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特許7100161養生剤、被膜付きセメント系構造体の製造方法、並びにセメント系成形体の収縮低減方法及び乾燥抑制方法、並びにセメント系構造体への劣化因子の侵入抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】養生剤、被膜付きセメント系構造体の製造方法、並びにセメント系成形体の収縮低減方法及び乾燥抑制方法、並びにセメント系構造体への劣化因子の侵入抑制方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 40/04 20060101AFI20220705BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20220705BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C04B40/04
B28B11/24
E04G21/02 104
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020569655
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2020003038
(87)【国際公開番号】W WO2020158756
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2019013534
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019182382
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】河合 萌
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 良祐
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/184986(WO,A1)
【文献】特開昭56-069258(JP,A)
【文献】特許第6436914(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 40/00-40/06
C04B 41/00-41/72
B28B 11/00-11/24
E04G 21/02-21/10
C09D 4/00-5/46
C09D 167/00-167/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるジエステル化合物を含有する、養生剤。
【化1】
(式(I)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、若しくは1~15個の炭素原子を有する一価の炭化水素基である、又はR及びRが一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成しており、R及びRは、それぞれ独立に1~30個の炭素原子を有する1価の有機基を表す、又はR及びRが一緒になって3~30個の炭素原子を有する2価の有機基を形成している。)
【請求項2】
前記ジエステル化合物は第1のジエステル化合物を含み、
前記第1のジエステル化合物は、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方を満たすものである、請求項1に記載の養生剤。
(1)ホモポリマーのガラス転移温度が30℃未満である。
(2)R及びRが、それぞれ独立に3~30個の炭素原子を有する1価の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【請求項3】
前記ジエステル化合物は、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以上である第2のジエステル化合物を更に含む、請求項2に記載の養生剤。
【請求項4】
前記第2のジエステル化合物のホモポリマーのガラス転移温度が100℃以上である、請求項3に記載の養生剤。
【請求項5】
分子内に以下の式(II)で表される構造単位を二つ以上含み、二つ以上の当該構造単位が多価アルコールの残基で連結された多官能メチレンマロン酸エステル化合物、を更に含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の養生剤。
【化2】
(式(II)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1~15個の炭素原子を有する一価の炭化水素基である。)
【請求項6】
セメント系成形体の表面の少なくとも一部を、請求項1~5のいずれか一項に記載の養生剤で被覆して養生する工程を備える、被膜付きセメント系構造体の製造方法。
【請求項7】
セメント系成形体の表面の少なくとも一部を、請求項1~5のいずれか一項に記載の養生剤で被覆して、養生時のセメント系成形体の収縮を低減する、方法。
【請求項8】
セメント系成形体の表面の少なくとも一部を、請求項1~5のいずれか一項に記載の養生剤で被覆して、養生時のセメント系成形体の乾燥を抑制する、方法。
【請求項9】
セメント系構造体の表面の少なくとも一部を、下記式(I)で表されるジエステル化合物を含有する表面保護剤で被覆して、前記セメント系構造体への劣化因子の侵入を抑制する方法。
【化3】
(式(I)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、若しくは1~15個の炭素原子を有する一価の炭化水素基である、又はR及びRが一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成しており、R及びRは、それぞれ独立に1~30個の炭素原子を有する1価の有機基を表す、又はR及びRが一緒になって3~30個の炭素原子を有する2価の有機基を形成している。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、養生剤、被膜付きセメント系構造体の製造方法、並びにセメント系成形体の収縮低減方法及び乾燥抑制方法、並びにセメント系構造体への劣化因子の侵入抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント系材料は、強度や耐久性等に優れた硬化物を与える。このことから、セメント系材料は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物として広く用いられている。セメント系材料は、土木又は建築構造物を構築するために欠かすことができない材料である。
【0003】
建築構造物等のセメント系構造体は、セメント組成物を打設して所定の形状に成形してセメント系成形体とした後、セメント系成形体内の水分によりセメントを反応させること(養生すること)によって得られる。ここで、セメント系成形体の養生の際に、セメント系成形体の表面から水分が散逸するため、乾燥収縮が進行し、セメント系成形体にひび割れ等の欠陥が生じ、強度及び耐久性が低下するという問題がある。
【0004】
そのため、セメント系成形体の養生時にセメント系成形体の表面からの水分の散逸を抑制する方法として、養生剤を使用してセメント系成形体の表面に塗膜を形成して養生する塗膜養生が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-18490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の養生剤には、水分の散逸を防ぐことについて未だ改善の余地があり、より水分の散逸が少ない養生剤の開発が望まれている。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、養生時にセメント系成形体の表面からの水分の散逸を効果的に抑制できる養生剤を提供することを目的とする。また、本開示は、そのような養生剤を使用した被膜付きセメント系構造体の製造方法、並びにセメント系成形体の収縮低減方法及び乾燥抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の養生剤は、下記式(I)で表されるジエステル化合物を含有する。
【化1】
(式(I)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、若しくは1~15個の炭素原子を有する一価の炭化水素基である、又はR及びRが一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成しており、R及びRは、それぞれ独立に1~30個の炭素原子を有する1価の有機基を表す、又はR及びRが一緒になって3~30個の炭素原子を有する2価の有機基を形成している。)
【0009】
上記ジエステル化合物は第1のジエステル化合物を含み、第1のジエステル化合物は、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方を満たすものであると好ましい。
(1)ホモポリマーのガラス転移温度が30℃未満である。
(2)R及びRが、それぞれ独立に3~30個の炭素原子を有する1価の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0010】
上記ジエステル化合物は、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以上である第2のジエステル化合物を更に含むと好ましい。
【0011】
上記第2のジエステル化合物のホモポリマーのガラス転移温度が100℃以上であると好ましい。
【0012】
本開示の養生剤は、分子内に以下の式(II)で表される構造単位を二つ以上含み、二つ以上の当該構造単位が多価アルコールの残基で連結された多官能メチレンマロン酸エステル化合物、を更に含有すると好ましい。
【化2】
(式(II)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1~15個の炭素原子を有する一価の炭化水素基である。)
【0013】
本開示の被膜付きセメント系構造体の製造方法は、セメント系成形体の表面の少なくとも一部を上記養生剤で被覆して養生する工程を備えると好ましい。
【0014】
本開示のセメント系成形体の収縮低減方法は、セメント系成形体の表面の少なくとも一部を上記養生剤で被覆して、養生時のセメント系成形体の収縮を低減するものである。
【0015】
本開示のセメント系成形体の乾燥抑制方法は、セメント系成形体の表面の少なくとも一部を上記養生剤で被覆して、養生時のセメント系成形体の乾燥を抑制するものである。
【0016】
また、本開示のセメント系構造体への劣化因子の侵入を抑制する方法は、セメント系構造体の表面の少なくとも一部を、上記式(I)で表されるジエステル化合物を含有する表面保護剤で被覆して、セメント系構造体への劣化因子の侵入を抑制するものである。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、養生時にセメント系成形体の表面からの水分の散逸を効果的に抑制できる養生剤を提供することができる。また、本開示によれば、そのような養生剤を使用した被膜付きセメント系構造体の製造方法、並びにセメント系成形体の収縮低減方法及び乾燥抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の養生剤は、セメント系成形体のための養生剤であって、下記式(I)で表されるジエステル化合物を含有する。このような養生剤によれば、養生時にセメント系成形体表面からの水分の散逸を効果的に抑制できる。そのため、本開示の養生剤は、養生時のセメント系成形体の乾燥収縮を低減でき、乾燥収縮に伴うひび割れ等の発生を効果的に抑制できる。また、本開示の養生剤を用いて養生を行うと、養生時のセメント系成形体からの水分の散逸を効果的に防ぐことができ、セメントの水硬反応をより円滑に行うことができるため、得られるセメント系構造体の圧縮強度を高めることができる傾向にある。
【0019】
【化3】
(式(I)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、若しくは1~15個の炭素原子を有する一価の炭化水素基である、又はR及びRが一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成しており、R及びRは、それぞれ独立に1~30個の炭素原子を有する1価の有機基を表す、又はR及びRが一緒になって3~30個の炭素原子を有する2価の有機基を形成している。)
【0020】
式(I)において、R及びRの炭化水素基の炭素数としては、1~10個が好ましく、1~5個が好ましい。R及びRの具体例としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-ペンチル基(アミル基)、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、イソプロピル基、2-メチルブチル基、イソアミル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-エチル-2-メチルプロピル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、ネオノニル基、2-エチルヘプチル基、2-プロピルヘキシル基、2-ブチルペンチル基、イソデシル基、ネオデシル基、2-エチルオクチル基、2-プロピルヘプチル基、2-ブチルヘキシル基、イソウンデシル基、ネオウンデシル基、2-エチルノニル基、2-プロピルオクチル基、2-ブチルヘプチル基、2-ペンチルヘキシル基、イソドデシル基、ネオドデシル基、2-エチルデシル基、2-プロピルノニル基、2-ブチルオクチル基、2-ペンチルヘプチル基、イソトリデシル基、ネオトリデシル基、2-エチルウンデシル基、2-プロピルデシル基、2-ブチルオクチル基、2-ペンチルオクチル基、2-ヘキシルヘプチル基、イソテトラデシル基、ネオテトラデシル基、2-エチルドデシル基、2-プロピルウンデシル基、2-ブチルデシル基、2-ペンチルノニル基、2-ヘキシルオクチル基、イソペンタデシル基、ネオペンタデシル基、シクロヘキシルメチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0021】
式(I)において、R及びRは、少なくとも一方が水素原子であってもよく、両方が水素原子であってよい。なお、R及びRの両方が水素原子であることが好ましい。
【0022】
及びRが一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成している場合、2価の炭化水素基の炭素数としては、4~12個が好ましく、5~9個がより好ましい。2価の炭化水素基の具体例としては、1,3-プロピレン基、1、4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基、1,6-へキシレン基、1,5-へキシレン基等が挙げられる。
【0023】
式(I)において、R及びRは、1価の有機基であり、そのような有機基としては、1価の炭化水素基、1価のヘテロ原子含有基が例示される。当該1価の炭化水素基、1価のヘテロ原子含有基は置換基を有していてもよい。上記置換基としては、アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、アジド基、シアノ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、複素環基、エステル基、他の単量体(B)の残基等が例示され、これらはさらに置換基で置換されていてもよい。R及びRの炭素数はそれぞれ1~30であり、1~20であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることがさらに好ましい。R及びRが1又は2以上の置換基を有する場合には、置換基を含めた炭素数がそれぞれ上記炭素数の範囲であることが好ましい。R及びRの有する置換基の数に制限はないが、それぞれ5個以下であることが好ましく、3個以下であることがより好ましく、1個又は2個であることが更に好ましい。1価のヘテロ原子含有基としては、ポリアルキレンオキシド基、ポリエステル基等が例示される。
【0024】
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれであってもよく、脂肪族炭化水素基は、直鎖状脂肪族炭化水素基、分岐鎖状脂肪族炭化水素基、及び脂環式炭化水素基のいずれであってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。なお、芳香族炭化水素基は、芳香環を有する基であって、脂肪族部分を有していてもよく、脂環式炭化水素基は、環状の脂肪族炭化水素部分を有する基であって、直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素部分を有していてもよい。
【0025】
直鎖の飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基(アミル基)、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基等が挙げられる。
【0026】
分岐鎖の飽和炭化水素基としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、イソアミル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、tert-アミル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-メチルペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、2-エチル-2-メチルプロピル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソオクチル基、1-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、1-エチルヘプチル基、1-プロピルヘキシル基、1-ブチルペンチル基、2-エチルヘプチル基、2-プロピルヘキシル基、2-ブチルペンチル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、1-エチルオクチル基、1-プロピルヘプチル基、1-ブチルヘキシル基、2-エチルオクチル基、2-プロピルヘプチル基、2-ブチルヘキシル基、イソウンデシル基、sec-ウンデシル基、tert-ウンデシル基、ネオウンデシル基、1-エチルノニル基、1-プロピルオクチル基、1-ブチルヘプチル基、1-ペンチルヘキシル基、2-エチルノニル基、2-プロピルオクチル基、2-ブチルヘプチル基、2-ペンチルヘキシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、ネオドデシル基、1-エチルデシル基、1-プロピルノニル基、1-ブチルオクチル基、1-ペンチルヘプチル基、2-エチルデシル基、2-プロピルノニル基、2-ブチルオクチル基、2-ペンチルヘプチル基、イソトリデシル基、sec-トリデシル基、tert-トリデシル基、ネオトリデシル基、1-エチルウンデシル基、1-プロピルデシル基、1-ブチルノニル基、1-ペンチルオクチル基、1-ヘキシルヘプチル基、2-エチルウンデシル基、2-プロピルデシル基、2-ブチルオクチル基、2-ペンチルオクチル基、2-ヘキシルヘプチル基、イソテトラデシル基、sec-テトラデシル基、tert-テトラデシル基、ネオテトラデシル基、1-エチルドデシル基、1-プロピルウンデシル基、1-ブチルデシル基、1-ペンチルノニル基、1-ヘキシルオクチル基、2-エチルドデシル基、2-プロピルウンデシル基、2-ブチルデシル基、2-ペンチルノニル基、2-ヘキシルオクチル基、イソペンタデシル基、sec-ペンタデシル基、tert-ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、イソヘキサデシル基、sec-ヘキサデシル基、tert-ヘキサデシル基、ネオヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、sec-ヘプタデシル基、tert-ヘプタデシル基、ネオヘプタデシル基、イソオクタデシル(イソステアリル)基、sec-オクタデシル基、tert-オクタデシル基、ネオオクタデシル基、イソノナデシル基、sec-ノナデシル基、tert-ノナデシル基、ネオノナデシル基、イソイコシル基、sec-イコシル基、tert-イコシル基、ネオイコシル基、イソヘンイコシル基、sec-ヘンイコシル基、tert-ヘンイコシル基、ネオヘンイコシル基、イソドコシル基、sec-ドコシル基、tert-ドコシル基、ネオドコシル基、イソトリコシル基、sec-トリコシル基、tert-トリコシル基、ネオトリコシル基、イソテトラコシル基、sec-テトラコシル基、tert-テトラコシル基、ネオテトラコシル基、イソペンタコシル基、sec-ペンタコシル基、tert-ペンタコシル基、ネオペンタコシル基、イソヘキサコシル基、sec-ヘキサコシル基、tert-ヘキサコシル基、ネオヘキサコシル基、イソヘプタコシル基、sec-ヘプタコシル基、tert-ヘプタコシル基、ネオヘプタコシル基、イソオクタコシル基、sec-オクタコシル基、tert-オクタコシル基、ネオオクタコシル基、イソノナコシル基、sec-ノナコシル基、tert-ノナコシル基、ネオノナコシル基、イソトリアコンチル基、sec-トリアコンチル基、tert-トリアコンチル基等が挙げられる。
【0027】
脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。
【0028】
不飽和炭化水素基としては、直鎖アルケニル基、又は分岐鎖アルケニル基が挙げられ、直鎖アルケニル基としては、具体的には、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
分岐鎖アルケニル基としては、イソプロペニル基、イソブテニル基、イソペンテニ)基、イソヘキセニル基、イソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソドデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0029】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基;ナフチル基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、等のアラルキル基;スチリル基(Ph-CH=C-基);シンナミル基(Ph-CH=CHCH-基);1-ベンゾシクロブテニル基;1,2,3,4-テトラヒドロナフチル基、ジスチレン化フェニル基などが挙げられる。
【0030】
及びRが一緒になって3~30個の炭素原子を有する2価の有機基を形成している場合、2価の有機基の炭素数としては、3~10個が好ましく、3~6個がより好ましい。また、2価の有機基としては、2価の炭化水素基が挙げられ、2価の炭化水素基の具体例としては、2,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、1、4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基、1,6-へキシレン基、1,5-へキシレン基等が挙げられる。当該2価の有機基は、3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基の一つ以上の水素原子が置換基に置換された基であってもよい。置換基としては、上述のR及びRが一価の有機基である場合に例示した置換基を挙げることができる。当該2価の有機基は、置換基を1~5個以下有すると好ましく、1~3個有するとより好ましい。
2価の有機基は、2価のヘテロ原子含有基であってもよく、2価のヘテロ原子含有基としては、ポリアルキレンオキシド基、ポリエステル基等が例示される。
【0031】
式(I)で表されるジエステル化合物としては、メチレンマロン酸メチルプロピル、メチレンマロン酸ジ-n-ヘキシル、メチレンマロン酸ジシクロヘキシル、メチレンマロン酸ジイソプロピル、メチレンマロン酸ブチルメチル、メチレンマロン酸エトキシエチルエチル、メチレンマロン酸メトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ヘキシルエチル、メチレンマロン酸ジ-n-ペンチル、メチレンマロン酸エチルペンチル、メチレンマロン酸メチルペンチル、メチレンマロン酸エチルエチルメトキシル、メチレンマロン酸エトキシエチルメチル、メチレンマロン酸ブチルエチル、メチレンマロン酸ジ-n-ブチル、メチレンマロン酸ジエチル(DEMM)、メチレンマロン酸ジエトキシエチル、メチレンマロン酸ジメチル、メチレンマロン酸ジ-n-プロピル、メチレンマロン酸エチルヘキシル、メチレンマロン酸フェンキルメチル、メチレンマロン酸メンチルメチル、メチレンマロン酸2-フェニルプロピルエチル、メチレンマロン酸3-フェニルプロピル、メチレンマロン酸ジメトキシエチル、メチレンマロン酸ジ-n-ヘプチル、メチレンマロン酸ジ-n-オクチル、メチレンマロン酸ジ-n-ノニル、メチレンマロン酸ジ-n-デシル等が挙げられる。これらの中でも、メチレンマロン酸ジ-n-ヘキシル、メチレンマロン酸ジシクロヘキシルが好ましい。
【0032】
養生剤における式(I)で表されるジエステル化合物の含有量としては、特に制限されないが、養生剤の総質量に対して、50質量%以上であってよく、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよい。
【0033】
式(I)で表されるジエステル化合物としては、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方の条件を満たす第1のジエステル化合物が好ましい。養生剤が、第1のジエステル化合物を含むことにより、養生剤をセメント系成形体に塗布した際の硬化速度が大きくなる傾向がある。なお、以下では、式(I)ジエステル化合物について、ホモポリマーのガラス転移温度を単にTgとも呼ぶ。
(1)ホモポリマーのガラス転移温度が30℃未満である。
(2)R及びRが、それぞれ独立に3~30個の炭素原子を有する1価の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0034】
(1)の条件について、第1のジエステル化合物のTgは、25℃以下であると好ましく、20℃以下であるとより好ましく、10℃以下であると更に好ましく、0℃以下であると特に好ましい。なお、ホモポリマーのガラス転移点は、例えば、示差熱量測定(DSC)、示差熱分析(DTA)、熱機械分析(TMA)等により測定することができる。
【0035】
(2)の条件について、R及びRのアルキル基が有する炭素数としては、3~12個が好ましく、4~10個が好ましく、5~10個が更に好ましい。
【0036】
第1のジエステル化合物としては、メチレンマロン酸ジ-n-ブチル、メチレンマロン酸ジ-n-ペンチル、メチレンマロン酸ジ-n-ヘキシル、メチレンマロン酸ジ-n-ヘプチル、メチレンマロン酸ジ-n-オクチル、メチレンマロン酸ジ-n-ノニル、メチレンマロン酸ジ-n-デシル等が挙げられる。
【0037】
養生剤における第1のジエステル化合物の含有量は、特に制限されないが、養生剤の総量に対して、30質量%以上であると好ましく、40質量%以上であると更に好ましい。また、養生剤における第1のジエステル化合物の含有量としては、養生剤の総量に対して、95質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。
【0038】
式(I)で表されるジエステル化合物としては、第1のジエステル化合物と共にホモポリマーのガラス転移温度が60℃以上である第2のジエステル化合物を併用してもよい。第1のジエステル化合物と第2のジエステル化合物とを併用することにより、塗膜のタック性が小さくなり取り扱いが容易となる。
【0039】
第2のジエステル化合物のTgとしては、80℃以上であると好ましく、100℃以上であるとより好ましい。また、第2のジエステル化合物の含有量は、養生剤の総量に対して、30~70質量%であると好ましく、40~60質量%であると更に好ましい。
【0040】
第2のジエステル化合物としては、式(I)のR及びRとして、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有するものが挙げられ、具体的には、メチレンマロン酸フェンチルエチル、メチレンマロン酸メンチルエチル、メチレンマロン酸フェニルプロピルメチル、メチレンマロン酸フェニルプロピルエチル、メチレンマロン酸ジシクロヘキシル等が挙げられる。
【0041】
本開示の養生剤は、式(I)で表されるジエステル化合物以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、アニオン重合禁止剤、ラジカル重合禁止剤や酸化防止剤等が挙げられる。また、他にも上記成分として、分子内に以下の式(II)で表される構造単位を二つ以上含み、二つ以上の当該構造単位が多価アルコールの残基で連結された多官能メチレンマロン酸エステル化合物等が挙げられる。当該多価アルコールの残基は、多価アルコールからn個(当該多価アルコールによって連結される式(I)のジエステル化合物の残基の個数)の水酸基を取り除いたn価の有機基である。
【0042】
【化4】
(式(II)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は1~15個の炭素原子を有する一価の炭化水素基である。)
【0043】
上記多官能メチレンマロン酸エステル化合物は、式(I)で表されるジエステル化合物と、多価アルコールとの間でエステル交換反応が起こる条件下で反応させた反応生成物であってよい。そのため、R及びRの具体例としては、上述の式(I)におけるR及びRとして例示したものが挙げられる。
【0044】
多価アルコールとしては、2価アルコール、3価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールが挙げられ、それぞれ、2~30の炭素原子を有することが好ましく、2~20の炭素原子を有することがより好ましく、2~15の炭素原子を有することが更に好ましく、2~10の炭素原子を有することが特に好ましい。3価以上のアルコールの炭素数は、3~30であることが好ましく、3~20であることがより好ましく、3~15であることが更に好ましく、3~10であることが特に好ましい。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の2価アルコール、グリセリン、ポリグリセリン、グリセリンにアルキレングリコールを付加した化合物、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上のアルコールなどが例示される。
【0045】
上記多官能メチレンマロン酸エステル化合物としては、例えば、以下の式(IIA)又は(IIB)の構造のものが挙げられる。
【化5】
(式(IIA)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、1~15個の炭素原子を有する炭化水素基、又はR及びRが一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成しており、Rは、それぞれ独立に1~30個の炭素原子を有する1価の有機基を表し、nは、式(IIA)の化合物に含まれる括弧内の構造単位の個数を表し、2以上の数を表し、R15はn価の有機基を表し、複数あるRは互いに同一であっても、異なっていてもよく、複数あるRは互いに同一であっても、異なっていてもよく、複数あるRは互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
【化6】
(式(IIB)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、1~15個の炭素原子を有する炭化水素基、又はR及びRが一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成しており、Rは1~30個の炭素原子を有する1価の有機基を表し、nは、式(IIA)の化合物に含まれる括弧内の構造単位の個数を表し、2以上の数を表し、R16は2価の有機基を表し、R17は、一価の有機基であり、好ましくは水酸基、又は下記式(III)で表される基であり、複数あるRは互いに同一であっても、異なっていてもよく、複数あるRは互いに同一であっても、異なっていてもよく、複数あるR16は互いに同一であっても、異なっていてもよい。R17は、式(I)で表される化合物からRを除いた残基であってよい。)
【化7】
(式(III)において、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、1~15個の炭素原子を有する炭化水素基、又はR及びRが一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成しており、Rは、それぞれ独立に1~30個の炭素原子を有する1価の有機基を表す。)
【0046】
式(IIA)において、R15はn価の有機基であり、2価以上の有機基であるが、例えばポリオールから2以上の水酸基を除いた残基である。ポリオールとしては、グリセリン、ポリグリセリン、グリセリンにアルキレングリコールを付加した化合物、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリスリトール等が例示される。nの上限は特に限定されないが、100以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。R15の炭素数はそれぞれ1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~15であることがさらに好ましく、1~10であることが特に好ましい。
式(IIB)において、R16は2価の有機基であり、特に制限されないが、炭素数1~30の有機基であることが好ましい。好ましくは、ジオールから2個の水酸基を除いた残基、ポリアルキレングリコールから2個の水酸基を除いた残基等が例示される。上記ジオール又はポリアルキレングリコールとしては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示される。R16の炭素数はそれぞれ1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~15であることがさらに好ましく、1~10であることが特に好ましい。
式(IIA)、(IIB)及び(III)では、それぞれR及びRは、少なくとも一方が水素原子であってもよく、両方が水素原子であってよい。なお、式(IIA)、(IIB)及び(III)では、それぞれR及びRの両方が水素原子であることが好ましい。
【0047】
上記多官能メチレンマロン酸エステル化合物の含有量は、養生剤の総量に対して、30~70質量%であると好ましく、40~60質量%であると更に好ましい。
なお、第1及び第2のジエステル化合物と多官能メチレンマロン酸エステル化合物を併用する場合、多官能メチレンマロン酸エステル化合物の含有量は、養生剤の総量に対して1~20質量%であると好ましく、2~15質量%であるとより好ましい。この場合、第1及び第2のジエステル化合物の含有量は、養生剤の総量に対して、それぞれ30~70質量%であると好ましく、40~60質量%であると更に好ましい。
【0048】
アニオン重合禁止剤としては水中での酸解離定数が2以下である酸が好ましく、具体的には例えば、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのスルホン酸類、亜硫酸、リン酸、トルフルオロ酢酸などが挙げられる。養生剤がアニオン重合禁止剤を含む場合、その含有量は酸性度に応じて適宜調整すればよいが貯蔵安定性と反応性のバランスを取る観点から、式(I)のジエステル化合物の総量(多官能メチレンマロン酸エステル化合物を含む場合は、式(I)のジエステル化合物と多官能メチレンマロン酸エステル化合物の合計量)に対して0.1~2000質量ppmであることが好ましく、より好ましくは1~1000質量ppm、さらに好ましくは3~500質量ppmである。ラジカル重合禁止剤、酸化防止剤としては、着色抑制の観点からヒンダードフェノール類、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が好ましく、具体的には例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアレート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)フロピオネート)メタン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン等のヒンダードフェノール類;ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト等のリン系酸化防止剤などが挙げられる。養生剤がラジカル重合禁止剤、又は酸化防止剤を含む場合、その含有量は貯蔵安定性と反応性のバランスを取る観点から、式(I)のジエステル化合物の総量(多官能メチレンマロン酸エステル化合物を含む場合は、式(I)のジエステル化合物と多官能メチレンマロン酸エステル化合物の合計量)に対して50~5000質量ppmであることが好ましく、より好ましくは100~3000質量ppm、さらに好ましくは200~2000質量ppmである。
【0049】
本実施形態に係る養生剤は、アニオン重合開始剤を実質的に含まないことが好ましい。アニオン重合開始剤としては、例えば、有機塩基、無機塩基、金属酸化物、金属塩及びイオン液体から選ばれる少なくとも1種のアニオン重合開始剤が挙げられる。このようなアニオン重合開始剤の含有量は、養生剤全量を基準として、より好ましくは0.02質量%以下であり、アニオン重合開始剤を含まないことが更に好ましい。また、本実施形態に係る養生剤は、作業性の観点から一液型の養生剤であることが好ましい。「一液型」とは、使用時にアニオン重合開始剤等の他成分と混合することなく使用するものを指す。なお、一液型の養生剤の場合、養生剤がアニオン重合開始剤を全く含まなくてもよいが、養生剤のポットライフに影響がほとんどない程度であれば、わずかな量のアニオン重合開始剤が含まれていてもよい。
【0050】
アニオン重合開始剤としての有機塩基としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸亜鉛、酢酸銅、ピペリジン酢酸等の酢酸塩;クロロ酢酸ナトリウム、クロロ酢酸カリウム、クロロ酢酸銅等のクロロ酢酸塩;プロピオン酸ナトリウム等のプロピオン酸塩;安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩;フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等のアンモニウム塩;2-ジメチルアミノエチルフェノール、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N,N-ジメチルピペラジン、モルホリン、4-メチルモルホリン、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル、ピリジン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、テトラメチルグアニジン(TMG)、トリエチルアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)フェノール、2-ジメチルアミノエチルフェノール、エチルヘキシルアミン、N-オクチルアミン、トリデシルアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ネオペンタンジアミン(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン)、オクタメチレンジアミン、ジブチルエタノールアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、N,N-ジブチルベンジルアミン、N,N-ジヘキシルベンジルアミン、ポリエーテルアミン、ジ-(2-エチルヘキシル)アミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジトリデシルアミン、4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン、ジ-(2-メトキシエチル)アミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、N,N-ジメチルイソプロピルアミン、N-エチルジイソプロピルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリス-(2-エチルヘキシル)アミン、2-(ジイソプロピルアミノ)エチルアミン、テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、S-トリアジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-メチルアミノメチルフェノール、3-(シクロヘキシルアミノ)プロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルアミン、N,N’-ビス-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、N,N-ビス-(3-アミノプロピル)メチルアミン、ブチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミンS、N,N-ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,1’-イミノビス-2-プロパノール(DIPA)、1,2-シクロヘキサンアミン、1,3-シクロヘキサンジメタンアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、3,3-イミノジプロピルアミン、トリアセトンジアミン(TAD)、2-(ジメチルアミノ)エタノール(DEME)、2-ピペラジン-1-イルエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、1-[ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アミノ]-2-プロパノール、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン、1,3,5-トリメチルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ-[4,3,0]-ノン-5-エン(DBN)、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン等のアミン化合物;アミドなどが挙げられる。
【0051】
アニオン重合開始剤としての無機塩基としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物などが挙げられる。
【0052】
アニオン重合開始剤としての金属酸化物としては、例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム等が挙げられる。
【0053】
アニオン重合開始剤としての金属塩としては、例えば、塩化リチウム等が挙げられる。
【0054】
アニオン重合開始剤としてのイオン液体は、通常、カチオン及びアニオンを含み、1気圧において100℃未満の融点を有する塩をいい、例えば室温(例えば23℃)で液状である塩が挙げられる。イオン液体におけるカチオンとしては、例えば、窒素含有複素環構造を有するカチオンが挙げられ、イミダゾリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン及びその誘導体が挙げられる。その他のカチオンとしては、例えば、炭素数1~32のテトラアルキルホスホニウムカチオン、炭素数1~32のテトラアルキルアンモニウムカチオン、炭素数1~32のトリアルキルスルホニウムカチオン等が挙げられる。イオン液体におけるアニオンとしては、例えば、ハロゲン化物(F、Cl、Br、I)、ギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、トリフレート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トシル酸塩、アルキルスルホネートアニオン、アルキルスルフェートアニオン、カルボキシレートアニオン、フタレートアニオン等が挙げられる。
【0055】
アニオン重合開始剤としてのイオン液体としての具体例は、例えば、下記一般式(A)で表されるイミダゾリウム塩、下記一般式(B)で表されるピラゾリウム塩、下記一般式(C)で表されるピリジニウム塩、下記一般式(D)で表されるピリミジニウム塩又はピラジニウム塩、下記一般式(E)で表されるアンモニウム塩又はホスホニウム塩等が挙げられる。
【0056】
【化8】
(式(A)において、R41及びR42は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基を表し、R43、R44及びR45は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を表し、Xはアニオンを表す。)
【0057】
【化9】
(式(B)において、R51及びR52は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基を表し、R53、R54及びR55は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を表し、Xはアニオンを表す。)
【0058】
【化10】
(式(C)において、R61は、炭素数1~12のアルキル基を表し、R62は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を表し、nは0~5の整数を表し、Xはアニオンを表す。)
【0059】
【化11】
(式(D)において、R71は、炭素数1~12のアルキル基を表し、R72は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~12のアルキル基を表し、nは0~4の整数を表し、Xはアニオンを表す。)
【0060】
【化12】
(式(E)において、R81、R82、R83及びR84は、それぞれ独立に炭素数1~12のアルキル基を表し、Xはアニオンを表す。)
【0061】
上記式(A)~(E)において、アニオンとしては、例えば、ハロゲン化物(F、Cl、Br、I)、ギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、トリフレート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トシル酸塩、アルキルスルホネートアニオン、アルキルスルフェートアニオン、カルボキシレートアニオン、フタレートアニオン等が挙げられる。
【0062】
本開示のセメント系成形体は、セメント系組成物に打設を行い、成形したものである。セメント系成形体としては、モルタル、又はコンクリートの成形体が挙げられる。なお、セメント系成形体は、鉄筋、鉄骨等の芯材を含んでいてもよい。
【0063】
セメント系組成物としては、特に制限されないが、好ましくは、骨材及び水を含むものである。骨材としては、細骨材、粗骨材が挙げられる。なお、細骨材及び水を含み、粗骨材を含まないコンクリート組成物を、モルタルと称することがある。
【0064】
セメントとしては、例えば、普通、低熱、中庸熱、早強、超早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、シリカヒュームセメント等が挙げられる。
【0065】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、海砂、砕砂、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材等が挙げられる。
【0066】
粗骨材としては、例えば、川砂利、砕石、重量骨材、軽量骨材、スラグ骨材、再生骨材等が挙げられる。
【0067】
水としては、例えば、JIS A 5308付属書9に示される上水道水、上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水など)、回収水等が挙げられる。
【0068】
セメント系組成物中には、任意の適切な添加剤を加えても良い。例えば、硬化促進剤、凝結遅延剤、防錆剤、防水剤、防腐剤、粉体等が挙げられる。粉体としては、例えば、シリカヒューム、フライアッシュ、石灰石微粉末、高炉スラグ微粉末、膨張材、その他の鉱物質微粉末等が挙げられる。
【0069】
<被膜付きセメント系構造体の製造方法>
本開示の被膜付きセメント系構造体の製造方法は、セメント系成形体の表面の少なくとも一部を、上記養生剤で被覆して養生する工程を備える。上述のとおり、本開示の養生剤は、セメント系成形体の表面からの水分の散逸を効果的に抑止できるため、ひび割れ等の欠陥の少ない被膜付きセメント系構造体を得やすい。
【0070】
セメント系成形体を得る方法としては、特に制限されず、公知の方法により打設を行うことにより得ることができる。例えば、コンクリート打設用の型枠にセメント組成物を流し込み、セメント系組成物を硬化させる方法が挙げられる。鉄筋コンクリート、鉄骨コンクリート等を得る場合には、型枠内の所定の位置に鉄筋等の芯材を配置してから打設を行ってよい。
【0071】
脱型後、得られたセメント系成形体に養生を行う。セメント系成形体には、養生前に水中養生等の初期養生を行ってもよい。養生剤は、セメント系成形体の全面に塗布することが好ましいが、少なくとも一部の面のみに塗布し、塗布しなかった面を養生シート等で覆うことにより水分の散逸を防いでもよい。なお、養生前にセメント系成形体の表面に荒均し締固め、定規ずり等を行って表面を均してもよい。また、養生は、セメント系成形体を脱型せずに行ってもよい。
【0072】
養生剤の塗布量としては、特に制限はないが、50~500g/mであると好ましく、50~300g/mであるとより好ましく、50~200g/mであると更に好ましい。
【0073】
セメント系成形体の表面の少なくとも一部を、本開示の養生剤で被覆して、養生時のセメント系成形体の収縮を低減することができる。セメント系成形体の収縮低減率は、材齢6週間(42日経過)時点で23%以上であると好ましく、25%以上であると好ましい。また、セメント系成形体の表面の少なくとも一部を、本開示の養生剤で被覆して、養生時のセメント系成形体の乾燥を抑制することができる。乾燥の抑制は、養生時のセメント系成形体の質量の継時変化(質量変化率)により評価することができる。質量変化率は、材齢6週間(42日経過)時点で2.0%以下であると好ましい。なお、収縮低減率及び質量変化率は、実施例に記載した方法により測定する。
【0074】
上記のとおり、養生剤をセメント系成形体の表面に塗布した後に、セメント系成形体を養生して被膜付きセメント系構造体が得られる。本開示の被膜付きセメント系構造体は、セメント系構造体と、当該セメント系構造体の表面の少なくとも一部を被覆する被膜を備える。被膜は、上記養生剤の硬化物を含む。なお、セメント系構造体は、養生後のセメント系成形体である。本開示の被膜付きセメント系構造体は、建築構造物等の建築材料等に使用することができる。
また、本開示の養生剤をセメント系成形体に塗布して塗膜を形成した後に、当該塗膜が硬化した被膜が形成される。当該被膜は、式(I)のジエステル化合物が重合した重合体(つまり、式(I)のジエステル化合物に由来する構造単位を含む重合体)を含むため、塗膜の強度及び耐久性が高くなる傾向があり、養生途中のセメント系成形体、及び製造されたセメント系構造体の表面で保護膜として機能することもできる。
例えば、保護膜の機能としては、セメント系成形体又はセメント系構造体への劣化因子の侵入を抑制することも挙げられる。つまり、本開示の養生剤は、セメント系成形体又はセメント系構造体に対して、劣化因子の侵入を抑制するための表面保護剤として使用することもできる。劣化因子とは、例えば、セメント系成形体又はセメント系構造体の中性化、塩害、凍害、化学的浸食、アルカリ骨材反応の原因となる物質であり、具体的には、二酸化炭素、塩化物イオン、酸、アルカリ、硫酸塩、水等が挙げられる。なお、劣化因子の侵入を抑制することを目的とする場合、本開示の養生剤を表面保護剤としてセメント系構造体に塗布してもよい。また、上述の本開示の養生剤として例示したものは、いずれも表面保護剤としても使用することができる。表面保護剤の塗布量は、特に制限はないが、50~500g/mであると好ましく、50~300g/mであるとより好ましく、50~200g/mであると更に好ましい。
一方、特許文献1等に記載される従来の養生剤は、ワックス、エマルション等を塗布することにより、単に油性成分からなる塗膜をセメント系成形体の表面に形成するものであるため、形成された塗膜の強度及び耐久性に乏しく、保護膜としてはほとんど機能しない。
なお、式(I)のジエステル化合物は、セメント系成形体表面のSi-O基等の作用により、養生剤の塗布後、自発的に重合反応を開始する傾向にある。Si-O基の作用により、アニオン重合反応が起こった場合は、式(I)のジエステル化合物に由来する構造単位を含む重合体は、セメント系成形体の表面のSi-O-基と共有結合した構造となる。言い換えれば、被膜とセメント系成形体との間に共有結合が形成されるため、より密着性及び耐久性の高い被膜が得られる傾向にある。
養生剤をセメント成形体に塗布して塗膜を形成した後、塗膜の硬化を促進するために加熱を行ってもよい。加熱温度は、100℃以下であることが好ましく、室温(25℃)より大きいことが好ましい。加熱温度が100℃以下であると、副反応等を抑制しながら、硬化時間を短縮できる傾向にある。
【実施例
【0075】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部及び%は質量基準である。
【0076】
<モルタル供試体の作製>
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)450g、水225g、及びセメント強さ試験用標準砂(JIS R5201-1997附属書2の5.1.3に規定:セメント協会)1350gを、ホバート型モルタルミキサー(ホバート社製、型番:N-50)を用い、JIS R5201-1997の方法に従い、モルタルの混練を行った。
【0077】
JIS A1129に従って、モルタル供試体(4×4×16cm)を作製した。型枠には予めシリコングリースを塗布して止水すると共に容易に脱型できるようにした。また、供試体の両端にはゲージプラグを装着した。混練して得られたモルタルを流し込んだ型枠を容器に入れ、密閉し、20℃で保管し、初期養生を行った。1日後に脱型し、供試体に付着したシリコングリースを、たわしを用いて水で洗浄し、続いて、20℃の静水中で6日間養生(水中養生)した。これにより、モルタル供試体が得られた。
【0078】
(実施例1及び比較例1)
実施例1として、上記モルタル供試体の全面に表1に示す養生剤を用いて塗膜を形成した供試体を用意した。塗膜は、水中で6日間養生したモルタル供試体の表面の水を紙タオルで拭き取った後、直ちに養生剤を滴下し、滴下した養生剤をポリエチレンテレフタレート製フィルムで均一に引き延ばし、静置することによって形成した。また、比較例1では、上記モルタル供試体に養生剤を使用せず、塗膜を形成しなかった。なお、表1における略号は以下のものである。
DHMM:メチレンマロン酸ジn-ヘキシル(Tg=-45℃)
DCHMM:メチレンマロン酸ジシクロヘキシル(Tg=140℃)
【0079】
【表1】
【0080】
<収縮低減率及び質量変化率の測定>
JIS A1129に従い、ダイヤルゲージ(株式会社西日本試験機製)を使用し、静水中で6日間養生した各モルタル供試体の表面の水を紙タオルで拭き取った後、直ちに測長し、各モルタル供試体の材齢0の時点での長さとした。実施例1のモルタル供試体については、長さを測定後、上述のとおり直ちに養生剤を塗布した。その後、温度20℃、湿度60%に設定した恒温恒湿室内に保存し、表2に示す各材齢におけるモルタル供試体を適時測定した。各モルタル供試体について、材齢ごとの長さと材齢0の時点での長さの差を材齢ごとの収縮量とした。そして、下記式で示すように養生剤を使用しなかった場合のモルタル供試体(つまり、比較例1のモルタル供試体)に対する収縮ひずみの低減割合を収縮低減率とした。結果を表2に示す。
収縮低減率
={(養生剤を使用しなかった場合のモルタル供試体の収縮量-養生剤を使用した場合のモルタル供試体の収縮量)/(養生剤を使用しなかった場合のモルタル供試体の収縮量)}×100 (%)
収縮低減率と同時に、各材齢において供試体の質量を測定し、下記式により質量減少率を算出した。この質量減少率が大きいほど供試体からの水分の蒸発が大きいことを示す。結果を表3に示す。
質量減少率(%)={(W-W)/W}×100
:材齢0日の供試体質量(g)
:材齢x日の供試体質量(g)
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
<モルタル表面での硬化性試験>
モルタル供試体の上面に養生剤を滴下し、滴下した養生剤の上に片面に離型剤がコートされたポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(東洋紡製 E7002)を乗せて静置した。PETフィルムの剥離のしやすさ、及び指で触った際の塗膜の状態を確認し、塗膜の硬化性及び塗膜が硬化するのに要する時間(硬化時間)を測定した。塗膜が硬化したか否かについては、PETフィルムを剥がす際、フィルムに養生剤由来の付着物がみられない状態、及び指で触った際に付着物がつかない状態を、硬化とみなして判定した。結果を表4に示す。なお、塗膜の硬化性及び硬化時間については、モルタル供試体の表面が乾燥している場合(表4の「乾燥」)と湿っている場合(表4の「湿潤」)との両方の場合について測定した。硬化性の評価基準は以下のとおりである。また、「乾燥」及び「湿潤」とは、以下の操作を行った供試体を指す。
A:塗布後、5時間以内に硬化した。
B:塗布後、1日程度で硬化した。
C:塗布後、1日経過しても部分的にしか硬化しなかった。
乾燥:水中養生後、開放状態で1日程度静置した供試体。供試体の表面が乾燥した状態であった。
湿潤:水中養生後、封緘状態で1日程度静置した供試体。供試体の表面が湿った状態であるものの、手で触れた時に水が付着するほど湿ってはいなかった。
【0084】
なお、参考例3及び4の養生剤における各成分の比は質量比である。また、BD-PESは、国際公開第2018/031101号の例4に従って1,4-ブタンジオールとメチレンマロン酸ジエチルとのエステル交換によって得られた多官能メチレンマロン酸エステル化合物である。
【0085】
【表4】
【0086】
(実施例2~7、及び比較例2~4)
表5に示すとおり、養生剤の組成又は塗布量を変更した以外は、実施例1と同様に収縮低減率及び質量変化率の測定を行った。なお、表5中「クラテキュア」は、第一工業製薬株式会社製の油脂界面活性剤配合物の商品名である。また、表5における養生剤の組成(配合比)は、質量比である。結果をそれぞれ表6及び表7に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
<圧縮強度の測定>
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)587g、水264g、及びセメント強さ試験用標準砂(JIS R5201-1997附属書2の5.1.3に規定:セメント協会)1350gを、ホバート型モルタルミキサー(ホバート社製、型番:N-50)を用い、JIS R5201-1997の方法に従い、モルタルの混練を行った。調製したモルタルを、水平なテーブル上に置いた円筒形型枠(直径5cm、高さ10cm)に型枠容量の3分の1まで詰め、突き棒を使って20回突いた後、型枠容器に振動を加え、粗い気泡を抜いた。さらに型枠のすりきりいっぱいまでモルタルを詰め、突き棒を使って20回突いた後、型枠容器に振動を加えた。乾燥を防ぐため、上面をPETフィルムで覆い、室温20℃、湿度60%の環境にて24時間養生を行った後、以下の種々の方法で養生を行った。
実施例8:型枠容器を脱型後、表8に示す養生剤を供試体表面に養生剤を塗布(塗布量100g/m)し、室温20℃、湿度60%の環境にて27日間養生した。
比較例5:養生剤をクラテキュアに変更した以外は、実施例8と同様に養生を行った。
比較例6(気中養生):型枠容器を脱型後、室温20℃、湿度60%の環境にて27日間養生した。
【0091】
この方法で作製した供試体を用いて、コンクリート試験の圧縮強度測定方法(JIS A1108:2006年)に準じて圧縮強度を測定した。各養生方法毎にそれぞれ3つの供試体について圧縮強度を測定し、圧縮強度の平均値を算出した。結果を表8に示す。なお、表8の養生剤の組成は、質量比である。
【0092】
【表8】
【0093】
<モルタル供試体の作製>
JSCE-K571-2013に準拠した方法により、モルタル供試体を作製した。モルタルは、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)18.00kg、水9.00kg、及びセメント強さ試験用標準砂(JIS R5201-1997附属書2の5.1.3に規定:セメント協会)54.00kgを用い、パン型強制練りミキサー(50L)で90秒間混練して調製した。
【0094】
JSCE-K571-2013に準拠した方法により、鋼製型枠を使用し、10×10×40cmの角柱体として養生した後、切断を行い、表面の研磨およびシーリング(試験面を除く4面へのエポキシ樹脂によるシーリング)を行った。
【0095】
(実施例9、10及び比較例7)
実施例9及び10として、それぞれ上記供試体の対抗する2面に表9に示す表面保護剤を用いて塗膜を形成した供試体を用意した。塗膜は、水中で6日間養生したモルタル供試体の表面の水を紙タオルで拭き取った後、直ちに表面保護剤を滴下し、滴下した表面保護剤を均一に引き延ばし、静置することによって形成した。表面保護剤の塗布量は、いずれも100g/mであった。また、比較例7では、上記モルタル供試体に表面保護剤を使用せず、塗膜を形成しなかった。
【0096】
<促進中性化試験>
実施例9、10及び比較例7で得られた各供試体について、JSCE-K571に準拠した方法により、促進中性化試験を実施した。試験期間は56日間とし、56日後に供試体の割裂面にフェノールフタレイン溶液を散布し、その呈色域を測定することで中性化深さを測定した。測定結果を表9に示す。
【0097】
<塩化物イオン浸透試験>
実施例9、10及び比較例7で得られた各供試体について、JSCE-K572に準拠した方法により、塩化物イオン浸透試験を実施した。10%のNaCl溶液に供試体を浸漬し、63日後に塩化物イオンの浸透深さを測定した。測定結果を表9に示す。
【0098】
【表9】