像であり、Agは、単一ステップで含浸され、図2に記載されるように、その後には遠心分離ステップが続く。
図7a】多峰性EO触媒支持体のより小さな直径の細孔様式における、Ag粒子のSEMフラクチャー断面画像であり、Ag含浸は、単一含浸ステップ(遠心分離ステップを有しない従来の合成)によって実行される。
図7b】多峰性EO触媒支持体のより小さな直径の細孔様式に見出される、Ag粒子のSEMフラクチャー断面画像であり、Agは、単一ステップで含浸され、図2に記載されるように、その後には遠心分離ステップが続く。
図8a】多峰性EO触媒支持体のより大きな直径の細孔様式に見出される、Ag粒子のSEMフラクチャー断面画像であり、Ag含浸は、遠心分離を有しない2回の連続ステップ(遠心分離ステップを有しない従来の合成)によって実行される。
図8b】多峰性EO触媒支持体のより大きな直径の細孔様式に見出される、Ag粒子のSEMフラクチャー断面画像であり、Agは、2回の連続ステップで含浸され、図4に記載されるように、か焼前にその各々の後には遠心分離ステップが続く。
図9a】多峰性EO触媒支持体のより小さな直径の細孔様式に見出される、Ag粒子のSEMフラクチャー断面画像であり、Ag含浸は、遠心分離を有しない2回の連続ステップ(遠心分離ステップを有しない従来の合成)によって実行される。
図9b】多峰性EO触媒支持体のより小さな直径の細孔様式に見出される、Ag粒子のSEMフラクチャー断面画像であり、Agは、2回の連続ステップで含浸され、その各々の後には遠心分離が続く。
図10】Agが、図6aおよび6bに記載されるか焼前に遠心分離を用いておよび用いずに1ステップで多峰性支持体に含浸された場合の、2つの触媒の触媒性能を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「触媒」は、化学反応の速度を増加させる物質を意味する。
【0015】
エポキシ化反応において、エチレンは、反応器内で支持されたAg触媒の存在下で酸素または酸素含有ガスと反応して、エチレンオキシドを形成する。エポキシ化反応は、エポキシ化反応の「活性」、「選択性」、および/または「生産性」に関して特徴付けることができる。
【0016】
例えば、「効率」と同義であるエポキシ化反応の「選択性」は、対応するエチレンオキシド生成物を形成する、変換または反応されたエチレンの(分数としてのまたはパーセントでの)相対量を指す。「効率」および「選択性」という用語は、本明細書において互換的に使用される。例えば、「エチレンオキシドに対する効率」は、エチレンオキシドを形成する、変換または反応されたエチレンのモル基準でのパーセンテージを指す。エチレンオキシドの「収率」は、本プロセスによって生成されたエチレンオキシドの正味のモル数を、任意の所与の期間中に本プロセスに供給されたエチレンの正味のモル数で割ったものを指す。
【0017】
例えば、固定床反応器内の触媒の「活性」は一般に、反応器内の触媒容積の単位当たりの所望の生成物に対する反応速度として定義される。活性は、触媒上の利用可能な活性部位の総数および各部位の反応速度の両方に関する。
【0018】
加えて、エポキシ化反応の「活性」は、いくつかの方法で定量化することができ、その1つの方法は、反応器の入口流に含有されるエチレンオキシドに対する、反応器の出口流に含有されるエチレンオキシドのモルパーセントである(入口流のオレフィンオキシドのモルパーセントは、典型的には、ゼロパーセントに接近するが、必ずしもそうではない)一方で、反応器の温度は、実質的に一定に維持され、別の方法は、エチレンオキシドの所与の生成速度を維持するのに必要とされる温度である。いくつかの場合、活性は、特定の一定温度で生成されるエチレンオキシドのモルパーセントに関して、ある期間にわたって測定される。あるいは、エポキシ化反応の「活性」は、供給物中の圧力および総モルなどの他の条件を考慮して、特定の速度でエチレンオキシドの生成を持続させるのに必要とされる温度の関数として測定され得る。
【0019】
「促進剤」は、時に「阻害剤」または「調節剤」と称され、エチレンオキシドの所望の形成に対する速度を増加させること、および/またはエチレンオキシドの所望の形成と比較して、エチレンまたはエチレンオキシドの二酸化炭素および水への望ましくない酸化を抑制することによって、触媒の性能を増強する材料を指す。
【0020】
「反応温度」、「エポキシ化温度」、または「エポキシ化反応温度」という用語は、反応器の触媒床温度を直接的または間接的に示す任意の選択された温度(複数可)を指す。特定の実施形態において、反応温度は、触媒床内の特定の位置における触媒床温度であり得る。他の実施形態において、反応温度は、1つ以上の触媒床の寸法に沿って(例えば、長さに沿って)行われたいくつかの触媒床温度測定値の数値平均であり得る。更なる実施形態において、反応温度は、反応器出口のガス温度であり得る。更なる実施形態において、反応温度は、反応器入口または出口の冷却剤温度であり得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「反応生成物」という用語は、未反応供給物成分、および化学反応の結果として生成される成分の両方を含む。例えば、エチレンオキシドの生成プロセスにおいて、「反応生成物」は、エチレンオキシド生成物、ならびに存在する場合、任意の副生成物(二酸化炭素など)および/または未反応供給物成分(例えば、エチレン、酸素、および/または塩化物)を含む。
【0022】
本明細書において、「銀充填量」は、か焼された触媒に基づく、銀である触媒の重量パーセントまたは重量分率を意味する。銀充填量は、蛍光X線、滴定、または当業者にとって既知である他の手段(中性子放射化分析、NAA)によって決定することができる。
【0023】
本明細書において、「銀粒径」は、動的パルスCO化学吸着法、走査型電子顕微鏡(SEM)、または当業者にとって既知である他の手段によって測定される、ナノメートルでの平均粒径を指す。
【0024】
動的パルスCO化学吸着法は、曝露された銀部位の決定を可能にし、酸化Ag表面上でのCOの反応に基づいてCOを生成する。CO滴定実験からの平均粒径は、以下の式によって決定することができる。
【0025】
【数1】
【0026】
式中、σAgは、銀の平均原子表面密度であり、ρAgは、銀の密度であり、Nは、アボガドロ数であり、nAgは、Agが試料上に存在するAgのモル数であり、nCO2は、生成されたCOの総モル数である。表面原子と吸着ガスとの間の化学量論は、1に等しいと考えられる。
【0027】
本明細書において、触媒支持体に関する「多峰性細孔径分布」は、細孔径が、当業者にとって既知である方法(Hg多孔度測定など)によって決定される少なくとも2つの異なる様式を有する連続確率分布である、支持体を意味する。
【0028】
本明細書において、触媒支持体に関する「二峰性細孔径分布」は、2つの異なる様式を有する細孔の細孔径の連続確率分布を意味する。
【0029】
本明細書において、粒径に関する「制御する」または「制御すること」という用語は、含浸手段、か焼手段、および選択的除去手段と組み合わせて、主に含浸溶液中の銀濃度を使用して、所望の粒径の銀粒子を提供することを意味する。
【0030】
その最も広範な範囲において、本発明は、多峰性細孔径分布を含有する支持体内のAg粒径を制御することを含む、銀系触媒を合成するための新規なプロセスを含む。本発明の銀系触媒は、エチレンをエポキシ化して、エチレンオキシドを形成するのに有用である。
【0031】
銀系触媒を調製するための本発明の広範な一般的手順は、少なくとも以下のステップ、多峰性支持部材を含浸させるのに有用なAg含有成分(複数可)を含む含浸溶液を調製するステップと、多峰性支持部材を調製された含浸溶液と接触させ、それに含浸させるステップと、その後、含浸された含浸溶液の少なくとも一部分を多峰性支持体の少なくとも1セットの細孔から選択的に除去するステップとを含む。
【0032】
好ましい一実施形態において、本発明のプロセスは、図2の系統図に模式的に例示される、例えば、5ステップのプロセスを含んでもよく、これは、以下のステップ、
(a)多孔性多峰性触媒支持部材を提供するステップと、
(b)Ag成分を含む含浸溶液を提供するステップと、
(c)多孔性触媒支持部材を含浸溶液の少なくとも一部分に含浸させるステップと、
(d)含浸ステップ(c)の後に、含浸された銀含浸溶液の少なくとも一部分を多孔性触媒支持部材の少なくとも1セットの細孔から除去するのに十分な時間および条件下で、含浸された多孔性触媒支持部材を遠心分離などの除去手段に供することによって、Ag成分溶液を多峰性多孔性触媒支持部材の少なくとも1セットの細孔から選択的に除去するステップと、
(e)ステップ(d)後の多孔性触媒支持部材を焙煎(すなわち、か焼)して、Ag成分をAg金属に変換し、多孔性触媒支持部材の内面および外面にAgを堆積させて、触媒を形成し、均一な平均粒径を有するAg粒子の均一な分布を提供するステップとを含む。
【0033】
他の実施形態において、本発明のプロセスは、1回の含浸ステップまたは一連の2回以上の含浸ステップを含み得る。その後、含浸ステップからの含浸された支持体を、遠心分離ステップ、その後のか焼ステップなどの除去手段によって処理しても、または除去手段に供してもよい。本発明のプロセスのうちの含浸、遠心分離、もしくは焙煎ステップのいずれも(図2に示されるように)1回実行しても、または必要に応じて、いくつかの実施形態において、ステップのうちのいずれかもしくは全てを(図3~4に示されるように)2回以上実行してもよい。
【0034】
図3を参照すると、本発明のプロセスの別の実施形態が示されており、触媒は単一ステップでAg成分溶液に含浸され、その後、含浸された触媒は2回の遠心分離ステップ、すなわち、第1の遠心分離ステップおよびその後に連続的に続く第2の遠心分離ステップに供される。
【0035】
図4に示される別の実施形態において、本発明のプロセス、銀含浸溶液を調製した後、触媒は一連の第1の含浸ステップ、第1の遠心分離ステップ、および第1のか焼ステップに連続して供され、その後、一連の第2の含浸ステップ、第2の遠心分離ステップ、および第2のか焼ステップが連続的に続く。図4に示されるプロセスの結果として、触媒は本質的に一連の含浸、遠心分離、およびか焼ステップを2回受けて、触媒生成物を生成する。
【0036】
更に別の実施形態(図示せず)において、オレフィンをエポキシ化するための銀含有触媒を調製するための本発明のプロセスは、以下のステップ、(a)少なくとも2つの様式の細孔径分布を有する多孔性多峰性支持体を提供するステップと、(b)含浸溶液を多孔性多峰性支持体の細孔内に含浸させるための銀含有含浸溶液を提供するステップと、(c)多孔性多峰性支持体にステップ(b)の含浸溶液を含浸させて、第1の量の含浸溶液を有する多孔性多峰性支持体を提供するステップと、(d)含浸された銀含有含浸溶液を多孔性多峰性支持体から遠心分離して、第2の量の含浸溶液が支持孔内に残っている多孔性多峰性支持体を提供するステップと、(e)ステップ(d)の含浸された多孔性多峰性支持体を焙煎するステップと、(f)多孔性多峰性支持体にステップ(b)の含浸溶液を含浸させて、第3の量の含浸溶液を有する多孔性多峰性支持体を提供するステップと、(g)含浸された銀含有含浸溶液をステップ(f)の多孔性多峰性支持体から遠心分離して、第4の量の含浸溶液が支持孔内に残っている多孔性多峰性支持体を提供するステップと、(h)オレフィンをエポキシ化するのに有用な銀含有触媒を形成するのに十分な時間および温度で、ステップ(g)の含浸された多孔性多峰性支持体を焙煎するステップとを含むことができ、遠心分離ステップ(d)および(g)は、異なる遠心分離条件下で実行される。
【0037】
更に別の実施形態(図示せず)において、含浸され遠心分離された触媒は、2回のか焼ステップに順に供され、すなわち、第1のか焼ステップの後に連続して同じ温度または異なる温度での第2のか焼ステップが続いて、触媒生成物を提供する。
【0038】
上記の実施形態のいずれにおいても、除去手段を用いて、多孔性多峰性支持体の少なくとも第1のセットの支持孔内に含有された、含浸された銀含有含浸溶液の少なくとも20パーセント(%)、少なくとも30%、少なくとも50%、または少なくとも80%を除去することができる。更に別の実施形態において、多孔性多峰性支持体の少なくとも第1のセットの支持孔内に含有された、含浸された銀含有含浸溶液の最大100%を除去することができる。
【0039】
上記の実施形態は、本発明のプロセスの変形を例示しているが、このプロセスは、図2~4に示されるプロセスに限定されるものではない。前述のように、含浸、遠心分離、または焙煎ステップは、1回、2回、またはそれ以上実行されてもよく、任意で、ステップのうちのいくつかまたは全ては、2回以上実行されてもよい。図2~4に示されるステップのうちの任意の組み合わせおよび変形が当業者に明らかとなり、これらは、本明細書の特許請求の範囲に明記されている本発明のプロセスの範囲内にある。
【0040】
本発明に従って触媒を調製するためのプロセスは、含浸溶液に含浸されることになる多峰性支持体(「支持体」としても知られる)を提供する第1のステップから始まる。本明細書に記載される触媒調製プロセスは、二峰性支持体などの多峰性細孔径分布を有する異なる種類の支持体、および含浸技術を介して調製される他の触媒に適用することができる。多峰性支持体は、少なくとも2つの異なる細孔径を有する支持体を含む。一般に、本発明の多孔性多峰性支持体は、第1のサイズ範囲の少なくとも第1のセットの支持孔と、第2のサイズ範囲の少なくとも第2のセットの支持孔とを有することができ、第2のセットの支持孔の第2のサイズ範囲は、第1のセットの支持孔の第1のサイズ範囲よりも小さい。
【0041】
例えば、第1のセットの支持孔は、一実施形態において約3μm~約100μm、および別の実施形態において約5μm~約50μmの範囲内の第2の細孔径を有し得る。
【0042】
例えば、第2のセットの支持孔は、一実施形態において約0.01μm~約3μm、および別の実施形態において約0.01μm~約1μmの範囲の第1の細孔径を有し得る。
【0043】
選択される多孔性耐熱性材料が何であっても、支持体が利用される用途において用いられる化学物質および処理条件の存在下で比較的不活性である限り、支持体は、既知の多孔性耐熱性構造または支持材料のうちのいずれかを含んでもよい。
【0044】
支持体は、例えば、炭化ケイ素、粘土、軽石、ゼオライト、木炭、およびアルカリ土類金属炭酸塩(炭酸カルシウムなど)などの天然または人工の無機支持材料、ならびにそれらの混合物を含む、広範囲の不活性支持材料から選択され得る。他の実施形態は、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、およびシリカ、ならびにそれらの混合物などの耐熱性支持材料を含み得る。好ましい一実施形態において、支持体材料は、アルファ-アルミナであり得る。例示的な一実施形態において、Agはアルファアルミナ触媒支持体上に堆積され、任意で、1つ以上の促進剤もまた触媒上に堆積され得る。
【0045】
支持体に使用される材料は、結合剤と共にまたは結合剤なしで使用され得る。結合剤は、使用される場合、例えば、無機の種類の材料であり得る。
【0046】
一般に、多峰性支持体は、支持体を周知の方法で調製することによって提供される。例えば、アルケンオキシド触媒中での使用に好適な支持体を調製するためのいくつかの周知の方法は、参照により本明細書に組み込まれる、WO2013/148417A1、ならびに米国特許第4,379,134号、同第4,806,518号、同第5,063,195号、同第5,384,302号、および同第6,831,037号に記載されている。
【0047】
例えば、少なくとも95%の純度のアルファ-アルミナ支持体は、原材料を配合(混合)し、押し出し、乾燥させ、高温か焼することによって調製され得る。この場合、出発原材料は、通常、異なる特性を有する1つ以上のアルファ-アルミナ粉末(複数可)、物理的強度をもたらすための結合剤として添加され得る粘土型の材料、ならびにか焼ステップ中にそれを除去した後に所望の多孔性および/または細孔径分布をもたらすために混合物中に使用される熱焼材料(通常、有機化合物)を含む。最終支持体内の不純物のレベルは、使用される原材料の純度、およびか焼ステップ中のそれらの揮発度によって決定される。一般的な不純物としては、シリカ、アルカリおよびアルカリ土類金属酸化物、ならびに微量の金属および/または非金属含有添加剤を挙げることができる。
【0048】
アルミナは、非常に高純度等級のもの、すなわち、重量によって少なくとも98パーセントまたは重量パーセント(重量%)のアルファ-アルミナであり、いかなる残りの成分も、シリカ、アルカリ金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム)、ならびに微量の他の金属含有および/または非金属含有添加剤または不純物であり得る。同様に、アルミナは、より低い純度のもの、すなわち、80重量%のアルファ-アルミナであり、残りは、非晶質および/または結晶質アルミナ、ならびに他のアルミナ酸化物、シリカ、シリカアルミナ、ムライト、様々なアルカリ金属酸化物(例えば、酸化カリウムおよび酸化セシウム)、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物(例えば、酸化鉄および酸化チタン)、ならびに他の金属および非金属酸化物のうちの1つ以上であり得る。加えて、支持体を作製するのに使用される材料は、触媒性能を改善することが既知である成分、例えば、レニウム(レナートなど)およびモリブデンを含み得る。
【0049】
アルファ-アルミナ支持体は、一実施形態において少なくとも0.3立方センチメートル/グラム(cm/g)、および別の実施形態において約0.4cm/g~約2.0cm/gの細孔容積を有してもよく、細孔径は、約0.1ミクロン~約50ミクロンの範囲であり得る。
【0050】
アルファ-アルミナ支持体は、一実施形態において少なくとも約0.5平方メートル/グラム(m/g)、および別の実施形態において少なくとも約0.7m/gの比表面積を有し得る。アルファ-アルミナ支持体の表面積は、一実施形態において約10m/g未満、および別の実施形態において約5m/g未満であり得る。
【0051】
本発明において有用なアルファ-アルミナ支持体は、任意の好適な形状のものであり得る。支持体の例示的な形状としては、丸剤、塊状物、錠剤、小片、ペレット、リング、球体、ワゴンホイール、ならびに星型の内面および/または外面を有する環状体などが挙げられる。
【0052】
支持体は、反応器内で用いるのに好適な任意のサイズのものであり得る。例えば、触媒で充填された、1インチ~3インチ(2.5cm~7.5cm)の外径および15フィート~45フィート(4.5m~13.5m)の長さの(好適な外殻内に)複数の平行な細長いチューブを有する、固定床エチレンオキシド反応器内では、球体、ペレット、リング、十字分割リング、ペンタリング、および錠剤などの形状を有し、0.1インチ(0.25cm)~0.8インチ(2cm)の直径を有するアルファアルミナ支持体を用いることが望ましい。
【0053】
本発明において有用な含浸溶液は、銀含有含浸溶液を含む。一実施形態において、銀および他の金属(銅または金など)を含み得る二金属系を使用してもよいが、典型的には、銀のみが支持体に含浸される。支持体に含浸させるのに使用される銀含浸溶液は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,187,140号に開示されている溶媒または錯化剤/可溶化剤などの含浸培地中に銀成分を含む。
【0054】
本発明において用いられる特定の銀成分は、例えば、銀錯体、硝酸塩、酸化銀またはカルボン酸銀(酢酸銀など)、シュウ酸塩、クエン酸塩、フタル酸塩、乳酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、および高級脂肪酸塩、ならびにそれらの混合物の中から選択され得る。別の実施形態において、アミンと錯体化した酸化銀は、本発明の実施に使用することができる銀の形態であり得る。
【0055】
多種多様な溶媒または錯化剤/可溶化剤を用いて、含浸培地または溶液中で上記の銀成分を所望の濃度まで可溶化することができる。溶媒または錯化剤/可溶化剤が、含浸溶液中で銀成分を所望の濃度まで可溶化することができ、溶媒または錯化剤/可溶化剤が、触媒の性能特性に悪影響を及ぼさない限り、溶媒は、任意の従来の溶媒または当該技術分野において既知である任意の錯化剤/可溶化剤であり得る。この目的に好適な溶媒または錯化剤/可溶化剤の中には、例えば、(米国特許第2,477,436号および同第3,501,417号に開示される)乳酸、(米国特許第2,463,228号に開示される)アンモニア、(米国特許第2,825,701号および同第3,563,914号に開示される)エチレングリコールなどのアルコール、ならびに(米国特許第2,459,896号、同第3,563,914号、同第3,215,750号、同第3,702,259号、同第4,097,414号、同第4,374,260号、および同第4,321,206号に開示される)アミンおよびアミンの水溶性混合物を含めることができ、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の含浸溶液中には、上記の溶媒または錯化剤/可溶化剤のうちの2つ以上の組み合わせもまた使用され得る。
【0056】
一般に、支持体は、酸素または酸素含有ガスによるアルケンの対応するアルケンオキシドへの直接酸化を触媒することができる銀の量である、ある量の銀を含有する含浸溶液に含浸される。そのような触媒を作製する際、支持体は、典型的には、所望の銀を支持体上に支持させるのに十分な1つ以上の銀成分溶液に(1回以上)含浸され得る。
【0057】
一般に、銀含浸溶液中に溶解する銀成分の量は、1回の含浸当たりで最終触媒に最終的に提供される量よりも多い。例えば、AgOは、シュウ酸とエチレンジアミンとの溶液中に(~)30重量%の程度まで溶解し得る。そのような溶液を~0.7cc/gの多孔性のアルファアルミナ支持体上に真空含浸させると、触媒の総重量に基づいて~25重量%の銀を含有する触媒が得られる。したがって、約25重量%超、約30重量%超、またはそれ以上の銀充填量を有する触媒を得るためには、所望の量の銀が支持体上に堆積するまで、支持体を、促進剤の有無に関わらず、少なくとも2回以上の銀の連続含浸に供する必要がある。2回以上の含浸を使用して、本発明の触媒を作製して、得られる触媒中で所望の銀濃度を達成することができる。
【0058】
既知のように、含浸の回数、各含浸に使用される溶液の濃度、およびか焼条件は、得られる触媒中の銀の粒径を微調整するために使用され得る要因である。例えば、銀塩の濃度は、最初の含浸溶液中よりも、より後の含浸溶液中で高くあり得る。他の例において、各含浸ステップにおいて、ほぼ等しい濃度の銀が使用され得る。更なる例において、最初の含浸において、その後の含浸よりも高い濃度の銀が使用され得る。含浸の各々の後には、焙煎または銀を不溶性にするための他の手順を続けてもよい。先行技術に対する本発明の更なる利点は、本発明のプロセスが、選択された細孔内のAg濃度を制御するより選択的な手段を提供することである。
【0059】
例えば、1つ以上の促進剤、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびオキシアニオン、ならびにそれらの混合物を含む、様々な任意の化合物または添加剤が、含浸溶液に添加され得る。一実施形態において、促進剤は、触媒の調製中に触媒に導入される材料(例えば、本明細書において「触媒促進剤」とも呼ばれる固相促進剤)であり得る。別の代替実施形態において、促進剤は、エポキシ化反応器供給物に導入されるガス状材料(気相促進剤)であり得る。一例において、有機ハロゲン化物気相促進剤をエポキシ化反応器供給物に連続的に添加して、触媒効率を増加させることができる。銀系エチレンエポキシ化触媒について、典型的には、固相および気相促進剤の両方がプロセスにおいて使用される。
【0060】
必要に応じて、好適なアルカリ金属促進剤成分を使用して、含浸溶液を形成することができる。例えば、アルカリ金属促進剤成分は、用いられる特定の溶媒または可溶化剤に可溶性であり、含浸溶液中の他の成分と適合する全ての促進剤を含み得る。したがって、硝酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、およびカルボン酸塩などのアルカリ金属の無機および有機成分が、使用され得る。一例示として、バリウム、カルシウム、およびマグネシウムの塩などのアルカリ土類塩は、本発明のプロセスに従って含浸溶液中に容易に可溶化され、支持体上に堆積され得る。
【0061】
支持体の表面に銀および促進剤を含浸または堆積させる順序は、任意である。したがって、銀および塩の含浸および堆積は、同時にまたは連続的に行うことができ、すなわち、促進剤は、支持体に銀を添加する前、その間、またはその後に堆積され得る。促進剤は、一緒にまたは連続的に堆積され得る。例えば、塩のうちの1つ以上を最初に堆積させ、その後、銀および追加のまたは他の塩を同時にまたは連続的に堆積させてもよい。
【0062】
触媒支持体の含浸は、同時堆積または連続堆積のための周知の手順に従って、銀および促進剤を含有する1つ以上の溶液を使用して行うことができる。同時堆積の場合、含浸後に含浸された支持体を加熱または化学処理して、銀成分を銀金属へと還元し、塩を触媒表面に堆積させる。
【0063】
連続堆積の場合、最初に支持体に(用いられる順序に応じて)銀または促進剤を含浸させ、その後、上記のように加熱または化学処理する。これに続いて、第2の含浸ステップおよび対応する加熱または化学処理を行って、銀および促進剤を含有する最終触媒を生成する。
【0064】
本発明の一実施形態において、1つ以上の促進剤が銀と同時に添加される。別の実施形態において、一番最後の銀含浸ステップにおいて、1つ以上の促進剤が触媒に添加される。
【0065】
含浸溶液の全ての成分は、典型的には、容器内で、効果的な含浸溶液の調製を可能にする温度で混合され、分散される。例えば、上記の成分の混合中の温度は一般に、一実施形態においておよそ周囲温度(23℃)~約70℃、および別の実施形態においておよそ周囲温度~約50℃であり得る。
【0066】
本発明の含浸溶液の調製、および/またはそのステップのうちのいずれかは、バッチまたは連続プロセスであり得る。含浸溶液を調製するために使用されるプロセスおよび装置の種類は、当該技術分野において既知である任意の従来のプロセスまたは装置であり得る。例えば、混合容器を使用して、上記の成分、つまり、Ag成分、溶媒、および任意で促進剤(複数可)などの任意の他の所望の添加剤をブレンドまたは混合する。
【0067】
一般に、銀触媒材料および任意の他の添加剤(促進剤など)を堆積させるための手順は、本発明に従う多孔性アルミナ支持体に、溶媒または可溶化剤、銀錯体、および必要に応じて、1つ以上の促進剤を含む溶液を含浸させることを含む。支持体の含浸は一般に、コーティング手順よりも銀を効率的に利用するために、支持体の含浸は銀堆積のための好ましい技術であり、後者は一般に、支持体の内面に実質的な銀の堆積を行うことができない。加えて、コーティングされた触媒は、機械的摩耗による銀の損失をより受けやすい。
【0068】
含浸溶液を支持体に含浸させるために使用されるプロセスおよび装置の種類は、当該技術分野において既知である任意の従来の含浸プロセスまたは装置であり得る。例えば、支持体を含有する容器を使用し、これに上記の含浸溶液を含浸させ、含浸溶液を容器内の支持体に通過させる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「表面積」は、参照により本明細書に組み込まれる、Journal of the American Chemical Society 60(1938)pp.309-316に記載されるように、窒素によるBET(Brunauer、Emmett、およびTeller)法によって決定される支持体の表面積を指す。「総細孔容積」は、支持体の細孔容積を意味し、典型的には水銀多孔度測定によって決定される。本明細書に報告されている測定は、130°の接触角、0.485N/MのHgの表面張力を想定して、参照により本明細書に組み込まれる、Micromeritics Autopore IV 9520を使用する60,000psiaまでの水銀圧入を使用して、参照により本明細書に組み込まれる、Webb&Orr,Analytical Methods in Fine Particle Technology(1997),p.155に記載される方法を使用した。「多孔度」は、材料の総容積に対する非固体容積の割合である。当業者であれば、水銀多孔度測定または吸水率によって測定される総細孔容積を使用して、開放多孔度を推定することができる。触媒的には重要ではないが、閉鎖した細孔は、これらの技術を使用しては決定されないだろう。換言すると、多孔度は、試料の総容積で割った空隙容積(非占有空間)として定義される。「細孔径中央値」は、支持体の総細孔容積の半分が累積的に測定された細孔径分布における点に対応する細孔径を意味する。多峰性支持体の場合、全体的な細孔径中央値は、細孔系を完全に説明するものではなく、代わりに各細孔様式の細孔径中央値が、提示されている。
【0070】
所与の支持材料について、銀充填量と銀粒径との間には、重要な関係が存在する。例えば、複数の含浸ステップを使用して、Ag充填量を増加させることができる。銀比表面積は、銀の面積を触媒の重量で割ったものとして定義される。銀比表面積を決定するための手順は、非促進の触媒上で実行されることが好ましい。銀比表面積を決定するための特定の技術には、酸素および一酸化炭素の化学吸着、ならびに画像分析と組み合わせた顕微鏡検査が含まれる。1つの特定の技術は、動的パルス技術を使用する酸素の選択的化学吸着を用いる。参照により本明細書に組み込まれる、Asterios Gavrilidis,et al.,Influence of Loading on Metal Surface Area for Silver/Alpha-Alumina Catalysts,J.Catalysis,139(1)at41-47(1993)。別の技術は、滴定法を使用して、銀表面の原子数、およびその延長として銀比表面積を決定する。参照により本明細書に組み込まれる、M.Boudart,Turnover Rates in Heterogeneous Catalysis,Chem.Rev.,Vol.95at661-666(1995)。
【0071】
多孔性触媒支持体に含浸溶液(本明細書において「含浸支持体」とも呼ばれる)を含浸させた後、支持体の細孔内に含浸されていない任意の含浸溶液を、本明細書において「非含浸溶液」と呼ぶ。これは、支持体の外面の周囲およびその上の溶液を含み得る。触媒支持体の細孔内に含浸または吸収された溶液は、本明細書において「含浸された溶液」と呼ばれる。存在する場合、非含浸溶液の大部分、および含浸された溶液の少なくとも一部分が、異なるステップで含浸された支持体から除去されることが、本発明の特徴である。
【0072】
例えば、銀含有含浸溶液での触媒支持体の各含浸の後に、濾過、排水、または遠心分離などの従来の分離手段を用いることによって、残りの、余分な、または過剰の非含浸溶液を含浸された支持体全体から分離することが望ましい。例えば、非含浸溶液は、含浸された支持体から排水されてもよく、すなわち、非含浸溶液は、支持体全体の外面から物理的に分離される。別の例として、遠心分離が分離手段として使用されるとき、遠心分離は、非含浸溶液を含浸された触媒全体の外面から分離するための操作条件下で使用される。一般的に言って、任意の過剰の非含浸溶液を含浸された支持体から分離するためには、排水が最も一般的に使用される。
【0073】
上記の分離方法のいずれかの後、含浸された支持体は、含浸された溶液の少なくとも一部分を含浸された支持体の特定の支持孔から選択的かつ物理的に除去するための除去方法に供されてもよく、この除去方法は、好ましくは、遠心分離を含む。本発明の一実施形態において、非含浸溶液を触媒支持体から分離した後、支持体の細孔内に含浸され、配置された銀含有含浸溶液は、含浸された支持体を遠心分離などの除去手段に供することによって、支持体の特定の細孔から選択的に除去される。
【0074】
本発明において、除去手段として遠心分離が使用される場合、遠心分離条件は、触媒全体の表面からだけでなく、触媒支持体の特定の細孔からも含浸された溶液を選択的に除去するように選択され得る。遠心分離ステップは重要であるが、これは、それが排水ステップで除去されなかった過剰の非含浸含浸溶液を、触媒支持体の表面から、および含浸された溶液を触媒支持体の特定の細孔から分離するためである。そして、遠心分離によって大きな細孔からAg含浸溶液を除去することは、大きな細孔の表面上でのAgの凝集を排除し、銀の全体的な平均粒径を低減する。
【0075】
一般に、本発明の遠心分離ステップを実行するために考慮すべき重要な要因としては、例えば、回転速度(r.p.m.)、遠心分離機の半径、時間、および遠心分離の温度を挙げることができる。回転速度および遠心分離機の半径が、相対遠心力(RCF)を決定する。RCFは、以下の式(1)を使用して計算することができる。
【0076】
【数2】
【0077】
式中、Rは、遠心分離機の半径(mm)であり、r.p.m.は、毎分回転数での回転速度である。
【0078】
遠心力は、以下の式から計算することができる。
【0079】
【数3】
【0080】
式中、mは、細孔内に存在する液体の質量であり、wは、角速度であり、rは、細孔の半径であり、hは、細孔内に存在する液体の高さであり、Rは、遠心分離機の半径であり、ρは、液体の密度である。細孔内部の液体の高さは、表面張力と重力との均衡によって決される。
【0081】
【数4】
【0082】
式中、θは、接触角である。
【0083】
溶液を決定された細孔から選択的に除去するために、遠心力は、対応する細孔の毛細管力に等しくなければならない。毛細管力は、以下の式によって計算される。
【0084】
【数5】
【0085】
要約として、特定のサイズの細孔の内側に位置する溶液を除去するのに最適なRCFは、毛細管力を遠心力と一致させることによって決定される。これに基づいて、以下の関係が得られる。
【0086】
【数6】
【0087】
式(5)に表される物理的性質は、温度依存性であり、したがって、遠心分離プロセスの効率に影響を与え得る。
【0088】
上記の式(5)を用いて本発明を更に例示するために、以下の特性を式中で使用することができ、含浸液体の特性について、γ=7.28x10-2N/m、θ=85°、およびρ=1493kg m-3であり、細孔径が1,000μm~1μmの範囲であると想定すると、遠心力(RCF)は、例えば、約0.1~1,500,000であり得る。
【0089】
遠心分離時間は、例えば、一実施形態において例えば約1分間(分)~約20分および別の実施形態において約5分~約10分であり得る。遠心分離が実行される温度は、それが細孔内部の含浸溶液の特性を決定し得るため、一要因となり得る。遠心分離は、任意の好適な温度(例えば、溶液が遠心分離機内で分解するほど高くないか、または流体が流動できないほど低い温度でない)で実行することができ、すなわち、溶液は、十分に流動性のままであり、遠心分離機によって支持体から除去可能であるのに必要なレオロジーを有するべきである。一般的な一実施形態において、例えば、遠心分離温度は、約20℃~約80℃であり得る。典型的には、遠心分離の温度は、周囲温度である。例えば、一実施形態において、本明細書の実施例に記載される種類の銀アミンシュウ酸塩溶液は、ほぼ室温(RT)~約40℃の温度で遠心分離され得る。
【0090】
本発明の遠心分離ステップ、および/またはそのステップのうちのいずれも、バッチプロセスであってもよく、このプロセスで使用される装置は、当業者に周知の任意の遠心分離機および補助装置であり得る。
【0091】
遠心分離は、過剰の非含浸含浸溶液を触媒支持体の表面から分離し、また含浸された溶液の少なくとも一部分を触媒支持体内の特定のサイズ範囲の細孔から分離するため、本発明のプロセスの遠心分離ステップは、重要である。このように、含浸溶液の調整と組み合わせた遠心分離ステップは、細孔内のAgの濃度を細孔内の利用可能な表面積と一致させるように調整することによって、支持体内の各種類の細孔のAgの粒径の制御を可能にする。適切な遠心力および遠心分離時間を提供するように遠心分離速度を選択することによって、どの細孔様式がAg含浸溶液で充填されたままであるかを制御し、したがって支持体内の最終Ag粒径およびAg粒子の位置を制御することが可能である。
【0092】
遠心分離ステップ(複数可)の追加の利点は、遠心分離が、支持体ペレットの外面に残された非含浸Ag溶液の量を低減し、か焼後のペレット表面上のAgクラストの形成を低減するか、または更にはそれを予防することができることである。外面の過剰の銀は、操作中に触媒から剥げ落ち、微粉の蓄積および圧力低下の増加をもたらすと仮定される。加えて、か焼前に過剰のAg溶液を除去することは、溶液の回収を可能にし、そして触媒生成プロセスにおけるより良好なAg利用を可能にし、生成費用を低減する。
【0093】
この様式における触媒の生成の追加の利点は、生産性を損失することなく、現在の最先端の触媒と比較してより低い全体的な銀充填量を有し得ることである。このより低い銀充填量は、そのような触媒を生成する費用を低減し得ることが理解されるだろう。加えて、より低いAg充填量およびAgの外面ペレット堆積の低減は、(1)細孔閉塞を減少させ、したがって触媒中の拡散障壁を低減することができ、(3)更なる触媒取り扱い中のAgのその後の損失を低減することができる。
【0094】
上記の遠心分離ステップの後、得られた遠心分離された支持体は一般に、支持体内の液体を蒸発させるために、ならびに分解および銀金属塩を金属銀に分解および還元し、それによって銀および促進剤(存在する場合)の内面および外面の支持体表面への堆積をもたらすために、高温で熱処理、すなわち焙煎される。
【0095】
含浸された/遠心分離された支持体を加熱するために、様々な熱処理雰囲気が用いられ得る。例えば、支持体は、空気中または不活性雰囲気(窒素雰囲気など)中で加熱され得る。熱処理が酸化環境中で行われる場合、この熱処理は「か焼」と称されることがある。
【0096】
一般に、存在する溶媒(複数可)を除去し、存在する場合、促進剤種を(分解の有無に関わらず)銀および支持体表面に堆積させるために、含浸された支持体は、大気圧または準大気圧で熱処理される。熱処理は、過剰の溶媒を除去し、銀塩の実質的に全てを銀金属に変換するのに十分な温度および時間で実行され得る。例えば、含浸された/遠心分離された支持体は、一実施形態において約100℃~約900℃、および別の実施形態において約200℃~約700℃の温度で、銀塩の実質的に全てを銀金属に変換するのに十分な時間加熱され得る。例えば、焙煎ステップは、約2分~約12時間(時)にわたって実行され得る。
【0097】
一般に、温度が高いほど、必要とされる還元時間は短くなる。例えば、約400℃~約900℃の温度では、還元は約1分~約5分で達成され得る。含浸された支持体を熱処理するための他の時間が、当該技術分野において提案されている。例えば、米国特許第3,563,914号は、含浸された支持体を300秒未満加熱して乾燥させることを提案しているが、焙煎して触媒を還元することは提案しておらず、米国特許第3,702,259号は、含浸された支持体を100℃~375℃の温度で2時間~8時間加熱して、触媒中の銀塩を還元することを開示しており、米国特許第3,962,136号は、100℃~375℃の温度で4時間~8時間を提案しており、上記の特許は全て、参照により本明細書に組み込まれる。本発明では、広範囲の加熱時間を用いることができるが、銀塩の金属への実質的に完全な還元が達成されるように、還元時間が温度と相関することが重要である。この目的のために、連続的または段階的加熱プログラムを使用することが望ましい。触媒の短時間(4時間以下など)の連続的な焙煎が好ましく、これは本発明の触媒を作製する上で効果的に行うことができる。2回以上の焙煎ステップが使用される場合、焙煎条件が各焙煎ステップにおいて同じである必要はない。
【0098】
本発明の焙煎またはか焼ステップ、および/またはその他のステップのうちのいずれも、バッチまたは連続プロセスであり得る。含浸された多峰性支持体を加熱することを含む本発明のプロセスのステップは、任意の従来の加熱手段を使用して実行され得る。例えば、そのような熱処理に使用される装置は、還元をもたらすためのガスの静止または流動雰囲気を含み得る。
【0099】
エチレンのエチレンオキシドへの選択的酸化に有用な、高度に効率的な銀含有エポキシ化触媒は、上記の調製プロセスから得られる。触媒は、多孔性支持体上に堆積した少なくとも1つの触媒種を含み、少なくとも1つの触媒種は、銀であり、支持体上に堆積した銀は、最終触媒中で制御された平均粒径を有する。
【0100】
本発明のプロセスによって生成される高度に効率的な触媒の活性成分は、触媒種としてのAg、促進剤としてのレニウム、任意でレニウム共促進剤、および任意で他の金属を含み得る。
【0101】
加熱帯域で焙煎された後、銀含浸された触媒は、秤量されてもよく、含浸前の材料との比較での重量増加に基づいて、溶媒および前駆体材料の完全な除去を想定して、支持体上の銀の重量(銀の重量%)を計算することができる。
【0102】
所望の触媒種が銀を含む場合、一般に、支持体上に支持される銀の重量%濃度は、含浸溶液中の銀濃度、支持体の細孔容積、および使用される含浸ステップの数に依存し得る。一般に、含浸は、適切な量の銀を支持体上に提供することを可能にするのに十分であることが望ましい。例えば、支持体上に支持される銀の量は、触媒の重量に基づいて、一実施形態において約5重量%超、別の実施形態において約10重量%超、更に別の実施形態において約15重量%超、更に別の実施形態において約20重量%超、更に別の実施形態において約25重量%超、更に別の実施形態において約27重量%超、および更に別の実施形態において約30重量%超の量であり得る。支持体に関連して提供される銀の量は、通常、触媒の重量に基づいて、一実施形態において約70重量%未満および別の実施形態において約50重量%未満であり得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれるUS2014/0371470A1を参照されたい。
【0103】
他の実施形態において、支持体上の銀の重量%は、例えば、一実施形態において約5重量%~約70重量%、別の実施形態において約5重量%~約50重量%、更に別の実施形態において約15重量%~約40重量%、および更に形態において約15重量%~約35重量%であり得る。
【0104】
本発明のプロセスによって調製される、得られた触媒は、支持体の小さな細孔および大きな細孔の両方おいて、改善された全体的な触媒性能を提供するのに十分な所望のサイズのAg粒子を有する。最終触媒中の銀粒径は重要であるが、銀粒径は広範囲を含み得る。例えば、好適な銀粒径は、直径約10オングストローム~約10,000オングストロームの範囲内であり得る。典型的には、銀粒径は、一実施形態において、直径約100オングストローム超~約5,000オングストローム未満の範囲であり得る。銀および任意の促進剤(用いられる場合)が、アルミナ支持体内、その全体、および/またはその上に比較的均一に分散されていることが望ましい。本発明のプロセスによって、銀粒子は、支持体全体にわたって比較的均一な粒径、すなわち比較的狭い粒径分布も有する。
【0105】
支持体上に堆積したAg金属の粒径は、用いられる触媒調製手順の関数である。したがって、溶媒および/または錯化剤、Ag塩、熱処理条件、ならびに触媒支持体の特定の選択は、得られるAg粒子のサイズに様々な程度で影響を与え得る。重要なことは、本発明が、支持体が多峰性細孔径分布を有する場合にAg粒径を最適化するための追加の手段を提供することである。
【0106】
本発明のプロセスを用いて、触媒中に均質または均一な粒径のAgを含有するAg触媒を、多峰性支持体上に調製することができる。本発明の遠心分離され、支持されたAg触媒は、遠心分離ステップなしで多峰性支持体上に調製されたAg触媒、および/または触媒中に均質で均一なAg粒径を有しないAg触媒と比較して、銀の平均粒径を減少させた。
【0107】
一般に、本発明のプロセスによって調製された触媒は、一実施態様において約60~約300nm、別の実施態様において約60~約220nm、および更に別の実施態様において約90~約200nmの範囲内の触媒中のAgの粒径分布を含む。遠心分離ステップを使用する結果として、特定のサイズを超える、例えば、300nmを超えるAg粒子の形成を排除することができる。
【0108】
本発明に従う触媒は、1つ以上の促進剤または共促進剤を任意で含み得る。例えば、レニウムに加えて、銀系エポキシ化触媒用の既知の促進剤としては、モリブデン、タングステン、硫黄、リチウム、ナトリウム、マンガン、ルビジウム、およびセシウムが挙げられるが、これらに限定されない。レニウム、モリブデン、またはタングステンは、オキシアニオンとして、例えば、過レニウム酸塩、モリブデン酸塩、またはタングステン酸塩として、塩または酸形態で好適に提供され得る。促進剤の例、それらの特徴、および促進剤を触媒の一部として組み込むための方法は、米国特許第5,187,140号の特に11~15欄、同第6,511,938号、同第5,504,053号、同第5,102,848号、同第4,916,243号、同第4,908,343号、同第5,059,481号、同第4,761,394号、同第4,766,105号、同第4,808,738号、同第4,820,675号、および同第4,833,261号に記載されており、これら全ての特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
促進剤および/または共促進剤の濃度は、使用される場合、例えば、一実施形態において約0重量%~約1.0重量%、別の実施形態において約0.0005重量%~約1.0重量%、および更に別の実施形態において約0.005重量%~約0.5重量%で変動し得る。
【0110】
一般に、本発明のプロセスは、オレフィン化合物を酸化物生成物に酸化するために使用することができる。本発明の触媒が有利に使用される最終用途の一例は、エチレンのエチレンオキシドへのエポキシ化であり得る。そのようなエポキシ化反応における触媒の性能は、典型的には、エポキシ化反応中の触媒の選択性、活性、および安定性に基づいて評価される。「安定性」は、典型的には、特定のバッチの触媒が使用されている間、すなわち、より多くのエチレンオキシドが累積的に生成されるときに、選択性および/または活性がいかに変化するかを指す。本発明の触媒は、多峰性支持体材料上で達成され得る、Ag触媒種の充填量および触媒中のAgの均質で均一な粒径から生じる、選択性、活性、および/または安定性において利点をもたらすことが期待される。本発明のプロセスを使用し、本発明のプロセスにより触媒を生成することによっても得ることができる別の利点は、そのプロセスに関連する生成および/または装置の費用が減少され得ることである。
【0111】
例えば、銀系の支持された触媒を上記のように調製した後、触媒は、参照により本明細書に組み込まれる、US2014/0323295A1に開示されるように、エチレンをエポキシ化して、エチレンオキシドを形成するプロセスにおいて使用することができる。エチレンをエポキシ化する反応プロセスはまた、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,511,938号および同第5,057,481号、ならびにKirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,4thEd.(1994)Volume 9,pages 915-959にも記載されている。
【0112】
典型的には、エポキシ化反応は、エチレンおよび酸素を含む供給物を本発明のエポキシ化触媒と接触させることにより、気相で実行するのが望ましい。一般に、触媒は、固体材料として存在し、より具体的には、所望の反応器内で充填床として存在し得る。使用される触媒の量は、任意の適切な量であることができ、用途に依存するだろう。一実施形態において、エチレンのエチレンオキシドへの変換は、例えば、エチレンおよび酸素または酸素含有ガスを含有する供給流を触媒含有反応器に連続的に導入することによって、連続プロセスで実行され得る。得られたエチレンオキシドは、従来の方法を使用して反応生成物から分離され、回収される。
【0113】
本明細書に記載される触媒を使用して、エチレンをエチレンオキシドに変換するのに使用される反応器は、固定床管状反応器、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、および流動床反応器を含む、様々な反応器の種類のものであってもよく、これらの多種多様なものは、当業者にとって周知であり、本明細書で詳細に説明する必要はない。
【0114】
酸素は、空気などの酸素含有流として、または市販の酸素として、または酸素富化空気として反応に供給され得る。反応器供給流中の酸素濃度は、広範囲にわたって変動し得、実際には、一般に可燃性が、酸素濃度の制限要因である。一般に、反応器供給物中の酸素濃度は、少なくとも1モルパーセント、好ましくは少なくとも2モルパーセント、および更により好ましくは少なくとも4モルパーセントであるだろう。酸素濃度は一般に、15モルパーセント以下、好ましくは12モルパーセント以下、および更により好ましくは9モルパーセント以下であるだろう。
【0115】
反応器供給流中のエチレンの濃度は、広範囲にわたって変動し得る。しかしながら、それは、好ましくは少なくとも18モルパーセント、およびより好ましくは少なくとも20モルパーセントである。反応器供給流中のエチレンの濃度は、好ましくは50モルパーセント以下、およびより好ましくは40モルパーセント以下である。
【0116】
一般に、エポキシ化反応は、約180℃~約315℃の温度、およびおよそ大気圧~約35バールの範囲内の反応器圧力で実行される。ガス時空間速度(GHSV)は、約3,000h-1超であり得る。大規模触媒含有反応器内の滞留時間は一般に、約0.5秒~約2.5秒ほどである。上記のエポキシ化処理条件は一般に、所望の質量速度および生産性に応じて用いられる。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
オレフィンをエポキシ化するための銀含有触媒を調製するためのプロセスであって、
(a)第1のサイズ範囲の少なくとも第1のセットの支持孔および第2のサイズ範囲の少なくとも第2のセットの支持孔を有する、多孔性多峰性支持体を提供するステップであって、前記第2のセットの支持孔の前記第2のサイズ範囲が、前記第1のセットの支持孔の前記第1のサイズ範囲よりも小さい、ステップと、
(b)前記多孔性多峰性支持体の前記少なくとも第1のセットの支持孔および前記少なくとも第2のセットの支持孔に含浸させるための、第1の銀含有含浸溶液を提供するステップと、
(c)前記多孔性多峰性支持体にステップ(b)の前記第1の銀含有含浸溶液を1回以上含浸させて、第1の量の銀含有含浸溶液を有する前記多孔性多峰性支持体を提供するステップと、
(d)前記含浸された第1の銀含有含浸溶液の少なくとも一部分を前記多孔質多峰性支持体から選択的に除去して、第2の量の第1の銀含有含浸溶液が前記支持孔内に残っている前記多孔質多峰性支持体を提供するステップであって、前記含浸ステップ(c)の後に、前記多孔性多峰性支持体の前記少なくとも第1のセットの支持孔内に含有された、前記含浸された第1の銀含有含浸溶液の少なくとも一部分を選択的に除去するのに十分な時間、前記含浸された多孔性多峰性支持体を除去手段に1回以上供することによって、前記含浸された第1の銀含有含浸溶液の少なくとも一部分が、前記多孔性多峰性支持体の前記第1のセットの支持孔から除去される、ステップと、を含む、プロセス。
項2.
前記選択的除去ステップ(d)が、前記多孔性多峰性支持体の前記少なくとも第1のセットの支持孔内に含有される前記含浸された第1の銀含有含浸溶液の少なくとも20パーセントを除去する、項1に記載のプロセス。
項3.
ステップ(e)オレフィンをエポキシ化するのに有用な銀含有触媒を形成するのに十分な時間および温度で、ステップ(d)で生成された前記含浸された多孔性多峰性支持体を1回以上焙煎することを含む、項1に記載のプロセス。
項4.
前記選択的除去ステップ(d)が、前記含浸ステップ(c)の後に、前記含浸された多孔性多峰性支持体を遠心分離することによって1回以上実行され、前記除去手段が、1つ以上の遠心分離手段である、項1に記載のプロセス。
項5.
前記含浸ステップ(c)が、2回以上実行されるか、または前記除去ステップ(d)が、2回以上かつ2つ以上の異なる処理条件下で実行される、項1に記載のプロセス。
項6.
前記含浸ステップ(c)が、前記遠心分離ステップ(d)の前に2回以上実行される、項4に記載のプロセス。
項7.
前記遠心分離ステップ(d)が、前記焙煎ステップ(e)の前に2回以上実行されるか、または前記焙煎ステップ(e)が、2回以上実行される、項3に記載のプロセス。
項8.
前記支持体の前記第1のセットの細孔の前記第1の細孔サイズ範囲が、約3ミクロン~約200ミクロンであり、前記支持体の前記第2のセットの細孔の前記第2の細孔サイズ範囲が、約0.01ミクロン~約3ミクロンである、項1に記載のプロセス。
項9.
前記第1の銀含有含浸溶液が、1つ以上の促進剤を更に含む、項1に記載のプロセス。
項10.
前記支持体が、アルファ-アルミナを含む、項1に記載のプロセス。
項11.
前記多孔性多峰性支持体の総重量に基づいて、少なくとも10重量パーセントの銀充填量が、前記多孔性多峰性支持体に提供される、項1に記載のプロセス。
項12.
前記プロセスが、以下のステップ、
(f)前記多孔性多峰性支持体の前記少なくとも第1のセットの支持孔および前記少なくとも第2のセットの支持孔に含浸させるための、第2の銀含有含浸溶液を提供するステップと、
(g)前記多孔性多峰性支持体にステップ(f)の前記第2の銀含有含浸溶液の少なくとも一部分を1回以上含浸させるステップと、
(h)前記含浸ステップ(g)の後に、前記多孔性多峰性触媒支持体の前記少なくとも第1のセットの支持孔内に含有された、前記含浸された第2の銀含有含浸溶液の一部分を選択的に除去するのに十分な時間、前記含浸された多孔性多峰性支持体を除去手段に少なくとも1回供することによって、前記含浸された第2の銀含有含浸溶液を前記多孔性多峰性触媒支持体の前記少なくとも第1のセットの支持孔から1回以上選択的に除去するステップと、
(i)オレフィンをエポキシ化するのに有用な銀含有触媒を形成するのに十分な時間および温度で、ステップ(h)の前記含浸された多孔性多峰性支持体を1回以上焙煎するステップと、
(j)前記多孔性多峰性支持体の前記少なくとも第1のセットの支持孔および前記少なくとも第2のセットの支持孔に含浸させるための、第3の銀含有含浸溶液を提供するステップと、
(k)ステップ(i)の前記銀含有触媒にステップ(j)の前記第3の銀含有含浸溶液の少なくとも一部分を1回以上含浸させるステップと、
(l)前記含浸ステップ(k)の後に、前記含浸され焙煎された多孔性多峰性触媒支持体の前記少なくとも第1のセットの支持孔内に含有された、前記含浸された第3の銀含有含浸溶液の少なくとも一部分を選択的に除去するのに十分な時間、前記含浸され焙煎された多孔性多峰性支持体を除去手段に1回以上供することによって、前記含浸された第3の含浸溶液をステップ(i)の前記含浸され焙煎された多孔性多峰性触媒支持体の前記少なくとも第1のセットの支持孔から1回以上選択的に除去するステップと、
(m)オレフィンをエポキシ化するのに有用な銀含有触媒を形成するのに十分な時間および温度で、ステップ(l)の前記含浸された触媒支持部材を1回以上焙煎するステップと、を順に含む、項3に記載のプロセス。
項13.
項1に記載のプロセスに従って調製される、エチレンをエチレンオキシドに酸化するのに有用な銀含有エポキシ化触媒であって、前記触媒が、多孔性支持体上に堆積した少なくとも1つの触媒種を含み、前記少なくとも1つの触媒種が、銀である、銀含有エポキシ化触媒。
項14.
エチレンをエチレンオキシドにエポキシ化するためのプロセスであって、項1に記載のプロセスに従って生成されたエポキシ化触媒の存在下でエチレンと酸素とを接触させることを含む、プロセス。
項15.
1,2-ジオール、1,2-ジオールエーテル、1,2-カーボネート、またはアルカノールアミンを調製するためのプロセスであって、項13に記載のプロセスによって調製されたエチレンオキシドを、1,2-ジオール、1,2-ジオールエーテル、1,2-カーボネート、またはアルカノールアミンに変換することを含む、プロセス。
項16.
オレフィンをエポキシ化するための銀含有触媒を調製するためのプロセスであって、
(a)少なくとも2つの様式の細孔径分布を有する多孔性多峰性支持体を提供するステップと、
(b)前記多孔性多峰性支持体の前記細孔に含浸させるための、第1の銀含有含浸溶液を提供するステップと、
(c)前記多孔性多峰性支持体にステップ(b)の前記第1の銀含有含浸溶液を含浸させて、第1の量の第1の銀含有含浸溶液を有する前記多孔性多峰性支持体を提供するステップと、
(d)前記含浸された第1の銀含有含浸溶液を前記多孔性多峰性支持体から遠心分離して、第2の量の第1の銀含有含浸溶液が前記支持孔内に残っている前記多孔性多峰性支持体を提供するステップと、
(e)ステップ(d)の前記含浸された多孔性多峰性支持体を焙煎するステップと、
(f)前記多孔性多峰性支持体の前記細孔に含浸させるための、第2の銀含有含浸溶液を提供するステップと、
(g)前記多孔性多峰性支持体にステップ(f)の前記第2の銀含有含浸溶液を含浸させて、第1の量の第2の銀含有含浸溶液を有する前記多孔性多峰性支持体を提供するステップと、
(h)前記含浸された第2の銀含有含浸溶液をステップ(g)の前記多孔性多峰性支持体から遠心分離して、第2の量の第2の銀含有含浸溶液が前記支持孔内に残っている前記多孔性多峰性支持体を提供するステップと、
(i)オレフィンをエポキシ化するのに有用な銀含有触媒を形成するのに十分な時間および温度で、ステップ(h)の前記含浸された多孔性多峰性支持体を焙煎するステップと、を含み、
前記遠心分離ステップ(d)および(h)が、異なる遠心分離条件下で実行される、プロセス。
【実施例
【0117】
以下の実施例は、本発明をより詳細に更に例示するが、その範囲を限定するものとは解釈されないものとする。
【0118】
実施例1および比較例A
これらの実施例において、支持材料上のAgの平均粒径に対する遠心分離の影響を例示する。2つの非促進の銀系の支持された触媒(触媒1[比較例A]および触媒2[実施例1])を、Saint-Gobain NorProによって生成された二峰性アルファアルミナ含有支持体(ここでは「支持体A」)上で合成する。支持体Aの特性を、表Iに記載する。
【0119】
【表I】
【0120】
触媒1(比較例A)を、以下の一般的ステップ、
(1)ペレットを含浸用円筒形容器に入れ、機械式ポンプを使用して29インチHgで15分間真空を適用するステップと、
(2)25~30重量%のAgの標準濃度のシュウ酸塩/アミン混合物溶液を用いて、ステップ(1)のペレットを真空含浸して、含浸された触媒支持体を形成するステップであって、支持体の容積/溶液の容積の比が、2/3であり、含浸溶液が、シュウ酸(16重量%)、エチレンジアミン(16.3重量%)、モノエタノールアミン(6重量%)、および酸化銀(25~30重量%)を含有する、ステップと、
(3)含浸容器の底部にある弁を開けて、溶液を15分間排水することによって、過剰の含浸溶液を排水するステップと、
(4)ステップ(3)の含浸され排水されたペレットを、焙煎ベルト上、500℃で2.5~3分間焙煎して、125標準立方フィート/時の空気流で触媒を形成するステップとに従って、従来の合成アプローチを使用して合成する。
【0121】
触媒2(実施例1)は、排水ステップ(3)の後かつ焙煎ステップ(4)の前に遠心分離ステップを実行することを除いて、上記の触媒1を調製するのに使用したのと同じ手順を使用して合成する。遠心分離ステップは、182ミリメートル(mm)の半径を有するSorvall SH-3000ローターを備えた遠心分離機(RCF~204)を使用して、毎分1,000回転(rpm)で5分間実行する。過剰のAg含浸溶液が、触媒ペレットから分離されていることを確実にするために、含浸された支持体が遠心分離される容器は、底部に多孔性または吸収性材料を含有する。
【0122】
0.55cm/gの細孔容積を有するこの支持体は、0.57cm/gの含浸溶液を保持し、そのうち~0.24cm/gが遠心分離ステップによって除去される。
【0123】
遠心分離ステップを用いておよび用いずに多峰性支持体上に調製された触媒を表す、走査型電子顕微鏡(SEM)フラクチャー断面画像を、図5aおよび5bに示す。例えば、図5aは、比較例Aの触媒(遠心分離なし)のより大きな細孔様式のSEM顕微鏡写真を示す一方で、図5bは、実施例1の触媒(遠心分離あり)の同じ特徴を示す。
【0124】
遠心分離されていないAg含浸された支持材料(比較例A)および遠心分離されたAg含浸された支持材料(実施例1)のAg含有量はそれぞれ、17.5重量%および11.2重量%である。遠心分離された試料(触媒2)上のAgのより低いパーセンテージは、毛細管力が遠心分離誘導力よりも弱い、大きな細孔およびペレット外面溶液フィルムからのAg含浸溶液の選択的除去と一貫している。
【0125】
触媒1および触媒2のAg形態および粒径をSEMによって評価し、それぞれ図5aおよび5bに示す。遠心分離による大きな細孔からのAg含浸溶液の除去は、大きな細孔の表面上でのAgの凝集を排除し、銀の全体的な平均粒径を低減した。
【0126】
実施例2および比較例B
この実施例において、多峰性支持体上のAgの平均粒径に対する遠心分離の影響を例示する。2つの非促進の銀系の支持された触媒(触媒3[比較例B]および触媒4[実施例2])を、支持体B上に合成する。支持体Bは、Saint-Gobain NorProによって生成された支持体を含有する二峰性アルファアルミナである。支持体Bの特性を、表IIに記載する。
【0127】
【表II】
【0128】
触媒3は、以下の一般的ステップ、
(1)含浸用円筒形容器に支持体ペレットを入れ、機械式ポンプを使用して29インチHgで15分間真空を適用するステップと、
(2)25~30重量%のAgの標準濃度のシュウ酸塩/アミン混合物溶液を用いて、ステップ(1)のペレットを真空含浸して、含浸された触媒支持体を形成するステップであって、支持体の容積/溶液の容積の比が、2/3であり、含浸溶液が、シュウ酸(16重量%)、エチレンジアミン(16.3重量%)、モノエタノールアミン(6重量%)、および酸化銀(25~30重量%)を含有する、ステップと、
(3)含浸容器の底部にある弁を開け、溶液を15分間排水することによって、過剰の含浸溶液を排水するステップと、
(4)ステップ(3)の含浸され排水されたペレットを、500℃、2.5~3分間焙煎ベルト上で焙煎して、125scfhの空気流で触媒を形成するステップとに従って、従来の合成アプローチを使用して合成される。
【0129】
触媒4は、遠心分離ステップが第1の含浸ステップ(2)の後に実行されることを除いて、触媒3と同じ手順を用いて合成する。遠心分離は、Sorvall ST-16遠心分離機を使用して実行する。遠心分離機の内側のローターは、5,000rpmの定格であり、ローターは、16.2cmの半径を有する。遠心分離を5,000rpmで8分間実行する(RCF~4,536)。過剰のAg含浸溶液が触媒ペレットから分離されていることを確実にするために、含浸された支持体が遠心分離される容器は、底部に多孔性または吸収性材料を含有する。
【0130】
触媒3および4上のAgの分散を、COパルス化学吸着およびSEMによって評価する。
【0131】
CO化学吸着の前に、触媒3(比較例B)および触媒4(実施例2)を170℃で1時間ガス放出ステップに供し、その後、10容積パーセント(容積%)のO/He中、170℃で1時間前処理して、銀粒子上に表面下酸素層を作製する。その後、CO形成がもはや検出されなくなるまで、170℃でCOをパルスすることによって、表面下酸素を滴定する。各CO/COパルスは、反応器の下流に配置された質量分析計を使用して定量化する。
【0132】
触媒3および4のSEMフラクチャー断面画像を、図6aおよび6bに示す。図6aおよび6bから観察することができるように、遠心分離ステップは、大きな細孔領域の周りでAgの大きな凝集体の形成を排除する。
【0133】
触媒3および4の小細孔領域内の少なくとも250個の粒子の分布から計算された平均円相当径をそれぞれ、図7aおよび7bならびに表IIIに示す。触媒3および触媒4は、それぞれ約140nmおよび100nmの平均粒径を有する。
【0134】
CO化学吸着測定によって遠心分離された試料について得られた銀の平均粒径は、顕微鏡検査によって得られたものに大いに匹敵し、両方の技術は、遠心分離がAg粒径を低減する(所与の重量の適用されたAgについてより大きなAg表面積、およびより効率的な使用をもたらす)ことを実証している。これらの結果を、表IIIに要約する。遠心分離されていないAg含浸された支持材料および遠心分離されたAg含浸支持材料のAg含有量はそれぞれ、17.4重量%および10.2重量%である。
【0135】
【表III】
【0136】
実施例3および比較例C
この実施例において、多峰性支持体上のAgの平均粒径に対する遠心分離の影響を例示する。2つの非促進の銀系の支持された触媒である、触媒5(比較例C)および触媒6(実施例3)を、支持体B上に合成する。
【0137】
触媒5(比較例C)は、以下の一般的なステップ、
(1)含浸用円筒形容器に支持体ペレットを入れ、機械式ポンプを使用して29インチHgで15分間真空を適用するステップと、
(2)25~30重量%のAgの標準濃度のシュウ酸塩/アミン混合物溶液を用いて、ステップ(1)のペレットを真空含浸して、含浸された触媒支持体を形成するステップであって、支持体の容積/溶液の容積の比が、2/3であり、含浸溶液が、シュウ酸(16重量%)、エチレンジアミン(16.3重量%)、モノエタノールアミン(6重量%)、および酸化銀(25~30重量%)を含有する、ステップと、
(3)含浸容器の底部にある弁を開けて、溶液を15分間排水することによって、過剰の含浸溶液を排水するステップと、
(4)ステップ(3)の含浸され排出されたペレットを、500℃、2.5~3分間焙煎ベルト上で焙煎して、125scfhの空気流で触媒を形成するステップと、
(5)25重量%のAgの標準濃度のシュウ酸塩/アミン混合溶液を用いて、ステップ(4)のか焼されたペレットを真空含浸するステップであって、支持体の容積/溶液の容積の比が、2/3であり、含浸溶液が、シュウ酸(16重量%)、エチレンジアミン(16.3重量%)、モノエタノールアミン(6重量%)、および酸化銀(25~30重量%)を含有する、ステップと、
(6)含浸容器の底部にある弁を開けて、溶液を15分間排水することによって、過剰の含浸溶液を排水するステップと、
(7)ステップ(6)の含浸され排出されたペレットを、500℃、2.5~3分間焙煎ベルト上で焙煎して、125scfhの空気流で触媒を形成するステップとに従って、従来の合成を使用して合成される。
【0138】
触媒6(実施例3)は、第1の遠心分離ステップが第1の含浸ステップ(2)の後に実行され、第2の遠心分離ステップが第2の含浸ステップ(5)の後に実行されることを除いて、上記の触媒5と同じ手順を使用して合成する。遠心分離ステップの各々は、5,000rpmで8分間実行される(RCF~4,536)。
【0139】
触媒5および6上のAgの平均粒径は、COパルス化学吸着およびSEMによって評価される。
【0140】
CO化学吸着の前に、触媒を170℃で1時間ガス放出ステップに供し、その後、10容積%のO/He中170℃で1時間前処理して、銀の粒子上に表面下酸素層を作製する。その後、CO形成がもはや検出されなくなるまで、170℃でCOをパルスすることによって、表面下酸素を滴定する。各CO/COパルスは、反応器の下流に配置された質量分析計を用いて定量化する。
【0141】
触媒5および6中のより大きな細孔様式領域のSEMフラクチャー断面画像を、図8aおよび8bに示す。図8aおよび8bから観察することができるように、遠心分離ステップは、より大きな細孔領域におけるAgの分散を増加させ、Agの大きな凝集体の形成を排除する。
【0142】
図9aおよび9bは、より小さな直径の細孔様式のSEM画像を示す。少なくとも230個の粒子から得られた平均粒径は、遠心分離された触媒が、より小さな細孔上で銀の平均粒径を低減したことを実証する(触媒5および6について、それぞれ244nmおよび140nm、表IVを参照されたい)。
【0143】
【表IV】
【0144】
表IVは、比較例Dおよび実施例4について得られたAgの平均粒径、ならびにAg含有量を要約する。遠心分離されていないAg含浸された支持材料および遠心分離されたAg含浸された支持材料のAg含有量はそれぞれ、29.35重量%および14.79重量%である。触媒5はあまり均質ではなく、図8aに見られるような大きなAg凝集体(400nm)を含有する。両方の技術は、触媒6(実施例4)上のAg粒径が触媒5(比較例C)上よりも有意に小さいことを示唆している。
【0145】
実施例4および比較例D:触媒結果
この実施例において、触媒性能に対する遠心分離の影響を評価した。2つの非促進の銀系の支持された触媒である、触媒3(比較例B)および触媒4(実施例2)を、支持体B上に合成する。
【0146】
触媒試験は、Foundation for Scientific and Industrial Research at the Norwegian Institute of Technologyによって提供されているHigh Pressure Reactor Assembly Module(HPRAM)IIシステムで実行した。反応器供給ガスは、エチレン(35モル%)、エタン(0.29~0.58モル%)、酸素(7.2モル%)、CO(1.4モル%)、塩化エチル(1.3~5.0体積ppm)、およびメタン(10モル%)を含み、残りはヘリウムである。反応器温度を240℃に維持する一方で、反応器圧力は11バールに維持した。
【0147】
各実験中、反応器に不活性希釈剤を含まない100mgの触媒(30/50メッシュ)を充填する。反応器をヘリウム流下で加熱し、酸素を除く全ての供給ガスをそれに供給する。他の供給ガスを反応器に導入した約2~3分後に、酸素を導入する。目標ガスの毎時空間速度は、各触媒について10,000h-1であり、これは、粉末の実際の重量および触媒の全ペレットのバルク充填密度(0.761g/ml)に基づいて計算される。試験中、特定の量の塩化エチルを気相中に添加して、エポキシドに対する選択性を増加させる。このプロセスの触媒塩素化効果(Z)は、以下のように定義される。
【0148】
【数7】
【0149】
式中、EClは、塩化エチルのppmvでの濃度であり、CおよびCはそれぞれ、反応器供給流中のエタンおよびエチレンのモルパーセントでの濃度である。
【0150】
29時間(時)の活性化期間の後、Zは、各触媒の様々な値を通過し、反応器出口でのエチレンオキシド濃度を、各Z値で複数回測定する。活性化期間は、245℃で実行し、Zを4で4時間保持から6.0で24時間保持まで変化させて、その後、再び4で4時間保持に戻した。慣らし運転後、反応温度を240℃に減少させ、Zを4.0、6、および8.0に調節し、その各々を36時間維持した。その他の点では、反応温度、ガスの毎時空間速度、および供給ガス組成は、各実験のこの区分の間、一定に維持する。
【0151】
触媒3および触媒4の触媒性能を、8.0のZについて表Vに、および図10に要約する。触媒活性は、銀時間収率(STY)として表され、1秒当たりおよび銀1グラム当たりで生成されるEOのモル数として定義される。
【0152】
表Vに観察することができるように、触媒4上のAgの固有活性は、触媒3と比較して活性が1.7倍高く、これはエポキシ化性能を改善する上で遠心分離が有利であることを実証している。更に、これらの触媒の選択性は、非常に類似している。
【0153】
【表V】

図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10