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特許7100204不飽和イソオレフィンコポリマーのハロゲン化のためのプロセスにおけるハロゲン回収
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】不飽和イソオレフィンコポリマーのハロゲン化のためのプロセスにおけるハロゲン回収
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/20 20060101AFI20220705BHJP
   C08C 19/12 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C08F8/20
C08C19/12
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021535822
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 CA2019051836
(87)【国際公開番号】W WO2020124223
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】18215140.7
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516186267
【氏名又は名称】アランセオ・シンガポール・プライヴェート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン・エイチ・マレー
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08C 19/00-19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化イソオレフィンコポリマーの製造方法であって、有機溶媒に溶解した不飽和イソオレフィンコポリマーを含む不飽和イソオレフィンコポリマーセメントと、ハロゲン化剤及びC1-20有機過酸酸化剤の水性溶液とを、ハロゲン化条件下で接触させて、有機相及び水性相を含む二相反応媒体を形成する工程を含み、前記有機過酸酸化剤は、ハロゲン化水素を変換してハロゲンを脱離させることができる、方法。
【請求項2】
少なくとも0.05mol%の化学的に結合したハロゲンを含むハロゲン化イソオレフィンコポリマーを回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不飽和イソオレフィンコポリマーセメントが、少なくとも1つのイソオレフィンモノマーと少なくとも1つの共重合可能な不飽和モノマーとを有機希釈剤中で重合させ、その後残留モノマー及び有機希釈剤を除去することによって製造される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
残留モノマー及び有機希釈剤が、不飽和イソオレフィンコポリマーが溶解する加熱された有機溶媒でのフラッシュ分離、あるいは、有機希釈剤がヘキサンである場合には単純蒸留によって除去され、ヘキサンを含む不飽和イソオレフィンコポリマーセメントが提供される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
加熱された有機溶媒が、加熱されたヘキサンまたはペンタンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのイソオレフィンモノマーがイソブテンであり、少なくとも1つの共重合可能な不飽和モノマーがイソプレン、p-メチルスチレン、又はβ-ピネンである、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのイソオレフィンモノマーがイソブテンであり、少なくとも1つの共重合可能な不飽和モノマーがイソプレンであり、不飽和イソオレフィンコポリマーが、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、及びインデンからなる群より選択される1つ以上の追加の共重合可能なモノマーをさらに含む、請求項3にから5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
セメントが、セメントの総質量に基づいて1wt%未満の水含量を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
有機過酸が、C1-3有機過酸である、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
有機過酸が、過蟻酸である、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
有機過酸が予め製造され、水性溶液に直接溶解されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
有機過酸が、有機酸を水溶性酸化剤と反応させることによって水性溶液中においてin situ製造される、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
水溶性酸化剤が過酸化水素を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
有機酸が、0.05から24.55の水と1-オクタノールの間の分配係数(k)を有する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
有機酸が、0.25から24.55の水と1-オクタノールの間の分配係数(k)を有する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
ハロゲン化剤がBr2である、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
反応媒体が、反応媒体の総質量に基づいて1wt%未満の、不飽和イソオレフィンコポリマーセメント中の水から生じる水含量を有する、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
不飽和イソオレフィンコポリマーのハロゲン化が、乳化剤の非存在下で行われる、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
不飽和イソオレフィンコポリマーが、反応媒体の総質量に基づいて、10から33wt%の量で反応媒体中に存在する、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
不飽和イソオレフィンコポリマーセメントが、ハロゲン化剤及び有機過酸酸化剤の水性溶液と接触する前に冷却される、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
不飽和イソオレフィンコポリマーセメントとハロゲン化剤との接触が、1から60分の間、20から60℃の範囲の温度で実施される、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和イソオレフィンコポリマーをハロゲン化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブチルゴムを臭素化してブロモブチルゴムを形成する標準的な方法では、臭素化剤として分子状臭素(Br2)が使用される。この方法は、副生成物として臭化水素(HBr)の放出をもたらすが、通常の条件では、これがブチルゴムポリマーをさらに臭素化することはない。したがって、ブチルゴムポリマーに導入しうる、反応混合物中に存在する臭素の理論上の最大割合は50%である。しかしながら、実際には、この割合は通常45%未満であり、実験室と生産工場とのいずれの設定でも35%未満である。
【0003】
ブチルゴム臭素化の際に臭素の利用率を高める既知の方法(米国特許出願公開第2014/0309362号明細書、米国特許第3,018,275号明細書、米国特許第5,681,901号明細書)には、水溶性酸化剤、例えば臭化水素を再酸化して元素臭素に戻す過酸化水素を、臭素化剤1molあたり少なくとも0.5mol適用することが含まれる。酸化剤は、水性溶液でも、有機溶媒中の水性エマルションでもよい。酸化剤は水にのみ可溶であるため、反応速度は反応物が有機相と水性相の間で交換される速度に支配され、このためより長い反応時間を要する。さらにまた、これらの方法が要する臭素化媒体中に存在する水の濃度は、非常に低い。臭素化媒体中における酸化剤の使用から得られる利点は、水の濃度が1wt%を超えると劇的に減少し、臭素化媒体中の水含量を10~20wt%から1wt%以下に減らすためには追加の装置及びエネルギーが必要となる可能性があることから、多大な課題と製造コストの発生を示している。特に米国特許第5,681,901号明細書を参照すると、過酸化水素を形成するルートとして過酸が挙げられている。特に過酸の分配係数を考慮すると、過酸が過酸化水素と乳化剤の組み合わせよりも優れた性能を発揮することは期待できない。
【0004】
アルキルゴムを有機アゾ化合物及び/または次亜塩素酸塩の存在下で臭素により臭素化することは既知である(米国特許第5,569,723号明細書)。また、ハロゲン化ブチルゴムは、N-ハロ有機化合物をハロゲン源として使用し、低割合の過酸化物触媒の存在下で製造することができる(米国特許第2,948,709号明細書)が、こうしたプロセスは、ブチルゴムへのハロゲン添加の手段として、過酸化物により触媒される従来の分子状ハロゲン(臭素、塩素)の使用に代えて、特定のハロゲン源(N-ハロ化合物)の添加に依存している。
【0005】
さらに、HBrを中和して臭化ナトリウム(NaBr)を得て、NaBrをハロゲン化されたブチルゴムから水性流中に洗浄し、このNaBrを、Cl2ガスを用い、例えばBlowout ProcessによってBr2に変換することによる、ハロゲン化後のリサイクルを含む方法もある。このex situリサイクル方法は、NaBrの水性相への抽出効率及び水性相中のNaBrの希釈によって制限される。さらに、こうしたex situ処理の実施は、費用対効果が低く、エネルギー多消費型である
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2014/0309362号明細書
【文献】米国特許第3,018,275号明細書
【文献】米国特許第5,681,901号明細書
【文献】米国特許第5,569,723号明細書
【文献】米国特許第2,948,709号明細書
【文献】米国特許第5,886,106号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Rubber Technology, 3rd Ed., Edited by Maurice Morton, Kluwer Academic Publishers, pp. 297-300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
イソオレフィンコポリマー、例えばブチルゴムのハロゲン化の際に、ハロゲンの利用率を向上させるための、コスト効率が良く、効率的なin-situプロセスが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、ハロゲン化イソオレフィンコポリマーの製造方法が提供され、この方法は、有機溶媒に溶解した不飽和イソオレフィンコポリマーを含み、且つセメントの総質量に基づいて1wt%以上の水含量を有する不飽和イソオレフィンコポリマーセメントと、ハロゲン化剤及びC1-20有機過酸酸化剤の水性溶液とを、ハロゲン化条件下で接触させて、有機相及び水性相を含む二相反応媒体を形成する工程を含み、前記有機過酸酸化剤は、ハロゲン化水素を変換してハロゲンを脱離させることができる。
【0010】
別の態様では、ハロゲン化イソオレフィンコポリマーの製造方法が提供され、この方法は、有機溶媒に溶解した不飽和イソオレフィンコポリマーを含む不飽和イソオレフィンコポリマーセメントと、ハロゲン化剤及びC1-4有機過酸酸化剤の水性溶液と、ハロゲン化条件下で接触させて、有機相と水性相を含む二相反応媒体を形成する工程を含み、前記有機過酸酸化剤は、ハロゲン化水素を変換してハロゲンを脱離させることができる。
【0011】
本方法は、化学的に結合したハロゲンを少なくとも0.05mol%含むハロゲン化イソオレフィンコポリマーを回収する工程をさらに含んでもよい。
【0012】
本発明のハロゲン化方法は、ハロゲン化媒体中の水含量が少ないことを必要とせず、また、ハロゲン化媒体の有機相中に酸化剤を分散させるために界面活性剤を使用する必要もなく、不飽和イソオレフィンコポリマーのハロゲン化の際に生成するハロゲン化水素(HX)を酸化して分子状ハロゲン(X2)に戻すことにより、ハロゲン利用率を有利に増大させる。
【0013】
さらなる特徴は、以下の詳細な説明中に詳説されるか、またはおのずと明らかになるであろう。本明細書中に記載された各特徴は、他の記載された特徴のいずれか1つ以上と任意に組み合わせて利用することができ、また、各特徴は、当業者に明らかな場合を除き、必ずしも他の特徴の存在に依存しないことが理解されるべきである。
より明確な理解のために、添付の図面を参照しつつ、好ましい実施態様をここに例示のために詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】Fig.1Aは、様々な酸化剤を使用して臭化物を臭素に戻す場合の、臭素化効率に対する追加の水含量の影響を示す、第1の実験についての臭素原子効率(BAE%)対追加の水の割合(wt%)のグラフである。
図2】Fig.1Bは、様々な酸化剤を使用して臭化物を臭素に戻す場合の、臭素化効率に対する追加の水含量の影響を示す、第2の実験についての臭素原子効率(BAE%)対追加の水の割合(wt%)のグラフである。
図3】Fig.2は、臭素化効率に対するブチルゴム濃度の影響を示す、臭素原子効率(BAE%)対反応媒体中のブチルゴム(IIR)の濃度(wt%)のグラフである。
図4】Fig.3は、臭素化効率に対する有機過酸濃度の影響を示す、臭素原子効率(BAE%)対反応媒体中の過酸濃度(Br21mol当たりの過酸のmol数)のグラフである。PFAは過蟻酸であり、PAAは過酢酸である。
図5】Fig.4は、臭素化効率に対する温度の影響を示す、臭素原子効率(BAE%)対反応温度(℃)のグラフである。
図6】Fig.5は、有機過酸の臭素化効率を過酸化水素と比較した臭素原子効率(BAE%)対反応時間(分)のグラフである。
図7】Fig.6は、H2SO4の存在下及び非存在下にて、in situ生成した有機過酸の臭素化効率を比較した臭素原子効率(BAE%)対反応時間(分)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この方法は、少なくとも1つのイソオレフィンモノマーと少なくとも1つの共重合可能な不飽和モノマーを、有機希釈剤中で重合させて、有機媒体中のハロゲン化可能なイソオレフィンコポリマーを製造する工程を含む。重合は、重合反応器で行われる。適切な重合反応器には、フロースルー重合反応器、プラグフロー反応器、ムービングベルト、またはドラム反応器などが含まれる。この方法は、好ましくは、モノマーのスラリー重合を含む。
【0016】
ハロゲン化可能なイソオレフィンコポリマーは、好ましくは、少なくとも1つのイソオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位と、少なくとも1つの共重合可能な不飽和モノマーに由来する繰り返し単位と、1つ以上の更なる共重合可能なモノマーに由来する任意の繰り返し単位とを含む。ハロゲン化可能なイソオレフィンコポリマーは、好ましくは不飽和イソオレフィンコポリマーを含む。
【0017】
適切なイソオレフィンモノマーには、4から16の炭素原子を有する炭化水素モノマーが含まれる。一実施態様では、イソオレフィンモノマーは、4から7の炭素原子を有する。好適なイソオレフィンの例には、イソブテン(イソブチレン)、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、及びこれらの混合物が含まれる。好ましいイソオレフィンモノマーは、イソブテン(イソブチレン)である。
【0018】
適切な共重合可能な不飽和モノマーには、マルチオレフィン、p-メチルスチレン、β-ピネン、またはこれらの混合物が含まれる。マルチオレフィンモノマーには、4から14の炭素原子を有する炭化水素モノマーが含まれる。一実施態様では、マルチオレフィンモノマーには、共役ジエンが含まれる。好適なマルチオレフィンモノマーの例には、イソプレン、ブタジエン、2-メチルブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリリン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、4-ブチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジブチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1-ビニルシクロヘキサジエン、及びこれらの混合物が含まれる。
【0019】
ハロゲン化可能なイソオレフィンコポリマーは、1つ以上の追加の共重合可能なモノマーを任意に含んでよい。適切な追加の共重合可能なモノマーには、スチレン系モノマー、例えば、C1-C4アルキル置換されたスチレンを含むがこれに限定されるものではない、アルキル置換されたビニル芳香族コモノマーが含まれる。追加の共重合可能なモノマーの具体例には、例えば、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン、シクロペンタジエン、及びメチルシクロペンタジエンが含まれる。インデン及び別のスチレン誘導体もまた使用してよい。一実施態様では、ハロゲン化イソオレフィンコポリマーは、イソブチレン、イソプレン、及びp-メチルスチレンのランダムコポリマーを含んでよい。
【0020】
一実施態様では、ハロゲン化可能なイソオレフィンコポリマーは、モノマー混合物の共重合によって形成されてもよい。好ましくは、モノマー混合物は、モノマー混合物中のモノマーに基づいて、約80~99.9mol%の少なくとも1つのイソオレフィンモノマーと約0.1~20mol%の少なくとも1つの共重合可能な不飽和モノマーとを含む。より好ましくは、モノマー混合物は、約90~99.9mol%の少なくとも1つのイソオレフィンモノマーと、約0.1~10mol%の少なくとも1つの共重合可能な不飽和モノマーとを含む。一実施態様では、モノマー混合物は、約92.5~97.5mol%の少なくとも1つのイソオレフィンモノマーと、約2.5~7.5mol%の少なくとも1つの共重合可能な不飽和モノマーとを含む。別の実施態様では、モノマー混合物は、約97.4~95mol%の少なくとも1つのイソオレフィンモノマーと約2.6~5mol%の少なくとも1つの共重合可能な不飽和モノマーとを含む。
【0021】
モノマー混合物が、イソオレフィン及び/または共重合可能な不飽和モノマーと共に追加の共重合可能なモノマーを含む場合、追加の共重合可能なモノマーが、共重合可能な不飽和モノマーの一部を置き換えることが好ましい。マルチオレフィンモノマーが使用される場合、モノマー混合物はまた、0.01から1質量%の少なくとも1つのマルチオレフィン架橋剤を含んでよく、マルチオレフィン架橋剤が存在する場合、マルチオレフィンモノマーの量は相応に低減される。
【0022】
不飽和イソオレフィンコポリマーは、任意の適切な方法で調製することができ、そのうちいくつかは当技術分野で既知である。例えば、モノマーの重合は、希釈剤中、重合化プロセスを開始することのできる開始剤系(例えば、ルイス酸触媒及びプロトン源)の存在下で行ってよい。本発明において好適なプロトン源には、ルイス酸またはルイス酸を含む組成物に添加された場合にプロトンを生成する任意の化合物が含まれる。プロトンは、プロトン及び対応する副生成物を生成する、ルイス酸とプロトン源との反応によって産生されうる。こうした反応は、プロトン源の反応が、モノマーとの反応に比べて、プロトン化された添加剤との方が速い場合に好ましい場合がある。プロトン産生反応物には、例えば、水、アルコール、フェノールチオール、カルボン酸など、またはこれらの任意の混合物が含まれる。水、アルコール、フェノール、またはこれらの任意の混合物が好ましい。最も好ましいプロトン源は水である。ルイス酸とプロトン源の好ましい比率は、質量比で5:1から100:1、または質量比で5:1から50:1である。触媒及びプロトン源を含む開始剤系は、反応混合物の総質量に基づいて0.02~0.1wt%の量で反応混合物中に存在することが好ましい。
【0023】
ハロゲン化アルキルアルミニウム触媒は、本発明に従う溶液重合反応を触媒するためのルイス酸の特に好ましいクラスである。ハロゲン化アルキルアルミニウム触媒の例には、メチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミド、ブチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムブロミド、ジブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキブロミド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド、エチルアルミニウムセスキクロリド、及びこれらの任意の混合物が含まれる。好ましいのは、ジエチルアルミニウムクロリド(Et2AlClまたはDEAC)、エチルアルミニウムセスキクロリド(Et1.5AlCl1.5またはEASC)、エチルアルミニウムジクロリド(EtAlCl2またはEADC)、ジエチルアルミニウムブロミド(Et2AlBrまたはDEAB)、エチルアルミニウムセスキブロミド(Et1.5AlBr1.5またはEASB)、及びエチルアルミニウムジブロミド(EtAlBr2またはEADB)、及びこれらの任意の混合物である。 特に好ましい開始剤系では、触媒は、好ましくは等モル量のジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドを、好ましくは希釈剤中で混合することによって生成させたエチルアルミニウムセスキクロリドを含む。希釈剤は、好ましくは、共重合反応を行うために使用されるものと同一である。
【0024】
希釈剤は、有機希釈剤を含んでよい。適切な有機希釈剤には、例えば、アルカン、クロロアルカン、シクロアルカン、芳香族、ヒドロフルオロカーボン(HFC)またはこれらの任意の混合物が含まれる。クロロアルカンには、例えば、塩化メチル、ジクロロメタン、またはこれらの混合物が含まれる。特に、塩化メチルが好ましい。アルカン及びシクロアルカンには、例えば、イソペンタン、シクロペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロペンタン、2,2-ジメチルペンタン、または任意の混合物が含まれる。アルカン及びシクロアルカンは、好ましくはC6溶媒であり、これにはn-ヘキサンまたはヘキサン異性体、例えば2-メチルペンタンまたは3-メチルペンタン、またはn-ヘキサンとこうした異性体並びにシクロヘキサンとの混合物が含まれる。モノマーは一般に、希釈剤中で、-120℃から+20℃、好ましくは-100℃から-50℃の範囲の温度、より好ましくは-95℃から-65℃の範囲の温度でカチオン重合される。温度は、好ましくは、約-80℃以下である。
【0025】
スラリー重合法において、希釈剤がクロロアルカン(例えば塩化メチル)を含む場合、希釈剤並びにあらゆる残留モノマーは、蒸気を用いるフラッシュ分離によって不飽和イソオレフィンコポリマーから除去することができる。こうした「湿式」プロセスにおける希釈剤及び残留モノマーの除去により、多量の水を含むポリマーが残る。このポリマーを有機溶媒に溶解すると、優位の水含量、例えば、セメントの総質量に基づいて1wt%以上または1.5wt%以上を有するポリマーセメントが得られる。いくつかの実施態様では、セメントの水含量は、セメントの総質量に基づいて、3wt%以下であってよい。いくつかの実施態様では、セメントの水含量は、セメントの総質量に基づいて、1~30wt%または1.5~15wt%または2~30wt%または2~20wt%または2~15wt%または5~20wt%または5~15wt%または5~10wt%または10~15wt%であっよい。
【0026】
スラリーまたは溶液重合法において、希釈剤がクロロアルカン(例えば塩化メチル)またはアルカン(例えばヘキサン)を含む場合、希釈剤並びにあらゆる残留モノマーは、不飽和イソオレフィンコポリマーが可溶である加熱された有機溶媒を用いるフラッシュ分離または単純蒸留によって、不飽和イソオレフィンコポリマーから除去することができる。単純蒸留を用いる場合、有機希釈剤の一部はセメント中に有機溶媒として残留し得る。こうした「乾式」プロセスにおける希釈剤及び残留モノマーの除去により、より少ない水を含むポリマーセメント、例えばセメントの総質量に基づいて1wt%未満の水を含むポリマーセメント、あるいは0wt%の水を含むポリマーセメントさえも得られる。
【0027】
ハロゲン化イソオレフィンコポリマーを形成するために、不飽和イソオレフィンコポリマーに、ハロゲン化剤を用いるハロゲン化プロセスを、ハロゲン化条件下で行ってよい。ハロゲン化は、当業者に既知の方法(例えば、Rubber Technology, 3rd Ed., Edited by Maurice Morton, Kluwer Academic Publishers, pp. 297-300または1999年3月23日に発行された米国特許第5,886,106号明細書(両者の内容は参照のため本明細書中に援用することとする)に記載された手順)に適応させ、本明細書に記載の方法に修正することによって実施することができる。
【0028】
ハロゲン化の効率を向上させるため、ハロゲン化方法を、不飽和イソオレフィンコポリマーが有機溶媒に溶解している不飽和イソオレフィンコポリマーセメントを、ハロゲン化剤と、有機過酸を含む酸化剤の水性溶液と接触させることによって改変する。有機相と水性相を含む二相反応媒体が形成され、ここで、有機過酸の有機相への溶解度が大きいために有機過酸は有機相と水性相のとの間で分配されている。
【0029】
不飽和イソオレフィンコポリマーのハロゲン化に有用なハロゲン化剤は、分子状塩素(Cl2)または分子状臭素(Br2)及び/またはその有機ハロゲン化物または無機ハロゲン化物前駆体、例えば、ジブロモジメチルヒダントイン、トリクロロイソシアヌル酸(TCIA)、n-ブロモスクシンイミド、臭化ナトリウム、臭化水素などを含んでよい。好ましくは、ハロゲン化剤には、塩素(Cl2)または臭素(Br2)を含み、より好ましくは臭素である。好ましくは、ハロゲン化には臭素化が含まれる。ハロゲン化剤の添加量は、ハロゲン化イソオレフィンコポリマー中の最終的なハロゲン含有量が少なくとも0.05mol%、好ましくは0.05~2.5mol%になるように制御される。ハロゲン化剤の使用量は、ハロゲン化イソオレフィンコポリマーにおける最終的なハロゲン含有量(すなわち、官能性ハロゲン量)と線形関係にある。ハロゲン化剤の量が多いほど、ハロゲン化イソオレフィンコポリマーの官能性ハロゲン量は多くなる。
【0030】
ハロゲン化は、有機溶媒中で行われる。有機溶媒は、好ましくは、脂肪族溶媒である。有機溶媒は、好ましくはアルカン、より好ましくはヘキサンまたはペンタンを含む。
【0031】
ハロゲン化は、所望レベルのハロゲン化が達成される時間の長さに亘って行ってよい。時間の長さは、好ましくは60分以下である。20分以下、または10分以下、または5分以下であってさえ、乳化剤の使用の有無にかかわらず、不飽和イソオレフィンコポリマーの有意なハロゲン化が達成され得る。好ましくは、ハロゲン化は最低でも1分間行われる。好ましくは、ハロゲン化時間は、1~60分、または1~20分、または1~10分、または1~5分である。
【0032】
ハロゲン化は、任意の適切な温度で実施してよく、好ましくは、約90℃までの温度で実施する。いくつかの実施態様では、この温度は約80℃までであってよい。別の実施態様では、温度は約65℃までであってよい。しかしながら、より低い温度は、一般的にハロゲン化効率の向上をもたらす。より低い温度で増大したハロゲン化効率は、反応媒体中の不飽和イソオレフィンコポリマーの濃度が高いほど顕著になる。0~50℃または0~45℃または15~45℃または20~60℃または23~54℃または23~45℃または10~35℃または20~30℃の範囲の温度が好ましい。一実施態様では、不飽和イソオレフィンコポリマーセメントの溶液を、ハロゲン化剤及び有機過酸酸化剤の水性溶液と接触させる前に、不飽和イソオレフィンコポリマーを冷却する。
【0033】
不飽和イソオレフィンコポリマーは、好ましくは、反応媒体中に、反応媒体総質量に基づいて、1~60wt%の量で存在する。より好ましくは、不飽和イソオレフィンコポリマーは、反応媒体の総質量に基づいて、5~50wt%、さらに好ましくは5~40wt%、さらに好ましくは10~33wt%、さらにより好ましくは10~30wt%、例えば20wt%の量で存在する。
【0034】
水性相は、酸化剤の水性溶液から、ハロゲン化反応により生成された水から、及び不飽和イソオレフィンポリマーセメントに含まれる追加の水から形成される。酸化剤の水性溶液とハロゲン化反応により生成した水は、反応媒体の総質量に基づいて、典型的には1wt%未満、例えば0.03~0.3wt%の反応媒体を形成する。
【0035】
反応媒体は、ポリマーセメントを調製するために使用される方法に応じて、不飽和イソオレフィンポリマーセメントに含まれる水から生じる追加の水を、反応媒体の総質量に基づいて0~20wt%含んでよい。追加の水とは、不飽和イソオレフィンポリマーセメント由来の水であり、酸化剤の水性溶液を調製するために使用された水も、ハロゲン化反応によって生成された水も含まない。反応媒体が、相当量の追加の水、例えば反応媒体の総質量に基づいて1~20wt%の追加の水を含んでいてよいことは、本発明の方法の利点である。いくつかの実施態様では、追加の水は、反応媒体の総質量に基づいて、反応媒体の1.5~15wt%または2~20wt%または2から15wt%または5~20wt%または5~15wt%または5~10wt%を構成してもよい。そうであっても、いくつかの実施態様では、反応媒体は、反応媒体の総質量に基づいて、わずかな量の追加の水、例えば1wt%未満の追加の水を含んでいてよく、あるいはさらに、追加の水が0wt%であってもよい。
【0036】
過酸化水素とは異なり、有機過酸は有機相に有意な溶解度を有しており、有機相中の有機過酸の十分な濃度を提供することができ、不飽和イソオレフィンコポリマーのハロゲン化の際に形成されたハロゲン化水素(HX)を酸化して分子状ハロゲンに戻すために、反応媒体中の水含量が少ないことを必要とせず、また、酸化剤を有機相中に分散させるために界面活性剤を使用する必要もない。過酸化水素を酸化剤として使用する先行技術の方法(例えば、米国特許第3,018,275号明細書)では、反応媒体が反応媒体の総質量に基づいて1wt%未満の水を有することを要するが、そうでなければ、過剰な水は過酸化水素を溶解して過酸化水素を水性相中に捕捉し、よって酸化効率を低下させ、ハロゲン化効率の向上をもたらさないか、または低減させる。米国特許第3,018,275号明細書に記載の通り、「ハロゲンと酸化剤との間に反応が起こるのを補助するため、十分なだけの量の水が存在することが必要である」。しかるに、米国特許第3,018,275号明細書では、過酸化水素溶液以外にはこのプロセスに水は加えられていない。米国特許第5,681,901号明細書に記載のように、界面活性剤はハロゲン化イソオレフィンコポリマーを汚染する可能性があり、それにもかかわらず、界面活性剤を使用しても反応媒体の水含量が2wt%以下で、ハロゲン化時間を30~60分に延長しない限り、満足のいくハロゲン化効率の向上は得られないことから、過酸化水素を有機相中に分散させるために界面活性剤を使用することもまた満足のいくものではない。ハロゲン化時間の延長は、ハロゲン化イソオレフィンコポリマーの微細構造に変化をもたらしうる。その一方で、本発明の方法では、乳化剤の添加によらず、5分以下のハロゲン化時間でハロゲン化効率に変化はない。さらにまた、ハロゲン化時間が20分に延長された場合、過酸+乳化剤は過酸化水素+乳化剤よりも10%高いハロゲン化効率をもたらし、これは大幅な改善である。したがって、本発明のハロゲン化方法は、1wt%以下の水を有する反応媒体中で、且つ/または界面活性剤の存在下で行ってよいが、先行技術の方法とは異なり、ハロゲン利用率の改善を達成するためにこれらの条件を要するものではない。
【0037】
本発明の方法で有用な有機過酸は、少なくとも部分的に有機相中に可溶性であり、酸化剤が有機相と水性相の間で分配されることを可能にし、これによって分子状ハロゲンを加速度的速度で再生させる。ハロゲン化物をハロゲンに変換する反応速度は十分に迅速であることから、この反応は滞留時間の短い連続反応器で反応を行うことができ、よってハロゲン化反応のための大型接触容器を設計するコストを大幅に削減することができる。さらにまた、有機過酸酸化剤が少なくとも部分的には有機相に可溶性であるため、工業規模では適切な高い水濃度でも性能が維持される。有機過酸は過酸化水素に比べて有機相への溶解性と反応性が向上しているため、Br2の再生における有機過酸の有効性は、過酸化水素に比べて反応媒体中の水分濃度の影響を受けにくい。
【0038】
有機過酸は、好ましくはC1-20有機過酸、より好ましくはC1-6有機過酸、さらにより好ましくはC1-4有機過酸、またはC1-3有機過酸である。有機過酸の例には、過蟻酸(PFA)、過酢酸(PAA)、過プロパン酸(PPA)、過ブタン酸(PBA)、t-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP)、過吉草酸(PVA)、及びこれらの任意の混合物が含まれる。有機過酸は予め製造しておき、水性溶液に直接溶解させて、不飽和イソオレフィンコポリマーセメントを含む有機溶媒と接触させてよい。
【0039】
あるいは、または追加的に、有機過酸は、水溶性酸化剤(例えば過酸化水素)と適切な有機酸との、触媒量の鉱酸(例えば硫酸)の存在下での反応から、現場で合成されてもよい。有機酸と水溶性酸化剤を反応器に直接導入し、最終的に有機過酸を形成させてよい。有機過酸は、有機酸と水溶性酸化剤とを水性溶液中で混合し、次いでこの水性溶液を反応媒体に添加して水性相を形成させることによって予備形成してもよい。水溶性酸化剤と有機酸とを水性溶液中で混合し、その後この水性溶液を反応媒体に添加して水性相を形成することによる有機過酸の予備形成は、ハロゲン化の実施に必要な反応時間の短縮及び/または反応器サイズの縮小をもたらす。有機過酸の現場製造により、不安定な化学物質の保管が不要となり、必要なだけ有機過酸を生成することで廃棄物の低減につながる。
【0040】
有機酸は、水性相に可溶性であり、有機相には少なくとも部分的に可溶性である。有機酸は、好ましくは、水と1-オクタノールの間の分配係数(k)が0.05~24.55、より好ましくは0.25~24.55、さらに好ましくは0.25~17である。これらの好ましい分配係数を有すると共に、有機酸は、より好ましくはC1-6有機酸であり、さらに好ましくはC1-4有機酸、またはC1-3有機酸である。反応媒体中の水含量が減少する場合は、炭素原子数の少ない有機酸が好ましい。追加の水が10wt%以下の場合、C1-4有機酸が好ましい。追加の水が6wt%以下の場合、C1-3有機酸が好ましい。追加の水が0wt%の場合、C1有機酸が好ましい。より多くの炭素原子を持つ有機過酸は、おそらくは水への溶解性が低いために水含量にあまり影響されないようである。さらにまた、水含量が増加すると、有機相中の水性相のミセル化が減少して相間の表面域の接触を減少させ、より水溶性の高い有機過酸の有機相と水性相との間の移動を低減させ得る。
【0041】
有機酸の例には、蟻酸(FA)、酢酸(AA)、プロパン酸(PA)、ブタン酸(BA)、吉草酸(VA)、これらの任意の分枝状誘導体、及びこれらの任意の混合物が含まれる。水溶性酸化剤を有機酸と共に使用することにより、有機酸を有機過酸に再酸化することができ、これにより有機相中の有機過酸の濃度を維持される。反応速度は、有機酸の選択によって制御できるため、高度に反応性の有機過酸を保管する際の危険性が制限される。いくつかの実施態様では、反応性が高く、プロセスの完了時に危険性がなく容易に除去できる副生成物(例えばCO2、H2O)に分解されることから、ギ酸が好ましい。
【0042】
反応媒体中に存在する有機過酸の濃度は、好ましくは、ハロゲン化剤1モル当たり少なくとも0.06モルの有機過酸、またはハロゲン化剤1モル当たり少なくとも0.1モルの有機過酸、またはハロゲン化剤1モル当たり少なくとも0.5モルの有機過酸である。反応媒体中に存在する有機過酸の濃度は、ハロゲン化剤1モルに対して好ましくは1~5モル、より好ましくは1~3モルの有機過酸である。有機酸と水溶性酸化剤を用いて有機過酸を生成させる場合、有機酸及び水溶性酸化剤は、有機過酸を上記濃度で生成させるのに十分な濃度で存在する。有機過酸の所望の濃度は、所望のハロゲン化時間の関数である。ハロゲン化時間が5分の場合、ハロゲン化剤1モル当たり1~2モル、例えば2モルの有機過酸が好ましい。有機過酸の濃度が低いと、より長いハロゲン化時間によって相殺され得る。
【0043】
本発明の方法では、ハロゲン化剤の全部または一部が、水性相に添加されるハロゲン化水素(HX)から構成されていてよい。HXは有機過酸により水性相中で分子状ハロゲン(X2)に変換されるため、添加されたHXはハロゲン化剤の供給源として作用し得る。
【0044】
イソオレフィンコポリマーは、有機相(例えば、ヘキサンまたはイソペンタン)中でBr2により臭素化され、臭素化イソオレフィンコポリマー及びHBrを形成する。HBrは、有機相中で過酸と反応して、Br2、カルボン酸、及び水を形成する。水と水に完全に可溶性であるカルボン酸とは水性相に移り、ここで水性相に溶解している過酸化水素(H2O2)がカルボン酸と反応して過酸を形成する。過酸は、少なくとも部分的に有機相に可溶であることから、有機相と水性相との間で平衡状態にある。過酸がHBrと反応すると、有機相中の過酸の濃度は、水性相から有機相への過酸の移動によって維持される。このようにして、過酸は継続して生成されて有機相中でBr2を再生し、よって臭素の利用率を増大させる。臭素化が完了した後、中和工程で生成された残留カルボキシレートは、カルボキシレートが完全に可溶性である水で洗浄することにより、臭素化イソオレフィンコポリマーから抽出することができる。
【実施例
【0045】
(材料及び方法)
イソブチレン-イソプレンポリマー及びエポキシ化大豆油(ESBO)はARLANXEO社から入手した。残りの材料は受領した状態で使用した。ヘキサン(VWR)、水酸化ナトリウム(VWR)、99.99%臭素(Sigma Aldrich)、88wt%蟻酸(Sigma Aldrich)、30wt%過酸化水素(VWR)、98wt%硫酸(Sigma Aldrich)、32wt%過酢酸溶液(Sigma-Aldrich)、99.5 wt%プロピオン酸(VWR社)、ステアリン酸カルシウム(Alfa Aesar社)、Irganox(登録商標)-1010(BASF社)。
【0046】
過蟻酸の合成:蟻酸(12.5mL、88wt%)をガラスピペットで50mLのエルレンマイヤーフラスコに加えた。蟻酸を氷浴にセットし、5分間磁力で攪拌して冷却した。硫酸(1.15mL、98wt%)を溶液に加え、1分間撹拌した。過酸化水素(12.5mL、30wt%)をガラスピペットで1分間かけて滴下して溶液に添加した。過酸化水素の添加が完了した後、溶液を氷浴中で1時間攪拌して放置した。1時間の待機後、臭素添加の前に、PFA溶液を臭素化反応器に直接添加した。
【0047】
コントロール臭素化:1.78モル%のイソプレンを含む250gのイソブチレン-イソプレンコポリマー(ブチルゴム)を小片に切断し、オーバーヘッドスターラーを備え、且つ「X」mLのヘキサンを予め充填した5Lのジャケット付き反応器に加えた。ベースの材料片を反応器に加えつつ、撹拌速度を150rpmに設定した。この溶液を24時間撹拌して完全に溶解させた。イソブチレン-イソプレンポリマーが完全に溶解した後、「Y」mLの水を反応器に加えてブチルゴムセメントを提供した。X及びYの値を選択して、以下の実施例における水含量を有するブチルゴムセメントを提供する。ジャケット付き反応器に接続された循環浴を所望の温度に設定して反応器を加熱し、ブチルゴムセメントを350rpmで少なくとも15分間撹拌した。臭素(3.30mL、10.30g、0.064モル)をシリンジで加えた。反応物を5分間撹拌した後、160mLの2.5M NaOH水溶液を加えて反応を終了させた。さらに250mLの水を加えて混合を助けた。この混合物を350rpmで5分間攪拌し続けた。さらに1Lの水を加え、350rpmでさらに5分間撹拌させた。撹拌を150rpmに低減し、混合物をさらに5分間撹拌した。反応器の撹拌を停止し、水相を底部の排出バルブから排出した。臭素化イソブチレン-イソプレンコポリマーのセメントを、追加の水でpHが中性になるまで洗浄し、残留する無機塩を除去した。ポリマー安定化剤(6.82gのステアリン酸カルシウム、0.125gのIrganox(登録商標)-1010、及び3.25gのESBO)のヘキサン中の溶液を反応器に加えた。セメントを排出し、低圧蒸気を約1時間に亘って用いて蒸気凝固させた。回収した臭素化ポリマーをホットミルで乾燥させた。臭素含有量は、1H-NMR分光法を用いて測定した。
【0048】
過蟻酸臭素化:1.78モル%のイソプレンを含む250gのイソブチレン-イソプレンコポリマー(ブチルゴム)を小片に切断し、オーバーヘッドスターラーを備え、且つ「X」mLのヘキサンを予め充填した5Lのジャケット付き反応器に加えた。ベースの材料片を反応器に加えつつ、撹拌速度を150rpmに設定した。この溶液を24時間撹拌して完全に溶解させた。イソブチレン-イソプレンポリマーが完全に溶解した後、「Y」mLの水を反応器に加えてブチルゴムセメントを提供した。X及びYの値を選択して、以下の実施例における水含量を有するブチルゴムセメントを提供する。ジャケット付き反応器に接続された循環浴を所望の温度に設定して反応器を加熱し、ブチルゴムセメントを350rpmで少なくとも15分間撹拌した。予め調製したPFA溶液(25mL、10wt%)を加えた後、臭素(2.15mL、6.71g、0.042モル)をシリンジで加えた。反応物を5分間撹拌した後、160mLの2.5M NaOH水溶液を加えて反応を終了させた。さらに250mLの水を加えて混合を助けた。この混合物を350rpmで5分間攪拌し続けた。さらに1Lの水を加え、350rpmでさらに5分間撹拌させた。撹拌を150rpmに低減し、さらに5分間撹拌した。反応器の撹拌を停止し、水相を底部の排出バルブから排出した。臭素化イソブチレン-イソプレンコポリマーのセメントを、追加の水でpHが中性になるまで洗浄し、残留する無機塩を除去した。ポリマー安定化剤(6.82gのステアリン酸カルシウム、0.125gのIrganox(登録商標)-1010、及び3.25gのESBO)のヘキサン中の溶液を反応器に加えた。セメントを排出し、低圧蒸気を約1時間に亘って用いて蒸気凝固させた。回収した臭素化ポリマーをホットミルで乾燥させた。臭素含有量は、1H-NMR分光法を用いて測定した。
【0049】
臭素利用率計算
臭素化方法における臭素の利用率は、以下の等式で示される臭素原子効率(BAE)を用いて測定することができる。
【数1】
ポリマー上のBr原子を、1H-NMRから算出する。反応に添加された臭素由来のBr原子は、反応に使用した臭素の体積から算出される。この等式から、理想的な条件ではBAEが50%となり、50%のBrが廃棄HBrに含まれていることが明白である。したがって、ブチルゴムポリマー中に導入されうる、反応混合物中に存在する臭素の最大の理論割合は50%である。しかしながら、実際には、BAEは通常45%未満、例えば30~45%または35~45%である。
【0050】
いくつかの従前の方法(例えば、米国特許第3,018,275号明細書及び米国特許第5,681,901号明細書)では、臭素利用率は、反応に加えられた分子状臭素を用いて測定され、分子状臭素の各分子には臭素の2つの原子が存在するため、BAEの2倍の数値結果が得られる。さらにまた、これら従来の方法では、X線回折を利用してポリマーに結合しているBrの量を推定する。しかしながら、この方法では、中和プロセスで発生し、ポリマーマトリックス中に捕捉されるNaBrも測定する。捕捉されたNaBrは、必ずしもポリマーに化学的に結合したBrの量に相当するものではなく、一般に臭素利用率として実際の効率よりも高い数値を示す。
【0051】
実施例1:BAEに対する有機過酸の効果
ブチルゴムセメントを、イソブテン及びイソプレンの塩化メチル中での既知の方法によるスラリー重合から得て、10wt%の水含量と10wt%のブチルゴム(IIR)含量を有するセメントを準備した。250gのセメントを、実験室で、表1に示されるように臭素(Br2)の量を変えつつ、臭素をリサイクルするための酸化剤を使用することなく上述の手順に従って、臭素化した。表1は、酸化剤を使用せずに得られたBAEを示す。表1に示されるように、実験室条件で得られる典型的なBAEは約30%である。
【0052】
【表1】
【0053】
同様のブチルゴムセメントを、臭素化反応中に臭素を再利用するために、臭素1モル当たり1モル当量の過蟻酸(PFA)を用いて臭素化した。PFAが蟻酸と過酸化水素との反応で生成され、臭素の添加直前に添加された。2.15mLの臭素及び250gのIIRを用いて3回の試行を行った、平均の結果を表2に示す。表1と比較して、表2には、過蟻酸の使用によりBAEが30.1%から46.4%に増加することが示されているが、これはBAE15%以上の増加であって、Br2使用量における36.6%の削減に相当する。ブチルゴムの臭素化の際に臭素を再利用するための酸化剤として過蟻酸を使用することにより、臭素の利用率が顕著に改善され、コストの低減及び廃棄物の削減をもたらす。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例2:BAEに対する追加の水含量の影響
ブチルゴムセメントを、イソブテン及びイソプレンの塩化メチル中での既知の方法によるスラリー重合から得て、0wt%から15wt%の水含量を有するセメントを準備した。これらのセメントを、上述の手順に従い、1モル当量の酸化剤を用いて臭素化した。酸化剤は、過酸化水素(H2O2)、過蟻酸(PFA)、過酢酸(PAA)、及び過プロピオン酸(PPA)であった。H2O2を用いた臭素化は、反応媒体中のブチルゴム(IIR)濃度を10wt%とし、H2O2にとって好ましい条件である50℃にて30分間行った。有機過酸を用いた臭素化反応は、反応媒体中のブチルゴム(IIR)濃度を20wt%とし、45℃にて5分間行った。Fig.1Aにその結果を示す。同様の実験を、過酸またはH2O2を用いたすべての臭素化反応を、反応媒体中のブチルゴム(IIR)濃度を20wt%として、45℃で5分間行った。その結果をFig.1Bに示す。
【0056】
Fig.1A及びFig.1Bは、臭素化効率が追加の水含量の増加とともに低下することを示している。しかしながら、追加の水含量の増加に伴う臭素化効率の低減は、有機過酸では過酸化水素の場合ほど急激でなく、有機過酸が過酸化水素よりも多い水含量に耐性のあることを示している。さらにまた、追加の水が10wt%の場合、過酸化水素の性能(BAE=32%)は、通常の、臭素をリサイクルするための酸化剤を使用しない場合の臭素化効率よりも優れていない。逆に、全ての有機過酸が、0~15wt%の追加の水含量の全範囲に亘って、40%以上の臭素化効率をもたらした。さらにまた、有機過酸の使用によれば、より高いIIR濃度及びより低温でさえも、過酸化水素を使用した場合に比べて反応時間が6分の1に短縮される。
【0057】
Fig.1A及びFig.1Bはまた、PAAまたはPPAを用いた場合の臭素化効率が、PFAと比較して、追加の水含量が増加しても比較的に一定である一方で、PFAは、追加の水が存在しない(すなわち、追加の水が0wt%である)場合は、PAA及びPPAよりも高い臭素化効率を示す。したがって、低分子量の有機過酸は、追加の水含量がより少ない場合により有用である一方で、高分子量の有機過酸は、臭素化反応混合物中の追加の水含量がより多い場合により有用である。50%以上の臭素化効率は、有機過酸の使用により達成されたものであるが、臭素がリサイクルされていること、並びに、臭素化効率が化学量論的な効率ではなく、質量効率として測定されていることが強調される。
【0058】
Fig.1Bは、過酸が高い水含量で臭素効率を顕著に改善するという事実に加えて、この改善を達成するために要する時間が非常に短いことを示す。逆に、過酸と同様の短い時間枠で過酸化水素を使用することには、評価すべき利点がない。
【0059】
実施例3:BAEに対するIIR濃度の影響
ブチルゴムセメントを、イソブテン及びイソプレンの塩化メチル中での既知の方法によるスラリー重合から得て、10wt%の水含量と10~33wt%の範囲のブチルゴム(IIR)含量を有するセメントを準備した。これらのセメントを、23℃、45℃、及び50℃で、上述の通り1モル当量の過蟻酸(PFA)を用いて臭素化した。Fig.2は、IIR濃度が約20wt%の場合に臭素化効率がピークに達することを示しており、これは反応温度の範囲に亘って一貫している。Fig.2はまた、反応温度が低いほど臭素化効率が高いことを示す。
【0060】
さらにまた、表3に見られるように、セメント中のIIR濃度の増大に伴い、同一温度でも臭素化効率が著しく向上する。さらにまた、反応温度の45℃から23℃への低下もまた、臭素化効率を著しく向上させる。
【0061】
【表3】
【0062】
実施例4:BAEに対する有機過酸濃度の影響
ブチルゴムセメントを、イソブテン及びイソプレンの塩化メチル中での既知の方法によるスラリー重合から得て、10wt%の水含量と20wt%のブチルゴム(IIR)含量を有するセメントを得た。これらのセメントを、45℃にて5分間、上述の手順に従い、0、0.06、0.1、0.5、1、2、または3モル当量の過酢酸(PFA)または過酢酸(PAA)を用いて臭素化した。Fig.3は、過酸の2モル当量付近で臭素化効率がピークに達することを示す。
【0063】
実施例5:BAEに対する温度の影響
ブチルゴムセメントを、イソブテン及びイソプレンの塩化メチル中での既知の方法によるスラリー重合から得て、10wt%の水含量と10wt%及び20wt%のブチルゴム(IIR)含量を有するセメントを得た。これらのセメントを、様々な温度で5分間、上述の手順に従い、1モル当量の過蟻酸(PFA)を用いて臭素化した。Fig.4は、臭素化効率が、温度が23℃から54℃に上昇するにつれて、10wt%及び20wt%のいずれのIIRでも低減されることを示す。23℃では、20wt%のIIRの有するセメントを臭素化した場合に58%のBAEが達成される。IIR濃度が10wt%であり、且つ臭素をリサイクルするための有機過酸が使用されていないコントロールは、23℃で30%のBAEが得られ、これはその温度でPFAを使用して得られたBAEよりも著しく低い。
【0064】
実施例6:有機過酸と過酸化水素の比較
その内容を参照により本明細書に援用することとする米国特許第5,681,901号明細書から適合させた臭素化手順において、乳化剤の存在によらない有機過酸(過蟻酸(PFA))の使用を、乳化剤を伴う過酸化水素(H2O2)の使用と比較した。表4は、臭素化条件及びその結果を示す。表4は、有機過酸が、臭素化媒体中に追加の水が存在しない場合でさえも過酸化水素よりも優れており、また有機過酸と共に乳化剤を使用することには何ら利点のないことを示す。
【0065】
【表4】
【0066】
高い水含量での有機過酸と過酸化水素との使用を比較するために、臭素化反応を、様々な時間の長さで45℃にて、20wt%のIIRと10wt%の追加の水を含むブチルゴムセメントに行った。第1の試行では、過蟻酸(PFA)を事前に形成し、その後臭素化媒体に添加した(PFA添加)。
【0067】
第2の実施態様では、蟻酸と過酸化水素との混合物を臭素化媒体に添加し、過蟻酸をin situで形成させた(PFA in-situ)。一実施態様の試行では、過酸化水素を乳化剤と共に臭素化媒体に加えた(過酸化水素)。Fig.5は、乳化剤を伴う過酸化水素が5分後に約35%のBAEを提供するが、これは酸化剤を全く添加しないのと同等であること、また60分後でさえもBAEは40%未満であったことを示す。逆に、有機過酸をあらかじめ形成して添加した場合(PFA添加)には、60分後のBAEが50%近くになり、有機過酸をあらかじめ形成して添加した場合(PFA添加)には、5分後のBAEが40%以上となった。過酸化水素は、乳化された場合でさえも、追加の水含量が多い場合のBAEにはほとんど利点をもたらさなかった。
【0068】
実施例7:鉱酸あり及びなしでのin situ有機過酸製造の比較
過蟻酸がin situ生成される臭素化方法における、BAEに対する鉱酸の効果を比較するために、臭素化反応を、様々な時間に亘り、45℃にて、20wt%のIIR及び10wt%の追加の水を有するブチルゴムセメントに対して、触媒量の硫酸(H2SO4)を用いた場合と用いない場合で行った。蟻酸と過酸化水素との混合物を臭素化媒体に加え、H2SO4の存在の有無によらず、過蟻酸をin situ生成させた。
【0069】
Fig.6は、過蟻酸がin situ生成される場合に鉱酸が存在すると、約15分まではより高いBAEをもたらすが、その時点では鉱酸の存在はもはや鉱酸の非存在に対する利点を提供しないことを示す。15分以下、好ましくは10分以下の反応時間では、過酸の生成を触媒するために鉱酸を含むことに大きな利点がある。
【0070】
実施例8:臭素の回収のためのイソペンタンとヘキサンとの比較
溶媒の影響を比較するために、ヘキサンとイソペンタンとを比較に用いて臭素化を行った。高温での比較は沸点の違いによっていっそう困難になるため、実験は、設計を単純化するために23℃で行った。実験は、対応する溶媒に溶解させた20wt%のIIR溶液に行った。表5は、過酸が予め形成された後に臭素化媒体に添加された実験のための臭素化5分後の結果を示す。表6は、過酸(PFA)をin situ生成させた実験の結果を示す。
【0071】
一般的に、2種の溶媒の臭素回収にはほとんど差がなかった。いずれも標準的な35%BAEと比較してBAEが大幅に向上したが、標準的な35%BAEとは、回収に過酸を使用せずに得られる。イソペンタンは、過蟻酸(PFA)を使用した場合にわずかに効率が低下した。過酢酸(PAA)は、いずれの溶媒でも同様の性能を発揮した。
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
新規の特徴は、当業者には、本明細書の記載を読むことにより明らかになるであろう。しかしながら、特許請求の範囲の記載は、実施態様によって限定されるべきではなく、特許請求の範囲の文言及び全体としての明細書と合致する最も広い解釈が与えられるべきことが理解されるべきである。
図1
図2
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図7