(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】電気機械用ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/10 20060101AFI20220705BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20220705BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
H02K15/10
H02K3/34 C
H02K9/19 A
(21)【出願番号】P 2020529559
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2018081563
(87)【国際公開番号】W WO2019110274
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】102017221801.0
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カニングハム ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グラープヘア フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ウェブ イアン
(72)【発明者】
【氏名】メイル ティム
(72)【発明者】
【氏名】マーキック ストージャン
(72)【発明者】
【氏名】センテンス グラハム
(72)【発明者】
【氏名】セヴァー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ゾンターク ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィットカム ジョン
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-070199(JP,A)
【文献】特開2014-197962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0136271(US,A1)
【文献】実開平06-062783(JP,U)
【文献】特開平04-312333(JP,A)
【文献】特開平10-271738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/10
H02K 3/34
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械用ステータ(1)の製造方法であって、
a)環状のステータ本体(2)を有し、ステータ本体(2)の周方向(U)に沿って互いに間隔をあけて配置されるステータ巻線(5)を受けるための複数のステータティース(3)が径方向内側に突出し、さらに周方向(U)に隣接する2つのステータティース(3)の間にそれぞれ中間空間(4)が形成されるステータ(1)を準備するステップと、
b)周方向(U)に隣接する少なくとも2つのステータティース(3)を第1プラスチックマス(K1)で少なくとも部分的にオーバーモールドするステップと、
c)少なくとも1つのステータティース(3)に少なくとも1つのステータ巻線(5)を配置するステップと、
d)少なくとも1つのステータ巻線(5)を、第2プラスチックマス(K2)を用いるステータ巻線の少なくとも部分的なオーバーモールディングにより少なくとも1つのステータティース(3)に固定するステップと、
を含み、
ステップa),b),c),d)が順に行われるステップであり、
第1プラスチックマス(K1)を用いるステップb)のオーバーモールディングに続いて、そしてステップd)の少なくとも1つのステータ巻線(5)の固定の前に、冷却通路(9)を形成するための(第1)マスク(6a)によって満たされる中間空間(4)の容積が、ステップd)のオーバーモールディング中に第2プラスチックマス(K2)から制約されないままであるように、2つのステータティース(3)の間の中間空間(4)に(第1)マスク(6a)が導入される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1において、
第1マスク(6a)は、ステップb)において第1プラスチックマス(K1)で部分的または完全に覆うことができる中間空間(4)を径方向外側で区画するステータ本体(2)の表面部分(7)を覆い、その表面部分(7)がステップd)のオーバーモールディング中に第2プラスチックマス(K2)で覆われないようにする
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
(第1)マスク(6a)が、中間空間(4)の径方向外側の端部(10a)に導入される
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3において、
(第1)マスク(6a)は、径方向外側の端部(10a)の全体を満たす
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1つにおいて、
追加の方法ステップe)を含み、ステップe)は
e)(第1)マスク(6a)の除去の後に存在する中空空間(8)が、冷却剤が流れる冷却剤通路(9)を形成するように、第2プラスチックマス(K2)を用いるオーバーモールディングに続いて中間空間から(第1)マスク(6a)を除去するステップである
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1つにおいて、
追加の方法ステップf)を含み、ステップf)は、
f)中空空間(8)または冷却材通路(9)を区画する第2プラスチックマス(K2)、及び/または第2プラスチックマス(K2)によってステータティース(3)に固定されるステータ巻線(5)、及び/または(第1)マスク(6a)によって覆われたステータ本体(2)の表面部分(7)を、(第1)マスク(6a)を除去する前に第3プラスチックマス(K3)でオーバーモールドするステップである
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6において、
第3プラスチックマス(K3)を用いるオーバーモールディングが、(第1)マスク(6a)の除去後に行われる
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7において、
冷却剤通路(9)は、第1及び/または第3プラスチック剤(K1,K3)のみで区画される
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1つにおいて、
第1プラスチックマス(K1)を用いるステップb)のオーバーモールディングに続いて、そしてステップd)の少なくとも1つのステータ巻線(5)の固定の前に、(第2)マスク(6b)によって満たされる中間空間(4)の容積が、追加の冷却通路(9’)を形成するためのステップd)のオーバーモールディング中に第2プラスチックマス(K2)に制約されないままであるように、第2マスク(6b)が中間空間(4)の径方向内側端部(10b)に導入される
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9において、
第2マスク(6b)は、ステップb)において第1プラスチックマスK1)で部分的にまたは完全に覆うことができる中間空間(4)を径方向内側で区画するステータティース(3)の表面部分(7’)を覆い、ステップd)において表面部分(7’)が第2プラスチックマス(K2)で覆われないようにする
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10において、
追加の方法ステップe1)を含み、ステップe1)は
e1)第2マスク(6b)の除去に続いて存在する中空空間(8’)が、冷却剤が流れる追加の冷却剤通路(9’)を形成するように、第2プラスチックマス(K2)を用いるオーバーモールディングの後に中間空間(4)から第2マスク(6b)を除去するステップである
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項6から11の何れか1つにおいて、
第3プラスチックマス(K3)を用いるオーバーモールディングは、そのオーバーモールディングに続いて、オーバーモールドされた中空空間(8)及び/または追加の中空空間(8’)ないし冷却剤通路(9)及び/または追加の冷却剤通路(9’)が、どのようなポイントでもステータ巻線(5)及び/またはステータ本体(2)によって直接に区画されないように実施される
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12の何れか1つにおいて、
追加の方法ステップg)を含み、ステップg)は、
g)ステータ本体(2)の少なくとも1つの外周側面(16)を第4プラスチックマス(K4)でオーバーモールドするステップである
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から13の何れか1つにおいて、
第1及び/または第2及び/または第3及び/または第4プラスチックマスは、熱硬化性プラスチックを含むか、または熱硬化性プラスチックである
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から14の何れか1つにおいて、
第1及び/または第2及び/または第3及び/または第4プラスチックマスは、熱可塑性プラスチックを含むか、または熱可塑性プラスチックである
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1から15の何れか1つにおいて、
第1及び第2及び第3プラスチックマス(K1,K2,K3)のプラスチック材料は、同一の熱硬化性プラスチックを含むか、または同一の熱硬化性プラスチックからなり、
第4プラスチックマス(K4)のプラスチック材料は、第1、第2及び第3プラスチックマスの熱硬化性プラスチックとは異なる熱可塑性プラスチックである
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16において、
第4プラスチックマス(K4)の熱伝導率は、第1及び/または第2及び/または第3プラスチックマス(K1,K2,K3)の熱伝導率よりも低く、及び/又は
第4プラスチックマス(K4)の強度は、第1及び/または第2及び/または第3プラスチックマス(K1,K2,K3)の強度よりも高い
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1から17の何れか1つにおいて、
第1及び第3プラスチックマス(K1,K3)のプラスチック材料は、同一の熱硬化性プラスチックを含むか、または同一の熱硬化性プラスチックからなり、且つ第2及び第4プラスチックマス(K2,K4)のプラスチック材料とは異なり、第2プラスチックマスのプラスチック材料(K2)は、第4プラスチックマス(K4)のプラスチック材料とは異なる
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18において、
1及び/または第3プラスチックマス(K4)の冷却剤耐性は、第2及び/または第4プラスチックマス(K4)の冷却剤耐性よりも高く、及び/または
第1及び/または第3プラスチックマス(K4)の熱伝導率は、第2プラスチックマス(K2)の熱伝導率よりも低く、及び/または
第4プラスチックマス(K4)の強度は、第1及び/または第2及び/または第3プラスチックマス(K1,K2,aK3)の強度よりも高い
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18または19において、
各冷却通路を区画する第3及び/または第1プラスチックマスの層の厚さが、最大0.8mmになり、優先的には最大0.3mmになる
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1から17の何れか1つにおいて、
第1,第2,第3及び第4プラスチックマス(K1,K2,K3,K4)のプラスチック材料は、異なる熱可塑性プラスチックもしくは熱硬化性プラスチックを含むか、または異なる熱可塑性プラスチックもしくは熱硬化性プラスチックからなる
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21において、
第1及び/または第3プラスチックマス(K1,K3)の冷却剤耐性は、第2プラスチックマス(K2)の冷却剤耐性よりも高く、及び/または
第2プラスチックマス(K2)の熱伝導率は、第1及び/または第3及び/または第4プラスチックマス(K4)の熱伝導率よりも高く、及び/または
第4プラスチックマス(K4)の強度は、第1及び/または第2及び/または第3プラスチックマス(K1,K2,K3)の強度よりも高い
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1から22の何れか1つにおいて、
追加の方法ステップ(h1,h2を含み、ステップ(h1,h2)は、
h1)ステータ(2)の表面及び/または内部に、少なくとも1つの冷却剤通路(9)を介して、及び/または少なくとも1つの追加の冷却剤通路(9’)を介して互いに流体的に連通する冷却剤分配空間(22a)および冷却剤収集空間(22b)を設けるステップと、
h2)冷却剤分配空間(22a)、及び/または冷却剤収集空間(22b)、及び/または少なくとも1つのステータ巻線(5)の軸方向端部のうちの少なくとも1つの固定子巻線(5)の軸方向端部を、電気的に絶縁性の絶縁材料を用いて、及び/または第3プラスチックマス(K3)を用いて、及び/または第4プラスチックマス(K4)を用いて区画する第2プラスチックマス(K2)をオーバーモールド及び/またはスプレーするステップと、
を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23において、
ステップh2)のオーバーモールドまたはスプレーは、そのオーバーモールドまたはスプレーに続いて、第2プラスチックマス(K2)も、少なくとも1つのステータ巻線(6)優先的には複数のステータ巻線(5)の軸方向端部も、冷却剤分配空間(22a)または冷却剤収集空間(22b)を区画しないように実施される
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23または24において、
方法のステップd)では、少なくとも1つのステータ巻線(6)の軸方向端部もまた、少なくとも1つのステータティース(3)に第2プラスチックマス(K2)によって固定される
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械用ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、従来の電気機械用ステータは、その機械の運転中に通電されるステータ巻線を有する。このような電気機械は、一般には電動機または発電機とすることができる。電動機は、外部ロータ機または内部ロータ機として構成できる。機械の動作中には、この機械に接続されているステータの過熱、及び損傷さらには破壊を避けるために放出すべき熱が発生する。そのために、従来のステータでは、ステータ、特に前記ステータ巻線を冷却するために、冷却システムをステータに設けることが知られている。このような冷却システムは、冷却剤が流れ、ステータ巻線の近くに配置される1つまたは複数の冷却通路を有する。ステータ巻線から冷却剤への熱伝達によって、熱をステータから放出できる。このように、ステータ巻線の過熱と、それに伴うステータの損傷さらには破壊を回避できる。
【0003】
前述の冷却通路を設けるための製造コストを抑えるために、ステータ巻線を支持するステータティースを含むステータ本体を形成するステータのコアスタックをプラスチックマスでオーバーモールドし、射出成形中にプラスチックマスに前記冷却通路を形成することが知られている。オーバーモールディング中にステータティースに巻かれたステータ巻線は、ステータに取り外せないように固定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステータ本体とステータティースに配置される巻線とのオーバーモールディング中に、導電性であるように形成される巻線が、同じように導電性のステータ本体に、一般には互いに積層される導電性の金属シートで形成されるステータ本体に、接触して位置しないようにするのを実際に保証できないため、この接続に問題があることが分かる。しかしながら、このことによってステータ巻線とステータ本体とが電気的に接続されると、望ましくない電気的短絡が引き起こされる。
【0005】
このことは、実際にステータ巻線がすでに電気絶縁材を用いて製造された場合にも普通は当てはまり、その理由は、電気機械の運転中に高電流が巻線を流れることによって生じる高温のために電気絶縁材が部分的に損傷したり破壊されたりするおそれがあるからである。
【0006】
同様に、プラスチックマスを用いる射出成形工程で冷却通路を形成した後に、ステータ巻線が冷却通路内へ突出しないということを、考慮しないことはできない。ステータ巻線の前記電気絶縁材が損傷したり、さらには破壊されたりした場合には、ステータ巻線は、冷却通路を通って導入される冷却剤と直接接触することがあるが、それはステータ巻線が冷却剤と電気的に接続されるのを防止するために避ける必要がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、前述の欠点が大部分または完全に克服される、冷却通路を有するステータを製造するための改良された製造方法を創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、特許請求の範囲の独立項の主題によって達成される。好ましい実施形態は、特許請求の範囲の従属項の主題である。
【0009】
本発明に係る電気機械用ステータの製造方法は、第1ステップa)を有する。ステップa)では、環状のステータ本体を有するステータが準備され、このステータ本体から、周方向に互いに間隔をあけて配置される複数のステータティースが、ステータ巻線を受けるために突出する。周方向に隣接する2つのステータティースの間には、それぞれ、中間空間、いわゆるステータスロットが形成される。
【0010】
さらなるステップb)では、周方向に隣接する少なくとも2つのステータティースが、第1プラスチックマスで少なくとも部分的にオーバーモールドされる。このようにして、さらにステータティースに巻き付けるべきステータ巻線が、巻き付け後は導電性のステータティースに対して、さらに確実に電気的に絶縁される。このために、中間空間に面するステータティースの周方向の側面が優先的にオーバーモールドされる。
【0011】
さらなるステップc)では、少なくとも1つのステータティースに少なくとも1つのステータ巻線が配置される。この動作は、ステータティースへのステータ巻線の巻き付けに対応する。ステータ巻線は、集中巻きまたは分散巻きのステータ巻線として実現できる。さらなるステップd)では、この少なくとも1つのステータ巻線が、第2プラスチックマスを用いる、このステータ巻線の少なくとも部分的なオーバーモールディングにより、ステータティースに固定、すなわち取り外せないように締め付けられる。
【0012】
本発明によれば、第1プラスチックマスでのステップb)のオーバーモールドに続いて、そしてステップd)の少なくとも1つのステータ巻線の固定の前に、2つのステータティースの間の中間空間に第1マスクが導入される。このことは、冷却通路を形成するために第1マスクによって満たされる中間空間の容積がステップd)のオーバーモールディング中に第2プラスチックマスに制約されないままであるように実施される。
【0013】
本明細書に記載される方法で製造されるステータの場合、ステータ巻線の冷却は、したがって、ステータ巻線で、特にその軸方向端部で発生した廃熱を、第1、第2及び/または第3プラスチックマスからステータ本体に形成された冷却剤通路への伝達によって行うことができる。そこで、廃熱は冷却剤通路を流れる冷却剤に吸収される。
【0014】
上述の処理は、複数のステータティース及び複数のステータ巻線に適用するのが好ましい。特に、上述の処理は、ステータ本体にある全てのステータティースと、ステータティースに配置される全てのステータ巻線とに適用されるのが好ましい。
【0015】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、第1マスクは中間空間を径方向外側で区画するステータ本体の表面部分を覆い、その表面部分は、その表面部分がステップd)において第2プラスチックマスで覆われないように、ステップb)において第1プラスチックマスで部分的または完全に覆うことができる。したがって、第1プラスチックマスは、ステータ本体の電気的絶縁に用いることができる。同時に、第1マスクにより、ステータ巻線を第2プラスチックマスで固定するときに冷却通路を形成するのに必要な容積を自由に維持できる。
【0016】
好ましい実施形態によれば、第1マスクは、対応する中間空間の径方向外側端部に導入される。中間空間のこの領域は、ステータ巻線が径方向外側端部の領域で特に多くの廃熱を発生するため、冷却通路を形成するのに特に適する。
【0017】
特に実際には、第1マスクは、中間空間の径方向外側端部への導入の後に径方向外側端部の全体を満たす。特に好ましくは、第1マスクは、径方向外側端部を区画する第1プラスチックマスに接して少なくとも一部において平坦に位置する。
【0018】
効果的なさらなる発展例によれば、この方法は、第2プラスチックマスを用いるオーバーモールディングに続いて第1マスクが中間空間から再び除去される追加の方法ステップe)を含む。このようにして、第1マスクの除去の後に形成される中空空間は、冷却剤が流れる冷却剤通路を形成する。
【0019】
さらなる好ましい実施形態によれば、この方法は、追加の方法ステップf)を有する。ステップf)では、中空空間ないし冷却剤通路を区画する第2プラスチックマス、及びその代わりまたはそれに加えて第2プラスチックマスによってステータティースに固定されるステータ巻線、及びその代わりまたはそれに加えて第2プラスチックマスの除去前に第1マスクで覆われたステータ本体の表面部分が、第3プラスチックマスでオーバーモールドされる。このことは、第3プラスチックマスでオーバーモールディングされた後の中空空間ないし冷却剤通路が、第3または第1プラスチックマスのみで区画されるように実施されるのが好ましい。
【0020】
実際には、第3プラスチックマスを用いるオーバーモールディングは、第1マスクを除去した後に行われる。第2プラスチックマスから突出する固定子巻線はどれも、このようにして、冷却剤通路を流れる冷却剤から絶縁される。好ましくは、同じやり方を、既に存在する中空空間ないし冷却剤通路の複数に適用することができる。特に好ましくは、同じやり方を、既に存在する中空空間ないし冷却剤通路の全てに適用することができる。
【0021】
好ましくは、ステップf)の実施の後に、対応する冷却剤通路が、第1プラスチックマスのみまたは第3プラスチックマスのみで区画される。このようにして、ステータ巻線またはステータ本体と冷却剤との許容されない電気的/機械的な接触が排除される。
【0022】
特に好ましくは、第1または第3プラスチックマスを用いるオーバーモールディングは、オーバーモールディングに続いて中空空間ないし冷却剤通路が、もはやステータ巻線及び/またはステータ本体によってどのようなポイントでも直接に区画されないように行われる。このようにして、ステータ巻線と冷却剤との許容できない電気的/機械的な接触が排除される。
【0023】
別の好ましい実施形態によれば、第1プラスチックマスを用いるステップb)のオーバーモールディングに続いて、そしてステップd)の少なくとも1つのステータ巻線の固定の前に、第2マスクが中間空間の径方向内側の端部に導入される。このようにして、追加の冷却通路を形成するために第2マスクによって満たされる中間空間の容積が、ステップd)のオーバーモールディング中に第2プラスチックマスに制約されないままになることが保証される。また、中間空間のこの領域は、径方向内側端部の領域でステータ巻線が特に多くの廃熱を発生するため、冷却通路を形成するのに特に有利であることが分かる。
【0024】
特に好ましくは、第2マスクは、ステップb)において第1プラスチックマスで部分的にまたは完全に覆うことができる中間空間の径方向内側を区画する2つのステータティースの表面部分を覆う。このように、ステップd)において表面部分が第2プラスチックマスで覆われないことが保証される。
【0025】
好ましい実施形態によれば、ステップa)で準備されるステータ本体の周方向に隣接する少なくとも2つのステータティースは、それぞれ、ステータ本体から離れて向かう端部に、周方向に突出する少なくとも1つの延長部を含む。この実施形態では、周方向に隣接するステータティースの2つの延長部は、周方向に互いに対向して位置する。このように、通路スロットを形成する2つの延長部は、ステータティースの間に形成される中間空間を径方向内側で部分的に区画する。
【0026】
好ましくは、上述したやり方は、複数のステータティース及び複数のステータ巻線に適用される。特に好ましくは、上述のやり方は、ステータ本体にあるステータティースの全てに適用され、ステータティースに配置されるステータ巻線の全てに適用される。
【0027】
さらなる好ましい実施形態によれば、この方法は、さらなる追加の方法ステップe1)を含むことができる。このステップe1)では、第2プラスチックマスを用いるオーバーモールディングに続いて通路スロットから第2マスクが除去される。したがって、第2マスクの除去に続いて形成される中空空間が、冷却剤が流れる追加の冷却剤通路を形成する。
【0028】
さらに有利なさらなる発展例では、この方法は、さらなる追加の方法ステップf1)を含むことができる。追加の方法ステップf1)では、追加の冷却剤通路を区画する第2プラスチックマス、及びその代わりまたはそれに加えて第2プラスチックマスによってステータティースに固定されるステータ巻線、及びその代わりまたはそれに加えて第2マスクが除去される前に第2マスクによって覆われるステータティースの表面部分が、第3プラスチックマスでオーバーモールドされる。このことは、この発展例では、第3プラスチックマスK3でオーバーモールディングされた後に追加の冷却剤通路が第3または第1プラスチックマスK3、K1のみによって区画されるように行われる。
【0029】
このようにして、第2プラスチックマスから突出する固定子巻線はどれも、冷却剤通路を流れる冷却剤から絶縁される。
【0030】
特に好ましくは、追加の冷却剤通路は、第3プラスチック剤のみによって区画される。このようにして、ステータ巻線と冷却剤との許容されない電気的な接触が排除される。
【0031】
実質的に、第3プラスチックマスを用いるオーバーモールディングは、オーバーモールディングに続いて、中空空間ないし冷却剤通路が、ステータ巻線及び/またはステータ本体によって、どのようなポイントでも直接区画されないように行われる。このようにして、ステータ巻線と冷却剤との許容されない電気的な接触が排除される。
【0032】
好ましくは、第2マスクは、周方向に隣接する2つのステータティースの間に形成される通路スロットを満たすだけでなく、さらに、2つのステータティースの間の残りの中間空間へ径方向外側に突出するように構成される。この変形例では、第2マスクは、通路スロットに続いて中間空間の径方向内側端部をさらに満たす。
【0033】
第1及び/または第2マスクは、それが特に好ましくは鋼からなるプレート状またはプレートレット状に形成されるインサートによって形成される場合に特に生産性がよく、費用効率がよいことが分かる。
【0034】
有利なさらなる発展例によれば、この方法は、ステータ本体の少なくとも1つの外周側面を第4プラスチックマスでオーバーモールドできる、さらなる追加の方法ステップg)を備えることができる。
【0035】
有利なさらなる発展例では、ステップg)のオーバーモールディング中にステータ本体の外周側面にも設けられる軸方向に延びる延長部が、第4プラスチックマスでオーバーモールドされ、その軸方向の端部側にはステータ本体にそれぞれベアリングシールドを締結するためのねじロッドがそれぞれ突出する。
【0036】
他の好ましい実施形態では、互いに軸方向に対向して配置される2つのベアリングシールドが、追加の方法ステップにおいてオーバーモールドされたねじロッドによってステータ本体に締結される。このことは、冷却剤分配部を形成し、そのために既に存在する冷却通路と流体的に連通する第3及び/または第4プラスチックマスに設けられる第1中空空間を第1ベアリングシールドがシールするように行われる。締結は、さらに、冷却剤収集部を形成し、そのために既に存在する冷却通路と流体的に連通する第3及び/または第4プラスチックマスに設けられる第2中空空間を第2ベアリングシールドがシールするように実施される。2つのベアリングシールドは、軸方向に互いに対向して配置され、ステータ本体を軸方向に延長するエンドプレートの形態で形成できる。一方または両方のベアリングシールドには、第3及び第4プラスチックマスに設けられるそれぞれの中空空間を拡張する凹部を設けることができる。
【0037】
以下では、異なるプラスチックマスの材料特性に関する種々の有利な実施形態を説明する。材料特性に関し、基本的には、高熱伝導率、高強度、および高冷却剤抵抗を有するプラスチックマスが望ましいことに留意すべきである。しかし、これらの材料特性をすべて備えたプラスチックは非常に高価である。そのため、以下では、それぞれのプラスチックマスがそれぞれの機能を満たすために必要な材料特性のみを持つ材料の組み合わせを説明する。例えば、ステータの外側のみに設けられ、ハウジングの機能を果たす第4プラスチックマスが高熱伝導率を有する必要はない。むしろ第4プラスチックマスは機械的に高強度であれば十分である。これに対して、冷却通路を直接に区画する第3プラスチックマスは、冷却通路を流れるそれぞれの冷却剤と直接に接触するため、高冷却剤抵抗を有するべきである。同様に冷却通路を区画し、したがって冷却剤と接触することがある第1プラスチックマスも同じである。個々のステータ巻線が配置される第2プラスチックマスは、ステータ巻線によって生成される熱を効果的に放出できるようにするため、できるだけ高い熱伝導率を有するべきである。
【0038】
熱硬化性プラスチックと熱可塑性プラスチックの熱伝導率は、いずれも材料組成の選択によって調整可能である。したがって、熱可塑性プラスチックの熱伝導率は、熱硬化性プラスチックの熱伝導率以上にすることができ、その逆にすることもできる。熱可塑性プラスチックを用いることには、熱硬化性プラスチックを用いるのと比べて様々な利点がある。例えば、熱可塑性プラスチックは、その加工中に適用される可逆的な成形プロセスの結果としてリサイクル性に優れ、熱硬化性プラスチックと比較して脆性が低く減衰特性が高い。しかし、熱可塑性プラスチックは一般に熱硬化性プラスチックよりも調達コストが高いため、熱可塑性プラスチックは選択的に採用しなければならない。
【0039】
好ましい実施形態では、第1及び/または第2及び/または第3及び/または第4プラスチックマスは、前述の利点を活用するために、熱可塑性プラスチックを含むか、または熱可塑性プラスチックである。
【0040】
さらなる好ましい実施形態では、第1及び/または第2及び/または第3及び/または第4プラスチックマスは、熱硬化性プラスチックを含むか、または熱硬化性プラスチックであり、それによって前述のコストの利点を活用できる。
【0041】
さらなる好ましい実施形態では、第1,第2及び/または第3プラスチックマスのプラスチック材料は、したがって熱硬化性プラスチックを含むか、または熱硬化性プラスチックである。これとは対照的に、この実施形態の第4プラスチックマスのプラスチック材料は、熱可塑性プラスチックを含むか、または熱可塑性プラスチックである。
【0042】
有利なさらなる発展例では、第4プラスチックマスの熱伝導率は、第1,第2及び/または第3プラスチックマスの熱伝導率よりも低い。
【0043】
さらに有利なさらなる発展例では、第3プラスチックマスの冷却剤抵抗は、第2または第1プラスチックマスの冷却剤抵抗よりも大きい。
【0044】
さらに有利なさらなる発展例では、第1及び第2プラスチックマスの熱伝導率は、第3及び第4プラスチックマスの熱伝導率よりも高い。
【0045】
別の好ましい実施形態では、第1及び第2及び第3プラスチックマスのプラスチック材料は、熱可塑性プラスチックを含むか、または熱可塑性プラスチックである。これに対して、この実施形態の第4プラスチックマスのプラスチック材料は、第1,第2及び第3プラスチックマスの熱可塑性プラスチックとは異なる熱硬化性プラスチックである。
【0046】
有利なさらなる発展例では、第4プラスチックマスの熱伝導率は、第1及び/または第2及び/または第3プラスチックマスの熱伝導率よりも低い。または、あるいはさらに、この実施形態の第4プラスチックマスの強度は、第1及び/または第2及び/または第3プラスチックマスの強度よりも高い。
【0047】
別の好ましい実施形態によれば、第1及び第3プラスチックマスのプラスチック材料は、同じ熱可塑性プラスチックを含むか、または同じ熱可塑性プラスチックから構成され、第2及び第3プラスチックマスのプラスチック材料とは異なる。この実施形態では、第2プラスチックマスのプラスチック材料は、第4プラスチックマスのプラスチック材料とは異なる。
【0048】
有利なさらなる発展例によれば、第1及び/または第3プラスチックマスの冷却剤抵抗は、第2及び/または第4プラスチックマスの冷却剤抵抗よりも高い。または、あるいはさらに、このさらなる発展例の第1及び/または第3プラスチックマスの熱伝導率は、第2プラスチックマスの熱伝導率よりも低い。または、あるいはさらに、このさらなる発展例の第4プラスチックマスの強度は、第1及び/または第2及び/または第3プラスチックマスの強度よりも高い。
【0049】
実際には、それぞれの冷却通路を区画する第3及び/または第1プラスチックマスの層の厚さは、最大で0.8mmになり、優先的には最大で0.3mmになる。
【0050】
さらに好ましい実施形態によれば、第1,第2,第3及び第4プラスチックマスのプラスチック材料は、異なる熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性プラスチックを含むか、または異なる熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性プラスチックから構成される。
【0051】
有利なさらなる発展例では、第1及び/または第3プラスチックマスの冷却剤抵抗は、第2プラスチックマスの冷却剤抵抗よりも高い。または、あるいはさらに、このさらなる発展例の第2プラスチックマスの熱伝導率は、第1及び/または第3及び/または第4プラスチックマスの熱伝導率よりも高い。または、あるいはさらに、このさらなる発展例の第4プラスチックマスの強度は、第1及び/または第2及び/または第3プラスチックマスの強度よりも高い。
【0052】
さら好ましい実施形態によれば、この方法は、2つの追加の方法ステップh1,h2を有する。追加の方法ステップh1では、冷却剤分配空間及び冷却剤収集空間がステータ上及び/またはステータ内に設けられ、これらの空間は、少なくとも1つの冷却剤通路及び/または少なくとも1つの追加の冷却剤通路を介して互いに流体的に連通する。冷却剤分配空間は、冷却通路の全体に冷却剤を分配するために機能し、冷却剤収集空間は、冷却通路を通って流れる冷却剤を収集するために機能する。冷却剤分配部と冷却剤収集空間は、ステータ本体の軸方向の延長部に配置することができ、軸方向に沿って互いに対向するように位置する。冷却剤分配空間及び冷却剤収集空間の少なくとも一部を第2プラスチックマスの内部に配置または形成してもよい。導電性のステータ巻線は、個々の巻線部分が互いに接触したときに電気的短絡が生じるのを防止するために、それらの製造中であっても通常は電気絶縁材で包囲される。しかしながら、ステータ巻線の製造および組み立ての後に、これらの巻線のすべてがそのような絶縁材を引き続き備えているようにするのは保証できない。追加の方法ステップh2によれば、冷却剤分配空間、及び/または冷却剤収集空間、及び/または少なくとも1つのステータ巻線好ましくはステータ内に存在するすべてのステータ巻線の軸方向端部を区画する第2プラスチックマスは、したがって電気絶縁性を有する絶縁材料を用いてオーバーモールド及び/またはスプレーされる。そのために、好ましくは電気絶縁性ワニスが用いられる。または、あるいはさらに、プラスチックマス、特に第3プラスチックマス及び/または第4プラスチックマスを用いることも可能である。このようにして冷却剤分配空間または冷却剤収集空間に存在する冷却剤と導電性のステータ巻線との望ましくない電気的短絡を防止できる。
【0053】
特に、ステップh2)のオーバーモールディングまたはスプレーは、オーバーモールディングまたはスプレーに続いて、第2プラスチックマスも、少なくとも1つのステータ巻線の軸方向端部も、好ましくは全てのステータ巻線の軸方向端部も、冷却剤分配空間または冷却剤収集空間を直接に区画しないように実施される。このようにして導電性のステータ巻線と冷却剤分配空間または冷却剤収集空間に存在する冷却剤との望ましくない電気的な接続が防止される。
【0054】
特に好ましくは、少なくとも1つのステータ巻線の軸方向端部は、この方法のステップd)で、またはそれとは時間的にずれて、すなわちステップd)を実施する前またはステップd)を実施した後に、プラスチックマス好ましくは第2プラスチックマスによって少なくとも1つのステータティースに固定される。
【0057】
本発明のさらなる重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び図面の図の説明から明らかになる。
【0058】
前述の特徴及び以下でさらに説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、記載されたそれぞれの組み合わせで用いることができるだけでなく、当然に他の組み合わせまたはそれら単独でも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1a】
図1aは、この方法のステップa)で用いられるステータを
図1bと異なる表現で示す図である。
【
図1b】
図1bは、この方法のステップa)で用いられるステータを
図1aと異なる表現で示す図である。
【
図7a】
図7aは、この方法のステップh)を示す、
図7bと互いに代替できる変形例の図である。
【
図7b】
図7bは、この方法のステップh)を示す、
図7aと互いに代替できる変形例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、図面に示された本発明の好ましい代表的な実施形態をより詳細に説明する。
【0061】
図1aは、本発明に係る方法のステップa)で準備される環状ステータ本体2を有するステータ1の斜視図である。
図1aから明らかなように、環状ステータ本体2の周方向Uに沿って互いに間隔をあけて配置されるステータ巻線(図示せず)を受けるための複数のステータティース3が、ステータ本体2から径方向内側へ突出している。
【0062】
周方向Uに隣接する2つのステータティース3の間には、それぞれ中間空間4が形成され、この中間空間4は、当業者には「ステータスロット」という用語でも知られている。
図1bは、
図1aのステータ本体2の詳細図であり、2つのステータティース3が周方向Uに隣接する部分を、ステータ本体2の長手方向中心軸Mに沿って延び、したがって周方向U直行する軸方向Aへの平面図で詳細に示す。径方向Rは、長手方向中心軸から直角に離れる方向へ延び、したがって軸方向Aと周方向Uの両方に直交する。
【0063】
各ステータティース3は、ステータ本体2から離れる方向の端部に、ステータティース3から周方向Uに突出して周方向Uに対向する延長部12a,12bを備え、周方向Uに隣接する2つのステータティース3の周方向Uに互いに対向して配置される2つの延長部12a,12bは、それぞれ、中間空間4を部分的に区画し、径方向内側に通路溝13を形成する。
【0064】
さらなる方法ステップb)では、ステータティース3は、第1プラスチックマスK1でオーバーモールドされる。
図2aおよび2bは、方法ステップb)の実施後のステータ本体2を
図1a及び
図1bに対応する表現で示す。
図2cは、
図2aを詳細図として、隣接する複数のステータティース3を示している。
【0065】
第1プラスチックマスK1を用いるステップb)のオーバーモールディングに続いて、そしてステップd)のステータ巻線5の固定の前に、第1マスク6aが2つのステータティース3の間のそれぞれの中間空間4の径方向外側端部10aに導入される。第1マスク6aは径方向外側の端部10aの全体を満たすのが好ましい。したがって、冷却通路9を形成するために第1マスク6aによって満たされる中間空間4の容積は、その後にさらに実施されるステップd)において、すなわち第2プラスチックマスK2を用いるオーバーモールド中に、第2プラスチックマスK2に制約されないままである。
【0066】
実際には、中間空間4の径方向外側を区画し、ステップb)において第1プラスチックマスK1で部分的にまたは完全に覆うことができるステータ本体2の表面部分7を第1マスク6aで覆うことができる。このようにして、その後にさらに実施される方法ステップd)において表面部分が第2プラスチックマスK2で覆われるのが防止される。
【0067】
さらなる方法ステップc)では、ステータティース3にステータ巻線5が配置される。このことが方法ステップc)の実施後のステータ本体2を
図2a,2b,2cに対応する表現で表す
図3a,3b,3cに模式的に示されている。
【0068】
さらなる方法ステップd)では、ステータ巻線5は、第2プラスチックマスK2を用いる少なくとも部分的なオーバーモールディングによってステータティース3に固定される。このことがステータ本体2を
図3a,3b,3cに対応する表現で示す
図4a,4b,4cに模式的に示されている。第1マスク6aで満たされる容積は、前述したように、第2プラスチックマスK2に制約されないままである。第1マスク6aは、中間空間4の径方向外側を区画し、ステップb)では第1プラスチックマスK1で部分的または完全に覆うことができるステータ本体2の表面部分7を覆う。このようにして、その後にさらに実施されるステップd)において表面部分7が第2プラスチックマスK2で覆われるのを防止できる。第2プラスチックマスK2を用いるオーバーモールディングに続いて、方法ステップe)において第1マスク6aが中間空間4から再び除去され、そのマスク6aの除去に続いて、冷却剤が通過する冷却剤通路9を形成する中空空間8を形成できる。
【0069】
選択的に、第1プラスチックマスK1を用いるステップb)のオーバーモールディングに続いて、そしてステップd)のステータ巻線5の固定の前に、第2マスク6bをそれぞれの中間空間4の径方向内側端部10bに導入することも可能である。したがって、ステップd)のオーバーモールディング中に追加の冷却通路9’を形成するために第2マスク6bで満たされる中間空間4の容積は、第2プラスチックマスK2に制約されないままである。第1マスク6aと同様に、第2マスク6bは、ステップb)において第1プラスチックマスK1で部分的にまたは完全に覆うことができる中間空間4の径方向内側を区画する2つのステータティース3の表面部分7’をそれぞれ覆うことができる。したがって、ステップd)において表面部7’が第2プラスチックマスK2で覆われないことが防止される。
【0070】
第1マスク6aと同様に、第2マスク6bは、第2プラスチックマスクK2を用いるオーバーモールディングに続いて、それぞれの第2マスク6bを除去した後に形成される中空空間8’がそれぞれ冷却剤の通過する追加の冷却剤通路9’を形成するように、通路スロット13から再び除去できる。
【0071】
さらなる方法ステップf)では、中空空間8ないし冷却剤通路9を区画する第2プラスチックマスK2と、第2プラスチックマスK2によってステータティース2に固定されるステータ巻線3と、第1マスク6aの除去前にこれらによって覆われていたステータ本体2の表面部分7とが、第3プラスチックマスK3でオーバーモールドされる。ステップf)は、第1マスク6aの除去後に実施される。好ましくは、ステップf)の一部としての第3プラスチックマスK3を用いるオーバーモールディングは、第3プラスチックマスK3を用いるオーバーモールディング後の中空空間8または冷却剤9が、第3または第1プラスチックマスK3,K1のみで区画されるように実施される。
【0072】
この場合、形成された中空空間8ないし冷却剤通路9は、冷却剤通路9を流れる冷却剤に対するステータ本体2の所望の電気的絶縁が保証されるように、第1または第3プラスチックマスK1,K3のみで区画される。特に、追加の冷却剤通路9’は、第3及び第1プラスチックマスK3、K1のみで区画できる。
【0073】
ここで説明した製造方法の過程で、追加の冷却剤通路9’を区画する第2プラスチックマスK2、第2プラスチックマスK2によってステータティース3に固定されるステータ巻線5、及びそれを除去する前に第2マスク6bによって覆われたステータティース3の表面部分7’を、第3プラスチックマスK3でオーバーモールドすることができる。ここで、オーバーモールディングは、第3プラスチックマスK3でオーバーモールディングした後の追加の冷却剤通路9’が、第3及び第1プラスチックマスK3,K1のみで区画されるように実施される。
【0074】
冷却剤通路9と同様に、追加の冷却剤通路9’も、第1または第3プラスチックマスK3のみで区画される。特に、追加の冷却剤通路9’は第3プラスチックマスK3のみで区画できる。
【0075】
言い換えると、第3プラスチックマスK3を用いるオーバーモールディングは、特に実際には、そのオーバーモールディングに続いて、中空空間8,8’ないし冷却剤通路9,9’が、どのようなポイントでもステータ巻線またはステータ本体2で直接に区画されないように実施される。さらなる方法ステップでは、ステータ本体2の少なくとも1つの外周面16を第4プラスチックマスK4でオーバーモールドできる。このことが
図5a及び
図5bに対応する表現の
図6a及び
図6bに示されている。第4プラスチックマスK4を用いるオーバーモールディングの過程で、
図6a及び
図6bに示されているように、ステータ本体2の外周面16に軸方向へ延びる延長部18が設けられる。ステータ本体2にそれぞれベアリングシールドを締結するため、延長部の各端面から軸方向へねじロッド19が突出し、ねじロッドも第4プラスチックマスK4でオーバーモールドできる。
【0076】
選択的なさらなる方法ステップでは、2つのベアリングシールドを、オーバーモールドされたねじロッド19によって、軸方向Aに沿って対向配置されるステータ本体に締結することができる。このことが
図7aおよび
図7bの互いに入れ換え可能な2つの変形例に示されている。両方の変形例において、第1ベアリングシールド20aは、したがって、冷却剤分配部22aを形成し且つそのためにステータ1内に存在する冷却通路9,9’と流体的に連通する、第3及び第4プラスチックマスK3,K4の内部に設けられる第1中空空間21を密封する。第2ベアリングシールド(図示せず)は、第3及び第4プラスチックマスK3,K4に形成され、且つそのためにステータ1に形成される冷却通路9,9’と流体的に連通する第2中空空間(図示せず)をシールする。
図7a及び
図7bの2つのベアリングシールドは、軸方向Aに沿って互いに対向して位置し、ステータ1のステータ本体2を軸方向に区画する。
【0077】
図7aの軸方向Aに沿ったステータ1の縦断面において、冷却剤分配部22a及び冷却剤収集部は、それぞれ、ステータ巻線5の各軸方向端部23を軸方向の延長部において径方向外側と径方向内側で部分的に包囲するU字形状を有する。
図7の軸方向Aに沿ったステータ1の縦断面において、冷却剤分配部22a及び冷却剤収集部は、それぞれステータ巻線5の各軸方向端部を軸方向の延長部において径方向外側で部分的に包囲するI字形状を有する。ステータ本体2へのベアリングシールド28の締結は、ステータ本体2に設けられた前述のねじロッド19と、これらのねじロッド19に合うねじ付きナット24とを用いることによって行われる。第1及び第2マスク6a,6bは、それぞれ、好ましくは鋼製でプレート状またはプレートレット状のインサート17a,17bとして形成することができる。
【0078】
実施形態の第1変形例では、第1,第2及び第3プラスチックマスK1,K2,K3のプラスチック材料は、熱硬化性プラスチックを含むか、または同じ熱硬化性プラスチックから構成される。これと比較して、第4プラスチックマスK4のプラスチック材料は、第1,第2及び第3プラスチックマスの熱硬化性プラスチックとは異なる熱可塑性プラスチックである。この変形例の第4プラスチックマスK4の熱伝導率は、第1,第2及び第3プラスチックマスK1,K2,K3の熱伝導率よりも低い。これとは別に、本実施形態における第4プラスチックマスK4の強度は、第1,第2及び第3プラスチックマスK1,K2,K3の強度よりも高い。
【0079】
実施形態の第2変形例では、第1及び第3プラスチックマスK1,K3のプラスチック材料は、同一の熱硬化性プラスチックを含むか、または同一の熱硬化性プラスチックからなり、第2及び第4プラスチックマスK2,K4のプラスチック材料とは異なる。この変形例では、第2プラスチックマスK2のプラスチック材料は、第4プラスチックマスK4のプラスチック材料とは異なる。この変形例では、第1及び第3プラスチックマスK1,K3の冷却剤抵抗は、それぞれ、第2プラスチックマスK2の冷却剤抵抗よりも大きい。さらに、この変形例では、第1及び第3プラスチックマスK1,K3の熱伝導率は、それぞれ、第2プラスチックマスK2の熱伝導率よりも低い。最後に、その代わりにまたはそれに加えて、本実施例のこの変形例では、第4プラスチックマスK4の強度は、第1,第2及び第3プラスチックマスK1,K2,K3の強度よりも高い。この変形例では、第3及び第1プラスチックマスK3,K1の層の厚さは最大で0.8mmになり、好ましくは最大で0.3mmである。
【0080】
この変形例では、第1及び第3プラスチックマスK1,K3の冷却剤抵抗は、それぞれ、第2及び第3プラスチックマスK2,K4の冷却剤抵抗よりも高い。これとは別に、このさらなる発展例の第2プラスチックマスK2の熱伝導率は、第1,第3及び/または第4プラスチックマスK1,K3,K4の熱伝導率よりも高い。または、あるいはさらに、このさらなる発展例の第4プラスチックマスK4の強度は、第1及び/または第2及び/または第3プラスチックマスK1,K2,K3の強度よりも高い。
【0081】
選択的な方法ステップでは、冷却剤分配空間22aと冷却剤収集空間22bとを初期に区画する第2プラスチックマスK2は、電気的に絶縁性の絶縁材料でオーバーモールド及び/またはスプレーすることができる。同様に、各中間空間4から軸方向Aに沿って両側に突出することがあるステータ巻線6の軸方向端部を電気的に絶縁性の絶縁材料でオーバーモールド及び/またはスプレーすることができる。実際には、このために電気絶縁性のワニスが使用される。しかしながら、第3プラスチックマスK3及び/または第4プラスチックマスK4または別の適切なプラスチックマスを用いることも考えられる。オーバーモールディングとスプレーは、オーバーモールディングまたはスプレーに続いて、第2プラスチックマスK2もステータ巻線5の軸方向端部も、冷却剤分配空間22aまたは冷却剤収集空間22bを直接に区画しないように行われる。このようにして、導電性のステータ巻線6と、冷却剤分配空間22または冷却剤収集空間22bの内部に存在する冷却剤との、望ましくない電気的な接続が排除される。
【0082】
ステップd)の過程で、またはそれとはずれた時間すなわちステップd)の実施前またはステップd)の実施後に、ステータ巻線5の軸方向端部を、プラスチックマスで、特に第2プラスチックマスK2で各ステータティース3に固定してもよい。