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特許7100102リチウム複合酸化物およびこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】リチウム複合酸化物およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20220705BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220705BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220705BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220705BHJP
   C01B 35/12 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01B35/12 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020187922
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2021084856
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0156946
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0051352
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100217825
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 博喜
(72)【発明者】
【氏名】チェ ムン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ユ ヒュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー チャン ウー
(72)【発明者】
【氏名】チュン ユ ギョン
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/123951(WO,A1)
【文献】特開平06-215800(JP,A)
【文献】国際公開第2017/082083(WO,A1)
【文献】特開2013-056801(JP,A)
【文献】特開2008-034369(JP,A)
【文献】特開2018-008866(JP,A)
【文献】特表2018-534735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 53/00-53/10
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/36
C01B 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムの吸蔵および放出が可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含むリチウム複合酸化物であって、
前記一次粒子は、下記の化学式1
Li Ni 1-(x+y+z+z’) Co M1 M2 Nb z’ (化学式1)
(化学式1中、M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、V、Fe、Zn、Si、Y、Ga、Sn、Mo、Ge、Nd、GdおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦z’≦0.20であり、
x+y+z+z’≦40である。)で表され、
前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面から選ばれる領域のうち少なくとも一部にニオビウム(Nb)含有酸化物が存在し、
前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)と前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)は、下記の関係式1を満たす、リチウム複合酸化物。
d1>d2 (関係式1)
【請求項2】
前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)は、0.40nm以上である、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
【請求項3】
前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)は、0.30nm以下である、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
【請求項4】
前記一次粒子内にニオビウム(Nb)がドープされた、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
【請求項5】
前記一次粒子内ニオビウム(Nb)は、前記一次粒子の表面部から前記一次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示す、請求項4に記載のリチウム複合酸化物。
【請求項6】
前記一次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーする第1コーティング層を含み、かつ
前記第1コーティング層は、ニオビウム(Nb)含有酸化物を含む、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
【請求項7】
前記第1コーティング層は、下記の化学式2で表される酸化物をさらに含む、請求項7に記載のリチウム複合酸化物。
LiM3 (化学式2)
(化学式2中、M3は、Ni、Mn、Co、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Nb、Fe、Cu、Mo、Cr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、Eu、Sm、Ce、V、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である。)
【請求項8】
前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーする第2コーティング層を含み、かつ
前記第2コーティング層は、下記の化学式3で表される酸化物を含む、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
LiM4 (化学式3)
(化学式3中、M4は、Ni、Mn、Co、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Nb、Fe、Cu、Mo、Cr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、Eu、Sm、Ce、V、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である)
【請求項9】
X線回折のリートベルト(Rietveld)解析から得られるc軸の長さが14.177Å超過14.218Å未満である、請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載のリチウム複合酸化物を含む正極が使用されたリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム複合酸化物内界面副反応を抑制し、結晶構造の安定性およびイオン伝導性を向上させて、正極材としての安定性および電気的特性が向上したリチウム複合酸化物およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、正極と負極に電気化学反応が可能な物質を使用することによって、電力を貯蔵するものである。このような電池のうち代表的な例としては、正極および負極でリチウムイオンがインターカレーション/デインターカレーションされるときの化学電位(chemical potential)の差異によって電気エネルギーを貯蔵するリチウム二次電池がある。
【0003】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的なインターカレーション/デインターカレーションが可能な物質を正極と負極活物質として使用し、前記正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させて製造する。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合酸化物が使用されており、その例として、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiMnO等の複合酸化物が研究されている。
【0005】
前記正極活物質のうちLiCoOは、寿命特性および充放電効率に優れていて、最も多く使用されているが、原料として使用されるコバルトの資源的限界によって高価なので、価格競争力に限界があるという短所を有している。
【0006】
LiMnO、LiMn等のリチウムマンガン酸化物は、熱的安全性に優れ、価格が安いという長所があるが、容量が小さくて、高温特性が悪いという問題点がある。また、LiNiO系正極活物質は、高い放電容量の電池特性を示しているが、Liと遷移金属との間のカチオンミキシング(cation mixing)問題に起因して合成が難しく、これにより、レート(rate)特性に大きな問題点がある。
【0007】
また、このようなカチオンミキシングの深化程度に応じて多量のLi副産物が発生することとなり、これらのLi副産物の大部分は、LiOHおよびLiCOの化合物からなるので、正極ペーストの製造時にゲル(gel)化する問題点と電極の製造後に充放電の進行によるガス発生の原因となる。残留のLiCOは、セルのスウェリング現象を増加させて、サイクルを減少させると共に、バッテリーが膨らむ原因となる。
【0008】
このような短所を補完するために、二次電池の正極活物質としてNi含量が60%以上であるNi-rich正極活物質の需要が増加し始めた。特に、このようなNi-rich正極活物質は、Niの一部がCo、Mnおよび/またはAlで置換された複合酸化物として提案されている。しかしながら、このようなNi-rich正極活物質は、高容量特性を示す反面、正極活物質のうちNi含量が増加するに従ってLi/Niカチオンミキシングによる構造的不安定性がもたらされる問題点がある。このような正極活物質の構造的不安定性により高温だけでなく常温でもリチウム二次電池が急激に劣化し得る。
【0009】
最近、電気自動車のフル充電後に駆動距離の向上のために電気自動車に使用されるバッテリーのさらに高い容量特性および出力特性等が要求されるに従って、正極活物質として使用されるリチウム複合酸化物の組成変更、粒子形状およびサイズ制御、ドープ、または表面処理等の多様な方法が研究されている。ただし、まだトレード-オフ関係にある正極活物質の安定性と二次電池としての電気的特性を十分に満足できる水準まで達成していないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国特許公開第10-2015-0069334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
リチウム二次電池の市場では、電気自動車用リチウム二次電池の成長が市場の牽引役としての役割をしている中で、リチウム二次電池に使用される正極活物質の需要も持続的に変化している。
【0012】
例えば、従来には、安全性の確保等の観点からLFPを使用したリチウム二次電池が主に使用されてきたが、最近になってLFPに比べて重量当たりエネルギー容量が大きいニッケル系リチウム複合酸化物の使用が拡大する傾向にある。
【0013】
これにより、本発明の目的は、リチウム二次電池用正極活物質としての安定性と電気的特性を同時に向上させることが可能な正極活物質用リチウム複合酸化物を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、本願で定義されたリチウム複合酸化物を含む正極が使用されたリチウム二次電池を提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、以上で言及した目的(例えば、電気自動車用)に制限されず、言及されていない本発明の他の目的および長所は、下記の説明により理解され得、本発明の実施例によりさらに明らかに理解されるだろう。また、本発明の目的および長所は、特許請求範囲に示した手段およびその組合せにより実現され得ることを容易に知ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、リチウムの吸蔵および放出が可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含むリチウム複合酸化物であって、前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面から選ばれる領域のうち少なくとも一部にニオビウム(Nb)含有酸化物が存在するリチウム複合酸化物が提供される。
【0017】
ここで、前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)と前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)は、下記の関係式1を満たすことができる。
【0018】
d1>d2 (関係式1)
【0019】
この際、前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)は、0.40nm以上であり、前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)は、0.30nm以下でありうる。
【0020】
一実施例において、前記一次粒子内ニオビウム(Nb)がドープされ得、この場合、前記一次粒子内ニオビウム(Nb)は、前記一次粒子と固溶体の状態で存在し得る。また、前記一次粒子内ドープされたニオビウム(Nb)は、前記一次粒子の表面部から前記一次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。
【0021】
前記実施例において、前記一次粒子は、下記の化学式1で表され得る。
【0022】
LiNi1-(x+y+z+z’)CoM1M2Nbz’ (化学式1)
【0023】
ここで、M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、Cr、V、Fe、Zn、Si、Y、Ga、Sn、Mo、Ge、Nd、GdおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦z’≦0.20である。
【0024】
一実施例において、前記一次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーする第1コーティング層が存在し、かつ前記第1コーティング層は、ニオビウム(Nb)含有酸化物を含むことができる。
【0025】
この際、前記第1コーティング層は、下記の化学式2で表される酸化物をさらに含むことができる。
【0026】
LiM3 (化学式2)
【0027】
ここで、M3は、Ni、Mn、Co、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Nb、Fe、Cu、Mo、Cr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、Eu、Sm、Ce、V、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である。
【0028】
更なる実施例において、前記リチウム複合酸化物は、前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーする第2コーティング層を含むことができる。この際、前記第2コーティング層は、下記の化学式3で表される酸化物を含むことができる。
【0029】
LiM4 (化学式3)
【0030】
ここで、M4は、Ni、Mn、Co、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Nb、Fe、Cu、Mo、Cr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、Eu、Sm、Ce、V、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である。
【0031】
また、本発明の他の態様によれば、上述したリチウム複合酸化物を含む正極が使用されたリチウム二次電池が提供され得る。
【発明の効果】
【0032】
正極活物質としてリチウム複合酸化物に含まれた一次粒子間の界面および二次粒子の表面等のように電解液に露出する領域は、正極活物質と電解液の副反応が起こり得る領域である。もし、正極活物質と電解液の副反応が起こる場合、正極活物質に起因したガス発生によってリチウム二次電池の電気的特性が低下すると共に、安定性が急激に低下し得る。
【0033】
本発明によるリチウム複合酸化物は、一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面から選ばれる領域のうち少なくとも一部にニオビウム(Nb)含有酸化物が存在し、この際、前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)は、前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)より大きいように形成されることによって、前記リチウム複合酸化物の結晶構造を安定化させることが可能である。また、これを通じて、リチウム複合酸化物に含まれた一次粒子の間における副反応を抑制することが可能である。
【0034】
本発明によるリチウム複合酸化物をリチウム二次電池用正極活物質として使用することによって、正極活物質の安定性を向上させると同時に、電気的特性を高めることができる。
【0035】
上述した効果と共に、本発明の具体的な効果は、以下に発明を実施するための具体的な事項を説明しつつ、一緒に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施例によるリチウム複合酸化物の模式図である。
図2】実施例1によるリチウム複合酸化物を構成する一次粒子に対する透過電子顕微鏡(TEM)イメージおよび標識された領域に対する回折パターンを示すものである。
図3図2に示すhexagonal結晶構造およびcubic結晶構造に対応する領域内面間距離を測定した結果を示すものである。
図4図2に示すhexagonal結晶構造およびcubic結晶構造に対応する領域内面間距離を測定した結果を示すものである。
図5】実施例1によるリチウム複合酸化物に対するTEM/EDX Mapping結果を示すものである。
図6】実施例3によるリチウム複合酸化物に対するTEM/EDX Mapping結果を示すものである。
図7】実施例6によるリチウム複合酸化物に対するTEM/EDX Mapping結果を示すものである。
図8】比較例1によるリチウム複合酸化物に対するTEM/EDX Mapping結果を示すものである。
図9】実施例1によるリチウム複合酸化物に対するXRD分析結果を示すものである
図10】実施例1によるリチウム複合酸化物に対するXRD分析結果を示すものである
図11】比較例1によるリチウム複合酸化物に対するXRD分析結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明をさらに容易に理解するために、便宜上、特定の用語を本願に定義する。本願で別途定義しない限り、本発明に使用された科学用語および技術用語は、当該技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解される意味を有する。また、文脈上、特に指定しない限り、単数形態の用語は、それの複数形態も含むものであり、複数形態の用語は、それの単数形態をも含むものと理解されなければならない。
【0038】
以下、本発明によるリチウム複合酸化物および前記リチウム複合酸化物を含む正極が使用されたリチウム二次電池についてさらに詳細に説明することとする。
【0039】
<リチウム複合酸化物>
本発明の一態様によれば、リチウムの吸蔵および放出が可能な一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含むリチウム複合酸化物が提供される。前記リチウム複合酸化物は、リチウム二次電池の正極活物質として役割をすることができる。
【0040】
ここで、前記一次粒子は、一つの結晶粒(grain or crystallite)を意味し、二次粒子は、複数の一次粒子が凝集して形成された凝集体を意味する。前記一次粒子は、棒形状、楕円形状および/または不定形形状を有し得る。前記二次粒子を構成する前記一次粒子の間には、空隙および/または結晶粒界(grain boundary)が存在し得る。
【0041】
例えば、前記一次粒子は、前記二次粒子の内部で隣り合った一次粒子から離隔して内部空隙を形成することができる。また、前記一次粒子は、隣り合った一次粒子と互いに接して結晶粒界を形成せず、内部空隙と接することによって、前記二次粒子の内部に存在する表面を形成することができる。一方、前記二次粒子の最表面に存在する前記一次粒子が外気に露出した面は、前記二次粒子の表面を形成することになる。
【0042】
ここで、前記一次粒子の平均長軸長さは、0.1μm~5μm、好ましくは、0.1μm~2μmの範囲内に存在することによって、本発明の多様な実施例による正極活物質を使用して製造された正極の最適密度を具現することができる。また、二次粒子の平均粒径は、凝集した一次粒子の数によって変わり得るが、1μm~30μmでありうる。
【0043】
本発明の一実施例によるリチウム複合酸化物の模式図を示す図1を参考にすると、本発明の一実施例によるリチウム複合酸化物は、前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面から選ばれる領域のうち少なくとも一部に存在するニオビウム(Nb)含有酸化物を含むことができる。
【0044】
ここで、前記一次粒子間の界面とは、互いに隣接する2つの一次粒子により定義される面、すなわち互いに隣接する2つの一次粒子が互いに接した面を意味し得る。また、前記一次粒子間の界面は、独立的な前記一次粒子の表面を意味することもできる。
【0045】
前記二次粒子の表面は、少なくとも1つの前記一次粒子が凝集した二次粒子の最表面を意味し、前記二次粒子の最表面は、前記二次粒子の最外郭に位置する前記一次粒子の露出した表面を意味し得る。
【0046】
前記ニオビウム(Nb)含有酸化物は、リチウムイオン伝導性物質であって、上記に定義された前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面から選ばれる領域のうち少なくとも一部に存在することによって、リチウムイオン拡散経路(Lithium ion diffusion pathway)を形成することができる。
【0047】
前記ニオビウム(Nb)含有酸化物は、NbOまたはNbのようにニオビウム(Nb)の単独酸化物だけでなく、LiNbO、LiNbまたはLiNbOのようなリチウムとニオビウム(Nb)の複合酸化物を含むことができる。また、前記ニオビウム(Nb)含有酸化物の種類は、上述した例示に制限されず、後述する化学式2で表される多様なニオビウム(Nb)の単独酸化物、リチウムとニオビウム(Nb)の複合酸化物またはリチウム、ニオビウム(Nb)および他の金属元素の複合酸化物の形態で存在することもできる。
【0048】
上述したように、本発明の一実施例によるリチウム複合酸化物は、前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面から選ばれる領域のうち少なくとも一部に存在するニオビウム(Nb)含有酸化物が存在することを特徴とする。
【0049】
この際、前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)と前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)は、下記の関係式1を満たすことが好ましい。
【0050】
d1>d2 (関係式1)
【0051】
前記面間距離(d1、d2)は、前記リチウム複合酸化物のTEM分析など結晶構造の分析結果から測定された面間距離の平均値を意味する。
【0052】
前記一次粒子間の界面に前記ニオビウム(Nb)含有酸化物が存在し、かつこれによる前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)が前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)より小さいように形成されることによって、前記リチウム複合酸化物の結晶構造を安定化させることが可能である。
【0053】
また、これを通じて、リチウム複合酸化物に含まれた一次粒子の間における副反応を抑制することによって、前記リチウム複合酸化物をリチウム二次電池用正極活物質として使用する場合、正極活物質の安定性および電気的特性を同時に向上させることができる。
【0054】
この際、前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)は、0.40nm以上、好ましくは、0.45nm以上であり、前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)は、0.30nm以下、好ましくは、0.25nm以下でありうる。
【0055】
これによる、前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)と前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)は、下記の関係式2を追加的に満たすことができる。
【0056】
d1-d2≧0.10 (関係式2)
【0057】
前記リチウム複合酸化物のうち前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)と前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)が前記関係式1および前記関係式2から選ばれる少なくとも1つを満たさない場合、前記リチウム複合酸化物の結晶構造の安定化効果が極めて少ないか、かえって低下する恐れがある。
【0058】
また、前記リチウム複合酸化物は、高い含量のニッケルを含有するHigh-Niタイプのリチウム複合酸化物でありうる。High-Niタイプのリチウム複合酸化物の場合、前記リチウム複合酸化物内ニッケルの含有量が増加するに従って結晶構造の安定性および熱安定性が低下する傾向を示す。
【0059】
ただし、本発明によれば、前記リチウム複合酸化物のうち前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)と前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)が前記関係式1および前記関係式2を満たすことによって、前記リチウム複合酸化物内ニッケルの含有量が増加しても、結晶構造の安定性および熱安定性の低下を防止することができる。
【0060】
本発明の他の実施例において、ニオビウム(Nb)は、ニオビウム(Nb)含有酸化物の形態で前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面から選ばれる領域のうち少なくとも一部に存在すると共に、前記一次粒子内ニオビウム(Nb)がドープされた状態で存在することもできる。この場合、前記ニオビウム(Nb)は、前記一次粒子と固溶体の状態で存在し得る。
【0061】
前記実施例において、前記一次粒子は、下記の化学式1で表され得る。
【0062】
LiNi1-(x+y+z+z’)CoM1M2Nbz’ (化学式1)
【0063】
ここで、M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、Cr、V、Fe、Zn、Si、Y、Ga、Sn、Mo、Ge、Nd、GdおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0≦y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦z’≦0.20である。
【0064】
前記化学式1で表される前記一次粒子において、前記M2で表されるドーパントは、前記一次粒子の内部に均一に分布するか、前記一次粒子の表面部から前記一次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。
【0065】
また、前記化学式1で表される前記一次粒子において、ニオビウム(Nb)も、前記一次粒子の内部に均一に分布するか、前記一次粒子の表面部から前記一次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。
【0066】
前記一次粒子内で前記一次粒子の表面部から前記一次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すように存在するニオビウム(Nb)は、前記一次粒子内リチウムイオン拡散経路を形成することができる。前記ニオビウム(Nb)は、前記一次粒子と固溶体を形成した状態で存在し得る。
【0067】
また、前記一次粒子内ニオビウム(Nb)は、前記二次粒子の表面部から前記二次粒子の中心部に向かう方向に沿って減少する濃度勾配を示すこともできる。
【0068】
例えば、前記二次粒子の表面部と隣接する領域に存在する前記一次粒子内ニオビウム(Nb)に比べて前記二次粒子の中心部と隣接する領域に存在する前記一次粒子内ニオビウム(Nb)の濃度が少ないことがある。ただし、前記二次粒子の表面部と隣接する領域に存在する前記一次粒子内ニオビウム(Nb)の濃度と前記二次粒子の中心部と隣接する領域に存在する前記一次粒子内ニオビウム(Nb)の濃度は、いずれも、前記二次粒子の表面部から前記二次粒子の中心部に向かう方向に沿って減少する勾配を示すことができる。
【0069】
上述した実施例によれば、前記リチウム複合酸化物は、前記一次粒子内ニオビウム(Nb)がドープされていると共に、前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面から選ばれる領域のうち少なくとも一部にニオビウム(Nb)含有酸化物が存在することによって、前記関係式1および前記関係式2による結晶構造関連特性を満たし、これを通じて、前記リチウム複合酸化物の結晶構造の安定性および電気的特性を向上させることが可能である。
【0070】
追加的に、前記リチウム複合酸化物は、前記一次粒子(例えば、前記一次粒子間の界面)および/または前記一次粒子が凝集して形成された二次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーするコーティング層を含むことができる。
【0071】
具体的に、前記リチウム複合酸化物は、前記一次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーする第1コーティング層を含み、かつ前記第1コーティング層には、上述したニオビウム(Nb)含有酸化物が存在し得る。
【0072】
すなわち、前記一次粒子間の界面にニオビウム(Nb)含有酸化物が存在する場合、前記ニオビウム(Nb)含有酸化物は、前記ニオビウム(Nb)含有酸化物を含む第1コーティング層として提供され得る。
【0073】
また、前記第1コーティング層は、下記の化学式2で表される酸化物を追加的に含むことができる。
【0074】
LiM3 (化学式2)
【0075】
ここで、M3は、Ni、Mn、Co、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Nb、Fe、Cu、Mo、Cr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、Eu、Sm、Ce、V、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である。
【0076】
前記第1コーティング層に前記化学式2で表される酸化物が追加的に存在する場合、前記化学式2中で金属元素M3は、ニオビウム(Nb)と同様に、前記一次粒子の内部に均一に分布するか、前記一次粒子の表面部から前記一次粒子の中心部に向かって減少する濃度勾配を示すことができる。
【0077】
追加的に、前記リチウム複合酸化物は、前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部をカバーする第2コーティング層を含み、かつ前記第2コーティング層には、下記の化学式3で表される酸化物が存在し得る。
【0078】
LiM4 (化学式3)
【0079】
ここで、M4は、Ni、Mn、Co、P、Sr、Ba、B、Ti、Zr、Mn、Al、W、Nb、Fe、Cu、Mo、Cr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、Eu、Sm、Ce、V、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、0≦a≦10、0≦b≦8、2≦c≦13である。
【0080】
前記第2コーティング層は、前記二次粒子の表面を連続的または不連続的にコーティングする層として存在し得る。前記コーティング層が不連続的に存在する場合、アイランド(island)形態で存在し得る。
【0081】
また、場合によって、前記第1コーティング層および/または前記第2コーティング層内に存在する酸化物は、前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部だけでなく、前記二次粒子の内部に形成された内部空隙にも存在し得る。
【0082】
このように存在する前記第1コーティング層および前記第2コーティング層は、前記リチウム複合酸化物のリチウムイオン伝導性を向上させると同時に、前記リチウム複合酸化物に含まれた前記一次粒子(例えば、前記一次粒子間の界面)および/または前記一次粒子が凝集して形成された二次粒子の表面で発生する電解液との副反応を減少させて、正極活物質としての前記リチウム複合酸化物の安定性を向上させることができる。
【0083】
前記第1コーティング層および/または前記第2コーティング層は、前記一次粒子および/または前記一次粒子が凝集して形成された前記二次粒子と境界を形成しない固溶体の形態で存在することもできるが、必ずしもそうではない。
【0084】
また、前記第1コーティング層および/または前記第2コーティング層は、前記リチウム複合酸化物内残留リチウムを低減させると同時に、リチウムイオンの移動経路(diffusion path)として作用することによって、リチウム二次電池の効率特性を向上させるのに影響を与えることができる。
【0085】
追加的に、本発明の多様な実施例によるリチウム複合酸化物のX線回折のリートベルト(Rietveld)解析から得られるc軸の長さは、14.177Å超過14.218Å未満でありうる。
【0086】
前記リチウム複合酸化物ニオビウム(Nb)ドープ量が不十分な場合、前記リチウム複合酸化物のX線回折のリートベルト(Rietveld)解析から得られるc軸の長さは、14.177Å以下になり得る。この場合、前記リチウム複合酸化物の結晶構造の安定化効果が不足することがあり、ひいては、正極活物質のリチウムイオン伝導性の増加効果が極めて少ないことがある。
【0087】
反面、前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部にニオビウムが存在する代わりに、前記リチウム複合酸化物内ニオビウム(Nb)ドープ量のみが増加する場合、X線回折のリートベルト(Rietveld)解析から得られるc軸の長さは、14.218Åを超過することができる。この場合、前記一次粒子間の界面および前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部に存在するニオビウム酸化物またはリチウムニオビウム酸化物により副反応を抑制させる効果が不足なことがある。
【0088】
<リチウム二次電池>
本発明の他の態様によれば、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質層とを含む正極が提供され得る。ここで、前記正極活物質層は、正極活物質として、上述した本発明の多様な実施例によるリチウム複合酸化物を含むことができる。
【0089】
したがって、リチウム複合酸化物に対する具体的な説明を省略し、以下では、残りの前述しない構成のみについて説明することとする。また、以下では、便宜上、上述したリチウム複合酸化物を正極活物質と称することとする。
【0090】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が使用され得る。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚みを有し得、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもできる。例えばフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0091】
前記正極活物質層は、前記正極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む正極スラリー組成物を前記正極集電体に塗布して製造され得る。
【0092】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99wt%、より具体的には、85~98.5wt%の含量で含まれ得る。上記した含量範囲で含まれるとき、優れた容量特性を示すことができるが、必ずこれに制限されるものではない。
【0093】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維等の炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体等の導電性高分子等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0094】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15wt%で含まれ得る。
【0095】
前記正極は、上記した正極活物質を利用することを除いて、通常の正極の製造方法により製造され得る。具体的に、上記した正極活物質および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することによって製造することができる。
【0096】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であってもよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水等が挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚み、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以後、正極の製造のための塗布時に優れた厚み均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0097】
また、他の実施例において、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造されることもできる。
【0098】
また、本発明のさらに他の態様によれば、上述した正極を含む電気化学素子が提供され得る。前記電気化学素子は、具体的に電池、キャパシタ等であってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0099】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と前記負極との間に介在される分離膜および電解質とを含むことができる。ここで、前記正極は、上記で説明したことと同一なので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、前述しない残りの構成のみについて具体的に説明する。
【0100】
前記リチウム二次電池は、前記正極、前記負極および前記分離膜の電極組立体を収納する電池容器および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0101】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含むことができる。
【0102】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金等が使用され得る。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚みを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等多様な形態で使用され得る。
【0103】
前記負極活物質層は、前記負極活物質と共に、導電材および必要に応じて選択的にバインダーを含む負極スラリー組成物を前記負極集電体に塗布して製造され得る。
【0104】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用され得る。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素等の炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金等リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープし得る金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物等が挙げられ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素等がすべて使用され得る。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)等の高温焼成炭素が代表的である。
【0105】
前記負極活物質は、負極活物質層の全体重量を基準として80~99wt%で含まれ得る。
【0106】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体間の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層の全体重量を基準として0.1~10wt%で添加され得る。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体等が挙げられる。
【0107】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層の全体重量を基準として10wt%以下、好ましくは5wt%以下で添加され得る。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材等が使用され得る。
【0108】
一実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥することによって製造されたり、または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造されたりし得る。
【0109】
また、他の実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布し乾燥したり、または前記負極スラリー組成物を別の支持体上にキャストしたりした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることによって製造されることもできる。
【0110】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特別な制限なしに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありかつ電解液含浸能力に優れていることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等からなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれたコートされた分離膜が使用されることもでき、選択的に単層または多層構造で使用され得る。
【0111】
また、本発明において使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質等が挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0112】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0113】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をすることができるものであれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)等のエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)等のエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)等のケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)等のカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合の芳香環またはエーテル結合を含むことができる)等のニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;1,3-ジオキソラン等のジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類等が使用され得る。これらの中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート等)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート等)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優秀に現れることができる。
【0114】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特別な制限なしに使用され得る。具体的に前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAl0、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(C等が使用され得る。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれる場合、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0115】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量の向上等を目的として例えば、ジフルオロエチレンカーボネート等のようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウム等の添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5wt%で含まれ得る。
【0116】
上記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すので、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)等の電気自動車分野等に有用である。
【0117】
本発明によるリチウム二次電池の外形は、特別な制限がないが、缶を使用した円筒形、角形、パウチ(pouch)形またはコイン(coin)形等になり得る。また、リチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用され得ると共に、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用され得る。
【0118】
本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよび/またはこれを含む電池パックが提供され得る。
【0119】
前記電池モジュールまたは前記電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか1つ以上の中大型デバイス電源として用いられる。
【実施例
【0120】
以下では、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇がこれらの実施例により制限されるものと解されないと言える。
【0121】
<製造例.リチウム複合酸化物の製造>
(1)実施例1
共沈法(co-precipitation method)により球形のNi0.91Co0.08Mn0.01(OH)水酸化物前駆体を合成した。90L級の反応器で硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを91:8:1のモル比で混合した1.5Mの複合遷移金属硫酸水溶液に25wt%のNaOHと30wt%のNHOHを投入した。反応器内のpHは、11.5を維持させ、この際の反応器の温度は、60℃に維持し、不活性ガスであるNを反応器に投入して、製造された前駆体が酸化しないようにした。合成撹拌の完了後に、Filter press(F/P)装備を利用して洗浄および脱水を進めて、Ni0.91Co0.08Mn0.01(OH)水酸化物前駆体を収得した。
【0122】
次に、合成された前駆体にLiOHおよびNb含有原料物質(Nb)を添加した後、焼成して、リチウム複合酸化物を製造した。具体的に、前駆体にLiOHおよびNb含有原料物質(Nb)を混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで分当たり1℃で昇温して10時間熱処理した後、自然冷却して、リチウム複合酸化物を得た。前記Nb含有原料物質(Nb)は、焼成前に全体組成物のうち3mol%になるように混合し、LiOH全体金属と1.03モル比になるように混合した。
【0123】
次に、得られたリチウム複合酸化物を焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで分当たり1℃で昇温して4時間の間熱処理した後、自然冷却した。
【0124】
(2)実施例2
焼成時にB含有原料物質(HBO)をNb含有原料物質(Nb)と共に混合したことを除いて、実施例1と同一にリチウム複合酸化物を製造した。B含有原料物質(HBO)は、全体組成物のうち1.0mol%になるように混合した。
【0125】
(3)実施例3
焼成時にAl含有原料物質(Al(OH))をNb含有原料物質(Nb)と共に混合したことを除いて、実施例1と同一にリチウム複合酸化物を製造した。Al含有原料物質(Al(OH))は、全体組成物のうち1.0mol%になるように混合した。
【0126】
(4)実施例4
実施例1の方法で合成した前駆体にLiOHを混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで分当たり1℃で昇温して10時間熱処理した後、自然冷却して、リチウム複合酸化物を得た。
【0127】
次に、得られた正極活物質を前記Nb含有原料物質(Nb)と共に混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで分当たり1℃で昇温して4時間の間熱処理した後、自然冷却して、リチウム複合酸化物を得た。前記Nb含有原料物質(Nb)は、熱処理前に全体組成物のうち3mol%になるように混合した。
【0128】
(5)実施例5
実施例1の方法で合成された前駆体にLiOHおよびB含有原料物質(HBO)を一緒に混ぜた後、焼成して、リチウム複合酸化物を製造した。具体的に、前駆体にLiOH、HBOを混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで分当たり1℃で昇温して10時間熱処理した後、自然冷却して、リチウム複合酸化物を得た。前記B含有原料物質(HBO)は、焼成前に全体組成物のうち1mol%になるように混合した。
【0129】
次に、得られた正極活物質を前記Nb含有原料物質(Nb)と共に混合した後、焼成炉でO雰囲気を維持しつつ、700℃まで分当たり1℃で昇温して4時間の間熱処理した後、自然冷却して、リチウム複合酸化物を得た。Nb含有原料物質(Nb)は、前記リチウム複合酸化物対比3mol%になるように混合した。
【0130】
(6)実施例6
焼成時にB含有原料物質(HBO)の代わりにAl含有原料物質(Al(OH))を混合したことを除いて、実施例5と同じ方法で正極リチウム複合酸化物を製造した
【0131】
(7)比較例1
前記Nb含有原料物質(Nb)を焼成前に全体組成物のうち1mol%になるように混合したことを除いて、実施例1と同一にリチウム複合酸化物を製造した。
【0132】
(8)比較例2
LiOHおよびNb含有原料物質(Nb)を混合した後、750℃で焼成したことを除いて、実施例1と同一にリチウム複合酸化物を製造した。
【0133】
(9)比較例3
焼成前にLiOHを全体金属と1.05モル比になるように混合したことを除いて、実施例1と同一にリチウム複合酸化物を製造した。
【0134】
(10)比較例4
前記Nb含有原料物質(Nb)を前記リチウム複合酸化物に対して1mol%になるように混合したことを除いて、実施例3と同一にリチウム複合酸化物を製造した。
【0135】
<実験例1.リチウム複合酸化物のTEM-EDX分析>
図2は、実施例1によるリチウム複合酸化物を構成する一次粒子に対する透過電子顕微鏡(TEM)イメージおよび標識された領域に対する回折パターンを示すものである。
【0136】
図2に示す回折パターンを参照すると、一次粒子のコア領域は、R-3m空間群を有するhexagonal結晶構造(hexagonal α-NaFeO)構造を有することを確認することができ、一次粒子の表面(互いに隣接する一次粒子間の界面)領域は、cubic結晶構造を有することを確認することができる。
【0137】
図3および図4は、それぞれ、図2に示すhexagonal結晶構造およびcubic結晶構造に対応する領域内面間距離を測定した結果を示し、前記面間距離は、図2のTEMイメージで隣接する7個の面間距離を平均値で示す。
【0138】
図3および図4を参照すると、前記リチウム複合酸化物の一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)は、0.480nmである反面、前記リチウム複合酸化物の一次粒子の界面内結晶構造中(400)面の面間距離(d2)は、0.205nmであるものと測定された。前記結果を参照すると、前記一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)および前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)は、下記の関係式1および関係式2を満たすことを確認することができる。
【0139】
d1>d2 (関係式1)
【0140】
d1-d2≧0.10 (関係式2)
【0141】
また、他の実施例および比較例によるリチウム複合酸化物の一次粒子内の結晶構造中の(003)面の面間距離(d1)および前記一次粒子間の界面内結晶構造中の(400)面の面間距離(d2)は、下記の表1に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
図5図8は、それぞれ、実施例1、実施例3、実施例6および比較例1によるリチウム複合酸化物に対するTEM/EDX Mapping結果を示すものである。
【0144】
図5図7を参照すると、実施例1、実施例3および実施例6によるリチウム複合酸化物が、いずれも、一次粒子の粒界および二次粒子の表面のうち少なくとも一部にNbが存在することを確認することができ、特に一次粒子の内部にもNbが一部ドープされたことを確認することができる。
【0145】
反面、図8を参照すると、比較例1によるリチウム複合酸化物は、一次粒子の内部にのみNbが一部ドープされているだけであり、一次粒子の粒界および二次粒子の表面には、Nbが存在しないことを確認することができる。
【0146】
このように、一次粒子の内部にのみNbがドープされ、一次粒子の粒界および二次粒子の表面のうち少なくとも一部にNb(またはNb含有酸化物)が存在しないリチウム複合酸化物では、本願で意図した結晶構造の安定性および熱的安定性に対する向上効果を期待しにくいことがある。
【0147】
また、下記の表2のように、リチウム複合酸化物の製造時にニオビウム(Nb)含有原料物質の添加量によって前記一次粒子のc軸長さが有意的に変わることが観察された。
【0148】
【表2】
【0149】
前記表2の結果を参考にすると、比較例1および比較例4の場合、一次粒子のc軸長さが実施例1に比べて短いことを確認することができる。このようなc軸長さの差異は、比較例1および比較例4によるリチウム複合酸化物の一次粒子内ニオビウム(Nb)のドープ量が、実施例1によるリチウム複合酸化物の一次粒子より不足していることを示す。
【0150】
また、比較例2および比較例3の場合、実施例1に比べてc軸長さが長いことを確認することができる。このような結果は、比較例2および比較例3によるリチウム複合酸化物において一次粒子の粒界および二次粒子の表面のうち少なくとも一部にNb(またはNb含有酸化物)が存在せず、一次粒子の内部にのみNbがドーピングされるに従ってc軸長さが実施例1によるリチウム複合酸化物より長くなったことを示す。
【0151】
<実験例2.リチウム複合酸化物のXRD分析>
前記製造例によって製造されたリチウム複合酸化物に対してX線回折(XRD)分析を行って、リチウム複合酸化物のうちニオビウム(Nb)含有酸化物が存在するか否かを確認した。XRD分析は、Cu Kαradiation(1.540598Å)を利用したBruker D8 Advance回折計(diffractometer)を利用して行った。
【0152】
図9および図10は、実施例1によるリチウム複合酸化物に対するXRD分析結果を示すものである。図9および図10を参照すると、前記リチウム複合酸化物のうちLiNbOに特異的な(111)、(211)および(400)ピークが検出されることを確認することができる。
【0153】
図5のTEM/EDX分析結果および図9のXRD分析結果を総合してみると、実施例1によるリチウム複合酸化物のうちNbは、一次粒子の内部にドープされた状態で存在すると同時に、一次粒子の粒界および二次粒子の表面のうち少なくとも一部にリチウム複合酸化物の形態で存在することを確認することができる。
【0154】
図11は、比較例1によるリチウム複合酸化物に対するXRD分析結果を示すものである。図11を参照すると、前記リチウム複合酸化物Nb含有酸化物、特にNb含有リチウム複合酸化物に特異的なピークが観察されない。
【0155】
図8のTEM/EDX分析結果および図11のXRD分析結果を総合してみると、比較例1によるリチウム複合酸化物のうちNbは、一次粒子の内部にドープされた状態だけで存在することを確認することができる。
【0156】
<実験例3.リチウム二次電池の特性評価結果>
(1)リチウム二次電池の製造
前記製造例によって製造されたリチウム複合酸化物それぞれ94wt%、カーボンブラック(carbon black)3wt%、PVDFバインダー3wt%をN-メチル-2ピロリドン(NMP)30gに分散させて、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚み15μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布および乾燥し、ロールプレス(roll press)を実施して、正極を製造した。正極のローディングレベルは、10mg/cmであり、電極密度は、3.2g/cmであった。
【0157】
前記正極に対して金属リチウムを対極(counter electrode)とし、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を2:4:4の体積比で混合した溶媒に1.15MのLiPFを添加して製造した。
【0158】
前記正極および負極の間に多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなるセパレーターを介在して電池組立体を形成し、前記電解液を注入して、リチウム二次電池(コイン セル)を製造した。
【0159】
(2)リチウム二次電池の容量特性の評価
製造されたリチウム二次電池(コインセル)に対して25℃で0.15Cの定電流(CC)で4.25Vになるまで充電し、その後、4.25Vの定電圧(CV)で充電して、充電電流が0.05mAhになるまで1回目の充電を行った。その後、20分間放置した後、0.1Cの定電流で3.0Vになるまで放電して、1サイクル目の放電容量を測定した。第1充放電時の充電容量、放電容量および充放電効率を下記の表3に示す。
【0160】
【表3】
【0161】
前記表3の結果を参考にすると、実施例1~実施例6によるリチウム複合酸化物を使用したリチウム二次電池が、比較例1~比較例4によるリチウム複合酸化物を使用したリチウム二次電池に比べて充放電効率および容量特性の観点で改善されたことを確認することができる。
【0162】
(3)リチウム二次電池の熱的安定性の評価
製造されたリチウム二次電池(コインセル)に対して25℃で1Cの定電流(CC)で3.0~4.25Vの駆動電圧の範囲内で充・放電を100回実施した。これにより、常温での充放電100回実施後、初期容量に対する100サイクル目の放電容量の比率であるサイクル容量維持率(capacity retention)を測定した。
【0163】
また、リチウム二次電池の高温貯蔵特性を確認するために、25℃で充放電した電池をSOC100%を基準として充電して抵抗を測定した後、60℃で7日間貯蔵後、抵抗を測定して、抵抗の変化幅を確認した。
【0164】
前記測定結果は、下記の表4に示す。
【0165】
【表4】
【0166】
前記表4の結果を参考にすると、実施例1~実施例6によるリチウム複合酸化物を使用したリチウム二次電池が、比較例1~比較例4によるリチウム複合酸化物を使用したリチウム二次電池に比べて容量維持率に優れていると共に、高温貯蔵前後の抵抗変化幅が小さいことを確認することができる。
【0167】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者なら、特許請求範囲に記載された本発明の思想を逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除または追加等により本発明を多様に修正および変更させることができ、これも、本発明の権利範囲内に含まれると言える。
図1
図2
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