(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】表面再活性化処理
(51)【国際特許分類】
B05D 3/10 20060101AFI20220705BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20220705BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220705BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220705BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220705BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220705BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B05D3/10 Z
B05D7/02
B05D7/24 303A
B05D7/24 303E
C09D5/00 D
C09D7/20
C09D7/61
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2019547656
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(86)【国際出願番号】 IB2018051204
(87)【国際公開番号】W WO2018158673
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ランヤ・シモンズ
(72)【発明者】
【氏名】シェン・リ
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・アーサー・ベイトマン
(72)【発明者】
【氏名】エマ・シモンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジル・エリザベス・シーバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・エー・ボールス
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ヘンリー・ベリー
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-528247(JP,A)
【文献】特表2008-508416(JP,A)
【文献】特開2009-160538(JP,A)
【文献】特開2001-162220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に存在する有機塗料コーティングの表面を再活性化する方法であって、前記方法が、
前記有機塗料コーティングに表面処理剤を塗布するステップであって、前記表面処理剤が溶媒、ナノ粒子
、並びにチタネート、ジルコネート及びそのキレートの少なくとも1つから選択される表面交換剤
を含む、ステップを含
み、
前記ナノ粒子が、1~160nmの粒径を有し、
前記ナノ粒子が、炭素系ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子である、方法。
【請求項2】
基板上に配置された有機塗料コーティングへのコーティングの付着力を促進する方法であって、前記方法が、
再活性化有機塗料コーティングを形成するために前記有機塗料コーティングに表面処理剤を塗布するステップであって、前記表面処理剤が溶媒、ナノ粒子
、並びにチタネート、ジルコネート及びそのキレートの少なくとも1つから選択される表面交換剤
を含む、ステップと、
前記再活性化有機塗料コーティング上に第2のコーティングを堆積させるステップとを含
み、
前記ナノ粒子が、1~160nmの粒径を有し、
前記ナノ粒子が、炭素系ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子である、方法。
【請求項3】
前記表面処理剤が、添加剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒、
表面交換剤、ナノ粒子及び添加剤が混合物として前記有機塗料コーティングに塗布される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、5mb未満の水蒸気分圧の湿度で
、10℃~35℃の温度にて実施される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒がケトン、アルコール、エーテル又はその組合せから選択される有機溶媒である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、グリコール、グリコールエーテル、アルコール、グリコールモノエーテルアルコール又はその組合せである、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機溶媒が、グリコールジエーテル:C
1-6アルコール又はC
1-4アルコールであるエーテル:アルコールの組合せである、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記グリコールジエーテルがジプロピレングリコールジメチルエーテルであり、並びに前記C
1-4アルコールがイソプロパノール及び/又はn-プロパノールである、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、前記
表面処理剤の総重量に対し
て90%
~99%の量で存在する、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記表面交換剤が、C
1-10アルキルチタネート、C
1-10アルキルジルコネート又はそのキレートである、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記C
1-10アルキルチタネート若しくはそのキレートが、テトラ-n-プロピルチタネートであり、又は前記C
1-10アルキルジルコネート若しくはそのキレートがテトラ-n-プロピルジルコネートである、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記表面交換剤が、前記
表面処理剤の前記総重量に対し
て1%
~8%の量で存在する、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ粒子が、カーボンブラック、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子が、前記
表面処理剤の前記総重量に対し
て0.5%未満の量で存在する、請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記表面処理剤が、前記溶媒、ナノ粒子、添加剤及び表面交換剤からなる、請求項
3から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記添加剤が、レオロジー調節剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤及び耐食剤の少なくとも1つから選択される、請求項
3から
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記添加剤が、着色剤及び耐食剤の少なくとも1つから選択される、請求項
3から
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記添加剤が、前記
表面処理剤の前記総重量に対し
て10%未満の量で存在する、請求項
3から
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記
表面処理剤が溶液又はエマルジョンである、請求項1から
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記基板が実質的に非弾性のパネルである、請求項1から
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記基板が金属、金属合金又は複合材料である、請求項1から
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記有機塗料コーティングの前記表面を乾燥させるステップをさらに含む、請求項1から
22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2のコーティングが前記有機塗料コーティングの前記表面に塗布された後に測定される際に、前記有機塗料コーティングの色ずれ(ΔE)が1未満である、請求項1から
23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
さらなるコーティングへの有機塗料コーティングの付着力を促進するために基板上に存在する前記有機塗料コーティングの表面を再活性化する表面処理配合物であって、前記配合物が、
(a)チタネート、ジルコネート又はそのキレートから選択される表面交換剤、
(b)前記配合物の総重量%に対して少なくと
も85重量%の量で存在する1つ以上の有機溶媒、
及び
(c)ナノ粒子
、を含み、
前記ナノ粒子が、1~160nmの粒径を有し、
前記ナノ粒子が、炭素系ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子である、表面処理配合物。
【請求項26】
前記配合物の総重量に対して10重量%未満の量で存在する添加剤をさらに含む、請求項25に記載の表面処理配合物。
【請求項27】
前記表面処理配合物が、前記表面交換剤、1つ以上の有機溶媒、ナノ粒子及び添加剤からなる、請求項26に記載の表面処理配合物。
【請求項28】
(a)前記表面交換剤が前記配合物の総重量%に対し
て8重量%未満の量で存在し、
(b)前記
1つ以上の有機溶媒が前記配合物の前記総重量%に対して少なくと
も85重量%の量で存在し、
(c)前記ナノ粒子が前記配合物の前記総重量%に対し
て2重量%未満の量で存在し、及び
(d)前記添加剤が
、前記配合物の前記総重量%に対し
て10重量%未満の量で存在する、
請求項26に記載の表面処理配合物。
【請求項29】
前記表面交換剤が、前記配合物の前記総重量に対し
て1%
~7%の量で存在する、請求項
25、26又は28に記載の表面処理配合物。
【請求項30】
前記
1つ以上の有機溶媒が、前記配合物の前記総重量に対し
て95%
~98%の量で存在する、請求項
25から29のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
【請求項31】
前記ナノ粒子が、前記配合物の前記総重量に対し
て1%未満の量で存在する、請求項
25から30のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
【請求項32】
前記添加剤が、前記配合物の前記総重量に対し
て5%未満の量で存在する、請求項26から31のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
【請求項33】
前記表面交換剤
がエステル交換剤であって、前記エステル交換剤が、C
1-10アルキルチタネート若しくはそのキレート又はC
1-10アルキルジルコネート若しくはそのキレートである、請求項
25から32のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
【請求項34】
前記C
1-10アルキルチタネート若しくはそのキレートがテトラ-n-プロピルチタネートであり、又は前記C
1-10アルキルジルコネート若しくはそのキレートがテトラ-n-プロピルジルコネートである、請求項33に記載の表面処理配合物。
【請求項35】
前記有機溶媒がケトン、アルコール、エーテル又はその組合せから選択される、請求項
25から34のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
【請求項36】
前記有機溶媒がグリコール、グリコールエーテル、アルコール、グリコールモノエーテルアルコール又はその組合せである、請求項35に記載の表面処理配合物。
【請求項37】
前記有機溶媒がエーテル:アルコールの組合せである、請求項35に記載の表面処理配合物。
【請求項38】
前記エーテル:アルコールの組合せがグリコールジエーテル:C
1-6アルコール又はC
1-4アルコールである、請求項37に記載の表面処理配合物。
【請求項39】
前記グリコールジエーテルがジプロピレングリコールジメチルエーテルであり、並びに前記C
1-4アルコールがイソプロパノール及び/又はn-プロパノールである、請求項38に記載の表面処理配合物。
【請求項40】
前記ナノ粒子が、カーボンブラック、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の少なくとも1つから選択される、請求項
25から39の何れか一項に記載の表面処理配合物。
【請求項41】
前記添加剤が、レオロジー調節剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤及び耐食剤の少なくとも1つから選択される、請求項26から
40のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
【請求項42】
前記添加剤が、着色剤及び耐食剤の少なくとも1つから選択される、請求項
41に記載の表面処理配合物。
【請求項43】
前記配合物が溶液又はエマルジョンである、請求項
25から
42のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
【請求項44】
偶発的不純物以外に、前記配合物が、
ジプロピレングリコールジメチルエーテル並びにイソプロパノール及びn-プロパノールの少なくとも1つを含む溶媒、
テトラ-n-プロピルチタネート及びテトラ-n-プロピルジルコネートの少なくとも1つの表面交換剤、
カーボンブラック、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の少なくとも1つのナノ粒子並びに
レオロジー調節剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤及び耐食剤の少なくとも1つの添加剤、からなる、請求項
43に記載の表面処理配合物。
【請求項45】
前記配合物が有機塗料コーティング上に配置され、さらなるコーティングが前記有機塗料コーティングの前記表面に配置された際に、前記配合物が1未満の色ずれ(ΔE)を有する、請求項
25から
44のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
【請求項46】
前記さらなるコーティングがクリアコートである、請求項
45に記載の表面処理配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0002】
本開示は、有機塗料コーティングの表面を再活性化する方法、有機塗料コーティングへのさらなるコーティングの付着力を促進する方法及び再活性化された有機塗料コーティングを有する剛性基板に関する。
【背景技術】
【0003】
コーティングは、一般に、偶発的な損傷、摩耗、化学的攻撃、腐食、紫外線又は就航中の劣化から材料の表面を保護するために使用される。コーティングは、物体又は構成要素の美観及び/又は光学特性を向上させるためにも使用される。航空機コーティングの場合、特定のコーティング性能要件は特に厳密である。例えばコーティングは、耐火性のためにリン酸エステル系である航空作動油からの化学的攻撃に耐える必要がある。機体は、少なくとも25年間は腐食から保護される必要がある。紫外線は、巡航高度40,000フィートで地上よりも最大4倍強くなる可能性があり、コーティングの使用環境は通例、代表的な巡航温度の-55~-60℃から、高温排気ダクト付近の180℃である。空気が塗料表面に付着して断熱加熱を引き起こすため、巡航中の実際の皮膜温度は約-15~-25℃となる。保護及び装飾試験要件の例は、SAE AMS 3095Aに記載されている。
【0004】
多くのコーティングの表面特性は、乾燥、硬化及び/又はエージングで劇的に変化し、個々の成分のみの化学的性質に基づいて、予測よりも不活性となる。この現象は一部は、コーティングに耐薬品性、衝撃強度、耐摩耗性、耐久性を与えるが、特に所定の塗布ウィンドウ内で塗布されない場合、さらなるコーティングを塗布する工程も複雑になる。同じ問題は、複合基板で使用されるものなどのシーラント、ピンホールフィラー及びサーフェサー、並びに感圧付着剤によって塗布されたデカール及びロゴなどの、他の要素をそのようなコーティングに塗布することで発生する。航空機胴体又は機体などの剛性基板の以前に塗装された有機コーティングの付着力を再活性化して、先に硬化又はエージングした塗装基板に新しいコーティングを付着させることには、元の塗料コーティングのさらなるコーティングへの付着力を再活性化することだけでなく、基板(例えば胴体パネル)と元のコーティングとの間の元の付着結合の完全性を損わないことも必要である。基板の偶発的な暴露が発生した場合にも、再活性化方法によって、基板自体を損傷又は劣化させてはならない。
【0005】
さらなるコーティング及び/又は他の要素の塗布が必要な場合、さらなるコーティングの塗布手順が実施可能となる前に、機械的摩耗又は化学的若しくはレーザーなどのアブレーションによる剥離工程が一般に必要である。
【0006】
航空機コーティングの具体的な例では、商用飛行機の外装装飾カラーリングの仕上げ工程には、基板の表面処理から始まりカラーリング塗布で終わる複数のステップが含まれる。マルチカラーのカラーリングは、テープ又はプレマスクでデザインを連続的にマスキングし、次にデザインカラーを塗布することで作製される。通例、最初のカラーダウン、即ち胴体色は、胴体及び尾部の半分から全体を覆うようにスプレー塗布され、次いで硬化される。後続のデザイン色は、一般に胴体色の上に塗布され、追加色の塗布前に硬化させる必要がある。硬化サイクルの合計数は、単純なデザインの場合の3から、複雑なデザインの場合の6以上までの範囲である。硬化したトップコートは、通例約35℃を超えるが50℃未満の複数回の硬化サイクルを経るか、又は周囲条件にて数時間硬化させると、新たに塗布されたトップコートの接合に対して、もはや不活性であり得る。航空宇宙用塗料層の前縁部が受ける応力は飛行中の衝撃を与える雨滴の影響により非常に過酷であるため、次の塗布前に各硬化トップコート層の適正な表面作製は、就航中の適切な付着を確保するために重要である。したがって、硬化トップコートは、良好なコート間付着力を確保するために再活性化する必要がある。モノコートは通例、48時間の約40℃又は周囲温度を超える2回の熱硬化サイクルの後に再活性化が必要になり、周囲温度は10~35℃を意味する。ベースコート-クリアコート塗装系では、ベースコート色は周囲温度にて硬化するが、複雑なデザインでは、関係する色の数並びに各色のマスキング、塗布及び色に必要な時間の長さのために、ベースコート色の多くの間で再活性化がなお必要である。ベースコート色での装飾デザインの作成に必要な時間の長さのために、クリアコート塗布前の再活性化はほぼ常に必要であり、一部のベースコート-クリアコート系における一部のベースコート色では、クリアコート後に、わずか2~4時間後に再活性化が必要である。さらに、色のいかなる変化もクリアコートを通して見え、デザインの美観に影響を及ぼすため、再活性化処理はベースコートの色を変化させるべきではない。
【0007】
剥離を防ぐために、硬化塗料層は従来、さらなるコーティングの塗布前にサンディングによる機械的摩耗に付されてきた。しかし、サンディング工程は、塗布者にとって人間工学的に望ましくなく、フロー時間が増し、ダストを生じる。サンディングは、特に小さい曲率半径を含むデザイン、看板又はステンシル文字での均一な塗布が困難であり、光沢に影響を及ぼし、摩耗したコーティングの色を変化させるおそれがある。さらに、一部のデザインでは曲率半径が小さいため、フロー時間について最適とは程遠い、トップコートの塗料塗布シーケンスが必要となり得る。摩耗により、後続のクリアコートの塗布後でさえベースコートの色が変化することがあり、雲母又は金属粒子を含む特殊効果塗料には、サンディングは使用できない。
【0008】
スプレー塗布化学的再活性化方法は、米国特許出願公開第11/784534号に、先に記載されている。この方法を使用した再活性化は、再活性化なしよりも優れ、機械的摩耗と同様の付着力の改善を示したが、より低湿度では多少の効果を失うことがある。湿度の制御は、商用航空機を収容するために必要な大容量の塗料格納庫が10000立方メートルを超えることがあるために、経済的ではない。湿度を上昇させるために、時には格納庫の床に水を噴霧して湿度を上げようとするが、これは確固とした手法ではなく、必ずしも十分とは限らないため、低湿度では、コーティングを再活性化する従来の方法は機械的摩耗による。ただし上述のように、機械的摩耗の使用は、人間工学、工程フロー時間、外観及び一貫性などの様々な理由で問題がある。
【0009】
結果として、化学的再活性化方法をより有効に使用できる1年あたりの日数を増加できるように、塗布ウィンドウを低湿度条件にまで拡張する必要がある。さらに、アフターマーケット、デポ、補修、修正作業並びに非航空宇宙用途に関連する、世界的に見られる環境条件に対して、この工程の訴求力をより広範にするために、化学的再活性化を可能な限り確固とした耐久性のあるものにする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、有機塗料コーティングに対するさらなるコーティングの付着力を促進するために、基板上に存在する有機塗料コーティングの表面を再活性化する方法であって、方法が、溶媒、表面交換剤、ナノ粒子及び任意の添加剤を含む又は溶媒、表面交換剤、ナノ粒子及び任意の添加剤からなる表面再活性化処理剤を有機塗料コーティングに塗布するステップであって、再活性化処理剤の1つ以上の成分が有機塗料コーティングに同時に、連続して又は別個に塗布され、表面交換剤がチタネート、ジルコネート及びそのキレートの少なくとも1つから選択される、ステップを含む方法が提供される。
【0012】
別の態様において、基板上に存在する有機塗料コーティングに対するさらなるコーティングの付着力を促進する方法であって、有機塗料コーティングの表面を再活性化して、さらなるコーティングに対する表面の付着力を向上させるために、溶媒、表面交換剤、ナノ粒子及び任意の添加剤を含む又は溶媒、表面交換剤、ナノ粒子及び任意の添加剤からなる表面再活性化処理剤を有機塗料コーティングに塗布するステップであって、再活性化処理剤の成分の1つ以上が有機コーティングに同時に、連続して又は個別に塗布され、表面交換剤がチタネート、ジルコネート及びそのキレートの少なくとも1つから選択される、ステップを含む方法が提供される。
【0013】
さらなる態様において、さらなるコーティングに対する有機塗料コーティングの付着力を促進するために、基板上に存在する有機塗料コーティングの表面を再活性化する表面処理配合物であって、偶発的不純物以外に、配合物が、
(a)チタネート、ジルコネート及びそのキレートの少なくとも1つから選択される表面交換剤、
(b)溶媒、
(c)ナノ粒子、
(d)任意に、配合物の総重量に対して約10重量%未満の量で存在する添加剤
を含む又はそれからなる配合物を提供する。
【0014】
一態様において、配合物は、
(a)約8重量%未満の量で存在する表面交換剤又はエステル交換剤、
(b)少なくとも約85重量%の量で存在する溶媒、
(c)約2重量%未満の量で存在するナノ粒子、及び
(d)任意に約10重量%未満の量で存在する添加剤
を含み又はそれからなり、
成分(a)~(d)それぞれの重量%は、添加剤が存在しない場合、配合物の総重量%及び成分(a)~(c)の総重量%に基づき、又は添加剤が存在する場合、成分(a)~(d)の総重量%は100である。
【0015】
さらなる態様において、有機コーティングを有する基板であって、有機コーティングの表面が、さらなるコーティングに対するコーティングの付着力を促進するために、第1若しくは第2の態様又は本明細書に記載するその任意の態様による再活性化処理剤であって、再活性化処理剤の成分の1つ以上が有機コーティングと同時に、連続して又は個別に塗布される再活性化処理剤を有機コーティングに塗布することによって、又は第3の態様又は本明細書に記載するその任意の態様による表面処理配合物を塗布することによって、再活性化されている、基板が提供される。
【0016】
さらなる態様の一態様において、基板は実質的に非弾性のパネルである。別の態様において、基板は金属、金属合金又は複合材料である。
【0017】
上記の態様のいずれかの他の態様において、さらなるコーティングは、有機塗料コーティングなどの有機コーティングであり得る。
【0018】
上述の特徴の1つ以上を含み得る、さらなる態様が本明細書に記載されることを認識される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】さらなる有機コーティングの就航中のエージング有機塗料コーティングへの付着を、基材に対するその就航中のエージング有機塗料コーティングの完全性を損うことなく促進するために、その表面付着特性の再活性化のために処理されている、パネル部の基板に以前に付着して、基板上に存在する就航中のエージング有機塗料コーティングのパネル部の概略図である。
【
図2】雨食試験における最大引裂き長さ及びコーティングの除去面積%に対応する、1~10のスケールに関連する視覚的表現が強調表示されている。
【
図3】様々な表面処理を伴う及び伴わない、シングル・インパクト・ジェット装置(SIJA)技術を使用した、白色塗料からのグレー塗料の除去量を示す画像である。大量の塗料の除去は、付着力が不十分であることを示し、より少ない塗料の除去は、付着力がより良好であることを示すことに留意されたい。画像は下記を示す: ・低湿度(4.2mb水蒸気分圧)における再活性化処理を用いない、著しいグレー塗料除去。 ・AT-1を使用した、高湿度(10.1mb水蒸気分圧)下での白色コーティングの再活性化時の、より低度のグレー塗料除去。 ・AT-1を使用した、低湿度下で白色コーティングの再活性化時の、より高い相対的なグレー塗料除去。 ・ナノ粒子を含むようにAT-1を改質した際の、低湿度下でのより少ないグレー塗料除去。
【
図4】低湿度(水蒸気分圧3.0~3.5mb)条件下での白色塗料からのグレー塗料の様々な除去量を示す、シングル・インパクト・ジェット装置の結果を示す画像である。結果は下記を示す。 ・低湿度における再活性化処理なしの、著しいグレー塗料除去。 ・AT-1を使用した、高湿度(10.1mb水蒸気分圧)下での白色コーティングの再活性化時の、より低度のグレー塗料除去。 ・AT-1を使用した、低湿度下で白色コーティングの再活性化時の、より高い相対的なグレー塗料除去。 ・ナノ粒子を含むようにAT-1を改質したときの、より少ないグレー塗料除去。
【
図5】高湿度(10.3mb水蒸気分圧)条件下での白色塗料からの塗料除去を示す、シングル・インパクト・ジェット装置の結果を示す画像である。結果は下記を示す。 ・再活性化を行わないと、高湿度において著しいグレー塗料が除去される。 ・AT-1を使用する高湿度条件で行った再活性化は、グレーコートの白色コートへの付着力を改善するのに有効である。 ・高湿度条件下で再活性化を行った場合、カーボンブラックを処理剤に含めることはグレーコーティングの付着力に悪影響を及ぼさず、AT-1と同様の結果を生じる。
【
図6】様々な表面処理剤を伴う及び伴わない、白色塗料からのグレー塗料の除去量を示す、シングル・インパクト・ジェット装置(SIJA)の結果を示す画像である。大量の塗料の除去は、付着力が不十分であることを示し、より少ない塗料の除去は、付着力がより良好であることを示すことに留意されたい。画像は下記を示す: ・低湿度(4.2mb水蒸気分圧)における処理剤を用いない、著しいグレー塗料除去。 ・AT-1を使用した、高湿度(10.3mb水蒸気分圧)下での白色コーティングの再活性化時の、より低度のグレー塗料除去。 ・AT-1を使用した、低湿度(4.2mb水蒸気分圧)の下での白色コーティングの再活性化時の、比較的高いグレー塗料除去。 ・ナノ粒子を含むようにAT-1を改質したときの、低湿度(4.2mb水蒸気分圧)下でのより少ないグレー塗料除去。
【
図7】DHSに高湿度(38%RH、68°F;8.9mb)及び低湿度(13%RH、66°F;2.7 mb)条件下でDHS CA8000/BAC70846に4:1(C:C2)シンナーを用いて塗布した際の、ナノ粒子を添加しないAT-1再活性化処理剤の残留物形態を示す、走査型電子顕微鏡画像である。画像は下記を示す: ・高湿度での塗布により、残留物の微細で非平滑な開放(多孔質)構造が生成される。 ・低湿度での塗布により、残留物のより連続的で平滑なゲル状(より多孔性の低い)構造が生成される。
【
図8】高湿度及び低湿度条件下で塗布した際の、0.005重量%スペシャルブラック(Special Black)5(50nm)ナノ粒子を添加したAT-1再活性化処理剤の残留物形態を示す、走査型電子顕微鏡画像である。画像は下記を示す: ・高湿度での塗布により、
図7の構造と同様の、残留物の微細で非平滑な開放(多孔質)構造が生成される。 ・低湿度での塗布により、
図7の構造よりもやや非平滑の開放構造が生成される。
【
図9】高湿度条件及び低湿度条件で塗布した際の、0.01重量%のスペシャルブラック(Special Black)5(50nm)ナノ粒子を添加したAT-1再活性化処理剤の残留物形態を示す、走査型電子顕微鏡画像である。画像は下記を示す: ・高湿度での塗布により、
図7の構造と同様の、残留物の微細で非平滑な開放(多孔質)構造が生成される。 ・低湿度での塗布により、
図7の構造よりもやや非平滑の開放構造が生成される。
【
図10】高湿度条件及び低湿度条件で塗布した際の、0.05重量%のスペシャルブラック(Special Black)5(50nm)ナノ粒子を添加したAT-1再活性化処理剤の残留物形態を示す、走査型電子顕微鏡画像である。画像は下記を示す: ・高湿度での塗布により、
図7の構造と同様の、残留物の微細で非平滑な開放(多孔質)構造が生成される。 ・低湿度での塗布により、
図7の構造よりもやや非平滑の開放構造が生成される。
【
図11】低湿度条件下で塗布された様々な表面処理剤を使用する、様々な量の青色塗料の除去を示す回転アーム雨食の結果である。
【
図12】低湿度条件下で塗布された様々な表面処理剤を使用する、様々な量の青色塗料の除去を示す回転アーム雨食の結果である。
【
図13】低湿度条件下で塗布された様々な表面処理剤を使用する、様々な量の青色塗料の除去を示す回転アーム雨食の結果である。画像は下記を示す: ・再活性化処理剤なしの、著しい青色塗料除去。 ・AT-1によって白色コーティングを再活性化する際の、処理剤なしに比べてより少ない塗料除去。 ・ナノ粒子を含むようにAT-1を改質したときの、さらにより少ないグレー塗料除去。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者によって、同じ若しくは異なる種類及び/又は他の要素のさらなる有機コーティングに対する既存の有機塗料コーティングの付着特性を改善するために、剛性基板上に存在する既存の有機塗料コーティングの効果的な再活性化を、例えば約5ミリバール(mb)未満の水蒸気分圧などの低湿度を含む広い塗布ウィンドウにわたって行えるようにする、各種の方法が開発されている。再活性化処理剤を含む方法は、既存の有機塗料コーティングと基板との間のコーティングの完全性を損うことなく、又は例えば既存のコーティングを含まない基板の領域が再活性化処理剤と直接接触する場合に、下にある基板に影響を及ぼす又は効果を有することによって使用できる。基板に影響を及ぼす又は効果を有することは、一般に、所望の性能特性に影響を及ぼし得るような、基板の完全性、機械的強度又は膨張における低減がないことを意味する。この方法は、例えば約5mbの蒸気分圧を超える、より高い湿度環境での有機コーティングの付着特性の再活性化にも好適である。再活性化処理剤を含む方法は、例えばそのような有機塗料コーティングが塗布ウィンドウを超えている場合、(既に基板に付着した)硬化、エージング又は就航中の有機塗料コーティングに対して使用可能であり、塗布ウィンドウでは、既存の有機塗料に対する、有機塗料上のさらなる有機コーティングの付着力が就航中の性能要件を満足していない。本明細書で使用する場合、「既存の有機コーティング」は、基板上に既に配置されている有機コーティングである。
【0021】
以前に塗装された表面にさらなる有機コーティングを塗布するには、一般に、さらなる有機コーティングが塗布可能になる前に、有機塗料コーティングに対して機械的摩耗(サンディングなど)又はアブレーション(レーザーなど)などの過酷な表面剥離工程が必要とされていた。有利には、本開示は、後続のコーティング及び/又は他の要素を塗布する前に、有機コーティングの機械的摩耗又は化学的剥離の従来の方法をもはや必要としない方法を提供する。例えば、再活性化処理剤は、有機コーティングの表面を再活性化して、さらなるコーティング及び/又は他の要素に対する付着特性を改善することができる。しかし、この方法は、従来の方法と組み合わせて使用してもよい。例えば、グリースや油残留物などの汚染物質を局所的に除去するために、機械的摩耗を使用することも有利であり得る。
【0022】
図1に示すように、航空機の胴体、パネル、機体などの剛性基板(1)に以前に塗布した有機塗料コーティング(2)の付着を再活性化し、効果的な付着結合(5)によって新たなコーティング(4)を、以前に硬化、熟成又は就航中に塗装された基板に付着させることは、元のコーティング(2)のさらなるコーティング(4)への付着力を再活性化することを必要とするだけでなく、基板(1)及び元のコーティング(2)の間の元の付着結合(3)の完全性にも、元のコーティングが存在する任意の暴露した(未コーティング)基板(6)にも直接、影響を及ぼさないことも必要である。
【0023】
本開示の方法は、さらなるコーティング、例えばさらなる有機コーティングに対する有機塗料コーティングの付着特性を活性化又は強化するために、基板上に存在する有機塗料コーティングの表面を再活性化することを含む。「再活性化」という用語は、本文脈で使用する場合、再活性化処理剤又はその成分の塗布前に、有機塗料コーティングの付着特性と比較した、その有機塗料コーティングの付着特性の改善を意味するために使用される。
【0024】
再活性化方法
本開示の再活性化方法は、基板上に既に存在する有機塗料コーティングの表面に、再活性化処理剤又は再活性化処理剤の個々の成分を塗布するステップを含む。例えば、有機塗料コーティングが以前に基板に付着されていて、さらなるコーティング又は他の要素を付着するための、特定の付着の再活性化(例えば機械的摩耗などの過酷な表面処理)を必要とせずに、その塗布ウィンドウを超えてエージングさせた場合である。基板上に存在する有機塗料コーティングは、再活性化処理(例えば機械的摩耗)なしで、有機塗料コーティングへのさらなるコーティングの付着力が就航中の性能要件を満足しないように、エージングされる。例えば、基板上に既に存在し、さらなるコーティングが塗布される有機塗料コーティングは、さらなるコーティングの付着を受容する塗布ウィンドウ内になお存在する、新たに塗布された有機塗料コーティングではない。
【0025】
上記の塗布ウィンドウによって、新たに塗布された有機塗料コーティングが、就航中の性能要件を満足しない付着力を有する任意のさらなるコーティングを塗布するための、その許容される付着ウィンドウを越えてエージングされるような環境期間、例えば、さらなるコーティングの付着力が性能要件について不十分となるように、基板上に存在する有機塗料コーティングの硬化後の継続時間が提供されることが認識される。基板上に既に存在する有機塗料コーティングは、後硬化コーティング、エージングコーティング又は就航中コーティングであることができる。就航中コーティングは、以前に塗布され、就航中の使用に好適であるか、又は実際に就航中に使用されているコーティング、例えば少なくとも1回飛行した航空機に設置された航空宇宙用パネルと理解される。塗布ウィンドウは、有機塗料コーティングの種類と基板の種類に依存し得て、例えば時間、湿度、温度、圧力、UV暴露の種類又は他の硬化工程などを考慮することが含まれ得る。後硬化有機塗料コーティング、エージング有機塗料コーティング又は就航中有機塗料コーティングの塗布時間ウィンドウは、例えば30分間、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、24時間、2日、1週間、2週間又は4週間以上である。就航中使用のための塗布ウィンドウには、例えば1時間、10時間、100時間又は1000時間など、就航中の航空機の(例えば10,000フィートを超える)高い高度の大気条件への所定の暴露時間も含まれ得る。
【0026】
本開示の再活性化方法は、さらなるコーティングとの付着相互作用の形成に対して、表面がより受容性となる、有機塗料コーティングの表面を改質する化学的方法である。理論に制限されることを望むものではないが、溶媒、薬剤、ナノ粒子及び任意の添加剤と有機塗料コーティングとの相互作用により、コーティング表面の化学的性質及び/又は表面トポグラフィーが改質されて、これに限定されるわけではないが、さらなるコーティングを含む他の要素に対して、表面をより受容性とすることができると考えられる。溶媒、薬剤、ナノ粒子及び任意の添加剤は、有機塗料コーティング並びに任意の下にあるコーティング及び基板構造のバルク完全性が維持され、再活性化処理剤へ任意の未コーティング基板表面が偶発的な暴露された場合の、基板との適合性を考慮することをさらに含むことができるように選択される。
【0027】
再活性化処理剤又はその成分の1つ以上は、これに限定されるわけではないが、スプレー、ブラシ、浸漬、ナイフ、ブレード、ホース、ローラー、ワイプ、カーテン、フラッド、フロー、ミスト、ピペット、エアゾール又はその組合せなどの、当業者に既知の任意の液体塗布方法によって塗布され得る。一態様において、スプレーによって塗布され、例えば、再活性化処理剤は再活性化処理スプレー配合物であり得る。
【0028】
本明細書で現在開示されている再活性化の方法は、例えば約10~35℃の範囲の周囲温度にて実施され得る。再活性化の方法はまた、一般に典型的な大気圧(例えば約90~105kPa、より通例には約101kPa)付近で実施され得る。有機コーティングに対する再活性化処理剤及び/又はさらなるコーティングの硬化は、周囲温度で行われ得る。例えば、周囲温度は15~30℃又は20~25℃である。再活性化処理剤の塗布には、コート基板の予熱は不要である。再活性化処理のために、さらなるコーティングの熱硬化も不要であり得るが、さらなるコーティングの化学的及び物理的バルク特性の発現から得られ得る、任意のさらなる利点に応じて熱硬化が提供され得る。
【0029】
本開示の再活性化方法は、低湿度の環境での使用にも好適である。「低湿度」という用語は、再活性化処理剤が塗布される湿度を示し、さらなるコーティングの硬化が起こる湿度ではない。この例の低湿度とは、約5mb未満の水蒸気分圧を意味する。約21℃では、低湿度は約20%以下の相対湿度に相当する。相対湿度は次のように定義される。
[数1]
相対湿度=(実際の蒸気圧/飽和蒸気圧)×100%
【0030】
水の飽和蒸気圧は周知であり、温度に応じて変化する(Donald Ahrens,1994,Meteorology Today-an introduction to weather,climate and the environment Fifth Edition-West Publishing Co)。結果として、水蒸気圧は所与の相対湿度について温度と共に変化する。この実例を以下に示す(http://ww2010.atmos.uiuc.edu/%28Gh%29/guides/mtr/cld/dvlp/rh.rxml、2014年12月にダウンロード)。
【0031】
【0032】
再活性化処理剤の塗布は、他の処理剤が効果的であり得ない、低湿度の環境での使用に効果的であるが、本開示の再活性化処理剤は、より高い湿度でも効果的である。言い換えれば、本再活性化処理剤の利点の1つは、さらに特定の利点が低湿度でのその使用であっても、比較的広い塗布ウィンドウ(例えば温度、圧力、湿度の広範なパラメータの組合せ)にわたって、特に広範な湿度範囲にわたって使用できることである。
【0033】
再活性化処理は、例えば約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、18%、16%、14%、12%、10%、8%、6%、4%又は2%未満の相対湿度にて実施され得る。再活性化処理は、約1%、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、30%、40%、50%、60%又は70%を超える相対湿度にて実施され得る。再活性化処理は、これらの値のいずれか2つの値、例えば約1%~約90%の間、約2%~約50%の間、約10%~約70%の間、約2%~約30%の間、約1%~約20%の間又は約4%~約18%の間の相対湿度にて実施され得る。所与の水蒸気分圧に対する相対湿度は温度に依存することが認識される。水蒸気分圧と温度は独立変数であり、相対湿度(RH)は従属変数であるが、相対湿度は任意の特定の温度にて100%を超えることができないという制約がある。例えば、温度が約10~35℃の間、約15~30℃の間又は約20~25℃の間である場合、上記の相対湿度値のいずれか1つ以上が提供され得る。上記の相対湿度値は例えば、温度が約15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃又は30℃の値にある場合であり得る。現在開示されている再活性化方法の塗布ウィンドウは、上記のRH及び温度範囲又は値の任意の組合せであり得る。例えば、塗布ウィンドウは、RHが約10%~約70%であり、温度範囲が約15℃~約30℃である場合であり得る。塗布ウィンドウは例えば、約15℃~約30℃の温度にて少なくとも約10%RHであり得る。塗布ウィンドウは例えば、約15℃~30℃の間の温度にて少なくとも約70%RH未満であり得る。
【0034】
湿度は、約60、50、40、30、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3又は2未満の水蒸気分圧(mb)によって提供され得る。湿度は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60を超える水蒸気分圧(mb)によって提供され得る。湿度は、これらの値の任意の2つの間の、約1~約50の間の、例えば約2~約25の間の、例えば約3~約15の間の、例えば約4~約10の間の水蒸気分圧(mb)によって提供され得る。湿度は、上記の温度値又は範囲に従って所与の温度によって提供され得るが、湿度が100%相対湿度を超えないか、又はその蒸気分圧がその飽和蒸気圧を超えないような温度値であることが認識される。これらの水蒸気分圧値のいずれかの所与の温度における相対湿度は例えば、約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%又は20%未満であり得る。約90%未満の相対湿度は、表面の結露を防止又は低減する助けとなり得る。
【0035】
再活性化処理剤又はその1つ以上の成分は、小さい又は大きい領域、大きなパーツの部分、コンポーネント又はインフラ構造全体、例えば航空宇宙に関連した(例えば航空機)、自動車に関連した(例えばビークル)、船舶に関連した(例えば船)、輸送に関連した(例えば列車)、軍事(例えばヘリコプター、ミサイル)、又は建設(例えば、建物、工場、フロア)に関連したインフラ構造にも塗布され得る。表面は、単純な幾何形状でも複雑な幾何形状でもよく、任意の向きであってよい。処理は、さらなるコーティング及び/又は他の要素との相互作用の前に1回又は複数回行われ得る。有機コーティングの再活性化処理剤への暴露時間は、スループット及び塗布要件によってさらに制限される。そのため、暴露時間は短く、例えば5分であり得るか、又は24時間まで延長され得て、有機コーティング又はシーラント並びに下にあるコーティング構造及び基板などの有機コーティング上に見出され得る材料の完全性は損われない。一態様において、暴露時間は溶媒の蒸発に十分な長さであるべきであり、処理剤は目視で乾燥しているべきである。このことは気流と再活性化処理剤が塗布される環境の温度に依存する。相対湿度が100%に近づくにつれて、さらなるコーティングを塗布するための塗布ウィンドウが、例えば約15分未満に短縮することも認識される。
【0036】
再活性化処理剤は、例えば乾燥時間を変更する又は腐食を低減するために、任意の添加剤を含有し得る。そのような添加剤としては、これに限定されるわけではないが、耐食添加剤及び染料や顔料などの着色剤が挙げられる。添加剤は、染料、例えば活性化剤がスプレーされた箇所を示すUV蛍光染料などの着色剤であり得る。これらの添加剤は任意であり、付着を活性化するための再活性化処理剤に必須ではないことが認識される。例えば、添加剤は、存在する場合、表面の再活性化に寄与しないか、又は有機塗料コーティングの表面と化学的に反応しない。任意の添加剤については、以下の節「任意の添加剤」でさらに詳細に説明する。
【0037】
有機コーティング表面が再活性化された後、さらなるコーティングがただちに、又は表面がほぼ未汚染のままであるならば、遅延した時間に塗布され得る。さらなるコーティングは、接着剤、シーラント、ピンホールフィラー、ステンシル、看板、感圧デカール又はロゴなどの要素が挙げられ得る。
【0038】
当業者に既知の任意の好適な方法を使用して、有機コーティングとさらなるコーティング及び/若しくは他の要素との間の付着結合が目的に適合しているか否か、又は有機コーティングと基板(若しくはその間のコーティング)との間の付着結合が、上記の有機塗料コーティングを有する硬化、エージング又は就航中基板であるか否かが評価され得る。このような試験としては、これに限定されるわけではないが、ASTM、ISO又はSAE標準、就航時性能をシミュレートする社内試験方法、就航時性能自体及び実際の又は加速の耐久性試験が挙げられる。航空宇宙用コーティングの場合、水衝撃に基づく試験方法、例えば回転アーム雨食や16時間~24時間の浸漬時間でのシングル・インパクト・ジェット装置(SIJA)(MIJA Limited、ケンブリッジ、英国)が使用され、回転アーム雨食は、航空宇宙用コーティングのコート間付着力の評価に特に有用であることが判明している。これらの場合、オーバーコート除去度はコート間の接着レベルと関連し、商用航空機で認められる雨食の影響をシミュレートしている。通例、これらの2つの試験によって、航空宇宙用コーティングの付着結合に他の試験方法よりも、より大きな相違がもたらされる。これらの方法は、参考文献のBerry D.H.,and Seebergh J.E.,“Adhesion Test Measurement Comparison for Exterior Decorative Aerospace Coatings:Two Case Studies”,Proceedings 26th Annual Adhesion Society Meeting,Myrtle Beach,SC,pp 228-230(2003)に記載されている。
【0039】
雨食試験では、模擬降雨場への30分間の暴露後のオーバーコートの除去面積%又は最長引裂き長さを使用して、オーバーコートと下にあるコーティングとの間のコート間付着度を求めることができ、これは目視検査又は測定を含む画像分析によって定量化することができる。例えば、まず最長の引裂き長さを最初に測定して、必要に応じて、除去されたレベル5のスケール面積が次いで求められる。
図2は、雨食試験における最大引裂き長さ及びコーティングの除去面積%に対応する、1~10のスケールに関連する視覚的表現を強調表示している。例えば、
図2において、レベル6のスケール値は0.5インチの最大引裂き長さ及び25%未満の除去面積に相当し、レベル7は0.25インチの最大引裂き長さ及び10%未満の除去面積であり、レベル8は、最大引裂き長さ0.12インチ及び5%未満の除去面積である。使用したコーティングの種類を含む様々な要因に応じて、本開示の方法は、10、9、8、7、6、5、4、3又は2のスケール評定を提供し得る。一態様において、スケール評定は少なくとも7である。使用したコーティングの種類を含む様々な要因に応じて、本開示の方法は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80又は90%未満の除去面積%に対応する雨食試験値を提供し得る。さらに、本開示の方法は、約1インチ未満の引裂き長さ、例えば約0.5インチ未満の引裂き長さ、例えば約0.25インチ未満の引裂き長さ、例えば約0.12インチ未満の引裂き長さ、例えば約0.06インチ未満の引裂き長さ、例えば約0.02インチの引裂き長さに対応する雨食試験値を提供し得る。オーバーコートの除去がより多いことは、コート間付着力がより劣っていることに対応することが認識される。
【0040】
シングル・インパクト・ジェット装置(SIJA、ケンブリッジ)試験は、0.8mmノズルと0.22口径5.5mmのクロスマン・アキュペル・ポインテッド・ペレット(Crosman Accupell Pointed Pellets)(#11246)を使用して構成された装置を備え得る。試験は、液滴幾何形状に衝撃を与えるために、水に約16~18時間浸漬して、45°試験片を使用することを含むことができる。シングル・ウォーター・ジェットは、約600+25 m/sの衝撃速度で使用できる。
【0041】
雨食試験では、3600rpmで作動する、1.32m(52インチ)無揚力角ヘリコプター様プロペラを用いた回転アーム雨食装置を使用できる。オーバーコート(例えば有機塗料コーティング上のさらなるコーティング)は、前縁部を生成するためにマスキングを用いて、80から120ミクロンの塗料厚さで塗布することができる。試験サンプルの中間点にて約170ms-1の速度を提供できる。有効降雨場密度は、約2.54×10-5kmh-1(1時間あたり1インチ)に相当する約2mmの液滴であることができる。雨食の衝撃は30分間の試験後に求めることができ、上記のような塗料の除去量又は引裂き長さに従ってサンプルのコート間付着力を評価することができる。
【0042】
有機塗料コーティングと基板(又はその間の層)との間の付着結合又は有機塗料コーティングとさらなるコーティングとの間の付着結合は、特に航空宇宙用コーティング以外の用途向けの、湿式及び乾式クロスハッチスクライブ試験などの他の方法によっても求められ得る。コーティングの乾燥付着力は、ASTM D3359ASTM D3359,Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test,Test method B(テープ試験による接着性を測定するための標準試験法、試験方法B)に従って求められ得る。クロスハッチパターンは、各コーティング組成物を通じて基板まで描くことができる。その後、3Mタイプ250などの1インチ幅のマスキングテープ片を貼り付けることができる。テープは、4.5ポンドのゴム被覆ローラーの通過2回を使用して押し付けることができる。次いで、パネルに対して垂直の急速な動き1回で、テープを除去することができる。次いで、クロスハッチ領域での塗料の目視検査により付着力を評価し、上記のようにコーティングの除去面積%を求めることができる。
【0043】
少なくともいくつかの態様により、本明細書で開示する方法は、攻撃性の溶媒及び航空機用流体に対する耐性をもたらす、(基板上に既に存在する)有機塗料コーティングに対するさらなるコーティングを提供し得る。例えば、作動油に対する耐性である。航空宇宙用途の作動油には、通例、耐火性特性のためのリン酸エステルが含まれていて、リン酸エステルは、多くのプラスチック及び仕上げ剤に対して非常に攻撃性である。特に航空宇宙用途では、BMS3-11作動油中での30日間の周囲浸漬の後、外部装飾コーティングは十分な鉛筆硬度を保持すべきである。有機塗料でコーティングした基板又はさらにコートした基板の作動油試験の前後の鉛筆硬度は、少なくとも2B、3H、4H、5H、6H、7H又は8Hであり得る。
【0044】
航空宇宙用途では、本開示の再活性化方法は、再活性化工程のフロー時間の改善、より大きな領域及びオペレーター間での再現性及び一貫性の向上、並びに合わせて純コスト削減をもたらした、工程の人間工学の改善という利点を提供できる。
【0045】
本開示の方法は、基板上に存在する有機塗料コーティングに対するさらなるコーティング及び/又は他の要素の付着力を促進する方法であって、有機塗料コーティングの表面を再活性化して、さらなるコーティング及び/又は他の要素への表面の付着力を向上させるために、溶媒、表面交換剤若しくはエステル交換剤、ナノ粒子及び任意の添加剤を含む又はそれからからなる表面再活性化処理剤を有機塗料コーティングに塗布するステップ、を含む。溶媒、表面再活性化剤(即ちそのチタネート、ジルコネート及びそのキレート)及びナノ粒子の組合せは、例えばさらなるコーティング付着させて、本明細書に記載の航空宇宙ASTMインターコート付着特性などの、就航中の性能に有効な付着力を提供するために、有機塗料コーティングの表面が活性化されるように硬化、エージング又は不活性有機塗料コーティングの表面を乱し得る。本明細書に記載の任意の添加剤は、溶媒、表面交換剤及びナノ粒子の組合せによって提供される付着特性の再活性化に加えて、着色又は耐食特性を提供するなど、追加の利点を提供するために使用され得る。
【0046】
有機塗料コーティングの表面への表面再活性化処理剤の塗布後、この方法は、有機塗料コーティングの表面を乾燥させるステップ、洗浄するステップ及び拭き取るステップのうち少なくとも1つを含む1つ以上の任意のステップをさらに含み得る。一態様において、この方法は、さらなるコーティング及び/又は他の要素の塗布前に、有機塗料コーティングの以前に再活性化された表面を乾燥させるステップを含む。乾燥ステップは、少なくとも15分、30分、60分、1時間、2時間、4時間、8時間若しくは1日又はそれらの期間のいずれかの時間間隔、例えば30分から1日にわたり得る。この方法は、再活性化処理ステップの前に事前処理ステップをさらに含み得る。例えば、表面再活性化処理剤の塗布前の、1つ以上の事前処理ステップは、単離された表面汚染物質を除去するための機械的摩耗又は洗浄ステップを含み得る、事前洗浄などの非再活性化ステップを含む又はそれからなり得る。事前処理ステップは、コロナ放電などの1つ以上の他の表面再活性化ステップを除外し得ることが認識される。
【0047】
基板上に存在する有機塗料コーティングの表面を、さらなる塗料への有機塗料コーティングの付着力を促進するために再活性化する方法であって、方法が、
任意に、基板上に存在する有機塗料コーティングの表面を事前に洗浄するステップ、
溶媒、表面交換剤、ナノ粒子及び任意の添加剤を含む又はそれからなる表面再活性化処理剤を有機塗料コーティングに塗布するステップであって、表面交換剤がチタネート、ジルコネート及びそのキレートの少なくとも1つから選択される、ステップ、
任意に、有機塗料コーティングの表面を乾燥させるステップ、洗浄するステップ及び拭き取るステップの少なくとも1つ、並びに
任意に、有機塗料コーティングの再活性化された表面に1つ以上のさらなるコーティングを塗布するステップ
を含む又はそれからなる方法が提供され得る。
【0048】
以前コートした基板にさらなるコーティングを提供するために、工程の1つ以上のステップが反復され得ることが認識される。本明細書で説明する任意のさらなる態様も上記の方法に当てはまることも認識される。
【0049】
基板上に存在する有機塗料コーティングをさらにコーティングする方法であって、方法が、
有機塗料コーティングへのさらなるコーティングの付着力を促進するために、基板上に存在する有機塗料コーティングに表面再活性化処理剤を塗布するステップであって、基板上に存在する有機塗料コーティングに対する表面再活性化処理剤が溶媒、表面交換剤、ナノ粒子及び任意の添加剤を含む又はそれからなり、再活性化処理剤の成分の1つ以上が有機塗料コーティングに同時に、連続して又は個別に塗布され、表面交換剤がチタネート、ジルコネート及びそのキレートの少なくとも1つから選択される、ステップと、
有機塗料コーティングの表面にさらにコーティングを塗布するステップと
を含む又はそれからなる方法が提供され得る。
【0050】
以前コートした基板にさらなるコーティングを提供するために、工程の1つ以上のステップが反復され得て、本明細書に記載の任意のさらなる態様も上記の方法に当てはまり得ることも認識される。
【0051】
有機塗料コーティング
「有機塗料コーティング」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で使用され、装飾トップコート;アンダーコート;中間コーティング;プライマー;シーラー;ラッカー;着色又は透明なコーティング防食、耐熱性若しくはカモフラージュなどの特定の目的のために設計されたコーティング;高光沢、つや消し、非平滑若しくは平滑仕上げのコーティング;又は金属フレークなどの特殊添加剤を含有するコーティングについて説明している。有機塗料コーティングは、薄層中の基板への塗布後に固体膜に変わる、液体、液化性又はマスチック組成物に利用される。例えば、有機塗料コーティングはベースコートであり得て、さらなるコーティングはベースコート-クリアコート(BCCC)系を提供するためのクリアコートであり得る。
【0052】
上で論じたように、ある期間を超えて硬化、乾燥又はエージングされる有機塗料コーティングは、多くの場合、他の層などの他の要素への強力な付着結合の形成に対する耐性を生じる。それらの表面特性は、個々の成分のみの化学的性質に基づいて、予想され得るよりも不活性となる。いかなる理論にも制限されることを望むものではないが、この現象は、他の要素との化学的相互作用及び/又は強力な付着結合を低減することができる、硬化時間/エージングの関数としてのより高い架橋密度と関連して、コーティング表面エネルギー及び反応性表面官能基の量の減少から生じ得ると考えられる。
【0053】
再活性化され得る有機塗料コーティングとしては、これに限定されるわけではないが、完全又は部分架橋有機コーティングが挙げられる。有機塗料コーティングの例としては、ポリウレタンコーティング、エポキシコーティング、ポリエステルコーティング、ポリカーボネートコーティング及び/又はアクリルコーティングが含まれる。一態様において、有機塗料コーティングは、アクリルコーティング、ポリカーボネートコーティング、ポリウレタンコーティング及びエポキシコーティングの少なくとも1つから選択される。有機塗料コーティングは、ポリウレタン系塗料であり得る。優れた機械的特性並びに摩耗、化学的攻撃及び環境劣化に対する耐性により、このような有機塗料コーティングは、航空宇宙、自動車、船舶、輸送、軍事及び建設産業のインフラストラクチャを保護するために広く使用されている。これらのコーティングの多くは、硬化時間及び/又はエージング時間の延長に伴って、さらなるコーティング及び/又は接着剤、シーラント、ピンホールフィラー、ステンシル、看板、感圧デカール又はロゴなどの他の要素に対する付着力の著しい低下を示す。
【0054】
ポリウレタン及びエポキシ系コーティングは代表的であり、航空宇宙向けに最もよく使用される種類のコーティングであるが、他の有機塗料コーティングが本開示の方法によって再活性化され得ることが理解される。
【0055】
再活性化される有機塗料コーティングが基板上にあることが認識される。しかし、他の装飾コーティング、プライマー、中間層、化成コーティング又は耐食コーティングなど、有機塗料コーティングの下に各種の「サブ」コーティングも存在し得る。
【0056】
さらなるコーティング及び/又は他の要素
さらなるコーティングは、上記の有機塗料コーティングなどの有機コーティング又は無機コーティングであり得る。
【0057】
上記のように、「コーティング」という用語は、「有機塗料コーティング」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で使用され、装飾トップコート;アンダーコート;中間コーティング;プライマー;シーラー;ラッカー;着色又は透明なコーティング防食、耐熱性若しくはカモフラージュなどの特定の目的のために設計されたコーティング;高光沢、つや消し、非平滑若しくは平滑仕上げのコーティング;又は金属フレーク、雲母フレーク若しくはガラスフレークなどの特殊添加剤を含有するコーティングについて説明している。さらなるコーティングは、ベースコート-クリアコート(BCCC)系などのクリアコートであり得るか、又は透明コートであり得る。
【0058】
さらなるコーティングは、有機塗料コーティングと同じであり得る又は異なり得ることが認識される。
【0059】
他の要素は、上記のものと同じであり得て、接着剤、シーラント、ピンホールフィラー、ステンシル、看板、感圧デカール又はロゴが挙げられ得る。
【0060】
再活性化処理剤における溶媒
溶媒は、単一の溶媒又は2つ以上の溶媒の組合せであり得る。溶媒は、工業用途に適した有機溶媒であり得る。溶媒は、1つ以上のエステル、ケトン、エーテル及びアルコールから選択される少なくとも1つの溶媒であり得て、基板上に存在する有機塗料コーティングの表面(又はその上の膜)の乱れを促進するいくつかの態様におけるように、又は有効な薬剤用担体に各種の気化パラメータを与えることによって、再活性化処理剤にさらなる利点を提供し得る。溶媒は、1つ以上のケトン、エーテル及びアルコールから選択される少なくとも1つの溶媒であり得て、再活性化処理剤になおさらなる利点を提供し得る。溶媒は、ナノ粒子及び表面交換剤の有効な担体でもあり得て、例えば基板上に存在する有機塗料コーティングの表面に効果的にスプレー塗布できる液体配合物を提供する。溶媒は、ヒドロキシル、エーテル、ケトン及びエステルから選択される1つ以上(例えば1~4個)の官能基を有するC1-12アルキルから選択される、1つ以上の有機溶媒であり得る。アルキル基は、1つ以上の官能基によって中断及び/又は置換されていることが認識される。官能基は、ヒドロキシル、エーテル及びケトンの少なくとも1つから選択され得る。「C1-12アルキル」は、1つ以上の官能基により置換及び/又は中断され得る、1~12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素を示すことが認識される。溶媒は、上記のように中断及び/又は置換されたC3-10アルキルから選択される1つ以上の有機溶媒であり得る。好適な有機溶媒又は溶媒の組合せは、用いられる表面交換剤及びナノ粒子に依存し得る、さらなる利点を提供することができ、これに限定されるわけではないが、
(a)ケトン、例えばメチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン及びアセトン;
(b)アルコール、例えば芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール;脂肪族アルコール、例えばC1-6又はC1-4アルコール、即ち第3級ブタノール、n-ブタノール、第2級ブタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、エタノール及びメタノール;環式アルコール、例えばシクロヘキサノール;並びにグリコール、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びポリプロピレングリコール;
(c)エーテル、例えばグリコールエーテル、例えばグリコールジエーテル、例えばこれに限定されるわけではないが、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル又はジエチレングリコールのメチルブチルエーテルを含む、アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びポリプロピレングリコールのジエーテルを含む、グリコールのジC1-6アルキルエーテル及び環式エーテル、例えばテトラヒドロフラン;
(d)エステル、例えばエチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、第3級ブチルアセテート及びグリコールエーテルアセテート;
又はその任意の組合せ、が挙げられ得る。
【0061】
溶媒は、アルコール、例えばエタノール、メタノール、エトキシエタノール、プロパノール、イソプロパノール又はn-プロパノールなどのアルコール、ブタノール、第3級ブタノール及び第2級ブタノール;並びにエーテル溶媒、例えばこれに限定されるわけではないが、グリム、ジグリム、トリグリム、テトラグリム及びジプロピレングリコールジメチルエーテルを含む、エチレングリコール及びプロピレングリコールのC1-6アルキルエーテル又はその組合せ(即ち混合エーテル)及び環式エーテル、例えばテトラヒドロフランであり得る。
【0062】
グリコールエーテル:アルコールの組合せ、例えばジプロピレングリコールジメチルエーテル:イソプロパノール又はn-プロパノール;エーテル:アルコールの組合せ、例えばジプロピレングリコールジメチルエーテル:イソプロパノール又はn-プロパノール、メタノール、イソブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、エトキシエタノール及び/又はエチルヘキサノール;エチレングリコールモノメチルエーテル:エタノール、メタノール、エトキシエタノール及び/又はイソプロパノール;グリコール及びモノエーテルの組合せ、例えばジプロピレングリコール-モノメチルエーテル、ジプロピレングリコール-モノブチルエーテル及び/又はジプロピレングリコール;エーテルの組合せ、例えばテトラヒドロフラン:トリグリム及びテトラヒドロフラン:ジプロピレングリコールジメチルエーテル;ケトンを含む溶媒の組合せ、例えばメチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルプロピルケトンを含む、溶媒の組合せが提供され得る。代表的な溶媒の組合せとしては、高沸点及び低沸点の溶媒の組合せが挙げられる。
【0063】
溶媒の組合せは、エーテル:アルコールの組合せ、例えばグリコールエーテル、例えばグリコールジエーテル、例えばジプロピレングリコールジエーテルを含むアルキレングリコールのジエーテル、例えばジプロピレングリコールジメチルエーテル及びアルコール、例えば脂肪族アルコール、例えばC1-6又はC1-4アルコール、例えばイソプロパノール又はn-プロパノールであり得る。これらの溶媒の組合せは、基板上に存在する有機塗料コーティングの表面(又はその上の膜)の乱れを促進するなど、再活性化処理剤になおさらなる利点を提供し得て、ナノ粒子及び表面交換剤の有効な担体としても作用し得て、例えば本明細書に記載するような有機塗料コーティングの付着力の再活性化を提供するために、基板上に存在する有機塗料コーティングの表面に効果的にスプレー塗布することができる液体配合物を提供する。
【0064】
溶媒は、表面交換剤の析出を低減又は防止するために、約800ppm未満の水、例えば約700ppm、600ppm、500ppm、400ppm、300ppm、200ppm又は100ppm未満の水を含有し得る。無水形態の溶媒が好ましい。配合物への水の添加は不要である。溶媒は、(再活性化配合物又はその成分の総重量に対して)約99.5%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%又は85%未満の量で存在し得る。溶媒は、(再活性化配合物又はその成分の総重量に対して)約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%を超える量で存在し得る。溶媒は、これらの値のうちの任意の2つの間、例えば約90~99.5%の間、約92%~99%の間又は約94%~98%の間の範囲の量で存在し得る。一態様において、溶媒は、再活性化処理剤、配合物又はその成分の総重量に対して、約90%を超える量又は約95%~約98%の量で存在する。
【0065】
「溶媒」は、下記のようにナノ粒子及び/又は添加剤と共に存在し得る「追加溶媒」を含有し得る。「追加溶媒」のない上記の溶媒は、本明細書では「配合溶媒」とも呼ばれ得る。したがって、「溶媒」は、「配合溶媒」、任意に「追加溶媒」、任意の偶発的不純物及び本明細書に記載の任意の少量の水少量の水を含み得る又はそれからなり得る。「追加溶媒」は、約10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%未満の量(総再活性化処理配合物の重量%)で提供され得る。一態様において、追加溶媒は、配合溶媒のために選択したものと同じである。「追加溶媒」及び「配合溶媒」の総量は、「溶媒」に関連して上述した量で提供され得る。「追加溶媒」は、特に「ナノ粒子」の節を参照して、以下でさらに説明する。例えば、追加溶媒は、アセテート及びアルコールの少なくとも1つ、例えばメトキシプロピルアセテート、メトキシプロパノール及びイソプロパノールの少なくとも1つから選択され得る。
【0066】
表面交換剤
好適な薬剤としては、有機コーティングの表面交換を促進するものが挙げられる。表面交換を促進する好適な薬剤としては、エステル交換剤が挙げられ得る。表面交換を促進する好適な薬剤は、チタネート及びジルコネート又はそのキレート、例えばC1-10アルキルチタネート、C1-10アルキルチタネートキレート、C1-10アルキルジルコネート、C1-10アルキルジルコネートキレートから選択され得る。具体例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-2-エチルヘキシルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート及びその組合せが挙げられる。
【0067】
薬剤としては、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、ジルコニウム-n-プロポキシド、テトラ-n-プロピルチタネート、テトラ-イソプロピルアルコール及びテトラ-n-ブチルチタネートの少なくとも1つから選択され得る。
【0068】
薬剤は、例えばテトラ-n-プロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート及びジルコニウム-n-プロポキシドから選択されるジルコネート又はそのキレートであり得る。
【0069】
薬剤は、例えばテトラ-n-プロピルチタネート、テトラ-イソプロピルアルコール及びテトラ-n-ブチルチタネートから選択される、チタネート又はそのキレートであり得る。
【0070】
薬剤は、(再活性化配合物の総重量に対して)約0.001%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%を超える量で存在し得る。薬剤は、(再活性化配合物又はその成分の総重量に対して)約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%未満の量で存在し得る。薬剤は、これらの値のうちの任意の2つの範囲、例えば(再活性化配合物の総重量に対して)約0.05%~約10%の間、約1%~約8%の間又は約2%~約6%の間の範囲の量で存在し得る。一態様において、薬剤は、(再活性化配合物又はその成分の総重量に対して)約1%~約8%の範囲の量で存在する。
【0071】
ナノ粒子
「ナノ粒子」という用語は、本明細書で使用する場合、約500nm未満の粒径を有する粒子を意味し、例えば約450nm、400nm、350nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、10nm又は5nm未満であり得る。ナノ粒子は、約1nm、5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm又は300nmを超える粒径を有し得る。一態様において、ナノ粒子は200nm未満の粒径を有する。ナノ粒子は、それらの値のうちの任意の2つの範囲、例えば(再活性化配合物又はその成分の総重量に対して)約1nm~200nmの間、1nm~100nmの間及び5nm~50nmの範囲の量で存在し得る。
【0072】
ナノ粒子は、有機又は無機ナノ粒子であり得る。透明又は装飾的なコーティングをさらなるコーティングとして使用する場合、無色のナノ粒子が好ましい。
【0073】
有機ナノ粒子の例としては、カーボンブラックなどのカーボン系ナノ粒子が挙げられる。無機ナノ粒子の例としては、アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素、アンチモン、セリウム、ガドリニウム、コバルトインジウム、モリブデン、ネオジム、テルル、イットリウム、ユーロピウム、バリウム、銅、リチウム、チタン及びタングステンの金属酸化物が挙げられる。無機ナノ粒子の他の例としては、炭化物、例えば炭化ケイ素、サルフェート、例えばBaSO4、カーボネート、例えばCaCO3、ホスフェート、例えばCa3(PO4)2及びFePO4などのリン酸塩、BiOCl及びイットリア安定化ジルコニアが挙げられる。
【0074】
ナノ粒子は、アルミニウム、ケイ素、セリウム、ジルコニウム、チタンの金属酸化物、カーボネート、例えばカルシウムカーボネート及び有機ナノ粒子、例えばカーボンブラックの少なくとも1つから選択され得る。ナノ粒子は、カーボンブラック、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素から選択され得る。
【0075】
溶液で利用可能なナノ粒子の例を以下に示す。
【0076】
【0077】
ナノ粒子は、分散を補助するために又は再活性化処理剤の他の成分との相溶性を改質/強化するために、シロキサンなどで表面改質され得る。
【0078】
ナノ粒子は球状粒子であり得る。球状粒子は、約2:1未満のアスペクト比を有し得る。球状粒子とは、粒子が本質的に球状形態であることを意味するが、理想的な球状形態からの逸脱も有し得る。例えば球状粒子は、例えば先端が切り取られ得るか、又は液滴形状を有し得る。分散中の生成又は凝集の結果として生じる可能性のある、理想的な球形からの他の逸脱も考えられる。
【0079】
理論に制限されることを望むものではないが、ナノ粒子は、低湿度環境でコーティングにひとたび塗布されると、再活性化処理剤において十分な乱れ又は亀裂を確実に生じさせるため、さらなるコーティング及び/又は他の要素がより良好に相互作用することができ、したがってコーティングの再活性化処理剤及び/又は再活性化表面との付着相互作用を形成することができると考えられる。
【0080】
本明細書に記載する「ナノ粒子」は、溶媒中に事前に分散され得て、そのナノ粒子を事前分散させた溶媒は、本明細書では「配合溶媒」に対して、(ナノ粒子用)「追加溶媒」と呼び、「溶媒」の一部を形成し得る。ナノ粒子の重量%は、溶液中のナノ粒子の重量%ではなく、ナノ粒子の固形分に基づくことが認識される。ナノ粒子を事前分散させるための追加溶媒は、有機溶媒であり得る。ナノ粒子を事前分散させるための追加溶媒は、エステル、エーテル、アルコール及びケトンの少なくとも1つから選択され得る。例えば、ナノ粒子を事前分散させるための追加溶媒は、メトキシプロピルアセテート、メトキシプロパノール、イソプロパノール又はその組合せから選択され得る。ナノ粒子を事前分散させるための追加溶媒は、「溶媒」について上記したのと同じ溶媒から選択され得る。「追加溶媒」は「配合溶媒」と同じであり得る又は異なり得る。ナノ粒子用の追加溶媒は、約10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%未満の量(総再活性化処理配合物の重量%)で提供されて得る。
【0081】
ナノ粒子は、(再活性化配合物又はその成分の総重量に対して)約0.001%、0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%又は3%を超える量で存在し得る。ナノ粒子は、(再活性化配合物又はその成分の総重量に対して)約3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.01%又は0.005%未満の量で存在し得る。ナノ粒子は、これらの値の任意の2つの範囲、例えば(再活性化配合物又はその成分の総重量に対して)約0.001%~2%の間、約0.001%~0.1%の間、約0.01%~約1%の間又は約0.01%~0.5%の間の範囲の量で存在し得る。
【0082】
任意の添加剤
本明細書に記載する「添加剤」は、任意であり、有機塗料コーティングの表面上の付着力を活性化する際の再活性化処理剤に必須ではないことが認識される。1つ以上の添加剤は、存在する場合、有機塗料コーティングの表面に対する再活性化処理剤による付着力の再活性化に加えて、さらなる利点を提供し得る。本明細書に記載する「表面交換剤」は、本明細書に記載する任意の「添加剤」とは別個のものであり、その意味には含まれないことが認識される。本明細書に記載の「ナノ粒子」は、本明細書に記載の任意の「添加剤」に別個の構成成分を提供することも認識される。例えば、添加剤は、存在する場合、表面の再活性化に寄与しないか、又は有機塗料コーティングの表面と化学的に反応しない。
【0083】
以下に説明するすべての添加剤は任意であり、再活性化処理剤の塗布をさらに向上させる又は完成したコーティング系(例えば基板、エージングコーティング、再活性化剤、最終コーティング)の性能特性をさらに向上させるために添加され得る。好適な添加剤としては:
(a)レオロジー調節剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばメトセル(Methocel)311)、変性尿素(例えばByk 411、410)、セルロースアセテートブチレート(例えばイーストマン(Eastman)CAB-551-0.01、CAB-381-0.5、CAB-381-20)及びポリヒドロキシカルボン酸アミド(例えばByk 405);
(b)湿潤剤、例えばフルオロケミカル界面活性剤(例えば3Mフルオラド(Fluorad));
(c)界面活性剤、例えば脂肪酸誘導体(アクゾノーベル(AkzoNobel)、ベルモドール(Bermodol)SPS 2543など)、第4級アンモニウム塩、イオン性及び非イオン性界面活性剤;
(d)分散剤、例えば第1級アルコール系の非イオン性界面活性剤(例えばメルポール(Merpol)4481、デュポン(DuPont))及びアルキルフェノール-ホルムアルデヒド-ビスルフィド縮合物(例えばクラリアント(Clariants)1494);
(e)消泡剤;
(f)レベリング剤、例えばフルオロカーボン変性ポリマー(例えばEFKA 3777);
(g)顔料、例えば有機フタロシアニン、キナリドン、ジケトピロロピロール(DPP)及びジアリド誘導体並びに(例えば再活性化処理剤及び塗布箇所の視認性を高めるための)無機酸化物顔料を含む、航空宇宙用塗料組成物で使用されるもの;
(h)有機及び無機染料を含む染料、例えば(例えば再活性化処理剤及び塗布箇所の視認性を高めるために)蛍光剤(ローヤル・ピグメント・アンド・ケミカルズ(Royale Pigment and Chemicals))、フルオレセイン及びフタロシアニン;
(i)耐食添加剤、例えばリン酸エステル(例えばADD APT、アンチコール(Anticor)C6)、(2-ベンゾチアゾリチオ)コハク酸のアルキルアンモニウム塩(例えばBASF、イルガコア(Irgacor)153)、トリアジンジチオール及びチアジアゾールが挙げられる。
【0084】
本開示による表面再活性化方法では、特定の態様において、添加剤はシラン及びシロキサンを含まない又はそれからならない。
【0085】
添加剤は、レオロジー調節剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤及び耐食剤から選択され得る。着色剤は、例えば着色を提供するために又は活性剤がスプレーされた箇所を確認するために、染料又は顔料であり得る。消泡剤は、例えばBYKから商業的に入手され得て、BYK-05、BYK-354及びBYK-392が挙げられる。着色剤は、UV蛍光染料であり得る。添加剤は、着色剤及び耐食剤から選択され得る。添加剤は、染料及び耐食剤から選択され得る。添加剤は、UV蛍光染料及び耐食剤から選択され得る。添加剤はUV蛍光染料であり得る。添加剤は耐食剤であり得る。
【0086】
任意の添加剤は、着色剤、例えば染料であり得る。染料は有機の、周囲の媒体に可溶性の、黒色又は有彩色の物質であり得る(Rompp Coatings and Printing Inks,page 221,keyword“colorant”を参照のこと)。任意の添加剤は、例えば“Coating Additives”by Johan Bielemann,Wiley-VCH,Weinheim,New York,1998という書籍に記載されているものから選択され得る。染料、は有機染料及び無機染料を含み得る。染料は、有機染料、例えばアゾ染料(例えばアリールアミドイエローPY73などのモノアゾ、ジアリリドイエローなどのジアゾ、アゾ縮合化合物、バリウムレッドなどのアゾ塩、ニッケルアゾイエローPG10などのアゾ金属錯体、ベンズイミダゾン)であり得る。染料は、(例えば再活性化処理剤及び塗布箇所の視認性を高めるために、ローヤル・ピグメント・アンド・ケミカルズ(Royale Pigment and Chemicals))蛍光剤、フルオレセイン、フタロシアニン、ポルフィリンであり得る。蛍光染料などの着色剤は、例えばスプレー後に蛍光を確認して塗布範囲を確保するためのUVゴーグルと共に使用することができる。染料は、溶媒との相溶性又は混和性を改善するために有機可溶性であり得ることが認識される。例えばピーク吸収は、日光の自然カットオン(cut-on)である、約295nmを下回ることがある。蛍光染料のさらなる例としては、アクリジン染料、シアニン染料、フッ素染料、オキサジン染料、フェナントリジン染料及びローダミン染料が挙げられ得る。
【0087】
任意の添加剤は、顔料などの着色剤であり得る。顔料は粉末状又はフレーク状であり、染料とは異なり周囲の媒体に不溶性であり得る着色剤を提供できる(RomppLacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag Stuttgart/New York 1998,page 451,keyword“pigments”を参照のこと)。顔料は通例、例えば約0.4~約0.7μmの光波長内で光を屈折できるようにするための、約1μm未満のサイズの固体粒子で構成される。一態様において、顔料は約500nm~約1000nmなど、約200nm~約1000nmの固体粒子を有する。顔料は、着色顔料、効果顔料、磁気遮蔽顔料、導電性顔料、耐食顔料、蛍光顔料及び燐光顔料を含む、有機及び無機顔料から選択され得る。好適な顔料のさらなる例は、例えばドイツ特許出願DE-A-2006053776又はEP-AO 692 007に記載されているようであり得る。有機顔料としては、多環式顔料(例えば銅フタロシアニンなどのフタロシアニド、ジブロムアントアントロンなどのアントラキノン、キナクリドンレッドPV19などのキナクリドン、ジオキサジンバイオレットPV23などのジオキサジン、ペリレン、テトラクロロなどのチオインジゴ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、キノリン顔料及びアジン顔料が挙げられ得る。顔料は無機であり得る。無機顔料は、カーボンブラック(例えば黒)、二酸化チタン(例えば白)、酸化鉄(例えば黄色、赤、茶色、黒)、亜鉛クロメート(例えば黄色)、アズライト(例えば青)、酸化クロム(例えば緑及び青)、カドミウムスルホキシド(例えば緑、黄色、赤)、リトポン(例えば白)から選択され得る。航空宇宙用塗料組成物に使用される顔料の例としては有機フタロシアニン、キナリドン、ジケトピロロピロール(DPP)及びジアリド誘導体並びに、(例えば再活性化処理剤及び塗布箇所の視認性を高めるために)無機酸化物顔料が挙げられる。
【0088】
耐食添加剤は、例えばコーティング領域にインサートされ得る又は隣接し得る(例えば地金又は合金系)締め具の腐食の防止又は低減を促進し得る。耐食添加剤の使用は、そのような締め具を含有するコーティングを塗布するための、例えばコーティングの前に、マスキングして、締め具(化成コート及びプライマー)を事前に準備するのではなく、単一のコーティングステップを塗布するための、さらなる利点を提供する。耐食剤の例としては、希土類金属を含む金属塩、例えば亜鉛、モリブデン及びバリウムの塩(例えば希土類金属のホスフェート、クロメート、モリブデート又はメタボレート)が挙げられる。
【0089】
添加剤は通例、再活性化処理剤又はその成分の総重量に対して約10%未満の量で存在する。例えば、合わせた添加剤すべての総量は、存在する場合、約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%又は0.05%未満の量で提供され得る。添加剤は、約0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%又は9%を超える量で提供され得る。添加剤すべての総量は、存在する場合、上記の値のうちの任意の2つの間、例えば(再活性化配合物又はその成分の総量に対して)約0.01%~約10%の間、約0.05%~5%の間、約0.1%~約3%の間又は約0.5%~約2%の間の範囲の量で提供され得る。
【0090】
基板
有機塗料コーティングは、基板上に存在する。基板は、建物、ビークル又は航空機の構造的支持部として使用するために構築されたパネルなどの支持構造であり得る。基板は、実質的に剛性の基板であり得る。基板は、実質的に非弾性のパネルであり得る。例えば、基板は、航空機の胴体又は翼のパネル部分であり得る。実質的に非弾性又は剛性であるとは、再活性化工程で基板に伸張を課す必要がないことと理解される。基板は、変形に対して実質的に弾力性であり得る、例えば伸びに対して実質的に弾力性であり得るか、又はその変形時に基板が実質的にその元の形状に戻るように弾力的に変形可能であり得る。例えば、基板は特定の可撓性を有し得るが、その元の形状に戻ることができる。一態様において、基板は、容易に伸張又は延伸することができる可撓性プラスチック又は包装材料ではない。一態様において、基板は、金属、金属合金及び/又は複合材料を含むか又は本質的にそれからなる。
【0091】
金属又は金属合金は、アルミニウム、チタン又はその合金であり得る。複合材料は、炭素繊維強化エポキシ又はガラス強化エポキシ材料であり得る。複合材料はガラス、木材又は布地を含有し得る。基板は、ポリイミド又はポリカーボネートを含み得る、実質的に非弾性又は剛性のプラスチックであり得る。一態様において、実質的に非弾性又は剛性のプラスチックは、伸張若しくは容易に操作できるプラスチックフィルム若しくはプラスチック包装材料を含まない、及び/又は構造的剛性又は弾性変形能を有さないプラスチックフィルム若しくはプラスチック材料を含まない。
【0092】
基板は、規定の極限引張強度及び/又は最大引張伸び特性を有し得る。プラスチック基板の業界標準の測定方法は、ASTM D638“Standard Test Method for Tensile Properties F Plastics(プラスチックの引張特性のための標準試験法)”を含み得る。複合材料基板の極限引張強度の業界標準測定方法は、ASTM D3039/D3039M“Standard Test Method for Tensile Properties F Polymer Matrix Composite Materials(ポリマーマトリックス複合材料の引張特性のための標準試験法)”を含み得る。金属材料基板の業界標準測定方法は、ASTM E8/E8M“Standard Test Methods for Tension Testing F Metallic Materials(金属材料の引張試験のための標準試験法)”を含み得る。
【0093】
基板の引張伸び特性は、約50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満であり得る。基板の引張伸び特性は、これらの値の任意の2つの間、例えば約1%~約50%の間、例えば約5%~約30%の間であり得る。基板の極限引張強度(MPa)は、少なくとも約10、50、100、200、300、400、500、600、700又は800 MPaであり得る。基板の極限引張強度(MPa)は、これらの値のいずれか2つの間、例えば約10MPa~約800MPaの間、例えば約100MPa~約500MPaの間であり得る。
【0094】
例えば、プラスチック基板の極限引張強度及び/又は最大引張伸び特性は、業界標準の方法ASTM D638、ASTM D3039/D3039M及び/又はASTM E8/E8Mを使用して、室温(23℃/73°F)及び50%の相対湿度にて測定され得る。プラスチック基板の極限引張強度及び/又は最大引張伸び特性は、ASTM D638を使用して、5~500mm/minの任意の値から選択した試験速度にて、0.5~5分以内にプラスチック基板を破断する最低速度にて測定され得る。例えば、試験速度は50mm/minであり得る。
【0095】
複合材料基板の極限引張強度及び/又は最大引張伸び特性は、ASTM D3039/D3039Mを使用して、1~10分以内に破断するように選択されたひずみ速度にて測定され得る。例えば、標準ひずみ速度は0.01分-1であり得て、標準ヘッド変位速度は2 mm/分であり得る。
【0096】
極限引張強度及び/又は最大引張伸び特性は、ASTM E8/E8Mを使用して、0.05~0.5 mm/分から選択した試験速度にて測定され得る。
【0097】
表面再活性化処理剤
溶媒、薬剤、ナノ粒子及び任意の添加剤を組み合わせて、再活性化処理剤の形態で塗布する場合、これは溶液、懸濁液、混合物、エアゾール、エマルジョン、ペースト又はその組合せなどの異なる物理的形態をとり得る。一態様において、処理剤は溶液、エマルジョン又はエアゾールの形態である。
【0098】
再活性化処理剤は、これに限定されるわけではないが、攪拌機、振とう機、高速ミキサ、内部ミキサ、スタティックミキサなどのインラインミキサ、押出機、ミル、超音波及びガス分散機などの当業者に既知の任意の混合装置によって、又は完全手動振とうによって、成分を共に混合することにより調製され得る。再活性化処理剤が溶液の形態である場合、溶液は濃縮物として調製されて使用前に希釈され得るか、又はすぐ使用できるように調製され得る。
【0099】
表面再活性化処理剤又は配合物は、
(a)グリコールジエーテル:C1-6又はC1-4アルコール溶媒の組合せなどのエーテル:アルコール溶媒の組合せである溶媒、例えばジプロピレングリコールジメチルエーテル:イソプロパノール又はn-プロパノール;
(b)C1-10アルキルチタネート、C1-10アルキルジルコネート、C1-10アルキルチタネートキレート、C1-10アルキルジルコネートキレートなどのチタネート若しくはジルコネート又はそのキレートである表面交換剤、例えばテトラ-i-プロピルジルコネート、テトラ-i-プロピルチタネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-n-プロピルチタネート及びテトラ-n-ブチルチタネート、特にテトラ-n-プロピルチタネート又はテトラ-n-プロピルジルコネート;
(c)炭素系ナノ粒子などのナノ粒子、例えばカーボンブラック又は金属酸化物ナノ粒子、例えば酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム又は酸化ケイ素並びに
(d)任意にレオロジー調節剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤及び耐食剤から選択される添加剤
を含み得る又はそれからなり得る。
【0100】
さらなるコーティングに対する有機塗料コーティングの付着力を促進するために、基板上に存在する有機塗料コーティングの表面を再活性化する表面処理配合物であって、偶発的不純物以外に、
(a)チタネート、ジルコネート及びそのキレートの少なくとも1つから選択される表面交換剤、
(b)配合溶媒、
(c)ナノ粒子、
(d)任意に、配合物の総重量に対して約10重量%未満の量で存在する添加剤
を含む又はそれからなる配合物が提供され得る。
【0101】
特徴(a)~(d)は、本明細書に記載するその任意の態様によって提供され得る。例えば、表面処理配合物は、
(a)約8重量%未満の量で存在する表面交換剤、
(b)少なくとも約85重量%の量で存在する配合溶媒、
(c)約2重量%未満の量で存在するナノ粒子、及び
(d)任意に約10重量%未満の量で存在する添加剤
を含み得て又はそれからなり得て、
成分(a)~(d)それぞれの重量%は、添加剤が存在しない場合、配合物の総重量%及び成分(a)~(c)の総重量%に基づき、又は添加剤が存在する場合、成分(a)~(d)の総重量%は100である。
【0102】
「ナノ粒子」は、上述したように、任意に本明細書に記載の溶媒中の表面再活性化処理配合物に提供され得る。
【0103】
例えば、本明細書で前述した態様に基づいて、表面処理配合物の各種の態様が次のように提供され得る。表面処理配合物は、配合物の総重量に対して約1%~約8%の量で存在する表面交換剤(a)をさらに提供し得る。溶媒(b)は、配合物の総重量%に対して約95%~約98%の量で存在し得る。ナノ粒子(c)は、配合物の総重量%に対して約1%未満の量で存在し得る。添加剤(d)は、配合物の総重量%に対して約5%未満の量で存在し得る。表面交換剤は、ジルコネート又はそのキレートであり得る。表面交換剤(a)は、C1-10アルキルチタネート若しくはそのキレート又はC1-10アルキルジルコネート若しくはそのキレートであり得る。C1-10アルキルチタネート若しくはそのキレートは、テトラ-n-プロピルチタネートであり得て、又はC1-10アルキルジルコネートそのキレートは、テトラ-n-プロピルジルコネートであり得る。配合溶媒(b)は、ケトン、アルコール、エーテル又はその組合せから選択される有機溶媒であり得る。有機溶媒は、グリコール、グリコールエーテル、アルコール、グリコールモノエーテルアルコール又はその組合せであり得る。有機溶媒は、エーテル:アルコールの組合せであり得る。エーテル:アルコールの組合せは、グリコールジエーテル:C1-6又はC1-4アルコールであり得る。グリコールジエーテルはジプロピレングリコールジメチルエーテルであり得て、C1-4アルコールはイソプロパノール及び/又はn-プロパノールであり得る。「配合溶媒」は、表面処理配合物に、特に表面交換剤に溶媒媒体を提供するために使用される主要な溶媒系であることが認識される。しかし、ナノ粒子及び/又は添加剤は、表面処理配合物に追加溶媒を提供する、それ自体の溶媒系において表面処理配合物に添加され得る。配合溶媒に対してナノ粒子及び/又は添加剤とと共に存在し得る追加溶媒は、約10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%未満の量(再活性化処理配合物の総重量%)で提供され得る。一態様において、追加溶媒は、配合溶媒のために選択したものと同じである。別の態様において、再活性化処理剤は、本明細書に記載の追加の事前分散溶媒を含む、本明細書に記載の偶発的不純物を含有し得る。
【0104】
本明細書で前述した態様に基づく表面処理配合物の他の各種の例示的態様は、以下のように提供され得る。ナノ粒子(c)は、約200nm未満、約100nm未満又は約1~約100nm若しくは約1~約50nmの範囲の粒径を有し得る。ナノ粒子(c)は、炭素系ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子であり得る。ナノ粒子は、カーボンブラック、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の少なくとも1つから選択され得る。
【0105】
添加剤は、レオロジー調節剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤及び耐食剤から選択され得る。着色剤は、例えば活性剤がスプレーされた箇所を確認するために、染料又は顔料であり得る。着色剤は、UV蛍光染料であり得る。添加剤は、着色剤及び耐食剤から選択され得る。添加剤は、染料及び耐食剤から選択され得る。
【0106】
処理剤又は配合物は、溶液又は乳液の形態であり得る。配合物は、偶発的不純物以外に、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、イソプロパノール又はn-プロパノール;テトラ-n-プロピルチタネート又はテトラ-n-プロピルジルコネート;カーボンブラック、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム又は酸化ケイ素;及び任意の添加剤を含み得る又はそれからなり得る。
【0107】
表面処理配合物又はその成分は、微量の汚染物質などの偶発的不純物を含み得ることが認識される。例えば、有機溶媒は、本明細書に記載するように微量の水を含み得る。偶発的不純物は、(配合物又はその成分の総重量%に対して)約1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、0.005%、0.001%、0.0005%又は0.0001%未満であり得る。
【0108】
色ずれ(ΔE)は、国際照明委員会(CIE)によって策定されたL*、a*及びb*色空間の記述に基づく2色間の差又は距離であるため、通常CIELABと呼ばれ、L*が白/黒、a*が赤/緑、b*が黄/青を表す3次元デカルト空間における色の表現である。L*、a*及びb*はデカルト系を形成し、2点(色)の差はΔE*=(ΔL*×ΔL*+Δa*×Δa*+Δb*×Δb*)の平方根である。本明細書に記載の方法は、1つ以上のさらなるコーティングを有機塗料コーティングの表面に塗布した後に測定した際に、有機塗料コーティングの色ずれ(ΔE)を低減、最小化又は防止するさらなる利点を提供し得る。例えば、表面処理配合物は、就航中に配合物が有機塗料コーティングの表面に塗布され、続いてさらなるコーティングが有機塗料コーティングの表面に塗布される場合、0.5未満の色ずれ(ΔE)を提供可能であり得る。本明細書に記載の基板は、(それ自体が基板上に存在する)有機コーティング上のさらなるコーティングでコーティングされた際に、有機コーティングの色と比較して、約1未満又は約0.5未満のさらにコートした基板の色ずれ(ΔE)を提供し得る。色ずれ(ΔE)は、約10、9、8、7、6、5、4、3、2、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.05又は0.01未満であり得る(光源D65、d/8、CIELab色系)。色ずれは、これらの値の任意の2つの間、例えば、約0.5~約5の間、約0.01~約10の間とされ得る。さらなるコーティングは、色ずれを低減又は防止するためにクリアコーティング又は透明コーティングであり得ることが認識される。
【0109】
ΔE値の範囲は0~100であり、例えば次のように知覚される:
≦1.0 ヒトの目では知覚できない;
1~2 綿密な観察により知覚可能;
2~10 一見して知覚可能;
11~49 色は反対色というよりは、より同系色である;
100 色は正反対色である。
【0110】
色の測定は、8°の視野角を使用する球体幾何形状を使用して測定できる。球体幾何形状は、鏡面反射を含む(スピン)条件又は鏡面反射を含まない(SPEX)条件で操作され得る。例えば、d/8スピンカラー幾何形状、60°グロス幾何形状、11mmカラーアパーチャ、5×10mmグロスアパーチャを備えたBYKカタログ番号6834、スペクトロガイド・スフィア・グロス装置を使用して、カラー測定が使用され得る。測定色は400~700 nmの範囲内であり得る。発光光源は、A、C、D50、D55、D65、D75、F2、F6、F7、F8、F10、F11、UL30から選択され得る。一態様において、光源は、一般に使用される定義された昼光の一種である、D65が選択される。オブザーバパラメータは、2°及び10°から選択され得る。一態様において、オブザーバパラメータは10°が選択され、色測定値は、相対湿度85%未満、35℃(95°F)にて測定され得る。
【0111】
色測定は、ASTM D2244、ASTM E308、ASTM E1164などの業界標準の色測定方法も使用して測定され得る。
【0112】
CIELab表色系を使用して、色測定のキャラクタリゼーションが行われ得る。ほんの一例として、系はデカルト座標系を形成する3つ成分からなり、黒から白までのスケールである明度(L*)、緑から赤のスケールである色相(a*)及び黄色から青のスケールである色相(b*)の2つの測定をキャラクタリゼーションする3つの成分からなる。色の全体的な変化ΔE*は一般に使用され、ΔE*=(ΔL*×ΔL*+Δa*×Δa*+Δb*×Δb*)の平方根として定義される。
【0113】
再活性化処理剤は、スプレー配合物として配合され得る。配合物の成分は、就航中に配合物がスプレー塗布に好適であるように、特定の環境向けの配合物に特定のレオロジー又は粘度を提供するように選択できることが認識される。スプレー配合物は、特定のスプレーガン及び系(圧力、流量及びノズル直径など)で使用するために調製され得る。スプレー配合物は、例えば約0~約15ミクロン厚、例えば約0.1~約5ミクロン厚、例えば約0.5~約2ミクロン厚、例えば約0.1~約1ミクロン厚を形成するために乾燥が可能である湿潤膜を提供し得るスプレー配合物は、例えば、約15~約30m2/Lなど、約1~約50m2/Lの被覆率を提供し得る。
【0114】
実施例において、以下の添付図面を参照する。
【0115】
図1:さらなる有機コーティングの就航中のエージング有機塗料コーティングへの付着を、基材に対するその就航中のエージング有機塗料コーティングの完全性を損うことなく促進するために、その表面付着特性の再活性化のために処理されている、パネル部の基板に以前に付着して、基板上に存在する就航中のエージング有機塗料コーティングのパネル部の概略図である。
図2:雨食試験における最大引裂き長さ及びコーティングの除去面積%に対応する、1~10のスケールに関連する視覚的表現が強調表示されている。
図3:様々な表面処理を伴う及び伴わない、シングル・インパクト・ジェット装置(SIJA)技術を使用した、白色塗料からのグレー塗料の除去量を示す画像である。大量の塗料の除去は、付着力が不十分であることを示し、より少ない塗料の除去は、付着力がより良好であることを示すことに留意されたい。画像は下記を示す:
・低湿度(4.2mb水蒸気分圧)における再活性化処理を用いない、著しいグレー塗料除去。
・AT-1を使用した、高湿度(10.1mb水蒸気分圧)下での白色コーティングの再活性化時の、より低度のグレー塗料除去。
・AT-1を使用した、低湿度下で白色コーティングの再活性化時の、より高い相対的なグレー塗料除去。
・ナノ粒子を含むようにAT-1を改質した際の、低湿度下でのより少ないグレー塗料除去。
図4:低湿度(水蒸気分圧3.0~3.5mb)条件下での白色塗料からのグレー塗料の様々な除去量を示す、シングル・インパクト・ジェット装置の結果を示す画像である。結果は下記を示す。
・低湿度における再活性化処理なしの、著しいグレー塗料除去。
・AT-1を使用した、高湿度(10.1mb水蒸気分圧)下での白色コーティングの再活性化時の、より低度のグレー塗料除去。
・AT-1を使用した、低湿度下で白色コーティングの再活性化時の、より高い相対的なグレー塗料除去。
・ナノ粒子を含むようにAT-1を改質したときの、より少ないグレー塗料除去。
図5:高湿度(10.3mb水蒸気分圧)条件下での白色塗料からの塗料除去を示す、シングル・インパクト・ジェット装置の結果を示す画像である。結果は下記を示す。
・再活性化を行わないと、高湿度において著しいグレー塗料が除去される。
・AT-1を使用する高湿度条件で行った再活性化は、グレーコートの白色コートへの付着力を改善するのに有効である。
・高湿度条件下で再活性化を行った場合、カーボンブラックを処理剤に含めることはグレーコーティングの付着力に悪影響を及ぼさず、AT-1と同様の結果を生じる。
図6:様々な表面処理剤を伴う及び伴わない、白色塗料からのグレー塗料の除去量を示す、シングル・インパクト・ジェット装置(SIJA)の結果を示す画像である。大量の塗料の除去は、付着力が不十分であることを示し、より少ない塗料の除去は、付着力がより良好であることを示すことに留意されたい。画像は下記を示す:
・低湿度(4.2mb水蒸気分圧)における処理剤を用いない、著しいグレー塗料除去。
・AT-1を使用した、高湿度(10.3mb水蒸気分圧)下での白色コーティングの再活性化時の、より低度のグレー塗料除去。
・AT-1を使用した、低湿度(4.2mb水蒸気分圧)の下での白色コーティングの再活性化時の、比較的高いグレー塗料除去。
・ナノ粒子を含むようにAT-1を改質したときの、低湿度(4.2mb水蒸気分圧)下でのより少ないグレー塗料除去。
図7:DHSに高湿度(38%RH、68°F;8.9mb)及び低湿度(13%RH、66°F;2.7 mb)条件下でDHS CA8000/BAC70846に4:1(C:C2)シンナーを用いて塗布した際の、ナノ粒子を添加しないAT-1再活性化処理剤の残留物形態を示す、走査型電子顕微鏡画像である。画像は下記を示す:
・高湿度での塗布により、残留物の微細で非平滑な開放(多孔質)構造が生成される。
・低湿度での塗布により、残留物のより連続的で平滑なゲル状(より多孔性の低い)構造が生成される。
図8:高湿度及び低湿度条件下で塗布した際の、0.005重量%スペシャルブラック(Special Black)5(50nm)ナノ粒子を添加したAT-1再活性化処理剤の残留物形態を示す、走査型電子顕微鏡画像である。画像は下記を示す:
・高湿度での塗布により、
図7の構造と同様の、残留物の微細で非平滑な開放(多孔質)構造が生成される。
・低湿度での塗布により、
図7の構造よりもやや非平滑の開放構造が生成される。
図9:高湿度条件及び低湿度条件で塗布した際の、0.01重量%のスペシャルブラック(Special Black)5(50nm)ナノ粒子を添加したAT-1再活性化処理剤の残留物形態を示す、走査型電子顕微鏡画像である。画像は下記を示す:
・高湿度での塗布により、
図7の構造と同様の、残留物の微細で非平滑な開放(多孔質)構造が生成される。
・低湿度での塗布により、
図7の構造よりもやや非平滑の開放構造が生成される。
図10:高湿度条件及び低湿度条件で塗布した際の、0.05重量%のスペシャルブラック(Special Black)5(50nm)ナノ粒子を添加したAT-1再活性化処理剤の残留物形態を示す、走査型電子顕微鏡画像である。画像は下記を示す:
・高湿度での塗布により、
図7の構造と同様の、残留物の微細で非平滑な開放(多孔質)構造が生成される。
・低湿度での塗布により、
図7の構造よりもやや非平滑の開放構造が生成される。
図11:低湿度条件下で塗布された様々な表面処理剤を使用する、様々な量の青色塗料の除去を示す回転アーム雨食の結果である。
図12:低湿度条件下で塗布された様々な表面処理剤を使用する、様々な量の青色塗料の除去を示す回転アーム雨食の結果である。
図13:低湿度条件下で塗布された様々な表面処理剤を使用する、様々な量の青色塗料の除去を示す回転アーム雨食の結果である。画像は下記を示す:
・再活性化処理剤なしの、著しい青色塗料除去。
・AT-1によって白色コーティングを再活性化する際の、処理剤なしに比べてより少ない塗料除去。
・ナノ粒子を含むようにAT-1を改質したときの、さらにより少ないグレー塗料除去。
【0116】
実施例
ここで本開示の態様を、以下の非限定的な実施例を参照して説明する。実施例において商品名で示す生成物の詳細は以下の通りである。
Al 2024-T3 clad-[航空宇宙用途で通例使用されるアルミニウムのグレード]
アルドロックス(Ardrox)1250-[ケメタル(Chemetall)製の、ヒドロキシエタンホスホン酸、カリウムヒドロキシエタンホスホネート及び第1級アルコールエトキシレートを含む弱酸性クリーニング材料]
AC-131-CB-[アルミニウムなどの金属用の非クロメート処理化成コーティング(水系、ジルコニウムn-プロポキシド、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシランゾルゲル)、3M]
PPGデソタン(Desothane)HS/DHS-[高固形分ポリウレタンコーティング、PPGエアロスペースPRCデソト(PPG Aerospace PRC-DeSoto)]
CA8000/B7084X-[PPGデソタン(Desothane)HS/DHSコーティングのホワイトポリウレタンベース成分、PPGエアロスペースPRCデソト(PPG Aerospace PRC-DeSoto)]
CA8000/B707X-[PPGデソタン(Desothane)HS/DHSコーティングのグレーポリウレタンベース成分、PPGエアロスペースPRCデソト(PPG Aerospace PRC-DeSoto)]
CA8000/B50103X-[PPGデソタン(Desothane)HS/DHSコーティングのブルーポリウレタンベース成分、PPGエアロスペースPRCデソト(PPG Aerospace PRC-DeSoto)]
CA8000C-[PPGデソタン(Desothane)HS/DHSコーティングの有機シンナー成分。実施例では「C」と示す。]
CA8000C2-[コーティング有機スズ触媒を含有する、PPGデソタン(Desothane)HS/DHSコーティングの有機シンナー成分。例では「C2」と示す。]
AT-1-[Zip-ChemよりSur-Prep AP-1として供給される、ジプロピレングリコールジメチルエーテル/n-プロパノール溶媒再活性化剤中のテトラ-n-プロピルジルコネート]
【0117】
13ページ並びに表1及び2に挙げた無機ナノ粒子は、BYKアディティブ&インスツルメンツ(BYK Additives&Instruments)又はシグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)から供給された。カーボンブラック(スペシャルブラック(Special Black))5及びスペシャルブラック(Special Black)100など)は、エボニックデグサ(Evonik Degussa)から供給された。
【0118】
非限定的な実施例1~14で使用したナノ粒子は、以下に示すように供給された。
【0119】
【0120】
以下の手順を使用して、試験用の実施例を準備した。
【0121】
基板SIJAパネル/雨食箔の準備
実施例で使用した基板はAl 2024-T3 cladであったが、基板は他の金属、合金若しくは複合材料又は上記のような実質的に非弾性又は剛性の基板に容易に変更できる。
【0122】
アルミニウム基板の場合:
a.クリーニングクリーニングは、i)メチルプロピルケトンなどの摩擦溶剤を表面にワイパーで擦り込み、清浄なワイパーを用いて完全に乾燥させる、及び又はii)ケメタルペース(Chemetall Pace)B-82などのアルカリ性クリーナーを使用して、非常に細かい3Mスコッチブライト(Scotchbrite)(商標)#7447などの研磨パッドでこすった後、残留物を除去するために完全にすすぐ。
b.脱酸素脱酸素は、i)非常に微細な研磨酸化アルミニウムパッドで摩耗させて、大量の水で残留研磨粉末をすすぎ落とすこと、又はii)ケメタル(Chemetall)製のアルドロックス(Ardrox)1250などの酸クリーナーを塗布して、パネルを10~20分間湿潤状態に保ってから、大量の水ですすぐことによって行われ得る。
c.化成コートの塗布化成皮膜は腐食防止剤を含有し得る。ここで使用した化成コートは、3M製AC-131-CBであった。化成コートは、製造者の指示に従って塗布すべきである。
【0123】
プライマーの塗布
複合材又はアルミニウムの場合、耐腐食性を補助する添加剤を任意に含む一般的な航空宇宙用エポキシ系プライマーの、65°F~85°F、30~60%RHにおける、製造者の指示に従う、0.4ミル(10ミクロン)~1.5ミル(38ミクロン)乾燥膜厚さ(dft)での塗布と、周囲条件での1~24時間の硬化。試験に使用したパネル/箔はすべてアルミニウムであった。
【0124】
第1の有機塗料コーティングの調製(第1のトップコート)
ポリウレタントップコートを塗布する(例えば、CA8000/B70846Xベースを含有するPPGデソタン(Desothane)HSトップコート(このトップコートの白色はBAC 70846とも呼ばれる)、使用したシンナーはPPGエアロスペースPRCデソト(PPG Aerospace PRC-DeSoto)デソタン(Desothane)HS CA8000C及びCA8000C2シンナー成分を含む。活性剤成分はCA8000Bである。)
a.2.0~4.0ミル(50~100ミクロン)。塗布は、通例65°F~95°F、一般に約75°F、70%RHまでの相対湿度である。塗布は一般に、92~94ノズルのビンクス(Binks)M1-H HVLPガン又は1.4チップのデビルビス・コンパクト・グラビティ(DeVilbiss Compact Gravity)などのHVLPスプレーガンを使用する。
b.第1のトップコートの蒸発溶媒は、通例1時間にわたって、トップコート塗布と同じ条件にて、トップコートパネル/箔から蒸発分離させる。
c.第1のトップコートの硬化トップコートパネル/箔は、実施例に示す条件下で硬化させる。これらの条件は通例、120°F、3~18%RHの相対湿度であり、通例、周囲条件(例えば75°F及び30~60%RH)にて1日~14日間の後硬化が後続する。
【0125】
第1のトップコートのテーピング
i.SIJAパネル:第1のトップコートはプロモータを用いてでオーバーコートし、テーピング後に第2のトップコートを3Mビニールテープ(#471)によってクーポン中央をテーピングし、その除去時に塗料縁部を形成した。この縁部は、SIJA(シングル・インパクト・ジェット装置)分析の衝撃ターゲットであった。
ii.雨食箔:第1のトップコート層の硬化後、オーバーコーティング前に箔の前面(丸面)をマスキングした(インターテープ・ポリマー・グループ(Intertape Polymer Group)、PG-777テープ)。オーバーコートの塗布及び硬化後、テープを除去した。
【0126】
再活性化処理剤の調製
a.再活性化処理剤の混合4つの方法:ナノ粒子を粉末形態で入手した場合は、方法i及びiiを使用した。ナノ粒子が事前分散形態である場合、方法iii及びivを使用した。カーボンブラック有機粉末ナノ粒子では、方法i及びiiを使用した。酸化ジルコニウム無機ナノ粒子では、方法iを使用した。事前分散させた無機粒子では、方法iii及びivを使用した。AT-1は、アルコール:ジプロピレングリコールジメチルエーテル溶媒混合物中、ジルコネート又はチタネートなどの1~8%の表面交換剤又はエステル交換剤を使用して調製した。AT-1の通例の調製は、塗布前に共に混合される2つの溶液(A部とB部)の調製を含む。通例、B部はエーテル/アルコール混合溶媒を含むが、A部はアルコールに溶解させた表面剤又はエステル交換剤を含む。使用した溶媒は無水であるが、水が少量、例えば本ジルコネート又はチタネートの場合は最大800ppmの微量で存在する限り、処理中の活性を失うことなく、溶媒中の水を存在を許容することができる。A部及びB部は塗布前に(振とう/攪拌しながら)合わされ、2つの部分を合わせる前に前にナノ粒子をA部又はB部のどちらかに添加するか、又は下記のようにA部とB部を事前混合する。
i.粉末形態:カーボンブラック又は酸化亜鉛粉末ナノ粒子の「束」が分散されるようにするために、ナノ粒子をAT-1中に分散させ、1~5分間にわたって超音波処理する。超音波処理は、密封ガラスバイアル容器を室温の超音波水槽に入れてから、槽の電源を入れることによって行った。
ii.粉末形態:AT-1のB部にナノ粒子を、超音波を用いて1~5分間にわたって分散させる。次に、AT-1のA部を超音波なしで、少なくとも1分間にわたって単に振とう又は混合して、B部に添加する。
iii.事前分散形態:事前分散させたナノ粒子をAT-1に添加し、手動又はミキサで少なくとも1分間振とうする。
iv.事前分散形態:事前に分散させたナノ粒子をAT-1のB部に添加し、手動又はミキサで少なくとも1分間振とうする。次に、AT-1のA部をB部に追加し、手動又はミキサで少なくとも1分間振とうする。
b.再活性化処理剤の塗布再活性化処理剤の塗布前に、第1のトップコートのクリーニング若しくは洗浄又は他の事前処理若しくは再活性化処理は不要である。68°F~77°Fにて、実施例に示す水蒸気圧及び相対湿度(通例、70°Fにおける約20%以下の相対湿度に対応する5mb未満の水蒸気圧)にて再活性化処理剤を塗布した。塗布は一般に、92若しくは94ノズルのビンクス(Binks)M1-H HVLPガン又は1.4チップのデビルビス・コンパクト・グラビティ(DeVilbiss Compact Gravity)などのHVLPスプレーガンを使用する。
c.再活性化処理剤の乾燥再活性化処理剤は通例、実施例に示すように、再活性化処理剤塗布の温度及び相対湿度において2時間(30分から1日)乾燥させた。
【0127】
さらなるコーティングの調製(第2のトップコート)
a.オーバーコートの塗布.ポリウレタントップコート(例えばCA8000/B50103Xベースを含有するPPGデソタン(Desothane)HSトップコート(このトップコートの青色はBAC 50103とも呼ばれる)又はPPGデソタン(Desothane)HSトップコートCA8000/B707Xベースグレー)の3.5~5.0ミル(85~125ミクロン)での塗布。通例、塗布は65°Fから85°F、一般に約75°Fにて、通例、プロモータ塗布と同じ相対湿度においてである。塗布は一般に、92若しくは94ノズルのビンクス(Binks)M1-H HVLPガン又は1.4チップのデビルビス・コンパクト・グラビティ(DeVilbiss Compact Gravity)などのHVLPスプレーガンを使用する。
b.第2のトップコートの蒸発.溶媒は、通例1時間にわたって、第2のトップコート塗布と同じ条件にて、トップコートパネル/箔から蒸発分離させる。
c.第2のトップコートの硬化.トップコートパネル/箔は、実施例に示す条件下で硬化させる。これらの条件は通例、120°F、相対湿度3~18%RHにて3~24時間である。後硬化は、試験の7~14日前に、通例、周囲条件(例えば75°F、30~60%RH)においてである。
【0128】
試験前にSIJAパネル/雨食箔からテープを除去する。
【0129】
付着力試験方法
以下の表は、試験に使用する装置及び条件を詳細に示す。
【0130】
【0131】
実施例1~13
以下の表1は、実施例1~4の試験結果を示す。すべてのクーポンを、シングル・インパクト・ジェット装置(SIJA)で試験した。
【0132】
【0133】
以下の表2は、実施例5~13の試験結果を示す。すべての再活性化処理剤を76.5°F、9.4%RH(2.9mb)にて塗布する。すべての箔を回転アーム雨食で試験する。
【0134】
【0135】
実施例14
色に対するナノ粒子の効果
【0136】
【0137】
塗装系:アクゾノーベル(AkzoNobel)のAerodur 3001/3002(ポリウレタン)ベースコート-クリアコート系
【0138】
ナノ粒子を含む又は含まないAT-1をベースコートとクリアコートの間に塗布する
・AT-1による色ずれはないか、わずかである
・ナノ粒子を予想最大濃度で添加する場合、さらなる色ずれはないか、わずかである
・濃度は、分散重量ではなく、ナノ粒子重量による。ナノ粒子は、製造者から20~50重量%分散物として提供される。
【0139】
本実施例は、ベースコートの色を著しくずらすことなく、着色ベースコートと上に加えた後続のクリアコートと共に処理剤を使用できることを示す。もちろん、トップコートも着色されている場合、このことは問題にならない。クリアトップコートが必要なコーティングでは、カーボンブラック以外のナノ粒子を使用する必要がある。
本開示は、以下の項に従う例を含む。
第1項.基板上に存在する有機塗料コーティングの表面を再活性化する方法であって、方法が、有機塗料コーティングに表面処理剤を塗布するステップであって、表面処理剤が溶媒、ナノ粒子、添加剤並びにチタネート、ジルコネート及びそのキレートの少なくとも1つから選択される表面交換剤からなる、ステップを含む、方法。
第2項.基板上に配置された有機塗料コーティングへのコーティングの付着力を促進する方法であって、方法が、再活性化有機塗料コーティングを形成するために有機塗料コーティングに表面処理剤を塗布するステップであって、表面処理剤がナノ粒子、添加剤並びにチタネート、ジルコネート及びそのキレートの少なくとも1つから選択される表面交換剤を含む、ステップと、再活性化有機塗料コーティング上に第2のコーティングを堆積させるステップとを含む、方法。
第3項.溶媒、薬剤、ナノ粒子及び添加剤が混合物として有機塗料コーティングに塗布される、第1項又は第2項に記載の方法。
第4項.方法が、5mb未満の水蒸気分圧の湿度で、約10℃~35℃の温度にて実施される、第1項から第3項のいずれか一項に記載の方法。
第5項.溶媒がケトン、アルコール、エーテル又はその組合せから選択される有機溶媒である、第1項から第4項のいずれか一項に記載の方法。
第6項.有機溶媒が、グリコール、グリコールエーテル、アルコール、グリコールモノエーテルアルコール又はその組合せである、第5項に記載の方法。
第7項.有機溶媒が、グリコールジエーテル:C
1-6
アルコール又はC
1-4
アルコールであるエーテル:アルコールの組合せである、第6項に記載の方法。
第8項.グリコールジエーテルがジプロピレングリコールジメチルエーテルであり、並びにC
1-4
アルコールがイソプロパノール及び/又はn-プロパノールである、第7項に記載の方法。
第9項.溶媒が、再活性化処理剤の総重量に対して約90%~約99%の量で存在する、第1項から第8項のいずれか一項に記載の方法。
第10項.表面交換剤が、C
1-10
アルキルチタネート、C
1-10
アルキルジルコネート又はそのキレートである、第1項から第9項のいずれか一項に記載の方法。
第11項.C
1-10
アルキルチタネート若しくはそのキレートが、テトラ-n-プロピルチタネートであり、又はC
1-10
アルキルジルコネート若しくはそのキレートがテトラ-n-プロピルジルコネートである、第10項に記載の方法。
第12項.表面交換剤が、再活性化処理剤の総重量に対して約1%~約8%の量で存在する、第1項~第11項のいずれか一項に記載の方法。
第13項.ナノ粒子が、約1nm~約160nmの粒径を有する、第1項から第12項のいずれか一項に記載の方法。
第14項.ナノ粒子が、炭素系ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子である、第1項から13のいずれか一項に記載の方法。
第15項.ナノ粒子が、カーボンブラック、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の少なくとも1つから選択される、第1項から第14項のいずれか一項に記載の方法。
第16項.ナノ粒子が、再活性化処理剤の総重量に対して約0.5%未満の量で存在する、第1項から第15項のいずれか一項に記載の方法。
第17項.添加剤が、レオロジー調節剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤及び耐食剤の少なくとも1つから選択される、第1項から第16項のいずれか一項に記載の方法。
第18項.添加剤が、着色剤及び耐食剤の少なくとも1つから選択される、第1項から第16項のいずれか一項に記載の方法。
第19項.添加剤が、再活性化処理剤の総重量に対して約10%未満の量で存在する、第1項から第18項のいずれか一項に記載の方法。
第20項.配合物が溶液又はエマルジョンである、第1項から第19項のいずれか一項に記載の方法。
第21項.基板が実質的に非弾性のパネルである、第1項から第20項のいずれか一項に記載の方法。
第22項.基板が金属、金属合金又は複合材料である、第1項から第21項のいずれか一項に記載の方法。
第23項.有機塗料コーティングの表面を乾燥させるステップをさらに含む、第1項から第22項のいずれか一項に記載の方法。
第24項.第2のコーティングが有機塗料コーティングの表面に塗布された後に測定される際に、有機塗料コーティングの色ずれ(ΔE)が1未満である、第1項から第23項のいずれか一項に記載の方法。
第25項.さらなるコーティングへの有機塗料コーティングの付着力を促進するために基板上に存在する有機塗料コーティングの表面を再活性化する表面処理配合物であって、配合物が、(a)チタネート、ジルコネート又はそのキレートから選択される表面交換剤、(b)溶媒、(c)ナノ粒子及び(d)配合物の総重量に対して約10重量%未満の量で存在する添加剤からなる、表面処理配合物。
第26項.(a)表面交換剤が配合物の総重量%に対して約8重量%未満の量で存在し、(b)溶媒が配合物の総重量%に対して少なくとも約85重量%の量で存在し、(c)ナノ粒子が配合物の総重量%に対して約2重量%未満の量で存在し、及び(d)添加剤が配合物の総重量%に対して約10重量%未満の量で存在する、第25項に記載の表面処理配合物。
第27項.表面交換剤が、配合物の総重量に対して約1%~約7%の量で存在する、第25項又は第26項の表面処理配合物。
第28項.配合溶媒が、配合物の総重量に対して約95%~約98%の量で存在する、第25項~第27項のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
第29項.ナノ粒子が、配合物の総重量に対して約1%未満の量で存在する、第25項から第28項のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
第30項.添加剤が、配合物の総重量に対して約5%未満の量で存在する、25項から第29項のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
第31項.表面交換剤又はエステル交換剤が、C
1-10
アルキルチタネート若しくはそのキレート又はC
1-10
アルキルジルコネート若しくはそのキレートである、第25項から第30項のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
第32項.C
1-10
アルキルチタネート若しくはそのキレートが、テトラ-n-プロピルチタネートであり、又はC
1-10
アルキルジルコネート若しくはそのキレートがテトラ-n-プロピルジルコネートである、第31項に記載のの表面処理配合物。
第33項.溶媒がケトン、アルコール、エーテル又はその組合せから選択される有機溶媒である、第25項から第32項のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
第34項.有機溶媒が、グリコール、グリコールエーテル、アルコール、グリコールモノエーテルアルコール又はその組合せである、第33項に記載の表面処理配合物。
第35項.有機溶媒が、エーテル:アルコールの組合せである、第33項に記載の表面処理配合物。
第36項.エーテル:アルコールの組合せが、グリコールジエーテル:C
1-6
アルコール又はC
1-4
アルコールである、第35項に記載の表面処理配合物。
第37項.グリコールジエーテルがジプロピレングリコールジメチルエーテルであり、並びにC
1-4
アルコールがイソプロパノール及び/又はn-プロパノールである、第36項に記載の表面処理配合物。
第38項.ナノ粒子が、約1nm~約160nmの粒径を有する、第25項から第37項のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
第39項.ナノ粒子が、炭素系ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子である、第25項から第38項のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
第40項.ナノ粒子が、カーボンブラック、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の少なくとも1つから選択される、第39項に記載の表面処理配合物。
第41項.添加剤が、レオロジー調節剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤及び耐食剤の少なくとも1つから選択される、第25項から第40項のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
第42項.添加剤が、着色剤及び耐食剤の少なくとも1つから選択される、第41項に記載の表面処理配合物。
第43項.配合物が溶液又はエマルジョンである、第25項から第42項のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
第44項.偶発的不純物以外に、配合物が、ジプロピレングリコールジメチルエーテル並びにイソプロパノール及びn-プロパノールの少なくとも1つを含む溶媒、テトラ-n-プロピルチタネート及びテトラ-n-プロピルジルコネートの少なくとも1つの表面交換剤、カーボンブラック、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の少なくとも1つのナノ粒子、並びにレオロジー調節剤、湿潤剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤及び耐食剤の少なくとも1つの添加剤からなる、第43項に記載の表面処理配合物。
第45項.配合物が有機塗料コーティング上に配置され、さらなるコーティングが有機塗料コーティングの表面に配置された際に、配合物が1未満の色ずれ(ΔE)を有する、第25項から第44項のいずれか一項に記載の表面処理配合物。
第46項.さらなるコーティングがクリアコートである、第45項に記載の表面処理配合物。
【0140】
先行技術の刊行物を本明細書で参照する場合、そのような参照は、その刊行物が当分野の技術常識の一部を形成することを認めるものではないことを理解されたい。
【0141】
以下の請求項及び態様の先行説明において、用語又は必要な言外の意味によって文脈が要求する場合を除いて、「含む」(“comprise”又は“comprises”)のような変形は、包括的な意味で用いられる。即ち、本開示の各種の態様におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除することなく、述べられた特徴を特定するために用いられる。
【0142】
具体的な態様に示した本開示には、広義に記載されている本開示の概念又は範囲から逸脱することなく、様々な変更及び/又は修正を行うことができることが、当業者に認識される。したがって、本態様は、あらゆる点で例示的なものであり、限定的ではないとみなされるべきである。
【符号の説明】
【0143】
1 基板
2 有機塗料コーティング
3 付着結合
4 コーティング
5 付着結合
6 (未コーティング)基板