(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】流体の酸素含有量の温度補償型光学的検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/77 20060101AFI20220705BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
G01N21/77 A
A61B5/08
(21)【出願番号】P 2019550648
(86)(22)【出願日】2018-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2018055497
(87)【国際公開番号】W WO2018166847
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】102017204082.3
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501401397
【氏名又は名称】ハミルトン・ボナドゥーツ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ジャルディーナ
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・オッフェンベック
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・シュランツ
(72)【発明者】
【氏名】トマ・ロブシェ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ノヴォトニ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・シェーンフース
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-511874(JP,A)
【文献】特開2005-195354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0164813(US,A1)
【文献】特開2012-254222(JP,A)
【文献】国際公開第2009/154612(WO,A1)
【文献】特開2011-096552(JP,A)
【文献】特開2006-010517(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0023782(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0104546(US,A1)
【文献】実開昭54-014263(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0105910(US,A1)
【文献】特開平09-099085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0121232(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/83
G01N 33/48-33/98
G01J 5/00-5/90
A61B 5/08-5/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(78a、78b)を有するハウジング(52)であって、前記開口部(78a、78b)を通って、流体が前記ハウジング(52)に誘導可能であるハウジング(52)と、前記ハウジング(52)内に設けられた、前記流体の酸素含有量の温度補償型光学的検出を行うための、平型の層状部材アセンブリ(60)
と、を含む反応アセンブリ(72)であって、
前記平型の層状部材アセンブリ(60)は、
-発光団を含有する反応層体(62)であって、前記反応層体(62)の発光団が、第1の波長の第1の電磁放射線(E1)の照射によって、前記第1の波長とは異なる第2の波長の第2の電磁放射線(E2)の放射のために励起可能であり、前記発光団の励起された放射挙動は、前記発光団に接触している前記流体内の酸素分圧に依存している反応層体(62)と、
-赤外線(I)を放射する温度検出層体(64)と、
を含
んでおり、前記ハウジング(52)は、反応ウィンドウ(66a)を有しており、前記反応ウィンドウ(66a)を通って、前記反応層体(62)は、第1の電磁放射線(E1)によって到達可能であり、前記反応ウィンドウ(66a)は、第2の電磁放射線(E2)によって透過可能である反応アセンブリ(72)において、
前記反応層体(62)と前記温度検出層体(64)とが、互いに別個に構成されており、前記温度検出層体(64)が、発光団を含んで
おらず、前記ハウジング(52)は、前記反応ウィンドウ(66a)から空間的に離れて配置された温度検出ウィンドウ(66b)を有しており、前記温度検出ウィンドウ(66b)は、前記温度検出層体(64)によって放射された赤外線(I)によって透過可能であることを特徴とする
反応アセンブリ(72)。
【請求項2】
前記反応ウィンドウ(66a)が、前記温度検出ウィンドウ(66b)とは異なる構造を有していることを特徴とする、請求項1に記載の反応アセンブリ(72)。
【請求項3】
前記反応ウィンドウ(66a)が、前記温度検出ウィンドウ(66b)よりも厚いことを特徴とする、請求項2に記載の反応アセンブリ(72)。
【請求項4】
前記反応ウィンドウ(66a)が、光学的に検出可能な波長域において光を透過させる材料を有していること、及び、前記温度検出ウィンドウ(66b)が、前記ハウジング(52)を貫通する開口部(68)を含んでおり、前記開口部(68)は、前記温度検出層体(64)によって覆われていることを特徴とする、請求項3に記載の反応アセンブリ(72)。
【請求項5】
前記反応層体(62)が、少なくとも部分的に、層材料及び/又は積層順序及び/又は層厚に関して、前記温度検出層体(64)とは異なる層組成を有することを特徴とする、請求項1
から4のいずれか一項に記載の
反応アセンブリ(72)。
【請求項6】
前記反応層体(62)が、完全に、層材料及び/又は積層順序及び/又は層厚に関して、前記温度検出層体(64)とは異なる層組成を有することを特徴とする、請求項1
から4のいずれか一項に記載の
反応アセンブリ(72)。
【請求項7】
前記反応層体(62)と前記温度検出層体(64)とがそれぞれ、各層体(62、64)が流体と接触するように構成されている流体接触面(62c、64c)と、前記流体接触面(62c、64c)とは反対側の、放射線検出器(86、90)と協働するように構成された検出面(62d、64d)とを有していることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の
反応アセンブリ(72)。
【請求項8】
前記温度検出層体(64)が、金属箔(64a)を有していることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の
反応アセンブリ(72)。
【請求項9】
前記金属箔(64a)が、アルミニウム箔(64a)であることを特徴とする、請求項
8に記載の
反応アセンブリ(72)。
【請求項10】
前記金属箔(64a)の外側面が、前記温度検出層体(64)
の流体接触面(64c)を形成していることを特徴とする、請求項
8又は9に記載の
反応アセンブリ(72)。
【請求項11】
前記温度検出層体(64)が、基板層(64a)を有しており、前記温度検出層体(64)は、前記温度検出層体(64)の検出面(64d)上に、間接的又は直接的に、前記基板層(64a)によって支持された、0.75より小さくはない、好ましくは0.9より小さくはない放射率を有する放射層(64b)を有していることを特徴とする、請求項
7から
10のいずれか一項に記載の
反応アセンブリ(72)。
【請求項12】
前記金属箔(64a)が、前記基板層(64a)であることを特徴とする、請求項
8を引用する請求項11に記載の
反応アセンブリ(72)。
【請求項13】
前記放射層(64b)が、色素を含む層(64b)であることを特徴とする、請求項
11又は
12に記載の
反応アセンブリ(72)。
【請求項14】
前記放射層(64b)が、カーボン含有層であることを特徴とする、請求項
13に記載の
反応アセンブリ(72)。
【請求項15】
前記ハウジング(52)が、前記開口部(78a)とは異なる、前記開口部(78a)からは離れて位置するさらなる開口部(78b)を有しており、これによって、前記ハウジング(52)が、前記開口部(78a)と前記さらなる開口部(78b)との間で、流体によって貫流可能であることを特徴とする、請求項
1から
14のいずれか一項に記載の反応アセンブリ(72)。
【請求項16】
前記層状部材アセンブリ(60)が、前記開口部(78a)と前記さらなる開口部(78b)との間に設けられていることを特徴とする、請求項
15に記載の反応アセンブリ(72)。
【請求項17】
人工呼吸器(10)の呼吸誘導アセンブリ(30)内に配置されるように構成されており、前記開口部(78a)の領域においても、前記さらなる開口部(78b)の領域においても、それぞれの接続構造(76a、76b)を用いて、前記呼吸誘導アセンブリ(30)の各部分と接続するように構成されていることを特徴とする、請求項
15又は
16に記載の反応アセンブリ(72)。
【請求項18】
請求項
1から
17のいずれか一項に記載の反応アセンブリ(72)と、さらに、検出器アセンブリ(54)とを含むセンサアセンブリ(50)であって、前記検出器アセンブリ(54)は、
-反応ウィンドウ(66a)を通る第1の電磁放射線(E1)を放射するように構成された放射源(82)と、
-前記反応ウィンドウ(66a)を通る第2の電磁放射線(E2)を検出するように構成された放射線検出器(86)と、
-温度検出ウィンドウ(66b)を通る、前記温度検出層体(64)によって放射される赤外線(I)を検出するように構成された赤外線検出器(90)と、
を含んでいるセンサアセンブリ(50)。
【請求項19】
前記検出器アセンブリ(54)が、前記反応アセンブリ(72)と、解除可能に接続可能であるか、又は、接続されていることを特徴とする、請求項
18に記載のセンサアセンブリ(50)。
【請求項20】
電子評価装置(18)と信号伝達可能に接続されているセンサアセンブリ(50)であって、前記電子評価装置(18)が、少なくとも1つのデータ記憶装置と、前記データ記憶装置とデータを交換するように接続されたデータ処理装置とを有しており、前記データ記憶装置内には、検出された前記温度検出層体(64)の赤外線(I)と発光団の温度とを相関させるためのキャリブレーション情報が保存されていることを特徴とする、請求項
18又は
19に記載のセンサアセンブリ(50)。
【請求項21】
人工呼吸を行うための、
-呼吸ガス源(15)、
-前記呼吸ガス源(15)と患者側の近位端との間に延在する呼吸誘導アセンブリ(30)、
-吸気弁(20)および呼気弁(22)を含む弁アセンブリ(20、22)、
-前記呼吸誘導アセンブリ(30)内でガスフローを量的に検出するための流量センサアセンブリ(44、48)
であって、
近位の流量センサ(44)を含んでいる流量センサアセンブリ(44、48)、
-前記呼吸誘導アセンブリ(30)内を流れるガスのガス圧を変更するための圧力変更アセンブリ(16)、
-少なくとも、近位の前記流量センサ(44)の測定信号に基づいて前記圧力変更アセンブリの動作を制御するように構成された制御装置(18)、及び、
-前記呼吸誘導アセンブリ(30)内を流れるガスの酸素含有量を検出するための、請求項
18から
20のいずれか一項に記載のセンサアセンブリ(50)、
を有する人工呼吸器(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の酸素含有量の温度補償型光学的検出を行うための、平型の層状部材アセンブリに関するものであり、平型の層状部材アセンブリは、
-発光団を含有する反応層体であって、その発光団が、第1の波長の第1の電磁放射線の照射によって、第1の波長とは異なる第2の波長の第2の電磁放射線の放射のために励起可能であり、当該発光団の励起された放射挙動は、当該発光団に接触している流体内の酸素分圧に依存している反応層体と、
-赤外線を放射する温度検出層体と、
を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
同種の層状部材アセンブリは、特許文献1から知られている。特許文献1は、発光団の酸素誘導の消光(「ルミネセンスクエンチング」)の、それ自体知られた測定原理に基づいて呼吸ガスの酸素濃度を測定するための、当該層状部材アセンブリを有するセンサアセンブリについて記載している。その際、反応層体内に存在する発光団は、第1の電磁放射線の照射によって、第1の電磁放射線とは異なる第2の電磁放射線の放射のために励起する。通常、第2の電磁放射線は、第1の電磁放射線よりも波長が長い。
【0003】
簡単に要約すると、当該測定原理は、以下の様に表現し得る。第1の電磁放射線の照射によって、発光団へのエネルギー入力が行われる。発光団に照射によって与えられる励起エネルギーを、当該発光団は、ある程度の時差をもって、第2の電磁放射線の形で再び放出する。これに対して、第1の電磁放射線の照射によって励起された発光団に酸素が接触する場合、接触している酸素へのエネルギー伝達によって、放射の無い発光団の脱励起が行われる。このような方法で、発光団に存在する酸素は、照射によって得られた励起に反応して、発光団の放射挙動に影響を与える。
【0004】
発光団に接触する酸素は、他の場合には、第2の電磁放射線の強度及び第2の電磁放射線の放射継続時間に関して同一である励起に際して、発光団の放射挙動に影響を与える。第1の電磁放射線の照射への反応として、存在する酸素によって影響を受けた発光団の放射挙動の、放射挙動の時間的特性に基づく評価は、影響を受けた強度に基づく評価に対して、より正確であると見なされている。なぜなら、第2の電磁放射線の放射の時間的特性に基づく評価は、その強度に基づく評価とは異なり、発光団の経年退色の影響を受けないか、又は、少なくとも受ける影響はより少ないからである。
【0005】
発光団の放射挙動は、その他は同じ条件である場合、さらに、発光団の温度の影響を受ける。これによって、温度が可変である環境において、通常はセンサを用いて観察される放射挙動の評価が困難になる。温度が可変である環境は、例えば、呼吸ガス内の酸素濃度を測定する際に存在し、当該呼吸ガスは、通常、患者がある程度の代謝の後で再び吐出す呼吸ガスの温度とは異なる温度で患者に供給される。呼気呼吸ガスの温度もまた、患者の健康状態に応じて変化し得る。
【0006】
この問題を解決するために、特許文献1は、発光団を含有する反応層体の温度を、赤外線検出器を用いて非接触に測定することを提案している。これによって、発光団の放射挙動の検出と同時に、発光団の温度が検出されることになるので、温度を知った上で、放射挙動を適切に評価することができる。
【0007】
従って、特許文献1によると、発光団を含有する反応層体と、温度検出層体とは、1つかつ同一の物体である。
【0008】
呼吸ガスの酸素含有量を測定するためのセンサアセンブリのための平型の層状部材アセンブリは、さらに、特許文献2から知られている。特許文献2もまた、検出された放射挙動の評価の際に、発光団の放射挙動の温度依存性によってシステムに内在する不確実性を、加熱装置を用いて、反応層体を一定の既知の温度にもたらし、当該温度を維持することによって除去することを教示している。これによって、検出の間の発光団の温度は変化せず、得られた放射信号を評価することが可能である。
【0009】
最後に挙げた解決法の欠点は、装置に要する費用が高いことである。なぜなら、層状部材アセンブリ上に、エネルギーを供給されるべき加熱装置が設けられるからである。さらに、付加的な加熱装置は、測定結果を歪曲する可能性、又は、温度依存性を望ましい規模では取り除かない可能性がある。なぜなら、測定原理に基づいて、励起した発光団が酸素に接触することが必要だからである。従って、反応層体と、その酸素含有量に関して検出されるべき測定対象流体との間における、ある程度の対流熱伝達が不可避であり、これによって、加熱装置を設けているにも関わらず、発光団の放射の検出の間の発光団の温度は、必然的に、正確に知られてはいない。
【0010】
反応層体の温度の検出のため、及び、検出された放射挙動のデータ技術による温度補償のために、同種の特許文献1によって提案されている解決法もまた同様に、欠点からは免れていない。
【0011】
一方では、同種の解決法では、2つの放射源と2つの放射線検出器とが同じ測定空間に存在している。第1の放射源は、第1の電磁放射線の放射によって、反応層体内の発光団を励起すべきである。この励起は、一般的には、電磁放射線の赤外波長域では行われないが、この第1の放射源が、所望の第1の電磁放射線の他に、赤外線に到達し、従って干渉信号源を形成し得る別の波長でも放射することは排除されていない。
【0012】
第2の放射源は、反応層体の発光団であり、当該発光団は、その励起への反応として、第2の電磁放射線を放射すると共に、その温度に対応する赤外線も放射する。
【0013】
一方では、第2の電磁放射線及び温度赤外線という両方の放射線の波長が近いので、区別することが難しく、これによって、やはり各信号の相互の干渉源が形成される。
【0014】
他方では、既知の反応層体が、その面の1つにおいて、その酸素含有量を検出すべき測定対象流体によって湿らされ、当該面とは反対の面において、当該反応層体から放射される放射線に関して検出が行われる。従って、既知の反応層体は、第1の放射源及び放射線検出器に向かってシールドされるべきであり、これによって、酸素を含有する流体が、検出面からも、反応層体の発光団に到達し、放射挙動の検出を歪曲することが防止される。
【0015】
反応層体の放射挙動を可能な限り歪曲せずに検出することを可能にするためには、第1の放射源及び検出器アセンブリに対する、少なくとも酸素を漏らさない反応層体のシールドは、第2の電磁放射線も温度赤外線も、可能な限り妨害されずに透過させなければならない。このことは、シールドに利用可能である材料を著しく制限し得る。第2の電磁放射線及び温度赤外線における様々な波長域に関しては、場合によっては、両方の電磁放射線を十分に歪曲せずに伝達するような材料は、何ら見つけられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許出願公開第2013/0023782号明細書
【文献】米国特許第7833480号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の課題は、同種の平型の層状部材アセンブリをさらに発展させ、既知の同種の層状部材アセンブリに関連して上述した欠点が、軽減されるか、又は、完全に除去されるようにすることにある。すなわち、検出された反応層体の放射挙動の温度補償を通じた、流体の酸素含有量の非常に正確な光学的検出を、同時に可能な限り単純な構造において可能にするような層状部材アセンブリが供給されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によると、本課題は、反応層体と温度検出層体とが別々に構成されていることによって解決される。
【0019】
反応層体と温度検出層体とを別々に構成することによって、両方の層体は、空間的に離れて、流体を誘導する導管に、又は、流体を受容する容器に設けられ得る。その結果、両方の層体から放射される放射線の測定技術的検出のために必要な装置は、空間的に、互いに離間して設けられ得る。つまり、第1の電磁放射線の放射源は、空間的に分離され、それと共に、赤外線検出器によってシールドされて配置され得る。なぜなら、放射源は、反応層体のみを照射すればよく、赤外線検出器は、温度検出層体のみを検出すればよいからである。従って、温度検出層体の非接触温度検出に関する干渉源となる、第1の電磁放射線の放射源は不要である。
【0020】
さらに、反応層体と温度検出層体とは、それぞれその要求に最適に適応した測定環境に配置可能であり、これによって、反応層体からの第2の電磁放射線の検出が、温度検出層体からの赤外線の検出と同じく、最適に行われ得る。
【0021】
本出願において、層体と記す場合、この物体が、平型の物体として、2つの互いに直交する空間方向において、これら2つの空間方向に対してそれぞれ直交する厚さ方向におけるよりもはるかに大きな寸法を有することが意味されている。従って、厚さ方向は常に、層体の最も小さい寸法である。
【0022】
基本的に、反応層体及び/又は温度検出層体が、1つの層のみを有すれば十分であり得る。しかしながら、各層体は、その機能又はその使用目的のために必要又は有益であれば、複数の層を有していてもよい。
【0023】
反応層体と温度検出層体とを別々に構成する場合の問題は、温度検出層体において検出された温度の、反応層体の実際の温度に関する有効性の評価にある。この点に関する可能な限り容易な解決は、反応層体の同一のコピーを温度検出層体として使用し、両方の層体の内の一方において、第2の電磁放射線のみを検出し、それぞれ他方の層体において、赤外線のみを検出することにある。
【0024】
これは、本発明の可能な実施形態ではあるが、一方では、さらなる反応層体の温度検出層体としての使用は、多くの費用を要するので、経済面では問題を有している。他方、両方の反応層体が実際に同一に構成されているという保証と、両方の反応層体によって放射される放射線の検出の間、可能な限り同一の動作条件において配置されるという保証とが無い状態で、温度検出層体において検出された赤外線から、反応層体の実際の温度を十分正確に推測することを可能にするためには、キャリブレーションが必要である。最終的に、発光団で励起可能である第2の電磁放射線は、温度検出層体の赤外線に干渉し得る。
【0025】
従って、本発明に係る平型の層状部材アセンブリの、可能な限り容易かつ安価な構造という理由からは、温度検出層体に発光団が含まれていないことが好ましい。
【0026】
それによって、温度検出層体において、発光団によって温度に応じて放射される赤外線の検出に干渉し得る電磁放射線の放射のために、発光団が意図せずに励起されることがないことが確実化される。赤外線検出と共に検出された温度検出層体の温度の、これを基に想定又は決定される反応層体の温度への可能な限り確実な転用は、いずれにしても、データ処理装置を用いて、前もって実施されたキャリブレーションに基づいて行われ得るか、又は、行われる必要があるので、当該温度検出層体の構造は、反応層体の構造に比べて著しく単純化され得る。従って、極めて一般的に、反応層体が少なくとも部分的に、層材料及び/又は積層順序及び/又は層厚に関して、温度検出層体とは異なる層組成を有すると規定することができる。
【0027】
例えば、反応層体及び温度検出層体の両方の層体が、統一された基板層を有しており、当該基板層上には、様々な機能の層が貼付されており、例えば、少なくとも1つの発光団含有層の場合もあれば、別の場合には、赤外線の検出を通じて温度を検出するための層が貼付されていること、又は、基板層自体が、温度検出層体において、さらなる付加的な機能層を有さずに直接、赤外線の検出と、それに伴って温度検出とに用いられることを規定することができる。従って、共通の層が存在するので、反応層体と温度検出層体とを、一体的な、関連した層体として構成することが可能である。従って、層状部材アセンブリは、一体型の層状部材アセンブリであり得る。
【0028】
しかしながら、両方の層体が可能な範囲で最も良好に機能を果たすという理由からも、これらの層体が完全に異なる構造を有し、上述の層に関するパラメータの内の少なくとも1つに関して、完全に異なる層組成を有していることが考えられる。
【0029】
検出されるべき流体(測定対象流体)における酸素含有量の、可能な限り有効性が高く、正確な検出結果のためには、層状部材アセンブリから放射される放射線の検出が、検出されるべき流体に干渉せず、逆もまた同様であると有利である。本発明の有利なさらなる発展形態によると、この目的のために、反応層体と温度検出層体とがそれぞれ、各層体が、測定対象流体と接触するように構成されている流体接触面と、当該流体接触面とは反対側の、放射線検出器と協働するように構成された検出面とを有していることが規定されている。
【0030】
ここで議論されている層状部材アセンブリの非接触の光学的検出は、このために用いられる測定技術による、検出されるべきプロセスへの干渉の危険が、接触しないことによって軽減するゆえに好ましいだけではない。従って、センサ素子等を用いた、反応層体の温度の接触式温度検出は、困難であるか、不可能であることもある。なぜなら、十分に安定し、堅固である大部分のセンサ素子の、温度及び温度変化の検出速度は低すぎるので、温度が変化する場合、反応層体が、検出された放射の時点で有している実際の温度ではない温度を表示する可能性があるからである。
【0031】
それに対して、温度変化を十分迅速に検出することができる温度センサ素子は、あまりにもエラーを生じやすく、あまり堅固ではないことが明らかになっているので、当該温度センサ素子は、例えば人工呼吸の間の呼吸ガスの酸素濃度の検出のような、安全重視の使用領域では、使用され得ない。
【0032】
従って、温度検出層体が、上述の検出面と流体接触面とを有する場合に、流体接触面における温度変化を、可能な限り速く検出面に伝達することが重要であるので、当該温度検出層体が、可能な限り高い熱伝導性を有する材料から成る層を有しており、さらに、当該層が薄肉の構造を有し得ると有利である。このために、具体的には、温度検出層体が金属箔を有することが規定され得る。
【0033】
金属箔は基本的に、例えば銅箔等の任意の金属箔であってよいが、銅箔は、酸素含有環境において酸化しやすく、酸化が進行すると共に、その特性を変化させる。従って、好ましくは、金属箔として、自身が不動態化し、それゆえ、長い時間にわたって同じ材料特性を供給し得るアルミニウム箔が提案される。さらに、アルミニウム箔を、他の金属箔のように、箔厚が15μmより小さい場合でも、十分な強度を有するように形成することができる。好ましくは、金属箔、特に上述のアルミニウム箔は、温度検出層体の一部として、又は、当該層体として、6μmから12μmの範囲、好ましくは8μmから11μmの範囲の厚さを有している。金属、特にアルミニウムによって供給される高い熱伝導性を通じて、熱が、高速に材料を通過するように誘導される。材料の厚さが15μm未満と小さいことによって、さらに、熱伝導路が短くなり、これによって、流体接触面で変化する温度は、数ミリ秒の範囲で、検出面において検出可能である。
【0034】
これに対して、反応層体は、それ自体知られた反応層体として構成可能であり、例えばポリフッ化ビニリデンから成る多孔質の、酸素分子を透過させる基板層を有し得る。しかしながら、この場合、ここで議論されている層状部材アセンブリにおいては、任意の既知の反応層体を用いることが可能である。
【0035】
流体側で変化する温度が、可能な限り速く、温度検出層体の検出面で検出可能になることを、さらに確実にするために、本発明のさらなる発展形態によると、金属箔の外側面が、温度検出層体の流体接触面を形成することが規定されている。
【0036】
好ましくは、反応層体及び温度検出層体の内、少なくとも1つの層体が平らである。特に好ましくは、両方の層体が平らであり、これによって、その酸素含有量を検出すべき流体のフローが生じる場合に、当該フローを可能な限り妨げることがない。反応層体及び温度検出層体の内少なくとも1つの層体が、流れる流体の酸素含有量の検出に用いられる場合、少なくとも1つの層体、好ましくは両方の層体が、測定対象流体のフローへの干渉を可能な限り少なくするために、少なくとも1つの層体の取り付け位置において流体の流れる方向に対して平行な曲りの軸の周りに曲げられていてよい。好ましくは、少なくとも1つの層体は、当該曲りの軸の周りにおいてのみ曲げられている。
【0037】
当該層体は、例えば少量の接着剤を用いて、ハウジングに接着していてよく、当該接着剤は、層状部材アセンブリの検出面に塗布され、各層体の検出面の、それぞれ放射線の検出のために設けられた領域を残しておく。これによって、少なくとも1つの層体の放射線の放射と、その検出とは、接着剤によっては干渉されない。
【0038】
代替的又は付加的に、1つ又は両方の層体は、粘着テープによってハウジングに接続可能であり、当該粘着テープは、各流体接触面の領域を残しつつ、部分的に流体接触面と、かつ、部分的にハウジングと接着によって接続されている。従って、少なくとも1つの層体の流体との接触は、粘着テープによっては干渉されない。
【0039】
極めて原則的に、温度検出層体は、機能層を支持する基板層を有し得る。この点については、すでに指摘している。当該基板層は、例えば、厚さが小さい場合にも十分安定して供給され得るような、上述の金属箔であり得る。検出面上では、温度検出層体が、間接的な、すなわちさらなる層を介在させた、又は、直接基板層によって支持された、0.75より小さくはない放射率を有する放射層を有し得る。当該放射層は、0.9より小さくはない放射率を有していると、さらに適切である。放射率が高ければ高いほど、温度検出層体の検出面への干渉となる反射も、より良好に回避され得る。それだけ一層、温度検出層体が、実際に、その検出面の近くで検出される赤外線の源であり、当該赤外線が、単に、検出面の表面において、対応する検出器に向かって反射したものではないということが確実になる。
【0040】
極めて原則的には、放射層の材料と基板層の材料とが同じであり、検出面上の放射層が、基板層の表面の機械的及び/又は化学的粗化によって、検出面上に形成されていることを排除すべきではない。これは特に、材料固有の高い放射率が0.75より大きい基板層の場合に、考慮される。
【0041】
基板層として好ましい金属箔は、しばしば望ましくないことに、強く反射する表面を有することがあるので、基板層上の別個の放射層が有利であり得る。赤外波長域において、可能な限り有利な放射挙動を維持するためには、当該放射層が色素を含んでいると有利である。その際、色素の色は、従属的な役割を果たすのみである。なぜなら、赤外波長域では、多くの色素は「黒く」、従って、十分に高い放射率を提供できるからである。それにも関わらず、無煙炭色から黒色までの色素の使用が好ましい。
【0042】
実験において、カーボン含有層が、放射層として有効であると実証されている。例えば、当該放射層は、カーボン含有ラッカーとして塗布されてよい。適切であると実証されているのは、例えばケンペン(ドイツ)のPeters有限合資会社による「SD2843HAL」という名称のカーボン含有導電性ラッカーである。
【0043】
同様に、エポキシドが放射層を形成することも可能である。エポキシドもまた、例えば印刷技術を用いて、又は、噴霧によって、薄い層厚で基板に塗布することが可能である。エポキシドは、硬化の後で、有利には堅い、頑強な表面を形成する。放射層を形成するための考えられる有利なエポキシドは、ヴァルトブロン(ドイツ)のPolytec PT有限会社による、USPクラスVIのEP601又はEP653という商品として入手可能である。好ましくは、これらのエポキシドは、色素を充填して用いた方がよく、上述の理由から、やはり黒色の色素が充填されていることが好ましい。
【0044】
本出願で議論されている層状部材アセンブリは、流体の酸素分圧の直接の検出と、そこから導出される流体の酸素含有量の検出とに適しており、かつ、これらの検出を行うためのものであるので、本発明は、上述の、さらに発展した、ハウジング及びハウジング内に設けられた層状部材アセンブリを含む反応アセンブリにも関するものであり、ハウジングは開口部を有しており、当該開口部を通って、流体がハウジング内に導入可能であり、ハウジングは反応ウィンドウを有しており、当該反応ウィンドウを通って、反応層体は、第1の電磁放射線によって到達可能であり、当該反応ウィンドウは、第2の電磁放射線によって透過可能であり、ハウジングは、反応ウィンドウから空間的に離れて配置された温度検出ウィンドウを有しており、温度検出ウィンドウは、温度検出層体によって放射された赤外線によって透過可能である。
【0045】
ハウジング内には、その酸素分圧を検出すべき測定対象流体が、検出のために導入可能である。互いに別々に、空間的に互いに離間して構成されたウィンドウである反応ウィンドウ及び温度検出ウィンドウを用いて、反応層体及び温度検出層体の各層体から放射される電磁放射線は、空間的に互いに離間した位置において検出可能であり、これによって、関与する電磁放射線は、相互に干渉することができない。
【0046】
ある時は反応層体から、別の時には温度検出層体から放射される電磁放射線の検出のために、可能な限り最適にハウジングを装備すべく、反応ウィンドウは、温度検出ウィンドウとは異なる構造を有するように構成され得る。
【0047】
異なる構造を有するように構成することは、一方では、異なる材料を選択するということに現れ得る。代替的又は付加的に、反応ウィンドウが、温度検出ウィンドウよりも厚いことを規定し得る。その際、温度検出ウィンドウの厚さがゼロであることは、明らかに含まれるべきである。従って、反応ウィンドウを十分な厚さを有するように構成することは、有利でもある。なぜなら、反応ウィンドウは、第1の電磁放射線及び第2の電磁放射線の透過を可能にしなければならないだけではなく、反応層体を、検出面から、測定対象流体に由来するのではない酸素との接触に対してシールドすべきだからである。
【0048】
温度検出ウィンドウをより薄く構成することによって、赤外線を透過させる最適な材料が利用できない場合に、最適ではない材料を少なくとも薄く造形し、当該材料が可能な限り少ない干渉的な影響を有するようにすることが可能である。
【0049】
しかしながら、すでに示唆した、温度検出ウィンドウの厚さがゼロであるという解決法を用いる場合は、赤外線透過材料の選択を行わずともよい。それに対応して、本発明の特に好ましいさらなる発展形態によると、反応ウィンドウは、光学的に検出可能な波長域において光を透過させる材料を有しており、温度検出ウィンドウは、ハウジングを、その厚さ方向において貫通する開口部を含んでおり、当該開口部は、温度検出層体によって覆われている。
【0050】
特に、温度検出層体が、好ましいものとして上述された金属箔を有する場合、温度検出ウィンドウとしてのハウジング壁を貫通する開口部は、温度検出層体で、確実かつ持続的に覆われていてよい。温度検出層体の検出面は、好ましくは、開口部内の、場合によって設けられている赤外線検出装置のために露出している。
【0051】
温度検出ウィンドウとしてハウジングを貫通する開口部は、好ましくは、温度検出層体から離れる方向を指すハウジング面から、温度検出層体に最も近いハウジング面へと近づくにつれて増大する開口部横断面面積を有している。好ましくは、当該開口部は、逆円錐形に(negativ konisch)、温度検出層体に対して開かれたように構成されており、これによって、当該開口部は、少なくとも近似的に、温度検出層体から放射される赤外線を検出するための赤外線検出器の検出円錐に対応し得る。
【0052】
外部の干渉的影響を回避するために、ハウジングの外側面とハウジングの内側面との間で開口部の境界を形成しているハウジング面は、コーティングされ、特に反射コーティングされ得る。これによって、透過性材料から形成されたハウジングが光学的導体として作用し、赤外線として温度検出層体から放射されたのではない電磁放射線を、温度検出ウィンドウに誘導することが排除され得る。
【0053】
基本的に、当該ハウジングはカップ形であり、つまり、1つの開口部のみを有するように構成されており、当該開口部を通って、測定対象流体が導入され、再び排出され得る。このようなハウジングは、例えば、液体に溶解した酸素の酸素分圧を決定するために用いられ得る。しかしながら、人工呼吸器で用いるためには、測定対象流体によって貫流され得るハウジングが有利である。従って、ハウジングが、当該開口部とは異なる、当該開口部からは離れて位置するさらなる開口部を有しており、これによって、当該ハウジングが、当該開口部と当該さらなる開口部との間で、流体によって貫流可能であることが好ましい。
【0054】
従って、反応アセンブリを、有利には人工呼吸器内の、主要呼吸ガスフロー内に配置することが基本的には可能である。その際、好ましくは小型の反応アセンブリは、層状部材アセンブリが、当該開口部と当該さらなる開口部との間に設けられていることによって得られる。
【0055】
好ましくは、ハウジングは、直線状に貫流可能であり、これによって、ハウジングを通過する際、及び、従って層状部材アセンブリの側を通過する際の、検出されるべき流体の旋回が、可能な限り回避される。
【0056】
上述した人工呼吸器内での反応アセンブリの特に有利な使用を実現するために、本発明の有利なさらなる発展形態によると、当該反応アセンブリは、人工呼吸器の呼吸誘導装置内に配置されるように構成されており、当該反応アセンブリは、当該開口部の領域においても、当該さらなる開口部の領域においても、それぞれの接続構造を用いて、呼吸誘導装置の各部分と接続するように構成されている。
【0057】
有利には、反応アセンブリは、酸素測定キュベットとして構成されている。このような測定キュベットは、通常、平行六面体として構成された少なくとも1つのハウジング部分を有している。好ましくは、反応アセンブリは、ハウジングの当該平行六面体部分に配置されており、好ましくは平らな、又は、曲りの軸の周りにのみ曲げられた、ハウジングの平行六面体部分の1つの面は、好ましくは反応ウィンドウも温度検出ウィンドウも有している。
【0058】
当該反応アセンブリは、酸素分圧と、そこから導出される流体の酸素含有量とのセンサによる検出に用いられるので、本出願はさらに、センサアセンブリに関しており、当該センサアセンブリは、上述の、さらに発展した反応アセンブリを含んでおり、さらに、
-反応ウィンドウを通る第1の電磁放射線を放射するように構成された放射源と、
-反応ウィンドウを通る第2の電磁放射線を検出するように構成された放射線検出器と、
-温度検出ウィンドウを通る、温度検出層体によって放射される赤外線を検出するように構成された赤外線検出器と、
を有する検出器アセンブリを含んでいる。
【0059】
好ましくは、赤外線検出器と放射源とは、第1の電磁放射線及び赤外線に関して互いにシールドされた測定空間に配置されており、これによって、放射に起因する相互の干渉が可能な限り回避される。
【0060】
センサアセンブリの使用に際して、好ましくは人工呼吸器での使用、又は、人工呼吸器と協働する使用が考えられているものの、当該センサアセンブリは、基本的に、流体に溶解した酸素の任意の酸素分圧を検出するように構成されているということを指摘すべきであろう。しかしながら、好ましくは、当該流体は呼吸ガスである。
【0061】
直接流体と接触する反応アセンブリにおいて、部材の衛生を高い程度で確保することを可能にするために、上述したように、検出器アセンブリが、反応アセンブリと解除可能に接続可能であるか、又は、接続されていると有利である。従って、はるかに高価である検出器アセンブリを、時間的に連続して、複数の反応アセンブリと共に、流体内の酸素含有量を検出するために用いることが可能である。
【0062】
従って、好ましくは、上述の反応アセンブリは、医療現場等において患者に一度使用した後で廃棄され得る、ディスポーザブルの反応アセンブリである。再利用可能な検出器アセンブリを、可能な限り容易かつ確実に、特に取り違えのないように、反応アセンブリと、特に酸素測定キュベットとして構成された反応アセンブリと、解除可能に接続するために、平行六面体部分を直方体として構成することが好ましい。有利には、直方体部分は、様々な幅のカバー側面対を有しており、これによって、検出器アセンブリをハウジングに、特に測定キュベットに誤って取り付けることが回避される。
【0063】
層状部材アセンブリに関連して冒頭に述べたように、測定対象流体内の酸素含有量の、可能な限り正確な、発光団に基づく検出結果を得るためには、温度検出層体の非接触の、赤外線に基づく温度検出の、実際に関係する反応層体の温度でのキャリブレーションが必要か、又は、少なくとも有利であり得る。この目的のために、センサアセンブリが、電子評価装置と信号伝達可能に接続されており、当該電子評価装置は、少なくとも1つのデータ記憶装置と、データ記憶装置とデータを交換するように接続されたデータ処理装置とを有しており、データ記憶装置内には、検出された温度検出層体の赤外線と発光団の温度とを相関させるためのキャリブレーション情報が保存されていることが規定され得る。
【0064】
発光団の温度は、反応層体の温度と同じであり、特に反応層体の検出面の温度が重要である。
【0065】
キャリブレーションは、具体的な層状部材アセンブリ若しくは具体的な反応アセンブリに関して、又は、層体若しくは反応アセンブリの等級に関して、前もって実験室で行われ得る。このために、両方の層体は、次々に、それぞれ異なるが、均一で既知の温度の熱平衡状態にされ得る。次に、各平衡状態に関して、温度検出層体から放射された赤外線の検出値が、反応層体の、それぞれ既知の平衡温度と関連付けられ得る。
【0066】
温度検出層体が、反応層体の温度変化に十分な速度で従っているかを調べるために、両方の流体接触面は、既知の方法で経時的に変化する既知の温度の温度源と接触することが可能であり、両方の層体の検出面の温度は、時間の関数として、非接触に検出され得る。
【0067】
このように得られたデータから、温度検出層体の検出面において非接触に検出された温度と、反応層体の検出面の温度及び当該反応層体に存在する発光団の温度との間で、極めて正確なキャリブレーション関係が得られる。
【0068】
さらに、電子評価装置は、放射線検出器によって検出された第2の電磁放射線を、測定対象流体の酸素濃度値又は酸素含有量値と相関させるためのキャリブレーション情報を格納し得る。冒頭に述べたように、放射線検出器によって検出される第2の電磁放射線、又は、第2の電磁放射線の、励起している第1の電磁放射線に対する時間及び/若しくは強度に関する関係は、測定対象流体内の酸素分圧と直接関連している。自明のことながら、検出された分圧から、流体の酸素濃度又は酸素含有量を容易に検出又は算出することが可能である。
【0069】
上述のセンサアセンブリの好ましい適用事例は、人工呼吸のための人工呼吸器との協働であるので、本発明はさらに、人工呼吸のための人工呼吸器にも関しており、当該人工呼吸器は、
-呼吸ガス源、
-呼吸ガス源と患者側の近位端との間に延在する呼吸誘導アセンブリ、
-吸気弁及び呼気弁を含む弁アセンブリ、
-呼吸誘導アセンブリ内でガスフローを量的に検出するための流量センサアセンブリ、
-呼吸誘導アセンブリ内を流れるガスのガス圧を変更するための圧力変更アセンブリ、
-少なくとも近位の流量センサの測定信号に基づいて圧力変更アセンブリの動作を制御するように構成された制御装置、及び、
-呼吸誘導アセンブリ内を流れるガスの酸素含有量を検出するための、上述の、有利にはさらに改良されたセンサアセンブリ、
を有している。
【0070】
「呼吸ガス源」は、極めて一般的に、呼吸ガスを呼吸誘導アセンブリに導入するために用いられる、あらゆる種類の呼吸ガス源を意味している。これは、人工呼吸器の接続構造であってよく、当該接続構造は、交換可能な、又は、建物側で固定的に取り付けられている呼吸ガス貯蔵容器と接続するように構成されている。これは、ポンプであってもよく、ポンプは、呼吸ガス装置内で、呼吸ガスを、外部環境でもあり得る貯蔵容器から吸い込み、呼吸誘導アセンブリに導入する。このようなポンプは、送風機として構成されていてもよい。
【0071】
「圧力変更アセンブリ」は、呼吸誘導アセンブリ内を流れる呼吸ガスの圧力を変更するのに適した、かつ、変更するためのあらゆる装置であると理解されるべきである。これは、呼吸ガス源が単に、建物側に取り付けられたガス貯蔵容器に接続するための接続構造である場合、減圧のための弁アセンブリであり得る。呼吸ガス源が、上述のポンプ又は送風機を有する場合、圧力変更アセンブリは、制御装置によってその出力が変更され得る呼吸ガス源の部分又は全体を、例えばポンプ又は送風機を、自身が含んでいるか、又は、そのものであり得る。呼吸ガス源が、上述のポンプ又は送風機から形成されている場合も、圧力変更アセンブリは、呼吸ガス源に加えて、減圧弁さえも含み得るか、又は、例えばポンプ又は送風機が一定の負荷で動作する場合、専ら減圧弁によって形成されていてよい。
【0072】
制御装置は、好ましくは上述のセンサアセンブリの電子評価装置を含んでいるか、又は、電子評価装置である。
【0073】
好ましくは、センサアセンブリは、呼吸ガスの主流に配置されており、これによって、センサアセンブリは、呼気呼吸ガスフロー及び吸気呼吸ガスフローからの少なくとも1つのフローを、直接検出することができる。好ましくは、センサアセンブリは、呼気呼吸ガスフローも吸気呼吸ガスフローも検出することができるように、呼吸誘導アセンブリ内に設けられている。このために、センサアセンブリは、患者に近く、すなわち近位に配置されていてよく、好ましくは、別々の呼気呼吸誘導部分と吸気呼吸誘導部分とを、患者に向かう方向において合流させる際に用いられるYコネクタと、患者の気管内チューブとの間に配置され得る。
【0074】
さらに好ましくは、センサアセンブリは、別々の呼気呼吸誘導部分と吸気呼吸誘導部分との患者に向かう方向における合流地点と、流量センサとの間に配置されている。
【0075】
以下に、添付の図面を用いて、本発明を詳細に説明する。示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】本発明に係る人工呼吸器における、本発明に係る層状部材アセンブリ、反応アセンブリ及びセンサアセンブリの、好ましいものの例示的にすぎない適用事例を示す図である。
【
図2A】本出願に係る平型の層状部材アセンブリを極めて概略的に示す上面図である。
【
図2B】
図2Aに係る層状部材アセンブリの、
図2Aの切断面IIB-IIBに沿った断面図である。
【
図3A】
図2A及び
図2Bに係る層状部材アセンブリと、当該層状部材アセンブリを受容する反応アセンブリのハウジングのウィンドウ部材とを含む、アセンブリの上面図である。
【
図3B】
図3Aに係るアセンブリの、
図3Aの切断面IIIB-IIIBに沿った断面図である。
【
図4】本出願に係る反応アセンブリを示す図である。
【
図5】
図4に係る反応アセンブリを有する、本発明に係るセンサアセンブリを極めて概略的に示す横断面図であり、どのように
図1に係る人工呼吸器においてセンサアセンブリとして使用されるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本出願で議論される対象である層状部材アセンブリ、反応アセンブリ、センサアセンブリ及び人工呼吸器の、好ましい使用領域について説明するために、まず、前記部材を用いる人工呼吸器について、
図1に関連して説明する。
【0078】
図1には、人工呼吸器の本発明に係る実施形態が、全体として参照符号10で示されている。人工呼吸器10は、図示された例では、人間の患者12の人工呼吸に用いられる。
【0079】
人工呼吸器10は、可動式の人工呼吸器10として、転動可能な台13に受容されている。
【0080】
人工呼吸器10は、ハウジング14を有しており、ハウジング14内には、ハウジング材料が不透明なので外側からは認識できないが、圧力変更アセンブリ16と制御装置18とが受容され得る。
【0081】
圧力変更アセンブリ16は、それ自体知られている方法で構成されており、ポンプ、圧縮機又は送風機の形で、呼吸ガス源15を有しており、呼吸ガス源15はそれぞれ、負荷を変更して作動可能であり、従って、人工呼吸器への呼吸ガスの導入だけではなく、導入された呼吸ガスの圧力の変更にも用いられる。呼吸ガス源15は、代替的に、人工呼吸器10のハウジング14に接続可能である圧力タンクによって形成されていてもよい。圧力変更アセンブリ16は、呼吸ガス源15と、必要に応じて付加的に、又は、呼吸ガス源としてガス貯蔵容器が加圧されている場合には代替的に、減圧弁等とを有し得る。さらに、人工呼吸器10は、それ自体知られている方法で、吸気弁20及び呼気弁22を有している。
【0082】
制御装置18は、一般的に、コンピュータ又はマイクロプロセッサとして実現されている。制御装置18は、
図1に示されていないデータ記憶装置を含んでおり、これによって、人工呼吸器10の動作に必要なデータが記憶され、必要に応じて呼び出され得る。当該記憶装置は、ネットワーク運用に際して、ハウジング14の外側に配置され、データ伝送接続部によって制御装置18と接続されていてもよい。データ伝送接続部は、ケーブル又は無線リンクによって形成されていてよい。しかしながら、データ伝送接続部の干渉が、人工呼吸器10の動作に影響を及ぼすことを防止するためには、記憶装置は、好ましくは制御装置18に組み込まれているか、少なくとも制御装置18と同じハウジング14内に受容されている。
【0083】
人工呼吸器10又はより正確には制御装置18にデータを入力するために、人工呼吸器10は、データ入力部24を有しており、データ入力部24は、
図1に示された例では、キーボードによって表されている。制御装置18は、図示されたキーボードの代わりに、又は、キーボードに加えて、様々なデータ入力部を通じて、例えばネットワーク導線、無線リンク、又は、センサ接続部26を通じてデータを得ることが可能であり、これらについては、以下において詳細に検討する。
【0084】
治療にあたる医療従事者にデータを出力するために、人工呼吸器10は、出力機器28を有することが可能であり、図示された例では、スクリーンを有している。
【0085】
人工呼吸のために、患者12は、人工呼吸器10に、より正確にはハウジング14内の圧力変更アセンブリ16に、呼吸誘導アセンブリ30を通じて接続されている。このために、患者12は、気管内チューブ58で挿管されている。
【0086】
新鮮な呼吸ガスを、呼吸ガス源15及び圧力変更アセンブリ16から、患者12の肺へ誘導し得る呼吸誘導アセンブリ30は、ハウジング14の外側に、吸気ホース32を有している。吸気ホース32は、中断され、第1の吸気ホース34と第2の吸気ホース36とを有していてもよく、第1の吸気ホース34と第2の吸気ホース36との間には、患者12に供給される新鮮な呼吸ガスに意図的に湿気を加え、必要に応じて温度調整を行うための調整装置38を設けることが可能である。調整装置38は、外部の液体貯蔵容器40に接続可能であり、液体貯蔵容器40によって、湿気を与えるための水、又は、例えば気道の炎症を抑制するため、若しくは、気道を拡張するための薬剤も、呼吸ガスに供給され得る。麻酔人工呼吸器として、人工呼吸器10を用いる場合、このような方法で、揮発性の麻酔薬が、人工呼吸器10によって管理されて、患者12に放出され得る。調整装置38は、新鮮な呼吸ガスが、所定の水分含量で、必要に応じて薬剤エアロゾルを添加し、所定の温度で、患者12に供給されるように調整を行う。
【0087】
呼吸誘導アセンブリ30は、すでに言及された吸気弁20の他に、呼気弁22と、さらに呼気ホース42とを有しており、呼気ホース42を通じて、代謝した呼吸ガスが、患者12の肺から大気中に吐出される。
【0088】
吸気ホース32は、吸気弁20と連結されており、呼気ホース42は、呼気弁22と連結されている。2つの弁の内、ガスフローの通過のためには、それぞれ1つの弁のみが同時に開かれている。弁20及び22の作動制御は、同じく、制御装置18によって行われる。
【0089】
呼吸サイクルの間、まず、吸気段階が続く間は、呼気弁22が閉じられ、吸気弁20は開かれており、これによって、新鮮な呼吸ガスが、ハウジング14から患者12に誘導され得る。新鮮な呼吸ガスのフローは、圧力変更アセンブリ16によって、意図的に呼吸ガスの圧力を上昇させることを通じてもたらされる。圧力の上昇によって、新鮮な呼吸ガスは、患者12の肺に流入し、肺に近い部位、つまり特に胸郭を、肺に近い部位の個々の弾性に反して膨張させる。これによって、患者12の肺内部におけるガス圧も上昇する。
【0090】
吸気段階の終わりに、吸気弁20は閉じられ、呼気弁22が開かれる。呼気段階が開始する。吸気段階の終わりまでに上昇した、患者12の肺内にある呼吸ガスのガス圧によって、当該呼吸ガスは、呼気弁22が開かれた後で大気中に流れ、流れる時間の経過と共に、患者12の肺内のガス圧は減少する。肺12内のガス圧が、人工呼吸器10において調整された呼気終末陽圧、すなわち大気圧よりもわずかに高い圧力に達する場合、呼気段階は、呼気弁22の閉止によって終了し、さらなる呼吸サイクルが、引き続いて行われる。
【0091】
吸気段階の間、患者12には、いわゆる1回換気量、すなわち呼吸ごとの呼吸ガス体積が供給される。1回換気量を、呼吸サイクル数毎分と、すなわち呼吸頻度と乗じることによって、実施される人工呼吸の分時換気量が得られる。
【0092】
好ましくは、人工呼吸器10、特に制御装置18は、人工呼吸器10の呼吸動作を特徴付ける呼吸動作パラメータを、呼吸動作の間に、繰り返し更新又は検出するように構成されており、これによって、各時点における呼吸動作が、可能な限り最適に、それぞれ人工呼吸を施されるべき患者12に合わせられることが保証される。特に有利には、1つ又は複数の呼吸動作パラメータが、呼吸頻度を用いて決定され、これによって、各呼吸サイクルに関して、最新の、患者12に最適に合わせられた呼吸動作パラメータが供給され得る。
【0093】
このために、人工呼吸器10は、1つ又は複数のセンサと、データ伝送可能に接続されており、当該センサは、患者の状態及び/又は人工呼吸器の動作を監視している。
【0094】
これらのセンサの内1つは、近位の流量センサ44であり、流量センサ44は、Yコネクタ45の、患者12のより近い側に配置されており、呼吸誘導アセンブリ30に存在する呼吸ガスフローを検出する。流量センサ44は、センサ誘導アセンブリ46を用いて、制御装置18のデータ入力部26に連結され得る。センサ誘導アセンブリ46は、電気信号伝送線を含んでいてよいが、含む必要はない。センサ誘導アセンブリ46は、同様に、流れる方向において流量センサ44の両側に存在するガス圧をデータ入力部26に伝達するホース管を有することが可能であり、データ入力部26では、これらのガス圧は、圧力センサ27によって数量化される。流量センサ44は、好ましくは圧力差の原理に従って機能する流量センサではあるが、他の物理的作用原理に従って機能する流量センサでもあり得る。
【0095】
ハウジング14内には、さらなる流量センサ48が設けられており、流量センサ48は、近位の流量センサ44と比べて、患者12から離れているので、遠位の流量センサ48と称される。
【0096】
呼吸誘導アセンブリ30内では、Yコネクタ45と流量センサ44との間に、測定キュベット52として構成されたハウジング52を有する反応アセンブリ72と検出器アセンブリ54とを含むセンサアセンブリ50が配置されており、これによって、呼気呼吸ガス主流においても、吸気呼吸ガス主流においても、呼吸ガスの酸素含有量が検出される。
図5に関連して、以下において詳細に言及されるセンサアセンブリ50は、信号導線56を通じて制御装置18に連結されており、その検出器アセンブリ54の検出結果を、さらなる評価のために、制御装置18に伝達する。
【0097】
制御装置18のデータ記憶装置には、センサアセンブリ50の検出結果を高い精度で評価するために、キャリブレーション情報が保存されている。
【0098】
センサアセンブリ50は、ハウジング52を貫流する呼吸ガスに含まれる酸素の分圧の、温度補償型の発光団に基づく検出を行うように構成されている。温度補償も、直接酸素分圧に関連して得られる検出値の、呼吸ガスの酸素濃度又は酸素含有量への換算も、制御装置18によって、保存されたキャリブレーション情報を用いて行われる。
【0099】
流体内の酸素含有量の、発光団に基づく検出は、それ自体知られている。当該実施例では、この検出は、
図2A及び
図2Bに示された、全体として参照符号60で示された、本発明に係る層状部材アセンブリの関与のもとで行われる。層状部材アセンブリは、上述の呼吸ガスのような、測定対象流体の酸素含有量の光学的検出のために、反応層体62を含んでおり(
図2Bも参照のこと)、反応層体62は、当該例では、2層構造の反応層体62として示されている。実際には、反応層体62は、1つの層のみ、又は、2つ以上の層を有し得る。図示された例では(
図2Bの横断面でも認識されるが)、反応層体62は、基板層62aと、基板層62aに貼付された発光団を含有する反応層62bとを有している。
【0100】
反応層体62の長さ及び幅の厚さに対する比は、これらの図面において、原寸に比例していない。
図2A及び
図2Bにおいて正方形で示されている反応層体62は、約7mm~10mmの辺長を有することが可能であり、その厚さは、2つの層62a及び62bにわたって計測して、約300μmであり得る。
【0101】
その際、基板層62aは、例えばポリフッ化ビニリデン等の、酸素分子にとって十分な透過性を有する材料から形成され得る。基板層62aは、対応する箔から切り取られ、100μmから150μmの間の厚さを有し得る。場合によっては、基板層の厚さは、より小さくてもよい。
【0102】
発光団を含有する反応層62bは、同様に、マトリクス材として、発光団が組み込まれたポリフッ化ビニリデンを含むことが可能である。
【0103】
反応層体62は、流体接触面62c及び検出面62dを有している。
【0104】
発光団を含有する反応層62bは、反応層62bを支持する基板層62aよりもいくらか小さく構成されていてよく、これによって、発光団を含有する反応層62bの検出面に接着剤を塗布せずとも、反応層体62の、ウィンドウ部材又は全体としてハウジング上の検出面への接着による取り付けが容易になる。
【0105】
以下で
図5に関連してさらに言及するように、また、基本的に一般的に知られているように、反応層62bは、第1の波長の第1の電磁放射線を照射され、これによって、第2の、一般的にはより長い波長の第2の電磁放射線を放射するように励起する。励起される第2の電磁放射線の強度及び持続時間は、酸素の存在、より正確には、反応層62bに組み込まれた発光団の酸素による接触に依存する。さらに、反応層62bの放射挙動は、温度に依存している。
【0106】
反応層体62の放射挙動の検出の温度補償のために、層状部材アセンブリ60は、温度検出層体64を有しており、温度検出層体64は、図示された例では、反応層体62と同じ大きさの面積を有しているが、これは必ずしも必要ではない。
【0107】
温度検出層体64の描写もまた、その寸法に関して、原寸に比例していない。温度検出層体64は、図示された例では、反応層体62の場合と同じ範囲の辺長を有しているが、反応層体62とは構造が異なるので、好ましくは反応層体62よりも薄型である。
【0108】
温度検出層体64は、やはり、基板層64aを有しており、可能な限り優れた熱伝導という理由から、例えば厚さ約10μm以下のアルミニウム箔から形成されている。
【0109】
図示された実施例では、基板層64aに、例えばカーボン含有ラッカーから成る検出層64bが貼付されている。カーボン含有ラッカーは、説明の導入部で例示的に記載されたように、黒色の色素としてカーボンを含んでおり、従って、0.9より大きい、非常に高い放射率を有している。
【0110】
以下において、
図3A及び
図3Bに関連して言及されるように、検出層64bから放射される赤外線は、例えば、開口部68が沿って延在する開口部軸に沿って、つねに円形の横断面を有する円形の開口部68を通って検出されるので、検出層64bもまた、円形部として、例示的に正方形の形状を有する基板層64a上に形成されている。
【0111】
検出層64bから離れる方向を指す基板層64aの表面は、流体接触面64cとして露出している。当該表面は、温度検出層体64の基板層64aを形成するアルミニウム箔の金属表面によって形成されている。温度検出層体64の検出面64dは、検出層64bの自由表面を形成している。すなわち、流体は、層状部材アセンブリ60の流体接触面62c又は64cの側を通過可能であり、酸素は、基板層62aを通って、発光団を含有する反応層62bに到達し、反応層62bにおいて、第1の電磁放射線によって形成された励起の消光に寄与するが、その一方で、温度検出層体64の流体接触面64cにおける流体接触のみが、流体から温度検出層体64への熱伝達に寄与する。
【0112】
基板層64aのための選択された材料(アルミニウム)ゆえに、及び、その厚さが小さいゆえに、基板層64aは、ミリ秒領域において、その流体接触面64cの側を通過する流体の温度を想定し、検出層64bの温度調整にも努めるので、温度検出層体64の検出面64dにおける赤外線検出器を用いて、少なくとも測定対象流体の温度に関連する温度値が検出可能である。反応層体62は、同じ流体と、ほぼ同じ方法で接触するので、温度検出層体64の検出面64dの温度の検出は、制御装置18のデータ記憶装置に保存されたキャリブレーション情報に基づいて、反応層62bの検出面62dの温度の帰納的推測を可能にするが、これは、反応層体62において得られる、測定対象流体の酸素含有量に関する測定結果の温度補償のための前提である。
【0113】
温度補償は必要である。なぜなら、測定対象流体は、層状部材アセンブリ60の側を流れる間に、その温度を変更することが可能であり、例えば、
図1に係る人工呼吸器において、患者に、吐出しの後に、呼気として戻される呼吸空気よりも低い温度の呼吸空気が供給されるからである。
【0114】
従って、層状部材アセンブリ60は、一般的に、ハウジング52内に配置され、ハウジング52は、測定対象流体のフローを、その酸素含有量及び温度の検出の間に誘導する。
【0115】
その際、両方の層体62及び64の検出面62d及び64dは、有利には外側に向かって、すなわち測定対象流体から離れる方向に向いている一方で、両方の層体の流体接触面62c又は64cは、可能な限り広い範囲で、流体と接触する。
【0116】
反応層62bが、測定対象流体に溶解した酸素によってのみ到達されることを確実にするために、反応層体は、その検出面において、ウィンドウによって覆われている。
図3Aは、
図2A及び
図2Bに係る層状部材アセンブリ60を、
図2Aの上面図で、層状部材アセンブリ60の上に配置されたウィンドウ部材66と共に示している。ウィンドウ部材66は、センサアセンブリ50の、
図1に示されたハウジング52の一部である。ウィンドウ部材は、透明なポリアミドから、又は、第1及び第2の電磁放射線を透過させる別のプラスチックからも形成されていてよい。例えば、ウィンドウ部材66は、ドマート(スイス)のエムスケミー株式会社によって「Grilamid TR」という名称で提供される非晶質ポリアミドから形成され得る。
【0117】
従って、その反応層62bの真上に位置する領域において、ウィンドウ部材66は、反応ウィンドウ66aを形成しており、反応ウィンドウ66aを通って、反応層62bは、第1の電磁放射線によって到達され、それによって励起されて放射された第2の電磁放射線が伝達される。
【0118】
温度検出層体64の検出層64bによって放射される赤外線を、可能な限り歪曲せずに検出することを可能にするために、ウィンドウ部材66内では、温度検出層体の配置箇所の真上に、検出ウィンドウ66bが形成されており、検出ウィンドウ66bは、層状部材アセンブリ60から離れた方を指す側から、検出層64bに向かって逆円錐形に拡大する、ウィンドウ部材66をその厚さ全体にわたって貫通する開口部68として構成されている。
【0119】
ウィンドウ部材66の検出層64bに対向する面における円形の開口部縁68aの直径は、ウィンドウ部材66の検出層64bに背向する面における開口部68の同心の開口部縁68bよりも大きい。2つの開口部縁68a及び68bの間に延在する逆円錐形の開口部壁68cは、好ましくはコーティングされ、特に好ましくは反射コーティングされており、これによって、ウィンドウ部材66を通って誘導され得る分の放射線の干渉による影響が、最小限に抑えられるか、又は、排除される。
【0120】
図4には、センサアセンブリ50のハウジング52が、一種の分解組み立て図で示されている。
【0121】
ハウジング52は、基本ハウジング53と、基本ハウジング53に接して配置されているが、
図4では認識できない層状部材アセンブリ60を伴うウィンドウ部材66と、を含んでいる。ウィンドウ部材66を用いて、基本ハウジング53内の開口部70を閉鎖することが可能であり、その結果、ハウジング52が閉鎖され、層状部材アセンブリ60の配置ゆえに、ハウジング52の中に反応アセンブリ72が形成される。
【0122】
ハウジング52は、ウィンドウ部材66の関与のもとで形成される平行六面体部分74の両側に、呼吸誘導部分を接続するための接続管76a及び76bを有している。
【0123】
ハウジング52は、フロー軸Sに沿って双方向に貫流可能である。
【0124】
図5には、センサアセンブリ50が、極めて概略的に、横断面で示されている。
【0125】
ハウジング52は、その両方の開口部78a及び78bの間において、フロー軸Sに沿って、呼吸ガスによって双方向に貫流可能である。その際、呼吸ガスは、層体62及び64の流体接触面62c及び64cと接触しながら、層体62及び64の側を通過する。フロー軸Sは、
図5の投影面に位置している。
【0126】
取り外し可能にハウジング52に接して配置可能であり、このために、平行六面体部分74を3つの側からU字形に包囲しており、「U」の底辺がウィンドウ部材66と向かい合っているセンサアセンブリ54は、構造的に互いから分離した2つの測定チャンバ80及び82を含んでいる。
【0127】
測定チャンバ80には、例えばLEDの形で、放射源82が設けられており、放射源82は、第1の波長の電磁放射線E1を放射する。放射源82によって放射される第1の電磁放射線の波長帯を可能な限り狭く保ち、迷放射線を回避するために、放射源82は、有利には、上述の波長の第1の電磁放射線E1を、可能な限り小さい許容差で透過させるフィルタ本体84によって包囲されていてよい。
【0128】
さらに、第1の測定チャンバ80内には、放射線検出器86が配置されており、放射線検出器86は、第1の電磁放射線E1によって反応層62bが励起した後に反応層62bから放射される第2の電磁放射線E2を検出する。第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2の電磁放射線E2のみを透過させるために、放射線検出器86には、放射線フィルタ88が前置されている。フィルタアセンブリ84及び88によって、放射線が直接、放射源82から放射線検出器86までは到達せず、放射線検出器86において検出される信号が「弱まる」ことが保証され得る。
【0129】
放射線検出器86によって、第2の電磁放射線E2の検出に基づいて出力される信号は、
図1に示されたデータ回線56を通じて、制御装置18に伝達される。これは、それ自体知られている方法で、ハウジング52を貫流する流体内の酸素分圧に関して示唆的である。
【0130】
第2の測定チャンバ82には、検出層64bから放射される赤外線Iを検出する赤外線検出器90が配置されている。赤外線検出器90によって、赤外線Iの検出に基づいて出力される信号もまた、データ回線56を通じて制御装置18に伝達される。当該信号は、検出層64bの温度に関して示唆的である。
【0131】
層状部材アセンブリ60の使用前に、離れた実験室において検出された、制御装置18のデータ記憶装置内に保存されたキャリブレーション情報に基づいて、制御装置18は、放射線検出器86の信号の各検出時点に関して、赤外線検出器90の検出信号から、反応層62bの温度を検出することが可能であり、放射する反応層体62又はその反応層62bの温度に関する放射線検出器86の検出信号を補償することが可能である。その結果は、時間的に可変な変数としての、ハウジング52を貫流する流体における酸素分圧の精度の高い決定である。
【0132】
その際、精度の高い温度補償は、例えば基板として金属箔64aと金属箔64aの上に貼付された検出層64bのような、極めて単純な手段で得られる。金属箔64a(アルミニウム箔)の使用は、ウィンドウ部材66又は全体としてハウジング52を、検出ウィンドウ68の構成のために完全に貫通することを許容するので、検出層64bによって、赤外線として放射された温度情報が、可能な限り少ない歪曲で、赤外線検出器90に到達する。
【0133】
制御装置18は、さらなるキャリブレーション情報をデータ記憶装置内に含んでおり、当該キャリブレーション情報は、第2の電磁放射線の検出と直接関連する流体の酸素分圧の、流体の酸素含有量への一般的な換算を可能にする。
【符号の説明】
【0134】
10 人工呼吸器
12 患者
13 台
14 ハウジング
15 呼吸ガス源
16 圧力変更アセンブリ
18 制御装置、電子評価装置
20 吸気弁
22 呼気弁
24 データ入力部
26 データ入力部
27 圧力センサ
28 出力機器
30 呼吸誘導アセンブリ
32 吸気ホース
34 第1の吸気ホース
36 第2の吸気ホース
38 調整装置
40 液体貯蔵容器
42 呼気ホース
44、48 流量センサ
45 Yコネクタ
46 センサ誘導アセンブリ
50 センサアセンブリ
52 測定キュベット、ハウジング
53 基本ハウジング
54 検出器アセンブリ
56 信号導線、データ回線
58 気管内チューブ
60 層状部材アセンブリ
62 反応層体
62a 基板層
62b 反応層
62c 流体接触面
62d 検出面
64 温度検出層体
64a 基板層、金属箔
64b 検出層、放射層
64c 流体接触面
64d 検出面
66 ウィンドウ部材
66a 反応ウィンドウ
66b 検出ウィンドウ
68 開口部、検出ウィンドウ
68a、68b 開口部縁
68c 開口部壁
70 開口部
72 反応アセンブリ
74 平行六面体部分
76a、76b 接続管、接続構造
78a、78b 開口部
80、82 測定チャンバ
82 放射源
84 フィルタ本体、フィルタアセンブリ
86 放射線検出器
88 放射線フィルタ、フィルタアセンブリ
90 赤外線検出器
E1 第1の電磁放射線
E2 第2の電磁放射線
I 赤外線
S フロー軸