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特許7100042タンパク質凝集のモジュレーターとしてのアルコキシビス-ヘテロアリール誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】タンパク質凝集のモジュレーターとしてのアルコキシビス-ヘテロアリール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/12 20060101AFI20220705BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220705BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C07D417/12 CSP
A61K31/496
A61P21/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P35/00
C07D417/14
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019539261
(86)(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2018051579
(87)【国際公開番号】W WO2018138085
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】17153210.4
(32)【優先日】2017-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホール、エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】マッコス、マルコム
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/138088(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/138086(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/020010(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/084642(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/014937(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/116663(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

[式中、
Bは、それぞれ非置換であるか、又は-(Rで置換されている、9若しくは10員のヘテロアリール、又は5若しくは6員のヘテロシクロアルキルであり、
ここで、mは0、1、又は2であり、及び
各Rは、独立して、C1~4アルキル(1つ若しくは複数のハロゲン又は-O-C1~4アルキル基で場合によって置換されている)、ハロゲン、-OH、又は-O-C1~4アルキルであり、
は、C1~5アルコキシで置換されているC1~5アルキルであり、前記C1~5アルコキシは非置換であるか、又は1つ若しくは複数のハロゲンで置換されており、R はヘテロシクロアルキルであり、ここで、前記ヘテロシクロアルキルのヘテロ原子(単数又は複数)は1又は2個の酸素であり、或いはR はメトキシヘキシル、エトキシヘキシル、又はプロポキシヘキシルであり、
Aは5員のヘテロアリール環であり、
Yは存在しないか、又はC 1~4 アルキレンであり、
Yが存在しないか、又はC1~4アルキレンである場合、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、非置換であるか、又は1つ若しくは複数のR置換基で置換されている単環式若しくは二環式ヘテロシクロアルキルを形成し、
ここで、各R置換基は、独立して、C1~4アルキル(非置換であるか、又は1つ若しくは複数のC1~4アルコキシ、ハロ-C1~4アルコキシ、又はハロゲン基で置換されている)、C3~7シクロアルキル、C1~4アルコキシ、ハロ-C1~4アルコキシ、又はハロであるか、
或いは、YがC1~4アルキレンの場合、R及びYは、Rが結合している窒素と一緒になって、単環式又は二環式ヘテロシクロアルキル環(この環は非置換であるか、又はC1~4アルキル若しくはハロで置換されている)を形成し、RはH又はC1~4アルキルであり、及び
はH又はC1~4アルキルである]
又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
mが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Bが場合によって置換されているインドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、イミダゾピリジン、又はピロロピリジンである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Bが場合によって置換されているインドールであるか、又は場合によって置換されている3-インドールである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
がメトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、メトキシイソブチル、メトキシペンチル、メトキシヘキシル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、エトキシイソブチル、エトキシペンチル、エトキシヘキシル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、プロポキシイソブチル、プロポキシペンチル、プロポキシヘキシル、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、ジオキサン、メチレン-テトラヒドロフラン、メチレンオキサン、メチレン-ジオキサン、エチレン-テトラヒドロフラン、エチレン-オキサン、又はエチレン-ジオキサンである、請求項1から4までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
がメトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、又はテトラヒドロピランである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Aがピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、又はテトラゾールである、請求項1から6までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Aがチアゾールである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Yが存在しない、請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
Yが-CH-、-CHCH-、CH(CH)-、(CH-、-C(CH-、-(CH-、-CH((CHCH)-、-CH(CH(CH)-、CH(CHCH)CH-、CH(CH)CH(CH)-、-CH(CH)(CH-、又は-CHCH(CH)CH-である、請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
及びRが、これらが結合している窒素と一緒になって、それぞれ非置換であるか、又は1つ若しくは複数のC1~4アルキルで置換されているアゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、1,1-ジオキソ-チオモルホリン、アゼピン、又はジアゼピンを形成する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
及びRが、これらが結合している窒素と一緒になって、C1~4アルキルで置換されているピペラジンを形成する、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
式(III)の化合物:
【化2】

(式中、
B’は5員のヘテロアリールであり、
B”はフェニル又は6員のヘテロアリールであり、
Yは存在せず、
及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、非置換であるか、又はメチル、エチル、プロピル、ブチルで置換されているピペラジンを形成し、並びに
、R、R及びmは、請求項1から12までのいずれか一項に定義されている通りである)
又は薬学的に許容されるその塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
【表1】

からなる群から選択される化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物、又は薬学的に許容されるその塩、及び薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物。
【請求項16】
タンパク質又はペプチド凝集に関連する神経変性疾患又は状態を処置するための、請求項15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある特定のビス-ヘテロアリール誘導体、これらを含有する医薬組成物、並びにこれらを使用する方法であって、タンパク質凝集を予防、逆転、減速、又は阻害するための方法、並びに神経変性疾患、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体病、認知症を伴うパーキンソン病、前頭側頭型認知症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、及び多系統萎縮症など、並びに黒色腫を含むがんを含めたタンパク質凝集に関連する疾患を処置する方法を含めた、使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢集団の神経変性障害、例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、及び前頭側頭型認知症(FTD)などは、米国及び欧州連合だけで2千万人を超える人々に影響を与え、高齢者に対する死因の上位にランク付けされている。これらの神経学的障害の共通の特徴はタンパク質が慢性的に蓄積されて神経毒凝集物となることである。各疾患は、影響を受ける特定のニューロン集団、関与する特定のタンパク質凝集物、及びニューロン変性から生じる臨床的特徴により特徴付けられる。
【0003】
タンパク質凝集の初期段階は、標的タンパク質の突然変異又は翻訳後修飾(例えば、ニトロシル化、酸化)を含み、次いでこれにより、同様にミスフォールドしたタンパク質との相互作用を促進する異常な構造が採用されることを実験が示唆している。次いで、異常タンパク質は凝集して、「可溶性オリゴマー」とも呼ばれるダイマー、トリマー、及びより高い次元のマルチマーを形成し、これらがシナプスの機能を破壊し得る。さらに、凝集物は次に細胞膜に固着し、球状オリゴマー(ひいてはこれらが膜内に細孔を形成し得る)及び/又はプロトフィブリル若しくはフィブリルを形成し得る。これらのより大きな、不溶性フィブリルは、生理活性オリゴマーのリザーバーとして機能し得る。
【0004】
多様な系統の証拠が、タンパク質凝集物の進行性の蓄積が神経変性疾患の病因として関与しているという考えを支持している。いくつかの他のタンパク質、例えば、α-シヌクレイン、Aβタンパク質、タウ、及びTDP43などは神経変性と共に患者の脳内に蓄積し得る。これらの患者の認知障害は新皮質及び大脳辺縁系におけるシナプス損失と密接に関連しており、タンパク質凝集物レベルの増加はこのシナプス損失に寄与し得る。多くの研究が、α-シヌクレイン及び他のアミロイド前駆タンパク質(APP)代謝産物の蓄積がシナプス損傷及び神経変性を引き起こす機序について詳述することに集中している。多くの実験は、オリゴマーとしても公知の小さな凝集物の形成が神経毒性において主要な役割を果たすという仮説を支持している。これらのペプチドオリゴマーは、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、及び環状構造を形成することができる他のより高い階級のアレイへと組織化できる。このような高レベルのオリゴマーは、患者において認知症及びシナプス損失の前兆である。小さな前駆体フィブリルよりもむしろオリゴマーが有毒性種であることを証拠が示唆しているため、これらの早期凝集プロセスを特定の方式で標的とする化合物がPD、AD及び関連する状態に対する潜在的な新規治療法として有用である。
【0005】
様々な神経変性疾患は、神経毒性タンパク質ベースの凝集物の蓄積を含む。特発性パーキンソン病(IPD)、レビー小体型認知症(LBD)、認知症を伴うパーキンソン病(PDD)、及び多系統萎縮症(MSA)において、神経毒性凝集物はα-シヌクレイン(SYN)で構成され、このα-シヌクレインは、正常な状態下では細胞内にあるシナプスタンパク質である。FTD及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、神経毒性凝集物は、他の細胞内タンパク質、例えば、タウ、TDP-43、又はSOD1などから生じる。ADなどのある特定の疾患に対して、SYNは第1次タンパク質(例えば、Aβタンパク質)と共に凝集する。ハンチントン病では、凝集物はHttタンパク質の切断生成物から形成される。
【0006】
α-シヌクレインの蓄積はがん、特に、黒色腫がん細胞にも関与している。Panら、PLoS One、2012年、7巻(9号)、e45183頁。よって、このような蓄積を阻害する化合物は、黒色腫を含めた様々ながんの処置に有用となり得る。
【0007】
2つの機序がこれらタンパク質凝集プロセスに関与している。第1のプロセスでは、ミスフォールドした及び/又は凝集したタンパク質は様々な細胞膜構造に固着する。ミスフォールドした又は凝集した分子の原形質膜又は細胞器官の膜(例えば、ミトコンドリア又はリソソーム)への結合は、タンパク質転写、自食作用、ミトコンドリア機能、及び細孔形成に支障をきたす可能性がある。例として、神経毒性SYNは、凝集して、シヌクレインタンパク質のC末端領域の特定の部分により、細胞膜内で脂質と相互作用する。この領域に結合する化合物は、タンパク質-タンパク質又はタンパク質-脂質相互作用を阻害することができ、したがって、SYN又は他のタンパク質の神経毒性のあるオリゴマー化及びこれらと膜との相互作用を遮断するために使用することができる。第2のプロセスでは、凝集したタンパク質は固着したサブユニットから放出され、隣接する細胞に増殖する。次いで、有毒性タンパク質凝集物のこの細胞から細胞への伝播は、神経変性の解剖学的進行及び症状悪化の基礎となり得る。標的タンパク質と相互作用する小分子薬物は、放出及び/又は伝播を制限し、したがって、凝集したタンパク質の神経毒性作用を減少させることができる。
【0008】
タンパク質凝集の阻害剤である化合物はPCT公開WO2011/084642、WO2013/148365、WO2013/134371、及びWO2014/014937に記載されている。インドールアミド誘導体はPCT公開WO2010/142801に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
望ましい薬学的特性を有するタンパク質凝集の阻害剤に対する必要性が依然として存在する。ある特定のビス-ヘテロアリール化合物が本発明との関連で、タンパク質凝集を調節する活性を有することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本発明は、以下の式(I):
【化1】

[式中、
Bは、それぞれ非置換であるか、又は-(Rで置換されている、9若しくは10員のヘテロアリール、又は5若しくは6員のヘテロシクロアルキルであり、
ここで、mは0、1、又は2であり
各Rは、独立して、C1~4アルキル(1つ若しくは複数のハロゲン又は-OC1~4アルキル基で場合によって置換されている)、ハロゲン、-OH、又は-OC1~4アルキルであり、
は、C1~5アルコキシで置換されているC1~5アルキルであり、前記C1~5アルコキシは非置換であるか、又は1つ若しくは複数のハロゲンで置換されており、代わりに、Rはヘテロシクロアルキルであってもよく、ここで、前記ヘテロシクロアルキルのヘテロ原子(単数又は複数)は1又は2個の酸素であり、
Aは5員のヘテロアリール環であり、
Yは存在しないか、又はC1~4アルキレンであり、
Yが存在しないか、又はC1~4アルキレンである場合、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、非置換であるか、又は1つ若しくは複数のR置換基で置換されている単環式若しくは二環式ヘテロシクロアルキルを形成し、
ここで、各R置換基は、独立して、C1~4アルキル(非置換であるか、又は1つ若しくは複数のC1~4アルコキシ、ハロ-C1~4アルコキシ、又はハロゲン基で置換されている)、C3~7シクロアルキル、C1~4アルコキシ、ハロ-C1~4アルコキシ、又はハロであるか、
或いは、YがC1~4アルキレンの場合、R及びYは、Rが結合している窒素と一緒になって、単環式又は二環式ヘテロシクロアルキル環(この環は非置換であるか、又はC1~4アルキル若しくはハロで置換されている)を形成し、RはH又はC1~4アルキルであり、
はH又はC1~4アルキルである]
の化学物質又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【0011】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物は、以下の詳細な説明に記載又は例示されているような種から選択される化合物である。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物に関する。本発明による医薬組成物は、薬学的に許容される添加剤をさらに含み得る。本発明はまた、医薬としての使用のための式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩でもある。
【0013】
別の態様では、本発明は、タンパク質又はペプチド凝集に関連する神経変性疾患又は状態を処置する方法であって、このような処置を必要とする対象に、有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法を対象とする。別の態様では、タンパク質又はペプチド凝集に関連する神経変性疾患又は医学的状態の処置に使用するための化合物又は組成物が本明細書に記載されている。
【0014】
別の態様では、本発明は、タンパク質又はペプチド凝集に関連する疾患又は医学的状態を処置する方法であって、このような処置を必要とする対象に、有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法を対象とする。本発明はまた、このような疾患及び医学的状態の処置のための、又はこのような疾患及び医学的状態の処置のための医薬の調製のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用を対象とする。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、細胞内のタンパク質若しくはペプチド凝集物の蓄積を妨げる、又は細胞内のタンパク質若しくはペプチド凝集を調節、予防、減速、逆転、若しくは阻害する方法であって、有効量の少なくとも1つの式(I)の化合物若しくはその塩、及び/又は少なくとも1つの本発明の医薬組成物を細胞に接触させることを含み、この接触がin vitro、ex vivo、又はin vivoで行われる方法に関する。
【0016】
本発明の追加の実施形態、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明及び本発明の実施を介して明らかとなろう。
【0017】
簡潔にするため、本明細書で引用された、特許を含む刊行物の開示は本明細書に参照により組み込まれている。
発明の詳細な説明
【0018】
本発明をさらに記載する前に、本発明は記載されている特定の実施形態に限定されず、よって、当然、変動し得ることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載するという目的のためだけのものであり、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0019】
他に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により共通して理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で参照されたすべての特許、出願、公開出願及び他の刊行物はこれら全体が参照により組み込まれている。本セクションに明記された定義が、本明細書に参照により組み込まれている特許、出願、又は他の刊行物に明記された定義に反する、さもなければ矛盾する場合、本セクションに明記された定義が参照により本明細書に組み込まれた定義よりも優先される。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に他を指示していない限り、複数の指示対象を含む。特許請求の範囲は、いずれの任意選択の要素をも排除するように作成され得ることにさらに注目されたい。よって、この記述は、特許請求要素の列挙に関連した「もっぱら(solely)」、「のみ(only)」などの排他的用語の使用に対して、又は「否定的」制限の使用に対して先行詞として機能することを意図する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「を含めた(including)」、「を含有する(containing)」及び「含む(comprising)」という用語は、これらの開かれた、非限定的な意味で使用される。
【0022】
より簡潔な説明を提供するため、本明細書で付与される定量的表現の一部は、「約(about)」という用語で制限されるわけではない。「約」という用語が明示的に使用されているか、いないかに関わらず、本明細書で付与されるすべての量は、実際の所与の値を指すことを意図し、実験及び/又は測定条件による、このような所与の値に対する同等値及び近似値を含めた、当技術分野の普通の技能に基づき無理なく推測されるこのような所与の値に対する近似値を指すこともまた意図されていることを理解されたい。収率がパーセンテージとして付与されている場合にはいつでも、このような収率はエンティティーの質量を指し、特定の化学量論的条件下で得ることができる同じエンティティーの最大量に対する収率が付与されている。パーセンテージとして付与された濃度は、異なるように示されていない限り質量比を指す。
【0023】
他に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により共通して理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似又は同等の任意の方法及び材料もまた本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料をここに記載する。本明細書中に記述されているすべての刊行物は、刊行物が引用されている関連において、方法及び/又は材料を開示及び記載するために参照により本明細書に組み込まれている。
【0024】
他に指摘されている場合を除いて、本発明の実施形態の方法及び技術は、当技術分野で周知の従来の方法に従い、並びに本明細書を通して引用及び論じられている様々な一般的及びより特定の参考文献に記載されているように一般的に実施される。例えば、Loudon、有機化学(Organic Chemistry)、第4版、New York:Oxford University Press、2002年、360~361頁、1084~1085頁;Smith及びMarch、「Marchの上級有機化学:反応物、機序、及び構造(March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions, Mechanisms, and Structure)」、第5版、Wiley-Interscience、2001年を参照されたい。
【0025】
対象化合物を命名するために本明細書で使用されている命名法は、本明細書の実施例で例証されている。この命名法は市販のBiovia Draw 2016、バージョン16.1を用いて一般的に誘導される。
【0026】
わかりやすくするために、別個の実施形態という状況で記載されている本発明のある特定の特徴は、単一の実施形態と組み合わせて提供することもできることが認識されている。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態という状況で記載されている本発明の様々な特徴は、別々に又は任意の適切な下位の組合せで提供することもできる。変数で表される化学基に関連する実施形態のすべての組合せは、このような組合せが安定した化合物である化合物(すなわち、生物学的活性について、単離、特徴付け、及び試験することができる化合物)を包含する範囲内に限り、ありとあらゆる組合せが個々に及び明示的に開示されているかのように、本発明により具体的に包含され、本明細書中に開示される。加えて、このような変数について記載している、実施形態において列挙された化学基のすべての下位の組合せもまた、化学基のありとあらゆるこのような下位の組合せが個々に及び明示的に本明細書中に開示されているかのように、本発明により具体的に包含され、本明細書中に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
代表的実施形態
式(I)の一部の実施形態では、すべての変数は本明細書で定義された通りであり(以下に列挙された特定の定義のいずれをも含む)、以下の制限の1つ又は複数もまた適用される:
(a1)mは1若しくは2である、又は
(a2)mは1若しくは2であり、及びRは本明細書で定義された通りであり、ここで、少なくとも1つのRはC1~4アルキル(1若しくは2つのハロゲン基、又は-OC1~4アルキルで置換されている)、C1~4アルキル(-CFで置換されている)、-OH、若しくは-OC1~4アルキルである、又は
(a3)mは0である、
(b)RはC1~5アルコキシで置換されているC1~5アルキルであり、前記C1~5アルコキシは、非置換であるか、又は1つ若しくは複数のハロゲン置換基で置換されているか、或いはRはヘテロシクロアルキルであり、前記ヘテロシクロアルキルのヘテロ原子(単数又は複数)は1又は2個の酸素である、
(c)R及びRが、これらが結合している窒素と一緒になって、単環式ヘテロシクロアルキルを形成する場合、前記ヘテロシクロアルキルは、1つ又は複数のR置換基で置換されており、Rは本明細書で定義された通りであり、少なくとも1つのR置換基はC1~4アルキル(1つ又は複数のC1~4アルコキシ、ハロ-C1~4アルコキシ、又はハロゲン基で置換されている)、C1~4アルコキシ、ハロ-C1~4アルコキシ、又はハロである。
【0028】
本明細書に記載されている式の一部の実施形態では、Bは場合によって置換されている9員の二環式のヘテロアリールである。他の実施形態では、Bは場合によって置換されているインドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、イミダゾピリジン、又はピロロピリジンである。他の実施形態では、Bはベンゾチオフェン、ベンゾイミダゾール、ベンズイソオキサゾール、イミダゾピリジン、又はピロロピリジン(ここで、ピリジン窒素はピロール窒素と同じ炭素に結合していない)である。他の実施形態では、Bは場合によって置換されているインドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンズイソオキサゾール、イミダゾピリジン、又はピロロピリジンである。他の実施形態では、Bは場合によって置換されているインドールである。他の実施形態では、Bは場合によって置換されている3-インドールである。他の実施形態では、Bは置換インドール又は置換3-インドールである。他の実施形態では、Bは場合によって置換されている10員の二環式ヘテロアリールである。他の実施形態では、Bは場合によって置換されているキノリン又はイソキノリンである。他の実施形態では、Bは場合によって置換されている単環式の5又は6員のヘテロシクロアルキルである。他の実施形態では、Bは場合によって置換されているピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、又はモルホリンである。
【0029】
一部の実施形態では、mは0である。他の実施形態では、mは1である。他の実施形態では、mは2である。
【0030】
一部の実施形態では、各R置換基は独立して-OHであるか、又はフルオロ、クロロ、ブロモ、若しくはヨードである。他の実施形態では、各Rはフルオロ又はブロモである。他の実施形態では、各R置換基は独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチルであるか、又はC1~4アルキル(1つ又は複数のフルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、又はブトキシ基で置換されている)である。他の実施形態では、各Rは独立して、ハロゲンであるか、又は1つ若しくは複数のハロゲン基で場合によって置換されているC1~4アルキルである。他の実施形態では、各Rは独立して、OMe、OCHF、OCF、OEt、OiPr、Me、CF、Cl、又はCHF、CHFである。
【0031】
一実施形態では、Rは、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、メトキシイソブチル、メトキシペンチル、メトキシヘキシル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、エトキシイソブチル、エトキシペンチル、エトキシヘキシル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、プロポキシイソブチル、プロポキシペンチル、プロポキシヘキシル、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、ジオキサン、メチレン-テトラヒドロフラン、メチレンオキサン、メチレン-ジオキサン、エチレン-テトラヒドロフラン、エチレン-オキサン、エチレン-ジオキサンである。
【0032】
一部の実施形態では、Rが結合している炭素はR立体配置にある。他の実施形態では、Rが結合している炭素はS立体配置にある。
【0033】
一部の実施形態では、Aはピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、又はテトラゾールである。他の実施形態では、Aはピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、又はテトラゾールである。他の実施形態では、Aはイミダゾール、オキサゾール、又はチアゾールである。他の実施形態では、Aはチアゾールである。
【0034】
一部の実施形態では、Yは存在しない。他の実施形態では、Yは-CH-、-CHCH-、CH(CH)-、(CH-、-C(CH-、-(CH-、-CH((CHCH)-、-CH(CH(CH)-、CH(CHCH)CH-、CH(CH)CH(CH)-、-CH(CH)(CH-、又は-CHCH(CH)CH-である。他の実施形態では、Yは-CH-、-CHCH-、又はCH(CH)-である。さらなる他の実施形態では、Yは-CHCH2-である。
【0035】
一部の実施形態では、Yが存在しないか、又はC1~4アルキレンである場合、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、非置換であるか、或いは1つ若しくは複数のR置換基で置換されている単環式又は二環式ヘテロシクロアルキル環を形成する。他の実施形態では、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、それぞれ非置換であるか、又は1つ若しくは複数のR置換基で置換されている、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、1,1-ジオキソ-チオモルホリン、アゼピン、若しくはジアゼピンを形成する。他の実施形態では、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、それぞれ非置換であるか、又は1つ若しくは複数のR置換基で置換されている、ピペリジン、ピペラジン、若しくはジアゼピンを形成する。他の実施形態では、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、1、2、又は3つのR置換基で置換されているピペラジンを形成する。
【0036】
他の実施形態では、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、非置換であるか、又はC1~4アルキルで置換されているピペラジンを形成する。さらなる他の実施形態では、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、ピペラジン又は4-メチル-ピペラジンを形成する。R及びRが、これらが結合している窒素と一緒になって、非置換であるか、又は1つ若しくは複数のR置換基で置換されている単環式ヘテロシクロアルキル環を形成する一部の実施形態では、Yは存在しないか、又はYはC2~4アルキレンである。
【0037】
一部の実施形態では、各R置換基は、独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルであるか、又はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、若しくはシクロヘキシルであるか、又はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、若しくはイソプロポキシであるか、又はトリフルオロメトキシ若しくはトリフルオロエトキシであるか、又はブロモ、クロロ、若しくはフルオロであり、これらはそれぞれ非置換であるか、又は本明細書に記載されているように置換されている。他の実施形態では、各R置換基は、独立して、エチル、イソプロピル、シクロプロピル、tert-ブチル、イソブチル、2-メトキシエチル、2,2-ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、トリフルオロエトキシ-エチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、若しくはフルオロメチルであるか、又はフルオロエチル、メトキシエチル、トリフルオロメトキシエチル、若しくはトリフルオロメチルである。
【0038】
一部の実施形態では、0、1、2、又は3つのR置換基が存在する。他の実施形態では、1つ、又は2つ、又は3つのR置換基が存在する。
【0039】
YがC1~4アルキレンである一部の実施形態では、R及びYは、Rが結合している窒素と一緒になって、単環式ヘテロシクロアルキル環を形成し、この環は非置換であるか、又はC1~4アルキル若しくはハロで置換されており、RはH又はC1~4アルキルである。他の実施形態では、Y及びRは、Rが結合している窒素と一緒になって、ピロリジン又はピペリジンを形成し、この環は本明細書に記載されているように場合によって置換されている。他の実施形態では、RはH又はメチルである。
【0040】
式(I)の一部の実施形態では、R及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、1つ又は複数のR置換基で置換されている単環式ヘテロシクロアルキル環を形成し、Rは本明細書で定義された通りであり、少なくとも1つのR置換基はC1~4アルキル(1つ若しくは複数のC1~4アルコキシ、ハロ-C1~4アルコキシ、又はハロゲン基で置換されている)、C1~4アルコキシ、ハロ-C1~4アルコキシ、又はハロである。
【0041】
一部の実施形態では、RはHである。他の実施形態では、RはC1~4アルキルである。他の実施形態では、RはH又はメチルである。
【0042】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は式(II)の化合物:
【化2】

(式中、
B’は5員のヘテロアリールであり、
B”はフェニル又は6員のヘテロアリールであり、並びに
、R、R、R、R、m、A、及びYは本明細書で定義された通りである)
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0043】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(III)の化合物:
【化3】

(式中、
B’は5員のヘテロアリールであり、
B”はフェニル又は6員のヘテロアリールであり、
Yは存在せず、
及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、非置換であるか、又はメチル、エチル、プロピル、ブチルで置換されているピペラジンを形成し、並びに
、R、R及びmは上で定義された通りである)
又は薬学的に許容されるその塩である。
【0044】
本明細書に記載されている式(I)~(III)の一部の実施形態では、B’及びB”は一緒になって、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、イミダゾピリジン、又はピロロピリジンを形成する。他の実施形態では、B’及びB”は一緒になって、場合によって置換されているインドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インダゾール、ベンズイソオキサゾール、イミダゾピリジン、又はピロロピリジンである。他の実施形態では、B’及びB”は一緒になって、場合によって置換されているインドールである。他の実施形態では、B’及びB”は一緒になって、場合によって置換されている3-インドールである。一部の実施形態では、B’及びB”は一緒になって、置換インドール又は置換3-インドールである。一部の実施形態では、mは0である。他の実施形態では、mは1である。他の実施形態では、mは2である。
【0045】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、式(III)の化合物:
【化4】

(式中、
B’及びB”は一緒になって、置換若しくは非置換の3-インドールであり、
Yは存在せず、
及びRは、これらが結合している窒素と一緒になって、非置換であるか、又はメチル、エチル、プロピル、ブチルで置換されているピペラジンを形成し、並びに
、R、R及びmは上で定義された通りである)
又は薬学的に許容されるその塩である。
式(III)特定の実施形態では、R及びRは水素であり、Rはメトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、メトキシイソブチル、メトキシペンチル、メトキシヘキシル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、エトキシイソブチル、エトキシペンチル、エトキシヘキシル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、プロポキシイソブチル、プロポキシペンチル、プロポキシヘキシル、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、ジオキサン、メチレン-テトラヒドロフラン、メチレンオキサン、メチレン-ジオキサン、エチレン-テトラヒドロフラン、エチレン-オキサン、エチレン-ジオキサンであり、特にRはメトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、テトラヒドロピランであってよい。
【0046】
他の実施形態では、式(I)の化合物は、実施例1~4、表1、及び薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される。
【表1】

又は薬学的に許容されるその塩。
化学的定義
【0047】
「アルキル」という用語は、鎖内に1~12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を指す。「Cx~yアルキル」とは、x~y個の炭素原子を有するアルキル基を指す。例えば、「C1~4アルキル」とは、鎖内に1~4個の炭素原子を有するアルキル基を指す。アルキル基の例として、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル(tBu)、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、及びイソヘキシルが挙げられる。
【0048】
「アルコキシ」という用語は、アルキル-O-基を指し、ここでアルキルは上で定義された通りである。アルコキシ基は酸素原子を介して親構造に連結している。「C1~5アルコキシ」とは、1~5個の炭素原子を有するアルキル基が酸素に結合しているアルコキシ基を指す。
【0049】
「アルキレン」という用語は、アルカンの基である二価の基を指す。アルキレンは直鎖又は分枝鎖の二価のアルキル基であることができる。「C1~4アルキレン」とは、1~4個の炭素原子を有するアルキレン基を指す。
【0050】
「アリール」という用語は、単環(フェニル基)又は多重縮合環(例えば、ナフチル、アントラセニル、又はインダニルなど)を有する、6~14個の炭素原子の一価の芳香族炭素環式基を指し、ここで、縮合環は場合によって芳香族であるが、ただし、アリール基の親構造への結合点は芳香族環の原子を介するものとする。
【0051】
「シクロアルキル」という用語は、炭素環1つ当たり3~12個の環原子を有する、飽和又は部分的に飽和した、単環式、縮合した多環式、架橋した多環式、又はスピロ多環式の炭素環を指す。シクロアルキル基の例証的な例として、適切に結合した部分の形態での以下のエンティティーが挙げられる:
【化5】
【0052】
「ハロゲン」という用語は、塩素、フッ素、臭素、又はヨウ素を表す。「ハロ」という用語は、クロロ、フルオロ、ブロモ、又はヨードを表す。
【0053】
「ハロ-アルキル」という用語は、アルキル基上の1個又は複数の水素原子がハロゲン基で置換されている、本明細書に記載されているようなアルキル基を指す。このような基の例として、制限なしで、フルオロアルキル基、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、フルオロエチル、トリフルオロエチルなどが挙げられる。
【0054】
「ハロアルコキシ」という用語は、アルキル基上の1個又は複数の水素原子がハロゲン基で置き換えられているアルキル-O-基を指し、例として、例えば、トリフルオロメトキシ、フルオロエトキシなどの基が挙げられる。
【0055】
「ヘテロアルキレン」という用語は、1個の炭素鎖原子が-S-、-O-、又は-NR-(式中、RはH又はC1~4アルキルである)で置き換えられている二価アルキレン基を指す。
【0056】
「ヘテロアリール」という用語は、3~12個の環原子を有する単環式、縮合した二環式、又は縮合した多環式芳香族ヘテロ環(炭素原子並びに窒素、酸素、及び硫黄から選択される4個までのヘテロ原子から選択される環原子を有する環構造)を指す。二環式ヘテロアリール基は、1つの芳香族及び1つの非芳香族環を有する二環式の基を含む。ヘテロアリール環が-OHで置換されている場合、当業者であれば、生成した環系が対応するオキソ置換互変異性体として描かれ得ることを理解している。ヘテロアリール基の例証的な例として、適切に結合した部分の形態での以下のエンティティーが挙げられる:
【化6】
【0057】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、単環、又は縮合した、架橋した、若しくはスピロ環系を含む多重縮合環を有し、1~10個のヘテロ原子を含む3~20個の環原子を有する飽和又は部分的に不飽和の基を指す。これらの環原子は、炭素、窒素、硫黄、又は酸素からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、ヘテロ環式基の窒素及び/又は硫黄原子(単数又は複数)は、場合によって酸化されて、N-オキシド、-S(O)-、又は-SO-部分を提供する。ヘテロ環式基の例証的な例として、適切に結合した部分の形態での以下のエンティティーが挙げられる:
【化7】
【0058】
「オキソ」という用語は、カルボニル酸素を表す。例えば、オキソで置換されているシクロペンチルはシクロペンタノンである。
【0059】
当業者であれば、本明細書に提供されている定義で列挙又は例証された種は包括的ではなく、これら定義された用語の範囲内で追加の種もまた選択され得ることを認識している。
【0060】
「置換されている」という用語は、特定された基又は部分が1つ又は複数の置換基を保持することを意味する。「非置換の」という用語は、特定された基が置換基を保持しないことを意味する。「場合によって置換されている」という用語は、特定された基が非置換であるか、又は1つ又は複数の置換基で置換されていることを意味する。「置換されている」という用語が構造系について説明するために使用されている場合、この置換は、原子価が許容されるその系上の任意の位置において生じることが意図されている。
【0061】
本明細書で示されている任意の式は、構造式並びにある特定の変化形又は形態の化合物を表すことを意図する。例えば、本明細書で付与されている式は、そのラセミ体、又は1種若しくは複数種のエナンチオマー、ジアステレオマー、又は幾何異性体、或いは混合物を含むことを意図する。さらに、本明細書で付与されている任意の式はまた、このような化合物の水和物、溶媒和物、若しくは多形、又はこれらの混合物も指すことを意図する。
【0062】
本明細書で付与されている任意の式はまた、化合物の非標識形態並びに同位体標識形態を表すことも意図する。同位体標識化合物は、1個又は複数の原子が、選択された原子量又は質量数を有する原子で置き換えられていることを除いて、本明細書で付与されている式で示される構造を有する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例として、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素、及びヨウ素の同位体、例えば、それぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、36Cl、及び125Iなどが挙げられる。このような同位体標識された化合物は代謝実験(好ましくは、14Cを用いる)、反応の動力学的実験(例えば、H又はHを用いる)、薬物若しくは基質組織分布アッセイを含む検出若しくは画像化技術[例えば、ポジトロン放出断層撮影(PET)又は単一光子放射断層撮影(SPECT)など]、又は患者の放射線治療において有用である。特に、18F又は11C標識化合物は、PET又はSPECT実験に対して特に好ましいことがある。PET及びSPECT実験は、例えば、Brooks、D.J.、「中枢神経系創薬におけるポジトロン放出断層撮影及び単一光子放射断層撮影(Positron Emission Tomography and Single-Photon Emission Computed Tomography in Central Nervous System Drug Development)」NeuroRx 2005年、2巻(2号)、226~236頁、及びその中に引用された参考文献に記載されている通りに実施することができる。さらに、重水素(すなわち、H)などのより重い同位体での置換は、より高い代謝安定性、例えば、in vivo半減期の増加又は必要用量の減少などから生じるある特定の治療上の利点をもたらすことができる。同位体標識した本発明の化合物及びそのプロドラッグは一般的に、非同位体標識試薬の代わりに容易に入手できる同位体標識試薬を使用することにより、以下に記載されているスキーム又は実施例及び調製で開示された手順を実行することによって調製することができる。
【0063】
j>iである「Ci~j」の命名法は、本明細書で置換基クラスに適用される場合、i~j個の(i及びjを含む)炭素メンバーの数のうちの1つ1つが独立して実現される本発明の実施形態を指すことを意図する。例として、C1~3という用語は、独立して、1つの炭素メンバー(C)を有する実施形態、2つの炭素メンバー(C)を有する実施形態、及び3つの炭素メンバー(C)を有する実施形態を指す。
【0064】
本明細書で参照された任意の二置換基は、このような可能性の1つより多くが許容される場合、様々な結合の可能性を包含することを意図する。例えば、二置換基-A-B-(式中、A≠Bである)についての言及は、第1の置換されたメンバーに結合したA及び第2の置換されたメンバーに結合したBによるこのような二置換基を本明細書で指し、これはまた、第2の置換されたメンバーに結合したA及び第1の置換されたメンバーに結合したBによるこのような二置換基も指す。
【0065】
本発明はまた式(I)で表される化合物、好ましくは上記に記載されているもの及び本明細書で例示された特定の化合物の薬学的に許容される塩、並びにこのような塩を含む医薬組成物、並びにこのような塩を使用する方法も含む。
【0066】
「薬学的に許容される塩」とは、無毒性の、生物学的に許容される、さもなければ対象への投与に対して生物学的に適切な、本明細書で表されている化合物の遊離酸又は遊離塩基の塩を意味することを意図する。一般的に、S.M.Bergeら、「薬学的塩(Pharmaceutical Salts)」J.Pharm.Sci.、1977年、66巻、1~19頁を参照されたい。好ましい薬学的に許容される塩は、過度の毒性、刺激、又はアレルギー反応なしに、対象の組織と接触させることに対して薬理学的に有効及び適切なものである。本明細書に記載の化合物は、十分に酸性の基、十分に塩基性の基、両種類の官能基、又は各種類の基のうちの1つより多くを保有し、したがって、いくつかの無機塩基又は有機塩基、並びに無機酸及び有機酸と反応して、薬学的に許容される塩を形成することができる。
【0067】
薬学的に許容される塩の例として、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオアート、ヘキシン-1,6-ジオアート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、安息香酸メチル、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、プロピルスルホン酸塩、ベシル酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホナート、ナフタレン-2-スルホナート、フェニルアセタート、フェニルプロピオナート、フェニルブチラート、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、及びマンデル酸塩が挙げられる。他の適切な薬学的に許容される塩のリストは「Remingtonの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985年の中に見出される。
【0068】
塩基性窒素を含有する式(I)の化合物に対して、薬学的に許容される塩は、当技術分野で利用可能な任意の適切な方法、例えば、遊離塩基を無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、ホウ酸、リン酸などで処理すること、或いは有機酸、例えば、酢酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、イセチオン酸、コハク酸、バレリアン酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ピラノシジル酸、例えば、グルクロン酸若しくはガラクツロン酸など、α-ヒドロキシ酸、例えば、マンデル酸、クエン酸、若しくは酒石酸など、アミノ酸、例えば、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸など、芳香族酸、例えば、安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、ナフトエ酸、若しくはケイヒ酸など、スルホン酸、例えば、ラウリルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、若しくはエタンスルホン酸など、又は酸の任意の相容性の混合物、例えば、本明細書の実施例で付与されているものなど、並びにこの技術における普通の技能レベルを考慮して同等物又は許容される置換とみなされる任意の他の酸及びこれらの混合物で処理することにより調製することができる。
【0069】
本発明はまた、式(I)の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグ、及びこのような薬学的に許容されるプロドラッグを利用した処置方法に関する。「プロドラッグ」という用語は、対象への投与後、化学的若しくは生理的プロセス、例えば、加溶媒分解若しくは酵素的切断を介して、又は生理的条件下で(例えば、生理学的pHにさらされたプロドラッグは式(I)の化合物へと変換される)in vivoで化合物を生成する指定された化合物の前駆体を意味する。「薬学的に許容されるプロドラッグ」とは、無毒性で、生物学的に許容される、さもなければ対象への投与に対して生物学的に適切なプロドラッグである。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製に対する例証的手順は、例えば、「プロドラッグの設計(Design of prodrugs)」、H.Bundgaard編、Elsevier、1985年に記載されている。
【0070】
本発明はまた、式(I)の化合物の薬学的活性のある代謝産物、及び本発明の方法におけるこのような代謝産物の使用に関する。「薬学的活性のある代謝産物」とは、式(I)の化合物又はその塩の体内での代謝の薬理学的活性のある産物を意味する。化合物のプロドラッグ及び活性代謝物は、当技術分野で公知の又は利用可能な慣習的技術を使用して決定することができる。例えば、Bertoliniら、J.Med.Chem.1997年、40巻、2011~2016頁;Shanら、J.Pharm.Sci.1997年、86巻(7号)、765~767頁;Bagshawe、DrugDev.Res.、1995年、34巻、220~230頁;Bodor、Adv.Drug Res.、1984年、13巻、255~331頁;Bundgaard、「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)(Elsevier Press、1985年);及びLarsen、「プロドラッグの設計及び応用、ドラッグデザイン及び開発(Design and Application of Prodrugs,Drug Design and Development)(Krogsgaard-Larsenら編、Harwood Academic Publishers、1991年)を参照されたい。
医薬組成物
【0071】
処置目的のため、本明細書に記載されている化合物を含む医薬組成物は、1種又は複数種の薬学的に許容される添加剤をさらに含むことができる。薬学的に許容される添加剤は、無毒性であり、さもなければ対象への投与に対して生物学的に適切な物質である。このような添加剤は、本明細書に記載されている化合物の投与を促進し、活性成分と相容性がある。薬学的に許容される添加剤の例として、安定剤、滑沢剤、界面活性剤、賦形剤、抗酸化剤、結合剤、着色剤、増量剤、乳化剤、又は味覚改変剤が挙げられる。好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物は滅菌組成物である。医薬組成物は、公知であるか、又は当業者に利用可能となった配合技術を使用して調製することができる。
【0072】
滅菌組成物もまた、このような組成物を制御する国及び地域の規制に沿った組成物を含めて、本発明により想定されている。
【0073】
本明細書に記載されている医薬組成物及び化合物は、適切な薬学的溶媒又は担体中の液剤、乳剤、懸濁剤、若しくは分散剤として、又は固体担体と共に丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、坐剤、サシェ剤、糖衣錠、粒剤、粉末剤、再構成用粉末剤、又はカプセル剤として、様々な剤形の調製に対して当技術分野で公知の従来の方法に従い製剤化することができる。本発明の医薬組成物は、例えば、経口、非経口、直腸、経鼻、局所的、若しくは眼の経路、又は吸入による適切な送達経路により投与することができる。好ましくは、組成物は静脈内又は経口投与のために製剤化することができる。
【0074】
経口投与に対して、本発明の化合物は、固体形態、例えば、錠剤若しくはカプセル剤など、又は液剤、乳剤、若しくは懸濁剤として提供することができる。経口組成物を調製するため、本発明の化合物は、例えば、1日約0.01~約50mg/kg、又は1日約0.05~約20mg/kg、又は1日約0.1~約10mg/kgの用量をもたらすように製剤化することができる。追加の用量は、1日約0.1mg~1g、1日約1mg~約10mg、1日約10mg~約50mg、1日約50mg~約250mg、又は1日約250mg~1gを含む。経口錠剤は、相容性の薬学的に許容される添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、着色剤及び保存剤などと混合した活性成分(単数又は複数)を含むことができる。適切な不活性充填剤として、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム及びリン酸カルシウム、ラクトース、デンプン、糖、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。例示的な液体経口添加剤として、エタノール、グリセロール、水などが挙げられる。デンプン、ポリビニル-ピロリドン(PVP)、デンプングリコール酸ナトリウム、微結晶性セルロース、及びアルギン酸は例示的な崩壊剤である。結合剤はデンプン及びゼラチンを含むことができる。滑沢剤は存在する場合、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクであってよい。所望する場合、錠剤は、消化管内での吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸グリセリル若しくはジステアリン酸グリセリルなどでコーティングされていてもよいし、又は腸溶コーティングでコーティングされていてもよい。
【0075】
経口投与用カプセル剤は硬質及び軟質ゼラチンカプセルを含む。硬質ゼラチンカプセルを調製するため、活性成分(単数又は複数)を固体、半固体、又は液体の賦形剤と混合することができる。軟質ゼラチンカプセルは、活性成分を、水、油、例えば、ピーナッツ油又はオリーブ油など、流動パラフィン、短鎖脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリド混合物、ポリエチレングリコール400、又はプロピレングリコールと混合することにより調製することができる。
【0076】
経口投与用液体は、懸濁剤、液剤、乳剤、又はシロップ剤の形態であってもよいし、又は使用前に水若しくは他の適切なビヒクルで再構成するために凍結乾燥されるか、又は乾燥産物として提示されてもよい。このような液体組成物は、薬学的に許容される添加剤、例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトール、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルなど);非水性ビヒクル、例えば、油(例えば、アーモンド油又は分画されたヤシ油)、プロピレングリコール、エチルアルコール、又は水;保存剤(例えば、メチル又はプロピルp-ヒドロキシベンゾアート又はソルビン酸);湿潤剤、例えば、レシチンなど;及び、所望する場合、香味剤又は着色剤などを場合によって含有することができる。
【0077】
本発明の組成物は、直腸投与に対して坐剤として製剤化することができる。静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、又は皮下経路を含む非経口の使用に対して、本発明の薬剤は、適当なpH及び等張性又は非経口的に許容される油に緩衝させた、滅菌水溶液又は懸濁液で提供することができる。適切な水性ビヒクルとしてリンガー液及び等張性塩化ナトリウムが挙げられる。このような形態は、単回用量形態、例えば、アンプル又は使い捨て注射デバイスなど、複数回用量形態、例えば、適当な用量をそれから引き出すことができるバイアル、又は注射用製剤を調製するために使用することができる固体形態若しくは予め濃縮した形態で提示することができる。例証的注入用量は、数分間から数日間までの範囲の期間にわたり、薬学的担体と混和した薬剤の約1~1000μg/kg/分間の範囲である。
【0078】
経鼻、吸入、又は経口投与に対して、本発明の医薬組成物は、例えば、適切な担体も含有するスプレー製剤を使用して投与することができる。
【0079】
局所的適用に対して、本発明の化合物は好ましくは、局所投与に対して適切なクリーム剤若しくは軟膏剤又は類似のビヒクルとして製剤化される。局所投与に対して、本発明の化合物は、約0.1%~約10%のビヒクル対薬物濃度で薬学的担体と混合することができる。本発明の薬剤の別の投与モードは、経皮的送達を実行するためにパッチ製剤を利用することができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「処置する(treat)」又は「処置(treatment)」という用語は、「予防的(preventative)」と「治癒的(curative)」処置の両方を包含する。「予防的」処置は、疾患、疾患の症状、又は医学的状態の発症を延期する、出現し得る症状を抑制する、又は疾患若しくは症状の発症若しくは再発の危険性を減少させることを示すことを意図する。「治癒的」処置は、現存する疾患、症状、若しくは状態の重症度を減少させる、又はその悪化を抑制することを含む。よって、処置は、現存する疾患症状の悪化を回復若しくは予防する、追加の症状が生じるのを予防する、症状の根底にある全身性原因を回復若しくは予防する、障害若しくは疾患を阻害する、例えば、障害若しくは疾患の発症を止める、障害若しくは疾患を軽減する、障害若しくは疾患の退縮を引き起こす、疾患若しくは障害により引き起こされる状態を軽減する、又は疾患若しくは障害の症状を停止させることを含む。
【0081】
「対象」という用語は、このような処置を必要とする哺乳動物の患者、例えば、ヒトなどを指す。
【0082】
タンパク質凝集を特徴とする例示的な神経変性疾患として、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症(レビー小体病)、認知症を伴うパーキンソン病、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、及びハンチントン病、並びにがん及び炎症性疾患、例えば、クローン病などが挙げられる。
【0083】
一態様では、本発明の化合物及び医薬組成物は、α-シヌクレイン、β-アミロイド、及び/又はタウタンパク質凝集物を特異的に標的とする。よって、これらの化合物及び医薬組成物は、α-シヌクレイン、β-アミロイド、及び/又はタウタンパク質の凝集を調節、予防、逆転、減速、又は阻害するために使用することができ、例えば、α-シヌクレイン、β-アミロイド、及び/又はタウタンパク質の凝集などの凝集に関係する又はこれらにより引き起こされる変性的神経疾患を処置するための本発明の方法において使用される。好ましくは、本発明の方法は、α-シヌクレイン、β-アミロイド、及び/又はタウタンパク質の凝集に関連する神経変性疾患を標的とする。好ましい実施形態では、処置の方法はパーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体病、又は多系統萎縮症を標的とする。他の実施形態では、本方法はがん又は黒色腫を標的とする。本発明の化合物、組成物、及び方法はまた、タンパク質凝集に続発する有害な作用、例えば、神経細胞死などを緩和するために使用される。
【0084】
一部の態様では、本発明の化合物、組成物、及び方法は、α-シヌクレイン(SYN)凝集を標的とするために使用される。代替の態様では、本発明の化合物、組成物、及び方法はAβ凝集を標的とするために使用される。
【0085】
本発明の阻害的方法では、「有効量」とは、タンパク質又はペプチド凝集を減少させる、進行を減速させる、又は逆転させるのに十分な量を意味する。凝集量の測定は、慣習的分析法、例えば、以下に記載されているものなどにより実施することができる。このようなモジュレーションは、in vitroアッセイを含めた様々な設定において有用である。このような方法では、細胞は好ましくは神経細胞である。
【0086】
本発明による処置方法では、「有効量」とは、このような処置を必要とする対象において、所望の治療上の利益を全般的にもたらすのに十分な量又は用量を意味する。本発明の化合物の有効量又は用量は、慣習的要因、例えば、投与モード若しくは投与経路又はドラッグデリバリー、薬剤の薬物動態、感染症の重症度及び過程、対象の健康状態、状態、及び体重、並びに処置する医師の判断などを考慮して、慣習的方法、例えば、モデリング、用量段階的増大、又は治験などにより確定することができる。例示的用量は、1日当たり、対象の体重1キログラム当たり約1μg~2mg、好ましくは約0.05~100mg/kg/日、又は約1~35mg/kg/日、又は約0.1~10mg/kg/日の活性剤の範囲である。代替の実施形態では、例示的用量は、1日当たり約1mg~約1g、又は1日当たり約1~500、1~250、1~100、1~50、50~500、又は250~500mgの範囲である。全用量は、単一又は分割された用量単位(例えば、BID、TID、QID)で付与することができる。
【0087】
患者の疾患の改善が一度生じると、用量は予防療法又は維持療法に対して調整することができる。例えば、用量若しくは投与頻度、又は両方を、症状の関数として、所望の治療的又は予防的効果が維持されるレベルまで減少させることができる。当然、症状が適当なレベルまで緩和された場合、処置を停止することができる。しかし、患者は、症状の任意の再発により、長期ベースの断続的処置を必要とすることもある。患者はまた、長期ベースの慢性的処置を必要とすることもある。
薬物併用
【0088】
本明細書に記載されている本発明の化合物は、神経変性障害の処置では、1種又は複数種の追加の活性成分と併用した医薬組成物又は方法において使用することができる。がんへの適用のためのさらなる追加の活性成分は、がん化学療法剤の有害作用を緩和する他のがん治療剤又は薬剤を含む。このような組合せは、効力を増加させ、他の疾患症状を回復させ、1つ若しくは複数の副作用を低減し、又は本発明の化合物の必要用量を低減するように機能することができる。追加の活性成分は、本発明の化合物とは別個の医薬組成物で投与されてもよいし、又は本発明の化合物と共に単一の医薬組成物に含まれていてもよい。追加の活性成分は、本発明の化合物の投与と同時に、投与前又は投与後に投与することができる。
【0089】
追加の活性成分を含む併用薬剤は、神経変性障害を処置するのに有効であることが公知である、又は有効であると判明したものであり、疾患に関連する別の標的に対して活性のある、例えば、これらに限定されないが、a)タンパク質ミスホールディングを対処する化合物(例えば、これらのタンパク質の産生を減少させる、これらのクリアランスを増加させる、又はこれらの凝集及び/若しくは伝播を変化させる薬物など);b)このような障害の症状を処置する化合物(例えば、ドーパミン補充療法);及びc)相補的機序により神経保護剤として作用する薬物(例えば、自食作用を標的とするもの、抗酸化剤であるもの、及び他の機序により作用するもの、例えば、アデノシンA2Aアンタゴニストなど)を含む。
【0090】
例えば、本発明の組成物及び製剤、並びに処置の方法は、他の薬物又は医薬品、例えば、タンパク質凝集、例えば、シヌクレイン、βアミロイド及び/又はタウタンパク質の凝集に関係する又はこれらに引き起こされる変性的神経疾患、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病(AD)、レビー小体病(LBD)及び多系統萎縮症(MSA)、又は関連する症状若しくは状態を処置又は症状緩和するのに有用な他の活性剤をさらに含むことができる。例えば、本発明の医薬組成物は1種又は複数種のこのような活性剤をさらに含むことができ、処置の方法は有効量の1種又は複数種のこのような活性剤を投与することをさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、追加の活性剤は、抗生剤(例えば、抗菌剤又は静菌剤ペプチド又はタンパク質)、例えば、グラム陽性又は陰性細菌、流体、サイトカインに対して有効なもの、免疫調節剤、抗炎症剤、補体活性化剤、例えば、コラーゲン様ドメイン又はフィブリノゲン様ドメイン(例えば、フィコリン)、炭水化物結合ドメインなど及びこれらの組合せを含むペプチド又はタンパク質などであってよい。追加の活性剤は、ドーパミン療法薬物、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、認知促進剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤又はメマンチンなど)、アデノシン2A受容体アンタゴニスト、β-セクレターゼ阻害剤、及びγ-セクレターゼ阻害剤を含めた、そのような組成物及び方法において有用なものを含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの本発明の化合物は、医薬組成物において又は処置の方法において、以下からなる群から選択される1種又は複数種の薬物と併用することができる:タクリン(Cognex)、ドネペジル(Aricept)、リバスチグミン(Exelon)、ガランタミン(Reminyl)、フィゾスチグミン、ネオスチグミン、Icopezil(CP-118954、5,7-ジヒドロ-3-(2-(1-(2-フルオロベンジル)-4-ピペリジニル)エチル)-6H-ピロロ(3,2,f)-1,2-ベンズイソオキサゾール-6-オンマレアート)、ER-127528(4-[(5,6-ジメトキシ-2-フルオロ-1-インダノン)-2-イル]メチル-1-(3-フルオロベンジル)ピペリジン塩酸塩)、ザナペジル(TAK-147;3-[1-(フェニルメチル)ピペリジン-4-イル]-1-(2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1-ベンズアゼピン-8-イル)-1-プロパンフマラート)、Metrifonate(T-588;(-)-R-α-[[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]メチル]ベンゾ[b]チオフェン-5-メタノール塩酸塩)、FK-960(N-(4-アセチル-1-ピペラジニル)-p-フルオロベンズアミド-水和物)、TCH-346(N-メチル-N-2-ピロピニルジベンザ[b,f]オキセピン-10-メタンアミン)、SDZ-220-581((S)-アルファ-アミノ-5-(ホスホノメチル)-[1,1’-ビフェニル]-3-プロピオン酸)、メマンチン(Namenda/Exiba)、1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン-1-アミン(Neramexane)、タレンフルルビル(Flurizan)、トラミプロサート(Alzhemed)、クリオキノール、PBT-2(8-ヒドロキシキノリン誘導体)、1-(2-(2-ナフチル)エチル)-4-(3-トリフルオロメチルフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン、フペルジンA、ポサチレリン、ロイプロリド又はその誘導体、イスプロニクリン、(3-アミノプロピル)(n-ブチル)ホスフィン酸(SGS-742)、N-メチル-5-(3-(5-イソプロポキシピリジニル))-4-ペンテン-2-アミン(イスプロニクリン)、1-デカンアミニウム、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-N-メチル-N-オクチル-、分子内塩(zt-1)、サリチラート、アスピリン、アモキシプリン、ベノリラート、コリンマグネシウムサリチラート、ジフルニサル、フェイスラミン、サリチル酸メチル、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸サリチル、ジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、ブロムフェナク、エトドラク、インドメタシン、ナブメトン、スリンダク、トルメチン、イブプロフェン、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロキソプロフェン、ナプロキセン、チアプロフェン酸、スプロフェン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フェニルブタゾン、アザプロパゾン、メタミゾール、オキシフェンブタゾン、スルフィンプラゾン、ピロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、テノキシカム、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、ニメスリド、アリールアルカン酸、2-アリールプロピオン酸(プロフェン)、N-アリールアントラニル酸(フェナム酸)、ピラゾリジン誘導体、オキシカム、COX-2阻害剤、スルホンアニリド、必須脂肪酸、及びMinozac(2-(4-(4-メチル-6-フェニルピリダジン-3-イル)ピペラジン-1-イル)ピリミジンジヒドロクロリド水和物)及びこれらの組合せ。
【0091】
がん療法に対して有望な併用薬剤として、例えば、タンパク質及び脂質キナーゼ阻害剤(例えば、PI3K、B-raf、BCR/ABL)、放射線処置促進剤、微小管結合剤(例えば、タキソール、ビンブラスチン)、細胞代謝阻害剤、DNA挿入剤、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、ドキソルビシン)、及びDNAアルキル化剤を挙げることができる。
アッセイ
【0092】
本明細書に記載されている化合物は、in vitro、in vivo、又はex vivo実験系を含む研究用途に使用することができる。実験系は、制限なしで、細胞試料、組織試料、細胞構成成分又は細胞構成成分の混合物、全体又は部分的な器官又は生物を含むことができる。研究用途は、制限なしで、アッセイ試薬としての使用、生化学的経路の解明、又は本明細書に記載されている1種又は複数種の化合物の存在下又は非存在下での実験系に対する他の薬剤の効果の評価を含む。
【0093】
本明細書に記載されている化合物はまた、生化学的アッセイに使用することもできる。一部の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、化合物の投与に対する対象の潜在的な応答を評価するため、又は本明細書に記載のどの化合物が特定の対象又は対象のセットにおいて最適な効果をもたらすか決定するために、対象から得た組織又は細胞試料と共にインキュベートすることができる。1つのこのようなアッセイは、(a)1種又は複数種のバイオマーカーのモジュレーションをアッセイすることができる対象から細胞試料又は組織試料を得るステップ;(b)本明細書に記載されている1種又は複数種の化合物を、細胞試料又は組織試料に投与するステップ;及び(c)化合物の投与前のバイオマーカーの状態と比較して、化合物の投与後の1種又は複数種のバイオマーカーのモジュレーションの量を決定するステップを含む。場合によって、ステップ(c)に続いて、アッセイは、ステップ(c)で決定したモジュレーションの量に基づき、タンパク質凝集に関連する疾患又は医学的状態の処置において使用するための化合物を選択する追加のステップ(d)を含む。
化学合成
【0094】
本発明の方法に有用な例示的な化学物質は、以下のこれらの一般的調製及び以下に続く具体例に対する例証的合成スキームを参照してこれより記載されることになる。当業者であれば、本明細書の様々な化合物を得るために、必要に応じて所望の産物を生成するための保護を用いて、又は用いずに、反応スキームを介して最終的に所望の置換基が存続するように、出発材料を適切に選択することができることを認識している。代わりに、最終的に所望の置換基に代わって、反応スキームを介して存続することができ、必要に応じて所望の置換基と置き換えることができる適切な基を利用することが必要である又は望ましいこともある。さらに、当業者であれば、以下のスキームに示されている変換は、特定のペンダント基の官能基と相容性がある任意の順序で実施することができることを認識している。一般スキームに示されている反応のそれぞれは好ましくは、約0℃から、使用する有機溶媒の還流温度までの温度で実行する。特に明記しない限り、変数は式(I)に関連して上で定義された通りである。本明細書に記載されているように同位体標識した化合物は、適切に標識した出発材料を使用して、以下に記載されている方法に従い調製する。このような材料は放射標識した化学試薬の業者から一般的に入手可能である。
スキームA
【化8】
【0095】
式(I)のある化合物は、スキームAに示されている通り調製する。置換アミノ誘導体A1は市販のものであるか、又は公知の方法に従い調製する。化合物A1を、標準的なアミド形成条件下で、活性化したアシル化合物A2(式中、Xは、例えば、-OH又は-Clである)とカップリングさせて、式(I)の化合物を生成する。代替の実施形態では、A1をX-C(O)-A-Hal(式中、Halは、例えば、ブロモである)とカップリングさせ、ブロモ置換基を別個のステップでHNRと置き換える。
スキームB
【化9】
【0096】
スキームBに示されている通り、置換インドールA1を、アシル化し、これに続いて還元的アミノ化することによりメチル-インドールB1から調製する。これらの方法はまた、R環がインドール以外の誘導体の調製にも適用可能である。
スキームC
【化10】
【0097】
ヘテロアリール化合物C4をスキームCに従い調製する。ある化合物A、C1、A-COR(式中、RはH又はC1~4アルキルである)、及びC2は市販のものである。一部の実施形態では、化合物Aをハロゲン化して、ハロゲン化合物C1を形成し、次いでアシル化して、ビス官能化した化合物C2を形成する。他の実施形態では、化合物A-CORをハロゲン化して、化合物C2を形成する。標準的なアミドカップリング条件下でのアミンHNRとのカップリングにより、化合物C3を得る。エステルC3の加水分解はアミノ酸C4を生成し、これを、スキームAに示されている通り、カップリング反応に使用することができる。適切なヘテロ環式HNR中間体、例えば、ピペラジンなどは市販のものであるか、又は、例えば、適切に保護されたジアミンの環化、又はベンジル保護されたピペラジン誘導体のアルキル化若しくは還元的アミノ化により調製する。
スキームD
【化11】
【0098】
スキームDに示されている通り、メチル-ヘテロ環式化合物D1は、例えば、パラホルムアルデヒドで同族体化して、ヒドロキシエチル化合物D2を得る。例えば、ハロゲン化物又はトシラートとしてのヒドロキシル基の活性化、及びHNRでの置換により、アミノ化合物D3を生成する。複素環のアシル化はエステルD4をもたらし、加水分解はアミノ酸D5を生成する。
スキームE
【化12】
【0099】
スキームEに示されている通り、中間体A1はまた、ヘテロ環式アルデヒドE1を適切なニトロアルカンE2とカップリングするためのHenry反応を使用して調製することもできる。二重結合及びニトロ基の両方の還元により(1つ又は2つのステップ)、アミンA1を得る。
【0100】
ニトロアルカンE2は市販のものか、又は当業者に公知の任意の方法に従い調製してもよい。
スキームF
【化13】

スキームFに示されている通り、中間体A1はまた、アルデヒドE1とのHenry反応によりニトロアルケンF1を生成し、これに続いてオレフィン還元によりニトロアルカンF2を生成し、これにカルボニル誘導体との縮合反応を施して、水の脱離及びニトロ基の還元によりA1を得ることにより調製することもできる。当業者であれば、脱水の際にはさらなる還元ステップが必要となることもあり、還元は合成の異なる段階、例えば、脱水の直後又は最後のステップに導入することもできることを認識している。当業者であれば、還元に対して、合成の適当な段階を選択することができる。適切な段階は実施例の中にあるものを含む。
スキームG
【化14】

スキームGに示されている通り、中間体A1(式中、RはCHOR’であり、R’は例えばメチル又はエチルである)はアミノ酸誘導体から調製することができる。よって、アミノ酸G1は適切に保護して(「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)、第3版、T.W.Greene、P.G.M.Wuts、Wiley-Interscience、ISBN0-471-16019-9)誘導体G2を得ることができ、これをエステル還元して、アルコールG3を得る。よって、アルコールのアルキル化及びアミノ保護基の脱保護により、誘導体A1を生成する。
スキームH
【化15】
【0101】
スキームHで示されている通り、置換中間体E1はまた、ビニルマグネシウムブロミドでニトロフェニル誘導体F1を環化して置換インドールF2を形成することによって調製することもできる。インドールの3位へのカルボアルデヒド置換基の導入は、例えば、アルデヒドE1を得るためのVilsmaier-Haack反応を介して達成することができる。
【実施例
【0102】
分析法
【0103】
Xbridge C18-2.1×30mm、2.5μm(Waters)カラムを使用して、HPLCモジュール式Prominence(株式会社島津製作所)に連結した、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を有するLCMS-2010EV質量分析器(株式会社島津製作所)に質量分析法(MS)スペクトルを記録した。およそ1mg/mlの濃度の3μLの量の試料溶液を注入した。塩基性条件に対する移動相はA)水中の5mMギ酸アンモニウム+0.1%アンモニアと、B)アセトニトリル中の5%移動相A+0.1%アンモニアの混合物であった。使用した勾配は以下の通りであった。4分間で5:95(B/A)から95:5(B/A)、次の1分間は95:5(B/A)を保持。
【0104】
シリカゲルカラム(フラッシュクロマトグラフィーシステム用の100:200メッシュシリカゲル又はカートリッジ、例えば、Teledyne Iscoコンビフラッシュ(登録商標)など)を使用して順相クロマトグラフィーを実施した。
【0105】
Varian 400 MHz NMR分光器で、取得時間(at)=2.0秒、リラクゼーション遅延(d1)=2.0秒及び線幅拡大(lb)=0.5HzでNMRスペクトルを記録した。化学シフトは、重水素化溶媒(DMSO-d又はCDCl)の残留プロトンから導き出したシグナルを参照する。化学シフトは、百万分率(ppm)及び結合定数(J)がヘルツ(Hz)で付与される。スピン多重度は、ブロード(br)、一重線(s)、二重線(d)、三重線(t)、四重線(q)及び多重線(m)として付与される。
【0106】
略語/繰り返し試薬
【0107】
Ac:アセチル
【0108】
ACN又はMeCN:アセトニトリル
【0109】
Brine:塩化ナトリウム飽和水溶液
【0110】
nBu:n-ブチル
【0111】
tBu:tert-ブチル
【0112】
DCM:ジクロロメタン
【0113】
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
【0114】
DMAP:4-(ジメチルアミノ)ピリジン
【0115】
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
【0116】
DMSO:ジメチルスルホキシド
【0117】
ES:エレクトロスプレー陽性イオン化
【0118】
ES:エレクトロスプレー陰性イオン化
【0119】
ESI:エレクトロスプレーイオン化
【0120】
EtO:ジエチルエーテル
【0121】
EtOAc:酢酸エチル
【0122】
HATU:1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート
【0123】
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
【0124】
h:時間
【0125】
LC:液体クロマトグラフィー
【0126】
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析法
【0127】
Me:メチル
【0128】
MeOH:メタノール
【0129】
MS:質量分析法
【0130】
min.:分
【0131】
NMR:核磁気共鳴
【0132】
rt:室温
【0133】
TBAF:フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム
【0134】
TEA:トリエチルアミン
【0135】
TFA:トリフルオロ酢酸
【0136】
THF:テトラヒドロフラン
【0137】
TLC:薄層クロマトグラフィー
【0138】
化合物の名称は、Biovia Draw 2016 バージョン16.1を使用した描かれた構造から生成した。
【0139】
以下の実施例は、本発明を限定するためではなく、例証するために提供される。当業者であれば、以下の合成反応物及びスキームが他の式(I)の化合物を入手するために適切な出発材料及び試薬を選択することにより修飾され得ることを認識している。
【0140】
(例1)
N-[1-(1H-インドール-3-イルメチル)-3-メトキシ-プロピル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミド
【化16】
【0141】
ステップ-1:1-ヨード-3-メトキシ-プロパンの合成
1-ブロモ-3-メトキシ-プロパン(10.0g、65.3mmol)のアセトン(100mL)中溶液に、NaI(24.5g、163mmol)を加え、反応混合物を封管内で、75℃で3時間加熱した。反応の進行をTLCでモニターした。完了後、反応混合物を濾過し、アセトン(2×50mL)で洗浄し、濾液を減圧下、35℃で濃縮した。残渣をHO(200mL)で希釈し、EtO(3×250mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、褐色液体として1-ヨード-3-メトキシ-プロパン(10.3g、79%)を生成した。
【0142】
この化合物は、さらに精製せずに次の反応にそのまま使用した。
【0143】
【数1】
【0144】
ステップ-2:1-メトキシ-3-ニトロ-プロパンの合成
1-ヨード-3-メトキシ-プロパン(10.2g、51.0mmol)のHO(150mL)中溶液に、AgNO(15.7g、102mmol)を加え、反応混合物を封管内で、60℃で2時間加熱した。反応の進行をTLCでモニターした。完了後、反応混合物を、セライトを介して濾過し、HO(4×20mL)及びEtO(2×200mL)で洗浄した。水層をEtO(2×200mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(150mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、黄色の液体として、1-メトキシ-3-ニトロ-プロパン(3.56g、59%)を生成した。
【0145】
この化合物は、さらに精製せずに次の反応にそのまま使用した。
【0146】
【数2】

ステップ-3:3-[(E)-4-メトキシ-2-ニトロ-ブタ-1-エニル]-1H-インドールの合成
1-メトキシ-3-ニトロ-プロパン(3.50g、28.9mmol)及び1H-インドール-3-カルボアルデヒド(0.70g、4.82mmol)のCHCOOH(5mL)中溶液に、NHOAc(0.44g、5.80mmol)を加え、反応混合物を封管内で、100℃で16時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を減圧下で濃縮した。NaHCO飽和溶液で残渣をpH8に塩基性化し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(75mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、230~400メッシュ、ヘキサン中0~10%EtOAc)で精製して、オレンジ色の固体として、3-[(E)-4-メトキシ-2-ニトロ-ブタ-1-エニル]-1H-インドール(0.52g、44%)を生成した。
【0147】
【数3】
【0148】
【数4】
【0149】
ステップ-4:1-(1H-インドール-3-イル)-4-メトキシ-ブタン-2-アミンの合成
LiAlH(0.34g、9.10mmol)のTHF(5mL)中懸濁液に、THF(15mL)中の3-[(E)-4-メトキシ-2-ニトロ-ブタ-1-エニル]-1H-インドール(0.45g、1.82mmol)溶液を0℃で加え、反応混合物を同じ温度で10分間撹拌した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を5時間加熱還流した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を飽和NaSO(0.7mL)及びEtOAc(50mL)でクエンチした。反応混合物を、セライトを介して濾過し、EtOAc(3×50mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮して、淡褐色の液体として、1-(1H-インドール-3-イル)-4-メトキシ-ブタン-2-アミン(0.37g粗原料)を生成した。
この化合物は、さらに精製せずに次の反応にそのまま使用した。
【0150】
【数5】
【0151】
ステップ-5:N-[1-(1H-インドール-3-イルメチル)-3-メトキシ-プロピル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミドの合成
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボン酸(0.45g、1.98mmol)のDMF(5mL)中溶液に、HATU(0.81g、2.14mmol)を加え、これに続いてDIPEA(0.64g、4.95mmol)を加えた。反応混合物を室温で20分間撹拌し、これに続いて、DMF(3mL)中の1-(1H-インドール-3-イル)-4-メトキシ-ブタン-2-アミン(0.36g、1.65mmol)溶液を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物をHO(100mL)で希釈し、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機層を分離し、HO(2×75mL)、ブライン(75mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、230~400メッシュ、DCM中0~6%MeOH)及びprep HPLCで精製して、白色の固体として、N-[1-(1H-インドール-3-イルメチル)-3-メトキシ-プロピル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(0.07g、10%)を生成した。
【0152】
HPLC純度:98.4%
【0153】
【数6】
【0154】
【数7】

(例2)
N-[1-(エトキシメチル)-2-(1H-インドール-3-イル)エチル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミド
【化17】
【0155】
ステップ-1:エチル2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパノアートの合成
2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパン酸(7.00g、34.3mmol)のEtOH(150mL)中溶液に、SOCl(8.80mL、51.0mmol)を0℃で滴下添加し、反応混合物を4時間加熱還流した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc(500mL)で希釈し、NaHCO(400mL)水溶液で洗浄した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、淡褐色の液体として、エチル2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパノアート(6.50g粗原料)を生成した。
【0156】
【数8】
【0157】
【数9】
【0158】
ステップ-2:tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-エトキシ-3-オキソ-プロピル]インドール-1-カルボキシラートの合成
エチル2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパノアート(4.50g、19.3mmol)のDCM(60mL)中溶液に、n-BuNHSO(0.63g、1.93mmol)を加え、これに続いてNaOH(3.81g、95.2mmol)を加えた。反応混合物を室温で15分間撹拌した。(Boc)O(12.6g、57.9mmol)を滴下添加し、反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物をHO(200mL)で希釈し、DCM(2×60mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中10~15%EtOAc)で精製して、オフホワイト色の固体として、tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-エトキシ-3-オキソ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(4.90g、59%)を生成した。
【0159】
【数10】
【0160】
ステップ-3:tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヒドロキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラートの合成
tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-エトキシ-3-オキソ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(4.80g、11.0mmol)のTHF(60mL)中溶液に、LiCl(1.16g、27.0mmol)を加え、これに続いてNaBH(1.02g、27.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌した。EtOH(60mL)を加え、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLCでモニターした。完了後、反応混合物をNHCl(60mL)水溶液及びHO(100mL)でクエンチした。生成物をEtOAc(3×100mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣を、ペンタン(100mL)で粉砕することによって精製して、オフホワイト色の固体として、tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヒドロキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(4.20g、96%)を生成した。
【0161】
【数11】
【0162】
ステップ-4:tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-エトキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラートの合成
tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヒドロキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(1.00g、2.56mmol)のCHCN(30mL)中溶液に、AgO(2.96g、12.8mmol)を加え、これに続いてEtI(2.00g、12.8mmol)を加えた。反応混合物を室温で72時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を、セライトを介して濾過し、EtOAc(50mL)で洗浄し、濾液を減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ100~200メッシュ、ヘキサン中5~10%EtOAc)で精製して、オフホワイト色の固体として、tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-エトキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(0.68g、25%)を生成した。
【0163】
【数12】
【0164】
【数13】
【0165】
ステップ-5:1-エトキシ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-アミントリフルオロ酢酸塩の合成
tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-エトキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(0.65g、1.55mmol)のDCM(15mL)中溶液に、TFA(3mL)を加え、反応混合物を室温で16時間撹拌した。さらなるTFA(3mL)を加え、撹拌を24時間継続した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得た粗残渣を減圧下で乾燥させて、淡褐色の半固体として、1-エトキシ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-アミントリフルオロ酢酸塩(0.38g粗原料)を生成した。
【0166】
【数14】
【0167】
ステップ-6:N-[1-(エトキシメチル)-2-(1H-インドール-3-イル)エチル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミドの合成
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボン酸(0.29g、1.32mmol)のDMF(8mL)中溶液に、HATU(0.83g、2.20mmol)を加え、これに続いてDIPEA(0.95mL、5.50mmol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、これに続いて、DMF(1.8mL)中の1-エトキシ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-アミントリフルオロ酢酸塩(0.25g、1.10mmol)溶液を加えた。反応混合物を室温で5時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物をHO(40mL)で希釈し、EtOAc(2×100mL)で抽出した。有機層を分離し、氷HO(100mL)、ブライン(200mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、DCM中5~10%MeOH)及びprep HPLCで精製して、オフホワイト色の固体として、N-[1-(エトキシメチル)-2-(1H-インドール-3-イル)エチル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(0.14g、30%)を生成した。
【0168】
HPLC純度:96.2%
【0169】
【数15】
【0170】
【数16】

(例3)
N-[1-(1H-インドール-3-イルメチル)-2-メトキシ-エチル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミド
【化18】
【0171】
ステップ-1:エチル2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパノアートの合成
2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパン酸(10.0g、49.0mmol)のEtOH(250mL)中溶液に、SOCl(8.60g、73.0mmol)を0℃で滴下添加し、反応混合物を4時間加熱還流した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc(700mL)で希釈し、NaHCO(550mL)水溶液で洗浄した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、淡褐色の液体として、エチル2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパノアート(11.4g粗原料)を生成した。
【0172】
【数17】
【0173】
【数18】
【0174】
ステップ-2:tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-エトキシ-3-オキソ-プロピル]インドール-1-カルボキシラートの合成
エチル2-アミノ-3-(1H-インドール-3-イル)プロパノアート(5.00g、21.0mmol)のDCM(150mL)中溶液に、n-BuNHSO(0.73g、2.10mmol)を加え、これに続いてNaOH(4.30g、107mmol)を加えた。反応混合物を室温で15分間撹拌した。(Boc)O(14.0g、64.0mmol)を滴下添加し、反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物をHO(250mL)で希釈し、DCM(2×100mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中10~15%EtOAc)で精製して、オフホワイト色の固体として、tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-エトキシ-3-オキソ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(3.70g、40%)を生成した。
【0175】
【数19】
【0176】
【数20】
【0177】
ステップ-3:tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヒドロキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラートの合成
tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-エトキシ-3-オキソ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(7.40g、17.0mmol)のTHF(80mL)中溶液に、LiCl(1.80g、42.0mmol)を加え、これに続いてNaBH(1.60g、42.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌した。EtOH(80mL)を加え、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物をNHCl(100mL)水溶液及びHO(150mL)でクエンチした。生成物をEtOAc(3×150mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗原料を、ペンタン(150mL)で粉砕することによって精製して、オフホワイト色の固体として、tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヒドロキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(4.80g、72%)を生成した。
【0178】
【数21】
【0179】
【数22】
【0180】
ステップ-4:tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-メトキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラートの合成
tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヒドロキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(1.50g、3.00mmol)のCHCN(40mL)中溶液に、AgO(4.40g、19.0mmol)を加え、これに続いて、CHI(2.73g、19.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で72時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を、セライトを介して濾過し、EtOAc(75mL)で洗浄し、濾液を減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ100~200メッシュ、ヘキサン中5~10%EtOAc)で精製して、オフホワイト色の半固体として、tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-メトキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(0.86g、55%)を生成した。
【0181】
【数23】
【0182】
【数24】
【0183】
ステップ-5:1-(1H-インドール-3-イル)-3-メトキシ-プロパン-2-アミントリフルオロ酢酸塩の合成
tert-ブチル3-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-メトキシ-プロピル]インドール-1-カルボキシラート(0.85g、2.10mmol)のDCM(20mL)中溶液に、TFA(8.5mL)を加え、反応混合物を室温で48時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得た粗残渣をDCM(30mL)と同時蒸発させて、淡褐色の半固体として、1-(1H-インドール-3-イル)-3-メトキシ-プロパン-2-アミントリフルオロ酢酸塩(0.49g粗原料)を生成した。
【0184】
【数25】
【0185】
ステップ-6:N-[1-(1H-インドール-3-イルメチル)-2-メトキシ-エチル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミドの合成
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボン酸(0.20g、0.88mmol)のDMF(4mL)溶液に、HATU(0.66g、1.76mmol)を加え、これに続いてDIPEA(0.80mL、4.40mmol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、これに続いて、DMF(2mL)中の1-(1H-インドール-3-イル)-3-メトキシ-プロパン-2-アミントリフルオロ酢酸塩(0.47g、1.58mmol)溶液を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物をHO(100mL)で希釈し、EtOAc(2×100mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗原料をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、DCM中2~10%MeOH)及びprep HPLCで精製して、オフホワイト色の固体として、N-[1-(1H-インドール-3-イルメチル)-2-メトキシ-エチル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(0.07g、19%)を生成した。
【0186】
HPLC純度:98.3%
【0187】
【数26】
【0188】
【数27】
【0189】
(例4)
N-[2-(1H-インドール-3-イル)-1-テトラヒドロピラン-4-イル-エチル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミド
【化19】
【0190】
ステップ-1:3-[(E)-2-ニトロビニル]-1H-インドールの合成
1H-インドール-3-カルボアルデヒド(15.0g、103mmol)のCHCOOH(81mL)中溶液に、NHOAc(8.04g、103mmol)を加え、反応混合物を室温で5分間撹拌した。CHNO(33.3mL、618mmol)を室温で滴下添加し、反応混合物を同じ温度で10分間撹拌した。反応混合物を封管内で、110℃で6時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を、飽和NaHCOでpH8に塩基性化し、EtOAc(3×450mL)で抽出した。有機層をブライン(300mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、230~400メッシュ、ヘキサン中0~15%EtOAc)で精製して、褐色の固体として、3-[(E)-2-ニトロビニル]-1H-インドール(7.01g、36%)を生成した。
【0191】
【数28】
【0192】
【数29】
【0193】
ステップ-2:tert-ブチル3-[(E)-2-ニトロビニル]インドール-1-カルボキシラートの合成
3-[(E)-2-ニトロビニル]-1H-インドール(7.00g、37.2mmol)のDCM(140mL)中溶液に、DMAP(0.45g、3.72mmol)を加え、反応混合物を室温で30分間撹拌した。DCM(70mL)中の(Boc)O(9.15mL、40.9mmol)溶液を滴下添加し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物をHO(400mL)で希釈し、DCM(4×250mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、230~400メッシュ、ヘキサン中0~5%EtOAc)で精製して、黄色の固体として、tert-ブチル3-[(E)-2-ニトロビニル]インドール-1-カルボキシラート(9.01g、84%)を生成した。
【0194】
【数30】
【0195】
【数31】
【0196】
ステップ-3:tert-ブチル3-(2-ニトロエチル)インドール-1-カルボキシラートの合成
tert-ブチル3-[(E)-2-ニトロビニル]インドール-1-カルボキシラート(9.00g、31.2mmol)のTHF(300mL)及びMeOH(120mL)中溶液に、NaBH(3.56g、93.7mmol)を30分の期間にわたり少しずつ加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物をHO(2×200mL)及び2N HCl(2×150mL)でクエンチし、EtOAc(3×700mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(500mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、230~400メッシュ、ヘキサン中0~3%EtOAc)で精製して、黄色の固体としてtert-ブチル3-(2-ニトロエチル)インドール-1-カルボキシラート(3.82g、42%)を生成した。
【0197】
【数32】
【0198】
【数33】
【0199】
ステップ-4:tert-ブチル3-[2-(4-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-2-ニトロ-エチル]インドール-1-カルボキシラートの合成
tert-ブチル3-(2-ニトロエチル)インドール-1-カルボキシラート(1.80g、6.20mmol)のTHF(80mL)中溶液に、THF(12.4mL、12.4mmol)中の1M TBAF溶液を-5℃で滴下添加し、反応混合物を同じ温度で45分間撹拌した。THF(10mL)中のテトラヒドロピラン-4-オン(1.54g、15.5mmol)溶液を-5℃で加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を氷冷水(100mL)でクエンチし、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(75mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、230~400メッシュ、ヘキサン中0~25%EtOAc)で精製して、黄色の固体として、tert-ブチル3-[2-(4-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-2-ニトロ-エチル]インドール-1-カルボキシラート(1.11g、46%)を生成した。
【0200】
【数34】
【0201】
【数35】
【0202】
ステップ-5:tert-ブチル3-[2-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-2-ニトロ-エチル]インドール-1-カルボキシラートの合成
tert-ブチル3-[2-(4-ヒドロキシテトラヒドロピラン-4-イル)-2-ニトロ-エチル]インドール-1-カルボキシラート(1.10g、2.82mmol)のDCM(35mL)中溶液に、ピリジン(0.50mL、6.20mmol)を0℃で滴下添加し、反応混合物を同じ温度で30分間撹拌した。SOCl(0.45mL、6.20mmol)を0℃で加え、反応混合物を同じ温度で10分間撹拌した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣をHO(100mL)で希釈し、DCM(4×100mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗原料をカラムクロマトグラフィー(シリカ、230~400メッシュ、ヘキサン中0~15%EtOAc)で精製して、オフホワイト色の固体として、tert-ブチル3-[2-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-2-ニトロ-エチル]インドール-1-カルボキシラート(0.79g、76%)を生成した。
【0203】
【数36】
【0204】
【数37】
【0205】
ステップ-6:tert-ブチル3-[2-アミノ-2-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)エチル]インドール-1-カルボキシラートの合成
tert-ブチル3-[2-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-2-ニトロ-エチル]インドール-1-カルボキシラート(0.81g、2.17mmol)のMeOH(30mL)中溶液に、Zn(1.42g、21.7mmol)を加え、これに続いてNHCl(1.16g、21.7mmol)を少しずつ加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を、セライトを介して濾過し、MeOH(150mL)で洗浄し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をHO(100mL)で希釈し、EtOAc(3×150mL)中の10%MeOHで抽出した。有機層を分離し、ブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をペンタン(40mL)で粉砕して、白色の固体として、tert-ブチル3-[2-アミノ-2-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)エチル]インドール-1-カルボキシラート(0.64g粗原料)を生成した。
【0206】
【数38】
【0207】
【数39】
【0208】
ステップ-7:tert-ブチル3-[2-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-2-[[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボニル]アミノ]エチル]インドール-1-カルボキシラートの合成
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボン酸(0.50g、2.21mmol)のDMF(5mL)中溶液に、HATU(0.91g、2.40mmol)を加え、これに続いてDIPEA(0.96mL、5.52mmol)を加え、反応混合物を室温で10分間撹拌した。DMF(5mL)中のtert-ブチル3-[2-アミノ-2-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)エチル]インドール-1-カルボキシラート(0.63g、1.84mmol)溶液を滴下添加し、反応混合物を封管内で、室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を氷冷水(100mL)で希釈し、EtOAc(3×150mL)で抽出した。有機層を分離し、HO(2×100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、230~400メッシュ、DCM中0~5%MeOH)で精製して、オフホワイト色の固体として、tert-ブチル3-[2-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-2-[[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボニル]アミノ]エチル]インドール-1-カルボキシラート(0.58g、58%)を生成した。
【0209】
【数40】
【0210】
【数41】
【0211】
ステップ-8:tert-ブチル3-[2-[[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボニル]アミノ]-2-テトラヒドロピラン-4-イル-エチル]インドール-1-カルボキシラートの合成
tert-ブチル3-[2-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-2-[[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボニル]アミノ]エチル]インドール-1-カルボキシラート(0.40g、0.72mmol)のMeOH(5mL)中溶液に、PtO(0.32g)を加え、反応混合物を水素雰囲気下、室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を、セライトを介して濾過し、MeOH(100mL)で洗浄し、濾液を減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、230~400メッシュ、0~5%MeOH)で精製して、オフホワイト色の固体として、tert-ブチル3-[2-[[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボニル]アミノ]-2-テトラヒドロピラン-4-イル-エチル]インドール-1-カルボキシラート(0.28g、71%)を生成した。
【0212】
【数42】
【0213】
【数43】
【0214】
ステップ-9:N-[2-(1H-インドール-3-イル)-1-テトラヒドロピラン-4-イル-エチル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミドの合成
tert-ブチル3-[2-[[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボニル]アミノ]-2-テトラヒドロピラン-4-イル-エチル]インドール-1-カルボキシラート(0.28g、0.50mmol)のDCM(5mL)中溶液に、TFA(2.00mL)を加え、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSでモニターした。完了後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣を飽和NaHCOでpH8まで塩基性化し、EtOAc(3×150mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。得た粗残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカ、230~400メッシュ、DCM中0~6%MeOH)で精製して、オフホワイト色の固体として、N-[2-(1H-インドール-3-イル)-1-テトラヒドロピラン-4-イル-エチル]-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)チアゾール-5-カルボキサミド(0.087g、38%)を生成した。
【0215】
HPLC純度:96.7%
【0216】
【数44】
【0217】
【数45】

(生物学的例1)
α-シヌクレインペプチド断片(4F)を用いたin vitro蛍光偏光法アッセイ。
【0218】
蛍光偏光法アッセイは、α-シヌクレインペプチド断片の自己凝集を阻害する化合物の能力を試験する。ペプチドを、試験化合物(化合物濃度は33.3~0.015 Mであった)の存在下で又は非存在下、室温で120分間インキュベートした。試料は、485nmでの励起及び520nmでの発光を使用して、蛍光偏光法モードでBeckmanコールターDTX 880プレートリーダーで読み取った。4パラメーターロジスティックフィット(XLFit、IDBS Software)を使用してデータを分析した。ペプチド4F(CTGFVKKDQLGK(配列番号1))はAmerican Peptideにより調製した。新鮮なペプチド試料を精製水中5mMで再構成し、50mM NaClを有する50mM HEPES pH7.4の中に入れて最終濃度100nMに希釈した。固体化合物をDMSO(10mM)に溶解し、次いでDMSO(300×)中で連続的に希釈し、これに続いて緩衝液(1x)中で希釈して、一貫した最終DMSO濃度0.33%を有する溶液を得た。試験した化合物に対するデータは表1に提示されている。
【表2】

(生物学的例2)
脂質膜とのα-シヌクレイン相互作用に対する試験化合物の効果のためのNMRアッセイ
【0219】
脂質膜の存在下での試験化合物の全長ASYNとの相互作用を測定するため、NMRアッセイを行う。ロック溶媒として10%DOを用いて、Varian Direct Drive 600MHz及びVarian Inova 800MHz分光器で、20mM Phosphate、pH=7.4、100mM NaCl中でNMR測定を行う。NMRPipeを使用してスペクトルを処理する(F.Delaglio、S.Grzesiek、G.W.Vuister、G.Zhu、J.Pfeifer、A.Bax、J Biomol NMR、1995年、6巻、277~293頁を参照されたい)。存在する場合1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(POPG)-リポソームを0.8mg/mlで加えながら、α-シヌクレインを0.12 mMで使用する。すべてのH-15N相関スペクトルをSOFASTパルスシークエンスで記録する(P.Schanda、E.Kupce、B.Brutscher、J Biomol NMR、2005年、33巻、199~211頁を参照されたい)。生理学的条件付近の共鳴割当は、以前の刊行物から容易に入手できる(BMRB ID 16300;J.N.Rao、Y.E.Kim、L.S.Park、T.S.Ulmer、J Mol Biol、2009年、390巻、516~529頁を参照されたい)。リガンド滴定のため、試験化合物をリポソーム/ASYN混合物に段階的に加える。15N-H相関スペクトルを各ステップに対して記録し、シグナル強度は、希釈効果を考慮しながら、ASYNの遊離形態を基準とする。利用可能なデータ中のノイズを減少させるため、ASYNのいくつかのアミドの位置に対する強度比を、以前観察されたSL1及びSL2結合モードに対応するように選択された2つの領域に対して平均する(C.R.Bodner、A.S.Maltsev、C.M.Dobson、A.Bax、Biochemistry、2010年、49巻、862~871頁を参照されたい)。
【0220】
ASYNに対する異核種単一量子コヒーレンス(HSQC)分光法シグナル強度は、ASYNを脂質膜に埋め込んだ場合減衰する。試験化合物によるHSQCシグナルの脂質誘発性減弱の逆転は、ASYNの脂質膜への結合を破壊する試験化合物の能力を示唆している。試験化合物は、ASYNと、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホグリセロール(POPG)(0.8mg/mL)リポソームとの相互作用を濃度依存方式で逆転することができる。ASYN残基66~76に対する結果もまた分析する。
(生物学的例3)
脂質膜内の環状オリゴマーに対する試験化合物の効果
【0221】
電子顕微鏡法を使用して、脂質膜内でのASYNオリゴマー形成に対する試験化合物の作用を直接視覚化する。脂質単層を有するFormvarグリッドを、50%EtOH中酢酸ウラニル飽和溶液で25分間対比染色する。次いで、グリッドを2%次硝酸ビスマスの小滴上に10分間フロートさせ、再度、再蒸留水で3回慎重にすすぎ、完全に乾燥させる。Zeiss EM10透過電子顕微鏡Electron Microscopeを使用してグリッドを画像化する。各試料グリッドから、10,000×倍率の5~10枚の透過電子顕微鏡写真、及び40,000×での5~10枚の画像を得る。最も良いネガティブをスキャンし、ImageJ 1.43プログラムで分析して、ハイパワーフィールドごとの環状オリゴマーの数を予測する(100×100nm)(Rasband、W.S.、ImageJ、U.S. National Institutes of Health、Bethesda、Maryland、USA、http://imagej.nih.gov/ij/、1997~2014)。
【0222】
オリゴマー性及び脂質結合型のASYNと相互作用する試験化合物は、脂質膜に対するASYNオリゴマーの親和性を減少させるような方式でそれを行うことができる。化合物は、ASYNのオリゴマー化、ASYNの脂質膜への結合、及びこれらの膜内の環状の環様オリゴマーの形成(「細孔」)を妨げることができ、これによって、ASYNの凝集を変化させ、パーキンソン病におけるミスフォールドした、オリゴマー化したASYNの神経毒性の一因と考えられている特定のオリゴマー構造の形成を阻止することができる。
(生物学的例4)
細胞内α-シヌクレインに対する試験化合物の効果
【0223】
ヒトASYNを過剰発現するB103神経芽細胞腫細胞中のASYNの蓄積に対する試験化合物の効果を研究する。レンチウイルス発現系を使用して、これらの細胞内にGFPタグ付きASYNを発現させる。発現が開始されてから48時間後、ビヒクル又は試験化合物を、追加の24時間の間加える。次いで、蓄積したGFP-ASYNの量を視覚化して、ASYNを過剰発現する細胞内のASYN-GFP濃度の減少を決定する。
(生物学的例5)
in vivoでの効力実験
【0224】
パーキンソン病(PD)は、オリゴマー形態のα-シヌクレイン(ASYN)の異常な蓄積を特徴とする。これらの有毒性形態のASYNがPD及び他のシヌクレイノパチーにおいて観察されているニューロン機能障害及び細胞死に、細胞膜内の細孔様構造の形成を介して部分的に寄与していると仮定されている。本明細書に記載されている化合物は、これら有毒種のASYNの形成及び蓄積を選択的に遮断することによってPD関連の症状及び病理を回復させるように設計された。
【0225】
A)パーキンソン病の遺伝子組み換えマウスモデル。Thy-1プロモーター下でのヒト野生型ASYNを過剰発現するPDの遺伝子組み換えマウスモデル(61系統ASYN遺伝子組み換えマウスとも呼ばれる)において、0、1、又は5mg/kg(i.p.)の試験化合物を1日1回(週5日)3カ月間投与し、次いでPD関連感覚運動性能、生化学的改変、及びASYN及び関連タンパク質における神経病理的変化をアセスメントすることによって、試験化合物を評価する。
【0226】
主要評価項目測定基準としてのスリップの数を使用して感覚運動機能障害をアセスメントするためにRound Beam Taskを使用する。ASYN遺伝子組み換え及び非遺伝子組み換えマウスを試験し、ビヒクル処理した非遺伝子組み換え対照被検体と比較して、ビヒクル処理した遺伝子組み換え対象に対してスリップ数の増加における統計的有意性を計算する。
【0227】
脳皮質及び海馬脳のホモジネートのウエスタンブロット分析を実施し、遺伝子組み換えASYNタンパク質レベルの減少の統計的有意性を計算する。A11抗体ドットブロット法(ASYNを含む)を使用して、皮質ホモジネートにおけるオリゴマータンパク質の生化学的評価を実施する。
【0228】
B)61系統ASYN遺伝子組み換えマウスモデル。Masliah及び同僚による過去の免疫標識実験は、61系統ASYN遺伝子組み換えマウスの皮質神経網におけるASYN免疫標識の統計学的に有意な増加を実証した(Masliah E.ら、Science、2000年、287巻(5456号):1265~9頁)。これらの神経病理的知見は、Masliah及び同僚により記載の方法を使用した現在の研究において再確認できる。チロシンヒドロキシラーゼ、NeuN、及びGFAPを含む神経変性関連マーカーがモニターされている。
【0229】
系統61ASYN遺伝子組み換えマウスにおける感覚運動機能障害に対する様々な用量での試験化合物の効果を、上記に記載されているラウンドビーム運動性能アッセイを使用して研究し、ビヒクル処理された非遺伝子組み換え対照被検体と比較した、ビヒクル処理されたASYN遺伝子組み換え対照マウスにおけるスリップ数の増加の統計的有意性を計算する。これらの実験は、遺伝子組み換えマウスモデルのパーキンソン病/レビー小体型認知症(PD/DLB)における感覚運動、生化学的、挙動、及び神経病理結果の改善を評価する。