(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】アリル含有樹脂およびその使用
(51)【国際特許分類】
C08G 8/30 20060101AFI20220705BHJP
G01N 21/3563 20140101ALI20220705BHJP
G01N 21/552 20140101ALI20220705BHJP
G01R 33/485 20060101ALI20220705BHJP
C08G 61/02 20060101ALI20220705BHJP
C08L 61/14 20060101ALI20220705BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20220705BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20220705BHJP
B32B 15/09 20060101ALI20220705BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220705BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C08G8/30
G01N21/3563
G01N21/552
G01R33/485
C08G61/02
C08L61/14
C08L65/00
C08J5/24 CEZ
B32B15/09 Z
B32B27/36
H05K1/03 630H
H05K1/03 610H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020134344
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANG CHUN PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan Dist Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】杜 安邦
(72)【発明者】
【氏名】楊 士▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】王 炳傑
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-028129(JP,A)
【文献】特開2019-019149(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104195(WO,A1)
【文献】特開昭59-036121(JP,A)
【文献】特開2018-024856(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209237(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0322545(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08G 2/00 - 2/38
C08G 61/00 - 61/12
C08G 4/00 - 16/06
B29B 11/16
B29B 15/08 - 15/14
C08J 5/04 - 5/10
B32B 1/00 - 43/00
G01N 22/00 - 22/04
G01N 24/00 - 24/14
G01R 33/28 - 33/64
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/61
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位を含み、
[式(I)]
R
1およびR
2は独立してHまたはアリルであり、ただし、R
1およびR
2の少なくとも1つはアリルであり、R
3は、HまたはC
1~C
21のヒドロカルビルであり、
アリル含有樹脂のフーリエ変換赤外スペクトルは、1650cm
-1~1630cm
-1の範囲の信号強度aおよび1620cm
-1~1560cm
-1の範囲の信号強度bを有し、0<a/b≦1.20であり、
前記アリル含有樹脂の定量
1H-NMRスペクトルは、3.2ppm~6.2ppmの範囲の信号強度cおよび6.6ppm~7.4ppmの範囲の信号強度dを有し、0<c/d≦1.20であることを特徴とするアリル含有樹脂。
【請求項2】
前記フーリエ変換赤外スペクトルが、以下のように決定される、フィルム法を用いて、前記アリル含有樹脂をKBrペレット上に塗布し、走査回数16、走査範囲4000cm
-1~400cm
-1および分解能1cm
-1の条件下で、フーリエ変換赤外分光計を用いて前記KBrペレットの吸収スペクトルを特徴付け、減衰全反射を用いて前記信号強度aおよび前記信号強度bを決定し、前記信号強度は、それぞれの指定波長範囲内の吸光度値である請求項1に記載のアリル含有樹脂。
【請求項3】
前記定量
1H―NMRスペクトルは、共鳴周波数500MHz、パルス幅10μs、パルス遅延2s、走査回数32、および標準物質の化学シフト0ppmの条件下で、重水素化クロロホルムを溶媒として、テトラメチルシランを標準物質として用い、核磁気共鳴分光計により決定される請求項1に記載のアリル含有樹脂。
【請求項4】
0.10≦a/b≦1.20かつ0.50≦c/d≦1.20である請求項1に記載のアリル含有樹脂。
【請求項5】
前記繰り返し単位は、-CH
2-、-C
2H
4-、-C
2H
2-、-C
2-、-C
3H
6-、-C
3H
4-、-C
3H
2-、-C
4H
8-、-C
4H
6-、-C
4H
4-、-C
5H
10-、-C
5H
8-、-C
5H
6-、-C
6H
12-、-C
6H
10-、-C
6H
8-、-C
7H
14-、-C
7H
12-、-C
7H
10-、-C
8H
16-、-C
8H
14-、-C
8H
12-、-C
9H
18-、-C
9H
16-、-C
9H
14-、-C
10H
20-、-C
10H
18-、-C
10H
16-,
カルボニル、スルフリル、および-O-からなる群から選択される1つ以上の第2の構造単位をさらに含む請求項1に記載のアリル含有樹脂。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の前記アリル含有樹脂により変性されたビスマレイミド樹脂。
【請求項7】
請求項6に記載の前記ビスマレイミド樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の前記樹脂組成物を基材に含浸させ、または請求項7に記載の前記樹脂組成物を基材上に塗布し、前記含浸または塗布された基材を乾燥させることにより作製されるプリプレグ。
【請求項9】
請求項8に記載の前記プリプレグに金属箔を積層することにより作製される金属被覆積層体。
【請求項10】
請求項9に記載の前記金属被覆積層体から作製されるプリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本発明は、2019年8月9日に出願された米国仮特許出願第62/884,812号に対して、35U.S.C§119に基づく優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、アリル含有樹脂に関し、特に、低い誘電正接(dielectric dissipation)を有するアリル含有樹脂およびプリント回路基板におけるその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品の用途は、信号伝送の高周波化・高速化、電子部品の小型化、プリント回路基板の高密度配線化の傾向へと発展してきたため、電子材料の物理的特性および化学的特性に対する要求も高まってきた。特に、高周波伝送用途においては、低い誘電正接の材料の使用が避けられない傾向となっている。そのため、エポキシ樹脂を主成分とする従来の誘電材料では、その要求に応えることが困難であった。
【0003】
ポリテトラフルオロエテン等のフッ素系樹脂の誘電正接(dielectric dissipation factor:Df)は0.0004まで低くできるが、処理が難しく、コストが高いため、その用途が限定される。ポリフェニレンエーテル樹脂のDfは0.0007のレベルに達し得るが、処理が難しく、ガラス転移温度(Tg)が低いという欠点がある。ビスマレイミド樹脂は、誘電特性(dielectric properties)、耐熱性、反応性に優れ、自己重合後の副生物がないという利点があり、例えば、ジアリルビスフェノールA(DABPA)によりさらに変性して、その溶解性および靭性を向上させることができる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は優れた誘電特性を有し、ビスマレイミド樹脂の変性に特に適したアリル含有樹脂を提供することを目的とする。アリル含有樹脂は、ビスマレイミド樹脂の高い耐熱性の利点を維持しながら、ビスマレイミド樹脂の使用可能範囲を増加させる。特に、ビスマレイミド樹脂の誘電正接(Df)および誘電率(Dk)を低減することができ、これにより、得られる電子材料を高周波伝送用途に特に適したものにすることができる。したがって、本発明は、以下の目的に関する。
【0005】
本発明の目的は、繰り返し単位を含むアリル含有樹脂を提供することであり、繰り返し単位は、下記式(I)で表される第1の構造単位を含む。
[式(I)]
式(I)において、R
1およびR
2はそれぞれ独立してHまたはアリルであり、ただし、R
1およびR
2の少なくとも1つはアリルであり、R
3は、H、C
1~C
21のヒドロカルビル、またはC
1~C
21のヒドロキシル含有基である。
アリル含有樹脂のフーリエ変換赤外スペクトル(Fourier transform infrared spectrum)は、1650cm
-1~1630cm
-1の範囲の信号強度aおよび1620cm
-1~1560cm
-1の範囲の信号強度bを有し、0<a/b≦1.20である。
アリル含有樹脂の定量
1H-NMRスペクトル(quantitative
1H-NMR spectrum)は、3.2ppm~6.2ppmの範囲の信号強度cおよび6.6ppm~7.4ppmの範囲の信号強度dを有し、0<c/d≦1.20である。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態では、フーリエ変換赤外スペクトルは、次のように決定される。すなわち、フィルム法を用いてKBrペレット上にアリル含有樹脂を塗布し、フーリエ変換赤外分光計を用いて、走査回数16、走査範囲4000cm-1~400cm-1および分解能1cm-1の条件下で、KBrペレットの吸収スペクトルを特徴づけ、減衰全反射(attenuated total reflectance:ATR)を用いて信号強度aおよび信号強度bを決定する。これらの信号強度は、それぞれの指定波長範囲内の吸光度値(任意単位)である。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態では、定量1H-NMRスペクトルは、共鳴周波数(resonance frequency)500MHz、パルス幅10μs、パルス遅延2s、走査回数32、および標準物質(reference material)の化学シフト0ppmの条件下で、重水素化クロロホルム(deuterated chloroform)を溶媒とし、テトラメチルシランを標準物質として用い、核磁気共鳴分光計により決定される。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、0.10≦a/b≦1.20かつ0.50≦c/d≦1.20である。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、繰り返し単位がさらに、-CH
2-、-C
2H
4-、-C
2H
2-、-C
2-、-C
3H
6-、-C
3H
4-、-C
3H
2-、-C
4H
8-、-C
4H
6-、-C
4H
4-、-C
5H
10-、-C
5H
8-、-C
5H
6-、-C
6H
12-、-C
6H
10-、-C
6H
8-、-C
7H
14-、-C
7H
12-、-C
7H
10-、-C
8H
16-、-C
8H
14-、-C
8H
12-、-C
9H
18-、-C
9H
16-、-C
9H
14-、-C
10H
20-、-C
10H
18-、-C
10H
16-,
カルボニル(carbonyl)、スルフリル(sulfuryl)、および-O-からなる群から選択される1つ以上の第2の構造単位を含む。
【0010】
本発明の別の目的は、上記のアリル含有樹脂によって変性されたビスマレイミド樹脂を提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、上記のビスマレイミド樹脂を含む樹脂組成物を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、上記の樹脂組成物を基材に含浸させ、または上記の樹脂組成物を基材上に塗布し、含浸または塗布された基材を乾燥させることによって調製されるプリプレグを提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、上記のプリプレグに金属箔を積層することによって作製される金属被覆積層体を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、上記の金属被覆積層体から作製されるプリント回路基板を提供することである。
【0015】
本発明の上記の目的、技術的特徴および利点をより明確にするために、本発明を以下のいくつかの実施形態を参照して詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。しかしながら、本発明の精神から逸脱することなく、本発明は、様々な実施形態において具現化され、本明細書に記載されたものに限定されるべきではない。
【0017】
特に記載のない限り、本明細書(特に特許請求の範囲)に記載される「a」、「the」等の用語は、単数形と複数形の両方を含むべきである。
【0018】
特に記載のない限り、本明細書(特に特許請求の範囲)に記載される「第1の」、「第2の」等の用語は、異なるエレメントまたはコンポーネントを区別するためにのみ使用される。それらは、特別な意味を有さず、連続的な順序を示すことを意図しない。
【0019】
本明細書で使用される「使用可能範囲(operable range)」は、樹脂の軟化点から熱架橋温度までの温度範囲を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「末端ヒドロキシル基(terminal hydroxyl group)」は、ポリマー主鎖に結合した末端ヒドロキシル基(-OH)をいう。
【0021】
1.アリル含有樹脂
【0022】
本発明は、低粘度、低軟化点および優れた誘電特性を有するアリル含有樹脂を提供する。また、本発明は、ビスマレイミド樹脂が、広い使用温度範囲(すなわち、使用可能範囲)を有し、優れた誘電特性および高い耐熱性を維持するように、ビスマレイミド樹脂を変性するために使用することができるアリル含有樹脂を提供する。
【0023】
1.1.アリル含有樹脂の特性
【0024】
本発明のアリル含有樹脂は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により測定したとき、1650cm-1~1630cm-1の信号強度aと1620cm-1~1560cm-1の信号強度bとを有し、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)は、0より大きく1.20まで、すなわち、0<a/b≦1.20である。例えば、a/bは、0.125、0.15、0.175、0.20、0.225、0.25、0.275、0.30、0.325、0.35、0.375、0.40、0.425、0.45、0.475、0.50、0.525、0.55、0.575、0.60、0.625、0.65、0.675、0.70、0.725、0.75、0.775、0.80、0.825、0.85、0.875、0.90、0.925、0.95、0.975、1.00、1.025、1.05、1.075、1.10、1.125、1.15、1.175、または上記の任意の2つの値で構成される範囲内である。本発明のいくつかの実施形態では、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)が0.10~1.20(すなわち、0.10≦a/b≦1.20)、好ましくは0.19~1.18(すなわち、0.19≦a/b≦1.18)である。アリル含有樹脂のa/b値が、本発明の特定の範囲内にある場合、アリル含有樹脂は、優れた誘電特性(低Dkかつ低Df)を有することができる。
【0025】
本発明のアリル含有樹脂のFT-IR測定は、フーリエ変換赤外分光計を用いて、次のように得られる。すなわち、直径13mm、厚さ0.5mmのKBrペレット上にアリル含有樹脂1mgを塗布し、フィルム法により厚さ0.02μmのフィルムを形成し、塗布されたKBrペレットをペレットホルダーに入れ、該ペレットホルダーをフーリエ変換赤外分光計に入れ、走査回数16、走査範囲4000cm-1~400cm-1および分解能1cm-1の条件下で塗布されたKBrペレットの吸収スペクトルを測定し、減衰全反射(ATR)を用いて信号強度aおよび信号強度bを決定する。これらの信号強度は、それぞれの指定波長範囲内の吸光度値であり、それぞれ、各指定範囲におけるピークの始点と終点との間の接続線の積分面積から算出することにより得られる。
【0026】
定量NMR(qNMR)によって決定される本発明のアリル含有樹脂の1H-NMRスペクトルは、3.2ppm~6.2ppmの信号強度cおよび6.6ppm~7.4ppmの信号強度dを有し、信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)は、0より大きく1.20まで、すなわち0<c/d≦1.20である。本発明のいくつかの実施形態では、信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)は、0.50~1.20(すなわち、0.50≦c/d≦1.20)、好ましくは0.93~1.15(すなわち、0.93≦c/d≦1.15)である。例えば、c/dは、0.10、0.125、0.15、0.175、0.20、0.225、0.25、0.275、0.30、0.325、0.35、0.375、0.40、0.425、0.45、0.475、0.50、0.525、0.55、0.575、0.60、0.625、0.65、0.675、0.70、0.725、0.75、0.775、0.80、0.825、0.85、0.875、0.90、0.925、0.95、0.975、1.00、1.025、1.05、1.075、1.10、1.125、1.15、1.175、または上記の任意の2つの値で構成される範囲内である。アリル含有樹脂のc/dが本発明の特定の範囲内であれば、優れた誘電特性(低Dkかつ低Df)を得ることができる。
【0027】
本発明のアリル含有樹脂の1H-NMRスペクトルは、以下の条件下で核磁気共鳴分光計により測定することができる。すなわち、アリル含有樹脂15mgを重水素化クロロホルム750μlに溶解し、得られた溶液を核磁気共鳴分光計(例えば、Bruker AVANCE 500 NMR)の試料供給器に入れ、シミング工程(shimming step)後、5mmプローブ(例えば、BBFOスマートプローブ)を用いて分析することにより測定される。ここで、テトラメチルシランを標準物質として用い、共鳴周波数は500MHzであり、パルス幅は10μsであり、パルス遅延時間は2秒であり、走査回数は32であり、標準物質の化学シフトは0ppmに設定される。
【0028】
1.2.アリル含有樹脂の構造
【0029】
本発明のアリル含有樹脂は、下記式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位を有し、本発明のアリル含有樹脂は、ヒドロキシルおよびアリルから選択される末端基を有していてもよく、末端基のそれぞれは、同一であっても異なっていてもよい。
[式(I)]
【0030】
式(I)において、R1およびR2はそれぞれ独立してHまたはアリルであり、ただし、R1およびR2の少なくとも1つはアリルであり、R3は、H、C1~C21のヒドロカルビル、またはC1~C21のヒドロキシル含有基である。C1~C21のヒドロカルビルには、C1~C21のアルキル、C2~C21のアルケニルおよびC2~C21のアルキニルが含まれるが、これらに限定されない。また、C1~C21のヒドロカルビルは、直鎖構造、分岐構造または環状構造を有し得る。C1~C21のヒドロキシル含有基には、C1~C21のヒドロキシアルキルが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
C1~C21のアルキルの例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ターシャリーペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、n-ノニル、イソノニル、n-デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、ペンタデシルおよびエイコシルが含まれるが、これらに限定されない。C2~C21のアルケニルの例には、ビニル、プロペニル、アリル、n-ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニルおよびデセニルが含まれるが、これらに限定されない。C2~C21のアルキニルの例には、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニルおよびデシニルが含まれるが、これらに限定されない。C1~C21のヒドロキシアルキルの例には、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチルおよびヒドロキシヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の一実施形態では、式(I)中、R1はアリルであり、R2はHである。本発明の別の実施形態では、式(I)中、R1はHであり、R2はアリルである。
【0033】
本発明の一実施形態では、式(I)中、R3は、-CH3、-CH2OH、-C2H5、-C2H3、-C2H4OH、-C2H、-C3H7、-C3H5、-C3H3、-C4H9、-C4H7、-C4H5、-C4H8OH、-C5H11、-C5H9、-C5H7、-C6H13、-C6H11、-C6H9、-C7H15、-C7H13、-C7H11、-C8H17、-C8H15、-C8H13、-C8H14OH、-C9H19、-C9H17、-C9H15、-C10H21、-C10H19、-C10H17、-C11H23、-C11H21-、-C11H19、-C12H25、-C12H23、-C12H21、-C13H27、-C13H25、-C13H23、-C14H29、-C14H27、-C14H25、-C15H31、-C15H29、-C15H27、-C16H33、-C16H31、-C16H29、-C17H35、-C17H33、-C17H31、-C18H37、-C18H35、-C12H18OH、-C17H33、-C19H39、-C19H37、-C19H35、-C20H41、-C20C39、-C20H37、-C21H43、-C21H41、-C21H34OH、-C21H32OH、-C21H30OHおよび-C21H28OHからなる群から選択される。
【0034】
本発明の一実施形態では、式(I)中、R
3は、次の式(i)で表される構造を有し、R
4は-C
15H
25、-C
15H
27、-C
15H
29および-C
15H
31である。
[式(i)]
【0035】
本発明の一実施形態において、本発明のアリル含有樹脂の繰り返し単位は、直鎖または分岐状のアルキレン、直鎖または分岐状のアルケニレン、2価の縮合環基(divalent fused ring group)および2価の架橋二環基(divalent bridged bicyclic group)の1つ以上の構造単位をさらに含む。より具体的には、本発明のアリル含有樹脂の繰り返し単位は、-CH
2-、-C
2H
4-、-C
2H
2-、-C
2-、-C
3H
6-、-C
3H
4-、-C
3H
2-、-C
4H
8-、-C
4H
6-、-C
4H
4-、-C
5H
10-、-C
5H
8-、-C
5H
6-、-C
6H
12-、-C
6H
10-、-C
6H
8-、-C
7H
14-、-C
7H
12-、-C
7H
10-、-C
8H
16-、-C
8H
14-、-C
8H
12-、-C
9H
18-、-C
9H
16-、-C
9H
14-、-C
10H
20-、-C
10H
18-、-C
10H
16-,
カルボニル、スルフリルおよび-O-からなる群から選択される1つ以上の第2の構造単位をさらに含む。
【0036】
本発明の一実施形態では、本発明のアリル含有樹脂の繰り返し単位は、第1の構造単位および第2の構造単位を含み、第1の構造単位は、第2の構造単位に隣接する。本発明の別の実施形態では、本発明のアリル含有樹脂の繰り返し単位は、第1の構造単位および第2の構造単位から構成される。
【0037】
2.変性ビスマレイミド樹脂
【0038】
本発明のアリル含有樹脂は、ビスマレイミド樹脂を変性するために使用することができ、その結果、ビスマレイミド樹脂は高い耐熱性の利点を維持しながら、優れた誘電特性、特に低い誘電正接特性をさらに有し、広い使用温度範囲(すなわち、広い使用可能範囲)を有する。したがって、本発明は、上記のアリル含有樹脂によって変性されたビスマレイミド樹脂も提供する。
【0039】
本発明の一実施形態では、ビスマレイミド樹脂は、下記式(II)で表される構造を有する。
[式(II)]
ここで、R
5およびR
6はそれぞれ独立してH、-CH
3または-C
2H
5であり、R
7は、-CH
2-、-O-、-C
3H
6-、-SO
2-、
である。
【0040】
式(II)で表される構造を有するビスマレイミド樹脂の例には、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルイソプロピルビスマレイミドおよび4,4’-ジフェニルスルホンビスマレイミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
ビスマレイミド樹脂の変性は、アリル含有樹脂との付加重合反応により行われ、ビスマレイミド樹脂の二重結合がアリル含有樹脂の二重結合と反応し得る限り、重合条件は特に限定されない。通常、重合反応の温度は110℃~250℃、例えば115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、195℃、200℃、205℃、210℃、215℃、220℃、225℃、230℃、235℃、240℃、245℃または上記の任意の2つの値によって構成される範囲内とし得る。重合反応の反応時間は、10分~10時間とすることができる。
【0042】
アリル含有樹脂およびビスマレイミド樹脂の重合反応は、触媒の存在下で任意に実施することができる。触媒には、第三級ホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィンおよびトリシクロヘキシルホスフィンが含まれるが、これらに限定されない。これらの触媒は単独でまたは任意の組合せで使用することができる。触媒の量は特に限定されないが、一般的にはアリル含有樹脂とビスマレイミド樹脂との合計重量に基づいて、0重量%~5重量%とすることができる。
【0043】
アリル含有樹脂とビスマレイミド樹脂との反応比は、二重結合等価物の数から算出して、1:2~2:1、好ましくは1:1.5~1.5:1、より好ましくは1:0.9~1:1.3であってもよい。アリル含有樹脂とビスマレイミド樹脂との反応比が上記範囲内であると、変性ビスマレイミド樹脂は、広い使用温度範囲(使用可能範囲)を有し、優れた耐熱性(高Tg)および誘電特性(低Dkかつ低Df)を維持することができる。
【0044】
3.樹脂組成物
【0045】
本発明の変性ビスマレイミド樹脂は、広い使用温度範囲(すなわち、使用可能範囲)を有し、優れた誘電特性および高い耐熱性を維持する。したがって、本発明は、上記のような変性ビスマレイミド樹脂を含む樹脂組成物をさらに提供し、熱硬化後に得られるその硬化物は、プリント回路基板における誘電材料として使用することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、製造プロセス中の樹脂組成物の加工性を最適に改善するために、または樹脂組成物から調製される材料の物理的特性および化学的特性を改善するために、他の任意成分、例えば、他の熱硬化性樹脂成分、架橋剤、難燃剤、充填剤および当技術分野で公知の添加剤を任意でさらに含んでもよい。他の熱硬化性樹脂成分の例には、ポリフェニレンエーテル樹脂およびエポキシ樹脂が含まれるが、これらに限定されない。当技術分野で公知の添加剤には、有機過酸化物およびアゾ化合物等の重合開始剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
架橋剤とは、不飽和基を有し、熱硬化性樹脂(ポリフェニレンエーテル樹脂、ビスマレイミド樹脂等)と架橋して三次元網目構造を形成することができる成分をいう。架橋剤の例には、多官能アリル化合物、多官能アクリレート、多官能アクリルアミドおよび多官能スチレン化合物が含まれるが、これらに限定されない。多官能アリル化合物の例には、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)およびトリアリルシアヌレート(TAC)が含まれる。多官能アクリレートの例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが含まれる。多官能スチレン化合物の例には、1,3-ジビニルベンゼンおよび1,4-ジビニルベンゼンが含まれる。架橋剤のそれぞれは、単独で、または任意の組合せで使用され得る。
【0048】
難燃剤は、樹脂組成物から調製される電子材料の耐熱性および難燃性を高めることができる。難燃剤には、リン含有難燃剤、臭素含有難燃剤および窒素含有化合物が含まれるが、これらに限定されず、様々な種類の難燃剤を単独でまたは任意の組合せで使用することができる。リン含有難燃剤の例には、リン酸エステルおよびホスファゼンが含まれるが、これらに限定されない。臭素含有難燃剤の例には、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド(decabromodiphenyl oxide)およびデカブロモジフェニルエタン(decabrominated diphenyl ethane)が含まれるが、これらに限定されない。窒素含有化合物の例には、メラミンおよびその誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
充填剤は、樹脂組成物から調製される電子材料の機械的強度、熱伝導率および寸法安定性を改善することができる。好適な充填剤の例には、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、アルミニウム炭化ケイ素、炭化ケイ素、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、石英、ダイヤモンド粉末、ダイヤモンドのような粉末、グラファイト、焼成カオリン、ピラン、マイカ、ヒドロタルサイト、PTFE粉末、ガラスビーズ、セラミックウィスカー、カーボンナノチューブ、ナノスケール無機粉末、およびこれらの組合せからなる群より選択される充填剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の樹脂組成物の調製に関して、ビスマレイミド樹脂および他の任意成分を含む樹脂組成物の各成分を、撹拌機で均一に混合し、溶媒に溶解または分散させて、その後の処理および利用のためにワニスのような形態にすることができる。溶媒は、樹脂組成物の成分を溶解または分散させることができるが、成分と反応しない任意の不活性溶媒であってもよい。例えば、樹脂組成物の成分を溶解または分散させるために使用され得る溶媒としては、トルエン、γ-ブチロラクトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノン、アセトン、キシレン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)およびN-メチル-ピロリドン(NMP)が挙げられるが、これらに限定されない。各溶媒は、単独で、または組み合わせて使用することができる。溶媒の量は、特に限定されず、原則として、樹脂組成物の成分が、溶媒に、均一に溶解または分散されていればよい。添付の実施形態では、メチルエチルケトンを溶媒として使用した。
【0051】
4.プリプレグ
【0052】
また、本発明は、上記樹脂組成物から作製されるプリプレグも提供する。プリプレグは、基材に上記樹脂組成物を含浸させた後、または上記樹脂組成物を基材上に塗布した後、含浸または塗布された基材を乾燥させることにより作製される。樹脂組成物を含浸または塗布する方法としては、含浸、ロールコーティング、ダイコーティング、ロッドコーティング、グラビアコーティング、スピンコーティング、スリットコーティングおよび噴霧が挙げられるが、これらに限定されない。含浸または塗布された基材を80℃~180℃の温度で1~30分間乾燥させて、半硬化状態(Bステージ)のプリプレグを得ることができる。添付の実施形態では、乾燥は、90℃で30分間、実施された。
【0053】
一般に使用される基材には、紙繊維、ガラス繊維、石英繊維、有機ポリマー繊維、炭素繊維およびこれらの組合せからなる群から選択される材料から作製される紙、布またはフェルトが含まれるが、これらに限定されない。有機ポリマー繊維の例には、高弾性ポリプロピレン(HMPP)繊維、ポリアミド繊維、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維、および液晶ポリマー(LCP)が含まれるが、これらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態では、ガラス繊維布を基材として使用した。
【0054】
5.金属被覆積層体およびプリント回路基板
【0055】
本発明は、上記プリプレグから作製される金属被覆積層体も提供する。金属被覆積層体は、複合層および金属層を含み、複合層は、上記プリプレグによって提供される。具体的には、本発明の金属被覆積層体は、次の方法によって作製され得る。すなわち、複合層として1層のプリプレグまたは複数層の積層プリプレグを用い、次に複合層の少なくとも1つの外面に金属箔(例えば銅箔)を積層して、複合層および金属層を含む積層体を形成し、この積層体をホットプレスして金属被覆積層体を得ることができる。ホットプレス操作の条件は、180℃~220℃、5~30kg/cm2で60~200分間のホットプレスとすることができる。
【0056】
また、上記の金属被覆積層体の外側の金属箔をさらにパターニングしてプリント回路基板を形成することができる。
【0057】
6.実施例
【0058】
6.1.測定方法の説明
【0059】
本発明は以下の特定の実施形態によってさらに例示され、ここで、採用された測定機器および測定方法はそれぞれ、以下の通りである。
【0060】
[FT-IRスペクトル測定]
【0061】
調製したアリル含有樹脂を有機溶媒および水で抽出して有機層を得た後、真空濃縮により有機溶媒を完全に除去して、分析対象のアリル含有樹脂試料を得た。
【0062】
アリル含有樹脂試料1mgを、直径13mm、厚さ0.5mmのKBrペレット上に塗布し、フィルム法により、膜厚0.02μmのフィルムを形成した。塗布されたKBrペレットをペレットホルダーに入れ、それをフーリエ変換赤外分光計(モデル:Spotlight 200i;製造元:PerkinElmer)に入れた。そして、走査回数16、走査範囲4000cm-1~400cm-1、分解能1cm-1の条件下で、塗布されたKBrペレットの吸収スペクトルを測定した。減衰全反射(ATR)を用いて信号強度aおよび信号強度bを決定した。これらの信号強度は、それぞれの指定波長範囲内の吸光度値(任意単位)であり、それぞれは、各指定範囲におけるピークの始点と終点との間の接続線の積分面積から算出した。
【0063】
[1H-NMRスペクトル測定]
【0064】
調製したアリル含有樹脂を有機溶媒および水で抽出して有機層を得た後、真空濃縮により有機溶媒を完全に除去して、分析対象のアリル含有樹脂試料を得た。
【0065】
アリル含有樹脂試料15mgを重水素化クロロホルム(CDCl3)750μlに溶解した。得られた溶液を核磁気共鳴分光計(モデル:Bruker AVANCE 500 NMR)の試料供給器に入れた。シミング工程後、5mmプローブ(プローブ型:BBFOスマートプローブ)を用いて分析を行った。ここで、テトラメチルシランを標準物質として用い、共鳴周波数は500MHzであり、パルス幅は10μsであり、パルス遅延時間は2秒であり、走査回数は32であり、標準物質の化学シフトは0ppmに設定された。
【0066】
[ガラス転移点(Tg)試験]
【0067】
示差走査熱量計(differential scanning calorimeter:DSC)を用いて試料のガラス転移温度(Tg)を測定した。Tgの試験測定には、電子回路の相互接続とパッケージングのインスティテュート(Institute for Interconnection and Packaging Electronic Circuits:IPC)のIPC-TM-650.2.4.25試験法を用いた。
【0068】
[誘電率(Dk)および誘電正接(Df)試験]
【0069】
IPC-TM-650 2.5.5.13仕様に従い、試験される試料の誘電率(Dk)および誘電正接(Df)を、(日本のAET Companyから購入した)マイクロ波誘導アナライザー(microwave induced analyzer)を用いて、25℃、動作周波数10GHzで測定した。
【0070】
6.2.アリル含有樹脂の調製
【0071】
[実施例1]
【0072】
温度制御装置、撹拌ブレードおよび加熱装置を含む4ネックのつや消しポートを有する1リットルのガラス製反応ケトルを用意して、230gのフェノール架橋樹脂(モデル:PF9110;台湾のChangchun Artificial Resin Factory Co.,Ltd.から購入)および300gの酢酸アリルをケトルに添加した。次に、得られた混合物を撹拌し、80℃に加熱した後、0.06gの酢酸パラジウム(II)((Pd)OAc2)および0.3gのトリフェニルホスフィン(TPP)を加えて、0.5時間撹拌し、180mLの50%炭酸カリウム溶液をガラス製スポイトで加えて3時間反応させ、284gのアリル含有樹脂Aを得た。アリル含有樹脂Aは、式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位および末端ヒドロキシル基を有し、R1がアリルであり、R2がHであり、R3がHであった。
【0073】
アリル含有樹脂AのFT-IRスペクトルおよび1H-NMRスペクトルを上記方法に従って測定し、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)および信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)を計算し、それらの結果を表1に記録した。
【0074】
[実施例2]
【0075】
1リットルのガラス製反応ケトルを用意し、実施例1から調製したアリル含有樹脂A280gをケトル内に投入し、そこに流速50ml/minの窒素を導入した。得られた混合物を撹拌し、190℃に加熱して8時間反応させた後、272gのアリル含有樹脂Bを得た。アリル含有樹脂Bは、式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位および末端ヒドロキシル基を有し、R1はHであり、R2はアリルであり、R3はHであった。
【0076】
アリル含有樹脂BのFT-IRスペクトルおよび1H-NMRスペクトルを上記方法に従って測定し、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)および信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)を計算し、それらの結果を表1に記録した。
【0077】
[実施例3]
【0078】
3リットルの高圧反応ケトルを用意し、225gのパラターシャリーブチルフェノール(para-tert-butyl phenol)、130gのジシクロペンタジエンおよび2gのルイス酸触媒(AlCl3)をケトルに加えた。得られた混合物を撹拌し、150℃に加熱し、その温度を3時間維持した後、180℃まで昇温し、未反応物を減圧下で除去した。次いで、1350gのエタノール、350gの塩化アリルおよび140gの炭酸カリウムを加え、得られた混合物を撹拌し、100℃に加熱して10時間反応させた後、144gのアリル含有樹脂Cを得た。アリル含有樹脂Cは、式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位および末端ヒドロキシル基を有し、R1がアリルであり、R2がHであり、R3がtert-ブチルであった。
【0079】
アリル含有樹脂CのFT-IRスペクトルおよび1H-NMRスペクトルを上記方法に従って測定し、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)および信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)を計算し、それらの結果を表1に記録した。
【0080】
[実施例4]
【0081】
1リットルのガラス製反応ケトルを用意し、実施例3から調製したアリル含有樹脂C130gをケトル内に投入し、そこに流速130ml/minの窒素を導入した。得られた混合物を撹拌し、195℃に加熱して5時間連続反応させた後、128gのアリル含有樹脂Dを得た。アリル含有樹脂Dは、式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位および末端ヒドロキシル基を有し、R1がHであり、R2がアリルであり、R3がtert-ブチルであった。
【0082】
アリル含有樹脂DのFT-IRスペクトルおよび1H-NMRスペクトルを上記方法に従って測定し、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)および信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)を計算し、それらの結果を表1に記録した。
【0083】
[実施例5]
【0084】
3リットルの高圧反応ケトルを用意し、300gのカルダノール、130gのジシクロペンタジエンおよび2gのルイス酸触媒(AlCl3)をケトルに加えた。得られた混合物を撹拌し、135℃に加熱して、その温度を4時間維持した。次いで、1500gのエタノール、339gの塩化アリルおよび163gの炭酸カリウムを加え、得られた混合物を撹拌し、80℃に加熱して6時間反応させた後、137gのアリル含有樹脂Eを得た。アリル含有樹脂Eは、式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位および末端ヒドロキシル基を有し、R1がアリルであり、R2がHであり、R3が-C15H27であった。
【0085】
アリル含有樹脂EのFT-IRスペクトルおよび1H-NMRスペクトルを上記方法に従って測定し、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)および信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)を計算し、それらの結果を表1に記録した。
【0086】
[実施例6]
【0087】
1リットルのガラス製反応ケトルを用意し、実施例5から調製したアリル含有樹脂E120gをケトル内に投入し、得られた混合物を撹拌し、10トルの圧力下で194℃に加熱して、4.5時間反応させた後、106gのアリル含有樹脂Fを得た。アリル含有樹脂Fは、式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位および末端ヒドロキシル基を有し、R1はHであり、R2はアリルであり、R3は-C15H27であった。
【0088】
アリル含有樹脂FのFT-IRスペクトルおよび1H-NMRスペクトルを上記方法に従って測定し、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)および信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)を計算し、それらの結果を表1に記録した。
【0089】
[比較例1]
【0090】
温度制御装置、撹拌ブレードおよび加熱装置を含む、4ネックのつや消しポートを有する2リットルのガラス製反応ケトルを用意した。115gのビスフェノールA(BPA;台湾のChangchun Artificial Resin Factory Co.,Ltd.から購入)および200gの酢酸アリルをケトルに添加した。その後、得られた混合物を撹拌し、82℃に加熱して、0.048gの酢酸パラジウム(II)((Pd)OAc2)および0.3gのトリフェニルホスフィン(TPP)を加えた。次に、165mlの50%炭酸カリウム溶液をガラス製スポイトで加え、4時間連続反応させて、150gの比較用アリル含有樹脂Gを得た。比較用アリル含有樹脂Gは、式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位および末端ヒドロキシル基を有し、R1がアリルであり、R2がHであり、R3がHであった。
【0091】
比較用アリル含有樹脂GのFT-IRスペクトルおよび1H-NMRスペクトルを上記方法に従って測定し、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)および信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)を計算し、それらの結果を表1に記録した。
【0092】
[比較例2]
【0093】
1リットルのガラス製反応ケトルを用意し、114gのジアリルエーテルビスフェノールA(Homide 126A;オーストラリアのHos-Technik Companyから購入)をケトルに投入し、そこに流速65ml/minの窒素を導入した。得られた混合物を撹拌し、195℃に加熱して12時間反応させ、107gの比較用アリル含有樹脂Hを得た。比較用アリル含有樹脂Hは、式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位および末端ヒドロキシル基を有し、R1はHであり、R2はアリルであり、R3はHであった。
【0094】
比較用アリル含有樹脂HのFT-IRスペクトルおよび1H-NMRスペクトルを上記方法に従って測定し、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)および信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)を計算し、それらの結果を表1に記録した。
【0095】
[比較例3]
【0096】
3リットルの高圧反応ケトルを用意し、120gのOCN88(台湾のChangchun Artificial Resin Factory Co.,Ltd.から購入)、1350gのエタノール、350gの塩化アリルおよび140gの炭酸カリウムをケトルに添加した。得られた混合物を撹拌し、100℃に加熱して12時間反応させ、172gの比較用アリル含有樹脂Iを得た。比較用アリル含有樹脂Iは、式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位および末端ヒドロキシル基を有し、R1がアリルであり、R2がHであり、R3がHであった。
【0097】
比較用アリル含有樹脂IのFT-IR周波数および1H-NMR周波数を上記方法に従って測定し、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)および信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)を計算し、それらの結果を表1に記録した。
【0098】
[比較例4]
【0099】
1リットルのガラス製反応ケトルを用意し、比較例3から調製した比較用アリル含有樹脂I134gをケトル内に投入し、そこに流速100ml/minの窒素を導入した。得られた混合物を撹拌し、200℃に加熱して5時間連続反応させた後、126gの比較用アリル含有樹脂Jを得た。比較用アリル含有樹脂Jは、式(I)で表される第1の構造単位を含む繰り返し単位および末端ヒドロキシル基を有し、R1はHであり、R2はアリルであり、R3はHであった。
【0100】
比較用アリル含有樹脂JのFT-IRスペクトルおよび1H-NMRスペクトルを上記方法に従って測定し、信号強度bに対する信号強度aの比(a/b)および信号強度dに対する信号強度cの比(c/d)を計算し、それらの結果を表1に記録した。
【0101】
【0102】
表1に示すように、本発明のアリル含有樹脂A~Fは、いずれも0<a/b≦1.20かつ0<c/d≦1.20という特徴を満たす。対照的に、比較例の比較用アリル含有樹脂G~Jは、0<a/b≦1.20かつ0<c/d≦1.20という特徴を満たさない。
【0103】
6.3.変性ビスマレイミド樹脂の耐熱性分析
【0104】
耐熱性分析は、実施例1~2および比較例1~2のアリル含有樹脂でそれぞれ変性されたビスマレイミド樹脂(BMI-70;KI Chemistryから購入)について行った。まず、アリル含有樹脂およびビスマレイミド樹脂を表2に示す割合で混合して50℃に維持し、毎分10℃のレートで160℃に昇温して1時間維持した。次いで、毎分10℃のレートで180℃に昇温して3時間維持した後、毎分10℃のレートで300℃に昇温して5時間維持した。最後に、得られた生成物を毎分10℃のレートで50℃に冷却し、これにより、アリル含有樹脂で変性されたビスマレイミド樹脂の熱架橋硬化物を得た。
【0105】
硬化物のガラス転移温度Tgを、上記の測定方法に従って測定し、その結果を下記の表2に記録した。
【0106】
【0107】
表2に示すように、本発明のアリル含有樹脂で変性されたビスマレイミド樹脂は、依然として優れた耐熱性(高Tg)を有する。
【0108】
6.4.変性ビスマレイミド樹脂の誘電特性分析
【0109】
誘電特性分析は、実施例1、比較例1および3のアリル含有樹脂でそれぞれ変性されたビスマレイミド樹脂(BMI-70;KI Chemistryから購入)について行った。まず、アリル含有樹脂およびビスマレイミド樹脂を下記表3に示す割合で混合し、160℃で1時間反応させて、変性ビスマレイミドプレポリマーを得た。得られた変性ビスマレイミドプレポリマーとポリイミド接着剤(PIAD-200;Arakawa Chemical Co.,Ltd.から購入)を重量比7:3で混合して樹脂混合物を得た。
【0110】
得られた樹脂混合物を液晶ポリマーフィルム(モデル:CTZ-25;クラレ社より購入)上に塗布し、ホットプレス(モデル:VLP-60;VAQUA Machinery Co.,Ltd.より購入)を用いて200℃で1時間真空ホットプレスを行った。その後、得られた硬化樹脂を液晶ポリマーフィルムから剥離し、硬化樹脂の誘電特性(DkおよびDf)を上記測定方法に従って測定し、その結果を下記表3に記録した。
【0111】
【0112】
表3に示すように、アリル含有樹脂によって変性されたビスマレイミド樹脂は、より良好な誘電特性、特により低いDfを有することができ、高周波用途に特に適している。
【0113】
6.4.変性ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の特性分析
【0114】
実施例1~6および比較例1~4のアリル含有樹脂でそれぞれ変性したポリフェニレンエーテル樹脂組成物について、誘電特性分析を行った。まず、アリル含有樹脂およびビスマレイミド樹脂を下記表4に示す割合で混合し、250℃で3時間反応させ、変性ビスマレイミドプレポリマーを得た。
【0115】
得られた変性ビスマレイミドプレポリマーを、固形分70重量%のメチルエチルケトン溶液に調製し、ポリフェニレンエーテル樹脂(SA9000;Saudi Basic Industriesから購入)および重合開始剤(過酸化ジクミル(Dicumyl peroxide))を、表4に示す割合に従って添加して、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得た。
【0116】
得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いて、金属被覆積層体を作製した。まず、ガラス繊維布(モデル:2116;台湾のGlass Industry Co., Ltd.から購入)にポリフェニレンエーテル樹脂組成物をローラーで塗布し、塗布されたガラス繊維布を90℃の乾燥機で30分間加熱乾燥して、Bステージのプリプレグを作製した。その後、4枚のプリプレグを積層し、両面の最外層にPLS電解銅箔(台湾のChangchun Petrochemical Co., Ltd.より購入)を積層した後、得られた生成物を高温ホットプレス硬化用ホットプレスに入れて金属被覆積層体を作製した。ホットプレス条件は、2.5℃/minの加熱レートで180℃に加熱し、その温度で総圧20~30kg/cm2で60分間ホットプレスした。
【0117】
得られた金属被覆積層体の耐熱性および誘電特性(DkおよびDf)を上記の測定方法に従って測定し、その結果を下記表4に記録した。
【0118】
【0119】
表4に示すように、本発明のアリル含有樹脂で変性されたポリフェニレンエーテル樹脂の硬化物は、良好な耐熱性を有するばかりでなく、優れた誘電特性、特に低いDf(≦0.0035)を有するので、高周波プリント回路基板用の誘電材料として特に好適である。
【0120】
上記の実施例は、本発明の原理および有効性を例示し、本発明の特徴を示すために使用されるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、本発明の原理および精神から逸脱することなく、修正、変形および実質的な均等物を得ることができる。したがって、そのような修正、変形および実質的な均等物はすべて、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内である。