(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】二酸化炭素の浸出に基づくカルシウムマグネシウムイオン溶液による炭酸カルシウムマグネシウムの製造システム
(51)【国際特許分類】
C22B 26/20 20060101AFI20220705BHJP
C01F 11/18 20060101ALI20220705BHJP
C22B 3/20 20060101ALI20220705BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C22B26/20
C01F11/18 B
C22B3/20
C22B3/44 101Z
(21)【出願番号】P 2020148506
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】202010507902.X
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520340167
【氏名又は名称】▲ろん▼▲鉱▼▲環▼保科技(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】Greenore Cleantech (Shanghai) Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】Room 6A7, Building No.15, 481 Guiping Road, Xuhui District, Shanghai 200233, China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】周小舟
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼黄▲経▼
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-144271(JP,A)
【文献】特開2005-068535(JP,A)
【文献】特開2005-015272(JP,A)
【文献】特開2020-033263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ試薬と、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの浸出清澄液が一定の割合で連続的に添加される沈殿反応缶であって、焼成によって循環的に収集されたガスで二酸化炭素を補給する二酸化炭素導入通路がさらに配置されている沈殿反応缶と、
前記沈殿反応缶で反応したスラリーを、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有する生成物と、次のサイクルの原料スラリーを調製するための循環用水とに分離する固液分離装置と、
前記炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有する生成物の一部を焼成分解してアルカリ試薬を製造する熱分解装置であって、前記アルカリ試薬が前記沈殿反応缶に循環的に送られて次のサイクルの反応に関与する熱分解装置と、
を備え、
前記固液分離装置で得られた炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有する生成物は、その一部が、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有するスラリーの製造段階又は炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有する粉末の乾燥形成段階に進み、
前記アルカリ試薬は、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムを含むことを特徴とする、二酸化炭素の浸出に基づくカルシウムイオン溶液及びマグネシウムイオン溶液による炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムの製造システム。
【請求項2】
前記カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの浸出清澄液における不純物を除去する前処理装置をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アルカリ試薬及び前記カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの浸出清澄液は、単位時間で、それぞれのカルシウムイオンとマグネシウムイオンのモル比が1未満となるように前記沈殿反応缶に連続的に添加される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの浸出清澄液は、二酸化炭素に基づく湿式製錬法により得られるものであり、前記カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの浸出清澄液は、中性又は弱酸性であり、溶解した二酸化炭素ガスを含有する、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記固液分離装置で得られた炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムを含有する生成物は
、他の一部が、破砕されてから、熱分解装置により焼成分解されることでアルカリ試薬が製造される、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記熱分解装置による分解で生成された二酸化炭素は、直ちに二酸化炭素導入通路を介して前記沈殿反応缶まで反応原料として循環し、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムの沈殿が再度生成される、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、炭酸カルシウムマグネシウムの製造技術、二酸化炭素回収・有効利用・貯留(Carbon Capture、Utilization and Sequestration)、固形廃棄物の資源化利用の分野に属し、具体的には、二酸化炭素の浸出に基づくカルシウムマグネシウムイオン溶液による炭酸カルシウムマグネシウムの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼工場、発電所又はアルミニウム電解製錬分野では、操業中に生成した産業廃棄物又は多くの鉱石原料や尾鉱原料が、合理的に処理、使用又は利用されないと、直接排出することによって土壌、水及び大気に関する汚染及び他の派生的な環境問題を引き起こす。
製鋼業では、銑鉄における硫黄及びリンの含有量が多い場合、溶錬中に大量の生石灰(石灰石又はドロマイト)をさらに添加しなければならない。如何に産業廃棄物から炭酸カルシウムマグネシウムを回収し抽出し、又は二酸化炭素の鉱化により炭酸カルシウムマグネシウムを製造し、廃棄物を十分かつ合理的に利用し、廃棄物を宝物に変えることができるかは、重大な技術革新に直面している。
【0003】
また、軽質炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムは、製紙、塗料、ゴム製造においてフィラーとして広く使用されている。特に、製紙産業では、炭酸カルシウム(重質及び軽質を含む)の使用により、パルプの単位消費量を低減させ、紙製品の製造コストを低減させ、紙製品の品質(例えば、白色度、明度、純度など)を向上させることができる。
中国における外国ゴミの輸入禁止令、プラスチック製レジ袋制限令などの法規制の導入につれて、紙製品の需要及び消費量が増加する一方で、パルプの価格が上昇している。
炭酸カルシウムの価格がパルプの1/5~1/3であるため、高品質炭酸カルシウムフィラーの使用を増やす傾向にあり、また、その利点も目立っている。
【0004】
Mineral Technologyなどの米国企業、Imerysなどのフランス企業、Omyaなどのスイス企業では、いまだに従来のプロセスにより軽質及び重質炭酸カルシウムを製造している。Lacknerらは、炭酸カルシウムの分解/炭化を二酸化炭素の回収(CO2 Capture)に循環的に使用したが、この方法では、MO(金属酸化物)が一定のサイクル後に表面の細孔が閉じているため不活性化され、再炭化の能力及び効率が大きく低下するという問題がある。
【0005】
従来の工業用炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)の製造方法は、以下のとおりである。
石灰石(主成分CaCO3)→CaO+CO2(熱分解温度800~900℃)、
CaO+H2O→Ca(OH)2、
Ca(OH)2+CO2→CaCO3。
従来の強酸湿式法により鉱石/産業廃棄物におけるカルシウムマグネシウムイオンを浸出して炭酸カルシウムマグネシウムを製造する方法は、以下のとおりである。
カルシウムマグネシウム類鉱石/産業廃棄物+HCl/HNO3→Ca/MgCl2又はCa/Mg(NO3)2、
Ca/MgCl2+2NaOH→Ca/Mg(OH)2+2NaCl、
Ca/Mg(OH)2+CO2→Ca/MgCO3+H2O、
又は、
Ca/MgCl2+Na2CO3→Ca/MgCO3+2NaCl。
従来では、工業用炭酸カルシウムを製造するための原料は、石灰石鉱の採掘、輸送、破砕、ボールミル粉砕に依存している。石灰石鉱の過度な採掘により、植生破壊、環境汚染などが発生する。また、高純度の石灰石鉱は、ますます少なくなるため、対応する資源を見つけるためにより遠いところに行かなければならず、末端消費者に至るまでの輸送コストが増加した。
また、工業用炭酸カルシウムの製造プロセスでは不純物の除去も必要であり、その結果、最終製品の純度にも対応する影響を与え、全体的なコストをさらに増やした。
鉱石採掘への依存をなくし、環境を保護し、また、産業廃棄物から炭酸カルシウムマグネシウムを経済的に回収し抽出し、又は二酸化炭素の鉱化により炭酸カルシウムマグネシウムを製造することは、難しい課題である。
【0006】
ボールミル粉砕(石灰石鉱石の硬さ及び結晶構造に起因して、石灰石鉱によるボールミルの磨耗が多い)及び焼成熱分解は、いずれも高エネルギー消費プロセスである。
石灰石鉱は、粒子径が小さいほど、焼成分解に有利である(効率及びエネルギー消費の点で有利である)が、ボールミル粉砕自体は、より多くのエネルギーを消費する可能性がある。
ボールミル粉砕と焼成との間の消費エネルギーのバランスを見つけることは、依然として、大きな挑戦である。
【0007】
カルシウムマグネシウム類鉱石/産業廃棄物から炭酸カルシウムマグネシウムを抽出して製造する従来の強酸湿式製錬法では、溶解のために大量の酸を使用するだけでなく、最終生成物を生成するために大量のアルカリ(主に、水酸化ナトリウム)も必要である。
酸及びアルカリの使用量を削減し、コストを低下させ、廃酸及び廃アルカリによる汚染を低減させることは、当該プロセスのキーポイントである。
【発明の概要】
【0008】
上記の従来技術の欠陥及び不足に対して、本願が解決しようとする技術課題は、二酸化炭素の浸出に基づくカルシウムマグネシウムイオン溶液による炭酸カルシウムマグネシウムの製造システムを提供することである。
上記の技術課題を解決するために、本願は、以下の技術方案により実現される。
本願は、
アルカリ試薬及びカルシウムマグネシウムイオンの浸出清澄液が一定の割合で連続的に添加される沈殿反応缶であって、必要に応じて焼成によって循環的に収集されたガスで二酸化炭素を補給することが可能な二酸化炭素導入通路がさらに配置されている沈殿反応缶と、
前記沈殿反応缶で反応したスラリーを、炭酸カルシウムマグネシウム生成物と、次のサイクルの原料スラリーを調製するための循環用水とに分離する固液分離装置と、
前記炭酸カルシウムマグネシウム生成物の一部を焼成分解してアルカリ試薬を製造する熱分解装置であって、前記アルカリ試薬が前記沈殿反応缶に循環的に送られて次のサイクルの反応に関与する熱分解装置と、を備える、二酸化炭素の浸出に基づくカルシウムマグネシウムイオン溶液による炭酸カルシウムマグネシウムの製造システムを提案する。
さらに、前記システムにおいて、前記カルシウムマグネシウムイオンの浸出清澄液における不純物を除去する前処理装置をさらに備える。
【0009】
さらに、前記システムにおいて、前記アルカリ試薬及び前記カルシウムマグネシウムイオンの浸出清澄液は、単位時間で、それぞれのカルシウムイオンとマグネシウムイオンのモル比が1未満となるように前記沈殿反応缶に連続的に添加される。
さらに、前記システムにおいて、前記カルシウムマグネシウムイオンの浸出清澄液は、二酸化炭素に基づく湿式製錬法により得られるものであり、前記カルシウムマグネシウムイオンの浸出清澄液は、中性又は弱酸性であり、溶解した二酸化炭素ガスを含有する。
さらに、前記システムにおいて、前記固液分離装置で得られた炭酸カルシウムマグネシウム生成物は、その一部が、炭酸カルシウムマグネシウムスラリーの製造段階又は炭酸カルシウムマグネシウム粉末の乾燥形成段階に進み、他の一部が、破砕されてから、熱分解装置により焼成分解されることでアルカリ試薬が製造される。
さらに、前記システムにおいて、前記アルカリ試薬は、カルシウムマグネシウム酸化物を含む。
【0010】
さらに、前記システムにおいて、前記熱分解装置のうちの一種は、流動床を含むように設計されても良く、前記流動床で分散した炭酸カルシウムの99%超の粒子径が300μm未満であり、焼成分解された粒子径の大部分が100μm未満である。
さらに、前記システムにおいて、前記炭酸カルシウムマグネシウムの前記流動床での焼成分解プロセスにおいて、U3>Ug>U1>U2の場合に、前記炭酸カルシウムマグネシウムが分解し始めた後、流動床の床高は、明らかに上昇し、分解が完成した後に安定になり、この際にUgを上げることにより焼成後に酸化カルシウムマグネシウム粒子を吹き飛ばして収集する。
【0011】
ただし、U1が炭酸カルシウムマグネシウム粒子の平均最小流動化速度であり、U2が酸化カルシウムマグネシウム粒子の平均最小流動化速度であり、U3が酸化カルシウムマグネシウム粒子の吹き飛ばし速度であり、Ugが流動化キャリアガスの速度である。
さらに、前記システムにおいて、前記炭酸カルシウムマグネシウムの前記流動床での焼成分解プロセスにおいて、Ug>U3>U1>U2の場合に、酸化カルシウムマグネシウムを吹き飛ばして収集する。
さらに、前記システムにおいて、前記炭酸カルシウムマグネシウムの前記流動床での焼成分解プロセスにおいて、Ug>U2>U1の場合に、Ug<U3となるようにUgを制御する必要があり、また、炭酸カルシウムマグネシウムが分解し始めた後、流動床の床高は、明らかに低下し、分解が完成した後に安定になり、その後、Ug>U3となるようにUgを上げることにより焼成後に酸化カルシウムマグネシウム粒子を吹き飛ばして収集する。
【0012】
さらに、前記システムにおいて、前記流動床のキャリアガスは、熱空気と、主に焼成後の吹き飛ばし及び収集に用いられる循環二酸化炭素とを含む。
さらに、前記システムにおいて、前記熱分解装置の焼成熱分解温度が800~900℃である。
さらに、前記システムにおいて、前記熱分解装置による分解で生成された二酸化炭素は、直ちに二酸化炭素導入通路を介して前記沈殿反応缶まで反応原料として循環し、炭酸カルシウムマグネシウムの沈殿が再度生成される。
従来技術に比べて、本願は、以下の技術的効果を有する。
本願では、産業廃棄物から炭酸カルシウムマグネシウムを回収し抽出し、又は二酸化炭素の鉱化により炭酸カルシウムマグネシウムを製造することができ、廃棄物を十分かつ合理的に利用し、廃棄物を宝物に変えることができ、環境に一層優しいとともに、製造加工コストを低下させた。
【0013】
従来技術では、大量の酸及びアルカリを使用する必要があるので、大量の廃酸、廃アルカリ、廃水を生成するが、それに対して、本願では、炭酸カルシウムマグネシウムの製造プロセスにおいて二酸化炭素をベースとするため、廃酸及び廃アルカリを生成せず、上記の従来技術の技術的欠陥を克服した。
従来の炭酸カルシウムは、焼成熱分解の段階で大量のエネルギーを消費する必要があり、また、焼成効率及びエネルギー消費は、原料の粒子径(ボールミル粉砕の度合い)により制限されるが、それに対して、本願では、ボールミル粉砕なしで、固液分離及び風乾後の炭酸カルシウムマグネシウムの簡単な物理的破砕だけで済む。また、従来技術では、生成物の品質は、原料(石灰石)により制限されるが、それに対して、本願では、前処理装置により原料における不純物粒子及び溶出した不純物イオンが分離され、本願により製造された炭酸カルシウムマグネシウム生成物は、白色度が96に達し、純度が99%以上に達することができる。
さらに、石灰石又はドロマイトの代わりに、不純物が除去や分離されていない清澄液により、低コストで酸化カルシウムマグネシウムを製造することもできる。また、本願に係る生成物は、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムとの複合物(炭酸カルシウム90~92wt%、炭酸マグネシウム8~10wt%)であり、各指標は、いずれも同種類の炭酸カルシウムマグネシウム生成物の指標を満たすことができる。
本願では、流動床の床高(Bed Height)及び焼成反応前後における化学成分の異なる粒子に基づく流体力学的特性の差異を実現し、キャリアガスの流速を正確に調整することにより炭酸カルシウムマグネシウムの効率的な焼成及びその後の分離が可能となる。
本願によれば、二酸化炭素の貯留及びリサイクルが可能となり、ニアゼロエミッションを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下の図面に基づく非限定的な実施例の詳細な説明を参照すれば、本願の他の特徴、目的及び利点がより明らかになるであろう。
【
図1】本願に係る二酸化炭素の浸出に基づくカルシウムマグネシウムイオン溶液による炭酸カルシウムマグネシウムの製造システムのフローチャートである。
【
図2】本願における流動床装置の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願の目的、特徴及び効果を十分に理解するために、図面を参照しながら、本願の構想、具体的な構造及び技術的効果をさらに説明する。
図1に示すように、本願の1つの実施例において、二酸化炭素の浸出に基づくカルシウムマグネシウムイオン溶液による炭酸カルシウムマグネシウムの製造システムは、
アルカリ試薬M及びカルシウムマグネシウムイオンの浸出清澄液が一定の割合で連続的に添加される沈殿反応缶10であって、焼成によって循環的に収集されたガスで二酸化炭素を補給する二酸化炭素導入通路がさらに配置されている沈殿反応缶10と、
前記沈殿反応缶10で反応したスラリーを、炭酸カルシウムマグネシウム生成物A1と、次のサイクルの原料スラリーを調製するための循環用水Bとに分離する固液分離装置20と、
前記炭酸カルシウムマグネシウム生成物A2の一部を焼成分解してアルカリ試薬Mを製造する熱分解装置であって、前記アルカリ試薬Mが前記沈殿反応缶10に循環的に送られて次のサイクルの反応に関与する熱分解装置30と、を備える。
本実施例において、前記カルシウムマグネシウムイオンの浸出清澄液は、二酸化炭素に基づく湿式製錬法により得られるものであり、前記カルシウムマグネシウムイオンの浸出清澄液は、中性又は弱酸性(pH<7)であり、溶解した二酸化炭素ガスを含有する。
さらに、本実施例では、前記カルシウムマグネシウムイオンの浸出清澄液における不純物を除去する、高純度の炭酸カルシウムマグネシウムの製造に専用の前処理装置(図示せず)をさらに備える。
もちろん、低純度製品の製造に使用される場合、前記前処理装置を設ける必要がない。
本実施例において、前記カルシウムマグネシウムイオンの浸出清澄液は、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンのほか、鉄、ケイ素、アルミニウムなどの不純物イオンをさらに含み、前記不純物イオンを沈殿させるように除去するために、物理及び/又は化学的手段により当該清澄液のpHを変更することができる。
具体的には、前記不純物イオンを沈殿させるように除去するために、アルカリ試薬の連続的添加、溶液質量1%以下の凝固剤及び/又は凝集剤の連続的添加、圧縮空気/蒸気の連続的導入、加熱によって当該清澄液のpHを変更することができる。
前記アルカリ試薬M及び前記カルシウムマグネシウムイオンの浸出清澄液は、単位時間で、それぞれのカルシウムイオンとマグネシウムイオンのモル比(mol/mol)が1未満となるように前記沈殿反応缶10に連続的に添加される。下記の熱分解装置30で焼成分解された二酸化炭素は、直ちに補給として沈殿反応缶10に導入され、炭酸カルシウムマグネシウムの沈殿が再度生成される。
【0016】
本実施例において、前記固液分離装置20で得られた前記炭酸カルシウムマグネシウム生成物A1は、大部分が、炭酸カルシウムマグネシウムスラリーの製造段階又は炭酸カルシウムマグネシウム粉末の乾燥形成段階に進み、小部分の炭酸カルシウムマグネシウム生成物A2が、破砕されてから熱分解装置30により焼成分解されることでアルカリ試薬Mが製造される。前記焼成分解で得られた前記アルカリ試薬Mは、反応試薬として沈殿反応缶10に循環的に入って反応に関与することができる。
さらに、前記熱分解装置30の焼成熱分解温度が800~900℃である。
前記アルカリ試薬Mは、カルシウムマグネシウム酸化物を含む。
図2に示すように、前記熱分解装置30は、流動床装置を含み、前記流動床で分散した炭酸カルシウムの99%超の粒子径が300μm未満であり、焼成分解された粒子径の大部分が100μm未満である。
【0017】
前記流動床装置は、流動床31と、前記流動床31に連通して設けられた粒子収集ユニット32とを備え、前記粒子収集ユニット32の頂部に二酸化炭素排出通路が配置されており、その底部に粒子排出通路が配置されている。
本実施例において、前記流動床31内には、循環二酸化炭素輸送通路及び熱空気輸送通路がさらに配置されており、循環二酸化炭素輸送通路を介して輸送された二酸化炭素及び熱空気輸送通路を介して輸送された熱空気が混合された後に、混合通路を介して、又は一方のガス通路を閉じたまま他方の通路における単一のガスを介して前記流動床31に輸送されて反応及び/又は流動化を行うことができる。
当該混合通路と流動床31との間には、第1の圧力計Y1及びガス分散器34がさらに配置されている。前記流動床31には、第2の圧力計Y2及び床高測定計33がさらに配置されている。
前記循環二酸化炭素輸送通路には、第1の流量計L1が順に設けられており、第1の流量計L1から分岐して2つの分岐管路が形成されており、一方の管路には、前記混合通路に連通して設けられた第3の流量計L3が設けられており、他方の管路は、スロットルバルブJに接続されてから乾燥装置35に導入されて乾燥された後、乾燥装置35の第1の排出口を介して前記第3の流量計L3に連通して設けられる。
前記熱空気輸送通路には、第2の流量計L2が順に設けられており、熱空気は、第2の流量計L2を介して乾燥装置35に導入され、乾燥装置35の第2の排出口を介して前記第3の流量計L3に連通して設けられる。
炭酸カルシウムマグネシウムの密度は、2.8~2.9×103kg/m3であり、酸化カルシウムマグネシウムの密度は、3.3~3.4×103kg/m3である。
前記炭酸カルシウムマグネシウム生成物A2の前記流動床での焼成分解プロセスにおいて、炭酸カルシウムマグネシウム粒子の平均最小流動化速度をU1、酸化カルシウムマグネシウム粒子の平均最小流動化速度をU2、酸化カルシウムマグネシウム粒子の吹き飛ばし速度をU3、流動化キャリアガスの速度をUgとする。
U3>Ug>U1>U2の場合に、前記炭酸カルシウムマグネシウムが分解し始めた後、流動床の床高は、明らかに上昇し、分解が完成した後に安定になり、この際にUgを上げることにより焼成後に酸化カルシウムマグネシウム粒子を吹き飛ばして収集する。
Ug>U3>U1>U2の場合に、酸化カルシウムマグネシウムを吹き飛ばして収集する。
Ug>U2>U1の場合に、Ug<U3となるようにUgを制御する必要があり、また、炭酸カルシウムマグネシウムが分解し始めた後、流動床の床高は、明らかに低下し、分解が完成した後に安定になり、その後、Ug>U3となるようにUgを上げることにより焼成後に酸化カルシウムマグネシウム粒子を吹き飛ばして収集する。
前記流動床のキャリアガスは、熱空気及び二酸化炭素を含み、また、流動床の頂端における炭酸カルシウムマグネシウムが分解された二酸化炭素ガスが収集される。
本実施例において、前記熱分解装置30による分解で生成された二酸化炭素は、直ちに二酸化炭素導入通路を介して前記沈殿反応缶10まで反応原料の補給として循環し、炭酸カルシウムマグネシウムの沈殿が再度生成される。
【0018】
本願では、産業廃棄物から炭酸カルシウムマグネシウムを回収し抽出し、又は二酸化炭素の鉱化により炭酸カルシウムマグネシウムを製造することができ、廃棄物を十分かつ合理的に利用し、廃棄物を宝物に変えることができ、環境に一層優しいとともに、製造加工コストを低下させた。従来技術では、大量の酸及びアルカリを使用する必要があるので、大量の廃酸、廃アルカリ、廃水を生成するが、それに対して、本願では、炭酸カルシウムマグネシウムの製造プロセスにおいて二酸化炭素をベースとするため、廃酸及び廃アルカリを生成せず、上記の従来技術の技術的欠陥を克服した。
従来の炭酸カルシウムは、焼成熱分解の段階で大量のエネルギーを消費する必要があり、また、焼成効率及びエネルギー消費は、原料の粒子径(ボールミル粉砕の度合い)により制限されるが、それに対して、本願では、ボールミル粉砕なしで、固液分離及び風乾後の炭酸カルシウムマグネシウムの簡単な物理的破砕だけで済む。
また、従来技術では、生成物の品質は、原料(石灰石)により制限されるが、それに対して、本願では、前処理装置により原料における不純物粒子及び溶出した不純物イオンが分離され、本願により製造された炭酸カルシウムマグネシウム生成物は、白色度が96に達し、純度が99%以上に達することができる。
さらに、石灰石又はドロマイトの代わりに、不純物が除去や分離されていない清澄液により、低コストで酸化カルシウムマグネシウムを製造することもできる。
また、本願に係る生成物は、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムとの複合物(炭酸カルシウム90~92wt%、炭酸マグネシウム8~10wt%)であり、各指標は、いずれも同種類の炭酸カルシウムマグネシウム、炭酸カルシウム生成物の指標を満たすことができる。本願では、流動床の床高(Bed Height)及び焼成反応前後における化学成分の異なる粒子に基づく流体力学的特性の差異を実現し、キャリアガスの流速を正確に調整することにより炭酸カルシウムマグネシウムの効率的な焼成及びその後の分離が可能となる。本願によれば、二酸化炭素の貯留及びリサイクルが可能となり、ニアゼロエミッションを実現することができる。以上をまとめると、本願は、市場での応用の見込みが良好である。
上記の実施例は、本願の技術方案を説明するためのものに過ぎず、限定するものではない。好ましい実施例を参照しながら、本願を詳細に説明したが、当業者は、本願の技術方案に対して修正及び等価の置換を行うことができ、本願の技術方案の精神及び範囲から逸脱しないものが全て本願の特許請求の範囲に含まれるべきであると理解すべきである。