(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】プレート式熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 9/02 20060101AFI20220705BHJP
F28F 3/04 20060101ALI20220705BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
F28D9/02
F28F3/04 B
F28F3/08 301Z
(21)【出願番号】P 2020009790
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田中 信雄
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0352934(US,A1)
【文献】実開昭54-078952(JP,U)
【文献】特開2015-121335(JP,A)
【文献】米国特許第06401804(US,B1)
【文献】国際公開第87/004234(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01484567(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 9/02
F28F 3/04
F28F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向である第一方向に重ね合わされる複数の中間プレートと、
前記複数の中間プレートを前記第一方向の外側から挟み込む一対の端部プレートと、を備え、
前記複数の中間プレートにおける各中間プレート間に、流体の流通可能な第一の流路が形成され、
前記一対の端部プレートのそれぞれは、前記中間プレートより厚く、
前記一対の端部プレートのうちの一方の端部プレートと該端部プレートに隣接する中間プレートとの間である第一のプレート間、及び、前記一対の端部プレートのうちの他方の端部プレートと該端部プレートに隣接する中間プレートとの間である第二のプレート間のうちの少なくとも一方のプレート間に、前記流体の流通可能な第二の流路が形成されており、
前記隣接する中間プレートは、
前記第一方向と直交する方向に広がると共に前記第一方向に突出する複数の凸部を有
する伝熱部を備え、
前記伝熱部は、
前記第一方向と直交する第二方向の中央に配置され且つ前記第一方向から見て矩形の主伝熱部と、
前記第二方向における前記主伝熱部の一方側と他方側とにそれぞれ配置され且つ該主伝熱部との境界を底辺とする三角状の堰部と、を有し、
前記主伝熱部は、前記第二方向に沿って延び且つ前記第一方向及び前記第二方向のそれぞれと直交する第三方向に間隔をあけて配置される複数の凸条を有し、
各堰部は、前記第一方向に突出する複数の第二の流路側凸部と、前記第一方向に凹む複数の第二の流路側凹部と、を有し、これら複数の第二の流路側凸部と複数の第二の流路側凹部とは、前記第二方向に対して一方側に傾斜する方向と他方側に傾斜する方向との各方向において交互に配置され、
前記主伝熱部の複数の凸条と前記堰部の複数の第二の流路側凸部とは、前記伝熱部の複数の凸部に含まれ、これら複数の凸部が前記端部プレートと当接することによって前記第二の流路が形成され、
前記端部プレートにおける前記隣接する中間プレートと対向する対向面は、平坦であり、
前記複数の凸部は、前記対向面に当接する、プレート式熱交換器。
【請求項2】
前記主伝熱部と対応する位置の前記第二の流路は、前記流体を前記第二方向に流通させる、請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記第二の流路の流路断面積は、前記第一の流路の流路断面積より小さい、請求項1又は2に記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
複数の第一の流路のうちの少なくとも一部の第一の流路と前記第二の流路とが直列に連通することによって、前記流体が当該プレート式熱交換器の内部に流入してから外部に流出するまでの流通路が構成され、
前記第二の流路は、前記流通路の途中位置に配置されている、請求項3に記載のプレート式熱交換器。
【請求項5】
複数の第一の流路のうちの少なくとも一部の第一の流路と前記第二の流路とが直列に連通することによって、前記流体が当該プレート式熱交換器の内部に流入してから外部に流出するまでの流通路が構成され、
前記第二の流路は、前記第一のプレート間と前記第二のプレート間とのそれぞれに形成されると共に前記流通路の端部位置に配置されている、請求項3に記載のプレート式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わされた複数のプレートを備え、各プレート間に流体が流通可能な流路が形成されているプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、第一流体と第二流体とを内部で流通させることで互いに熱交換させるプレート式熱交換器が知られている(特許文献1参照)。このプレート式熱交換器は、
図17に示すように、所定方向に重ね合わされる複数の伝熱プレート501と、複数の伝熱プレート501を所定方向の外側から挟み込む一対のフレームプレート502と、を備える。
【0003】
複数の伝熱プレート501は、各伝熱プレート501間に第一流体X又は第二流体Yが流通可能な流路が形成されるように重ね合わされている。一対のフレームプレート502は、それぞれ伝熱プレート501より厚い板状部材(プレート)であり、重ね合わされた複数の伝熱プレート501を挟み込むことによってプレート式熱交換器500の強度を確保している。これら一対のフレームプレート502と、該フレームプレート502と隣接する伝熱プレート501との間には、第一流体X又は第二流体Yが流通可能な流路は形成されていない。
【0004】
このプレート式熱交換器500では、各伝熱プレート501間において、第一流体Xが流通可能な第一流路と第二流体Yが流通可能な第二流路とが所定方向に交互に形成され、第一流路を流れる第一流体Xと第二流路を流れる第二流体Yとが、第一流路と第二流路とを隔てる伝熱プレート501を通じて熱交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、プレート熱交換器の熱交換効率の向上が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、熱交換効率を向上させたプレート式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプレート式熱交換器は、
所定の方向である第一方向に重ね合わされる複数の中間プレートと、
前記複数の中間プレートを前記第一方向の外側から挟み込む一対の端部プレートと、を備え、
前記複数の中間プレートにおける各中間プレート間に、流体の流通可能な第一の流路が形成され、
前記一対の端部プレートのそれぞれは、前記中間プレートより厚く、
前記一対の端部プレートのうちの一方の端部プレートと該端部プレートに隣接する中間プレートとの間である第一のプレート間、及び、前記一対の端部プレートのうちの他方の端部プレートと該端部プレートに隣接する中間プレートとの間である第二のプレート間のうちの少なくとも一方のプレート間に、前記流体の流通可能な第二の流路が形成されている。
【0009】
このように、第一のプレート間及び第二のプレート間のうちの少なくとも一方のプレート間に流体の流通可能な第二の流路を形成することで、中間プレートの数を増やすことなく、即ち、中間プレートの積層方向におけるプレート式熱交換器の寸法の増加を抑えつつ、流体の流通可能な流路を増やすことができ、これにより、熱交換効率が向上する。
【0010】
前記プレート式熱交換器では、
前記隣接する中間プレートは、前記第一方向に突出する複数の凸部を有し、
これら複数の凸部が前記端部プレートと当接することによって前記第二の流路が形成されてもよい。
【0011】
このように、中間プレートの有する凸部を端部プレートに当接させて該端部プレートと中間プレートとの間に隙間を形成することで、スペーサ等の別部材を用いることなく、端部プレートと中間プレートとの間に流路を形成することができる。
【0012】
この場合、前記端部プレートにおける前記隣接する中間プレートと対向する対向面を平坦にしても、前記複数の凸部を前記対向面に当接させることで端部プレートと中間プレートとの間に隙間を形成することができる。即ち、端部プレートの構成の簡素化を図ることができる。
【0013】
また、前記プレート式熱交換器では、
前記隣接する中間プレートの前記複数の凸部のそれぞれは、前記第一方向と直交する第二方向に沿って延び且つ前記第一方向及び前記第二方向のそれぞれと直交する第三方向に間隔をあけて配置され、これにより、前記第二の流路は、前記流体を前記第二方向に流通させている。
【0014】
また、前記プレート式熱交換器では、
前記第二の流路の流路断面積は、前記第一の流路の流路断面積より小さくてもよい。
【0015】
このように流路断面積の異なる流路を設けることで、プレート式熱交換器の内部に流入してから外部に流出するまでの流体の流通路において、流体の流速を容易に変化させることができる。
【0016】
また、前記プレート式熱交換器では、例えば、
複数の第一の流路のうちの少なくとも一部の第一の流路と前記第二の流路とが直列に連通することによって、前記流体が当該プレート式熱交換器の内部に流入してから外部に流出するまでの流通路が構成され、
前記第二の流路は、前記流通路の途中位置に配置されてもよい。
【0017】
また、前記プレート式熱交換器では、例えば、
複数の第一の流路のうちの少なくとも一部の第一の流路と前記第二の流路とが直列に連通することによって、前記流体が当該プレート式熱交換器の内部に流入してから外部に流出するまでの流通路が構成され、
前記第二の流路は、前記第一のプレート間と前記第二のプレート間とのそれぞれに形成されると共に前記流通路の端部位置に配置されてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、プレート式熱交換器において、内部に流入するときと外部に流出するとき、即ち、熱交換の前後において体積差の大きな流体を流す場合に、流路断面積の小さな第二の流路が流通路の上流端又は下流端に位置するため、流通路における流体の流速を一定に保ち易くなる。
【発明の効果】
【0019】
以上より、本発明によれば、熱交換効率を向上させたプレート式熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るプレート式熱交換器の斜視図である。
【
図2】
図2は、前記プレート式熱交換器の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、第一伝熱プレートを第一面側から見た図である。
【
図4】
図4は、前記第一伝熱プレートを第二面側から見た図である。
【
図5】
図5は、第二伝熱プレートを第一面側から見た図である。
【
図6】
図6は、前記第二伝熱プレートを第二面側から見た図である。
【
図7】
図7は、プレート群の端部に配置される第一伝熱プレートの第二面側から見た図である。
【
図8】
図8は、プレート群の端部に配置される第二伝熱プレートの第二面側から見た図である。
【
図9】
図9は、一対のフレームプレートのうちの一方のフレームプレートと、該フレームプレートに隣接する伝熱プレートとが重ね合わされた状態の一部省略断面図である。
【
図10】
図10は、前記一対のフレームプレートのうちの他方のフレームプレートと該フレームプレートに隣接する伝熱プレートとが重ね合わされた状態の一部省略断面図である。
【
図11】
図11は、前記プレート式熱交換器の流路構成を説明するための図である。
【
図12】
図12は、第一流路内での第一流体の流れを示す図である。
【
図13】
図13は、第二流路内での第二流体の流れを示す図である。
【
図15】
図15は、他実施形態に係るプレート式熱交換器の流路構成を説明するための図である。
【
図16】
図16は、他実施形態に係るプレート式熱交換器の流路構成を説明するための図である。
【
図17】
図17は、従来のプレート式熱交換器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図13を参照しつつ説明する。
【0022】
本実施形態に係るプレート式熱交換器(以下、単に「熱交換器」とも称する。)は、
図1及び
図2に示すように、所定の方向に重ね合わされる複数の伝熱プレート(中間プレート)2、3と、複数の伝熱プレート2、3を前記所定の方向の外側から挟み込む一対のフレームプレート(端部プレート)4と、を備える。これら複数の伝熱プレート2、3における各伝熱プレート2、3間に、流体A、Bの流通可能な流路(第一の流路)Ra、Rbが形成されている。また、一対のフレームプレート4のうちの一方のフレームプレート4Aと該フレームプレート4Aに隣接する伝熱プレート2Aとの間(第一のプレート間)、及び、一対のフレームプレート4のうちの他方のフレームプレート4Bと該フレームプレート4Bに隣接する伝熱プレート3Aとの間(第二のプレート間)のうちの少なくとも一方のプレート間に、流体A、Bの流通可能な流路(第二の流路)Rb1が形成されている。具体的な構成は、以下の通りである。
【0023】
本実施形態の熱交換器1は、三つ以上の矩形状の伝熱プレート2、3を備え、これら三つ以上の伝熱プレート2、3は、二種類の伝熱プレートを含む。以下の説明では、二種類の伝熱プレート2、3のうちの一方の伝熱プレートを第一伝熱プレート2とも称し、二種類の伝熱プレート2、3のうちの他方の伝熱プレートを第二伝熱プレート3とも称する。また、伝熱プレート2、3が重ね合わされる方向(所定の方向)を直交座標系のX軸方向(第一方向)とし、伝熱プレート2、3の短辺方向を直交座標系のY軸方向(第三方向)とし、伝熱プレート2、3の長辺方向を直交座標系のZ軸方向(第二方向)とする。
【0024】
これら二種類の伝熱プレート、即ち、第一伝熱プレート2と第二伝熱プレート3とは、共通する構成を有するため、以下では、先ず、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3の共通する構成について説明する。
【0025】
伝熱プレート2、3は、第一面Sa1、Sb1と該第一面Sa1、Sb1に対して反対向きの第二面Sa2、Sb2とを有する伝熱部20、30と、伝熱部20、30の外周縁の全域から該伝熱部20、30と面交差する方向に延出する環状の嵌合部21、31と、を備える。本実施形態の伝熱プレート2、3は、金属プレート(薄板)がプレス成型されることによって形成されている。
【0026】
伝熱部20、30は、X軸方向と直交する方向に広がり、X軸方向に厚みを有する。このため、X軸方向に重ね合わされる複数の伝熱プレート2、3の各伝熱部20、30における第一面Sa1、Sb1及び第二面Sa2、Sb2は、X軸方向に並ぶ。本実施形態の伝熱部20、30は、
図3~
図6に示すように、X軸方向から見てZ軸方向に長尺な矩形状である。
【0027】
また、伝熱部20、30は、凹部22、32及び凸部23、33を有する。本実施形態の伝熱部20、30は、第一面Sa1、Sb1及び第二面Sa2、Sb2のそれぞれに、複数の凹部22、32及び複数の凸部23、33を有する。
【0028】
本実施形態の伝熱プレート2、3は、上述のように、金属プレートがプレス成型されることによって形成されている。このため、伝熱部20、30の第一面Sa1、Sb1の凹部22、32と、伝熱部20、30の第二面Sa2、Sb2の凸部23、33とは、表裏の関係にある。また、伝熱部20、30の第一面Sa1、Sb1の凸部23、33と、伝熱部20、30の第二面Sa2、Sb2の凹部22、32とは、表裏の関係にある。即ち、伝熱部20、30において、第一面Sa1、Sb1の凹部22、32が第二面Sa2、Sb2の凸部23、33とX軸方向から見て重なる位置に形成されると共に、第一面Sa1、Sb1の凸部23、33が第二面Sa2、Sb2の凹部22、32とX軸方向から見て重なる位置に形成される。
【0029】
具体的に、伝熱部20、30は、Z軸方向の中央に配置される主伝熱部25、35と、開口200、201、202、203、300、301、302、303を有する開口周縁部200p、201p、202p、203p、300p、301p、302p、303pと、主伝熱部25、35と開口周縁部200p、201p、202p、203p、300p、301p、302p、303pとの間に配置される堰部26、36と、を有する。
【0030】
伝熱部20、30は、Z軸方向の一端部及び他端部のそれぞれに少なくとも二つの開口200、201、202、203、300、301、302、303を有する。本実施形態の伝熱部20、30は、Z軸方向の一端部に二つの開口200、203、300、303を有し、Z軸方向の他端部に二つの開口201、202、301、302を有する。
【0031】
これら伝熱部20、30の一端部にある二つの開口200、203、300、303は、Y軸方向に間隔をあけて配置されている。また、伝熱部20、30の他端部にある二つの開口201、202、301、302は、Y軸方向に間隔をあけて配置されている。
【0032】
伝熱部20、30の一端部における一方の開口200、300の開口周縁部200p、300p、及び伝熱部20、30の他端部における一方の開口201、301の開口周縁部201p、301pは、第一面Sa1、Sb1側から見て窪んでいる。一方、開口周縁部200p、201p、300p、301pは、第二面Sa2、Sb2側から見て膨出している。
【0033】
これら第二面Sa2、Sb2側から見て膨出した各開口周縁部200p、201p、300p、301pのX軸方向の変位量(X軸方向の位置)は、隣り合う伝熱プレート2、3の開口周縁部200p、201p、300p、301pと当接するように設定されている。
【0034】
これに対し、伝熱部20、30の一端部における他方の開口203、303の開口周縁部203p、303p、及び伝熱部20、30の他端部における他方の開口202、302の開口周縁部202p、302pは、第一面Sa1、Sb1側から見て膨出している。一方、開口周縁部202p、203p、302p、303pは、第二面Sa2、Sb2側から見て窪んでいる。
【0035】
これら第一面Sa1、Sb1側から見て膨出した各開口周縁部202p、203p、302p、303pのX軸方向の変位量(X軸方向の位置)は、隣り合う伝熱プレート2、3の開口周縁部202p、203p、302p、303pと当接するように設定されている。尚、
図3~
図6において、第一面Sa1、Sb1及び第二面Sa2、Sb2のそれぞれにおける凹凸関係を明確にすべく、窪んでいる開口周縁部200p、201p、202p、203p、300p、301p、302p、303p、及び凹部22、32の底部分にドットを付している。
【0036】
本実施形態の伝熱部20、30において、Z軸方向の一端部にある一方の開口200、300と、Z軸方向の他端部にある一方の開口201、301とは、対角位置にある。また、Z軸方向の一端部にある他方の開口203、303と、Z軸方向の他端部にある他方の開口202、302とは、対角位置にある。
【0037】
主伝熱部25、35は、X軸方向から見て矩形状の部位である。この主伝熱部25、35は、第一面Sa1、Sb1に、第一流路Raの一部を構成する複数の第一流路形成用凹条220、320を有する(
図3及び
図5参照)。これら複数の第一流路形成用凹条220、320は、それぞれがZ軸方向に沿って延び且つY軸方向に間隔をあけて配置されている。また、各第一流路形成用凹条220、320は、主伝熱部25、35のZ軸方向における一端から他端まで連続して延びている。これら複数の第一流路形成用凹条220、320は、上述の伝熱部20、30の複数の凹部22、32に含まれる。
【0038】
また、主伝熱部25、35は、第一面Sa1、Sb1に、Y軸方向に隣り合う第一流路形成用凹条220、320間をZ軸方向に沿って延びる複数の第一流路側凸条231、331を有する。これら複数の第一流路側凸条231、331は、それぞれがZ軸方向に沿って延び且つY軸方向に間隔をあけて配置されている。また、各第一流路側凸条231、331は、主伝熱部25、35のZ軸方向における一端から他端まで連続して延びている。これら複数の第一流路側凸条231、331は、上述の伝熱部20、30の複数の凸部23、33に含まれる。
【0039】
本実施形態の主伝熱部25、35では、第一流路形成用凹条220、320と第一流路側凸条231、331とがY軸方向に交互に連続して配置されている。これにより、主伝熱部25、35の第一面Sa1、Sb1は、Y軸方向に凹凸が繰り返される波形状に形成される。
【0040】
また、主伝熱部25、35は、第二面Sa2、Sb2に、第二流路Rbの一部を構成する複数の第二流路形成用凹条221、321を有する(
図4及び
図6参照)。これら複数の第二流路形成用凹条221、321のそれぞれは、第一面Sa1、Sb1において対応する位置の第一流路側凸条231、331の裏側に形成されている。具体的に、複数の第二流路形成用凹条221、321は、それぞれがZ軸方向に沿って延び且つY軸方向に間隔をあけて配置されている。また、各第二流路形成用凹条221、321は、主伝熱部25、35のZ軸方向における一端から他端まで連続して延びている。これら複数の第二流路形成用凹条221、321は、上述の伝熱部20、30の複数の凹部22、32に含まれる。
【0041】
また、伝熱部20、30は、第二面Sa2、Sb2に、Y軸方向に隣り合う第二流路形成用凹条221、321間をZ軸方向に沿って延びる複数の第二流路側凸条233、333を有する。これら複数の第二流路側凸条233、333は、それぞれがZ軸方向に沿って延び且つY軸方向に間隔をあけて配置されている。また、各第二流路側凸条233、333は、主伝熱部25、35のZ軸方向における一端から他端まで連続して延びている。
【0042】
本実施形態の主伝熱部25、35では、第一面Sa1、Sb1側と同様に、第二流路形成用凹条221、321と第二流路側凸条233、333とがY軸方向に交互に連続して配置されている。これにより、主伝熱部25、35の第二面Sa2、Sb2は、Y軸方向に凹凸が繰り返される波形状に形成される。
【0043】
堰部26、36は、伝熱部20、30において、Z軸方向における主伝熱部25、35の一方側と他方側とにそれぞれ配置されている。即ち、伝熱部20、30は、一対の堰部26、36を有する。本実施形態の各堰部26、36は、主伝熱部25、35との境界を底辺とし、伝熱部20、30におけるZ軸方向の一端部又は他端部に配置される二つの開口200、201、202、203、300、301、302、303の中間位置を頂点とする三角状の部位である。
【0044】
これら一対の堰部26、36のそれぞれは、第一面Sa1、Sb1又は第二面Sa2、Sb2に沿って開口200、201、202、203、300、301、302、303から主伝熱部25、35に向かう流体A、Bの流れをY軸方向に拡散させ、又は、第一面Sa1、Sb1又は第二面Sa2、Sb2に沿って主伝熱部25、35から開口200、201、202、203、300、301、302、303に向かう流体A、Bの流れをY軸方向に集束させる部位である(
図12及び
図13参照)。
【0045】
具体的に、各堰部26、36は、第一面Sa1、Sb1に、複数の第一流路側凹部225、325と、複数の第一流路側凸部235、335とを有する。これら第一流路側凹部225、325と第一流路側凸部235、335とは、Z軸方向に対して一方側に傾斜する方向と他方側に傾斜する方向との各方向において交互に配置されている。これら複数の第一流路側凹部225、325は、上述の伝熱部20、30の複数の凹部22、32に含まれ、複数の第一流路側凸部235、335は、上述の伝熱部20、30の複数の凸部23、33に含まれる。
【0046】
また、各堰部26、36は、第二面Sa2、Sb2に、複数の第二流路側凹部226、326と、複数の第二流路側凸部236、336とを有する。これら複数の第二流路側凹部226、326と複数の第二流路側凸部236、336とのそれぞれは、第一面Sa1、Sb1において対応する位置の第一流路側凹部225、325又は第一流路側凸部235、335の裏側に形成されている。具体的に、第二流路側凹部226、326と第二流路側凸部236、336とは、Z軸方向に対して一方側に傾斜する方向と他方側に傾斜する方向との各方向において交互に配置されている。これら複数の第二流路側凹部226、326は、上述の伝熱部20、30の複数の凹部22、32に含まれ、複数の第二流路側凸部236、336は、上述の伝熱部20、30の複数の凸部23、33に含まれる。
【0047】
第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3は、いずれも以上のように構成される伝熱部20、30を有する。
【0048】
続いて、第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3の異なる構成について説明する。
【0049】
第一伝熱プレート2の嵌合部21は、伝熱部20の外周縁から第一面Sa1側に延出する(
図2及び
図3参照)。これに対し、第二伝熱プレート3の嵌合部31は、伝熱部30の外周縁から第二面Sb2側に延出する(
図2及び
図6参照)。
【0050】
以上のように構成される第一伝熱プレート2と第二伝熱プレート3とは、
図2に示すように、互いの第一面Sa1、Sb1同士を対向させ、又は、互いの第二面Sa2、Sb2同士を対向させるようにX軸方向に交互に重ね合わされる。即ち、複数の伝熱プレート2、3のそれぞれは、伝熱部20、30の第一面Sa1、Sb1を、X軸方向の一方側において隣り合う伝熱プレート2、3の伝熱部20、30の第一面Sa1、Sb1と対向させると共に、伝熱部20、30の第二面Sa2、Sb2を、X軸方向の他方側において隣り合う伝熱プレート2、3の伝熱部20、30の第二面Sa2、Sb2と対向させる。
【0051】
このとき、X軸方向に隣り合う伝熱プレート2、3のうちの一方の伝熱プレート2、3の嵌合部21、31は、X軸方向に隣り合う伝熱プレート2、3のうちの他方の伝熱プレート2、3の嵌合部21、31に外嵌される。
【0052】
また、伝熱プレート2、3が重ね合わされた状態では、伝熱部20、30の第一面Sa1、Sb1同士を対向させて隣り合う伝熱プレート2、3(第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3)において、互いの主伝熱部25、35の第一流路側凸条231、331同士が対向する、即ち、X軸方向から見て重なり合う。このとき、対向する第一流路側凸条231、331は、互いの頂部同士を当接させている。
【0053】
さらに、伝熱部20、30の第一面Sa1、Sb1同士を対向させて隣り合う伝熱プレート2、3において、互いの堰部26、36の第一流路側凸部235、335同士が対向する、即ち、X軸方向から見て重なり合う。このとき、対向する第一流路側凸部235、335は、互いの頂部同士を当接させている。
【0054】
また、伝熱部20、30の第二面Sa2、Sb2同士を対向させて隣り合う伝熱プレート2、3(第一伝熱プレート2及び第二伝熱プレート3)において、互いの主伝熱部25、35の第二流路側凸条233、333同士が対向する、即ち、X軸方向から見て重なり合う。このとき、対向する第二流路側凸条233、333は、互いの頂部同士を当接させている。
【0055】
さらに、伝熱部20、30の第二面Sa2、Sb2同士を対向させて隣り合う伝熱プレート2、3において、互いの堰部26、36の第二流路側凸部236、336同士が対向する、即ち、X軸方向から見て重なり合う。このとき、対向する第二流路側凸部236、336は、互いの頂部同士を当接させている。
【0056】
以上のように、X軸方向に隣り合う伝熱部20、30の対向する凸部23、33同士が当接することによって、
図2に示すように、第一流体AをZ軸方向に流通させる第一流路Raが、隣り合う伝熱プレート2、3の伝熱部20、30の第一面Sa1、Sb1間に形成される。また、第二流体BをZ軸方向に流通させる第二流路Rbが、隣り合う伝熱プレート2、3の伝熱部20、30の第二面Sa2、Sb2間に形成される。
【0057】
そして、以上のように、複数の伝熱プレート2、3がX軸方向に重ね合わされた伝熱プレート群において、伝熱部20、30の対応する位置にある開口200、201、202、203、300、301、302、303がX軸方向に連なる。また、互いに対向し且つ相手方に向けて膨出する開口周縁部200p、201p、202p、203p、300p、301p、302p、303p同士が当接する。これにより、第一流路Raに第一流体Aを供給する第一流入路Pa1と、第一流路Raから第一流体Aを流出させる第一流出路Pa2と、第二流路Rbに第二流体Bを供給する第二流入路Pb1と、第二流路Rbから第二流体Bを流出させる第二流出路Pb2とが形成される(
図2及び
図11参照)。
【0058】
尚、本実施形態の伝熱プレート群においては、X軸方向(重ね合わせ方向)における一端の伝熱プレート2Aと他端の伝熱プレート3Aとは、残りの伝熱プレート2、3と異なる構成を有している。具体的には、以下の通りである。
【0059】
前記一端の伝熱プレート2A及び前記他端の伝熱プレート3Aでは、
図7及び
図8に示すように、第二面Sa2側から見て窪んでいる開口周縁部202p、203p、302p、303pの開口縁において、複数の開口凸部238、338が開口202、203、302、303の周方向に間隔をあけて配置されている。また、周方向に隣り合う開口凸部238、338の間の部位229、329は、窪んでいる(即ち、凹状である)。これにより、開口202、203、302、303の周縁が周方向に凹凸が繰り返される波形となっている。
【0060】
これら複数の開口凸部238、338の頂部(X軸方向に最も突出した部位)のX軸方向における位置は、第二面Sa2、Sb2側から見て膨出する開口周縁部200p、201p、300p、301p、第二流路側凸条233、333、第二流路側凸部236、336の各頂部のX軸方向における位置と同じである。
【0061】
また、開口凸部間の部位(底部)229、329のX軸方向における位置は、第二面Sa2、Sb2側から見て窪んでいる開口周縁部202p、203p、302p、303p、第二流路形成用凹条221、321、及び第二流路側凹部226、326の各底部のX軸方向における位置と同じである。
【0062】
尚、これら複数の開口凸部238、338は、上述の伝熱部20、30の複数の凸部23、33に含まれ、開口凸部間の部位229、329は、上述の伝熱部20、30の複数の凹部22、32に含まれる。また、
図7~
図8においても、第二面Sa2における凹凸関係を明確にすべく、窪んでいる開口周縁部202p、203p、302p、303p、及び凹部22、32の底部分にドットを付している。
【0063】
以上の伝熱プレート2A、3Aは、開口202、203、302、303の周縁において周方向に凹凸が繰り返される構成以外の構成は、伝熱プレート群を構成する残りの伝熱プレート2、3と同じである。
【0064】
一対のフレームプレート4のそれぞれは、該フレームプレート4と隣り合う伝熱プレート2A、3Aの複数の凸部23、33と当接することによって該伝熱プレート2、3との間に流路(第二の流路)Rb1を形成する。これら一対のフレームプレート4のそれぞれは、伝熱プレート2、2A、3、3Aより厚く、熱交換器1の強度を確保している。例えば、本実施形態の熱交換器1では、フレームプレート4の各部位の厚さは、伝熱プレート2、2A、3、3Aの伝熱部20、30及び嵌合部21、31の厚さの3~8倍程度である。
【0065】
具体的に、一対のフレームプレート4のうちの一方のフレームプレート4Aは、
図1、
図2、及び
図9に示すように、X軸方向と直交する方向に広がる厚板状のプレート本体41Aと、プレート本体41Aの外周縁の全域から該プレート本体41Aと面交差する方向に延出するフレーム嵌合部42Aと、プレート本体41Aから延びる複数のノズル43と、を備える。
【0066】
プレート本体41Aは、伝熱プレート2、3の伝熱部20、30と対応する形状であり、本実施形態のプレート本体41Aは、Z軸方向に長尺な矩形状である。
【0067】
このプレート本体41Aは、伝熱プレート2Aと対向する対向面411を有し、対向面411は、X軸方向と直交する方向に広がる。本実施形態の対向面411は、平坦であり、伝熱プレート2Aの複数の凸部23、33と当接している。
【0068】
また、プレート本体41Aは、X軸方向から見て、第一流入路Pa1、第一流出路Pa2、第二流入路Pb1、第二流出路Pb2のそれぞれと重なる位置に、Z軸方向に貫通する貫通孔を有する。本実施形態のプレート本体41Aの各貫通孔は、円形の貫通孔であり、対応する第一流入路Pa1、第一流出路Pa2、第二流入路Pb1、第二流出路Pb2を構成する伝熱プレート2、3の開口200、201、202、203、300、301、302、303と同じ又は略同じ内径を有する。この貫通孔の中心と、対応する開口200、201、202、203、300、301、302、303の中心とは、X軸方向から見て一致する。本実施形態のプレート本体41Aは、四隅に貫通孔を有する。
【0069】
フレーム嵌合部42Aは、プレート本体41Aの外周縁から対向面411側、即ち、伝熱プレート2A側に延出する。
【0070】
複数のノズル43のそれぞれは、筒状の部位であり、プレート本体41Aの各貫通孔と対応する位置からX軸方向に延びている。各ノズル43の中空部は、プレート本体41Aの貫通孔と連通している。即ち、各ノズル43の中空部は、第一流入路Pa1、第一流出路Pa2、第二流入路Pb1、又は第二流出路Pb2と連通している。
【0071】
一対のフレームプレート4のうちの他方のフレームプレート4Bは、
図1、
図2、及び
図10に示すように、X軸方向と直交する方向に広がる厚板状のプレート本体41Bと、プレート本体41Bの外周縁の全域から該プレート本体41Bと面交差する方向に延出するフレーム嵌合部42Bと、を備える。
【0072】
プレート本体41Bは、伝熱プレート2、3の伝熱部20、30と対応する形状であり、本実施形態のプレート本体41Bは、Z軸方向に長尺な矩形状である。
【0073】
このプレート本体41Bは、伝熱プレート3Aと対向する対向面412を有し、対向面412は、X軸方向と直交する方向に広がる。この対向面412は、一方のフレームプレート4Aの対向面411と反対側を向いている。本実施形態の対向面412は、平坦であり、伝熱プレート3Aの複数の凸部23、33と当接している。
【0074】
フレーム嵌合部42Bは、プレート本体41Bの外周縁から対向面412と反対側、即ち、伝熱プレート3Aから離れる側に延出する。
【0075】
以上のように構成される一対のフレームプレート4A、4Bは、
図2に示すように、対向面411、412を伝熱プレート2A、3Aの第二面Sa2、Sb2に対向させるようにして伝熱プレート群をX軸方向の外側から挟み込む。即ち、一対のフレームプレート4A、4Bのそれぞれは、対向面411、412を、X軸方向において隣接する伝熱プレート2A、3Aの伝熱部20、30の第二面Sa2、Sb2と対向させている。
【0076】
このとき、一方のフレームプレート4Aのフレーム嵌合部42Aは、X軸方向に隣接する伝熱プレート2Aの嵌合部21に外嵌する。一方、他方のフレームプレート4Bのフレーム嵌合部42Bは、X軸方向に隣接する伝熱プレート3Aの嵌合部31に外嵌される。
【0077】
また、このようにフレームプレート4A、4Bと伝熱プレート2A、3Aとが重ね合わされた状態では、対向面411と、伝熱プレート2Aの伝熱部20における第二面Sa2側から見て膨出する開口周縁部200p、201p、第二流路側凸条233、第二流路側凸部236、及び開口凸部238の各頂部とが当接し、対向面412と、伝熱プレート3Aの伝熱部30における第二面Sb2側から見て膨出する開口周縁部300p、301p、第二流路側凸条333、第二流路側凸部336、及び開口凸部338の各頂部とが当接している。
【0078】
以上のように、X軸方向に隣接するフレームプレート4A、4Bの対向面411、412と伝熱プレート2A、3Aの複数の凸部233、236、238、333、336、338とが当接することによって、第二流体BをZ軸方向に流通させる第二流路Rb1がフレームプレート4A、4Bと伝熱プレート2A、3Aとの間に形成される。この第二流路Rb1は、第二流入路Pb1と第二流出路Pb2とに連通している。より詳しくは、第二流路Rb1は、開口202、203、302、303の開口縁において該開口202、203、302、303の周方向に隣り合う開口凸部238、338間、即ち、開口凸部間の部位229、329のそれぞれを通じて第二流入路Pb1と第二流出路Pb2とに連通している。
【0079】
このフレームプレート4A、4Bと伝熱プレート2A、3Aとの間に形成される第二流路Rb1の流路断面積は、伝熱プレート2、3間に形成される第二流路Rbの流路断面積より小さい。本実施形態のフレームプレート4A、4Bと伝熱プレート2A、3Aとの間に形成される第二流路Rb1の流路断面積は、Z軸方向の主伝熱部25、35の位置において、伝熱プレート2、3間に形成される第二流路Rbの流路断面積の約半分である。
【0080】
本実施形態の熱交換器1において、隣り合うフレームプレート4と伝熱プレート2A、3Aとの当接した部分同士、及び、隣り合う伝熱プレート2、3の当接した部分同士は、ロウ付けされている。これにより、複数の伝熱プレート2、3及び一対のフレームプレート4が一体的(機械的)に接続されるとともに、隣り合うフレームプレート4と伝熱プレート2A、3Aとの対向面間(当接部分)及び隣り合う伝熱プレート2、3の対向面間(当接部分)が封止される。
【0081】
以上のように構成される熱交換器1において、外部から第一流入路Pa1に供給された第一流体Aは、
図2及び
図11に示すように、第一流入路Pa1から複数の第一流路Raのそれぞれに流入する。そして、第一流体Aは、複数の第一流路Raのそれぞれにおいて伝熱部20、30の対角位置に配置された開口200、201、300、301間をZ軸方向に流れ、第一流出路Pa2に流出する(
図12参照)。これに対し、外部から第二流入路Pb1に供給された第二流体Bは、第二流入路Pb1から複数の第二流路Rb、Rb1のそれぞれに流入する。そして、第二流体Bは、複数の第二流路Rb、Rb1のそれぞれにおいて伝熱部20、30の対角位置に配置された開口202、203、302、303間をZ軸方向に流れ、第二流出路Pb2に流出する(
図13参照)。
【0082】
このとき、第一流路Raを流通する第一流体Aと、第二流路Rb、Rb1を流通する第二流体Bは、第一流路Raと第二流路Rb、Rb1とを仕切る伝熱プレート2、3(伝熱部20、30)を介して熱交換する。これにより、第一流体Aは、第一流路Ra内でZ軸方向に流通する過程において、凝縮或いは蒸発する。
【0083】
以上の熱交換器1では、一方のフレームプレート4Aと伝熱プレート2Aとの間(第一のプレート間)及び他方のフレームプレート4Bと伝熱プレート3Aとの間(第二のプレート間)の両プレート間に流体Bの流通可能な流路Rb1が形成されている。これにより、伝熱プレート2、3の数を増やすことなく、即ち、伝熱プレート2、3の積層方向における熱交換器1の寸法の増加を抑えつつ、流体A、Bの流通可能な流路Rb1を増やすことができ、その結果、熱交換器1における熱交換効率が向上する。
【0084】
本実施形態の熱交換器1では、伝熱プレート2A、3AがX軸方向に突出する複数の凸部23、33(本実施形態の例では、第二流路側凸条233、333、第二流路側凸部236、336、及び開口凸部238、338)を有し、これら複数の凸部23、33がフレームプレート4A、4Bと当接することによって流路Rb1が形成されている。このように、伝熱プレート2A、3Aの有する凸部23、33をフレームプレート4A、4Bに当接させて該フレームプレート4A、4Bと伝熱プレート2A、3Aとの間に隙間を形成することで、スペーサ等の別部材を用いることなく、フレームプレート4A、4Bと伝熱プレート2A、3Aとの間に流路Rb1を形成することができる。
【0085】
また、本実施形態の熱交換器1では、フレームプレート4A、4Bにおける伝熱プレート2A、3Aと対向する対向面411、412が平坦であり、伝熱プレート2A、3Aの複数の凸部23、33(本実施形態の例では、第二流路側凸条233、333、第二流路側凸部236、336、及び開口凸部238、338)が対向面411、412と当接することによってフレームプレート4A、4Bと伝熱プレート2A、3Aとの間に隙間(流路Rb1)が形成されている。即ち、フレームプレート4A、4Bの構成の簡素化が図られている。
【0086】
また、本実施形態の熱交換器1では、伝熱プレート2A、3Aの伝熱部20、30における複数の第二流路側凸条(凸部)233、333のそれぞれがZ軸方向に沿って延び且つY軸方向に間隔をあけて配置され、これにより、第二流路Rb、Rb1のそれぞれは、流体BをZ軸方向に流通させている。
【0087】
また、本実施形態の熱交換器1では、X軸方向の端部に形成された第二流路Rb1の流路断面積が、X軸方向の途中位置に形成された第二流路Rbの流路断面積より小さい。このように流路断面積の異なる流路(第二流路Rb1)を設けることで、熱交換器1の内部に流入してから外部に流出するまでの流体Bの流通路において、流体Bの流速を容易に変化させることができる。
【0088】
また、本実施形態の熱交換器1では、伝熱プレート2A、3Aの開口202、203、302、303の周縁においてX軸方向の凹凸が周方向に繰り返され、該凹凸が繰り返される部位におけるフレームプレート4A、4B側に突出した部位(開口凸部)238、338のそれぞれが該フレームプレート4A、4Bと当接している。かかる構成によれば、第二流入路Pb1から第二流路Rb1に流入する部位(開口凸部間の部位229、329)の開口面積、及び第二流路Rb1から第二流出路Pb2に流出する部位(開口凸部間の部位229、329)の開口面積を十分に確保しつつ、伝熱部20、30における開口202、203、302、303の開口縁の強度を十分に確保することができる。
【0089】
また、本実施形態の熱交換器1では、該熱交換器1において蒸発又は凝縮させる第一流体Aの流れる複数の第一流路Raのそれぞれの両側に、第二流体Bが流れる第二流路Rb、Rb1が配置されている。このように、X軸方向の片側だけに第二流路Rb、Rb1が配置された第一流路Raがなく、全ての第一流路Raの両側に第二流路Rb、Rb1が配置されているため、当該熱交換器1は、第一流体Aを十分に蒸発又は凝縮させることができる。
【0090】
尚、本発明のプレート式熱交換器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0091】
上記実施形態の熱交換器1では、一方のフレームプレート4Aと伝熱プレート2Aとの間及び他方のフレームプレート4Bと伝熱プレート3Aとの間の両プレート間に、流体A、Bの流通可能な流路Rb1が形成されているが、この構成に限定されない。一方のフレームプレート4Aと伝熱プレート2Aとの間及び他方のフレームプレート4Bと伝熱プレート3Aとの間のうちの少なくとも一方のプレート間に、流体A、Bの流通可能な流路Rb1が形成されていればよい。かかる構成によれば、伝熱プレート2、3の数を増やすことなく、即ち、X軸方向における熱交換器1の寸法の増加を抑えつつ、流体A、Bの流通可能な流路Rb1を増やすことができ、その結果、熱交換器1における熱交換効率が向上する。
【0092】
また、上記実施形態の伝熱プレート2A、3Aの第二面Sa2、Sb2において、複数の第二流路側凸条233、333のそれぞれがZ軸方向に真っ直ぐに且つ主伝熱部25、35のZ軸方向における一端から他端まで連続して延びているが、この構成に限定されない。例えば、第二流路側凸条233、333は、湾曲や屈曲等していてもよく、Z軸方向に対して傾斜した方向に延びていてもよい。また、第二流路側凸条233、333は、Z軸方向に沿って断続して延びていてもよい。また、伝熱プレート2A、3Aの第二面Sa2、Sb2においてフレームプレート4A、4Bに向けて突出する部位は、堰部26、36の第二流路側凸部236、336のような、凸部(X軸方向から見て長手方向のない凸部)であってもよい。即ち、伝熱プレート2A、3Aの複数の凸部23、33は、該複数の凸部23、33がフレームプレート4A、4Bに当接した状態で該フレームプレート4A、4Bと伝熱プレート2A、3Aとの間に、伝熱部20、30のZ軸方向における一方の端部の開口202、302から他方の端部の開口203、303まで流体A、Bが流通可能な隙間(流路空間)が形成される形状であればよい。
【0093】
また、上記実施形態の熱交換器1では、フレームプレート4A、4Bの対向面411、412がX軸方向に直交する方向に広がり且つ平坦な面であるが、この構成に限定されない。対向面411、412は、全体的に湾曲等していてもよく、凹凸等が設けられてもよい。
【0094】
また、上記実施形態の熱交換器1では、フレームプレート4A、4Bと伝熱プレート2A、3Aとの間の流路Rb1の流路断面積は、プレート群における各伝熱プレート2、3間に形成される流路Ra、Rbの流路断面積より小さいが、この構成に限定されない。フレームプレート4A、4Bと伝熱プレート2A、3Aとの間の流路Rb1の流路断面積は、プレート群における各伝熱プレート2、3間に形成される流路Ra、Rbの流路断面積と同じ、又は大きくてもよい。
【0095】
また、上記実施形態の熱交換器1では、伝熱プレート2A、3Aの開口202、203、302、303の周縁のみに、凹凸が開口202、203、302、303の周方向に繰り返される部位が形成されているが、この構成に限定されない。前記凹凸が周方向に繰り返される部位(構成)は、各伝熱プレート2、3の各開口200、201、202、203、300、301、302、303の開口縁や、任意の伝熱プレート2、3の任意の開口200、201、202、203、300、301、302、303の開口縁等に配置されてもよい。
【0096】
また、上記実施形態の伝熱プレート2A、3Aでは、前記凹凸が周方向に繰り返される部位は、他の部位と一体に形成されているが、この構成に限定されない。例えば、
図14に示すような、周方向に凹部51と凸部52とが交互に繰り返される円環状の部材(間隔保持部材5)が、流入路Pa1、Pb1から流路Ra、Rb、Rb1に流入する部位、及び流路Ra、Rb、Rb1から流出路Pa2、Pb2に流出する部位の少なくとも一方において、隣り合う伝熱部20、30同士のX軸方向に間隔をあけて対向する開口200、201、202、203、300、301、302、303の開口縁間に配置されてもよい。
【0097】
また、上記実施形態の熱交換器1では、蒸発又は凝縮させるための流体(冷媒等)がフレームプレート4A、4Bと伝熱プレート2A、3Aとの間に形成れた第二流路Rb1を流れない流路配置であるが、この構成に限定されない。蒸発又は凝縮させるための流体(冷媒等)が第二流路Rb1を流れる流路配置であってもよい。水等が第二流路Rb1を流れる場合、フレームプレート4A、4Bを耐食性のある材料によって構成しなければならないが、前記構成によれば、フレームプレート4A、4Bを耐食性のない材料によって構成してもよくなる。
【0098】
また、流体A、Bが熱交換器1の内部に流入してから外部に流出するまでの流体A、Bの流通路の具体的な構成は、限定されない。上記実施形態の熱交換器1の流通路R1、R2(
図11参照)においては、各流路Ra、Rb、Rb1が流入路Pa1、Pb1と流出路Pa2、Pb2との間において並列に接続されている、即ち、流体A、Bが流入路Pa1、Pb1から流出路Pa2、Pb2まで流れる間に、一つの流路Ra、Rb、Rb1しか通過しない構成であるが、例えば、
図15及び
図16に示すように、重ね合わされた複数の伝熱プレート2、3の各伝熱プレート2、3間に形成される流路(第一の流路)Ra、Rbのうちの少なくとも一部の流路Ra、Rbと、フレームプレート4と伝熱プレート2A、3Aとの間に形成される流路(第二の流路)Rb1とが直列に接続される(連通する)構成のように、流体A、Bが流入路Pa1、Pb1から流出路Pa2、Pb2まで流れる間に複数の流路Ra、Rb、Rb1を通過する構成であってもよい。
【0099】
このとき、フレームプレート4と伝熱プレート2A、3Aとの間に形成される流路Rb1は、流通路R2の途中位置に配置されてもよく、
図15及び
図16に示すように流通路R2の端部位置に配置されてもよい。
【0100】
ここで、流路Rb1が流通路R2の途中位置に配置された構成とは、流路Rb1の上流端と下流端とのそれぞれに、少なくとも一つの流路(伝熱プレート2、3間に形成された流路)Rbが直列に接続された状態である。
【0101】
また、流路Rb1が流通路R2の端部位置に配置された構成とは、流通路R2における流入路Pb1から流出路Pb2までの間において、流路Rb1の上流端が流入路Pb1に接続され且つ流路Rb1の下流端に少なくとも一つの流路Rbが直列に接続された状態、又は、流路Rb1の上流端に少なくとも一つの流路Rbが直列に接続され且つ流路Rb1の下流端に流出路Pb2が接続された状態である。尚、
図15及び
図16においては、流通路R1、R2の構成を理解し易くするために、流体Aが流れる流通路R1と、流体Bが流れる流通路R2とを分けて図示している。
【0102】
例えば具体的には、流通路R1、R2は、
図15に示すように、並列に接続された二つ以上の流路Ra、Rb、Rb1によって構成される複数の流路ブロックBLが直列に接続された構成や、少なくとも一つの流路ブロックBLと少なくとも一つの流路Ra、Rb、Rb1とが直列に接続された構成であってもよい。このとき、フレームプレート4と伝熱プレート2、3との間に形成される流路Rb1は、流路ブロックBLに含まれるように配置されてもよい。
【0103】
このように、複数の流路Rb、Rb1が並列に接続される流路ブロックBLに流路Rb1が含まれる構成とすることで、流路Rb1の流路断面積が流路Rb1の流路断面積より小さくても、この流路断面積の小さい流路Rb1が配置されたことに起因する熱交換効率の低下等を抑える(小さくする)ことができる。尚、
図15に示す例では、下流側の流路ブロックBLほど、各流路ブロックBLに含まれる流路Ra、Rb、Rb1の数が多くなっているが、この構成に限定されない。
【0104】
また、上記の
図15に示す流通路では、伝熱プレート2、3のX軸方向における熱交換器1の両端部に形成される二つの流路Rb1(他の流路Rbより流路断面積の小さな流路Rb1)のうちの一方の流路Rb1が流通路R2の上流側の端部位置に配置されると共に、二つの流路Rb1のうちの他方の流路Rb1が流通路R2の下流側の端部位置に配置されているが、例えば、
図16に示す流通路R2のように、前記二つの流路Rb1が流通路R2の同じ側の端部位置(
図16に示す例では、上流側の端部位置)に配置されていてもよい。かかる構成によれば、熱交換器1の内部に流入するときと外部に流出するとき、即ち、熱交換の前後において体積差の大きな流体A、Bを熱交換器1に供給する場合に、流路断面積の小さな流路Rb1が流通路R2の上流端又は下流端に位置するため、流通路R2における流体の流速を一定に保ち易くなる(即ち、流速を調整し易くなる)。
【0105】
また、上記実施形態の熱交換器1では、流体A、Bの熱交換器1への流入、流出がX軸方向の一方側から行われるが、この構成に限定されない。例えば、
図15に示すように、流体A、Bの熱交換器1への流入がX軸方向の一方側から行われ、流体A、Bの熱交換器1からの流出がX軸方向の他方側から行われる構成でもよい。
【0106】
また、
図15に示すように、流通路R2は、流体A、Bの流れをX軸方向の一方側と他方側とに分岐させる少なくとも一つの分岐部Rb3を有する構成でもよい。この場合、分岐部Rb3で分岐された流体A、Bは、分岐部Rb3からX軸方向の一方側と他方側とに延びる分岐流路Rb4を通じて各流路Rb、Rb1に流れ込む。
【符号の説明】
【0107】
1…プレート式熱交換器、2、2A…第一伝熱プレート(伝熱プレート、中間プレート)、20…伝熱部、200、201、202、203…開口、200p、201p、202p、203p…開口周縁部、21…嵌合部、22…凹部、220…第一流路形成用凹条(凹部)、221…第二流路形成用凹条(凹部)、225…第一流路側凹部(凹部)、226…第二流路側凹部(凹部)、229…開口凸部間の部位(凹部)、23…凸部、231…第一流路側凸条(凸部)、233…第二流路側凸条(凸部)、235…第一流路側凸部(凸部)、236…第二流路側凸部(凸部)、238…開口凸部(凸部)、25…主伝熱部、26…堰部、3、3A…第二伝熱プレート(伝熱プレート、中間プレート)、30…伝熱部、300、301、302、303…開口、300p、301p、302p、303p…開口周縁部、31…嵌合部、32…凹部、320…第一流路形成用凹条(凹部)、321…第二流路形成用凹条(凹部)、325…第一流路側凹部(凹部)、326…第二流路側凹部(凹部)、329…開口凸部間の部位(凹部)、33…凸部、331…第一流路側凸条(凸部)、333…第二流路側凸条(凸部)、335…第一流路側凸部(凸部)、336…第二流路側凸部(凸部)、338…開口凸部(凸部)、35…主伝熱部、36…堰部、4、4A、4B…フレームプレート(端部プレート)、41A、41B…プレート本体、411、412…対向面、42A、42B…フレーム嵌合部、43…ノズル、5…間隔保持部材、51…凹部、52…凸部、500…プレート式熱交換器、501…伝熱プレート、502…フレームプレート、A…第一流体(流体)、B…第二流体(流体)、BL…流路ブロック、Pa1…第一流入路(流入路)、Pa2…第一流出路(流出路)、Pb1…第二流入路(流入路)、Pb2…第二流出路(流出路)、R1、R2…流通路、Ra…第一流路(流路、第一の流路)、Rb…第二流路(流路、第一の流路)、Rb1…第二流路(流路、第二の流路)、Rb3…分岐部、Rb4…分岐流路、Sa1、Sb1…第一面、Sa2、Sb2…第二面