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特許7100221Frizzledタンパク質に対する抗体及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-05
(45)【発行日】2022-07-13
(54)【発明の名称】Frizzledタンパク質に対する抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20220706BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20220706BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220706BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P19/00
A61P19/02
A61P19/10
C12P21/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019178744
(22)【出願日】2019-09-30
(62)【分割の表示】P 2016534837の分割
【原出願日】2014-08-14
(65)【公開番号】P2020023517
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】61/865,668
(32)【優先日】2013-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522039740
【氏名又は名称】モッドマブ セラピューティクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】アマンディープ ガカール
(72)【発明者】
【氏名】サチデーブ サイドゥ
(72)【発明者】
【氏名】グオホワ パン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン モファット
(72)【発明者】
【氏名】メラニー ロビタイール
(72)【発明者】
【氏名】ステファン アンガース
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-530929(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080055(WO,A2)
【文献】特許第6617239(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のFrizzled受容体に結合し、そして前記1以上のFrizzled受容体のWntタンパク質リガンドへの結合を阻止する単離された抗体又はその抗原結合フラグメントであって、前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、以下:
(a)配列番号392のアミノ酸配列を含む可変L鎖相補性決定領域1(CDR L1)領域;
(b)配列番号393のアミノ酸配列を含む可変L鎖相補性決定領域2(CDR L2)領域;
(c)配列番号132のアミノ酸配列を含む可変L鎖相補性決定領域3(CDR L3)領域;
(d)配列番号133のアミノ酸配列を含む可変H鎖相補性決定領域1(CDR H1)領域;
(e)配列番号134のアミノ酸配列を含む可変H鎖相補性決定領域2(CDR H2)領域;及び
(f)配列番号135のアミノ酸配列を含む可変H鎖相補性決定領域3(CDR H3)領域、
を含む、体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗体がIgGアイソタイプである、請求項に記載の体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体がIgG1アイソタイプである、請求項に記載の体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
請求項1~の何れか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント、及び担体を含む医薬組成物。
【請求項5】
対象における異常なFrizzled受容体発現又は活性に関連する疾患又は障害の症状を緩和するための医薬組成物であって、請求項1~の何れか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを、異常なFrizzled受容体発現又は活性に関連する疾患又は障害の症状を緩和するのに十分な量でむ、医薬組成物。
【請求項6】
前記対象がヒトである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記異常なFrizzled受容体発現又は活性に関連する疾患又は障害が、癌である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記癌が、乳癌、肺癌、結腸癌、卵巣癌、膵臓癌、胃腸(GI)癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、前立腺癌、黒色腫、白血病、及びウィルムス腫瘍から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記乳癌が三重陰性乳癌である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記異常なFrizzled受容体発現又は活性に関連する疾患又は障害が、骨障害である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記骨障害が、骨粗鬆症、変形性関節症及び慢性関節リウマチから選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2013年8月14日に提出された米国特許仮出願第61/865,668号に対する利益を主張し、その内容は参照により全体が本明細書に組込まれる。
【0002】
本発明は一般的に、1又は2以上のFrizzled受容体を認識する抗体、例えばモノクローナル抗体、及びそれらの抗-Frizzled抗体の治療剤としての使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
Frizzled受容体は、Gタンパク質結合受容体の種類に属する。異常Frizzled受容体発現又は活性が種々の障害に関与している。従って、1又は2以上のFrizzled受容体を標的化し、そして阻害する治療剤についての必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、高親和性抗体、例えばFrizzled受容体又はFrizzled受容体の組合せ、例えばヒトFrizzled受容体又はヒトFrizzled受容体の組合せを認識するモノクローナル抗体を提供する。いくつかの実施形態によれば、抗体は、Frizzled受容体のシステインに富むドメイン(CRD)又はFrizzled受容体の組合せのCRDに結合する。それらの抗体は、Frizzled受容体又はFrizzled受容体の組合せの1又は2以上の生物学的活性を変調し、例えば阻止し、阻害し、低め、拮抗し、中和するか又は他方では、干渉し、例えばWntシグナル伝達経路を活性化するWntタンパク質リガンドに結合することができる。
【0005】
それらの抗体及びそれらの抗原結合フラグメントは、細胞表面上に発現される1又は2以上のFrizzled受容体に結合する。例えば、それらの抗体は、種々の癌細胞系上の1又は2以上のFrizzled受容体に結合し、そして癌幹細胞の増殖を阻害する。従って、抗体及びその抗原結合フラグメントは、癌、及びFrizzled受容体発現及び/又は活性が異常調節される他の疾患、例えば、非制限的例によれば、骨疾患、例えば骨粗鬆症、変形性関節症(OA)及び関節リウマチ(RA)の進行を治療し、遅延し、又はその症状を改善するのに有用である。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、癌、例えば、非制限的剤によれば、乳癌、例えば三重陰性乳癌、肺癌、結腸癌、卵巣癌、膵臓癌、胃腸(GI)癌、神経芽細胞腫、腎臓癌、前立腺癌、黒色腫、白血病、及び/又はウィルムス腫瘍の治療のために有用である。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、癌幹細胞に関連する癌の治療のために有用である。本発明のそれらの抗-Frizzled受容体抗体及びそのフラグメントは、癌細胞の生存性、移動性及び/又は浸潤性、例えば転移を変調し、例えば阻止し、阻害し、減じ、拮抗し、中和し、又は他方では、干渉することにおいて有用である。いくつかの実施形態によれば、本発明のそれらの抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメントは、乳癌細胞、肺癌細胞、結腸癌細胞及び/又は卵巣癌細胞の生存性、移動性及び/又は浸潤性、例えば転移性を変調し、例えば阻止し、阻害し、減じ、中和し、又は他方では干渉することにおいて有用である。
【0006】
本発明の典型的な抗体フラグメントは、例えば図1Cに示され、そして図1Dに示される配列によりコードされる相補性決定領域(CDR)配列を有するFabフラグメントを含み、ここで可変L鎖相補性決定領域1(CDR L1又はVL CDR1)は、アミノ酸配列SVSSA(配列番号392)を含み、そして可変L鎖相補性決定領域2(CDR L2又はVL CDR2)は、アミノ酸配列SASSLYS(配列番号393)を含む。本発明の典型的なモノクローナル抗体は、例えば図1A及び1Bに示されるL鎖及びH鎖配列を有する抗体を含む。本発明の典型的なモノクローナル抗体は、例えば図1Cに示され、そして図1Dに示される配列によりコードされる相補性決定領域(CDR)の組合せを有するIgG抗体を含み、個々でCDR L1はアミノ酸配列SVSSA(配列番号392)を含み、そしてCDR L2はアミノ酸配列SASSLYS(配列番号393)を含む。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、モノクローナル抗体は、図1A及び1Bに示されるL鎖配列を有する抗体と同じFrizzledエピトープに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントであるか、又はその抗体フラグメントは、図1Cに示され、そして図1に示される配列によりコードされる配列を有するFabフラグメントと同じFrizzledエピトープに結合するフラグメントである。いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合フラグメントは、1又は2以上のFrizzled受容体と、1又は2以上のWntタンパク質リガンドとの間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合フラグメントは、Wntシグナル伝達を阻害する。いくつかの実施形態によれば、抗体フラグメントは、図1A及び1B示されるL鎖及びH鎖配列を有する抗体と同じFrizzledエピトープに結合する抗体のフラグメントである。いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合フラグメントは、1又は2以上のFrizzled受容体と、1又は2以上のWntタンパク質リガンドとの間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、Wntシグナル伝達を阻害する。それらの抗体は、集合的には、本明細書においては「抗-Frizzled受容体抗体(ant-Frizzled receptor antibodies)」として言及され、そしてそれらのフラグメントは、集合的には、本明細書においては「抗-Frizzled受容体抗体フラグメント(anti-frizzled receptor antibody fragments)」、として言及される。いくつかの実施形態によれば、1又は2以上のFrizzled受容体を結合する抗体又はその免疫学的活性フラグメントは、モノクローナル抗体、ドメイン抗体、単鎖、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv、scab、dAb、単一ドメインH鎖抗体、及び単一ドメインL鎖抗体である。いくつかの実施形態によれば、1又は2以上のFrizzled受容体を結合する、そのような抗体又はその免疫学的活性フラグメントは、マウス、キメラ、ヒト化又は完全ヒトモノクローナル抗体である。それらの抗体は、1又は2以上のFrizzled受容体、好ましくは1又は2以上のヒトFrizzled受容体に対する特異性を示し、そしてそれらは、1又は2以上のFrizzled受容体、好ましくは1又は2以上のヒトFrizzled受容体の少なくとも1つの生物学的活性を、変調し、例えば阻止し、阻害し、減じ、拮抗し、中和し、又は他方では、干渉することが示されている。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号4のアミノ酸配列を有するH鎖領域を含む。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号2のアミノ酸配列を有するL鎖領域を含む。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号4のアミノ酸配列を有するH鎖領域、及び配列番号2のアミノ酸配列を有するL鎖領域を含む。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を有するH鎖領域を含む。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を有するL鎖領域を含む。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を有するH鎖領域、及び配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を有するL鎖領域を含む。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号3の核酸配列によりコードされるH鎖領域を含む。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号1の核酸配列によりコードされるL鎖領域を含む。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号3の核酸配列によりコードされるH鎖領域、及び配列番号1の核酸配列によりコードされるL鎖領域を含む。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一である核酸配列によりコードされるH鎖領域を含む。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一である核酸配列によりコードされるL鎖領域を含む。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号3の核酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一である核酸配列によりコードされるH鎖領域、及び配列番号1の核酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一である核酸配列によりコードされるL鎖領域を含む。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、3種のH鎖CDRを有するH鎖領域を含み、ここで可変H鎖(VH)相補性決定領域1(CDR H1)は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸配列を含み;VH相補性決定領域2(CDR H2)は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸配列を含み;そしてVH相補性決定領域3(CDR H3)は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、3種のH鎖CDRを有するH鎖領域を含み、ここでCDR H1は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸を含み;CDR H2は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸を含み;そしてCDR H3は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸を含む。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、3種のL鎖CDRを有するL鎖領域を含み、ここで可変L鎖(VL)CDR1(CDR L1)は、配列番号392の配列を含み;CDR L2は配列番号393のアミノ酸配列を含み、そしてCDR L3は図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、3種のL鎖CDRを有するL鎖領域を含み、ここでCRD L1は配列番号392の配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を含み;CRD L2は配列番号393の配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を含み、そしてCRD L3は図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、3種のH鎖CDR及び3種のL鎖CDRを有するH鎖領域を含み、ここでCDR H1は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸配列を含み;CDR H2は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸配列を含み;CDR H3は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸配列を含み;CDR L1は、配列番号392のアミノ酸配列を含み;CDR L2は、配列番号393のアミノ酸配列を含み;そしてCDR L3は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、3種のH鎖CDR及び3種のL鎖CDRを有するH鎖領域を含み、ここでCDR H1は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸を含み;CDR H2は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸を含み;CDR H3は、図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸を含み;CRD L1は配列番号392の配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を含み;CRD L2は配列番号393の配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を含み、そしてCRD L3は図1Cに示されるそれらから成る群から選択されたアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号4のアミノ酸配列を有するH鎖領域を含み、ここで1又は2以上のH鎖CDR配列が、図1Cに列挙され、そして図1Dに示される配列によりコードされるそれらから選択された、その対応するCDR H1、CDR H2及び/又はCDR H3配列により置換される。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号2のアミノ酸配列を有するL鎖領域を含み、ここでCDR L3は、図1Cに列挙され、そして図1Dに示される配列によりコードされるそれらから選択されたCDR L3配列により置換される。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号4のアミノ酸配列を有するH鎖領域(ここで、1又は2以上のH鎖CDR配列が、図1Cに列挙され、そして図1Dに示される配列によりコードされるそれらから選択された、その対応するCDR H1、CDR H2及び/又はCDR H3配列により置換される);及び配列番号2のアミノ酸配列を有するL鎖領域(ここで、CDR L3は、図1Cに列挙され、そして図1Dに示される配列によりコードされるそれらから選択されたCDR L3配列により置換される)を含む。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を有するH鎖領域を含み、ここで1又は2以上のH鎖CDR配列が、図1Cに列挙され、そして図1Dに示される配列によりコードされるそれらから選択された、その対応するCDR H1、CDR H2及び/又はCDR H3配列により置換される。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を有するL鎖領域を含み、ここでCDR L3は、図1Cに列挙され、そして図1Dに示される配列によりコードされるそれらから選択された、その対応するCDR L3配列により置換される。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合フラグメントは、配列番号4のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を有するH鎖領域を含み、ここで1又は2以上のH鎖CDR配列が、図1Cに列挙され、そして図1Dに示される配列によりコードされるそれらから選択された、その対応するCDR H1、CDR H2及び/又はCDR H3配列により置換され;そして配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上、同一であるアミノ酸配列を有するL鎖領域を含み、ここでCDR L3は、図1Cに列挙され、そして図1Dに示される配列によりコードされるそれらから選択された、その対応するCDR L3配列により置換される。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、典型的な抗体又はその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列SVSSA(配列番号392)を含むCDR L1、アミノ酸配列SASSLYS(配列番号393)を含むCDR L2、アミノ酸配列WAYGPF(配列番号53)を含むCDR L3、アミノ酸配列IYYYSM(配列番号54)を含むCDR H1、アミノ酸配列SIYSSYSYTS(配列番号19)を含むCDR H2、及びアミノ酸配列SSPGADYGL(配列番号55)を含むCDR H3を含む。この抗体は本明細書においては、H10又はmAb#111として言及され、それらは本開示を通して、交換可能的に使用される。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、典型的な抗体又はその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列SVSSA(配列番号392)を含むCDR L1、アミノ酸配列SASSLYS(配列番号393)を含むCDR L2、アミノ酸配列GVYLF(配列番号112)を含むCDR L3、アミノ酸配列IYSSSI(配列番号113)を含むCDR H1、アミノ酸配列SIYSSYGSTS(配列番号114)を含むCDR H2、及びアミノ酸配列YHYPFGHAL(配列番号115)を含むCDR H3を含む。この抗体は本明細書においては、G2又はmAb#140として言及され、それらは本開示を通して、交換可能的に使用される。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、典型的な抗体又はその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列SVSSA(配列番号392)を含むCDR L1、アミノ酸配列SASSLYS(配列番号393)を含むCDR L2、アミノ酸配列YYHPI(配列番号159)を含むCDR L3、アミノ酸配列ISSYYI(配列番号150)を含むCDR H1、アミノ酸配列SIYPYYSSTY(配列番号160)を含むCDR H2、及びアミノ酸配列VVVYGAM(配列番号161)を含むCDR H3を含む。この抗体は本明細書においては、A1又はmAb#105として言及され、それらは本開示を通して、交換可能的に使用される。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、典型的な抗体又はその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列SVSSA(配列番号392)を含むCDR L1、アミノ酸配列SASSLYS(配列番号393)を含むCDR L2、アミノ酸配列SSYSLI(配列番号71)を含むCDR L3、アミノ酸配列LSYYSM(配列番号93)を含むCDR H1、アミノ酸配列SIYP8YGYTY(配列番号84)を含むCDR H2、及びアミノ酸配列PSPGSYHGM(配列番号94)を含むCDR H3を含む。この抗体は本明細書においては、E4又はmAb#107として言及され、それらは本開示を通して、交換可能的に使用される。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、典型的な抗体又はその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列SVSSA(配列番号392)を含むCDR L1、アミノ酸配列SASSLYS(配列番号393)を含むCDR L2、アミノ酸配列YWYGVAPI(配列番号132)を含むCDR L3、アミノ酸配列ISSSYI(配列番号133)を含むCDR H1、アミノ酸配列YIYSSYGSTY(配列番号134)を含むCDR H2、及びアミノ酸配列ASWYAL(配列番号135)を含むCDR H3を含む。この抗体は本明細書においては、H1又はmAb#112として言及され、それらは本開示を通して、交換可能的に使用される。
【0025】
本発明はまた、本発明の抗-Frizzledモノクローナル抗体又はその免疫学的活性フラグメント(例えば、抗原結合フラグメント)を、治療又は改善が所望される対象に投与することにより、異常Frizzled受容体活性、異常Frizzled受容体発現及び/又は異常Wntシグナル伝達に関連する1又は2以上の病変の症状の進行を治療し、防止し、遅延し、又は他方では、症状を改善するための方法も提供する。治療される対象は例えば、ヒトである。モノクローナル抗体は、病変に関連する症状を、治療し、阻止するか又は改善するのに十分な量で投与される。対象における病変を治療するか、又は防止するのに十分なモノクローナル抗体の量は、例えばWntタンパク質リガンドに結合するFrizzled受容体を阻害するか、低めるか又は他方では、拮抗するのに十分である量である。対象における病変を治療するか又は防止するのに十分なモノクローナル抗体の量は、例えばWntシグナル伝達を阻害するか、低めるか又は他方では、拮抗するのに十分である量である。
【0026】
本発明の抗-Frizzled受容体抗体及び抗-Frizzled受容体抗体フラグメントを用いて治療され、そして/又は防止される病変は例えば、癌及び/又は骨疾患を包含する。
【0027】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体又は抗体フラグメント、及び担体を含むことができる。それらの医薬組成物は、キット、例えば診断キットに含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A図1Aは、Fab H3のH鎖及びL鎖配列を示す一連の図である。例として、CDR及び主鎖のアミノ酸及びヌクレオチド配列が示される。CDRは下線が引かれている。列挙されるCDRのアミノ酸残基は、IMGT命名法により企画される場合、以下の位置である:CDR L3 : 107-116; CDR HI : 30-39; CDR H2: 55-66;CDR H3 : 107-115。
図1B図1Bは、Fab H3のH鎖及びL鎖配列を示す一連の図である。例として、CDR及び主鎖のアミノ酸及びヌクレオチド配列が示される。CDRは下線が引かれている。列挙されるCDRのアミノ酸残基は、IMGT命名法により企画される場合、以下の位置である:CDR L3 : 107-116; CDR HI : 30-39; CDR H2: 55-66;CDR H3 : 107-115。
図1C-1】図1C-1は、CDR(L3、H1、H2及びH3)の配列を示す一連の表である。選択からのユニークFab配列が示されている。クローンファージが、ELISAスクリーニングのために96-ウェル培養ボックスにおいて増幅された。ラウンド2からの95のクローン及びラウンド3からの95のクローンが、FZD7-CDR-Fcドメイン及び対照Fcタンパク質に対するELISA反応性についてスクリーンされた。ラウンド3からの95ファージクローンのうち合計57及びラウンド3からの95のファージクローンのうち合計59が3よりも大きなバックグラウンドに対するシグナルの比率を示した。ファージクローンが配列決定され、CDR L3、H1,H2及びH3組成が決定された。列挙されたアミノ酸残基は、IMGT命名法により企画される場合、以下の位置である:CDR L3 : 107-116; CDR HI : 30-39; CDR H2: 55-66;CDR H3 : 107-115。
図1C-2】図1C-2は、CDR(L3、H1、H2及びH3)の配列を示す一連の表である。選択からのユニークFab配列が示されている。クローンファージが、ELISAスクリーニングのために96-ウェル培養ボックスにおいて増幅された。ラウンド2からの95のクローン及びラウンド3からの95のクローンが、FZD7-CDR-Fcドメイン及び対照Fcタンパク質に対するELISA反応性についてスクリーンされた。ラウンド3からの95ファージクローンのうち合計57及びラウンド3からの95のファージクローンのうち合計59が3よりも大きなバックグラウンドに対するシグナルの比率を示した。ファージクローンが配列決定され、CDR L3、H1,H2及びH3組成が決定された。列挙されたアミノ酸残基は、IMGT命名法により企画される場合、以下の位置である:CDR L3 : 107-116; CDR HI : 30-39; CDR H2: 55-66;CDR H3 : 107-115。
図1C-3】図1C-3は、CDR(L3、H1、H2及びH3)の配列を示す一連の表である。選択からのユニークFab配列が示されている。クローンファージが、ELISAスクリーニングのために96-ウェル培養ボックスにおいて増幅された。ラウンド2からの95のクローン及びラウンド3からの95のクローンが、FZD7-CDR-Fcドメイン及び対照Fcタンパク質に対するELISA反応性についてスクリーンされた。ラウンド3からの95ファージクローンのうち合計57及びラウンド3からの95のファージクローンのうち合計59が3よりも大きなバックグラウンドに対するシグナルの比率を示した。ファージクローンが配列決定され、CDR L3、H1,H2及びH3組成が決定された。列挙されたアミノ酸残基は、IMGT命名法により企画される場合、以下の位置である:CDR L3 : 107-116; CDR HI : 30-39; CDR H2: 55-66;CDR H3 : 107-115。
図1D-1】図1D-1は、CDR(L3、H1、H2及びH3)の配列を示す一連の表である。選択からのユニークFab配列が示されている。クローンファージが、ELISAスクリーニングのために96-ウェル培養ボックスにおいて増幅された。ラウンド2からの95のクローン及びラウンド3からの95のクローンが、FZD7-CDR-Fcドメイン及び対照Fcタンパク質に対するELISA反応性についてスクリーンされた。ラウンド3からの95ファージクローンのうち合計57及びラウンド3からの95のファージクローンのうち合計59が3よりも大きなバックグラウンドに対するシグナルの比率を示した。ファージクローンが配列決定され、CDR L3、H1,H2及びH3組成が決定された。列挙されたアミノ酸残基は、IMGT命名法により企画される場合、以下の位置である:CDR L3 : 107-116; CDR HI : 30-39; CDR H2: 55-66;CDR H3 : 107-115。
図1D-2】図1D-2は、CDR(L3、H1、H2及びH3)の配列を示す一連の表である。選択からのユニークFab配列が示されている。クローンファージが、ELISAスクリーニングのために96-ウェル培養ボックスにおいて増幅された。ラウンド2からの95のクローン及びラウンド3からの95のクローンが、FZD7-CDR-Fcドメイン及び対照Fcタンパク質に対するELISA反応性についてスクリーンされた。ラウンド3からの95ファージクローンのうち合計57及びラウンド3からの95のファージクローンのうち合計59が3よりも大きなバックグラウンドに対するシグナルの比率を示した。ファージクローンが配列決定され、CDR L3、H1,H2及びH3組成が決定された。列挙されたアミノ酸残基は、IMGT命名法により企画される場合、以下の位置である:CDR L3 : 107-116; CDR HI : 30-39; CDR H2: 55-66;CDR H3 : 107-115。
図1D-3】図1D-3は、CDR(L3、H1、H2及びH3)の配列を示す一連の表である。選択からのユニークFab配列が示されている。クローンファージが、ELISAスクリーニングのために96-ウェル培養ボックスにおいて増幅された。ラウンド2からの95のクローン及びラウンド3からの95のクローンが、FZD7-CDR-Fcドメイン及び対照Fcタンパク質に対するELISA反応性についてスクリーンされた。ラウンド3からの95ファージクローンのうち合計57及びラウンド3からの95のファージクローンのうち合計59が3よりも大きなバックグラウンドに対するシグナルの比率を示した。ファージクローンが配列決定され、CDR L3、H1,H2及びH3組成が決定された。列挙されたアミノ酸残基は、IMGT命名法により企画される場合、以下の位置である:CDR L3 : 107-116; CDR HI : 30-39; CDR H2: 55-66;CDR H3 : 107-115。
図1D-4】図1D-4は、CDR(L3、H1、H2及びH3)の配列を示す一連の表である。選択からのユニークFab配列が示されている。クローンファージが、ELISAスクリーニングのために96-ウェル培養ボックスにおいて増幅された。ラウンド2からの95のクローン及びラウンド3からの95のクローンが、FZD7-CDR-Fcドメイン及び対照Fcタンパク質に対するELISA反応性についてスクリーンされた。ラウンド3からの95ファージクローンのうち合計57及びラウンド3からの95のファージクローンのうち合計59が3よりも大きなバックグラウンドに対するシグナルの比率を示した。ファージクローンが配列決定され、CDR L3、H1,H2及びH3組成が決定された。列挙されたアミノ酸残基は、IMGT命名法により企画される場合、以下の位置である:CDR L3 : 107-116; CDR HI : 30-39; CDR H2: 55-66;CDR H3 : 107-115。
図2A-1】図2A-1は、Fab精製の要約を示す表である。ライブラリースクリーンから単離されたユニークFabが、IPTG誘導性発現ベクター中にサブクローン化され、そして25mlの小規模培養下で発現された。一晩の培養ペレットの溶解物が、プロテインAビーズ上でバッチ精製され、そして2回の連続溶出にゆだねられた。各溶出の収量及び合計Fab収量が示される。
図2A-2】図2A-2は、Fab精製の要約を示す表である。ライブラリースクリーンから単離されたユニークFabが、IPTG誘導性発現ベクター中にサブクローン化され、そして25mlの小規模培養下で発現された。一晩の培養ペレットの溶解物が、プロテインAビーズ上でバッチ精製され、そして2回の連続溶出にゆだねられた。各溶出の収量及び合計Fab収量が示される。
図2B-1】図2B-1は、ELISAにより測定された、精製されたFZD7-Fcへの精製されたFabの結合を示す表である。2.5mlの細菌培養物から精製されたFabが、FZD7-Fc融合タンパク質(R&D systems)及びFcタンパク質への結合についてアッセイされた。ELISAプレート(384ウェル)が、PBS中、2μg/mlのタンパク質により4℃で一晩、被覆された。ウェルが室温で1時間、0.5%BSA/PBSによりブロックされ、0.05%Tween20/PBS(洗浄緩衝液)により3度、洗浄され、そして次に、0.5%BSA/0.05%Tween20/PBS(希釈緩衝液)中、Fabの一次希釈溶液が示される濃度で添加された。Fabが室温で1時間インキュベートされ、ウェルが6度、洗浄され、そして抗-FLAG-HRP(Sigma)が、希釈緩衝液中、1:5000で添加された。二次抗体が室温で45分間インキュベートされ、そしてウェルが6度、洗浄され、そして酸停止とTMB基質を用いて展開された。450nmで吸光度が読み取られた。n.t.=試験されなかった。
図2B-2】図2B-2は、ELISAにより測定された、精製されたFZD7-Fcへの精製されたFabの結合を示す表である。2.5mlの細菌培養物から精製されたFabが、FZD7-Fc融合タンパク質(R&D systems)及びFcタンパク質への結合についてアッセイされた。ELISAプレート(384ウェル)が、PBS中、2μg/mlのタンパク質により4℃で一晩、被覆された。ウェルが室温で1時間、0.5%BSA/PBSによりブロックされ、0.05%Tween20/PBS(洗浄緩衝液)により3度、洗浄され、そして次に、0.5%BSA/0.05%Tween20/PBS(希釈緩衝液)中、Fabの一次希釈溶液が示される濃度で添加された。Fabが室温で1時間インキュベートされ、ウェルが6度、洗浄され、そして抗-FLAG-HRP(Sigma)が、希釈緩衝液中、1:5000で添加された。二次抗体が室温で45分間インキュベートされ、そしてウェルが6度、洗浄され、そして酸停止とTMB基質を用いて展開された。450nmで吸光度が読み取られた。n.t.=試験されなかった。
図3-1】図3-1は、FZD7を発現する細胞への精製されたFAbの結合を示す表である(フローサイトメトリー)。小規模Fabが、MDA MB231細胞における過剰発現系への完全長FZC7受容体の結合についてアッセイされた。並行して、Fabが、MDA MB231細胞上で発現される内因性受容体への結合についてアッセイされた。細胞が、EDTA溶液を用いて収穫され、2%FBS/PBS(染色緩衝液)中でブロックされ、そして氷上で30分間、200nMのFabにより染色された。細胞が、染色緩衝液により2度、洗浄され、そして抗-F(ab′)2―APC二次抗体(Jackson Immuno)と共に1:1000で、氷上で15分間インキュベートされた。すべての抗体が染色緩衝液により希釈された。細胞が、染色緩衝液により3度、洗浄され、そして次に、フローサイトメトリーによる分析のために、1%パラホルムアルデヒドにより固定された。生存細胞集団が前方及び側方散乱プロフィールに基づいてゲート制御され、そして次に、陽性蛍光ゲートが、細胞に結合しなかった陰性対照Fabに対して設定された。陽性ゲート内の細胞集団の%が示される。
図3-2】図3-2は、FZD7を発現する細胞への精製されたFAbの結合を示す表である(フローサイトメトリー)。小規模Fabが、MDA MB231細胞における過剰発現系への完全長FZC7受容体の結合についてアッセイされた。並行して、Fabが、MDA MB231細胞上で発現される内因性受容体への結合についてアッセイされた。細胞が、EDTA溶液を用いて収穫され、2%FBS/PBS(染色緩衝液)中でブロックされ、そして氷上で30分間、200nMのFabにより染色された。細胞が、染色緩衝液により2度、洗浄され、そして抗-F(ab′)2―APC二次抗体(Jackson Immuno)と共に1:1000で、氷上で15分間インキュベートされた。すべての抗体が染色緩衝液により希釈された。細胞が、染色緩衝液により3度、洗浄され、そして次に、フローサイトメトリーによる分析のために、1%パラホルムアルデヒドにより固定された。生存細胞集団が前方及び側方散乱プロフィールに基づいてゲート制御され、そして次に、陽性蛍光ゲートが、細胞に結合しなかった陰性対照Fabに対して設定された。陽性ゲート内の細胞集団の%が示される。
図4A図4Aは、ELISAにより決定されるファージ上に表されるFabの結合特異性を示す表である。ファージ-Fabクローンが、FZD CDR-Fc融合タンパク質(R&D Systems)への交差結合についてELISAによりアッセイされた。ELISAプレート(384ウェル)が、4℃で一晩、PBS中、2μg/mlのタンパク質により被覆され、そして結合ファージが、抗-M13-HRP二時抗体を用いて決定された。ELISAが、酸停止を伴って、TMB基質により展開された。陽性結合結果(Fc対照タンパク質に対するバックグラウンドシグナル以上のOD450)が、(+)として示される。
図4B図4Bは、免疫染色により決定されるFabの結合特異性を示す表である。FabがGPI-結合CRDドメインを安定して発現するCHO系上での免疫蛍光による交差による交差結合について評価された。+:結合が検出される;-:結合が検出されなかった。
図5図5は、FZD7 Fabクローンのエピトープ開始を検出する表(比較ELISAアッセイ)である。Fzd7-FcがPBS中、2μg/ml(384ウェルプレート)で一晩、4℃で被覆された。ウェルが0.5%BSA/PBSにより室温で1時間、阻止され、0.05%Tween20/PBSにより3度、洗浄され、そして次に、示されるFabが、0.5%BSA/0.05%Tween20/PBS(希釈緩衝液)により1μMに希釈され、そしてウェルに添加された。Fabが室温で1時間インキュベートされ、そして次に、10μlの示されるファージがウェルに添加された。添加されたファージは、30mlの一晩の培養物のPEG沈殿からであり、そして直線範囲内でELISAシグナルを与えるよう前もって決定された濃度に、希釈緩衝液により希釈された。サンプルが室温で20分間インキュベートされ、そして次に、ウェルが6度、洗浄された。抗-M13-HRP(希釈緩衝液中、1:5000)が、室温で45分間、添加されて、そしてウェルが6度、洗浄され、そして酸停止を伴ってTMB基質により展開された。450nmでの吸光度が読み取られた。Fabの存在下での各ファージクローンの%結合率が、Fzb7-Fcタンパク質を結合しない負の対照Fabを含むウェルのA450シグナルにより、ワンプルウェルのA450シグナルを割算することにより決定された。
図6A図6Aは、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される抗-FZD7 Fabの結合親和性を示す表及び一連のグラフである。親和性パラメーターが、表(図6A)に要約されている。図6B-6Jは、SPR測定値のヒストグラムを示している。
図6B図6Bは、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される抗-FZD7 Fabの結合親和性を示す表及び一連のグラフである。図6Bは、SPR測定値のヒストグラムを示している。
図6C図6Cは、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される抗-FZD7 Fabの結合親和性を示す表及び一連のグラフである。図6Cは、SPR測定値のヒストグラムを示している。
図6D図6Dは、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される抗-FZD7 Fabの結合親和性を示す表及び一連のグラフである。図6Dは、SPR測定値のヒストグラムを示している。
図6E図6Eは、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される抗-FZD7 Fabの結合親和性を示す表及び一連のグラフである。図6Eは、SPR測定値のヒストグラムを示している。
図6F図6Fは、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される抗-FZD7 Fabの結合親和性を示す表及び一連のグラフである。図6Fは、SPR測定値のヒストグラムを示している。
図6G図6Gは、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される抗-FZD7 Fabの結合親和性を示す表及び一連のグラフである。図6Gは、SPR測定値のヒストグラムを示している。
図6H図6Hは、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される抗-FZD7 Fabの結合親和性を示す表及び一連のグラフである。図6Hは、SPR測定値のヒストグラムを示している。
図6I図6Iは、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される抗-FZD7 Fabの結合親和性を示す表及び一連のグラフである。図6Iは、SPR測定値のヒストグラムを示している。
図6J図6Jは、表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される抗-FZD7 Fabの結合親和性を示す表及び一連のグラフである。図6Jは、SPR測定値のヒストグラムを示している。
図7図7は、SPRにより測定された追加のFZDのへの抗-FZD7抗体の結合親和性を示す表である。Fzd CDR-Fc融合タンパク質(R&D systems)へのFabパネルの結合親和性が、SPRにより評価された。ヒトドメインが、Fzdドメイン1、4、5、7及び8のために使用された。Fzd2の場合、ヒトとの高い配列同一性を示すマウスドメインが使用された。「x」は、抗原への正の結合性がSPRにより観察されなかった場合を示す。
図8図8は、抗-FZD7FabによるWnt5a結合の阻害を示すグラフである。Wnt 5a(R&Dsystems)は、市販のキット(Thermo 21329 EZ-link NHS-PEG4- Biotin)を用いてビオチニル化され、そして過剰ビオチンが、3000MWCO Amiconフィルターを用いて、緩衝液交換により除去された。Fzd7i-Fcが1%BSA/PBS(希釈緩衝液)により希釈され、そして1%BSAにより前もってブロックされた96ウェルTCプレートにおいて、所望するFab又は緩衝液サンプルと共に室温で1時間インキュベートされた。Fcタンパク質を有する対照ウェルがまた含まれた。ビオチニル化されたwnt5aがウェルに添加され、そしてプレートがさらに1時間インキュベートされた。緩衝液のみがビオチニル化されたwnt5aの代わりに添加されている対照ウェルがまたインキュベートされた。ビオチニル化されたWnt5aが150ng/μlの最終濃度で添加され、Fabタンパク質が0.5μMの最終濃度で添加され、そしてFad7-Fcが、線状範囲内で吸光度読み取りを与えるよう前もって決定された最終濃度で添加された。FAb BB9及びAR07dが、他のタンパク質抗原のためのそれらの特異性を付与する負の対照サンプルとして含まれた。サンプルが、前もってブロックされたストレプタビジン被覆プレート(R&D systems)に移され、そして室温で1時間、捕捉された。ウェルが、0.05%Tween20/PBSにより4℃、洗浄され、そして次に、抗-Fc-HRP(希釈緩衝液において1:5000、Jackson Immuno)がウェルに、室温で45分間、添加された。ウェルが4℃、洗浄され、そして酸停止を伴って、TMB試薬により展開された。450nmでの吸光度が読み取られ、そして%結合率が、緩衝液のみのウェルのA450により割算された、所望するFabウェルのA450(×100)として計算された。誤差バーは、3回の独立したELISA実験を表す。
図9図9は、Wnt3a誘発された転写活性に対する抗-FZD7 Fabの効果を示すグラフである。TOP-FLASH受容体システム(TCF/LEF結合部位がルシフェラーゼレポーター遺伝子に連結されている)が、MDA MB231細胞中に安定して導入された。400nMの最終濃度でのFabが、Wnt3aならし培地及び適切な対照ウェルと共に15時間インキュベートされた。ウェルが溶解され、そしてルシフェラーゼシグナルが読み取られた。誤差バーは、n=3を示す。
図10図10は、細胞表面上で発現されるFZD7 ECDへの抗-FZD7 IgGの結合を示す一連のグラフである。抗-Fzd7 IgGが、示される細胞系上で、25nMで、フローサイトメトリーにより染色された。IgGが、抗-F(ab)2-FITC標識された二次抗体(Jackson Immuno)を用いて検出され、PFAにより固定され、そして次に、データがBD facscalibur上で取得された。
図11図11は、Wnt3a-誘発された転写に対する抗-FZD7 IgGの効果を示す一連のグラフである。用量-依存性阻害曲線が示される。IC50値が示された。IgG G6に関しては、単一用量阻害のみが行われた。200nMで、IgG G6は>70%を示す。
図12A図12Aは、抗-FZD7モノクローナル抗体への5日間の暴露に続いての膵臓癌細胞系の増殖における用量依存性低下を示す一連のグラフ及び表である。図12Aは、mAb H10(本明細書においては、またmAb#111とも称す)又はG2(本明細書においては、またmAb#140とも称す)の何れかへの5日間の暴露に続いてのHPAFII細胞の増殖における用量依存性低下を示す。10μg/ml又は50μg/mlでのmAb H10への暴露に続いて、それぞれ24.4%及び38.0%の増殖の低下が存在し;10μg/ml又は50μg/mlでのmAb G2への暴露に続いて、それぞれ30.4%及び48.0%の増殖の低下が存在した。
図12B図12Bは、抗-FZD7モノクローナル抗体への5日間の暴露に続いての膵臓癌細胞系の増殖における用量依存性低下を示す一連のグラフ及び表である。図12Bは、mAb H10又はG2の何れかへの5日間の暴露に続いてのIMMPC2細胞の増殖における用量依存性低下を示す。10μg/ml又は50μg/mlでのmAb H10への暴露に続いて、それぞれ14.1%及び16.2%の増殖の低下が存在し;10μg/ml又は50μg/mlでのmAb G2への暴露に続いて、それぞれ15.7%及び17.9%の増殖の低下が存在した。
図12C図12Cは、抗-FZD7モノクローナル抗体への5日間の暴露に続いての膵臓癌細胞系の増殖における用量依存性低下を示す一連のグラフ及び表である。図12Cは、mAb H10又はG2の何れかへの5日間の暴露に続いてのPANC08.13細胞の増殖における用量依存性低下を示す。10μg/ml又は50μg/mlでのmAb H10への暴露に続いて、それぞれ0.16%及び7.7%の増殖の低下が存在し;10μg/ml又は50μg/mlでのmAb G2への暴露に続いて、それぞれ4.7%及び7.7%の増殖の低下が存在した。
図12D図12Dは、抗-FZD7モノクローナル抗体への5日間の暴露に続いての膵臓癌細胞系の増殖における用量依存性低下を示す一連のグラフ及び表である。図12Dは、mAb H10又はG2の何れかへの5日間の暴露に続いてのASPC-1細胞の増殖における用量依存性低下を示す。10μg/ml又は50μg/mlでのmAb H10への暴露に続いて、それぞれ37.5%又は41.9%の増殖の低下が存在し;10μg/ml又は50μg/mlでのmAb G2への暴露に続いて、それぞれ42.3%及び45.8%の増殖の低下が存在した。
図12E図12Eは、抗-FZD7モノクローナル抗体への5日間の暴露に続いての膵臓癌細胞系の増殖における用量依存性低下を示す一連のグラフ及び表である。図12Eは、抗-FZD7 mAb A1(本明細書においては、またmAb#105とも称す)、E4(本明細書においては、またmAb#107とも称す)、H10(mAb#111)、H1(mAb#112)及びG2(mAb#140)への5日間の暴露に続いてのCapan-2細胞の増殖における用量依存性低下を示す。増殖の低減のレベルは、18R5抗体への暴露の後に見出されるそれらの低減と同等であった。まとめると、10μg/ml又は50μg/mlでの抗-FZD7 mAbの暴露が、35%以上、Capan-2細胞の増殖の低減をもたらした。
図13A図13Aは、抗-FZD7抗体、A1(mAb#105)、E4(mAb#107)、H10(mAb#111)、H1(mAb#112)、G2(mAb#140)又は18R5との5日間のインキュベーションに続いての癌細胞系APSC-1の増殖の用量依存性応答を示す一連のグラフ及び表である。図13Aは、1μg/ml、2μg/ml、5μg/ml、10μg/ml又は50μg/mlの濃度でのmAb A1(mAb#105)、E4(mAb#107)又はH10(mAb#111)との5日間のインキュベーションに続いてのASPC-1細胞の増殖の用量依存性低下を示す。
図13B図13Bは、抗-FZD7抗体、A1(mAb#105)、E4(mAb#107)、H10(mAb#111)、H1(mAb#112)、G2(mAb#140)又は18R5との5日間のインキュベーションに続いての癌細胞系APSC-1の増殖の用量依存性応答を示す一連のグラフ及び表である。図13Bは、1μg/ml、2μg/ml、5μg/ml、10μg/ml又は50μg/mlの濃度でのmAb H1(mAb#112)、G2(mAb#140)又は18R5との5日間のインキュベーションに続いてのASPC-1細胞の増殖の用量依存性低下を示す。
図14図14は、マウス異種移植腫瘍モデルへの抗-FZD7 mAbの投与に続いてのインビボ腫瘍増殖阻害を示すグラフ及び表である。3×106個のAsPC1細胞が、C.B-17SCIDマウスの腫瘍に移植され、続いて、6日目から出発して、1週当たり2度、投与される、20mg/kgの抗-FZD7 mAbにより処理された。全ての試験された抗-FZD7抗体(すなわち、AO1 (mAb#105)、E04 (mAb#107)、 H10 (mAb#111)、 H01 (mAb#l12)、G02 (mAb#140))は、25%-50%の範囲の腫瘍増殖阻害(TGI)で抗-腫瘍活性を示した。
図15図15は、抗-FZD7抗体、H10(mAb#111)及びH01(mAb#112)の投与に続いてのインビボ用量依存性腫瘍増殖阻害を示すグラフ及び表である。3×106個のAsPC1細胞がC.B-17SCIDマウスの脇腹に移植され、続いて、週当たり2度、投与される、5mg/kg、20mg/kg又は50mg/kgの濃度でのH01(mAb#111)又はH01(mAb#112)の何れかにより、移植の6日後に開始して、処理された。用量依存性腫瘍増殖阻害活性が、H01(mAb#111)及びH01(mAb#112)の両者で観察され、そしてそれぞれ、H10(mAb#111)については、36.8-65.8%の範囲、及びmAb H01(mAb#112)については、35.4%-44.7%の範囲の腫瘍体積の低減が存在した。
図16図16は、Capan-2異種移植マウスモデルにおける、抗-FZD7抗体H10(mAb#111)の投与に続いての用量依存性腫瘍増殖阻害を示すグラフである。4×106個のCapan―2細胞が、C.B-17-SCIDマウスの脇腹に移植され、続いて合計10用量、週当たり2度、投与される、5mg/kg又は20mg/kgの何れかの濃度でのH10(mAb#112)により、移植の6日後に処理された。20mg/kgの投与が、52%の腫瘍体積の低減をもたらした。
図17図17は、HPAFII異種移植マウスモデルにおける、抗-FZD7抗体H10(mAb#111)の投与に続いての用量依存性腫瘍増殖阻害を示すグラフである。3×106個のHPAFII細胞が、C.B-17-SCIDマウスの脇腹に移植され、続いて、合計8用量、投与される、5mg/kg又は20mg/kgの何れかの濃度でのH10(mAb#111)により、4.5週間、移植の6日後、週2度、処理された。20mg/kgの投与が、94%の腫瘍体積の低減をもたらした。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、高親和性抗体、例えば1又は2以上のFrizzled受容体を認識するモノクローナル抗体を提供する。Frizzled受容体は、種々の生物学的工程、例えば成長、細胞増殖、分化、生存及び移動、並びに多くの病的状態、例えば癌に関与している、重要な種類のGタンパク質結合された受容体である。本明細書において提供される抗体は、Frizzled受容体又はFrizzled受容体の組合せに結合し、リガンドWnt結合を阻止し、そしてFrizzled受容体媒介性シグナル伝達を調節する。従って、それらの抗体は、Frizzled受容体が脱調節されている癌及び他の疾患の処置のための治療可能性を有する。
【0030】
Frizzled受容体は、多くの重要な生物学的工程、例えば成長、細胞増殖、生存、移動及び幹細胞維持に関与している。それらの受容体及びそれらのリガンド、Wntタンパク質の異常発現及びシグナル伝達が、多くの癌、例えば結腸癌、肺癌、乳癌及び卵巣癌に関与している。しばしば、複数のWntリガンド及び/又はFrizzled受容体がアップレギュレートされ、そして腫瘍形成を駆動する異常シグナル伝達を導く。従って、複数のFrizzled受容体の阻害が、増強された抗癌効果を達成するために使用され得る。さらに、Frizzled受容体はまた、癌幹細胞、すなわち薬物耐性、腫瘍再発及び転移を担当していると思われる小集団癌細胞にも関与している。従って、Frizzled受容体に対する拮抗性抗体が、癌幹細胞を標的化し、そして種々のタイプの癌を治療するために使用され得る。例えば、本明細書に提供されるFZD7に対する拮抗性抗体は、FZD7を発現し、そしてFZD7に依存する癌を治療するために有用である。それらの抗体はまた、追加のFZD受容体にも結合するので、それらの抗体は、他のFrizzled受容体を発現し、そして依存する癌を治療するために使用され得る。
【0031】
Wntシグナル伝達経路は、細胞表面受容体を通して細胞の外部から細胞の内部にシグナルを通過させるタンパク質から製造されるシグナルトランスダクション経路のグループである。次の3種のWntシグナル伝達経路が特徴づけられている:標準的Wnt経路、非標準的平面内細胞極性経路、及び非標準的Wnt/カルシウム経路。すべての3種のWntシグナル伝達経路は、細胞内の乱れたタンパク質に対して生物学的シグナルを通過させる、Frizzled受容体へのWnt-タンパク質リガンドの結合により活性化される。標準的Wnt経路は、伝達転写の調節を導き、非標準的平面内細胞極性経路は、細胞の形状を担当している骨格を調節し、そして非標準的Wnt/カルシウム経路は細胞内のカルシウムを調節する。
【0032】
本発明の抗体は、1又は2以上のFrizzled受容体とWntタンパク質リガンドとの間の相互作用を調節する。Frizzled受容体は、Frizzled-1 (FZD1)、Frizzled-2(FZD2)、Frizzled-3(FZD3)、Frizzled-4(FZD4)、Frizzled-5(FZD5)、Frizzled-6(FZD6)、Frizzled-8(FZD8)、Frizzled-9(FZD9)及び Frizzled-10(FZD 10)から選択されたFrizzled受容体を包含する。Wntタンパク質リガンドは、ヒトWntタンパク質、例えばWntl、Wnt2、Wnt2B、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、WntSA、Wnt5B、Wnt6、 Wnt7A、 Wnt7B、 Wnt8A、 Wnt8B、 Wnt9A、 Wnt9B、 WntlOA、 Wntl.0B、 Wrntl 1及び Wntl 6から選択されたヒトWntタンパク質を包含する。抗-Frizzled抗体は、Wntタンパク質リガンドへの結合を阻害するか、又は他方では、拮抗し、そしてWntシグナル伝達経路の活性化を調節する。例えば、抗-Frizzled抗体は、Wntタンパク質リガンドへの結合を阻害するか、又は他方では拮抗し、そして標準的Wnt経路、非標準的平面内細胞極性経路、及び非標準的Wnt/カルシウム経路を通してシグナル伝達の活性化を調節する。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、抗体は、FZD7のシステインに富んでいるドメイン(CRD)を結合する。いくつかの実施形態によれば、抗体は、Frizzled-1(FZD1)、Frizzled-2(FZD2)、Frizzled -3(FZD3)、Frizzled-4 (FZD4)、 Frizzled-5 (FZD5)、 Frizzled-6 (FZD6)、Frizzled-7 (FZD7)、Frizzled-8 (FZD8)、Frizzled-9 (FZD9) 及びFrizzled-10 (FZD 10)から選択された1又は2以上のFrizzled受容体を結合する。いくつかの実施形態によれば、抗体は、FZDl、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9 及びFZD10から選択された複数のFrizzled受容体を結合する。例えば、いくつかの実施形態によれば、抗体は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、又は少なくとも9又はそれ以上のFrizzled受容体を結合する。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、抗体は、Frizzled受容体のシステインに富むドメイン(CRD)を結合する。いくつかの実施形態によれば、抗体は、FZDl、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9 及びFZD10から選択された1又は2以上のFrizzled受容体のシステインに富むドメインを結合する。いくつかの実施形態によれば、抗体は、FZDl、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9 及びFZD10から選択された複数のFrizzled受容体のシステインに富むドメイン(CRD)を結合する。例えば、いくつかの実施形態によれば、抗体は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、又は少なくとも9又はそれ以上のFrizzled受容体を結合する。それらの抗体は、1又は2以上のFrizzled受容体の1又は2以上の生物学的活性を、調節でき、例えば阻止し、阻害し、減じ、拮抗し、中和し、又は他方では、干渉することができる。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、抗体は、本明細書においてはFrizzled-7及び/又はFZD7とも呼ばれるFrizzled-7受容体を結合する。いくつかの実施形態によれば、抗体はヒトFZD7を結合する。いくつかの実施形態によれば、抗体は、FZDl、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9 及びFZD10から選択された1又は2以上のFrizzled受容体と組合して、FZD7を結合する。いくつかの実施形態によれば、抗体は、ヒトFZDl、ヒトFZD2、ヒトFZD3、ヒトFZD4、ヒトFZD5、ヒトFZD6、ヒトFZD7、ヒトFZD8、ヒトFZD9 及びヒトFZD10から選択された1又は2以上のヒトFrizzled受容体と組合して、ヒトFZD7を結合する。
【0036】
本発明の抗体は、≦1μM、例えば≦100nM、好ましくは≦10nM及びより好ましくは≦1nMの平衡結合定数(Kd)を伴って、1又は2以上のFrizzled受容体上のエピトープ、例えばヒトFZD7上のエピトープに結合する。例えば、本明細書において提供される抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメントは、図6及び/又は図7に示される範囲でKdを示す。
【0037】
本発明の抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメントは、1又は2以上のFrizzled受容体の少なくとも1つの機能的活性を、調節し、阻止し、減じ、拮抗し、中和するか、又は他方では、干渉するよう作用する。例えば、抗-Frizzled受容体抗体及び/又は抗-Frizzled受容体抗体フラグメントは、Wntタンパク質リガンドへの1又は2以上のFrizzled受容体の結合を、部分的に又は完全に調節し、阻止し、阻害し、減じ、拮抗し、中和するか、又は他方では、干渉することにより、Frizzled機能的活性を、完全に又は部分的に阻害する。例えば、抗-Frizzled受容体抗体及び/又は抗-Frizzled受容体抗体フラグメントは、1又は2以上のFrizzled受容体の活性化を、部分的に又は完全に調節し、阻止し、阻害し、減じ、拮抗し、中和するか、又は他方では、干渉することにより、Frizzled機能的活性を、完全に又は部分的に阻害する。
【0038】
抗-Frizzled受容体抗体及び/又は抗-Frizzled受容体抗体フラグメントは、抗-Frizzled受容体抗体及び/又は抗-Frizzled受容体抗体フラグメントの存在下での機能的活性のレベルが抗-Frizzled受容体抗体及び/又は抗-Frizzled受容体抗体フラグメントとの相互作用、例えばそれとの結合の不在下での機能的活性のレベルに比べて、少なくとも95%、例えば96%、97%、98%、99%又は100%、低められる場合、1又は2以上のFrizzled受容体の少なくとも1つの機能的活性を完全に阻止すると考えられる。抗-Frizzled受容体抗体及び/又は抗-Frizzled受容体抗体フラグメントは、抗-Frizzled受容体抗体及び/又は抗-Frizzled受容体抗体フラグメントの存在下での機能的活性のレベルが抗-Frizzled受容体抗体及び/又は抗-Frizzled受容体抗体フラグメントとの相互作用、例えばそれとの結合の不在下での機能的活性のレベルに比べて、少なくとも50%、例えば55%、60%、75%、80%、85%又は90%、低められる場合、1又は2以上のFrizzled受容体の少なくとも1つの機能的活性を部分的に阻止すると考えられる。
【0039】
定義
特にことわらない限り、本発明に関連して使用される科学技術用語は、当業者により通常、理解される意味を有するであろう。さらに、文脈により必要とされない限り、単数形の用語は、複数形も含み、そして複数形の用語は単数形も含むであろう。一般的に、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、及びタンパク質及びオリゴ-又はポリヌクレオチド化学及びハイブリダイゼーションに関連して及びそれらの技法に関連して使用される命名法は、当業界において良く知られており、そして通常使用されるものである。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、及び組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に関しては、標準技法が使用される。酵素反応及び精製技法は、製造業者の仕様に従って、又は当核技術分野において通常に達成されるようにして、又は本明細書に記載されるようにして、実施される。前述の技法及び手順は、一般的に、当業界において良く知られている従来の技法に従って、及び本明細書を通して引用され、そして議論される種々の一般的な及びより具体的な参考文献に記載されるようにして実施される。例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))を参照のこと。本明細書に記載される、分析化学、合成有機化学、及び医薬品及び製薬化学に関連して使用される命名法、及びそれらの実験手順及び技法は、良く知られており、そして一般的に当業界において使用される。化学合成、化学分析、医薬製剤、製剤化及び送達、及び患者の治療についての標準技法が用いられる。
【0040】
本発明に従って使用される場合、次の用語は、特にことわらない限り、次の意味を有することが理解されるであろう。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「抗体(antibody)」とは、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的活性部分、すなわち抗原を特異的に結合する(抗原と免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を意味する。「特異的に結合する(specifically bind)」又は「~と免疫反応する(immunoreacts with)」、又は「~に対して指図された(directed against)」とは、抗体が所望の抗原の1又は2以上の抗原決定基と反応し、そして他のポリペプチドとは反応しないか、又はより低い親和性(Kd>10-6)で結合することを意味する。抗体とは、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、dAb(ドメイン抗体)、一本鎖、Fab、Fab′及びF(ab′)2フラグメント、scFv及びFab発現ライブラリーを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0042】
基本的抗体構造単位は、テトラマーを含むことが知られている。各テトラマーは、2つの同一対のポリペプチド鎖から構成され、各対は1つの「L鎖」(約25kDa)及び1つの「H鎖」(約50-70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担当する約100-110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシル末端部分は、エフェクター機能を主に担当する不変領域を定義する。一般的に、ヒトから得られる抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgE及びIgDのいずれかに関し、それらは分子に存在するH鎖の性質によりお互い異なる。特定のクラスは、サブクラス、例えばIgG1、IgG2、及び他のものを有する。さらに、ヒトにおいては、L鎖は、κ鎖又はλ鎖であり得る。
【0043】
用語「モノクローナル抗体(monoclonal antibody)」(mAb)又は「モノクローナル抗体組成物(monoclonal antibody composition)」とは、本明細書において使用される場合、ユニークL鎖遺伝子生成物及びユニークH鎖遺伝子生成物から成る抗体分子の1つの分子種のみを含み抗体分子集団を言及する。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、前記集団の分子全てにおいて同一である。MAbは、それに対するユニーク結合親和性により特徴づけられる抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含む。
【0044】
一般的に、ヒトから得られる抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgE及びIgDのいずれかに関し、それらは分子に存在するH鎖の性質によりお互い異なる。特定のクラスは、サブクラス、例えばIgG1、IgG2、及び他のものを有する。さらに、ヒトにおいては、L鎖は、κ鎖又はλ鎖であり得る。
【0045】
用語「抗原-結合部位(antigen-binding site)」又は「結合部分(binding portion)」とは、抗原結合に関与する免疫グロブリン分子の一部を言及する。抗原結合部位は、H鎖(H)及びL鎖(L)のN-末端可変(V)領域のアミノ酸残基により形成される。「超可変領域(hyperrariable regions)」として言及される、H及びL鎖のV領域内の3つの高度に分岐したストレッチが、「骨格領域(framework regions)」又はFRとして知られている、より保存されたフランキングストレッチ間に介在する。従って、用語「FR」とは、免疫グロブリンにおける超可変領域間に天然において見出され、そしてその領域に隣接して存在するアミノ酸配列を言及する。抗体分子においては、L鎖の3つの超可変領域及びH鎖の3つの超可変領域が、抗原-結合表面を形成するために、立体空間でお互いに対して配置される。抗原結合表面は、結合される抗原の立体表面に相補的であり、そしてH鎖及びL鎖の個々の3つの超可変領域は、「相補性-決定領域(Complementarity-determining regions)」又は「CDR」として言及される。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))又は Chothia & Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987), Chothia et al. Nature 342:878-883 (1989)の定義に従う。
【0046】
本明細書において使用される場合、用語「エピトープ(epitope)」は、免疫グロブリン、scFv又はT-細胞受容体に対して特異的結合できる任意のタンパク質決定因子を包含する。用語「エピトープ」は、免疫グロブリン又はT-細胞受容体に対して特異的結合できる任意のタンパク質決定因子を包含する。エピトープ決定因子は通常、分子、例えばアミノ酸又は糖側鎖の化学的活性表面基から成り、そして通常、特異的立体構造特性、及び特異的電荷特性を有する。抗体は、解離定数が≦1μMである場合、例えば、≦100nM、好ましくは、≦10nM及びより好ましくは、≦1nMである場合、抗原を特異的に結合すると言われる。
【0047】
本明細書において使用される場合、用語「特異的結合(specific binding)」、「免疫学的結合(immunological binding)」及び「免疫学的結合性質(immunological binding properties)」とは、免疫グロブリン分子と、免疫グロブリンが特異的である抗原との間で生じるタイプの非共有相互作用を言及する。免疫学的結合相互作用の強度又は親和性は、相互作用の解離定数(Kd)で表され得、ここでより小さなKdがより高い親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合性質は、当業界において良く知られている方法を用いて定量化され得る。1つのそのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体形成及び解離の速度の測定を必要とし、ここでそれらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性及び両方向にその速度に等しく影響を及ぼす幾何学的パラメーターに依存する。従って、「オン速度定数(on rate constant)」 (Kon)及び「オフ速度定数(「off rate constant」)(Koff)の両者は、濃度、及び会合及び解離の実際の速度の計算により決定され得る。(Nature 361:186-87 (1993)を参照のこと)。Koff/Konの比率は、親和性に関係しないすべてのパラメーターの取り消しを可能にし、そして解離定数Kdに等しい。(一般的に、Davies et al. (1990) Annual Rev Biochem 59:439-473を参照のこと)。本発明の抗体は、当業者に知られているアッセイ、例えば放射性リガンド結合アッセイ又は類似するアッセイにより測定される場合、平衡結合定数(Kd)が、≦1μM、好ましくは、≦100nM、より好ましくは、≦10nM、及び最も好ましくは、≦100pM-約1pMである場合、Frizzled受容体に対して特異的に結合すると言われる。
【0048】
用語「単離されたポリヌクレオチド(isolated polynucleotide)」とは、本明細書において使用される場合、ゲノム、cDNA又は合成起源、又はそれらのいくつかの組合せのポリヌクレオチドを意味し、その起源により、「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)「単離されたポリヌクレオチド」が天然で見出される、ポリヌクレオチドのすべて又は一部に関連せず、(2)それが天然において連結されないポリヌクレオチドに操作可能的に連結されるか、又は(3)大きな配列の一部として、天然において存在しない。本発明のポリヌクレオチドは、配列番号4で示されるH鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子、例えば配列番号3の核酸分子、及び配列番号2で示されるL鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子、例えば配列番号1の核酸分子を含む。
【0049】
本明細書において言及される用語「単離されたタンパク質(isolated protein)」とは、cDNA、組換えRNA、又は合成起源又はそれらのいくつかの組合せのタンパク質を意味し、その起源又は誘導源により、「単離されたタンパク質」は、(1)天然において見出されるタンパク質とは関連せず、(2)同じ源からの他のタンパク質を有さず、(3)異なった種からの細胞により発現されるか、又は(4)天然において存在しない。
【0050】
用語「ポリペプチド(polypeptide)」とは、天然タンパク質フラグメント又はポリペプチドの配列の類似体を言及するための遺伝子用語として、本明細書において使用される。従って、天然タンパク質フラグメント及び類似体は、ポリペプチド属の種である。本発明のポリペプチドは、配列番号4で表わされるH鎖免疫グロブリン分子、及び配列番号2で表わされるL鎖免疫グロブリン分子、並びに、L鎖免疫グロブリン分子、例えばカッパL鎖免疫グロブリンと共に、H鎖免疫グロブリン分子を含む組合せにより形成される抗体分子を含み、そして逆もまた同様に、及びそれらのフラグメント及び類似体も含む。
【0051】
本明細書において使用される、用語「天然に存在する(naturally-occurring)」とは、目的に適用される場合、目的が天然において見出され得る事実を意味する。例えば、天然源から単離され得る生物(ウィルスを含む)に存在し、そして実験室においてヒトにより意図的に修飾されておらず、又は他方では、天然に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列を挙げることができる。
【0052】
用語「操作可能的に連結される(operably linked)」とは、本明細書において使用される場合、そのように記載される成分の位置が、それらの意図される様式で機能することを可能にする関係にあることを意味する。コード配列に「操作可能的に連結される」制御配列は、そのコード配列の発現が制御配列と適合できる条件下で達成されるような手段で連結される。
【0053】
用語「制御配列(control sequence)」とは、本明細書において使用される場合、連結されるコード配列の発現及びプロセッシングに影響を及ぼすのに必要であるポリヌクレオチド配列を意味する。そのような制御配列の性質は、原核生物における宿主生物に依存して異なり、そのような制御配列は一般的に、真核生物では、プロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列を含み、一般的に、そのような制御配列はプロモーター及び転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、その存在が発現及びプロセッシングのために必須であるすべての成分を、少なくとも含むよう意図され、そしてまた、その存在が好都合である追加の成分、例えばリーダー配列及び融合パートナー配列を含むことができる。用語「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」とは、本明細書において使用される場合、少なくとも10個の長さの塩基のヌクレオチドのポリマー、リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチド、又は何れかのタイプのヌクレオチドの修飾形を意味する。この用語は、単鎖及び二本鎖形のDNAを包含する。
【0054】
本明細書において言及される用語、「オリゴヌクレオチド」とは、天然に存在し、そして天然に存在しないオリゴヌクレオチド結合により一緒に連結される、天然に存在し、そして修飾されたヌクレオチドを包含する。オリゴヌクレオチドは、200個又はそれよりも少ない長さの塩基を一般的に含むポリヌクレオチドポリヌクレオチドサブセットである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、10-60個の長さの塩基、及び最も好ましくは、12、13、14、15、16、17、18、19又は20-40個の長さの塩基である。オリゴヌクレオチドは通常、プローブについては一本鎖であるが、但しオリゴヌクレオチドは、遺伝子変異体の構成への使用に関しては、二本鎖であり得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、センス又はアンチセンスの何れかのオリゴヌクレオチドである。
【0055】
本明細書において言及される用語「天然に存在するヌクレオチド(naturally occurring nucleotides)」は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを包含する。本明細書において言及される用語「修飾されたヌクレオチド(modified nucleotides)」は、修飾されたか又は置換された糖基等を有するヌクレオチドを含む。本明細書において言及される用語「オリゴヌクレオチド結合(oligonucleotide linkages)」は、オリゴヌクレオチド結合、例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデート、ホスホロンミデート及び同様のものを包含する。例えば、LaPlanche et al. Nucl. Acids Res. 14:9081 (1986); Stec et al. J. Am. Chem. Soc. 106:6077 (1984), Stein et al. Nucl. Acids Res. 16:3209 (1988), Zon et al. Anti Cancer Drug Design 6:539 (1991); Zon et al. Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, pp. 87-108 (F. Eckstein, Ed., Oxford University Press, Oxford England (1991)); Stec et al. 米国特許第5,151,510号; Uhlmann and Peyman Chemical Reviews 90:543 (1990)を参照のこと。オリゴヌクレオチドは、所望には、検出のための標識を含むことができる。
【0056】
用語「選択的にハイブリダイズする(selectively hybridize)」とは、本明細書において使用される場合、検出的に及び特異的に結合することを意味する。本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びそれらのフラグメントは、非特異的核酸への検出可能な結合の相当量を最少にするハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。高い堅縮条件が、当業界において知られているように、及び本明細書において論じられるように、選択的ハイブリダイゼーション条件を達成するために使用され得る。一般的に、本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びフラグメントと、目的の核酸配列との間の核酸配列相同性は、少なくとも80%であり、そしてより典型的には、好ましくは少なくとも85%、90%、95%、99%及び100%の上昇する相同性を有する。2つのアミノ酸配列は、それらの配列間に部分的又は完全な同一性が存在する場合、相同である。例えば、85%の相同性とは、アミノ酸の85%が、それらの2つの配列が最大一致のために整列される場合、同一であることを意味する。ギャップ(一致される2つの配列の何れかにおいて)は、5又はそれ以下の最大一致ギャップ長において許容され、そして2又はそれ以下のギャップ長がより好ましい。他方では及び好ましくは、2つのタンパク質配列(又は少なくとも30個の長さのアミノ酸の配列に由来するポリペプチド配列)は、この用語は本明細書において使用されるように、それらが成熟データマトリックス及び6又はそれ以上のギャップペナルティイーでのプログラムALIGNを用いて、5(標準偏差単位で)のアラインメント評点を有する場合、相同である。Dayhoff, M.O., in Atlas of Protein Sequence and Structure, pp. 101-110 (Volume 5, National Biomedical Research Foundation (1972)) and Supplement 2 to this volume, pp. 1-10を参照のこと。2つの配列又はその一部は、より好ましくは、それらのアミノ酸が、ALIGNプログラムを用いて最適に整列される場合、50%以上か又は50%、同一である場合、相同である。用語「~に対応する(corresponds to)」とは、本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列のすべて又は一部に対して相同であるか(すなわち、同一であるが、厳密に進化的には関連しない)、又はポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列に対して同一であることを意味する。対照的に、用語「~に対して相補的(complementary to)」とは、本明細書において使用される場合、その相補的配列が参照ポリヌクレオチド配列のすべて又は一部に対して相同であることを意味する。説明すると、ヌクレオチド配列「TATAC」は参照配列「TATAC」に対応し、そして参照配列「GTATA」に対して相補的である。
【0057】
次の用語は、複数のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列間の配列関係を説明するために使用される:「参照配列(reference sequence)」、「比較窓(comparison window)」、及び「実質的な同一性(substantial identity)」。「参照配列」は、参照配列が例えば、配列列挙に与えられる完全長cDNA又は遺伝子配列のセグメントとして、大きな配列のサブセットであり得るか、又は完全cDNA又は遺伝子配列を含むことができる、配列比較のための基礎として使用される定義された配列である。一般的に、参照配列は、少なくとも18個の長さのヌクレオチド、又は6個の長さのアミノ酸、頻繁には、少なくとも24個の長さのヌクレオチド又は8個の長さのアミノ酸、及びしばしば、少なくとも48個の長さのヌクレオチド又は16個の長さのアミノ酸である。2つのポリヌクレオチド又はアミノ酸配列は、それぞれ、(1)それらの2つの分子間で類似する配列(すなわち、完全ポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の一部)を含み、そして(2)2つのポリヌクレオチド又はアミノ酸配列間で相違する配列を、さらに含むことができるので、2つの(又はそれ以上)分子間の配列比較は典型的には、配列類似性の局部領域を同定し、そして比較するために、「比較窓」に対して2つの分子の配列を比較することにより実施される。「比較窓」とは、本明細書において使用される場合、少なくとも18の連続ヌクレオチド位置又は6個のアミノ酸の概念的セグメントを意味し、ここでポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列が少なくとも18個の連続ヌクレオチドは6個のアミノ酸配列の参照配列に比較され得、そして比較窓中のポリヌクレオチド配列の一部は、それら2つの配列の最適な整列のために、参照配列(付加又は欠失を含まない)に比較される場合、20%又はそれ以下の付加、欠失、置換、及び同様のもの(すなわち、ギャップ)を含むことができる。比較窓を整列するための配列の最適な整列は、Smith and Waterman Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needieman and Wunsch J . Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アルゴリズムにより、Pearson and Lipman Proc. Natl. Acad. Sci, (U.S.A.) 85:2444 (1988)の類似性検索法により、それらのアルゴリズムのコンピューター化された実行(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0におけるGAP, BESTFIT, FASTA, 及びTFASTA, (Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.), Geneworks, 又は MacVectorソフトウェアパッケージ)により、又は検査により実施され得、そして種々の方法により生成される最良のアルゴリズム(すなわち、比較窓に対する相同性の最高百分率をもたらす)が選択される。
【0058】
用語「配列同一性(sequence identity)」とは、2つのポリヌクレオチド又はアミノ酸配列が、比較窓に対して同一である(すなわち、ヌクレオチド対ヌクレオチド、又は残基対残基に基いて)ことを意味する。用語「配列同一性の百分率(percentage of sequence identity)」は、比較窓に対して、2つの最適に整列された配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U又はI)又は残基が、一致される位置の数を得るために、両配列において存在する位置の数を決定し、比較窓(すなわち、窓サイズ)における位置の合計数により、一致される位置の数を割算し、そしてその結果に100を乗算することにより計算され、配列同一性の百分率が得られる。用語「実質的な同一性(substantial identity)」とは、本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の特性を示し、ここでポリヌクレオチド又はアミノ酸は、少なくとも18個のヌクレオチド(6個のアミノ酸)位置の比較窓、時折、少なくとも24-48個のヌクレオチド(8-16個のアミノ酸)位置の比較窓に対して参照配列を比較して、少なくとも85%の配列同一性、好ましくは、少なくとも90-95%の配列同一性、より通常には、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含み、ここで配列同一性の百分率は、比較窓に対して参照配列の合計20%又はそれ以下である欠失又は付加を含むことができる配列に、参照配列を比較することにより計算される。参照配列は、大きな配列のサブセットであり得る。
【0059】
本明細書において使用される場合、20種の従来のアミノ酸及びそれらの略語は、慣用的用法に従う。Immunology - A Synthesis (2nd Edition, E.S. Golub and D.R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland7 Mass. (1991))を参照のこと。20種の従来のアミノ酸、非天然アミノ酸、例えばα-置換されたアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸及び他の非従来型アミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)もまた、本発明のポリペプチドのための適切な成分であり得る。非従来型アミノ酸の例は、次のものを包含する:4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N、N、N、N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、δ-N-メチルアルギニン及び他の類似するアミノ酸、及びイミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン)。本明細書において使用されるポリペプチド表記においては標準の使用法及び慣習によれば、左方向はアミノ末端方向であり、そして右方向はカルボキシ末端方向である。
【0060】
同様に、特にことわらない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側端は、5′末端であり、そして二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向は、5′方向として言及される。新生RNA転写体の5′から3′への付加の方向は、RNAと同じ配列を有するDNA鎖との転写方向配列と称され、そしてRNA転写体の5′から5′末端への方向は、「上流配列(upstream sequences)」、すなわちRNAと同じ配列を有するDNA鎖上の配列領域と称され、そしてRNA転写体の3′から3′末端への方向は、「下流配列(downstream sequences)」と称される。
【0061】
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的な同一性(substantial identity)」とは、2種のペプチド配列が、デフォルトギャップウェイト(default gap weights)を用いてプログラムGAP又はBESTFITにより最適に整列される場合、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは、少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性、及び最も好ましくは、少なくとも99%の配列同一性を共有することを意味する。
【0062】
好ましくは、同一でない残基位置は、保存性アミノ酸置換により異なる。
【0063】
保存性アミノ酸置換とは、類似する側鎖を有する残基の互換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸グループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸グループは、セリン及びトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸グループは、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸グループは、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノグループは、リシン、アルギニン及びヒスチジンであり;そして硫黄含有側鎖を有するアミノ酸グループは、システイン及びメチオニンである。好ましい保存性アミノ酸置換グループは次の通りである:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミン。
【0064】
本明細書において論じられる場合、抗体又は免疫グロブリン分子のアミノ酸配列における小さな変動が、本発明により包含されるよう意図され、但しアミノ酸配列における変動が少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、90%、95%、及び最も好ましくは、99%、維持されるべきである。特に、保存性アミノ酸置換が意図される。保存性置換は、それらの側鎖に関連するアミノ酸ファミリー内で生じるものである。遺伝子的にコードされるアミノ酸は一般的に、次のファミリーに分けられる:(1)酸性アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸であり;(2)塩基性アミノ酸は、リシン、アルギニンヒスチジンであり;(3)非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンであり;そして(4)非荷電極性アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンである。親水性アミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、セリン及びトレオニンを包含する。疎水性アミノ酸は、アラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン及びバリンを包含する。アミノ酸の他のファミリーは、次のものを包含する:(i)脂肪族-ヒドロキシファミリーである、セリン及びトレオニン;(ii)アミド含有ファミリーである、アスパラギン及びグルタミン;(iii)脂肪族ファミリーである、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;及び(iv)芳香族ファミリーである、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン、例えば、イソロイシン又はバリンによるロイシンの単離された置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸、セリンによるトレオニン、又は構造的に関連するアミノ酸によるアミノ酸の類似する置換が、特に、その置換が骨格部位内にアミノ酸を含まない場合、その得られる分子の結合又は性質に対して主要な影響を与えないであろうことを予測するのは合理的である。アミノ酸変化が機能的ペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド誘導体の比活性をアッセイすることにより、容易に決定され得る。アッセイは、本明細書において詳細に記載されている。抗体又は免疫グロブリン分子のフラグメント又は類似体は、当業者により容易に調製され得る。いくつかの実施形態によれば、フラグメント又は類似体のアミノ-及びカルボキシ-末端は、機能的ドメインの境界近くに存在する。構造及び機能ドメインは、公的又は独自の配列データベースに、ヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列を比較することにより、同定され得る。好ましくは、コンピューター化された比較方法が、既知構造及び/又は機能の他のタンパク質に存在する配列モチーフ又は予測されるタンパク質立体構造ドメインを同定するために使用され得る。既知の三次元構造に折りたたむタンパク質を同定する方法は知られている(Bowie et al. Science 253:164 (1991))。従って、前述の例は、当業者が本発明に従って構造的及び機能的ドメインを定義するために使用され得る配列モチーフ及び構造コンホメーションを認識できることを示す。
【0065】
好ましくは、アミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低め、(2)酸化に対する感受性を低め、(3)タンパク質複合体を形成するために結合親和性を変更し、(4)結合親和性を変更し、そして(5)そのような類似体の他の物理化学的マタハ機能的性質を付与するか、又は修飾するそれらの置換である。類似体は、天然に存在するペプチド配列以外の配列の種々のムテインを含むことができる。例えば、単一又は複数のアミノ酸置換(好ましくは、保存性アミノ酸置換)が、天然に存在する配列において(分子間接触を形成するドメイン外のポリペプチドの部分において)、行われ得る。保存性アミノ酸置換は、親配列の構造特性を実質的に変えるべきではない(例えば、アミノ酸置換は、親配列に存在するヘリックスを破壊するか又は親配列を特徴づける他のタイプの二次構造を分裂する傾向があるべきではない)。当技術分野で認識されるポリペプチドの二次及び三次構造の例は、タンパク質、構造及び分子の原則(Creighton, Ed., W. H. Freeman and Company, New York (1984));タンパク質構造の紹介(C. Branden and J. Tooze, eds., Garland Publishing, New York, N.Y. (1991));及びThornton et al. Nature 354:105 (1991)に記載されている。
【0066】
用語「ポリペプチドフラグメント(polypeptide fragment)」とは、本明細書において使用される場合、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端欠失を有するが、しかし残るアミノ酸配列が、例えば完全な長さのcDNA配列から推定される天然に存在する配列におけるその対応する位置と同一である、ポリペプチドを意味する。フラグメントは典型的には、少なくとも5、6、8又は10個の長さのアミノ酸、例えば、いくつかの実施形態によれば、少なくとも14個の長さのアミノ酸、いくつかの実施形態によれば、少なくとも20個の長さのアミノ酸、通常、少なくとも50個の長さのアミノ酸、及びいくつかの実施形態によれば、70個の長さのアミノ酸である。用語「類似体(analog)」とは、本明細書において使用される場合、推定されるアミノ酸配列の一部に対して実質的な同一性を有し、そして適切な結合条件下で1又は2以上のFrizzled受容体に対する特異的結合を有する、少なくとも25個のアミノ酸のセグメントから構成されるポリペプチドを意味する。典型的には、ポリペプチド類似体は、天然に存在する配列に対して保存性アミノ酸置換(又は付加又は欠失)を含む。類似体は、典型的には、少なくとも20個の長さのアミノ酸、例えば、いくつかの実施形態によれば、少なくとも50個又はそれ以上の長さのアミノ酸であり、そしてしばしば、完全な長さの天然に存在するポリペプチドと同じ長さであり得る。
【0067】
ペプチド類似体は、鋳型ペプチドの性質に類似する性質を有する非ペプチド薬剤として製薬業界において通常、使用される。それらのタイプの非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣物(peptide mimetics)」又は「ペプチド模倣物(peptidemimetics)」とも呼ばれる。Fauchere, J. Adv. Drug Res. 15:29 (1986), Veber and Freidinger TINS p.392 (1985); and Evans et al. J. Med. Chem. 30: 1229 (1987)。そのような化合物はしばしば、コンピューター化された分子モデリングの助けにより開発される。治療的有用なペプチドに構造的に類似するペプチド模倣物が、同等の治療又は予防効果を生成するために使用され得る。一般的に、ペプチド模倣物は、パラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的性質又は薬理学的活性を有するポリペプチド)、例えばヒト抗体に構造的に類似するが、しかし当業界において良く知られている方法により、-CH2NH-,-CH2S-、CH2-CH2-,-CH=CH-(シス及びトランス)、-COCH2-、CH(OH)CH2-及び-CH2SO2-から成る群から選択された結合により、任意に置換される1又は2以上のペプチド結合を有する。コンセンサス配列の1又は2以上のアミノ酸の同じタイプのD-アミノ酸(L-リシンの代わりにD-リシン)による体系的置換が、より安定したペプチドを生成するために使用され得る。さらに、コンセンサス配列又は実質的に同一のコンセンサス配列変動を含む制約されたペプチドが、当業界において知られている方法(Rizo and Gierasch Ann. Rev. Biochem. 61 :387 (1992))により;例えばペプチドを環状化する分子内ジスルフィド架橋を形成できる内部システイン残基を付加することにより、生成され得る。
【0068】
用語「剤(agent)」は、化合物、化合物の混合物、生体高分子、又は生体材料から製造される抽出物を示すために、本明細書において使用される。
【0069】
本明細書において使用される場合、用語「標識(label)」又は「標識された(labeled)」とは、例えば放射性標識されたアミノ酸の組込み、又はマーキングされたアビジン(例えば、光学的又は比色法により検出され得る蛍光マーカー又は酵素活性を含むストレプタビジン)により検出され得るビオチニル部分のポリペプチドへの結合による、検出可能マーカーの組込みを意味する。ポリペプチド及び糖タンパク質を標識する種々の方法が当業界において知られており、そして使用され得る。ポリペプチドのための標識の例は、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:放射性同位体又は放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FTTC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光、ビオチニル基、二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体のための結合部位、金属結合ドメイン、エピトープ標識)。いくつかの実施形態によれば、標識は、潜在的な立体障害を低めるために、種々の長さのスペーサーアームにより結合される。用語「薬剤又は薬物(pharmaceutical agent or drug)」とは、本明細書において使用される場合、患者に正しく投与される場合、所望の治療効果を誘発できる化合物又は組成物を意味する。
【0070】
用語「抗腫瘍剤(antineoplastic agent)」とは、ヒトにおける腫瘍、特に悪性(癌性)病変、例えば癌腫、肉腫、リンパ腫又は白血病の発生又は進行を阻害する機能的性質を有する剤を言及する。転移の阻害は、時折、抗腫瘍剤の性質である。
【0071】
本明細書において使用される場合、「実質的に純粋な(substantially pure)」とは、目的種が存在する主要種であり(すなわち、モル基準で、組成物中のいずれか他の個々の種よりも豊富である)、そして実質的に精製された画分が組成物であり、ここで、目的種が存在するすべての高分子種の少なくとも約50%(モル基準で)を占めることを意味する。
【0072】
一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物の存在するすべての高分子種の約80%以上、いくつかの実施形態によれば、約85%、90%及び99%以上を占めるであろう。最も好ましくは、目的種は、本質的に均質に精製され(組成物中の汚染種は、従来の検出法によっては検出され得ない)、ここで組成物は単一の高分子種から本質的に成る。
【0073】
本明細書における他の化学用語は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (Parker, S., Ed., McGraw-Hill, San Francisco (1985))により例示されるように、当業界における従来の用法に従って使用される。
【0074】
抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメント
モノクローナル抗体及びその抗原結合フラグメントは、Frizzled機能及び/又はFrizzled活性化を阻害する能力を有する。阻害は例えば、本明細書に記載される材料及び方法を用いて、決定される。
【0075】
本発明の典型的な抗体フラグメントは、例えば図1Cに示され、そして図1Dに示される配列によりコードされる配列を有するFabフラグメントを包含し、ここで可変L鎖相補性決定領域1(CDR L1又はVL CDR1)はアミノ酸配列SVSSA(配列番号392)を含み、そして可変L鎖相補性決定領域2(CDR L2又はVL CDR2)はアミノ酸配列SASSLYS(配列番号393)を含む。相補性決定領域(CDR)を包含するアミノ酸は、E.A. Kabat et al. (Kabat, EA, et al., Sequences of Protein of immunological interest, Fifth Edition, US Department of Health and Human Sendees, US Government Printing Office (1991 )を参照のこと)により定義される通りである。本発明の典型的なモノクローナル抗体は、例えば、図1A及び1Bに示されるL鎖及びH鎖針悦を有する抗体を含む。本発明の典型的なモノクローナル抗体は、図1Cに示され、そして図1Dに示される配列によりコードされる相補性決定領域(CDR)の組合せを有する抗体を含み、ここでCDR L1はアミノ酸配列SVSSA(配列番号392)を含み、そしてCDR L2は、アミノ酸配列SASSLYS(配列番号393)を含む。他方では、モノクローナル抗体は、それらの抗体又は抗体フラグメントと同じFrissledエピトープに結合する抗体である。
【0076】
当業者は、抗-Frizzled受容体抗体(例えば、モノクローナル抗体)が、前者が後者のコラーゲンへの結合を防止するかどうかを確認することにより、本発明の抗体又は抗体フラグメントと同じ特異性を有するかどうかを、過度の実験を行うことなく、決定することが可能であることを認識するであろう。本発明のモノクローナル抗体による結合の低下により示されるように、試験されるモノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体と競争する場合、それらの2種のモノクローナル抗体は、同じが、又は密接に関連するエピトープに結合する。
【0077】
モノクローナル抗体が本発明の抗体又は抗体フラグメントの特異性を有するかどうかを決定するための他の方法は、可溶性Frizzled受容体タンパク質と共に、本発明のモノクローナル抗体をプレインキュベートし、そして次に、試験されるモノクローナル抗体が、1又は2以上のFrizzled受容体を結合するその能力において阻害されるかどうかを決定するために、試験されるモノクローナル抗体を添加することである。試験されるモノクローナル抗体が阻害される場合、ほぼ確実に、それは本発明のモノクローナル抗体と同じか、又は機能的に同等のエピトープ特異性を有する。
【0078】
モノクローナル抗体及びその抗原結合フラグメントのスクリーニングはまた、例えば1又は2以上のFrizzled受容体と、Wntタンパク質リガンドとの間の結合を測定し、そして試験モノクローナル抗体が、Frizzled受容体と、Wntタンパク質リガンドとの間の結合を調節し、阻止し、阻害し、減じ、拮抗し、中和し、又は他方では、干渉することができるかどうかを決定することにより実施され得る。
【0079】
当業界内で知られている種々の方法が、1又は2以上のFrizzled受容体、又はその誘導体、フラグメント、類似体、相同体又は直系体(orthologs)に対して向けられたモノクローナル抗体の生成のために使用され得る(例えば、引用により本明細書に組込まれる、Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow E, and Lane D, 1 988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照のこと)。完全なヒト抗体は、CDRを含む、L鎖及びH鎖の両鎖の全配列がヒト遺伝子からである抗体である。そのような抗体は、本明細書においては、「ヒト抗体」又は「完全なヒト抗体」と称する。ヒトモノクローナル抗体は、例えば下記に提供される実施例に記載される方法を用いて、調製される。ヒトモノクローナル抗体はまた、トリオーマ技法;ヒトB-細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor, et al., 1983 Immunol Today 4: 72を参照のこと);及びヒトモノクローナル抗体を生成するためのEBVハイブリドーマ技法(Cole, et al., 1985 In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96を参照のこと)。ヒトモノクローナル抗体は、ヒトハイブリドーマを用いることにより(Cote, et al, 1 983. Proc Natl Acad Sci USA 80: 2026-2030を参照のこと)、又はインビトロでエプスタイン・バーウィルスによりヒトB-細胞を形質転換することにより(Cole, et al., 1985 In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96を参照のこと)、生成され得る。
【0080】
抗体は、良く知られている技法、例えば主に免疫血清のIgG画分を提供する、プロテインA又はプロテインGを用いての親和性クロマトグラフィーにより精製される。続いて、又は他方では、求められる免疫グロブリンの標的である特定の抗原又はそのエピトープがカラム上に固定され、免疫親和性クロマトグラフィーにより、免疫特異的抗体が精製される。免疫グロブリンの精製は、例えばD. Wilkinson (The Scientist, published by The Scientist, Inc., Philadelphia PA, Vol. 14, No. 8 (April 17, 2000), pp. 25-28)により論じられている。
【0081】
本発明の抗体及びフラグメントは、モノクローナル抗体である。Frizzled受容体活性、発現及び/又はWntシグナル伝達を調節し、阻止、阻害し、減じ、拮抗し、中和し、又は他方では、干渉するモノクローナル抗体は、膜結合された及び/又は可溶性Frizzled受容体、例えばネズミ、ラット又はヒトFrizzled受容体又はその免疫原性フラグメント、誘導体又は変異体により動物を免疫化することにより生成される。他方では、動物が、Frizzled受容体をコードする核酸分子を含むベクターによりトランスフェクトされた細胞により免疫化され、ここでベクターが発現され、そしてトランスフェクトされた細胞の表面に結合される。他方では、抗体は、1又は2以上のFrizzled受容体への結合のための抗体又は抗原結合ドメイン配列を含むライブラリーをスクリーニングすることにより得られる。このライブラリーは、例えば、アセンブリーされたファージ粒子の表面上に発現されるバクテリオファージコートタンパク質、及びファージ粒子内に含まれるコードDNA配列へのタンパク質又はペプチド融合体(すなわち、「ファージディスプレイライブラリー」)として、バクテリオファージにおいて調製される。次に、骨髄腫/B細胞融合体に起因するハイブリドーマが、1又は2以上のFrizzled受容体に対する反応性についてスクリーニングされる。
【0082】
モノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ方法、例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)により記載される方法を用いて調製される。ハイブリドーマ方法においては、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物が、典型的には、免疫化剤により免疫化され、その免疫化剤に特異的に結合するであろう抗体を生成するか、又は生成できるリンパ球が誘発される。他方では、リンパ球は、インビトロで、免疫化され得る。
【0083】
免疫化剤は、典型的には、タンパク質抗原、そのフラグメント、又はその融合タンパク質を含むであろう。一般的に、ヒト起源の細胞が所望される場合、何れの末梢血リンパ球でも使用されるか、又はヒト哺乳類源が所望される場合、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次に、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を形成するために、適切な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて、不死化細胞系により融合される(Coding, Monoclonal Antibodies : Principle and Practice. Academic Press, (1986) pp. 59-103)。不死化細胞系は通常、形質転換された哺乳類細胞、特に齧歯類、ウシ及びヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウス骨髄腫細胞系が使用される。ハイブリドーマ細胞が、融合されていない不死化細胞の増殖又は生存を阻害する、1又は2以上の物質を好ましくは含む適切な培養培地において培養され得る。例えば、親細胞が酵素ピポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマのための培養培地は典型的には、HGPRT-欠乏細胞の増殖を防止する物質である、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含むであろう(「HAT培地」)。
【0084】
好ましい不死化細胞系は、効果的に融合し、選択された抗体生成細胞による抗体の安定した高レベル発現を支持し、そして培地、例えばHAT培地に対して敏感であるそれらの細胞系である。より好ましい不死化細胞系は、Salk Institute Ceil Distribution Center, San Diego, California and the American Type Culture Collection, Manassas, Virginiaから得られるネズミ骨髄腫系である。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトへテロ骨髄腫細胞系もまた、モノクローナル抗体の生成のために記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133 :3001 (1984); Brodeur et al, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63)を参照のこと)。
【0085】
次に、ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地が、抗原に対して指図されるモノクローナル抗体の存在についてアッセイされ得る。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により生成されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈澱、又はインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により決定される。そのような技法及びアッセイは、当業界においては知られている。モノクローナル抗体の結合親和性は例えば、Munson and Pollard, Anal Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析により決定され得る。さらに、モノクローナル抗体の治療的適用においては、標的抗原に対して、高い程度の特異性及び高い結合親和性を有する抗体を同定することが重要である。
【0086】
所望するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンが制限希釈方法によりサブクローン化され、そして標準方法により増殖され得る(Coding, Monoclonal Antibodies : Principles and Practice. Academic Press, (1986) pp. 59-103を参照のきと)。この目的のための適切な培養培地は、例えばダルベッコ変性イーグル培地及びRPMI-1640培地を包含する。他方では、ハイブリドーマ細胞は、哺乳類動物において腹水としてインビボで増殖され得る。
【0087】
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製方法、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又は親和性クロマトグラフィーにより、培養培地又は腹水から単離されるか、又は精製され得る。
【0088】
モノクローナル抗体はまた、組換えDNA方法、例えば米国特許第4,816,567号に記載されるそれらの方法によっても製造され得る。モノクローナル抗体及びその抗原結合フラグメントをコードするDNAは、従来の方法を用いて(例えば、ネズミ抗体のH及びL鎖をコードする遺伝子に対して特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、容易に単離され、そして配列決定され得る。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい源として作用する。単離されるとすぐに、DNAが発現ベクター中に配置され、次にこれが、宿主細胞、例えば免疫グロブリンタンパク質を生成しない、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞中にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成が得られる。DNAはまた、例えば相同ネズミ配列の代わりに、ヒトH鎖及びL鎖不変ドメインのためのコード配列を置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrison, Nature 368, 812- 13 (1994)を参照のこと)、又は非免疫グロブリンポリペプチドのためのコード配列のすべて又は一部を、免疫グロブリンコード配列に共有結合することにより、修飾され得る。そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の不変ドメインにより置換され得るか、又は本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインにより置換され、キメラ性二価抗体が創造され得る。
【0089】
ヒト抗体及び抗体のヒト化
モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、完全ヒト抗体又はヒト化抗体を包含する。それらの抗体は、投与される免疫グロブリンに対してヒトによる免疫反応を係合しないで、ヒトへの投与のために適切である。
【0090】
抗-Frizzled受容体抗体又はフラグメントは例えば、下記に提供される実施例に記載される方法を用いて生成される。
【0091】
いくつかの方法においては、抗-Frizzled受容体抗体又はフラグメントは、例えばヒト配列のみを含む抗体を用いるファージディスプレイ方法を用いて開発される。そのようなアプローチは、当業界において、例えば引用により本明細書に組込まれる国際公開第92/01047号及び米国特許第6,521,404号において良く知られている。このアプローチにおいては、ランダム対のL鎖及びH鎖を担持するファージの組合せライブラリーが、天然源又は組換え源のFrizzled受容体又はそのフラグメントを用いてスクリーニングされる。別のアプローチにおいては、抗体又はフラグメントが、少なくとも1つの段階がヒトFrizzled受容体タンパク質により、トランスジェニック非ヒト動物を免疫化することを包含する方法により生成され得る。このアプローチにおいては、この異種非ヒト動物の内因性H鎖及び/又はκL鎖遺伝子座のいくつかが無効にされており、そして抗原に応答して免疫グロブリンをコードする遺伝子を生成するのに必要な再配置することができない。さらに、少なくとも1つのヒトH鎖遺伝子座及び少なくとも1つのヒトL鎖遺伝子座が動物中に安定してトランスフェクトされた。従って、投与される抗原に応答して、ヒト遺伝子座は、その抗原に対して免疫特異的なヒト可変領域をコードする遺伝子を提供するのに再配置する。従って、免疫化に基づいて、ゼノマウスは、完全ヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を生成する。
【0092】
異種非ヒト動物を生成するための種々の技法は、当業界において良く知られている。例えば、引用により、その全体を本明細書に組込まれる米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号を参照のこと。この一般的な方法は、1994年に公開されたように、最初のXenoMouse(登録商標)株の生成に関連して実証されている。引用により、その全体を本明細書に組込まれるGreen et al. Nature Genetics 7: 13 -21 ( 1994)を参照のこと。また、米国特許第6,162,963号、 第6,150,584号、 第6,1 14,598号、 第6,075, 181号 及び第 5,939,598号、及び日本特許第 3 068 180 B2号、第3 068 506 B2号及び第3 068 507 B2号 、及び欧州特許第0 463 151 B l 号、及び国際特許出願番号第WO 94/02602号、第WO 96/34096号、第WO 98/24893号、 第WO 00/76310号、及び関連するファミリーメンバーを参照のこと。
【0093】
別のアプローチにおいては、「ミニ遺伝子座(minilocus)」が利用されており、ここで外因性Ig遺伝子座が、Ig遺伝子座からの断片(個々の遺伝子)の包含を介して模倣されている。従って、1又は2以上のVH遺伝子、1又は2以上のDH遺伝子、1又は2以上のJH遺伝子、mu不変領域及び第二不変領域(このまし句は、γ不変領域)が、動物への挿入のためのコンストラクトに形成される。例えば、米国特許第5,545,806号; 第5,545,807号; 第5,591,669号; 第5,612,205号; 第5,625,825号; 第5,625,126号; 第5,633,425号; 第5,643,763号; 第5,661,016号; 第5,721,367号; 第5,770,429号; 第5,789,215号; 第5,789,650号; 第5,814,318号; 第5,877, 397号; 第5,874,299号; 第6,023,010号; 及び 第6,255,458号; 及び欧州特許第0 546 073 Bl号 ;及び国際特許出願番号第WO 92/03918号; 第WO 92/22645号;第WO 92/22647号; 第WO 92/22670号;第WO 93/12227号;第WO 94/00569号;第WO 94/25585号; 第WO 96/14436号; 第WO 97/13852号及び第WO 98/24884号及び関連するファミリーメンバーを参照のこと。
【0094】
微小細胞融合を介して、染色体の大きな断片又は全染色体が導入されているマウスからのヒト抗体の生成がまた、実証されている。欧州特許出願番号第773288号及び第843961号を参照のこと。
【0095】
ヒト抗-マウス抗体(HAMA)応答が、キメラ又は他方では、ヒト化抗体を調製するために業界を先導して来た。キメラ抗体はヒト不変領域及び免疫可変領域を有するが、特定のヒト抗-キメラ抗体(HACA)応答が特に、抗体の慢性的又は複数回用量利用下で観察されるであろうことが予測される。従って、HAMA又はHACA応答の懸念及び/又は影響を弱めるか又は他方では軽減するために、1又は2以上のFrizzled受容体に対して十分なヒト抗体を提供することが所望される。
【0096】
低められて免疫原性を有する抗体の生成もまた、適切なライブラリーを用いて、ヒト化、キメラ化及びディスプレイ技法を介して達成される。ネズミ抗体又は他の種からの抗体がまた、当業界において知られている技法を用いて、ヒト化又は霊長類化され得ることは理解されるであろう。例えば、Winter and Harris Immunol Today 14:43 46 ( 1993)及び Wright et al. Crit, Reviews in Immunol. 12125 -168 (1992)を参照のこと。目的の抗体は、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメイン及び/又は骨格ドメインを、その対応するヒト配列により置換するために組換えDNA技法により操作され得る(国際公開第92102190 号、及び米国特許第5,530,101号; 第5,585,089号; 第5,693,761号; 第5,693,792号; 第 5,714,350号; 及び 第5,777,085号を参照のこと)。また、キメラ性免疫グロブリン遺伝子の構成のためへのIg cDNAの使用は、当業界において知られている(Liu et al. P.N.A.S. 84:3439 (1987) 及びJ. Immunol. 139:3521 (1987))。mRNAは、ハイブリドーマ又は抗体を生成する他の細胞から単離され、そしてcDNAを生成するために使用される。目的のcDNAは、特定のプライマーを用いて、ポリメラーゼ鎖反応により増幅され得る(米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号)。他方では、ライブラリーが製造され、そしてスクリーンされ、目的の配列が単離される。次に、抗体の可変領域をコードするDNA配列が、ヒト不変域配列に融合される。ヒト不変領域の配列は、Kabat et al. (1991 ) Sequences of Proteins of immunological Interest, N.I.H. publication no. 91-3242に見出され得る。ヒトC領域遺伝子は、既知クローンから容易に利用できる。アイソタイプの選択は、所望するエフェクター機能、例えば補体結合、又は抗体依存性細胞毒性における活性により導かれるであろう。好ましいアイソタイプは、IgG1、IgG3及びIgG4である。ヒトL鎖不変領域(κ又はλ)が使用され得る。次に、キメラ性ヒト化抗体は、従来の方法により発現される。
【0097】
抗体フラグメント、例えばFv,F(ab′)2及びFabは、例えばプロテアーゼ又は化学的切断による、損なわれていないタンパク質の切断により生成され得る。他方では、切断された遺伝子が企画される。例えば、F(ab′)2フラグメントの一部をコードするキメラ遺伝子が、H鎖のCH1ドメイン及びヒンジ領域、続いて、切断された分子を生成するために、翻訳停止コドンをコードするDNA配列を含む。
【0098】
H及びL J領域のコンセンサス配列は、ヒトC領域セグメントへのV領域セグメントの続く連結のためにJ領域中に有用な制限部位を導入するためのプライマーとしての使用のためのオリゴヌクレオチドを企画するために使用され得る。C領域cDNAは、ヒト配列における類似する位置に制限部位を配置するために部位特異的突然変異誘発により修飾され得る。
【0099】
発現ベクターは、プラスミド、レトロウィルス、YAC、EBV由来のエピソーム及び同様のものを包含する。便利なベクターは、任意のVH又はVL配列が容易に挿入され、そして発現され得るよう操作される適切な制限部位と共に、機能的に完全なヒトCH又はCL免疫グロブリン配列をコードするベクターである。そのようなベクターにおいては、スプライシングが通常、挿入されたJ領域におけるスプライスドナー部位と、ヒトC領域に先行するスプライス受容体部位との間で、及びまた、ヒトCHエクソン内に存在するスプライス領域で生じる。ポリアデニル化及び転写停止は、コード領域の下流の天然の染色体部位で生じる。得られるキメラ抗体は、任意の強いプロモーター、例えばレトロウィルスLTR、例えばSV-40初期プロモーター(Okayama et al. Mol. Cell Bio. 3:280 (1983))、ラウス肉腫ウィルスLTR(Gorman et al. P.N.A.S, 79:6777 (1982))、及びモロニーマウス白血病ウィルスLTR(Grosschedl et al. Cell 41 :885 (1985))に連結され得る。また、理解されるように、天然のIgプロモーター及び同様のものが使用され得る。
【0100】
さらに、ヒト抗体、又は他の種からの抗体は、ディスプレイタイプ技法、例えばファージディスプレイ、レトロウィルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、及び他の技法(但し、それらだけには限定されない)を通して、当業界において良く知られている技法を用いて生成され得、そして得られる分子は、当業界において良く知られている技術である、追加の成熟、例えば親和性成熟にゆだねられ得る。Wright el al. Crit, Reviews in Immunol 12125-168 (1992)、 Hanes and Pluckthun PNAS USA 94:4937-4942 (1997) (リボソームディスプレイ)、Parmley and Smith Gene 73 :305-318 ( 1988) (ファージディスプレイ)、Scott, TIBS, vol. 17:241-245 (1992), Cwirla et al. PNAS USA 87:6378-6382 (1990), Russel et al. Nucl. Acids Research 21 : 1081- 1085 (1993), Hoganboom et al Immunol Reviews 130:43-68 (1992), Chiswefl and MeCafferty TIBTECH; 10:80-8A (1992)及び米国特許第5,733,743号。ディスプレイ技法がヒトでない抗体を生成するために使用される場合、そのような抗体は上記のようにしてヒト化され得る。
【0101】
それらの技法を用いて、抗体は、Frizzled受容体-発現細胞、可溶性形の1又は2以上のFrizzled受容体又はその組合せ、そのエピトープ又はペプチド、及び発現ライブラリーに生成され得(例えば、米国特許第5,703、0.57号を参照のこと)、その後、本明細書に記載される活性について、上記のようにしてスクリーンされ得る。
【0102】
本発明の抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメントは、上記一本鎖抗体をコードするDNAセグメントを含むベクターにより発現され得る。
【0103】
それらは、ベクター、リポソーム、裸DNA、アジュバント支援DNA、遺伝子銃、カテーテル、等を包含することができる。ベクターは、標的化部分(例えば、細胞受容体に対するリガンド)及び核酸結合部分(例えば、ポリリシン)を有する、国際公開第93/64701号に記載されるような化学的接合体、ウィルスベクター(例えば、DNA又はRNAウィルスベクター)、標的部分(例えば、標的細胞に対して特異的な抗体)及び核酸結合部分(例えば、プロタミン)を含む融合タンパク質である、PCT/US95/02140号(国際公開第95/22618号)に記載されるような融合タンパク質、プラスミド、ファージ、等を包含する。ベクターは、染色体、非染色体性又は合成性であり得る。
【0104】
好ましいベクターは、ウィルスベクター、融合タンパク質及び化学的接合体を包含する。レトロウィルスベクターは、モロニーマウス白血病ウィルスを包含する。DNAウィルスベクターが好ましい。それらのベクターは、ポックスベクター、例えばオルトポックス又はアビポックスベクター、ヘルペスウィルスベクター、例えば単純ヘルペスIウィルス(HSV)ベクター(Gelier, A. I. et al., J. Neurochem, 64:487 (1995); Lim, F., et al, in DNA Cloning: Mammalian Systems, D. Glover, Ed. (Oxford Univ. Press, Oxford England) (1995); Geller, A. L et al, Proc Natl. Acad. Sci.: U.S.A. 90:7603 (1993); Geller, A. I., et al, Proc Natl. Acad. Sci USA 87: 1 149 (1990)を参照のこと)、アデノウィルスベクター(LeGal LaSalle et al, Science, 259:988 (1993); Davidson, et al, Nat. Genet 3:219 (1993): Yang, et al., J. Virol. 69:2004 (1995)を参照のこと)、及びアデノ関連ウィルスベクター(Kaplitt, M. G. et al, Nat. Genet. 8: 148 ( 1994)を参照のこと)を包含する。
【0105】
ポックスウィルスベクターは、遺伝子を、細胞の細胞質に導入する。アビポックスウィルスは、核酸の短期発現のみをもたらす。アデノウィルスベクター、アデノ関連ウィルスベクター及び単純ヘルペスウィルス(HSV)ベクターは、核酸を神経細胞中に導入するために好ましい。アデノウィルスベクターは、アデノ関連ウィルス(約4ヶ月)よりも短い期間発現(約2ヶ月)をもたらし、これはHSVベクターよりも短い。選択される特定のベクターは、標的細胞及び処理される条件に依存するであろう。導入は、標準技法、例えば感染、トランスフェクション、トランスダクション又は形質転換によってであり得る。遺伝子導入のモードの例は、例えば、裸DNA、CaPO4沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション及びウィルスベクターを包含する。
【0106】
ベクターは、何れか所望の標的細胞を実質的に標的化するために使用され得る。例えば、定位注入が、ベクター(例えば、アデノウィルス、HSA)を、所望する位置に向けるために使用され得る。さらに、粒子は、ミニポンプ注入システム、例えばSynchroMed注入システムを用いて、脳室内(icv)注入により送達され得る。対流と呼ばれる、大流動に基く方法はまた、脳の拡張領域への大きな分子の送達で有効であることが分かっており、そして標的細胞へのベクターの送達においても有用である。(Bobo et al, Proc. Natl Acad. Sci. USA 91 :2076-2080 ( 1994); Morrison et al, Am. J. Physiol 266:292-305 (1994)を参照のこと)。使用され得る他の方法は、カテーテル、静脈内、非経口、腹腔内及び皮下注入、及び経口投与又は他の既知投与路を包含する。
【0107】
それらのベクターは、種々の方法で使用され得る大量の抗体を発現するために使用され得る。例えば、サンプル中の1又は2以上のFrizzled受容体の存在を検出するのに使用される。抗体はまた、Frizzled受容体関連活性に結合し、そして破壊しようとするためにも使用され得る。
【0108】
技法が、本発明の抗原性タンパク質に対して特異的な一本鎖抗体の生成のために適合され得る(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)。さらに、方法が、タンパク質、又はその誘導体、フラグメント、類似体又は相同体に対して所望する特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの急速且つ効果的な同定を可能にする、Fab発現ライブラリー(例えば、Huse, et al., 1989 Science 246: 1275-1281を参照のこと)の構成のために適合され得る。タンパク質抗原に対するアイソタイプを含む次のような抗体フラグメントが、当業界において知られている技法により生成されるが、但しそれらだけには限定されない:(i)F(ab′)2フラグメントは、抗体分子のペプシン消化により生成され;(ii)Fabフラグメントは、F(ab′)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成され;(iii)Fabフラグメントは、ペプシン及び還元剤による抗体分子の処理により生成され;そして(iv)Fvフラグメントは、当業界において知られている技法により生成される。
【0109】
本発明はまた、Fv、Fab、Fab′及びF(ab′)2抗体-Frizzled受容体抗体フラグメント、一本鎖抗-Frizzled受容体抗体、二重特異的抗-Frizzled受容体抗体、及びヘテロ接合抗-Frizzled受容体抗体を包含する。
【0110】
二重特異的抗体は、少なくとも2種の異なった抗原に対する結合特異性を有する抗体である。本発明の場合、結合特異性の1つは、Frizzled受容体又はFrizzled受容体の組合せに対してである。第2の結合標的は、何れか他の抗原であり、そして好都合には、細胞表面タンパク質又は受容体、又は受容体サブユニットである。
【0111】
二重特異的抗体の製造方法は、当業界において知られている。従来、二重特異的抗体の組換え生成は、2種の免疫グロブリンH鎖/L鎖対の同時発現に基かれ、ここで2種のH鎖は異なった特異性を有する(Milstein and Cuelio, Nature, 305:537-539 (1983))。免疫グロブリンH及びL鎖のランダム組合せのために、それらのハイブリドーマ(クワドローマ)は、10種の異なった抗体分子の可能性ある混合物を生成し、それらのうち、1つのみが正しい二重特異的構造を有する。正しい分子の精製は通常、親和性クロマトグラフィー工程により達成される。類似する方法は、1993年5月13日に公開された国際公開第93/08829号、及びTraunecker et al, EMBO I, 10:3655-3659 ( 1991)に開示されている。
【0112】
所望する結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン不変ドメイン配列に融合され得る。ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリンH鎖不変ドメインとの融合体が好ましい。融合体の少なくとも1つに存在するL鎖結合のために必要な部位を含む第1H鎖不変領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリンH鎖融合体及び所望には、免疫グロブリンL鎖をコードするDNAが、別々の発現ベクター中に挿入され、そして適切な宿主生物中に同時トランスフェクトされる。二重特異的抗体の生成についてのさらなる詳細については、例えばSures et al, Methods in Enzymology, 121 :210 (1986)を参照のこと。
【0113】
国際公開第96/27011号に記載される別のアプローチによれば、1対の抗体分子間の界面が、組換え細胞培養物から回収されるヘテロダイマーの百分率を最大にするよう構築され得る。好ましい界面は、抗体不変ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法においては、第1抗体分子の界面からの1又は2以上のアミノ酸側鎖が、大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)により置換される。大きな側鎖と同一であるか又は類似する相補的「キャビティ(cavities)」が、大きなアミノ酸側鎖を小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はトレオニン)により置換することにより、第二抗体分子の界面上に創造される。これは、他の所望しない最終生成物、例えばホモダマーに対してヘテロダイマーの収量を高めるための機構を提供する。
【0114】
二重特異的抗体は、完全長抗体又は抗体フラグメント(例えば、F(ab′)2二重特異的抗体)として調製され得る。抗体フラグメントから二重特異的抗体の生成のための技法は、文献に記載されている。例えば、二重特異的抗体は、化学結合を用いて調製され得る。Brennan et al., Science 229:81(1985)は、損なわれていない抗体がF(ab′)2フラグメントを生成するためにタンパク質分解的に切断される手順を記載している。それらのフラグメントは、ビシナルジチオールを安定化し、そして分子間ジスルフィド形成を妨げるためにジチオール錯化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元される。次に、生成されるFab′フラグメントが、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に転換される。次に、Fab′-TNB誘導体の1つが、メルカプトエチルアミンによる還元によりFab′-チオールに再転換され、そして等モル量の他のFab′-TNB誘導体と共に混合され、二重特異的抗体が形成される。生成される二重特異的抗体は、酵素の選択的固定化のための剤として使用され得る。
【0115】
さらに、FAb′フラグメントは、E.コリ(E.coli)から直接、回収され、そして二重特異的抗体を形成するために、化学的にカップリングされ得る。Shaiaby et al., J. Exp. Med, 175:217-225 (1992)は、完全にヒト化された二重特異的抗体F(ab′)2分子の生成を記載している。各Fab′フラグメントは、E.コリから別々に分泌され、そして二重特異的抗体を形成するために、インビトロで指図された化学的カップリングにゆだねられた。このようにして形成された二重特異的抗体は、ErbB2受容体及び正常ヒトT細胞を過剰発現する細胞に結合することができ、そしてヒト乳腫瘍標的に対するヒト細胞毒性リンパ球の溶解活性を誘発することができた。
【0116】
組換え細胞培養物から直接的に、二重特異的抗体フラグメントを製造し、そして単離するための種々の技法がまた記載されている。例えば、二重特異的抗体は、ロイシンジッパーを用いて生成されて来た(Kostelny et al., J. Immunol 148(5): 1547-1553 (1992))。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合により2種の異なった抗体のFab部分に連結された。抗体穂もダイマーが、モノマーを形成するために、ヒンジ領域で還元され、そして次に、抗体へテロダイマーを形成するために、再酸化された。この方法はまた、抗体ホモダイマーの生成のためにも利用され得る。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)により記載される「ダイアボディー(diabody)」技法は、二重特異的抗体フラグメントを製造するための別の機構を提供して来た。このフラグメントは、同じ鎖上の2種のドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーにより、L鎖可変ドメイン(VL)に連結されるH鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、1つのフラグメントのVH及びVLドメインは、別のフラグメントの相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成され、それにより、2種の抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)ダイマーの使用による二重特異的フラグメントの別の製造方法がまた報告されている。Gruber et al., J. Immunol. 152:5368 (1994)を参照のこと。
【0117】
複数の原子価を有する抗体が企画される。例えば、三重特異的抗体が調製され得る。Tutt et al., J. Immunol. 147:60 (1991)。
【0118】
典型的な二重特異的抗体は、2種の異なったエピトープに結合することができ、少なくともその1つは、本発明のタンパク質抗原に起因する。他方では、免疫グロブリン分子の抗-抗原性アームが、特定抗原を発現する細胞に細胞防御機構を集中するよう、白血球上のトリガー分子、例えばT-細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28又はB7)、IgGのためのFc受容体(FcγR)、例えばFcyRI (CD64)、 FcyRII (CD32) 及び FcyRIH (CD 16)に結合するアームとも組合わされ得る。二重特異的抗体はまた、特定抗原を発現する細胞に細胞毒性剤を導くために使用され得る。それらの抗体は、抗原結合アーム、及び細胞毒性剤、又は放射性核腫キレート剤、例えばEOTUBE、DPTA、DOTA又はTETAを結合するアームを有する。別の目的の二重特異的抗体は、本明細書に記載されるタンパク質抗原を結合し、そしてさらに、組織因子(TF)を結合する。
【0119】
ヘテロ接合抗体はまた、本発明の範囲内にある。ヘテロ接合抗体は、2種の共有結合された抗体から構成される。例えば、そのような抗体は、所望しない細胞に免疫系細胞を標的化するために(米国特許第4,676,980号を参照のこと)、及びHIV感染の治療のために(国際公開第91/00360号;第92/200373号;欧州特許第03089号を参照のこと)、提案されて来た。合成タンパク質化学においては公知の方法、例えば架橋剤を包含するそれらの方法を用いて、インビトロで調製され得ることが意図される。例えば、免疫毒性は、ジスルフィド交換反応を用いて、又はチオエーテル結合を形成することにより構成され得る。このための適切な試薬の例は、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデート及び米国特許第4,676,980号に開示されるそれらを包含する。
【0120】
異常Frizzled受容体活性化及び/又は活性に関連する疾患及び障害の治療における抗体の有効性を増強するために、エフェクター機能に関して本発明の抗体を修飾することが所望される。例えば、システイン残基がFc領域中に導入され、それにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にされる。このようにして生成されたヘテロダイマー抗体は、改善された内在化能力及び/又は高められた補体媒介細胞死滅及び抗体依存性細胞毒性(ADCC)を有する。(Caron et al., J. Exp Med., 176: 1191-1195 (1992) 及び Shopes, J. Immunol., 148: 2918-2922 (1992)を参照のこと)。他方では、二重Fc領域を有し、そしてそれにより、増強された補体溶解及びADCC能力を有することができる抗体が、構築され得る。(Stevenson et al., Anti-Cancer Drug Design, 3: 219-230 (1989)を参照のこと)。
【0121】
本発明はまた、細胞毒性剤、例えばトキシン(例えば、細菌、菌類、植物又は動物起源の酵素的活性トキシン、又はそのフラグメント)、又は放射性同位体(すなわち、放射性接合体)に接合される抗体を含む免疫接合体にも関する。
【0122】
使用され得る酵素的活性毒素及びそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌からの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP-S)、ゴーヤー(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロトン、サポナリア・オフィシナリス(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンを包含する。種々の放射性核種が放射性接合された抗体の生成のために利用できる。例としては、212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reを挙げることができる。
【0123】
抗体及び細胞毒性剤の接合体は、種々の二官能タンパク質-カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル) ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて製造される。例えば、リシン免疫毒素がVitetta et al., Science 238: 1098 (1987)に記載のようにして調製され得る。14C-標識された1-イソチオシアネートベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、抗体への放射性核種の接合のための典型的なキレート剤である。(国際公開第94/11026号を参照のこと)。
【0124】
当業者は、多くの種類の可能性ある部分が、得られる抗体及びその抗原結合フラグメントにカップリングされ得ることを認識するであろう(例えば、“Conjugate Vaccines”, Contributions to Microbiology and Immunology, J. M. Cruse and R. E. Lewis, Jr (eds), Carger Press, New York, (1989)を参照のこと、この全内容は、引用により本明細書に組込まれる)。
【0125】
カップリングは、抗体及び他の部分がそれらのそれぞれの活性をできるだけ長く保持するよう、2つの分子を結合するであろう任意の化学反応により達成される。この結合は、多くの化学機構、例えば共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合及び錯体形成を包含することができる。しかしながら、好ましい結合は共有結合である。共有結合は、既存の側鎖の直接的縮合により又は外部架橋分子の取り組みにより達成され得る。多くの二価又は多価結合剤が、タンパク質分子、例えば本発明の抗体を、他の分子にカップリングすることにおいて有用である。例えば、代表的なカップリング剤は、有機化合物、例えばチオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼン及びヘキサメチレンジアミンを包含することができる。この列挙は、当業界において知られている種々の種類のカップリング剤を網羅することを意図するものではなく、むしろ、より一般的なカップリング剤の例である。(Killen and Lindstrom, Jour. Immun. 133:1335-2549 (1984); Jansen et al., Immunological Reviews 62:185-216 (1982); 及び Vitetta et al., Science 238:1098 (1987)を参照のこと)。
【0126】
好ましいリンカーは、文献に記載されている。(例えば、MBS(M-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)の使用を記載する、Ramakrishnan, S. et al., Cancer Res. 44:201-208 (1984)を参照のこと)。また、オリゴペプチドリンカーにより抗体にカップリングされる、ハロゲン化されたアセチルヒドラジド誘導体の使用を記載する米国特許第5,030,719号も参照のこと。特に適切なリンカーは、次のものを包含する:(i)EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミド塩酸塩;SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジル-ジチオ)-トルエン(Pierce Chem. Co., カタログ番号(21558G));(ii)SPDP(スクシンイミジル-6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem. Co. カタログ番号21651G);(iii)SPDP(スクシンイミジル-6[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem. Co., カタログ番号 #216510);(iv)スルホ-LC-SPDP(スルホスクシンイミジル-6-[3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]-ヘキサノエート(Pierce Chem. Co. カタログ番号2165-G);及び(v)EDCに接合されるスルホ-NHS(N-ヒドロキシスルホ-スクシンイミド)(Pierce Chem. Co., カタログ番号#24510)。
【0127】
上記に記載されるリンカーは、異なった属性を有する成分を含み、従って、異なった物理-化学性質を有する接合体を導く。例えば、アルキルカルボキシレートのスルホ-NHSエステルは、芳香族カルボキシレートのスルホ-NHSエステルよりも、より安定性である。NHS-エステル含有リンカーは、スルホ-NHSエステルよりも低い安定性である。さらに、リンカーSMPTは、立体的ヒンダードジスルフィド結合を含み、そして増強された安定性を有する接合体を形成することができる。ジスルフィド結合は一般的に、ジスルフィド結合はインビトロでも切断され、低い利用可能な接合体をもたらすので、他の結合よりも低い安定性である。スルホ-NHSは特に、カルボジイミドカップリングの安定性を増強することができる。カルボジイミドカップリング(例えば、EDC)は、スルホ-NHSと組合して使用される場合、カルボジイミドカップリング反応のみよりも、加水分解に対してより耐性であるエステルを形成する。
【0128】
本明細書に開示される抗体はまた、免疫リポソームとして製剤化され得る。抗体を含むリポソームは、当業界において知られている方法、例えばEpstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwang et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980); 及び米国特許第4,485,045号 及び米国特許第4,544,545号に記載される方法により調製される。向上された循環時間を有するリポソームが、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0129】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG-誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いて、逆相蒸発方法により生成され得る。リポソームは、所望する直径を有するリポソームを生成するために、定義された孔サイズのフィルターを通して押出される。本発明の抗体のFab′フラグメントは、ジスルフィド-交換反応を介して、Martin et al., J. Biol. Chem., 257: 286-288 (1982)に記載されるリポソームに結合され得る。
【0130】
Frizzled受容体に対する抗体の使用
本発明に従っての治療実態の投与が、改善された伝達、送達、耐性及び同様のものを提供するために製剤中に組込まれる、適切な担体、賦形剤及び他の剤と共に投与されるであろうことは理解されるであろう。多数の適切な製剤は、全ての薬剤師に知られている処方に見出され得る:Blaug, Seymour による、Remington’s Pharmaceutical Sciences (15th ed, Mack Publishing Company, Easton, PA (1975)), 特に 、Chapter 87。それらの製剤は例えば、粉末、ペースト、軟膏、ジェリー、ワックス、オイル、脂質、脂質(カチオン又はアニオン性)含有小胞(例えば、リポフェクチン(登録商標))、DNA接合体、無水吸収性ペースト、水中油及び油中水エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル及び半固体混合物含有カーボワックスを包含する。前述の混合物の何れでも、本発明に従っての治療及び療法において適切であるが、但し、製剤中の活性成分は、製剤により不活性化されず、そして製剤は投与経路と生理学的に適合し、且つ許容できるべきである。また、薬剤師に良く知られている、製剤、賦形剤及び担体に関連する追加の情報については、またBaldrick P. “Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance.” Regul. Toxicol Pharmacol. 32(2):210-8 (2000), Wang W. “Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.” Int. J. Pharm. 203(1-2):1-60 (2000), Charman WN “Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery-some emerging concepts.” J Pharm Sci.89(8):967-78 (2000), Powell et al. “Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA J Pharm Sci Technol. 52:238-311 (1998)及びこそこにおける引用文献を参照のこと。
【0131】
1つの実施形態によれば、本発明のモノクローナル抗体を含む、抗体及びその抗原結合フラグメントは、治療剤として使用され得る。そのような剤は一般的に、対象における異常Frizzled受容体活性及び/又は活性化に関連する疾患又は病状を診断し、予後し、モニターし、治療し、緩和し、そして/又は防止するために使用されるであろう。治療法は、標準方法を用いて、異常Frizzled受容体活性に関連する疾患又は障害、例えば癌又は炎症障害を有する(又は発症する危険性がある)対象、例えばヒト患者を同定することにより実施される。抗体製剤、好ましくはその標的抗原に対して高い特異性及び親和性を有する製剤が対象に投与され、そして一般的に、標的とのその結合により影響を及ぼすであろう。抗体の投与は、標的(例えば、1又は2以上のFrizzled受容体)の機能を抑制するか、阻害するか、又は干渉することができる。抗体の投与は、天然において結合する内因性リガンド(例えば、コラーゲン)による標的(例えば、1又は2以上のFrizzled受容体)の結合を抑制し、阻害し又は干渉することができる。抗体の投与は、1又は2以上のFrizzled受容体の1又は2以上の生物学的活性を調節し、阻止し、阻害し、減じ、拮抗し、中和し、又は他方では、干渉することができる。
【0132】
異常Frizzled受容体活性、活性化、発現及び/又はWntシグナル伝達に関連する疾患又は障害は、癌及び炎症性障害を包含する。
【0133】
治療的有効量の本発明の抗体とは、一般的に、治療目的を達成するのに必要な量に関する。上述のように、これは、抗体と、特定の場合、標的の機能を妨害するその標的抗原との間の結合相互作用であり得る。投与される必要がある量は、さらに、その特異的抗原に対する抗体の結合親和性に依存し、そしてまた、投与される抗体が、それが投与される他の対象の自由体積から枯渇される速度に依存するであろう。本発明の抗体又は抗体フラグメントの治療的有効用量の通常の範囲は、非制限的例によれば、約0.1mg/kg体重~約50mg/kg体重であり得る。通常の投与頻度は例えば、週2度~週1度であり得る。
【0134】
治療の有効性は、特定の癌及び/又は炎症関連障害を診断するか又は治療するための何れか既知の方法に対応して決定される。癌及び/又は炎症関連障害の1又は2以上の症状の軽減は、抗体が臨床的有益性を与えることを示唆する。
【0135】
所望する特異性を有する抗体のスクリーニング方法は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び当技術分野で知られている他の免疫学的媒介技術を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0136】
別の実施形態によれば、1又は2以上のFrizzled受容体に対して向けられる抗体及びフラグメントは、1又は2以上のFrizzled受容体の局在化及び/又は定量化に関して当核分野で公知の方法に(例えば、適切な生理学的サンプル内の1又は2以上のFrizzled受容体のレベルの測定への使用のために、診断方法への使用のために、タンパク質のイメージングへの使用のために、及び同様のために)、使用され得る。所定の実施形態によれば、1又は2以上のFrizzled受容体に対して特異的な抗体、又はその誘導体、フラグメント、類似体又は相同体(抗体由来の抗原結合ドメインを含む)は、薬理学的活性化合物(この後、「治療薬」とも称する)として利用される。
【0137】
別の実施形態によれば、1又は2以上のFrizzled受容体に対して特異的な抗体又はフラグメントは、標準技法、例えば免疫親和性、クロマトグラフィー又は免疫沈澱により、Frizzled受容体ペプチドを単離するために使用され得る。1又は2以上のFrizzled受容体に対して向けられた抗体(又はそのフラグメント)は、所定の治療計画の効率を決定するために、臨床学的試験手順の一部として組織におけるタンパク質レベルをモニターするために、診断的に使用される。検出は、検出可能物質への抗体のカップリング(すなわち、物理的結合)により促進され得る。検出可能物質の例は、種々の酵素、補欠分子族複合体、蛍光物質、発光物質、発光物質、及び放射性物質を包含する。適切な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを包含し;適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを包含し;適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジンアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリトリンを包含し;発光物質の例は、ルミノールを包含し;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンを包含し;そして適切な放射性物質の例は、125I、131I,35Sは又は3Hを包含する。
【0138】
さらなる別の実施形態によれば、複数の標的を指図された多重特異的抗体及び/又は多重特異的活性化可能抗体は、サンプルにおける1又は2以上の標的(又はそのフラグメント)の存在を検出するための剤として使用され得る。いくつかの実施形態によれば、前記抗体は、検出可能標識を含む。抗体はポリクローナル又はいくつかの実施形態によれば、モノクローナルである。損なわれていない抗体又はそのフラグメント(例えば、Fab、scFv、又はF(ab)2)が使用される。プローブ又は抗体に関しての用語「標識された」とは、プローブ又は抗体に検出可能物質をカップリングする(すなわち、物理的に連結する)ことによるプローブ又は抗体の直接的標識化、及び直接的に標識される別の試薬との反応性によるプローブ又は抗体の間接的標識化を包含することが意図される。関接的標識化の例は、蛍光標識された二次抗体を用いての一次抗体の検出、及び蛍光標識されたストレプタビジンにより検出され得るよう、ビオチンによるDNAプローブの末端標識化を包含する。用語「生物学的サンプル」とは、対象から単離された組織、細胞及び生物学的流体、並びに対象内に存在する組織、細胞及び流体を包含することが意図される。従って、血液、及び血液の画分又は成分、例えば血清、血漿又はリンパは、用語「生物学的サンプル」の使用法内に含まれる。すなわち、本発明の検出方法は、インビトロで及びインビボで生物学的サンプルにおける分析物mRNA、タンパク質又はゲノムDNAを検出するために使用され得る。例えば、分析物mRNAの検出のためのインビトロ技法は、ノーザンハイブリダイゼーション及び現場ハイブリダイゼーションを包含する。分析物タンパク質の検出のためのインビトロ技法は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスターンプロット、免疫沈降、及び免疫蛍光を包含する。ゲノムDNAの検出のためのインビトロ技法は、サザンハイブリダイゼーションを包含する。イムノアッセイを行うための手順は、例えば“ELISA: Theory and Practice: Methods in Molecular Biology”, Vol. 42, J. R. Crowther (Ed.) Human Press, Totowa, NJ, 1995; “Immunoassay”, E. Diamandis and T. Christopoulus, Academic Press, Inc., San Diego, CA, 1996;及び“Practice and Theory of Enzyme Immunoassays”, P. Tijssen, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1985に記載される。さらに、分析タンパク質の検出のためのインビボ技法は、標識された抗-分析タンパク質抗体を、対象中に導入することを包含する。例えば、抗体は、対象におけるその存在及び位置が標準のイメージング技法により検出され得る放射性マーカーにより標識され得る。
【0139】
抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメントの治療投与及び製剤化
本発明の抗体(また、本明細書においては、「活性化合物」と称する)、及びその誘導体、フラグメント、類似体及び相同体が、投与のために適切な医薬組成物中に組込まれ得る。そのような組成物の調製に包含される原理及び考慮、並びに成分の選択の手引きは、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences: The Science And Practice Of Pharmacy 19th ed. (Alfonso R. Gennaro, et al., editors) Mack Pub. Co., Easton, Pa. : 1995; Drug Absorption Enhancement : Concepts, Possibilities, Limitations, And Trends, Harwood Academic Publishers, Langhorne, Pa., 1994;及び Peptide And Protein Drug Delivery (Advances In Parenteral Sciences, Vol. 4), 1991, M. Dekker, New Yorkに提供されている。
【0140】
そのような組成物は典型的には、前記抗体、及び医薬的に許容できる担体を含む。抗体フラグメントが使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに対して特異的に結合する最小阻害フラグメントが好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列を結合する能力を保持するペプチド分子が企画され得る。そのようなペプチドは、化学的に合成され得、そして/又は組換えDNA技法により生成され得る(例えば、Marasco et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7889-7893 (1993)を参照のこと)。
【0141】
本明細書において使用される場合、用語「医薬的に許容できる担体(pharmaceutically acceptable carrier)」とは、医薬投与と適合できる、何れか及びすべての溶媒、分散媒体、コーチング、抗菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、及び同様のものを含むことが意図される。適切な担体は、参照により本明細書に組込まれる、この分解においては標準的参考テキストであるRemington’s Pharmaceutical Scienceの最新版に記載される。そのような担体又は希釈剤の適切な例は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンを包含するが、但しそれらだけには限定されない。リポソーム及び非水性媒体、例えば固定油がまた使用され得る。医薬活性物質のためのそのような媒体及び剤の使用は、当業界においては良く知られている。任意の従来の媒体又は剤が活性化合物と不適合である場合を除き、組成物へのその使用が企画される。
【0142】
インビボ投与のために使用される製剤は、無菌であるべきである、これは、無菌濾過膜を通しての濾過により容易に達成される。
【0143】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合できるよう製剤化される。投与経路の例は、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜、及び直腸投与を包含する。非経口、皮内又は皮下適用のために使用される溶液又は懸濁液は次の成分を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒; 抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン; 酸化防止剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば酢酸塩、硝酸塩又はリン酸塩、及び張性の調整のための薬、例えば塩化ナトリウム及びデキストロース。pHは、酸又は塩基、例えば塩酸又は水酸化ナトリウムにより調節され得る。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器、又はガラス又はプラスチックから製造される複数回投与バイアルに封入され得る。
【0144】
注射使用に適した医薬組成物は、無菌注射溶液又は分散液の即時調製のための無菌水溶液(水溶性)又は分散液、及び無菌粉末を含む。静脈内投与のためには、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(登録商標)(BASF, Parsippany, N.J.)、又はリン酸緩衝溶液(PBS)を包含する。すべての場合、組成物は、容易な注射針通過まで無菌で且つ流体であるべきである。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定すべきであり、そして微生物、例えば細菌及び菌類の汚染作用に対して保存されるべきである。担体は、例えば水エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール及び同様のもの)及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えばコーチング、例えばレシチンの使用により、分散液の場合、必要とされる粒度の維持により、及び界面活性剤の使用により維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール及び同様のものにより達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含むことが適切であろう。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延する剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを、組成物に含むことによりもたらされ得る。
【0145】
無菌注射用溶液は、適切な溶媒中、必要とされる量での活性成分を、上記に列挙される成分の1つ又は組み合わせと共に組込むことにより、必要な場合、続いて、濾過減菌により調整され得る。一般的に、分散液は、基本的分散媒及び上記の列挙されるそれらからの必要とされる他の成分を含む無菌ビヒクル中に活性化合物を組込むことにより調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法は、活性成分及びその前もって減菌濾過された溶液からの任意の追加の所望する成分を生成する、真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0146】
経口組成物は一般的に不活性希釈剤又は食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入されるか、又は錠剤に圧縮され得る。経口治療投与のためには、活性化合物は、賦形剤と共に組込まれ、そして錠剤、トローチ又はカプセルの形で使用される。経口組成物はまた、マウスウォッシュとして使用のための液体担体を用いて調製され得、ここで液体担体中の化合物は、経口適用され、そしてスウィッシュされ、そして吐き出されるか、又は飲み込まれる。医薬的に適合できる結合剤、及び/又はアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、ピル、カプセル、トローチ及び同様のものは、次の成分の何れか、又は類似する性質の化合物を含むことができる:結合剤、例えば微晶性セルロース、トラガカントガム又はゼラチン;賦形剤、例えば澱粉又はラクトース;崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲル又はコーンスターチ;滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム又はSterotes;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化珪素;甘味剤、例えばスクロース又はサッカリン;又は風味剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香料。
【0147】
吸入による投与のためには、化合物は、適切な推進剤、例えばガス、例えば二酸化炭素を含む加圧された容器又はディスペンサー、又はネブライザーからエアロゾル噴霧の形で送達される。
【0148】
全身性投与はまた、経粘膜又は経皮手段によるものであっても良い。経粘膜又は経皮投与のためには、浸透されるべき障壁に適切な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は一般的に当業界において知られており、そして例えば、経粘膜投与のためには、界面活性剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体を包含する。経粘膜投与は、鼻腔内スプレー又は坐剤の使用を介して達成され得る。経皮投与のためには、活性化合物は、当業界において一般的に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル又はクリーム中に配合される。
【0149】
化合物はまた、直腸送達のために、坐剤(例えば、従来の製剤基材、例えばココアバター及び他のグリセリドを含む)又は保持浣腸の形で調製され得る。
【0150】
1つの実施形態によれば、活性化合物は、身体からの急速な排除に対して化合物を保護するであろう担体、例えば持続/制御放出製剤、例えばインプラント及びマイクロカプセル化送達システムを用いて調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸が使用され得る。そのような製剤の調製方法は、当業者に明らかであろう。
【0151】
例えば、活性成分は、例えばコアセルベーション技法により、又は界面重合により調製されるマイクロカプセル、例えばそれぞれコロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマイクロエマルジョン中、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入され得る。
【0152】
徐放性製剤が調製され得る。徐放性製剤の適切な例は、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを包含し、ここで前記マトリックスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形で存在する。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγエチル-L-グルタノートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-クリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射可能マイクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を包含する。ポリマー、例えばエチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸は100日間にわたって分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短い期間、タンパク質を放出する。
【0153】
材料はまた、Alza Corporation 及びNova Pharmaceuticals, Incから市販されている。リポソーム懸濁液(ウィルス抗原に対するモノクローナル抗体により、感染された細胞に標的化されたリポソームを含む)がまた、医薬的に許容される担体として使用され得る。それらは、米国特許第4,522,811号に記載されるように、当業者に知られている方法に従って調製され得る。
【0154】
投与の容易性及び投与量の均一性のための単位剤形で経口又は非経口組成物を製剤化することが特に好都合である。単位剤形とは、本明細書において使用される場合、治療される対象のための単位用量として適した物理的に別個の単位を意味し;各単位は、必要とされる医薬担体と関連して所望する治療効果を生成するよう計算された所定量の活性化合物を含む。本開示の単位剤形の仕様は、活性化合物のユニーク特徴及び達成されるべき特定の治療効果、及び個体の治療のためのそのような活性化合物を配合する技術的に固有の制限により決定され、そしてそれらに直接的に依存する。
【0155】
医薬組成物は、投与のための説明書と共に、容器、パック又はディスペンサーに含まれる。
【0156】
製剤はまた、治療される特定の徴候のために必要な場合、お互い悪影響を与えない補完的活性を有する、複数の活性化合物を含むことができる。他方では、又はさらに、組成物は、その機能を増強する剤、例えば細胞毒性剤、サイトカイン、化学療法剤又は増殖阻害剤を含むことができる。そのような分子は、意図される目的のために効果的である量で、組み合わせて適切に存在する。
【0157】
1つの実施形態によれば、活性化合物は、併用治療で投与され、すなわち病理学的状態又は障害、例えば自己免疫疾患及び炎症疾患の治療のために有用である他の剤と組合される。用語「組合して(comination in)」とは、剤が実質的に同時に、すなわち同時に又は連続的に与えられることを意味する。連続的に与えられる場合、第2化合物の投与の開始で、2種の化合物のうち第1の化合物は、治療の部位で、効果的濃度でまだ検出できる。
【0158】
例えば、併用療法は、1又は2以上の追加の治療剤、例えば下記により詳細に記載されるように、1又は2以上のサイトカイン及び成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、抗-腫瘍剤、及び/又は細胞毒性又は細胞増殖抑制剤と共に同時製剤化され、そして/又は同時投与される1又は2以上の抗体及びその抗原結合フラグメントを含むことができる。そのような併用治療法は、好都合には、低い用量の投与される治療剤を利用し、従って、種々の単独療法に関連する可能な毒性又は合併症を回避する。
【0159】
本発明の抗体と組合して使用される好ましい治療剤は、炎症応答における異なった段階で干渉するそれらの剤である。1つの実施形態によれば、本明細書に記載される1又は2以上の抗体は、以下のものと同時製剤化され、そして/又は同時投与され得る:1又は2以上の追加の剤、例えば他のサイトカイン又は成長因子アンタゴニスト(例えば、可溶性受容体、ペプチド阻害剤、小分子、リガンド融合体);又は他の標的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、他のサイトカイン又は成長因子、又は他の細胞表面因子に結合する抗体);及び抗-炎症性サイトカイン、又はそのアゴニスト。
【0160】
他の治療剤の企画及び生成
本発明によれば、及びFrizzled受容体に関して、本明細書において生成され、そして特徴づけられる抗体の活性に基いて、抗体部分を越えたほかの治療様式の企画が促進される。そのような様式は、光度な抗体治療薬、例えば二重特異的抗体、免疫毒性、及び放射性標識された治療薬、ペプチド治療薬の生成、遺伝子療法、特に細胞内抗体、アンチセンス治療薬及び小分子を包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0161】
例えば、二重特異的抗体に関連して、次のものを含む二重特異的抗体が生成され得る:(i)2種の抗体-1つは、1又は2以上のFrizzled受容体に対して特異性を有し、そして別の1つは、一緒に接合される第2分子に対して特異性を有し、(ii)1又は2以上のFrizzled受容体に対して特異的な1つの鎖、及び第2分子に対して特異的な第2鎖を有する単一抗体、又は(iii)1又は2以上のFrizzled受容体及び第2分子に対する特異性を有する単一鎖抗体。そのような二重特異的抗体は、良く知られている技法を用いて生成される。(i)及び(iii)に関連しては、例えばFanger et al. Immunol Methods 4:72-81 (1994) 及び Wright et al. Grit, Reviews in Immunol 12125-168 ( 1992)を、及び(iii)に関連しては、例えばTraunecker et al. Int. J. Cancer (Suppl.) 7:51-52 (1992)を参照のこと。
【0162】
免疫毒性に関連して、抗体は、当業界において良く知られている技法を用いて、免疫毒素として作用するよう修飾され得る。例えば、Vitetta Immunol Today 14:252 (1993)を参照のこと。米国特許第5,194,494号も参照のこと。放射性標識された抗体の調製に関連して、そのような修飾された抗体はまた、当業界において良く知られている技法を用いて、容易に調製され得る。例えば、Junghans et al. in Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686 (2d edition, Chafner and Longo, eds., Lippincott Raven (1996))を参照のこと。また、米国特許第4,681,581号、 第4,735,210号, 第5, 101,827号, 第5, 102,990号(RE 35,500), 第5,648,471号及び 第5,697,902号も参照のこと。各免疫毒素及び放射標識された分子は、1又は2以上のFrizzled受容体を発現する細胞を死滅する可能性が高いであろう。
【0163】
治療用ペプチドの生成に関しては、1又は2以上のFrizzled受容体及びそれに対する抗体、例えば抗体及びその抗原結合フラグメント、又はペプチドライブラリーのスクリーニングに関連する構造的情報を利用して、1又は2以上のFrizzled受容体に対して向けられる治療用ペプチドが生成され得る。ペプチド治療薬の企画及びスクリーニングは、Houghten et al. Bioiechniques 13:412-421 ( 1992), Houghten PNAS USA 82:5131 -5135 (1985), Pinalla et al. Bioiechniques 13:901-905 ( 1992), Blake and Litzi -Davis BioConjugate Chem. 3:510-513 (1992)により論じられている。免疫毒素及び放射性標識された分子もまた、抗体に関連して上記に論じられたようにペプチド部分に関連して、類似する態様で調製され得る。Frizzled受容体分子(又は、形式、例えばスプライス変異体又は別の形式)が疾患工程下で機能的に活性であると仮定すると、従来の技法を通して、遺伝子及びアンチセンス治療剤を企画することがまた可能であろう。そのような様式は、1又は2以上のFrizzled受容体の機能を調節するために利用され得る。それに関連して、本発明の抗体は、それに関連する機能的アッセイの企画及び使用を促進する。アンチセンス治療薬についての企画及び戦略が、国際特許出願番号WO94/29444号に、詳細に論じられてる。遺伝子療法についての企画及び戦略は良く知られている。しかしながら、特に、細胞内抗体を包含する遺伝子治療技法の使用は、特に好都合であることが分かっている。例えばChen et al. Human Gene Therapy 5:595-601 (1994) 及び Marasco Gene Therapy 4: 11-15 (1997)を参照のこと。遺伝子療法に関する一般的企画及び考慮もまた、国際特許出願番号WO97/38137号に論じられている。
【0164】
1又は2以上の標的化Frizzled受容体分子の構造、及び本発明の他の分子、例えば抗体及びその抗原結合フラグメント、及び他のものとのその/それらの相互作用から収集される知識は、追加の治療様式を合理的に企画するために利用され得る。これに関して、合理的薬物企画技法、例えばX-線結晶学、コンピューター支援(又は助力)分子モデリング(CAMM)、定量的又は定性的構造活性相関(QSAR)及び類似する技法が、創薬の努力を集中するために利用され得る。合理的企画は、1又は2以上のFrizzled受容体の活性を修飾するか又は調節するために使用され得る分子又はその特定形と相互作用することができるタンパク質又は合成構造体の予測を可能にする。そのような構造体は、化学的に合成され得るか、又は生物系において発現され得る。このアプローチは、Capsey el al. Genetically Engineered Human Therapeutic Drags (Stockton Press, NY (1988)に再考されている。さらに、組合せライブラリーが企画され、そして合成され、そしてスクリーニングプログラム、例えば高出力スクリーニング取り組みに使用され得る。
【0165】
スクリーニング方法
本発明は、1又は2以上のFrizzled受容体のWntタンパク質リガンドへの結合、及び/又はFrizzled活性化を調節するか、又は他方では干渉するモジュレーター、すなわち候補体又は試験化合物又は剤(例えば、ペプチド、ペプチド模倣体又は他の薬物)、又はWntシグナル伝達機能を調節するか又は他方では、干渉する候補体又は試験化合物又は剤を同定するための方法(また、本明細書においては、「スクリーニング アッセイ」とも称する)を提供する。異常Frizzled受容体活性、活性化、発現及び/又はリン酸化に関連する障害を治療するのに有用な化合物を同定するための方法もまた提供される。本発明はまた、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイにおいて同定される化合物も包含する。
【0166】
1つの実施形態によれば、本発明は、1又は2以上のFrizzled受容体の機能を調節する候補体又は試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明の試験化合物は、当業界において知られている以下の組合せライブラリー方法における多くのアプローチの何れかを用いて得られる:生物学的ライブラリー;空間的アドレス可能な平行固相又は溶液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー方法;「ワン-ビーズワン-化合物(one-bead one-compound)」ライブラリー方法;及び親和性クロマトグラフィー選択を用いての合成ライブラリー方法。生物学的ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーを制限するが、ところが他の4種のアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー又は化合物の小分子ライブラリーに適用できる(例えば、Lam, 1997. Anticancer Drug Design 12: 145を参照のこと)。
【0167】
「小分子(small molecule)」とは、本明細書において使用される場合、約5kD以下及び最も好ましくは、約4kD以下の分子量を有する組成物を意味する。小分子は、例えば核酸、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、炭水化物、脂質又は他の有機又は無機分子であり得る。化学的及び/又は生物学的混合物、例えば菌類、細菌又は藻類抽出物のライブラリーは、当業界においては知られており、そして本発明のアッセイの何れかによりスクリーニングされ得る。
【0168】
分子ライブラリーの合成方法の例は、当業界において、例えばDeWitt, et al., 1993. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 6909; Erb, et al. 1994. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91 : 1 1422; Zuckermann, et al, 1994. J. Med. Chem. 37: 2678; Cho, et al., 1993. Science 261 : 1303; Carrell, et al., 1994. Angew. Chem. Tnt. Ed. Engl. 33: 2059; Carell, et al, 1994. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061 ; 及びGallop, et al, 1994. J. Med. Chem. 37: 1233に見出され得る。
【0169】
化合物のライブラリーは、溶液に (例えばHoughten, 1992. Biotechniques 13: 412-421を参照のこと)、又はビーズ状に (Lam, 1991. Nature 354: 82.-84を参照のこと)、チップ上に(Fodor, 1993. Nature 364: 555-556を参照のこと)、細菌 (米国特許第 5,223,409号を参照のこと)、胞子 (米国特許第5,233,409号を参照のこと)、 プラスミド (Cull, et al., 1992. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865-1869を参照のこと)又はファージ上に(Scott and Smith, 1990. Science 249: 386-390; Devlin, 1990. Science 249: 404-406; Cwirla, et al., 1990. Proc. Natl Acad. Sci. U.S.A. 87: 6378-6382: Felici, 1991. J. Mol. Biol. 222: 301 -310; 及び米国特許第5,233,409号を参照のこと)に存在することができる。
【0170】
1つの実施形態によれば、候補体化合物は、抗体-抗原複合体に導入され、そして候補体化合物が抗体-抗原複合体を破壊するかどうかを決定し、ここでこの複合体の破壊が、候補体化合物が1又は2以上のFrizzled受容体の機能、及び/又は1又は2以上のFrizzled受容体と、Wntタンパク質リガントとの間の相互作用を調節することを示唆する。
【0171】
抗体-抗原複合体に干渉するか又は破壊する試験化合物の能力の決定は、例えば試験化合物を、放射性同位体又は酵素標識によりカップリングすることにより達成され得、結果的に、抗原又はその生物学的活性部分への試験化合物の結合が複合体における標識された化合物を検出することにより決定され得る。例えば、試験化合物は、125I、35S、14C又は3Hにより、直接的に又は間接的に標識され得、そして放射性同位体が電波放射の直接的計数により、又はシミュレーション計数により検出され得る。他方では、試験化合物は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、又はルシフェラーゼにより酵素的に標識され、そして酵素標識は、適切な基質の生成物への転換の決定により検出され得る。
【0172】
1つの実施形態によれば、アッセイは、抗体-抗原複合体と試験化合物とを接触し、そして抗原と相互作用するか又は他方では、既存の抗体-抗原複合体を破壊する試験化合物の能力を決定することを包含する。この実施形態によれば、抗原と相互作用し、そして/又は抗体-抗原複合体を破壊する試験化合物の能力の決定は、抗体に比較して、抗原又はその生物学的活性部分に選択的に結合する試験化合物の能力の決定を包含する。
【0173】
別の実施形態によれば、アッセイは、抗体-抗原複合体と試験化合物とを接触し、そして抗体-抗原複合体を調節する試験化合物の能力を決定することを包含する。抗体―抗原複合体を調節する試験化合物の能力の決定は、例えば試験化合物の存在下で、抗体に結合するか又は抗体と相互作用する抗原の能力を決定することにより達成され得る。
【0174】
本明細書に開示されるスクリーニング方法は、細胞に基づくアッセイ又は無細胞アッセイとして実施され得る。本発明の無細胞アッセイは、1又は2以上のFrizzled受容体及びそのフラグメントの可溶形又は膜結合形の何れかの使用に適している。膜結合形の1又は2以上のFrizzled受容体を含む無細胞アッセイの場合、膜結合形のタンパク質が溶液に維持されるよう溶解剤を用いることが所望される。そのような溶解剤の例は、非イオン性界面活性剤、例えば、n-オクチルグルコシド、n-ドデシルグルコシド、n-ドデシルマルトシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、デカノイル-N-メチルグルカミド、Triton(登録商標)X-100、Triton(登録商標)X-114、Thesit(登録商標)、イソトリデシル(エチレングリコールエーテル)n、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、3-(3-コラミドプロピル)ジメチルアンミニオール-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、又は3-(3-コラミドプロピル)ジメチルアンミニオール-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO)を包含する。
【0175】
複数の実施形態によれば、候補体化合物の導入に続いて、1又は両非複合形からの複合形の分離を促進し、そしてアッセイの自動化に対応するよう、抗体又は抗原の何れかを固定することが所望される。候補体化合物の存在及び不在下で抗体-抗原複合体の観察が、反応体を含むために適切な何れかの容器においてなされる。そのような容器の例は、マイクロタイタープレート、試験管及びマイクロ遠心分離管を包含する。1つの実施形態によれば、1又は両タンパク質のマトリックスへの結合を可能にするドメインを付加する融合タンパク質が提供される。例えば、GST-抗体融合タンパク質又はGST-抗原融合タンパク質が、グルタチオンセファロースビース(Sigma Chemical, St. Louis, MO)又はグルタチオン誘導されたマイクロタイタープレート上に吸着され、次に、試験化合物と共に組合わされ、そしてその混合物が、複合体形成を誘導する条件下で(例えば、塩及びpHのための生理学的条件下で)インキュベートされる。インキュベーションに続いて、ビーズ又はマイクロタイタープレートウェルが洗浄され、任意の末結合化合物が除去され、ビーズの場合、マトリックスが固定され、複合体が直接的に又は間接的に決定される。他方では、複合体は、マトリックスから解離され、そして抗体-抗原複合体形成のレベルが、標準技法を用いて決定され得る。
【0176】
マトリックス上にタンパク質を固定するための他の技法もまた、本発明のスクリーニングアッセイに使用され得る。例えば、抗体(例えば、本発明の抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメント)又は抗原(例えば、1又は2以上のFrizzled受容体)の何れかが、ビオチン及びストレプタビジンの接合を利用して固定され得る。ビオチニル化された抗体又は抗原分子が、当業界において良く知られている技法(例えば、ビオチニル化キット、Pierce Chemicals, Rockford, III.)を用いて、ビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から調製され、そしてストレプタビジン被覆された96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定され得る。他方では、目的の抗体又は抗原と反応性であるが、しかし目的の抗体-抗原複合体の形成に干渉しない他の抗体が、プレートのウェルに誘導体化され、そして末結合抗体又は抗原が抗体接合によりウェルに捕捉される。そのような複合体を検出するための方法は、GST-固定複合体についての上記それらの方法の他に、抗体又は抗原と反応性のそのような他の抗体を用いての複合体の免疫検出を包含する。
【0177】
本発明はさらに、上記スクリーニングアッセイの何れかにより同定される新規剤、及び本明細書に記載されるような治療のためへのその使用にも関する。
【0178】
診断及び予防製剤
本発明の抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメントは、診断及び予防製剤に使用される。1つの実施形態によれば、本発明の抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメントは、1又は2以上の前述の疾患、例えば癌及び/又は炎症性疾患を発症する危険性がある患者に投与される。1又は2以上の障害に対する患者又は器官の素因は、遺伝子型、血清学的または生化学マーカーを用いて決定され得る。
【0179】
抗体及びその抗原結合フラグメントはまた、患者サンプルにおける1又は2以上のFrizzled受容体の検出においても有用であり、そして従って、診断剤としても有用である。例えば本発明の抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメントは、患者サンプルにおけるFrizzled受容体レベルを検出するために、インビトロアッセイ、例えばELISAに使用され得る。
【0180】
1つの実施形態によれば、本発明の抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメントは、固体支持体(例えば、マイクロタイタープレートのウェル)上に固定される。固定された抗体は、試験サンプルに存在することができる任意のFrizzled受容体のための捕捉抗体として作用する。固定された抗体と患者サンプルとの接触の前、固体支持体は、分析物の非特異的吸着を妨げるために、ブロッキング剤、例えば乳タンパク質により洗浄され、そして処理される。
【0181】
続いて、ウェルが、抗原を含む疑いのある試験サンプルにより、又は標準量の抗原を含む溶液により処理される。そのようなサンプルは、例えば病理診断であると思われる循環抗原のレベルを有する疑いのある対象からの血清サンプルである。試験サンプル又は標準を洗い流した後、固体支持体が、検出的に標識される二次抗体により処理される。標識された二次抗体は、検出抗体として作用する。検出可能標識のレベルが測定され、そして試験サンプル中のFrizzled受容体抗原の濃度が、標準サンプルから開発される標準曲線との比較により決定される。
【0182】
インビトロ診断アッセイにおいて本発明の抗-Frizzled受容体抗体及びフラグメントを用いて得られる結果に基づいて、Frizzled受容体抗原の発現レベルに基づいて患者における疾患(例えば、癌又は炎症性疾患に関連する臨床学的指標)を分類することが可能であることが理解されるであろう。所定の疾患に関して、血液サンプルが、疾患の進行での種々の段階で、及び/又は、疾患の治療処理における種々の点で、診断される対象から採取される。進行又は治療の各段階のために統計学的に有意な結果を提供するサンプル集団を用いて、各段階で特徴的であると思われる抗原の濃度範囲が指定される。
【0183】
本明細書において引用されるすべての出版物及び特許文献は、そのような各出版物又は文書が具体的且つ個別に参照により本明細書に組込まれることが示されているかのように、参照により本明細書に組込まれる。出版物及び特許文献の引用は、何れか関連先行技術であり、それが内容又は日付に関する承認を構成するものではありません。本発明は現在、書面による説明により記載されて来たが、当業者は、本発明が様々な実施形態され得、そして前述の記載及び下記実施例が例示の目的であって、特許請求の範囲を制限するものではないことを理解するであろう。
【実施例
【0184】
実施される実験及び得られる結果を包含する次の実施例は、単なる例示目的であって、本発明を制限するものではない。
【0185】
実施例1:材料及び方法
ファージディスプレイ選択:ファージディスプレイ選択を、Sachdev S. Sidhu and Frederic A, FeHouse. "Synthetic therapeutic antibodies." Nat Chern Biol. 2(12)(2006):682-8により記載される手順に従って、組換えヒトFZD7細胞外ドメイン(R&D Systems)に対して実施した。
【0186】
Fab発現及び精製:IPTG-誘発性発現プラスミドを、BL21細菌細胞におけるFabの生成のために使用した。手短には、25mlの一晩の細菌培養物を、1Lの2YT培地に戻し希釈した。O.D=1で、細胞を、1mMの最終濃度のIPTGにより誘発した。4時間のインキュベーションの後、細胞を遠心分離により集め、そしてペレットを-20℃で凍結した。次の日、ペレットを、40mlの溶解緩衝液(1% Triton X-100、 2 mM のMgCl2、0.2 mM のPMSF、0.1% (w/v)リゾチーム及びlμl のベンゾナーゼ(2.5 U/ml))に、溶解の前、4℃で1時間、再懸濁した。Fab含有上清液を、11000RPMでの45分間の遠心分離により細胞残骸から分離した。Fabを、40mlのFab溶液当たり1mlのビーズ体積を用いて、セファロースAビーズにより4℃で1時間、捕捉した。ビーズを25mlのカラム(Biorad)に集め、続いて、3×10mlのPBSにより洗浄した。Fabを、8mlの溶離緩衝液(50mM の NaH2PO4 、lOOmMの H3PO4、140mM のNaCl、 pH 2.8)により溶出し、そして200mMの最終濃度で、トリス-HCl pH8.0により中和した。PBS緩衝液交換を、標準透析を用いて行った。
【0187】
IgG発現及び精製:IgGを、293F細胞において発現し、そして従来の方法に従ってならし培地から精製した。手短には、L鎖又はH鎖をコードする、等量のDNAコンストラクトを、293F細胞中に同時トランスフェクトした。細胞培養ならし培地を、トランスフェクションの120-145時間後、収穫した。適切な量のプロテインAビーズを、ならし培地に添加し、そして室温で1-2時間、混合した。上背液を除き、そしてビーズを、PBSにより3度、洗浄し、そして次に、IgGを、溶出緩衝液(0.1Mのグリシン-HCl、pH2.7)により溶出し、そして中和緩衝液(1Mのトリス-HCl、pH9.0)により中和した。次に、精製されたIgGを透析し、そして緩衝液をPBSに交換した。
【0188】
ELISAアッセイ:Fabの結合を、100nMのFZD7抗原及びFc対照タンパク質を、RTで1時間、固定し、続いて、60μlのPBS-BSA溶液中、1時間のブロッキング行程により評価した(詳細には、Sachdev S. Sidhu and Frederic A. Feliouse. "Synthetic therapeutic antibodies." Nat Chem Biol. 2( 12)(2006):682-8を参照のこと)。ブロッキングの後、100nMのFabを、各細胞に添加し、30分間インキュベートし、PBS-Tween緩衝液により6度、洗浄し、そして抗-FLAG-HRP(1:5000の希釈度)により検出した。
【0189】
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いての親和性測定:動態分析のために、FAbタンパク質を、E.コリ(E.coli)から精製した。結合動態を、Fabにより飽和される場合、約100の応答単位を生成するために十分な密度でGLCチップ上に固定される抗原と共にPROTEON(BioRAD)を用いて、表面プラズモン共鳴により決定した。次に、PBSを、10分間、100μl/分で注射し、解離を観察した。結合応答を、ブランク流動細胞上の応答を差し引くことにより補正した。動態分析のために、Kon及びKoffのグローバルフィッティングの1:1Langmuirモデルを用いた。Kd値を、Kon及びKoffの比率から決定した。
【0190】
エピトープビニング:手短には、100nMの固定された抗原を、500nMの精製されたFAbと共に1時間、プレインキュベートした。抗-FZD7 Fab分子を担持する、新しく調製されたファージを、抗原-Fab複合体を含むウェルに添加した。オーバーラップするファージ-Fab-抗原相互作用を阻止するFAbを、一緒にグループ分けした。詳細には、Sachdev S. Sidhu and Frederic A. Feliouse, "Synthetic therapeutic antibodies," Nat Chem Biol. 2(12)(2006):682-8を参照のこと。
【0191】
フローサイトメトリーによる細胞表面結合:細胞を、EDTA溶液により集め、そしてPBSにより1度、洗浄し、アリコートを、サンプル当たり0.2~1×106個の細胞にし;細胞を、氷上で60分間、試験される抗体(100μlのPBS-0.5%BSA中、サンプル当たり1μgのab)と共にインキュベートし;次に細胞を、1mlのPBS-0.1%BSAにより2度、洗浄し、そしてPBS-0.1%BSAに希釈された、100μlのヤギ抗-ヒトFab-488と共に暗室においてRTで15-30分間インキュベートした。次に、細胞を、1mlのPBS-0.1%BSAにより2度、洗浄し、その後、濾過された0.2-0.5mlの4%パラホルムアルデヒドに再懸濁した。細胞サンプルを、すぐにFACS分析にゆだねるか、又は後での分析のために4℃で維持した。二次Abは次のものを使用した:Alexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗-ヒトFab(Jackson#109-546-097)1:1000のEDTA溶液(付着細胞を離すための):0.15gの二ナトリウムEDTA(1mM)、4.0gのNaCl、0.28gの炭酸水素ナトリウム、0.5gのデキストロース(D-グルコース)、0.2gのKCl、500mlの二重蒸留水に溶解された。
【0192】
TopFlashレポーターアッセイ:TopFlash β-カテニン-依存性ルシフェラーゼレポーター(ホタルルシフェラーゼ)及びウミシイタケルシファラーゼを含むレンチウィルスを用いて、安定したMDA-MB-231及びHEK293T Wnt-レポーター系を確立した。処理の24時間前、細胞を、500μlの最終体積において、50%集密度で24ウェルプレート上に播種した。次の日、培地の半分を、250μlのWnt3a、又はL細胞からの対照ならし培地により置換し、そしてFab又はIgGを、所望する濃度で添加した。次に、細胞を、Envision多標識プレートリーダー(Perkin-Elmer)を用いて、二重ルシフェラーゼプロトコル(Promega)に従って、刺激の15時間後、アッセイした。
【0193】
免疫蛍光染色:myc標識に融合されるFZDレポーターのCRD及びGPIアンカー配列を含むレンチウィルスを用いて、安定したCHO細胞を確立した。CHO安定細胞系又はMDA-MB-231細胞を、カバースリップ上に播種し、そして200nMのFab又はIgG、又は抗-cMyc(SantaCruz)の1:200希釈溶液の存在下で、DMEM、10%FBS、1%Pen/Strepにおいて4℃で1時間インキュベートした。細胞を、3.7%パラホルムアルデヒドにおいて15分間、固定し、そして10%正常ロバ血清(NDS)により、30分間ブロックし、そして室温で60分間、二次抗-Fab488Alexa Fluor (Jackson)又は抗-兎488Alexa Fluor (Molecular Probc)、及び0.1%NDSと共にインキュベートした。カバースリップに、DAPIを含むVectashieid (Vector Laboratories Inc)を取り付け、そしてNikon Eclipse 80i 又はLSM 700 (Zeiss)により画像化した。
【0194】
細胞増殖を測定するためのスルホローダミンB(SRB)アッセイ:癌細胞を、次の密度で96ウェルプレートにプレートした:1800/ウェルでのASPC1、1500/ウェルでのHPAFII、3000/ウェルでのCAPAN2及び600/ウェルでのIMIMPC2。細胞を一晩、培養し、続いて、合計体積100μlの培養培地下で細胞に抗-FZD7 IgGを添加し、そしてインキュベーターに5日間、維持した。続いて、細胞を、培養培地を軽く吸引することにより、現場固定し、続いて50μlの氷冷却された10%TAC(トリクロロ酢酸)を、各ウェルに添加し、そして4℃で30-60分間インキュベートした。
【0195】
プレートを、水道水により5度、洗浄し、そして5分間、空気乾燥した。続いて、1%酢酸中、0.4%スルホローダミンB溶液50μlを、各ウェルに添加し、そして染色のために室温で30分間インキュベートした。染色に続いて、プレートを、新たに製造された1%酢酸により4度、洗浄し、末結合色素を除去し、そして次に、5分間、空気乾燥した。染色物を、ウェル当たり100μlの10mMのトリス(pH10.5)により溶解した。次に、プレートを、オービタル回転器上に5分間、配置し、その後、吸光度を570nmで読み取った。
【0196】
細胞培養:ヒト膵臓腺癌細胞系AsPC-1、CAPAN2及びHPAFIIを、American Type Culture Collection (Manassas, VA, USA)から購入した。AsPC-1細胞を、10%FCS(Life Technologies, Grand Island, NY, USA, カタログ番号: 12483-020)、100U/mlのペニシリン、及び100U/mlのストレプトマイシン(Life Technologies, Grand Island, NY, USA. カタログ番号: 15140-122)により補充されたRPMI1640培地(Life Technologies, Grand Island, NY, USA. カタログ番号: A10491-01)において、5%CO2を含む加湿雰囲気下で、37℃で維持した。
【0197】
CAPAN2細胞を、10%FCS(Life Technologies, Grand Island, NY, USA, カタログ番号: 12483-020)、100U/mlのペニシリン、及び100U/mlのストレプトマイシン(Life Technologies, Grand Island, NY, USA. カタログ番号: 15140-122)により補充されたMcCoy’s 5a培地(Life Technologies, Grand Island, NY, USA. カタログ番号: 16600)において、5%CO2を含む加湿雰囲気下で、37℃で維持した。
【0198】
HPAFII細胞を、10%FCS(Life Technologies, Grand Island, NY, USA, カタログ番号: 12483-020)、100U/mlのペニシリン、及び100U/mlのストレプトマイシン(Life Technologies, Grand Island, NY, USA. カタログ番号: 15140-122)により補充されたEMEM培地(Wisent Inc., St- Bruno, QC, Canada, カタログ番号: 320-026-CL)において、5%CO2を含む加湿雰囲気下で、37℃で維持した。
【0199】
細胞を、MycoAlert(登録商標)マイコプラズマ検出キット (Lonza, Rockland, ME, USA. カタログ番号: LT07-318)により定期的に試験することにより、マイコプラズマを有さないことを確かめた。
【0200】
試験抗体(インビボ実験のための):5種の組換え抗-Frizzled7抗体(FZD7 Ab)を、それらの実験で試験した。それらの抗体は、Al (mAb#105)、E4 (mAb#107)、 H10 (mAb#l l l)、 HI (mAb#112)及びG2 (mAb#140)であった。各抗体を、ビヒクル緩衝液により、その原液濃度から用量濃度(1.33mg/ml-15ml/kgの用量体積で20mg/kgに等しい)まで希釈した。ビヒクル緩衝液は、5%d-(+)-トレハロース二水和物(Bioshop, Burlington, ON, Canada. カタログ番号: TRE222)を含むDPBS(カルシウム及びマグネシウムを含まない、Life Technologies, Grand Island, NY, USA. カタログ番号: 14190- 144)であった。
【0201】
用量応答研究のために、2種の抗-Frizzled7抗体(FZD7 Ab)、Ab111及びAb112を、それらの実験において3種の異なった用量レベル(50、20及び5mg/kg)により試験した。各抗体を、ビヒクル緩衝液により、その原液濃度から用量濃度(3.33、1.33及び0.33mg/ml-15ml/kgの用量体積でそれぞれ50、20及び5mg/kgに等しい)まで希釈した。ビヒクル緩衝液は、5%d-(+)-トレハロース二水和物(Bioshop, Burlington, ON, Canada. カタログ番号: TRE222)を含むDPBS(カルシウム及びマグネシウムを含まない、Life Technologies, Grand Island, NY, USA. カタログ番号: 14190- 144)であった。
【0202】
CAPAN2及びHPAFII異種移植モデルでの試験のために、抗-Frizzled7抗体(FZD7 Ab)、Ab111を、それらの実験において2種の異なった用量レベル(20及び5mg/kg)により試験した。抗体を、ビヒクル緩衝液により、その原液濃度から用量濃度(1.33及び0.33mg/ml-15ml/kgの用量体積でそれぞれ20及び5mg/kgに等しい)まで希釈した。ビヒクル緩衝液は、5%d-(+)-トレハロース二水和物(Bioshop, Burlington, ON, Canada. カタログ番号: TRE222)を含むDPBS(カルシウム及びマグネシウムを含まない、Life Technologies, Grand Island, NY, USA. カタログ番号: 14190- 144)であった。
【0203】
実施例2:Frizzled受容体に対するFabの選択、生成及び特徴化
「ライブラリーF」として言及される合成Fabファージディスプレイライブラリーを用いて、Frizzled受容体に対する抗体を生成した。ヒトIgGのFc領域に融合される組換えFrizzled受容体7(FZD7)システインに富むドメイン(CRD)を抗原として用いて、ライブラリーFによる4回の連続的選択を実施し、そしてFZD7-CRD-Feに対して特異的に結合するが、しかしFc対照に対して結合しない複数ファージFabクローンを同定した(材料及び方法を参照のこと)。
【0204】
ライブラリーFは、前に記載されたライブラリーと同様にして構成される単一フレームワークのヒトFabライブラリーである。(例えば、Fellouse FA, Pal G, "Methods for the Construction of Phage-Displayed Libraries" in Phage Display in Biotechnology and Drug Discovery. Boca Raton: CRC Press (2005);及びFellouse FA et al. "High-throughput generation of synthetic antibodies from highly functional minimalist phage-displayed libraries.” J Mol Biol 373 (2007): 924-940を参照のこと)。
【0205】
ライブラリーFは、単一のヒトFabフレームワークのCDR-H1、CDR-H2,CDR-H3及びCDR-L3における位置中に縮重コドンを導入することにより構成されたFab-ファージライブラリーである。ライブラリーF中のCDR-L3及び/又はCDR-H3のループ長は、下記表に示されるように、変化することができる。このライブラリーにおいては、CDR-L1は、アミノ酸配列SVSSA(配列番号392)を含み、そしてCDR-L2は、アミノ酸配列SASSLYS(配列番号393)を含む。ライブラリーは、3×1010のユニーククローンの合計多様性を有し、そしてライブラリー企画の詳細は下記表1に示され、ここでCDR-L3及びCDR-H3領域中の陰影部分は、示されるように、すべての可能性ある種々の長さのランダムループにより置換された位置を示す。
【0206】
【表1】
【0207】
それらのクローンの配列決定及び配列分析は、ユニーク配列を有する361のFabクローンの同定につながった(図1)。次に、それらのクローンを、IPTG-誘発性E.コリ発現ベクター中にクリーン化し、そしてFabタンパク質を発現し、そして精製した(図2A)。それらの精製された抗-FZD7 FabはFZD7-CRD-Fcに結合するが、しかしFc対照に対しては結合しないことが確認された(図2B)。
【0208】
細胞上に発現されるFZD7への精製されたFabの結合を試験した。それらのFabが細胞上に発現されるFZD7受容体を認識するかどうかを見るために、フローサイトメトリー分析を実施した。FAb A2、A12,C3,E3及びE7を除くFabは、FZD7を発現することが知られている細胞、及びFZD7を過剰発現するよう構築された同じ細胞に結合した(図3)。フローサイトメトリーアッセイにおいて良好な結合性を示したFabを選択し、そしてさらなる分析のために精製した。
【0209】
Fabファージクローンの結合特異性を試験した。それらのFabクローンがまた、他のFrizzled受容体に結合したかどうかを決定するために、ファージ結合ELISAアッセイを、精製されたFZD ECD-Fc融合タンパク質を用いて行った。この分析は、FZD7の他に、FAbファージクローンがまた、他のFrizzled受容体に結合したことを示した(図4A)。それらのFabの結合特異性を、個々のFZD ECDを過剰発現する細胞を用いて、免疫蛍光染色により決定した。Fab A1、D10、E4、G2、H3及びH10は、同じ結合特異性プロフィールを共有し、これは、Fab E8、G6又はH1のそれらの特異性プロフィールとは異なる。
【0210】
次に、抗-FZD Fabのエピトープビニングを実施した。抗-FZD7 Fabが抗原FZD7上の結合部位を共有するかどうかを学ぶために、競争ELISAアッセイを実施し、精製されたFabが抗原(FZD7 CRD-Fc)への結合のためのFabファージクローンと競争するかどうかを決定した。それらの実験は、Fabがそれ自身の対応するファージクローンと効果的に競争することを示した(図5)。さらに、Fab G6、H1、A1及びE4は、すべての他のFabファージクローンの結合を効果的にブロックし、そしてFab D10のみが、FabファージクローンE8の結合を効果的にブロックし(図5)、このことは、それらのFabがFZD7上のオーバーラップする結合部位を共有することを示唆する。
【0211】
次に、抗-FZD7 Fabの親和性を、表面プラズモン共鳴(SPR)により決定した。SPRを用いて、FZDへのFZD7 Fabの結合親和性を決定した。SPRにより得られる結合親和性を要約する図6は、FZD7についてのそれらのFabの親和性値は0.4-9nMの範囲であったことを示す。追加のFZDのサブセットについての結合親和性もまた得られた(図7)。
【0212】
Wntリガンド結合及びリガンド-誘発性転写に対する抗-FZD Fabの効果を分析した。ELISAアッセイを用いて、FabがFZD7へのWntリガンド結合をブロックできたかどうかを直接的に決定した。図8に示されるように、Fab Al、DIG、E4、G2、H3、HIO、G6又は HIは、リガンドWnt 5a結合を効果的に阻害した。しかし、Fab E8は、FZD7へのWnt5aの結合をブロックしなかった。Fab A 1、G2、HI、H3、H10 及びE4は、PBS対照に比較して、70%以上、3a-誘発された転写活性を阻害した(図9)。
【0213】
リガンドWnt3a-誘発された転写活性に対する抗-FZD mAb(IgG)の効果をまた分析した。抗-FZD Fabを、IgG1として完全長抗体に転換し、そしてmAbを発現し、そして哺乳類細胞から精製した。続いて、精製された抗体を、生化学的及び生物学的特性評価研究のために使用した。
【0214】
第1に、FZD7へのそれらのmAbの結合親和性を、SPR方法を用いて決定した(材料及び方法を参照のこと)。図7に示されるように、KD値は、0.1-1.5nMの範囲であることが推定された。第2に、抗体を、フローサイトメトリー分析により試験し、それらのmAbが細胞上に発現されるFZD7に結合するかどうかを決定した。抗体は、CHO細胞よりも良好に、FZD7-過剰発現CHO細胞に結合することが示され、このことは、抗体が細胞上に発現されたFZD7を認識したことを示唆する。
【0215】
抗-FZD7抗体をまた、リガンド(Wnt3a)-依存性転写レポーターアッセイにより試験し、それらがWntリガンド及びFZD7により介在されるシグナルトランスダクションを、ブロックしたかどうかを確認した。図11に示されるように、IgG Al、G2、HI、H3、E4、D10、H10及びE8は、用量依存性態様で、Wnt 3a-誘発された転写活性を阻害した。IC50値は、2nM-125nMの範囲であることが推定された(図11)。
【0216】
実施例3:抗-FZD7 mAbの投与に続く腫瘍応答のインビトロ評価
ヒト膵臓癌細胞系ASPCl 、HPAFII、CAPA 2 及び IMMIPC2を用いて、抗-FZD7 mAbによる処理に続いて、癌細胞増殖の応答を評価した。それらの研究のために、膵臓細胞系を、次の密度で96ウェルプレートにプレートした:ASPC1細胞を、1800個の細胞/ウェルでプレートし、HPAFII細胞を、1500個の細胞/ウェルでプレートし、CAPAN2細胞を、3000個の細胞/ウェルでプレートし、そしてIMMIPC2細胞を、600個の細胞/ウェルでプレートした。一晩の培養期間に続いて、抗-FZD7 mAb(H10 (mAb#l11)、G2 (mAb#140)、Al (mAb#105)、E4 (mAb#107)、又は18R5)、又は負の対照として、ヒトγグロブリンを、5日間、細胞に添加した。
【0217】
癌細胞増殖における用量依存性応答をまた、抗-FZD7 mAbの投与に続いて、癌細胞系HPAFII、IMMPC2、PANC08.13及びASPClについて示した。10μg/ml又は50μg/mlのmAb H10又はG2のいずれかによる5日間の処理に続いて、HPAFII、IMMPC2及びPANC08.13についての細胞増殖において用量依存応答が存在した。(図12A-12Dを参照のこと)。抗-FZD7 抗体A1(mAb#105)、E4(mAb#107)、H10(mAb#lll)、H1(mAb#112)、G2(mAb#140)及び18R5はまた、Capan-2細胞の細胞増殖の低下において用量依存性応答を有することを示された。(図12Eを参照のこと)。
【0218】
ASPC-1細胞を用いてのインビトロ実験に関しては、培養培地に添加される抗体の濃度は、1μg/ml、2μg/ml、5μg/ml、10μg/ml又は50μg/mlであった。細胞増殖の用量依存性阻害が、mAb A1、E4及びH1について示された。(図13A及び13Bを参照のこと)。
【0219】
実施例4:抗-FZD7 mAbの投与に続く腫瘍応答のインビボ評価
生後5~6週の雌C.B-17SCIDマウス( Taconic Farms, German town, NY, USA)は、3種の膵臓細胞系AsPCI、CAPAN2 又は HPAFIIの1つの移植片を受け、続いて、抗-FZD7 mAbを投与し、mAb処理に対する応答を評価した。インビボ作業及び結果の詳細な説明については下記参照のこと。
【0220】
AsPCI移植片:C.B-17SCIDマウスは、100μlのDPBS中、3百個のAsPC1細胞を右脇腹に注射され、6日間の休止期間が続き、184.9mm3の平均腫瘍体積の形成を可能にした。合計6の実験グループが存在し、各グループは9匹のマウスを含んだ。抗-FZD7抗体、Al (mAb#105)、E4 (mAb#107)、 H10 (mAb#l11 )、H01 (mAb#l 12)、 G2 (mAb#140)又は ビヒクル対照 (100μlの DPBS)を、20mg/kgの濃度で、合計5週間、週当たり2度、IPを介して投与した。すべての抗-FZD7 mAbは、5週の投与計画の後、腫瘍体積の著しい低下をもたらし、その範囲は25.6%の低下(mAb A1の投与に続いて)~50.8%の低下(mAb H10の投与に続いて)であった。(図14を参照のこと)。
【0221】
AsPC1マウス異種移植体における用量依存性応答をまた、mAb111(また、本明細書においては、H10とも称する)及びmAB112(また、本明細書においては、H1とも称する)により評価した。マウス異種移植片受容体は、6日間の腫瘍増殖(平均体積=193.6mm3)に続いて、5mg/kg、20mg/kg、50mg/kg又はビヒクルのみ(DPBS)の対照により、合計4週間、週当たり2度、処理を開始した。それらの実験のために、合計8のグループが存在し、各グループは9匹の動物を含み、但しDPBS対照グループは、8匹の動物を含む。処理に続いて、腫瘍体積の用量依存性低下が存在し、mAb111の投与に続いて、5mg/kgの用量で腫瘍体積の36.3%の低下~50mg/kgの用量で腫瘍体積の65.8%の低下が存在し;mAb112による処理に続いて、35.4%(5mg/kgの用量)~44.7%(50mg/kgの用量)の範囲の腫瘍体積の低下が存在した。
【0222】
CAPAN2移植体:C.B-17SCIDマウスは、4百個のAsPC1細胞を右脇腹に注射され、6日間の休止期間が続き、203.6mm3の平均腫瘍体積の形成を可能にした。それらの実験については、抗-FZD7 mAb、mAb111を、5mg/kg又は20mg/kg、又は対照としてのビヒクルのみ(DPBS)の何れかの投与量でIPを介して投与した。投与計画は、合計5週間、週当たり2度の投与であった。マウスは3つのグループにランダムに分配され、各グループは10匹の動物を含んだ。mAb111の投与は、5週間の処理に続いて、52%の腫瘍体積の低下をもたらした。(図16を参照のこと)。
【0223】
HPAFII移植体:C.B-17SCIDマウスは、4百個のAsPC1細胞を右脇腹に注射され、7日間の休止期間が続き、191.5mm3の平均腫瘍体積の形成を可能にした。それらの実験については、抗-FZD7 mAb、mAb111を、5mg/kg又は20mg/kg、又は対照としてのビヒクルのみ(DPBS)の何れかの投与量でIPを介して投与した。投与計画は、合計4.5週間、週当たり2度の投与であった。マウスは3つのグループにランダムに分配され、各グループは10匹の動物を含んだ。mAb111の投与は、5週間の処理に続いて、94.1%の腫瘍体積の低下をもたらした。(図17を参照のこと)。
図1A
図1B
図1C-1】
図1C-2】
図1C-3】
図1D-1】
図1D-2】
図1D-3】
図1D-4】
図2A-1】
図2A-2】
図2B-1】
図2B-2】
図3-1】
図3-2】
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
【配列表】
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