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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】緩衝体及び靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/38 20060101AFI20220705BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20220705BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20220705BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220705BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20220705BHJP
   A43B 13/18 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
A43B13/38 A
C08J9/04 101
C08L53/00
C08L23/08
A43B13/04 A
A43B13/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020205796
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2021107530
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2019238172
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】立石 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 丞
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113614(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051532(WO,A1)
【文献】特開2019-052225(JP,A)
【文献】特開2000-234038(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125899(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00- 44/60、 67/20
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
A43B 1/00- 23/30
A43C 1/00- 19/00
A43D 1/00-999/00
B29D 35/00- 35/14
B65D 57/00- 59/18、 81/00- 81/17
F16F 11/00- 13/30
G01K 11/00- 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物で構成された発泡体によって一部又は全部が構成されている緩衝体が靴底に備えられている靴であって、
前記ポリマー組成物は、ファルネセンを構成単位として含む単独重合体、又はファルネセンを構成単位として含む共重合体の少なくともいずれか一方からなる第1成分と、
前記単独重合体及び前記共重合体とは異なるポリマーの1種又は2種以上からなる第2成分とを含み、
前記第2成分には、タイプAデュロメータ硬さが93以下の前記ポリマーが含まれ、
前記第2成分は、エチレン-αオレフィンブロック共重合体とエチレン-酢酸ビニル共重合体との内の少なくともいずれか一方を含む靴
【請求項2】
記エチレン-酢酸ビニル共重合体が前記第2成分に含まれている請求項記載の
【請求項3】
前記第2成分が、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体と前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体との両方を含み、
該エチレン-αオレフィンブロック共重合体は、エチレン-ヘキセンブロック共重合体かエチレン-オクテンブロック共重合体かのいずれかであり、且つ、チェーンシャトリング共重合体である請求項記載の
【請求項4】
前記第1成分が前記共重合体を含み、
該共重合体が、水素添加スチレンファルネセンブロック共重合体である請求項1乃至の何れか1項記載の
【請求項5】
前記ポリマー組成物における、前記第2成分の含有量が30質量%以上95質量%以下である、請求項1乃至4の何れか1項記載の靴。
【請求項6】
前記発泡体の密度が0.5g/cm 以下である、請求項1乃至5の何れか1項記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝体と靴とに関し、より詳しくは、ポリマー組成物で構成された発泡体によって一部又は全部が構成されている緩衝体とそのような緩衝体を備えた靴とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ用具などには、ゲルや発泡体で構成された緩衝体が備えられている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/070045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に発泡体などによって発揮される緩衝性の大小は、動的粘弾性測定によって得られる貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比率(損失正接)などによってあらわされる。
そして、発泡体に対して高い損失正接を発揮させる手法については十分確立されていない。
そこで本発明は、高い損失正接を有する発泡体を提供することで緩衝性能に優れた緩衝体を提供し、ひいては緩衝性能に優れた靴を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく本発明は、
ポリマー組成物で構成された発泡体によって一部又は全部が構成されている緩衝体であって、
前記ポリマー組成物は、
ファルネセンを構成単位として含む単独重合体又はファルネセンを構成単位として含む共重合体の少なくともいずれか一方からなる第1成分と、
前記単独重合体及び前記共重合体とは異なるポリマーの1種又は2種以上からなる第2成分とを含む緩衝体、を提供する。
【0006】
本発明は、また、上記のような緩衝体が靴底に備えられている靴、を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば緩衝性能に優れた緩衝体、及び、緩衝性能に優れた靴が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の緩衝体を備えた靴の一例を示す概略斜視図。
図2】緩衝体の配置状況を示す概略断面図(図1のII-II線矢視断面図)。
図3図1とは異なる態様の緩衝体を備えた靴の例を示す概略斜視図。
図4】緩衝体の配置状況を示す概略断面図(図3のIV-IV線矢視断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の靴用部材について以下にその実施の形態を例示しつつ説明する。
図1は、本実施形態の靴用部材で少なくとも一部が構成されている靴を示したもので、該靴1は、アッパー2と靴底用部材とを有している。
該靴1は、靴底用部材としてミッドソール3、アウトソール4を有している。
【0010】
以下において図1に示した靴1などについて説明する際には、踵の中心HCと爪先の中心TCとを結ぶシューセンター軸CXに沿った方向のことを長さ方向Xと称することがある。
また、シューセンター軸CXに沿った方向の内、踵から爪先に向けた方向X1を前方などと称し、爪先から踵に向けた方向X2を後方などと称することがある。
シューセンター軸CXに直交する方向の内、水平面HPに平行する方向を幅方向Yと称することがある。
この幅方向Yの内、足の第1指側に向けた方向Y1を内方などと称し、第5指側に向けた方向Y2を外方などと称することがある。
そして、水平面HPに直交する垂直方向Zを厚み方向や高さ方向と称することがある。
さらに、以下においては、この垂直方向Zにおいて上方に向かう方向Z1を上方向と称し、下方に向かう方向Z2を下方向と称することがある。
【0011】
図1図2に示すように、本実施形態の靴1は最も下方にアウトソール4を備えている。
該アウトソール4は、靴1の接地面を構成するものである。
前記靴1は、着用者の足を上側から覆うアッパー2と前記アウトソール4との間にミッドソール3を備えている。
本実施形態のミッドソール3は、扁平形状を有し、その厚み方向が靴の高さ方向Zとなるように配されている。
本実施形態の靴1は、ミッドソール3の上面を覆うインナーソール5aと、インナーソール5aの上方に配設されたソックライナー5bとをさらに備えている。
【0012】
該ミッドソール3の下面31は、前記アウトソール4の上面に接しており、前記ミッドソール3の上面32は、インナーソール5aに対して下側から接している。
ミッドソール3の側面33は、前記アッパー2や前記アウトソール4などによって覆われることなく露出した状態になっている。ミッドソールの側面33は、アウトソール4によって一部または全部が覆われていてもよい。また、アウトソール4を備えていなくてもよい。
【0013】
本実施形態における靴1は、前記ミッドソール3が優れた緩衝性を有する緩衝体となって靴底に備えられている。
即ち、本実施形態の靴1は、靴底の長さ方向、及び、幅方向の全域に亘って優れた緩衝性を示す緩衝体が配されている。
【0014】
本実施形態のミッドソール3は、全部が発泡体によって構成されている。
本実施形態のミッドソール3を構成する前記発泡体は、ポリマー組成物で構成されている。
本実施形態においては、ファルネセンを構成単位として含む単独重合体、又はファルネセンを構成単位として含む共重合体の少なくともいいずれか一方からなる第1成分と、前記単独重合体及び前記共重合体とは異なるポリマーの1種又は2種以上からなる第2成分とを含むポリマー組成物が高い損失正接を示す状態になるという機能を利用してミッドソール3(緩衝体)に優れた緩衝性を発揮させている。
【0015】
本実施形態における前記第2成分は、エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィンランダム共重合体(POE)、及び、一般的なゴムの内から選ばれる1種又は2種以上のポリマーを含むことが好ましい。
【0016】
前記第2成分には、例えば、フッ素樹脂やフッ素ゴムなどのフッ素系ポリマー;ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド610などのポリアミド樹脂やポリアミド系エラストマーといったポリアミド系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;シリコーン系エラストマー;エチレンプロピレンゴム(EPR);エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM);ブタジエンゴム(BR);イソプレンゴム(IR);クロロプレン(CR);天然ゴム(NR);スチレンブタジエンゴム(SBR);アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR);ブチルゴム(IIR)などが含まれてもよい。
【0017】
前記第2成分には、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE))などのポリエチレン樹脂;プロピレンホモポリマー(ホモPP)、ランダムポリプロピレン樹脂(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン樹脂(ブロックPP)などのポリプロピレン樹脂;環状オレフィンポリマー(COP);環状オレフィン共重合体(COC);ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等のポリウレタン系ポリマー;ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)等のスチレン系ポリマー;などが含まれてもよい。
【0018】
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)は、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS))、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS))、スチレン-ブタジエン-イソプレン-スチレン共重合体(SBIS)、SBISの水素添加物(スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEEPS))、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン-スチレン(SBSBS)などであってもよい。
【0019】
前記第2成分には、タイプAデュロメータ硬さが93以下の前記ポリマーが含まれていることが好ましい。
前記第2成分に含まれる前記ポリマーのタイプAデュロメータ硬さは、91以下であることがより好ましく、90以下であることがさらに好ましく、89以下であることが特に好ましい。
前記ポリマーのタイプAデュロメータ硬さは、例えば、15以上とすることができる。
尚、前記ポリマーのタイプAデュロメータ硬さは、JIS K 6253-3:2012に基づいて測定することができる。
【0020】
本実施形態における該ポリマー組成物は、エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)との内の少なくとも一方が前記第2成分に含まれていることが好ましい。
【0021】
本実施形態の前記ポリマー組成物は、エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)とエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)と内の一方のみを含んでいても両方を含んでいてもよい。
また、本実施形態の前記ポリマー組成物での前記第1成分は、ファルネセンを構成単位として含む単独重合体と、ファルネセンを構成単位として含む共重合体との内の一方のみで構成されていても両方で構成されていてもよい。
【0022】
本実施形態の前記ポリマー組成物は、エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)を含む場合、複数種類のエチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)を含んでいてもよい。
【0023】
本実施形態の前記ポリマー組成物は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を含む場合、複数種類のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を含んでいてもよい。
【0024】
本実施形態の前記ポリマー組成物は、前記第1成分が前記単独重合体(以下、「ファルネセンホモポリマー」ともいう)を含む場合、複数種類のファルネセンホモポリマーを含んでいてもよい。
【0025】
本実施形態の前記ポリマー組成物は、前記第1成分が前記共重合体(以下、「ファルネセンコポリマー」ともいう)を含む場合、複数種類のファルネセンコポリマーを含んでいてもよい。
【0026】
前記ポリマー組成物の前記第1成分は、含有される全てのファルネセンホモポリマーと含有される全てのファルネセンコポリマーとの合計量が100質量%となるように含まれていればそれぞれの割合については特に限定されない。
【0027】
前記ポリマー組成物では、前記第1成分と前記第2成分との合計質量に占める前記第1成分の割合が1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
前記第1成分の割合は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0028】
添加剤などを含めた前記ポリマー組成物全体における前記第1成分の割合(発泡体における前記第1成分の割合)は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
前記第1成分の割合は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
添加剤などを含めた前記ポリマー組成物全体における前記第2成分の割合(発泡体における前記第2成分の割合)は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。
前記第2成分の割合は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。
【0030】
本実施形態の前記ポリマー組成物は、単位体積当たりに含まれる前記第2成分の合計質量をX0とし、且つ、前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)と前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)との合計質量をX1とした場合、下記式(1)を満たすことが好ましい。
(X1/X0)×100(%) ≧ 25(%) ・・・(1)
即ち、前記第2成分に占める前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)と前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)との合計量は、25質量%以上であることが好ましい。
該割合は、30質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることがとりわけ好ましい。
前記割合は、75質量%以上であっても、90質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。
【0031】
前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)と前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)とを比べると、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の方が緩衝性に係る効果を顕著に発揮する傾向がある。
従って、前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)と前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)との内、少なくとも前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が前記第2成分に含まれていることが好ましい。
【0032】
前記ポリマー組成物は、単位体積当たりに含まれる前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)の質量をX11とし、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の質量をX12とした際に、下記式(2)を満たすことが好ましい。
X12 > X11 ・・・(2)
言い換えると、前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)と前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)との合計質量(X11+X12)をX1とした際に前記ポリマー組成物では、下記式(3)が満たされているが好ましい。
(X12/X1)×100(%) > 50(%) ・・・(3)
即ち、前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)と前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)との合計質量(X1)に占める前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の質量(X12)の割合は、50質量%を超えることが好ましい。
該割合は、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることがとりわけ好ましい。
前記割合は、90質量%以上であっても、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0033】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)は、ランダム共重合体であることが好ましい。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体は、ポリマー組成物に柔軟性や接着性を発揮させる上において、酢酸ビニルの含有率(VAコンテント)が8質量%以上であることが好ましく10質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上がさらに好ましい。
酢酸ビニルの含有率は、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)は、密度が0.86g/cmを超え0.89g/cm未満のエチレン-αオレフィン共重合体であることが好ましい。
前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)は、DSC法(昇温速度10℃/min)によって求められる融点(融解ピーク温度)が115℃以上125℃以下であることが好ましい。
【0035】
前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)は、オレフィンの微細結晶を形成させるためのポリマーとして好適である。
前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体は、エチレン-αオレフィンブロック共重合体であることが好ましく、エチレン-ヘキセンブロック共重合体かエチレン-オクテンブロック共重合体かのいずれかであることが好ましい。
本実施形態において前記ポリマー組成物に含有させる前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体は、エチレン-オクテンブロック共重合体であることがより好ましい。
該エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)は、エチレンと炭素数が4以上のαオレフィンとが2種類の重合触媒とアルキルアルミニウムやアルキル亜鉛化合物などの連鎖移動剤(WO2005/090426、WO2005/090427に記載のシャトリング剤)との存在下において共重合されたチェーンシャトリング共重合体であることが好ましい。
【0036】
チェーンシャトリング共重合体は、重合時に単独重合とブロック共重合とがそれぞれ複数回繰り返されるため、一般的なブロック共重合体とは異なり単独重合が進行する時に形成されるブロックが、当該ブロックを構成するモノマーのホモポリマーと同様の結晶を形成できる状態になり得る。
具体的には、エチレンと1-オクテンブロックとのチェーンシャトリング共重合体は、分子中にエチレンの単独重合体である高密度ポリエチレン(HDPE)と同様に結晶化することが可能なエチレンブロックを有している。
従って、チェーンシャトリング共重合体であるエチレン-オクテンブロック共重合体は、高密度ポリエチレンの結晶と同じ微細結晶を前記ポリマー組成物によって構成される部材に多数形成させるのに有効に機能する。
言い換えると、エチレン-αオレフィンブロック共重合体は、高密度ポリエチレン(HDPE)と同様の融点を示すものが好ましく、DSC法(昇温速度10℃/min)によって求められる融点(融解ピーク温度)が115℃以上125℃以下であることが好ましい。
【0037】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)や前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)とともに前記ポリマー組成物には、前記の通り、ファルネセンを構成単位として含む単独重合体や共重合体が含まれる。
前記ファルネセンを構成単位として含む前記単独重合体(ファルネセンホモポリマー)や前記共重合体(ファルネセンコポリマー)における前記ファルネセンは、α-ファルネセンであってもβ-ファルネセンであってもよい。
前記ファルネセンホモポリマーや前記ファルネセンコポリマーにおけるファルネセンは、β-ファルネセンであることが好ましい。
前記ファルネセンコポリマーとしては、例えば、ファルネセンとスチレンとの共重合体やファルネセンとブタジエンとの共重合体などが挙げられる。
該ファルネセンコポリマーは、ファルネセンとスチレンとブタジエンとの3元共重合体などであってもよい。
前記ファルネセンコポリマーは、上記以外のモノマーを構成単位として含有するものであってもよい。
【0038】
該ファルネセンコポリマーは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、グラフト共重合体であってもよい。
本実施形態におけるファルネセンコポリマーは、ファルネセン特有の特性を発揮し易い点においてより大きなポリファルネセン部分を有することが好ましく、ブロック共重合体であることが好ましい。
本実施形態におけるファルネセンコポリマーは、ポリスチレンブロックとポリファルネセンブロックとを備えたブロック共重合体であることが好ましい。
しかも、本実施形態におけるファルネセンコポリマーは、水素添加されたポリファルネセンブロックを有することが好ましい。
即ち、本実施形態の前記ポリマー組成物は、水素添加スチレンファルネセンブロック共重合体を含有することが好ましい。
【0039】
本実施形態におけるファルネセンコポリマーは、ジブロック共重合体であるか、トリブロック共重合体であるかのいずれかであることが好ましい。
本実施形態におけるファルネセンコポリマーは、トリブロック共重合体であることが好ましい。
即ち、本実施形態の前記ポリマー組成物は、両末端にポリスチレンブロックを有し、これら2つのポリスチレンブロックの間に水素添加されたポリファルネセンブロックを有する共重合体を含むことが好ましい。
【0040】
前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)と前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)との合計質量(X1)を100質量部とした際に、ファルネセンを構成単位とした前記ファルネセンホモポリマーと前記ファルネセンコポリマーとの合計含有量は、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。
前記ファルネセンホモポリマーと前記ファルネセンコポリマーとの合計含有量は、100質量部以下であることが好ましく、75質量部以下であることがより好ましい。
【0041】
前記ポリマー組成物は、例えば、無機フィラーや繊維などの補強材、該補強材と樹脂との親和性を向上させるためのカップリング剤などをさらに含んでもよい。
前記ポリマー組成物は、例えば、ロジンや酸変性ポリマーなどの接着性向上剤を含有していてもよい。
前記ポリマー組成物は、例えば、オイルなどの軟化剤、老化防止剤、酸化防止剤、耐侯剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、顔料、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤、香料等をさらに含んでもよい。
【0042】
前記無機フィラーとしては、シリカ粒子、アルミナ粒子、タルク粒子、クレー粒子、炭酸カルシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子などが挙げられる。
【0043】
前記繊維としては、例えば、ポリアミド6繊維、ポリアミド6,6繊維、ポリアミド11繊維、ポリアミド12繊維等の脂肪族ポリアミド繊維;ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド繊維、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミド繊維などの芳香族ポリアミド繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などのポリオレフィン繊維;ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリブチレンナフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアリレート繊維などのポリエステル繊維;ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリウレタン繊維、アクリル繊維、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、ポリイミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、フッソ樹脂繊維などが挙げられる。
【0044】
前記繊維としては、例えば、木綿繊維、麻繊維、絹繊維、羊毛繊維、セルロース繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維などが挙げられる。
前記繊維は、例えば、カーボンナノファイバーやセルロースナノファイバーであってもよい。
【0045】
前記カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤が挙げられる。
【0046】
前記ロジンとしては、例えば、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジンなどが挙げられる。
【0047】
前記酸変性ポリマーとしては、例えば、無水マレイン酸やマレイン酸エステルなどの極性モノマーと、エチレン、プロピレン、炭素数4以上のαオレフィンなどのオレフィン系モノマーとの共重合体が挙げられる。
該共重合体は、前記極性ポリマーが主鎖を構成するブロックコポリマーやランダムコポリマーであっても、前記極性ポリマーが側鎖を構成するグラフトコポリマーであってもよい。
前記共重合体は、複数のオレフィン系モノマーと1以上の極性モノマーとの3種以上のモノマーを構成単位とした共重合体であってもよい。
【0048】
前記ポリマー組成物は、前記エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、前記ファルネセンホモポリマー及び前記ファルネセンコポリマーとは別の成分の含有率が、通常、30質量%以下とされる。
該含有率は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
前記ミッドソール3を構成する発泡体は、発泡剤を含有してもよい。
また、前記発泡体は、架橋状態であってもよく、架橋剤や架橋助剤を含有してもよい。
【0050】
前記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、ジメチル-2,2’-アゾビスブチレート、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチル-プロピオンアミジン]等のアゾ化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体;p-トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物;トリヒドラジノトリアジンなどの有機系熱分解型発泡剤を採用することができる。
【0051】
前記発泡剤は、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の重炭酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩;亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、水素化合物などの無機系熱分解型発泡剤であってもよい。
【0052】
前記発泡剤が上記のような熱分解型発泡剤である場合、前記ポリマー組成物には、例えば、酸化亜鉛などの金属酸化物系発泡助剤、尿素系発泡助剤、サリチル酸系発泡助剤、安息香酸系発泡助剤などの発泡助剤を含有させてもよい。
【0053】
前記発泡剤は、例えば、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の各種脂肪族炭化水素類などの有機系発泡剤、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水などの無機系発泡剤であってもよい。
【0054】
前記架橋剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0055】
前記架橋助剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリシクロデカンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどを挙げることができる。
【0056】
前記発泡体を形成する際の前記ポリマー組成物における発泡剤や架橋剤などの含有量は当該発泡体に求められる発泡度や架橋度などによって適宜調整すればよい。
【0057】
本実施形態のミッドソール3は、靴1に対して優れた軽量性を発揮させるべく、JIS K7112のA法「水中置換法」によって23℃の温度条件下において測定される密度の値が、0.5g/cm以下の発泡体で構成されることが好ましい。
該発泡体の密度は、0.4g/cm以下であることがより好ましく、0.3g/cm以下であることがさらに好ましく、0.25g/cm以下であることが特に好ましい。
該密度は、試料の浮上を防止するような機構を備えた比重計を用いて測定することができ、例えば、アルファミラージュ社から高精度電子比重計として市販されている比重計などによって測定することができる。
【0058】
前記ミッドソール3を構成する発泡体の常温(23℃)における損失正接(tanδ)は、0.08以上であることが好ましく、0.09以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。
前記損失正接は、通常、0.25以下である。
【0059】
前記発泡体の損失正接(tanδ)は、動的粘弾性試験によって求めることができ、該動的粘弾性試験によって貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)とを求め、前記貯蔵弾性率(G’)に対する前記損失弾性率(G”)の割合(G”/G’(=tanδ))を算出することによって求めることができる。
【0060】
前記動的粘弾性試験は、JIS K7244-4に準拠して実施することができ、例えば、次のようにして実施することができる。
<動的粘弾性試験の試験方法>
ミッドソール3から、所定寸法(例えば、長さ33±3mm、幅5±0.3mm、厚さ2±0.3mm)の短冊状の試験片を採取する。
ミッドソール3から、上記のような試験片を切り出すことが難しい場合は、同じ配合のポリマー組成物で作製した発泡シートから短冊状試験片を切り出すようにしてもよい。
この短冊状試験片を動的粘弾性測定装置にチャック間距離が20±0.2mmとなるようにセットする。
測定モードは、正弦波歪みの引張モードとし、荷重は自動静荷重とし、動歪みを5μm(0.025%)として、周波数10Hzで試験を行う。
尚、動的粘弾性測定の試験温度は23℃とし、短冊状試験片は、23℃の環境下において12時間以上保持した後に動的粘弾性試験に供するものとする。
【0061】
本実施形態のミッドソール3は、当該ミッドソール3を備えた靴1を着用した着用者が歩いたり走ったりする際に踵に加わる衝撃を吸収して快適性を発揮する。
また、本実施形態では、全部が発泡体で構成されているミッドソール3を例示しているが、本発明のミッドソールは、例えば、発泡体と別のシート体との複合体であってもよい。
【0062】
本実施形態の靴1は、ミッドソール3を構成する発泡体とは別の発泡体が緩衝体となって靴底に備えられていてもよい。
【0063】
本実施形態の靴1は、前記インナーソール5aと前記ソックライナー5bとの内の少なくともいずれか一方を、その一部又は全部を前述のような発泡体で構成して前記ミッドソール3とともに優れた緩衝性を発揮させるようにしてもよい。
【0064】
本実施形態の靴1は、前記ミッドソール3に代えて、前記インナーソール5aと前記ソックライナー5bとの内の少なくともいずれか一方を、その一部又は全部を前述のような発泡体で構成して優れた緩衝性を発揮させるようにしてもよい。
【0065】
本実施形態の靴1は、ミッドソール3を構成する発泡体とは別の発泡体が緩衝体となってミッドソール3の配設箇所に設けられてもよい。
このような態様の靴を、図3図4を参照しつつ説明する。
尚、図3図4には、図1図2に示した靴1と同様の構成となっている部分に共通する符号を付している。
また、以下においては図1図2に示した靴1と同様の構成に関しては繰り返して説明をしていない。
【0066】
図3図4に示した靴1のミッドソール3は、着用者の踵によって荷重が加わる位置(踵支持領域)において上部に開口した凹入部3hを備えている。
この靴1は、ミッドソール3を構成する発泡体とは別の発泡体が衝撃吸収材6となって前記凹入部3hに収容されている。
該実施形態では、前記衝撃吸収材6が緩衝体となって靴底に備えられている。
前記衝撃吸収材6は、下面61が前記凹入部3hの底面に接し、外周面62が前記凹入部3hの周壁面に接するように配されており、天面63が前記ミッドソール3の上面32と一つの平面を形成するように配されている。
即ち、本実施形態の衝撃吸収材6は、上面視においてミッドソール3よりも面積が小さく、側面視においてミッドソール3よりも厚さが薄くなるように形成されている。
【0067】
衝撃吸収材6の天面63は、必ずしもミッドソール3の上面32と一つの平面を形成していなくてもよい。
例えば、前記衝撃吸収材6は、ミッドソール3の内部に埋設されていてもよい。
【0068】
尚、本実施形態での衝撃吸収材6は、踵部以外にも靴の各所に配置することができる。
また、本実施形態では、全部が発泡体で構成されている衝撃吸収材6を例示しているが、本発明の緩衝体は、例えば、2枚の繊維シートの間に発泡体が挟み込まれたサンドイッチ構造を有する複合体などのように発泡体とシート体との複合体であってもよい。
また、本発明の緩衝体は、上記以外の複合体であってもよい。
【0069】
尚、本実施形態においては、緩衝体を靴用のものとして例示しているが、本発明の緩衝体は靴用に限らず幅広い用途において利用可能である。
即ち、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例
【0070】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
<配合材料(その1)>
ポリマー組成物を調製するための配合材料として次のようなものを用意した。
0)ファルネセンを構成単位として含む共重合体
両末端にポリスチレンブロック(PS)を有し、これら2つのポリスチレンブロックの間に水素添加されたポリファルネセンブロック(PF)を有するトリブロック共重合体(PS/PF/PS)である水素添加スチレンファルネセンブロック共重合体を約50質量%含み、タイプAデュロメータ硬さ(以下「HA」ともいう)が25°のマスターバッチ(MB)。
1-1)エチレン-αオレフィンランダム共重合体(POE1)
エチレンとαオレフィンとを構成単位として含んでいるランダム共重合体であり、融点(mp)が66℃で、HA(タイプAデュロメータ硬さ)が87°のエチレン-αオレフィンランダム共重合体。
1-2)エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC1)
エチレンとαオレフィンとを構成単位として含んでいるチェーンシャトリング共重合体であり、融点(mp)が119℃で、HA(タイプAデュロメータ硬さ)が77°のエチレン-αオレフィンブロック共重合体。
1-3)エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA1)
酢酸ビニル含有率(VA)が25質量%で融点(mp)が77℃であり、HA(タイプAデュロメータ硬さ)が88°のエチレン-酢酸ビニル共重合体。
1-4)無機フィラー
・炭酸カルシウム粒子(CaCO
1-5)各種添加剤
・活性剤:酸化亜鉛、ステアリン酸
・架橋剤:ジクミルペルオキシド(DCP)
・発泡剤:有機系熱分解型発泡剤(アゾジカルボンアミド(ADCA))
【0072】
<評価1:「発泡体1-0」の調製>
ポリマー成分として上記のマスターバッチのみを用いて表1に「参考」として示したような発泡体を作製した。
該発泡体の硬度(アスカーC硬度)、比重、損失正接(tanδ)を測定した。
結果を併せて表1に示す。
【0073】
<評価1:「発泡体1-1」~「発泡体1-3」の調製>
ポリマー成分として上記のエチレン-αオレフィンランダム共重合体(POE1)と、上記のマスターバッチ(MB)とを用い、エチレン-αオレフィンランダム共重合体(POE1)のみを用いた場合の発泡体(1-1)と、マスターバッチ(MB)をさらに用いた場合の発泡体(1-2、1-3)とを作製した。
該発泡体の硬度(アスカーC硬度)、比重、損失正接(tanδ)を測定した。
また、マスターバッチ(MB)を含んでいない発泡体における損失正接(tanδ)の値を基準値(100%)とし、マスターバッチ(MB)を用いた場合の損失正接(tanδ)の値を基準値に対する比率で表し、これを「tanδ向上率」とした。
結果を併せて表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
<評価2:「発泡体2-1」~「発泡体2-3」の調製>
表2に示す通り、ポリマー成分として上記のエチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC1)と、上記のマスターバッチ(MB)とを用い、エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC1)のみを用いた場合の発泡体(2-1)と、マスターバッチ(MB)をさらに用いた場合の発泡体(2-2、2-3)とを作製した。
該発泡体の硬度(アスカーC硬度)、比重、損失正接(tanδ)を測定した。
また、マスターバッチ(MB)を含んでいない発泡体における損失正接(tanδ)の値を基準値(100%)とし、マスターバッチ(MB)を用いた場合の損失正接(tanδ)の値を基準値に対する比率で表し、これを「tanδ向上率」とした。
結果を併せて表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
<評価3:「発泡体3-1」~「発泡体3-3」の調製>
表3に示す通り、ポリマー成分として上記のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA1)と、上記のマスターバッチ(MB)とを用い、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA1)のみを用いた場合の発泡体(3-1)と、マスターバッチ(MB)をさらに用いた場合の発泡体(3-2、3-3)とを作製した。
該発泡体の硬度(アスカーC硬度)、比重、損失正接(tanδ)を測定した。
また、マスターバッチ(MB)を含んでいない発泡体における損失正接(tanδ)の値を基準値(100%)とし、マスターバッチ(MB)を用いた場合の損失正接(tanδ)の値を基準値に対する比率で表し、これを「tanδ向上率」とした。
結果を併せて表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
上記の結果から、ファルネセンを構成単位として含む単独重合体や共重合体を含有させることで発泡体の損失正接(tanδ)の値が向上され、しかも、「発泡体2-2」、「発泡体2-3」、「発泡体3-2」、及び、「発泡体3-3」では、損失正接(tanδ)の値が著しく向上されていることがわかる。
即ち、上記の結果からは、ファルネセンを構成単位として含む単独重合体や共重合体をエチレン-αオレフィンブロック共重合体やエチレン-酢酸ビニル共重合体に加えた際には顕著に損失正接の値が向上することがわかる。
【0080】
<配合材料(その2)>
次に、下記のような配合材料を用意した。
2-1)エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA2)
酢酸ビニル含有率(VA)が6質量%で融点(mp)が99℃であり、HA(タイプAデュロメータ硬さ)が97°のエチレン-酢酸ビニル共重合体。
2-2)エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA3)
酢酸ビニル含有率(VA)が6質量%で融点(mp)が94℃であり、HA(タイプAデュロメータ硬さ)が96°のエチレン-酢酸ビニル共重合体。
2-3)エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA4)
酢酸ビニル含有率(VA)が6質量%で融点(mp)が88℃であり、HA(タイプAデュロメータ硬さ)が94°のエチレン-酢酸ビニル共重合体。
【0081】
<評価4>
先の評価1~評価3で用いた無機フィラーや添加剤(活性剤、架橋剤、発泡剤)を用いて評価1~評価3と同様に発泡体を作製した。
まず、下記表4に示すようにポリマー成分としてマスターバッチ(MB)を入れずに「EVA2」だけで発泡体を作製した(発泡体4-1)。
次いで、マスターバッチ(MB)と「EVA2」とを用いて発泡体を作製した(発泡体4-2)。
同様に、「EVA3」、「EVA4」についてもマスターバッチ(MB)を用いない場合と用いる場合とで発泡体を作製し評価1~評価3と同様に評価した。
結果、タイプAデュロメータ硬さの値が高い「EVA2」~「EVA4」では、マスターバッチ(MB)の使用により発泡体のアスカーC硬度を低下させることができるものの損失正接(tanδ)の向上率は、評価3(EVA1)のような高い値を示さないことがわかった。
【0082】
【表4】
【0083】
<配合材料(その3)>
次に、下記のような配合材料を用意した。
3-1)エチレン-αオレフィンランダム共重合体(POE2)
エチレンとαオレフィンとを構成単位として含んでいるランダム共重合体であり、融点(mp)が94℃で、HA(タイプAデュロメータ硬さ)が95°のエチレン-αオレフィンランダム共重合体。
【0084】
<評価5>
先の評価1~評価3で用いた無機フィラーや添加剤(活性剤、架橋剤、発泡剤)を用いて評価1~評価3と同様に発泡体を作製した。
まず、下記表5に示すようにポリマー成分としてマスターバッチ(MB)を入れずに「POE2」だけで発泡体を作製した(発泡体5-1)。
次いで、マスターバッチ(MB)と「POE2」とを用いて発泡体を作製した(発泡体5-2)。
これらについて評価1~評価3と同様に評価した。
結果を下記表5に示す。
この結果では、タイプAデュロメータ硬さの値が高い「POE2」では損失正接の向上率が低いことが確認できた。
【0085】
【表5】
【0086】
<配合材料(その4)>
次に、下記のような配合材料を用意した。
4-1)スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS1)
スチレン含有量が約18質量%で、HA(タイプAデュロメータ硬さ)が67°のスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)。
4-2)EPR(EPR1)
エチレン含有量が約52質量%で、加硫後のHA(タイプAデュロメータ硬さ)が60°のエチレンプロピレンゴム。
【0087】
<評価6>
先の評価1~評価3で用いた無機フィラーや添加剤(活性剤、架橋剤、発泡剤)を用いて評価1~評価3と同様に発泡体を作製し評価1~評価3と同様に評価した。
結果を下記表6に示す。
この結果からは、第2成分が、EVAなどの樹脂だけでなくゴムをも含み得ることが確認できた。
【0088】
【表6】
【0089】
以上のことから本発明によれば高い損失正接を有する発泡体を提供することができ、緩衝性能に優れた緩衝体や緩衝性能に優れた靴が本発明によって提供され得ることがわかる。
【符号の説明】
【0090】
1:靴、2:アッパー、3:ミッドソール、4:アウトソール、5a:インナーソール、5b:ソックライナー、6:衝撃吸収材
図1
図2
図3
図4