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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-04
(45)【発行日】2022-07-12
(54)【発明の名称】デジタルマイクロ流体送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20220705BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20220705BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61M 35/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
A61M5/168 500
A61M37/00
B01J19/00 321
A61M35/00 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021542094
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019056173
(87)【国際公開番号】W WO2020081478
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】62/745,718
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】パオリニ, リチャード ジェイ. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】テルファー, スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】オマリー, ティモシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ビーン, ブライアン ディー.
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/075295(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/175829(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0273702(US,A1)
【文献】特表平04-505861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 37/00
B01J 19/00
A61M 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性分子送達システムであって、前記活性分子送達システムは、
第1の基板であって、前記第1の基板は、
複数の駆動電極と、
前記複数の電極を覆う誘電体層と、
前記誘電体層を覆う第1の疎水層と
を備えている、第1の基板と、
第2の基板であって、前記第2の基板は、
共通電極と、
前記共通電極を覆う第2の疎水層と
を備えている、第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを分離し、前記第1の基板と前記第2の基板との間にマイクロ流体領域を作り出すスペーサと、
前記第1の疎水層と反対側の前記第1の基板の側で前記第1の基板に結合されている多孔性拡散層であって、前記第1の基板は、前記マイクロ流体領域と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する通路を備えている、多孔性拡散層と、
前記駆動電極に動作可能に結合され、少なくとも2つの駆動電極間に電圧勾配を提供するように構成されているコントローラと
を備えている、活性分子送達システム。
【請求項2】
各駆動電極は、薄膜トランジスタに結合されている、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項3】
前記マイクロ流体領域と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する複数の通路をさらに備えている、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項4】
前記駆動電極は、可撓性である、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項5】
前記通路は、毛細管またはウィッキングファイバを含む、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項6】
前記毛細管またはウィッキングファイバは、疎水コーティングでコーティングされている、請求項5に記載の活性分子送達システム。
【請求項7】
前記複数の駆動電極と流体連通しているリザーバをさらに備えている、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項8】
前記複数の駆動電極と流体連通している複数のリザーバと、前記マイクロ流体領域と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する複数の通路とをさらに備え、各リザーバは、1つの通路のみと流体連通している、請求項7に記載の活性分子送達システム。
【請求項9】
複数のリザーバと、混合領域とをさらに備え、前記混合領域は、前記複数のリザーバの各々と、前記マイクロ流体領域と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する前記通路とに流体連通している、請求項7に記載の活性分子送達システム。
【請求項10】
前記多孔性拡散層は、アクリレート、メタクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アモルファスナイロン、配向ポリエステル、テレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、またはポリスチレンを含む、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項11】
前記多孔性拡散層と接触している生体適合性接着剤をさらに備えている、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項12】
被験者の皮膚に活性分子を送達するシステムであって、前記システムは、
複数の駆動電極と、前記複数の電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を覆う第1の疎水層とを備えている第1の基板と、
共通電極と、前記共通電極を覆う第2の疎水層とを備えている第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを分離し、前記第1の基板と前記第2の基板との間にマイクロ流体領域を作り出すスペーサと、
前記第1の疎水層の反対側の前記第1の基板の側で前記第1の基板に結合されている多孔性拡散層であって、前記第1の基板は、前記マイクロ流体領域と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する第1の通路を備えている、多孔性拡散層と、
前記駆動電極に動作可能に結合され、少なくとも2つの駆動電極間に電圧勾配を提供するように構成されているコントローラと
を備え、
前記多孔性拡散層は、被験者の皮膚に結合されるように構成され、
活性分子を含む溶液は、駆動電極から前記マイクロ流体領域と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する前記第1の通路へ移動し、
前記活性分子は、前記多孔性拡散層から前記被験者の前記皮膚へ通る、システム。
【請求項13】
前記複数の駆動電極と流体連通している第1のリザーバをさらに備え、活性分子を含む前記溶液は、活性分子を含む前記溶液が送達に必要とされるまで前記リザーバ内に保持される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
第2のリザーバと、前記マイクロ流体領域と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する第2の通路とをさらに備え、前記第1のリザーバは、前記第1の通路のみと流体連通しており、前記第2のリザーバは、前記第2の通路のみと流体連通している、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1のリザーバは、第1の濃度の前記活性分子を含む第1の溶液を含み、前記第2のリザーバは、第2の濃度の前記活性分子を含む第2の溶液を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
第2のリザーバと、前記第1のリザーバおよび前記第2のリザーバの両方と流体連通している混合領域とをさらに備えている、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1のリザーバは、第1の前駆体分子を含む第1の溶液を含み、前記第2のリザーバは、第2の前駆体分子を含む第2の溶液を含み、
前記第1の前駆体分子は、前記第2の前駆体分子と混合させられて混合物を作り出し、
前記混合物は、前記マイクロ流体領域と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する前記第1の通路に移動する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1の前駆体分子は、抗体である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1の前駆体は、オリゴヌクレオチドである、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記混合物は、オピオイドを含む、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願)
本願は、2018年10月15日に出願された同時係属の米国仮特許出願第62/745,718号の優先権を主張する。本明細書中で開示される全ての特許、公報、および係属出願は、それらの全体が参照によって援用される。
【0002】
(背景)
デジタルマイクロ流体デバイスは、独立した電極を用いて、制約された環境内で液滴を推進し、分割し、および接合し、それによって「lab-on-a-chip」を提供する。あるいは、デジタルマイクロ流体デバイスは、電気泳動流および/またはマイクロポンプによる競合のマイクロ流体システムからこの方法を区別するために、誘電体上のエレクトロウェッティングまたは「EWoD」と称される。2012年のエレクトロウェッティングテクノロジのレビューは、Wheelerによる“Digital Microfluidics,” Annu. Rev. Anal. Chem. 2012, 5:413-40において提供されており、これは、その全体が参照によって本明細書中に援用される。この技術は、サンプル準備、アッセイ、および合成化学が微量のサンプルおよび反応薬の両方で実施されることを可能にする。ここ数年で、エレクトロウェッティングを用いるマイクロ流体セル内の制御された液滴操作は、商業的に実行可能となり、今や、Oxford Nanopore等のライフサイエンスの大企業から利用可能な製品が存在している。
【0003】
EWoDに関する報告書のほとんどは、いわゆる「パッシブマトリクス」デバイス(「セグメント化された」デバイスとしても知られる)に関するものであり、「パッシブマトリクス」デバイスによって、10~20個の電極がコントローラで直接駆動される。セグメント化されたデバイスが製作を容易にする一方で、電極の数は、空間および駆動制約によって限定される。よって、パッシブマトリクスデバイスにおいて、大規模な並列アッセイ、反応等を実施することは可能ではない。対して、「アクティブマトリクス」デバイス(アクティブマトリクスEWoDとしても知られ、AM-EWoDとしても知られている)デバイスは、何千、何十万または何百万ものアドレス可能な電極を有し得る。電極は、典型的に、薄膜トランジスタ(TFT)によって切り替えられ、液滴の運動は、プログラム可能であり、それによって、AM-EWoDアレイは、複数の液滴を制御し、同時の分析プロセスを実行するために大きな自由度を可能とする汎用デバイスとして用いられることが可能である。
【0004】
電場の漏れに関する制約的な要件により、ほとんどの先進的AM-EWoDデバイスは、多結晶シリコン(ポリシリコンとしても知られ、ポリSiとしても知られている)から構築されている。しかしながら、ポリシリコン製作は、アモルファスシリコン製作、すなわちLCDディスプレイ業界のために大量生産されるアクティブマトリクスTFTにおいて用いられるタイプよりかなり高価である。ポリシリコン製作プロセスは、ポリシリコンを扱うための独自の操作および製作ステップが存在するので、より高価である。ポリシリコンからデバイスを製作するように構成された施設も世界中にほとんど存在しない。しかしながら、ポリシリコンの改良された機能により、シャープ社は、単一のアクティブマトリクスにおける推進、センシング、および加熱性能を含むAM-EWoDデバイスを実現することができた。例えば、米国特許第8,419,273号、第8,547,111号、第8,654,571号、第8,828,336号、第9,458,543号を参照されたい(これら全ては、その全体が参照によって本明細書中に援用される)。複合ポリ-Si AM-EWoDの例が、図1に示されている。
【0005】
生体活性材料の経皮送達は、確立されたテクノロジーである。最も率直的な実施形態では、生体活性構成成分(典型的には、約1000未満の分子量を有する分子)が、患者の皮膚に接触して配置される高分子マトリクスまたはゲルに組み込まれる。分子の浸透は、受動拡散によって、しばしば数時間にわたって発生する。薬剤送達の開始は、皮膚へのパッチの貼付による。しかしながら、現在の技術の状態では、1つの特定のパッチからの活性成分の送達の速度を調整することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8,419,273号明細書
【文献】米国特許第8,547,111号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Wheeler, “Digital Microfluidics,” Annu. Rev. Anal. Chem. 2012, 5:413-40
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(概要)
本発明は、低電力経皮送達システムを提供することによってこのニーズに対処し、本システムによって、活性分子は、デジタルマイクロ流体プラットフォームにロードされ、要求されるときに解放され得る。加えて、以下で説明されるように、本発明は、異なる時間に同一の送達系から様々な濃度の活性分子を送達するためのシステム、および同一のパッチから同一または異なる時間に複数の薬剤を送達するためのシステムを提供する。
【0009】
本発明は、活性物質が必要とされるまでリザーバ内に活性物質(例えば、薬剤)を保持し、そして、皮膚に接触している多孔性拡散層(例えば、薬剤送達ゲル)に活性物質が移動させられることによって作用する。一側面では、本発明は、第1の基板と、第2の基板と、スペーサと、多孔性拡散層と、コントローラとを備えている活性分子送達システムである。第1の基板は、複数の駆動電極と、複数の電極を覆う誘電体層と、誘電体層を覆う第1の疎水層とを含む。第2の基板は、共通電極と、共通電極を覆う第2の疎水層とを含む。スペーサは、第1の基板と第2の基板とを分離し、第1の基板と第2の基板との間にマイクロ流体領域を作り出す。多孔性拡散層は、第1の疎水層の反対側の第1の基板の側で第1の基板に結合され、第1の基板は、疎水層と多孔性拡散層との間の流体連通を提供する通路を備えている。コントローラは、駆動電極に動作可能に結合され少なくとも2つの駆動電極間に電圧勾配を提供するように構成されている。多孔性拡散層は、アクリレート、メタクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アモルファスナイロン、配向ポリエステル、テレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、またはポリスチレン等、各種の材料から構築され得る。典型的に、リザーバは、100nLより大きい容積を有し、多孔性拡散層は、1nmと100nmとの間の平均孔径を有する。いくつかの実施形態では、デバイスは、複数の通路を含む。いくつかの実施形態では、通路は、毛細管またはファイバ等、ウィッキング材料を含む。いくつかの実施形態では、多孔性拡散層は、生体適合性接着剤で被験者に結合される。
【0010】
典型的に、活性分子は、医薬化合物である。しかしながら、本発明のシステムは、ホルモン、栄養補助食品、タンパク質、核酸、抗体、またはワクチンを送達するために用いられ得る。本発明は、複数のリザーバを含み得、デバイスは、構成成分を投与することに先立って構成成分を混合するように構成され得る。例えば、異なる混合物、または異なる濃度を有する同様の混合物を含む同じデバイス内の異なるリザーバを有することが、可能である。例えば、システムは、第1の活性分子の混合物を含む第1のリザーバと、第2の活性分子の混合物を含む第2のリザーバとを含み得、または、システムは、第1の濃度の活性分子を含む第1のリザーバと、第2の濃度の同一の活性分子を含む第2のリザーバとを含み得る。他の実施形態では、システムは、活性分子の混合物を含む第1のリザーバと、補助剤および/または皮膚浸透剤を含む第2のリザーバとを含み得る。活性分子、試薬、および濃度の他の組み合わせが、当業者に明らかであろう。
【0011】
加えて、本発明は、活性分子送達システムを制御するためのコントローラを含む。このコントローラは、上で説明される活性分子送達システムを含み、つまり、システムは、第1の帯電相および第2の相(第2の相は、第1の相と反対に帯電しているかまたは帯電しておらず、第1の相と相溶しない)内に分散された活性分子の混合物を含むか、または、活性分子および荷電粒子の混合物を含む。コントローラは、電圧源から活性分子送達システムへの流れを遮るように構成されたスイッチも含み得る。スイッチは、機械的スイッチまたはデジタルスイッチであり得、コントローラは、スイッチを制御するためのプロセッサを含み得る。いくつかの実施形態では、コントローラは、無線受信器および無線送信器を含み、それによって、コントローラは、スマートフォン、ドッキングステーション、スマートウォッチ、フィットネルトラッカー等のデバイスをインタフェースとすることを可能にする。
【0012】
本発明のデバイスは、被験者の皮膚に活性分子を送達するために用いられ得る。例えば、本発明のデバイスを用いて、多孔性拡散層は、被験者の皮膚に結合され得、活性分子を含む溶液は、駆動電極から疎水層と多孔性拡散層との間の流体連通を提供する第1の通路に移動させられ得、活性分子は、多孔性拡散層から被験者の皮膚に通ることを可能にされる。いくつかの実施形態では、活性物質は、複数の駆動電極と流体連通している第1のリザーバ内に保持され、活性分子を含む溶液は、活性分子を含む溶液が送達を必要とされるまで、リザーバ内に保持される。いくつかの実施形態では、デバイスは、2つの分離されたリザーバと、混合領域とを備え、活性分子が患者に送達される。第1のリザーバは、第1の前駆体溶液を含み、第2のリザーバは、第2の前駆体溶液を含み、送達機能は、第1の前駆体分子を第2の前駆体分子と混合して混合物を作り出すことと、混合物を疎水層と多孔性拡散層との間の流体連通を提供する通路に移動させることとを含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
活性分子送達システムであって、前記活性分子送達システムは、
第1の基板であって、前記第1の基板は、
複数の駆動電極と、
前記複数の電極を覆う誘電体層と、
前記誘電体層を覆う第1の疎水層と
を備えている、第1の基板と、
第2の基板であって、前記第2の基板は、
共通電極と、
前記共通電極を覆う第2の疎水層と
を備えている、第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを分離し、前記第1の基板と前記第2の基板との間にマイクロ流体領域を作り出すスペーサと、
前記第1の疎水層と反対側の前記第1の基板の側で前記第1の基板に結合されている多孔性拡散層であって、前記第1の基板は、前記疎水層と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する通路を備えている、多孔性拡散層と、
前記駆動電極に動作可能に結合され、少なくとも2つの駆動電極間に電圧勾配を提供するように構成されているコントローラと
を備えている、活性分子送達システム。
(項目2)
各駆動電極は、薄膜トランジスタに結合されている、項目1に記載の活性分子送達システム。
(項目3)
前記疎水層と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する複数の通路をさらに備えている、項目1に記載の活性分子送達システム。
(項目4)
前記駆動電極は、可撓性である、項目1に記載の活性分子送達システム。
(項目5)
前記通路は、毛細管またはウィッキングファイバを含む、項目1に記載の活性分子送達システム。
(項目6)
前記毛細管またはウィッキングファイバは、疎水コーティングでコーティングされている、項目5に記載の活性分子送達システム。
(項目7)
前記複数の駆動電極と流体連通しているリザーバをさらに備えている、項目1に記載の活性分子送達システム。
(項目8)
前記複数の駆動電極と流体連通している複数のリザーバと、前記疎水層と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する複数の通路とをさらに備え、各リザーバは、1つの通路のみと流体連通している、項目7に記載の活性分子送達システム。
(項目9)
複数のリザーバと、混合領域とをさらに備え、前記混合領域は、前記複数のリザーバの各々と、前記疎水層と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する前記通路とに流体連通している、項目7に記載の活性分子送達システム。
(項目10)
前記多孔性拡散層は、アクリレート、メタクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アモルファスナイロン、配向ポリエステル、テレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、またはポリスチレンを含む、項目1に記載の活性分子送達システム。
(項目11)
前記多孔性拡散層と接触している生体適合性接着剤をさらに備えている、項目1に記載の活性分子送達システム。
(項目12)
被験者の皮膚に活性分子を送達する方法であって、前記方法は、
活性分子送達システムを提供することであって、前記活性分子送達システムは、
複数の駆動電極と、前記複数の電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を覆う第1の疎水層とを備えている第1の基板と、
共通電極と、前記共通電極を覆う第2の疎水層とを備えている第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを分離し、前記第1の基板と前記第2の基板との間にマイクロ流体領域を作り出すスペーサと、
前記第1の疎水層の反対側の前記第1の基板の側で前記第1の基板に結合されている多孔性拡散層であって、前記第1の基板は、前記疎水層と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する第1の通路を備えている、多孔性拡散層と、
前記駆動電極に動作可能に結合され、少なくとも2つの駆動電極間に電圧勾配を提供するように構成されているコントローラと
を備えている、ことと、
被験者の皮膚に前記多孔性拡散層を結合することと、
前記駆動電極から前記疎水層と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する前記第1の通路へ、活性分子を含む溶液を移動させることと、
前記活性分子が前記多孔性拡散層から前記被験者の前記皮膚へ通ることを可能にすることと
を含む、方法。
(項目13)
前記活性分子送達システムは、前記複数の駆動電極と流体連通している第1のリザーバをさらに備え、活性分子を含む前記溶液は、活性分子を含む前記溶液が送達に必要とされるまで前記リザーバ内に保持される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記活性分子送達システムは、第2のリザーバと、前記疎水層と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する第2の通路とをさらに備え、前記第1のリザーバは、前記第1の通路のみと流体連通しており、前記第2のリザーバは、前記第2の通路のみと流体連通している、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記第1のリザーバは、第1の濃度の前記活性分子を含む第1の溶液を含み、前記第2のリザーバは、第2の濃度の前記活性分子を含む第2の溶液を含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記活性分子送達システムは、第2のリザーバと、前記第1のリザーバおよび前記第2のリザーバの両方と流体連通している混合領域とをさらに備えている、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記第1のリザーバは、第1の前駆体分子を含む第1の溶液を含み、前記第2のリザーバは、第2の前駆体分子を含む第2の溶液を含み、被験者の前記皮膚に活性分子を送達することは、
前記第1の前駆体分子を前記第2の前駆体分子と混合し、混合物を作り出すことと、
前記疎水層と前記多孔性拡散層との間の流体連通を提供する前記第1の通路に前記混合物を移動させることと
をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記第1の前駆体分子は、抗体である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記第1の前駆体は、オリゴヌクレオチドである、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記混合物は、オピオイドを含む、項目17に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、同一のアクティブマトリクスにおいて推進およびセンシングの両方を含む先行技術のEWoDデバイスを示す。
【0014】
図2図2は、隣接する電極に異なる電荷状態を提供することによる隣接する電極間の水相液滴の移動を描写する。
【0015】
図3図3は、デバイスが「オフ状態」であるとき、つまり活性物質がロードされていないときの本発明の断面図を描写する。
【0016】
図4図4は、デバイスが「オン状態」であるとき、つまり活性物質がロードされているときの本発明の断面図を描写する。
【0017】
図5図5は、活性材料のリザーバと、駆動電極と、通路と、多孔性拡散層とを含む本発明のデバイスの平面図である。図5は、活性分子を含む溶液を分配することと、液滴を通路に向かって移動させることと、通路への移動と、液滴を多孔性拡散層内に分配することとを段階的に(下から上へ)示す。
【0018】
図6図6は、各通路が単一のリザーバのみに結合されている本発明のデバイスを例証する。いくつかの実施形態では、各リザーバは、異なる濃度の活性分子を含んでおり、それによって、投与量が動的に制御されることを可能にする。
【0019】
図7図7は、本発明のデバイスを例証し、本デバイスによって、2つの異なるリザーバが混合領域に結合され、それによって、多孔性拡散層への送達に先立って2つの構成成分「A」および「B」が混合させられ得る。
【0020】
図8図8は、駆動電極が可撓性である本発明の送達デバイスを例証し、駆動電極が可撓性であることによって、送達デバイスが肢(例えば、腕または脚)のまわりに巻かれることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(詳細な説明)
本発明は、活性分子送達システムを提供し、それによって、要求されるときに活性分子が解放され得、および/または、各種の異なる活性分子が、同一のシステムから送達され得、および/または、活性分子の異なる濃度が、同一のシステムから送達され得る。本発明は、医薬を患者に経皮送達するためによく適しているが、しかしながら、本発明は、概して、動物に活性因子を送達するために用いられ得る。活性送達システムは、複数のリザーバ(単数または複数)を含み、リザーバ(単数または複数)は、活性分子を送達するための媒質で充填されている。いくつかの実施形態では、媒質は、第1の帯電相のみならず第2の相にも分散させられた活性分子を含み、第2の相は、第1の相と反対に帯電しまたは帯電しておらず、第1の相に対して非混和性である。
【0022】
経皮送達の対象となる1つの分子は、ナロキソンであり、ナロキソンは、オピオイド麻薬の過剰摂取の効果を防止または低減させるために用いられる競合オピオイド受容体拮抗薬である。ナロキソンは、口によって摂取されるときにはほとんど吸収されず、典型的に、注射によって、または鼻用スプレーによって投与される。不都合なことに、薬剤の効果は1時間より短い時間で消えるので、長期間にわたって治療レベルを維持するために複数回の投与を必要とする。しかしながら、先行研究は、約40cmの面積の経皮パッチの使用が約4-48時間の期間にわたって有用なナロキソンの血漿濃度を維持することが可能であり得ることを示唆した。例えば、Panchagula, R., Bokalial, R., Sharma, P. and Khandavilli, S., International Journal of Pharmaceutics, 293 (2005), 213-223を参照されたい。したがって、初めに注射される投与量とより長く作用する経皮注入との組み合わせは、患者に複数の注射を受けさせることを回避して、ナロキソンの治療濃度を維持するために実効的な手段を提供し得る。
【0023】
法執行官を含む軍および民間のファーストレスポンダーは、従来の医療ケアへのアクセスが不可能であり得る危険な状況において高濃度のオピオイド麻薬にさらされる可能性に直面する。理想的には、彼らは、ナロキソン(または同様の薬)の最初のボーラスを自己投与することが可能であり得、同時に、維持投与量の長期の解放をトリガすることが可能であり得る。いくつかの状況では、特に影響を受けた個人の独立して機能する能力が失われているとき、薬剤の解放が遠隔でトリガされることも必要であり得る。これらの状況では、送達されるべき薬剤が何らかの方法で利用できない状態において、予め付与された経皮パッチを用いることが好ましい。トリガイベントは、薬剤を解放し、薬剤が皮膚を通って拡散し始めることを可能にする。もちろん、送達デバイスは、これらの例に限定されず、例えば、ホルモン、栄養補助食品、タンパク質、核酸、抗体、またはワクチンを送達するために用いられ得る。
【0024】
本発明のデバイスは、誘電体上のエレクトロウェッティング(EWoD)を用いて活性物質の水性液滴を移動させることによって機能する。EWoDの基本的動作が、図2の断面図に例証される。EWoD200は、油202および少なくとも1つの水性液滴204で充填されたセルを含む。セルのギャップは、典型的に50~200μmの範囲内であるが、しかし、ギャップはより大きいこともある。基本的構成では、図2に示されるように、複数の駆動電極205が、1つの基板に配置され、1つの頂部電極206が、反対側の表面に配置される。加えて、セルは、油層に接触している表面上の疎水性コーティング207のみならず、駆動電極205と疎水性コーティング207との間の誘電体層208も含む。(上部基板も誘電体層を含み得るが、しかし、図2には示されていない)。疎水層は、液滴が表面を湿らせることを防止する。隣接する電極間に電位差が印加されないとき、液滴は、疎水性表面との接触(油と疎水層との接触)を最小にするように楕円体形状を維持する。液滴が表面を湿らせないので、液滴が表面を汚しまたは他の液滴と相互作用する可能性は、その挙動が所望されるときを除いて低い。
【0025】
誘電機能および疎水機能の両方のための単一の層を有することが可能であるが、そのような層は、(ピンホールを防止するために)典型的に厚い無機物層を必要とし、その結果、低い誘電率をもたらし、それによって、液滴の移動のために100Vより大きい電圧を必要とする。低電圧作動を実現するために、高い静電容量のために薄い無機層を有し、ピンホールがなく、薄い有機疎水層によって覆われていることがより良い。この組み合わせを用いて、+/-10~+/-50Vの範囲内の電圧でのエレクトロウェッティング動作を有することが可能であり、この電圧範囲は、従来のTFTコントローラによって供給され得る範囲内である。
【0026】
電圧差が隣接する電極間に印加されたとき、1つの電極における電圧は、誘電体と液滴との界面において液滴内の反対の電荷を誘引し、液滴は、図2に例証されるようにこの電極に向かって移動する。容認可能な液滴推進のために必要とされる電圧は、誘電体層および疎水層の特性に依存する。種々の電気化学物質による液滴、誘電体、および電極の劣化を低減させるために、AC駆動が用いられる。EWoDのための動作周波数は、100Hzから1MHzの範囲内であり得るが、しかし、動作の限定された速さを有するTFTとの使用のために、1kHz以下のより低い周波数が好ましい。
【0027】
図3は、皮膚380上に配置されたときの断面形態(縮尺通りではない)で、本発明の活性分子送達デバイス300の動作の原理を示す。デバイス300は、1つ以上の基板310/315に上に構築され、基板310/315は、可撓性基板であり得る。共有電極340は、スペーサ330によって駆動電極345から分離させられている。送達されるべき活性分子(薬剤)は、相溶性のない溶媒325(例えば、炭化水素、シリコン、またはフッ化有機油)内に懸濁された水滴320内に溶解させられている。上で議論されるように、共通電極340および駆動電極345への適切な電圧の印加は、通路360に向かって横方向に(左から右へ)水滴320を移動させるために用いられ得、通路360は、多孔性拡散層370に結合されている。水滴320の移動を促進するために、疎水層335は、共通電極340より下、かつ駆動電極345より上に提供される。誘電体層350は、疎水層335と駆動電極345との間に介在している。
【0028】
本発明のデバイスは、駆動電極345を通るかまたは駆動電極345に隣接する1つ以上の通路360(すなわち、z方向のチャンネル)を含む。図4に示されるように水滴320がそのような通路360上に位置付けられると、活性分子は、通路360を通って、送達表面(例えば患者の皮膚380)に接触している多孔性拡散層370に移動し得る。この場所において、水滴320と、皮膚380に接触している多孔性拡散層370との間に拡散接触が確立される。典型的に、通路360は、溶媒および活性混合物の移動を促進するための疎水表面335から多孔性拡散層370までの構造体を含む。例えば、通路は、ウィッキングファイバ、セルロース、またはコットン等、毛細管作用を通じて疎水材料を移動させる材料を含み得る。そのような材料は、追加の疎水性コーティングでコーティングされ、エレクトロウェッティング表面から多孔性拡散層370への水溶液の移動を促進し得る。いくつかの実施形態では、生体適合性接着剤(示されず)が、多孔性拡散層に積層され得る。生体適合性接着剤は、ユーザ上でのデバイスの固定を保ちつつ活性分子が通過することを可能にする。適切な生体適合性接着剤は、3M(ミネソタ州Minneapolis)から利用可能である。
【0029】
図5は、頂部電極および頂部基板が除去されている場合の本発明の活性分子送達デバイス500の実施形態の頂面図を示す。デバイス500は、基板515と、駆動電極545と、通路560と、多孔性拡散層570とを含む。加えて、デバイスは、トレース547で駆動電極545に結合されているコントローラ543を含む。図5に示されるように、送達されるべき標的分子(薬剤)を含む疎水液は、リザーバ590、すなわち、皮膚に接触している多孔性拡散層から離れたデバイスの領域に位置している。
【0030】
最も下の駆動電極から最も上の駆動電極への順に、活性分子を含む溶液の送達のシーケンスが図5に例証される。まず、液滴520がリザーバ590からスナップオフされ、それによって、送達される投与量(濃度×体積×液滴数)を決定する。液滴520は、それらが1つ以上の通路560に隣接するまで前進させられ、そこで、垂直エレクトロウェッティングを用いて通路560の上に液滴520を移動させるために、通路560を囲む予備的駆動電極548が用いられる。通路560のウィッキング作用に起因して、液滴520は、通路560内へ、およびそれを通って移動し、そして、それらは、下の多孔性拡散層570に送達される。よって、リザーバ(単数または複数)590内の活性成分が、多孔性拡散層内に移動させられ得る。
【0031】
通路560に対する駆動電極545の数多くの異なる配列を想像することが可能である。第2の実施形態では、図6に例証されるように、エレクトロウェッティング力は、リザーバ690から液体620を引き出し、それを通路660に直接移すために用いられる。デバイス600は、基板615と、駆動電極645と、通路660と、多孔性拡散層670とを含む。加えて、デバイスは、トレース647で駆動電極645に結合されているコントローラ643を含む。しかしながら、垂直運動は、図6において必要とされない。駆動電極645と多孔性拡散層670との間に適切な材料によって提供される毛細管力は、リザーバ690から液滴620を引き出す。液体620は連続的に示されているが、液体が図5のように液滴で送達され得ることが理解されるべきである。図6に示されるように、各通路660は、独自のリザーバ690に結合される。これは、各リザーバが単一の投与量として機能することを可能にし、それによってシステムの複雑性を低減させ、例えば、特定の投与量、特定の体積、特定の数の液滴が確実にスナップオフされ送達される。例えば、デバイス600は、7つの同一のリザーバと、7日連続で毎朝1つのリザーバの内容物を投与するように構成されたコントローラ643とを含み得る。あるいは、異なるリザーバ690の各々は、異なる濃度の同一の活性物質を含み得、それによって、例えば、被験者は、第1のより多い投与量の活性物質を受け取り、そして、1つ以上のより低い濃度の維持投与量を一日中受け取り得る。そのようなデバイスは、特に、ホルモンを送達するために特によく適していることもある。
【0032】
本発明の別の実施形態が図7に示され、デバイス700は、基板715と、駆動電極745と、通路760と、多孔性拡散層770とを含む。コントローラが示されていないが、コントローラが駆動電極745の機能を連携させるために必要とされることが理解される。図7は、活性分子を送達する前に「チップ上で」反応を行うことが可能であることを例証している。図7に示されるように、第1のリザーバ「A」791および第2のリザーバ「B」792の両方が、混合エリア793に流体連通している。第1の前駆体分子が第1のリザーバ791内の第1の溶液中に含まれ得、第2の前駆体分子が第2のリザーバ792内の第2の溶液中に含まれ得る。活性物質を投与することに先立って、第1の溶液および第2の溶液が混合エリア793に持ち出され、そこで、それらは混合して標的活性物質を作り出すことを可能にされ、そして、標的活性物質は、上で説明される方法で多孔性拡散層770に送達される。
【0033】
標的活性物質を多孔性拡散層770に送達することに先立って前駆体を混合する能力を備えるデバイス700には、多くの利点が存在する。例えば、第1の前駆体は、多孔性拡散層を通じた送達のために適さない溶液中での貯蔵のために確実に安定化させられていなければならない抗体またはオリゴヌクレオチド等、高感度の生物学的製剤であり得る。よって、生物学的製剤を送達することが適切であるとき、量は、第1のリザーバ791から混合エリア793に移され、そこで、生物学的製剤は、活性化させられ、洗浄され、または(促進剤、マーカ、または他の標的専用分子との配合を介して)送達の標的とされ得る。そのような構成は、生物学的製剤の貯蔵寿命を大きく増加させ得、それらは、患者が、診療所に行って静脈注射を介して生物学的製剤を送達される必要を回避することを可能にし得る。他の代替物では、第1および第2の前駆体は、化合してオピオイドを作り出すプロドラッグであり得る。本発明のデバイスを用いることで、デバイスおよび適切なセキュリティ認証を有するユーザのみが前駆体を化合させてオピオイドを作り出すことができるので、違法なオピオイド投与を防止することが可能であり得る。
【0034】
図7のシステムは、いわゆる「混合薬」を送達するためにも適し得、混合薬は、経時的に互いに不活性化する活性分子を含み、典型的に、診療所、例えば化学療法診療所で投与されなければならない。図7のシステムは、例えば患者自身の細胞、抗体等を送達するためにも用いられ得る。そのような実施形態では、患者自身の生体材料は、第1のリザーバ内に保持され得、治療薬を送達するために適切であるとき、患者自身の生体材料が混合領域に移動させられ、そこで、それらは、多孔性拡散層に送達されることに先立って別の活性成分と化合させられる。
【0035】
コントローラ543、643、743は、エレクトロウェッティング運動を開始させるために必要とされるバッテリおよび電子機器と、適切な電子機器/アンテナ等、外界と通信するための手段とを備え得る。好ましい配列では、電気信号を印加することなく薬剤を含む水滴を通路に移すことは可能ではない。これは、活性成分を解放することなく活性化されていないパッチが各種のストレス(機械的、温度的等)を受け得ることを確実にする。
【0036】
1つの実施形態では、本発明のデバイスは、ナロキソン(NARCANTM)を送達するために用いられ得る。デバイスは、約20-100mgの薬剤をリザーバから多孔性拡散領域に送達し得る。リザーバ内の水中の活性物質(例えば、ナロキソン)のほとんど飽和した濃度を50mg/mLと仮定すると、送達されることを必要とされる液滴の体積は、約400-2000μLであり得、これはデバイスの能力内である。他の実施形態では、本発明のデバイスは、オピオイド、例えば、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、フェンタニール、メサドン、またはオキシコドンを送達するために用いられ得る。本発明のデバイスは、ニコチン、ステロイド(例えば、プレドニゾン)、およびホルモン(例えば、エピネフリン)等の刺激剤を送達するために用いられ得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明のデバイスは、可撓性であるように作製され得、それによって、デバイスは、曲面880上で展開され、および/または可撓性パッケージに統合されて、ユーザの快適さおよびコンプライアンスを向上させ得る。そのようなデバイス800の実施形態が図8に示されており、可撓性駆動電極845は、多孔性拡散層870に結合され、通路860は、駆動電極845と多孔性拡散層870との間の流体連通を提供する。図8に示されるように、コントローラ843およびリザーバ890は、同一のハウジング内に組み合わせられ得る。ある実施形態では、デバイス800は、リストバンドの形状をとり得、それによって、デバイス800は、装飾的デザインをさらに増加させられ、実際はデバイス800が薬剤を経皮送達するためのものであることを隠し得る。
【0038】
活性分子送達システムの先進的実施形態は、回路を含み、回路は、活性分子送達システムがスマートフォンまたはスマートウォッチ等の二次的デバイスによって無線で制御されることを可能にする。そのような改良物を用いて、ユーザは、例えば、送達される活性分子のタイプおよび送達される量を制御し得る。例えばスマートフォンまたはスマートウォッチ上のアプリケーションを用いて、時刻に基づいて送達される活性分子の量を修正するようにデバイスをプログラムすることが可能であり得る。他の実施形態では、デバイスは、バイオメトリックセンサ、例えば、フィットネストラッカー、心拍数モニターに動作可能に結合され得、それによって、アプリケーションは、例えばユーザの脈拍数が予め設定された閾値を超える場合に投与量がオフにされるようにする。他の実施形態は、例えば読み出し情報をグルコースモニタからデバイスに結合し、患者が彼らの所望の血液グルコースレベルではないときにインスリンの自動送達を可能にし得る。
【0039】
所望されるとき、本発明のデバイスは、遠隔で作動させられ、および/または制御され得る。デバイスを作動させ試薬を投与するために、例えば、NFC、Bluetooth(登録商標)、WIFI、または他の無線通信機能が用いられ得る。さらに、同一の無線通信が、デバイスの性能を監視するために用いられ得、例えば、異なる駆動ステータスにおけるリザーバの全てに関するパーセンテージおよび面積が既知であり、それは、パッチが作動させられるときおよび活性物質が投与される量を含む利用データの全てがプロバイダまたは療法士に利用可能であることを意味する。「プログラム可能な」特徴として、各リザーバが独立して切り替えられ得、デバイスの解放プロファイル全体が、異なる時間に異なるリザーバから異なる濃度の活性物質または異なる活性物質を駆動することによってプログラムされ得る。加えて、パッチを作動させるために用いられるスマートデバイスはデータ共有のために遠隔で医師とも通信し得るので、患者コンプライアンスも良い。
【0040】
上で説明される本発明の特定の実施形態において、本発明の範囲から逸脱せず数多くの変更および変形がなされ得ることが当業者に明らかであろう。よって、前述の説明の全体は、例証として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8