(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ボーラス送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
A61M5/142 508
(21)【出願番号】P 2019567288
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 US2018028112
(87)【国際公開番号】W WO2018226317
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-04-09
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514300557
【氏名又は名称】アヴェント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トゥルオング、へクター ダング
(72)【発明者】
【氏名】コーカー、ジャスティン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ポール
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077449(JP,A)
【文献】特開2011-125433(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013124(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーラス送達装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された、一定量の流体を受け取るためのリザーバであって、アクティベーションドーム及びリザーバシートによって画定された、該リザーバと、
前記ハウジング内に配置されたブラダーであって、前記リザーバから前記流体を受け取るために前記リザーバと流体連通した、該ブラダーと、
アクチュエータと、
前記流体を前記リザーバに供給するために前記リザーバと流体連通した入口導管と、
前記流体を患者に供給するために前記ブラダーと流体連通した出口導管と
、
前記リザーバ内に軸方向に配置され、かつ前記リザーバシート内のオリフィスを通って延びるピストンであって、近位端と遠位端とを有する、該ピストンと、
前記ピストンの前記遠位端の周囲、かつ前記リザーバシートの前記オリフィスの遠位側に対して配置されたシール部材であって、前記シール部材は、前記ピストンに沿って自由に摺動する、該シール部材とを備え、
前記アクチュエータは、前記リザーバと動作可能に連通し
、前記アクチュエータの操作により、前記ピストンが変位して前記シールが変位し、前記リザーバから前記ブラダーへの前記流体の流れ
が開始
され、
前記ブラダーは、前記流体を受け取ると拡張し、前記流体を投与するにつれて収縮することを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボーラス送達装置であって、
前記リザーバシートは、前記リザーバシートが前記アクティベーションドームに対して遠位かつ前記ブラダーに対して近位にあるように、前記アクティベーションドームと前記ブラダーとの間に配置されていることを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のボーラス送達装置であって、
前記ピストンの前記遠位端の周囲に配置された付勢部
材をさらに備え、
前記アクティベーションドームは前記アクチュエータ及び前記ピストンの前記近位端に接続され、前記アクチュエータを操作することにより、前記ピストンが変位して前記シール部材が変位し、前記リザーバから前記ブラダーへの前記流体の流れが開始されることを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項4】
請求項3に記載のボーラス送達装置であって、
前記リザーバは、前記リザーバ内の前記流体の体積の変化につれて変化する流体圧力を有し、
前記付勢部材は、前記リザーバが実質的に空になることによって、前記シール部材を前記リザーバシートの前記遠位側に対して押し当てるときに、前記リザーバの前記流体圧力に打ち勝つ付勢力を有することを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項5】
請求項3に記載のボーラス送達装置であって、
前記シール部材と前記付勢部材との間に配置されたカラーをさらに備えることを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のボーラス送達装置であって、
前記ハウジングは、前記ブラダーの前記拡張を制限するリブを画定することを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載のボーラス送達装置であって、
前記ブラダーは、近位コネクタと遠位コネクタとの間に延在し、
前記入口導管は、前記遠位コネクタと流体連通し、前記出口導管は、前記遠位コネクタと流体連通していることを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項8】
請求項
7に記載のボーラス送達装置であって、
前記遠位コネクタから前記リザーバに延びる内部導管であって、前記入口導管と前記リザーバとの間に流体連通を提供する、該内部導管をさらに備えることを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のボーラス送達装置であって、
前記アクチュエータの遠位方向の動きを制限するために、前記アクチュエータに画定された溝に捕まるストップをさらに備えることを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のボーラス送達装置であって、
前記アクチュエータは、当該ボーラス送達装置から前記患者への前記流体の放出を開始するように、前記患者によって操作可能であり、
前記アクチュエータは、前記流体を当該ボーラス送達装置から押し出すための最小限の力を必要とし、かつ、前記患者によって作動されると、前記患者によるさらなるアクションなしに、前記流体が当該ボーラス送達装置から前記患者へ流れるように構成されることを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載のボーラス送達装置であって、
当該ボーラス送達装置を自吸するために、前記アクチュエータを押し下げ位置に保持する取り外し可能なタブをさらに備えることを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項12】
注入アセンブリであって、
圧力下の流体を提供するように構成されたエラストマ製のポンプと、
前記ポンプからの連続的かつ実質的に一定の流量の前記流体を提供するための、前記ポンプと流体連通している連続流路と、
ボーラス用量の前記流体を送達するためのボーラス流路と、
前記ボーラス流路と流体連通し、前記ポンプから前記流体を受け取るように構成されたボーラス送達装置とを備え、
前記ボーラス送達装置は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された、一定量の流体を受け取るためのリザーバであって、アクティベーションドーム及びリザーバシートによって画定された、該リザーバと、
前記ハウジング内に配置されたブラダーであって、前記リザーバから流体を受け取るために前記リザーバと流体連通した、該ブラダーと、
患者によって操作可能なアクチュエータと、
前記流体を前記リザーバに供給するために前記リザーバと流体連通した入口導管と、
前記流体を患者に供給するために前記ブラダーと流体連通した出口導管と
、
前記リザーバ内に軸方向に配置され、かつ前記リザーバシート内のオリフィスを通って延びるピストンであって、近位端と遠位端とを有する、該ピストンと、
前記ピストンの前記遠位端の周囲、かつ前記リザーバシートの前記オリフィスの遠位側に対して配置されたシール部材であって、前記シール部材は、前記ピストンに沿って自由に摺動する、該シール部材とを備え、
前記アクチュエータは、前記リザーバと動作可能に連通し
、前記アクチュエータの操作により、前記ピストンが変位して前記シールが変位し、前記リザーバから前記ブラダーへの前記流体の流れ
が開始
され、
前記ブラダーは、前記流体を受け取ると拡張し、前記流体を投与するにつれて収縮することを特徴とする注入アセンブリ。
【請求項13】
請求項
12に記載の注入アセンブリであって、
前記ポンプは、最大
206.84kPa(30psi
)の圧力下で前記流体を提供することを特徴とする注入アセンブリ。
【請求項14】
請求項
12または
13に記載の注入アセンブリであって、
前記ポンプは、
68.95kPa(10psi
)ないし
206.84kPa(30psi
)の範囲内の圧力下で前記流体を提供することを特徴とする注入アセンブリ。
【請求項15】
請求項
12に記載の注入アセンブリであって、
前記ポンプは、
103.42kPa(15psi
)ないし
172.37kPa(25psi
)の範囲内の圧力下で前記流体を提供することを特徴とする注入アセンブリ。
【請求項16】
ボーラス送達装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された、一定量の流体を受け取るためのリザーバであって、アクティベーションドーム及びリザーバシートによって画定された、該リザーバと、
前記ハウジング内に配置されたブラダーであって、前記リザーバから流体を受け取るために前記リザーバと流体連通した、該ブラダーと、
前記リザーバ内に軸方向に配置され、かつ前記リザーバシート内のオリフィスを通って延びるピストンであって、近位端と遠位端とを有する、該ピストンとを備え、
前記アクティベーションドームは前記ピストンの前記近位端に接続され、前記ピストンの変位によって前記リザーバから前記ブラダーへの流体の流れが開始されることを特徴とするボーラス送達装置。
【請求項17】
請求項
16に記載の
ボーラス送達装置であって、
前記ピストンの前記遠位端の周囲、かつ前記リザーバシートの前記オリフィスの遠位側に対して配置されたシール部材をさらに備え、
前記シール部材は、前記ピストンに沿って自由に摺動することを特徴とする
ボーラス送達装置。
【請求項18】
請求項
16または17に記載の
ボーラス送達装置であって、
前記ハウジングは、前記ブラダーの拡張を制限するリブを画定することを特徴とする
ボーラス送達装置。
【請求項19】
請求項
16~18のいずれか1項に記載の
ボーラス送達装置であって、
前記流体を前記リザーバに供給するために前記リザーバと流体連通した入口導管と、
前記流体を患者に供給するために前記ブラダーと流体連通した出口導管とを備え、
近位コネクタと、
遠位コネクタと、
前記遠位コネクタから前記リザーバに延びる内部導管とをさらに備え、
前記ブラダーは、前記近位コネクタから前記遠位コネクタまで延在し、
前記入口導管は、前記遠位コネクタと流体連通し、前記出口導管は、前記遠位コネクタと流体連通し、
前記内部導管は、前記入口導管と前記リザーバとの間に流体連通を提供することを特徴とする
ボーラス送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
【0002】
本出願は、2017年6月7日に出願された米国仮出願第62/516,165号明細書の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、流体投与装置に関し、特に、ボーラス用量の流体を投与するための特徴を有する注入アセンブリに関する。
【背景技術】
【0004】
激しい痛み、感染、及びその他の病気の場合、カテーテルベースのシステムを介して連続的な流れの薬液を患者に投与することが有益であることが証明されている。この方法で投与可能な多くの種類の薬液が存在し、薬液には、これらに限定されないが、インスリン、鎮痛薬、及び抗生物質が含まれる。多くの場合、患者には、薬液、例えば薬剤活性のある液体が、制御された速度で、長期間にわたって静脈内に供給される。薬液は、患者の筋肉内空間にも送達され得る。好ましくは、このような注入は、患者が歩行状態にある間に達成される。典型的に、注入アセンブリは、マンドレルによって支持された液体コンテナを形成する膨張可能なエラストマポンプと、患者に液体を供給するための流量制御バルブまたは装置及びチューブとを備える。ポンプの壁は、液体で満たされると拡張し、液体を排出するための圧力をもたらす。
【0005】
いくつかの注入アセンブリは、患者または別のユーザがボーラス用量の投与を開始できるように、多くの場合、患者またはユーザが操作可能なアクチュエータを備えた薬液のボーラスを提供するための装置を含む。しかしながら、典型的なボーラス送達装置はボーラスリザーバの過剰充填を防ぐことができず、薬物の過剰投与につながる可能性がある。さらに、ボーラスリザーバは流体を漏らし得るので、ボーラス投与量に影響を与える可能性があり、ユーザにとって面倒かつ不都合である可能性がある。
【0006】
したがって、薬物の過剰投与を防ぐための1以上の安全機構と、ボーラスリザーバからの漏れを防ぐための1以上の特徴とを含むボーラス送達装置が望ましい。このような改善されたボーラス送達装置を組み込んだ注入アセンブリもまた有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7,959,623号明細書
【文献】米国特許第5,254,481号明細書
【文献】米国特許第5,080,652号明細書
【文献】米国特許第5,105,983号明細書
【文献】米国特許第6,350,253号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様及び利点は、以下の説明に部分的に記載されるか、若しくは説明から明らかであるか、または本発明の実施を通じて習得することができる。
【0009】
一態様では、本主題は、ボーラス送達装置に関する。ボーラス送達装置は、ハウジングと、一定量の流体を受け取るためにハウジング内に配置されたリザーバとを備える。リザーバは、アクティベーションドーム及びリザーバシートによって画定される。ボーラス送達装置は、ハウジング内に配置されたブラダーをさらに備える。ブラダーは、リザーバから流体を受け取るためにリザーバと流体連通している。また、ボーラス送達装置は、アクチュエータと、流体をリザーバに供給するためにリザーバと流体連通した入口導管と、流体を患者に供給するためにブラダーと流体連通した出口導管とを備える。アクチュエータは、リザーバと動作可能に連通してリザーバからブラダーへの流体の流れを開始する。ブラダーは、流体を受け取ると拡張し、流体を投与するにつれて収縮する。ボーラス送達装置は、本明細書に記載の追加の特徴のいずれかを備えてさらに構成され得ることを理解されたい。
【0010】
いくつかの実施形態では、リザーバシートは、リザーバシートがアクティベーションドームに対して遠位かつブラダーに対して近位にあるように、アクティベーションドームとブラダーとの間に配置される。また、ボーラス送達装置は、リザーバ内に軸方向に配置され、リザーバシートのオリフィスを通って延びるピストンであって、近位端及び遠位端を有する、該ピストンと、ピストンの遠位端の周囲、かつリザーバシートのオリフィスの遠位側に対して配置されたシール部材と、ピストンの遠位端の周囲に配置された付勢部材とをさらに備える。このような実施形態では、アクティベーションドームは、アクチュエータ及びピストンの近位端に接続され、アクチュエータを操作することにより、ピストンが変位してシール部材が変位し、リザーバからブラダーへの流体の流れが開始される。いくつかの実施形態では、シール部材は、ピストンに沿って自由に摺動する。さらに、リザーバは、リザーバ内の流体の体積の変化につれて変化する流体圧力を有し、付勢部材は、リザーバが実質的に空であるときに、リザーバの流体圧力に打ち勝つ付勢力を有する。さらに、例えば、バイアス部材のシール力を補助すべく、シール部材に関するバイアス部材の圧力をより均一に分散させるために、シール部材とバイアス部材との間にカラーを配置してもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、ブラダーの拡張を制限するリブを画定する。さらに他の実施形態では、入口導管はエラストマポンプと流体連通している。さらに、ブラダーは、近位コネクタと遠位コネクタとの間に延在していてもよく、そのような実施形態では、入口導管は、遠位コネクタと流体連通し、出口導管は、遠位コネクタと流体連通している。Oリングは、ブラダーの近位端を近位コネクタに固定してもよく、別のOリングは、ブラダーの遠位端を遠位コネクタに固定してもよい。さらに、ボーラス送達装置は、遠位コネクタからリザーバに延びる内部導管を備えていてもよい。内部導管は、入口導管とリザーバとの間に流体連通を提供する。
【0012】
さらに他の実施形態では、ボーラス送達装置は、アクチュエータの遠位方向の動きを制限するために、アクチュエータに画定された溝に捕まるストップを備える。追加的または代替的に、アクチュエータは、ボーラス送達装置から患者への流体の放出を開始するように、患者によって操作可能であってもよい。そのような実施形態では、アクチュエータは、流体をボーラス送達装置から押し出すための最小限の力を必要とし、患者によって作動されると、患者によるさらなるアクションなしに、流体がボーラス送達装置から患者へ流れるように構成される。さらに、ボーラス送達装置はまた、ボーラス送達装置を自吸するために、アクチュエータを押し下げられた位置に保持する取り外し可能なタブを備えていてもよい。
【0013】
別の態様では、本主題は注入アセンブリに関する。注入アセンブリは、加圧下の流体を提供するように構成されたエラストマ製のポンプと、ポンプからの連続的かつ実質的に一定の流量の流体を提供するための、ポンプと流体連通している連続流路と、ボーラス用量の流体を送達するためのボーラス流路と、ボーラス流路と流体連通し、ポンプから流体を受け取るように構成されたボーラス送達装置とを備える。ボーラス送達装置は、ハウジングと、ハウジング内に配置された、一定量の流体を受け取るためのリザーバとを含む。ボーラス送達装置は、ハウジング内に配置されたブラダーをさらに備える。ブラダーは、リザーバから流体を受け取るためにリザーバと流体連通している。リザーバは、アクティベーションドーム及びリザーバシートによって画定されている。ボーラス送達装置は、アクチュエータと、流体をリザーバに供給するためにリザーバと流体連通した入口導管と、流体を患者に供給するためにブラダーと流体連通した出口導管とを備える。アクチュエータは、リザーバと動作可能に連通してリザーバからブラダーへの流体の流れを開始する。ブラダーは、流体を受け取ると拡張し、流体を投与するにつれて収縮する。注入アセンブリは、本明細書に記載の追加の特徴のいずれかを備えてさらに構成され得ることを理解されたい。
【0014】
いくつかの実施形態では、ポンプは、最大約30psiの圧力下で流体を提供する。他の実施形態では、ポンプは、約10psiないし約30psiの範囲内の圧力下で流体を提供する。さらに他の実施形態では、ポンプは、約15psiないし約25psiの範囲内の圧力下で流体を提供する。
【0015】
さらに、いくつかの実施形態では、リザーバシートは、リザーバシートがアクティベーションドームに対して遠位かつブラダーに対して近位にあるように、アクティベーションドームとブラダーとの間に配置されている。また、注入アセンブリのボーラス送達装置は、リザーバ内に軸方向に配置され、かつリザーバシート内のオリフィスを通って延在するピストンであって、近位端と遠位端とを有する、該ピストンと、ピストンの遠位端の周囲、かつリザーバシートのオリフィスの遠位側に対して配置されたシール部材と、ピストンの遠位端の周囲に配置された付勢部材とをさらに備える。そのような実施形態では、アクティベーションドームはアクチュエータ及びピストンの近位端に接続され、アクチュエータを操作することにより、ピストンが変位してシール部材が変位し、リザーバからブラダーへの流体の流れが開始される。いくつかの実施形態では、シール部材はピストンに沿って自由に摺動する。さらに、リザーバは、リザーバ内の流体の体積が変化するにつれて変化する流体圧力を有し、バイアス部材は、リザーバが実質的に空のときにリザーバの流体圧力に打ち勝つバイアス力を有する。さらに、リザーバは、リザーバ内の流体の体積の変化につれて変化する流体圧力を有し、付勢部材は、リザーバが実質的に空であるときに、リザーバの流体圧力に打ち勝つ付勢力を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、ブラダーの拡張を制限するリブを画定する。さらに他の実施形態では、入口導管はエラストマ製のポンプと流体連通している。さらに、ブラダーは、近位コネクタと遠位コネクタとの間に延在してもよく、そのような実施形態では、入口導管は、前記遠位コネクタと流体連通し、出口導管は、遠位コネクタと流体連通している。Oリングは、ブラダーの近位端を近位コネクタに固定してもよく、別のOリングは、ブラダーの遠位端を遠位コネクタに固定してもよい。さらに、注入アセンブリのボーラス送達装置は、遠位コネクタからリザーバに延びる内部導管を含んでいてもよい。内部導管は、入口導管とリザーバとの間に流体連通を提供する。
【0017】
さらに他の実施形態では、注入アセンブリのボーラス送達装置は、アクチュエータの遠位方向の動きを制限するため、アクチュエータに画定された溝に捕まるストップを備える。追加的または代替的に、アクチュエータは、ボーラス送達装置から患者への流体の放出を開始するように、患者によって操作可能であってもよい。そのような実施形態では、アクチュエータは、流体をボーラス送達装置から押し出すための最小限の力を必要とし、かつ、患者によって作動されると、患者によるさらなるアクションなしに、流体がボーラス送達装置から患者へ流れるように構成される。さらに、注入アセンブリのボーラス送達装置は、ボーラス送達装置を自吸するために、アクチュエータを押し下げ位置に保持する取り外し可能なタブを備えていてもよい。
【0018】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を参照してよりよく理解されるであろう。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を例示し、説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
当業者を対象とする、その最良の形態を含む本発明の完全かつ実施可能な開示は、添付の図面を参照して本明細書に記載されている。
【0020】
【
図1】本主題の例示的実施形態による、ボーラス送達装置を有する注入アセンブリの概略図である。
【
図2】
図1のボーラス送達装置の側面斜視図である。
【
図3A】装置のハウジングの一部が取り外され、かつ、装置を自吸するための、装置のアクチュエータを押し下げるタブが取り付けられた、
図1のボーラス送達装置の側面図である。
【
図3C】
図3Bのように不透明ではなく透明で示された、装置の圧縮カラーを備えた
図3Bの側面図である。
【
図4】装置のリザーバが最大容積にあり、装置のブラダーが完全に弛緩した状態にある、
図1のボーラス送達装置の軸方向断面図である。
【
図5】装置のリザーバが最小容積にあり、装置のブラダーが完全に拡張した状態にある、
図1のボーラス送達装置の軸方向断面図である。
【
図6】
図4のボーラス送達装置の遠位部分の拡大図である。
【
図7】
図5のボーラス送達装置の遠位部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで、本発明の実施形態を詳細に参照し、その1以上の例を図面に示す。各例は、本発明の説明として提供され、本発明を限定するものではない。事実、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明において様々な修正及び変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として図示または説明される特徴を別の実施形態とともに使用して、さらに別の実施形態を生み出すことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内にあるような修正及び変形を包含することが意図されている。
【0022】
さらに、構成要素の特定の命名、用語の大文字化、属性、データ構造、またはその他のプログラミング若しくは構造的態様は、必須または重要ではなく、本発明またはその機能を実装する機構は、異なる名前、形式、またはプロトコルを有していてもよい。また、本明細書に記載されている様々な構成要素間の機能の特定の分割は単なる例示であり、必須ではない。単一の構成要素によって実行される機能は、複数の構成要素によって代わりに実行されてもよく、複数の構成要素によって実行される機能は、単一の構成要素によって代わりに実行されてもよい。
【0023】
さらに、詳細な説明では、数字及び文字の指定を用いて、図面の機能を参照している。図面及び説明における類似または同様の名称は、本発明の類似または同様の部分を指すために使用されている。本明細書で使用される「第1」、「第2」、及び「第3」という用語は、ある構成要素を別の構成要素と区別するために交換可能に使用され、個々の構成要素の位置または重要性を示すことは意図していない。
【0024】
図面を参照すると、
図1は、本主題の例示的な実施形態による、例えば患者に流体を投与するための、注入アセンブリの側面図を提供する。図示のように、例示的な注入アセンブリ100は、上部支持部材104及び下部支持部材106を有するエラストマ製のポンプ102を備えている。注入アセンブリ100は、軸方向Aを画定し、下部支持部材106は、軸方向Aに沿って上部支持部材104から離間している。
【0025】
より具体的には、ポンプ102は、加圧流体源として機能し、局所麻酔薬などの薬液を保持し、圧力下の流体源を提供するリザーバを画定する。ポンプ102によって、薬液はチューブまたは導管108を通る。導管108は、薬液を患者Pの創傷部位の神経束または血流に送達するための連続流路110を形成する。図示の例示的な実施形態では、導管108またはチューブは、連続流路110を、患者Pに薬液を送達するカテーテル114に接続するための出口112を画定する。そのような実施形態では、導管108及びカテーテル114は、ポンプ102から患者Pへの連続流路110を共に画定し得る。
【0026】
さらに、いくつかの実施形態では、注入アセンブリ100は、ボーラス送達を提供するように構成され得る。そのような構成では、導管108は連続流路110すなわち一次流路と、制御されたボーラス流路140とに分かれていてもよい。したがって、薬液は、連続流路すなわち一次流路を介してポンプ102から、または、制御されたボーラス流路を介してボーラス送達装置200から、患者Pの創傷部位の神経束または血流に送達され得る。ボーラス送達装置200を、以下に、より詳細に説明する。
【0027】
ポンプ102は、約30psiまでの圧力下で約100ないし500mlの体積の流体を収容することが好ましい。ポンプは、いくつかの実施形態では、約10psiないし約30psiの圧力下で流体を保持してもよく、他の実施形態では、約15psiないし約25psiの圧力下で流体を保持してもよい。より具体的には、ポンプ102は、軸方向Aに沿って上部支持部材104と下部支持部材106との間に延在する内側コア116を有する。内側コア116は、ハウジング120内のエラストマ製のブラダー118によって囲まれている。内側コア116は、好ましくは、例えばブラダー118を流体で満たすための入口ポート122と、例えば流体をブラダー118から連続流路110を通して患者Pに投与するための、導管108と流体連通した出口ポート124とを有する。流体は、エラストマ製のブラダー118内に圧力下で保持され、エラストマ製のブラダー118から出口ポート124を通って導管108に流れ込み、好ましくは、制御された予測可能な速度で流れる。あるいは、導管108は、流量制限器として機能するようにサイズ決めされ得る。さらに、エラストマ製のブラダー118は、加硫合成ポリイソプレン、天然ラテックス、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴムなどを含む、当該技術分野で周知の様々なエラストマ製の組成物を含み得る弾性材料によって構成されていることが好ましい。
【0028】
例示的なポンプは、参照により本明細書に組み込まれる特許文献1及び特許文献2に記載されている。様々な他の従来のポンプが使用されてもよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれる特許文献3及び特許文献4に記載されているポンプが使用されてもよい。当業者によって理解されるように、他の製造業者によって提供される他の適切な電子ポンプまたは機械ポンプも同様に使用され得る。
【0029】
続けて
図1を参照すると、任意選択のクランプ126が、ポンプ102の下流の連続流路110に配置されている。クランプ126は、ポンプ102から連続流路110を通る流体の流れが閉塞されるように導管108を圧縮することができる。そのような閉塞は、例えば、本明細書に記載される注入アセンブリ100の輸送及び準備のために有利である。例示的なクランプ126は、参照により本明細書に組み込まれる特許文献5に記載されている。しかしながら、圧縮クランプ、Cクランプ、ローラクランプなどの、業界で既知の様々な他の従来のクランプを使用することによって、ポンプ102から連続流路110を通る流体の流れを閉塞してもよい。
【0030】
クランプ126の下流の任意選択のフィルタ128は、流体内に見られる汚染物及び他の望ましくない粒子から流体を分離する。フィルタ128はまた、流体の連続流路110から空気を除去することが好ましい。そのようなフィルタ128の1つは、参照により本明細書に組み込まれる特許文献5に記載されている。当然のことながら、業界で認められている他の適切なフィルタを使用することにより、望ましくない粒子を捕捉してもよく、及び/または、システムから空気を除去してもよい。
【0031】
図1にさらに示されるように、任意選択の流量調節器130が連続流路110に配置されている。流量調節器130は、チューブ(導管108)を介したポンプ102から患者Pへの流体の、連続的かつ実質的に一定の流量を設定する。いくつかの実施形態では、流量は、ある範囲内の量、例えば、1時間あたり約0.5ないし約14立方センチメートルの流体の範囲内の量に調整され得る。流量調節器130は、必要に応じて手動で調整可能であってもよく、流量の範囲に対応する調整可能な流量制御ディスプレイを備えたダイヤル、スイッチ、またはレバーが設けられていてもよい。例えば、流量の範囲は、流量制御ディスプレイが最低値1かつ最高値7、または最低値2かつ最高値14を含むように、1時間あたり約1ないし約7、または約2ないし約14立方センチメートルの流体であってもよい。上記の流量値は例示に過ぎず、他の実施形態では、注入アセンブリ100は他の流量を有してもよく、流量は別の流量の範囲内で調整可能であってもよいことが理解されよう。あるいは、定流量調節器(すなわち、調整不能な調節器)を使用することもできる。例えば、ガラス製のオリフィスチューブ132などの任意選択の流量調節オリフィスを一次流路すなわち連続流路110に使用してもよい。さらに、ボーラス流路を有する実施形態では、任意選択の第2の流量調節オリフィス146をボーラス流路に使用してもよい。
【0032】
本明細書で説明されるクランプ126、フィルタ128、及び流量調節器130(またはガラス管(オリフィスチューブ132))の特定の配置は、単なる例示である。これらの要素は、存在する場合、当業者によって容易に理解されるように、任意の順序で配置されてもよい。しかしながら、望ましくは、オリフィスチューブ132及びフィルタ128が注入アセンブリ100に設けられている場合、ガラス製のオリフィスチューブ132はフィルタ128の下流に配置される。
【0033】
図1に示す例示的な実施形態では、導管108は、2つの流路、連続流路110すなわち一次流路と、ボーラス流路140とに分かれる。ボーラス送達装置200は、ボーラス流路140と流体連通している。ボーラス送達装置200は、ポンプ102から続くボーラス流路140からの一定量の流体を蓄積し、患者Pへの放出のために患者によって操作可能なアクチュエータ202によりボーラス用量がトリガされるまで流体を圧力下に保持する。一般に、ボーラス送達装置200は、流体を受け取り、弾性的に拡張して流体を加圧し、加圧流体を蓄積し、患者への薬液の過剰投与を回避しながら加圧流体を投与するように構成される。ボーラス送達装置200の下流で、連続流路110及びボーラス流路140は単一の流路に収束する。任意選択で、クランプ142、フィルタ144、及び/または流量調節オリフィス146をボーラス流路140に配置してもよい。クランプ142は、ポンプ102からの流体の流れが閉塞されるように、ボーラス流路140を圧縮することができる。そのような閉塞は、例えば、流体送達装置の輸送及び準備のために有利である。さらに、本明細書では患者が操作可能なボーラス送達装置200として説明しているが、患者P、介護者、医師などの任意のユーザがアクチュエータ202を操作することによって、薬液のボーラス用量が患者Pに投与されてもよいことが理解されよう。
【0034】
ここで、
図2-7を参照し、ボーラス送達装置200をより詳細に説明する。
図2に示されるように、ボーラス送達装置200は、アクチュエータ202を支持するハウジング204を備える。前述のように、図示された例示的な実施形態において押し下げ可能なボタンとして構成されるアクチュエータ202は、患者Pによって操作されることにより、ボーラス送達装置200からの薬液のボータス用量を投与することができる。さらに、入口導管206がボーラス流路140からボーラス送達装置200に流体を提供することによって入口導管206はポンプ102と流体連通し、出口導管208は患者への送達のためにボーラス送達装置200からボーラス流路に流体を送達する。
【0035】
加えて、例示的なボーラス送達装置200は、装置を自吸するための特徴を含む。
図3Aは、ボーラス送達装置200の内部構成を示すためにハウジング204の一部が取り除かれた、ボーラス送達装置200の側面図を提供する。
図2及び3Aを参照すると、ボーラス送達装置200の組み立て中に、アクチュエータ202を押し下げ位置すなわち作動位置に維持または保持する取り外し可能なタブ203が取り付けられている。ボーラス送達装置200がポンプ102と流体連通するように最初に配置された場合、アクチュエータ202がタブ203によって押し下げられると、ポンプからの流体は、ポンプ102からの大量の流体を受け取るためのハウジング204内に配置されたリザーバを含む、ボーラス送達装置200を通って流れる。このようにして、流体はボーラス送達装置200内の空気を入れ換える。流体がボーラス送達装置200を通って流れると、タブ203は持ち上げられてもよく、アクチュエータ202は、流体がボーラス送達装置200のリザーバ210を満たすにつれて拡張位置すなわち非押し下げ位置に移動し(以下により詳細に説明する)、装置内の流体圧力が増加する。
【0036】
図3Bは、タブ203が取り外された
図3Aの側面図を提供する。
図3Cは、
図3Bと同一の側面図を提供するが、装置の圧縮カラーは
図3Bのように不透明ではなく透明で示されている。
図3A、3B、及び3Cに示されるように、アクティベーションドーム212及びリザーバシート214は、リザーバ210、すなわち、ポンプ102からボーラス体積の流体を受け取るためのキャビティを共に画定する。入口導管206は、リザーバに流体を供給するためのリザーバ210と流体連通している。さらに、アクティベーションドーム212及びリザーバシート214は、それらの拡張を制限し、それによって、リザーバ210のボーラス容量を、信頼性があり、再現性のある、望ましい流体容量に制限するための適切な寸法及び材料特性を有する。
【0037】
ブラダー216は、リザーバ210に対して遠位のハウジング204内に配置される。ブラダー216は、リザーバから流体を受け取るためにリザーバ210と流体連通し、ブラダー216は、患者Pに流体を提供するために出口導管208と流体連通している。より具体的には、
図3A、3B、及び3Cに示すように、アクチュエータ202は、アクチュエータ202が作動されたとき、例えば、患者Pによってボタンが押し下げられたときに、リザーバ210に蓄積された流体がリザーバからブラダー216に流れるように、リザーバ210に対して近位に配置される。すなわち、アクチュエータ202は、リザーバ210と動作可能に連通することによって、リザーバ210からブラダー216への流体の流れを開始する。流体がブラダー216に流入すると、ブラダーは拡張して流体を収容し、以下により詳細に説明するように、ブラダー216は収縮して流体をブラダーから出口導管208に注ぎ、流体は最終的に患者Pに流れる。ブラダー216は、ブラダー216が拡張可能なブラダーであるように、エラストマまたは他の適切な材料から形成され得る。さらに、ハウジング204は、本明細書でより詳細に説明されるように、ブラダー216の拡張を制限する内部リブ(リブ218)を含む。
【0038】
図3A、
図3B、及び
図3Cにも示すように、リザーバシート214は、リザーバシート214がアクティベーションドーム212に対して遠位かつブラダー216に対して近位であるように、アクティベーションドーム212とブラダー216との間に位置する。さらに、ブラダー216は、近位コネクタ220と遠位コネクタ222との間に延在する。したがって、近位コネクタ220は、リザーバシート214とブラダー216との間に配置される。入口導管206及び出口導管208は、それぞれ、遠位マニホールドとして構成され得る遠位コネクタ222と流体連通している。流量調節オリフィス146(
図1)は、例えば、ボーラス送達装置200の補充速度の制御を助けるために、入口導管206内に配置され得る。内部導管207は、遠位コネクタ222からリザーバ210に延びることによってリザーバ210に流体を提供する。いくつかの実施形態では、流量調節オリフィスはガラスから製造されるが、他の実施形態では、流量調節オリフィスは任意の適切な可撓性材料から製造される。他の材料も、流量調節オリフィス146を形成するために使用され得る。
【0039】
リザーバ210は、近位コネクタ220を介してブラダー216に流体を提供し、ブラダー216は、遠位コネクタ222を介して出口導管208に流体を提供する。Oリング224、または他の適切なシールまたは固定部材は、ブラダー216の近位端226を近位コネクタ220に固定する。同様に、Oリング228、または他の適切なシールまたは固定部材は、ブラダー216の遠位端230を遠位コネクタ222に固定する。図示の実施形態では、ハウジング204はまた、例えば、ボーラス送達装置200を患者の衣服または他の支持体に取り付けるためのクリップ205、または他の適切な取り付け部材を備えている。
【0040】
図4及び
図5を参照すると、ボーラス送達装置200の動作を示すのに役立つ、ボーラス送達装置200の断面図が提供される。
図4では、アクチュエータ202はその最も近位の位置にあり、すなわち、アクチュエータ202は作動されていない、すなわち押し下げられていない。さらに、リザーバ210は、圧縮カラー211(以下でさらに説明する)、アクティベーションドーム212及びリザーバシート214によって制限されるその最大容積にあり、ブラダー216は完全に弛緩した状態にある。
図5では、アクチュエータはその最も遠位の位置にあり、すなわち、アクチュエータ202は患者への薬液のボーラス用量投与を開始するために作動すなわち押し下げられている。さらに、リザーバ210はその最小容積にあり、ブラダー216は完全に拡張した状態にある。アクチュエータ202は、流体をリザーバ210から押し出すために最小限の力しか必要としないように、かつ、患者Pによって作動された場合に、患者によるさらなるアクションなしに、リザーバ210から患者に流体が流れ出るように、構成される。より具体的には、ポンプ102からの流体は、患者Pがボーラスの準備が整うまでリザーバ210に蓄積され、ボーラス送達装置200は、ボーラスが必要とされるまで、リザーバ210からの流れを防ぐ。ピストン232は、リザーバ210内に、リザーバシート214のオリフィス234を通って軸方向に配置される。アクティベーションドーム212は、締まり嵌めによって、アクチュエータ202、及びピストン232の近位端239に接続される。さらに、Oリング236などのシール部材、及びばね238などの付勢部材が、リザーバシート214に画定されたチャネル215内の、ピストン232の遠位端240の周りに配置されている。Oリング236は、リザーバシート214内のオリフィス234の遠位側242に対して配置され、これにより、リザーバ210からブラダー216への流れを防止するシールが形成される。他の実施形態では、他の適切なシール部材(すなわち、Oリング236に加えて、またはOリング236の代替として)を使用してオリフィス234の遠位側242をシールすることができる。さらに、他の適切な付勢部材を、ばね238の代わりに、または、ばね238に加えて使用することができる。付勢部材は付勢力を有し、例えば、ばね238はばね力を有することが理解されよう。いくつかの実施形態では、シール部材と付勢部材(ばね238)との間にカラー237が挿入される。カラー237は、キャッスルワッシャ(castle washer)などであってもよく、キャッスルワッシャはその上端に沿ってリッジ形状の特徴を有し、天守閣(castle tower)に似ている。付勢部材はカラー237の下端部と連結し、カラー237の上端部はシール部材の底面と連結し、付勢部材の圧力はシール部材の周りに分散して、シール部材及び付勢部材によって提供されるシール力を助ける。カラー237がキャッスルワッシャである実施形態では、キャッスルワッシャのリッジは、シール部材の周りの付勢部材の圧力を均等に分散させ、液体をその領域から迅速に放出させるのに役立つ。
【0041】
図4に示すように、アクティベーションドーム212が完全に拡張した状態にあるとき、ピストン232は、リザーバシート214に対してOリング236を引っ張る。リザーバ210が満たされた後、患者Pはアクチュエータ202を押し下げてボーラスを投与する。
図5に示すように、患者Pがアクチュエータ202を操作する、すなわち押し下げると、アクチュエータ202はアクティベーションドーム212を圧縮し、ピストン232を変位させる。リザーバシート214内に変位すなわち延長されると、ピストン232はOリングを引っ張らない。むしろ、ばね238は、Oリング236をリザーバシート214に押し付け、Oリング236は、ばね238によってのみ所定の位置に保持される。Oリング236は、ピストン232に沿って自由に摺動し、ばね238は、ピストン232の動きに干渉しない。圧縮されたアクティベーションドーム212からの流体圧力は、ばね238の力に打ち勝ち、Oリング236をリザーバシートのオリフィス234から押し離す。流体は、Oリング236を通過してリザーバシート214を通り、ブラダー216をリザーバシート214に接続する近位コネクタ220を通ってブラダー216に入る。
【0042】
リザーバ210の容積は、弛緩状態のブラダー216の内部容積よりも大きい。ブラダー216は拡張してボーラス容積を収容し、ワーク収納(work storage)として機能し、患者がボーラス用量を投与するためにアクチュエータ202を押し下げた状態で保持するか、または連続的に作動させる必要性を排除する。すなわち、ブラダー216は、ボーラスを自動的に投与するためのエネルギーを蓄積する。ブラダー216の収縮は、流体を、遠位コネクタ222を介して出口導管208へ押し出し、最終的に患者Pへ押し出す。
【0043】
リザーバ210は、リザーバ内の流体の体積の変化につれて変化する流体圧力を有する。流体がリザーバ210からブラダー216に移動した後の、リザーバ210内の流体圧力は、ばね238のばね力、より一般的には、付勢部材の付勢力に打ち勝つためには不十分である。換言すれば、リザーバが実質的に空であるとき、付勢力はリザーバ210の流体圧力に打ち勝つ。したがって、ばね238が伸びて、Oリング236をリザーバシートのオリフィス234の遠位側242に押し付ける。ピストン232、リザーバシート214、及びOリング236の間のシールは、拡張したブラダー216からアクティベーションドーム212への逆流を防ぐ。ポンプ102からの流体は、リザーバ210を再充填し、アクティベーションドーム212を拡張し、ピストン232を元の位置に徐々に戻す。しかしながら、患者Pは、アクチュエータ202をいつでも作動させる、すなわち押し下げることができ、部分的なボーラス投与を受けることができる。リザーバ210が補充状態にある間、部分的なボーラス投与を防止するロックアウト機構は存在しない。それにもかかわらず、以下に説明するように、ボーラス送達装置200には、例えば、ブラダー216の最大拡張容積よりも大きいボーラス用量による、薬剤の過剰投与を防止するための機能が組み込まれている。
【0044】
ピストン232は、シーリングしているOリング236を通り抜ける漏れを防ぎ、それによって、ボーラス送達装置200の内部への漏れを防ぐ。リザーバ210が満たされると、内部圧力が増大して、エラストマ製のポンプ102、すなわち流体源の圧力と一致する。リザーバ210内の圧力が増大すると、アクティベーションドーム212が拡張し、シーリングしているOリング236に対してピストン232を引っ張り、リザーバシート214に対するシール力を増大させる。アクティベーションドーム212、ピストン232、及びOリング236は、ボーラス送達装置200がより広い圧力範囲、例えば最大約30psiで動作し、異なるサイズのポンプ102に対応することを確実にする。
【0045】
ここで、
図6及び
図7を参照して、ブラダー216近傍のボーラス送達装置200の内部構成をより詳細に説明する。
図6は、ブラダー216が完全に弛緩すなわち収縮した状態にある、ボーラス送達装置200の遠位部分の断面図を提供する。
図7は、ブラダー216が完全に拡張した状態にある、ボーラス送達装置200の遠位部分の断面図を提供する。
図7に示すように、近位コネクタ220は、ブラダー216内に延びる出口244を含む。Oリング224は、ブラダー216の近位端226を出口244に固定する。さらに、遠位コネクタ222は、ブラダー216内に延びる入口246を含む。Oリング228は、ブラダー216の遠位端230を入口246に固定する。リザーバ210からの流体は、出口244を通って提供され、流体は、ブラダー216から放出され、すなわちブラダー216から出て、入口246を通って患者に流れる。
図6及び
図7に示すように、内部導管207は、ポンプ102からリザーバ210に流体を供給するために、リザーバ210、すなわち、アクティベーションドーム212またはリザーバシート214まで直接延びている。
【0046】
さらに、図示の実施形態に示すように、ハウジング204は、ハウジング204の内面250に沿ってリブ218を画定する。
図7に最も明確に示すように、リブ218は、ブラダー216の拡張状態を望ましい容積に制限する。したがって、ブラダー216が空にならず収縮状態に戻ることができない場合、例えば、出口導管208または遠位構成要素の閉塞によってブラダー216が流体を投与することが妨げられる場合、リザーバ210は充填を続けるが、患者Pはアクチュエータ202を作動させる、すなわち押し下げることができない。より具体的には、ブラダー216は、完全に拡張した状態では追加の流体を収容せず、したがって、アクティベーションドーム212を圧縮することができない。したがって、より大きなボーラス用量を投与することはできない、すなわち、ハウジング204のリブ218は、ブラダー216の拡張を制限することにより、薬剤の過剰投与を防止する。
【0047】
さらに、ハウジング204は、ボーラスの体積を制御するためにアクティベーションドーム212と協働するボーラス送達装置200の近位部分に特徴を含む。例えば、ハウジング204内の特徴は、アクチュエータ202及びアクティベーションドーム212の動きを制限する。より具体的には、リザーバ210が満たされると、アクティベーションドーム212は、アクティベーションドーム212に関して拡張する圧縮カラー211によって制限された最終拡張容積に達する。例えば、アクティベーションドーム212は、圧縮カラー211などの特徴によって制限されない場合、過膨張し得るシリコーンなどの材料から製造されてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、アクチュエータ202及びハウジング204、並びに、ピストン232、ばね238及びOリング236アセンブリによって作成されたシールも、アクティベーションドーム212の拡張を制限し得る。これらの制約は、アクティベーションドーム212の過剰拡張を防止するのに役立ち、アクティベーションドーム212は、所定の最大容積を超えて拡張することができない。
【0048】
さらに、
図4及び
図5を再び参照すると、ストップ252は、アクチュエータ202の遠位方向の動きを制限し、リザーバシート214は、アクティベーションドーム212の遠位方向の動きを制限する。より具体的には、アクチュエータ202は、ハウジング204によって画定されたガイドスロット256内で遠位及び近位に移動するガイド延長部254を含む。ガイドスロット256内のガイド延長部254の動きは、ストップ252がアクチュエータ202内に画定された溝258に捕まって、すなわち溝258に着座して係止されることを確実にし、それによって、
図5に示すように、アクチュエータ202の遠位方向の動きを、完全な作動状態すなわち押し下げ状態に拘束するのに役立つ。さらに、アクチュエータ202が完全に作動されると、すなわち押し下げられると、アクティベーションドーム212はリザーバシート214に対して折り畳まれる。アクチュエータ202は、アクティベーションドーム212をリザーバシート214の内面262に押し付ける遠位端260を含む。
図5に示されているように、アクチュエータ202の遠位端260は、一般に、リザーバシート214の内面262に対して相補的な形状を有し、アクティベーションドーム212が実質的に折り畳まれ、かつリザーバ210が実質的に空である場合、アクティベーションドーム212はリザーバシートの内面262の形状に略一致する。
【0049】
ハウジング204はまた、ボーラス送達装置200内の様々な構成要素への応力を最小化するための1以上の特徴を含んでいてもよい。例えば、
図3B及び3Cを再び参照すると、ストレインリリーフ264が遠位コネクタ222で使用されることにより、すべてが遠位コネクタ222に接続される入口導管206、内部導管207、及び/または出口導管208への応力を最小限に抑えてもよい。
図3B及び3Cに示されるように、ストレインリリーフ264は、導管206、207、208への応力を緩和するのに役立つ2以上のリッジ266を備える。ハウジング204には、ボーラス送達装置200の他の構成要素への応力を低減及び/または除去するための他の特徴が組み込まれていてもよい。
【0050】
したがって、患者Pへの流体のボーラス用量の放出速度は、ブラダー216の減圧によって少なくとも部分的に制御されることが理解されよう。カテーテル114の直径などのボーラス送達装置200の下流の注入アセンブリ100の他の特徴もまた、患者Pへの流体の放出速度を制御することができる。有利なことに、患者Pは、ボーラス送達装置200からボーラス流路140に流体を押し出すための圧力を提供する必要がない。むしろ、患者Pは、アクチュエータ202を単に作動させる、すなわち押し下げることによって、ボーラス用量を投与することができる。患者Pが、ボーラスリザーバ(リザーバ210)がその最大容量まで満たされるよりも前にアクチュエータ202を作動すなわち動作させると、患者Pは、ボーラス投与量の全量未満の量を受け取る。実際に、これによって、患者Pは、ボーラス用量として指定された時間あたりの最大所望量を超える流体の自己投与を防ぐ。
【0051】
この書面による説明は、実施例を用いて、最良の形態を含む本発明を開示し、当業者による、任意の装置またはシステムの作成及び使用、並びに任意の組み込まれた方法の実行を含む、本発明の実施を可能にする。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想起する他の実施例を含み得る。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を含む場合、または特許請求の範囲の文言と実質的な違いを有していない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図される。