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特許7100059キャリア、キャリアの使用、キャリアの活性化方法、およびキャリアの作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】キャリア、キャリアの使用、キャリアの活性化方法、およびキャリアの作成方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/02 20060101AFI20220705BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20220705BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20220705BHJP
   B81C 99/00 20100101ALI20220705BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B32B3/02
A61N1/04
A61B5/11
B81C99/00
B32B3/10
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2019555808
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2018059013
(87)【国際公開番号】W WO2018189099
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】17166485.7
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500449363
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フェルデルンク デル ヴィッセンシャフテン エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ドゥロトゥレフ,ディルク-ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ジッティ,メティン
(72)【発明者】
【氏名】アムヤディ,モルテザ
【審査官】吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-517130(JP,A)
【文献】特表2002-506364(JP,A)
【文献】国際公開第2017/040849(WO,A1)
【文献】特開2017-047273(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0055906(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 - 1/44
A61B 5/103 - 5/113
B32B 3/00 - 3/30
B32B 7/02
B81C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間、動物、車両、建造物、またはロボット本体の一部などの表面に取り付けられるように構成された接着用キャリアであって、
‐ペイロードとのインターフェースであるバッキング基板と、
‐表面に複数のアイランドが配置されたパターン化された表面と、
を備え、
前記アイランドおよび前記バッキング基板の少なくとも一方がコンプライアント材料から作成され、
前記アイランドは、規則的または不規則に間隔を介したマイクロファイバーであり、
前記マイクロファイバーの少なくとも先端部が硬化性材料を含むインクでコーティングされ、
前記インクは前記キャリアの前記アイランドを別の物体に結合させるように選択される、キャリア。
【請求項2】
前記インクは、前記ペイロードと前記別の物体との間の接続を形成するように選択される、請求項1に記載のキャリア。
【請求項3】
前記インクおよび前記アイランドは、前記ペイロードとの機械的接続を形成し、前記機械的接続は、前記ペイロードによって測定される前記物体の性能を高めるように構成される、請求項1または2に記載のキャリア。
【請求項4】
前記ペイロードが歪みセンサであり、前記インクおよび前記アイランドが、前記物体から前記ペイロードに変形および応力を伝達するように構成される、請求項3に記載のキャリア。
【請求項5】
前記ペイロードが電気センサであり、前記インクおよび前記アイランドが、前記物体から前記ペイロードに電気信号を送信するように構成される、請求項3または4に記載のキャリア。
【請求項6】
前記ペイロードが温度センサであり、前記インクおよび前記アイランドが、前記物体から前記ペイロードに熱パラメータを伝達するように構成される、請求項3~5のいずれかに記載のキャリア。
【請求項7】
前記ペイロードが化学センサであり、前記インクおよび前記アイランドが、前記物体から前記ペイロードへの化合物の流れを可能にするように構成される、請求項3~6のいずれかに記載のキャリア。
【請求項8】
前記キャリアの個々のアイランドの間に存在する自由空間の液体透過性が、室温で、105~10-20[cm2]、特に101~10-10[cm2]の範囲で選択され、および/または、前記キャリアの個々のアイランドの間に存在する自由空間の気体透過性が、室温で、105~10-20[cm3・cm・cm-2・S-1・cmHg-1]、特に101~10-10[cm3・cm・cm-2・S-1・cmHg-1]の範囲で選択される、請求項1~7のいずれかに記載のキャリア。
【請求項9】
前記コンプライアント材料が可撓性材料である、請求項1~8のいずれかに記載のキャリア。
【請求項10】
前記コンプライアント材料は、前記表面のトポロジーに適合するおよび/または適合するように選択された柔軟性を有する材料である、請求項9に記載のキャリア。
【請求項11】
前記コンプライアント材料が、前記バッキング基板および前記アイランドの少なくとも一方を形成する可撓性材料であり、前記可撓性材料は、10kPa~600MPaの範囲で選択されるヤング率を有する、請求項9または10に記載のキャリア。
【請求項12】
前記アイランド間に空隙が存在し、任意選択的に、アイランドの表面積に対する空隙の表面積の比が、前記キャリア上の前記アイランドの密度を規定する、請求項1~11のいずれかに記載のキャリア。
【請求項13】
前記アイランドは、前記バッキング基板と一体であるか、または前記バッキング基板に接続されている、請求項1~12のいずれかに記載のキャリア。
【請求項14】
前記マイクロファイバーが規則的または不規則な形状支柱である、請求項に記載のキャリア。
【請求項15】
前記支柱が、立方体、ピラミッド形、球形、円筒形、円錐形、直方体、三角形または六角形である、請求項14に記載のキャリア。
【請求項16】
前記支柱は、少なくとも実質的に円筒形の形状を有する、請求項15に記載のキャリア。
【請求項17】
前記支柱が、10-4~104の範囲で選択されたアスペクト比を有する、請求項14~16のいずれかに記載のキャリア。
【請求項18】
前記支柱が、0.01~1000の範囲で選択されたアスペクト比を有する、請求項17に記載のキャリア。
【請求項19】
前記支柱が、0.1~100の範囲で選択されたアスペクト比を有する、請求項17または18に記載のキャリア。
【請求項20】
前記支柱が、1~5の範囲で選択されたアスペクト比を有する、請求項1719のいずれかに記載のキャリア。
【請求項21】
センサの形態で存在する前記ペイロードが、前記バッキング基板に取り付けられる、請求項1~20のいずれかに記載のキャリア。
【請求項22】
前記アイランドおよび前記バッキング基板の少なくとも1つがフィラー材料を備える、請求項1~21のいずれかに記載のキャリア。
【請求項23】
前記フィラー材料が、有機、無機、金属、合金、セラミック、ガラス、ポリマー、ゴム、生体材料、複合材料、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、および前述の材料の組み合わせからなる部材の群から選択される、請求項22に記載のキャリア。
【請求項24】
前記アイランドおよび/または前記バッキング基板の材料が、有機、無機、金属、合金、セラミック、ガラス、ポリマー、ゴム、生体材料、複合材料、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、および前述の材料の組み合わせからなる部材の群から選択される、請求項1~23のいずれかに記載のキャリア。
【請求項25】
前記硬化性材料は、前記アイランドの材料に架橋または接着を提供する材料であり、前記硬化性材料は、前記アイランドと同じ材料、熱架橋性材料、光架橋性材料、水分架橋性材料、触媒架橋性材料、酸化還元反応架橋性材料、およびそれらの組み合わせからなる部材の群から選択される、請求項1~24のいずれかに記載のキャリア。
【請求項26】
前記硬化性材料は、その後前記キャリアが接続される物体に架橋または接着を提供する材料である、請求項1~25のいずれかに記載のキャリア。
【請求項27】
前記インクが、前記キャリアを前記別の物体に解放可能に結合するように選択される、請求項1~26に記載のキャリア。
【請求項28】
前記インクを硬化させた後、その硬化したインクを有するアイランドの部分の直径が、インクを塗布する前の前記部分の直径よりも小さい、同様である、または大きい、請求項1~27に記載のキャリア。
【請求項29】
硬化したインクを有するアイランドの先端部の直径が、インクのないアイランドの部分の直径よりも小さい、同様である、または大きい、請求項28に記載のキャリア。
【請求項30】
硬化したインクを有するアイランドの先端部の直径が、インクのないアイランドの部分の直径よりも大きく、それによりマッシュルーム形の支柱を形成する、請求項29に記載のキャリア。
【請求項31】
請求項1~30の少なくとも一つに記載のキャリアの使用であって、
着用可能な医療機器、人体または動物の体に着用される物体、人体に取り付け可能な装飾品のための、キャリアの使用。
【請求項32】
物体に結合させるための、請求項1~30のいずれかに記載のキャリアの活性化方法であって、前記キャリアは、
‐ペイロードとのインターフェースであるバッキング基板と、
‐表面に複数のアイランドが配置されたパターン化された表面と、
を備え、
前記アイランドおよび前記バッキング基板の少なくとも一方がコンプライアント材料から作られており、
前記アイランドは、規則的または不規則に間隔を介したマイクロファイバーであり、
前記キャリアの前記マイクロファイバーの先端部を少なくとも部分的にインク容器に浸し、
インクを備えた前記キャリアの前記アイランドを物体上に配置し、
前記キャリアと前記物体の間に接着または結合を形成するように、前記インクの材料を硬化させる、
ステップを備えた、キャリアの活性化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着用キャリア、キャリアの使用、キャリアの活性化方法、およびキャリアの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体とのシームレスな統合と生理学的活動の長時間の記録の影響により、ウェアラブル医療システムに相当な注意が払われている。呼吸数、心拍数、体温、血圧などの重要なバイタルサインを継続的に監視することで、病気の早期診断とその後の治療を大いに支援することができる。
【0003】
この目的のために、物理センサ、電気化学トランスデューサ、および経皮薬物送達システムを備えた様々なウェアラブルペイロードが、機能性ナノ材料を柔軟な支持材料に組み込むことにより開発されてきた。近年、多機能ウェアラブルシステムが治療化合物の知覚とオンデマンド放出を同時に達成できることが示されている。ウェアラブル医療機器に関して顕著な進歩がすでになされているにもかかわらず、皮膚の粗い、曲線状の、柔らかく、きめのある表面へのそれらの機器のコンフォーマルな取り付けは依然として課題のままである。実際、身体信号のノイズのない、高感度で正確なモニタリングには、ウェアラブルシステムと皮膚の強力な接着が要求される。
【0004】
自然界は、複雑な表面への強力で信頼性の高い接着のための代替戦略を提供することができる。例えば、ヤモリは、細かい毛の密集した配列からなる接着パッドにより粗い表面に付着することができ、あるいはヒトデは化学接着剤の分泌により複雑な水中の表面に付着することができる。このような生物学的システムから発想を得て、化学接着剤、ヤモリから発想を得たマイクロファイバー、および膨張可能な先端部を備えたマイクロニードルアレイが、複雑な表面トポグラフィーへの強力な付着のために提案されている。
【0005】
しかし、それらの皮膚への接着性能は依然として疑わしい。たとえば、化学結合に基づく接着剤は、皮膚を刺激し、除去中に痛みを引き起こす可能性がある。ヤモリから発想を得た接着繊維は、滑らかな表面上で、強力で可逆的な接着を示すが、わずかに粗くて柔らかい表面上への接着は不十分である。一方、膨張可能な先端部を備えたマイクロニードルアレイは、適切な接着のために有害な皮膚穿孔を必要とする。
【0006】
最近では、皮膚への接着性を高めるために、柔らかい先端部と硬い繊維を備えたマイクロファイバー、低弾性率の小型化された吸引カップの設計、接着複合材料、極薄パッケージなどの代替アプローチが追求されている。ただし、複雑で多段階で時間のかかる微細加工プロセスが要求される。
【0007】
さらなる先行技術は、以下の特許文献1~5から周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2015/329473号明細書
【文献】国際公開第2009/046989号
【文献】米国特許出願公開第2010/280175号明細書
【文献】国際公開第2009/009749号
【文献】国際公開第2010/056543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この理由のため、本発明の目的は、人間または動物の皮膚に取り外し可能に取り付けることができるキャリアを提供することである。さらなる目的は、容易で費用効果が高く大量生産可能な方法により、コンフォーマル(conformal)で信頼性の高い皮膚接着性を有するキャリアを提供することである。本発明のさらなる目的は、ペイロードとの接続を促進または形成するキャリアを提供することである。本発明のさらなる目的は、キャリアがペイロードの機能的能力を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴を有するキャリアによって満たされる。
【0011】
接着用のそのようなキャリアは、トポロジーを有する表面、特に、人体または動物の体の一部などの時間変化するトポロジーを有する表面に取り付けられるように構成され、キャリアは、
‐ペイロードとのインターフェースであるバッキング基板と、
‐表面に複数のアイランド(islands)が存在するパターン化された表面と、
を備え、
アイランドおよびバッキング基板の少なくとも一方がコンプライアント材料(compliant material)から作られ、アイランドの自由表面の少なくとも一部が硬化性材料を含むインクでコーティングされ、インクはキャリアのアイランドを別の物体に結合させるように選択される。
【0012】
それらの少なくとも一方がコンプライアント材料から作られた、アイランドおよびバッキング基板の両方を有するキャリアを提供することにより、ゲルのキャリアと同様の良好な皮膚適合性を有し、繊維法を使用することにより達成可能なものよりも著しく優れたキャリアを得ることができ、同時に‐繊維構造のように‐優れた強度を持ち、キャリアの下の皮膚が呼吸、発汗することが可能な構造を得ることができるが、これは一般にゲル法では達成できない。
【0013】
これに関連して、コンプライアント材料は、表面の形状、好ましくはそれが取り付けられる表面の特性に適合するおよび/または一致するように、その形状に容易に適合する、すなわち変形させることができる材料の一種である。
【0014】
これに関連して、キャリアがどの身体部分に接続されているかに応じて、身体部分の皮膚が動く可能性が高いことに留意すべきである。これは例えば、キャリアが人間の胸に置かれている場合の人間の呼吸によるもの、あるいは、キャリアが関節の近くに置かれている場合、例えば、キャリアを使用してジュエリーを着用する場合などの皮膚の動きによるものである。時間によって変化する表面の他の形態は、例えば、指やつま先の爪によってもたらされる。これらは、人間や動物の呼吸と比較して比較的遅い速度で成長するが、表面の固有の粗さは時間とともに変化する。指の爪に装飾を結合させる結合剤(例は機密である)として、キャリアを使用する場合、本発明によるキャリアは、これらの変化を容易に補償することができる。
【0015】
さらに、キャリアは生物組織を非生物組織に接続するために使用でき、キャリアは粗い表面トポロジーを滑らかな表面トポロジーに接続するために使用でき、キャリアは湿った、特に濡れた表面を乾燥した表面に接続するためにも使用できることに留意されたい。キャリアはまた、柔らかい表面を硬い表面に接続し、比較的汚れた表面をきれいな表面に接続するために使用することもできる(逆も同様)。これらの用途は、キャリアが接続を形成する2つの物体間の差異をキャリアが補正できるようにするコンプライアント材料によるものである。これは、コンプライアント材料により、キャリアが取り付けられる表面の少なくとも1つのトポロジーへの適合が可能になるためである。
【0016】
キャリアの使用は、人間または動物の身体での使用に限定されるものではないことに留意されたい。例えば、ゴルフやテニスボールの表面にセンサと送信機を取り付けて、その飛行性能を分析するなど、他に多くの用途が考えられる。
【0017】
好ましくは、インクは、ペイロードと別の物体との間の接続を形成するように選択される。ペイロードは、物体の特性を判断したり、物体に機能を作用させたりするように構成できる。インクをそれぞれの特性および/または機能に合わせて調整することにより、インクを使用して、ペイロードへのおよび/またはペイロードからのそれぞれの特性および/または機能の伝達を強化することができる。
【0018】
これに関連して、インクおよびアイランドがペイロードとの機械的接続を形成し、機械的接続がペイロードによって測定される物体の特性を強化するように構成されていることが好ましい。そのような機械的接続は、特定の用途に応じて解放可能または解放不可能な接続とすることができ、ペイロードと物体の間のそれぞれの特性および/または機能のそれぞれの伝達の強化を可能にする。
【0019】
これに関連して、ペイロードは歪みセンサであり、インクとアイランドは、物体からペイロードに変形と応力を伝達するように構成される。このようにして、歪みセンサは、たとえば、脈動する物体の圧力脈動の大きさを測定するように構成することが可能であり、例えば、人間または動物の皮膚の下にある血管の圧力脈動を測定して、例えば、心拍数、血圧などを測定することができる。
【0020】
追加または代替として、ペイロードは電気センサであってもよく、インクおよびアイランドは、物体からペイロードに電気信号を送信するように構成される。例えば、送信される信号は、目下監視されている人間または動物の心臓の心電図の信号に関連する。
【0021】
追加または代替として、ペイロードは温度センサであってもよく、インクおよびアイランドは、物体からペイロードに熱パラメータを伝達するように構成される。例えば、人間または動物の体温は、キャリアを介して測定することができる。
【0022】
追加的または代替的に、ペイロードは化学センサであってもよく、インクおよびアイランドは、物体からペイロードへの化合物の流れを可能にするように構成される。たとえば、人間または動物の皮膚に存在する微量の化学物質は、皮膚からペイロードに伝達される。
【0023】
有利には、キャリアの個々のアイランドの間に存在する自由空間の液体透過性は、室温で、105~10-20[cm2]、特に101~10-10[cm2]の範囲で選択される、および/または、キャリアの個々のアイランドの間に存在する自由空間の気体透過性は、室温で、105~10-20[cm3・cm・cm-2・S-1・cmHg-1]、特に101~10-10[cm3・cm・cm-2・S-1・cmHg-1]の範囲で選択される。このようにして、キャリアは物体とキャリアの間の気体および/または液体の流れを強化することができる。
【0024】
好ましくは、コンプライアント材料は、可撓性材料、特に、表面のトポロジーに適合および/または適応するように選択された可撓性を有する材料である。
【0025】
特に時間によって変化する表面トポロジーに適合し、適応できるキャリアを提供することにより、人体または動物の体に取り付け可能なキャリアが利用可能となる。
【0026】
コンプライアント材料がバッキング基板およびアイランドの少なくとも1つを形成する可撓性材料であり、可撓性材料が10kPa~600MPaの範囲で選択されたヤング率を有する場合が好ましい。そのようなヤング率を有する材料は、それが取り付けられる表面の特定の形状またはトポロジーに適合できるように変形することが可能な固有の柔軟性を有する。
【0027】
有利には、アイランド間に空隙が存在し、任意で、空隙の表面積の、アイランドの表面積に対する比が、前記キャリア上のアイランドの密度を定義する(接着のために空隙の表面積が少ない方が好ましい)。空隙の表面積の、アイランドの表面積に対する比は、10-4:104から104:10-4の範囲、好ましくは0.01:100から100:0.01の範囲で選択され、最も好ましくは1:10~10:1の範囲で選択される。
【0028】
好ましい実施形態では、アイランドはバッキング基板と一体である、すなわち、アイランドは同じ材料で作られ、バッキング基板に解放不可能に結合される。代替的に、アイランドはバッキング基板に接続され、これは、それらが異なる材料によって形成され、基板の形成時に互いに接続されることを意味する。
【0029】
アイランドは、規則的または不規則に間隔を介した凹凸(asperities)である場合が好ましい。規則的な間隔の凹凸を形成することは、空隙の表面積の、アイランドの表面積に対する比を簡単な方法で事前に定義できることを意味する。一方、不規則な間隔の凹凸が選択される場合、そのキャリアは、例えば、人体の関節を有する領域に接続するために使用され、その領域では、凹凸の不均一な分布が関節周囲の領域へのキャリアの最良の付着を達成するのに有益である。
【0030】
凹凸が規則的または不規則な形状であり、凹凸が支柱(pillars)である場合が好ましく、支柱は立方体、ピラミッド形、球形、円筒形、円錐形、直方体、三角形または六角形であることが好ましい。好ましくは、凹凸は、任意で少なくとも実質的に円筒形の形状を有する支柱である。支柱として形成された凹凸は、一方で、簡単な方法で製造することができる。他方、支柱は、キャリアが適用される表面へのキャリアの適合性および/または適応性を促進するように容易に変形することができる。
【0031】
使用される支柱または凹凸のタイプに応じて、これらの直径対高さのアスペクト比は、10-4~104の範囲、好ましくは0.01~1000の範囲、最も好ましくは0.1~10の範囲、特に1~5の範囲で都合よく選択される。
【0032】
これに関連してアイランドの直径は、通常10nm~100mmのサイズ範囲、好ましくは0.1μm~1000μmのサイズ範囲で選択されることに留意すべきである。アイランドの高さは、通常10nm~100mmのサイズ範囲、好ましくは0.1μm~1000μmのサイズ範囲で選択される。キャリアのバッキング基板の幅(width)は、通常1μm~100cmの範囲で選択され、キャリアの幅(breadth)は、通常1μm~100cmの範囲で選択される。バッキング基板の厚さは、通常0.01μm~10cmの範囲で選択される。
【0033】
好ましくは、バッキング基板はペイロードとのインターフェースである。皮膚接着性フィルムのウェアラブルデバイスアプリケーションとして、これらは呼吸および心拍数モニタリング用のウェアラブル歪みセンサと統合することができる。歪みセンサの信号対雑音比(SNR)は、微小繊維皮膚接着フィルムの信号伝達が大幅に強化されているため、59.7(信号対雑音比)に大幅に改善される。
【0034】
アイランドおよびバッキング基板の少なくとも一方がフィラー材料を含む場合が好ましく、フィラー材料は好ましくは、有機、無機、金属、合金、セラミック、ガラス、ポリマー、ゴム、生体材料、複合材料、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、および前述の材料の組み合わせからなる部材の群から選択される。
【0035】
このようにして、さらなるタイプの材料をコンプライアント材料に導入して、表面に適合および/または適応できるだけでなく、キャリアに接続されたペイロードの機能を促進する機能化されたキャリアを提供できるように、キャリアを形成することができる。これは、ペイロードがキャリアに取り付けられた心電図または脳波センサなどのペイロードである場合に特に有益である。柔軟な材料に導電性粒子を含めると、皮膚からセンサへの心電図または脳波信号の伝達が強化される。
【0036】
好ましくは、アイランドおよび/またはバッキング基板の材料は、有機、無機、金属、合金、セラミック、ガラス、ポリマー、ゴム、生体材料、複合材料、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料および前述の材料の組み合わせからなる部材の群から選択される。そのような材料は取り扱いが簡単で、特定の用途に合わせたキャリアの生産を可能にする。
【0037】
キャリアの使用時に、アイランドの自由表面の少なくとも一部がインクでコーティングされる場合が好ましい。このインクは、キャリアが取り付けられる表面との境界面として使用される。インクは、一方で接着層として作用し、他方で物体の表面とのキャリアの適合性および/または適応性を高める層として作用する。本発明によるキャリアは、接着に適している。本明細書で特定されるインクは、好ましくはそのような接着剤である。
【0038】
使用するインクは、皮膚接着フィルムの適切なパターン形状と加工パラメータを選択すると、0.01kPa~10.000kPaの範囲、特に0.1kPa~1.000kPaの範囲の接着強度を実現できることに留意されたい。
【0039】
有利には、インクは、硬化性材料、すなわち、アイランドの材料、好ましくはその後キャリアが接続される物体にも架橋または接着を提供する材料を備え、硬化性材料は、アイランドと同じ材料、熱架橋性材料、光架橋性材料、水分架橋性材料、触媒架橋性材料、および酸化還元反応架橋性材料からなる部材の群から選択される。そのようなインクは、キャリアの物体への接続形態としてのインクの機能を促進する。
【0040】
キャリアのアイランドを別の物体に結合させるようにインクが選択されることが好ましく、インクは、キャリアを別の物体に解放可能に結合させるように選択されることが好ましい。例えば、電極を人体または動物の体に接続するためにキャリアを使用する場合、これらは解放可能な方法で有利に接続される。
【0041】
好ましくは、インクを硬化させた後、アイランドの硬化したインクを有する部分の直径は、インクを塗布する前のその部分の直径よりも小さい、同様である、または大きく、好ましくは、アイランドの硬化したインクを有する先端部の直径は、特にマッシュルーム形の支柱が形成されるように、アイランドのインクを含まない部分の直径よりも小さい、同様である、または大きい。このようにして、直径が減少したアイランドの部分を介して表面に適合および/または適応する能力を有するアイランドが作成され、アイランドの先端、すなわち表面に結合するように構成されたアイランドの領域では、キャリアと物体の間に良好な結合を可能にするように十分な表面積が提供される。
【0042】
これに関連して、本明細書で提示されるキャリアは再利用可能なキャリアであることに留意されたい。キャリアが再利用される毎にキャリア、またはアイランドの先端をインクに再浸漬して、架橋される能力を再活性化する必要があるだけである。これに関連して、キャリアの複数の先端部、または場合によってはすべての先端部さえも覆う架橋材料の連続膜が形成された場合でも、キャリアを使用することができる。アイランドおよび/またはバッキング基板のコンプライアント材料により、表面の形で存在する完全な先端部が、そのキャリアが取り付けられる表面に適合するおよび/または適応することを依然として可能にする。
【0043】
これに関連して、アイランドを前記インクに初めて浸す際に、アイランドのいくつかがインクを介して互いに接続され、複数の先端部を覆う架橋材料の連続膜が形成されてもよいことに留意されたい。
【0044】
上記を考慮して、乾燥した皮膚および濡れた皮膚へのウェアラブルセンサの強力な接着のための新しいアプローチが提案されている。好ましくは、マッシュルーム・ヘッド形の生体適合性ビニルシロキサン先端部が施されたエラストマーマイクロファイバーで構成された複合微小繊維接着フィルムが利用可能にされる。粘性のあるビニルシロキサン先端部を皮膚表面に直接架橋すると、形状適応性が向上するため、接着性能が大幅に向上し、それによりウェアラブル歪みセンサの出力信号品質が大幅に向上する。
【0045】
さらなる態様によれば、本発明は、着用可能な医療機器、人体または動物の体に着用される物体、人体に取り付け可能な装飾品のための、本明細書の教示によるキャリアの使用に関する。
【0046】
キャリアに関連して説明した利点は、キャリアの使用にも当てはまる。
【0047】
さらなる態様によれば、本発明は、物体に結合させるためのキャリアの活性化方法に関し、キャリアは、
‐バッキング基板と、
‐表面に複数のアイランドが存在するパターン化された表面と、
を備え、
アイランドおよびバッキング基板の少なくとも一方がコンプライアント材料から作られており、この方法は、
キャリアのアイランドを少なくとも部分的にインク容器に浸し、
インクを備えたキャリアのアイランドを物体上に配置し、
キャリアと物体の間に接着または結合を形成するように、インクの材料を硬化させる、
ステップを備える。
【0048】
キャリアに関連して説明した利点は、キャリアの活性化方法にも同様に当てはまる。
【0049】
更なる態様において、本発明は、キャリアの作成方法に関し、キャリアは、
‐バッキング基板と、
‐表面に複数のアイランドが存在するパターン化された表面と、
を備え、
アイランドおよびバッキング基板の少なくとも一方がコンプライアント材料から作られており、この方法は、
‐キャリア上に形成されるアイランドの形状に類似するキャビティが形成された金型(mold)を提供し、
‐少なくとも金型のキャビティに第1の材料を充填し、
‐任意選択的に、第1および第2の材料のうち少なくとも一方がバッキング基板を形成する、第1の材料の上に第2の材料を設け、
‐バッキング基板の上部にパターン化された表面を形成するように、第1の材料を硬化させる、
ステップを備え、この方法は、以下のさらなるステップ:
キャリアのアイランドを少なくとも部分的にインク容器に浸し、
その上にインクを備えたキャリアのアイランドを物体上に配置し、
キャリアと物体の間に接着または結合を形成するように、インクの材料を硬化させる、
のうち少なくとも1つを含む。
【0050】
キャリアに関連して説明された利点は、キャリアの作成方法にも同様に当てはまる。
【0051】
このようにして、生物から発想を得た複合マイクロファイバーの、柔らかくて質感のある皮膚の階層的トポグラフィーに対する、優れた適合と接着のための簡単な方法が、そのキャリアの作成方法によって利用可能となる。好ましくは柔らかくて伸縮性のある皮膚接着性マイクロパターンは、特にコンフォーマルなマッシュルーム形のビニルシロキサン(VS)先端部が施されたポリジメチルシロキサン(PDMS)マイクロファイバーで構成される。粘性のあるVS先端部を皮膚表面に直接架橋すると、マルチスケールの粗さの皮膚への優れた形状適合性により、皮膚への接着を大幅に強化できることが示されている。
【0052】
本発明のさらなる実施形態は、以下の図面の説明に記載される。本発明は、実施形態によって、および示される図面を参照して、以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】A)皮膚接着フィルムの製造プロセス。B)生物学上の人間の前腕の皮膚表面の3Dレーザー走査顕微鏡画像。C)人工皮膚レプリカに取り付けられた接着フィルムの断面SEM画像。D)皮膚の平面領域から剥離した後の接着フィルムの断面SEM画像。E)皮膚の様々な場所にある様々なファイバー先端部の構造を示す、マイクロファイバーの断面SEM画像。
図2】A)皮膚から剥離した後の異なるアスペクト比(AR)を有するアイランドのパターンの光学顕微鏡画像。B)皮膚から剥離した後の異なる予圧下のアイランドのパターンの顕微鏡画像。C)異なる厚さの粘性VS層にインク付けされたアイランドのパターンの顕微鏡画像。D)異なるプレ架橋時間後の、VSフィルムにインク付けされたマイクロファイバーの顕微鏡画像。
図3】皮膚に付着した複合微小繊維接着フィルムの力‐変位曲線および接着力測定。
図4】ヘルスケア用途のウェアラブル皮膚接着歪みセンサ。
図5】異なるARを持つPDMSマイクロファイバーの3Dレーザー走査顕微鏡画像。
図6】人工PDMS皮膚レプリカの3Dレーザー走査顕微鏡画像。
図7】様々な予圧圧力で皮膚に対して押し付けられた異なるARを有するマッシュルーム形マイクロファイバーの顕微鏡画像。
図8】異なる予圧圧力で皮膚に押し付けられたマッシュルーム形マイクロファイバーの顕微鏡画像(パターン形状:45~99μmの先端部直径、45μmのステム直径、90μmの高さ、および55μmの間隔)。
図9】異なるVS厚さを有する、皮膚に対して押し付けられたマッシュルーム形マイクロファイバーの顕微鏡画像(パターン形状:45~100μmの先端部直径、45μmのステム直径、90μmの高さ、および55μmの間隔)。
図10】薄いVSフィルムの異なるプレ架橋時間の後のフラットガラスに対して押し付けられたマッシュルーム形マイクロファイバーの顕微鏡接触画像(パターン形状:45~95μmの先端部直径、45μmのステム直径、90μmの高さ、および55μmの間隔)。
図11】接着特性のカスタム実験セットアップの写真。
図12】微小繊維および非構造化接着剤サンプルの接着比較。
図13】皮膚上の接着用フィルムの耐久性および生体適合性実験の結果。
図14】微小繊維接着フィルムの写真(図14A,14B参照)。C)乾燥肌と湿った肌で測定された微小繊維接着剤の接着比較。
図15】皮膚接着性微小繊維PDMSフィルムと統合された柔軟な歪みセンサの製造プロセス。
図16】伸長時のAgNP薄膜の微小亀裂伝播。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下において、同じまたは同等の機能を有する部品には同じ参照番号が使用される。コンポーネントの方向に関してなされた記述は、図面に示されている位置を基準にしてなされ、実際のアプリケーションの位置は当然異なりうる。
【0055】
図1Aは、キャリア10を作成するために必要なステップの概略図、特に、皮膚接着性微小繊維フィルムの製造プロセスを示す。この方法は、キャリア10に形成されるアイランド26の所望の形状に相補的なキャビティ14が形成された金型12を提供するステップを含む。この例において、金型12のキャビティ14を第1の材料16(PDMS)で満たすように、液体ポリジメチルシロキサン(PDMS)前駆体溶液が、まず円筒形のキャビティを備えた金型12に流し込まれる(ステップi)。
【0056】
本例では、第1の材料16はキャビティ14に流入するだけでなく、金型12の表面全体に分布して、バッキング基板20を形成するように使用される。これはステップiiに示される。200μm厚のバッキング基板20を得るために、過剰のPDMSをバーコーター22で除去した(ステップii)。
【0057】
バーコーター22を使用してバッキング基板20の厚さを規定すると、次に行われるステップは、第1の材料16を90°Cで1時間硬化させて(ステップiii)、バッキング基板20上(すなわち、バッキング基板の底面)にパターン化された表面24を形成する硬化ステップである。PDMS前駆体溶液を硬化させた後、均一に成形された円筒状マイクロファイバー(支柱26とも呼ばれるアイランド26)が得られる。支柱26は、キャリア10を金型12から離型すると見えるようになる(ステップiv)(これに関しては図5も参照)。
【0058】
コーティングステップ(ステップvi)を実行するために、次に、ビニルシロキサン(VS)前駆体溶液28の40μmの薄くて均質な層が、フィルムアプリケータ32(ステップv)によりガラスプレート30上にコーティングされ、キャリア10のアイランド26がインク付けされる前に部分的に架橋される。これに続いて、キャリア10のアイランド26が、VS前駆体溶液28の薄くて均質な層によって形成された硬化性インク28に少なくとも部分的に浸漬される。
【0059】
ステップviiを実行するために、アイランド26および先端部28aを有するキャリア10を物体34a上に配置し、インクはまだ完全に硬化せず、接着される物体34aの表面に適合および/または適応することができる。マイクロパターン化されたPDMSフィルム10は、このようにして、マイクロファイバー先端部28aへの粘性VS28の選択的な移動を可能にするように手作業でインク付けされる(ステップvi)。
【0060】
ステップviiは、先端部28aを備えたキャリア10のアイランド26を物体34a上に配置し、次いで、キャリア10と物体34aとの間に接着または結合を形成させるように、インク28aの材料を最終的に硬化させる、すなわち完全に硬化させる、組み合わされたステップを示す。
【0061】
粘性のVS先端部28aでコーティングされたマイクロファイバー(支柱26)が、物体の表面34aに適用された。本例では、物体として作用する皮膚表面34aに適用された。キャリア10の皮膚表面34aへの付着を助けるために、次いで、柔らかい発泡体36を微細パターン化されたフィルム状のキャリア10の裏側に配置し、階層的なスキントポグラフィーを有する物体に対する粘性VS先端部28aのコンフォーマルな接触を確実にするように、予圧を印加した(ステップvii)。これに関連して、予圧は0~25kPaの範囲で選択される。
【0062】
数分以内に、粘性のあるVS28aが皮膚表面34aおよびアイランド26に直接架橋され、強力な皮膚接着をもたらした。その遅い架橋と低い粘度により、PDMSがマイクロファイバー26の製造に利用され、それにより最適な形状と均質なマイクロパターンを備えたPDMS微細構造が可能になることに留意されたい。VSの速い架橋反応は、金型の不完全な複製を引き起こし、浅い凹面と凸面の微細パターンを生じさせる可能性がある。
【0063】
図1Aのviに示されるキャリア10は、人体または動物の体に取り付けられるように構成される。キャリア10は、バッキング基板20と、表面24に存在する複数のアイランド26を有するパターン化された表面24とを備え、アイランド24およびバッキング基板20は、同じ可撓性材料16、すなわちPDMSで作られる。空隙38がそれらのアイランド24の間に存在する。全てのアイランド26の自由表面はインク28でコーティングされ、インク28によりアイランド26の先端部28aを形成する。
【0064】
この例では、アイランド28はバッキング基板と一体であり、支柱26の形態で規則的に離間された凹凸である。図示の例では、支柱26のアスペクト比は少なくとも実質的に2である。しかしながら、例えばカーボンナノチューブが支柱26として使用される場合、凹凸26は、10-4~104の範囲で選択されるアスペクト比を有することができ、ZnOナノワイヤなどのその他のナノ構造の形態が使用される場合、好ましくは0.01~10000の範囲であり、シリコーンゴムなどのエラストマーが支柱26の材料として使用される場合、最も好ましくは0.01~1000の範囲、特に0.1~100の範囲であることに留意されたい。
【0065】
キャリア10の皮膚34aへの接着特性は、支柱26に使用される材料16に応じて支柱26のアスペクト比を操作することにより操作することができる。さらに、接着特性は、選択された支柱26の密度、すなわち、空隙38の表面積に対する支柱26の表面積の比、およびマッシュルーム形パターンのVS先端サイズ(図3D~F)によって影響を受ける可能性がある。
【0066】
さらに、バッキング基板20は、支柱26の材料とは異なる第2の材料から形成できることに留意されたい。例えば、バッキング基板20はPDMSで形成され、支柱26はそれぞれ小さな金属ワイヤ(図示せず)で形成されてもよい。次いで、それらの小さな金属ワイヤは、キャリア10を介して患者の皮膚34aへ、および患者の皮膚34aから電極またはその他の形態のセンサ(この点については図4を参照)へと、熱的および電気的に信号を伝達することができる。次いでセンサは、電極などのペイロードとのインターフェースとして機能するバッキング基板20に取り付けられる。
【0067】
アイランド26およびバッキング基板20の少なくとも一つは、フィラー材料を備えることができ、フィラー材料は、好ましくは、有機、無機、金属、合金、セラミック、ガラス、ポリマー、ゴム、生体材料、複合材料、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、および前述の材料の組み合わせからなる材料の群から選択されることに留意されたい。
【0068】
また、アイランドおよび/またはバッキング基板の材料は、有機、無機、金属、合金、セラミック、ガラス、ポリマー、ゴム、生体材料、複合材料、発泡体、織物材料、粒子材料、繊維材料、および前述の材料の組み合わせからなる部材の群から選択されることに留意されたい。
【0069】
好ましくは、アイランド26および/またはバッキング基板20を形成するコンプライアント材料は、可撓性材料である。可撓性材料は、10kPa~600MPaの範囲で選択されたヤング率を有する。例えば200GPaのヤング率を有する鋼などの金属とは対照的に、こうした材料は非常に柔軟である。
【0070】
これに関連して、インクは、好ましくは硬化性材料、すなわちアイランドの材料に接着または架橋を提供する材料を含み、硬化性材料は、アイランドと同じ材料、熱架橋性材料、光架橋性材料、水分架橋性材料、触媒架橋性材料、酸化還元反応架橋性材料、およびそれらの組合せからなる部材の群から選択される。このようにして、キャリアのアイランドを別の物体に接着または結合させるようにインクが選択される。
【0071】
VS(ビニルシロキサン)は、皮膚接着に影響を及ぼしうる幾つかの特徴により、皮膚インターフェース材料28a,28bとして選択される。第一に、VSは生物医学用途に開発および承認されている(例えば、歯科印象の形成)。実際、その個々の成分(ベースおよび触媒)も前駆体溶液も、生体適合性の問題を引き起こさない。したがって、皮膚34a上で直接架橋した後でも、皮膚または組織の刺激を防ぐ。第二に、この2成分材料は、PDMSやEcoflexなどの他のエラストマーよりもはるかに速い架橋反応速度を有する。その結果、室温で数分以内に完全に架橋される。第三に、その適切な粘度により、正常な移動パターン形成プロセスとテクスチャ/粗さの適合が可能となる。最後に、これはシリコーンゴムのファミリーに属し、ベースPDMSマイクロファイバーとの共有結合を可能にする。
【0072】
前述の方法を使用して形成されたキャリアは、柔軟な材料でできている。これは、特定の表面トポロジーおよび/または表面特性との接続を可能にする材料から形成されることを意味する。これに関連して、それは、生体組織と非生体組織の間、粗い表面トポロジーと滑らかな表面トポロジーの間、湿潤した、特に湿った表面と乾燥した表面の間、柔らかい表面と硬い表面の間、比較的汚れた表面と清潔な表面の間、およびその逆の間に接続点を形成する。
【0073】
これらの様々な用途は、キャリアのコンプライアント材料が、互いの間に接続を形成する2種類の材料間の違いを補正することを可能にするように利用可能となる。これは主に、コンプライアント材料がそれ自体の固有の変形を許容し、キャリアが取り付けられる表面の少なくとも一つのトポロジーにその構造を適合させることができるという事実による。
【0074】
図1Bは、前腕の皮膚表面34aの3次元(3D)レーザー走査顕微鏡画像を示しており、皮膚がデュアルスケールの粗さ(マイクロからナノスケールまで)を有することが示されている(これに関しては図6も参照)。さらに、皮膚表面34aは、約104.2μmの垂直粗さを有する相互接続された微小の溝によって分離された0.4μmの平均表面粗さを有するアイランド状の平面領域から構成される。実際、皮膚の主な接着の課題の一つは、皮膚表面34aの高い、多くの長さスケールの粗さへの適合である。
【0075】
図1Cは、皮膚レプリカ34bに取り付けられた複合マイクロファイバー接着フィルム10の代表的な断面走査電子顕微鏡(SEM)画像を示し、接着フィルム10と皮膚レプリカ34bとの間のコンフォーマルな界面を示している。さらに、PDMSマイクロファイバー26は荷重伝達成分として作用し、架橋されたVS先端部28bは皮膚への強力な接着を提供する。
【0076】
図1Dは、皮膚の平面領域から剥離した後の接着フィルムの断面SEM画像を示し、最適な形状の先端部を持つマッシュルーム形の繊維を示している。図1Eは、マイクロファイバー26の断面SEM画像を示し、皮膚上の異なる位置の異なるファイバー先端部28bの構造を示す。2番目の繊維は皮膚表面34aの微小溝から分離され、3番目の繊維は平面領域に適合している。図1C~Eに示すスケールバーは100μmである。
【0077】
これに関連して、マッシュルーム形のマイクロファイバー26は、ファイバー26が少なくともその中央領域で先端部28bの直径と比較して減少した直径を有することを意味することに留意すべきである。先端部28bでの直径の増加は、支柱26の先端部28aをインク28でコーティングすることによってもたらされる。
【0078】
図1Dに示すように、粘性VS28aが皮膚34aの平面領域と直接架橋されたときに、最適な先端28b形状を有するマッシュルーム形のマイクロファイバー26が形成された。さらに、粘性のVS先端部28aのインクは、その架橋の前に皮膚の微小溝の空間を完全に満たした(図1E)。したがって、提示されたマイクロパターン化された接着フィルム10は、皮膚のマイクロスケールおよびナノスケール粗さの両方と密接な接触を確立することができる。
【0079】
図2は、アスペクト比AR、予圧、層厚、プレ架橋時間(precrosslinking duration)を含む、プロセスパラメータの最適化を示す。この点で、PDMSマイクロファイバー26のアスペクト比(AR)、適用される予圧圧力、粘性VSの層厚、およびプレ架橋時間を変えることにより、PDMSマイクロファイバー26の構造的完全性、および架橋VS先端部28bの形状適応を最適化するように更なる実験が行われた。この目的のために、以下で説明するように、全ての接着剤サンプルの表面トポロジーを画像化し、マイクロファイバーの潜在的な座屈/崩壊を利用し、皮膚およびガラスからの完全な剥離後のインク付き先端部の接触品質を調査した(図2、表1、および図7~10参照)。
【0080】
図2Aは、皮膚34aからの剥離後の異なるARを有するパターンの光学顕微鏡画像を示す。ARが2のマイクロファイバー26は、適度な予圧を加えることにより、皮膚の複数の長さスケールの粗さに対して適切な適合を達成することが観察された。ARが1のマイクロファイバー26は、皮膚の微小溝と部分的な接触しか示さなかったが、ARが3.5のマイクロファイバー26は、曲げ剛性が不十分であるため、小さな予圧でも座屈した(図2Aおよび図7参照)。
【0081】
一方、15kPaの中程度の予圧は、ARが2のマイクロファイバーで作られた微細パターンの最適値であるように見え、皮膚の粗さに完全に接触できるようになった。図2Bは、皮膚34aからの剥離後の異なる予圧圧力下のパターンの顕微鏡画像を示す。図2Bに示されるように、15kPaの予圧が皮膚接着フィルム10に加えられたとき、均質で大きなマッシュルーム形のVS先端部28bが形成された。対照的に、小さくて球状の架橋VS先端部28bは不十分な予圧の下で形成され、予圧が20kPaを超えると微細パターンが部分的または完全に崩壊した(図2Bおよび図8参照)。
【0082】
図2Cは、皮膚34aからの剥離後、異なる層厚を有する粘性VS層にインク付けされたパターンの顕微鏡画像を示す。35~45μmの範囲の層厚を有する粘性VSフィルム28は、均質で大きなマッシュルーム形の先端部28bをもたらした(図2C)。しかし、より薄い層の場合、マイクロファイバー26の先端部28bに移動する粘性VSの量は少なく、強い皮膚接着には不十分であった(図2Cおよび図9参照)。
【0083】
さらに、層の厚さが繊維の高さに近づくか、または超えたとき、マイクロファイバー26が粘性VSフィルム28に完全に浸漬された。加えて、30~60秒が、高スループットのインク付けおよび移動パターニングプロセスの理想的なプレ架橋時間範囲であることが判明した(図2Dおよび図10を参照)。図2Dは、異なるプレ架橋時間後の、VSフィルムにインク付けされ、その後フラットガラススライドに押し付けられたマイクロファイバーの顕微鏡画像を示す。最適なプロセスパラメータは破線の境界線で示される。図2Dに示されるスケールバーは200μmに相当する。
【0084】
より短いプレ架橋時間では、初期粘度は低く、マイクロファイバー26の先端部28bに移った粘性VSの量は多く、それにより連結されたマイクロファイバー先端部がもたらされた。一方、長いプレ架橋時間では粘度は高く、マイクロファイバーの先端部にVSは移動しなかった(図2Dおよび図10を参照)。
【0085】
図3は、皮膚34aに取り付けられた複合微小繊維接着フィルム10の力‐変位曲線および接着測定値を示す。接着フィルム10の接着性能を定量的に分析するために、面積1cm2の円形接着剤サンプルを人の前腕部の皮膚34aに取り付け、その力‐変位曲線をカスタマイズされた接着セットアップで測定した(接着特性のカスタム実験セットアップの写真を示す図3Aおよび11を参照)。
【0086】
これに関して、図3Aは、生物学的ヒト前腕部34aに取り付けられた皮膚接着フィルム10の、接着実験の後退サイクル時の写真を示す。破線は、接着フィルムと皮膚の間の境界線を示す。示されるスケールバーは1cmに相当する。
【0087】
図3Bは、95μmの平均VSマッシュルーム形先端部28b直径を有するPDMSマイクロファイバーアレイの力‐変位曲線を示す(図3Bの挿入図を参照)。比較のために、非構造化サンプル(つまり、VS界面層を介して皮膚34aに取り付けられた平坦なPDMSフィルム)の接着性能(図3Bの挿入図を参照)も測定した。予圧圧力、粘性VS層の層厚、および架橋時間は、両方のサンプルで同じに保たれた。微小繊維および非構造化サンプルの接着力(Foff)は、それぞれ1.7および0.7Nであり、微小繊維接着フィルムを使用した皮膚接着の著しい向上を示した。マッシュルーム形の繊維の高い接着性能は、繊維26の先端部28bの界面でのより均一な応力分布に由来する。皮膚34aから剥離する前の微小繊維サンプルのより長い後退距離は、マッシュルーム形繊維の改善された負荷分散をさらに確証する。
【0088】
図3Cは、異なるVS先端部28b直径を有する微小繊維接着フィルム10の接着強度を示す。VS先端部28bの直径は、粘性VSフィルム28の層厚を調整することにより制御された。接着強度は、先端28bの直径に依存していた。さらに、より大きなVS先端部28bサイズを有する微細パターン化接着フィルム10は、より高い接着強度をもたらした。18kPaの最大接着強度は、平均VS先端部直径が95μmのマイクロファイバーアレイによって達成された。VS先端部が大きいマイクロファイバーの接着強度が高いのは、最適化された形状寸法と、粗さおよびテクスチャの適合が強化されたために負荷分散が改善されたためである。
【0089】
図3D~Gは、(D)60μm、(E)85μm、(F)95μm、および(G)非構造化サンプルの平均先端部直径28bを有する対応するサンプルの顕微鏡画像を示す。示されるスケールバーは100μmに相当する。図3Hは、複数のインク付けおよび取り付けプロセス後の皮膚接着フィルム10の接着強度を示す。図3I~Kは、J)1回目、K)2回目、およびL)3回目の付着サイクル後のマイクロファイバー26の顕微鏡画像を示す。示されるスケールバーは100μmに相当する。
【0090】
皮膚34aへの粘性VS先端部28aの直接的な架橋による接着フィルム10の顕著な接着改善性を確認するために、架橋VSマッシュルーム形先端部28bを有する微小繊維PDMSフィルム10の接着強度を測定した。皮膚表面に直接架橋した接着フィルム10の接着強度は、マッシュルーム形の先端部が皮膚に適用される前に完全に架橋した微小繊維PDMSサンプルの接着強度よりも200倍高かった(以下で説明する図12を参照)。皮膚の接着におけるこの顕著な改善は、完全な架橋の前に、粘性のあるVS先端部28aが皮膚表面34aに高形状に適合されているためである。接着フィルム10の再利用性は、微小繊維接着フィルム10の複数回のインク付けおよび押し付けによって試験された。
【0091】
サンプルの接着強度は、1回目、2回目、3回目のインク付けでそれぞれ14、10、8kPaであった。実際、3サイクルのインク付けの後、接着強度は非構造化サンプルの接着強度に近づいた(図3H)。さらに、各インク付けおよび押し付けサイクル中に、より多くの架橋VSがマイクロファイバー先端部28bに蓄積され、部分的または完全なVSフィルムがマイクロファイバー上に形成され、接着フィルムの接着改善性に対するマッシュルーム形状のファイバーの寄与度を低下させた(図3I~Kを参照)。
【0092】
製造された皮膚接着フィルムの耐久性と生体適合性を調査するために、追加の実験が行われた。微小繊維10および非構造化10’サンプルの両方を、人の前腕の皮膚34aに付着させ、繰り返し曲げ伸ばしサイクルにかけた。微小繊維皮膚接着性フィルム10は、300回以上の負荷サイクル後に強固な皮膚接着を示したが、非構造化サンプルは100サイクル後に皮膚から部分的に剥離し始めた(図13参照)。
【0093】
サイクル負荷試験および皮膚34aからの微小繊維接着フィルム10の剥離の後、皮膚表面に刺激は観察されなかった。長期使用時の微小繊維接着フィルム10の皮膚刺激の可能性をさらに研究した。微細パターン化された接着フィルム10が24時間以上皮膚34aに取り付けられたとき、皮膚の刺激はなかった(以下で議論される図13を参照)。特に、提示された微小繊維接着フィルムは、濡れた皮膚表面にも高い接着強度と耐久性で接着することができた(図14を参照)。したがって、提示された複合微小繊維皮膚接着フィルム10は、高い耐久性と最小限の刺激で強力な皮膚接着を提供することができた。
【0094】
図4は、バッキング基板20におけるペイロード40の適用を示す。この例では、これらは、ヘルスケア用途のウェアラブルな皮膚接着歪みセンサ40である。図4Aは、微小繊維接着フィルム10の上部に作成された歪みセンサ40の写真を示し、装置10の高い柔軟性を示している。以下において、皮膚接着性フィルム10の有用性は、それらを小さな皮膚変形の検出のための柔軟な歪みセンサ40と統合することにより実証されるであろう。銀ナノ粒子(AgNP)薄膜ベースの歪みセンサ40は、マイクロパターン化されたPDMSフィルム10の上部に作成された(図15を参照)。
【0095】
統合された皮膚接着センサ40は柔軟性が高く、皮膚に簡単に取り付けることができた(図4A)。図4Bは、繰り返しの伸縮サイクル下での歪みセンサのプロトタイプの電気機械的挙動を示す。歪みセンサ40は、その抵抗が同時に記録されている間、約1.8Hzの周波数の鋸歯状歪みプロファイルにさらされた。歪みセンサ40は、大きな抵抗変化がある0.1%から1%までの歪みを正確に測定することができる。歪みセンサ40のゲージ率(GF)‐適用した歪みで割った抵抗の相対変化‐は、0~1%の線形範囲で約767であり、歪みセンサの超高感度を示す。歪みセンサ40の超高GFは、伸縮サイクル下のAgNP薄膜の微小亀裂開閉メカニズムに起因していた(図16を参照)。
【0096】
図4Cは、人間の胸部領域34aに取り付けられた微小繊維皮膚接着歪みセンサ40の応答を示す。呼吸時の胸部の膨張/収縮により、センサの抵抗は吸気/呼気で急速に増加/減少した。さらに、微小繊維皮膚接着性歪みセンサは、通常の呼吸と深呼吸とをかなりの信号差で区別できる。異常な呼吸速度と時間的パターンのリアルタイム検出は、喘息、心不全、塞栓症などのいくつかの疾患の早期診断に役立つ。
【0097】
図4Dの挿入図は、手首34aの橈骨動脈に取り付けられた微小繊維皮膚接着歪みセンサ40を示す。歪みセンサ40は、提示された複合微小繊維接着フィルム10の高い接着強度のために、皮膚34aに強く接着していた。大きな歪み条件下でも、皮膚34aからのセンサ40の剥離または層剥離はなかった。
【0098】
図4Dは、1分間にわたる血流パルスの記録を示し、毎分84拍の頻度の心拍数を示している。手の動きに起因するセンサ40のベース抵抗の変化が見られたが、センサは高感度で血流圧力を記録することができた。
【0099】
図4Eは、10秒間の皮膚接着センサ40の応答を示しており、動脈パルスの波形パターンが検出可能であったことを明確に示している。さらに、収縮期と拡張期の両方の位相とピークが、センサ出力信号によって正常に識別された(図4F)。この波形は、対応する静脈における30歳代の成人の橈骨血流パルス(radial blood flow pulse)に対応する。収縮期と拡張期のピークの間の時間遅延(ΔT)は約220ミリ秒であった。得られた動脈硬化指数(S.I.=ボランティアの身長/ΔΤ)と反射指数(R.I.=P2/P1×100)は、それぞれ健康な人の正常範囲内で、それぞれ約7.5および43.7%であった。
【0100】
出力信号の増幅に対するセンサ取り付け方法の影響をさらに調査した。微小繊維皮膚接着歪みセンサ40を、市販の感圧医療用テープ、VS先端部28aを備えた微細パターン化されたPDMS10、および100μm厚の平坦なVSフィルム28に完全に浸漬させた微細パターン化PDMS10によって、手首の橈骨動脈に取り付けた。皮膚接着センサ40の補強を避けるために、センサ40の2つの端部のみが医療テープ(図示せず)によって皮膚に取り付けられた。
【0101】
センサ40の接触スポットは、潜在的な信号変動を最小限に抑えるために同一に維持された。図4Eに示すように、医療用テープでセンサを取り付けた場合、センサ出力に小さなピークが見られた。これは、接触面が悪く、裸のマイクロファイバーの接着が不十分なため、センサへの皮膚変形の弱い伝達を示している。他方、VS先端部28bを有する微小繊維皮膚接着フィルム10は、その柔らかさ、配列された微細支柱構造、および個々のマイクロファイバーの皮膚表面への強力な付着のために、歪みセンサ40へ最大の信号伝達を示した。センサ40が完全浸漬プロセスによるキャリア10を介して皮膚34aに取り付けられると、不規則な波形パターンが記録された。この低い信号品質は、固化したVSフィルムの柔軟性の低下によるものと考えられ、センサ構造全体の剛性を高めている。実際、VS先端部28bを持つ微細構造サンプルは、VS先端部28b間の接触の分裂により、完全に浸漬されたサンプルよりも柔らかく、信号伝達が向上した。
【0102】
微小繊維接着フィルムで取り付けられた歪みセンサの信号増強を定量的に評価するために、センサの信号対雑音比(SNR)を次のように計算した:
SNR=avg(ΔR)/σbaseline
ここで、avg(ΔR)は橈骨動脈拍動の測定中のセンサの平均抵抗変化であり、σbaselineはセンサがひずみに対応していないベースライン信号の標準偏差である。本発明者らの微細パターン化接着フィルム10、医療用テープ、および完全浸漬法によって取り付けられた歪みセンサ40のSNRは、それぞれ59.7、10.2、および8.3であった。歪みセンサ40のSNRの著しい改善は、マイクロパターン化された接着フィルム10の柔らかさと柔軟性に加えて、その高い接着強度に起因する。
【0103】
前述のものでは、高性能の皮膚接着のための新規のアプローチが提示された。接着フィルム10の高い接着強度は、向上した粗さおよびテクスチャ適合、ならびに架橋されたVS先端部28bが施されたPDMSマイクロファイバー26の負荷分散に起因することが見出された。柔軟性が高く、順応性があり、生体適合性のある微小繊維皮膚接着フィルムは、ヘルスケアモニタリングアプリケーションにおいて皮膚34aとの強力な結合と高い信号強化を可能にするように、ウェアラブルな柔軟歪みセンサ40と容易に統合された。皮膚34aに加えて、提案された複合微小繊維接着フィルム10は、様々な乾燥および湿潤環境条件下で、複雑なトポグラフィーおよび広範囲の表面粗さ、長さスケールを有するその他の表面に付着させることができた。
【0104】
図5は、異なるARを有するPDMSマイクロファイバー26の3Dレーザー走査顕微鏡画像を示す。図5Aは、ARが1の円筒形パターンを示す(45μmの先端部直径、47μmの高さ、および55μmの間隔)。図5Bは、ARが2の円筒形パターンを示す(45μmの先端直径、90μmの高さ、および55μmの間隔)。図5Cは、ARが3.5の円筒形パターンを示す(41μmの先端部直径、146μmの高さ、および59μmの間隔)。
【0105】
図6は、人工PDMS皮膚レプリカ34bの3Dレーザー走査顕微鏡画像を示す。図6Aは、皮膚の階層的トポグラフィーを示すポジティブレプリカ34bを示す。図6Bは、104.2μmの垂直粗さを有する微小溝の微視的粗さを示す。図6Cは、表面粗さの平均値が0.4μmである、表皮領域のナノスケールの粗さを示す。
【0106】
表1は、最も適切な(白)、中位の適切な(灰色)、および適切でない(暗い灰色)条件を示す、体系的にテストされたパラメータの概要を示す。ARに続いて他のパラメータによる最適化が開始された。
【0107】
【表1】
【0108】
図7は、皮膚34aに対し、様々な予圧圧力で押し付けられた異なるアスペクト比(AR)を有するマッシュルーム形マイクロファイバー28bの顕微鏡画像を示す。図7Aは、ARが1であり、25kPaの予圧圧力が印加されたマッシュルーム形繊維28bを示す(先端直径45μm、高さ47μm、および間隔55μm)。図7Bは、ARが3.5であり、5kPaの予圧圧力が印加された、潰れたマイクロファイバー26を示す(先端直径41μm、高さ146μm、および間隔59μm)。スケールバー:200μm。
【0109】
図8は、皮膚34aに対し、異なる予圧圧力で押し付けられたマッシュルーム形マイクロファイバー28bの顕微鏡画像を示す(パターン形状:45~99μmの先端直径、45μmのステム直径、90μmの高さ、および55μmの間隔)。図8A~Cは、部分的にマッシュルーム形の繊維28bを示す。図8Dは、アレイ全体に亘るマッシュルーム形のパターンを示す。図8E,Fは、それぞれ20kPaおよび25kPaの予圧を印加したときのマッシュルーム形のパターンと崩壊したパターンを示す。スケールバー:200μm。
【0110】
図9は、異なるVS厚さを有し、皮膚34aに対して押し付けられたマッシュルーム形マイクロファイバー28bの顕微鏡画像を示す(パターン形状:45~100μmの先端直径、45μmのステム直径、90μmの高さ、および55μmの間隔)。図9A,Bは、小さいマッシュルーム形の繊維を示す。図9C~Eは、VS先端部が大きいマッシュルーム形繊維28bを示す。図9Fは、繊維先端部の上部にフィルムを有する相互接続されたマッシュルーム形繊維28bを示す。図9GおよびHは、部分的または完全に浸漬された繊維を示す。スケールバー:200μm。
【0111】
図10は、薄いVSフィルム10の異なるプレ架橋時間後の、フラットガラスに対して押し付けられたマッシュルーム形マイクロファイバー28bの顕微鏡接触画像を示す(パターン形状:45~95μmの先端部直径、45μmのステム直径、90μmの高さ、および55μmの間隔)。図10Aは、相互接続されたマッシュルーム形繊維28bを示す。図10B~Dは、大きな先端部を有するマッシュルーム形マイクロファイバー28bを示す。図10E,Fは、先端部直径が減少したマッシュルーム形マイクロファイバー28bを示す。図10G,Hは、材料が移っていない円筒状繊維26を示す。示されるスケールバーは200μmに相当する。
【0112】
図11は、接着特性のカスタム実験セットアップの写真を示す。これに関して、図11は、ビデオカメラ102(y軸ステージの下)(Grasshopper(登録商標)3, Point Grey Research Inc.)を備えた倒立光学顕微鏡100(Axio Observer A1,Zeiss)を示し、接触境界面の視覚化を可能にする。接着力は、分解能5nm、最高速度10mm・s-1の、z軸方向のコンピューター制御の高精度ピエゾモーションステージ106(LPS-65 2", Physik Instrumente GmbH & Co. KG)に取り付けられた、高感度ロードセル104(GSO-1 K、Transducer Techniques(登録商標))によって記録された。
【0113】
y軸方向については、分解能1μmおよび50mm・s-1までの高い最高速度を有する長距離モーターステージ108(M-605 2DD, Physik Instrumente GmbH & Co. KG)が使用された。x軸方向とy軸方向の精密な位置決めは、手動のxyステージ(NFP-2462CC, Positionierungstechnik Dr. Meierling)によって行われ、傾斜補正は2つのゴニオメータ112(M-GON65-U, Newport)によって調整された。ピエゾステージのモーション制御とデータ収集は、カスタマイズされたLinuxコード(Ubuntu(登録商標), Canonical Ltd.)によって実現された。
【0114】
このプログラムにより、予圧、x軸方向およびz軸方向の速度と変位、および接触時間の制御が可能となった。ピエゾステージの変位は、モーターコントローラ(Nexact(登録商標)RRE-861, Physik Instrumente GmbH & Co. KG)を介して制御された。ロードセル104は、シグナルコンディショナー(BNC-2110, National Instruments)を介してコンピューターにリンクされ(両方とも図示せず)、力測定からの電圧信号はデータ集録ボード(PCle-6259, National Instruments)を介して転送された。
【0115】
前述のように、微小繊維接着パッチ10を皮膚34aに取り付けた。実験の前に皮膚34aを剃毛し、洗剤で洗浄したことに留意されたい。接着を特徴付けるために、マイクロパターン化接着フィルム10をロードセル104に接続する必要がある。直径7mmの丸いガラスディスクが取り付けられたC字型ホルダーを使用した。ガラスディスクにより、接着用システムを柔軟に保つために、接着剤パターン10の中心のみがホルダーに接続されることを確実にした。
【0116】
ホルダーとパターン化された接着剤10との間の強い結合のために、接着促進剤によるホルダーの表面処理が必要であった。シリコーン接着促進剤(Sil-Poxy(登録商標), Smooth-On Inc.)の厚さ50μmの層を、フィルムアプリケータ(Multicator 411, Erichsen GmbH & Co. KG)によって作成し、丸いガラスディスクが取り付けられたホルダーをインク付けし、室温で30分間硬化させた。
【0117】
次のステップでは、VSポリマーを結合材料として使用した。フィルムアプリケータにより、ガラスプレート上に厚さ50μmの薄いVSフィルムが作成された。
【0118】
処理されたホルダーをフィルムに浸し、取り付けられた微小繊維接着剤10の裏側に配置した。4分後、VSポリマーが完全に重合し、ホルダーが接着フィルム10に取り付けられた。接着剤とホルダーが取り付けられた前腕をロードセルの下に配置し、ロードセルに取り付けられた別のC字状のホルダーに幅広のゴムリングを介して連結した。より固定した連結は、抑制するのが難しい小さな腕の動きでサンプルの分離を引き起こすため、この柔軟な構成が極めて重要であることに留意されたい。
【0119】
さらに、この装置は、手動ステージおよびゴニオメータによる正確なアライメントを行う実現性を提供する。x軸方向とy軸方向の位置決めは、手動のxyステージによって行われ、垂直方向の後退を保証するために2つのゴニオメータによって傾きが修正された。最後に、粘着パッチが皮膚から剥がれるまで、ホルダーを100μm/sで後退させた。実験は、温度と湿度が制御された実験室で行われ、それぞれ20~25°Cおよび25~35%の範囲であった。各データポイントに対して、最低5回の測定が行われた。
【0120】
図12は、粘性VP層が皮膚表面34aに直接架橋される場合と、VS層が皮膚34aに適用される前に完全に架橋した場合の、微小繊維サンプルおよび非構造化接着剤サンプルの接着比較を示す。
【0121】
図13は、皮膚34a上の接着フィルム10の耐久性および生体適合性実験を示す。図13Aは、平坦な皮膚表面34aに付着した微小繊維10(下)および非構造化10'(上)サンプルの写真を示す。図13Bは、曲げ条件下での微小繊維10および非構造化10'サンプルの写真を示す。曲げ曲率は約0.21mm-1であった。図13Cは、100回の曲げ伸ばしサイクル後の皮膚34a上の微小繊維10および非構造化10'サンプルの写真を示す。図13Dは、300回の曲げ伸ばしサイクル後の皮膚上の微小繊維10および非構造化10'サンプルの写真を示す。図13Eは、微小繊維接着フィルム10がその取り付け直後に皮膚表面34aから除去されたときの皮膚表面34aの写真を示す。図13Fは、その付着の24時間後に微小繊維接着フィルム10を除去したときの皮膚表面34aの写真を示す。図13Gは、微小繊維接着フィルム10の除去の5時間後の皮膚表面34aの写真を示す(フィルムは、その付着の24時間にわたって皮膚に付着した)。スケールバー:1cm。
【0122】
図14Aは、予圧をかける前の湿った皮膚表面34a上の、VS先端部28aを有する微小繊維接着フィルム10の写真を示す。図14Bは、VS先端部を完全に架橋した後の湿った皮膚表面34a上の、VS先端部28bを有する微小繊維接着フィルム10の写真を示し、接着フィルム10の皮膚34aへの強い付着を示す。図14Cは、乾燥および湿潤皮膚34aで測定された微小繊維接着剤10の接着比較を示し、湿潤条件下でわずかに減少するが顕著な接着性を示す。
【0123】
図15は、皮膚接着性微小繊維PDMSフィルム10と一体化された柔軟な歪みセンサ40の製造プロセスを示す。微細パターン化PDMSフィルム10は、それぞれ約7および30mmの幅および長さを有する長方形に切断された。第1のステップで、液体Ecoflex50を次に、マイクロパターン化PDMSフィルム10のバッキング基板20上にドロップキャストした(図15-1を参照)。
【0124】
第2のステップ(図15-2を参照)で、ラテックスフィルム52を液体Ecoflex50の上部に置き、均一にプレスした。液体Ecoflex50を70°Cで2時間硬化させた後、ラテックスフィルム52をマイクロパターン化PDMSフィルム10に結合させた。
【0125】
これに続く第3のステップ(図15-3を参照)で、銀ナノ粒子(AgNP)(平均粒子サイズ:200nm、Sigma Aldrich)で作られた銀導電性ペーストをラテックス基板52にコーティングし、スチールブレードでランダムに磨いた。磨き処理により、ラテックスフィルム52の表面全体に均一なAgNPフィルム54が形成された。続いて、コーティングされた導電性フィルムを70°Cで30分間乾燥させた。
【0126】
ラテックスゴムがPDMSまたはExoflexよりも粗い表面を有するため、ラテックスゴムがバッキング基材20の上部に使用されたことに留意すべきである。平坦なPDMSまたはEcoflexフィルム上のAgNPフィルム54の完全な剥離と比較して、それらはラテックス基材の表面に強く付着していた。
【0127】
第4のステップ(図15-4を参照)では、銀ペースト(Sigma Aldrich)によってAgNPフィルム54の2つの端部に銅線58が取り付けられた。その後、銀ペーストを硬化させた。
【0128】
第5のステップ(図15-5を参照)では、導電性フィルム全体を液体Ecoflex60でカプセル化し、70°Cで2時間硬化させた。統合された歪みセンサ40は、Ecoflex60の最上層の硬化により達成された。
【0129】
第6の最終ステップ(図15-6を参照)では、本明細書に記載の第1の方法と同様に、支柱をインク28でコーティングして部分的に架橋した先端部28aを形成した。
【0130】
電気機械的挙動を評価するために、歪みセンサ40を電動移動ステージ(M-605 High-Accuracy Translation Stage, Physik Instrumente (PI))に固定し、センサ40に繰り返し伸縮サイクルを適用した。電気抵抗の対応する変化は、データ集録(DAQ)システム(USB X Series Multifunctional DAQ, National Instruments)で同時に測定した。事前の電気機械測定では、全ての歪みセンサ40を5%歪みに引き伸ばして、AgNPセンシングフィルムに微小亀裂を誘発させた。
【0131】
これに関して、図16は、3Dレーザー走査共焦点顕微鏡(Keyence, VK-X200 Series)によって追跡されたAgNPフィルム54の表面トポロジーを示す。特に、図16aは伸長前の表面を示し、図16bは5%引き伸ばしたときのAgNP薄膜中の微小亀裂の伝播を示す。図16に示されるスケールバーは200μmである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16