(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】連結部材
(51)【国際特許分類】
B60N 3/04 20060101AFI20220705BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
B60N3/04 A
B60N3/04 Z
B60N2/64
(21)【出願番号】P 2021504607
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2019009285
(87)【国際公開番号】W WO2020183517
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鯉沼 康裕
(72)【発明者】
【氏名】追野 英樹
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-295168(JP,A)
【文献】特開平10-129325(JP,A)
【文献】実開平01-093144(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/04
B60N 2/64
B60N 2/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一被取付部と第二被取付部とに架け渡され、前記第一被取付部と前記第二被取付部の少なくとも一方が移動することにより伸縮する連結部材であって、
薄板状又はシート状の本体部と、前記本体部の表面部に並列に設けられた複数の長凸部と、を有し、
前記長凸部は、前記本体部よりも厚く、前記連結部材の伸縮方向と直交する方向に延設され、
前記複数の長凸部が設けられた湾曲部は、前記本体部の一側面部又は他側面部の何れか一方が凹凸形状を有し、前記本体部の一側面部又は他側面部の何れか他方が平坦形状を有し、前記第一被取付部と前記第二被取付部が近づくことで前記複数の長凸部が内側となるように湾曲することを特徴とする連結部材。
【請求項2】
前記湾曲部が複数設けられ、
前記複数の長凸部が前記一側面部と、前記他側面部と、に設けられ、
前記一側面部に設けられた前記複数の長凸部が、前記他側面部に設けられた前記複数の長凸部と対向しない位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の連結部材。
【請求項7】
前記湾曲部が3箇所に設けられ、
前記複数の長凸部が、前記一側面部に1箇所、前記他側面部に2箇所設けられていることを特徴とする請求項1に記載の連結部材。
【請求項11】
前記本体部の一側端部が前記シートバックに固定され、
前記本体部の他側端部が前記荷室フロアの下側面部に固定され、
前記シートバックを起立させたときに前記一側端部が前記荷室フロアの上面よりも下方に位置することを特徴とする請求項10に記載の連結部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一被取付部と第二被取付部に架け渡される湾曲可能な連結部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着座者の背凭れとして使用する起立状態と、前側に傾倒させて背面を荷台として利用する前倒し状態と、に倒立可能な車両のシートバックと、シートの後方に設けられた荷室の荷台(荷室の床)と、に架け渡された架橋カーペットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の架橋カーペットは、シートバック側の接合端部と、荷台側の固定端部のほか、荷台とシートバックとの間で下垂する谷形状の襞部と、荷台側の固定端部からシートバックに向かって突出する突出部とを備えている。架橋カーペットは、一枚のカーペット素材から、接合端部、襞部、突出部、固定端部の各部がこの順で連続して形成されている。
【0004】
そして、架橋カーペットの襞部の中間部は、縫合により折り曲げ状態に保持されて、折り癖が付いた状態となっている。また、突出部は、カーペット素材がループ形状に折り返されて二重に形成され、基端部が剛性プレートの前方への突き出し部を挟むようにして縫合することにより、固定端部に対して固定されている。さらに、固定端部は、カーペット素材が後部で下側に折り返されて二重となっており、剛性プレートが二重のカーペット素材の間に挟まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり、特許文献1の架橋カーペットは、折り返して二重に形成したり、縫合する必要があることから、多くの製造工程を有するという問題があった。また、カーペット素材を折り返して二重にすることから、使用するカーペット素材の量が多くなってしまうという問題があった。これらの問題は、製造コスト上昇の要因となっていた。
【0007】
また、特許文献1に記載の架橋カーペットは、カーペット素材により形成されているため、襞部の中間部を縫合により折り曲げ状態に保持することができるが、例えば、シートバックと荷台に架け渡す部材をオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)のような可塑性樹脂により形成した場合、中間部を折り曲げ状態に保持するために縫合すると、縫合箇所が経時劣化し易く、劣化が進行すると外観意匠性の観点からも良くない。さらに、TPOのような可塑性樹脂により形成した場合、折り癖が付いていない状態で使用すると、シートバックを起立状態としたときに、上側に凸となるように湾曲するか、下側に凸となるように湾曲するかが定まらないという問題があり、上側に凸となるように湾曲した場合には、湾曲部分がシートバックと荷台との隙間から突出し、荷台のスペースを侵食したり、外観意匠性を低下させてしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は以上の問題点を解決し、構造が簡易であり、湾曲させた状態のときに第一被取付部と第二被取付部との隙間から上側に突出しない連結部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る連結部材は、第一被取付部と第二被取付部とに架け渡され、前記第一被取付部と前記第二被取付部の少なくとも一方が移動することにより伸縮する連結部材であって、薄板状又はシート状の本体部と、前記本体部に並列に設けられた複数の長凸部と、を有し、前記長凸部は、前記連結部材の伸縮方向と直交する方向に延設され、前記複数の長凸部が設けられた湾曲部は、前記第一被取付部と前記第二被取付部が近づくことで前記複数の長凸部が内側となるように湾曲することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る連結部材は、前記複数の長凸部が前記本体部の一側面部と、前記一側面部に対向する前記本体部の他側面部と、に設けられ、前記一側面部に設けられた前記複数の長凸部が、前記他側面部に設けられた前記複数の長凸部と対向しない位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る連結部材は、前記長凸部が等脚台形柱状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る連結部材は、前記長凸部が前記本体部の全幅に亘って延設されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る連結部材は、記本体部と前記長凸部が可撓性を有する合成樹脂により一体成型されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る連結部材は、前記複数の長凸部が設けられた湾曲部が前記本体部の一側面部に1箇所設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る連結部材は、前記複数の長凸部が設けられた湾曲部が、前記本体部の一側面部に1箇所、前記一側面部に対向する前記本体部の他側面部に2箇所設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る連結部材は、前記湾曲部が前記本体部の一側端部側から他側端部側に向かって、前記一側面部と前記他側面部に交互に配置されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る連結部材は、隣接する前記湾曲部の間に所定の間隔を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る連結部材は、前記第一被取付部が車両のシートバックであり、前記第二被取付部が前記車両の荷室フロアであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る連結部材は、前記本体部の一側端部が前記シートバックに固定され、前記本体部の他側端部が前記荷室フロアの下側面部に固定され、前記シートバックを起立させたときに前記一側端部が前記荷室フロアの上面よりも下方に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、第一被取付部と第二被取付部の少なくとも一方の移動した場合に、第一被取付部と第二被取付部との隙間から上側に突出しないように連結部材を湾曲させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】実施例1のシートバックを前倒し状態としたときの連結部材を示す左側面図である。
【
図4】実施例1のシートバックを起立状態としたときの連結部材を示す左側面図である。
【
図5】実施例1のシートバックを前倒し状態としたときの荷室を示す斜視図である。
【
図6】実施例1のシートバックを前倒し状態から僅かに起こしたときの荷室を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す状態から僅かにシートバックを起こしたときの荷室を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示す状態から僅かにシートバックを起こしたときの荷室を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示す状態から僅かにシートバックを起こしたときの荷室を示す斜視図である。
【
図10】実施例1のシートバックを起立状態としたときの荷室を示す左側面図である。
【
図11】実施例2の連結部材を示す左側面図である。
【
図12】実施例3の連結部材を示す左側面図である。
【
図13】実施例4の連結部材を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について、添付の
図1~
図12を参照して説明する。以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0023】
図1~
図10は本発明の実施例1を示しており、本実施例の連結部材1は、車両2の最後席3と、最後席3の後方に設けられた荷室4の荷室フロア5と、に着脱可能に架け渡されるものである。最後席3のシートバック6は、起倒可能(移動可能)であり、起立状態で最後席3に着座した乗員の背凭れとして使用し、前方へ倒した前倒し状態でシートバック6が荷室フロア5と略フラットになり、シートバック6を荷台として使用することができる。最後席3と荷室フロア5との間には、最後席3の前後方向への位置調節時や、シートバック6の角度調節時に、最後席3と荷室フロア5が干渉することを回避するため、隙間Tを有する。連結部材1は、この隙間Tから物が落下することを防止する目的で取り付けられるものである。本実施例では、シートバック6が本発明の第一被取付部に相当し、荷室フロア5が本発明の第二被取付部に相当する。
【0024】
図1及び
図2に示すように、連結部材1は、正面視矩形状であって、厚さ約2mmの薄板状又はシート状に形成された本体部7と、本体部7の表面部8に設けられた16本の長凸部10及び5本の長凸部12を有する。長凸部10は、本体部7の一側面部である表面9に設けられ、長凸部12は、本体部7の他側面部である裏面11に設けられている。すなわち、凸部10と長凸部12は、互いに対向する表面9と裏面11にそれぞれ設けられている。本体部7と長凸部10,12は、ポリプロピレン(PP)の中にエチレンプロピレンゴム(EPDM)を微分散させたオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)により一体成型されている。なお、連結部材1を形成する素材は、TPOと同程度の強度及び可撓性を有するものであれば、他の合成樹脂等を用いてもよい。また、本体部7は、強度や湾曲量に応じて適宜厚さを変更することができる。本実施例の本体部7は、全体が均一の厚さを有しているため、全体として強度が均一となっている。以下、連結部材1のうち長凸部10が形成されている部分を第一湾曲部13といい、長凸部12が形成されている部分を第二湾曲部14という。
【0025】
長凸部10は、第一湾曲部13の湾曲変形量が最も大きくなる湾曲頂部15に平行に設けられている。換言すると、
図4に白抜き矢印で示す、第一湾曲部13の湾曲方向D1と直行する方向(
図4の紙面の手前と奥方向)と平行に設けられている。長凸部10は、本体部7の幅方向(短手方向)の全幅に亘って設けられている。同様に、長凸部12は、第二湾曲部14の湾曲変形量が最も大きくなる湾曲頂部16に平行に設けられている。換言すると、
図4に白抜き矢印で示す、第二湾曲部14の湾曲方向D2と直行する方向(
図4の紙面の手前と奥方向)と平行に設けられている。長凸部12は、本体部7の幅方向(短手方向)の全幅に亘って設けられている。さらに換言すると、長凸部10,12は、後述する連結部材1の伸縮方向D3と直交する方向と平行に延設されている。なお、本実施例の長凸部10,12は、本体部7の幅方向の全幅に亘って設けられているが、後述する引張力及び収縮力による湾曲方向を限定する効果を奏するものであれば、長凸部10,12の長さは、本体部7の幅方向の全幅よりも僅かに短く形成してもよい。さらに、個々の長凸部10,12の長さや大きさは、それぞれ異なっていてもよい。
【0026】
長凸部10と長凸部12は、第一湾曲部13と第二湾曲部14が湾曲していない連結部材1が伸長した状態で互いに対向しない位置に設けられている。すなわち、長凸部10は長凸部12の反対側(真裏)には位置しない。本実施例では、第一湾曲部13と第二湾曲部14は全く重なっておらず、第一湾曲部13と第二湾曲部14の間は所定の間隔W1を有する。間隔W1は、決まった長さに固定されるものではなく、第一湾曲部13と第二湾曲部14を設ける位置及び範囲により決定されるものである。本実施例の長凸部10は16本、長凸部12は5本設けられているが、長凸部10,12の数は本体部7の材質、厚さ、湾曲量等に応じて適宜増減可能である。
【0027】
第一湾曲部13は、本体部7と長凸部10から構成されているため、表面9側は凹凸形状を有し、裏面11側は平坦形状を有している。第二湾曲部14は、本体部7と長凸部12から構成されているため、表面9側は平坦形状を有し、裏面11側は凹凸形状を有している。
【0028】
図3及び
図4に示すように、長凸部10は、縦断面視において等脚台形状に形成されており、上辺部17が下辺部18よりも短いため、長凸部10が内側となるように第一湾曲部13が湾曲した場合に、隣接する長凸部10同士が当接し難くなっている。また、長凸部12は長凸部10と同形状に形成されており、長凸部12が内側となるように第二湾曲部14が湾曲した場合に、隣接する長凸部12同士が当接し難くなっている。なお、本実施例の長凸部10,12の外形は、等脚台形柱状であり、縦断面視において等脚台形状に形成されているが、第一湾曲部13及び第二湾曲部14が湾曲したときに、隣接する長凸部10同士、長凸部12同士が当接し難く、後述する引張力及び収縮力による湾曲方向を限定する効果を奏するものであれば、例えば、縦断面視において半円状や三角形状等、異なる形状であってもよい。
【0029】
第一湾曲部13及び第二湾曲部14を湾曲させる際には、湾曲の外側部分には引張力が作用し、内側部分には収縮力が作用する。本実施例の本体部7と、長凸部10,12は同一の素材であるTOPにより一体に形成されているが、長凸部10,12は、本体部7と比較して厚さが厚くなっている。そのため、長凸部10,12は、本体部7と比較して成形収縮の収縮率が大きく、密度が高く形成されている。そのため、第一湾曲部13及び第二湾曲部14において、長凸部10,12が外側となるように湾曲させるために必要な引張力及び収縮力は、長凸部10,12が内側となるように湾曲させるために必要な引張力及び収縮力よりも大きくなる。したがって、第一湾曲部13及び第二湾曲部14は、長凸部10,12が外側となるよりも、長凸部10,12が内側となる方が湾曲させ易い。よって、長凸部10,12を設けることにより、第一湾曲部13及び第二湾曲部14の湾曲方向を限定することができる。連結部材1を湾曲させる範囲を広げたい場合や、曲率を大きくしたい場合には、長凸部10,12の数を増やせばよい。反対に、連結部材1を湾曲させる範囲を狭めたい場合や、曲率を小さくしたい場合には、長凸部10,12の数を減らせばよい。本実施例では、第二湾曲部14よりも第一湾曲部13の湾曲範囲を広くし、曲率を大きくする必要があるため、第二湾曲部14の長凸部12の数よりも第一湾曲部13の長凸部10の数が多くなっている。
【0030】
本体部7の一側端部である前側端部19には、連結部材1を最後席3に固定する固定具であるスナップボタン20の雌ボタン部21が3箇所に設けられている。この雌ボタン部21を最後席3のシートバック6に設けられたスナップボタン20の雄ボタン部22に係合させることで、連結部材1の前側端部19を最後席3に固定することができる。また、本体部7の他側端部である後側端部23には、連結部材1を荷室フロア5に固定する固定具であるスナップボタン24の雌ボタン部25が3箇所に設けられている。この雌ボタン部25を荷室フロア5の下側面部26に設けられたスナップボタン24の雄ボタン部27に係合させることで、連結部材1の後側端部23を荷室フロア5に固定することができる。連結部材1は、スナップボタン20,24により固定されているため、最後席3及び荷室フロア5に対して着脱可能である。本実施例のスナップボタン20の雄ボタン部22は、シートバック6を起立させたときに荷室フロア5の上面よりも下方に位置するようにシートバック6に設けられているが、雄ボタン部22を設ける位置は適宜変更可能である。
【0031】
ここで、最後席3のシートバック6を起倒する際の連結部材1の変形について説明する。
図3及び
図5に示すように、シートバック6を前倒し状態としたときには、第一湾曲部13及び第二湾曲部14が僅かに湾曲しているが、連結部材1は伸長した状態となる。次に、
図6、
図7、
図8、
図9の順に示すように、シートバック6を徐々に起立させていくと、長凸部10が内側となるように第一湾曲部13が湾曲すると共に、長凸部12が内側となるように第二湾曲部14が湾曲していく。そして、
図4及び
図10に示すように、シートバック6を完全に起立させた状態にすると、連結部材1が最後席3と荷室フロア5との隙間Tから上側に突出することなく、最後席3と荷室フロア5との間に湾曲した状態で収容される。本実施例では、湾曲部が2箇所(第一湾曲部13と第二湾曲部14)に設けられているため、連結部材1は側面視S字状に湾曲する。
【0032】
このように、シートバック6を前倒し状態から起立状態とするときには、シートバック6が荷室フロア5に接近するように移動し、連結部材1の前側端部19は円弧軌道で後側端部23に接近する。このとき、連結部材1には、連結部材1を折り曲げる力が作用する。上述のとおり、第一湾曲部13及び第二湾曲部14は、長凸部10,12が外側となるよりも内側となるように湾曲し易い。そのため、シートバック6を前倒し状態から起立状態とする際には、連結部材1は、最後席3と荷室フロア5との間の下方に湾曲した状態で収容される。シートバック6を起立状態から前倒し状態からとするときには、シートバック6が荷室フロア5から離れるように移動するため、湾曲した連結部材1に伸長させる力が作用し、シートバック6が前倒し状態となると、連結部材1は伸長した状態となる。したがって、
図1及び
図2に白抜き矢印D3で示す方向が連結部材1の伸縮方向である。
【0033】
以上のように、本実施例の連結部材1は、シートバック6と荷室フロア5とに架け渡され、シートバック6と荷室フロア5の少なくとも一方が移動することにより伸縮する連結部材1であって、薄板状又はシート状の本体部7と、本体部7に並列に設けられた複数の長凸部10,12と、を有し、長凸部10,12は、連結部材1の伸縮方向D3と直交する方向に延設され、複数の長凸部10,12が設けられた第一湾曲部13及び第二湾曲部14は、シートバック6と荷室フロア5が近づくことで複数の長凸部10,12が内側となるように湾曲することにより、シートバック6を起立状態としたときに連結部材1が最後席3と荷室フロア5との間に収容され、最後席3と荷室フロア5との隙間Tから上側に突出しないようにすることができる。
【0034】
また、本実施例の連結部材1は、複数の長凸部10,12が本体部7の表面9と、表面9に対向する本体部7の裏面11と、に設けられ、表面9に設けられた複数の長凸部10が、裏面11に設けられた複数の長凸部12と対向しない位置に設けられていることにより、連結部材1を複数の長凸部10,12が内側となるように第一湾曲部13及び第二湾曲部14を湾曲させることで、連結部材1を側面視S字状に収縮させることができる。
【0035】
また、本実施例の連結部材1は、長凸部10,12が等脚台形柱状に形成されていることにより、第一湾曲部13を複数の長凸部10が内側となるように湾曲させた際に、隣り合う長凸部10が互いに当接し難くすることができる。そのため、第一湾曲部13の湾曲の曲率を大きくすることができる。また、第二湾曲部14を複数の長凸部12が内側となるように湾曲させた際に、隣り合う長凸部12が互いに当接し難くすることができる。そのため、第二湾曲部14の湾曲の曲率を大きくすることができる。
【0036】
また、本実施例の連結部材1は、長凸部10,12が本体部7の全幅に亘って延設されていることにより、本体部7の全幅に亘って第一湾曲部13及び第二湾曲部14を長凸部10,12が内側となるように湾曲させ易くすることができる。
【0037】
また、本実施例の連結部材1は、本体部7と長凸部10,12が可撓性を有する合成樹脂により一体成型されていることにより、成形収縮の収縮率が大きく密度が高い長凸部10,12と、本体部7と、を一度の成型により製造することができる。そのため、製造工程が簡易であり、製造コストを低廉とすることができる。
【0038】
また、本実施例の連結部材1は、第一湾曲部13及び第二湾曲部14が本体部7の前側端部19側から後側端部23側に向かって、表面9と裏面11に交互に配置されていることにより、第一湾曲部13及び第二湾曲部14が複数の長凸部10,12が内側となるように湾曲することで、連結部材1を全体として側面視S字状に折り曲げて収縮させることができる。
【0039】
また、本実施例の連結部材1は、隣接する第一湾曲部13と第二湾曲部14の間に所定の間隔W1を有することにより、第一湾曲部13及び第二湾曲部14が湾曲した際に、互いに影響を受け難く、第一湾曲部13と第二湾曲部14をそれぞれ均等に湾曲させることができる。間隔W1が大きくなる程、第一湾曲部13と第二湾曲部14は互いに影響を受け難くなる。
【0040】
また、本実施例の連結部材1は、第一被取付部が車両2のシートバック6であり、第二被取付部が車両2の荷室フロア5であることにより、シートバック6を起倒させることで連結部材1を伸縮させることができる。そして、連結部材1収縮したときに、連結部材1の第一湾曲部13及び第二湾曲部14を複数の長凸部10,12が内側となるように湾曲させることができる。これにより、シートバック6を起立状態としたときに連結部材1が最後席3と荷室フロア5との間に収容され、最後席3と荷室フロア5との隙間Tから上側に突出しないようにすることができる。
【0041】
また、本実施例の連結部材1は、本体部7の前側端部19がシートバック6に固定され、本体部7の後側端部23が荷室フロア5の下側面部26に固定され、シートバック6を起立させたときに前側端部19が荷室フロア5の上面よりも下方に位置することにより、シートバック6を起立状態としたときに連結部材1全体が最後席3と荷室フロア5との間であって、荷室フロア5の上面よりも低い位置に収容され、連結部材1が荷室4側から視認し難くすることができる。
【実施例2】
【0042】
図11は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例は、実施例1の長凸部12を設けないものである。
【0043】
図11は本実施例の連結部材31を湾曲させた状態を示している。本実施例の連結部材31は、湾曲部が、長凸部10が設けられた第一湾曲部13の1箇所であるため、第一湾曲部13を湾曲させると側面視U字状となる。そのため、連結部材31は、U字状に折り曲げることを意図した場合に使用することが好ましい。
【0044】
本実施例の連結部材31は、連結部材31を湾曲させるための外力を付加することで、連結部材31を第一湾曲部13で意図した方向、すなわち、複数の長凸部10が内側となるように湾曲させ、連結部材31を全体として収縮させることができる。また、付加する外力を除去することで、連結部材31の復元力により連結部材31を伸長させることができる。
【0045】
以上のように、本実施例の連結部材1は、複数の長凸部10が設けられた第一湾曲部13が本体部7の表面9に1箇所設けられていることにより、第一湾曲部13を複数の長凸部10が内側となるように湾曲させ、連結部材1を全体として側面視U字状に折り曲げて収縮させることができる。
【実施例3】
【0046】
図12は、本発明の実施例3を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例の連結部材41は、長凸部10,12の他に5本の長凸部42を設けたものである。以下、連結部材41のうち長凸部42が形成されている部分を第三湾曲部43という。
【0047】
図12は本実施例の連結部材41を湾曲させた状態を示している。本実施例の連結部材41は、本体部7の裏面11に5本の長凸部42を設けたものである。長凸部42は、長凸部10,12と同形状に形成され、長凸部10,12と平行に延設されている。すなわち、長凸部42は、第三湾曲部43の湾曲変形量が最も大きくなる湾曲頂部44に平行に設けられている。換言すると、
図12に白抜き矢印で示す、第三湾曲部43の湾曲方向D4と直行する方向(
図12の紙面の手前と奥方向)と平行に設けられている。長凸部42は、本体部7の幅方向(短手方向)の全幅に亘って設けられている。なお、本実施例の長凸部10,12,42は同一形状に形成されているが、それぞれ異なる長さや大きさとしてもよい。
【0048】
本実施例では、湾曲部が前側端部19側から後側端部23に向かって、第三湾曲部43、第一湾曲部13、第二湾曲部14の順に設けられている。第一湾曲部13と第三湾曲部43の間は所定の間隔W2を有する。そのため、長凸部10と長凸部42は互いに対向しない位置に設けられている。すなわち、長凸部10は長凸部42の反対側(真裏)には位置しない。本実施例では、第一湾曲部13と第三湾曲部43は全く重なっていない。本実施例の長凸部42は5本設けられているが、長凸部42の数は本体部7の材質、厚さ、湾曲量等に応じて適宜増減可能である。
【0049】
本実施例では、湾曲部が3箇所に設けられているため、第一湾曲部13、第二湾曲部14及び第三湾曲部43を湾曲させると側面視逆Ω字状となる。そのため、連結部材31は、逆Ω字状に折り曲げることを意図した場合に使用することが好ましい。
【0050】
本実施例の連結部材41は、連結部材41を湾曲させるための外力を付加することで、連結部材41を第一湾曲部13、第二湾曲部14及び第三湾曲部43で意図した方向、すなわち、複数の長凸部10,12,42が内側となるように湾曲させ、連結部材41を全体として収縮させることができる。また、付加する外力を除去することで、連結部材41の復元力により連結部材41を伸長させることができる。
【0051】
以上のように、本実施例の連結部材1は、複数の長凸部10,12,42が設けられた第一湾曲部13、第二湾曲部14及び第三湾曲部43が、本体部7の表面9に1箇所、表面9に対向する本体部7の裏面11に2箇所設けられていることにより、第一湾曲部13、第二湾曲部14及び第三湾曲部43を複数の長凸部10,12,42が内側となるように湾曲させ、連結部材1を全体として側面視逆Ω字状に折り曲げて収縮させることができる。
【実施例4】
【0052】
図13は、本発明の実施例4を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。本実施例の連結部材51は、本体部7の一部を波状とすることにより長凸部52,53を形成したものである。
【0053】
本実施例では、本体部7の一側面部である表面9側に突出する16本の長凸部52と、本体部7の他側面部である裏面11側に突出する5本の長凸部53が形成されている。以下、連結部材1のうち長凸部52が形成されている部分を第四湾曲部54といい、長凸部53が形成されている部分を第五湾曲部55という。
【0054】
長凸部52,53は、実施例1の連結部材1と同様に、連結部材51の伸縮方向D5と直交する方向と平行に延設されている。また、本体部7の厚さは、第四湾曲部54及び第五湾曲部55が形成されている部分も形成されていない部分も同一の厚さに形成されており、全体として強度が均一となっている。また、本実施例の長凸部52,53は、本体部7の幅方向の全幅に亘って設けられている。なお、個々の長凸部52,53の長さや大きさは、それぞれ異なっていてもよい。
【0055】
長凸部52と長凸部53は、実施例1の長凸部10と長凸部12と同様に、連結部材51が伸長した状態で互いに対向しない位置に設けられている。本実施例では、第四湾曲部54と第五湾曲部55は全く重なっておらず、第四湾曲部54と第五湾曲部55の間は所定の間隔W3を有する。間隔W3は、決まった長さに固定されるものではなく、第四湾曲部54と第五湾曲部55を設ける位置及び範囲により決定されるものである。本実施例の長凸部52は16本、長凸部53は5本設けられているが、長凸部52,53の数は本体部7の材質、厚さ、湾曲量等に応じて適宜増減可能である。
【0056】
隣接する長凸部52の間には、裏面11側に凸の長凹部56が形成されている。長凹部56の凹底部57は、本体部7の第四湾曲部54及び第五湾曲部55が形成されていない裏面11と同一平面(
図13の一点鎖線で示す面)上に位置している。すなわち、長凹部56は、本体部7の第四湾曲部54及び第五湾曲部55が形成されていない裏面11よりも突出していない。
【0057】
隣接する長凸部53の間には、表面9側に凸の長凹部58が形成されている。長凹部58の凹底部59は、本体部7の第四湾曲部54及び第五湾曲部55が形成されていない表面9と同一平面(
図13の二点鎖線で示す面)上に位置している。すなわち、長凹部58は、本体部7の第四湾曲部54及び第五湾曲部55が形成されていない表面9よりも突出していない。
【0058】
本実施例の連結部材51は、実施例1の連結部材1と同様に、シートバック6と荷室フロア5とに架け渡して取り付けられ、シートバック6を起倒させることで、第四湾曲部54と第五湾曲部55が湾曲し伸縮する。このとき、第四湾曲部54と第五湾曲部55は、長凸部52と長凸部53が内側になるように湾曲する。
【0059】
以上のように、本実施例の連結部材51は、シートバック6と荷室フロア5とに架け渡され、シートバック6と荷室フロア5の少なくとも一方が移動することにより伸縮する連結部材51であって、薄板状又はシート状の本体部7と、本体部7に並列に設けられた複数の長凸部52,53と、を有し、長凸部52,53は、連結部材51の伸縮方向D5と直交する方向に延設され、複数の長凸部52,53が設けられた第四湾曲部54及び第五湾曲部55は、シートバック6と荷室フロア5が近づくことで複数の長凸部52,53が内側となるように湾曲することにより、シートバック6を起立状態としたときに連結部材51が最後席3と荷室フロア5との間に収容され、最後席3と荷室フロア5との隙間Tから上側に突出しないようにすることができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形実施が可能である。例えば、湾曲部は4箇所以上設けてもよく、その場合には、湾曲部は前側端部19側から後側端部23側に向かって、本体部7の表面9と裏面11に交互に配置されるようにする。また、固定具は、面ファスナー等、連結部材1,31,41,51を着脱可能に固定できるものであれば、他の部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 連結部材
2 車両
5 荷室フロア(第二被取付部)
6 シートバック(第一被取付部)
7 本体部
8 表面部
9 表面(一側面部)
10 長凸部
11 裏面(他側面部)
12 長凸部
13 第一湾曲部(湾曲部)
14 第二湾曲部(湾曲部)
19 前側端部(一側端部)
23 後側端部(他側端部)
31 連結部材
41 連結部材
42 長凸部
43 第三湾曲部(湾曲部)
51 連結部材
52 長凸部
53 長凸部
54 第四湾曲部(湾曲部)
55 第五湾曲部(湾曲部)