IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イルミナ インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ イルミナ ケンブリッジ リミテッドの特許一覧

特許7100069表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法
<>
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図1
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図2A
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図2B
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図3A
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図3B
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図4
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図5A
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図5B
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図6A
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図6B
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図7
  • 特許-表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】表面結合オリゴヌクレオチドを化学開裂および脱保護するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20220705BHJP
   C07H 19/073 20060101ALI20220705BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C12N15/10 Z
C07H19/073 CSP
C12N15/11 Z ZNA
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019571259
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2019032287
(87)【国際公開番号】W WO2019222264
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】62/671,816
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/788,045
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】シャオリン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ランドール・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ペイトン・シェー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エム・バイアーレ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン・エヌ・ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】エリオット・ジョン・ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ジエ・マオ
(72)【発明者】
【氏名】シャオハイ・リウ
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/010251(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/205336(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07H
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二本鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体であって、各二本鎖ポリヌクレオチドが該固体支持体に固定化された第一鎖および第二鎖を含むものであり、各第一鎖が遷移金属錯体による化学開裂を受けることができる第一開裂部位を含み;ここで、遷移金属錯体がパラジウム錯体またはニッケル錯体であり、ここで、第一鎖および第二鎖がその5’末端で固体支持体に固定化されるものであり、第一開裂部位が式(II’):
【化1】
〔式中、塩基がアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の構造を有する修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含む、固体支持体。
【請求項2】
各第一鎖が固体支持体に固定化された第一伸長プライマーを含む、請求項1に記載の固体支持体。
【請求項3】
第一伸長プライマーが第一開裂部位を含む、請求項2に記載の固体支持体。
【請求項4】
第一伸長プライマーが配列番号1または3に示す配列を有するP5配列を含む、請求項2または3に記載の固体支持体。
【請求項5】
第一開裂部位がパラジウム錯体またはニッケル錯体により化学開裂を受けることができる修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含む、請求項1~4の何れかに記載の固体支持体。
【請求項6】
修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドがアリル基を含む、請求項5に記載の固体支持体。
【請求項7】
式(I):
【化2】
〔式中、
が-NH、-OH、-NHC(O)ORまたは-OCHOSi(R)であり;
がC1-4アルキル、tert-ブチル、アリル、ベンジル基または9-フルオレニルメチルであり;
各Rが独立してC1-4アルキルおよびフェニルからなる群から選択され;そして
がH、C1-4アルキル、テトラヒドロフランまたはヌクレオチドである。〕
または
式(V):
【化3】
〔式中、
が-NH、-OH、-NHC(O)ORまたは-OCHOSi(R)であり;
がC1-4アルキル、tert-ブチル、アリル、ベンジル基または9-フルオレニルメチルであり;
各Rが独立してC1-4アルキルおよびフェニルからなる群から選択され;そして
塩基がアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の構造を有するホスフェート部分を含む3’遮断部分を含む固体支持体であって、請求項1~6の何れかに記載の固体支持体の第一開裂部位の開裂により産生される、固体支持体。
【請求項8】
式(I)におけるRのテトラヒドロフランが置換されている、請求項7に記載の固体支持体。
【請求項9】
式(V)における塩基が保護されている、請求項7に記載の固体支持体。
【請求項10】
固体支持体に固定化された請求項1~9の何れかに記載の第二鎖を含み、各第二鎖が第二開裂部位を含む、請求項7~9の何れかに記載の固体支持体。
【請求項11】
第二鎖が固体支持体に固定化された第二伸長プライマーを含む、請求項10に記載固体支持体。
【請求項12】
第二伸長プライマーが第二開裂部位を含む、請求項11に記載固体支持体。
【請求項13】
第二開裂部位がパラジウム錯体またはニッケル錯体による化学開裂を受けることができない、請求項10~12の何れかに記載の固体支持体。
【請求項14】
第二開裂部位が化学開裂により開裂されているものである、請求項10~12の何れかに記載の固体支持体。
【請求項15】
第二開裂部位がジオールリンカーまたはアゾベンゼンリンカーを含む、請求項10~12の何れかに記載の固体支持体。
【請求項16】
固体支持体に固定化された複数の二本鎖ポリヌクレオチドを線形化する方法であって、
請求項1~の何れかに記載の固体支持体を用意し;
二本鎖ポリヌクレオチドを遷移金属錯体の水溶液と接触させ、それにより第一開裂部位で1以上の第一鎖を開裂し、1以上の開裂第一核酸および開裂固定化第一鎖を産生し;そして
固体支持体から開裂第一核酸を除去する
ことを含む、方法。
【請求項17】
遷移金属錯体がパラジウム(0)錯体またはニッケル(0)錯体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
パラジウム(0)錯体がPd(THP)、Pd(THP)、Pd(THM)またはこれらの組み合わせである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
パラジウム(0)錯体がin situで産生される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
ニッケル(0)錯体がニッケル(II)化合物からin situで産生される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
第二開裂部位が化学開裂、光開裂、酵素開裂およびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法により開裂される、請求項10~13および15の何れかに記載の固体支持体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願の引用による取り込み
本出願は、2018年5月15日出願の米国仮出願62/671,816および2019年1月3日出願の米国仮出願62/788,045に基づく優先権の利益を主張し、この各々は、引用により全体として本明細書に包含させる。
【0002】
電子形式の配列表
本出願は、EFS-Webにより提出したASCIIテキストファイルの電子配列表と共に出願された。電子配列表はILLINC363WOSEQLIST.txtなるファイル名の電子配列表として提供され、2019年5月10日に作成され、最終的に保存され、2,806バイトサイズである。電子配列表の情報は、引用により全体として本明細書に包含させる。
【背景技術】
【0003】
背景技術
分野
本発明の実施態様は、ポリヌクレオチド配列決定のための鋳型を製造する方法に関する。特に、本発明は、固体支持体上に固定された二本鎖ポリヌクレオチドの1以上の第一鎖の化学開裂による、ある場合、パラジウム錯体またはニッケル錯体などの遷移金属錯体存在下での反応による配列決定に備えたクラスター化ポリヌクレオチドの線形化に関する。さらに、本発明は、固体支持体上の修飾プライマーの化学的脱保護に関する。
【0004】
種々の核酸配列決定方法が当分野で知られる。米国特許5,302,509は、鋳型鎖に相補的な標識ポリヌクレオチドを連続的に取り込むためのDNAポリメラーゼまたはDNAリガーゼを使用する複数伸長反応の実施を含む、ポリヌクレオチド鋳型の配列決定方法を記載する。このような「合成による配列決定」(SBS)反応において、鋳型鎖と塩基対形成した新規ポリヌクレオチド鎖が、鋳型鎖に相補的な個々のヌクレオチドの連続的取り込みにより、5’から3’方向で構築される。配列決定反応で使用する基質ヌクレオシド三リン酸は、連続的にヌクレオチドが加わるにつれて、取り込まれたヌクレオチドの構造(identity)の決定を可能とする、種々の3’標識で3’位置が標識される。
【0005】
核酸配列決定反応のスループットを最大化するために、複数鋳型分子を並行して配列決定可能とすることが有利である。複数鋳型の並行処理は、核酸アレイテクノロジーの使用により達成され得る。これらのアレイは、一般に固相支持体材上に固定されたポリヌクレオチドの高密度マトリクスからなる。
【0006】
固定化核酸アレイの製作のための種々の手順は文献に記載されている。WO98/44151およびWO00/18957の何れも、複数の同一固定化ポリヌクレオチド鎖および複数の同一固定化相補鎖から形成されたクラスターまたは「コロニー」からなるアレイを形成するために、増幅産物の固体支持体上への固定化を可能とする、核酸増幅の方法を記載する。このタイプのアレイは、ここでは、「クラスター化アレイ」と称する。これらの方法により調製したクラスター化アレイのDNAコロニーに存在する核酸分子は、例えばWO98/44152に記載のとおり、配列決定反応のための鋳型を提供できる。WO98/44151およびWO00/18957に記載のような固相増幅反応の産物は、固定化ポリヌクレオチド鎖と固定化相補鎖の対のアニーリングにより形成されたいわゆる「架橋」構造であり、両鎖は5’末端で固体支持体に結合している。核酸配列決定により適する鋳型を提供するために、少なくとも部分的に一本鎖である鋳型を産生するために「架橋」構造における固定化鎖の一方の実質的に全てまたは少なくとも一部を除去することが好ましい。こうして、一本鎖である鋳型の一部は、配列決定プライマーとのハイブリダイゼーションに利用可能となる。「架橋」二本鎖核酸構造における一つの固定鎖の全てまたは一部を除去する手順は、「線形化」と称される。酵素開裂、光化学開裂または化学開裂を含むが、これらに限定されない線形化の種々の方法がある。線形化方法の非限定的例は、PCT公開WO2007/010251および米国特許公開2009/0088327および米国特許公開2009/0118128に開示され、これらは、引用により全体として本明細書に包含させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
二本鎖DNAクラスターを線形化し、表面結合プライマーを脱保護するための、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの効率的部位特異的開裂を促進する酵素方法が知られる。現在、酵素は、種々の配列決定適用において、これらのタイプの反応の両者で広範に使用されている。しかしながら、酵素安定性、酵素材料の高原価、貯蔵および取り扱いに要する特殊条件、酵素活性の変動および配列読取りにおける高い背景強度を含む、種々の問題が酵素法にはある。それ故に、有効なDNA配列決定のために、代替の線形化および脱保護方法を開発する必要性がある。しかしながら、材料、条件および副産物が(a)オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションおよびデハブリダイゼーション、プライマーPCR伸長およびDNA合成を含む上流および下流反応に適合性でなければならないこと、(b)酸性、塩基性および酸化的条件下で良好な安定性を示さなければならないこと、(c)迅速かつクリーンな化学反応をすることおよび(d)ヌクレオチド検出方法を妨害してはならないことを要するため、この状況での線形化工程に適用できる反応タイプに多くの制限がある。本発明は、上記制限を満たし、有効な代替手法である、化学開裂および脱保護工程を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
要約
本発明のある実施態様は、複数の固定化二本鎖ポリヌクレオチドを線形化する方法であって、二本鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体を用意し、ここで、各二本鎖ポリヌクレオチドは第一鎖および第二鎖を含むものであり、ここで、第一鎖および第二鎖は、各々その5’末端で固体支持体に固定化されており、そして、各第一鎖は遷移金属錯体存在下で化学開裂を受けることができる第一開裂部位を含み、ここで、遷移金属錯体はパラジウム錯体またはニッケル錯体であり;二本鎖ポリヌクレオチドと遷移金属錯体の水溶液を接触させ、それにより第一開裂部位で1以上の第一鎖を開裂し、1以上の開裂第一核酸および開裂固定化第一鎖を産生し;そして固体支持体から開裂第一核酸を除去することを含む、方法に関する。このような方法において、固定化第二鎖は、固体支持体から開裂第一核酸を除去後固体支持体上に残り、開裂固定化第一鎖とハイブリダイズしたままである。ある実施態様において、パラジウム(Pd)錯体はPd(0)錯体である。ある実施態様において、ニッケル(Ni)錯体はNi(0)錯体である。ある実施態様において、第一開裂部位はアリル官能基を含む。あるさらなる実施態様において、第一開裂部位はさらにホスフェート部分を含む。ある実施態様において、第一開裂部位はアリルホスフェート部分を含む修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドである。
【0009】
本発明はまた固体支持体上のオリゴヌクレオチドを化学脱保護する方法であって、固定化された複数のオリゴヌクレオチドを有する固体支持体を用意し、ここで、オリゴヌクレオチドは各々3’ヒドロキシルに化学脱保護を受け得るホスフェート基を含む修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドなどの保護基または修飾3’末端ホスフェート部分を含み、オリゴヌクレオチドと脱保護剤を反応させ、それにより保護基(例えば修飾3’末端ホスフェート部分)を開裂して、遊離3’ヒドロキシル基を有する固定化オリゴヌクレオチドを得ることを含む、方法に関する。ある態様において、保護基は、式(I):
【化1】
〔式中、ホスフェート部分は固定化オリゴヌクレオチドの3’末端のホスフェートであり;
は-NH、-OH、-NHC(O)ORまたは-OCHOSi(R)であり;
ここで、RはC1-4アルキル、tert-ブチル、アリル、ベンジルまたは9-フルオレニルメチルであり;そして
各Rは独立してC1-4アルキルおよびフェニルからなる群から選択され;そして
はH、C1-4アルキル、場合により置換されているテトラヒドロフランまたはヌクレオチドである。〕
の構造を有する3’末端ホスフェート部分である。
【0010】
式(I)のある態様において、Rは-NHC(O)ORである。ある態様において、Rは9-フルオレニルメチル、ベンジルまたはアリルである。ある態様において、Rは-OCHOSi(R)である。ある態様において、各Rはイソプロピルである。ある態様において、各Rは独立してメチル、エチル、tert-ブチルまたはフェニルである。
【0011】
ある態様において、脱保護剤はフッ化物イオン(例えば、TBAF、HFまたはCsF)または弱塩基(例えば、水酸化ナトリウム)である。ある態様において、固定化オリゴヌクレオチドは、ここに記載するとおり第一鎖の化学開裂により産生された、開裂固定化第一鎖である。それ故に、ある態様において、第一鎖は、開裂および固体支持体から開裂第一核酸の除去後開裂固定化第一鎖に存在する修飾ヌクレオチドを含む。ここに記載する方法は、リード1完了後の開裂固定化第一鎖の3’ヒドロキシル保護基の除去を含む。ある実施態様において、開裂固定化第一鎖は末端ホスフェート基を含む。他の態様において、方法は、開裂および固体支持体から開裂第一核酸の除去後開裂固定化第一鎖の3’末端ホスフェートの遮断を含む。ある態様において、遮断は、固定化第二鎖の配列決定前の3’末端ホスフェートと遮断基であり、遮断基をリード1の完了後除去して、ここに記載する化学開裂方法による3’ヒドロキシル基を産生する。第二鎖の3’末端は、脱保護反応中および後、固定化開裂第一鎖とハイブリダイズしたままである。
【0012】
他の態様において、3’ヒドロキシル保護基は、第一開裂後開裂固定化第一鎖に存在するホスフェート基または部分であり、方法は、T4PNKなどの脱リン酸酵素存在下のホスフェート基または部分の除去を含む。第二鎖の3’末端は、酵素脱保護反応中および後、固定化開裂第一鎖とハイブリダイズしたままである。
【0013】
ある実施態様において、方法は、さらに、固体支持体から開裂第一核酸の除去後の固定化第二鎖の配列決定を含む。ある態様において、配列決定は、固定化第二鎖に相補的な標識ヌクレオチドの連続的取り込みおよび各連続的取り込み後の標識ヌクレオチドの検出を含む。ペアエンド配列決定において、二本鎖核酸の両鎖は最終的に配列決定され、このような場合、固定化第二鎖の配列決定をここでは「リード1」と称する。
【0014】
他の実施態様において、各固定化第二鎖は、化学開裂を受けることができる第二開裂部位を含む。ある態様において、第二鎖の配列決定(リード1)および固定化開裂第一鎖からの3’ヒドロキシル保護基の除去後、方法は、さらに誘導体二本鎖ポリヌクレオチドを産生するための固定化第二鎖に対する相補体の合成を含み、ここで、各誘導体二本鎖ポリヌクレオチドは第二鎖および誘導体第一鎖を含み、ここで、誘導体第一鎖および第二鎖は、各々その5’末端で固体支持体に固定化される。本発明の方法は、第二開裂部位で1以上の第二鎖を開裂し、それにより1以上の開裂第二核酸および開裂固定化第二鎖を産生し、固体支持体から開裂第二核酸を除去することを含む。このような方法において、固定化誘導体第一鎖は、固体支持体から開裂第二核酸の除去後固体支持体上に残り、開裂固定化第二鎖とハイブリダイズしたままである。
【0015】
このような実施態様のある場合において、第二鎖の第二開裂部位は化学開裂を受け得て、第二鎖は化学反応により開裂される。例えば、第二開裂部位は、1以上の隣接ジオール結合(これは、過ヨウ素酸反応剤での処理などの酸化より開裂され得る)、ジスルフィド結合(例えば、DTTなどの還元条件下またはホスフィンの存在下開裂可能)、オルト-ニトロベンジル基(例えば、光分解により開裂可能)、アゾベンゼン結合(例えば、Naの存在下開裂可能)、アルキル-セレン結合(例えば、過酸化水素などでの酸化により開裂可能)、シリルエーテル結合(例えば、フッ化物イオン、酸または塩基により開裂可能)またはアリルカルバメート結合(例えば、パラジウム錯体存在下開裂可能)を含む。ある態様において、結合は、第二開裂がヒドロキシル部分を遊離するように選択する。ある態様において、開裂はリンカー反応部位を除去する(例えば、隣接ジオールの酸化は2つの別々のカルボニル化合物を残し、ジオールはもはや存在しない)。ある態様において、第二開裂部位は第二鎖に沿った任意の位置であるが、好ましくは第二鎖の5’末端近くの主鎖に結合する(例えば、固体支持体への結合の近く)。ある実施態様において、第一鎖および第二鎖の化学開裂条件は異なり、第一鎖および第二鎖は同じ開裂条件により開裂され得ない(例えば、開裂部位は直交性である)。ある態様において、両開裂工程は化学開裂工程である必要はない。例えば、第一鎖を酵素反応で開裂してよく、一方第二鎖は化学反応により開裂され、または第一鎖を化学反応で開裂してよく、一方第二鎖は酵素反応により開裂される。
【0016】
ある付加的な本発明の実施態様は、複数の固定化二本鎖ポリヌクレオチドを線形化する方法であって、二本鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体を用意し、各二本鎖ポリヌクレオチドは第一鎖および第二鎖を含むものであり、ここで、第一鎖および第二鎖はその5’末端で固体支持体に固定化され、ここで、各第一鎖は第一開裂部位を含み、ここで、各第二鎖はアゾベンゼンリンカーを含む第二開裂部位を含み;第一開裂部位で1以上の第一鎖を開裂し、1以上の開裂第一核酸および開裂固定化第一鎖を産生し;固体支持体から開裂第一核酸を除去し;固定化第二鎖を配列決定し;第二鎖に相補的な誘導体第一鎖を再合成し;そして第二開裂部位で1以上の第二鎖を開裂し、1以上の開裂第二核酸および開裂固定化第二鎖を産生することを含む、方法に関する。このような方法のある態様において、固定化誘導体第一鎖は、固体支持体から開裂第二核酸の除去後固体支持体上に残り、開裂固定化第二鎖とハイブリダイズしたままである。
【0017】
ある態様において、方法は、さらに、固体支持体から開裂第二核酸除去後の固定化誘導体第一鎖の配列決定を含む。ある態様において、配列決定は、固定化誘導体第一鎖に固定化誘導体第一鎖に相補的な標識ヌクレオチドを連続的に取り込み、各連続的取り込み後標識ヌクレオチドを検出することを含む。ペアエンド配列決定において、二本鎖核酸の両鎖は最終的に配列決定され、このような場合、固定化誘導体第一鎖の配列決定をここでは「リード2」と称する。
【0018】
本発明のある実施態様は、ペアエンド配列決定方法における化学反応により除去され得る3’遮断部分を製造する方法に関する(引用により全体として本明細書に包含させる米国公開2009/0088327に記載)。方法は、二本鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体を用意し、各二本鎖ポリヌクレオチドは第一鎖および第二鎖を含むものであり、ここで、第一鎖および第二鎖はその5’末端で固体支持体に固定化され、ここで、各第一鎖は第一開裂部位を含み;第一開裂部位で1以上の第一鎖を開裂して、1以上の開裂第一核酸および開裂固定化第一鎖を産生し;そして3’遮断部分を開裂固定化第一鎖の3’末端に再導入し、ここで、3’遮断部分は化学反応により除去され得ることを含む。ある他の実施態様において、開裂固定化第一鎖の3’末端に3’遮断部分を導入する代わりに、3’遮断部分を、該開裂工程後に第一開裂部位から産生する。ある実施態様において、3’遮断部分は、ホスフェート部分を含む修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含む。このような実施態様のある場合において、3’遮断部分は修飾ヌクレオシドを含み、修飾ヌクレオシドはヌクレオシドの5’位に余分の-CHOHまたは保護-CHOHを含む。他のこのような実施態様において、3’遮断部分は修飾ヌクレオシドを含み、修飾ヌクレオシドはヌクレオシドの5’位に余分の-CHNHまたは保護-CHNHを含む。ある実施態様において、方法は、さらに、例えば、フッ素剤または塩基を含む水溶液中での、化学反応における3’遮断部分の除去を含む。
【0019】
本発明のある実施態様は、固定化された複数の第一鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体に関し、各第一鎖ポリヌクレオチドはパラジウム錯体またはニッケル錯体による化学開裂を受けることができる第一開裂部位を含み、ここで、複数の第一鎖ポリヌクレオチドはその5’末端で固体支持体に固定化される。ある実施態様において、固体支持体は、さらに固定化された複数の第二鎖ポリヌクレオチドを含み、各第二鎖ポリヌクレオチドは第二開裂部位を含み、ここで、複数の第二鎖ポリヌクレオチドはその5’末端で固体支持体に固定化される。ある実施態様において、パラジウム錯体はパラジウム(0)錯体である。ある実施態様において、第一開裂部位はアリル官能基を含む。ある実施態様において、第一開裂部位はアリルdTを含む。あるさらなる実施態様において、第一開裂部位は、化学開裂後開裂固定化第一鎖に残るホスフェート部分をさらに含む。ある実施態様において、ホスフェート部分は式(I)の構造を含む。ある実施態様において、第二開裂部位は、化学開裂、光開裂、酵素開裂またはこれらの組み合わせからなる群から選択される方法により開裂され得る。ある実施態様において、第二開裂部位は化学開裂反応により開裂される。このような実施態様のある場合において、第二開裂部位は、下記式(VIII)または(VIIIa)のジオールリンカーまたは式(X)のアゾベンゼンリンカーを含み得る。
【0020】
本発明はまた修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドおよびこのような化合物を製造する方法に関する。ある態様において、修飾ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオチドは、式(II):
【化2】
〔式中、RはH、OHまたはOPGであり;RはHまたはPGであり;RはH、PGであるかまたは-ORはホスフェート基であり;PGはヒドロキシル保護基であり;塩基はアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の構造を含む。ある実施態様において、ホスフェート基は負に荷電していてよい(例えば、-PO )。ある態様において、修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドは式(IIa):
【化3】
の構造を有する。
【0021】
ある態様において、修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドは、式(II)の修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドがオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに取り込まれ、ここで、アリル修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドの3’酸素が他方のヌクレオチドの5’末端に共有結合しているとき(構造は示していない)、式(II’):
【化4】
の構造を含む。ある実施態様において、ホスフェート基は負に荷電していてよい(例えば、-PO )。
【0022】
他の態様において、オリゴヌクレオチドはアリルヌクレオシドまたはヌクレオチドを含み、ここで、オリゴヌクレオチドは式(III):
【化5】
〔式中、各塩基は独立してアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の化合物であり;そしてオリゴヌクレオチドは所望により固体支持体に結合している。ある実施態様において、ホスフェート基は負に荷電していてよい(例えば、-PO )。
【0023】
ある態様において、オリゴヌクレオチドの5’末端(アスタリスクの位置)は固体支持体に結合する。
【0024】
さらに本発明は、アリルヌクレオチドをポリヌクレオチドに取り込むための化学反応剤に関し、ここで、該化学反応剤は式(IV):
【化6】
〔式中、PGはHまたはヒドロキシル保護基であり;そして塩基はアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の化合物である。
【0025】
ある態様において、PGは、弱酸性条件下で開裂可能な保護基である。ある態様において、PGはトリチルまたはジメトキシトリチル(DMT)である。
【0026】
ある態様において、式(IV)の化合物を製造する方法は、式A:
【化7】
の化合物とビニルグリニャール試薬(例えばビニルMgClまたはビニルMgBr)を、所望により室温で反応させて、式B:
【化8】
の化合物を形成することを含む。
【0027】
ある態様において、方法は、式C
【化9】
の化合物(所望によりフィッツナー・モファット酸化によりまたは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)またはN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジクロロ酢酸(DCA)およびDMSOを使用して)を酸化して、式Aの化合物を産生することを含む。
【0028】
ある態様において、方法は、式D:
【化10】
の化合物とTBDPSCl(tert-ブチルジフェニルシリルクロライド)を、ワンポット法でビス-保護中間体を単離することなく塩基(例えばイミダゾール)、続いてPTSA(p-トルエンスルホン酸)などの弱酸存在下で反応させて、式Cの化合物を産生することを含む。
【0029】
他の態様において、ヌクレオシドまたはヌクレオチドは、式(I):
【化11】
〔式中、Rは-NH、-OH、-NHC(O)ORまたは-OCHOSi(R)であり;RはC1-4アルキル、tert-ブチル、アリル、ベンジルまたは9-フルオレニルメチルであり;各Rは独立してC1-4アルキルおよびフェニルからなる群から選択され;そしてRはH、C1-4アルキル、場合により置換されているテトラヒドロフランまたはヌクレオチドである。〕
の構造の3’遮断部分を含む。ある実施態様において、ホスフェート基は負に荷電していてよい(例えば、PO )。
【0030】
他の態様において、3’ホスフェート修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドは式(V):
【化12】
〔式中、Rは-NH、-OH、-NHC(O)ORまたは-OCHOSi(R)であり;
はC1-4アルキル、tert-ブチル、アリル、ベンジルまたは9-フルオレニルメチルであり;
各Rは独立してC1-4アルキルおよびフェニルからなる群から選択され;そして
塩基は所望により保護されているアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の構造を含む。ある実施態様において、ホスフェート基は負に荷電していてよい(例えば、PO )。ある実施態様において、式(V)の化合物は、式(V’)の化合物から産生され得る。
【化13】
〔式中、XはOまたはNHであり;R1’は保護OH(すなわち、-O-TOM、-O-トリチル、-O-DMT、-OTMS、-O-TBDMS、-O-TIPS、-OBz)または保護NH(すなわち、-NH-Boc、-NH-Fmoc、-NH-CBz、-NH-Alloc)であり;そしてRはNHまたはOHである。〕
【0031】
他の態様において、オリゴヌクレオチドは式(V)の3’ホスフェート修飾ヌクレオチドを含み、ここで、オリゴヌクレオチドは式(VI):
【化14】
〔式中、Rは-NH、-OH、-NHC(O)ORまたは-OCHOSi(R)であり;
はC1-4アルキル、tert-ブチル、アリル、ベンジルまたは9-フルオレニルメチルであり;
各Rは独立してC1-4アルキルおよびフェニルからなる群から選択され;
各塩基は独立して所望により保護されているアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の化合物である。ある実施態様において、オリゴヌクレオチドは所望により固体支持体に結合している。ある実施態様において、ホスフェート基は負に荷電していてよい(例えば、PO )。ある実施態様において、式(VI)の化合物は式(VI’)の化合物から製造され得る。
【化15】
〔式中、XはOまたはNHであり;R1’は保護OH(すなわち、-O-TOM、-O-トリチル、-O-DMT、-OTMS、-O-TBDMS、-O-TIPS、-OBz,)または保護NH(すなわち、-NH-Boc、-NH-Fmoc、-NH-CBz、-NH-Alloc)であり;そしてRはNHまたはOHである。〕
【0032】
式(V)または(VI)のある態様において、Rは-NHC(O)ORである。ある態様において、Rは9-フルオレニルメチル、ベンジルまたはアリルである。ある態様において、Rは-OCHOSi(R)である。ある態様において、各Rはイソプロピルである。ある態様において、各Rは独立してメチル、エチル、tert-ブチルまたはフェニルである。
【0033】
本発明はまた3’ホスフェート修飾ヌクレオチドをポリヌクレオチドに導入するための化学反応剤に関し、ここで、該化学反応剤は式(VII):
【化16】
〔式中、Rは上に定義したとおりであり;PGはHまたはヒドロキシル保護基であり;そして塩基は所望により保護されているアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の化合物である。
【0034】
式(VII)のある態様において、Rは-NHC(O)ORである。ある態様において、Rは9-フルオレニルメチル、ベンジルまたはアリルである。ある態様において、Rは-OCHOSi(R)である。ある態様において、各Rはイソプロピルである。ある態様において、各Rは独立してメチル、エチル、tert-ブチルまたはフェニルである。
【0035】
本発明はまたポリヌクレオチドへの取り込みのためのジオールリンカーを製造する方法に関する。ある態様において、ジオールリンカーは、米国特許8,715,966に記載のジオールリンカーである。ある態様において、ジオールリンカーは、式(VIII):
【化17】
〔式中、rは2、3、4、5または6であり;
sは2、3、4、5または6であり;
「a」酸素は第一ヌクレオチドの3’ヒドロキシル酸素であり;そして
「b」酸素は第二ヌクレオチドの5’ヒドロキシル酸素である。〕
の構造を有する。
【0036】
ある態様において、ジオールリンカーは式(VIIIa):
【化18】
〔式中、「a」および「b」は上に定義したとおりである。〕
の構造を有する。
【0037】
本発明は、式(VIII)または(VIIIa)のリンカーのポリヌクレオチドへの取り込みのための化学反応剤を製造する方法に関し、ここで、該化学反応剤は式(IX):
【化19】
〔式中、rは2、3、4、5または6(ある態様において、rは5)であり;
sは2、3、4、5または6(ある態様において、sは3)であり;そして
PGは弱酸性条件下で除去可能な保護基である(例えば、トリチルまたはジメトキシトリチル)。〕
の化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】イルミナの合成時解読(Sequencing-by-Synthesis)(SBS)化学のワークフローの実施態様を図示する。
【0039】
図2A】Pd(0)錯体で処理前後の非パターン化高プライマー密度フローセル(flow cell)表面のTyphoon画像を図示し、ここで、フローセル表面はアリル修飾プライマーが移植されている。
【0040】
図2B図2Aに記載するPd(0)処理後の、アリル官能基がない対照プライマーが移植されたフローセル表面と比較したプライマー密度の変化を示す棒グラフである。
【0041】
図3A】アリル修飾P5プライマーおよび標準P7プライマーを移植した非パターン化高プライマー密度フローセル(チャネル1~4)と、標準P5/P7プライマー移植フローセル(チャネル5~8)を比較した、TET色素表面蛍光QCアッセイ(TET-QC)結果を示す棒グラフである。
【0042】
図3B図3Aに記載するTET-QC後のフローセル表面のTyphoon画像を図示する。
【0043】
図4】標準フローセルおよび新規タイプのフローセルを使用したMiSeq(登録商標)2チャネル装置での配列決定データの%誤り率を図示する。
【0044】
図5A】1~10当量THP(10mg/mL、各条件N=4)存在下Pd(C)Cl)から単離した製剤の、(Pd(C)Cl)(6mM)、THP(60mM)およびアスコルビン酸ナトリウム(6mM)(N=2)の製剤と比較したP15開裂活性を図示する。
【0045】
図5B】[Pd(C)(THP)]Clおよび1当量以上のTHP(12mM Pd、各条件N=2)を含む製剤の、(Pd(C)Cl)(6mM)、THP(60mM)およびアスコルビン酸ナトリウム(6mM)(N=2)の製剤と比較したP15開裂活性を図示する。
【0046】
図6A】in situで産生したPd(0)反応剤と比較した、10mM Pd(THM)に対するNovaSeqTM平均リード1強度を示す。
【0047】
図6B】in situで産生したPd(0)反応剤と比較した、10mM Pd(THM)に対するNovaSeqTM平均PhiX誤り率を示す。
【0048】
図7】(Pd(C)Cl)(6mM)、THP(60mM)およびアスコルビン酸ナトリウム(6mM)の製剤と比較した、Pd(THP)2-4(10mg/mL)のP15開裂活性を示す。
【0049】
図8】Pd-THPまたはNi-THP処理後のP15/P7プライマーを移植したフローセルの蛍光強度の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
実施態様の詳細な記載
非酵素化学線形化ストラテジーは、各配列解読に先立ち架橋二本鎖ポリヌクレオチド構造を開裂するための魅力的な代替手段である。特に、化学物質は長期室温で保存でき、酵素と比較して比較的安価である。本発明は、配列決定用鋳型の産生のために固体支持体に固定化された二本鎖ポリヌクレオチドのクラスターを化学的に線形化する方法に関する。各二本鎖ポリヌクレオチドは第一鎖および第二鎖を含む。第一鎖は、固体支持体に固定化された第一伸長プライマーの伸長により産生され、第二鎖は、固体支持体に固定化された第二伸長プライマーの伸長により産生される。第一および第二鎖の各々は開裂部位を含む。ある実施態様において、第一鎖は、パラジウム錯体またはニッケル錯体、例えば、Pd(0)錯体またはNi(0)錯体により開裂され得る開裂部位を含む。特定の実施態様において、開裂部位は第一鎖の第一伸長プライマー部分に位置する。さらなる実施態様において、開裂部位は、アリル官能基を有するチミンヌクレオシドまたはヌクレオチドアナログを含む。ある実施態様において、第二鎖は、化学反応剤、例えば、Naにより開裂され得るアゾベンゼンリンカーを含む開裂部位を含む。あるいは、第二鎖は、過ヨウ素酸、例えば、NaIOにより開裂され得る開裂部位を含む。ここに記載する方法を、Illumina(San Diego, CA)のHiSeq(登録商標)、MiSeq(登録商標)またはNextSeq(登録商標)システムなどのシステムで合成による配列決定(SBS)反応の一部として使用し得る。
【0051】
図1は、イルミナSBS化学の標準ワークフローの実施態様を記載する。先ず、固体支持体表面に固定化された複数のP5/P7プライマーを含む固体支持体を用意する。P5およびP7プライマーの各々は配列内に開裂部位を有する。ある実施態様において、P5プライマーの開裂部位はデオキシウリジン(U)である。ある実施態様において、P7プライマーの開裂部位は8-オキソ-グアニンヌクレオチド(oxo-G)である。配列決定する一組の標的DNA分子が固定化P5/P7プライマーとハイブリダイズされる。ハイブリダイゼーション後、元の標的DNA分子が除去され、P5/P7プライマーを含む伸長ポリヌクレオチドの相補コピーのみが残される。この工程は「シーディング」工程としても知られる。次いで、伸長P5/P7ポリヌクレオチドが「架橋増幅」と称される手順により増幅され、両鎖が5’末端で固体支持体に結合した二本鎖クラスターが形成される。「クラスター化」工程後、第一線形化が、P5プライマーを含む伸長ポリヌクレオチドの一部を除去するために実施される。ある実施態様において、このような除去は、P5プライマーのU位置を開裂するための酵素USERを使用する酵素開裂反応を促進する。第一ラウンドのSBS(リード1)後、再び二本鎖ポリヌクレオチドを形成させるための再合成を実施する。次いで、第二線形化が、P7プライマーを含む伸長ポリヌクレオチドの一部を除去するために実施される。ある実施態様において、このような除去はP7プライマーのoxo-G位置を開裂するための酵素FPGを使用する酵素開裂反応を促進する。次いで、第二ラウンドのSBSが実施され(リード2)、標的DNAが配列決定される。
【0052】
P5およびP7プライマーが、HiSeq(登録商標)、MiSeq(登録商標)、NextSeq(登録商標)およびGenome Analyzer(登録商標)プラットフォームでの配列決定のためにIllumina, Inc.から市販されているフローセルの表面で使用される。プライマー配列は米国特許公開2011/0059865A1に記載され、これは、引用により全体として本明細書に包含させる。
【0053】
ペアエンド配列決定のための標準P5およびP7プライマー配列は次のものを含む。
P5:ペアエンド 5’→3’
AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACAC(配列番号1)
P7:ペアエンド 5’→3’
CAAGCAGAAGACGGCATACGAG*AT(配列番号2)
ここで、G*は8-オキソ-グアニンである。
【0054】
所望により、P5およびP7プライマーの一方または両方はポリTテイルを含み得る。ポリTテイルは、一般に上記配列の5’末端に位置するが、ある場合、3’末端に位置し得る。ポリT配列は、例えば、2~20の任意の数のTヌクレオチドを含み得る。
【0055】
ポリTスペーサーと共にPAZAM被覆フローセルで使用する標準P5およびP7プライマー配列は次のものを含む。
ポリTスペーサーを伴うP5プライマー:
5’-アルキン-TTTTTTTTTTAATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACAC(配列番号3)
ポリTスペーサーを伴うP7プライマー:
5’-アルキン-TTTTTTTTTTCAAGCAGAAGACGGCATACGAG*AT(配列番号4)
ここで、G*は8-オキソ-グアニンである。
さらなるプライマー配列は、シングルリードSBSのための一組のP5およびP7プライマーを含む。
P5:シングルリード:5’→3’
AATGATACGGCGACCACCGA(配列番号7)
P7:シングルリード5’→3’
CAAGCAGAAGACGGCATACGA(配列番号8)
【0056】
標準P5/P7プライマーまたはオリゴが、例えば、Pd錯体またはNi錯体による化学開裂を受けることができる第一または第二開裂部位を取り込むために修飾されるとき、ここで使用する、P5/P7プライマーの修飾は、P5/P7配列における既存のヌクレオチド(またはヌクレオシド)の、異なる化学成分、例えば、部位特異的化学開裂を可能とする特定の官能基を有する修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドアナログでの置き換えまたは置換をいう。修飾はまた既存のP5/P7配列への新規化学成分の挿入もいうことができ、ここで、該新規化学成分は部位特異的化学開裂を受けることができる。ある実施態様において、修飾P5/P7プライマーは、それぞれ、次のものを含むP15/P17プライマーをいう。
P15プライマー5’→3’
5’-アルキン-TTTTTTAATGATACGGCGACCACCGAGAXCTACAC(配列番号5)
ここで、スキーム1に示すとおりX=アリルTヌクレオシド。
P17プライマー5’→3’
5’-アルキン-TTTTTTYYYCAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT(配列番号6)
ここで、Yは、例えば、引用により全体として本明細書に明示的に包含させる米国公開2012/0309634に開示の過ヨウ素酸のような反応剤での酸化により、化学開裂に付されるジオールリンカーである。ある実施態様において、ジオールリンカーは、ここに記載する式(VIII)または(VIIIa)を含む。
【0057】
定義
ここで使用する見出しは構成目的のためのみであり、記載する主題を限定すると解釈してはならない。
【0058】
他に定義しない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、当業者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。用語「含む」ならびに他の形態、例えば「含み」、「包含する」および「包含し」の使用は、限定的ではない。用語「有する」ならびに他の形態、例えば「有し」、「含有する」および「含有し」は、限定的ではない。本明細書で使用する限り、仮定句であれ、特許請求の範囲の主文であれ、用語「含む」および「含み」は、制限のない意味を有するとして解釈される。すなわち、上記用語は、用語「少なくとも有する」または「少なくとも含む」と同義と解釈される。例えば、方法の文脈で使用するとき、用語「含む」は、方法が少なくともその言及する工程を含むが、さらなる工程も含み得ることを意味する。化合物、組成物またはデバイスについて使用するとき、用語「含む」は、化合物、組成物またはデバイスが少なくともその言及する特性または成分を含むが、さらなる特性または成分も含み得ることを意味する。
【0059】
ここで使用する、一般的有機略語は次のとおり定義される:
【表1】


【表2】

【0060】
ここで使用する、用語「共有結合的に結合」または「共有結合」は、原子間の電子対の共有により特徴づけられる、化学結合の形成をいう。例えば、共有結合的に結合ポリマーコーティングは、他の手段、例えば、接着または静電気的相互作用による表面への結合と比較して、基質の官能化表面と化学結合を形成するポリマーコーティングをいう。
【0061】
ここで使用する、用語「伸長プライマー」は、固体支持体に固定化されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、ここで、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、標的一本鎖核酸分子の配列と特異的に結合できる。ハイブリダイゼーション手順後、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、標的核酸分子と相補的である配列を含むように伸長される。幾つかの例において、用語「伸長プライマー」は「増幅プライマー」と相互交換可能に使用される。
【0062】
ここで使用する、用語「核酸」および「ヌクレオチド」は、当分野でのそれらの使用に一致し、かつ天然に存在する種またはその機能的アナログを含むことを意図する。特に有用な核酸の機能的アナログは、核酸と配列特異様式でハイブリダイズできるかまたは特定のヌクレオチド配列の複製の鋳型として使用され得る。天然に存在する核酸は、一般にホスホジエステル結合を含む主鎖を有する。アナログ構造は、当分野で知られる多様なもののいずれかを含む、代替の主鎖結合を有し得る。天然に存在する核酸は、一般にデオキシリボース糖(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)に見られる)またはリボース糖(例えば、リボ核酸(RNA)に見られる)を有する。核酸は、これらの糖部分の当分野で知られる多様なアナログの何れかを有するヌクレオチドを含み得る。核酸は天然または非天然ヌクレオチドを含み得る。これに関し、天然デオキシリボ核酸はアデニン、チミン、シトシンまたはグアニンからなる群から選択される1以上の塩基を有することができ、リボ核酸はウラシル、アデニン、シトシンまたはグアニンからなる群から選択される1以上の塩基を有することができる。核酸またはヌクレオチドに含まれ得る有用な非天然塩基は当分野で知られる。用語「プローブ」または「標的」は、核酸と関連して使用するとき、ここに示す方法または組成物における核酸についての語義的定義を意図し、他に明示されているものを超えて、核酸の構造または機能を必ずしも制限しない。用語「プローブ」および「標的」は、タンパク質、小分子、細胞などのような他の試験対象にも同様に適用され得る。
【0063】
ここで使用する、用語「ポリヌクレオチド」は、DNA(例えば、ゲノムDNA、cDNA)、RNA(例えば、mRNA)、合成オリゴヌクレオチドおよび合成核酸アナログを含む核酸全般をいう。ポリヌクレオチドは、天然または非天然塩基またはこれらの組み合わせおよび天然または非天然主鎖結合、例えば、ホスホロチオエート、PNAまたは2’-O-メチル-RNAまたはこれらの組み合わせを含み得る。幾つかの例において、用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」または「オリゴ」は、同義に使用される。
【0064】
ここで使用する用語「開裂部位」は、ポリヌクレオチドの一部が開裂反応により除去され得る部分であるポリヌクレオチド配列の位置をいう。開裂部位の位置は、好ましくは予め決定されており、開裂位置が前もって分かっていない無作為開裂とは異なって、開裂位置が前もって決定されていることを意味する。
【0065】
ここで使用する、用語「固体支持体」は、水性液体に不溶性である強固な基質をいう。基質は非多孔性でも、多孔性でもよい。基質は、所望により液体を取り込むことができるが(例えば、多孔性により)、一般に基質が液体を取り込んだときに実質的に膨潤せず、液体を乾燥により除去したときに実質的に収縮しない程度に十分強固である。非多孔性固体支持体は、一般に液体またはガス不透過性である。固体支持体の例は、ガラスおよび修飾または官能化ガラス、プラスチック(例えば、アクリール樹脂、ポリスチレンおよびスチレンと他の物質のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロンTM、環状オレフィン、ポリイミドなど)、ナイロン、セラミクス、樹脂、ゼオノア、シリカまたはシリコンおよび修飾シリコンを含むシリカ-ベースの物質、炭素、金属、無機ガラス、光ファイバ束およびポリマーを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施態様のための特に有用な固体支持体は、フローセルの構成物であるかまたはフローセル装置内にある。固体支持体は、平面表面(例えば、フローセル)または非平面表面(例えば、ビーズ)を有し得る。
【0066】
置換基がジラジカル(すなわち、分子の残りへの結合の2点を有する)として記載されている限り、置換基は、特に断らない限り任意の方向の配置で結合し得る。それ故に、例えば、-AE-または
【化20】
として記載される置換基は、Aが分子の左端結合点に結合するように配置されている置換基ならびにAが分子の右端結合点に結合するように配置されている場合を含む。
【0067】
パラジウム(Pd)またはニッケル(Ni)による第一化学線形化の方法
本発明のある実施態様は、複数の固定化二本鎖ポリヌクレオチドを線形化する方法であって、二本鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体を用意し、ここで、各二本鎖ポリヌクレオチドは第一鎖および第二鎖を含むものであり、ここで、第一鎖および第二鎖は、各々その5’末端で固体支持体に固定化されており、そして、各第一鎖は開裂反応剤の存在下で化学開裂を受けることができる第一開裂部位を含み;二本鎖ポリヌクレオチドと開裂反応剤を接触させ、それにより第一開裂部位で1以上の第一鎖を開裂し、1以上の開裂第一核酸および開裂固定化第一鎖を産生し;そして固体支持体から開裂第一核酸を除去することを含む、方法に関する。ある態様において、開裂部位はPd錯体またはNi錯体存在下、開裂を受け得る。ある態様において、開裂反応剤はPd錯体またはNi錯体の水溶液である。ある態様において、開裂反応剤はin situで調製される。
【0068】
ここに記載するPd/Ni線形化方法のある実施態様において、各第一鎖は固体支持体に固定化された第一伸長プライマーから伸長する。このような実施態様のある場合において、第一伸長プライマーは、ここに記載するP5もしくはP7配列またはP5もしくはP7に相補的な配列であるヌクレオチド配列を含む。ある実施態様において、第一伸長プライマーはP5ヌクレオチド配列(配列番号1)を含む。さらなる実施態様において、第一伸長プライマーはポリTスペーサーP5ヌクレオチド配列(配列番号3)を含む。ある実施態様において、第一伸長プライマーはP5プライマーである。さらなる実施態様において、第一伸長プライマーはポリTスペーサーP5プライマーである。さらなる実施態様において、第一伸長プライマーは、ここに記載するP5もしくはP7配列またはP5もしくはP7に相補的である配列であるヌクレオチド配列を含み、ここで、配列の1ヌクレオチドはパラジウム錯体存在下での開裂に感受性である修飾ヌクレオチドに置き換えられている。ある態様において、第一伸長プライマーは、ここに記載するP15のヌクレオチド配列(配列番号5)を含む。
【0069】
ここに記載するPd/Ni線形化方法のある実施態様において、第一伸長プライマーは第一開裂部位を含む。あるさらなる実施態様において、第一開裂部位は、例えばパラジウム錯体による化学開裂を受けることができる修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む。ある実施態様において、修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドは式(II):
【化21】
〔式中、RはH、OHまたはOPGであり;RはHまたはPGであり;RはH、PGであるかまたは-ORはホスフェート基であり;PGはヒドロキシル保護基であり;塩基はアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の構造を有する。ある実施態様において、ホスフェート基は負に荷電していてよい(例えば、-PO )。ある態様において、修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドは式(IIa):
【化22】
の構造を有する。
【0070】
ある実施態様において、修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチド部分を取り込む第一開裂部位は、式(II’)
【化23】
の構造を有し、ここで、アリル修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドの3’酸素が他方のヌクレオチドの5’末端に共有結合している(構造は示していない)。ある実施態様において、ホスフェート基は負に荷電していてよい(例えば、-PO )。
【0071】
あるさらなる実施態様において、修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドは検出可能標識、例えば、蛍光標識でさらに標識され得る。ある実施態様において、修飾ヌクレオチドはヌクレオチドまたはヌクレオシドの5’炭素にビニル置換基を含み、そうして5’ヒドロキシル基に関してアリル部分を形成する。ある実施態様において、ジヌクレオチド単位がアリルホスフェート部分を伴う開裂部位を含むように、5’ヒドロキシル基は第二ヌクレオチドの3’ホスフェートに接続される。ある実施態様において、修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドは、チミン(T)ヌクレオシドまたはヌクレオチドアナログである。さらなる実施態様において、3’ヒドロキシル保護(または遮断)基、例えば、ホスフェート部分(式(II’)に示す)は、第一鎖の化学開裂後、開裂固定化第一鎖に残る。このような実施態様のある場合において、第二ヌクレオチドの3’ホスフェート部分は修飾ヌクレオシドアナログの5’-炭素位置に共有結合する(すなわち、ホスフェート基は修飾ヌクレオチドの5’ヒドロキシルを含む)。ある実施態様において、開裂部位は第一伸長プライマーの3’末端付近、例えば、第一伸長プライマーの3’末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチド距離内に位置する。ある他の実施態様において、開裂部位は第一伸長プライマーの5’末端付近、例えば、第一伸長プライマーの5’末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチド距離内に位置する。ある場合、効率的DNA再合成を確実にするために、開裂部位は、好ましくは第一プライマーの3’末端に向かって、例えば、2~8または3~7または4~6ヌクレオチド距離内に位置する。ある実施態様において、第一伸長プライマーはP5プライマーであり、第一開裂部位はP5プライマー配列に位置する(例えば、修飾ヌクレオチドは、1ヌクレオチド付加または置き換えにより、P5プライマー配列に取り込まれる)。それ故に、ここに開示するP5配列(配列番号1または配列番号3)は、Pd/Ni錯体による化学開裂を受けることができる第一開裂部位を含むように修飾され、そうして修飾P5プライマーが形成される。ある実施態様において、修飾P5プライマーはここに開示するP15プライマー(配列番号5)を含むかまたはP15プライマーである。
【0072】
パラジウム反応剤
ここに記載するPd線形化方法のある実施態様において、化学線形化方法に使用するPd錯体は水可溶性である.このような実施態様のある場合において、Pd錯体はPd(0)錯体である。幾つかの例において、Pd(0)錯体を、アルケン、アルコール、アミン、ホスフィンまたは金属ハイドライドのような反応剤によるPd(II)錯体の還元によりin situ産生し得る。適当なパラジウム源は、NaPdCl、(PdCl(C))、[Pd(C)(THP)]Cl、[Pd(C)(THP)]Cl、Pd(OAc)、Pd(Ph)、Pd(dba)およびPd(TFA)を含む。このような実施態様のある場合において、Pd(0)錯体は、NaPdClからin situで産生される。他の実施態様において、パラジウム源はアリルパラジウム(II)クロライド二量体[(PdCl(C))]である。ある実施態様において、Pd(0)錯体は、Pd(II)錯体とホスフィンの混合により水溶液中で産生される。適当なホスフィンは、水可溶性ホスフィン、例えばトリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THM)、1,3,5-トリアザ-7-ホスファアダマンタン(PTA)、ビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスフィン二水和物カリウム塩、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびトリフェニルホスフィン-3,3’,3’’-トリスルホン酸三ナトリウム塩を含む。
【0073】
ある実施態様において、Pd(0)は、in situでのPd(II)錯体[(PdCl(C))]とTHPの混合により製造される。Pd(II)錯体とTHPのモル比は、約1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9または1:10であり得る。あるさらなる実施態様において、アスコルビン酸またはその塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム)などの1以上の還元剤が添加され得る。
【0074】
ある実施態様において、Pd(0)は、[Pd(C)(THP)]Cl、[Pd(C)(THP)]ClなどのPd(II)前触媒とさらなるTHPの混合により製造される。[Pd(C)(THP)]Clおよび[Pd(C)(THP)]Clを、(PdCl(C))と1~5当量のTHPを反応させることにより製造でき、それらを化学線形化反応への使用前に単離し得る。
【0075】
ある他の実施態様において、Pd(0)錯体はPd(THM)、Pd(THP)、Pd(THP)またはPD(THP)またはこれらの組み合わせである。
【0076】
ニッケル反応剤
ここに記載するNi線形化方法のある実施態様において、化学線形化方法において使用するNi錯体は水可溶性である。このような実施態様のある場合において、Ni錯体はNi(0)錯体である。幾つかの例において、Ni錯体は、Ni(II)化合物のアルケン、アルコール、アミン、ホスフィンまたは金属ハイドライドのような反応剤での還元によりin situで産生され得る。ある実施態様において、Ni(II)化合物はNiClである。適当なホスフィンは、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THM)、1,3,5-トリアザ-7-ホスファアダマンタン(PTA)、ビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスフィン二水和物カリウム塩、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびトリフェニルホスフィン-3,3’,3’’-トリスルホン酸三ナトリウム塩などの水可溶性ホスフィンを含む。ある実施態様において、Ni錯体は、NiClと1~10当量のTHPの混合により製造される。
【0077】
本発明のある実施態様は、複数の固定化二本鎖ポリヌクレオチドを線形化する方法であって、二本鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体を用意し、各二本鎖ポリヌクレオチドは第一鎖および第二鎖を含むものであり、ここで、各第一鎖は固体支持体に固定化された修飾P5プライマーから伸長し、各第二鎖は固体支持体に固定化されたP7プライマーから伸長し、第一鎖および第二鎖両者はその5’末端で固体支持体に固定化され、ここで、各修飾P5プライマーはPd(0)錯体による化学開裂を受けることができる第一開裂部位を含み;二本鎖ポリヌクレオチドとPd(0)錯体の水溶液を接触させ、それにより第一開裂部位で1以上の第一鎖を開裂し、1以上の開裂第一核酸および開裂固定化第一鎖を産生し;そして固体支持体から開裂第一核酸を除去することを含む、方法に関する。ある実施態様において、第一開裂部位は、アリル官能基を有する修飾Tヌクレオシドまたはヌクレオチドを含む。開裂部位は、さらに3’遮断部分、例えば、ホスフェート部分を含んでよく、これは、開裂固定化第一鎖の3’-OHを遮断するために、Pd開裂反応後第一鎖に残る。ある実施態様において、3’遮断部分はホスフェート基を含む修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含み、これは、化学反応または酵素反応により脱保護され得る。ある実施態様において、修飾P5プライマーはP15を含むかまたはP15である。
【0078】
3’-脱保護
本発明のある実施態様は、オリゴヌクレオチドから3’末端保護基を除去する方法であって、5’末端で固定化された複数のオリゴヌクレオチドを含む固体支持体を用意し、ここで、オリゴヌクレオチドは各々ここに記載する式(I)の構造を有する3’末端保護基を含み;そして、オリゴヌクレオチドと脱保護剤を接触させ、それにより、3’末端保護基を開裂して、各々遊離3’末端ヒドロキシル基を有するオリゴヌクレオチドを産生することを含む、方法に関する。3’末端修飾ホスフェート部分は、式(I):
【化24】
〔式中、Rは-NH、-OH、-NHC(O)ORまたは-OCHOSi(R)であり;RはC1-4アルキル、tert-ブチル、アリル、ベンジルまたは9-フルオレニルメチルであり;各Rは独立してC1-4アルキルおよびフェニルからなる群から選択され;そしてRはH、C1-4アルキル、場合により置換されているテトラヒドロフランまたはヌクレオチドである。〕
の構造を有する。
【0079】
あるさらなる実施態様において、保護基は、式(V):
【化25】
〔式中、塩基は所望により保護されているアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の構造を含む。ある実施態様において、式(I)または(V)における1以上のホスフェート基は負に荷電していてよい(例えば、PO )。
【0080】
式(I)または(V)のある実施態様において、Rは-NHC(O)ORである。ある実施態様において、Rは9-フルオレニルメチル、ベンジルまたはアリルである。ある実施態様において、Rは-OCHOSi(R)である。ある実施態様において、各Rはイソプロピルである。ある実施態様において、各Rは独立してメチル、エチル、tert-ブチルまたはフェニルである。
【0081】
ある実施態様において、式(I)または(V)の修飾ホスフェート基は、フルオライド含有反応剤または塩基などの化学脱保護剤により除去され得る。非限定的例はテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)、HF、NHF、CsF、NaOHおよびKOHおよびこれらの組み合わせを含む。
【0082】
ここに記載するPd/Ni線形化方法のある実施態様において、第一線形化後、固定化第一鎖の残りの部分は非保護3’末端ヒドロキシル基を有し、方法は、さらにPd/Ni開裂反応後の開裂固定化第一鎖の残りの部分の3’末端の遮断を含む。このような実施態様のある場合において、遮断は、3’ヒドロキシル保護基としての開裂固定化第一鎖の3’末端のリン酸化を含む。ある他の実施態様において、各開裂固定化第一鎖の3’末端は保護基を含む。このような実施態様のある場合において、遮断効果は、開裂固定化第一鎖の3’-OHに対する遮断基として役立つ、開裂反応後開裂固定化第一鎖に残るホスフェート部分または修飾ホスフェート部分により達成され得る。ある実施態様において、修飾ホスフェート部分は、ここに記載する式(I)または(V)の構造を含む。
【0083】
ホスフェート基または修飾ホスフェート基は、固定化第二鎖に相補的である誘導体第一鎖を産生するために、DNA再合成前に除去される。ある実施態様において、3’末端保護基は、T4PNKなどのホスファターゼにより除去され得るホスフェート基である。ある他の実施態様において、3’末端保護基は、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)、HF、NHF、CsF、NaOHまたはKOHまたはこれらの組み合わせなどのフルオライド含有反応剤または塩基により除去され得る式(I)または(V)の修飾ホスフェート基である。
【0084】
第二線形化の方法
ここに記載するPd/Ni線形化方法のある実施態様において、各第二鎖は固体支持体に固定化された第二伸長プライマーから伸長され、各第二鎖は第二開裂部位を含む。このような実施態様のある場合において、第二伸長プライマーは、ここに記載するP5もしくはP7配列またはP5もしくはP7に相補的である配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。ある実施態様において、第二伸長プライマーはP7ヌクレオチド配列(配列番号2)を含む。さらなる実施態様において、第二伸長プライマーはポリTスペーサーP7ヌクレオチド配列(配列番号4)を含む。ある態様において、第二伸長プライマーは、修飾ヌクレオチドが取り込まれた(配列に3’ヒドロキシル保護基を有する塩基を付加するか配列における塩基を置き換える)P5またはP7であるヌクレオチド配列を含む。さらなる実施態様において、第二伸長プライマーはP17プライマー(配列番号6)を含む。ある実施態様において、第二伸長プライマーはP7プライマーである。さらなる実施態様において、第二伸長プライマーはポリTスペーサーP7プライマーである。他の実施態様において、第二伸長プライマーはP17プライマーである。
【0085】
ここに記載するPd/Ni線形化方法のある実施態様において、第二伸長プライマーは第二開裂部位を含む。このような実施態様のある場合において、第二開裂部位はパラジウム錯体またはニッケル錯体による化学開裂を受けることができない。ある態様において、第二開裂部位は、化学開裂、光開裂、酵素開裂またはこれらの組み合わせからなる群から選択される方法により開裂され得る。ある実施態様において、第二開裂部位は酵素開裂反応により開裂され得る。ある実施態様において、第二伸長プライマーはここに開示するP7プライマー(配列番号2または配列番号4)であり、第二開裂部位はoxo-Gである。このような実施態様のある場合において、開裂反応に使用する酵素はFPGである。
【0086】
ある他の実施態様において、第二開裂部位は化学開裂反応により開裂され得る。このような実施態様のある場合において、第二伸長プライマーは、ここに記載する方式による化学開裂に感受性である修飾ヌクレオチドを含むように修飾されたP7プライマーを含むかまたはP7プライマーである。ある実施態様において、第二伸長プライマーは、ここに開示するP17プライマー(配列番号6)を含むかまたはP17プライマーであり、第二開裂部位は過ヨウ素酸、例えば、過ヨウ素酸ナトリウムでの処理により開裂可能な1以上のジオール結合を含む。このような実施態様のある場合において、ジオールリンカーは、式(VIII):
【化26】
〔式中、rは2、3、4、5または6;
sは2、3、4、5または6であり;
「a」酸素は第一ヌクレオチドの3’ヒドロキシル酸素であり;そして
「b」酸素は第二ヌクレオチドの5’ヒドロキシル酸素である。〕
の構造を含む。
【0087】
ある実施態様において、ジオールリンカーは式(VIIIa):
【化27】
〔式中、「a」および「b」は上に定義したとおりである。〕
の構造を含む。
【0088】
ある他の実施態様において、第二開裂部位は、化学開裂剤、例えば、Naにより開裂され得るアゾベンゼンリンカーを含む。このような実施態様のある場合において、アゾベンゼンリンカーは、式(X):
【化28】
〔式中、RはH、ヒドロキシルまたは保護ヒドロキシルであり;RはH、C1-6アルキルまたはC1-6アルコキシであり;各RおよびRは独立してH、ハロ、-C(O)ORまたは-C(O)NHRであり;各RおよびRは独立してH、C1-6アルキルまたはC6-10アリールであり;Xは-C(O)-、-CH-または-C(O)NH-であり;そして各m1、m2およびm3は独立して1、2、3、4、5または6である。〕
の構造を含む。ある態様において、Rはヒドロキシルである。ある他の態様において、Rは-OBzなどの保護ヒドロキシルである。ある態様において、Rは-C(O)ORである。ある態様において、Rは-C(O)NHRである。このような態様において、RおよびRは、独立してメチル、エチル、イソプロピルまたはt-ブチルなどのC1-6アルキルである。ある他の態様において、RはHである。ある態様において、RはHである。ある態様において、RはHである。ある態様において、Xは-CH-である。ある他の態様において、Xは-C(O)NH-である。ある態様において、m1は2、3または4である。ある態様において、m2は1、2または3である。ある態様において、m3は1、2または3である。
【0089】
式(X)のアゾベンゼンリンカーのある実施態様において、一つの末端酸素原子が、例えば、式(Xa)または式(Xb):
【化29】
の構造で、さらにホスフェート基に結合する。
ある態様において、「a」酸素は第一ヌクレオチドの3’ヒドロキシル酸素である。ある態様において、「b」酸素は第二ヌクレオチドの5’ヒドロキシル酸素である。ある他の態様において、「b」酸素は第一ヌクレオチドの3’ヒドロキシル酸素である。ある他の態様において、「a」酸素は第二ヌクレオチドの5’ヒドロキシル酸素である。
【0090】
式(Xa)または(Xb)のアゾベンゼンリンカーは、化学反応剤によりオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに取り込まれ得て、ここで、該化学反応剤は式(XIa)または(XIb):
【化30】
〔式中、R~R、X、m1、m2およびm3は(X)で定義され;そして
PGは弱酸性条件下で除去可能な保護基(例えば、トリチルまたはジメトキシトリチル)である。〕
のホスホロアミダイト化合物である。
【0091】
さらなる本発明の実施態様は、複数の固定化二本鎖ポリヌクレオチドを線形化する方法であって、二本鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体を用意し、各二本鎖ポリヌクレオチドは第一鎖および第二鎖を含むものであり、ここで、第一鎖および第二鎖はその5’末端で固体支持体に固定化され、ここで、各第一鎖は第一開裂部位を含み、ここで、各第二鎖はアゾベンゼンリンカーを含む第二開裂部位を含み;第一開裂部位で1以上の第一鎖を開裂し、1以上の開裂第一核酸および開裂固定化第一鎖を産生し;固体支持体から開裂第一核酸を除去し;固定化第二鎖を配列決定し;第二鎖に相補的な誘導体第一鎖を再合成し;そして第二開裂部位で1以上の第二鎖を開裂し、1以上の開裂第二核酸および開裂固定化第二鎖を産生することを含む、方法に関する。このような方法のある実施態様において、各第一鎖は固体支持体に固定化された第一伸長プライマーから伸長され、ここで、第一伸長プライマーは第一開裂部位を含む。このような方法のある実施態様において、第一開裂部位は化学開裂、光開裂、酵素開裂およびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法により開裂され得て、例えば、第一開裂部位はここに記載するPd/Ni方法または酵素方法(例えば、UDG)により開裂され得る。このような実施態様のある場合において、第一伸長プライマーはP5、修飾P5またはP15を含む。ある実施態様において、各第二鎖は固体支持体に固定化された第二伸長プライマーから伸長され、ここで、第二伸長プライマーは第二開裂部位を含む。このような実施態様のある場合において、アゾベンゼンリンカーは、ここに記載する式(X)、(Xa)または(Xb)の構造を含む。ある実施態様において、アゾベンゼンリンカーはNaにより開裂される。ある実施態様において、固定化第二鎖の配列決定は、固定化第二鎖に相補的な標識ヌクレオチドを連続的に取り込み、標識ヌクレオチドを検出することを含む。ある実施態様において、各開裂固定化第一鎖の3’末端は、保護基、例えば、ホスフェート基またはここに記載する式(I)または(V)の構造を含む修飾ホスフェート部分を含む。保護基は、酵素反応(例えば、酵素T4PNK)または化学脱保護、例えば、式(I)の構造または(V)を含む修飾ホスフェート部分の脱保護についてここに記載するフルオライド含有反応剤または塩基で除去され得る。ある実施態様において、方法は、さらに、固体支持体から開裂第二核酸を除去し、誘導体第一鎖を配列決定することを含む。ある実施態様において、固定化誘導体第一鎖は、固体支持体から開裂第二核酸の除去後固体支持体上に残り、開裂固定化第二鎖とハイブリダイズしたままである。
【0092】
ここに記載する第一および第二線形化方法のある実施態様において、二本鎖ポリヌクレオチドは共有結合により固体支持体に固定化される。ある実施態様において、二本鎖ポリヌクレオチドは、固体支持体上のヒドロゲルまたはポリマーコーティングと共有結合する。ある実施態様において、ヒドロゲルまたはポリマーコーティングはPAZAMを含む。ある実施態様において、ヒドロゲルまたはポリマーコーティングも、例えば、表面に沈着した官能化シランとの反応により、固体支持体表面に共有結合される。ある実施態様において、官能化シランはノルボルネン由来シランである。シラン化処理固体支持体上のヒドロゲルまたはポリマーコーティングおよびヒドロゲルまたはポリマー被覆固体支持体にポリヌクレオチドまたはプライマーを移植する方法の非限定的例は、米国公開2014/0079923および2015/0005447に開示され、これらを引用により全体として本明細書に包含させる。
【0093】
Pd線形化のための移植固体支持体
本発明のある実施態様は、固定化された複数の第一鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体に関し、各第一鎖ポリヌクレオチドは化学開裂(例えば、ここに記載するパラジウム錯体またはニッケル錯体により)を受け得る第一開裂部位を含み、ここで、複数の第一鎖ポリヌクレオチドは5’末端で固体支持体に固定化される。
【0094】
ここに記載する固体支持体のある実施態様において、各第一鎖は固体支持体に固定化された第一伸長プライマーを含むかまたは第一伸長プライマーから伸長する。このような実施態様のある場合において、第一伸長プライマーは、ここに記載するP5もしくはP7配列またはP5もしくはP7に相補的である配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。ある実施態様において、第一伸長プライマーはP5ヌクレオチド配列(配列番号1)を含む。さらなる実施態様において、第一伸長プライマーはポリTスペーサーP5ヌクレオチド配列(配列番号3)を含む。ある実施態様において、第一伸長プライマーはP5プライマーである。さらなる実施態様において、第一伸長プライマーはポリTスペーサーP5プライマーである。ある実施態様において、P5またはP7配列は、開裂部位の少なくとも一部を形成する修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含むように、修飾される。
【0095】
ここに記載する固体支持体のある実施態様において、第一伸長プライマーは第一開裂部位を含む。あるさらなる実施態様において、第一開裂部位は、例えばパラジウム錯体またはニッケル錯体による化学開裂を受けることができる修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む。このような実施態様のある場合において、修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドはTヌクレオシドまたはヌクレオチドアナログである。このような実施態様のある場合において、開裂部位は、アリル官能基、例えば、Tヌクレオシドアナログの5’-炭素位置にビニル置換を含むTヌクレオシドアナログを含み、そうして5’ヒドロキシル基に関してアリル部分が形成される。このような実施態様のある場合において、修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドは、ここに記載する式(II)の構造を含む。ある実施態様において、5’ヒドロキシル基は、ジヌクレオチド単位がアリルホスフェート部分を伴う開裂部位を含むように、第二ヌクレオチドの3’ホスフェートに結合される。このような実施態様のある場合において、修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドは、ここに記載する式(II’)の構造を含む。ある実施態様において、第一伸長プライマーはP15プライマーを含むかまたはP15プライマーである。さらなる実施態様において、開裂部位は、第二ヌクレオチドに3’保護(または遮断)部分、例えば、ホスフェート部分も含む。遮断部分は、第一鎖の化学開裂後開裂固定化第一鎖に残る。ある実施態様において、第二ヌクレオチドの3’ホスフェート部分は修飾ヌクレオシドアナログの5’-炭素位置に共有結合する(すなわち、ホスフェート基は修飾ヌクレオチドの5’ヒドロキシルを含む)。ある実施態様において、開裂固定化第一鎖に残る遮断基はここに記載する式(I)または(V)の構造を含み、これは、フルオライド含有化合物または塩基などの化学脱保護反応剤で除去され得る。ある実施態様において、開裂固定化第一鎖に残る遮断基は、ホスファターゼ(例えば、T4PNK)により除去され得るホスフェート基である。ある実施態様において、開裂部位は第一伸長プライマーの3’末端付近、例えば、第一伸長プライマーの3’末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチド距離内に位置する。ある他の実施態様において、開裂部位は第一伸長プライマーの5’末端付近、例えば、第一伸長プライマーの5’末端から1、2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチド距離内に位置する。ある場合、効率的DNA再合成を確実にするために、開裂部位は、好ましくは第一プライマーの3’末端に向かって、例えば、2~8または3~7または4~6ヌクレオチド距離内に位置する。ある実施態様において、第一伸長プライマーはP5プライマーであり、第一開裂部位はP5プライマー配列に位置する(例えば、修飾ヌクレオチドは、1ヌクレオチド付加または置き換えにより、P5プライマー配列に取り込まれる)。それ故に、ここに開示するP5配列(配列番号1または配列番号3)は、Pd/Ni錯体による化学開裂を受けることができる第一開裂部位を含むように修飾され、そうして修飾P5プライマーが形成される。ある実施態様において、修飾P5プライマーはここに開示するP15プライマー(配列番号5)を含むかまたはP15プライマーである。あるさらなる実施態様において、修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドは、さらに、検出可能標識、例えば、蛍光標識で標識され得る。検出可能標識は、完了直後、移植反応の直接定量化を可能とする。
【0096】
ここに記載する固体支持体のある実施態様において、化学線形化方法に使用するPd錯体は水可溶性である。このような実施態様のある場合において、Pd錯体はPd(0)錯体である。幾つかの例において、Pd(0)錯体を、アルケン、アルコール、アミン、ホスフィンまたは金属ハイドライドのような反応剤によるPd(II)錯体の還元によりin situで産生し得る。適当なパラジウム源はNaPdCl、(PdCl(C))、[Pd(C)(THP)]Cl、[Pd(C)(THP)]Cl、Pd(Ph)、Pd(OAc)、Pd(dba)およびPd(TFA)を含む。このような実施態様のある場合において、Pd(0)錯体は、NaPdClからin situで産生される。他の実施態様において、パラジウム源はアリルパラジウム(II)クロライド二量体[(PdCl(C))]である。ある実施態様において、Pd(0)錯体は、Pd(II)錯体とホスフィンの混合により水溶液中で産生される。適当なホスフィンは、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THM)、1,3,5-トリアザ-7-ホスファアダマンタン(PTA)、ビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスフィン二水和物カリウム塩、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびトリフェニルホスフィン-3,3’,3’’-トリスルホン酸三ナトリウム塩などの水可溶性ホスフィンを含む。ある実施態様において、Pd(0)は、in situで[(PdCl(C))]、[Pd(C)(THP)]Clまたは[Pd(C)(THP)]ClとTHPを混合することにより産生され得る。アスコルビン酸またはその塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム)などの1以上の還元剤が添加され得る。ある実施態様において、Pd(0)錯体はPd(THM)、Pd(THP)、Pd(THP)またはPD(THP)またはこれらの組み合わせである。
【0097】
ここに記載する固体支持体のある実施態様において、化学線形化に使用されるNi錯体は水可溶性である。このような実施態様のある場合において、Ni錯体はNi(0)錯体である。幾つかの例において、Ni錯体は、ここに記載するPd(II)からPd(0)への還元に使用するものに類似する反応剤によるNi(II)化合物(例えばNiCl)の還元により、in situで産生され得る。ある実施態様において、Ni錯体は、NiClと1~10当量のTHPの混合により製造される。
【0098】
ここに記載する固体支持体のある実施態様において、固体支持体は、さらに固定化された複数の第二鎖ポリヌクレオチドを含み、各第二鎖ポリヌクレオチドは第二開裂部位を含み、ここで、複数の第二鎖ポリヌクレオチドはその5’末端で固体支持体に固定化される。このような実施態様のある場合において、各第二鎖ポリヌクレオチドは固体支持体に固定化された第二伸長プライマーを含むかまたは第二伸長プライマーから伸長する。このような実施態様のある場合において、第二伸長プライマーは、ここに記載するP5もしくはP7配列またはP5もしくはP7に相補的である配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。ある実施態様において、第二伸長プライマーはP7ヌクレオチド配列(配列番号2)を含む。さらなる実施態様において、第二伸長プライマーはポリTスペーサーP7ヌクレオチド配列(配列番号4)を含む。他の実施態様において、第二伸長プライマーはP15配列(配列番号6)を含む。ある実施態様において、第二伸長プライマーはP7プライマーである。さらなる実施態様において、第二伸長プライマーはポリTスペーサーP7プライマーである。ある実施態様において、P7プライマーまたはポリTスペーサーP7プライマーは、8-オキソ-グアニンを除去し、化学的に開裂可能なリンカー、例えば、1以上のジオール単位を挿入するために修飾される。さらに他の実施態様において、第二伸長プライマーはP17プライマーである。ある実施態様において、第二伸長プライマーは第二開裂部位を含む。このような実施態様のある場合において、P5、P7またはP17配列は、開裂可能リンカーを伴う修飾ヌクレオチドを含むように修飾される。あるさらなる実施態様において、第二開裂部位は第一化学線形化反応で使用されるパラジウム錯体またはニッケル錯体による化学開裂を受けることができない。第二開裂部位は、化学開裂、光化学開裂、酵素開裂またはこれらの組み合わせからなる群から選択される方法により開裂され得る。ある実施態様において、第二開裂部位は酵素開裂反応により開裂され得る。このような実施態様のある場合において、第二伸長プライマーはここに開示するP7プライマー(配列番号2または配列番号4)であり、第二開裂部位はoxo-Gである。他の実施態様において、第二開裂部位は化学開裂反応により開裂され得る。例えば、第二開裂部位は、1以上の隣接ジオール結合(これは、過ヨウ素酸反応剤での処理のような酸化により開裂され得る)、ジスルフィド結合(例えば、DTTなどの還元条件下またはホスフィンの存在下開裂可能)、オルト-ニトロベンジル基(例えば、光分解により開裂可能)、アゾベンゼン結合(例えば、Naの存在下開裂可能)、アルキル-セレン結合(例えば、過酸化水素などでの酸化により開裂可能)、シリルエーテル結合(例えば、フッ化物イオン、酸または塩基により開裂可能)またはアリルカルバメート結合(例えば、パラジウム錯体存在下開裂可能)を含み得る。これらの結合は、化学開裂後少なくとも1つの遊離ヒドロキシル基を産生できる。このような実施態様のある場合において、第二伸長プライマーは、ここに開示するP17プライマー(配列番号6)を含むかまたはP17プライマーであり、第二開裂部位は、酸化、例えば、過ヨウ素酸ナトリウムでの処理により開裂され得る1以上のジオール結合を含む。ある実施態様において、ジオールリンカーは、ここに記載する式(VIII)または(VIIIa)の構造を含む。ある実施態様において、アゾベンゼンリンカーは、ここに記載する式(X)、(Xa)または(Xb)の構造を含む。
【0099】
本発明のある実施態様は、固定化された複数の第一鎖ポリヌクレオチドおよび複数の第二鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体に関し、各第一鎖ポリヌクレオチドは固体支持体に固定化された修飾P5プライマーから伸長し、修飾P5プライマーは第一開裂部位を含み;各第二鎖ポリヌクレオチドは固体支持体に固定化されたP7プライマーから伸長し、P7プライマーは第二開裂部位を含み;ここで、第一および第二鎖ポリヌクレオチドの両者はその5’末端で固体支持体に固定化され、ここで、第一開裂部位はPd(0)錯体またはNi(0)錯体などのPd錯体またはNi錯体による化学開裂を受けることができる。ある実施態様において、第一開裂部位は、ここに記載するとおりアリル官能基を有する修飾Tヌクレオシドを含む。開裂部位は、開裂固定化第一鎖ポリヌクレオチドの3’-OHを遮断するために、Pd/Ni開裂反応後に第一鎖ポリヌクレオチドに残る3’末端遮断部分として役立ち得る部分、例えば、ホスフェートまたは修飾ホスフェート部分をさらに含み得る。
【0100】
ここに記載する固体支持体のある実施態様において、第一および第二鎖ポリヌクレオチドは、固体支持体表面上のポリマーまたはヒドロゲルコーティングとの共有結合により固体支持体に固定化される。ある実施態様において、ヒドロゲルまたはポリマーコーティングはPAZAMを含む。ある実施態様において、ヒドロゲルまたはポリマーコーティングも、例えば、表面に沈着した官能化シランとの反応により、固体支持体表面に共有結合される。ある実施態様において、官能化シランはノルボルネン由来シランである。ある実施態様において、固体支持体はフローセルを含むまたはフローセルである。
【0101】
固体支持体表面
ある実施態様において、プライマー移植前の固体支持体表面は、官能化分子で被覆された領域およびコーティングがない不活性領域の両者を含む。このような実施態様のある場合において、官能化分子コーティングはヒドロゲルまたはポリマーコーティングである。被覆領域は反応部位を含むことができ、それ故に、化学結合またはハイブリダイゼーションもしくは共有結合性反応などの他の分子相互作用を介する分子の結合に使用できる。ある実施態様において、被覆領域(例えば、反応性特性、チャネル、パッド、ビーズまたはウェル)および不活性領域(間隙領域と称する)は、パターンまたは格子を形成するために交互であり得る。このようなパターンは一次元的または二次元的であり得る。ある実施態様において、不活性領域はガラス領域、金属領域、マスク領域または間隙領域またはこれらの組み合わせから選択され得る。あるいは。これらの材料は反応性領域を形成し得る。不活性または反応性は、基質で使用する化学および手順による。ある実施態様において、固体支持体表面はガラス領域を含む。他の実施態様において、表面は金属領域を含む。
【0102】
ある実施態様において、ここに記載する固体支持体はフローセルの少なくとも一部を形成するかまたはフローセル内に位置する。このような実施態様のある場合において、フローセルは、官能化分子コーティング、例えば、ポリマーまたはヒドロゲルコーティングを介して固体支持体表面に結合したポリヌクレオチドをさらに含む。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドクラスター内でフローセルに存在し、ここで、ポリヌクレオチドクラスターのポリヌクレオチドは、ヒドロゲルまたはポリマーコーティングを介してフローセルの表面に結合する。このような実施態様のある場合において、ポリヌクレオチドが結合しているフローセル本体の表面は固体支持体と考えられる。他の実施態様において、ヒドロゲルまたはポリマー被覆表面を有する別の固体支持体がフローセルの本体に挿入される。好ましい実施態様において、フローセルは複数のレーンまたは複数のセクターに分割されるフローチャンバーであり、ここで、複数のレーンまたは複数のセクターの1以上は、共有結合的に結合したここに記載するヒドロゲルまたはポリマーコーティングで被覆された表面を含む。ここに記載するフローセルのある実施態様において、単一ポリヌクレオチドクラスター内に結合したポリヌクレオチドは、同一または類似するヌクレオチド配列を有する。ここに記載するフローセルのある実施態様において、異なるポリヌクレオチドクラスターの結合ポリヌクレオチドは異なるまたは類似しないヌクレオチド配列を有する。ここに示す方法または組成物で使用できるフローセルおよびフローセルを製造するための基質の例は、Illumina, Inc.(San Diego, CA)から市販されているものまたは各々引用により本明細書に包含させる米国公開2010/0111768A1および2012/0270305に記載のものを含むが、これらに限定されない。
【0103】
PAZAM
固体支持体表面のヒドロゲルまたはポリマーコーティングの一つの実施態様は、次の二つの反復単位を含むポリアクリルアミドコポリマーである、PAZAMを含む。
【化31】
【0104】
ある実施態様において、PAZAMは線状ポリマーである。ある他の実施態様において、PAZAMは、軽度に架橋したポリマーである。PAZAMは、ここに示す組成物または方法での使用のために官能化または修飾され得る。PAZAMおよびそのアナログの製造は、引用により全体として本明細書に包含させる、米国特許9,012,022に開示される。
【0105】
3’遮断基
SBSサイクル中、一つの取り込みしか生じないことを確実にするために、構造的修飾(「保護基」)が、1ヌクレオチドしか取り込まれないことを確実にするために、成長中の鎖に付加される各標識ヌクレオチドに付加される。保護基を有するヌクレオチドが付加された後、次いで、保護基を、配列決定されるDNAの完全性を妨害しない反応条件下、除去される。次いで、配列決定サイクルを、次の保護、標識ヌクレオチドの取り込みで継続し得る。
【0106】
DNA配列決定で有用であるために、ヌクレオチドおよびより一般にヌクレオチド三リン酸は、一般に、そのポリヌクレオチド鎖への取り込みのために使用されたポリメラーゼが、塩基がヌクレオチドに付加された後も複製を続けることを防止するために、3’-ヒドロキシ保護基が必要である。ヌクレオチドに付加でき、なお適当である基のタイプに大きな制限がある。保護基は、ポリヌクレオチド鎖にさらなるヌクレオチド分子が付加されるのを防止しながら、同時にポリヌクレオチド鎖に損傷を与えることなく糖部分から容易に除去可能でなければならない。さらに、修飾ヌクレオチドは、そのポリヌクレオチド鎖への取り込みに使用するポリメラーゼまたは他の適切な酵素に抵抗性でなければならない。それ故に、理想的保護基は長期安定性を示し、ポリメラーゼ酵素により効率的に取り込まれ、二次的なまたはさらなるヌクレオチド取り込みを遮断し、かつポリヌクレオチド構造に損傷を与えない穏やかな条件下、好ましくは水性条件下除去される能力を有しなければならない。
【0107】
可逆性保護基は以前に報告されている。例えば、Metzker et al.(Nucleic Acids Research, 22 (20): 4259-4267, 1994)は、8つの3’修飾2-デオキシリボヌクレオシド5’-三リン酸(3’修飾dNTP)の合成および使用および取り込み活性について2つのDNA鋳型アッセイでの試験を開示する。WO2002/029003は、ポリメラーゼ反応におけるDNAの成長中の鎖の3’-OH基をキャップするためのアリル保護基の使用を含み得る、配列決定方法を記載する。他の可逆性保護基およびDNA適合条件下でのその脱保護方法は、国際出願公開WO2004/018497およびWO2014/139596に開示のアジドメチルまたは修飾アジドメチル基であり、引用により全体として本明細書に包含させる。
【0108】
ここに記載する3’-OH遮断基の一つの実施態様は、ホスファターゼにより除去され得るホスフェート基である。
【0109】
検出可能標識
ここに記載するある実施態様は、検出可能標識の使用に関する。検出は、蛍光スペクトロスコピーまたは他の光学手段を含む任意の適当な方法により実施され得る。好ましい標識はフルオロフォアであり、これは、エネルギー吸収後、既定の波長で放射線を放出する。多くの適当な蛍光標識が知られる。例えば、Welch et al.(Chem. Eur. J. 5(3):951-960, 1999)は、本発明で使用できるダンシル官能化蛍光部分を開示する。Zhu et al.(Cytometry 28:206-211, 1997)は、蛍光標識Cy3およびCy5の使用を記載し、これはまた本発明でも使用され得る。試用に適する標識は、Prober et al.(Science 238:336-341, 1987); Connell et al.(BioTechniques 5(4):342-384, 1987)、Ansorge et al.(Nucl. Acids Res. 15(11):4593-4602, 1987)およびSmith et al.(Nature 321:674, 1986)にも記載される。他の市販の蛍光標識は、フルオレセイン、ローダミン(TMR、テキサスレッドおよびRoxを含む)、alexa、ボディピー、アクリジン、クマリン、ピレン、ベンズアントラセンおよびシアニンを含むが、これらに限定されない。
【0110】
ある実施態様において、検出可能標識を、ここに記載する方法および固体支持体でPd開裂を受け得る、ポリヌクレオチドの第一開裂部位に使用し得る。特に、第一開裂部位は標識修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含み得る。このアプローチは、現在のイルミナの製造ワークフローをさらに合理化し得る。ある実施態様において、ここに記載するアリル修飾P5プライマーは、移植反応終了直後の直接の定量化を可能とする蛍光タグを含むように修飾でき、このような定量化工程を実施するための別のハイブリダイゼーションアッセイの必要性を除く。
【0111】
検出可能標識のためのリンカー
ここに記載するある実施態様において、修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドの核酸塩基を、上記のとおり検出可能標識に結合し得る。このような実施態様のある場合において、使用するリンカーは開裂可能である。開裂可能リンカーの使用は、必要であれば、標識が検出後除去され、その後取り込まれる何らかの標識ヌクレオチドまたはヌクレオシドとの何らかの干渉シグナルを回避し得ることを確実とし。
【0112】
ある他の実施態様において、使用するリンカーは開裂不可能である。本発明の標識ヌクレオチドが取り込まれる各場合において、その後ヌクレオチドが取り込まれる必要がないならば、標識をヌクレオチドから除去する必要はない。
【0113】
開裂可能リンカーは当分野で知られ、慣用の化学をリンカーのヌクレオチド塩基および標識への結合に使用できる。リンカーを、酸、塩基、求核剤、親電子物質、ラジカル、金属、還元剤または酸化剤、光、温度、酵素への暴露を含む、任意の適当な方法により開裂させ得る。ここに記載するリンカーは、3’-O-保護基結合の開裂に使用したのと同じ触媒でも開裂され得る。適当なリンカーを、Greene & Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sonsに記載のとおり、標準化学保護基から抜粋し得る。固相合成での使用に適するさらなる開裂可能リンカーは、Guillier et al.(Chem. Rev. 100:2092-2157, 2000)に開示される。
【0114】
用語「開裂可能リンカー」の使用は、リンカー全体が、例えば、ヌクレオチド塩基から、除去されることを必要とすることを含意することは意図しない。検出可能標識が塩基に結合しているならば、ヌクレオシド開裂部位は、リンカー上の、開裂後にリンカーがヌクレオチド塩基に結合したままであることを確実にする位置に位置し得る。
【0115】
検出可能標識が塩基に結合しているならば、リンカーは、ワトソン・クリック塩基対形成がなお実施され得る限り、ヌクレオチド塩基の任意の位置で結合し得る。プリン塩基の場合、リンカーがプリンまたは好ましいデアザプリンアナログの7位を介して、8修飾プリンを介して、N-6修飾アデノシンまたはN-2修飾グアニンを介して結合しているならば、好ましい。ピリミジンについて、結合は、好ましくはシトシン、チミジンまたはウラシルの5位およびシトシンのN-4位置を介する。
【0116】
ある実施態様において、リンカーは、3’-OH保護基に類似する官能基からなり得る。これは、標識および保護基両者を除去するために一処理工程しか必要としないため、脱保護および脱保護手順をより効率的にする。特に好ましいリンカーは、ホスフィン開裂可能アジド含有リンカーである。
【0117】
開裂方法
種々の開裂方法を、線形化工程における二本鎖核酸分子の一方または両方の鎖の開裂、例えばここに記載する第二鎖ポリヌクレオチドの開裂のために使用し得る。適当な開裂方法の好ましいが、限定的ではない実施態様を、下にさらに詳述する。
【0118】
A)化学開裂
用語「化学開裂」は、二本鎖核酸分子の一方または両方の鎖の開裂を促進/達成するために非核酸および非酵素化学反応剤を利用する、あらゆる方法を包含する。必要であれば、二本鎖核酸分子の一方または両方の鎖は、特定の開裂部位、好ましくは予め決定され開裂部位での化学開裂反応を可能とするために、1以上の非ヌクレオチド化学部分および/または非天然ヌクレオチドおよび/または非天然主鎖結合を含み得る。一つの非限定的実施態様において、二本鎖核酸分子の一鎖は、過ヨウ素酸(例えば、過ヨウ素酸ナトリウム)での処理による開裂を可能とするジオール結合を含み得る。ジオール結合は、開裂部位に配置でき、その正確な位置は使用者により選択され得る。1を超えるジオールが開裂部位に挿入され得ることが理解される。
【0119】
ポリヌクレオチド鎖への取り込みに適するホスホロアミダイト化学に基づくジオールリンカー単位は、Fidelity Systems, Inc.(Gaithersburg, MD, USA)から市販される。1以上のジオール単位を、自動化化学DNA合成の標準方法を使用して、ポリヌクレオチドに取り込ませ得る。ジオールリンカーを固体支持体から最適距離で配置するために、1以上のスペーサー分子を、ジオールリンカーと固体支持体への結合位置の間に含ませ得る。スペーサー分子は非ヌクレオチド化学部分であり得る。ジオールリンカーと組み合わせて使用するためのホスホロアミダイト化学に基づく適当なスペーサー単位もまたFidelity Systems, Inc.から提供される。ジオールリンカーは、ジオールの開裂を促進する任意の物質であり得る「開裂剤」での処理により開裂させる。好ましい開裂剤は、過ヨウ素酸、好ましくは過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)水溶液である。ジオールを開裂するための開裂剤(例えば、過ヨウ素酸)での処理後、開裂産物を、開裂反応で産生された反応性種を中和するために、「キャッピング剤」で処理し得る。この目的のために適当なキャッピング剤は、エタノールアミンなどのアミンを含む。有利には、キャッピング剤(例えば、エタノールアミン)を、反応性種が形成されると直ちにキャッピングされるように、開裂剤(例えば、過ヨウ素酸)との混合物に含ませ得る。
【0120】
二本鎖核酸分子の一鎖の開裂を達成するための、ジオール結合と開裂剤(例えば、過ヨウ素酸)の組み合わせが、過ヨウ素酸が核酸完全性およびヒドロゲル表面の化学と適合性であるため、固体支持ポリアクリルアミドヒドロゲル上の核酸分子の線形化のために好ましい。しかしながら、官能化シランで被覆した支持体を含む、他の表面上に固定化された核酸の線形化のためにもジオール方法は使用され得る。
【0121】
さらなる実施態様において、開裂すべき鎖(または固相増幅により製造した場合には、この鎖が由来する増幅プライマー)は、化学還元剤、例えば、トリス(2-カルボキシエチル)-リン酸塩酸塩(TCEP)での開裂を可能とするジスルフィド基を含み得る。
【0122】
B)二本鎖分子における非塩基部位の開裂
「非塩基部位」は、塩基成分が除かれている、ポリヌクレオチド鎖におけるヌクレオシド位置として定義される。非塩基部位は、ヌクレオシド残基の加水分解により生理的条件下でDNAに自然に生じ得るが、人工的条件下化学的にまたは酵素の作用により形成させることもできる。形成されたら、非塩基部位は開裂(例えば、エンドヌクレアーゼまたは他の一本鎖開裂酵素での処理、熱またはアルカリへの暴露)により、ポリヌクレオチド鎖の部位特異的開裂のための手段となり得る。
【0123】
非限定的実施態様において、非塩基部位を、二本鎖ポリヌクレオチドの一鎖上の予め決定され位置に作製し、次いで、先ずデオキシウリジン(U)を二本鎖核酸分子の予め決定され開裂部位に取り込むことにより、開裂し得る。これは、例えば、固相PCR増幅による二本鎖核酸分子の製造に使用するプライマーの一つにUを含ませることにより、達成され得る。次いで、酵素ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)を使用してウラシル塩基を除去し、一鎖上に非塩基部位を産生し得る。次いで、非塩基部位を含むポリヌクレオチド鎖を、エンドヌクレアーゼ(例えばEndoIVエンドヌクレアーゼ、APリアーゼ、FPGグリコシラーゼ/APリアーゼ、EndoVIIIグリコシラーゼ/APリアーゼ)、熱またはアルカリでの処理により、非塩基部位で開裂させ得る。
【0124】
非塩基部位を使用して、配列決定プライマーとして作用する遊離3’-ヒドロキシル部分を産生し得る。両増幅プライマーが、連続して開裂され得るように修飾されるならば、第二開裂を使用して、第一鎖を表面から開裂し得る。第一(または第二)プライマーは一酵素(UDG)により開裂され得るウラシル塩基を含み、第二(または第一)プライマーは、第二、直交性酵素、FPGグリコシラーゼにより開裂され得る8-オキソ-グアニン塩基を含む。第二非塩基部位開裂を使用して、G塩基が配列決定の第一サイクルとして取り込まれるようにまたは開裂二本鎖が配列決定プライマーの溶液でのハイブリダイゼーションを可能とするように変性され得るように、表面に結合した配列決定プライマーを残す。
【0125】
C)リボヌクレオチドの開裂
1以上のリボヌクレオチドの、そうしなければデオキシリボヌクレオチド(さらなる非ヌクレオチド化学部分、非天然塩基または非天然主鎖結合を伴うまたは伴わない)を含むポリヌクレオチド鎖への取り込みは、デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの間のホスホジエステル結合の選択的開裂を可能とする化学剤を使用するまたはリボヌクレアーゼ(RNAse)開裂のための部位を提供し得る。それ故に、本発明はまた、このような化学開裂剤またはRNaseを使用する、1以上の連続リボヌクレオチドを含む部位での(二本鎖核酸分子の)一鎖の開裂による、配列決定鋳型の産生も包含する。好ましくは開裂すべき鎖は、化学開裂のための予め決定された部位を提供するための、単一リボヌクレオチドを含む。
【0126】
デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの間のホスホジエステル結合の選択的開裂が可能な適当な化学開裂剤は金属イオン、例えば希土類金属イオン(特にLa3+、特にTm3+、Yb3+またはLu3+(Chen et al., Biotechniques, 2002, 32: 518-520; Komiyama et al. Chem. Commun. 1999, 1443-1451))、Fe(3)またはCu(3)または高pHへの暴露、例えば、水酸化ナトリウムなどの塩基での処理を含む。「デオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの間のホスホジエステル結合の選択的開裂」は、化学開裂剤が、同条件下では2デオキシリボヌクレオチド間のホスホジエステル結合を開裂できないことを意味する。リボヌクレオチドの塩基組成は、一般に重要ではないが、化学(または酵素)開裂を最適化するために選択できる。例として、開裂を金属イオン、特に希土類金属イオンへの暴露により実施するならば、rUMPまたはrCMPが一般に好ましい。
【0127】
リボヌクレオチドは、一般に二本鎖核酸分子の一鎖に取り込まれ、二本鎖分子の2つの相補鎖がアニールされるとき一本鎖であるその領域に位置することができる(すなわち5’オーバーハング部分にある)。特に、二本鎖核酸分子が順方向および逆方向増幅プライマーを使用する固相PCR増幅により製造されるならば、その一方は、少なくとも一つのリボヌクレオチドを含み、PCR増幅に使用する標準DNAポリメラーゼ酵素は、リボヌクレオチド鋳型を複製できない。それ故に、固相PCR反応の産物は、該リボヌクレオチドおよび該リボヌクレオチドの上流の増幅プライマーのあらゆる残りを含む、オーバーハング5’領域を含む。
【0128】
リボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの間または2つのリボヌクレオチドの間のホスホジエステル結合は、RNaseによっても開裂され得る。適切な基質特異性のあらゆるエンドサイトーシスリボヌクレアーゼがこの目的で使用され得る。リボヌクレオチドが、二本鎖分子の2つの相補鎖がアニールされるとき一本鎖である領域(すなわち5’オーバーハング部分にある)に存在するならば、RNaseは、リボヌクレオチド含有一本鎖に特異性を有するエンドヌクレアーゼである。リボヌクレアーゼでの開裂のために、2以上の連続リボヌクレオチド、好ましくは2~10または5~10連続リボヌクレオチドが含まれることが好ましい。リボヌクレオチドの正確な配列は、あるRNaseがある残基後の開裂に特性を有する以外、一般に重要ではない。適当なRNaseは、例えば、CおよびU残基後を開裂するRNaseAを含む。それ故に、RNaseAで開裂するとき、開裂部位は、CまたはUである少なくとも一つのリボヌクレオチドを含まなければならない。
【0129】
1以上のリボヌクレオチドを取り込むポリヌクレオチドは、適切なリボヌクレオチド前駆体を用いるオリゴヌクレオチド化学合成の標準技法を使用して、容易に合成され得る。二本鎖核酸分子が固相核酸増幅で製造されたら、増幅反応に使用するプライマーの一方に1以上のリボヌクレオチドを取り込むのが簡便である。
【0130】
D)光化学開裂
用語「光開裂」または「光化学開裂」は、二本鎖核酸分子の一方または両方の鎖の開裂を達成するために光エネルギーを利用するあらゆる方法をいう。光化学開裂のための予め決定された部位は、二本鎖分子の鎖の一方における非ヌクレオチド化学スペーサー単位により提供され得る。適当な光化学開裂可能スペーサーは、Glen Research, Sterling, Virginia, USAにより供給される、PCスペーサーホスホロアミダイト(4-(4,4’-ジメトキシトリチルオキシ)ブチラミドメチル)-1-(2-ニトロフェニル)-エチル]-2-シアノエチル-(N,N-ジイソプロピル)-ホスホロアミダイト)を含む。スペーサー単位は、UV光源への暴露により開裂され得る。このスペーサー単位は、オリゴヌクレオチドの化学合成の標準技法を使用して、固体表面への結合を可能とするチオホスフェート基と共に、ポリヌクレオチドの5’末端に結合され得る。便利には、このスペーサー単位は、固相増幅による光開裂可能二本鎖核酸分子の合成に使用される順方向または逆方向増幅プライマーに取り込まれ得る。
【0131】
E)PCRストッパー
他の実施態様において、二本鎖核酸を、順方向および逆方向プライマーを使用する固相増幅により合成でき、その一方は、「PCRストッパー」を含む。「PCRストッパー」は、その点を超えて複製され得ないように、増幅に使用されるポリメラーゼのリードスルー(read-through)を阻止する任意の部分(ヌクレオチドまたは非ヌクレオチド)である。その結果、PCRストッパー含有プライマーの伸長に由来する増幅鎖が、5’オーバーハング部分を含むこととなる。この5’オーバーハング(PCRストッパー自体以外)は、主に天然主鎖結合を有する天然に存在するデオキシリボヌクレオチドから構成でき、すなわち単に一本鎖DNAのストレッチであり得る。次いで、分子を一本鎖DNAの開裂に選択的であるが、二本鎖DNAはしない開裂剤(例えば、酵素)、例えばマングビーンヌクレアーゼの使用により5’オーバーハング領域で開裂され得る。
【0132】
PCRストッパーは、本質的に増幅反応に使用されるポリメラーゼのリードスルーを阻止する任意の部分であり得る。適当なPCRストッパーは、ヘキサエチレングリコール(HEG)、非塩基部位およびペプチド核酸(PNA)などのDNAアナログを含むポリメラーゼのリードスルーを阻止するあらゆる非天然または修飾ヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。
【0133】
安定な非塩基部位が、安定な非塩基部位を含む適切なスペーサー単位を使用する化学オリゴヌクレオチド合成中に導入され得る。例として、Glen Research, Sterling, Virginia, USAから市販の非塩基フラン(5’-O-ジメトキシトリチル-1’,2’-ジデオキシリボース-3’-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホロアミダイト)スペーサーが、非塩基部位導入のために化学オリゴヌクレオチド合成中に取り込まれ得る。このような部位は、こうして、固相増幅に使用されるオリゴヌクレオチドプライマーに容易に導入され得る。非塩基部位が順方向または逆方向増幅プライマーに導入されるならば、得られた増幅産物は、非塩基部位(一本鎖形態で)を含む一鎖に5’オーバーハングを有する。次いで、一本鎖非塩基部位は、適当な化学剤(例えば、アルカリへの暴露)または酵素(例えば、APエンドヌクレアーゼVI、Shida el al., Nucleic Acids Research, 1996, Vol.24, 4572-4576)の作用により、開裂され得る。
【0134】
F)ペプチドリンカーの開裂
開裂部位を、ペプチド分子が核酸分子の一鎖に結合した、接合体構造の製造により、二本鎖核分子の一鎖に導入することもできる。続いてペプチド分子は、適切な特異性のペプチダーゼ酵素または非酵素化学または光化学開裂の任意の他の適当な手段により開裂され得る。一般に、ペプチドと核酸の接合体は、二本鎖核酸分子の一鎖のみへのペプチドの共有結合により形成され、ペプチド部分はこの鎖の5’末端で、固体表面への結合点に隣接して、接合される。二本鎖核酸が固相増幅により製造されるならば、ペプチド接合体は、増幅プライマーの一方の5’末端に取り込まれ得る。明らかに、このプライマーのペプチド成分はPCR増幅中に複製されず、故に、「架橋」増幅産物は、一鎖に開裂可能5’ペプチド「オーバーハング」を含む。
【0135】
ペプチドが核酸の5’末端に接合しているペプチドと核酸の接合体は、当分野で一般に知られる技法を使用して製造され得る。一つのこのような技法において、所望のアミノ酸およびヌクレオチド配列のペプチドおよび核酸成分を、例えば、標準自動化化学合成技法により別々に合成し、次いで、水性/有機溶液中で接合し得る。例として、Glen Researchから市販のOPeCTMシステムは、N末端チオエステル官能化ペプチドの5’-システイニルオリゴヌクレオチドへの「天然ライゲーション」に基づく。ペンタフルオロフェニルS-ベンジルチオスクシネートは、標準Fmocベースの固相ペプチドアセンブリの最終カップリング工程で使用される。トリフルオロ酢酸での脱保護は、溶液中で、N末端S-ベンジルチオスクシニル基で置換されたペプチドを産生する。O-trans-4-(N-a-Fmoc-S-tert-ブチルスルフェニル-1-システイニル)アミノシクロヘキシルO-2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイトは、標準ホスホロアミダイト固相オリゴヌクレオチドアセンブリにおける最終カップリング工程で使用される。アンモニア水溶液での脱保護は、溶液中で、5’-S-tert-ブチルスルフェニル-L-システイニル官能化オリゴヌクレオチドを産生する。修飾ペプチドのチオベンジル末端は、チオフェノールの使用によりチオフェニルアナログに変換され、一方修飾オリゴヌクレオチドはトリス(カルボキシエチル)ホスフィンに還元される。これら2中間体のカップリング、続く「天然ライゲーション」工程は、オリゴヌクレオチド-ペプチド接合体の形成に至る。
【0136】
ペプチドおよび核酸を含む接合体鎖は、選択表面と適合性である、当分野で知られる任意の適当な共有結合技法を使用して、固体支持体に共有結合され得る。例えば、固体支持ポリアクリルアミドヒドロゲル表面への共有結合は、ペプチド成分の「遊離」末端(すなわち核酸と接合していない末端)上へのチオホスフェート基の結合により達成され得る。ペプチド/核酸接合体構造が固相PCR増幅で使用する増幅プライマーであるならば、固体支持体への結合は、核酸成分の3’末端を遊離のままにしなければならない。
【0137】
ペプチド成分は、任意の選択ペプチダーゼ酵素により開裂可能であるように選択でき、その多くが当分野で知られる。ペプチダーゼの性質は特に限定されないが、ペプチダーゼがペプチド成分のどこかを開裂することだけが必要である。同様に、ペプチド成分の長さおよびアミノ酸配列は、選択ペプチダーゼによる「開裂可能」に必要である以外、特に限定されない。
【0138】
核酸成分の長さおよび正確な配列も特に制限されず、任意の所望の配列であり得る。核酸成分が固相PCRにおけるプライマーとして機能すべきであるならば、その長さおよびヌクレオチド配列は、増幅される鋳型のアニーリングを可能とするように選択される。
【0139】
変性
開裂に使用する方法の任意の実施態様において、開裂反応の産物は、固体支持体に結合していない開裂鎖の部分を除去するために、変性条件に付され得る。適当な変性条件は、標準分子生物学プロトコールを参照して、当業者である読者に明らかである(Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd Ed, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; Current Protocols, eds., Ausubel et al.)。変性(および続く開裂鎖の再アニーリング)は、部分的にまたは実質的に一本鎖である配列決定鋳型の産生をもたらす。次いで、配列決定反応を、配列決定プライマーと鋳型の一本鎖部分のハイブリダイゼーションにより開始し得る。
【0140】
他の実施態様においては、配列決定を、開裂鎖の一部を除去するために変性する必要なく、開裂工程後すぐに開始し得る。開裂工程が、なお相補鎖とハイブリダイズする一開裂鎖上の遊離3’ヒドロキシル基を産生するならば、初期変性工程を必要とせず、鎖置換ポリメラーゼ酵素を使用して、この点から配列決定を進め得る。特に、鎖置換配列決定を、ニッキングエンドヌクレアーゼでの開裂またはエンドヌクレアーゼ、熱またはアルカリ処理での非塩基部位の加水分解による鋳型産生と共に使用し得る。
【0141】
配列決定方法
ある実施態様において、ここに記載する固体支持体および方法を、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の決定に使用し得る。このような実施態様のある場合において、方法は、(a)ポリヌクレオチドポリメラーゼと基質表面に(例えば、ここに記載するポリマーまたはゲルコーティングの何れかにより)結合した非線形化ポリヌクレオチドクラスターを接触させ;(b)1以上のヌクレオチドがポリヌクレオチドポリメラーゼにより利用されたとき、検出可能シグナルが生じるように基質の表面にヌクレオチドを提供し;(c)1以上の結合ポリヌクレオチド(または結合ポリヌクレオチドから産生された1以上のクラスター)でシグナルを検出し;そして(d)工程(b)および(c)を繰り返し、それにより基質結合ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定する工程を含み得る。
【0142】
核酸配列決定は、当分野で知られる種々の手順により、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定するのに使用され得る。好ましい方法において、合成による配列決定(SBS)を利用して、基質の表面に結合した(例えば、ここに記載するポリマーコーティングの何れかにより)ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定し得る。このような手順において、1以上のヌクレオチドが、ポリヌクレオチドポリメラーゼと結合する鋳型ポリヌクレオチドに提供される。ポリヌクレオチドポリメラーゼは、1以上のヌクレオチドを、ポリヌクレオチド鋳型と相補的である新たに合成された核酸鎖に取り込む。合成は、鋳型ポリヌクレオチドの一端で共有結合する鋳型ポリヌクレオチドの一部またはユニバーサルもしくは非可変核酸の一部と相補的であるオリゴヌクレオチドプライマーから開始される。ヌクレオチドが鋳型ポリヌクレオチドに対して取り込まれるにつれて、検出可能シグナルが産生され、それは、どのヌクレオチドが配列決定手順の各工程中に取り込まれているかの決定を可能とする。この方法で、少なくとも鋳型ポリヌクレオチドの一部に相補的な核酸の配列が産生でき、それにより少なくとも鋳型ポリヌクレオチドの一部のヌクレオチド配列の決定を可能とする。
【0143】
フローセルは、本発明の方法により産生され、合成による配列決定(SBS)またはサイクルでの反応剤の反復送達を含む他の検出技法に付されるアレイの収容に便利な形式を提供する。例えば、第一SBSサイクルを開始するために、1以上の標識ヌクレオチド、DNAポリメラーゼなどを、ここに示す方法により製造した核酸アレイを収容するフローセル内に/通して流し得る。プライマー伸長が標識ヌクレオチドを取り込ませるアレイの部位が検出され得る。所望により、ヌクレオチドは、さらにヌクレオチドがプライマーに付加されたら、さらなるプライマー伸長を停止させる可逆性停止性質を含み得る。例えば、可逆性ターミネーター部分を有するヌクレオチドアナログを、脱遮断剤が該部分を除去するために送達されるまで、続く伸長が生じ得ないようにプライマーに付加し得る。それ故に、可逆性停止を使用する実施態様について、脱遮断剤がフローセルに供給され得る(検出が生じる前または後に)。洗浄を種々の供給工程の間で実施し得る。次いで、プライマーをnヌクレオチド伸長するためにサイクルをn回反復し、それにより長さnの配列が検出することができる。本発明の方法により産生されたアレイでの使用に容易に適用させ得るSBS方法、流体システムおよび検出プラットフォームの例は、例えば、Bentley et al., Nature 456:53-59 (2008)、WO04/018497;US7,057,026;WO91/06678;WO07/123744;US7,329,492;US7,211,414;US7,315,019;US7,405,281およびUS2008/0108082に記載され、この各々を引用により全体として本明細書に包含させる。
【0144】
フローセルを用いる上記方法のある実施態様において、1タイプのヌクレオチドしか、一フロー工程中のフローセルに存在しない。このような実施態様のある場合において、ヌクレオチドは、dATP、dCTP、dGTP、dTTPおよびそのアナログからなる群から選択され得る。フローセルを用いる上記方法の他の実施態様において、複数の種々のタイプのヌクレオチドが一フロー工程中にフローセルに存在する。このような方法において、ヌクレオチドは、dATP、dCTP、dGTP、dTTPおよびそのアナログから選択され得る。
【0145】
フローセルに存在する基質の表面上のポリマーコーティングに結合したポリヌクレオチドの1以上について各フロー工程中に取り込まれたヌクレオチドまたはヌクレオチドの決定は、ポリヌクレオチド鋳型でまたはその近辺で生じたシグナルの検出により達成される。上記方法のある実施態様において、検出可能シグナルは光学シグナルを含む。他の実施態様において、検出可能シグナルは非光学シグナルを含む。このような実施態様において、非光学シグナルは、ポリヌクレオチド鋳型の1以上でのまたはその近辺のpH変化を含む。
【0146】
本発明の基質の適用および使用は、ここでは核酸について例示している。しかしながら、他の検体がここに示す基質に結合し、分析され得ることが理解される。1以上の検体は、本発明の基質中または基質上に存在し得る。本発明の基質は、検体の検出または検体との合成反応の実施に特に有用である。それ故に、検出、特徴づけ、修飾、合成などが行われるべき多様な検体のいずれもが、ここに示す基質中または基質上に存在し得る。検体の例は、核酸(例えば、DNA、RNAまたはそのアナログ)、タンパク質、多糖、細胞、抗体、エピトーブ、受容体、リガンド、酵素(例えば、キナーゼ、ホスファターゼまたはポリメラーゼ)、小分子薬物候補などを含むが、これらに限定されない。基質は、検体のライブラリーからの複数の異なる種を含み得る。例えば、種は、抗体ライブラリーからの異なる抗体、核酸ライブラリーからの異なる配列を有する核酸、タンパク質イブラリーからの異なる構造および/または機能を有するタンパク質、小分子のコンビナトリアルライブラリーからの薬物候補などであり得る。
【0147】
ある実施態様において、検体は基質上で、各特性(features)が個々に区別できるように各特性に分配され得る。例えば、各検体の単一分子は、個々の特性に存在し得る。あるいは、検体は、コロニーまたは集団として存在し得て、分離されなくてもよい。コロニーまたは集団は、単一種の検体しか含まない(複数コピーにもかかわらず)点で、均一であり得る。核酸を例にとると、基質の各特性は、核酸のコロニーまたは集団を含み、該コロニーまたは集団内の全核酸は、同一ヌクレオチド配列を有し得る(一本鎖または二本鎖)。このようなコロニーは、上記したとおり、クラスター増幅または架橋増幅により作製できる。標的配列の複数反復は、ローリングサークル増幅法を使用して作製したコンカテマーなどのように、単一核酸分子に存在し得る。それ故に、基質の形体は、単一種の検体の複数コピーを含み得る。あるいは、一つの特性を有する検体のコロニーまたは集団は、2以上の異なる種を含み得る。例えば、基質上の1以上のウェルは、各々2以上の異なる核酸種(すなわち異なる配列を有する核酸分子)を有する混合コロニーを含み得る。混合コロニーの2以上の核酸種は、無視できない量で存在でき、例えば、混合コロニー中の1を超える核酸の検出を可能とする。
【実施例
【0148】
さらなる実施態様を、次の実施例でさらに詳述する。これは、決して特許請求の範囲の範囲を限定すると解釈されてはならない。
【0149】
一般的表面調製プロトコール
浄化HiSeq(登録商標)フローセルのシラン化
ノルボルネン官能化フローセルを、YES(Yield Engineering Systems)シラン化チャンバーまたはデシケーターを使用する化学蒸着(CVD)方法により製造する。CVD操作は、一般に60℃で1~24時間行う。
【化32】
【0150】
PAZAMカップリング
次いで、シラン化フローセルを、複数のツーリングオプションを使用して被覆および移植し得る。例えば、イルミナ配列決定のためのcBot完全自動化クローンクラスター産生システム(Illuminaから入手可能)を、これらのオプションの実施に使用し得る。典型的方法において、フローセルに先ずIPA/HO(1:1;100μL/分、2分)を流す。次に、DI水をチャネルを通して流す(100μL/分、2分)。一定量の0.5wt%PAZAM(水性)溶液を調製する(8チャネルに十分)。ポリマーをチャネルに流す(100μL/分、2分)。PAZAMカップリング工程は、60℃で、1時間かけて完了する。この工程の完了後、次の移植工程の準備で、チャネルに水で流す。ポリマーコーティング工程完了後、フローセルは、4℃で緩衝液(例えば、食塩水-クエン酸ナトリウム(SSC)緩衝液)中保存できる。あるいは、移植工程は、PAZAMコーティング直後に完了させ得る。
【0151】
PAZAM被覆フローセルの移植およびQC
このプロトコールは、cBotシステム(ILMN)を使用するHiSeq(登録商標)フローセルの移植の方法を記載する。移植方法は、アリル修飾P5配列オリゴプライマーおよびジオール修飾P7配列プライマーが約1:1比でPAZAM表面に共有結合するフローセル表面を提供する。典型的移植混合物を標準イルミナ方法に従い調製し、使用するプライマー濃度に依存する。用いる典型的プライマー濃度は約1~20μMであり、ターゲティングプライマー密度20~250000単位(蛍光カウント)である。QC工程を、cBotシステムを使用して標準イルミナ方法に従い実施し、その後Typhoon(蛍光フラットベッドスキャナー)で画像処理する。
【0152】
QC後、フローセルのチャネルを5×SSC(60μL/分、総体積=300μL/フローセル)で流して、水酸化ナトリウム(デハブリダイゼーション工程実施のために使用)を除去する。
【0153】
次いで、移植フローセルを下流生化学手順(クラスター化、配列決定)実施前に4℃で保存する。
【0154】
実施例1
この実施例で、修飾チミンヌクレオシドアナログを含む修飾オリゴヌクレオチドを、二本鎖対形成性質およびPCR伸長性質を妨害することなく、生物学的条件下で化学反応剤により効率的に開裂される特定の部位として使用した。
【0155】
特に、オリゴヌクレオチドは、5’-C位置のビニル基結合と共に単一修飾T-ヌクレオシドを含んだ。水性緩衝液中のNaPdClまたは(PdアリルCl)およびTHPの溶液で処理すると(in situでパラジウム(0)錯体を産生)、オリゴヌクレオチドは修飾T位置で開裂し、得られた短いオリゴは3’末端にホスフェート基を含んだ。この反応を下記スキーム1に図示し、ここで、Nuは求核剤である。
【化33】
【0156】
修飾Tヌクレオシドホスホロアミダイトの合成をスキーム2に記載する。出発物質は市販されている。主要な反応段階は>70%収率であった。修飾Tヌクレオシドを含む最終DNAオリゴヌクレオチドの優れた収率も報告された。
【化34】
【0157】
5’-O-ジメトキシトリチル-チミジン-3’-O-TBDPS(2)。5’-O-ジメトキシトリチル-チミジン(1)(15g、1当量、27.54mmol)を1時間高真空下乾燥させた。無水DCM(300ml)をN下加えた。この溶液に先ずイミダゾール(4.69g、2.5当量、69mmol)を固体として、次いでt-ブチルジフェニルシリルクロライド(9.1ml、1.3当量、35.8mmol)を加えた。反応混合物を、N下、rtで1時間撹拌した。TLCで反応の完了を確認した。飽和NaHCO溶液(100ml)で反応停止させ、5分間撹拌した。DCM(100ml)を反応混合物に加え、水層をDCMで2回抽出した。有機相を飽和NaHCO(200ml)、次いで塩水(200ml)で洗浄した。合わせた有機相をMgSOで乾燥後、溶媒を減圧下除去し、減圧下で十分乾燥させて、2を白色/明黄色泡状物として得た。化合物2を粗製で次工程に使用した。LC-MS (ESおよびCI): (-ve) m/z 782 (M-H+), (-ve) m/z 817 (M+Cl-). 1H NMR (CDCl3) δ 0.99 (s, 9H, tBu), 1.27 (s, 3H, Me), 1.96-2.06 (m, 1H, H-2'), 2.25-2.35 (m, 1H, H-2'), 2.80 (dd, J=4, 12Hz, 1H, H-5'), 3.15 (dd, J=4, 12Hz, 1H, H-5'), 3.71 (s, 6H, OMe), 3.96-4.01 (m, 1H, H-4'), 4.45-4.50 (m, 1H, H-3'), 6.42 (dd, J=8, 12Hz, 1H, H-1'), 6.79-6.72 (m, 4H, aromatics), 7.68-7.00 (m, 24H, aromatics+CH), 8.01 (s, 1H, NH)
【0158】
3’-O-TBDPS-チミジン(3)。粗製5’-O-ジメトキシトリチル-チミジン-3’-O-TBDPS(2)(最大27.54mmol)を、N下、無水MeOH(300ml)に溶解した。TFA(10体積%、30ml)を加え、反応物を、N下、2時間30分撹拌した。反応の完了はTLCによった。飽和NaHCO(200ml)で反応を注意深く停止させ、rtで10分間撹拌した。MeOHを減圧下除去した。残存混合物をDCM(300ml)で希釈し、飽和NaHCOで分配した。水相をDCMで2回抽出し、次いで有機相を飽和NaHCOで洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下濃縮した。粗製物質をカラム(Biotage、100g Ultra-Si、PE/EtOAc)で精製して、化合物3を白色泡状物として得た(13.15g, 99%)。LC-MS(ESおよびCI): (-ve) m/z 479 (M-H+), (+ve) m/z 481 (M+H+). 1H NMR (d6 DMSO) δ 1.46 (s, 9H, tBu), 2.15 (s, 3H, Me), 2.35-2.53 (m, 2H, H2’), 3.57-3.67 (m, 1H, H5’), 3.77-3.87 (m, 1H, H5’), 4.30-4.36 (m, 1H, H4’), 4.80-4.86 (m, 1H, H3’), 5.41 (t, J=5.2Hz, 1H), 6.72 (dd, J=8.7, 5.7Hz, 1H), 7.82-7.94 (m, 6H, aromatics+CH), 8.00-8.05 (m, 5H, aromatics), 11.73 (s, 1H, NH)
【0159】
化合物(3)の別の合成。5’-O-ジメトキシトリチル-チミジン(1、40g、73.4mmol)を、TBDPSCl(1.3当量)およびイミダゾール(2.5当量)でDCM(0.127M)中、rtで2時間、続いてPTSA(3当量)でメタノール(0.097M)中1時間処理して、化合物(3)を、ワンポット製造で、100%収率で得た。シリル化工程後後処理を必要とせず、溶媒蒸発および一夜乾燥工程を省き、空気に曝しながら反応させた。TFAの代わりのPTSAの使用は、チミジンヌクレオシドのリボースの酸触媒転位を減少させた。
【0160】
3’-O-TBDPS-5’アルデヒド-チミジン(4)。3’-O-TBDPS-チミジン(3)(5.16g、1当量、10.75mmol)を、高真空レーン下で一夜および4Å MSで乾燥させた。次いで、無水DCM(250ml)を化合物3および4Å MSにN加え、次いで氷浴で4℃に冷却した。デス・マーチン・ペルヨージナンをN下少しずつ加え(3×1.823g、1.2当量、12.9mmol)、反応物を、N下、4℃で1時間30分撹拌した。反応をLCMSにより確認した。反応物をrtに温め、反応物をN下4時間または反応完了まで撹拌した。完了したら、NaSO溶液(100ml)を反応物に加え、rtで10分撹拌した。2相を分離し、水相をDCMで2回抽出した。有機相を次いでNaCOおよび飽和NaHCOで洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下濃縮した。粗製物質を高減圧下で一夜乾燥させて、次工程に備えた。トルエンとの共蒸発を同様に行い、乾燥度を改善させ得る。LC-MS(ESおよびCI): (-ve) m/z 477 (M-H+), (-ve) m/z 513 (M+Cl-), (+ve) m/z 479 (M+H+), (+ve) m/z 501 (M+Na+);(-ve) m/z 495 (水和物-H+), (+ve) m/z 519 (水和物+Na+)。
【0161】
アルデヒド(4)の別の合成。化合物(3、0.5g)を、EDC(3当量)およびDCA(0.5当量)でDMSO中、rtで6時間処理して、化合物(4)を、デス・マーチン・ペルヨージナン方法で観察されたカルボン酸への過剰酸化物の副生を避けて(およびカルボン酸副生物質を消去するために次工程で大過剰のグリニャール試薬の添加が必要)、フィッツナー・モファット酸化により得た。
【0162】
3’-O-TBDPS-5’ビニル-チミジン(5)。3’-O-TBDPS-5’アルデヒド-チミジン(4)(5.16g、1当量、10.75mmol)を、高真空レーン下で一夜および4Å MSで乾燥させた。次いで、無水THF(150ml)を、N下化合物3および4Å MSに加えた。1M 臭化ビニルマグネシウムのTHF溶液(21.5ml、2当量、21.5mmol)を、rtで30分かけて非常にゆっくり加えた。反応物をrtでN下2時間撹拌し、LCMSで確認した。必要であれば、若干余分の臭化ビニルマグネシウム(0.3当量、3.22ml)を滴下し、反応物をさらに1時間撹拌し得る。完了したら、1M AcOHの水溶液(60ml、pH=6)を反応物に加え、rtで10分撹拌した。反応物をDCMで希釈し、2相を分離した。水相をDCMで2回抽出した。次いで有機相を2回飽和NaHCOで洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下濃縮した。残留物をカラム(Biotage、100g kpSi、PE/EtOAc)で精製して、化合物5をクリーム色泡状物として得た(2.01g、2工程で37%)。LC-MS(ESおよびCI): (-ve) m/z 505 (M-H+), (-ve) m/z 541 (M+Cl-), (+ve) m/z 507 (M+H+). 1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 1.01 (d, J=10.1 Hz, 9H, tBu), 1.80 (s, 3H, Me), 2.02-2.22 (m, 2H, H2’), 3.48-3.54 (m, 0.6H, H5’), 3.81 (t, J=2.2 Hz, 0.6H, H4’), 3.97-4.02 (m, 0.4H, H4’), 4.13-4.22 (m, 0.4H, H5’), 4.33-4.50 (dm, 1H, H3’), 4.82-5.17 (m, 2H, CH2=CH-), 5.24-5.43 (m, 0.4H, CH2=CH-), 5.52-5.75 (m, 0.6H, CH2=CH-), 6.04-6.29 (ddd, J=21.2, 8.3, 6.0 Hz, 1H, H1’), 7.26-7.46 (m, 7H, Arom + CH), 7.50-7.66 (m, 4H, Arom), 8.23 (s, 1H, NH)
【0163】
アリルアルコール(5)の別の合成。アルデヒド(4)を、塩化ビニルマグネシウム(2.5当量)でTHF中、rtで処理して、化合物(5)を得た。ブロマイドの代わりのクロライド反応剤の使用は、所望の生成物のクロライドバリアントの導入なく、所望の生成物の臭素化アナログ(上記方法で14%)の産生を減少できた。
【0164】
3’-O-TBDPS-5’ビニル-5’DMT-チミジン(6)。3’-O-TBDPS-5’ビニル-チミジン(5)(2.01g、1当量、3.97mmol)を、高真空レーンで一夜乾燥させた。AgNOを加え、固体を高真空下、さらに30分乾燥させた。無水DCMをN下反応物に加え、次いでコリジン(1.05ml、2当量、7.94mmol)および最後にDMT-Cl(2.02g、1.5当量、5.96mmol)を固体として加えた。反応物をN下3時間撹拌し、完了をTLC(PE/EtOAc、6:4+1%NEt)で確認した。次いで反応物をDCMで希釈し、セライトで濾過し、固体をさらなるDCMで洗浄した。次いで、溶液を1%HSO(60ml)で分配し、DCMで抽出した。有機相を飽和NaHCOで2回洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下濃縮して、粗製6を泡状物として得た。これをさらに精製することなく次工程で使用した。LC-MS(ESおよびCI): (-ve) m/z 807 (M-H+), (+ve) m/z 809 (M+H+)
【0165】
別法:化合物(5、6.7g、13.2mmol)および2,3,5-コリジンの無水DCM溶液を、モレキュラー・シーブで30分間乾燥させた。得られた次いで、溶液を4,4’-ジメトキシトリフェニルメチルクロライド(6.7g)およびモレキュラー・シーブを仕込んだフラスコに加えた。AgNOを加え、反応物を1時間撹拌した。得られた混合物をDCM(40mL)で希釈し、珪藻土で濾過し、DCM(3×40mL)で濯いだ。MeOH(240mL)を濾液に加え、混合物を10分間撹拌し、次いで分液漏斗に移し、飽和NaHCO水溶液(2×400mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下濃縮して、粗製生成物を黄色泡状物として得た。
【0166】
5’ビニル-5’DMT-チミジン(7)。3’-O-TBDPS-5’アリル-5’DMT-チミジン(6)(1当量、先の工程から3.97mmol)を、高真空レーン下乾燥させた。無水THF(12ml)をN下加え、4℃に冷却した。1M TBAFのTHF溶液(4.37ml、1.1当量、4.37mmol)を4℃で滴下した。4℃で5分間の後、反応物をrtに温め、N下3時間撹拌した。反応の完了はTLC(PE/EtOAc、3:7+1%NEt)によった。反応物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCOで分配した。水相をEtOAcで抽出し、次いで有機相を飽和NaHCO、次いで塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下濃縮した。残留物をカラム(Biotage、25g KpSi、PE/EtOAc+1%NEt)で精製して、化合物7を白色泡状物として得た(1.81g、2工程で80%)。LC-MS(ESおよびCI): (-ve) m/z 569(M-H+), (+ve) m/z 571(M+H+). 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.46 (s, 1H, Me), 1.65 (s, 2H, Me), 1.97-2.13 (m, 2H, H2’), 3.64 (m, 1H, H4’), 3.85 (dd, J=8.0, 4 Hz, 0.4H, H5’), 3.92 (dd, J=8.0, 4 Hz, 0.6H, H5’), 4.31-4.45 (m, 1H, H3’), 4.55-4.86 (m, 2H, CH=CH2-), 5.27 (dd, J=7.4, 4.8 Hz, 1H, OH), 5.52-5.71 (m, 1H, CH=CH2-), 6.11 (dt, J=8.1, 5.8 Hz, 1H, H1’), 6.86 (dd, J=8, 4 Hz, 4H, Arom.), 7.13-7.35 (m, 7H, Arom. +CH), 7.40-7.50 (m, 3H, Arom.), 11.35 (s, 1H)
【0167】
5’ビニル-5’DMT-チミジン-ホスホロアミダイト(8)。5’ビニル-5’DMT-チミジン(800mg、1.4mmol)を、高真空レーン下乾燥させた。無水DCM(7ml)をN下加え、モレキュラー・シーブと10分間、rtで撹拌した。溶液に、ヒューニッヒ塩基(0.74ml、4.2mmol)、続いて2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(407μl、0.52mmol)を加えた。反応物を、rtでN下3時間撹拌した。反応の完了はTLC(PE/EtOAc、4:6)によった。反応減圧下濃縮した。残留物をカラム(Biotage、25g KpSi、PE/EtOAc+1%NEt)で精製して、化合物8を白色泡状物として得た(930mg)。LC-MS(ESおよびCI): (-ve) m/z 770(M-H+), (+ve) m/z 771(M+H+). 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 0.96-1.27 (m, 21H), 1.50 (d, J=5.9 Hz, 1H), 1.66 (s, 3H), 2.02-2.37 (m, 3H), 2.58-2.74 (m, 2H), 2.78 (td, J=5.8, 3.9 Hz, 1H), 3.46-3.69 (m, 6H), 3.76-3.93 (m, 2H), 3.96-4.10 (m, 2H), 4.61 (ddd, J=17.5, 14.2, 8.6 Hz, 2H), 4.68-4.98 (m, 3H), 5.43-5.79 (m, 1H), 6.04 (dt, J=9.6, 5.1 Hz, 1H), 6.13 (dt, J=10.7, 6.9 Hz, 0H), 6.85 (ddt, J=8.2, 5.2, 2.4 Hz, 6H), 7.09-7.34 (m, 11H), 7.34-7.50 (m, 4H), 11.37 (d, J=6.1 Hz, 1H). 31P NMR (162 MHz, DMSO) δ 147.94, 147.16, 147.03
【0168】
開裂効率分析
開裂効率を、高プライマー密度PAZAM表面(40~60k)で評価した。(非パターン化)HiSeq(登録商標)フローセルを、ここに記載する標準法に従い調製した。ノルボルネン由来シランを、CVD方法、続いて基質表面へのポリマー(PAZAM)のクリックカップリング、続いてポリマー表面にアリルTヌクレオシドアナログ(5’-アルキン-TTTTTTTTTXCAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT、ここで、Xは上記修飾Tヌクレオシドが取り込まれた位置を示す)を含む修飾P7オリゴを移植するための第二クリックカップリング法を使用して、基質表面に沈着させた。
【0169】
修飾P7オリゴを標準P7オリゴと類似密度でPAZAMフローセルに移植した。修飾P7オリゴの移植効率も、標準5’官能化P5およびP7オリゴに類似した。フローセル表面を、1mM NaPdCl、10mM THPの1×EA取り込み混合物(50mM エタノールアミン-HCl(pH9.9)、50mM NaClおよび0.05%Chaps含有)溶液で、60℃で10分間処理した。TET-QCアッセイを、in situで作製されたPd(0)錯体で処理後の表面からのアリルT修飾P5オリゴの開裂の成功の証明に使用した。
【0170】
図2Aは、Pd(0)処理前後のフローセル表面のTyphoon画像を図示する。図2Bは、修飾P5オリゴと標準対照で処理したフローセル表面を比較する、Pd(0)処理前後のプライマー密度の変化を示す。低プライマー密度および高プライマー密度範囲両者で、修飾P5オリゴを移植したPd(0)処理フローセル表面は、蛍光強度の相当な変化を示した。結果は、この方法を使用して、極めて効率的な開裂(約95%、蛍光アッセイ)を示唆した。比較して、標準P5オリゴ移植フローセル表面は蛍光強度に大きな変動は示さず、標準P5オリゴはPd(0)錯体で開裂されなかったことを示した。
【0171】
配列決定ラン結果分析
上記修飾アリルTヌクレオシドが効果的開裂を受ける能力を、短配列決定ランの実施によりさらに分析した。この実験において、フローセルを、上記に準じて製造した。それ故に、アリル-T修飾P5アルキンオリゴおよび標準P7アルキンオリゴを、種々の表面プライマー密度でPAZAM被覆フローセルに移植した。効率的再合成を確実にするために、アリル修飾の位置を、修飾P5オリゴの3’末端に向けてさらにシフトさせた。SBSフローセル製作に使用した移植プライマーの配列は、次のとおり記載される。
P5:5’-アルキン-TTTTTTTTTTAATGATACGGCGACCACCGAGAXCTACAC
P7:5’-アルキン-TTTTTTTTTTCAAGCAGAAGACGGCATACGA(8-オキソG)AT
X=スキーム1に記載のとおりアリル修飾。
【0172】
典型的開裂条件は、アリル-P5移植表面とNaPdCl/THP溶液の60℃で10分間のインキュベーションを含む。Pd(0)処理PAZAM表面はこれらの条件で安定であり、数百サイクルの配列決定を支持するために進められ得る。さらに、他の副反応は検出されず、P7オリゴの続く開裂で、PET再合成により間接的に決定されるとおり、影響を受けないままであり、アリルアプローチの直交性および特異性が確認された。
【0173】
図3Aは、非パターン化高プライマー密度フローセルに由来するTET色素表面蛍光QCアッセイ(TET-QC)を示す棒グラフである。チャネル1~4において、表面はアリル修飾P5オリゴおよび標準P7オリゴで移植された。チャネル5~8において、表面は標準P5/P7オリゴで移植された。結果は修飾および標準P5オリゴ間で同等であった。図3Bは、図3Aに記載するTET-QC後のフローセル表面のTyphoon画像を図示する。同様に、両者で検出可能なシグナルが残っていなかったため、チャネル間の可視差異は特定されなかった。予備的データは、クラスター密度の点で修飾P5オリゴおよび標準P5オリゴに特に差はないことを示唆した。
【0174】
NaPdCl/THPIを含む開裂溶液は、室温で数日の保存で安定であり、時間が経った混合物がなおアリル修飾P5オリゴを開裂できることも観察された。
【0175】
実施例2
この実施例で、ここに記載するPd(0)線形化方法およびジオール開裂方法を、P15/P17プライマーを移植した新規タイプのフローセルで試験し、MiSeq(登録商標)(2チャネル装置として設定)で配列決定データを集め、P5/P7プライマーを移植した標準フローセルと比較し、図1に記載する酵素線形化に使用した。新規フローセルおよび標準フローセル両者ともPAZAMポリマーで被覆し、表面のプライマー密度は両タイプのプライマーで約200Kを目指した。
【0176】
配列決定は、両フローセルでNovaSeqTM取り込み混合物で行い、20℃で画像処理を実施した。各線形化工程(リード1およびリード2)前、フローセルをexo処理して、何らかの過剰の未使用表面プライマーを除去した。標準表面プライマー(P5/P7)について、線形化をリード1ではUSER酵素(LMX1)で38℃で20分インキュベーションおよびリード2ではFpG酵素で40℃で20分インキュベーションで実施した。新規P15/P17表面プライマーについて、線形化をリード1ではTHPおよびアスコルビン酸ナトリウム含有パラジウム混合物(60mM/6mM/6mM)で60℃で2分インキュベーションおよびリード2では過ヨウ素酸ナトリウム混合物で20℃で10分フラッシュで実施した。これらのデータに示される配列決定ライブラリーはPhiXであり、ランは2×151サイクルであった。配列決定結果を下記表に要訳する。
【表3】
【0177】
配列決定データは、Pd(0)補助化学線形化が配列決定で良好に働き、初期測定基準は、標準と比較して極めて類似することを示唆する。クラスター通過フィルター(%PF)、フェージング/プレフェージング、%アライメントは、P5/P7およびP15/P17表面プライマー両者で等しい。%誤差はP15/P17移植フローセルのリード1でわずかに高かったが、なおかなり良好(図4に示すとおり)であり、フローセル間変動も同様に生じ得る。リード2の%誤り率は同等である。さらに、線形化に必要な時間は、新規タイプのフローセルを使用したとき、リード2で2倍およびリード1で10倍減少した。
【0178】
実施例3
この実施例で、実施例1に記載したアリルTヌクレオシドを、現在のイルミナの製造ワークフローをさらに合理化するために、検出可能標識(すなわち、蛍光標識)でさらにタグ付けし得る。色素標識アリルTヌクレオシドがP5オリゴに取り込まれたら、それは、完了直後、移植反応の直接定量化を可能とする。現在の手順において、この工程は別のハイブリダイゼーションアッセイとして実施される。
【0179】
色素標識修飾Tヌクレオチドを使用するPd(0)開裂反応を、先の実施例に記載するものに類似する合成方法を使用して、スキーム3に図説する。
【化35】
【0180】
実施例4
この実施例で、ジオールリンカー反応剤をスキーム4に記載のとおり製造した。本方法は、米国特許8,715,966に記載される合成を改善する。
【化36】
【0181】
ジオール-1。本方法は、ジオール-1の合成の溶媒としてDMFを省く。DMFは、エマルジョン形成および水相への生成物の望ましくない分布により水性抽出を複雑にし、先に報告された手順では、後処理前のその除去は時間がかかった。先のDMF/DCM混合物はEtOAcに変えられ、これは、処理時間を3日から1~2日に短縮する(クロマトグラフィーを含む)。さらに、先の方法ではビス-トリチル化副生成物の形成が収率を下げた。反応剤添加の順序を、ヘキサンジオール/DIPEAの混合物への固体DMTr-Clの少量ずつの添加からヘキサンジオール/DMTr-Clの混合物への液体DIPEAの滴下へ変えることにより、所望の生成物への反応の選択性が約10%改善した。ある実施態様において、この反応の生成物を、DMTr-OHおよびビス-トリチル化副生成物除去のためのクロマトグラフィーをせずに、粗製で使用し得る。
【0182】
ジオール-3。TPAP/触媒NMOを使用する先の酸化方法は、対応するカルボン酸への過剰酸化をもたらし、最大3~4日かかった。ここで、TPAP/NMOを、DCMおよびNaHCO水溶液の二相混合物中のTEMPO/漂白剤に置き換えた。漂白剤を残りの反応剤の混合物に滴下し、漂白剤添加が完了したら、反応は完了した。生成物は水性抽出により単離され、過剰酸化は最小であり、66~92%の収率であり、全手順は速かった(1.5日)。他の実施態様において、ジオール-3およびジオール-4の合成は、中間体クロマトグラフィー工程を省くために短縮され得る。過剰のtBuOKは、出発物質における何らかのカルボン酸物質の中和に必要であり得る。
【0183】
ジオール-2。ジオール-2の合成の先の方法は、反応完了を確実にするために、48時間還流と、36時間での幾つかの操作を必要とした。反応濃度増加は、48時間から12~24時間への還流時間短縮を可能とした。先のプロトコールにおいて、粗製ジオール-2を水で抽出した。水の除去が必要であり(続く工程が感湿性であるため)、これは、スケール依存的に時間を要した。工程は、ジオール-2のDCMでの抽出ならびに何らかの酢酸除去および溶媒除去時間最小化のためのNaHCO水溶液での洗浄により改善された。全処理時間は3日から2日に短縮された。生成物は、DCM中の原液として保存した。溶液を、ジオール-4反応前、3Å モレキュラー・シーブ上で一夜保存した。
【0184】
あるいは、ジオール-2を、精製を単純化するために対応するアルコールに加水分解し得る。次いでアルコールを続く工程で使用して、ジオール-4を直接提供する。
【0185】
ジオール-5。クロマトグラフィー精製工程を省き、処理時間を1日縮めた。さらに、DMFをDCMに変えて、水性後処理中の溶媒/洗浄溶液体積減少を可能とすることにより、手順の効率を改善し得る。
【0186】
ジオール-6。クロマトグラフィー精製工程を省き得る。
【0187】
ジオール-7。ジオール-7の合成は、TBAFを使用するエステル化および脱シリル化の2つの短縮手順を含む。先に報告された手順において、顕著な1,4-アセチル移動がTBAFでの脱シリル化中観察され相当量の望まない副生成物、ジオール-7Mの形成をもたらした。
【化37】
【0188】
この物質は、全体的収率およびジオール-7純度を減少させた。さらに、ジオール-7Mの続く工程への残留が、1級アルコールではなく、2級アルコール上にホスホロアミダイトを有する、ジオール-8Mを産生させる。プライマーへの取り込みは、非開裂可能リンカーをもたらす。本方法において、市販TBAFバッチから望まないNaOHを除去するために、TBAF工程をAcOHで緩衝化した。AcOHが多すぎると、DMTr保護基が喪失する。反応を、1.75当量AcOHおよび出発物質への暴露前のTBAFとAcOHの前混合で実施した。さらに、先の方法は、後処理前のTHFの蒸発を含み、現在の方法はこの蒸発工程を省き、生成物の塩基誘発分解を減じるための水相のpH7への注意深い中和を含んだ。最後に、エステル化工程後のクロマトグラフィー精製は省かれている。
【0189】
あるいは、ジオール-5からジオール-7の合成方法は、さらなるクロマトグラフィー工程を除き、さらに短縮され得る。纏めて、本手順を、6回ではなく3回のクロマトグラフィー工程を含んで実施でき、粗製物質をジオール-4、ジオール-7およびジオール-8段階で精製する。
【0190】
実施例5
この実施例は、ヒドロキシル保護基として働くA-TOMモノマー、修飾3’ホスフェート部分の合成を記載する。(TOM=トリ-イソプロピルシリルオキシメチル)
【化38】
【0191】
工程1. DMTアデノシンのベンゾイル化(A-OBz)
【化39】
N6-ベンゾイル-2’-デオキシ-5’-ODMT-D-アデノシン(11.2g、17mmol)および溶媒(1:3比のピリジン/DCM混合物、11ml ピリジン、33ml DCM)を室温で混合して、溶液を得た。反応フラスコを0℃に冷却し、それにDMAP(0.41g、3.41mmol)および塩化ベンゾイル(3.9g(3.2ml)、34.1mmol)を加えた。室温に温めながら一夜撹拌し(反応進行をTLCモニタリング)、極めて薄い橙色混合物と一部白色固体沈殿を得た。溶媒を、減圧下、温度<40℃で除去した。残留物をAcOEt(約500mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で2回(2×250mL)、水(250mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させた。溶媒蒸発およびトルエンとの共蒸発後、白色泡状物が得られ、一定重量となるまで減圧下乾燥させた。物質を精製することなく次工程で使用した。
【0192】
工程2. 脱トリチル化(A-OH)
【化40】
A-OBz(13.69g、未精製、17mmol)をジクロロメタン/メタノール混合物(1:1、300ml)に溶解し、窒素下0℃に冷却した。トリフルオロ酢酸(2.75ml、36mmol)をシリンジを介して添加した。反応物を、室温に温めながら1時間撹拌した。TLCで反応の進行をモニターした。0℃で固形NaHCO(3g、36mmol)添加により、反応停止させた。温度<40℃で溶媒を除去し、残留物をAcOEt(約800mL)で希釈し、水(5×250ml)で5回洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下乾燥させて、白色泡状物を得た。カラムクロマトグラフィー(1:1石油エーテル/酢酸エチルから酢酸エチルの勾配溶出)での精製により、標的生成物を白色粉末として得た。(5.0g、60%収率(2工程)、100%酢酸エチル中Rf=0.35) 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.25 (s, 1H), 8.78 (s, 1H), 8.75 (s, 1H), 8.07 (ddt, J=10.1, 7.0, 1.4 Hz, 4H), 7.75-7.68 (m, 1H), 7.68-7.62 (m, 1H), 7.62-7.51 (m, 4H), 6.64 (dd, J=8.6, 5.9 Hz, 1H), 5.68 (dt, J=6.1, 1.9 Hz, 1H), 5.28 (t, J=5.7 Hz, 1H), 4.31 (td, J=4.4, 1.8 Hz, 1H), 3.72 (tdd, J=11.8, 6.4, 4.7 Hz, 2H), 3.19 (ddd, J=14.4, 8.7, 6.1 Hz, 1H), 2.75 (ddd, J=14.1, 5.9, 1.8 Hz, 1H)
【0193】
工程3. 酸化
【化41】
モレキュラー・シーブ(4Å)を含むA-OH(1.0g、2.18mmol)のジクロロメタン(50ml)を、窒素ガス下、0℃に冷却した。別のフラスコで、デス・マーチン・ペルヨージナン(1.11g、2.61mmol)を、モレキュラー・シーブでジクロロメタン(10ml)に溶解した。デス・マーチン溶液をA-OHに加え、室温に温めた。LCMSで反応をモニターし、1時間後、飽和重炭酸ナトリウム溶液で反応停止させた。反応停止混合物をジクロロメタン(約250ml)で希釈し、重炭酸ナトリウム溶液(100ml)および水(2×100ml)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下乾燥させて、白色泡状物を得て、これをさらに精製することなく次工程で使用した。
【0194】
工程4. ウィッティヒ反応(A-CH=CH )
【化42】
メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(5.83g、16mmol)を、撹拌子、モレキュラー・シーブおよび窒素ラインを含むオーブン乾燥二首丸底フラスコで乾燥THF(40ml)と混合した。フラスコの首の一つは、固体添加チューブにカリウムtert-ブトキシドを保持した。溶液を0℃に冷却した。カリウムtert-ブトキシドを、添加チューブを、空気にさらされることなくまたはシステムを開放することなく固体が撹拌溶液に落ちることを可能にするジョイントに回すことにより添加した。溶液は濁った白色から黄色に変わった。0℃で1時間撹拌した。注:この工程の全固体反応剤は、五酸化リン存在下、高真空で一夜乾燥させた。シリンジ、針、撹拌子、活性化モレキュラー・シーブも同じタンクで乾燥させた。
【0195】
黄色固体を、A-CHO(2.5g、5.44mmol)のTHF(15ml)溶液に、0℃でワイドゲージ針およびシリンジで加えた。黄色から橙色に色が変化した。0℃で3時間撹拌し、LCMSでモニターした。
【0196】
反応混合物を、水(300ml)およびAcOEt(300mL)を含むフラスコに0℃で注加することにより、反応物を後処理した。10分間撹拌し、その後分液漏斗に移した。有機層を飽和重炭酸ナトリウム溶液(3×100ml)および塩水(100ml)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下乾燥させて、褐色-黄色泡状物。カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンから5%メタノール/DCMで勾配溶出)での精製により、標的生成物をクリーム状黄色泡状物として得た。(2.59g、5%MeOH/DCM中Rf=0.53) 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.21 (s, 1H), 8.77 (s, 1H), 8.66 (s, 1H), 8.05 (d, J=7.2 Hz, 2H), 7.65 (t, J=7.4 Hz, 1H), 7.57 (q, J=7.9, 7.3 Hz, 3H), 6.50 (t, J=6.7 Hz, 1H), 6.06 (ddd, J=17.2, 10.4, 6.7 Hz, 1H), 5.55 (d, J=4.4 Hz, 1H), 5.29 - 5.10 (m, 2H), 4.42 (p, J=4.2 Hz, 1H), 4.30 (dd, J=6.7, 3.6 Hz, 1H), 2.94 (dt, J=13.1, 6.4 Hz, 1H), 2.40 (ddd, J=13.3, 6.5, 4.3 Hz, 1H)
【0197】
工程5. ジオール酸化(A-OHOH)
【化43】
A-CHCH(0.68g、1.49mmol)のTHF(7ml)溶液を、撹拌子を備え、窒素下にあるフラスコに入れた。4-メチルモルホリンN-オキシド(0.262g、2.235mmol)を固体として測り取り、反応フラスコに加えた。水(7ml)も加えた。四酸化オスミウム(4%水溶液、285μl、0.045mmol)を反応フラスコに加えた。反応物を40℃で一夜加熱した。反応進行をTLCおよびLCMSでモニターした。固体としてのチオ硫酸ナトリウムを加えて、反応停止させた。混合物を30分間撹拌し、その後酢酸エチル(150ml)および重炭酸ナトリウム溶液で後処理した。有機層を飽和重炭酸ナトリウム溶液(3×100ml)で3回洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下乾燥させて、灰白色のゆっくり結晶化する固体を得た。カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンから10%メタノール/DCMでの勾配溶出)での精製により、標的生成物を無色油状物として得た。(0.13g、19%収率、5%MeOH/DCM中Rf=0.28) 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.25 (s, 1H), 8.78 (s, 1H), 8.73 (s, 1H), 8.07 (ddt, J=9.6, 7.2, 1.4 Hz, 4H), 7.74-7.68 (m, 1H), 7.68-7.62 (m, 1H), 7.62-7.47 (m, 5H), 6.62 (dd, J=8.9, 5.8 Hz, 1H), 5.82 (dt, J=5.8, 1.5 Hz, 1H), 5.48 (d, J=5.1 Hz, 1H), 4.69 (t, J=5.5 Hz, 1H), 4.31 (dd, J=5.0, 1.5 Hz, 1H), 3.81 (p, J=5.3 Hz, 1H), 3.48 (dh, J=22.3, 5.5 Hz, 2H), 3.18 (ddd, J=14.4, 9.0, 5.9 Hz, 1H), 2.70 (ddd, J=14.4, 6.0, 1.5 Hz, 1H)
【0198】
工程6. シリル化(A-OHTOM)
【化44】
A-OHOH(0.128g、0.262mmol)のDCM溶液を、撹拌子および窒素ラインを含むフラスコ中、DCM(1.5ml)に溶解した。ジ-tert-ブチルスズジクロライド(80mg、0.262mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(182μl、1.05mmol)を、室温で30分間加えた。トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチルクロライド(TOM-Cl、79μl、0.341mmol)をマイクロピペットで加えた。反応進行をTLCおよびLCMSでモニターした。反応物を、一夜室温に置いた。反応後処理を酢酸エチル(200ml)中で実施した。飽和重炭酸ナトリウム溶液(3×100ml)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下乾燥させて、黄色/褐色油状物を得た。カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンから8%メタノール/DCMの勾配溶出)による精製により、標的生成物を黄色-白色泡状物として得た(0.14g、79%収率、5%MeOH/DCM中Rf=0.5) 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.25 (s, 1H), 8.76 (s, 1H), 8.73-8.65 (m, 1H), 8.06 (tt, J=7.5, 1.4 Hz, 4H), 7.76-7.62 (m, 2H), 7.62-7.46 (m, 4H), 6.61 (dd, J=8.9, 5.7 Hz, 1H), 5.82 (d, J=5.7 Hz, 1H), 5.65 (d, J=5.3 Hz, 1H), 4.84 (s, 2H), 4.27 (dd, J=5.4, 1.5 Hz, 1H), 4.06-3.93 (m, 1H), 3.62 (ddd, J=42.1, 10.3, 5.2 Hz, 2H), 3.22 (ddd, J=14.7, 9.1, 5.8 Hz, 1H), 2.74-2.65 (m, 1H), 0.94 (m, 21H, TOM)
【0199】
工程7. トリチル化(A-TOM-DMT)
【化45】
乾燥A-OHTOM(0.14g、0.207mmol)、(4,4’-ジメトキシトリフェニルメチルクロライド(DMT-Cl、0.105g、0.311mmol)および硝酸銀(53mg、0.311mmol)を、乾燥DCM(1.5ml)およびコリジン(2,4,6-トリメチルピリジン)(55μl、0.414mmol)と共にフラスコに仕込んだ。反応物を室温で3時間撹拌した。反応進行をTLCおよびLCMSでモニターした。反応混合物をDCM(100ml)で希釈し、焼結ガラス漏斗で濾過した。DCM溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液(5×100ml)で洗浄した。DCM層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下乾燥させて、黄色/褐色油状物を得た。カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンから10%メタノール/DCMでの勾配溶出)での精製により、標的生成物を粘性黄色油状物として得た(0.17g、85%収率、5%MeOH/DCM中Rf=0.46)。
【0200】
工程8. (A-3’OH)
【化46】
メタノールおよびTHFの混合物(4:5、計0.9ml)中のA-TOM-DMT(56mg、56μmol)の溶液を0℃に冷却した。水酸化ナトリウム(4M、0.1ml、過剰)を加え、0℃で15分間撹拌した。TLCおよびLCMSで反応をモニターした。酢酸(1M、0.5ml)を使用して、pHがpH8を下回らないことを確認しながら反応停止させた。反応混合物を酢酸エチル(EA、100ml)で希釈し、溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液(3×50ml)で洗浄した。EA層をMgSOで乾燥させ、濾過し、減圧下乾燥させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(EA/石油エーテル(25%)から100%EAの勾配溶出)で精製して、白色泡状物を得た(0.02g、40%収率、100%EA中Rf=0.38)。
【0201】
工程9. ホスホロアミダイト形成(原子モノマー)
【化47】
A-3’OH(92mg、105μmol)を、モレキュラー・シーブおよび磁気撹拌子を含むフラスコに加え、その後THF(乾燥、0.2ml)を室温で窒素ガス下加えた。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(110μl、630μmol)をTHF溶液に加えた。最後に、2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(38μl、169μmol)をマイクロピペットで加えた。反応物を窒素下室温で撹拌した。TLCで反応をモニターした。反応が完了したら、溶媒を減圧下除去した。残留物を室温で石油エーテル(3×20ml)で洗浄した。次いで、残留物をDCMに溶解し、濾過してモレキュラー・シーブを除去した。再び減圧下乾燥させ、その後カラムクロマトグラフィー(EA/石油エーテル(20%)から75%EAで勾配溶出)で精製して、粘性無色油状物を得た(80mg、70%収率) 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.17 (s, 1H), 8.57 (s, 1H), 8.39 (s, 1H), 8.06-7.99 (m, 2H), 7.64 (td, J=7.1, 1.2 Hz, 1H), 7.58-7.46 (m, 4H), 7.36 (ddd, J=15.4, 9.0, 2.8 Hz, 4H), 7.29 (t, J=7.4 Hz, 2H), 7.27-7.17 (m, 1H), 6.92-6.83 (m, 4H), 6.34 (dd, J=9.0, 5.9 Hz, 1H), 4.78-4.71 (m, 1H), 4.68 (q, J=6.6, 4.6 Hz, 1H), 4.52 (dd, J=8.5, 4.9 Hz, 1H), 4.27 (d, J=7.1 Hz, 1H), 3.85-3.69 (m, 8H), 3.62 (dp, J=10.4, 6.7 Hz, 1H), 3.34-3.22 (m, 1H), 2.78 (td, J=5.8, 1.9 Hz, 2H), 2.64 (td, J=8.8, 4.7 Hz, 1H), 2.26-2.16 (m, 1H), 2.08 (d, J=0.7 Hz, 6H), 1.21 (dd, J=15.4, 5.6 Hz, 9H), 1.12 (d, J=6.7 Hz, 6H), 0.99-0.88 (m, 2H), 0.83 (dd, J=6.3, 4.5 Hz, 18H)
【0202】
実施例6
モデルジヌクレオチド(C-Tom-A)の合成
【化48】
化合物C-アミダイト(125mg、0.15mmol)およびA-OH-Tom(64mg、0.1mmol)を、減圧下、一夜Pで乾燥させ、無水アセトニトリル(1ml)に溶解した。N下、エチルチオテトラゾール(ETT、32.5mg、0.25mmol)を加えた。混合物をrtで15分間撹拌した。TLCおよびLC-MSは、出発物質A-OH-Tomの完全消費を示した。デカン(5M、0.1ml)およびDCM(1ml)中のt-BuOOH溶液を反応混合物に加え、15分間rtで撹拌した。反応混合物をNaHCO水溶液に注加し、水相をEtOAcで抽出した。合わせた有機相を蒸発させ、NaOH(0.1M、HO/THF/MeOH=1/4/5 v/v中1ml)でrtで1時間処理した。次いで、混合物をTHF/MeOH(5ml/4ml)中のHCl(1M)で0.5時間処理した。反応混合物を濃縮し、HOおよびEtOAcに分配した。所望の生成物が水相から回収され、RP HPLC(TEAB 0.1M/CHCN)でさらに精製した。
【0203】
モデル化合物C-TOM-Aでの開裂試験
【化49】
C-TOM-Aの原液を種々の脱保護条件下処理した。反応進行をRP HPLCでモニターした。中間体C-Aは、TOM基がC-TOM-Aから除かれているが、ホスフェート結合が開裂されていない化合物である。下記表1は、種々の反応条件下および脱保護反応剤での脱保護結果を要約する。
【表4】

【0204】
実施例7
この実施例で、Pd(0)錯体を製造する別法が記載され、その化学開裂活性を実施例1に記載したアリルパラジウム(II)クロライド二量体(Pd(C)Cl)およびTHPからin situで産生されたPd(0)錯体と比較した。in situで産生されたPd(0)錯体と対照的に、一部パラジウム(II)前触媒は、化学線形化反応、例えば、P15プライマーの化学開裂への使用前に製造および単離された。これらのPd(II)前触媒は単離形態では不活性であるが、便利にはTHP存在下でin situで活性Pd(0)に還元される。これらの代替Pd前触媒は生成物安定性を改善し、貯蔵寿命を延長し得る。
【0205】
製造方法
(Pd(C)Cl)を、窒素下、乾燥、脱気テトラヒドロフランに溶解し、テトラヒドロフラン溶液として添加した1~10当量のTHPで処理した。油状物の分離が観察され、油分を上清の傾捨により分離した。この油状物質を減圧下乾燥させて、黄色~褐色または橙色粘性油状物を得た。これらの物質は水に高度に可溶性であった。1~2当量のTHPを加えたとき、[Pd(C)(THP)]Clと[Pd(C)(THP)]Clの混合物が単離され、その両者ともPd(II)錯体であった。5当量THPを加えたとき、[Pd(C)(THP)]Clのクリーンサンプルが得られた。これらの二つのPd(II)錯体を単離し、特徴づけした。10当量THPを加えたとき、P15線形化のために活性なPd(0)物質が得られた。
【0206】
[Pd(C3H5)(THP)]Cl: 31P NMR (162 MHz, D2O): d 14 (s) ppm. 13C NMR (101 MHz, D2O): d 118.7 (d, J=5.0 Hz), 81.7 (d, J=29 Hz), 62.1 (d, J=15 Hz), 26.5 (s), 20.5 (d, J=25.0 Hz) ppm. LC-MS: [アリルPd(THP)]+;予測:355 Da, 実測:355 Da。
【0207】
[Pd(C3H5)(THP)2]Cl: 31P NMR (162 MHz, D2O): d 10 (s) ppm. 13C NMR (101 MHz, D2O): d 122.7 (t, J=5.3 Hz), 71.2 (t, J=14 Hz), 61.8 (t, J=7.6 Hz), 26.7 (s), 22.1 (t, J=13 Hz) ppm. LC-MS: [アリルPd(THP)2]+;予測:563 Da, 実測:563 Da.
【0208】
P15開裂への使用
(Pd(C)Cl)の1当量、2当量、5当量および10当量処理で単離したTHP物質を、水性緩衝液中、10mg/mLで製剤した。P15開裂に対するこれらの製剤の活性を、HPLCベースのアッセイを使用して評価した。このアッセイにおいて、P15プライマー(10μM)溶液を、10%v/vの各製剤で処理し、10分間、38℃でインキュベートし、次いで希釈およびスピンカラム処理により反応停止させ、HPLCにより分析した。パーセンテージ開裂を、P15と開裂産物のピーク面積の比から計算する。
【0209】
[Pd(C)(THP)]Clおよび[Pd(C)(THP)]Cl((Pd(C)Cl)と1~5当量THPの混合により得た)の水性製剤は、他の添加物非存在下で、P15開裂について不活性であった。しかしながら、(Pd(C)Cl)と10当量THPの混合から単離した物質の水性製剤は、(Pd(C)Cl)(6mM)、THP(60mM)およびアスコルビン酸ナトリウム(6mM)からin situで調製したPd混合物と、同等なP15開裂活性を提供した。結果は図5Aに示された。d(II)前触媒[Pd(C)(THP)]Clおよび[Pd(C)(THP)]Clは、便利には調製中またはさらなるTHP水溶液での処理によるその使用時にin situで活性化されたことが観察された。[Pd(C)(THP)]Clは、水溶液(12mM Pd)で製剤したとき、1当量以上のTHPでの処理時に活性となることが示された。P15開裂性能は、(Pd(C)Cl)(6mM)、THP(60mM)およびアスコルビン酸ナトリウム(6mM)の混合物からin situで調製したPd(0)混合物を、対照サンプルの点で超えた(図5B)。
【0210】
実施例8
この実施例で、別の単離可能Pd(0)錯体Pd(THM)を、ホスフィンリガンドトリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THM)を使用して調製した。その開裂活性を、実施例1に記載したアリルパラジウム(II)クロライド二量体(Pd(C)Cl)およびTHPからin situで産生したPd(0)錯体と比較した。
【0211】
調製:Pd(THM)を、Ellis, et al., Inorg. Chem., 1992, 31, 14に記載のプロトコールを使用して、調製および単離した。水溶液を10mM濃度で製剤し、その性能を、(Pd(C)Cl)(10mM)およびTHP(100mM)を使用して、in situで産生したPd(0)と比較した。
【0212】
Pd(0)誘発線形化を示すために、配列決定を、P15/P7表面プライマー(デュアルインデックスサイクルで2×151)を移植したS4フローセルを使用するNovaSeqTM装置で実施した。Xpワークフローをナノ(レーン1および3)およびPCR遊離(レーン2および4)ライブラリー(450bp挿入物)と共に使用した。リード1 SBS化学前に、(Pd(C)Cl)(10mM)、THP(100mM)およびアスコルビン酸ナトリウム(10mM)[レーン1~2];またはPd(THM)水溶液(10mM)[レーン3~4]からなるPd混合物を使用して、線形化を実施した。リード2線形化を、FpG酵素含有反応剤を使用して実施した。配列決定計量は、両Pd線形化方法で一般に同等であった。Pd(THM)での高リード1強度およびパーセンテージ再合成は、線形化が成功したことを示した(図6A)。ヒトおよびPhiX誤り率は両方法で同等であった(図6B)。配列決定結果を下記表に要約する(表2)。
【表5】

【0213】
実施例9
この実施例で、活性Pd(0)錯体調製のための別経路を記載する。Pd(THP)2-4を、Pd(PPh)とTHPをリガンド交換反応により調製し、単離した。その開裂活性を、実施例1に記載したアリルパラジウム(II)クロライド二量体(Pd(C)Cl)およびTHPからin situで産生したPd(0)錯体と比較した。
【0214】
製造方法
窒素下、Pd(PPh)を乾燥、脱気ジクロロメタンに溶解して、黄色溶液を得た。THP水溶液(4.1当量)を加えて二相混合物とし、をれを2.5時間撹拌した。黄色が有機層から水層に移った。反応物を有機層を取り除き、水相をさらなるDCMで洗浄して後処理した。水相を減圧下乾燥させ、テトラヒドロフランと共蒸発させ、得られた橙色油状物を高真空下乾燥させた。収率はほぼ定量的であった。生成物LC-MS分析は、Pd(THP)の存在を示した。[Pd(THP)2+H+;予測:523 Da, 実測:523 Da]。
【0215】
P15線形化への使用
Pd(THP)2-4を、水性緩衝液中、10mg/mLで製剤し、そのP15開裂活性をプレートベースのアッセイを使用して評価した。このアッセイは、P15/P17表面プライマーを移植した96ウェルプレートを使用した。挿入蛍光色素を、リード1線形化前後に存在する二本鎖DNAの定量化に使用し、パーセンテージ開裂を、残存二本鎖DNAの量から計算し得る。Pd(THP)2-4の製剤について、P15開裂活性は(Pd(C)Cl)(6mM)、THP(60mM)およびアスコルビン酸ナトリウム(6mM)からin situで調製したPd混合物と同等であった(図7)。この2つの方法は、同等な開裂性能を有したことが観察された。
【0216】
実施例10
この実施例で、別のニッケルベースの化学開裂剤を調製し、アリルdTヌクレオチド含有DNA鎖の開裂において試験した。
【0217】
先ず、THPおよびTHMホスフィンリガンド両者を種々の当量で使用して、ニッケル錯体の調製においてNiClと反応させた。Ni-THP(1:4または1:10比)は、実施例1に記載するパラジウム含有反応剤と同じ開裂産物を製造した。興味深いことに、ホスフィンリガンドが短いアルキル鎖を有する(ゆえに円錐角が小さい)Ni-THMは、ニッケルと錯体化させたとき、同じ開裂活性を示さなかった。
【0218】
Ni-THPの表面上の開裂活性を試験し、Pd-THPと比較した。実験を、P15/P7プライマーおよびトレーサーオリゴを移植したHiSeqTMフローセルで実施した。トレーサーオリゴは、配列内に4つのアリルdTおよび3’蛍光標識を有する。Ni-THPまたはPd-THP錯体によるアリルdTの開裂により、フローセルからの蛍光シグナルは消光される。フローセルは1.1μM P15/P7およびさらなる5%~40%トレーサーオリゴを移植され、次いでTyphoonで走査して、移植の成功を確認した。化学線形化を60℃で10分間実施した。レーン1~4は、対照としてPd-THP錯体((Pd(C)Cl)(10mM)、THP(100mM)およびアスコルビン酸ナトリウム(10mM)からin situで産生)で処理し、レーン5~8は10mM Ni-THP(1:10)錯体で処理した。次いで、蛍光強度をTyphoonで得て、化学線形化の程度を確認した。レーンのレイアウト:5%トレーサー=55nM(レーン1、5);10%トレーサー=110nM(レーン2、6);20%トレーサー=220nM(レーン3、7);40%トレーサー=440nM(レーン4、8)。図8は、開裂前後の正規化中央蛍光強度を示し、Ni-THPは、Pd-THPと同等な効率的開裂活性を示した。
【0219】
実施例11
この実施例で、亜ジチオン酸ナトリウム(Na)水溶液による化学線形化のための生体直交型開裂可能リンカーとしての、別のアゾ-アレーンベースのリンカーを記載する。
【0220】
スキーム5および6は、それぞれアゾ-ホスホロアミダイト1および2の製造を図示する。
【0221】
【化50】
化合物5. N下、メチル2-アミノ-5-ヨードベンゾエート(4)(2.77g、10mmol)、Pd(PPh)(1.159mg、1mmol)、CuI(381mg、2mmol)、EtN(4.2mL、30mmol)およびプロパルギルアルコール(1.75ml、30mmol)のDMF(20mL)懸濁液を、rtで15時間撹拌した。TLC分析(石油エーテル:酢酸エチル1:1)は、出発物質の完全な消費を示した。200ml 飽和NaCl溶液で反応停止させた。酢酸エチル:石油エーテル1:1(200ml)を混合物に加え、水層を酢酸エチル:石油エーテル1:1で3回抽出した。MgSOで合わせた有機層を乾燥後、溶液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル80:20から酢酸エチル)で精製して、化合物5を黄色油状物として得た(1.88g、92%)。1H NMR (CDCl3) δ 3.78 (s, 3H), 4.25 (s, 2H, ≡CCH2), 7.27-7.36 (m, 2H, arom.H), 7.58-7.65 (m, 1H, arom.H)
【0222】
化合物6. N下、化合物5(1.88mg、9.2mmol)およびイミダゾール(1.83g、27.6mmol)の乾燥DMF(25ml)溶液にt-ブチルジフェニルシリルクロライド(1.06g、12mmol)を加えた。TLCで反応を追跡し、1時間、室温で撹拌後完了した。飽和NaHCO溶液で反応停止させ、酢酸エチル:石油エーテル1:1(2×)で抽出した。MgSOで合わせた有機層を乾燥後、溶媒を減圧下除去した。次いで、粗製混合物をEtOHに溶解し、EtSiHおよびPd-C(10%)で処理した。反応混合物をN下、16時間還流した。TLC分析(石油エーテル:酢酸エチル8:2)は、出発物質の完全な消費を示した。反応混合物を濾過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテルから石油エーテル:酢酸エチル1:1)で精製して、化合物6を黄色油状物として得た(3.37g、82%)。1H NMR (CDCl3) δ 1.04 (s, 9H, 3xCH3), 1.70-1.77 (m, 2H, CH2), 2.56 (t, 2H, CH2), 3.58 (t, 2H, OCH2), 3.60 (s, 3H, OCH3), 6.62-6.65 (m, 1H, arom.H), 7.03-7.06 (m, 1 H, arom.), 7.27-7.63 (m, 11H, arom.H)
【0223】
化合物8. レゾルシノール(2.2g、20mmol)およびKCO(2.76g、20mmol)のDMF(40ml)懸濁液に、tert-ブチル4-ブロモブタノエート(2.2g、10mmol)をN下加えた。反応混合物をrtで15時間撹拌した。TLC分析(石油エーテル:酢酸エチル7:3)は、出発物質レゾルシノールの90%消費を示した。300ml 飽和NaCl溶液で反応停止させた。酢酸エチル:石油エーテル1:1(300ml)を反応混合物に加え、水層を酢酸エチル:石油エーテル1:1で3回抽出した。MgSOで合わせた有機層を乾燥後、溶液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテルから石油エーテル:酢酸エチル50:50)で精製して、化合物8を黄色油状物として得た(2.2g、88%)。1H NMR (CDCl3) δ 1.27 (s, 9H),1.91-1.98 (m, 2H, CH2), 2.22 (t, 2H, CH2), 3.27 (t, 2H, OCH2), 6.36-6.46 (m, 3 arom.H), 7.09 (t, 1 arom.H)
【0224】
化合物9. 化合物5(450mg、1mmol)をアセトン/水(1:1)溶液(2.5mL)に溶解した。混合物を0℃に冷却し、濃HCl(0.5mL)を加えた。5分後、亜硝酸ナトリウム(93mg、1.2mmol)の水(1mL)溶液を滴下し、混合物を1時間、0℃で撹拌した。同時に、化合物8(252mg、1mmol)、NaCO(210mg、2mmol)およびNaOH(160mg、4mmol)をアセトン/水(1:1)溶液(3mL)に溶解した。第一溶液を、第二溶液に0℃で滴下した。添加完了後、混合物をrtに温め、さらに1時間撹拌した。反応混合物を1M HClで中和し、次いでDCM(3×50mL)で抽出した。有機相をMgSOで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテルから石油エーテル:酢酸エチル1:1)で精製した。化合物9を橙色/赤色油状物として得た(400mg、56%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.02 (s, 9H, 3xCH3), 1.27 (s, 9H), δ 1.69-1.76 (m, CH2), 1.91-1.97 (m, 2H, CH2), 2.20 (t, 2H, CH2), 2.53 (t, 2H, CH2), 3.34 (t, 2H, OCH2), 3.54 (t, 2H, OCH2), 3.62 (s, 3H, OCH3), 6.36-6.46 (m, 4 arom.H), 7.00-7.06 (m, 1 H, arom.H), 7.09 (t, 1 arom.H), 7.27-7.63 (m, 11H, arom.H)
【0225】
化合物11. 化合物9(3.55g、5mmol)をDCM(50ml)に溶解した。溶液をTFA(10ml)でrtで処理し、一夜撹拌した。次いで、TFAを減圧下除去し、トルエンと共蒸発させた。残留物をNaClとDCMに分配した。水層をDCMで3回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮した。粗製生成物をTHF(15ml)に溶解し、TBAF(1M、5ml)で処理した。TLCで反応をモニターした(DCM/MeOH 90:10)。溶媒を減圧下除去し、残留物をNaClとDCM(+10%MeOH)に分配した。水層をDCM(+10%MeOH)で3回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮した。残留物をピリジンと3回共蒸発させた。残留物をPy/CHCN(10/10ml)に溶解し、ヒューニッヒ塩基(3.7ml、15mmol)、DMT-Cl(5.07g、15mmol)を加えた。混合物をrtで2時間撹拌した。TCL(DCM:MeOH 95:5)は、反応の完了を示した。混合物を濃縮し、DCMに溶解し、NaCOで洗浄した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル8:2から酢酸エチル+1%NEt)で精製した。化合物11を橙色/赤色油状物として得た(2.37g、66%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.70-1.79 (m, 2H, CH2), 1.90-1.97 (m, 2H, CH2), 2.24 (t, 2H, CH2), 2.54 (t, 2H, CH2), 3.26 (t, 2H, OCH2), 3.58 (t, 2H, OCH2), 3.63 (s, 3H, OCH3), 3.71 (s, 6H, OMe), 6.79-6.89 (m, 4H, aromatics), 7.03-7.06 (m, 1 H, arom.H), 7.10 (t, 1 arom.H), 7.13-7.63 (m, 13H, arom.H)
【0226】
化合物12. 化合物11(1.05g、1.46mmol)およびDMAP(18mg、0.15mmol)を、N下、7mlの無水ピリジンに溶解した。次いで、反応混合物を0℃に冷却し、塩化ベンゾイル(0.5ml、4.4mmol)を滴下した。反応混合物をゆっくりrtに温め、1時間撹拌し、その間溶液は濁った。TLC分析は、出発物質の完全な消費を示した。飽和NaHCO溶液で反応停止させた。水層をDCMで3回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル8:2 to酢酸エチル+1%NEt)で精製して、化合物12を黄色油状物として得た(930mg、78%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.69-1.76 (m, 2H, CH2), 1.91-1.97 (m, 2H, CH2), 2.20 (t, 2H, CH2), 2.53 (t, 2H, CH2), 3.24 (t, 2H, OCH2), 3.54 (t, 2H, OCH2), 3.62 (s, 3H, OCH3), 3.71 (s, 6H, OMe), 6.79-6.86 (m, 4H, aromatics), 7.01 (t, 1 arom.H), 7.04-7.11 (m, 3 H, arom.H), 7.13-7.63 (m, 13H, arom.H), 7.94-8.36 (m, 3H, arom.H)
【0227】
化合物13. 化合物12(340mg、0.5mmol)を、N下、3mlの無水DMFに溶解し、ヒューニッヒ塩基(0.26ml、1.5mmol)を加えた。次いで、反応混合物をTSTU(196mg、0.65mmol)で処理し、rtに維持した。30分後、TLC分析(EtOAc)は反応完了を示した。次いで、3-アミノプロパノール(38μl、0.5mol)を反応混合物に加え、rtで4時間撹拌した。TLC分析は、出発物質の完全な消費を示した。飽和NaHCO溶液で反応停止させた。水層をDCMで3回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮し、キシレン(3×)と共蒸発させ、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル8:2から酢酸エチル+1%NEt)で精製して、化合物13を橙色油状物として得た(320mg、73%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.67-1.79 (m, 4H, CH2), 1.91-1.97 (m, 2H, CH2), 2.20 (t, 2H, CH2), 2.53 (t, 2H, CH2), 3.24 (t, 2H, OCH2), 3.45 (t, 2H, OCH2), 3.51 (t, 2H, NCH2), 3.54 (t, 2H, OCH2), 3.69 (s, 3H, OCH3), 3.71 (s, 6H, OMe), 6.79-6.86 (m, 4H, aromatics), 7.01 (t, 1 arom.H), 7.04-7.11 (m, 3 H, arom.H), 7.13-7.69 (m, 13H, arom.H), 7.94-8.40 (m, 3H, arom.H)。
【0228】
化合物1. 化合物13(320mg、0.36mmoles)を、高真空レーン下乾燥させた。無水DCM(2ml)をN下加え、モレキュラー・シーブと10分間、rtで撹拌した。溶液に、ヒューニッヒ塩基(0.19ml、1.1mmoles)、続いて2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(102mg、0.43mmol)を加えた。反応物を、rtでN下3時間撹拌した。反応をTLC(PE/EtOAc、8:2)で追跡した。反応物を減圧下シロップ状まで濃縮した。残留物をカラム(石油エーテル:酢酸エチル8:2から酢酸エチル、PE/EtOAc+1%NEt)で精製して、化合物1を橙色油状物として得た(190mg、50%)。生成物は、カラム上で一部分解した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 0.96-1.27 (m, 12H), 1.68-1.79 (m, 4H, CH2), 1.91-1.97 (m, 2H, CH2), 2.20 (t, 2H, CH2), 2.53 (t, 2H, CH2), 2.58 - 2.74 (m, 2H, CH2CN), 3.24 (t, 2H, OCH2), 2.93 (m, 2H, NCH), 3.44 (t, 2H, NCH2), 3.42-3.54 (m, 4H, OCH2), 3.69 (s, 3H, OCH3), 3.71 (s, 6H, OMe), 6.79-7.01 (m, 5H, aromatics), 7.04-7.11 (m, 3 H, arom.H), 7.13-7.69 (m, 13H, arom.H), 7.94-8.40 (m, 3H, arom.H)。
【0229】
【化51】
化合物15. N下、化合物14(3.6g、20mmol)およびイミダゾール(3.72g、60mmol)の乾燥DMF(25ml)溶液に、t-ブチルジフェニルシリルクロライド(2.3g、26mmol)を加えた。TLCで反応を追跡し、1時間、rtで撹拌後完了した。飽和NaHCO溶液で反応停止させ、酢酸エチル:石油エーテル1:1(2×)で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥後、反応混合物を濾過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテルから石油エーテル:酢酸エチル1:1)で精製して、化合物15をオフ・イエロー色油状物として得た(7.19g、86%)。1H NMR (DMSO-d6) δ 0.99 (s, 9H, 3xCH3), 3.38-3.46 (m, 2H, NCH2), 3.92 (t, 2H, OCH2), 5.59 (s, 2H, NH2), 6.50-6.54 (d, 2 H, arom.H), 7.37-7.66 (m, 13H, arom.H), 8.05 (d, 1H, NH)
【0230】
化合物16. N下、化合物15(840mg、2mmol)の乾燥DCM(10ml)溶液に、ニトロシルテトラフルオロボレート(234mg、2mmol)を0℃で加えた。TLCで反応を追跡し、出発物質は、1時間、0℃で撹拌後消失した。次いで、化合物8(756mg、3mmol)を反応混合物に加えた。反応混合物をゆっくりrtに温め、4時間撹拌した。TLCで反応を追跡した。完了後、飽和NaHCO溶液で反応停止させ、DCM(2×)で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥後、反応混合物を濾過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテルから石油エーテル:酢酸エチル1:1)で精製して、化合物16を橙色油状物として得た(1.12g、82%)。1H NMR (DMSO-d6) δ 0.99 (s, 9H, 3xCH3), 1.27 (s, 9H, 3xCH3), 1.91-1.98 (m, 2H, CH2), 2.22 (t, 2H, CH2), 3.27 (t, 2H, OCH2), 3.38-3.46 (m, 2H, NCH2), 3.92 (t, 2H, OCH2), 6.36-6.46 (m, 3 arom.H), 6.50-6.56 (d, 2 H, arom.H), 7.10 (t, 1 arom.H), 7.37-7.66 (m, 13H, arom.H), 8.06 (d, 1H, NH)
【0231】
化合物17. 化合物16(1.1g、1.64mmol)およびDMAP(20mg、0.16mmol)を、N下、8mlの無水ピリジンに溶解した。次いで、反応混合物を0℃に冷却し、塩化ベンゾイル(0.17ml、1.5mmol)を滴下した。反応混合物をゆっくりrtに温め、1時間撹拌し、その間溶液は濁った。TLC分析は、出発物質の完全な消費を示した。飽和NaHCO溶液で反応停止させた。水層をDCMで3回抽出した。合わせた有機層をHSOで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮した。得られた粗製混合物をDCM(14ml)に溶解した。溶液をTFA(1.4ml)でrtで処理し、一夜撹拌した。TLCで反応をモニターした(石油エーテル:酢酸エチル1:1)。TFAを減圧下除去し、トルエンと共蒸発させた。残留物をNaClとDCMに分配した。水層をDCMで3回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮した。粗製生成物をTHF(8ml)に溶解し、TBAF(1M、1.6ml)で処理した。TLCで反応をモニターした(DCM/MeOH 9:11)。溶媒を減圧下除去し、残留物をNaClとDCM(+10%MeOH)に分配した。水層をDCM(+10%MeOH)で3回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(DCMからDCM:MeOH 9:1)で精製した。化合物17を橙色/赤色油状物として得た(515g、64%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.56-1.64 (m, 2H, CH2), 2.01 (t, 2H, CH2), 3.24 (t, 2H, NCH2), 3.52 (t, 2H, OCH2), 4.25 (t, 2H, OCH2), 6.79-6.89 (m, 1H, arom.H), 7.03-7.06 (m, 1 H, arom.H), 7.13-7.63 (m, 10H, arom.H), 8.56 (t, 1H, NH)
【0232】
化合物18. 化合物17(500mg、1mmol)をpy/CHCN(5/5ml)に溶解し、ヒューニッヒ塩基(0.87ml、5mmol)、DMT-Cl(1g、3mmol)を加えた。混合物をrtで2時間撹拌した。TCL(DCM:MeOH 95:5)は、反応の完了を示した。混合物を濃縮し、DCMに溶解し、NaCOで洗浄した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル8:2から酢酸エチル+1%NEt)で精製した。化合物18を橙色/赤色油状物として得た(653mg、83%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.16-1.24 (m, 2H, CH2), 2.01 (t, 2H, CH2), 3.24 (t, 2H, NCH2), 3.52 (t, 2H, OCH2), 3.69 (s, 6H, OMe), 4.25 (t, 2H, OCH2), 6.76-6.89 (m, 4H, arom.H), 7.03-8.23 (m, 21H, arom.H), 8.86 (t, 1H, NH)
【0233】
化合物19. 化合物18(350mg、0.5mmol)を、N下、3mlの無水DMFに溶解し、ヒューニッヒ塩基(0.26ml、1.5mmol)を加えた。次いで、反応混合物をTSTU(196mg、0.65mmol)で処理し、rtに維持した。30分後、TLC分析(石油エーテル:EtOAc 2:8)は反応完了を示した。次いで、3-アミノプロパノール(38μl、0.5mol)を反応混合物に加え、rtで4時間撹拌した。TLC分析は、出発物質の完全な消費を示した。飽和NaHCO溶液で反応停止させた。水層をDCMで3回抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、濃縮し、キシレン(3×)と共蒸発させ、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル8:2から酢酸エチル+1%NEt)で精製して、化合物19を橙色油状物として得た(223mg、52%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.67-1.79 (m, 4H, CH2), 1.91-1.97 (m, 2H, CH2), 2.05 (t, 2H, CH2), 2.53 (t, 2H, CH2), 3.24 (t, 2H, OCH2), 3.45 (t, 2H, OCH2), 3.51 (t, 2H, NCH2), 3.57 (t, 2H, OCH2), 3.71 (s, 6H, OMe), 6.79-6.86 (m, 4H, aromatics), 7.01 (t, 1 arom.H), 7.04-7.11 (m, 3 H, arom.H), 7.13-7.69 (m, 13H, arom.H), 7.74-8.40 (m, 4H, arom.H), 8.76 (t, 1H, NH)
【0234】
化合物2. 化合物19(223mg、0.26mmol)を、高真空レーン下乾燥させた。無水DCM(1.5ml)をN下加え、モレキュラー・シーブと10分間、rtで撹拌した。溶液に、ヒューニッヒ塩基(0.14ml、0.78mmol)を加え、続いて2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(76μl、0.34mmol)。反応物を、rtでN下3時間撹拌した。TLCで反応を追跡した(PE/EtOAc、2:8)。反応物を減圧下シロップ状まで濃縮した。残留物をカラム(石油エーテル:酢酸エチル8:2から酢酸エチル+1%NEt)で精製して、化合物2を橙色油状物として得た(152mg、56%)。生成物は、カラム上で一部分解した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 0.96-1.27 (m, 12H), 1.68-1.79 (m, 4H, CH2), 1.91-1.97 (m, 2H, CH2), 2.19-2.22 (m, 2H, CH2), 2.51-2.54 (m, 2H, CH2), 2.58 - 2.74 (m, 2H, CH2CN), 3.22-3.26 (m, 2H, OCH2), 2.93 (m, 2H, NCH), 3.44 (t, 2H, NCH2), 3.42-3.54 (m, 4H, OCH2), 3.71 (s, 6H, OMe), 6.79-7.01 (m, 5H, aromatics), 7.04-7.11 (m, 3 H, arom.H), 7.13-7.69 (m, 13H, arom.H), 7.94-8.40 (m, 3H, arom.H), 8.76 (t, 1H, NH)
【0235】
次いで、2つのアゾ-ホスホロアミダイト化合物1および2をそれぞれ取り込んだ二つの短オリゴ(オリゴアゾ-1およびオリゴアゾ-2)を合成して、開裂効率を評価した。オリゴアゾ-1は、450nmで吸収し、橙色であった。開裂後、アゾ結合は破壊され、橙色の退色に至る。0.1M Na溶液をrtで添加後、オリゴ溶液の橙色はすぐに退色し、これはアゾ結合の極めて効率的な開裂を示す。オリゴアゾ-1および開裂産物のHPLC分析もまた同じ結果を確認する。オリゴアゾ-2開裂試験のHPLC分析は、0.1M Na溶液でrtでの処理による、アゾ結合のクリーンで、直ぐの破壊を示した。
【0236】
オリゴアゾ-1:5’-GAXCTA-3’
【化52】
【0237】
オリゴアゾ-2:5’-GAXCTA-3’
【化53】
【0238】
さらに、オリゴアゾ-1とSBS配列決定反応剤の互換性も試験した。先ず、10μMのオリゴアゾ-1(10μL)を、90μLの取り込み混合物(IMX)、開裂混合物(CMS)および走査混合物(USM)中、60℃で60分間インキュベートした。HPLC分析は、オリゴアゾ-1がIMXで完全に安定であり、90%オリゴアゾ-1がCMS中で分解し、50%オリゴアゾ-1がUSM中で残ることを示した。オリゴアゾ-2でわずかな改善が示された。分解は、両オリゴをCMS溶液(10μL)中60℃で60分間インキュベートしたとき、オリゴアゾ-1の66%分解に比して、オリゴアゾ-2で44%であった。
さらに、本発明は次の態様を包含する。
1. 複数の固定化二本鎖ポリヌクレオチドを線形化する方法であって、
二本鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体を用意し、各二本鎖ポリヌクレオチドは第一鎖および第二鎖を含むものであり、ここで、第一鎖および第二鎖はその5’末端で固体支持体に固定化され、ここで、各第一鎖は遷移金属錯体による化学開裂を受けることができる第一開裂部位を含み、ここで、遷移金属錯体はパラジウム錯体またはニッケル錯体であり;
二本鎖ポリヌクレオチドと遷移金属錯体の水溶液を接触させ、それにより第一開裂部位で1以上の第一鎖を開裂し、1以上の開裂第一核酸および開裂固定化第一鎖を産生し;そして
固体支持体から開裂第一核酸を除去する
ことを含む、方法。
2. 各第一鎖が固体支持体に固定化された第一伸長プライマーから伸長する、項1に記載の方法。
3. 第一伸長プライマーが第一開裂部位を含む、項2に記載の方法。
4. 第一伸長プライマーがP5配列または修飾P5配列を含む、項2または3に記載の方法。
5. 第一開裂部位が遷移金属錯体により化学開裂を受けることができる修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチド部分を含む、項1~4の何れかに記載の方法。
6. 修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチド部分がアリル基を含む、項5に記載の方法。
7. 第一開裂部位が式(II’):
【化54】
〔式中、塩基がアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の構造を有する修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチド部分を含む、項5または6に記載の方法。
8. 修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチド部分がチミン塩基を有する、項5~7の何れかに記載の方法。
9. 遷移金属錯体がパラジウム(0)錯体である、項1~8の何れかに記載の方法。
10. パラジウム(0)錯体がPd(THP) 、Pd(THP) 、Pd(THM) またはこれらの組み合わせである、項9に記載の方法。
11. パラジウム(0)錯体がin situで産生される、項9に記載の方法。
12. パラジウム(0)錯体が、1以上のパラジウム(II)化合物をトリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)と混合することにより産生され、ここで、パラジウム(II)化合物がNa PdCl 、(PdアリルCl) 、[Pdアリル(THP)]Clおよび[Pdアリル(THP) ]Clからなる群から選択される、項11に記載の方法。
13. パラジウム(0)錯体が、Pd(PPh ) をトリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィンと混合することにより産生される、項11に記載の方法。
14. 遷移金属錯体がニッケル(0)錯体である、項1~8の何れかに記載の方法。
15. ニッケル(0)錯体がニッケル(II)化合物からin situで産生される、項14に記載の方法。
16. 各開裂固定化第一鎖の3’末端が保護基を含む、項1~15の何れかに記載の方法。
17. 保護基が式(I):
【化55】
〔式中、
が-NH 、-OH、-NHC(O)OR または-OCH OSi(R ) であり;
がC 1-4 アルキル、tert-ブチル、アリル、ベンジル基または9-フルオレニルメチルであり;
各R が独立してC 1-4 アルキルおよびフェニルからなる群から選択され;そして
がH、C 1-4 アルキル、場合により置換されているテトラヒドロフランまたはヌクレオチドである。〕
の構造を有する3’末端ホスフェート部分である、項16に記載の方法。
18. 各第二鎖が固体支持体に固定化された第二伸長プライマーから伸長され、各第二鎖が第二開裂部位を含む、項1~17の何れかに記載の方法。
19. 第二伸長プライマーが第二開裂部位を含む、項18に記載の方法。
20. 第二開裂部位がパラジウム錯体またはニッケル錯体による化学開裂を受けることができない、項18または19に記載の方法。
21. 第二伸長プライマーがP7ヌクレオチド配列または修飾P7ヌクレオチド配列またはP17ヌクレオチド配列を含む、項18~20の何れかに記載の方法。
22. 第二開裂部位が化学開裂、光開裂、酵素開裂およびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法により開裂される、項18~21の何れかに記載の方法。
23. 第二開裂部位が化学開裂により開裂され、ここで、第二開裂部位がジオールリンカーまたはアゾベンゼンリンカーを含む、項22に記載の方法。
24. ジオールリンカーが式(VIII):
【化56】
〔式中、
rが2、3、4、5または6であり;そして
sが2、3、4、5または6である。〕
の構造を含む、項23に記載の方法。
25. ジオールリンカーが過ヨウ素酸塩により開裂され得る、項24に記載の方法。
26. アゾベンゼンリンカーが式(X):
【化57】
〔式中、
がH、ヒドロキシルまたは保護ヒドロキシルであり;
がH、C 1-6 アルキルまたはC 1-6 アルコキシであり;
各R およびR が独立してH、ハロ、-C(O)OR または-C(O)NHR であり;
各R およびR が独立してH、C 1-6 アルキルまたはC 6-10 アリールであり;
Xが-C(O)-、-CH -または-C(O)NH-であり;そして
各m1、m2およびm3が独立して1、2、3、4、5または6である。〕
の構造を含む、項23に記載の方法。
27. アゾベンゼンリンカーがNa により開裂され得る、項26に記載の方法。
28. 第二開裂部位が酵素開裂により開裂される、項22に記載の方法。
29. 二本鎖ポリヌクレオチドが共有結合により固体支持体に固定化される、項1~28の何れかに記載の方法。
30. 複数の固定化二本鎖ポリヌクレオチドを線形化する方法であって、
二本鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体を用意し、各二本鎖ポリヌクレオチドが第一鎖および第二鎖を含み、ここで、第一鎖および第二鎖がその5’末端で固体支持体に固定化され、ここで、各第一鎖が第一開裂部位を含み、ここで、各第二鎖がアゾベンゼンリンカーを含む第二開裂部位を含み;
第一開裂部位で1以上の第一鎖を開裂し、1以上の開裂第一核酸および開裂固定化第一鎖を産生し;
固体支持体から開裂第一核酸を除去し;
固定化第二鎖を配列決定し;
第二鎖に相補的な誘導体第一鎖を再合成し;そして
第二開裂部位で1以上の第二鎖を開裂し、1以上の開裂第二核酸および開裂固定化第二鎖を産生する
ことを含む、方法。
31. 各第一鎖が固体支持体に固定化された第一伸長プライマーから伸長され、ここで、第一伸長プライマーが第一開裂部位を含む、項30に記載の方法。
32. 第一開裂部位が化学開裂、光開裂、酵素開裂およびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法により開裂される、項30または31に記載の方法。
33. 各第二鎖が固体支持体に固定化された第二伸長プライマーから伸長され、ここで、第二伸長プライマーが第二開裂部位を含む、項30~32の何れかに記載の方法。
34. アゾベンゼンリンカーが式(X):
【化58】
〔式中、
がH、ヒドロキシルまたは保護ヒドロキシルであり;
がH、C 1-6 アルキルまたはC 1-6 アルコキシであり;
各R およびR が独立してH、ハロ、-C(O)OR または-C(O)NHR であり;
各R およびR が独立してH、C 1-6 アルキルまたはC 6-10 アリールであり;
Xが-C(O)-、-CH -または-C(O)NH-であり;そして
各m1、m2およびm3が独立して1、2、3、4、5または6である。〕
の構造を含む、項30~33の何れかに記載の方法。
35. アゾベンゼンリンカーをNa により開裂する、項30~34の何れかに記載の方法。
36. 固定化第二鎖の配列決定が、固定化第二鎖に相補的な標識ヌクレオチドを連続的に取り込み、標識ヌクレオチドを検出することを含む、項30~35の何れかに記載の方法。
37. 各開裂固定化第一鎖の3’末端が保護基を含む、項30~36の何れかに記載の方法。
38. 3’末端開裂固定化第一鎖の保護基が誘導体第一鎖の再合成前に脱保護される、項37に記載の方法。
39. さらに固体支持体から開裂第二核酸を除去し、誘導体第一鎖を配列決定することを含む、項30~38の何れかに記載の方法。
40. オリゴヌクレオチドから3’末端保護基を除去する方法であって、
5’末端で固定化された複数のオリゴヌクレオチドを含む固体支持体を用意し、ここで、オリゴヌクレオチドは各式(I)
【化59】
〔式中、
が-NH 、-OH、-NHC(O)OR または-OCH OSi(R ) であり;
がC 1-4 アルキル、tert-ブチル、アリル、ベンジル基または9-フルオレニルメチルであり;
各R が独立してC 1-4 アルキルおよびフェニルからなる群から選択され;そして
がH、C 1-4 アルキル、場合により置換されているテトラヒドロフランまたはヌクレオチドである。〕
の構造を有する3’末端保護基を含み;そして
オリゴヌクレオチドと脱保護剤を接触させ、それにより、3’末端保護基を開裂して、各々遊離3’末端ヒドロキシル基を有するオリゴヌクレオチドを産生する
ことを含む、方法。
41. R が-OCH OSi(R ) である、項40に記載の方法。
42. 各R がイソプロピルである、項41に記載の方法。
43. R がヌクレオチドである、項40~42の何れかに記載の方法。
44. 脱保護剤がフッ化物イオンまたは塩基を含む、項40~43の何れかに記載の方法。
45. 脱保護剤がテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)、HF、NH F、CsF、NaOHおよびKOHおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、項44に記載の方法。
46. 固定化された複数の第一鎖ポリヌクレオチドを含む固体支持体であって、各第一鎖ポリヌクレオチドが遷移金属錯体による化学開裂を受けることができる第一開裂部位を含み;ここで、遷移金属錯体がパラジウム錯体またはニッケル錯体であり、ここで、複数の第一鎖ポリヌクレオチドがその5’末端で固体支持体に固定化されるものである、固体支持体。
47. 各第一鎖ポリヌクレオチドが固体支持体に固定化された第一伸長プライマーを含む、項46に記載の固体支持体。
48. 第一伸長プライマーが第一開裂部位を含む、項47に記載の固体支持体。
49. 第一伸長プライマーがP5配列または修飾P5配列を含む、項47または48に記載の固体支持体。
50. 第一開裂部位がパラジウム錯体またはニッケル錯体による化学開裂を受けることができる修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含む、項46~49の何れかに記載の固体支持体。
51. 修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドがアリル基を含む、項50に記載の固体支持体。
52. 第一開裂部位が式(II’):
【化60】
〔式中、塩基がアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の構造を有する修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含む、項51に記載の固体支持体。
53. 修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドがチミン塩基を含む、項50~52の何れかに記載の固体支持体。
54. 第一伸長プライマーがP15配列を含む、項50~53の何れかに記載の固体支持体。
55. パラジウム錯体がパラジウム(0)錯体である、項46~54の何れかに記載の固体支持体。
56. パラジウム錯体が1以上のパラジウム(II)化合物とトリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)の混合によりin situで産生され、ここで、パラジウム(II)化合物がNa PdCl 、(PdアリルCl) 、[Pdアリル(THP)]Clおよび[Pdアリル(THP) ]Clからなる群から選択される、項55に記載の固体支持体。
57. パラジウム(0)錯体がPd(PPh ) とトリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィンの混合により産生される、項55に記載の固体支持体。
58. 遷移金属錯体がニッケル(0)錯体である、項46~54の何れかに記載の固体支持体。
59. ニッケル(0)錯体がニッケル(II)化合物からin situで産生される、項58に記載の固体支持体。
60. 第一開裂部位が化学開裂後3’遮断部分を産生する、項46~59の何れかに記載の固体支持体。
61. 3’遮断部分が式(I):
【化61】
〔式中、
が-NH 、-OH、-NHC(O)OR または-OCH OSi(R ) であり;
がC 1-4 アルキル、tert-ブチル、アリル、ベンジル基または9-フルオレニルメチルであり;
各R が独立してC 1-4 アルキルおよびフェニルからなる群から選択され;そして
がH、C 1-4 アルキル、場合により置換されているテトラヒドロフランまたはヌクレオチドである。〕
の構造を有するホスフェート部分を含む、項60に記載の固体支持体。
62. 式(I)の構造が式(V):
【化62】
〔式中、塩基が所望により保護されているアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
により表される、項61に記載の固体支持体。
63. R が-OCH OSi(R ) である、項61または62に記載の固体支持体。
64. R がイソプロピルである、項63に記載の固体支持体。
65. 3’遮断部分が酵素反応または化学反応により除去され得る、項60~64の何れかに記載の固体支持体。
66. さらに固定化された複数の第二鎖ポリヌクレオチドを含み、各第二鎖ポリヌクレオチドが第二開裂部位を含み、ここで、複数の第二鎖ポリヌクレオチドがその5’末端で固体支持体に固定化される、項46~65の何れかに記載の固体支持体。
67. 各第二鎖ポリヌクレオチドが固体支持体に固定化された第二伸長プライマーを含む、項66に記載の固体支持体。
68. 第二伸長プライマーが第二開裂部位を含む、項67に記載の固体支持体。
69. 第二開裂部位がパラジウム錯体またはニッケル錯体による化学開裂を受けることができない、項66~68の何れかに記載の固体支持体。
70. 第二開裂部位が化学開裂、光開裂、酵素開裂およびこれらの組み合わせからなる群から選択される方法により開裂され得る、項66~69の何れかに記載の固体支持体。
71. 第二開裂部位が化学開裂により開裂され、ここで、第二開裂部位がジオールリンカーまたはアゾベンゼンリンカーを含む、項70に記載の固体支持体。
72. ジオールリンカーが式(VIII):
【化63】
〔式中、
rが2、3、4、5または6であり;そして
sが2、3、4、5または6である。〕
の構造を含む、項71に記載の固体支持体。
73. アゾベンゼンリンカーが式(X):
【化64】
〔式中、
がH、ヒドロキシルまたは保護ヒドロキシルであり;
がH、C 1-6 アルキルまたはC 1-6 アルコキシであり;
各R およびR が独立してH、ハロ、-C(O)OR または-C(O)NHR であり;
各R およびR が独立してH、C 1-6 アルキルまたはC 6-10 アリールであり;
Xが-C(O)-、-CH -または-C(O)NH-であり;そして
各m1、m2およびm3が独立して1、2、3、4、5または6である。〕
の構造を含む、項71に記載の固体支持体。
74. 第二伸長プライマーがP7ヌクレオチド配列、修飾P7ヌクレオチド配列またはP17ヌクレオチド配列を含む、項67~70の何れかに記載の固体支持体。
75. 第一および第二鎖ポリヌクレオチドが固体支持体表面上のポリマーまたはヒドロゲルコーティングとの共有結合を経て固体支持体に固定化される、項66~74の何れかに記載の固体支持体。
76. ポリマーまたはヒドロゲルコーティングがPAZAMを含む、項75に記載の固体支持体。
77. 固体支持体がフローセルを含む、項46~76の何れかに記載の固体支持体。
78. 式(II):
【化65】
〔式中、
RがH、OHまたはOPGであり;
がHまたはPGであり;
がH、PGであるかまたは-OR がホスフェートであり;
PGがヒドロキシル保護基であり;そして
塩基がアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
の構造を含む、修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチド。
79. 式(IIa):
【化66】
の構造を有する、項78に記載の修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチド。
80. 塩基がチミンである、項78または79に記載の修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチド。
81. 項79または80に記載の修飾ヌクレオシドまたはヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチド。
82. オリゴヌクレオチドが式(III):
【化67】
の構造を有する、項81に記載のオリゴヌクレオチド。
83. オリゴヌクレオチドの5’末端(アスタリスクの位置)が固体支持体に結合している、項81または82に記載のオリゴヌクレオチド。
84. 式(I):
【化68】
〔式中、
が-NH 、-OH、-NHC(O)OR または-OCH OSi(R ) であり;
がC 1-4 アルキル、tert-ブチル、アリル、ベンジル基または9-フルオレニルメチルであり;
各R が独立してC 1-4 アルキルおよびフェニルからなる群から選択され;そして
がH、C1-4アルキル、場合により置換されているテトラヒドロフランまたはヌクレオチドである。〕
の構造の3’遮断部分を含む、ヌクレオシドまたはヌクレオチド。
85. 式(I)の構造が式(V):
【化69】
〔式中、塩基が所望により保護されているアデニン、グアニン、シトシン、チミンまたはウラシルまたはその誘導体である。〕
によっても表される、項84に記載のヌクレオシドまたはヌクレオチド。
86. R が-OCH OSi(R ) である、項84または85に記載のヌクレオシドまたはヌクレオチド。
87. R がイソプロピルである、項86に記載のヌクレオシドまたはヌクレオチド。
88. 項84~87の何れかに記載のヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチド。
89. 式(VI):
【化70】
の構造を有する、項88に記載のオリゴヌクレオチド。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
【配列表】
0007100069000001.app