(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】流路切換バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 11/044 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
F16K11/044 Z
(21)【出願番号】P 2020541478
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2018053723
(87)【国際公開番号】W WO2019158198
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】514052379
【氏名又は名称】オエティカ シュヴァイツ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】モーザー パスカル
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-53684(JP,A)
【文献】特開平5-60253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0221721(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三つの開口部(21,22,23)を備えるバルブ室(13)と、前記バルブ室に配設されて二つの端部位置の間で移動可能であり、周縁において前記バルブ室(13)の周壁(16)と密閉状態で協働する可撓性ダイヤフラム(15)を有するバルブピストン(14)とを有する流路切換バルブであって、前記バルブピストン(14)が、第1端部位置において第1開口部(21)と第2開口部(22)との間の流路を開放して第3開口部(23)を閉鎖し、第2端部位置において前記第1開口部(21)を閉鎖して前記第2開口部(22)と前記第3開口部(23)との間の流路を開放し、
前記バルブ室(13)の前記周壁(16)が、前記第1端部位置への前記ダイヤフラム移動の最終段階でのみ前記ダイヤフラム(15)と前記周壁(16)との間の密閉接触が前記周縁の少なくとも一部で解除されるような形状を持ち、
前記バルブ室(13)の前
記周壁(16)が前記ダイヤフラム移動の前記最終段階で拡張され、
前記周壁(16)における前記の拡張された部分である拡張部において、前記ダイヤフラム(15)が前記周壁(16)から離間し、それにより第1開口部(21)と第2開口部(22)との間の流路が開放されることを特徴とする、
流路切換バルブ。
【請求項2】
前記拡張部が円錐形である、請求項1に記載の流路切換バルブ。
【請求項3】
前記拡張部が丸みを帯びている、請求項1に記載の流路切換バルブ。
【請求項4】
前記拡張部が段により形成される、請求項1に記載の流路切換バルブ。
【請求項5】
前記拡張部が切欠きにより形成される、請求項1に記載の流路切換バルブ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
流路切換バルブは特許文献1から周知であり、三つの開口部を備えるバルブ室と、バルブ室に配設されて可撓性ダイヤフラムを有するバルブピストンとを有する。ダイヤフラムの周縁はバルブ室の内周壁と協働する。バルブピストンは二つの端部位置の間で移動可能であり、第1端部位置では第1開口部と第2開口部との間の流路を開放して第3開口部を閉鎖し、第2端部位置では第1開口部を閉鎖して第2開口部と第3開口部との間の流路を開放する。
【0002】
このタイプの切換バルブは、例を挙げると、第1開口部に空気が流入した時に、バルブピストンが過剰圧力により第1端部位置へ移動して第3開口部を閉鎖する一方で、流体は第1開口部から可撓性ダイヤフラムを経由して第2開口部へ流れるようにして使用される。流体が止められるか圧力が低下すると、この時、ダイヤフラムがシールとして作用するので、その時に第2開口部に存在する高い圧力がバルブピストンを第2端部位置へ移動させる。第2端部位置では、第1開口部が閉鎖され、この時に開放されている第3開口部から空気が流出できる。対応して第3開口部の断面が大きいので、この位置のバルブは急速排出を行う。
【0003】
バルブピストンが第1端部位置にある時に、空気はダイヤフラムを経由して流れなければならない。これは、ダイヤフラムを弾性的に変形させるためにある一定の圧力を必要とする。この圧力損失の結果、バルブ室の第1および第2開口部の間に測定可能なヒステリシスが生じる。圧力損失は、寸法公差および材料硬度に依存するので、各部品について変動する。加えて、材料の疲労および摩耗ゆえに経時的に変化する。しかしながら、ダイヤフラムの弾性はバルブが機能するのに不可欠である。
【0004】
この作用の結果として、圧力制御ループでの所望の圧力に厳密に達することは決してない。切換バルブの下流で圧力が検出される場合には、付加的な攪乱量であるヒステリシスのために制御ループが低速になって反応時間が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102012108199号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のヒステリシスが除去される流路切換バルブを提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、バルブ室の内周壁は、第1端部位置へのダイヤフラム移動の最終段階でダイヤフラムと周壁との間の密閉接触が周縁の少なくとも一部で解除されるような形状を持つ。言い換えると、本発明は、バルブピストンが第1端部位置に達した時に有効であるバイパスをバルブピストンに設けるのである。この端部位置では、弾性ダイヤフラムの影響が除去されることで、切換バルブの基本的機能を変化させずに上述のヒステリシスが抑制される。ダイヤフラムでの摩耗および公差はバルブ機能に影響しない。同時に、流断面が増大する。ヒステリシスが抑制されるため、本発明の切換バルブは制御が迅速かつ容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面に示された実施形態を参照して本発明が以下でさらに詳しく説明される。
【
図2】バルブ室とこれに配設されるバルブピストンとの拡大断面である。
【
図3】代替的構成におけるバルブ室およびバルブピストンの半分の断面である。
【
図4】代替的構成におけるバルブ室およびバルブピストンの半分の断面である。
【
図5】代替的構成におけるバルブ室およびバルブピストンの半分の断面である。
【
図6】代替的構成におけるバルブ室およびバルブピストンの半分の断面である。
【
図7】代替的構成におけるバルブ室およびバルブピストンの半分の断面である。
【
図8】代替的構成におけるバルブ室およびバルブピストンの半分の断面である。
【
図9】(a)~(d)は、多様な断面形状でバルブ室の周壁に設けられる凹溝の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に図示されている急速排出バルブは、図の例ではOリングを介して強固に相互接続される二つの本体部11,12から成る本体10を有する。本体部11にはバルブ室13が形成される。合成材料から成り可撓性ダイヤフラム15を有するピストン14は、
図1による垂直方向にバルブ室13内で移動可能である。
【0010】
バルブ室13は、圧縮空気源(不図示)への接続のための第1開口部21を上方本体部11に、圧縮空気シリンダその他(不図示)への接続のための第2の側方配設開口部22と大気への急速排出のための下方第3開口部23とを下方本体部12に有する。
【0011】
バルブピストン14は、図示されている位置であって第3開口部2を閉鎖する第1端部位置と、バルブ室13の上壁に当接して第1開口部21を閉鎖する第2端部位置(
図1では不図示)との間で移動可能である。第1端部位置では、第1開口部21に存在する過剰圧力によりバルブピストン14が保持される。
【0012】
この位置で、先行技術のバルブは、空気が可撓性ダイヤフラム15の周りを流れて、開口部22に接続されたシリンダに達することを可能にする。
【0013】
開口部21の圧力が開口部22に存在するものより低下した時に、バルブピストン14は、空気が開口部21から流出するのを防止する第2端部位置(不図示)へ押圧され、シリンダに接続された開口部22からの空気は大きな開口部23から大気へ急速に流出できる。
【0014】
図2および3に示されている本発明の実施形態では、第1端部位置に達した時にバルブピストン14のダイヤフラム15が周壁16から離間して第1開口部21と第2開口部22との間のバイパス接続部を開口することにより先行技術に存在するヒステリシスを抑制するように配設される面取り30が、バルブ室の周壁16の下方縁部に形成される。
【0015】
ダイヤフラム15は比較的硬質である。バルブピストン14は内部摩擦をほぼ有さず、非常に小さい圧力で移動する。バイパスに達すると、空気は、圧力損失を伴わず、ゆえにヒステリシスを生じずにダイヤフラム15を経由して流れることが可能である。対照的に、先行技術では、ダイヤフラムの抵抗が常に克服されなければならない。
【0016】
図4の実施形態では、第1端部位置に達する直前にダイヤフラム15が位置する箇所から始まる丸み31が、バイパスに形成される。やはりこのケースでも、ダイヤフラム端部位置はもうバルブ室13の周壁16と密閉接触状態にない。この実施形態の一つの利点は、ダイヤフラム15の均一な圧力解除と、ここでも達成される空気流の断面積の大きさとに存する。
図2および3の面取り30と比較すると、丸み31は、バルブの使用寿命に寄与する一層スムーズな移行部を形成する。
【0017】
図5では、バルブ室の周壁16の凹溝32としてバイパスが形成される。第2端部位置に達する直前にのみダイヤフラム15が周壁16との接触を終えるように配置される複数の平行な凹溝または平行な環状凹溝を設けることも可能である。
【0018】
図6から8の実施形態では、周方向に分散された複数の切欠き33,34,35がバルブ室の周壁16の下端部に形成され、各切欠きは周縁の一部のみに延在し、ダイヤフラム15が第1端部位置に達する直前にのみ位置する箇所に切欠きがやはり配設される。代替的に、単一の切欠き33,34,35が設けられてもよい。軸方向断面において、切欠きは、円(
図6の33)、矩形(
図7の34)、台形(
図8の35)、またはその他の一部の形状であってもよい。
【0019】
図9に指示されているように、切欠き33~35の断面は、樋形状(a)、楔形状(b)、矩形(c)、または半円形(d)でありうる。
【符号の説明】
【0020】
10 本体
11,12 本体部
13 バルブ室
14 バルブピストン
15 ダイヤフラム
16 周壁
21 第1開口部
22 第2開口部
23 第3開口部
30 面取り
31 丸み
32 凹溝
33~35 切欠き