(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリエステルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/85 20060101AFI20220705BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C08G63/85
C08G63/183
(21)【出願番号】P 2019535342
(86)(22)【出願日】2017-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2017081632
(87)【国際公開番号】W WO2018121962
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-10-16
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】クマール,プラシャント
(72)【発明者】
【氏名】アリデデオグル,ヒュスニュ アルプ
(72)【発明者】
【氏名】アライヴ,ケシャヴァラジャ
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-256643(JP,A)
【文献】国際公開第2008/056801(WO,A1)
【文献】特開昭49-057092(JP,A)
【文献】特開2004-137454(JP,A)
【文献】特開2004-035742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸を含む反応混合物を用いて熱可塑性ポリエステルを製造する方法であって、前記ジカルボン酸は、100μm以上の平均粒径を有する粒子の形態で前記方法に導入され、
前記反応混合物は、該反応混合物中に存在するジカルボン酸の総重量に対して95.0重量%以上の、テレフタル酸、フランジカルボン酸またはそれらの組合せから選択されるジカルボン酸を含み、かつ前記反応混合物は、1,4-ブタンジオールであるジヒドロキシアルカンをさらに含み、ある量のテトラ(C1~C8)チタネートが触媒として使用される、方法。
【請求項2】
前記ジカルボン酸粒子は200μm以下の平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応混合物は100~300ppmの前記触媒を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒はチタン酸テトライソプロピルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応混合物は、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸またはそれらの組合せから選択される脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリエステルは、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールであるジヒドロキシアルカンとに由来するポリマー単位を95.0重量%以上含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
a.ある量の前記ジカルボン酸粒子を反応容器中に導入する工程と、
b.ある量の、1,4-ブタンジオールであるジヒドロキシアルカンを前記反応容器中に導入する工程と、
c.ポリエステルの製造のためのある量の触媒を前記反応容器中に導入する工程と
をこの順序で含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリエステルは、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとに由来する単位を95重量%以上含むポリ(ブチレンテレフタレート)である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリエステルを製造する方法に関する。特に、本発明は、ジカルボン酸を用いて熱可塑性ポリエステルを製造する方法に関する。特に、本発明は、熱可塑性ポリエステルを製造する方法であって、熱可塑性ポリエステルは、ポリ(ブチレンテレフタレート)であり、この熱可塑性樹脂は、モノマーとしてテレフタル酸を用いて製造される、方法に関する。特に、本発明は、重合時間の減少を目的とする。さらに、それは、減少した重合時間において、固有粘度およびカルボン酸末端基含量の所望のバランスを有する熱可塑性ポリエステルの製造を可能にする。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステルは、広範囲の製品に応用されているポリマー製品である。例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)およびポリ(ブチレンテレフタレート)を含む特定の種類の熱可塑性ポリエステルは、射出成形時の良好な寸法安定性、良好な耐熱性および良好な耐摩耗性を含むが、これらに限定されない、それらを多くの物品の製造に特に有用にする複数の望ましい特性を有する。幅広く応用されている熱可塑性ポリエステルのさらなる例としては、ポリエーテルエステルブロックコポリマーエラストマーが挙げられる。
【0003】
このような熱可塑性ポリエステルの製造は、一般的に、重縮合プロセスを介して行われる。このような重縮合プロセスでは、反応混合物は、ジヒドロキシアルカンおよびジカルボン酸を含み得る。特に、熱可塑性ポリエステルは、ジヒドロキシアルカンおよび芳香族ジカルボン酸を含む反応混合物を用いて製造され得る。このような熱可塑性ポリエステルは、例えば、射出成形による成形品の製造、例えば織物用途のための繊維の製造およびブロー成形による中空形状の製造を含む、それらを多様な用途に特に好適にする機械的特性、熱的特性および加工特性のバランスを有し得る。
【0004】
このような熱可塑性ポリエステルの製造に使用される好適なジカルボン酸は、一般的に、200℃を超える溶融温度などの比較的高い溶融温度を有する。このため、このようなジカルボン酸は、一般的に、粉末状固体形態のこのような熱可塑性ポリエステルを製造する方法に導入される。
【0005】
様々な商業的に魅力的な熱可塑性ポリエステルの製造に使用される特定のジカルボン酸は、テレフタル酸である。テレフタル酸は、世界規模で汎用化学製品として製造され、熱可塑性ポリエステルの製造に広く使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱可塑性ポリエステルの商業生産において、方法の特定の関連する側面は、重合時間である。重合プラントの利用を向上させるために、できるだけ短い時間で熱可塑性ポリエステルを製造できることが望ましい。このような重合時間の減少は、製造される製品の量当たりで消費されるユーティリティの減少および所与の時間での重合プラントの全生産能力の両方に利益を有する。例えば、重合時間の減少は、プラントの年間生産能力、したがって生産効率を向上させ得る。生産効率の向上は、商業規模での熱可塑性ポリエステルの製造方法における重要な原動力である。したがって、熱可塑性ポリエステルの重合時間を減少させることが引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これは、本発明に係る方法によって提供される。本発明は、200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸を含む反応混合物を用いて熱可塑性ポリエステルを製造する方法であって、ジカルボン酸は、100μm以上の平均粒径を有する粒子の形態で方法に導入される、方法に関する。
【0008】
このような方法は、重合時間をもたらす。さらに、それは、減少した重合時間において、固有粘度およびカルボン酸末端基含量の所望のバランスを有する熱可塑性ポリエステルの製造を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
さらに特定的に、本発明に係る方法において、ジカルボン酸粒子の平均粒径は、110μm以上、より好ましくは120μm以上、さらにより好ましくは130μm以上、さらに一層好ましくは140μm以上であることが好ましい。
【0010】
ジカルボン酸粒子は、300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらにより好ましくは200μm以下の平均粒径を有することがさらに好ましい。
【0011】
特に、ジカルボン酸粒子は、100μm以上かつ300μm以下、より好ましくは100μm以上かつ250μm以下、さらにより好ましくは100μm以上かつ200μm以下、例えば110μm以上かつ200μm以下、または120μm以上かつ200μm以下、または130μm以上かつ200μm以下、または140μm以上かつ200μm以下の平均粒径を有することが好ましい。
【0012】
このような平均粒径を有するジカルボン酸粒子の使用は、ジカルボン酸が、熱可塑性ポリエステルを製造する方法により迅速にかつより確実に運ばれ得るためにさらに有益である。特に、ジカルボン酸粒子が粉末としてまたはスラリー中で管システムを介して方法に運ばれる場合、このようなジカルボン酸粒子の使用は、材料の蓄積および/または搬送システムの閉塞の可能性を減少させる。
【0013】
ジカルボン酸粒子の粒径は、ISO 9276-2:2014に準拠してD50粒径として測定され得る。
【0014】
ジカルボン酸の溶融温度は、例えば、ASTM E324(2016)に準拠して測定され得る。
【0015】
本発明は、その実施形態の1つにおいて、以下の工程:
a.ある量のジカルボン酸粒子を反応容器中に導入する工程と、
b.ある量のジヒドロキシアルカンを反応容器中に導入する工程と、
c.ポリエステルの製造のためのある量の触媒を反応容器中に導入する工程と
をこの順序で含む方法にも関する。
【0016】
好ましくは、本発明は、その実施形態の1つにおいて、以下の工程:
a.ある量のジカルボン酸粒子を反応容器中に導入する工程と、
b.ある量の、1,4-ブタンジオールであるジヒドロキシアルカンを反応容器中に導入する工程と、
c.ポリエステルの製造のためのある量の触媒を反応容器中に導入する工程と
をこの順序で含む方法にも関する。
【0017】
本発明に係る方法に使用される反応混合物は、ジヒドロキシアルカンを含み得る。ジヒドロキシアルカンは、α,ω-ジヒドロキシアルカンであり得る。ジヒドロキシアルカンは、例えば、2~10個の炭素原子を含み得る。ジヒドロキシアルカンは、直鎖状ジヒドロキシアルカンであり得る。本発明に係る方法に使用され得るジヒドロキシアルカンは、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ヘキシレングリコール、イソソルビド、テトラメチルシクロブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールまたはそれらの組合せから選択される1つまたは複数であり得る。好ましくは、ジヒドロキシアルカンは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールまたはそれらの組合せから選択される。さらにより好ましくは、ジヒドロキシアルカンは、エチレングリコールまたは1,4-ブタンジオールである。
【0018】
熱可塑性ポリエステルは、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。熱可塑性ポリエステルがホモポリマーである場合、本発明に係る方法に使用されるジヒドロキシアルカンは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオールまたは1,4-ブタンジオールから選択される。熱可塑性ポリエステルがコポリマーである場合、ジヒドロキシアルカンは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールまたはそれらの組合せから選択される。
【0019】
好ましくは、ジヒドロキシアルカンは、1,4-ブタンジオールである。
【0020】
本発明に係る方法に使用される200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、フランジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸またはそれらの組合せから選択され得る。200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸であり得る。200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、例えば、フランジカルボン酸であり得る。
【0021】
200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、環状部分を含むことが好ましい。
【0022】
本発明の一実施形態において、反応混合物は、反応混合物中に存在するジカルボン酸の総重量に対して95.0重量%以上、好ましくは98.0重量%以上のテレフタル酸もしくはフランジカルボン酸またはそれらの組合せを含む。別の実施形態において、反応混合物中に存在するジカルボン酸は、テレフタル酸もしくはフランジカルボン酸またはそれらの組合せからなる。特定の実施形態において、反応混合物中に存在するジカルボン酸は、テレフタル酸からなる。
【0023】
本発明の特定のさらなる実施形態において、反応混合物は、脂肪族ジカルボン酸をさらに含み得る。例えば、脂肪族ジカルボン酸は、2~10個の炭素原子を含むジカルボン酸であり得る。例えば、脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸またはそれらの組合せから選択され得る。例えば、脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸であり得る。
【0024】
反応混合物は、例えば、ジカルボン酸の総重量に対して50.0重量%以下、好ましくは30.0重量%以下、より好ましくは20.0重量%以下、さらにより好ましくは10.0重量%以下の、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸またはそれらの組合せから選択される脂肪族ジカルボン酸を含み得る。例えば、反応混合物は、例えば、ジカルボン酸の総重量に対して50.0重量%以下、好ましくは30.0重量%以下、より好ましくは20.0重量%以下、さらにより好ましくは10.0重量%以下のアジピン酸を含み得る。
【0025】
熱可塑性ポリエステルは、95.0重量%以上の、テレフタル酸およびジヒドロキシアルカンに由来するポリマー単位を含むことが好ましい。より好ましくは、熱可塑性ポリエステルは、98.0重量%以上の、テレフタル酸およびジヒドロキシアルカンに由来するポリマー単位を含む。
【0026】
反応混合物は、ジカルボン酸の総重量に対して95.0重量%以上のテレフタル酸およびジヒドロキシアルカンの総重量に対して95.0重量%以上の1,4-ブタンジオールを含むことが好ましい。あるいは、反応混合物は、ジカルボン酸の総重量に対して95.0重量%以上のテレフタル酸およびジヒドロキシアルカンとして1,4-ブタンジオールのみを含み得る。
【0027】
本発明に係る熱可塑性ポリエステルを製造する方法は、例えば、
(a)ジカルボン酸およびジヒドロキシアルカンを含む反応混合物をエステル化反応器中で反応させて、第1のポリエステルオリゴマーを生成する工程と、
(b)(a)から得られる第1のポリエステルオリゴマーを1つまたは複数の連続撹拌槽反応器などの1つまたは複数の反応器中での第1の重縮合に供して、第2のポリエステルオリゴマーを得る工程と、
(c)(b)から得られる第2のポリエステルオリゴマーを低圧反応器中でのさらなる重縮合に供して、熱可塑性ポリエステルを得る工程と
を含む方法であり得る。
【0028】
本発明に関して、低圧反応器中の圧力は、例えば、0.05mbar以上かつ5.0mbar以下であり得る。
【0029】
ポリエステルオリゴマーは、例えば、ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーであり得る。あるいは、ポリエステルオリゴマーは、ポリ(エチレンテレフタレート)オリゴマーであり得る。あるいは、ポリエステルオリゴマーは、ポリ(トリメチレンテレフタレート)オリゴマーであり得る。
【0030】
ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーは、例えば、テレフタル酸および1,4-ブタンジオールを含む反応混合物の反応から得られる。任意選択的に、反応混合物は、1つまたは複数のさらなるジカルボン酸を含み得る。好適なさらなるジカルボン酸は、例えば、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から選択され得る。あるいは、好適なさらなるジカルボン酸は、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-ブタンジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、1,8-オクタンジカルボン酸および1,10-デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸から選択され得る。反応生成物は、エタンジオールおよびプロパンジオールなどの1つまたは複数のさらなるジヒドロキシアルカンも含み得る。
【0031】
例えば、反応混合物は、ジカルボン酸としてテレフタル酸のみおよびジヒドロキシアルカンとして1,4-ブタンジオールのみを含み得る。このような場合、この方法から得られるポリ(ブチレンテレフタレート)は、ホモ-ポリ(ブチレンテレフタレート)である。他の実施形態において、反応混合物は、ジカルボン酸の総重量に対して90.0重量%以上、あるいは95.0重量%以上、あるいは98.0重量%以上のテレフタル酸を含み得る。さらなる実施形態において、反応混合物は、ジヒドロキシアルカンの総重量に対して90.0重量%以上、あるいは95.0重量%以上、あるいは98.0重量%以上の1-4-ブタンジオールを含み得る。
【0032】
ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーは、ポリマーの鎖中において、ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーの総重量に対して90.0重量%以上の、テレフタル酸および/または1,4-ブタンジオールに由来する単位、好ましくは95.0重量%以上、より好ましくは98.0重量%以上を含むことが好ましい。
【0033】
ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーは、好ましくは、ポリマーの鎖中において、ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーの総重量に対して90.0重量%以上、好ましくは95.0重量%以上、より好ましくは98.0重量%以上の、式(I)および/または式(II):
【化1】
による単位を含む。
【0034】
PBT樹脂を調製するのに使用されるポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーは、例えば、0.10~0.13dl/gの固有粘度(IV)および80mmol/kg~110mmol/kgのCEGを有し得る。固有粘度は、例えば、ASTM D2857-95(2007)に準拠して測定され得る。
【0035】
ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーは、触媒の存在下でテレフタル酸を1,4-ブタンジオール(BDO)と反応させることによって調製され得る。様々なグレードのテレフタル酸が使用され得るが、精製テレフタル酸(PTA)が好ましい。精製PTAは、多くの供給業者から市販されており、典型的に、従来の技術を用いて測定した際に10パーセント以下の不純物を含有する。典型的に、1,4-ブタンジオール(BDO)およびPTAは、チタン酸テトライソプロピル(TPT)などのテトラ(C1~C8アルキル)チタネートなどの触媒の存在下において6:1~2:1のモル比で組み合わされる。0.10~0.13dl/gのIVおよび80mmol/kg~110mmol/kgのCEGを達成するために2:1のBDO対PTA比が用いられる。約0.13~0.17dl/gのIVおよび90~180mmol/kgのCEGを達成するために3:1のBDO対PTA比が用いられる。あるいは、0.25~0.43dl/gのIVおよび20mmol/kgより低いCEGを達成するために4:1のBDO対PTA比が用いられる。BDO対PTAのモル比は、得られるPBTオリゴマーの所望のIVおよびCEGに応じて変化する。
【0036】
一実施形態において、0.1~300ppmのテトラ(C1~C8アルキル)チタネート触媒が使用される。一実施形態において、0.1~100ppmのテトラ(C1~C8アルキル)チタネート触媒が使用される。
【0037】
一実施形態において、0.1~200ppmのTPT触媒が使用される。一実施形態において、0.1~100ppmのTPT触媒が使用される。
【0038】
ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーを作製するために、成分BDO、PTAおよびTPTが組み合わされ、約160℃~180℃の温度に加熱される。反応混合物の温度が約160℃~180℃の範囲であるとき、温度は、約220℃~265℃に徐々に上昇される。エステル交換が約230℃~260℃で起こり、目視検査に基づいて透明点に達したときに完了している。本明細書において使用される際、「透明点」は、反応媒体が均一な溶融物になったときに起こる。透明点に達した後、圧力は、任意選択的に、約6.6~101kPaに調整され、温度は、得られるポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーの所望のIVおよびCEG値を達成するのに十分な時間にわたっておよそ約230℃~260℃に維持される。反応の完了後、圧力が大気圧に戻され、ポリマーが分析される。触媒を含有する得られるポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーは、固体になるまで冷却され、次にフレーク化、粉末化またはペレット化され得、ポリ(ブチレンテレフタレート)樹脂を作製するのに使用される。
【0039】
一実施形態において、ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーは、0.1~300ppmのテトラ(C1~C8アルキル)チタネート触媒を含有する。一実施形態において、ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーは、0.1~100ppmのテトラ(C1~C8アルキル)チタネート触媒を含有する。
【0040】
本発明に係る方法は、低圧反応器中での重縮合によってポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーから出発するポリ(ブチレンテレフタレート)の製造を含む。このような低圧反応器は、連続反応器であることが好ましく、連続反応器において、ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーは、少なくとも1つの入口ポートを介して供給され、得られたポリ(ブチレンテレフタレート)は、少なくとも1つの出口ポートを介して除去される。このような低圧反応器において、ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーは、例えば、所望の範囲まで進む重縮合反応器の特定の表面積を生じるように混合に供され得る。このような表面積は、十分な脱気を確実にするのにも有益であり得る。脱気によって除去される揮発性物質は、反応混合物の材料の未反応画分および形成された副生成物を含み得る。反応混合物の材料のこのような未反応画分は、例えば、1,4-ブタンジオールなどの未反応のジヒドロキシアルカンを含み得る。このような形成された副生成物は、例えば、水およびテトラヒドロフラン(THF)を含み得る。この方法は、特定の実施形態において、反応混合物の材料の未反応画分と副生成物とを分離し、反応混合物の材料の未反応画分の特定の部分を、ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマーを製造する方法、例えばエステル化方法などに送り戻すための構成を含み得る。
【0041】
低圧反応器中での所望の混合を達成する様々な方法がある。重縮合反応の進行とともに、低圧反応器中のポリ(ブチレンテレフタレート)の粘度が増加する。そのため、低圧反応器は、好ましくは、バッフルなどの混合手段を備えている。このような混合バッフルは、好ましくは、低圧反応器の内容物を混合するように特定のトルクを与える。混合バッフルは、1つまたは複数の軸に取り付けられて撹拌機を形成し得る。好ましくは、低圧反応器は、二軸環状反応器(dual-shafts ring reactor)である。
【0042】
好適な低圧反応器の例が米国特許出願公開第2008-0064834A1号明細書に記載されている。本発明に係る方法におけるこのような低圧反応器の使用は、本方法から得られるポリ(ブチレンテレフタレート)の均一でありかつ予測可能な材料品質に寄与し得る。
【0043】
特に望ましい実施形態において、本発明は、200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸を含む反応混合物を用いて熱可塑性ポリエステルを製造する方法であって、ジカルボン酸は、100μm以上の平均粒径を有する粒子の形態で方法に導入され、
本発明に係る方法に使用される200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、イソフタル酸、テレフタル酸、フランジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸またはそれらの組合せから選択され、
反応混合物は、反応混合物中に存在するジカルボン酸の総重量に対して95.0重量%以上、好ましくは98.0重量%以上の、イソフタル酸、テレフタル酸、フランジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸またはそれらの組合せを含み、
反応混合物は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールまたはそれらの組合せから選択されるジヒドロキシアルカンをさらに含む、方法に関する。
【0044】
さらなる特に望ましい実施形態において、本発明は、200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸を含む反応混合物を用いて熱可塑性ポリエステルを製造する方法であって、ジカルボン酸は、100μm以上かつ200μm以下の平均粒径を有する粒子の形態で方法に導入され、
本発明に係る方法に使用される200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、イソフタル酸、テレフタル酸、フランジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸またはそれらの組合せから選択され、
反応混合物は、反応混合物中に存在するジカルボン酸の総重量に対して95.0重量%以上、好ましくは98.0重量%以上の、イソフタル酸、テレフタル酸、フランジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸またはそれらの組合せを含み、
反応混合物は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールまたはそれらの組合せから選択されるジヒドロキシアルカンをさらに含む、方法に関する。
【0045】
本発明は、一実施形態において、200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸を含む反応混合物を用いて熱可塑性ポリエステルを製造する方法であって、ジカルボン酸は、100μm以上かつ200μm以下の平均粒径を有する粒子の形態で方法に導入され、
本発明に係る方法に使用される200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、イソフタル酸、テレフタル酸、フランジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸またはそれらの組合せから選択され、
反応混合物は、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸またはそれらの組合せから選択される脂肪族ジカルボン酸をさらに含み、
反応混合物は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールまたはそれらの組合せから選択されるジヒドロキシアルカンをさらに含む、方法に関することも好ましい。
【0046】
さらに、本発明は、一実施形態において、200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸を含む反応混合物を用いて熱可塑性ポリエステルを製造する方法であって、ジカルボン酸は、100μm以上かつ200μm以下の平均粒径を有する粒子の形態で方法に導入され、
本発明に係る方法に使用される200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、イソフタル酸、テレフタル酸、フランジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸またはそれらの組合せから選択され、
反応混合物は、ジカルボン酸の総重量に対して20重量%以下の、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸またはそれらの組合せから選択される脂肪族ジカルボン酸をさらに含み、
反応混合物は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールまたはそれらの組合せから選択されるジヒドロキシアルカンをさらに含む、方法に関することも好ましい。
【0047】
さらに一層特に望ましい実施形態において、本発明は、200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸を含む反応混合物を用いて熱可塑性ポリエステルを製造する方法であって、ジカルボン酸は、100μm以上かつ200μm以下の平均粒径を有する粒子の形態で方法に導入され、
本発明に係る方法に使用される200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、テレフタル酸、フランジカルボン酸またはそれらの組合せから選択され、
反応混合物は、反応混合物中に存在するジカルボン酸の総重量に対して95.0重量%以上、好ましくは98.0重量%以上の、テレフタル酸、フランジカルボン酸またはそれらの組合せを含み、
反応混合物は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールまたはそれらの組合せから選択されるジヒドロキシアルカンをさらに含む、方法に関する。
【0048】
最も特定的に、本発明は、200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸を含む反応混合物を用いて熱可塑性ポリエステルを製造する方法であって、ジカルボン酸は、100μm以上かつ200μm以下の平均粒径を有する粒子の形態で方法に導入され、
本発明に係る方法に使用される200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、テレフタル酸であり、
反応混合物は、反応混合物中に存在するジカルボン酸の総重量に対して95.0重量%以上、好ましくは98.0重量%以上のテレフタル酸を含み、
反応混合物は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールまたはそれらの組合せから選択されるジヒドロキシアルカンをさらに含む、方法に関する。
【0049】
好ましくは、熱可塑性ポリエステルは、95.0重量%以上の、テレフタル酸および1,4-ブタンジオールであるジヒドロキシアルカンに由来するポリマー単位を含む。
【0050】
さらに最も特定的に、本発明は、200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸を含む反応混合物を用いて熱可塑性ポリエステルを製造する方法であって、ジカルボン酸は、100μm以上かつ200μm以下の平均粒径を有する粒子の形態で方法に導入され、
本発明に係る方法に使用される200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、テレフタル酸であり、
反応混合物は、反応混合物中に存在するジカルボン酸の総重量に対して95.0重量%以上、好ましくは98.0重量%以上のテレフタル酸を含み、
反応混合物は、ジヒドロキシアルカンをさらに含み、ジヒドロキシアルカンは、1,4-ブタンジオールである、方法に関する。
【0051】
本発明に係る方法において、反応混合物は、ジヒドロキシアルカンをさらに含み得る。ジヒドロキシアルカンは、1,4-ブタンジオールであることが好ましい。
【0052】
ジヒドロキシアルカンが反応混合物中に存在する場合、ジヒドロキシアルカン対ジカルボン酸のモル比は、好ましくは、1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらにより好ましくは2.0以上、さらに一層好ましくは2.0以上かつ4.0以下である。
【0053】
本発明の特定の実施形態において、ある量のテトラ(C1~C8)チタネートが本方法において触媒として使用される。特に好ましくは、ある量の100~300ppmの触媒が反応混合物中に導入される。触媒は、好ましくは、チタン酸テトライソプロピルである。好ましい実施形態において、反応混合物は、触媒として100~300ppmのチタン酸テトライソプロピルを含む。
【0054】
さらに最も特定的に、本発明は、200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸を含む反応混合物を用いて熱可塑性ポリエステルを製造する方法であって、ジカルボン酸は、100μm以上かつ200μm以下の平均粒径を有する粒子の形態で方法に導入され、
本発明に係る方法に使用される200℃以上の溶融温度を有するジカルボン酸は、テレフタル酸であり、
反応混合物は、反応混合物中に存在するジカルボン酸の総重量に対して95.0重量%以上、好ましくは98.0重量%以上のテレフタル酸を含み、
反応混合物は、ジヒドロキシアルカンをさらに含み、ジヒドロキシアルカンは、1,4-ブタンジオールであり、
反応混合物は、触媒として100~300ppmのチタン酸テトライソプロピルをさらに含む、方法に関する。
【0055】
ジカルボン酸粒子の平均粒径は、120μm以上かつ150μm以下であることが特に好ましい。
【0056】
本発明において使用される際の平均粒径は、平均粒径としてASTM D1921-06に準拠して測定されることが理解され得る。
【0057】
ここで、本発明が以下の非限定的な実施例によって例示される。
【実施例】
【0058】
熱可塑性ポリエステルの調製
凝縮器および真空出力(vacuum output)を備えた500mlの3つ口丸底フラスコ中でPBTポリマーを本発明の方法に従って調製した。フラスコを、Camileシステムによって温度を制御された油浴中に浸漬した。
【0059】
74.8gの1,4-ブタンジオールおよび121.7gのテレフタル酸フレークの反応混合物を、機械的撹拌機およびトルク読み取り装置を備えたフラスコ中に導入した。油温を240℃に設定した。10分後、1,4-ブタンジオールおよびテレフタル酸の総重量に対して180ppmの触媒をフラスコに加えた。触媒は、チタン酸テトライソプロピルであった。窒素雰囲気下において、260rpmで撹拌しながら反応混合物の温度を240℃に維持した。1,4-ブタンジオールおよびテレフタル酸のエステル化反応を大気圧で行った。反応混合物がその透明点に達したとき、すなわち目視観測により反応混合物が透明な液体になったことが示された時点で滞留時間を記録した。これは、重合反応のエステル化段階の完了を示した。
【0060】
フラスコ中の圧力を0.2mbarに低下させることにより、重合反応を開始させた。機械的撹拌機の所与の速度でトルクの上昇が観察された。所与の速度で特定のトルクレベルに達するのに必要な時間を測定した。トルクの上昇は、重合反応中に生じるポリマー鎖の形成の指標である。トルクが高くなるほど、高い重合度に達している。より迅速に特定のトルクレベルに達するほど、より迅速に重合反応が行われる。
【0061】
重合を段階的に行った。最初に、撹拌機を260rpmに設定した。3.40N・mのトルクレベルに達したとき、滞留時間を記録し、撹拌機速度を130rpmに低下させた。これにより撹拌機のトルクが低下された。再度、ポリマー形成後、3.40N・mのトルクに達したとき、滞留時間を記録し、撹拌機速度を65rpmにさらに低下させた。再度、さらなるポリマー形成後、3.40N・mのトルクに達したとき、滞留時間を記録し、撹拌機速度を32rpmにさらに低下させた。再度、3.40N・mのトルクに達したとき、滞留時間を記録した。得られた生成物を冷却して、ポリ(ブチレンテレフタレート)ポリマーサンプルを得た。
【0062】
以下の表では、所与の撹拌機速度で特定のトルクレベルに達する総滞留時間が様々なサイズのテレフタル酸フレークを用いて示される。
【0063】
【0064】
上記の表では、TPAサイズは、重合反応に導入されるテレフタル酸フレークの平均粒径である。エステル化時間は、反応フラスコへの触媒の添加と透明点の観察との間の時間である。260で30になるまでの時間は、触媒の添加と、260rpmの撹拌機速度での3.40N・mのトルクの観察との間の時間であり、同様に130で3.40、65で3.40および32で3.40になるまでの時間は、触媒の添加と、それぞれ130rpm、65rpmおよび32rpmでの3.40N・mのトルクの観察との間の時間である。
【0065】
反応から得られたポリ(ブチレンテレフタレート)ポリマーサンプルを、固有粘度およびカルボン酸末端基含量を測定するために材料の特性評価に供した。
【0066】
固有粘度を、自動Viscotek Microlab 500 Relative Viscometer Y501を用いてASTM D2857-95(2007)に準拠して測定した。0.200gのサンプルをフェノールおよび1,1,2,2-テトラクロロエタンの60/40体積/体積%の溶液に溶解させた。固有粘度をdl/gで表した。
【0067】
サンプルのカルボン酸末端基含量を、800 Dosino 2ml用量ユニットおよび814 USBサンプル処理装置を用いて、Metrohm-Autotitrator Titrando 907を用いてASTM D7409-15に準拠して測定した。全てのユニットを、Tiamo 2.0 Full versionを用いてPCから制御した。1.5~2.0gのサンプルを80℃で50mlのo-クレゾールに完全に溶解させた。溶解させた後、サンプルを室温に冷まし、50mlのo-クレゾールおよび1mlの水を加えた。ブランクを同じ手順に沿って調製した。電極および滴定剤用量をサンプル溶液に浸漬し、滴定を開始した。滴定の当量点を、式:
CEG=(QS-QB)*NNaOH
*1000
に従ったカルボン酸末端基値の計算に使用し、式中、
CEG=カルボン酸末端基含量(mmol/kg)であり、
QS=サンプルの滴定された量(ml)であり、
QB=ブランクの滴定された量(ml)であり、
NNaOH=NaOHの濃度(mol/l)である。
【0068】
サンプルの固有粘度(I.V.)およびカルボン酸末端基含量(CEG)は、表IIに示される。
【0069】
【0070】
これは、サンプルポリマーの固有粘度およびカルボン酸末端基含量がわずかに異なるに過ぎず、製造される必要があるポリ(ブチレンテレフタレート)製品の所望の規格を全て満たすことを実証している。
【0071】
表Iの重合時間データからの結果を比較することにより、100μm以上の平均粒径を有するテレフタル酸が使用される本発明に係る方法は、より迅速なプロセスをもたらしながら、表IIの結果によって示されるように所望の生成物をもたらすことが実証される。