(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法及び導電性高分子
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20220705BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20220705BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20220705BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20220705BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20220705BHJP
【FI】
H01G9/00 290H
H01G9/028 G
H01B1/12 F
C08L65/00
C08K3/01
(21)【出願番号】P 2019522210
(86)(22)【出願日】2018-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2018020297
(87)【国際公開番号】W WO2018221438
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2017108403
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 豪
(72)【発明者】
【氏名】坂井 寿和
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/111277(WO,A1)
【文献】特開2012-241068(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158752(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/028
H01B 1/12
C08L 65/00
C08K 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される構成単位のいずれか1つを少なくとも含む導電性高分子が非水溶媒に分散した分散液を、粒子の焼結体である電極物質及び該電極物質の表面を被覆する誘電体を含む多孔質体に含浸する導電性高分子導入工程と、
前記非水溶媒の少なくとも一部を除去し、前記多孔質体の表面を被覆する固体電解質を形成する溶媒除去工程と、
を有する、導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法
であって、
前記ドーパントの80質量%以上100質量%以下が、ドーパント1分子中のアニオン数が1以上10以下である、
導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法。
【化1】
(一般式(1)及び(2)中、R
1は、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、繰り返し単位が1以上50以下の炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい複素環基、又は置換基を有してもよい縮合環基を表す。A
‐は、ドーパント由来のアニオンである。nは、2以上300以下である。)
【請求項2】
前記多孔質体の平均の細孔径が、0.03μm以上5.0μm以下である、請求項1に記載の導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記電極物質がタンタル、ニオブ又はそれらの合金を含む、請求項1又は請求項2に記載の導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記ドーパントが、酸素、フッ素、及び窒素からなる群から選ばれる少なくとも一つの原子を含むものである、請求項1~請求項3のいずれかに記載の導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される構成単位のいずれか1つを少なくとも含み、
ドーパントが、スルホン酸誘導体、ホウ素酸誘導体、カルボン酸誘導体、及びリン酸誘導体からなる群から選ばれる1つを少なくとも含む、導電性高分子
であって、
前記ドーパントの80質量%以上100質量%以下が、ドーパント1分子中のアニオン数が1以上10以下である、導電性高分子。
【化2】
(一般式(1)及び(2)中、R
1は、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、繰り返し単位が1以上50以下の炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい複素環基、又は置換基を有してもよい縮合環基を表す。A
‐は、ドーパント由来のアニオンである。nは、2以上300以下である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法及び導電性高分子に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサは、パソコンや携帯電話等の様々な電子機器に使用される電子部品の一種であり、基本的に、2枚の対向する電極板の間に誘電体を挟んだ構造をしており、ここに直流電圧をかけると、誘電体の分極作用によって、それぞれの電極に電荷が蓄えられるものである。コンデンサには、多種多様なものがあるが、例えば、アルミ電解コンデンサ、積層セラミックコンデンサ、タンタル電解コンデンサ、フィルムコンデンサ等が知られている。近年では、電子機器の小型・軽量化、高機能化に伴い、小型で高容量のコンデンサが求められるようになってきており、コンデンサの性能の向上をはかる研究が盛んに行われている。
【0003】
コンデンサの電極に用いることができる導電性材料としては、導電性高分子を用いた従来技術が多数報告されている。導電性高分子は共役系構造を有し電子移動が可能な主骨格とこれら拡張された共役内での電子または正孔キャリアを主骨格に付与する為のドーパントの組み合わせにより構成される。導電性主骨格としては3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、ピロール、アニリンなどの重合体をはじめとして、π電子共役系が発達した化学構造を持つ骨格が一般的である。それに対応するドーパントとしては無機系ルイス酸や有機系プロトン酸など様々ある。中でも有機系プロトン酸としてスルホン酸化合物が一般的に用いられる。
【0004】
例えば、特許文献1では、ポリスチレンスルホン酸(PSS)を分散剤兼ドーパントとしてEDOTを重合した、粒子径が数十nm程度であるPEDOT/PSS水分散液を多孔質金属素子に含侵させて電解コンデンサを製造する方法が報告されている。
【0005】
また、特許文献2では、PSSをドーパントとして様々なEDOT誘導体を重合した導電性高分子を用いることで、イオン化ポテンシャルの調整が可能な導電性高分子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-508341
【文献】WO2016/111277
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、導電性高分子を多孔質内部に十分に充填することができなかったため、導電性高分子固体電解コンデンサの容量出現率が不十分であった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、容量出現率に優れる導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法、及び前記製造方法に好適な導電性高分子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される構成単位のいずれか1つを少なくとも含む導電性高分子が非水溶媒に分散した分散液を、粒子の焼結体である電極物質及び該電極物質の表面を被覆する誘電体を含む多孔質体に含浸する導電性高分子導入工程と、前記非水溶媒の少なくとも一部を除去し、前記多孔質体の表面を被覆する固体電解質を形成する溶媒除去工程と、を有する、導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法が提供される。
【0010】
【化1】
(一般式(1)及び(2)中、R
1は、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、繰り返し単位が1以上50以下の炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい複素環基、又は置換基を有してもよい縮合環基を表す。A
‐は、ドーパント由来のアニオンである。nは、2以上300以下である。)
【0011】
本発明者らは、上記の導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法を用いることで、多孔質体の細孔に導電性高分子を含む分散液が含浸しやすく、その結果、容量出現率に優れる導電性高分子固体電解コンデンサを製造できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
図1に示すように、本発明の導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法により得られる導電性高分子固体電解コンデンサ1は、多孔質体を形成している電極物質が陽極2として働き、多孔質体の表面を酸化処理することで得られた酸化薄膜が誘電体3として働き、多孔質体の細孔に充填された導電性高分子が陰極4として働くものである。
【0013】
なお、本願において容量出現率とは、下式の通りである。多孔質体の細孔を電解液(硫酸、リン酸等)で満たした状態で測定した静電容量(1)と多孔質体の細孔に固体電解質を導入した後に測定した実際の静電容量(2)の割合のことである。
容量出現率(%)=(2)/(1)×100
したがって、容量出現率が高いということは、多孔質体の細孔が多くの固体電解質(本発明においては導電性高分子)で満たされており、得られた固体電解コンデンサが電極の静電容量を十分に引き出していることを示している。
【0014】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、多孔質体の平均の細孔径が、0.03μm以上5.0μm以下である。
好ましくは、電極物質がタンタル、ニオブ又はそれらの合金を含む。
好ましくは、ドーパントが、酸素、フッ素、及び窒素からなる群から選ばれる少なくとも一つの原子を含む。
好ましくは、ドーパントの20質量%以上が、ドーパント1分子中のアニオン数が1以上10以下である。
【0015】
本開示の別の観点によれば、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表される構成単位のいずれか1つを少なくとも含み、ドーパントが、スルホン酸誘導体、ホウ素酸誘導体、カルボン酸誘導体、及びリン酸誘導体からなる群から選ばれる1つを少なくとも含む、導電性高分子が提供される。
【0016】
【化2】
(一般式(1)及び(2)中、R
1は、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、繰り返し単位が1以上50以下の炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい複素環基、又は置換基を有してもよい縮合環基を表す。A
‐は、ドーパント由来のアニオンである。nは、2以上300以下である。)
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の製造方法により得られる導電性高分子固体電解コンデンサの部分構造の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、容量出現率の評価で用いた多孔質体の細孔径を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0019】
本発明の導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法は、上述した導電性高分子導入工程と、溶媒除去工程とを有するものである。これらの各工程は、導電性高分子を十分に多孔質体の細孔に充填する観点から、2回以上、3回以上、4回以上等の複数回行われることが好ましい。
【0020】
1.導電性高分子導入工程
(1) 導電性高分子
本発明に用いる導電性高分子は、一般式(1)又は一般式(2)で表される構成単位のいずれか1つを少なくとも含むことによりπ共役系が発達しているため、導電性高分子の主骨格に好適である。
【0021】
前記一般式(1)又は一般式(2)中のR1は、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、繰り返し単位が1以上50以下の炭素数1~12のアルキレンオキサイド基、任意の位置に任意の置換基を有していても良いフェニル基、複素環基、又は縮合環基であり、導電性の観点からアルキル基、フェニル基が好ましく、中でも、2,6位に置換基を有するフェニル基がさらに好ましく用いることが出来る。
任意の置換基としては例えば、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、繰り返し単位が1以上50以下の炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、フェニル基、ナフチル基、ヒドロキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、アルデヒド基、アミノ基、炭素数3以上8以下のシクロアルキル基等があげられる。
【0022】
前記複素環基としては例えば、シロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、チエノチオフェン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、ジベンゾシロール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾチオフェン環やジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わった環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、アクリジン環、ベンゾキノリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ジベンゾカルバゾール環、インドロカルバゾール環、ジチエノベンゼン環、エポキシ環、アジリジン環、チイラン環、オキセタン環、アゼチジン環、チエタン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、オキサゾリジン環、テトラヒドロチオフェン環、スルホラン環、チアゾリジン環、ε-カプロラクトン環、ε-カプロラクタム環、ピペリジン環、ヘキサヒドロピリダジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピラン環、1,3-ジオキサン環、1,4-ジオキサン環、トリオキサン環、テトラヒドロチオピラン環、チオモルホリン環、チオモルホリン-1,1-ジオキシド環、ピラノース環、ジアザビシクロ[2,2,2]-オクタン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、オキサントレン環、チオキサンテン環、フェノキサチイン環から導出される1価の基等があげられる。
【0023】
前記縮合環としては例えば、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環等があげられる。
【0024】
任意の置換基としては例えば、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、繰り返し単位が1以上50以下の炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、フェニル基、ナフチル基、ヒドロキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、アルデヒド基、アミノ基、炭素数3以上8以下のシクロアルキル基等があげられる。
【0025】
ドーパントは、特に制限されないが、例えば酸素、フッ素、及び窒素からなる群から選ばれる少なくとも一つの原子を含むものが好ましく、スルホン酸誘導体、ホウ素酸誘導体、カルボン酸誘導体、及びリン酸誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一つであることがさらに好ましい。
【0026】
ドーパントとしては、具体的には、ポリスチレンスルホン酸、ポリ2-スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリ3-プロピルスルホ(メタ)アクリレート及びその共重合体等のポリアニオン、又はそのアルカリ金属塩、p-トルエンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルスルホン酸エステル、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル、テトラフルオロホウ酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロリン酸、トリフルオロメタンスルホンイミド等のモノアニオン、又はそのアルカリ金属塩等があげられる。
【0027】
ドーパントは、非水溶媒に対する分散性を向上させ、細孔に導入しやすくなる観点から、ドーパント1分子中のアニオン数が1以上10以下であるものを含んでいることが好ましく、1以上4以下であるものを含んでいることがより好ましく、さらに好ましくは1または2であるものを含んでいることがさらに好ましく、1であるものを含んでいることが最も好ましい。
【0028】
ドーパントは、1種単独で用いてもよく、2種以上のものを用いてもよい。
【0029】
ドーパントを2種以上用いる場合に、ドーパント1分子中のアニオン数が1以上10以下であるドーパント成分の含有割合は、例えば20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、80質量%、100質量%等であり、これらの数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、好ましくは20質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
【0030】
導電性高分子が有する構成単位(1)及び(2)の数としては特に制限されないが、好ましくは2以上300以下である。具体的には例えば、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200又は300であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
導電性高分子の導電率は、好ましくは0.01S/cm以上1000S/cm以下であり、例えば、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、0.8、1、2,5,10、50、100、500S/cm等であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0032】
導電性高分子を合成する方法としては、特に限定されないが、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)とアルデヒドに、ドーパントと酸化剤を加え不活性ガス雰囲気下の溶媒中で、加熱撹拌することで縮合重合および、または酸化重合することで得ることができる。また酸化剤の分解促進剤を加えても良い。
【0033】
前記酸化剤としては、特に限定されないが、重合反応が進行する酸化剤であればよく、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、水酸化鉄(III)、テトラフルオロホウ酸鉄(III)、ヘキサフルオロリン酸鉄(III)、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、テトラフルオロホウ酸銅(II)、ヘキサフルオロリン酸銅(II)およびオキソ二硫酸アンモニウム、有機過酸化物等があげられる。
【0034】
溶媒としては、特に限定されないが、ヘテロ環化合物とアルデヒド誘導体の縮合反応が進行する溶媒であればよく、ガンマブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、アセトニトリル、tert-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、ヘプタン、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル等のグリコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸系溶媒、等があげられる。導電性高分子の合成に用いる溶媒は、導電性高分子導入工程で用いる溶媒とは、同一であっても異なってもよく、非水溶媒でなくてもよいが、合成時に用いる溶媒は酸化剤の効率から非プロトン性溶媒の方が好ましい。
【0035】
本発明に係る導電性高分子中に含まれる構成単位(1)及び(2)の含有割合は、EDOTとアルデヒドの添加量の比によって調整することができる。EDOTとアルデヒドの添加量のモル比EDOT/アルデヒドは、例えば1/1、2/1、3/1、4/1、5/1等であり、これらの数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよいが、可溶性と導電性のバランスの観点から1/1~4/1の比が好ましく、1/1~2/1の比がより好ましい。
【0036】
(2) 非水溶媒
本発明に用いる非水溶媒は、導電性高分子を分散させ、得られた分散液を多孔質体に含浸するものである。
【0037】
非水溶媒としては、導電性高分子を分散することができるものであれば特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル等のグリコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸系溶媒、トルエン、酢酸エチル、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、メタノール、ベンジルアルコール等があげられるが、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、メタノール、ベンジルアルコール等が特に好ましい。複数の溶媒を組み合わせて用いても良い。
【0038】
(3) 分散液
分散液は、上記の導電性高分子を非水溶媒に分散させたものである。
【0039】
分散液のうち、溶媒成分を除いた不揮発分は、特に制限されないが、例えば1.0質量%以上20.0質量%以下である。具体的には、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、5.0、10.0、15.0、20.0質量%等であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0040】
分散液中の導電性高分子の平均粒子径は、多孔質体の細孔に導電性高分子を導入しやすい観点から小さいほうが好ましく、例えば、D10は、0.1nm、0.5nm、1nm、3nm、5nm、10nm、25nm、40nm、50nm等であり、これらの数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。D50は、0.1nm、0.5nm、1nm、3nm、5nm、10nm、20nm、40nm、55nm、80nm、100nm等であり、これらの数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。D90は、0.1nm、0.5nm、1nm、5nm、10nm、40nm、85nm、100nm、120nm等であり、これらの数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。D90とD10の比率であるD90/D10は、1、1.5、2、2.5、3.5、4、4.5、5等であり、これらの数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。
【0041】
(4) 多孔質体
本発明に用いる多孔質体は、粒子の焼結体である電極物質及び該電極物質の表面を被覆する誘電体を含むものである。
【0042】
電極物質としては、例えばアルミ、タンタル、ニオブ又それらの合金を含むものを用いることができるが、より細孔の小さな多孔質体を用いる観点から、タンタル、ニオブ又それらの合金を含むものが好ましい。
【0043】
電極物質の粒子の平均粒子径は、焼結した際に粒子同士の結合が弱くなることを防ぐ観点から0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がさらに好ましく、多孔質体の細孔を小さくする観点から10μm以下が好ましく、5μm以下がさらに好ましい。電極物質の粒子の平均粒子径は、例えば、0.01、0.03、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.8、1.0、1.5、2.0、3.0、5.0、10.0μm等であり、これらの数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。
【0044】
粒子の焼結体を作製する方法としては、特に制限されないが、粒子を一度ペレット上に圧縮して、その後に加熱して焼結させる方法等が挙げられ、例えば、日本電子機械工業会規格EIAJ RC-2361A「タンタル電解コンデンサ用タンタル焼結素子の試験方法」附属書の表1に規定された100kCV粉末の試験条件に準拠して、タンタル焼結素子を製造することができる
【0045】
多孔質体の平均の細孔径は、0.01μm以上10.0μm以下が好ましく、0.03μm以上5.0μm以下がより好ましく、例えば、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.8、1.0、1.5、2.0、3.0、5.0、10.0μm等であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0046】
コンデンサ用の電極物質の電気特性を評価する指標として、一般的にはCV値(μF・V/g)が用いられる。
ここで、コンデンサが蓄えることができる単位電圧当たりの電荷容量Cは、
C=(ε・S)/t
であり、S:電極面積(m2)、t:電極間距離(m)、ε:誘電率(F/m)で表わされる。そのため、電荷容量Cは、電極面積Sが大きいほど、電極間距離tが小さいほど、また、誘電率εが高いほど、大きくなる。したがって、CV値を高めるためには、電極物質を多孔質体にする等して電極面積Sを大きくするか、誘電体をより薄くする等して電極間距離tを小さくすることが有効である。
【0047】
電極物質のCV値は、例えば、50、100、150、200、250、300kCV/g等であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0048】
誘電体の膜厚は、CV値を高める観点から薄いことが好ましいが、絶縁破壊を防ぐ観点からは薄すぎないことが好ましい。誘電体の膜圧は、例えば、1、2、5、10、20、30、50、100nm等であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0049】
本発明で用いる誘電体は、電極物質の表面を酸化処理して得られる酸化薄膜である。電極物質の表面を酸化処理する方法としては、特に制限されないが、例えば、リン酸等の弱酸が含まれる水溶液中で、電圧をかけて陽極酸化処理する方法が挙げられる。
【0050】
分散液を多孔質体に含浸させる方法としては、浸漬させるのが一般的であるが、圧力を増加又は減少させたり、振動、超音波、又は熱を加える方法が挙げられる。
【0051】
2.溶媒除去工程
本発明に係る溶媒除去工程は、非水溶媒の少なくとも一部を除去し、前記多孔質体の表面を被覆する固体電解質を形成するものである。
【0052】
溶媒を除去する方法は特に制限されないが、乾燥させる方法や、加熱する方法、これらを組み合わせる方法等が挙げられる。加熱する方法としては、例えば、加熱室内に保持する方法や、ホットプレートに接触させる方法が挙げられる。加熱する温度としては、多孔質体の変性を防ぐ観点から、350℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、溶媒を速やかに除去する観点から、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
【実施例】
【0053】
[分散液の製造]
(製造例1)
1Lフラスコにプロピレンカーボネート300g、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)4.5g、PTS・H2O(パラトルエンスルホン酸1水和物)3.6gを加えて30min撹拌した。次いで、窒素パージ下、トリスパラトルエンスルホン酸鉄(III)(Fe(PTS)3)0.06g、2、4、6-トリメチルベンズアルデヒド2.4g、過酸化ベンゾイル(純度75質量%、日本油脂製)12gを加え40℃にて20時間撹拌した。次いで、イオン交換樹脂のレバチット(登録商標)MP62WS(ランクセス製)1gとレバチット(登録商標)モノプラスS108H(ランクセス製)1gを加えて5時間撹拌し、濾過した。得られた濾液を超音波ホモジナイザーにて処理し、不揮発分2.4質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Aを得た。
【0054】
(製造例2)
製造例1の2、4、6-トリメチルベンズアルデヒド2.4gを、2、6-ジクロロベンズアルデヒド2.8gに変更した以外は同じ手順で不揮発分2.6質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Bを得た。
【0055】
(製造例3)
製造例1の2、4、6-トリメチルベンズアルデヒド2.4gを、ブチルアルデヒド0.58gに変更した以外は同じ手順で不揮発分2.1質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Cを得た。
【0056】
(製造例4)
製造例1の2、4、6-トリメチルベンズアルデヒド2.4gを、ベンズアルデヒド0.85gに変更した以外は同じ手順で不揮発分2.1質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Dを得た。
【0057】
(製造例5)
1Lフラスコに、アセトニトリル200g、2、6-ジクロロベンズアルデヒド3.5gを加え、30min窒素パージを行い、80℃まで昇温した。次にテトラフルオロホウ酸銅水和物を6.2g加え、均質溶液になるまで撹拌し、次いでEDOT2.8gを添加し1時間撹拌した。さらにテトラフルオロホウ酸銅水和物を6.2g加え4時間撹拌した。フラスコにメタノール200gを加え固形物を十分に析出させたのち、ADVANTEC 4A濾紙(JIS P 3801)にて吸引濾過し、濾液が透明になるまで残渣をメタノールで洗浄した。その後、40℃で残渣を乾燥し、導電性高分子粉末Eを5.2g得た。
導電性高分子E0.13gにプロピレンカーボネート9.87gを加えて撹拌し、超音波ホモジナイザーにて分散し、不揮発分1.3質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Eを得た。
【0058】
(製造例6)
製造例2のPTS・H2Oを、トリフルオロメタンスルホンイミド2.2gに変更した以外は同じ手順で不揮発分2.3質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Fを得た。
【0059】
(製造例7)
製造例2のPTS・H2Oを、トリフルオロ酢酸1.8gに変更した以外は同じ手順で不揮発分2.3質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Gを得た。
【0060】
(製造例8)
製造例2のPTS・H2Oを、ヘキサフルオロリン酸55質量%水溶液4.2gに変更した以外は同じ手順で不揮発分2.3質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Hを得た。
【0061】
(製造例9)
製造例2のPTS・H2Oを、ポリスチレンスルホン酸(PSS)水溶液18質量%(アクゾノーベル製)10g及びPTS・H2O1.8gに変更した以外は同じ手順で不揮発分2.5質量%の導電性高分子のプロピレンカーボネート分散液Iを得た。
【0062】
(製造例10)
製造例1のプロピレンカーボネートをγ-ブチロラクトン(γ-BL)に変更した以外は同じ手順で不揮発分2.5質量%の導電性高分子のγ-ブチロラクトン分散液Jを得た。
【0063】
(製造例11)
製造例1で製造した液A82gに、メチルエチルケトンを20g加えて撹拌し、不揮発分2.0質量%の分散液Kを得た。
【0064】
(製造例12)
製造例1で製造した液A82gに、トルエンを20g加えて撹拌し、不揮発分2.0質量%の分散液Lを得た。
【0065】
(製造例13)
製造例1で製造した液A51.2gに、イソプロピルアルコール50gを加えて撹拌し、不揮発分1.3質量%の分散液Mを得た。
【0066】
(製造例14)
製造例1で製造した液A51.2gに、エチレングリコールを50g加えて撹拌し、不揮発分1.3質量%の分散液Nを得た。
【0067】
(製造例15)
AGFA製 Orgacon ICP1050(PEDOT/PSS)を超音波ホモジナイザーで処理し、全量に対してDMSO5wt%を加えて撹拌し、不揮発分1.2w%の分散液Oを得た。
【0068】
(製造例16)(PEDOT/(メタ)アクリル系高分子ドーパントの合成)
撹拌機、窒素ガス導入管、環流冷却器、投入口および温度計を備えた容量1Lの四つ口フラスコに、2-(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウムを78.0g、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを15.0g、2-エチルヘキシルメタクリレートを7.0g、イオン交換水を200g、イソプロピルアルコールを150g投入した。フラスコ内に窒素ガスを導入しながら、フラスコ内の混合物を70℃まで昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリルを0.2gフラスコ内に投入し、70℃を保ち、18時間重合反応を行ってポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の全量を、2Lのビーカーに移し、スターラーにより撹拌しながらイソプロピルアルコール600gを添加した。その後、撹拌を止めたところ沈殿物が得られた。それを減圧ろ過し、残渣を100℃で24時間乾燥した後、乳鉢で粉砕して高分子化合物の粉体を得た。
【0069】
撹拌機、窒素ガス導入管、環流冷却器、投入口および温度計を備えた容量1Lの四つ口フラスコに、得られた高分子化合物の粉体を1.38g、イオン交換水を500g、25%塩酸水溶液を1.46g投入し、60℃に加熱して3時間撹拌を行った後、25℃まで冷却した。フラスコ内の溶液は、均一透明なものであった。ついで、フラスコ内の溶液に3,4‐エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を1.42g投入し、攪拌して均一な乳化液とした後、80℃に昇温した。ついで、14.3gの硫酸鉄(III)n水和物(硫酸鉄(III)としての含有量60~80%)をイオン交換水30gに溶解したものを、80℃に保ったフラスコ内に2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃を保ちながら、48時間重合反応を続けた。
【0070】
重合反応終了後の反応液の全量をエバポレーターに移し、反応液の容量が50gになるまで減圧下加熱留去を行った後、反応液を減圧ろ過し、残渣を0.5Lビーカーに移し、イオン交換水50gを投入し、スターラーで30分撹拌して、再度減圧ろ過を行うことで水洗浄をおこなった。同様の水洗浄をさらに3回繰り返して行った後、残渣を0.5Lビーカーに移し、n-ヘキサン50gを添加し、30分撹拌混合し、減圧ろ過を行った。残渣を減圧下、70℃にて24時間乾燥して(メタ)共重合体をドーパントとする導電性ポリマーを得た。この導電性ポリマー1.0gをメタノール80g、ベンジルアルコール20gの混合溶媒に投入し、室温で撹拌、分散させて分散液Pを得た。
【0071】
[各種評価]
<粒子径の評価>
粒子径分布測定装置(Nanotrac UPA-UT151、日機装製)を用いて、光動的散乱法により分散液A~P中の体積平均粒子径、D10、D50、及びD90を測定した。その結果を表1に示す。
<不揮発分の評価>
分散液A~Pを、ブリキシャーレに一定量測りとり150℃で3時間加熱し、各残存量の重量を測ることで、分散液A~P注の各不揮発分の割合を算出した。結果を表1に示す。
【0072】
<導電性の評価>
分散液A~Pをそれぞれガラス基板に2cm×2cmの大きさで塗布し、その後150℃で乾燥して5μmの薄膜を形成した。その後、抵抗率計(ロレスタGP,三菱ケミカルアナリテック製)を用いて、各薄膜の導電率を測定した。その結果を表1に示す。
【0073】
<細孔径の評価>
フッ化タンタル酸カリウムを希釈塩に添加し、前記希釈塩中のフッ化タンタル酸カリウムにナトリウムを作用させて製造した100kCVのタンタル粉末を、密度4.5g/cm
3のペレットに成形し、その後真空度10
-3Paで1200℃以上の温度で焼成して焼結体を作成した。その後、細孔分布測定装置(マイクロメリテックオートポアIII9400,島津製作所製)を用いて、水銀圧入法による細孔径を測定した。その結果を表1に示す。
なお、実施例1の詳細な結果を
図2に示す。実施例1の細孔は0.1~2μmの間で分布しており、平均細孔径は0.4μmであった。
【0074】
<容量出現率の評価>
100kCV/gのタンタル粉末を、密度4.5g/cm3のペレットに整形し、その後真空度10-3Paで1200℃以上の温度で焼成して焼結体を作成した。その後、リン酸電解質溶液中において20Vで処理することによって誘電体である酸化被膜を形成し、誘電体を含む多孔質体を得た。このタンタルペレットを41%硫酸に浸漬してLCRメーター(4263B,アジレント製)によって静電容量を測定した。(1)
【0075】
この多孔質体を、分散液A~Pに浸漬して導電性高分子含浸させ、その後150℃で10分間にて乾燥することで溶媒を除去した。この分散液A~P浸漬させる工程と乾燥する工程をそれぞれ4回繰り返し、その後、銀ペーストを塗布することで実施例1~15及び比較例1~3の銀コーティングした導電性高分子固体電解コンデンサを得た。
また、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)28g、PTSFe・nH2O(パラトルエンスルホン酸鉄水和物)67g、ブタノール100gを10℃以下に冷却しながら混合した。この溶液に誘電体を含む多孔質体を浸漬して含浸させ100℃にて20分間反応させると同時に溶媒を除去した。この浸漬して反応させる工程をそれぞれ4回繰り返し、その後、銀ペーストを塗布することで比較例4の銀コーティングした導電性高分子固体電解コンデンサを得た。
これらの導電性高分子固体電解コンデンサの端子に接続を行った後、LCRメーターによって静電容量を測定した。(2)
なお、容量出現率は、下記式によって算出した。その結果を表1に示す。
容量出現率(%)=(2)/(1)×100
【0076】
【表1】
PC:プロピレンカーボネート
γ-BL:γ-ブチロラクトン
MEK:メチルエチルケトン
To:トルエン
IPA:イソプロピルアルコール
EG:エチレングリコール
DMSO:ジメチルスルホキシド
MeOH:メタノール
BzOH:ベンジルアルコール
BF4:四フッ化ホウ素
PTS:パラトルエンスルホン酸
PSS:ポリスチレンスルホン酸
【0077】
<考察>
実施例1~15に示されるように、本発明の導電性高分子固体電解コンデンサの製造方法により、容量出現率が90%以上と優れる導電性高分子固体電解コンデンサを得ることができた。それに対して、異なる導電性高分子溶媒を用いた比較例1~3、及び3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)単分子をコンデンサ内部で反応させた比較例4では、本願の実施例1~15と比較して、容量出現率に劣る結果となった。
【符号の説明】
【0078】
1 導電性高分子固体電解コンデンサ
2 陽極
3 誘電体
4 陰極